説明

微細粒子を含んでいる難燃性重合体組成物

本発明は、
(A) 全重合体組成物の30〜70重量%の量のオレフィン単独および/または共重合体、
(B) シリコーン基含有化合物、および
(C) 全重合体組成物の少なくとも10重量%の量の無機充填剤
を含んでおり、ここで、成分(C)が、全重合体組成物の少なくとも10重量%が0.7マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持っている、難燃性重合体組成物に関する。
さらに、本発明は、そのような組成物を導管、プラグ、電線若しくはケーブルに、または射出成形用に使用する方法に、およびそのような組成物を含む層を持っている電線またはケーブルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性重合体組成物に関し、もっと具体的には改善された難燃特性を示し、同時に他の特性、たとえば良好な押出性または可撓性と剛性との良好なバランスを保持している、電線またはケーブル用の難燃性重合体組成物に関する。さらに、本発明は、難燃性重合体組成物を電線またはケーブルの難燃性層の製造に使用する方法並びに本発明に従う難燃性組成物を含んでいる電線またはケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、本質的に可燃性物質である。しかし、多くの用途において、たとえば電子および電気産業におけるケーブルおよび電線用には耐燃性が要求される。改善された耐燃性を持つポリオレフィン重合体を得るために、特定の添加剤、たとえばハロゲンに基づいた化学物質、ホスフェートに基づいた化学物質または無機水酸化物/水和化合物を重合体に混合することが知られている。これらの各添加剤は、それ自体の欠点、たとえばポリオレフィンとの非相溶性、不十分な機械的特性および不十分な加工性を引き起こす高い充填レベルの必要性、有害な、有毒な若しくは別の形で望ましくない化合物の存在または排出並びに高コストを持つ。
【0003】
たとえば、欧州特許出願公開第0393959号または国際特許出願公開第98/12253号に開示されているように、水酸化物でも実質的に水和された化合物でもない無機充填剤、ケイ素基含有化合物および典型的にはアクリル酸エステルまたは酢酸エステルを含む有機重合体基体を、難燃性重合体組成物は含むことができる。このような組成物の難燃性は、燃焼する場合に重合体がさらに燃焼するのを防ぐ物理的にかつ堅固に安定な炭化層の形成をもたらすこれらの3成分間の相乗効果に基づいている。このような組成物に基づいたコンパウンドは、通常良好な難燃性を、たとえばISO 4589−A−IVに従う限界酸素指数(LOI)試験法において示す。被覆ケーブルおよび比較的太い導管(被覆されていない)ケーブルも、たとえばIEC 332−1に従う一条電線燃焼試験のような特定のケーブル試験を満たさなければならない。しかし、導管電線はもっとも普通には細く、また当該組成物に基づいた4mmより細い電線はIEC 332−1を満たすことが困難である。したがって、当該組成物の難燃性は、なお改善の余地がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0393959号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第98/12253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された難燃性を持っており、同時に良好な機械的特性、特に可撓性と剛性との良好なバランスを保持している難燃性重合体組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、オレフィン単独および/または共重合体に加えて、粒子の少なくとも一部が1マイクロメートル未満、もっと特定すると0.7マイクロメートル未満のサイズを持つところの粒子状無機充填剤を含む重合体組成物によって、この目的が達成されることができるという発見に基づいている。
【0006】
したがって、本発明は、
(A) 全重合体組成物の30〜70重量%の量のオレフィン単独および/または共重合体、
(B) シリコーン基含有化合物、および
(C) 全重合体組成物の少なくとも10重量%の量の無機充填剤
