説明

微造粒ポリマーの形成方法

【課題】持続放出特性をもたらす分散剤または可溶化剤、および賦形剤として、製薬産業において特別に使用される微造粒ポロクサマーの形成方法を提供すること。
【解決手段】微造粒ポロクサマー粒子の調製方法が開示されている。粒子は、製剤で特別に使用される。この方法は、常圧より高圧の噴霧用ガス、高い噴霧用ガス温度での噴霧ノズルの使用、ポロクサマーの粘度を低減するための高いフィード温度の使用、場合によっては造粒塔でプリルを形成した後の篩い分けを伴う。ポロクサマー粒子は球状であり、好ましくは106ミクロン以下の公称平均粒径を有する。この方法は、非常に費用効果が高く、急速である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に微造粒(micro-prilled)ポリマーの形成に関し、さらに詳しくは、製剤において有用な微造粒ポロクサマー粒子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の薬剤の多くは、非常に有効で強力であり、したがって所望の効果を提供するのに非常に少量が必要とされる。これは、消費者が使用可能な形態に薬剤を形成する上で問題を引き起こす。この困難な点は、一貫した用量の薬剤が各錠剤中または他の薬剤送達形態中に確実に存在させる方法を考案することである。これを実現するための典型的な方法は、製造方法、および錠剤の最終用途特性を最適化しながら、錠剤を様々な添加剤と配合して、錠剤のサイズを消費者が使用できるサイズまで大きくすることである。添加剤のクラスには、賦形剤、結合剤、崩壊剤、溶解または可溶化剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、および湿潤剤が含まれる。様々な粉末を混合して単一の錠剤にすることに関連する1つの難点は、粒径が異なる場合、最終粉末中、したがって最終錠剤中の様々な成分の分布の均一性を実現することが困難になる可能性があることである。この成分の粒径のばらつきは、しばしばありとあらゆる錠剤で最小効力を確保するために薬剤有効成分の過多量を増加させる必要性をもたらし、薬剤材料の量およびコストを追加することになる。粒径を小さく維持すると、このばらつきが低減する。
【0003】
典型的な可溶化剤には、ポリマーのポロクサマークラスなどの低融点ポリマーが含まれる。これらのポリマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであり、約45から60℃の典型的な融点を有する比較的低い融点のポリマーであるという利点がある。したがって、これらは室温で固体であるが、より高い温度で容易に融解する。
【0004】
最終粉末中の様々な成分の分布の均一性を確保する一方法は、粉末すべてにほぼ同じ粒径をもたせるようにする方法を見出すことである。通常、所望の粒径は、200ミクロン未満、しばしば50ミクロン未満である。ポロクサマーの使用についての問題は、その低い融点によって、ポロクサマーは、粉砕プロセス中に融解する、または炭化するので、粉砕の実施の大半が実施不可能になることである。一解決方法は、ポロクサマーを-70℃未満に冷却し、次いで急速に粉砕するなどの極低温条件下で製造する微粉砕ポロクサマーの使用である。粉砕は、-100℃未満の温度で実施することが好ましい。この解決方法に関連する問題は多数あり、その第1点は、微粉砕ポロクサマーの製造コストである。これには、高価な液体窒素などの冷却剤の使用が必要とされる。労働要素も高く、その一因は比較的低い生産速度である。材料は、凝集を避けるため加温しなければならない。プロセスは遅く、その一因は多くのステップを必要とすることである。最後に、薬剤の形成における医薬品適正製造規準は、潜在的な汚染物質の検出および除去に細心の注意を払うことを要求している。これは、実施するのが困難であり、極低温の微粉砕プロセスによって高価になり、より望ましくないものになる。
【特許文献1】米国特許出願第60/540,338号
