微細結晶−アモルファス混在金合金およびめっき皮膜、そのためのめっき液およびめっき皮膜形成方法
【課題】電気特性及び機械特性に優れた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜およびそのめっき方法を提供する。
【解決手段】結晶相の体積分率で10〜90%となるよう微細結晶相とアモルファス相を混在させることにより、結晶構造とアモルファス構造の利点を兼ね備えた物性を得る。微細結晶の平均粒径は30nm以下、微細結晶の体積分率は10〜90%、ヌープ硬度はHk180以上、比抵抗は200μΩ・cm以下であることを特徴とする。金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度や耐摩耗性が向上したものであり、コネクタ、リレー等の電気・電子部品の接点材料として有用である。
【解決手段】結晶相の体積分率で10〜90%となるよう微細結晶相とアモルファス相を混在させることにより、結晶構造とアモルファス構造の利点を兼ね備えた物性を得る。微細結晶の平均粒径は30nm以下、微細結晶の体積分率は10〜90%、ヌープ硬度はHk180以上、比抵抗は200μΩ・cm以下であることを特徴とする。金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度や耐摩耗性が向上したものであり、コネクタ、リレー等の電気・電子部品の接点材料として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器部品の端子のめっき皮膜として有用であり、電気特性及び機械特性に優れた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、この微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を成膜できる電気めっき液、及びこの電気めっき液を用いた電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品のコネクタ、電気機械式小型リレー、プリント配線板などにおいて、特に、高信頼性を要求される部位の電気接点材料として、現在、硬質金めっき皮膜と呼ばれる金めっき皮膜が広く使用されている。硬質金めっき皮膜は、金にコバルト、ニッケル等が添加されたもので、金本来の良好な導電性や化学的安定性を低下させることなく皮膜の硬度を向上させたものである。この硬質金めっき皮膜は、金の微細結晶(20〜30nm)が集合した微細構造を有しており、この微細構造により、接点材料に要求される耐摩耗性を得るために最低限必要とされる硬さ(ヌープ硬さでHk170程度)が得られるものと考えられる。
【0003】
一方、近年の電子部品の小型化に伴い、電気接点のサイズも微小化しているが、このような微小接点において形成されるめっき皮膜も小サイズ化、薄膜化され、高い摩耗性を得るために更なる硬度の向上が求められている。
【0004】
また、近い将来には、接点のサイズが上述した硬質金めっき皮膜の微細結晶のサイズに近づくものと考えられ、このような微細な接点上に、上述したような硬質金めっき皮膜を形成した場合、皮膜を構成する微細結晶の絶対数が少なくなるために、現在適用されている程度の大きさの接点上に硬質金めっき皮膜を形成した場合と同等の耐久性が得られなくなることが予想される。そこで本発明者らは微細結晶を有さない均質なアモルファス相で形成されたアモルファス金合金めっき皮膜を発明した(例えば、特許文献6〜8)。しかしながら、金本来の良好な比抵抗や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度が向上したものを得るという目的においては、なお改善の余地があるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。
【特許文献1】特開昭60−33382号公報
【特許文献2】特開昭62−290893号公報
【特許文献3】特許第3452724号公報
【特許文献4】特許第3983207号公報
【特許文献5】特開2004−300483号公報
【特許文献6】特開2006−241594号公報
【特許文献7】特開2007−92157号公報
【特許文献8】特開2007−169706号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川合慧,「金−ニッケル合金メッキの析出構造の研究」,金属表面技術,1968年,Vol.19,No.12,p.487−491
【非特許文献2】清水保雄 他1名,「電析Au−Ni合金の微細構造と相に関する電子顕微鏡的研究」,金属表面技術,1976年,Vol.27,No.1,p.20−24
【非特許文献3】渡辺徹著,「ファインプレーティング めっき膜の構造制御技術とその解析法」,技術情報協会,2002年2月,p256−262
【非特許文献4】小見崇 他2名,「Ni−W合金めっき皮膜の高W含有率化と皮膜特性」,金属表面技術,1988年,Vol.39,No.12,p.809−812
【非特許文献5】渡辺徹,「めっき法による非晶質合金の形成機構」,表面技術,1989年,Vol.40,No.3,p.21−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、良好な導電性や化学的安定性を有しつつ硬度が向上した耐摩耗性に優れた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、この微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を成膜できる電気めっき液、及びこの電気めっき液を用いた電気めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねる中で、微小接点でも硬度を下げることがないめっき皮膜の微細構造としては、結晶性の構造よりもアモルファス相構造の方が、金本来の良好な比抵抗や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度や耐摩耗性を向上せしめることができるものの、電子の平均自由行程が結晶皮膜に比べて短いため、電気伝導性が低く、また内部応力によりめっき膜にクラックが発生しやすくなることも予想した上で研究を進めたところ、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩を所定濃度で含有し、好ましくは更に、有機酸、無機酸又はその塩等の錯化剤とアンモニアまたはアンモニウムイオンを含有する液安定性の良好な電気めっき液を用いて電気めっきすることにより、驚くべきことに微細結晶相とアモルファス相を混在して形成された微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜が得られること、およびこの膜が、金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上有用な程度に保ちつつ、硬度が向上したものとなることを発見し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されてなることを特徴とする微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、(2)シアン化金塩を金基準で0.0001〜0.4mol/dm3の濃度、ニッケル塩をニッケル基準で0.001〜0.5mol/dm3の濃度、および/またはコバルト塩をコバルト基準で0.001〜0.5mol/dm3の濃度で含有し、好ましくは更に、有機酸、無機酸又はその塩等の錯化剤を0.001〜2.0mol/dm3の濃度、アンモニアまたはアンモニウムイオンを0.001〜5.0mol/dm3の濃度含有することを特徴とする液安定性の良好な電気めっき液、並びに(3)この電気めっき液を用いて被めっき物上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を形成することを特徴とする電気めっき方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されており、その結果金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上有用な程度に保ちつつ、硬度が向上したものであることから、リレー等の電気・電子部品の接点材料として有用である。