説明

微細粒子成分分析装置

【課題】ナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合でも、校正を迅速に行うことができる微細粒子成分分析装置を提供する。
【解決手段】大気をサンプリングするサンプリング装置111と、サンプリング装置111でサンプリングされたサンプリングガス1中から目的とする粒径のナノメータサイズの微細粒子2を分級して送出する静電式の分級器112と、分級器112からの微細粒子2の成分を分析するレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置114と、検量成分3bを微細粒子の金属のコア3aに規定量被着させた検量体3を単位容積当り目的とする粒子数で生成させて分級器112へ送給する検量体生成装置10とを備えて微細粒子成分分析装置110を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置に関し、特に、自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合に適用すると有効なものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する従来の微細粒子成分分析装置の一例の概略構成を図7に示す。
【0003】
図7に示すように、大気等からサンプルガス1をサンプリングするサンプリング装置101のガス送出口は、サンプルガス1中から目的とする粒径の微細粒子2を分級して送出する静電式の分級器102のガス受入口に接続している。分級器102の試料送出口は、単位容積当りの微細粒子2の数を計測する粒子数計測装置103の試料受入口と、微細粒子2の成分を分析するレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置104の装置本体104aの試料受入口とにそれぞれ接続している。なお、図7中、104bは、質量分析装置104の装置本体104a内にレーザ光5を照射するレーザ発振器である。
【0004】
このような従来の微細粒子成分分析装置100においては、サンプリング装置101が大気等からサンプルガス1をサンプリングすると、当該サンプルガス1が分級器102に送給されて、目的とするナノメータサイズの粒径の微細粒子2が分級され、粒子数計測装置103及び質量分析装置104の装置本体104aに送給されて、粒子数計測装置103によって単位容積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置104によってその成分を分析することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−288602号公報
【特許文献2】特開2004−219250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したような従来の微細粒子成分分析装置100において、ナノメータサイズの微細粒子2の成分の分析結果を校正しようとする場合には、ナノメータサイズの微細粒子2の成分を迅速に分析できる分析装置が他にないため、時間や手間が非常にかかる他の分析装置での分析結果を利用しなければならず、迅速に対応することが非常に難しかった。
【0007】
このようなことから、本発明は、ナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合でも、校正を迅速に行うことができる微細粒子成分分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置であって、前記ガスをサンプリングするガスサンプリング手段と、前記ガスサンプリング手段でサンプリングされた前記ガス中から目的とする粒径の前記微細粒子を分級して送出する分級手段と、前記分級手段からの前記微細粒子の成分を分析する分析手段と、検量成分を規定量有する微細粒子の検量体を単位容積当り目的とする粒子数で生成させて前記分級手段へ送給する検量体生成手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第二番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目の発明において、前記検量体生成手段が、金属の微細粒子のコアを単位容積当り目的とする粒子数で生成させるコア生成手段と、前記検量成分の蒸気を単位容積当り目的とする濃度で生成させる検量成分気化手段と、前記コア生成手段で生成した前記コアに前記検量成分の前記蒸気を目的とする被着量で被着させる被着手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第三番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第二番目の発明において、前記検量体生成手段の前記コア生成手段が、金属製の電極で放電することにより当該金属の前記コアを生成させて、不活性ガスにより当該コアを搬送するものであり、前記電極の放電電圧及び放電周波数の少なくとも一方並びに前記不活性ガスの流速により前記コアの単位容積当りの粒子数を設定するものであることを特徴とする。
【0011】
