説明

微細粒子成分分析装置

【課題】比較的低濃度の成分も確実に分析することができる微細粒子成分分析装置を提供する。
【解決手段】大気をサンプリングするサンプリング装置11と、サンプリング装置11でサンプリングされたサンプリングガス1中から目的とする粒径のナノメータサイズの微細粒子2を分級して送出する静電式の分級器12と、分級器12から送出された微細粒子2のうちの一部を吸着すると共に、吸着した当該微細粒子2の成分を送出する濃縮装置15と、分級器12からの微細粒子2の成分及び濃縮装置15からの微細粒子2の成分を分析するレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置14と、分級器12からの微細粒子2及び濃縮装置15からの微細粒子2の成分のいずれか一方を質量分析装置14に送給するように切り換える三方制御弁16A〜16Cを備えて微細粒子成分分析装置10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置に関し、特に、自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する場合に適用すると有効なものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する従来の微細粒子成分分析装置の一例の概略構成を図6に示す。
【0003】
図6に示すように、大気等からサンプルガス1をサンプリングするサンプリング装置111のガス送出口は、サンプルガス1中から目的とする粒径の微細粒子2を分級して送出する静電式の分級器112のガス受入口に接続している。分級器112の試料送出口は、単位容積当りの微細粒子2の数を計測する微細粒子数計測装置113の試料受入口と、微細粒子2の成分を分析するレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置114の装置本体114aの試料受入口とにそれぞれ接続している。なお、図7中、114bは、質量分析装置114の装置本体114a内にレーザ光5を照射するレーザ発振器である。
【0004】
このような従来の微細粒子成分分析装置110においては、サンプリング装置111が大気等からサンプルガス1をサンプリングすると、当該サンプルガス1が分級器112に送給されて、目的とするナノメータサイズの粒径の微細粒子2が分級され、微細粒子数計測装置113及び質量分析装置114の装置本体114aに送給されて、微細粒子数計測装置113によって単位体積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置114によってその成分を分析することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−288602号公報
【特許文献2】特開2004−219250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したような従来の微細粒子成分分析装置110においては、比較的低濃度の成分を質量分析装置114で分析することが非常に難しかった。
【0007】
このようなことから、本発明は、比較的低濃度の成分も確実に分析することができる微細粒子成分分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置であって、前記ガスをサンプリングするガスサンプリング手段と、前記ガスサンプリング手段でサンプリングされた前記ガス中から目的とする粒径の前記微細粒子を分級して送出する分級手段と、前記分級手段から送出された前記微細粒子のうちの一部を蓄積すると共に、蓄積した当該微細粒子の成分を送出する濃縮手段と、前記分級手段からの前記微細粒子の成分及び前記濃縮手段からの前記微細粒子の成分を分析する分析手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第二番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目の発明において、前記分級手段からの前記微細粒子及び前記濃縮手段からの前記微細粒子の成分のいずれか一方を前記分析手段に送給するように切り換える切換手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
第三番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目又は第二番目の発明において、前記濃縮手段が、前記微細粒子を吸着する吸着剤と、前記吸着剤を加熱する加熱手段と、前記吸着剤にキャリアガスを送給するキャリアガス送給手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第四番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第三番目の発明において、前記濃縮手段の前記加熱手段が、光線の輻射により加熱する光線輻射ヒータであることを特徴とする。
【0012】