一般的に微細結晶からなる結晶膜の場合、構成する結晶粒の大きさが小さくなると、ある限界(例えばニッケルの場合は4nm位)までは硬度が増大するが、さらに結晶粒が小さくなると硬度が低下してしまうことが知られている。金においても一般論が適用できるかどうかは実測した例がないが、金において、初めて微結晶−アモルファス混在結晶膜を実現した本発明によって、微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜が、そのような問題点をすべて解決し、かつ電気伝導性も高く、クラックの発生もしにくいため、コネクタやリレー等の電気・電子部品の微小接点材料として十分に適用可能なものであることを、初めて確認したのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1,2,3,4,5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜及び比較例1,2で得られた金合金めっき皮膜のXRDパターンを示す図である。
【図2】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(10万倍)を示す図である。
【図3】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図4】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図5】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(50万倍)を示す図である。
【図6】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図7】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図8】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(30万倍)を示す図である。
【図9】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図10】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図11】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(20万倍)を示す図である。
【図12】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(70万倍)を示す図である。
【図13】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図14】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(40万倍)を示す図である。
【図15】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図16】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図17】比較例1で得られたアモルファス金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図18】比較例1で得られたアモルファス金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されている。
【0013】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、金にニッケルおよび/またはコバルトを含むものであると共に、その微細構造は、微細結晶相とアモルファス相を混在した構造であり、これらの特徴により、純アモルファス構造のアモルファス金合金めっき皮膜と比べて良好な比抵抗値及び化学的安定性と共に、高い硬度が達成される。このような微細結晶相とアモルファス相を混在した構造は、X線回折(XRD)パターン、透過型電子顕微鏡(TEM)像及び透過型高エネルギー電子線回折(THEED)像により確認することができる。
【0014】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、高硬度を維持する観点から微細結晶の平均粒径が30nm以下、特に20nm以下、更に15nm以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、金本来の特性(良好な比抵抗値や化学的安定性)もしくは従来の金又は金合金めっき皮膜にはない高い硬度を維持する観点から、微細結晶の体積分率が10〜90%、特に15〜60%であることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、ヌープ硬さがHk180以上、特にHk220以上、更にはHk300以上、とりわけHk350以上、また、比抵抗が200μΩ・cm以下、特に150μΩ・cm以下、とりわけ100μΩ・cm以下という、優れた硬度と比抵抗を有する微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を得ることができる。また、本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、300℃以下のアニール処理(1時間保持)では、微細結晶相とアモルファス相を混在した構造が変化する(即ち、結晶化が起こって、微細結晶の平均粒径や体積分率が増大する)ことはない。
【0017】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、その優れた比抵抗値及び化学的安定性と共に、従来の金又は金合金めっき皮膜にはない高い硬度を有するという特徴から、電磁開閉器、ブレーカー、サーモスタット、リレー、タイマー、各種スイッチ、プリント配線基板などの電気・電子部品の端子等の導通接点として有効である。
【0018】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、組成式:Au100−x−yMx Cy(ただし、AuまたはMが主成分であり不可避不純物が含有されても良く、MはNiおよび/またはCoであり、Cは炭素である。1原子%≦x≦80原子%、1原子%≦y≦30原子%)で表すことができる。
【0019】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩を含有する電気めっき液を用いた電気めっきにより形成することができる。
【0020】
