説明

微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法

【課題】 複雑な形状を有する微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法を提供する。
【解決手段】 先鋭状の先端部130を有する、シリコンで形成された針模型100をシリコン基板140に固定するステップと、前記シリコン基板140の前記針模型100を固定した面側に鋳型材料を堆積するステップと、前記シリコン基板140および前記針模型100を除去するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法であって、詳しくは、複雑な形状を有する微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体からの採血において、金属製のストレート形状の中実な針(ランセット)が利用される場合がある。採血は、針を皮膚に突き刺すことで微量の出血を生じさせ、これを検査紙で吸い取っている。
【0003】
現状の針は、概ね直径300μm以上と比較的太い。そのため、皮膚の痛点を避けることが困難であること等の理由から、採血は、痛みや恐怖を伴っている。医療現場では、低侵襲性のランセットが強く望まれている。
【0004】
シリコン基板に対してエッチング処理を施すことで鋳型を製造し、鋳型を利用して微細金属部品を作製する技術が知られている(たとえば、非特許文献1)。より細い針を得ることを目的として、この技術を利用して微細針を作製することが考えられている。他に、シリコン基板表面に対して垂直方向に微細針を作製する技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤田博之、小西聡、江刺正喜、佐藤一雄、勝部昭明、前中一介、「EE Text センサ・マイクロマシン工学」、株式会社オーム社、平成17年10月5日、第1版、76頁および77頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の技術を利用して微細針を作製する場合、マスク処理を施したレジスト材料を紫外光やX線により感光させ,それを現像することで鋳型を製造している。この方法では、基板表面に対してレジストを垂直方向にエッチングすることになる。そのため、複雑な形状の微細針を作製することは難しい。
【0007】
シリコン基板に垂直に微細針を作製する場合、ドライエッチングなどを利用して針を作製する。ドライエッチングにおいても、複雑な形状の微細針を作製することは難しい。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、複雑な形状を有する微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る微細針を作製するための鋳型の製造方法は、先鋭状の先端部を有する、シリコンで作成された針模型をシリコン基板に固定するステップと、シリコン基板の針模型を固定した面側に鋳型材料を堆積するステップと、シリコン基板および針模型を除去するステップとを備える。
【0010】
斯かる構成によれば、針模型にはシリコンが利用される。針模型は、予め複雑な形状に形成された後、シリコン基板に固定される。すなわち、針模型は、先鋭状の先端部を有する形状に形成された後、シリコン基板に固定される。
【0011】
シリコン基板の針模型を固定した面側に、鋳型材料を堆積する。鋳型材料は、針模型を覆う程度に堆積される。鋳型材料が堆積された後に、シリコン基板および針模型は、除去される。針模型の形状が鋳型材料に転写され、鋳型材料は微細針の鋳型となる。
【0012】
また、シリコン基板の針模型を固定した面側に鋳型材料を堆積するステップは、シリコン基板の針模型を固定した面側に電極層を形成するステップと、電極層を利用して、鋳型材料を堆積するステップを有する。
【0013】
斯かる構成によれば、電極層は、シリコン基板の針模型を固定した面側に形成される。シリコン基盤は、鋳型材料となる金属を含む水溶液中に浸される。電極層を利用して電解メッキをすることで、鋳型材料は、シリコン基板の針模型を固定した面側に堆積される。
【0014】
また、微細針の作製方法は、上記微細針を作製するための鋳型の製造方法により製造された鋳型に、針材料を充填して作製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明に係る微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の製造方法によれば、複雑な形状を有する微細針を作製することができるというすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る微細針を作製するための鋳型の製造工程の概略図を示す。図1(a)は、針模型の斜視図、図1(b)は、針模型を固定して電極層を形成したシリコン基板の斜視図、図1(c)は、鋳型材料を堆積したシリコン基板の斜視図、図1(d)は、シリコン基板を除去した鋳型材料の斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るシリコン基板に針模型を固定する工程の概略図を示す。