第四番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第二番目又は第三番目の発明において、前記金属が金であることを特徴とする。
【0012】
第五番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第二番目から第四番目の発明のいずれかにおいて、前記検量体生成手段の前記検量成分気化手段が、前記検量成分を加熱して当該検量成分を気化させて、不活性ガスにより当該検量成分の蒸気を搬送するものであり、前記検量成分の加熱温度及び前記不活性ガスの流速により当該検量成分の前記蒸気の単位容積当りの濃度を設定するものであることを特徴とする。
【0013】
第六番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第二番目から第五番目の発明のいずれかにおいて、前記検量体生成手段の前記被着手段が、前記コアと前記検量成分の前記蒸気とを混合しながら冷却するものであり、前記不活性ガスの温度及び当該不活性ガスの流速により前記コアに対する前記検量成分の被着量を設定するものであることを特徴とする。
【0014】
第七番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第五番目の発明において、前記検量体生成手段の前記検量成分気化手段が、複数の前記検量成分を各々加熱して当該検量成分を各々気化させて、前記不活性ガスにより当該検量成分の前記蒸気を各々搬送するものであり、各前記検量成分の加熱温度及び各前記不活性ガスの流速により各当該検量成分の各前記蒸気の単位容積当りの濃度を各々設定するものであることを特徴とする。
【0015】
第八番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第七番目の発明において、前記検量体生成手段の前記被着手段が、前記検量成分の前記蒸気を前記コアと混合しながら冷却して被着することを前記検量成分ごとにそれぞれ個別に行うものであることを特徴とする。
【0016】
第九番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目から第八番目の発明のいずれかにおいて、前記分級手段が、静電式の分級器であることを特徴とする。
【0017】
第十番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目から第九番目の発明のいずれかにおいて、前記分析手段が、レーザイオン化飛行時間型の質量分析装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る微細粒子成分分析装置によれば、検量成分を規定量含有する微細粒子の検量体を単位容積当り目的とする粒子数で生成させる検量体生成手段を備えているので、ナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合でも、校正を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第一番目の実施形態]
本発明に係る微細粒子成分分析装置の第一番目の実施形態を図1,2に基づいて説明する。図1は、微細粒子成分分析装置の概略構成図、図2は、図1の検量体生成装置で生成する検量体の概略構造図である。
【0020】
図1に示すように、大気等からサンプルガス1をサンプリングするガスサンプリング手段であるサンプリング装置111のガス送出口は、サンプルガス1中から目的とする粒径の微細粒子2を分級して送出する分級手段である静電式の分級器112のガス受入口に接続している。分級器112の試料送出口は、単位容積当りの微細粒子数を計測する粒子数計測装置113の試料受入口と、微細粒子2の成分を分析する分析手段であるレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置114の装置本体114aの試料受入口とにそれぞれ接続している。
【0021】
前記サンプリング装置111のガス送出口と前記分級器112のガス受入口との間には、検量体生成手段である検量体生成装置10が接続されており、当該検量体生成装置10は、以下のような構成となっている。
【0022】
図1に示すように、窒素等の不活性ガス4を送給する不活性ガス送給装置11のガス送出口は、金属製(例えば金等)の電極で放電することにより、当該金属のナノメータサイズの微細粒子のコア3aを生成させるコア生成装置12のガス受入口と、上記不活性ガス4の温度を調整する不活性ガス温調装置13のガス受入口と、炭化水素系化合物等の有機化合物(例えばアントラセン等)等のような検量成分3bを加熱気化して当該検量成分3bの蒸気を発生させる検量成分気化装置14のガス受入口とに、それぞれ調整バルブ15A〜15Cを介して接続している。
【0023】
前記コア生成装置12の送出口及び前記検量成分気化装置14の送出口は、前記コア3aに前記検量成分3bの蒸気を被着させて検量体3Aを生成させる被着装置16の混合槽16aの受入口にそれぞれ接続している。前記不活性ガス温調装置13の送出口は、前記コア生成装置12の送出口と前記被着装置16の混合槽16aの受入口との間に接続している。前記被着装置16の前記混合槽16aに隣接する冷却槽16bの送出口は、余剰の前記検量成分3bの蒸気を除去する蒸気除去装置17の受入口に接続している。この蒸気除去装置17の送出口は、前記サンプリング装置111のガス送出口と前記分級器112のガス受入口との間に接続している。