この電気めっき液にはシアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩が含まれるが、シアン化金塩として具体的には、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金リチウムなど、ニッケル塩として具体的には、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルなど、コバルト塩として具体的には、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどが挙げられる。めっき液中のシアン化金塩濃度は金基準で0.0001〜0.4mol/dm3、好ましくは0.001〜0.2mol/dm3、より好ましくは0.01〜0.1mol/dm3、ニッケル塩濃度はニッケル基準で0.001〜0.5mol/dm3、好ましくは0.01〜0.2mol/dm3、コバルト塩濃度はコバルト基準で0.001〜0.5mol/dm3、好ましくは0.01〜0.2mol/dm3である。めっき液中の金とニッケルおよび/またはコバルトの比率〔(Ni+Co)/Au〕は、モル比として好ましくは0.01〜300、より好ましくは1〜30の範囲である。
【0021】
また、この電気めっき液は、更に錯化剤を含有することが好ましい。この錯化剤としては錯化作用及びpH緩衝作用を有する有機酸、無機酸又はその塩が挙げられ、有機酸、無機酸及びその塩としてはくえん酸、酒石酸、りんご酸、ピロりん酸、りん酸、スルファミン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。めっき液中の錯化剤の濃度は0.001〜2.0mol/dm3、特に0.01〜1.0mol/dm3、とりわけ0.1〜0.3mol/dm3であることが好ましい。めっき液中の錯化剤とニッケルおよび/またはコバルトの比率〔錯化剤/(Ni+Co)〕は、モル比として好ましくは0.01〜100、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0022】
また、この電気めっき液は、更にアンモニアまたはアンモニウムイオンを含有することが好ましい。アンモニアまたはアンモニウムイオンとして具体的には、アンモニア水、硫酸アンモニウム、錯化剤のアンモニウム塩などが挙げられる。めっき液中のアンモニアまたはアンモニウムイオンの濃度は0.001〜5.0mol/dm3、特に0.01〜2.0mol/dm3であることが好ましい。このアンモニアは、結晶相の平均粒径、微細結晶(またはアモルファス)の体積分率といった、めっき膜の結晶状態、めっき浴の安定性に大きく関与する。
【0023】
なお、この電気めっき液のpHは3〜11、特にpH5〜9、とりわけpH6前後が好ましい。pH調整には、アンモニア水、水酸化カリウムなどの従来公知のpH調整剤を用いることができる。
【0024】
さらに、この電気めっき液には、めっき膜の膜物性(微細結晶の体積分率および平均粒径、XRDパターンのピーク半値幅、ヌープ硬さ、比抵抗)および膜組成に大きな影響を与えない限り、必要に応じて、光沢性向上、ピット防止、導電性付与、緩衝性付与、使用可能な電流密度範囲拡大、析出速度促進、耐熱性向上、濡れ性改善などの目的で界面活性剤、溶剤などの各種添加剤を含有できる(例えば、特開平7−11476号公報、特開2004−76026号公報、特開2006−37164号公報を参照)。
【0025】
電気めっき条件は、特に限定されるものではないが、めっき温度は20〜95℃、特に50〜90℃が好適である。陰極電流密度もめっき液の組成により変わり、特に限定されるものではないが、低電流密度域(例えば1mA/cm2以上10mA/cm2未満)及び高電流密度域(例えば10mA/cm2を超え200mA/cm2以下)の両方で微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を得ることができる。また、アノードには白金等の不溶性アノードを用いることができる。また、ニッケルおよび/またはコバルトをアノードとして用いてもよい。一方、被めっき物としては、電気配線などに用いられる銅、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。この金属材料は、金属基材又は非金属基材上に下地層として形成したものであってもよい。なお、撹拌の有無は問わないが、撹拌下でめっきすることが好ましく、また、パルス電流により電流を印加してもよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例において、各分析、測定の方法及び条件は、以下のとおりである。
【0027】
結晶性、結晶粒径
理学電機社製 RINT2100‐Ultima+による:XRD法 CuKα(40kV/40mA)
または、日立ハイテクノロイジーズ社製 HF−2200による:TEM及びTHEED法 加速電圧200V 明視野像
体積分率
日立ハイテクノロイジーズ社製 HF−2200による:TEM法及びTHEED法 加速電圧200V 明視野像
金属組成
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 SEA5100による:EDXRF法
非金属元素測定
堀場製作所社製 EMIA−920V、米国LECO社製 TC−436による
ヌープ硬さ
JIS Z 2251に準じて測定:荷重5gf 荷重保持時間30秒 銅板上に形成された30μm厚みのめっき皮膜で測定した
比抵抗
共和理研社製 K−705RSによる:JIS K 7194に準じて測定(四探針法)
【0028】
[実施例1]
KAu(CN)2を0.035mol/dm3、NiSO4・6H2Oを0.076mol/dm3、くえん酸三アンモニウムを0.21mol/dm3含有し、KOHおよび硫酸によりpHを6に調整した電気めっき液を用い、温度70℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は激しく撹拌した。
【0029】
得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図2〜4に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は50%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が41.2原子%、ニッケルが46.0原子%、非金属元素として炭素が12.8原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk347、比抵抗は89μΩ・cmであった。
【0030】
[実施例2]
n−プロパノールを20voL%添加した以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図5〜7に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は50%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が48.1原子%、ニッケルが38.1原子%、非金属元素として炭素が13.8原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk348、比抵抗は89μΩ・cmであった。
【0031】
[実施例3]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を1.2mol/dm3とし、電流密度1mA/cm2(通電時間50秒)と10mA/cm2(通電時間5秒)で間髪入れずに交互に電解めっきした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図8〜10に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。定電流めっきの場合は電流密度1mA/cm2で結晶相のみ、10mA/cm2でアモルファス相のみが得られた。この結果から、パルスめっきで得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は60%であった。一方、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が47.4原子%、ニッケルが47.0原子%、非金属元素として炭素が5.6原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk222、比抵抗は57μΩ・cmであった。