図2(a)は、シリコン基板の側面図、図2(b)は、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を塗布したシリコン基板の側面図、図2(c)は、レジストを塗布したシリコン基板の側面図、図2(d)は、針模型を固定したシリコン基板の側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る鋳型材料を堆積する工程の概略図を示す。図3(a)は、スパッタリングにより電極層を堆積する概略図、図3(b)は、電解メッキにより鋳型材料を堆積したシリコン基板の側面図を示す。
【図4】同実施形態に係るシリコン基板を除去する工程の概略図を示す。
【図5】同実施形態に係る製造された鋳型の上方図を示す。
【図6】同実施形態に係る製造された鋳型の針鋳型部における拡大図を示す。
【図7】同実施形態に係る微細針の作製工程の概略図を示す。図7(a)は、鋳型に射出成型して微細針を作製する射出成型機の概略図を示す。図7(b)は、鋳型を除去して作製された微細針の概略図を示す。
【図8】同実施形態に係る作製された微細針先端部の拡大図を示す。図8(a)は、微細針先端部の上方図、図8(b)は、微細針先端部の側面図を示す。
【図9】同実施形態に係る作製された微細針の寸法を示す。図9(a)は、微細針の上方図における寸法、図9(b)は、微細針の側面図における寸法を示す。
【図10】同実施形態に係る他の針模型の斜視図を示す。
【図11】同実施形態に係るさらに他の針模型の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法における一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0018】
本実施形態における微細針770を作製するための鋳型160の製造方法および微細針770の作製方法は、鋳型160を製造する工程と、微細針770を作製する工程とに大別される。微細針770を作製するための鋳型160の製造方法は、先鋭状の先端部130を有する、シリコンで形成された針模型100をシリコン基板140に固定する工程と、シリコン基板140の針模型100を固定した面側に電極層150を形成する工程と、シリコン基板140の針模型100を固定した面側に鋳型材料を堆積する工程と、シリコン基板140および針模型100を除去する工程とを備える。微細針770の作製方法は、針材料を充填する工程と、鋳型160を除去する工程とを備える。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る微細針を作製するための鋳型の製造工程の概略図を示す。図1(a)は、針模型の斜視図、図1(b)は、針模型を固定して電極層を形成したシリコン基板の斜視図、図1(c)は、鋳型材料を堆積したシリコン基板の斜視図、図1(d)は、シリコン基板を除去した鋳型材料の斜視図を示す。
【0020】
針模型100は、ホルダ部110と、針部120とを備える。針部120は、中途部125と、先端部130とを有する。針模型100は、シリコンで形成される。針模型100は、たとえば、電解エッチングを利用して先鋭化される。針模型100は、シリコンを用いて形成される。
【0021】
針模型100の先端部分が電解エッチングを用いて先鋭化される場合、針模型100は、アノードとしてフッ化水素10%水溶液に針部120を浸される。カソードとして、別のシリコンが利用される。先端部130は、アノードとカソードとの間に電圧を印加することで形成される。先端部130は、アノードとカソードとの間に200Vの電圧を印加することで先鋭状となる。
【0022】
先鋭状の先端部を有する、シリコンで作成された針模型100をシリコン基板140に固定する。シリコン基板140は、針模型100とは別途用意される。針模型100は、ウェハボンディング技術を利用して固定される。たとえば、針模型100は、接着剤を利用して固定される。接着剤として、ネガレジスト(東京応化工業株式会社製、OMR(登録商標))が利用される。
【0023】
シリコン基板140の針模型100を固定した面側に電極層150を形成する。電極層150は、Fe−Ni(鉄・ニッケル合金)であってよい。また、Cr−Au(金・クロム合金)であってよい。本実施形態では、電極層150をFe−Niとして説明する。
【0024】
シリコン基板140の針模型100を固定した面側に鋳型材料を堆積する。鋳型材料は、最終的に鋳型160となる。鋳型材料は、Niであってよい。鋳型材料は、電極層150を利用して堆積される。たとえば、鋳型材料は、電極層150を電極として利用して、電解メッキで堆積される。
【0025】
電解メッキを利用して鋳型材料を堆積する場合、シリコン基板140は、カソードとしてスルファミン酸水溶液に浸される。アノードとしてNiを利用する。スルファミン酸水溶液は、ヒータにより加熱される。
【0026】