を含んでおり、ここで成分(C)が、全重合体組成物の少なくとも10重量%が0.7マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持っている、難燃性重合体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、一条電線燃焼試験に合格しかつ改善された滴下特性を示すので、従来技術の物質と比較して改善された難燃性を示す。さらに、該組成物は分解すると、より低度に有害で、かつ腐食性でないガスを放出する。
【0008】
IEC 332−1試験法の目的は、一条の垂直なケーブルについて火炎伝播への抵抗性を測定することである。ケーブル(600mm)は垂直の位置に設置され、そしてプロパンバーナーによってつくり出された1kWの炎が、ケーブルサンプルに45°の角度でケーブルの上部支持から475mmのところで当てられる。下部支持と上部支持との間の距離は、550mmでなければならない。25mm未満の外径を持つケーブルでは、炎は60秒間当てられる。試験に合格するためには、プロパンバーナーの炎が取り去られた後、炎は消えなければならず、かつ上部支持から50mm以内および540mmより下に炭化が目視されてはならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に従う組成物では、本発明の組成物が電線(wire)またはケーブルの層として使用されるのかどうかに応じて、また該層がどのような目的に使用されるのかに応じて、オレフィン重合体(A)の選択および組成は、いろいろであることができる。もちろん、オレフィン重合体(A)は、種々のオレフィン重合体の混合物を含むこともできる。
【0010】
成分(A)は、オレフィンの、好ましくはエチレンの単独および/または共重合体によって形成される。これらは、たとえばエチレン、プロピレンおよびブテンの単独重合体または共重合体並びにブタジエンまたはイソプレンの重合体を包含する。エチレンの好適な単独重合体および共重合体は、低密度ポリエチレン、線状の低、中または高密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを包含する。好適なエチレン共重合体は、C〜C20のα−オレフィン、アクリル酸C〜Cアルキル、メタクリル酸C〜Cアルキル、アクリル酸、メタクリル酸および酢酸ビニルとのようなものを包含する。アルキルα−オレフィンの好まれる例は、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。
【0011】
シラン架橋性重合体も使用されることができ、これは、すなわち水および任意的にシラノール縮合触媒の存在下にシラノール基を形成する加水分解および縮合によって架橋する能力のある加水分解性基を持つ不飽和シラン単量体を用いて調製された重合体である。
【0012】
本発明の組成物のさらに好まれる実施態様では、成分(A)はオレフィン共重合体、好ましくは極性オレフィン共重合体を含み、好ましくはそれから構成される。
【0013】
極性基は、炭素および水素以外の少なくとも1の元素を含む官能基であると定義される。
【0014】
さらに好まれるのは、極性共重合体が、オレフィン/アクリル酸エステル、好ましくはエチレン/アクリル酸エステル、および/またはオレフィン/酢酸エステル、好ましくはエチレン/酢酸エステルの共重合体であることである。
【0015】
極性共重合体が、オレフィン好ましくはエチレンと、アクリル酸C〜Cアルキル、メタクリル酸C〜Cアルキル、アクリル酸、メタクリル酸および酢酸ビニルから選ばれた1以上の共単量体との共重合体を含むことがさらに好まれる。該共重合体は、アイオノマー構造(たとえばDuPont社のSurlynタイプにおけるような)を含有することもできる。
【0016】
さらに好まれるのは、極性重合体が、エチレンと、アクリル酸C〜Cアルキル(たとえばメチル、エチル、プロピル若しくはブチル)、または酢酸ビニルとの共重合体を含むことである。
【0017】
極性重合体が、オレフィン好ましくはエチレンと、アクリル共重合体との共重合体、たとえばエチレンアクリル酸共重合体およびエチレンメタクリル酸共重合体を含むことが特に好まれる。
【0018】
エチレンおよび定義された共単量体に加えて、該共重合体はさらなる単量体を含有することもできる。たとえば、アクリル酸エステルとアクリル酸またはメタクリル酸との、またはアクリル酸エステルとビニルシランとの、またはアクリル酸エステルとシロキサンとの、またはアクリル酸とシロキサンとの3元重合体が使用されることができる。