【0024】
また、図1中、114bは、質量分析装置114の装置本体114aにレーザ光5を照射するレーザ発振器である。なお、本実施形態においては、不活性ガス送給装置11,コア生成装置12,調整バルブ15A等によりコア生成手段を構成し、不活性ガス送給装置11,検量成分気化装置14,調整バルブ15C等により検量成分気化手段を構成し、不活性ガス送給装置11,不活性ガス温調装置13,調整バルブ15B,被着装置16等により被着手段を構成している。
【0025】
このような本実施形態に係る微細粒子成分分析装置110の作動を次に説明する。
【0026】
〈微細粒子成分分析〉
前記サンプリング装置111が大気からサンプルガス1をサンプリングすると、当該サンプルガス1が分級器112に送給されて、目的とするナノメータサイズの粒径の微細粒子2が分級され、粒子数計測装置113及び質量分析装置114の装置本体114aにそれぞれ送給されて、粒子数計測装置113によって単位容積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置114によってその成分を分析される。これにより、サンプルガス1中の微細粒子2の成分を迅速に分析することができる。
【0027】
〈校正調整〉
そして、分析結果を校正する場合には、前記サンプリング装置111によるサンプルガス1のサンプリングを止めて、前記検量体生成装置10を作動させることにより、ナノメータサイズの金属製(金等)の微細粒子のコア3aに検量成分3b(アントラセン等)を目的とする被着量で被着させた、すなわち、検量成分3bを規定量有する検量体3A(図2参照)を単位容積当り目的とする粒子数で分級器112に送給する。
【0028】
具体的には、前記検量体生成装置10において、前記コア生成装置12を作動して金属(金等)製の電極で放電して、ナノメータサイズの金属(金等)の微細粒子のコア3aを生成させると共に、前記検量成分気化装置14を作動して検量成分3b(アントラセン等)を加熱して当該検量成分3bの蒸気を発生させ、さらに、前記調整バルブ15A〜15Cを調整して不活性ガス送給装置11から不活性ガス4を上記コア生成装置12、不活性ガス温調装置13、上記検量成分気化装置14にそれぞれ送給すると、前記コア生成装置12で生成した前記コア3aが不活性ガス4によって当該コア生成装置12から搬送され、前記不活性ガス温調装置13で温調された不活性ガス4と共に前記被着装置16に送給されると共に、前記検量成分気化装置14で生成した前記検量成分3bの蒸気が不活性ガス4によって前記被着装置16に搬送されることにより、当該被着装置16の混合槽16aで前記コア3a(金等)と前記検量成分3b(アントラセン等)とが混合されながら冷却槽16bで冷却されることによって、当該コア3aに当該検量成分3bが被着した検量体3A(図2参照)が生成し、前記蒸気除去装置17で余剰の検量成分3bの蒸気が除去された後に、当該検量体3Aが前記分級器112に送給されるようになっているのである。
【0029】
ここで、前記コア生成装置12での前記電極の放電電圧調整及び放電周波数の少なくとも一方並びに前記調整バルブ15A,15Bでの不活性ガス4の流速調整により、前記コア3aの単位容積当りの粒子数を設定することができ、前記検量成分気化装置14での前記検量成分3bの加熱温度調整及び前記調整バルブ15Cでの不活性ガス4の流速調整により、当該検量成分3bの単位容積当りの蒸気濃度を設定することができ、前記不活性ガス温調装置13での不活性ガス4の温度調整及び前記調整バルブ15A,15Bでの不活性ガス4の流速調整により、前記コア3aに対する前記検量成分3bの被着量を設定することができる。
【0030】
このようなナノメータサイズの微細粒子のコア3aに検量成分3bを目的とする被着量で被着させて単位容積当り目的とする粒子数となった検量体3Aは、分級器112で分級された後に、粒子数計測装置113及び質量分析装置114の装置本体114aにそれぞれ送給されて、粒子数計測装置113によって単位容積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置114によってその成分を分析される。その分析結果を、前記検量体生成装置10で設定した当該検量体3Aの性状と対比することにより、迅速に校正することができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る微細粒子成分分析装置110によれば、ナノメータサイズの微細粒子2の成分を分析する場合でも、校正を迅速に行うことができる。
【0032】
[第二番目の実施形態]
本発明に係る微細粒子成分分析装置の第二番目の実施形態を図3,4に基づいて説明する。図3は、微細粒子成分分析装置の概略構成図、図4は、図1の検量体生成装置で生成する検量体の概略構造図である。なお、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0033】
図3に示すように、前記サンプリング装置111のガス送出口と前記分級器112のガス受入口との間には、検量体生成手段である検量体生成装置20が接続されており、当該検量体生成装置20は、以下のような構成となっている。