【0032】
[実施例4]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を1.2mol/dm3、電流密度を50mA/cm2とした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られたアモルファス金合金めっき皮膜を、アニール温度(保温温度)400℃、昇温速度10℃/分、保温1時間、大気雰囲気下でアニール処理しためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図11〜13に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は15nmであり、微細結晶相の体積分率は60%であった。
【0033】
[実施例5]
KAu(CN)2を0.035mol/dm3、CoSO4・7H2Oを0.076mol/dm3、くえん酸・H2Oを0.1mol/dm3含有し、アンモニア濃度を0.44mol/dm3とし、KOHおよび硫酸によりpHを6に調整した電気めっき液を用い、温度70℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は激しく撹拌した。
【0034】
得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図14〜16に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は5nmであり、微細結晶相の体積分率は15%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さを測定した。金属元素として金が36.4原子%、コバルトが40.6原子%、非金属元素として炭素が23.0原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk180であった。
【0035】
[比較例1]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を0.46mol/dm3とした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図17〜18に示す。XRDパターンの2θ=40度付近にはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像にはアモルファス特有の不規則構造が確認でき、結晶粒界や結晶縞のような規則的構造は確認できなかった。そして、THEEDパターンにはアモルファス特有のハローリングが確認できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶を有さない均質なアモルファス構造をとっていることがわかる。また、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が15.2原子%、ニッケルが67.5原子%、非金属元素として炭素が17.3原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk435、比抵抗は251μΩ・cmであった。
【0036】
[比較例2]
KAu(CN)2を0.04mol/dm3、NiSO4・6H2Oを0.0085mol/dm3、くえん酸・H2Oを0.5mol/dm3、KOHを0.7mol/dm3含有し、硫酸によりpHを3.5に調整した電気めっき液を用い、温度30℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に硬質金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は緩やかに撹拌した。
【0037】
得られた硬質金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に示す。XRDパターンの2θ=38度付近にはAu(111)由来の鋭いピークが確認できる。また、TEM像とTHEEDパターンからも結晶であることを確認した。この結果から、得られためっき皮膜は、アモルファス相を有さない多結晶構造をとっていることがわかる。また、XRDパターンから算出した結果、結晶の平均粒径は13nmであった。一方、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が96.5原子%、ニッケルが0.77原子%、非金属元素として炭素が2.7原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk160、比抵抗は17μΩ・cmであった。
【0038】
なお、図1に示したXRDパターンにおいて、2θ=50°付近に見られる鋭いピークは基板の銅によるものである。
【0039】
また、実施例1の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のヌープ硬さは、金めっき皮膜の中では硬度が高いとされるアディティブフリーハードゴールド(AFHG)、ニッケルハードゴールド(NiHG)、CoHGのヌープ硬さがHk200に届かない程度であるのに対し、それらの2〜3倍に相当する高い硬度を有していることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器部品の端子のめっき皮膜として有用であり、電気特性及び機械特性に優れた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、この微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を成膜できる電気めっき液、及びこの電気めっき液を用いた電気めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品のコネクタ、電気機械式小型リレー、プリント配線板などにおいて、特に、高信頼性を要求される部位の電気接点材料として、現在、硬質金めっき皮膜と呼ばれる金めっき皮膜が広く使用されている。硬質金めっき皮膜は、金にコバルト、ニッケル等が添加されたもので、金本来の良好な導電性や化学的安定性を低下させることなく皮膜の硬度を向上させたものである。この硬質金めっき皮膜は、金の微細結晶(20〜30nm)が集合した微細構造を有しており、この微細構造により、接点材料に要求される耐摩耗性を得るために最低限必要とされる硬さ(ヌープ硬さでHk170程度)が得られるものと考えられる。
【0003】
一方、近年の電子部品の小型化に伴い、電気接点のサイズも微小化しているが、このような微小接点において形成されるめっき皮膜も小サイズ化、薄膜化され、高い摩耗性を得るために更なる硬度の向上が求められている。
【0004】
また、近い将来には、接点のサイズが上述した硬質金めっき皮膜の微細結晶のサイズに近づくものと考えられ、このような微細な接点上に、上述したような硬質金めっき皮膜を形成した場合、皮膜を構成する微細結晶の絶対数が少なくなるために、現在適用されている程度の大きさの接点上に硬質金めっき皮膜を形成した場合と同等の耐久性が得られなくなることが予想される。そこで本発明者らは微細結晶を有さない均質なアモルファス相で形成されたアモルファス金合金めっき皮膜を発明した(例えば、特許文献6〜8)。しかしながら、金本来の良好な比抵抗や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度が向上したものを得るという目的においては、なお改善の余地があるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。