【0019】
極性共重合体は、重合体単量体、たとえばオレフィン単量体と極性共単量体との共重合によって製造されることができるが、グラフト重合体、たとえば1以上の共単量体が重合体主鎖上にグラフトされているポリオレフィン、たとえばアクリル酸グラフトポリエチレンであることもできる。
【0020】
極性重合体が、100重量部(pbw)の成分(A)当たり、30pbw以上の量を構成することがさらに好まれ、より好まれるのは50pbw以上、またさらにより好まれるのは70pbw以上である。もっとも好ましくは、成分(A)は完全に極性重合体からなる。
【0021】
重合体成分(A)は、組成物中に全組成物の30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の量で存在する。
【0022】
本発明の難燃性組成物は、さらにシリコーン基含有化合物(B)を含む。
【0023】
本発明の組成物の好まれる実施態様では、成分(B)は、シリコーンオイル若しくはシリコーンガム、またはオレフィンの、好ましくはエチレンの、少なくとも1のシリコーン基含有共単量体を含む共重合体、またはこれらの化合物のいずれかの混合物である。好ましくは、当該共単量体は、たとえばビニル不飽和ポリビスヒドロカルビルシロキサンのようなビニルポリシロキサンである。
【0024】
本発明に使用するのに適したシリコーンオイルおよびシリコーンガムは知られており、たとえばRSiO0.5、RSiO、RSiO1.5、RSiO0.5、RRSiO、RSiO、RSiO1.5およびSiO単位並びにこれらの混合物からなる群から選ばれた化学的に結合されたシロキシ単位を含むオルガノポリシロキサン重合体を包含し、ここで各Rは独立に、飽和または不飽和の一価の炭化水素残基を表し、また各Rは残基、たとえばRまたは水素、ヒドロキシル、アルコキシ、アリール、ビニルまたはアリル残基からなる群から選ばれた残基を表す。
【0025】
オルガノポリシロキサンは、好ましくは約10〜10,000,000の数平均分子量Mを持つ。分子量分布(MWD)測定は、GPCを使用して実施された。CHClが溶媒として使用された。Shodex−Mikrostyragel(10、10、10、100Å)カラムの一組、示差屈折率検出器および狭いMWD(NMWD)のポリスチレン較正用物質が使用された。GPC試験は室温で実施された。
【0026】
シリコーンオイルまたはシリコーンガムは、シリコーンゴムを硬くするために一般に使用される種類のヒュームドシリカ充填剤を、たとえば50重量%まで含有することができる。
【0027】
オレフィン好ましくはエチレンと少なくとも1のシリコーン基含有共単量体との共重合体は、好ましくは式(I)に従うビニル不飽和ポリビスヒドロカルビルシロキサンである。

ここで、n=1〜1000、またRおよびR’は独立に、ビニル、1〜10の炭素原子を持つ分岐された若しくは分岐されていないアルキル;6〜10の炭素原子を持つアリール;7〜10の炭素原子を持つアルキルアリール;または7〜10の炭素原子を持つアリールアルキルである。
【0028】
このような化合物は、たとえば国際特許出願公開第98/12253号に開示されており、その内容は本明細書に引用によって取り込まれる。
【0029】
好ましくは、成分(B)はポリジメチルシロキサンであり、好ましくは約1,000〜1,000,000の、より好ましくは200,000〜400,000のMnを持つもの、および/またはエチレンとビニルポリジメチルシロキサンとの共重合体である。商業的に入手できる故に、これらの成分(B)が好まれる。
【0030】
本明細書で使用される「共重合体」の語は、共重合によってまたは重合体主鎖上への単量体のグラフトによって製造された共重合体を包含することが意図される。
【0031】
シリコーン基含有化合物(B)は、組成物中に全組成物の0.5〜40重量%、より好まれるのは0.5〜10重量%、またさらにより好まれるのは1〜5重量%の量で存在することが好まれる。
【0032】
さらに、シリコーン基含有化合物は、全組成物中のシリコーン基の量が1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%であるような量で加えられることが好まれる。
【0033】