【特許文献2】米国特許第5,855,326号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製剤に容易に使用できるポロクサマー粒子の形成のための、迅速で費用効果の高いプロセスを開発することが望ましいはずである。そのプロセスによって、異物による汚染の可能性が最小限に抑えられるとともに、高収量の所望の粒子が生成されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、複数の微造粒ポロクサマー粒子であって、それぞれが一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aの値は約60から約150であり、bの値は約25から約60である)を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの1種または複数のコポリマーを含み、粒子が25℃で球状固体であり、複数の粒子が106ミクロン以下の公称平均粒径を有する複数の微造粒ポロクサマー粒子を提供する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、複数の微造粒ポロクサマー粒子の形成方法であって、一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aの値は約60から約150であり、bの値は約25から約60である)を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの少なくとも1種のコポリマーを提供するステップと、少なくとも1種のコポリマーを、その粘度を1300以下に下げるのに十分な温度に加熱するステップと、加熱された少なくとも1種のコポリマーを噴霧ノズルに通して1つの並流または向流造粒塔に到達させることによって噴霧し、それによって少なくとも1種のコポリマーの複数の粒子が形成され、複数の粒子が公称平均粒径106ミクロン以下を有するステップと、場合によっては、形成された複数の粒子を篩い分けし、約106ミクロンの空孔を有するメッシュスクリーンを通過した粒子を保持するステップとを含む方法である。
【0008】
本発明の上記その他の特徴および利点は、好ましい実施形態の詳細な説明によって、当業者により明らかになるであろう。詳細な説明に添付する図面を下記に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記に述べたように、本発明は、持続放出特性をもたらす分散剤または可溶化剤、および賦形剤として、製薬産業において特別に使用される微造粒ポロクサマーの形成方法を対象とする。ポロクサマーは、一般式:HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは約60から約150という値を有し、bは約25から約60という値を有する)を有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーのクラスである。これらは、25℃の温度で固体であり、45から60℃の範囲の低融点を有する。ポロクサマーは、数平均分子量が約6,000から18,000ダルトンであることが好ましい。具体的な例は、BASF corporationから入手可能であり、以下のものが含まれる。aが約80という値を有し、bが約27という値を有するポロクサマー188とも呼ばれるPluronic(登録商標)F68NF;aが約64という値を有し、bが約37という値を有するポロクサマー237とも呼ばれるPluronic(登録商標)F87NF;aが約141という値を有し、bが約44という値を有するポロクサマー141とも呼ばれるPluronic(登録商標)F108NF;aが約101という値を有し、bが約56という値を有するポロクサマー407とも呼ばれるPluronic(登録商標)F127NF。これらのPluronic(登録商標)化合物は、BASF Lutrol Fグレードとも呼ばれる。この方法によって、このポロクサマーの混合物の使用も可能になる。
【0010】
過去に論議されたように、2004年2月2日出願の米国特許出願第60/540,338号の主題である極低温の粉砕プロセスを用いて、ポロクサマーを超微粉砕する。要するに、この方法は、冷却することができ、好ましくは固体ポロクサマーが粉砕されるとき接触する可動部分がない粉砕機の使用を必要とする。このような粉砕機は、Super Fine Ltd.から入手可能なVortex Millであり、米国特許第5,855,326号に記載されている。粉砕機を液体窒素または冷却された空気で約-85℃未満、より好ましくは約-100℃未満の温度に冷却することが好ましい。この粉砕プロセスは、約90から95psigの圧力に加圧された不活性ガスを使用する。固体ポロクサマーを粉砕機に送り込み、粉砕する。粉砕した後に、生成物を室温に12から72時間加温し、次いで好ましくは篩い分けし、所望の粒径を得る。図1Aおよび1Bは、微粉砕したBASF Corporationのポロクサマー188を2つの倍率の走査顕微鏡写真である。図1Aは倍率100×であり、図1Bは倍率500×である。この方法によって、不規則に造形された粒子が生成されたことが理解できる。粒子の多くは、板状、または他の不規則な形状である。粒子のサイズまたは形状の均一性は高くない。
