説明

微細通流体性多孔体及びその製造方法

【課題】新規な基材組成と構造を有する微細通流体性多孔体であって、2次電池等のセパレータ、濾材、培養体、透湿材料等に好適な多孔体を提供すること。
【解決手段】基材の熱可塑性樹脂(A)の50〜99重量%と、これに混合分散する開孔材(B)と開口剤(C)との合計量の1〜50重量%とからなる、微多孔体形成前駆組成物成型体を延伸する事により、基材の熱可塑性樹脂(A)と該開孔材(B)及び開口剤(C)との界面の少なくとも1部が剥離し、開孔(P)及び開口(I)が生成することにより形成された熱可塑性樹脂の微細通流体性多孔体であって、該多孔体が、0.5〜100μmの平均孔径を有する大きな開孔(P)群と、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に、0.01〜30μmの平均開口径を有するより小さな開口(I)群とを有し、透気度が1000(sec /100cc・25μm厚み)以下で、多孔度が30〜90%微細通流体性多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのまま、又はこれを基材に電解質、電気伝導性物体等を組み合わせ基材として使用される所の、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、に代表される各種の2次電池、その他2次電池、1次電池等に使用される電気化学的隔離膜(セパレータ)、電解コンデンサー、電気2重層コンデンサー等のセパレ−ター用に、又気体、液体中に存在する所定の形状・性質の物質を濾過除去するための濾材、血液中の特定の血球、又は血液中の特定の物質ないし同成分等を濾過、又は吸着除去する為の基材等に代表される精密・活性精密濾過膜、医療用に各種細胞類を培養する担体(更に培養後生分解され消滅する素材を含む)、医療用に各種細胞類を培養し特定の有効成分を有効に抽出する担体兼濾材、特定の物質を吸着する担体(更に培養後生分解され消滅する素材を含む)、特定の吸着ないし混入物質を徐放する担体、電子部品等を製造する時に利用される、例えばウエハー、同上回路設定用に所定の部分を研磨する等の研磨用基材に、透湿性を利用した建築用結露防止通気性フィルム素材、同衣類素材、おむつ・生理用品等の衛生用品素材、通気透湿性で細菌、ゴミ等の通過を阻止する包装用フィルム、白度の高い光反射フィルム、印刷用紙材料等に有利に最適化され利用されるに適する特殊な通流体性多孔体である。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂として最も一般的なポリオレフィン(PO)系樹脂、例えば、結晶性高密度ポリエチレン(HDPE),結晶性ポリプロピレン(PP)等よりなる微多孔体で、厚みが20〜100μm程度で、厚さ方向に一表面から他の表面に連通する、孔径が0.01μmから5μm程度の連通孔を、厚さの垂直方向の全面にわたって均一に有する微多孔フィルムは公知で、これらは一般に透気度(秒/100cc・25μm厚み)が50〜1000程度の気体透過性を有する一方で、耐透水性を有し、このような性能が要求される数多くの用途、例えば、電解液中でイオン透過性で且つ、電極間の絶縁用隔膜として電池等の用途に使用されている。
従来、このような多孔質フィルムの製造方法として、例えば、以下の(1)〜(4)の製造方法が知られている。即ち、 (1)上記高結晶性のHDPEを、多量の可塑剤(体積的に45〜80vol%もの)に加熱溶解させゲル状とし、次にフィルム乃至シート状に押し出し、冷却させ、該樹脂を固化結晶化させ、可塑剤と相分離させた後、該可塑剤を溶媒で抽出して、微孔核を形成させ、次に更に、延伸により該微孔を成長拡大させて製造する、いわゆる相分離開口法である。
【0003】
この方法では、上記のうち可塑剤量が比較的少ない場合(例えば、40〜55vol%)では、連通孔の均一性に優れるものの、孔サイズが小さくなり過ぎ(例えば、0.001〜0.1μm 程度の平均径)、透過抵抗が大きく、厚みを厚くする事に限界があり、又表面で目詰まりし易く、用途に限界がある。
又反対に、可塑剤量が比較的多い場合(例えば、50〜80vol%)は、相分離した可塑剤が集合し大きな粒径となる場合があり、ボイド的な大きな不均一孔が生成する。又多量の危険(安全・衛生上に)な溶剤を使用しなければいけないし、抽出効率の問題で高スピードで厚いのものを生産することが困難な問題を有する。
次に、(2)結晶性樹脂を溶融しシート状に押し出し加工する時に、樹脂それぞれに最適な温度とドロー比で、縦(流れ)方向に流動配向(有る程度分子を流れ方向に揃えさせ)、その後次の工程で、充分それぞれの樹脂に最適な条件で充分時間を掛け(例えば、段階的に温度を上げ、5分〜30分程度も)アニールして結晶を成長させ、その界面を明確にさせ、次に1軸(縦)方向に強い力で冷間延伸させ結晶界面を破壊して微孔をもうけさせ、次に更により高温で熱間に1軸延伸させ開口部分をある程度成長させる方法(例えば
、特許文献1参照)、いわゆる延伸開口法がある。
【0004】
この方法では、生産性(生産スピード、収率、例えば、生産中のフィルム切れが多く、又偏肉分散等が出来なく、ゲイジバンドによる巻き姿のフラット性阻害等の品質性)等に問題がある。又この方法で2軸延伸する場合には、タテ・ヨコ方向の強度バランスが悪く、タテ方向に引き裂き易い大きな欠点が有る。
その他に、(3)可溶性のフィラーを添加しフィルムに成膜し、その後フィラーを溶出させて微多孔化する方法(例えば、特許文献2参照)があるが、この方法では、もろくて延伸ができなく、強度も低く、孔も不均一で大きく、該透気度が極端に大きく、緻密な多孔体はできない。
又、さらに(4)フィラーを多量(例えば、40〜60重量%も)に添加した組成物をダイスから直接インフレーションし、連通状の微多孔体にする方法が知られている。この方法には、孔にフィラーが詰まった状態であり、強度が低く、該フイラーが脱粒する、孔サイズがバラツク、通流体性が悪い等の問題点が有る。
【0005】
【特許文献1】特公昭55−32531号公報
【特許文献2】特開昭58−29839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定の組成物からなる成形体を、溶剤等で抽出することなく、延伸する事により一挙(同時に得られる多層状のものを含む)に得られる所の、従来無い構造と特性を合わせ持つ、各種用途に適応される多孔体であり、比較的大きな開孔と、その開孔壁に複数個のより小さな開口を有し、且つ全体に延伸配向された特性を有する単層状、又は更には他種樹脂層とを組み合わせた、又は異なった構造の層とを組み合わせた、新規な通流体性多孔体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
1.連続相となる基材の熱可塑性樹脂(A)の50〜99重量%と、これに混合分散する開孔材(B)と開口剤(C)との合計量の1〜50重量%とからなる、微多孔体形成前駆組成物成型体を延伸する事により、基材の熱可塑性樹脂(A)と該開孔材(B)及び開口剤(C)との界面の少なくとも1部が剥離し、開孔(P)及び開口(I)が生成することにより形成された熱可塑性樹脂の微細通流体性多孔体であって、該多孔体が、0.5〜100μmの平均孔径を有する大きな開孔(P)群と、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に、0.01〜30μmの平均開口径を有するより小さな開口(I)群とを有し、透気度が1000(sec /100cc・25μm厚み)以下で、多孔度が30〜90%であることを特徴とする微細通流体性多孔体。
【0008】
2.上記1に記載の微細通流体性多孔体を更に延伸することにより、該開孔(P)群と該開口(I)群との少なくとも1部を崩壊又は連続させて形成された、少なくともその1部に、不織布状にフイブリル化した構造を有し、透気度が、0.05〜500(sec /100cc・25μm厚み)で、多孔度が30〜90%である事を特徴とする微細通流体性多孔体。
3.熱可塑性樹脂(A)が55〜98重量%と、該開孔材(B)が2〜45重量%、該開口剤(C)が0〜15重量%とからなることを特徴とする上記1又は2に記載の微細通流体性多孔体。
4.熱可塑性樹脂(A)が60〜94重量%と、該開孔材(B)が5〜40重量%、該開口剤(C)が1〜10重量%とから成ることを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【0009】
5.熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族成分を含むポリエステル系樹脂、α−オレフィンと一酸化炭素共重合体、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる上記1〜4のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
6.開孔材(B)が、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、環球法軟化点が150℃以上の飽和炭化水素系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる上記1〜5のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
7.開孔材(B)が、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル系樹脂と飽和炭化水素系樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂と飽和炭化水素系樹脂との組成物から選ばれる1種の組成物からなる上記1〜6のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【0010】
8.多孔体が、0.5〜100μmの平均孔径を有する大きな開孔(P)群と、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に、少なくとも2個の0.01〜30μmの平均開口径を有するより小さな開口(I)群とを有し、その平均径比(P/I)が少なくとも2であり、透気度が0.5〜500(sec /100cc・25μm厚み)で、ハイブリッド構造を有していることを特徴とするの上記1〜7のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
9.多孔体が、2〜200μm厚みのフィルム状、200〜5000μm厚みのシート状、2〜5000μm径の糸状、2〜5000μm径の中空糸状から選ばれる1種のものであることを特徴とする上記1〜8のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【0011】