無機充填剤成分(C)は、全重合体組成物の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%が、0.7マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持つ。
【0034】
好ましくは、成分(C)は、全重合体組成物の少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%が0.65マイクロメートル以下、さらに好まれるのは0.60マイクロメートル以下、またもっとも好まれるのは0.5マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持つ。
【0035】
さらに好まれるのは、成分(C)が、全重合体組成物の最大でも55重量%、より好まれるのは最大でも45重量%、さらにより好まれるのは最大でも30重量%が、0.7マイクロメートル未満、より好まれるのは0.65マイクロメートル以下、さらにより好まれるのは0.60マイクロメートル以下、またもっとも好まれるのは0.5マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持つことである。
【0036】
成分(C)が、粒子の少なくとも50重量%が0.7マイクロメートル未満、より好まれるのは0.65マイクロメートル以下、さらにより好まれるのは0.60マイクロメートル以下、またもっとも好まれるのは0.5マイクロメートル未満のサイズを持つように、粒子サイズ分布を持つことがさらに好まれる。
【0037】
さらに、成分(C)の粒子の少なくとも60重量%が、1マイクロメートル以下の粒子サイズを持つことが好まれ、さらに好まれるのは粒子の少なくとも70重量%が1.5マイクロメートル以下のサイズを持つことであり、またいっそうさらに好まれるのは粒子の少なくとも80重量%が2マイクロメートル以下のサイズを持つことである。
【0038】
1からはずれているアスペクト比(すなわち、粒子の最大寸法と最小寸法との比)を持つ無機充填剤粒子が使用される場合には、粒子サイズは該粒子の最大寸法と最小寸法の数平均であると定義される。
【0039】
好ましくは、無機充填剤(C)は、少なくとも1種類の充填剤を含み、その場合に該無機充填剤粒子のアスペクト比、すなわち該粒子の最大寸法と最小寸法との比は5未満である。
【0040】
たとえば、CaCO粒子は、通例1に近い、たとえば1〜2のアスペクト比を持つ。
【0041】
すべての充填剤粒子が同じアスペクト比を持つ1種類だけの無機充填剤または2種類以上の無機充填剤の混合物が使用されることは、本発明の範囲内である。
【0042】
したがって、無機充填剤(C)は、5未満の粒子アスペクト比を持つ充填剤から完全になることができる。
【0043】
好まれる実施態様では、無機充填剤(C)は、少なくとも2種類の充填剤の混合物を含み、その1種類が5未満のアスペクト比の粒子を持ち、かつ1種類が5以上のアスペクト比を持つ。
【0044】
たとえば、繊維は、典型的には10以上の粒子アスペクト比を持ち、小板型の充填剤、たとえばマイカ、タルク、アルミニウム水酸化物およびグラファイトは、典型的には5〜100の粒子アスペクト比を持つ。
【0045】
無機充填剤(C)は、組成物中に10重量%超の量で存在することが好まれ、より好まれるのは30重量%超、さらにより好まれるのは32重量%超、さらにより好まれるのは34重量%超、またもっとも好まれるのは35重量%超である。
【0046】
無機充填剤(C)は、組成物中に70重量%までの量で存在することがさらに好まれ、より好ましくは60重量%まで、またもっとも好ましくは55重量%までである。
【0047】
成分(C)、すなわち本発明の組成物に使用するのに適した無機充填剤物質は、従来技術で知られたすべての充填剤物質を包含する。成分(C)は、任意のそのような充填剤物質の混合物も包含する。そのような充填剤物質の例は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよび/またはバリウムの酸化物、水酸化物および炭酸塩である。
【0048】
好ましくは、成分(C)は、元素の周期律表の1〜13族、より好まれるのは1〜3族、さらにより好まれるのは1〜2族、またもっとも好まれるのは2族の金属の無機化合物を含む。
【0049】
本明細書で使用される化学基の番号は、元素の周期律の族が1〜18の番号を付けられているIUPAC方式に従っている。