【0011】
上記に述べたように、この微粉砕方法は、製剤プロセスで使用するためのポロクサマー粒子を生成するには十分満足のいくものではない。本発明は、薬剤に使用するための微粉砕ポロクサマー粒子を作製する代替方法を対象とする。
【0012】
本発明は、篩い分けステップと組み合わせた微造粒ポロクサマー粒子を作製するための噴霧化方法を対象とする。典型的な造粒方法では、液体ポリマーは、噴霧ノズルを通って造粒塔の塔頂に導かれる。このような造粒塔は、当技術分野で周知であり、詳細に記述されない。造粒塔では、冷却された冷却用ガスは、ポリマーの落下液滴を並流または向流に通り過ぎ、それらを凍結させて固体粒子にする。冷却された冷却用ガスは、約-1℃の温度であることが好ましい。使用するノズルは、一般に二流体ノズルまたは三流体ノズルである。噴霧用ガスの典型的な圧力は、一般に50から70psigに維持する。一般に、造粒塔は、様々なポリマーの直径が400から1200ミクロンという大きなサイズのプリルを形成するために使用されている。通常は、ポリマーを93から99℃の温度でノズルに送り込む。これらの条件は、微造粒ポロクサマー粒子を生成するには適していない。このような粒径は、あまりにも大きすぎて製剤には有用でない。
【0013】
典型的な内部混合型二流体ノズルの横断面図は、一般に図2Aの20で示される。ノズル20は、ノズル本体22、およびキャップ24を含む。ネジリング26は、ノズル本体22のネジ山28に係合して、キャップ24をノズル本体22に固定する。ノズル本体22は、中央オリフィス34を有する中央流路30を含む。ノズル本体22は、外側オリフィス36に接続する外側流路38をさらに含む。外側オリフィス36は、中央オリフィス34と同心である。キャップ24は、混合チャンバ40も含む。使用時に、ポロクサマー溶液は、中央流路30にポンプで汲み上げられ、中央オリフィス34を出ていく。噴霧用ガスは、外側流路38に供給され、外側オリフィス36を出ていく。混合チャンバ40では、外側オリフィス36からのガスが、ポロクサマー溶液をせん断し、液滴を形成し、これはガスとともにノズル20から出ていく。ガスと液体の混合は混合チャンバ40で起こるので、これは内部混合型ノズル20と呼ばれる。二流体ノズルの第2のスタイルは、一般に図2Bの20'で示される。このスタイルは、外部混合型ノズル20'と呼ばれ、ノズル20または20'を本発明に使用することができる。外部混合型ノズル20'が一般に好ましい。というのは、特に造粒を一時的に止めた場合、ノズル20'はより熱く維持され、ノズル20'の詰まりが低減されるからである。外部混合型ノズル20'は、ノズル本体22、および短いキャップ24'を含む。ネジリング26は、ノズル本体22のネジ山28に係合して、キャップ24'をノズル本体22に固定する。ノズル本体22は、中央オリフィス34を有する中央流路30を含む。ノズル本体22は、外側オリフィス36に接続する外側流路38をさらに含む。外側オリフィス36は、中央オリフィス34と同心である。キャップ24'は、上記のキャップ24と違って、混合チャンバ40を含まない。使用時に、ポロクサマー溶液は、中央流路30にポンプで汲み上げられ、中央オリフィス34を出ていく。噴霧用ガスは、外側流路38に供給され、外側オリフィス36を出ていく。ガスと液体の混合がノズル20'の外で起こる。複数のノズル20または20'は、標準的造粒塔の塔頂に搭載され、噴霧化された液滴を並流または向流の冷却された冷却用ガスに送り込む。
【0014】
三流体噴霧ノズルの横断面図は、一般に図3の50で示される。ノズル50は、そこを貫通する3つの流路を有するノズル本体52を含む。第1流路54は、中央に配置されている。第2流路56は、第1流路54と同心に配置されている。最後に、第3流路58は、第1および第2流路54、56の両方と同心に配置されている。3つの流路54、56、および58はすべて、ノズル50の端部に共通の出口を有する。使用時に、噴霧用ガスは第1および第3流路54、58を通過し、噴霧化対象の流体は、第2流路56を通過する。流体は、この2つのガス流間でせん断され、一般に第3流路58は、第1流路54に比べてその空孔サイズが大きいため、ガス粘度が低い。複数のノズル50は、標準的造粒塔の塔頂に搭載され、噴霧化された液滴を並流または向流の冷却された冷却用ガスに送り込むことができる。
【0015】