第五番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第四番目の発明において、前記濃縮手段が、前記吸着剤と前記光線輻射ヒータとの間の雰囲気を更新する雰囲気更新手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
第六番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第四番目又は第五番目の発明において、前記濃縮手段の前記吸着剤を複数の規定温度に段階的に維持するように前記光線輻射ヒータを制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
第七番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第三番目から第六番目の発明のいずれかにおいて、前記吸着剤が、ガラスウール、表面をシラン処理したガラスビーズ、珪藻土系化合物のうちのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
第八番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目から第七番目の発明のいずれかにおいて、前記濃縮手段と前記分析手段との間に分離カラムを備えていることを特徴とする。
【0016】
第九番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目から第八番目の発明のいずれかにおいて、前記分級手段が、静電式の分級器であることを特徴とする。
【0017】
第十番目の発明に係る微細粒子成分分析装置は、第一番目から第九番目の発明のいずれかにおいて、前記分析手段が、レーザイオン化飛行時間型の質量分析装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る微細粒子成分分析装置によれば、ガス中の微細粒子の比較的高濃度の成分をリアルタイムに連続的に分析しつつ、ガス中の微細粒子の比較的低濃度の成分もリアルタイムに連続的に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る微細粒子成分分析装置の実施形態を図1〜3に基づいて説明する。図1は、微細粒子成分分析装置の概略構成図、図2は、図1の微細粒子成分分析装置の三方制御弁の切り換え説明図、図3は、図1の微細粒子成分分析装置の濃縮装置の温度タイムチャートである。
【0020】
図1に示すように、大気等からサンプルガス1をサンプリングするガスサンプリング手段であるサンプリング装置11のガス送出口は、サンプルガス1中から目的とする粒径の微細粒子2を分級して送出する分級手段である静電式の分級器12のガス受入口に接続している。分級器12の試料送出口は、単位容積当りの微細粒子数を計測する粒子数計測装置13の試料受入口と、微細粒子2の成分を分析する分析手段であるレーザイオン化飛行時間型の質量分析装置14の装置本体14aの試料受入口と、前記分級器12からの前記微細粒子2のうちの一部を蓄積すると共に、蓄積した当該微細粒子2の成分を送出する濃縮手段である濃縮装置15の試料受入口とにそれぞれ接続している。
【0021】
前記分級器12の試料送出口と前記質量分析装置14の装置本体14aの試料受入口との間は、三方制御弁16Aを介して連絡している。前記分級器12の試料送出口と前記濃縮装置15の試料受入口との間は、三方制御弁16Bを介して連絡している。前記濃縮装置15の試料送出口は、前記三方制御弁16Aの残りの口に三方制御弁16Cを介して接続している。この三方制御弁16Cの残りの口は、系外に連絡している。
【0022】
前記濃縮装置15は、ケーシング15aと、ケーシング15a内に配設されて前記微細粒子2を流通させるキャピラリ管15bと、キャピラリ管15b内に充填されて当該微細粒子2を吸着する吸着剤15cと、キャピラリ管15bを包囲するようにケーシング15a内に配設されて赤外線等の光線の輻射により前記吸着剤15cを加熱する加熱手段である光線輻射ヒータ15dと、前記三方制御弁16Bの残りの口に接続されて窒素ガス等のキャリアガス3を前記キャピラリ管15b内に流通させるキャリアガス送給手段であるキャリアガス送給装置15eと、ケーシング15a内のキャピラリ管15bと光線輻射ヒータ15dとの間の雰囲気を更新させるように当該間に二酸化炭素ガス等の雰囲気ガス4を流通させる雰囲気更新手段である雰囲気ガス送給装置15fとを備えている。
【0023】
前記濃縮装置15の試料送出口の近傍には、温度検出手段である温度センサ18が配設されている。この温度センサ18は、制御手段である制御装置19の入力部に電気的に接続している。この制御装置19の出力部には、前記濃縮装置15の光線輻射ヒータ15d,キャリアガス送給装置15e,雰囲気ガス供給装置15f、及び、前記三方制御弁16A〜16Cがそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置19は、予め入力されたタイムチャート及び上記温度センサ18からの情報に基づいて、上記手段15d〜15f,16A〜16Cをそれぞれ制御するようになっている(詳細は後述する)。
【0024】
また、図1中、14bは、質量分析装置14の装置本体14aにレーザ光5を照射するレーザ発振器である。なお、本実施形態では、前記三方制御弁16A〜16C等により、切換手段を構成している。