鋳型材料を堆積した後、シリコン基板140および針模型100を除去する。シリコン基板140および針模型100は、たとえば、KOH水溶液に浸されることで除去される。シリコン基板140および針模型100がエッチングされることで、鋳型160が完成する。
【0027】
鋳型160は、凹形状に針模型100の転写される部分を備える。鋳型160は、ホルダ部110に対応するホルダ鋳型部170と、針部120に対応する針鋳型部180とを備える。針鋳型部180は、中途部125に対応する中途鋳型部185と、先端部130に対応する先端鋳型部190とを有する。
【0028】
図2は、同実施形態に係るシリコン基板に針模型を固定する工程の概略図を示す。図2(a)は、シリコン基板の側面図、図2(b)は、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)を塗布したシリコン基板の側面図、図2(c)は、レジストを塗布したシリコン基板の側面図、図2(d)は、針模型を固定したシリコン基板の側面図を示す。
【0029】
シリコン基板140は、適度な厚さを有する。たとえば、シリコン基板140は、500μmの厚さを有する。シリコン基板140は、スピンコーティング装置210に固定される。スピンコーティング装置210は、シリコン基板140を回転する。HMDS層220は、回転されるシリコン基板140上にHMDSを塗布することにより形成される。HMDS層220は、レジスト材をシリコン基板140に塗布する場合の接着助剤として機能する。
【0030】
レジスト層230は、HMDS層220上に形成される。レジスト層230は、HMDS層220上にOMR(登録商標)を塗布することで形成される。表1に、HMDS層220を形成する場合およびレジスト層230を形成する場合における、スピンコーティング装置210の回転条件を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
シリコン基板140は、スピンコーティング装置210から外される。シリコン基板140は、ヒータ240上に載置される。針模型100は、レジスト層230上に載置される。針模型100は、シリコン基板140とウェハボンディング技術を利用して固定される。たとえば、ヒータ240は、145℃で5分間、シリコン基板140と針模型100とをベーキングすることで固定される。
【0033】
図3は、同実施形態に係る鋳型材料を堆積する工程の概略図を示す。図3(a)は、スパッタリングにより電極層を堆積する概略図、図3(b)は、電解メッキにより鋳型材料を堆積したシリコン基板の側面図を示す。
【0034】
シリコン基板140は、針模型100を固定した後に、スパッタ装置310へと挿入される。スパッタ装置310は、シリコン基板140の針模型100を固定した面側に、電極層150を形成する。たとえば、スパッタ装置310は、針模型100およびシリコン基板140上に、Fe−Niをスパッタリングにより堆積する。
【0035】
電極層150が形成された後、シリコン基板140は、スルファミン酸水溶液に浸される。電極層150は、カソードとして利用される。Niは、アノードとして利用される。スルファミン酸水溶液は、ヒータにより加熱される。電極層150は、電解メッキにより鋳型材料となるNiを堆積する。シリコン基板140は、鋳型材料としてNiを300μmの厚さになるまで堆積する。鋳型材料は、最終的に鋳型160となる。なお、電極層150は、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いて形成されてもよい。表2に、スパッタリング条件を示す。なお、本実施形態においては、DCスパッタリングでFe−Niをスパッタする場合を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
図4は、同実施形態に係るシリコン基板を除去する工程の概略図を示す。鋳型材料を堆積したシリコン基板140は、KOH水溶液中に浸される。シリコン基板140および針模型100は、KOH(水酸化カリウム)水溶液に浸されることで、エッチングされる。鋳型160は、針模型100およびシリコン基板140のエッチングにより完成する。たとえば、シリコン基板140は、KOH20%40g、水160mlの水溶液に浸される。ヒータ410は、72℃で8時間KOH水溶液に浸す。KOH水溶液の溶液の蒸発を防止することを目的として、IPA(イソプロピルアルコール)溶液を混ぜるのが好ましい。表3に、KOH水溶液の成分を示す。
【0038】
【表3】

【0039】
図5は、同実施形態に係る製造された鋳型の上方図を示す。図6は、同実施形態に係る製造された鋳型の針鋳型部における拡大図を示す。
【0040】
図1(d)に対応して、図5に示すように、鋳型160は、針模型100の形状をかたどった溝を備える。鋳型160は、ホルダ部110に対応するホルダ鋳型部170と、針部120に対応する針鋳型部180とを備える。針鋳型部180は、中途部125に対応する中途鋳型部185と、先端部130に対応する先端鋳型部190とを有する。
【0041】