上記に述べたように、ノズル20、20'、または50を使用するサイズの大きいプリルを形成する標準的な方法では、標準的な操作条件は、圧力約50から70psig、および液体フィード温度93から99℃である。噴霧用ガスは、一般に25℃に保持するか、あるいは少なくとも加熱しない。生成されるプリルは、400から1200ミクロンの一般的なサイズ範囲を有する。驚くべきことに、本発明者らは、噴霧化プロセスの通常の操作パラメータを抜本的に変更すること、ならびに造粒塔を使用することによって球状の粒子、または平均サイズ106ミクロン以下のポロクサマーを作製する方法を見出した。
【0016】
さらに具体的には、噴霧化圧力を上昇させると、適切な液滴の生成に非常に有益であることが判明した。二流体または三流体ノズルを使用する噴霧化圧力を100〜150psigに、より好ましくは115〜150psigに上昇させることが好ましい。これは、以前の圧力の2倍を超える上昇である。さらに、ポロクサマーの粘度の低下は非常に有益である。この粘度は、好ましくは1300cps以下、より好ましくは750cps以下、最も好ましくは300cps以下に低下する。この粘度の低下は、ポロクサマーを、以前に使用された温度よりかなり高い温度に加熱することによって最もよく実現される。当業者なら理解されるように、温度の粘度に及ぼす作用は、ポロクサマーの構造に大いに依存している。以下の表1では、BASF Corporationのポロクサマー188および407という本発明で有用な2種のポロクサマーの粘度に及ぼす温度の効果を示している。
【表1】

【0017】
表1から理解できるように、約105℃を超える顕著なポロクサマー温度は粘度を急速に低下させるので、本発明者らは、これより高い温度によって粒子形成が劇的に改善されることを見出した。本発明で重要な大部分のポロクサマーは、炭化温度が約210℃であり、したがってポロクサマーをこれらの温度未満に維持することは有益である。本発明に有用なポロクサマーに好ましい温度は、約120〜205℃、より好ましくは約125〜195℃である。これは、加熱されたポロクサマー用貯蔵槽、およびポロクサマーを噴霧ノズルに送達するための加熱されたラインを使用することによって実現することができる。あるいは、ポロクサマーは、噴霧ノズルに送り込まれるとき熱交換器を通り抜けることによって加熱することができる。これらの温度は、以前に使用された温度をかなり上回るが、所望のサイズ範囲でのはるかによい液滴形成という予想外の利益をもたらす。
【0018】
液滴形成における追加の改善は、噴霧用ガスを加熱することによって見出された。噴霧用ガスを約80〜140℃の温度に加熱することが好ましい。液体流を分解すると、初めは、粒子は球形でなく、通常はリボン状または糸状である。十分な時間が与えられると、この噴霧化された材料は、球状の形をなす。噴霧用ガスが周囲温度、または冷たい場合、この流は造粒塔中で速く凍結しすぎる可能性があり、この噴霧化された材料が球状の形状をなす機会をもつ前に凍結することになる。得られた非球状の材料は、流動性が低減されることになり、これは、材料の取扱いおよび混合時に不利な点となる。噴霧用ガス温度をより高い温度に調整すると、噴霧化された液滴が球状の形状を得るまで凍結を遅らせることが判明した。ガス圧に対する液体流速は、液滴形成に重大な影響を与えることも判明した。具体的には、液体流れを低減させると、所望のサイズ範囲の液滴形成が増大する。液体流速が、好ましくは60キログラム/時以下、より好ましくは45キログラム/時未満、最も好ましくは30キログラム/時未満である。この開示を精査した後、当業者なら、ノズルの寸法は、より小さい液滴サイズに好都合に働くより小さいノズルを用いる噴霧化の実施に影響を与えることが認識されよう。特に、所与のノズルで特定の流速で得られた液滴のサイズは、ガス圧を上昇させることによって低減することができる。しかし、ガス圧を上昇させることができる限界値がある。この限界値を超えると、ガス流れは閉塞され、圧力のさらなる上昇によって液滴サイズの低減は起こらない。閉塞圧力の正確な値は、ノズルの幾何形状によって異なる。この明細書から、当業者なら、ノズルに対してポロクサマーフィード温度、噴霧用ガス圧力、およびポロクサマーフィード速度を変えて、ほぼすべての粒子を所望の粒径範囲内に生成することができよう。上記の考察は、所望のサイズ範囲の液滴を形成するための最良条件は、一般にポロクサマーの分解なしに許容できる最高のポロクサマーフィード温度、通常のガス圧より高く閉塞圧力までの圧力、および経済的に実現できる限り低いポロクサマーフィード速度であることを教示している。実際には、粒径分布が小さすぎると、粒子の流動性に影響を与えるおそれがあり、許容できる生成物サイズ分布を作製するのに必要なものを超えた不必要なエネルギーを入力すると、ユーティリティコストが上がるので、最高値よりやや低い温度をしばしば選択する。