【0025】
このような本実施形態に係る微細粒子成分分析装置10の作動を次に説明する。
【0026】
〈高濃度成分分析工程〉
制御装置19は、当初、図2Aに示すように、分級器12の試料送出口と質量分析装置14の装置本体14aの試料受入口との間のみを連絡させるように前記三方制御弁16Aを調整し、分級器12の試料送出口と濃縮装置15の試料受入口との間のみを連絡させるように前記三方制御弁16Bを調整し、濃縮装置15の試料送出口と系外との間のみを連絡させるように前記三方制御弁16Cを調整する。
【0027】
そして、サンプリング装置11が大気からサンプルガス1をサンプリングすると、当該サンプルガス1が分級器12に送給されて、目的とするナノメータサイズの粒径の微細粒子2が分級され、微細粒子数計測装置13、質量分析装置14の装置本体14a、前記濃縮装置15にそれぞれ送給されて、微細粒子数計測装置13によって単位体積当りの微細粒子数を計測されると共に、質量分析装置14によってその成分を分析され、さらに、濃縮装置15の前記キャピラリ管15b内を流通することにより、前記吸着剤15cに吸着捕集される。
【0028】
これにより、サンプルガス1中の微細粒子2の比較的高濃度で存在する成分を分析しながら、前記吸着剤15cに微細粒子2を吸着捕集して前記濃縮装置15に蓄積することができる(図3中、第1工程)。
【0029】
〈低濃度成分分析工程〉
このようにして前記濃縮装置15の吸収剤15cに前記微細粒子2を所定時間(例えば、20分)吸着すると、前記制御装置19は、予め入力されたタイムチャートに基づいて、図2Bに示すように、濃縮装置15のキャリアガス送給装置15eとキャピラリ管15bとの間のみを連絡させるように前記三方制御弁16Bを調整し、濃縮装置15の試料送出口と質量分析装置14の装置本体14aの試料受入口との間のみを連絡させるように前記三方制御弁16A,16Cを調整する。
【0030】
次に、前記制御装置19は、前記タイムチャート及び前記温度センサ18からの情報に基づいて、前記濃縮装置15のキャピラリ管15b内の吸着剤15cにキャリアガス3を流通させるように前記キャリアガス送給装置15eを作動させると共に、ケーシング15a内のキャピラリ管15bと光線輻射ヒータ15dとの間に雰囲気ガス4を流通させるように前記雰囲気ガス送給装置15fを作動させ、さらに、前記吸着剤15cを第一の規定温度T1(例えば100℃)に即時に到達させるように(約5℃/秒以上)前記光線輻射ヒータ15dを作動させる(図3中、第2A工程)。
【0031】
すると、前記濃縮装置15の前記吸着剤15cに吸着して蓄積された微細粒子2において、当該温度T1で当該吸着剤15cから離脱してしまう成分が、キャリアガス3と共に当該濃縮装置15から濃縮された状態で送出され、前記質量分析装置14の装置本体14a内に高濃度で送給される。これにより、サンプルガス1中の微細粒子2の比較的低濃度で存在する成分のうち、上記温度T1で上記吸着剤15cから離脱する成分を分析することができる。
【0032】
続いて、前記制御装置19は、前記吸着剤15cを前記第一の規定温度T1に所定時間(例えば2分間)維持すると、前記タイムチャート及び前記温度センサ18からの情報に基づいて、当該吸着剤15cを第二の規定温度T2(例えば160℃)に即時に到達させるように(約5℃/秒以上)前記光線輻射ヒータ15dを作動させる(図3中、第2B工程)。
【0033】
すると、前記吸着剤15cに吸着して蓄積された微細粒子2において、当該温度T2で当該吸着剤15cから離脱してしまう成分が、キャリアガス3と共に当該濃縮装置15から濃縮された状態で送出され、前記質量分析装置14の装置本体14aに高濃度で送給される。これにより、サンプルガス1中の微細粒子2の比較的低濃度で存在する成分のうち、上記温度T2で上記吸着剤15cから離脱する成分を分析することができる。
【0034】
さらに、前記制御装置19は、前記吸着剤15cを前記第二の規定温度T2に所定時間(例えば2分間)維持すると、前記タイムチャート及び前記温度センサ18からの情報に基づいて、当該吸着剤15cを第三の規定温度T3(例えば250℃)に即時に到達させるように(約5℃/秒以上)前記光線輻射ヒータ15dを作動させる(図3中、第2C工程)。
【0035】
すると、前記吸着剤15cに吸着して蓄積された微細粒子2において、当該温度T3で当該吸着剤15cから離脱してしまう成分が、キャリアガス3と共に当該濃縮装置15から濃縮された状態で送出され、前記質量分析装置14の装置本体14aに高濃度で送給される。これにより、サンプルガス1中の微細粒子2の比較的低濃度で存在する成分のうち、上記温度T3で上記吸着剤15cから離脱する成分を分析することができる。
【0036】
このように、前記制御装置19は、前記吸着剤15cを前記第三の規定温度T3に所定時間(例えば2分間)維持すると、前記タイムチャート及び前記温度センサ18からの情報に基づいて、前記光線輻射ヒータ15dの作動を停止することにより、前記吸着剤15cを常温(約30℃以下程度)に即時に到達させるように冷却(約5℃/秒以上)した後、前記濃縮装置15のキャピラリ管15b内のキャリアガス3の流通を停止させるように前記キャリアガス送給装置15eの作動を停止させると共に、ケーシング15a内のキャピラリ管15bと光線輻射ヒータ15dとの間の雰囲気ガス4の流通を停止させるように前記雰囲気ガス送給装置15fの作動を停止させる(図3中、第2A工程)。