10.多孔体が、異なった組成から成る層、又は異なった構造から成る層、異なった特性からなる層、から選ばれる1種以上の層の組み合わせから成る多層状であることを特徴とする上記1〜9のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
11.多孔体が、多孔度30〜80%、透気度0. 5〜500(sec/100cc・25μm厚み)を有することを特徴とする上記1〜10のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
12.多孔体が、多孔度40〜85%、透気度0. 1〜80(sec/100cc・25μm厚み)を有することを特徴とする上記1〜10のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【0012】
13.上記1〜12のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体の製造方法であって、少なくとも1層の熱可塑性樹脂(A)を基材とする該微多孔体形成前駆層と、少なくとも1層の該前駆層を構成する樹脂と異なる熱可塑性樹脂を主成分とし、且つそれが延伸により通流体性構造とならない組成物の延伸補助層(S)とを共延伸し、次に該補助層を剥離除去する事を特徴とする微細通流体性多孔体の製造方法。
14.二層以上からなる多層状微細通流体性多孔体であって、少なくとも一つの層が、上記1〜12のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体であって、他の層がこれとは異なる特徴の多孔構造であることを特徴とする微細通流体性多孔体。
【発明の効果】
【0013】
新規な基材組成と構造を有する微細通流体性多孔体であって、リチウム2次電池、ニッケル水素2次電池等のセパレータ、着除去用濾材、細胞等の培養に有効な培養体、水を通さないが水蒸気を有効に透過させるヘルスケア用又は衣料用の透湿材料等に好適な多孔体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の各構成について詳しく説明する。
(1)熱可塑性樹脂(A)
本発明の多孔体の連続相となる基材の熱可塑性樹脂(A)(以下、単に基材樹脂(A)ということがある。)とは、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族成分を含むポリエステル系樹脂、α−オレフィンと一酸化炭素共重合体、ポリアミド系樹脂、フッソ系樹脂、ポリスルホン系樹脂、等その他公知の樹脂から少なくとも1種選ばれるものである。
【0015】
更に詳細には、ポリオレフィン系樹脂とは、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びこれらのシングルサイト系触媒で重合したいわゆるリニアタイプの重合体、又は他の単量体と共重合したポリエチレン系樹脂、例えば、ホモ、他のα−オレフィンと共重合したランダム、ブロック共重合体、又これらの上記触媒で重合したもの等を含む、ポリプロピレン系樹脂、他のα−オレフィンと共重合した、結晶性ポリブテンー1系樹脂、4−メチルペンテンー1系樹脂、及びこれらの単量体から選ばれる共重合体と、他に極性基を含有する単量体(例えば、ビニルアセテート、アクリル酸及びこれらの誘導体、メタアクリル酸及びこれらの誘導体)との共重合体(高圧法、低圧法、及びラジカル法系、又は、触媒がこれら極性基で不活性化しない所の、特殊シングルサイト系触媒、特殊メタロセン系触媒で重合したもの)から少なくとも一種選ばれる重合体及びそれらの混合組成物等がある。
他にα−オレフィンと一酸化炭素共重合体、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、又はこれらの水添化樹脂等がある。
【0016】
脂肪族ポリエステル系樹脂とは、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコ−ル酸系樹脂、ポリ3−ヒドロキシ酪酸系樹脂、ポリα−ヒドロキシイソ酪酸系樹脂、又はこれらに使用する少なくとも1種の単量体とその他種から選ばれる少なくとも1種の単量体を25モル%以下共重合した樹脂等がある。
芳香族成分を含むポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート系樹脂、及びこれらに使用する単量体の自由な共重合体等である。
【0017】
ポリアミド系樹脂とは、脂肪族ジカルボン酸と同ジアミン、又は各カプロラクタム等を原料とする、ナイロン−6 、同−66、同6−66、同6−10、同12、又は酸成分、又はアミン成分のどちらかに芳香族成分を有するポリアミド系樹脂である。
フッ素系樹脂とは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂で代表される他に、結晶性で押し出し加工が可能なその他のポリオレフィン分子構造の水素の少なくとも1部がハロゲン置換された共重合体、又は極性官能基として、カルボキシル基、スルホン基、アミノ基等を含む、活性フッ素系樹脂等である。
他にエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート系樹脂、その他エンプラ系樹脂等から選ばれるものである。
【0018】
(2)開孔材(B)
開孔材(B)とは、それが熱可塑性樹脂である場合、必要により適時少量の相溶化材(剤)等を加えて混練りする事により、基材樹脂(A)に所望の形状のサイズ分布を有して分散されるもの、又は架橋された樹脂粒子、無機粒子等から選択されるものであって、且つ該開孔材(B)を含む基材樹脂(A)からなる原料樹脂を押し出し加工し、要望の形状の成形原反とし、これを延伸加工した時、基材樹脂(A)と該開孔材(B)との少なくとも界面の1部が剥離し、少なくとも大きめの開孔(P)群を形成する機能・作用を有するものである。
【0019】
該開孔材(B)として熱可塑性樹脂を利用する場合は、一般に該基材樹脂(A)にあま
り相溶化しない材料で、例えば粘弾性的減衰率曲線でも、その特性ピークが基材樹脂(A)と分子分散し同一化するものではなく、好ましくは混練り分散時の形態が、押し出し延伸加工後でも、基本的にそのまま粒状(例えばその平均径が、0.05μm以上)として残されるものが好ましく、場合により混練り中に一度相溶化しても、後処理で均一に相分離し、しかも延伸時に例えば粒状に近い状態に存在していて、上記大きめの開孔(P)群を形成することができるものでも良い。
【0020】
又該開孔材(B)は、延伸温度条件において、基材樹脂(A)自身、又は基材樹脂(A)に他のものを添加し変性した基材樹脂組成物より硬めか、或いはより変形し難いもの、変形しても容易に界面が剥離するもの、変形しても実質的に少なくとも1部が架橋されていて流動し難く変形に対する回復力が働くもの、界面が容易に剥離する様に他の添加剤を加え変性したもの等が好ましくは選ばれる。 この具体的な尺度としては、例えば該開孔材(B)が樹脂成分の場合は、軟化点(ビカット軟化点、環球法軟化点、各種表面硬度等の測定法に準じ、延伸温度条件で測定された値のいずれか)の差、又は変形応力(例えば、10%変形時の引っ張り弾性率、圧縮弾性率、これら変形応力等のいずれか)の差が基材樹脂(A)より10%以上高い、又はより硬い開孔材(B)が、延伸応力が集中し開孔し易い点で好ましい。尚、上記軟化点については、樹脂成分のうち非晶部分の軟化点が低くても、結晶性でしかも結晶融点が高い場合には、結晶化させたあとの性質を利用しても良い。
【0021】
具体的には、該開孔材(B)は、該基材樹脂(A)がポリオレフィン系樹脂の場合は、前述の各ポリアミド系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族成分を含有するポリエステル系樹脂、環状飽和炭化水素成分を有する樹脂、エチレン一酸化炭素共重合体(水添変性物も含む)、ポリカーボネート樹脂(共重合変性した物も含む)、前述ハロゲン置換炭化水素系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンとαメチルスチレン共重合体、スチレンと脂肪族カルボン酸誘導体単量体との共重合体、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクテックスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性共重合体を含む)等から選ばれる少なくとも一種の樹脂、或いは該樹脂を原料に自由にコンパウンド化した変性樹脂組成物等から選ばれる。これらのものは分散制御の観点から比較的低重合物の樹脂が好ましいが、相溶化剤(材)との併用により比較的高分子状の物を利用し分散制御しても良い。
【0022】
又、シリコーン樹脂(含変性物)のごとき架橋された微粒子で径を制御されたもので、該基材樹脂(A)に混合分散性が良く且つ前述の観点からはずれ、柔らかい物質でも、押し出し中に、裁断、併合、変形等の形状変形がされ難く、しかも界面が基材樹脂と剥離性が良い物質は、延伸時有効に上記大きめの開孔(P)群を形成することができ、該開孔材(B)とすることができる。
又、この他に上記観点で比較的硬い樹脂からなる架橋微粒子は、押し出し中に上記同様に変形され難く、延伸条件でも応力が集中し易く好ましい。
又、この他に熱硬化性樹脂系の制御された形状の微粒子でも良い。
又、この他に無機物として、シリカ、炭酸カルシユウム、カーボン粒子、それらの表面処理を施したものでも良い。
【0023】
これら開孔材(B)の基材樹脂(A)中での分散形状は、望みの孔が得られれば任意で良いが、一般に好ましいのは、球状に近いほど延伸加工性、孔の均一性、通流体性特性、強度面から好ましいが、特別の制限は無く、入り組んだ、凹凸のある複雑な形状、糸状、分散径及び形状が不均一で大きくバラツクものは、孔の均一性、膜強度等の点から、好ましくない場合が多い。
これら開孔材(B)の形状(長径/ 短径の比)については、3次元投影法でそれぞれの直交する方向での長径/短径の平均を、更に3方向で平均したもので表した場合、その直
交する方向での長径/ 短径の比は好ましくは10倍以内、より好ましくは5倍以内であり、又上述各方向(3方向)それぞれでの平均値の最大/ 最小値の比が10倍以内、より好ましくは同様に5倍以内である。
【0024】
又該開孔材(B)は、基材樹脂(A)に対して、大きな開孔(P)形成する比較的大きめの径を有するものに対して、更により小さな径を有するものを併用して、該大きな開孔(P)の開孔壁に小さな開口(I)を形成させる開口剤(C)としての役目を更にもたせても良い。
