説明

微細藻ろ過装置及び方法

【課題】短い時間でしかも極力エネルギーを使用しないで微細藻を回収できる微細藻ろ過装置を提供することである。
【解決手段】微細藻が浮遊する水を二つの微細藻処理槽11a、11bに貯蔵し、水を透過し微細藻を透過しないフィルタが装着された落とし蓋13a、13bを天秤14に両端に吊し、天秤14の両端に吊された二つの落とし蓋13a、13bの釣り合いバランスを移動重り17を移動させて崩し、いずれか一方の落とし蓋13を微細藻処理槽11に挿入する。落とし蓋13は、自重で水と微細藻とを分離しながら微細藻処理槽11内を降下し、微細藻を濃縮し、濃縮された微細藻を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に浮遊する微細藻をフィルターでろ過して回収する微細藻ろ過装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻は、発熱量や光合成能力が高くバイオ燃料の有力候補の一つとなっているが、水中で繁殖するので、微細藻を燃料として活用するには、水から分離して回収する必要がある。
【0003】
微細藻と水とを分離するには、自然ろ過による分離と遠心分離器による分離とがある。自然ろ過による分離は、フィルターに上から微細藻の培養液を流し込み、フィルターで微細藻を濾し取るものであり、一般的なろ過方法である。一方、遠心分離器による分離は、遠心分離器を使用し、質量の異なる微細藻と水とを遠心力により分離する方法である。
【0004】
自然ろ過では濾し取るのに多くの時間を要する。一方、遠心分離器を利用した分離方法では、遠心分離器の動力に膨大な電力を消費する。もし、遠心分離器が回収後の微細藻が持つエネルギーよりも多くのエネルギーを消費してしまうとエネルギー収支が成り立たない。
【0005】
スラリーろ過方法として、下板の上に枠状の堰を設置し、セメント主成分とするスラリーを充填し、透水性のある落とし蓋で堰内のスラリーを押圧して落とし蓋の上に水を抜いてグリーンシートを形成するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−44116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のものでは、落とし蓋の自重で押圧する場合にはエネルギーの消費がないので好ましいが、落とし蓋を別の駆動力源により押圧する場合にはエネルギー収支が悪くなる。また、グリーンシートを回収し、継続してグリーンシートを形成しようとした場合には、落とし蓋を持ち上げなければならないので、落とし分を持ち上げるための動力が必要となる。従って、エネルギー収支が悪くなる。
【0008】
本発明の目的は、短い時間でしかも極力エネルギーを使用しないで微細藻を回収できる微細藻ろ過装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る微細藻ろ過装置は、微細藻が浮遊する水を貯蔵した二つの微細藻処理槽と、水を透過し前記微細藻を透過しないフィルタが装着され前記微細藻処理槽に挿入されたとき自重で水と微細藻とを分離しながら前記微細藻処理槽内を降下する落とし蓋と、二つの前記落とし蓋を両端に吊すとともにその両端に吊された二つの落とし蓋の釣り合いバランスを崩すための移動重りを有した天秤と、前記天秤の移動重りにより一方の微細藻処理槽に落とし蓋が挿入され他方の落とし蓋が持ち上がったときさらにその持ち上がった他方の落とし蓋を持ち上げるリフタとを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る微細藻ろ過方法は、請求項1の微細藻ろ過装置を用いて、前記二つの微細藻処理槽に微細藻が浮遊する水を貯蔵し、前記落とし蓋を挿入する前記微細藻処理槽側に前記天秤の移動重りを移動し、前記移動重りの移動により一方の落とし蓋が自重で水と微細藻とを分離しながら前記微細藻処理槽内を降下し終わるまで待ち、前記落とし蓋が自重で前記微細藻処理槽内を降下し終えるとリフタにより前記天秤の反対側の端部に吊され持ち上がった他方の落とし蓋を持ち上げ、前記微細藻処理槽内の分離された上澄み水を排出し、前記天秤の移動重りを反対側の前記微細藻処理槽側に移動し、上澄み液を排出した前記微細藻処理槽内の濃縮された微細藻を回収し、微細