【0037】
そして、前記制御装置19は、図2Aに示したように、前記三方制御弁16A〜16Cを当初の状態に戻すように当該三方制御弁16A〜16Cを調整することにより、サンプルガス1中の微細粒子2の比較的高濃度で存在する成分を分析しながら、前記吸着剤15cに微細粒子2を吸着捕集して前記濃縮装置15に蓄積することを再び行うようにする(図3中、第1工程)。
【0038】
引き続き、前記制御装置19は、上述した制御を繰り返して行う。これにより、微細粒子成分分析装置10は、大気中の微細粒子2の高濃度成分及び低濃度成分を分析することができる。
【0039】
したがって、本実施形態に係る微細粒子成分分析装置10によれば、大気中の微細粒子2の比較的高濃度の成分をリアルタイムに連続的に分析しつつ、大気中の微細粒子2の比較的低濃度の成分もリアルタイムに連続的に分析することができる。
【0040】
また、前記制御装置19が、前記濃縮装置15の前記吸着剤15cを前記第一〜三の規定温度T1〜T3に段階的に維持するように前記光線輻射ヒータ15dを制御することから、当該吸着剤15cに吸着している微細粒子2の成分を当該吸着剤15cからの離脱温度に応じて順次送り出すことができ、前記分析装置14での成分分析を順次に行うことができるので、分析の容易化を図ることができる。
【0041】
また、前記濃縮装置15が、赤外線等の光線の輻射により加熱する光線輻射ヒータ15dで前記吸着剤15cを加熱するようになっていることから、例えば電熱線等のように、目的とする温度にまで自身が加熱しなければ加熱対象を目的とする温度に加熱できない伝熱ヒータの昇温速度(約1〜2℃/秒)よりも速い昇温速度(約5℃/秒以上)で加熱することができ、前記吸着剤15cを前記規定温度T1〜T3に即時に到達させることができるので、前記吸着剤15cに蓄積した成分を各前記規定温度T1〜T3において当該吸着剤15cから一括的に離脱させて濃縮した状態で送出することができ、前記分析装置14での当該成分の分析能の低下を抑制することができる。
【0042】
また、前記濃縮装置15が、キャピラリ管15bと光線輻射ヒータ15dとの間に雰囲気ガス4を流通させて当該間の雰囲気を更新する雰囲気ガス供給装置15eを備えていることから、当該間の雰囲気の蓄熱による吸着剤15cの昇温を抑制することができるので、当該吸着剤15cを前記規定温度T1〜T3に維持することが容易にでき、当該吸着剤15cから離脱する成分のコントロールを容易に行うことができる。
【0043】
ところで、前記濃縮装置15の前記吸着剤15cとしては、ガラスウールや、表面をシラン処理したガラスビーズ(例えば、ジーエルサイエンス株式会社製「Flusin(商品名) GH(形式名)」等)や、シリカやアルミナ等からなる珪藻土系化合物(例えば、ジーエルサイエンス株式会社製「Uniport(登録商標) HP(形式名)」等)等を挙げることができる。
【0044】
ここで、表面をシラン処理したガラスビーズ(ジーエルサイエンス株式会社製「Flusin(商品名) GH(形式名)」)において吸着した各種成分の加熱離脱特性を図4Aに示し、珪藻土系化合物(ジーエルサイエンス株式会社製「Uniport(登録商標) HP(形式名)」)において吸着した各種成分の加熱離脱特性を図4Bに示す。
【0045】
図4に示すように、表面をシラン処理したガラスビーズ及び珪藻土化合物においては、フルオレン,ジベンゾチオフェン,フェナントレン,アントラセン,フルオランテン,ピレンを100℃以上ですべて離脱させることができ、クリセン,ベンゾ[e]ピレン,ベンゾ[a]ピレンを160℃以上ですべて離脱させることができ、ペリレン,ベンゾ[ghi]ペリレンを250℃以上ですべて離脱させることができ、広範囲にわたる沸点の環状化合物をほとんどすべて回収することができるので、ガラスウールも含めて、非常に好ましい。
【0046】
なお、他の実施形態として、例えば、図5に示すように、濃縮装置15の試料送出口と前記三方制御弁16Cとの間に分離カラム17を設けることにより、当該濃縮装置15から送出されてきた成分をさらに分離して各成分ごとに前記分析装置14で分析するようにすれば、分析の容易化をさらに図ることが可能となる。
【0047】
ここで、上記分離カラム18の充填材としては、表面をシラン処理したガラスビーズ(例えば、ジーエルサイエンス株式会社製「Flusin(商品名) GH(形式名)」等)や、シリカやアルミナ等からなる珪藻土系化合物(例えば、ジーエルサイエンス株式会社製「Uniport(登録商標) HP(形式名)」等)等が挙げられる。
【0048】
また、本実施形態では、前記濃縮装置15の前記吸着剤15cを前記第一〜三の規定温度T1〜T3に段階的に維持するように前記光線輻射ヒータ15dを制御するようにしたが、規定温度及び段階数は、吸着剤の種類や微細粒子の成分の種類等に応じて適宜設定され得るものである。
【0049】