【0034】
図3に示すように、不活性ガス送給装置11のガス送出口は、コア生成装置12のガス受入口と、不活性ガス温調装置13のガス受入口と、例えばアントラセン等のような第一の検量成分3bを加熱気化して当該第一の検量成分3bの蒸気を発生させる第一の検量成分気化装置14のガス受入口と、例えばベンゾピレン等のような第二の検量成分3cを加熱気化して当該第二の検量成分3cの蒸気を発生させる第二の検量成分気化装置24のガス受入口とに、それぞれ調整バルブ15A〜15C,25Dを介して接続している。前記コア生成装置12の送出口及び前記検量成分気化装置14,24の送出口は、前記コア3aに前記検量成分3b,3cの蒸気を被着させて検量体3Bを生成させる被着装置16の混合槽16aの受入口にそれぞれ接続している。
【0035】
つまり、前述した第一番目の実施形態に係る微細粒子成分分析装置110においては、一つの検量成分気化装置14を備えた検量体生成装置10を適用したが、本実施形態に係る微細粒子成分分析装置120においては、二つの検量成分気化装置14,24を備えた検量体生成装置20を適用したのである。
【0036】
なお、本実施形態においては、不活性ガス送給装置11,検量成分気化装置14,24,調整バルブ15C,25C等により検量成分気化手段を構成している。
【0037】
このような本実施形態に係る微細粒子成分分析装置120において、分析結果を校正する場合には、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記検量体生成装置20を作動させることにより、ナノメータサイズの金属製(金等)の微細粒子のコア3aに前記検量成分3b(例えばアントラセン等),3c(例えばベンゾピレン等)をそれぞれ目的とする被着量で被着させた、すなわち、検量成分3b,3cをそれぞれ規定量有する検量体3B(図4参照)を単位容積当り目的とする粒子数で分級器112に送給する。
【0038】
具体的には、前記検量体生成装置20において、前記コア生成装置12を作動して金属(金等)製の電極で放電して、ナノメータサイズの金属(金等)の微細粒子のコア3aを生成させると共に、前記検量成分気化装置14,24を作動して検量成分3b(例えばアントラセン等),3c(例えばベンゾピレン等)を各々加熱して当該検量成分3b,3cの蒸気を各々発生させ、さらに、前記調整バルブ15A〜15C,25Dを調整して不活性ガス送給装置11から不活性ガス4を上記コア生成装置12、不活性ガス温調装置13、上記検量成分気化装置14,24にそれぞれ送給すると、前記コア生成装置12で生成した前記コア3aが不活性ガス4によって当該コア生成装置12から搬送され、前記不活性ガス温調装置13で温調された不活性ガス4と共に前記被着装置16に送給されると共に、前記検量成分気化装置14,24で各々生成した前記検量成分3b,3cの蒸気が不活性ガス4によって前記被着装置16に各々搬送されることにより、当該被着装置16の混合槽16aで前記コア3a(金等)と前記検量成分3b(アントラセン等),3c(ベンゾピレン等)とが混合されながら冷却槽16bで冷却されることによって、当該コア3aに当該検量成分3b,3cが被着した検量体3B(図4参照)が生成し、前記蒸気除去装置17で余剰の検量成分3b,3cの蒸気が除去された後に、当該検量体3が前記分級器112に送給されるようになっているのである。
【0039】
ここで、前記コア生成装置12での前記電極の放電電圧調整及び放電周波数の少なくとも一方並びに前記調整バルブ15A,15Bでの不活性ガス4の流速調整により、前記コア3aの単位容積当りの粒子数を設定することができ、第一の前記検量成分気化装置14での第一の前記検量成分3bの加熱温度調整及び前記調整バルブ15Cでの不活性ガス4の流速調整により、当該検量成分3bの単位容積当りの蒸気濃度を設定することができ、第二の前記検量成分気化装置24での第二の前記検量成分3cの加熱温度調整及び前記調整バルブ25Dでの不活性ガス4の流速調整により、当該検量成分3cの単位容積当りの蒸気濃度を設定することができ、前記不活性ガス温調装置13での不活性ガス4の温度調整及び前記調整バルブ15A,15Bでの不活性ガス4の流速調整により、前記コア3aに対する前記検量成分3b,3cの被着量を設定することができる。
【0040】
このようなナノメータサイズの微細粒子のコア3aに前記検量成分3b,3cをそれぞれ目的とする被着量で被着させて単位容積当り目的とする粒子数となった検量体3Bは、分級器112で分級された後に、粒子数計測装置113及び質量分析装置114の装置本体114aにそれぞれ送給されて、粒子数計測装置113によって単位容積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置114によってその成分を分析される。その分析結果を、前記検量体生成装置20で設定した当該検量体3Bの性状と対比することにより、迅速に校正することができる。
【0041】
つまり、前述した第一番目の実施形態においては、一種類の前記検量成分3bをコア3aに被着させた検量体3Aを生成させることにより、一種類の成分の校正を行うようにしたが、本実施形態においては、二種類の前記検量成分3b,3cをコア3aに被着させた検量体3Bを生成させることにより、二種類の成分の校正を同時にできるようにしたのである。
【0042】