【0019】
通常は、造粒塔から収集された生成物をさらに篩い分けして、大きすぎる粒子を除去する。このような篩い分けは、選択された噴霧化条件に応じて任意である。先に指摘したように、適切な噴霧化条件を用いれば、篩い分けは必要でないかもしれない。しかし、最適条件下でさえ、大きすぎる粒子を篩い分けることが必要となる場合があることが判明した。これらは、操作パラメータの変動のため、かつ造粒塔における生成物の集塊のため起こる。十分な時間で完全には固化しない液滴は、冷却用ガスまたは噴霧用ガス流によって他の液滴または固体粒子に吹き込まれ、集塊を形成するおそれがある。この非固体の形成物は、塔構造物上の塔内に蓄積するおそれもある。これらの蓄積物は、造粒プロセス中に成長し、時には収集された生成物内に包含されるおそれがある。向流造粒塔では、冷却用ガスが粒子を上方に吹き上げ、1個のノズルまたは複数のノズルの方に吹き戻しているので、これらの潜在的な問題はより重大になる可能性がある。並流造粒塔では、冷却用ガスは1個のノズルまたは複数のノズルから下方に流れ去るので、これは問題でなくなる。要約すると、当業者なら、操作パラメータに応じて篩い分けが望ましいかどうか容易に決定するであろう。このような篩い分けは、Kason, Inc.のCentri-Sifterなどのような標準的な篩い分け装置を用いて実現することができる。実際の粒径分布を測定するために、Hosokawa Micron International, Inc.から市販のMicron Air Jet Sieve(登録商標)を使用する。本発明では、造粒塔から得られた生成物を、空孔約106ミクロンの140メッシュスクリーンで篩い分けし、収集することが好ましい。得られた生成物は、約50%以上が空孔約53ミクロンの270メッシュスクリーンを通過するようなサイズ分布を有することが好ましい。
【実施例1】
【0020】
ポロクサマー188をSpray Systems, Inc.の番号1/4J-SS-PF50264-80100DF+245-SSの内部混合型二流体ノズルで噴霧化し、向流造粒塔中にスプレーした。噴霧化条件は、下記の表2に記載するとおりであった。噴霧用ガスの窒素を96℃に維持した。次いで、造粒塔から収集された生成物を140および270メッシュスクリーンで篩い分けして、140メッシュスクリーン上に保持された百分率、および270メッシュスクリーン上に保持された百分率を決定した。代表的な結果を表2に示す。ポロクサマー温度149.6℃で調製された試料は、公称平均粒径がメッシュの53ミクロンより小さい生成物を生じたことに留意されたい。本発明では、得られた複数の粒子は、公称平均直径が106ミクロン以下であることが好ましい。ある種の噴霧化条件では、得られた生成物の篩い分けが必要となることがある。
【表2】

【実施例2】
【0021】
ポロクサマー407を実施例1の内部混合型二流体ノズルで噴霧化し、向流造粒塔中にスプレーした。噴霧化条件は、下記の表3に記載するとおりであった。噴霧用ガスの窒素を88℃に維持した。次いで、造粒塔から収集された生成物を140および270メッシュスクリーンで篩い分けして、140メッシュスクリーン上に保持された百分率、および270メッシュスクリーン上に保持された百分率を決定した。代表的な結果を表3に示す。温度157.3℃で実施したポロクサマーは、50%を超えるものが53ミクロン未満であるような粒径分布を有するものであったことに留意されたい。
【表3】

【0022】
本発明に従って調製されたポロクサマーと、製剤中の微粉砕されたポロクサマーを比較するために、三流体ノズルであるNubilosaモデル10 B 16 Vを使用して、ポロクサマー407を噴霧化した。ポロクサマー407の微粉砕を上記に記載するように実施した。ポロクサマーを向流造粒塔中フィード温度150℃、圧力80psigで噴霧化した。生成物を140メッシュスクリーンで篩い分けした。140メッシュスクリーンを通過した生成物を収集した。この生成物は、69.4%が270メッシュスクリーンを通過し、30.6%がメッシュ上に収集されるサイズ分布を有した。微粉砕(MM)および微造粒(MP)生成物を、異なる3つの錠剤形成方法を使用して、高低の2つのレベルで評価した。使用した医薬品は、カルバマゼピンであった。配合物は、直接圧縮(DC)、湿式造粒(WG)、または溶融造粒(MG)によって、2つのレベルのMMまたはMPポロクサマーで処理した。配合を下記に表4で記載する。Ludipress(登録商標)は、乳糖、ポビドン、およびクロスポピドンの組合せであるBASF Corporationからの製錠助剤(tableting aid)である。以下の略語を表中で使用する:Cは、カルバマゼピンである;MMは、微粉砕ポロクサマー407である;MPは、微造粒ポロクサマー407である;Lは、Ludipress(登録商標)である;LMは、乳糖一水和物である;HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである;CSは、クロスカルメロースナトリウムである;MSは、ステアリン酸マグネシウムである。