針模型100がシリコン基板140に固定されると、先端部130は、先鋭状を有することで、シリコン基板140から接触しない位置に固定される。シリコン基板140に電解メッキが施されると、鋳型金属は、先端部130とシリコン基板140との間にも堆積される。その後、シリコン基板140を除去すると、図6に示すように、先端鋳型部190は、中途鋳型部185の長手方向に向かう方向おいて凹形状となる。
【0042】
すなわち、先端鋳型部190は、中途鋳型部185の長手方向に向かう方向において、先端部130の先端に対応する部分を底とする凹形状となる。また、先端鋳型部190は、先端部130の中途部125に接続する部分から先端部130の先端までの傾斜に対応する傾斜を有する凹形状となる。したがって、先端鋳型部190は、鋳型160の面のうち、除去されたシリコン基板140の存在していた面側に、片持ち梁状の屋根を有する構造となる。
【0043】
図7は、同実施形態に係る微細針の作製工程の概略図を示す。図7(a)は、鋳型に射出成型して微細針を作製する射出成型機の概略図を示す。図7(b)は、鋳型を除去して作製された微細針の概略図を示す。
【0044】
射出成型機700は、上型710と、下形720と、ランナ部740と、プランジャ750とを備える。下形720は、鋳型160を収容する収容部730を有する。上型710は、針材料を鋳型160に充填するための貫通孔となるランナ部740を有する。プランジャ750は、鋳型160に、針材料を充填して微細針を作製する。
【0045】
鋳型160は、収容部730に収容される。鋳型160は、上型710および下形720により圧接される。ランナ部740は、針材料となるペレット760を充填する。プランジャ750は、ランナ部740に充填されたペレット760を加圧する。プランジャ750は、ペレット760を加圧することで鋳型160にペレット760を充填する。ペレット760は、鋳型160に形成されたホルダ鋳型部170および針鋳型部180に充填される。ペレット760は、微細針770を形作る。
【0046】
ペレット760は、高分子ポリマ、生体高分子、たんぱく質、および生体適合性無機材料とすることができる。高分子ポリマとしては、これらに限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレングリコール、パリレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリイソプレン、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリホルムアルデヒド、ポリアンヒドリド、ポリアミド(6ナイロン、66ナイロン)、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ポリエステルアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン(ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン尿素)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンプロピレン共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒイドロブチレート、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸共重合体、ポリグリコール酸・グリコール共重合体、ポリカプロノラクトン共重合体、ポリジオキサノン、パーフルオロエチレン―プロピレン共重合体、シアノアクリレート重合体、ポリブチルシアノアクリレート、ポリアリルエーテルケトン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂)が含まれる。
【0047】
また、生体高分子としては、例えば、セルロース、でんぷん、キチン・キトサン、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アガロース、ブルラン、マンナン、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン、キシログルカン、グアーガム、リグニン、オリゴ糖、ヒアルロン酸、シゾフィラン、レンチナンなどが含まれ、蛋白質としてはコラーゲン、ゼラチン、ケラチン、フィブロイン、にかわ、セリシン、植物性蛋白質、牛乳蛋白質、ラン蛋白質、合成蛋白質、ヘパリン、核酸が含まれ、糖、あめ、ブドウ糖、麦芽糖、ショ糖およびこれらのポリマーアロイを用いることもできる。
【0048】
さらに、生体適合性無機材料としては、例えば、セラミック、ナノ複合化セラミック、Al2O3/ZnO2複合セラミックス、Si3N4系ナノ複合材料、水酸化アパタイト、炭酸カルシウム、カーボン、グラファイト(ナノグラファイバー)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン複合材料、ハイドロキシアパタイト・ポリマー複合材料、コバルトクロム合金、ステンレスなどが含まれる。
【0049】