したがって、本実施形態に係る微細粒子成分分析装置120によれば、前述した第一番目の実施形態に係る微細粒子成分分析装置110と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、二種類の成分の校正を同時にできるので、より迅速に校正を行うことができる。
【0043】
[他の実施形態]
なお、前述した第二番目の実施形態においては、前記検量成分気化装置14,24の送出口を同一の被着装置16の混合槽16aの受入口にそれぞれ接続することにより、前記検量成分3b,3cを混在化させてコア3aに被着させた検量体3Bを生成するようにしたが、他の実施形態として、例えば、図5に示すように、前記検量体生成装置20において、前記サンプリング装置111のガス送出口と前記分級器112のガス受入口との間と前記蒸気除去装置17との間に、さらに、被着装置36及び蒸気除去装置37を新たに介在させると共に、前記検量成分気化装置24を前記被着装置16に代えて新たな上記被着装置36の混合槽36aに接続して、不活性ガス送給装置11,不活性ガス温調装置13,調整バルブ15B,被着装置16,36等により被着手段を構成した検量体生成手段である検量体生成装置30を適用し、前記被着装置16において、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、前記検量成分3bをコア3aに被着させた検量体3Aを生成させて、前記蒸気除去装置17で余剰の上記検量成分3bの蒸気を除去した後、前記被着装置36において、前記検量成分3bを被着したコア3aに第二の前記検量成分3cをさらに被着させることにより、コア3aに第一の上記検量成分3bの層と第二の上記検量成分3cの層とを形成した検量体3Cを生成させ(図6参照)、前記蒸気除去装置37で余剰の上記検量成分3cの蒸気を除去してから、当該検量体3Cを前記分級器112に送給することにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、二種類の成分の校正を同時にできるようにすることも可能である。
【0044】
つまり、前述した第二番目の実施形態においては、第一,二の前記検量成分3b,3cをコア3aに同時に被着させて第一,二の上記検量成分3b,3cを一層として混在させた検量体3Bを生成させる、すなわち、第一,二の前記検量成分3b,3cの蒸気をコア3aに対して混合しながら冷却して被着することをまとめて同時に行うようにしたが、上述の他の実施形態においては、第一の前記検量成分3bをコア3aに被着させて当該検量成分3bの層を形成した後に第二の前記検量成分3cをさらに被着させて第一の上記検量成分3bの層上に第二の当該検量成分3cの層を個別に形成した二層の検量体3Cを生成させる、すなわち、第一,二の前記検量成分3b,3cの蒸気をコア3aに対して混合しながら冷却して被着することを当該検量成分3b,3cごとにそれぞれ個別に行うことも可能なのである。
【0045】
また、前述した第二番目の実施形態及び上述した他の実施形態においては、二種類の前記検量成分3b,3cをコア3aに被着させた検量体3B,3Cを生成させる場合について説明したが、さらに他の実施形態として、三種類以上の検量成分をコアに被着させた検量体を前述した第二番目の実施形態及び上述した他の実施形態の場合と同様にして生成させることも可能である。
【0046】
ここで、複数の検量成分の蒸気をコアと混合しながら冷却して被着するにあたって、これら検量成分ごとにそれぞれ個別に行う場合には、コアへの被着を先に行うほど高融点となるように検量成分の被着の順番を設定するようにする。
【0047】
また、前述した第一番目の実施形態においては、一つの検量体生成装置10を用いるようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記検量体生成装置10を複数用いて、各検量体生成装置10でそれぞれ異なる検量成分をコアに被着させた複数種の検量体を生成させることにより、複数種の成分の校正を同時にできるようにすることも可能である。
【0048】
しかしながら、前記検量体生成装置10を複数用いて複数種の成分の校正を同時に行うようにすると、検量成分の種類が増えるほどコアの数も増え、全体としての検量体の単位容積当りの粒子数が多くなってしまい、検量体が凝集等を生じてナノメータサイズの微細粒子ではなくなってしまうおそれがあるため、多数種の成分の校正を同時に行う場合には、前述した第二番目の実施形態等の場合のように、一つのコア3aに複数種の検量成分3b,3cを被着させた検量体3B,3C等を用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る微細粒子成分分析装置は、ナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合でも、校正を迅速に行うことができるので、例えば、自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する際に適用すると、極めて有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る微細粒子成分分析装置の第一番目の実施形態の概略構成図である。
【図2】図1の検量体生成装置で生成する検量体の構成図である。