しかしながら、前記吸着剤15cが、ガラスウール、表面をシラン処理したガラスビーズ、珪藻土系化合物のうちのいずれかであると、図4に示した通り、上記化合物を適切な段階数及び温度ですべて離脱させることができるので、自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する際に極めて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る微細粒子成分分析装置は、ガス中の微細粒子の比較的高濃度の成分をリアルタイムに連続的に分析しつつ、ガス中の微細粒子の比較的低濃度の成分もリアルタイムに連続的に分析することができるので、例えば、自動車や焼却炉等から排出された排ガス等により大気中に浮遊するナノメータサイズの微細粒子の成分を分析する際に適用すると、極めて有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る微細粒子成分分析装置の実施形態の概略構成図である。
【図2】図1の微細粒子成分分析装置の三方制御弁の切り換え説明図である。
【図3】図1の微細粒子成分分析装置の濃縮装置の温度タイムチャートである。
【図4】吸着剤の吸着成分の離脱温度と回収率との関係を表すグラフであり、Aが、表面をシラン処理したガラスビーズの場合、Bが珪藻土系化合物の場合である。
【図5】本発明に係る微細粒子成分分析装置の他の実施形態の要部の概略構成図である。
【図6】従来の微細粒子成分分析装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 サンプリングガス
2 微細粒子
3 キャリアガス
4 雰囲気ガス
5 レーザ光
10 微細粒子成分分析装置
11 サンプリング装置
12 分級器
13 粒子数計測装置
14 レーザイオン化飛行時間型質量分析装置
14a 装置本体
14b レーザ発振器
15 濃縮装置
15a ケーシング
15b キャピラリ管
15c 吸着剤
15d 光線輻射ヒータ
15e キャリアガス送給装置
15f 雰囲気ガス送給装置
16A〜16C 三方制御弁
17 分離カラム
18 温度センサ
19 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中の微細粒子の成分を分析する微細粒子成分分析装置であって、
前記ガスをサンプリングするガスサンプリング手段と、
前記ガスサンプリング手段でサンプリングされた前記ガス中から目的とする粒径の前記微細粒子を分級して送出する分級手段と、
前記分級手段から送出された前記微細粒子のうちの一部を蓄積すると共に、蓄積した当該微細粒子の成分を送出する濃縮手段と、
前記分級手段からの前記微細粒子の成分及び前記濃縮手段からの前記微細粒子の成分を分析する分析手段と
を備えていることを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記分級手段からの前記微細粒子及び前記濃縮手段からの前記微細粒子の成分のいずれか一方を前記分析手段に送給するように切り換える切換手段を備えている
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記濃縮手段が、
前記微細粒子を吸着する吸着剤と、
前記吸着剤を加熱する加熱手段と、
前記吸着剤にキャリアガスを送給するキャリアガス送給手段と
を備えていることを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記濃縮手段の前記加熱手段が、光線の輻射により加熱する光線輻射ヒータである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記濃縮手段が、
前記吸着剤と前記光線輻射ヒータとの間の雰囲気を更新する雰囲気更新手段を備えている
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
前記濃縮手段の前記吸着剤を複数の規定温度に段階的に維持するように前記光線輻射ヒータを制御する制御手段を備えている
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかにおいて、
前記吸着剤が、ガラスウール、表面をシラン処理したガラスビーズ、珪藻土系化合物のうちのいずれかである
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかにおいて、
前記濃縮手段と前記分析手段との間に分離カラムを備えている
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかにおいて、
前記分級手段が、静電式の分級器である
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかにおいて、
前記分析手段が、レーザイオン化飛行時間型の質量分析装置である
ことを特徴とする微細粒子成分分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−111757(P2008−111757A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295717(P2006−295717)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】