【特許文献1】特開昭60−33382号公報
【特許文献2】特開昭62−290893号公報
【特許文献3】特許第3452724号公報
【特許文献4】特許第3983207号公報
【特許文献5】特開2004−300483号公報
【特許文献6】特開2006−241594号公報
【特許文献7】特開2007−92157号公報
【特許文献8】特開2007−169706号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川合慧,「金−ニッケル合金メッキの析出構造の研究」,金属表面技術,1968年,Vol.19,No.12,p.487−491
【非特許文献2】清水保雄 他1名,「電析Au−Ni合金の微細構造と相に関する電子顕微鏡的研究」,金属表面技術,1976年,Vol.27,No.1,p.20−24
【非特許文献3】渡辺徹著,「ファインプレーティング めっき膜の構造制御技術とその解析法」,技術情報協会,2002年2月,p256−262
【非特許文献4】小見崇 他2名,「Ni−W合金めっき皮膜の高W含有率化と皮膜特性」,金属表面技術,1988年,Vol.39,No.12,p.809−812
【非特許文献5】渡辺徹,「めっき法による非晶質合金の形成機構」,表面技術,1989年,Vol.40,No.3,p.21−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、良好な導電性や化学的安定性を有しつつ硬度が向上した耐摩耗性に優れた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、この微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を成膜できる電気めっき液、及びこの電気めっき液を用いた電気めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねる中で、微小接点でも硬度を下げることがないめっき皮膜の微細構造としては、結晶性の構造よりもアモルファス相構造の方が、金本来の良好な比抵抗や化学的安定性を実用上問題にならない程度に維持しつつ、硬度や耐摩耗性を向上せしめることができるものの、電子の平均自由行程が結晶皮膜に比べて短いため、電気伝導性が低く、また内部応力によりめっき膜にクラックが発生しやすくなることも予想した上で研究を進めたところ、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩を所定濃度で含有し、好ましくは更に、有機酸、無機酸又はその塩等の錯化剤とアンモニアまたはアンモニウムイオンを含有する液安定性の良好な電気めっき液を用いて電気めっきすることにより、驚くべきことに微細結晶相とアモルファス相を混在して形成された微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜が得られること、およびこの膜が、金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上有用な程度に保ちつつ、硬度が向上したものとなることを発見し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されてなることを特徴とする微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜、(2)シアン化金塩を金基準で0.0001〜0.4mol/dm3の濃度、ニッケル塩をニッケル基準で0.001〜0.5mol/dm3の濃度、および/またはコバルト塩をコバルト基準で0.001〜0.5mol/dm3の濃度で含有し、好ましくは更に、有機酸、無機酸又はその塩等の錯化剤を0.001〜2.0mol/dm3の濃度、アンモニアまたはアンモニウムイオンを0.001〜5.0mol/dm3の濃度含有することを特徴とする液安定性の良好な電気めっき液、並びに(3)この電気めっき液を用いて被めっき物上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を形成することを特徴とする電気めっき方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されており、その結果金本来の良好な比抵抗値や化学的安定性を実用上有用な程度に保ちつつ、硬度が向上したものであることから、リレー等の電気・電子部品の接点材料として有用である。一般的に微細結晶からなる結晶膜の場合、構成する結晶粒の大きさが小さくなると、ある限界(例えばニッケルの場合は4nm位)までは硬度が増大するが、さらに結晶粒が小さくなると硬度が低下してしまうことが知られている。金においても一般論が適用できるかどうかは実測した例がないが、金において、初めて微結晶−アモルファス混在結晶膜を実現した本発明によって、微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜が、そのような問題点をすべて解決し、かつ電気伝導性も高く、クラックの発生もしにくいため、コネクタやリレー等の電気・電子部品の微小接点材料として十分に適用可能なものであることを、初めて確認したのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1,2,3,4,5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜及び比較例1,2で得られた金合金めっき皮膜のXRDパターンを示す図である。
【図2】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(10万倍)を示す図である。
【図3】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図4】実施例1で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図5】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(50万倍)を示す図である。
【図6】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図7】実施例2で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図8】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(30万倍)を示す図である。
【図9】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図10】実施例3で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図11】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(20万倍)を示す図である。
【図12】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(70万倍)を示す図である。
【図13】実施例4で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図14】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(40万倍)を示す図である。