その場合は、該開孔材(B)としては、同種の材料でも、他種の材料を利用しても良く、又この場合の比較的大きめの径を有するもの(Xとする)とより小さな径を有するもの(Yとする)の、上記いずれかの方法での平均分散径の比:X/Yは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20である。
又、更に好ましくは、これら両者の上記いずれかの同一の方法で測定した口径分布曲線の重なり部分の面積が20%未満であることが好ましい。より好ましくは10%未満、さらに好ましくは2%未満である。この理由は、上述の大きな開孔(P)、及び開孔壁の小さな開口(I)のそれぞれの分布の均一性、強度、延伸性等に問題を有するようになるからである。
【0025】
(3)開口剤(C)
開口剤(C)とは、少量の添加で、それ自身が延伸時に開孔壁部分に存在し、上記開孔材(B)より小さい径でミクロ分散し又はミクロ相分離し、基材樹脂(A)の微少結晶界面、結晶欠陥部、又は該基材の非晶部に微小分散して存在し、延伸時特に上記開孔材(B)が先ず基材樹脂(A)から剥離し比較的大きな開孔(P)を生じ、延伸と同時、又は開孔壁を形成する薄膜が出来はじめ、延伸応力が集中し易くなった時に、開口剤(C)が作用し、少なくともその開孔壁部分に多数の小開口(I)を形成し、結果として通流体性を発揮させるものである。
【0026】
又該開口剤(C)は、上記大きな開孔(P)を生じさせる開孔材(B)の界面の剥離を容易にする効果も合わせ持つものがより好ましい場合が多い。
該開口剤(C)としては、具体的には、比較的炭素鎖の長い脂肪族アルコール、同カルボン酸、又はこれらの誘導体として、脂肪酸アマイド、脂肪族アルコールエステル、多価アルコールエステル、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、等が有り、好ましくはステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、脂肪酸グリセリンエステル(モノ、ジ、トリ等の部分エステル化物を含む)、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ソルビトールエステル等が有る。又シリコーンオイル(アルキル型の他に、フェニール、フェノール、エーテル、カルビノール、アミノ、メルカプト、エポキシ、カルボキシル、高級脂肪酸エステル、フッ素等の各変性物を含む)系のもの、前記樹脂のオリゴマー類、流動パラフィン、パラフィンワックス等からなる飽和炭化水素系のものから選ばれるものでも良い。
【0027】
(4)基材樹脂(A)、開孔材(B)、及び開口剤(C)の使用量
基材樹脂(A)、開孔材(B)、及び開口剤(C)の使用量は、基材樹脂(A)として、好ましくは熱可塑性樹脂(A)が50〜99重量%と、開孔材(B)及び該開口剤(C)の合計量が1〜50重量%、より好ましくは該熱可塑性樹脂(A)が55〜98重量%と、該開孔材(B)が2〜45重量%と、該開口剤(C)が0〜15重量%とから成り、更に好ましくは該熱可塑性樹脂(A)が60〜94重量%と、該開孔材(B)が5〜40重量%と、該開口剤(C)が1〜10重量%である。
さらに、製造時の延伸性、得られる微多孔フィルムの引張強度、引裂強度や孔径分布等を向上させる目的で、熱可塑性樹脂(A)、開孔材(B)、及び開口剤(C)の全体に対し、好ましくは0.05〜30重量%の範囲内で、結晶核剤、相溶化剤、軟質樹脂、エラストマーをはじめとする公知の改質剤、添加剤、加工助剤等を用いても差し支えない。
【0028】
(5)微細通流体性多孔体の多孔構造・形状
本発明の微細通流体性多孔体(以下、単に多孔体ということがある。)の多孔構造は、その平均孔径が0.5〜100μm、好ましくは0.7〜50μm、より好ましくは1〜30μmである大きな開孔(P)群と、その開孔の少なくとも1部の開孔壁部分にある開口(I)で、1つの開孔(P)に対して該開口数が少なくとも複数個、好ましくは5個以上、より好ましくは10個以上であり、更にその平均開口径(上述開孔壁部分の)は0.01〜30μm、好ましくは0.03〜20μm、より好ましくは0.05〜10μmであるより小さな開口(I)群とを有し、好ましくはその平均径の比(P/I)が少なくとも2、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10である多孔構造である。
【0029】
尚、上記開孔(P)(開口(I))の平均開孔(開口)径は、多孔体の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、開孔(開口)部10個の直径(楕円の場合は短径)を平均して求めた。
【0030】
本発明の微細通流体性多孔体の多孔度は、30〜90%、好ましくは30〜80%、より好ましくは40〜85%である。
【0031】
本発明の多孔体の透気度は、その特定の多孔構造により、1000(sec /100cc・25μm厚み)以下、好ましくは0.05〜1000(sec /100cc・25μm厚み)、より好ましくは0.1〜700(sec /100cc・25μm厚み)、更に好ましくは0.5〜500(sec /100cc・25μm厚み)の低い透気度(高い通流体性)とすることが出来る。
又上述のごとく上記多孔体を更に延伸し、フイブリル化することにより、好ましくは0.05〜1000(sec /100cc・25μm厚み)、より好ましくは0.05〜500(sec /100cc・25μm厚み)、更に好ましくは0.1〜100(sec /100cc・25μm厚み)の一層低い透気度(一層高い通流体性)とすることが出来る。
【0032】
本発明の多孔体は、少なくとも1軸方向に延伸配向され、延伸方向にその最大収縮率が少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%であり、又その最大収縮応力は少なくとも20g/mm2 、好ましくは少なくとも50g/mm2 であり、フィルム、シート状のものでは2軸方向に延伸されると強度、通流体性等の面で好ましい。
又本発明の多孔体の形状は、その目的に合わせ、2〜200μmのフィルム状、200〜5000μm厚みのシート状、5〜5000μm径の糸状、5〜5000μm径の中空糸状から選ばれるものである。
又本発明の各用途における、より好ましい多孔体は多層状である。
その理由は、高機能性材料のように、多孔体に要求される特性が、多孔体全体に要求される性質、表層に要求される性質が異なる場合、多孔体を多層状に形成する必要があるが、本発明の好ましい製造法に依れば、各々の機能が異なる多層状の多孔体が簡単に得られるからである。
【0033】
本発明の多層状の多孔体は、目的に応じて、同一の基材樹脂を使用しても異なった組成からなる層、又は異なる基材樹脂を使用した組成からなる層、又は異なった構造からなる層、異なった特性からなる層から選ばれる1層以上の組み合わせからなる多層状の多孔体である。
また、本発明の多孔体は、用途により本発明とは違う別の特徴の多孔構造を有する多孔体とを組み合わせた多層状としてもよい。
本発明の好ましい製法は、違う多孔構造をもった多孔体を形成するための製法に対しても適合性が高く、様々な機能を持った多層複合多孔体を容易に得ることができる。
【0034】
具体的には、本発明の多孔体の好ましい用途は、例えば、リチウムイオン2次電池用のセパレータがある。この場合は、好ましくは3層状で、表層機能由来の耐熱性(空気中で加熱し延伸方向に寸法が5%収縮する温度)が、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも140℃、更に好ましくは少なくとも160℃であり、且つ同時に内層の閉塞温度(ヒューズ温度と称する:電池内でその厚み方向に主に収縮、又は流動し、多孔構造が有効に閉塞され、高抵抗又は絶縁状態になり、電池内の電極間の電気化学的反応が実質的に停止する、いわゆる電気的に絶縁状態となる温度)が、140℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、最も好ましくは100℃以下である。そして、本発明の多孔体においては、上記表層機能由来の耐熱性及び内層の閉塞温度を、樹脂を自由に選定することにより、目的に合わせ更に自由に設定できる特徴がある。
【0035】
本発明の多孔体のハイブリッド構造では、小さな開口(I)群が主に素早く閉塞され、温度的、時間的にも、シヤープに反応し電池の安全性(暴走反応による爆発防止)に有効に寄与でき、更に加えて表層の耐熱層は、更に高温まで収縮し、又は溶融流動し、電極がショートし爆発することを防いでより安全性に寄与するものである。
又本発明の多孔体の次に好ましい用途として、2次電池としての「ニッケル−水素電池」用のセパレータがある。この「ニッケル−水素電池」は、短時間で高出力を取り出せる点で優位な電池であり、これは低内部抵抗の水系電解質の使用と、それに合わせたより低抵抗の性能を有するセパレータを使用している点に特徴がある。現在ポリプロピレン製の不織布が使用されているが、今後該電池を高容量化し、小型軽量で安全な電池が電気を駆動原とする電気自動車回りの用途、ポータブル機器への搭載に展開するには、該セパレータでは、次の点で問題がある。即ち、薄くすると、ピンホールが多くなり電極同士のショ−トの危険性があるのと、充放電時の電極の膨張収縮に対しクッション性(緩衝性)が無くなる。 又細い繊維を用いこの問題に対応しようとすると、製造し難くなり高価額になる等の理由で、セパレータを薄く出来難い問題点がある。
【0036】
これに対し、ポータブル機器の高度化(電気使用量増加傾向に対処)、環境・省資材問題から、最近特に必要性が提起されている、電気自動車用電池、ガソリン使用のハイブリッド自動車用、燃料電池使用ハイブリッド電気自動車等に搭載用の高エネルギー密度化が可能で、且つ急充放電でエネルギーを有効に出し入れ出来る電池に使用可能な優れたセパレータが要求されているのが現状である。
本発明の多孔体は、上記ハイブリッド電気自動車等に搭載される電池用セパレータとして最適な多孔体である。
【0037】
即ち、本発明の多孔体は、電池の内部抵抗の主因となる電気抵抗も前(後)述のごとく低くすることが出来、その厚みが薄い領域でも、電気電解液の高吸収性・高含液性、電極の使用時の厚み変化に追従可能な適度なクッション性が発揮され、又低透気度(気体を透し易い)による発生ガスの対極へのスムーズな移動性(電池内圧上昇で爆発するのを防ぐ)等も確保され、従来の相分離法多孔膜(樹脂と多量の可塑剤を利用し、相分離後可塑剤を抽出して製造される例えば口径が0.04μm程度で、且つ単一な口径分布の気孔群からなる、高透気度300〜600(sec /100cc・25μm厚み)程度を有するもの)では達成出来ない優れた性能を発揮するセパレータとして用いられ、単層、又は上記3層の耐熱性と安全閉塞機能を有した層構造(実施例で詳述する)等の形態で利用される。