【表4】

【0023】
直接圧縮の場合、カルバマゼピン、ポロクサマー、およびludipress(登録商標)を15分間ブレンドし、次いでステアリン酸マグネシウムを添加し、もう1分間ブレンドを続行した。湿式造粒の場合、カルバマゼピン、ポロクサマー、LM、およびHPMCを5分間ブレンドした。次いで、水を顆粒化媒体として使用して顆粒を調製した。顆粒を、オーブン中トレー上で、終夜45℃で乾燥した。次いで、乾燥した顆粒にCSを添加し、2分間ブレンドした。最後に、MSを添加し、顆粒をもう1分間ブレンドした。溶融造粒の場合、カルバマゼピン、ポロクサマー、およびLMを5分間ブレンドした。ブレンドを水浴中、70℃に配置して、ポロクサマーを溶融した。得られた顆粒を氷水浴中で急速冷却した。次いで、CSを添加し、2分間ブレンドした。最後に、MSを添加し、1分間ブレンドした。
【0024】
配合物のすべてについて、各配合物用カプセル剤に各ブレンド500mgを充填することによって、ブレンドの均一性を試験した。水を溶解媒体として使用して、溶解試験を1時間実施し、UV分光光度法によって284nmにおいてカルバマゼピンの分析を行った。その結果は、ポロクサマーの配合物または調製方法のいずれについても有意差が無いことを示した。カルバマゼピンは、可溶性の不十分な薬物であるので、その溶解性を高めるために水とエタノール(70:30)の混合物中でも溶解試験を実施した。配合物はすべて、有意差の無い同じ薬物放出パターンを示し、すべて2時間で完全な放出を示した。
【0025】
次いで、各配合物を、Korsch XL-100プレスで、7/16インチ丸型標準凹金型を使用して25rpmで圧縮して錠剤にした。錠剤の目標重量は500mgであり、錠剤を圧縮力10、15、または20Kニュートンで圧縮した。形成された錠剤を、重量、硬度、崩壊性、および摩損度についてプロセス間で試験した。これらの措置の配合物に有意差はなかった。摩損度は、0.1%〜0.5%であった。
【0026】
結果は、微粉砕または微造粒ポロクサマーを使用して調製された配合物には、物理的差がないことを実証している。微造粒ポロクサマー粒子を、薬剤の配合物の総重量に対して約10〜50重量%の量で使用することが好ましい。微造粒ポロクサマー粒子は、全クラスの医薬品において有用であるが、特に低可溶性および高透過性と定義されるクラスII品、または低可溶性および低透過性と定義されるクラスIVの医薬品の可溶性の不十分なまたは透過性の低い配合物において有用である。クラスIIの薬物の非限定的な例には、カルバマゼピン、メタドン、プロプラノロール、メトプロロール、カルベジロール、チモロール、アテノール、メペリジン、コカイン、アンフェタミン、フェンメトラジン、およびメチルフェニデートが含まれる。クラスIVの薬物の非限定的な例には、ジルチアゼム、ベシル酸アムロジピン、ベラパミル、ベンゾジアゼピン、および抱水クロラールが含まれる。しかし、対費用効果、および調製の容易さに有意差がある。本発明で開示されている微造粒方法は、薬剤で特別に使用されるポロクサマー粒子を作製する上で大幅な前進である。この方法は、はるかにより速く、環境への暴露がはるかにより少なくかつ取扱いステップがより少ないシステムで行うことができ、非常に特殊な装置を必要としない。
【0027】
上記の発明は関連する法的基準に従って記載してきた。したがって説明は例であって、本質的に限定するものではない。開示された実施形態に対する変形および修正は、当業者に明らかになることが可能であり、本発明の範囲内に包含される。したがって、本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってはじめて決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】従来技術法に従って微粉砕されたポロクサマーの倍率100×の走査顕微鏡写真である。
【図1B】従来技術法に従って微粉砕されたポロクサマーの倍率500×の走査顕微鏡写真である。
【図2A】本発明の方法に使用するための内部混合型二流体ノズルの横断面図である。