【図3】本発明に係る微細粒子成分分析装置の第二番目の実施形態の概略構成図である。
【図4】図3の検量体生成装置で生成する検量体の構成図である。
【図5】本発明に係る微細粒子成分分析装置の他の実施形態の概略構成図である。
【図6】図5の検量体生成装置で生成する検量体の構成図である。
【図7】従来の微細粒子成分分析装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 サンプリングガス
2 微細粒子
3A〜3C 検量体
3a コア
3b,3c 検量成分
4 不活性ガス
5 レーザ光
10,20,30 検量体生成装置
11 不活性ガス送給装置
12 コア生成装置
13 不活性ガス温調装置
14,24 検量成分気化装置
15A〜15C,25D 調整バルブ
16,36 被着装置
16a,36a 被着槽
16b,36b 冷却槽
17,37 蒸気除去装置
110,120,130 微細粒子成分分析装置
111 サンプリング装置
112 分級器
113 粒子数計測装置
114 レーザイオン化飛行時間型質量分析装置
114a 装置本体
114b レーザ発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置であって、
前記ガスをサンプリングするガスサンプリング手段と、
前記ガスサンプリング手段でサンプリングされた前記ガス中から目的とする粒径の前記微細粒子を分級して送出する分級手段と、
前記分級手段からの前記微細粒子の成分を分析する分析手段と、
検量成分を規定量有する微細粒子の検量体を単位容積当り目的とする粒子数で生成させて前記分級手段へ送給する検量体生成手段と
を備えていることを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記検量体生成手段が、
金属の微細粒子のコアを単位容積当り目的とする粒子数で生成させるコア生成手段と、
前記検量成分の蒸気を単位容積当り目的とする濃度で生成させる検量成分気化手段と、
前記コア生成手段で生成した前記コアに前記検量成分の前記蒸気を目的とする被着量で被着させる被着手段と
を備えていることを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記検量体生成手段の前記コア生成手段が、
金属製の電極で放電することにより当該金属の前記コアを生成させて、不活性ガスにより当該コアを搬送するものであり、
前記電極の放電電圧及び放電周波数の少なくとも一方並びに前記不活性ガスの流速により前記コアの単位容積当りの粒子数を設定するものである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記金属が金である
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかにおいて、
前記検量体生成手段の前記検量成分気化手段が、
前記検量成分を加熱して当該検量成分を気化させて、不活性ガスにより当該検量成分の蒸気を搬送するものであり、
前記検量成分の加熱温度及び前記不活性ガスの流速により当該検量成分の前記蒸気の単位容積当りの濃度を設定するものである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかにおいて、
前記検量体生成手段の前記被着手段が、
前記コアと前記検量成分の前記蒸気とを混合しながら冷却するものであり、
前記不活性ガスの温度及び当該不活性ガスの流速により前記コアに対する前記検量成分の被着量を設定するものである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記検量体生成手段の前記検量成分気化手段が、
複数の前記検量成分を各々加熱して当該検量成分を各々気化させて、前記不活性ガスにより当該検量成分の前記蒸気を各々搬送するものであり、
各前記検量成分の加熱温度及び各前記不活性ガスの流速により各当該検量成分の各前記蒸気の単位容積当りの濃度を各々設定するものである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記検量体生成手段の前記被着手段が、
前記検量成分の前記蒸気を前記コアと混合しながら冷却して被着することを前記検量成分ごとにそれぞれ個別に行うものである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかにおいて、
前記分級手段が、静電式の分級器である
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかにおいて、
前記分析手段が、レーザイオン化飛行時間型の質量分析装置である
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−111756(P2008−111756A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295713(P2006−295713)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(501273886)独立行政法人国立環境研究所 (30)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】