本発明の多孔体が上記優れた機能を発揮するのは、その大きな開孔(P)と該開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に設けられた小さな開口(I)からなる多孔構造に由来する。その特定の多孔構造の律速部分である小さな開口(I)部分が多孔体の主に厚み方向の大きな開孔(P)の開孔壁に有るため、合計した厚み相当分が少なく(その理由は、大きな開孔(P)が存在するため)、電気抵抗がその分低くなり、さらには該開孔(P)/開口(I)による通流体部分によって、通電時に電流密度の異なる部分が厚み方向に多
数存在することとなるため、本発明の多孔体をリチウムイオン電池において使用する場合には、充電中にリチウム金属デンドライト(針状結晶)が厚み方向に垂直に成長し難く、短絡現象も起こり難い。又上記特定の開孔(P)/開口(I)構造により、電気電解液の吸収保持性、クッション性にも優れる。
【0038】
(6)微細通流体性多孔体の製造方法
本発明の微細通流体性多孔体の製造方法は、基材の熱可塑性樹脂(A)と、上記開孔材(B)と開口剤(C)と、必要により該(B)の分散径、分散形状を制御するための少量の相溶化剤(D)を2軸押し出し機等で良く混合し、単層又は多層状で、場合により延伸補助層を付加した積層体をダイから押出し、その後急冷固化し所望の成型体(原反)に加工し、次いで該成型体を15℃以上、且つ該基材の熱可塑性樹脂(A)の融点以下で、又はビカット軟化点に50℃を加えた温度以下で、少なくとも1方向に面積延伸倍率で、1.1倍以上70倍以下に延伸する事により、基材の熱可塑性樹脂(A)と該開孔材(B)との少なくとも1部の界面が剥離し、大きな開孔(P)群を生成し、該添加剤(C)により、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分により小さな開口(I)群を形成して、2相の開孔(P)/開口(I)よりなる孔分布を有するハイブリッド型の通流体性経路を形成する製造方法である。
【0039】
上記延伸操作は、必要に応じて適宜1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が採用される。
又これらの延伸操作を多段階で行っても良い。この場合でも、15℃以上、かつ、基材の熱可塑性樹脂(A)の融点以下、又はビカット軟化点に50℃を加えた温度以下で、少なくとも1方向に面積延伸倍率で、1.1倍以上70倍以下であれば特に限定されないが、各段における延伸開始部の温度差が少なくとも5℃以上であることが好ましい。又多段の後段程、該延伸開始温度を少なくとも5℃程度高くするのが好ましい。
上記面積延伸倍率は、1.1〜70倍、好ましくは1.5〜50倍である。次に得られた微細通流体性多孔体を更に延伸し、フイブリル化して、不織布様にする場合は、その延伸倍率は、好ましくは16〜70倍、より好ましくは25〜60倍である。
また、寸法安定性を特に重要視する場合は、最終延伸段の温度を高めにしてヒートセット効果を付与しても、または次工程としてヒートセット工程を加えてもよい。
【0040】
以下に、本発明の多孔体の製造方法の好ましい例を説明する。
高品質の本発明の多孔体(M層と略す)を得るために、加工(押し出し、延伸、その他の操作)を補助するための目的で、該M層を製品化する時に剥離除去する補助層(S層と略す)が用いられる。
更に詳細には、このS層を用いることにより、M層単独では不可能だった、均一で高度な流動配向を押し出し時に付与することが可能で、更に以下の問題点をも解決出来る。
即ち、延伸工程中に不均一になり裂けてしまう、厚み方向で孔形成性が異なる、厚み方向で特性が異なる、幅方向で均一性に欠ける、更には、条件的により厳しいバブル法での延伸ができない(特により低温条件下、又は横方向に高度な延伸を加える場合等にはパンクや不均一化の問題の他に、バブル内の空気が抜けて封入できず、延伸が継続して出来ない等の問題がある)等の場合でも、このS層を用いることにより、微多孔フィルムを効率よく生産することができる。
【0041】
又加工中、又は取り扱い中にS層が、M層の傷、汚染(菌、汚れ、他)を保護する役目もはたすことが出来る。
このS層は、該M層を製品化する時に剥離除去されるので、基本的にM層と異なる種類の樹脂が選定される。S層がM層と接着する、又は両層が互いに入り込んでしてしまうとM層の表面の開口に影響を与えてしまい、開口が不均一になり極端な場合は開口しない部分が出来てしまうが、実用的に剥離出来る程度ではM層の表面の開口に影響が無い事が判
明している。
該S層を構成する樹脂(E)としては、該M層の成膜性、延伸性等を向上させ、後にM層と容易に剥離できるものであれば、特に限定されないが、M層を構成する熱可塑性樹脂(A)と異なった熱可塑性樹脂で、延伸時に通流体性多孔体とならず、延伸後に容易に剥離するものが選ばれる。
【0042】
具体的には、隣接するM層を構成する樹脂の種類と同一でないものが基本的に選ばれればよい。特に、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂のいずれかを主成分とすることが好ましい。このうちポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、結晶性ポリブテンー1系樹脂、アイオノマー系樹脂等を主体(50vol%以上)とするものである。これらの内、特に好ましい組成は、例えば、結晶性ポリブテンー1系樹脂、該ポリブテン−1系樹脂に石油系樹脂を30重量%以下混合した組成物又はポリブテンー1系樹脂を全組成中の割合で10〜90重量%混合した3元組成物、又はポリプロピレン系樹脂に石油系樹脂を5〜30重量%混合した組成物、共重合ポリエステル系樹脂、或いは、
以下後述の(E1)、(E2)及び(E3)とからなる樹脂組成物、(E1)及び(E2)とからなる樹脂組成物、または(E2)及び(E3)とからなる樹脂組成物からなる群より選択される樹脂組成物である。
【0043】
E1:低密度ポリエチレン(高圧法、又はメタロセン系触媒、シングルサイト系触媒等で重合したもの、共重合するα−オレフィンが15モル%以下のもので例えば、エチレンと炭素数がC3〜C12のα−オレフィン系単量体の少なくとも1種を含むもの)、またはビニルエステル単量体、脂肪族不飽和モノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエステルより選択される少なくとも1種の単量体とエチレンの共重合体、エチレン−スチレン系共重合体、またはこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のVSP(ビカット軟化点)が80℃以上の(共)重合体又は、これらの混合組成物;
E2:VSPが80℃以下の軟質熱可塑性エラストマー;
E3:プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1の単独重合体、HDPE等より選択される少なくとも1種、またはこれらの単量体とエチレンまたは別のα−オレフィンから選択される少なくとも1種の単量体との共重合体、またはこれらの誘導体から選択される少なくとも1種の共重合体;
【0044】
尚、上記ポリブテン−1とは、ブテン−1含量93モル%以上の結晶性で他のモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、C5以上のもの)との共重合体をも含む高分子量のものであって、液状及びワックス状の低分子量のものとは異なり、MI(ASTM法 D1238(E条件に準じて測定):以後MIと言う)0.2〜10のものが好ましい。また、ポリブテン−1に水添飽和炭化水素系樹脂(好ましくは、その構成単位の一成分に環状部分を少なくとも一部含む同樹脂)を混合した組成物も好ましく用いられる。
また、上記S層を構成する熱可塑性樹脂(E)には、M層との剥離性を適度にする、又は同時に工程中(特に延伸中)の密着性(各層がバラバラにならないよう)を高める、多孔体表層の開口を均一且つスムーズにする、剥離時の静電気等の発生を阻止・リークする等のために、M層との界面までブリード可能な各種の添加剤を含有させることが好ましい。
【0045】
このような添加剤の例としては、非イオン系の界面活性剤、例えば、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、または、高級アルコール、各脂肪酸アマイド類、ワックス類、フッ素系・シリコン系の添加剤、その他特殊な機能を有する個々の目的に合致したものが挙げられ、これらを目的に合わせて選択すればよい。
これらの内好ましくは、少なくとも50℃で液状の成分が主体のもので、更に好ましくは、M層とS層を共押出し、延伸した後、これらがすばやくM層との界面にブリードし、
上述の様に両層の剥離が容易にできると同時に、両層の間に適度な密着性を保ちつつ、静電気の発生防止及びリーク対策も行うことができる物が選ばれる。このような添加剤は、エージングすることなく有効にブリードアウトし、オンラインでも高速で破損することなく補助層と微多孔フィルムを剥離して巻き取ることを可能とする。
【0046】
又場合により、上述のブリード可能な添加剤を、M層、或いは両層に適用してもよい。これら添加剤の添加量は、0.2〜5重量%であり、その量が0.2重量%未満では、剥離が容易になる効果等が十分に得られない場合があり、また、この量が5重量%を超えると両層の間に適度な密着性が保たれず、工程(特に延伸)中に剥離する場合がある。
M層とS層とを合わせた好ましい全体の層構成を例示すると、それらは、少なくとも両層が1層ずつ含まれていればよいが、例えば、M/S、M/S/M、S/M/S、M/S/M/S/M等が挙げられる。M層が単層の場合は、生産性の面から複数のM層を含む全体層構成が経済的に望ましい場合もある。
また、既に述べたように、各M層及びS層自体がそれぞれが多層構造であってもよく、特に微多孔フィルムの高性能化、高品質化を優先する場合には、好ましくはS/M1/M2、S/M1/M2/S、S/M1/M2/M1、S/M1/M2/M1/S、M1/M2/M1/S/M1/M2/M1等が例示される。
上記S層/全層厚みの比率は、10〜90%、好ましくは20〜80%、よリ好ましくは30〜70%である。
【0047】
上記比率の下限は、冷間で強力に延伸する場合の該S層の延伸力で、単独では冷間延伸が出来なく、開孔を達成することのできない組成から成る機能層に強力でしかも均一に延伸力(低温、高倍率領域に)を与えせしめ、該層の延伸開孔を、安定して(フィルムの破れ、サージングなしに)達成させる場合に必要な比率である。