【図2B】本発明の方法に使用するための外部混合型二流体ノズルの横断面図である。
【図3】本発明の方法に使用するための三流体ノズルの横断面図である。
【図4A】本発明に従って調製された微造粒ポロクサマーの倍率100×の走査顕微鏡写真である。
【図4B】本発明に従って調製された微造粒ポロクサマーの倍率500×の走査顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0029】
20 ノズル
20' ノズル
22 ノズル本体
24 キャップ
24' キャップ
26 ネジリング
28 ネジ山
30 中央流路
34 中央オリフィス
36 外側オリフィス
38 外側流路
40 混合チャンバ
50 ノズル
52 ノズル本体
54 第1流路
56 第2流路
58 第3流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微造粒ポロクサマー粒子であって、
それぞれが一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aの値は約60から約150であり、bの値は約25から約60である)を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの1種または複数のコポリマーを含み、
前記粒子が25℃で球状固体であり、前記複数の粒子が106ミクロン以下の公称平均粒径を有する複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項2】
前記複数の粒子の少なくとも50%が53ミクロン以下の公称平均粒径を有する請求項1に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項3】
前記1種または複数のコポリマーがそれぞれ約6000〜約18000ダルトンの数平均分子量を有する請求項1に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項4】
前記1種または複数のコポリマーが、HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約80という値を有し、bは約27という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約64という値を有し、bは約37という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約141という値を有し、bは約44という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約101という値を有し、bは約56という値を有する);およびその混合物からなる群から選択される請求項1に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項5】
さらに、医薬品を含む請求項1に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項6】
前記複数の微造粒ポロクサマー粒子が全重量に対して約10〜約50重量%の量で存在する請求項5に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項7】
前記医薬品が、カルバマゼピン、メタドン、プロプラノロール、メトプロロール、カルベジロール、チモロール、アテノール、メペリジン、コカイン、アンフェタミン、フェンメトラジン、メチルフェニデート、ジルチアゼム、アムロジピン、ベラパミル、ベンゾジアゼピン、および抱水クロラールからなる群から選択される請求項5に記載の複数の微造粒ポロクサマー粒子。
【請求項8】
複数の微造粒ポロクサマー粒子の形成方法であって、
a) 一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aの値は約60から約150であり、bの値は約25から約60である)を有する、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの少なくとも1種のコポリマーを提供するステップと、
b) ステップa)の少なくとも1種のコポリマーを、その粘度を1300 cps以下に低減するのに十分な温度に加熱するステップと、
c) ステップb)からの加熱された少なくとも1種のコポリマーを噴霧ノズルに通して並流または向流の造粒塔のうちの1つに到達させることによって噴霧化し、それによって前記少なくとも1種のコポリマーの複数の粒子が形成され、前記複数の粒子が公称平均粒径106ミクロン以下を有するステップと、場合によっては