藻ろ過処理を継続する場合には前記微細藻を回収した側の前記微細藻処理槽に微細藻が浮遊する水を貯蔵し、以下、微細藻ろ過処理の終了まで、微細藻の回収と微細藻が浮遊する水の貯蔵とを複数回繰り返し行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2の発明によれば、天秤の両端に落とし蓋を吊り下げて、天秤の移動重りに釣り合いのバランスを崩して落とし蓋を微細藻処理槽に挿入し、落とし蓋は、自重で水と微細藻とを分離しながら微細藻処理槽内を降下するので、水と微細藻とを分離する際にエネルギーを必要とせず、短時間で水と微細藻とを分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置の構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る落とし蓋の基本構成要素の一例を示す構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る落とし蓋の一例を示す構成図。
【図4】本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置による微細藻の一次濃縮工程の説明図。
【図5】本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置による微細藻の二次濃縮工程の説明図。
【図6】本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置による微細藻の回収工程の説明図。
【図7】本発明の実施形態に係る微細藻ろ過方法の工程の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置の構成図である。図1に示すように、微細藻ろ過装置は、二つの微細藻処理槽11a、11bを有し、微細藻処理槽11a、11bには微細藻が浮遊する水(微細藻培養液)12が貯蔵されている。微細藻処理槽11a、11b内には、微細藻を回収する際にそれぞれ落とし蓋13a、13bが挿入される。落とし蓋13a、13bは天秤14の天秤棒15の両端部に吊され、天秤棒15の中央部に支点16を有する。
【0014】
また、天秤棒15には、天秤棒15の両端に吊された二つの落とし蓋13a、13bの釣り合いバランスを崩すための移動重り17が搭載されている。例えば、天秤棒15の両端部に吊された落とし蓋13a、13bが釣り合いが取れている状態で、例えば、移動重り17を左側に移動させると、天秤棒15は左側に傾き落とし蓋13bが下降して微細藻処理槽11bに挿入することになる。移動重り17は、二つの落とし蓋13a、13bの釣り合いバランスを崩すだけのものであることから、その移動範囲は大きく取る必要はない。そこで、図1に示すように、支点16を中心にして所定範囲内で動くようにストッパ18a、18bが設けられている。
【0015】
図2は本発明の実施形態に係る落とし蓋13の基本構成要素の一例を示す構成図であり、図2(a)は分解斜視図、図2(b)は底面図である。
【0016】
図2(a)に示すように、落とし蓋13は、基本構成要素として、重り19、上蓋21、押さえ板22とを有している。重り19は円柱をπ/4の間隔で切欠部20を有している。また、上蓋21は筒状に形成され、その筒状の下部に押さえ板22がねじ23でねじ止めされる。押さえ板22の貫通穴24の径は、上蓋21の筒径より小さい径で形成されている。また、上蓋21の筒の内面には、重り19を上蓋21内部に装着する際に、重り19を案内するガイド部25が設けられている。
【0017】
図2(b)に示すように、押さえ板22の貫通穴24の径は上蓋21の筒径より小さい径で形成されているので、重り19を上蓋21内部に装着した際には、重り19は押さえ板22に搭載される。また、押さえ板22の貫通穴24は、π/4ずつの間隔で重り19で覆われ、貫通穴24が貫通する面積は約1/2となり、この貫通する部分にフィルタが装着される。
【0018】
図3は、本発明の実施形態に係る落とし蓋13の一例を示す構成図であり、図3(a)は分解図、図3(b)は底面図である。図3では、図2に示した基本要素にフィルタ26とシール部材27とが追加されている。
【0019】