【0050】
好ましくは、無機充填剤成分(C)は、水酸化物でも水和化合物でもない化合物を含み、より好まれるのは炭酸塩、酸化物および硫酸塩から選ばれた化合物を含むことであり、またもっとも好まれるのは炭酸塩を含むことである。
【0051】
そのような化合物の好まれる例は、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよびハンタイトMgCa(COであり、特に好まれる例は炭酸カルシウムである。
【0052】
無機充填剤(C)は、好ましくは水酸化物ではないけれども、少量の水酸化物、典型的には該充填剤の5重量%未満、好ましくは3重量%未満の水酸基を含有することができる。たとえば、少量の水酸化マグネシウムが酸化マグネシウム中に存在することができる。さらに、充填剤(C)は、水和化合物ではないけれども、少量の水、普通には該充填剤の3重量%未満、好ましくは1重量%未満の水を含有することができる。しかし、成分(C)は、水酸化物および/または水を完全に含まないことがもっとも好まれる。
【0053】
好ましくは、本発明の難燃性重合体組成物の成分(C)は、50重量%超の炭酸カルシウムを含み、さらに好まれるのは炭酸カルシウムから実質的に完全になることである。
【0054】
加工性を促進しまた有機重合体への充填剤のよりよい分散をもたらす、有機シラン、重合体、カルボン酸またはカルボン酸塩等で表面処理された充填剤を、無機充填剤は包含することができる。当該コーティングは、普通には充填剤の3重量%超を構成しない。
【0055】
好ましくは、本発明に従う組成物は、3重量%未満の有機金属塩または重合体コーティングを含有する。
【0056】
上述の成分(A)、(B)および(C)に加えて、本発明に従う組成物は、さらなる成分、たとえば例として酸化防止剤およびまたは紫外線吸収剤を少量で含有することができる。
【0057】
さらに、他の鉱物充填剤、たとえばガラス繊維も本組成物の一部であることができる。
【0058】
本発明に従う組成物は、架橋性であることができる。照射または架橋剤、たとえば有機過酸化物を使用して熱可塑性重合体組成物を架橋することは周知であり、したがって本発明に従う組成物は、架橋剤を慣用の量で含有することができる。シラン架橋性重合体は、シラノール縮合触媒を含有することができる。
【0059】
本発明に従う難燃性重合体組成物は、
a)シリコーン基含有化合物、添加剤および重合体を含むマスターバッチの調製そしてそれに続く無機充填剤と基体重合体とのコンパウンディング、または
b)全成分の1段階コンパウンディング
によって調製されることができる。
【0060】
混合のためには、慣用のコンパウンディングまたはブレンド装置、たとえばBanbury社の混合機、2本ロールゴムミル、Buss社の混練機または2軸押出機が使用されることができる。好ましくは、該重合体を軟化しそして可塑化するのに十分に高い温度、典型的には120〜200℃の範囲の温度でこれらを一緒にブレンドすることによって、本組成物は調製されるだろう。
【0061】
本発明に従う難燃性組成物は、多くのかつ多様な用途および製品に使用されることができる。本組成物は、成形品、シート、ウェビングおよび繊維へと、たとえば型成形され、押出されまたは別の方法で形成されることができる。
【0062】
既に上述したように、本発明に従う難燃性組成物の好まれる使用先は、導管、プラグ、電線若しくはケーブルの生産用、または射出成形用であり、特に好まれる使用先は、電線またはケーブルの生産である。本組成物は、電線若しくはケーブルのまわりに押出されて、絶縁若しくは被覆層を形成することができ、またはコーキングコンパウンドとして使用されることができる。
【0063】
以下に本発明は、実施例および付随する図によってさらに例証される。
【0064】
図1は、実施例に使用された無機CaCO充填剤物質の粒子サイズ分布を示す。
【実施例】
【0065】
1.組成物のコンパウンディング
【0066】
本発明に従う難燃性重合体組成物および比較の目的のための難燃性重合体組成物が、ロールミルで180℃の温度で成分を一緒にコンパウンドすることによって製造された。
【0067】
2.製造された組成物および使用された物質
【0068】
比較組成物および本発明に従う組成物の製造のために、以下の物質が使用された。