また、上記比率は、M層の構成により最適になるように決定すれば良い。例えば、M層が冷間延伸により開孔せしめ難い組成層を含む場合は、全体層の内、該S層比率下限は比較的高く、逆に目的の孔構造に開孔せしめやすい組成のM層を含む場合は、低いS層比率で良い事は言うまでもない。
本発明では、少なくとも1層のM層を構成する熱可塑性樹脂を主成分とする組成物と、好ましくは、少なくとも1層のS層を構成する熱可塑性樹脂を主成分とする組成物とを、それぞれ別々の押出機で熱可塑化溶融し、多層ダイより共押出後、急冷固化させ十分均一なチューブまたはシート状原反とし、次いでこれらを延伸成形する。
共押出の方法としては、多層のT−ダイ法、多層の環状ダイ法とが挙げられるが、後者の方法が原反効率の良さ、流動配向の均一性等の点で好ましい。
【0048】
次に、上記延伸成形方法としては、ロール延伸法、テンターフレーム法、(ダブルバブル、トリプルバブル等のマルチバブルプロセスを含む)チューブラー法等の各種方法があるが、以下の理由等から一般に、チューブラー法によるのが好ましく、更にこれにS層を少なくとも一層配するのがより好ましい。
又比較的厚みの厚いシート状のものは、Tダイにより押し出し後、キャストロールで急冷し、ロール間で加熱し、1軸延伸、又は好ましくは2軸延伸される。 この場合、具体的にはロール群間でのタテ1軸延伸、テンターでのヨコ1軸延伸、テンターフレームでの同時2軸延伸、ロールとテンターを組み合わせての逐次2軸延伸が採用される。
又糸状のものは、該組成物を紡孔から押し出し、冷却媒体で、急冷後、加熱しながら1軸延伸して得られる。
中空糸状のものは、該組成物を単層、又は必要により多層状の中空糸用ダイから押し出し、冷却媒体で急冷後加熱し1軸に延伸、又は押し出しながら適当な温調媒体中で差動ロール間で1軸に延伸して得られる。
【0049】
さらに、延伸前又は延伸後に、原反の延伸性、延伸開孔性を高め、また本発明の多孔体
の強度、耐熱性、寸法安定性を向上させる目的で、該M層、S層に2〜20Mrad、好ましくは2.5〜15Mradの高エネルギー線により、架橋処理を行ってもよい。
この際の方法としては、電離性放射線、例えば電子線、放射性同位元素から放射されるβ線、γ線を照射する方法、またはベンゾフェノンやパーオキサイド等の増感剤をあらかじめM層に混合しておき、紫外線照射、熱架橋等を行う方法が挙げられる。
これらのうち、工業的には高エネルギー電子線を使用するのが好ましい。
また、多層状M層の場合に所定のM層の架橋度合いを、目的により樹脂の種類、分子量の制御、(架橋を促進または抑制する)添加剤等を利用する事により、またはエネルギー線の透過深度を制御することによりコントロール(例えば、表層の架橋密度を高くする、中間層の架橋密度を下げる、または実質的にゲル分率が測定できない程度の弱い架橋を行う等)してもよい。
さらにこれらの架橋処理をS層にも適用してもよい。
【0050】
以下本発明で用いる特性値の測定法について説明する。
(1)透気度は、ASTM D−726(B)法に基づいて測定したガーレー値(秒/100cc)で所定の面積を、100ccの空気が透過する時間で表す、又多孔体の厚みを25μmに換算した値である。但し、透気度が低い、つまり通過し易い(例えば、5sec 以下)場合はフィルムの枚数を重ねて(例えば5〜10枚)測定するか、又はカバーフイルム等で測定面積を小さくして測定して後で、その値をもとの所定の方法に合う様に換算するものとする。
(2)結晶融点(mp)、ガラス転移点(Tg)とは、JIS−K−7121に基づいて、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製 DSC−7)を用い、サンプル−の5mgを溶解、急冷した後、所定の温度から10℃/分の昇温速度で昇温して測定されたものである。
【0051】
(3)多孔度(Po)は、多孔体の体積(V)を求め、それから多孔体を形成する樹脂組成物の分の体積(J)を減じた体積(V−J)を、多孔体の体積(V)で、除した比率を100倍した値で、Po=(V−J)X100/Vで表す。
(4)開孔(P)(開口(I))の平均開孔(開口)径は、多孔体の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、開孔(開口)部10個の直径(楕円の場合は短径)を平均して求めた。
(5)ビカット軟化点(VSP)は,ASTMD1525(荷重が1Kgで測定)に準じて測定した値。
【0052】
(6)環球法軟化点(BVSP)とは、JIS−K−2207に準じて測定される値。
(7)引張弾性率とは、ASTM−D882に準拠して測定される値。
【0053】
(8)電気抵抗は、リチウムイオン電池用の電解液中で、多孔体の空間部分を該電解液で置換し、交流法(1kHz )で測定した抵抗値(Ω・cm2 単位でフィルム厚み25μmでの換算値)。
(9)電池安全性能(閉塞 /短絡)温度は、加熱しても電解液が蒸発しないような約1kg/cm2 の窒素加圧雰囲気下の容器内で、電極として2枚の150メッシュのニッケル製(又は他の金属スクリーンにニッケルメッキしたもの)スクリーンメッシュに、セパレータを挟みこんだ状態の電解セルに、リチウムイオン電池用の電解液を注入し、その両極の外側に絶縁板としてガラス板を置き、面圧が均一に100g/cm2 になるように設定し、交流電流を流し、2℃/ 分の昇温スピードで加熱して行きセパレータの開口が閉塞すると共に、電気抵抗が急に上昇する温度(閉塞温度)、及び更に昇温してゆき、セパレータが溶融流動し電極がショート(短絡温度)する温度を表す。
【実施例】
【0054】
次に実施例と比較例を挙げて本発明を説明する。
以下に実施例で使用する熱可塑性樹脂組成例を示す。
(1)基材となる熱可塑性樹脂(A)としては、以下のものを使用する。
A−1:高密度ポリエチレン樹脂であり、密度0.962g/m、MFR(210℃/2.16kg)0.8、VSP120℃、mp133℃。
A−2:ポリプロピレンであり、密度0.910g/cm3 、MFR(230℃/2.16kg)3.3、VSP143℃、mp160℃。
A−3:脂肪族ポリエステル樹脂のポリL−乳酸(D−乳酸を3モル%共重合したもの)であり、密度1.26g/cm3 、MFR(200℃/2.16kg)1.5、mp174℃,VSP58℃。
A−4:脂肪族ポリエステル樹脂のポリグリコール酸(L−乳酸を5モル%共重合したもの)であり、密度1.57g/cm3 、mp215℃,VSP36℃。
【0055】
A−5:4−メチルペンテン−1樹脂(密度0.834g/ cm3 、mp240℃、MFR(260℃/5kg)26、VSP160℃。
A−6:α−オレフィン/一酸化炭素共重合体(α−オレフィン成分の内エチレン44モル%にプロピレンを6モル%共重合したもの)樹脂であり、密度1.235g/cm3 、MFR(240℃/2.16kg)、VSP(荷重5kg)205℃。
A−7:ポリスルホン樹脂であり、密度1.24g/cm3 、VSP188℃、MFR(240℃/2.16kg)3。
A−8:フッ化ビニリデン樹脂(ヘキサフルオロプロピレンを10重量%共重合したもの)で、密度1.79g/cm3 、VSP140℃、MFR(230℃/2.16kg)1、mp145℃。
A−9:リニヤー低密度ポリエチレンであり、密度0.921g/cm3 、MFR(=MI)1.0,mp121℃。
【0056】
(2)開孔材(B)としては、以下のものを使用する。
B−1:ポリフェニレンエーテル:VSP214℃、MFR(280℃/10kg)4が53重量%と、GPPS:VSP105℃、MFR(200℃/5kg)7が47重量%とのコンパウンド樹脂でVSP157℃のもの。
B−2:スチレン86重量%に、メタアクリル酸を14重量%共重合したSMAA樹脂で、VSP135℃、MFR(230℃/3.8kg)1.6、の特性のもの。
B−3:シクロペンタジエンを主原料として重合した石油樹脂を水添した樹脂で、BVSPが170℃、GPCによる数平均分子量(Mn)が1250のもの。
B−4:エチレン/一酸化炭素共重合樹脂で、VSP225℃、mp250℃、Tg15℃のもの。
【0057】
B−5:共重合ポリアミド樹脂(ナイロン6−66)mp195℃、MFR(230℃/2.16kg)3.5のもの。
B−6:平均粒径0.5μm、粒径分布0.2〜1.3μm(全体の93%)の架橋シリコーン樹脂パウダー。
B−7:平均粒径5.0μm、粒径分布2.0〜8.0μm(全体の95%)の架橋シリコーン樹脂パウダー。
B−8:平均粒径1.5μm(分布1.35〜1.65μmに95%)の架橋アクリル樹脂パウダー。
B−9:平均粒径0.3μm(分布0.20〜0.50μmに98%)の球状シリカパウダー。
又は前述(B)に記述したもので、他の開孔材として1次孔に寄与するものと組み合わせて使用するときに、明細書中に記述の気孔壁の開口に役立つ種類のもの。
【0058】
(3)開口剤(C)としては、以下のものを使用する。
C−1:エルカ酸アミド
C−2:ステアリン酸ソーダ
C−3:高級脂肪酸変成シリコーンオイル(mp64℃)
C−4:グリセリン12−ヒドロキシステアレート(mp71〜77℃)
C−5:パラフィンワックス(mp58℃)
【0059】
(4)次に補助層(S)として利用される組成を以下に例示する。
S−1:メタロセン系触媒で重合した低密度ポリエチレン(オクテン−1を4モル%共重合したもので、密度:0.926g/cm3 ,MI:1.2)(E−1):60重量%と、エチレン86モル%にプロピレンを14モル%共重合した熱可塑性エラストマー(密度:0.887g/cm3 ,MI:0.44)(E−2):10重量%と、ポリプロピレン(シングルサイト系触媒で重合した密度:0.905g/cm3 、MFR:1.4,mp;153℃のもの)(E−3):10重量%と、結晶性ポリブテン−1(プロピレンを3.5モル%共重合したもので密度:0.907g/cm3 ,MI:1.6):10重量%、石油樹脂(水添飽和炭化水素で、環球法軟化点が125℃):10重量%を充分混練りした物の100重量部に、液状添加物としてノニルフエニルエーテルポリエチレンオキサイド付加物を2.2重量部混合した組成物。
【0060】
S−2:ポリプロピレン(密度:0.905g/cm3 、MFR:2.5,mp;162℃):70重量%(E−3)に、エチレン85モル%にブテン−1 を15モル%共重合した熱可塑性エラストマー(密度:0.890g/cm3 ,MI:0.90)(E−2)15重量%、石油樹脂(同上)15重量%混合した物の100重量部に、ジグリセリンモノラウレートを2重量部とエルカ酸アミド3重量部混合した組成物。