図3(a)に示すように、上蓋21と押さえ板22との間に、フィルタ26が挟み込まれてねじ23でねじ止めされる。そして、上蓋21の下部の凹み部にOリングやワイパーなどのシール部材27が取り付けられる。これは、落とし蓋13を微細藻処理槽11に挿入したとき、微細藻処理槽11の内壁との滑りを保つようにするためである。これにより、図3(b)に示すように、押さえ板22の貫通穴24の部分がフィルタ26となり、上蓋21の円周にシール部材27が位置する。
【0020】
図3に示した落とし蓋13を微細藻処理槽11に挿入して、落とし蓋13の自重によりフィルタ26を通して水と微細藻とを分離することになる。フィルタ26を透過した水は微細藻処理槽11の上部に上澄み液として滞留し、フィルタ26を透過しない微細藻は濃縮された微細藻として微細藻処理槽11の底部に蓄積されることになる。
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る微細藻ろ過装置の動作を説明する。図4は微細藻ろ過装置による微細藻の一次濃縮工程の説明図であり、図4(a)は微細藻の一次濃縮工程の過程図、図4(b)は微細藻の一次濃縮工程の終了段階図である。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0022】
いま、落とし蓋13を挿入する微細藻処理槽11は、図4の左側の微細藻処理槽11bであるとする。図4(a)に示すように、ガイド重り17を左側に移動させると、それにより天秤14の釣り合いバランスが崩れ、天秤棒15が左側に傾く。左側の落とし蓋13bは自重により微細藻処理槽11bの微細藻処理培養液中を下降していき、上澄み水28と濃縮された一次濃縮微細藻29とに分離していく。そして、図4(b)に示すように、落とし蓋13bが微細藻処理槽11b内を降下し終わると、反対側(右側)の落とし蓋13aをリフタ30の搭載板31に搭載する。これにより、微細藻の一次濃縮工程は終了する。
【0023】
図5は微細藻ろ過装置による微細藻の二次濃縮工程の説明図であり、図5(a)は微細藻の二次濃縮工程の過程図、図5(b)は微細藻の二次濃縮工程の終了段階図である。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0024】
図5(a)に示すように、リフタ30の搭載板31に搭載した右側の落とし蓋13aを上方に持ち上げる。これにより、落とし蓋13bの全荷重が二次濃縮微細藻32に掛かり、二次濃縮微細藻32はさらに濃縮される。そして、排水口33から上澄み液28を排出する。そして、排水口33からの上澄み液28の排出が終了すると、図5(b)に示すように、リフタ30の搭載板31を元の位置に下げて、右側の落とし蓋13aの位置を元の位置に戻す。これにより、微細藻の二次次濃縮工程は終了する。
【0025】
図6は微細藻ろ過装置による微細藻の回収工程の説明図であり、図6(a)は微細藻の回収工程の過程図、図6(b)は微細藻の回収段階図である。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0026】
図6に示すように、微細藻の二次次濃縮工程が終了すると、リフタ30を取り外して移動重り17を右側に移動させる。これにより、天秤棒15が右側に傾き、落とし蓋13aが下降して微細藻処理槽11aに挿入することになる。これにより、左側の落とし蓋13bが上昇するので、左側の微細藻処理槽11bで濃縮された二次微細藻32を取り出し回収する。それとともに、右側の微細藻処理槽11aの微細藻の一次濃縮工程が開始されることになる。
【0027】
図7は本発明の実施形態に係る微細藻ろ過方法の工程の一例を示すフローチャートである。まず、図1に示すように、二つの微細藻処理槽11a、11bに微細藻が浮遊する水(微細藻培養液)12を貯蔵する(S1)。落とし蓋13bを挿入する微細藻処理槽11b側に天秤14の移動重り17を移動する(S2)。これにより、図4(a)に示すように、落とし蓋13bが自重により微細藻処理槽11bを下降していき、上澄み水28と微細藻29とに分離していく。
【0028】