ただし好適には、本実施形態のペレット760は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、コラーゲン、でんぷん、ヒアルロン酸、アルギン酸、キチン、キトサン、セルロース、ゼラチンなどを含む生分解性ポリマ、およびこれらの化合物からなる生分解性材料であるのが好ましい。
【0050】
鋳型160は、ペレット760を充填した後に、射出成型機700から外される。鋳型160は、王水に浸される。鋳型160は、王水により溶かされる。微細針770は、鋳型160を王水により溶かすことで得られる。
【0051】
微細針770は、ホルダ部780と、針部790とを備える。針部790は、中途部795と、先端部800とを有する。ホルダ部780は、ホルダ部110と同形状を有する。針部790は、針部120と同形状を有する。すなわち、中途部795は、中途部125と同形状を有する。先端部800は、先端部130と同形状を有する。
【0052】
図8は、同実施形態に係る作製された微細針先端部の拡大図を示す。図8(a)は、微細針先端部の上方図、図8(b)は、微細針先端部の側面図を示す。図9は、同実施形態に係る作製された微細針の寸法を示す。図9(a)は、微細針の上方図における寸法、図9(b)は、微細針の側面図における寸法を示す。
【0053】
ホルダ部780は、厚さ150μmを有する。針部790は、直径150μmを有し、長さ1000μmを有する。先端部800は、針部790に対して、20度角を有する先鋭状となる。針部790は、軸対称となる構造を有する。ここで、軸対称とは、少なくとも上方および側方から針部790をみて、ともに線対称となる構造をいう。たとえば、軸対称とは、先端部800が円錐形状となる構造をいう。同様に、針模型100の針部120は、軸対称となる構造を有する。すなわち、針部790および針部120は、3三次元的な形状である、複雑な構造を有する。
【0054】
図10は、同実施形態に係る他の針模型の斜視図を示す。針模型1000は、ホルダ部1010と、針部1020とを備える。針部1020は、中途部1025と、先端部1030とを有する。針部1020は、径方向に凹凸形状(ギザギザ形状)を有する。先端部1030は、中途部1025の径方向の一方に偏った位置に形成される。
【0055】
図11は、同実施形態に係るさらに他の針模型の斜視図を示す。針模型1100は、ホルダ部1110と、針部1120とを備える。針部1120は、中途部1125と、先端部1130とを有する。針部1120は、三本の針形状を含む。針部1120は、径方向に凹凸形状のない一本の中央針部と、中央針部を挟むように配置され、中央針部と対向する側と逆の側の径方向に凹凸形状(ギザギザ形状)を有する二本の側針部とを有する。先端部1130は、中途部1125の径方向の一方に偏った位置に形成される。このような複雑な形状を有する針模型1000であっても、本実施形態の鋳型160を利用することで微細針を形成することができる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法は、複雑な形状を有する微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法を提供することができる。たとえば、先端部が軸対称の形状を有する場合であっても、微細針を作製することが可能となる。これにより、より低侵襲性の微細針を作製することが可能となる。すなわち、患者にとって痛みや恐怖を伴わない微細針の鋳型および微細針を作製することが可能となる。
【0057】
また、ランセットとして微細針を利用する場合には、1mm以上の微細針が求められるが、シリコン基板の水平方向に鋳型を製造するので、1mm以上の微細針の鋳型および微細針を作製することが可能となる。したがって、より広い医療範囲で使用できる微細針の鋳型および微細針の作製が可能となる。
【0058】
また、微細針の径方向にも長手方向にも複雑な形状を作成することが可能となるので、用途に合わせて様々な形状の微細針の鋳型および微細針を作製することが可能となる。たとえば、より先突部の鋭い針であり、且つ径方向に凹凸のある微細針が必要な場合には、より鋭い針であり、且つ径方向に凹凸のある微細針の模型を用意することで、必要な微細針の鋳型および微細針を得ることができる。したがって、より広い医療範囲で使用できる微細針の鋳型および微細針の作製が可能となる。
【0059】
また、生体適合性を有する微細針を得ることができるので、採血する場合に微細針が折れて体内に残ってしまう場合であっても、血栓等ができることを防止できる。したがって、身体に優しい微細針を作製できる。
【0060】
なお、本発明に係る微細針を作製するための鋳型の製造方法および微細針の作製方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0061】
たとえば、上記実施形態に係る針模型100は、シリコン以外に鋳型材料とは別に除去できる物質で形成されてもよい。たとえば、針模型100は、モノポリマーで形成されてもよい。これにより、多くの針模型100を利用して鋳型160を製造することができ、微細針100の形状を形成するのに最適な材料を利用することができる。