S−3:共重合ポリエステル樹脂(テレフタル酸にアルコール成分としてシクロヘキサジメタノール30モル%にエチレングリコール70モル%共重合したVSPが82℃のもの)。
S−4:結晶性ポリブテン−1樹脂(エチレンを2モル%共重合したもので密度0.905g/cm3 ,MI:1.1)100重量部に、オレイン酸アミド1.5重量部、アルキルシリコーンオイル1.0重量部を混合した組成物。
【0061】
(実施例1)
内層を構成する基材樹脂(機能層:M1:多孔体)層用として、基材樹脂(A)に前述のA−1:80重量%と、次に開孔材(B)としてB−1:10重量%と、改質材(基材の延伸性改質・相溶化分散調整材)として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(SBS型由来で、結合スチレンが32重量%、MFR:230℃/ 2160gで測定:5のもの):10重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−1を3重量部添加してなる組成物を、2軸押出し機で充分混練りしておき、次に表層(S)用に、補助層としてS−2を用い、それぞれ別の押し出し機で混練り溶融し、2種3層の層構成を有するサーキュラダイにて共押出しし、冷却媒体で急冷成形し、厚み比(S/M1/S:1/3/1)の3層の均一なチューブ状原反とし、この原反を、2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通して加熱炉内で、熱風により82℃に加熱し、次にそのまま工程最後部にある空気封入用ニップロールで引取りながら、内部に空気を入れ、温調リング室内で、連続的に膨張させて、最後に冷却リングにて急冷させ、延伸を終了させ、機械方向(流れ方向;タテ)の延伸倍率が5.5倍、横方向(バブル径方向:)の延伸倍率が5.0倍になるように延伸し、次いでもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通し内部に空気を封入しチューブ状にして周方向より熱風により115℃に加熱してタテ方向に5%、ヨコ方向に5%収縮させながら30秒間ヒートセットした。最後に両端の耳部をスリットしながら、延伸された3層フイルムをそれぞれ巻き取り機で巻き取った。次に剥離用の巻き取り機で、補助層(S層)を剥離した。M層は容易
に剥離することが出来、剥離時には静電気の発生もなく、高速剥離性(70m/分)もよかった。
【0062】
更に、各工程中でも各層間で適度な密着性があり、延伸安定性も良く、延伸中のパンク現象、空気抜け現象も無く、剥離してバラバラになることもなかった。又機能層(M1)の表面に開口が内層部に比し不均一になりスキン構造が出来る等の不良現象は見られなく、厚み方向にも均一であった。得られた均一な微細通流体性多孔フィルム(M1)は、厚み23μm、透気度5sec/100cc・25μm厚み(以下、「/100cc・25μm厚み」は省略して表記する。)、多孔度70%、電気抵抗0.82Ω・cm2 、最大収縮率は65%、最大収縮応力は220g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約7μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.13μm、又その体積比率は、前者(P)が全体の75%であった。
このフィルムを単セル(陰極と陽極間にセパレータと電解液を挿入した構造のもの)のリチウムイオン電池に組立て充放電テスト(レート1C)を実施した結果、「比較サンプル−1」(HDPEのみから、「相分離―2軸延伸後―同可塑剤抽出法」による、電気抵抗1.10Ω・cm2 、透気度620sec 、開口が小口径(平均口径0.04μm)群のみのフィルム)より、充放電曲線が優れていた。
又、「閉塞 /短絡」温度は、単層フィルムでありながらそれぞれ「136℃ /156℃」であり、短絡温度は高い値が得られた。比較のために上記「比較サンプル−1」がそれぞれ「138℃/ 146℃」と狭い範囲であった。
【0063】
(実施例2)
内層を構成する基材樹脂(機能層:M2:多孔体)層用として、基材樹脂(A )に前述のA−2;65重量%と、次に開孔材(B)としてB−1:23重量%と、改質材(基材の延伸性改質・相溶化分散調整材)として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(実施例1と同様なもの):7重量%と、更に基材の延伸性改質材として、ポリブテンー1樹脂(比重:0.915、mp:125℃、VSP:111℃、MFR:1.8のもの)5重量%とよりなる混合樹脂100重量部に、開口剤(C)として、C−4を3重量部添加してなる組成物を、2軸押出し機で充分混練りしておき、次に表層(S)用に、補助層としてS−1を用い、それぞれ別の押し出し機で混練り溶融し、2種3層の層構成を有するサーキュラダイにて共押出しし、冷却媒体で急冷成形し、厚み比(S/M2/S:1/1/1)の3層の均一なチューブ状原反とし、この原反を、2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通して加熱炉内で、熱風により75℃に加熱し、次にそのまま工程最後部にある空気封入用ニップロールで引取りながら、内部に空気を入れ、温調リング室内で、連続的に膨張させて、最後に冷却リングにて急冷させ、延伸を終了させ、機械方向(流れ方向;タテ)の延伸倍率が4.5倍、横方向(バブル径方向:)の延伸倍率が4倍になるように延伸し、次いでもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通し内部に空気を封入しチューブ状にして周方向より熱風により120℃に加熱してタテ方向に5%、ヨコ方向に6%収縮させながら20秒間ヒートセットした。最後に両端の耳部をスリットしながら、延伸された2 枚の3層フイルムをそれぞれ巻き取り機で巻き取った。次に剥離用の巻き取り機で、補助層(S層)を剥離した。M層は容易に剥離することが出来、剥離時には静電気の発生もなく、高速剥離性(100m/分)も問題が無かった。
【0064】
更に、各工程中でも各層間で適度な密着性があり、延伸安定性も良く、延伸中のパンク現象、空気抜け現象も無く、剥離してバラバラになることもなかった。 表層に不均一な開口部分も無く、厚み方向にも均一であり、得られた均一な微細通流体性多孔フィルムは、厚み25μm、透気度15sec、多孔度73%、電気抵抗1.12Ω・cm2 、最大収縮率は50%、最大収縮応力は340g/mm2 であった。又大きな気孔群(P)の平
均孔径は、約10μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.09μm、又その体積比率は、前者(P)が全体80%であった。
このフィルムを単セル(陰極と陽極間にセパレータと電解液を挿入した構造のもの)のリチウムイオン電池に組立て充放電テスト(レート1C)を実施した結果、上記「比較サンプル−1」より、充放電曲線が優れていた。
又、「閉塞 /短絡」温度は、単層フィルムでありながらそれぞれ「165℃ /200℃」であり、短絡温度は高い値が得られた。
【0065】
(実施例3)
実施例2と同様な方法で、実施例2の機能層(M2)部分の中間に実施例1の機能層(M1)を配置し「M2/M1/M2」とし、同様に3種5層サイキュラーダイで層構成がそれぞれ「S1/M2/M1/M2/S1」で、同様に厚み比(1/1/1/1/1)に設定し均一なチューブ状原反とし、この原反を、実施例2と同様な方法で熱風により70℃に加熱し、次にそのまま工程最後部にある空気封入用ニップロールで引取りながら、内部に空気を入れ、温調リング室内で、連続的に膨張させて、最後に冷却リングにて急冷させ、延伸を終了させ、機械方向(流れ方向;タテ)の延伸倍率が4.0倍、横方向(バブル径方向:)の延伸倍率が3.5倍になるように延伸し、次いでもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通し内部に空気を封入しチューブ状にして周方向より熱風により120℃に加熱してタテ方向に4%、ヨコ方向に6%収縮させながら15秒間ヒートセットした。
最後に両端の耳部をスリットしながら、延伸された2枚の5層フイルムをそれぞれ巻き取り機で巻き取った。
次に剥離用の巻き取り機で、補助層(S層)を剥離した。S層は容易に剥離することが出来、剥離時には静電気の発生もなく、高速剥離性(100m/分)でも機能層同士が剥離することもなく、問題が無かった。
【0066】
更に、各工程中でも各層には適度な密着性があり、延伸安定性も良く、延伸中のパンク現象、空気抜け現象も無く、剥離してバラバラになることもなかった。 又、機能層のS層側の表層、及び機能層同士の界面も均一で通流体性能に実質的影響が無いものであった。
得られた3層の均一な微細通流体性多孔フィルムは、厚み27μm、透気度10sec、平均(3層での)多孔度63%、電気抵抗0.96Ω・cm、最大収縮率は53%、最大収縮応力は240g/mm2 であった。又大きな気孔群(P)の平均孔径は、(M2/M1)各層で、それぞれ約(9/5)μmであった、又気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対しいずれも10個以上で、その平均口径は同様にそれぞれ約(0.09/0.08)μmであった。又上記(P)の体積比率は、それぞれ全体の約(70/63)%であった。
このフィルムを実施例1と同様に、充放電テスト(レート1C)を実施した結果、上記「比較サンプル−1」のフィルムより、充放電曲線が優れていた。又、「閉塞 /短絡」温度は、それぞれ「134℃ /200℃」であり、その温度差が66℃と幅広い温度特性を有していた。
【0067】
(実施例4)
実施例3と同様な方法で(但し、機能層の中間層を構成する組成を以下の組成物に代え)、機能層の中間層の基材樹脂(機能層:M−3)として前述のA−9:70重量%と次に開孔材(B)としてB−1:25重量%と、実施例1と同様な水添スチレンーブタジエンブロック共重合体5重量%とを混合した組成物100重量部に、開口剤(C)としてC−3を2重量部混合した組成物を用い、機能層を「M2/M3/M2」とし、表層(S)用に、補助層としてS−3を用い延伸時の加熱温度を64℃とし、次に延伸後の熱処理温
度を105℃した以外は実施例3と同様に処理し、得られたフィルムから表層(S)を剥離し、3層の機能層を有する、厚み26μmのフィルムを得た。このフィルムは、透気度15sec 、平均多孔度65%、電気抵抗1.06Ω・cm、最大収縮率は59%、最大収縮応力は270g/mm2 であった。
【0068】
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、(M2/M3)各層で、それぞれ約(5/3)μmであった。