【図15】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図16】実施例5で得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【図17】比較例1で得られたアモルファス金合金めっき皮膜のTEM像(100万倍)を示す図である。
【図18】比較例1で得られたアモルファス金合金めっき皮膜のTHEEDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、微細結晶相とアモルファス相が混在して形成されている。
【0013】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、金にニッケルおよび/またはコバルトを含むものであると共に、その微細構造は、微細結晶相とアモルファス相を混在した構造であり、これらの特徴により、純アモルファス構造のアモルファス金合金めっき皮膜と比べて良好な比抵抗値及び化学的安定性と共に、高い硬度が達成される。このような微細結晶相とアモルファス相を混在した構造は、X線回折(XRD)パターン、透過型電子顕微鏡(TEM)像及び透過型高エネルギー電子線回折(THEED)像により確認することができる。
【0014】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、高硬度を維持する観点から微細結晶の平均粒径が30nm以下、特に20nm以下、更に15nm以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、金本来の特性(良好な比抵抗値や化学的安定性)もしくは従来の金又は金合金めっき皮膜にはない高い硬度を維持する観点から、微細結晶の体積分率が10〜90%、特に15〜60%であることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、ヌープ硬さがHk180以上、特にHk220以上、更にはHk300以上、とりわけHk350以上、また、比抵抗が200μΩ・cm以下、特に150μΩ・cm以下、とりわけ100μΩ・cm以下という、優れた硬度と比抵抗を有する微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を得ることができる。また、本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、300℃以下のアニール処理(1時間保持)では、微細結晶相とアモルファス相を混在した構造が変化する(即ち、結晶化が起こって、微細結晶の平均粒径や体積分率が増大する)ことはない。
【0017】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、その優れた比抵抗値及び化学的安定性と共に、従来の金又は金合金めっき皮膜にはない高い硬度を有するという特徴から、電磁開閉器、ブレーカー、サーモスタット、リレー、タイマー、各種スイッチ、プリント配線基板などの電気・電子部品の端子等の導通接点として有効である。
【0018】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、組成式:Au100−x−yMx Cy(ただし、AuまたはMが主成分であり不可避不純物が含有されても良く、MはNiおよび/またはCoであり、Cは炭素である。1原子%≦x≦80原子%、1原子%≦y≦30原子%)で表すことができる。
【0019】
本発明の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜は、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩を含有する電気めっき液を用いた電気めっきにより形成することができる。
【0020】
この電気めっき液にはシアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩が含まれるが、シアン化金塩として具体的には、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金リチウムなど、ニッケル塩として具体的には、硫酸ニッケル、硝酸ニッケルなど、コバルト塩として具体的には、硫酸コバルト、硝酸コバルトなどが挙げられる。めっき液中のシアン化金塩濃度は金基準で0.0001〜0.4mol/dm3、好ましくは0.001〜0.2mol/dm3、より好ましくは0.01〜0.1mol/dm3、ニッケル塩濃度はニッケル基準で0.001〜0.5mol/dm3、好ましくは0.01〜0.2mol/dm3、コバルト塩濃度はコバルト基準で0.001〜0.5mol/dm3、好ましくは0.01〜0.2mol/dm3である。めっき液中の金とニッケルおよび/またはコバルトの比率〔(Ni+Co)/Au〕は、モル比として好ましくは0.01〜300、より好ましくは1〜30の範囲である。
【0021】
また、この電気めっき液は、更に錯化剤を含有することが好ましい。この錯化剤としては錯化作用及びpH緩衝作用を有する有機酸、無機酸又はその塩が挙げられ、有機酸、無機酸及びその塩としてはくえん酸、酒石酸、りんご酸、ピロりん酸、りん酸、スルファミン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。めっき液中の錯化剤の濃度は0.001〜2.0mol/dm3、特に0.01〜1.0mol/dm3、とりわけ0.1〜0.3mol/dm3であることが好ましい。めっき液中の錯化剤とニッケルおよび/またはコバルトの比率〔錯化剤/(Ni+Co)〕は、モル比として好ましくは0.01〜100、より好ましくは1〜4の範囲である。
【0022】
また、この電気めっき液は、更にアンモニアまたはアンモニウムイオンを含有することが好ましい。アンモニアまたはアンモニウムイオンとして具体的には、アンモニア水、硫酸アンモニウム、錯化剤のアンモニウム塩などが挙げられる。めっき液中のアンモニアまたはアンモニウムイオンの濃度は0.001〜5.0mol/dm3、特に0.01〜2.0mol/dm3であることが好ましい。このアンモニアは、結晶相の平均粒径、微細結晶(またはアモルファス)の体積分率といった、めっき膜の結晶状態、めっき浴の安定性に大きく関与する。
【0023】
なお、この電気めっき液のpHは3〜11、特にpH5〜9、とりわけpH6前後が好ましい。pH調整には、アンモニア水、水酸化カリウムなどの従来公知のpH調整剤を用いることができる。
【0024】
さらに、この電気めっき液には、めっき膜の膜物性(微細結晶の体積分率および平均粒径、XRDパターンのピーク半値幅、ヌープ硬さ、比抵抗)および膜組成に大きな影響を与えない限り、必要に応じて、光沢性向上、ピット防止、導電性付与、緩衝性付与、使用可能な電流密度範囲拡大、析出速度促進、耐熱性向上、濡れ性改善などの目的で界面活性剤、溶剤などの各種添加剤を含有できる(例えば、特開平7−11476号公報、特開2004−76026号公報、特開2006−37164号公報を参照)。
【0025】