EMAA= 190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)3.0g/10分および密度0.934g/cmを持つ、メタクリル酸9重量%を含有するエチレンメタクリル酸共重合体;
EAA= MFR8g/10分および密度0.936g/cmを持つ、アクリル酸9重量%を含有するエチレンアクリル酸共重合体;
EBA= アクリル酸ブチル8重量%を含有し、かつMFR0.4g/10分を持つエチレンアクリル酸ブチル共重合体
シリコーン(マスターバッチ)= ポリジメチルシロキサンエラストマー40%および低密度ポリエチレン60%からなるマスターバッチ
CaCO(0.4)= 平均粒子サイズ(d50値)0.4ミクロンを持つ沈降炭酸カルシウム
CaCO(0.65)= 平均粒子サイズ(d50値)0.65ミクロンを持つ粉砕炭酸カルシウム
CaCO(1.4)= 平均粒子サイズ(d50値)1.4ミクロンを持つ粉砕炭酸カルシウム
安定剤= Irganox 1010(フェノール系酸化防止剤)
【0069】
組成物は、表1に示された成分の重量%で示された量で、上述のようにコンパウンドされた。
【0070】
3.ケーブルの製造
【0071】
表1に概略が示された種々の組成物の0.7±0.1mmの絶縁物が、実験室押出装置(160−170−180℃、rpm、加圧ダイ)によって1.5mmの銅の導体上に押出された。
【0072】
4.試験方法
【0073】
a) 組成物のメルトフローレートMFRは、ISO 1133に従って190℃および2.16kgの荷重で測定された。
【0074】
b) 一条電線燃焼試験が、IEC 332−1に完全準拠してなされた。試験に合格するためには、1kWのプロパンバーナーの炎が取り去られた後、炎は消えなければならず、かつ上部支持から50mm以内および540mmより下に炭化が目視されてはならない。この判断基準を満たす電線は、表1に「合格」と表示され、そうでない場合は「不合格」と表示された。
【0075】
c) 物質の滴下性向は、以下のように測定された。
【0076】
60×60×3mmの板が該物質から圧縮成形され、そして12のメッシュサイズを持つ鋼鉄の枠に取り付けられる。板は、下から45°の角度で鋼鉄の枠を通して1kWのブンゼンバーナー(950±50℃)によって、火が自己消火するまで燃やされる(板は完全に燃やされる)。燃焼滴は水中に落ちる。水中の残渣はろ過され、乾燥されそして秤量される。滴下性向は、水中に回収された残渣を板の元の重量で除して100を乗じたもの、すなわち滴下によって失われた元のサンプル重量のパーセントとして表現される。該方法は仏国の方法NF P 92−505に基づいている。
【0077】
d)粒子サイズ分布および平均粒子サイズ(d50値)は、Sedigraph 5100を用いて測定された。この沈降法は、種々のサイズの粒子が既知の特性を持つ液体中を重力によって引き起こされた移動をする速度を測定することによって、粒子サイズを測定する。粒子が液体中を沈降する速度は、ストークスの法則によって説明される。最大の粒子がもっとも速く沈降し、一方最小の粒子がもっとも遅く沈降し、そして最後に全てが沈降してしまい液体が清澄になる。種々の粒子はめったに均一の形を示さないので、各粒子サイズは「等価球直径」、すなわち同じ重力速度を持つ同じ物質の球の直径として報告される。
【0078】
サンプルセルを透過して検出器へ至る低エネルギーX線の精細に平行化されたビームを使用することによって、沈降速度は測定される。セル中の粒子はX線を吸収するので、元のX線ビームのわずか1%が検出器に到達する。これは、沈降液体を含有するセル中の粒子サイズの分布を測定するために使用される生データである。
【0079】
X線源および検出器のアッセンブリは静置のままで、一方セルは両者間を垂直に移動する。ビーム分割の特徴の故に、自動的なセル位置合わせが保証され、他の系に付随するアッセンブリのそれらの動きの故の不確実性を排除している。セルは透明な窓を持ち、それを通して線源からのX線が検出器に到達する。セル中のいろいろな点における粒子質量の分布は、検出器に到達するX線パルスの数に影響を与える。このX線パルスの総計数は、粒子直径分布および所与の粒子直径にある質量パーセントを導くために使用される。平均粒子サイズは、該物質の50重量%がそれより細かく、該物質の50重量%がそれより粗いところの粒子サイズとして定義される。
【0080】
5.結果
【0081】