又気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対しいずれも10個以上でその平均口径は同様にそれぞれ約(0.08/0.05)μmであった。又上記(P)の体積比率は、それぞれ全体の約(63/68)%であった。
このフィルムの同じ方法での「閉塞/ 短絡」温度は、「120℃/ 200℃」であり、その差80℃と巾広い範囲の同温度特性を有していた。
【0069】
(実施例5)
内層を構成する基材樹脂(機能層:M4:多孔体)層用として、基材樹脂(A )に前述のA−3;83重量%と、次に開孔材(B)としてB−4:10重量%と、改質材(基材の延伸性改質・相溶化分散調整材)として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(SBS型由来で、結合スチレンが32重量%、MFR:230℃/ 2160gで測定:5のもの):7重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、B−9を3重量部添加してなる組成物を、2軸押出し機で充分混練りしておき、次に表層(S)用に、補助層としてS−2を用い、延伸倍率を「タテ(機械方向)/ヨコ(機械方向と直角方向)」(以下、同じ)でそれぞれ「3.7/3.3」倍として、延伸時の加熱温度を75℃とし加工し、又熱処理はテンターフレームにした以外は実施例1と同様にして処理し、表層(S)を容易に剥離し均一な多孔フィルムを得た。
このフィルムは厚み28μm、透気度15sec、多孔度74%、電気抵抗1.12Ω・cm、最大収縮率は69%、最大収縮応力は120g/mm2 であった、
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約32μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.43μm、又上記(P)の体積比率は、78%であった。
【0070】
(実施例6)
実施例5と同様な方法で、内層の機能層(M5)用として、基材樹脂(A)としてA−4:86重量%と、次に開孔材(B)としてB−7:7重量%と、改質材として、ポリブテンー1樹脂(実施例2で使用したものと同じもの):7重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、B−6を3重量部添加してなる組成物を、補助層としてS−2を利用し、延伸時の加熱温度を73℃にして、他は実施例5と同様にし均一な多孔フィルムを得た
このフィルムは厚み25μm、透気度20sec、多孔度70%、電気抵抗1.40Ω・cm、最大収縮率は72%、最大収縮応力は80g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約22μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.8μm、又上記(P)の体積比率は、75%であった。
【0071】
(実施例7)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M6)用として、基材樹脂(A)としてA−5:73重量%と、次に開孔材(B)としてB−3とB−1の比率1/1の混合コンパウンド:17重量%と、改質材として、ポリブテンー1樹脂(実施例2で使用したものと同じもの):10重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−2を3重量部添加してなる組成物を、補助層としてS−2を利用し、延伸時の加熱温度を70℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「4.5/ 4.2」にして、他は同様にして均一な多
孔フィルムを得た。
このフィルムは厚み20μm、透気度14sec、多孔度70%、電気抵抗1.0Ω・cm、最大収縮率は72%、最大収縮応力は380g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約35μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.06μm、又上記(P)の体積比率は、75%であった。
【0072】
(実施例8)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M7)用として、基材樹脂(A)としてA−3:73重量%と、次に開孔材(B)としてB−1とB−2の比率1/1の混合コンパウンド:17重量%と、改質材として、ポリブテンー1樹脂(実施例2で使用したものと同じもの):10重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−2を3重量部添加してなる組成物と、次の内層の機能層(M8)用として、基材樹脂(A)としてA−4:75重量%と、次に開孔材(B)としてB−1とB−2の比率1/1の混合コンパウンド:15重量%と、改質材として、ポリブテンー1樹脂(実施例2で使用したものと同じもの):10重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−3を3重量部添加してなる組成物とを、M7/M8/M7の順にその比率1/1/1となる様に配置し、次に補助層としてS−3を利用し、延伸時の加熱温度を70℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「4.5/ 4.2」にして、他は実施例6と同様にして均一な多孔フィルムを得たこのものは厚み50μm、透気度1 0sec、多孔度76%、電気抵抗1.3Ω・cm、最大収縮率は72%、最大収縮応力は38
0g/mm2 であった、又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約30μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.8μm、又上記(P)の体積比率は、75%であった。
【0073】
(実施例9)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M9)用として、基材樹脂(A)としてA−6:73重量%と、次に開孔材(B)としてB−1 とB−9の比率4/1の混合コンパウンド:10重量%と、改質材として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(実施例5で使用のものと同じ):4重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C −5を3重量部添加してなる組成物を、そして、補助層としてS−4を利用し、延伸時の加熱温度を110℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「3.7/ 3.2」にして、他は実施例6と同様にして均一な多孔フィルムを得た。このフィルムは厚み29μm、透気度24 sec、多孔度72%、電気抵抗1.1Ω・cm、最大収縮率は70%、最大収縮応力は
180g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約15μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.05μm、又上記(P)の体積比率は、85%であった。
【0074】
(実施例10)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M10)用として、基材樹脂(A)としてA−7:86重量%と、次に開孔材(B)としてB−8とB−9との比率4/1の混合コンパウンド:10重量%と、改質材として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(実施例5で使用のものと同じ):4重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−3を3重量部添加してなる組成物を、そして補助層としてS−2を利用し、延伸時の加熱温度を120℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「3.5/ 3.2」にして、他は実施例6と同様にして均一な多孔フィルムを得た。このフィルムは厚み23μm、透気度14 sec、多孔度68%、電気抵抗1.3Ω・cm、最大収縮率は64%、最大収縮応力
は150g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約8μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.08μm、又上記(P)の体積比率は、85%であった。
【0075】
(実施例11)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M11)用として、基材樹脂(A)としてA−8:86重量%と、次に開孔材(B)としてB−1:10重量%と、改質材として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(実施例5で使用のものと同じ):4重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C −4を3重量部添加してなる組成物を、そして補助層としてS−3を利用し、延伸時の加熱温度を90℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「4.5/ 4. 2」にして、他は実施例6と同様にして均一な多孔フィルムを得た。
このフィルムは厚み25μm、透気度12 sec、多孔度75%、電気抵抗0.85Ω・cm、最大収縮率は74%、最大収縮応力は250g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約35μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.10μm、又上記(P)の体積比率は、75%であった。
【0076】
(実施例12)
実施例6と同様な方法で、内層の機能層(M12)用として、基材樹脂(A)としてA−9:81重量%と、次に開孔材(B)としてB−1とB−5の混合比率4/1のものを混練りした組成物:15重量%と、改質材として、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂(実施例5で使用のものと同じ):4重量%との混合物の100重量部に、開口剤(C)として、C−4を3重量部添加してなる組成物を、そして補助層としてS−3を利用し、延伸時の加熱温度を60℃、延伸倍率「タテ/ ヨコ」をそれぞれ「4.8/ 4. 5」にして、他は実施例6と同様にして均一な多孔フィルムを得た。