d) ステップc)で形成された前記複数の粒子を篩い分けし、空孔約106ミクロンのメッシュスクリーンを通過した粒子を保持するステップとを含む方法。
【請求項9】
ステップa)が、数平均分子量約6000〜約18000ダルトンを有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの少なくとも1種のコポリマーを提供するステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)が、HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約80という値を有し、bは約27という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約64という値を有し、bは約37という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約141という値を有し、bは約44という値を有する);HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(ただし、aは約101という値を有し、bは約56という値を有する);およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のコポリマーを提供するステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)が、少なくとも1種のコポリマーを約120℃〜約205℃の温度に加熱するステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)が、少なくとも1種のコポリマーを約125℃〜約195℃の温度に加熱するステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)が、ステップb)のコポリマーを、二流体噴霧ノズルまたは三流体噴霧ノズルのうちの1つに通すステップを含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ノズルを二流体噴霧ノズルとなるように選択し、外側ガスの圧力を約100〜約150psigに設定する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
外側ガスを約80〜約140℃の温度に設定するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
外側ガスが、窒素、空気、酸素、ヘリウム、およびアルゴンからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップd)で保持された粒子を医薬品と混合するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項18】
粒子を全重量に対して10〜50重量%の量で混合するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
カルバマゼピン、メタドン、プロプラノロール、メトプロロール、カルベジロール、チモロール、アテノール、メペリジン、コカイン、アンフェタミン、フェンメトラジン、メチルフェニデート、ジルチアゼム、アムロジピン、ベラパミル、ベンゾジアゼピン、および抱水クロラールからなる群から、医薬品を選択するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ノズルを三流体噴霧ノズルとなるように選択し、内側ガスの圧力を約100〜約150psigに設定し、外側ガスの圧力を約100〜約150psigに設定する請求項13に記載の方法。
【請求項21】
内側ガスと外側ガスとを約80〜約140℃の温度に設定するステップをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
内側ガスと外側ガスとが、窒素、空気、酸素、ヘリウム、およびアルゴンからなる群から選択される請求項20に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2006−151980(P2006−151980A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−342508(P2005−342508)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】