【0062】
また、上記実施形態における針模型100は、ペンタセンやアントラセン、ルブレンなどの多環芳香族炭化水素や、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)などの低分子化合物をはじめ、ポリアセチレンやポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などのポリマーで形成されてよい。
【0063】
また、上記実施形態における針模型100のシリコン基板140への固定は、陽極接合、共晶接合、フュージョン接合、SOI(シリコン・オン・インシュレーター)、および熱圧着接合などを利用して固定しても良い。また、接着剤として、エポキシ、ドライフィルム、BCB(ビスベンゾシクロブテン)、ポリイミド、UV硬化樹脂等を利用しても良い。
【0064】
また、上記実施形態における鋳型材料としては、電解エッチングでシリコン基板140に堆積できる導電性物質であることが好ましい。また、シリコン基板140と同時にエッチングされない物質であることが好ましい。シリコン基板140をエッチングする溶液によるが、Cu、Al、Ag、またはAu等の金属が利用できる。また、電極層150としても、Cu、Al、Ag、またはAu等の金属が利用できる。
【0065】
また、上記実施形態における針模型100は、ホルダ部110を備える構造となっている。射出成型機700が針鋳型部180にペレットを直接充填できる場合、針模型100は、ホルダ部110を備えなくてもよい。針模型100がホルダ部110を備えないので、鋳型160は、ホルダ鋳型部170を備えなくても良い。これにより、針模型100を作製するコストを削減できる。また、シリコン基板140上に多くの針模型100を固定することが出来るようになるので、微細針770の作製コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 針模型
110 ホルダ部
120 針部
125 中途部
130 先端部
140 シリコン基板
150 電極層
160 鋳型
170 ホルダ鋳型部
180 針鋳型部
185 中途鋳型部
190 先端鋳型部
210 スピンコーティング装置
220 HMDS層
230 レジスト層
240 ヒータ
310 スパッタ装置
410 ヒータ
700 射出成型機
710 上型
720 下形
730 収容部
740 ランナ部
750 プランジャ
760 ペレット
770 微細針
780 ホルダ部
790 針部
795 中途部
800 先端部
1000 針模型
1010 ホルダ部
1020 針部
1025 中途部
1030 先端部
1100 針模型
1120 針部
1125 中途部
1130 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先鋭状の先端部を有する、シリコンで形成された針模型をシリコン基板に固定するステップと、
前記シリコン基板の前記針模型を固定した面側に鋳型材料を堆積するステップと、
前記シリコン基板および前記針模型を除去するステップと
を備えることを特徴とする微細針を作製するための鋳型の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板の前記針模型を固定した面側に鋳型材料を堆積するステップは、
前記シリコン基板の前記針模型を固定した面側に電極層を形成するステップと、
前記電極層を利用して、前記鋳型材料を堆積するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の微細針を作製するための鋳型の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微細針を作製するための鋳型の製造方法により製造された鋳型に、針材料を充填して微細針を作製することを特徴とする微細針の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−34944(P2012−34944A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179542(P2010−179542)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔掲載年月日〕 平成22年2月20日 〔掲載アドレス〕 http://www.sciencedirect.com/science?_ob=MImg&_imagekey=B6THG−4YF5R46−3−17&_cdi=5282&_user=1093650&_pii=SO924424710000737&_orig=search&_coverDate=02%2F20%2F2010&_sk=999999999&view=c&wchp=dGLbVlz−zSkzk&md5=9ca84ad4b75afbecfc8973319369f3f2&ie=/sdarticle.pdf
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】