表1に示された本発明に従う組成物(実施例1〜11)と比較組成物(比較例1〜3)との特性間の比較は、本発明の組成物からつくられたケーブルが一条電線燃焼試験に合格し、したがって改善された難燃性を持つことを示す。
【0082】
【表1−1】

【0083】
【表1−2】

【0084】
さらに、表2に示された結果は、本発明の組成物が改善された滴下性向を持つことを示す。試験されたコンパウンドは、すべて12.5重量%のシリコーン(マスターバッチ)、0.2重量%の安定剤、表2に示された量および品質のCaCOを含有し、かつ残りはEBAであった。
【0085】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、実施例に使用された無機CaCO充填剤物質の粒子サイズ分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 全重合体組成物の30〜70重量%の量のオレフィン単独および/または共重合体、
(B) シリコーン基含有化合物、および
(C) 全重合体組成物の少なくとも10重量%の量の無機充填剤
を含んでおり、ここで成分(C)が、全重合体組成物の少なくとも10重量%が0.7マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持っている、難燃性重合体組成物。
【請求項2】
成分(C)が、全重合体組成物の少なくとも10重量%が0.65マイクロメートル以下のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持っている、請求項1に従う組成物。
【請求項3】
成分(C)が、全重合体組成物の少なくとも10重量%が0.5マイクロメートル未満のサイズを持つ粒子であるように、粒子サイズ分布を持っている、請求項1〜2のいずれか1項に従う組成物。
【請求項4】
無機充填剤(C)の全量が、全重合体組成物の30〜55重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に従う組成物。
【請求項5】
無機充填剤(C)が、水酸化物でも水和化合物でもない、請求項1〜4のいずれか1項に従う組成物。
【請求項6】
無機充填剤(C)が、元素の周期律の1〜13族の元素の炭酸塩、酸化物および/または硫酸塩を含んでいる、請求項1〜5のいずれか1項に従う組成物。
【請求項7】
成分(C)が、5未満のアスペクト比の粒子を持つ無機化合物を含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に従う組成物。
【請求項8】
重合体(A)が、極性オレフィン共重合体を含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従う組成物。
【請求項9】
重合体(A)が、オレフィンとアクリル共単量体との共重合体を含んでいる、請求項8に従う組成物。
【請求項10】
シリコーン基含有化合物(B)が、シリコーンオイルおよび/若しくはシリコーンガム、並びに/またはシリコーン基含有共単量体を含むオレフィン共重合体である、請求項1〜9のいずれか1項に従う組成物。
【請求項11】
全組成物中のシリコーン基の量が、全組成物の1〜20重量%である、請求項1〜10のいずれか1項に従う組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に従う組成物を導管、プラグ、電線若しくはケーブルに、または射出成形用に、好ましくは電線若しくはケーブルに使用する方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に従う組成物を含む層を持っている電線またはケーブル。

【図1】
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【公表番号】特表2007−503493(P2007−503493A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524324(P2006−524324)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009491
【国際公開番号】WO2005/021642
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】