そして、落とし蓋13bが微細藻処理槽11b内を降下し終わったか否かを判定し、落とし蓋13bが微細藻処理槽11b内を降下し終わるまで待つ。落とし蓋13bが微細藻処理槽11b内を降下し終わったときは、図4(b)に示すように、リフタ30に反対側の落とし蓋13aを固定し、その後、図5(a)に示すように、リフタ30により、天秤14の他方端に吊された持ち上がった他方の落とし蓋13aを持ち上げる(S4)。これにより、落とし蓋13bの全荷重が二次濃縮微細藻32に掛かり、二次濃縮微細藻32はさらに濃縮される。そして、排水口33から上澄み液28を排出する(S5)。また、図5(b)に示すように、リフタ30の搭載板31を元の位置に下げて、右側の落とし蓋13aの位置を元の位置に戻すと共にリフタ30を取り外す。
【0029】
次に、図6(a)に示すように、天秤15の移動重り17を反対側の微細藻処理槽11a側に移動する(S6)。これにより、図6(b)に示すように、上澄み液を排出した微細藻処理槽11bの落とし蓋13bは上昇するので、この状態で、上澄み液を排出した微細藻処理槽11bの濃縮された微細藻を回収する(S7)。そして、微細藻ろ過処理を継続するかどうかを判断し(S8)、微細藻ろ過処理を継続する場合には、微細藻を回収した側の微細藻処理槽11bに微細藻が浮遊する水(微細藻培養液)を貯蔵し(S9)、ステップS2に戻る。一方、微細藻ろ過処理を継続しない場合は処理を終了する。
【0030】
このように、本発明の実施形態では、微細藻培養液が満たされている微細藻処理槽11にフィルタを有した落とし蓋13を挿入し、落とし蓋13の自重によってフィルタに生じる圧力により圧力ろ過を行う。微細藻ろ過処理に使用するエネルギーとして、微細藻培養液の給水や上澄み液の排水にかかるエネルギーは必要となるが、基本的に落とし蓋13の自重によって微細藻を濃縮するので、エネルギー収支が向上する。また、自重により常時落とし蓋13のフィルタ部分に圧力がかかるため、短い時間で微細藻を濾し取ることができる。
【符号の説明】
【0031】
11…微細藻処理槽、12…微細藻培養液、13…落とし蓋、14…天秤、15…天秤棒、16…支点、17…移動重り、18…ストッパ、19…重り、20…切欠部、21…上蓋、22…押さえ板、23…ねじ、24…貫通穴、25…ガイド部、26…フィルタ、27…シール部材、28…上澄み水、29…一次濃縮微細藻、30…リフタ、31…搭載板、32…二次濃縮微細藻、33…排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻が浮遊する水を貯蔵した二つの微細藻処理槽と、
水を透過し前記微細藻を透過しないフィルタが装着され前記微細藻処理槽に挿入されたとき自重で水と微細藻とを分離しながら前記微細藻処理槽内を降下する落とし蓋と、
二つの前記落とし蓋を両端に吊すとともにその両端に吊された二つの落とし蓋の釣り合いバランスを崩すための移動重りを有した天秤と、
前記天秤の移動重りにより一方の微細藻処理槽に落とし蓋が挿入され他方の落とし蓋が持ち上がったときさらにその持ち上がった他方の落とし蓋を持ち上げるリフタとを備えたことを特徴とする微細藻ろ過装置。
【請求項2】
請求項1の微細藻ろ過装置を用いて、
前記二つの微細藻処理槽に微細藻が浮遊する水を貯蔵し、
前記落とし蓋を挿入する前記微細藻処理槽側に前記天秤の移動重りを移動し、
前記移動重りの移動により一方の落とし蓋が自重で水と微細藻とを分離しながら前記微細藻処理槽内を降下し終わるまで待ち、
前記落とし蓋が自重で前記微細藻処理槽内を降下し終えるとリフタにより前記天秤の反対側の端部に吊され持ち上がった他方の落とし蓋を持ち上げ、
前記微細藻処理槽内の分離された上澄み水を排出し、
前記天秤の移動重りを反対側の前記微細藻処理槽側に移動し、
上澄み液を排出した前記微細藻処理槽内の濃縮された微細藻を回収し、
微細藻ろ過処理を継続する場合には前記微細藻を回収した側の前記微細藻処理槽に微細藻が浮遊する水を貯蔵し、
以下、微細藻ろ過処理の終了まで、微細藻の回収と微細藻が浮遊する水の貯蔵とを複数回繰り返し行うことを特徴とする微細藻ろ過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200641(P2012−200641A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65685(P2011−65685)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】