電気めっき条件は、特に限定されるものではないが、めっき温度は20〜95℃、特に50〜90℃が好適である。陰極電流密度もめっき液の組成により変わり、特に限定されるものではないが、低電流密度域(例えば1mA/cm2以上10mA/cm2未満)及び高電流密度域(例えば10mA/cm2を超え200mA/cm2以下)の両方で微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜を得ることができる。また、アノードには白金等の不溶性アノードを用いることができる。また、ニッケルおよび/またはコバルトをアノードとして用いてもよい。一方、被めっき物としては、電気配線などに用いられる銅、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。この金属材料は、金属基材又は非金属基材上に下地層として形成したものであってもよい。なお、撹拌の有無は問わないが、撹拌下でめっきすることが好ましく、また、パルス電流により電流を印加してもよい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例において、各分析、測定の方法及び条件は、以下のとおりである。
【0027】
結晶性、結晶粒径
理学電機社製 RINT2100‐Ultima+による:XRD法 CuKα(40kV/40mA)
または、日立ハイテクノロイジーズ社製 HF−2200による:TEM及びTHEED法 加速電圧200V 明視野像
体積分率
日立ハイテクノロイジーズ社製 HF−2200による:TEM法及びTHEED法 加速電圧200V 明視野像
金属組成
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 SEA5100による:EDXRF法
非金属元素測定
堀場製作所社製 EMIA−920V、米国LECO社製 TC−436による
ヌープ硬さ
JIS Z 2251に準じて測定:荷重5gf 荷重保持時間30秒 銅板上に形成された30μm厚みのめっき皮膜で測定した
比抵抗
共和理研社製 K−705RSによる:JIS K 7194に準じて測定(四探針法)
【0028】
[実施例1]
KAu(CN)2を0.035mol/dm3、NiSO4・6H2Oを0.076mol/dm3、くえん酸三アンモニウムを0.21mol/dm3含有し、KOHおよび硫酸によりpHを6に調整した電気めっき液を用い、温度70℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は激しく撹拌した。
【0029】
得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図2〜4に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は50%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が41.2原子%、ニッケルが46.0原子%、非金属元素として炭素が12.8原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk347、比抵抗は89μΩ・cmであった。
【0030】
[実施例2]
n−プロパノールを20voL%添加した以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図5〜7に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は50%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が48.1原子%、ニッケルが38.1原子%、非金属元素として炭素が13.8原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk348、比抵抗は89μΩ・cmであった。
【0031】
[実施例3]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を1.2mol/dm3とし、電流密度1mA/cm2(通電時間50秒)と10mA/cm2(通電時間5秒)で間髪入れずに交互に電解めっきした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図8〜10に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。定電流めっきの場合は電流密度1mA/cm2で結晶相のみ、10mA/cm2でアモルファス相のみが得られた。この結果から、パルスめっきで得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は10nmであり、微細結晶相の体積分率は60%であった。一方、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が47.4原子%、ニッケルが47.0原子%、非金属元素として炭素が5.6原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk222、比抵抗は57μΩ・cmであった。
【0032】
[実施例4]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を1.2mol/dm3、電流密度を50mA/cm2とした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られたアモルファス金合金めっき皮膜を、アニール温度(保温温度)400℃、昇温速度10℃/分、保温1時間、大気雰囲気下でアニール処理しためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図11〜13に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は15nmであり、微細結晶相の体積分率は60%であった。
【0033】
[実施例5]
KAu(CN)2を0.035mol/dm3、CoSO4・7H2Oを0.076mol/dm3、くえん酸・H2Oを0.1mol/dm3含有し、アンモニア濃度を0.44mol/dm3とし、KOHおよび硫酸によりpHを6に調整した電気めっき液を用い、温度70℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は激しく撹拌した。
【0034】
得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図14〜16に示す。XRDパターンの2θ=40度付近には微細結晶またはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像には結晶特有の結晶縞とアモルファス特有の不規則構造の混在した様子が観察できる。そして、THEEDパターンには結晶特有の回折スポットとアモルファス特有のハローリングの混在した様子が観察できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶−アモルファス混在構造をとっていることがわかる。また、TEM像を観察した結果、微細結晶の平均粒径は5nmであり、微細結晶相の体積分率は15%であった。一方、得られた微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さを測定した。金属元素として金が36.4原子%、コバルトが40.6原子%、非金属元素として炭素が23.0原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk180であった。
【0035】
[比較例1]
くえん酸濃度を0.143mol/dm3、アンモニア濃度を0.46mol/dm3とした以外は、実施例1と同様にめっきを行い、得られためっき皮膜についてXRD、TEM及びTHEED分析を行った。XRDパターンを図1に、TEM像及びTHEEDパターンを図17〜18に示す。XRDパターンの2θ=40度付近にはアモルファス特有のピーク半値幅1度以上のブロードピークが確認できる。また、TEM像にはアモルファス特有の不規則構造が確認でき、結晶粒界や結晶縞のような規則的構造は確認できなかった。そして、THEEDパターンにはアモルファス特有のハローリングが確認できる。この結果から、得られためっき皮膜は、微細結晶を有さない均質なアモルファス構造をとっていることがわかる。また、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が15.2原子%、ニッケルが67.5原子%、非金属元素として炭素が17.3原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk435、比抵抗は251μΩ・cmであった。