このフィルムは厚み29μm、透気度22sec、多孔度65%、電気抵抗1.25Ω・cm、最大収縮率は78%、最大収縮応力は320g/mm2 であった。
又大きな気孔群(P)の平均孔径は、約25 μm、気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対し10個以上でその平均口径は約0.1 5μm、又上記(P)の体積比率は、85%であった。
【0077】
(実施例13)
実施例2と同様な方法で、機能層(M13)用として、基材樹脂(A)としてA−5:72重量%、次に開孔材(B)としてB−1:20重量%、改質剤として前出のポリブテン−1:8重量%を混練りした組成物100重量部に、開口剤(C)としてC−4を4重量部添加してなる組成物を、次に機能層(M14)用として、基材樹脂(A)としてA−9:72重量%、次に開孔材(B)としてB−2:20重量%、改質剤として前出のポリブテン−1:8重量%を混練りした組成物の100重量部に、開口剤(C)としてC−2を4重量部添加してなる組成物を、機能層の配置を「M13/M14/M13」とし、補助層(S)として、S−2を利用し、延伸条件として延伸倍率「タテ/ ヨコ」それぞれ「5.0/4.5」とし、延伸温度65℃にて延伸し、他は実施例2と同様にして熱処理し、S層を剥離し3層のフィルムを得た。
【0078】
このフィルムは厚み25μm、透気度19sec、平均(3層での)多孔度63%、電気抵抗1.06Ω・cm、最大収縮率は79%、最大収縮応力は340g/
mm2 であった、又大きな気孔群(P)の平均孔径は、(M2/M1)各層で、それぞれ約(15/7)μmであった。又気泡壁部分の小さな開口群(I)の数は1つの気泡壁に対しいずれも10個以上で、その平均口径は同様にそれぞれ約(0.10/0.05)μ
mであった、又多孔度はそれぞれ別に同一の延伸・処理条件で別々に製造したM11、M12単層の多孔度はそれぞれ順に(66/58)%であった。又上記(P)の体積比率は、は、それぞれ約(80/73)%であった。
このフィルムの「閉塞 /短絡」温度は、それぞれ「114℃ /235℃」であり、その温度差が121℃と幅広い温度特性を有していた。
【0079】
(実施例14)
実施例2において、その延伸熱処理後、更に加熱温度を90℃として、延伸倍率をタテ2倍、ヨコ1.8倍として延伸を加え、同様な熱処理を実施した。最後に両端の耳部をスリットしながら、延伸された2枚の3層フイルムをそれぞれ巻き取り機で巻き取った。次に剥離用の巻き取り機で、補助層(S層)を剥離した、M層は容易に剥離することが出来、剥離時には静電気の発生もなく、高速剥離性(100m/分)も問題が無かった、更に、各工程中でも各層に適度な密着性があり、延伸安定性も良く、延伸中のパンク現象、空気抜け現象も無く、工程中に剥離してバラバラになることもなかった。又表層には不均一な開口部分も無く、厚み方向にも均一であり、得られた均一な微細通流体性多孔フィルムは、厚み30μm、透気度0.8sec、多孔度79%、電気抵抗0.65Ω・cm、最大収縮率は70%、最大収縮応力は440g/mm2 であった。又大きな気孔群(P)、気泡壁部分の小さな開口群(I)は、破壊され、フイブリル化され、明確に判明出来なかった。このフィルムを濡れ処理として、発煙硫酸でスルホン化し、ニッケル水素電池用セパレータとして、陰極と陽極間にセパレータと電解液を挿入した構造のものとして電池に組立て充放電テストを実施した結果、寿命特性、電気容量特性、高レートでの充放電特性も良く、発生ガスの移動性不足による内圧の上昇も無く、又充電後の40℃での長期保存テストでも自己放電も少なく、好ましい傾向を示した。
【0080】
(実施例15)
実施例1において、押出時の肉厚のみを変更する以外は実施例1と同様に実施し、より薄い多孔フィルムを得た。得られたフィルムは厚み8μm、透気度2sec、多孔度70%であった。
この多孔フィルムM1と延伸開口法で得られたポリプロピレン製多孔フィルムM2(厚み8μm、透気度200sec、多孔度40%)を、M2/M1/M2となるように積層ラミネートし、3層微細通流体性多孔フィルムを得た。
このフィルムを実施例1と同様に、充放電テスト(レート1C)を実施した結果、上記「比較サンプル−1」のフィルムより、充放電曲線が優れていた。
又「閉塞 /短絡」温度は、それぞれ「134℃ /190℃」であり、その温度差が56℃と幅広い温度特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】多孔体の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の、開孔(P)及び開口(I)の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相となる基材の熱可塑性樹脂(A)の50〜99重量%と、これに混合分散する開孔材(B)と開口剤(C)との合計量の1〜50重量%とからなる、微多孔体形成前駆組成物成型体を延伸する事により、基材の熱可塑性樹脂(A)と該開孔材(B)及び開口剤(C)との界面の少なくとも1部が剥離し、開孔(P)及び開口(I)が生成することにより形成された熱可塑性樹脂の微細通流体性多孔体であって、該多孔体が、0.5〜100μmの平均孔径を有する大きな開孔(P)群と、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に、0.01〜30μmの平均開口径を有するより小さな開口(I)群とを有し、透気度が1000(sec /100cc・25μm厚み)以下で、多孔度が30〜90%であることを特徴とする微細通流体性多孔体。
【請求項2】
請求項1に記載の微細通流体性多孔体を更に延伸することにより、該開孔(P)群と該開口(I)群との少なくとも1部を崩壊又は連続させて形成された、少なくともその1部に、不織布状にフイブリル化した構造を有し、透気度が、0.05〜500(sec /100cc・25μm厚み)で、多孔度が30〜90%である事を特徴とする微細通流体性多孔体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(A)が55〜98重量%と、該開孔材(B)が2〜45重量%、該開口剤(C)が0〜15重量%とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A)が60〜94重量%と、該開孔材(B)が5〜40重量%、該開口剤(C)が1〜10重量%とから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族成分を含むポリエステル系樹脂、α−オレフィンと一酸化炭素共重合体、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスルホン系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項6】
開孔材(B)が、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、環球法軟化点が150℃以上の飽和炭化水素系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項7】
開孔材(B)が、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル系樹脂と飽和炭化水素系樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系樹脂と飽和炭化水素系樹脂との組成物から選ばれる1種の組成物からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項8】
多孔体が、0.5〜100μmの平均孔径を有する大きな開孔(P)群と、その開孔(P)の少なくとも1部の開孔壁部分に、少なくとも2個の0.01〜30μmの平均開口径を有するより小さな開口(I)群とを有し、その平均径比(P/I)が少なくとも2であり、透気度が0.5〜500(sec /100cc・25μm厚み)で、ハイブリッド構造を有していることを特徴とするの請求項1〜7のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項9】
多孔体が、2〜200μm厚みのフィルム状、200〜5000μm厚みのシート状、2〜5000μm径の糸状、2〜5000μm径の中空糸状から選ばれる1種のものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項10】
多孔体が、異なった組成から成る層、又は異なった構造から成る層、異なった特性からなる層、から選ばれる1種以上の層の組み合わせから成る多層状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項11】
多孔体が、多孔度30〜80%、透気度0. 5〜500(sec/100cc・25μm厚み)を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項12】
多孔体が、多孔度40〜85%、透気度0. 1〜80(sec/100cc・25μm厚み)を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体の製造方法であって、少なくとも1層の熱可塑性樹脂(A)を基材とする該微多孔体形成前駆層と、少なくとも1層の該前駆層を構成する樹脂と異なる熱可塑性樹脂を主成分とし、且つそれが延伸により通流体性構造とならない組成物の延伸補助層(S)とを共延伸し、次に該補助層を剥離除去する事を特徴とする微細通流体性多孔体の製造方法。
【請求項14】
二層以上からなる多層状微細通流体性多孔体であって、少なくとも一つの層が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の微細通流体性多孔体であって、他の層がこれとは異なる特徴の多孔構造であることを特徴とする微細通流体性多孔体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−144039(P2008−144039A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333031(P2006−333031)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】