【0036】
[比較例2]
KAu(CN)2を0.04mol/dm3、NiSO4・6H2Oを0.0085mol/dm3、くえん酸・H2Oを0.5mol/dm3、KOHを0.7mol/dm3含有し、硫酸によりpHを3.5に調整した電気めっき液を用い、温度30℃、電流密度10mA/cm2で純度99.96%の銅板上に硬質金めっき皮膜(膜厚1μm)を形成した。なお、アノードには白金被覆チタン電極(網状)を用い、めっき中のめっき浴は緩やかに撹拌した。
【0037】
得られた硬質金めっき皮膜をXRD、TEMおよびTHEEDにより分析した。XRDパターンを図1に示す。XRDパターンの2θ=38度付近にはAu(111)由来の鋭いピークが確認できる。また、TEM像とTHEEDパターンからも結晶であることを確認した。この結果から、得られためっき皮膜は、アモルファス相を有さない多結晶構造をとっていることがわかる。また、XRDパターンから算出した結果、結晶の平均粒径は13nmであった。一方、得られためっき皮膜の組成分析、ヌープ硬さ及び比抵抗を測定した。金属元素として金が96.5原子%、ニッケルが0.77原子%、非金属元素として炭素が2.7原子%の含有率で検出された。ヌープ硬さはHk160、比抵抗は17μΩ・cmであった。
【0038】
なお、図1に示したXRDパターンにおいて、2θ=50°付近に見られる鋭いピークは基板の銅によるものである。
【0039】
また、実施例1の微細結晶−アモルファス混在金合金めっき皮膜のヌープ硬さは、金めっき皮膜の中では硬度が高いとされるアディティブフリーハードゴールド(AFHG)、ニッケルハードゴールド(NiHG)、CoHGのヌープ硬さがHk200に届かない程度であるのに対し、それらの2〜3倍に相当する高い硬度を有していることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金合金のめっき皮膜であって、結晶相とアモルファス相とが混在して形成されてなる、前記めっき皮膜。
【請求項2】
結晶相の体積分率が10〜90%である、請求項1に記載のめっき皮膜。
【請求項3】
結晶相の平均粒径が30nm以下である、請求項1に記載のめっき皮膜。
【請求項4】
X線回折パターンにおける2θ=40度付近のピーク半値幅が1度以上である、請求項1記載のめっき皮膜。
【請求項5】
ヌープ硬さがHk180以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項6】
比抵抗が200μΩ・cm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項7】
組成式:Au100−x−yMx Cy(ここにおいてはAuまたはMが主成分であり、MはNiおよび/またはCoであり、Cは炭素であり、1原子%≦x≦80原子%、1原子%≦y≦30原子%である)で表される、請求項1〜6のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項8】
電気接点材料として用いる、請求項1〜7のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のめっき皮膜を形成するための電気めっき液であって、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩、錯化剤およびpH調整剤を含む、前記電気めっき液。
【請求項10】
錯化剤がくえん酸、酒石酸、りんご酸、ピロりん酸、りん酸、スルファミン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩からなる群から選択される1または2以上であり、また、pH調整剤がアンモニア水または水酸化カリウムである、請求項9に記載の電気めっき液。
【請求項11】
錯化剤がくえん酸であり、pH調整剤がアンモニア水である、請求項10に記載の電気めっき液。
【請求項12】
金合金めっき皮膜の形成方法であって、請求項9〜11のいずれかに記載の電気めっき液を用いて被めっき物上に結晶相とアモルファス相とが混在してなる金合金めっき皮膜を形成してなる、前記形成方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載のめっき皮膜を用いた、電気・電子部品。
【請求項1】
金合金のめっき皮膜であって、結晶相とアモルファス相とが混在して形成されてなる、前記めっき皮膜。
【請求項2】
結晶相の体積分率が10〜90%である、請求項1に記載のめっき皮膜。
【請求項3】
結晶相の平均粒径が30nm以下である、請求項1に記載のめっき皮膜。
【請求項4】
X線回折パターンにおける2θ=40度付近のピーク半値幅が1度以上である、請求項1記載のめっき皮膜。
【請求項5】
ヌープ硬さがHk180以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項6】
比抵抗が200μΩ・cm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項7】
組成式:Au100−x−yMx Cy(ここにおいてはAuまたはMが主成分であり、MはNiおよび/またはCoであり、Cは炭素であり、1原子%≦x≦80原子%、1原子%≦y≦30原子%である)で表される、請求項1〜6のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項8】
電気接点材料として用いる、請求項1〜7のいずれかに記載のめっき皮膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のめっき皮膜を形成するための電気めっき液であって、シアン化金塩、ニッケル塩および/またはコバルト塩、錯化剤およびpH調整剤を含む、前記電気めっき液。
【請求項10】
錯化剤がくえん酸、酒石酸、りんご酸、ピロりん酸、りん酸、スルファミン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩からなる群から選択される1または2以上であり、また、pH調整剤がアンモニア水または水酸化カリウムである、請求項9に記載の電気めっき液。
【請求項11】
錯化剤がくえん酸であり、pH調整剤がアンモニア水である、請求項10に記載の電気めっき液。
【請求項12】
金合金めっき皮膜の形成方法であって、請求項9〜11のいずれかに記載の電気めっき液を用いて被めっき物上に結晶相とアモルファス相とが混在してなる金合金めっき皮膜を形成してなる、前記形成方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載のめっき皮膜を用いた、電気・電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−189685(P2010−189685A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33632(P2009−33632)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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