説明

微量不純物分析装置および微量不純物分析方法

【課題】 試料ガス中の微量不純物の測定をリアルタイムで行なうことができ、さらに複数種類の試料ガスの分析を短周期の切替えで実施することが可能な微量不純物分析装置および微量不純物分析方法を提供する。
【解決手段】 複数種類の試料ガスに含まれる不純物成分を該試料ガス毎に検出するための微量不純物分析装置であって、該試料ガス毎に並列に配置された、試料ガス送入のための複数の送入経路と、該複数の送入経路が合流する導入経路と、該導入経路に接続された1または2以上のガス分析手段と、を含み、該複数の送入経路の各々に、少なくとも2つの開閉弁と、該2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられ、かつ、該ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の該試料ガスが順次導入される微量不純物分析装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガス中の不純物濃度をリアルタイムに管理し、より純度の安定した原料ガスを供給するための微量不純物分析装置および微量不純物分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体分野においては、ますます微細化される線幅加工や多層化処理等の歩留りを向上させるため、半導体製造工程に供給されるガスの高純度化が要求されつつある。ここ数年において、半導体製造における歩留り向上は、プロセスガス中の不純物濃度の削減による高純度化より、むしろ不純物濃度の変動の抑制によって達成できると考えられるようになっている。よって、プロセスガスの供給時に該プロセスガス中の不純物をより低濃度までリアルタイムかつ統計的に管理することが要求されるようになってきている。具体的には、たとえばサブppbオーダーでの不純物の検出が要求されている。サブppbオーダーの不純物濃度を統計的に管理するためには、要求に見合う性能を有する分析装置が必要となるが、実際の半導体工場においては、コンタミネーションフリーによる絶対的な信頼性や365日無停止操業等も要求される。
【0003】
図4は、従来の不純物分析装置の構成の一例を説明する図である。図4に示す構成においては、減圧弁41a、開閉弁42aを備えた試料ガスAの送入経路43aと、減圧弁41b、開閉弁42bを備えた試料ガスBの送入経路43bとが、それぞれガス分析手段44に接続され得るようになっており、試料ガスAのガス分析を行なう際には、送入経路43aをガス分析手段44に接続するとともに送入経路43bの配管を取り外して該送入経路43bとガス分析手段44とを接続しないようにし、試料ガスBのガス分析を行なう際には、送入経路43bをガス分析手段44に接続するとともに送入経路43aの配管を取り外して該送入経路43aとガス分析手段44とを接続しないようにすることにより、ガス分析手段44に導入するガス種を切替えることができる。
【0004】
しかしながらこのような構成の不純物分析装置においては、試料ガスの切替えの都度配管の取り外しおよび取り付けの作業が伴うため、ガス種の切替えに時間がかかり、リアルタイムでの不純物分析ができないという問題があった。
【0005】
図5は、従来の不純物分析装置の構成の別の例を説明する図である。図5に示す構成においては、減圧弁51a、開閉弁52aを備えた試料ガスAの送入経路53aと、減圧弁51b、開閉弁52bを備えた試料ガスBの送入経路53bとが導入経路54で合流し、該導入経路54とガス分析手段55とが接続されている。ガス分析手段55に導入する試料ガスのガス種は、減圧弁51a,51b,開閉弁52a,52bの開閉により切替えられる。しかし、図5に示すような構成においては、たとえば試料ガスAの測定時に試料ガスBの開閉弁52bがリークすると、導入経路54に試料ガスBが混入する場合がある他、送入経路53aと送入経路53bとの圧力が異なる場合には、開閉弁52bのリークにより、送入経路53a内にまで試料ガスBが逆流する場合がある。これらの場合、ガス分析手段55に試料ガスBが混入することによって、試料ガスAの不純物分析の精度が低下する他、たとえば試料ガスAが酸素ガス、試料ガスBが水素ガスである場合等、試料ガスAと試料ガスBとが混合による危険性を有する組合せである場合には、ガス分析の安全性も確保できないという問題がある。
【0006】
特許文献1には、試料ガスをガスクロマトグラフ法により成分分別した後、キャリアガスとともに大気圧イオン化質量分析計に導入し、ガス中の微量不純物成分を検出する微量不純物の分析方法が提案されている。
【0007】
特許文献2には、複数の試料ガスを切替導入する試料ガス導入系統と分析計とを組み合わせたガス分析装置であって、試料ガスを切替導入した際に、切替前に導入していた試料ガス成分の濃度変化を監視する手段を設けたガス分析装置が提案されている。特許文献2のガス分析装置においては、1台の分析計で複数のガスを分析することができ、また、試料ガスの種類を切り替える際に、切替前に導入していた試料ガス成分の濃度変化速度が所定の濃度変化速度と異なる場合には、遮断弁を閉じたり、経路内を窒素等の不活性ガスでパージしたりすることによって、ガス分析装置の分析運転を停止させることが可能である。しかし、特許文献2のガス分析装置においては、異種ガス系列の配管をまとめ、弁の切替だけで分析機器へガスを切り替えるため、1の試料ガス導入系統の弁にリークが生じると、1の試料ガスと他の試料ガスとが混合したり、1の試料ガスが他の試料ガスの導入経路に逆流したりする場合がある。これらの現象が生じると、分析精度が十分得られないという問題や、混合するガス種によっては安全性が確保できないという問題がある。
【0008】
特許文献3には、ガスクロマトグラフと大気圧イオン化質量分析計とを備えたガス中の微量不純物の分析装置であって,試料ガス導入源から導入される試料ガスを,該大気圧イオン化質量分析計に直接導入する系統と、該ガスクロマトグラフを介して大気圧イオン化質量分析計に導入する系統とを設けるとともに、試料ガスの流路を、該両系統のいずれかに切替えるための流路切替手段を設け、該ガスクロマトグラフには、該ガスクロマトグラフで分離した不純物を同伴して該大気圧イオン化質量分析計に導入するためのキャリアガス導入経路が設けられていることを特徴とするガス中の微量不純物の分析装置が提案されている。特許文献3の分析装置によれば、試料ガスの流路を切替えるだけで試料ガス中の不純物をすべて測定することができる。しかし、特許文献3の分析装置は試料ガスの流路を切替える構成を有するため、異種ガスの混合による分析精度や安全性の低下の問題は依然として存在する。
【特許文献1】特開平6−34616号公報
【特許文献2】特開平11−295270号公報
【特許文献3】特開2004−294446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の課題を解決し、試料ガス中の微量不純物の測定をリアルタイムで行なうことができ、さらに複数種類の試料ガスの分析を短周期の切替えで実施することが可能な微量不純物分析装置および微量不純物分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数種類の試料ガスに含まれる不純物成分を該試料ガス毎に検出するための微量不純物分析装置であって、該試料ガス毎に並列に配置された、試料ガス送入のための複数の送入経路と、該複数の送入経路が合流する導入経路と、該導入経路に接続された1または2以上のガス分析手段と、を含み、該複数の送入経路の各々に、少なくとも2つの開閉弁と、該2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられ、かつ、該ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の該試料ガスが順次導入される微量不純物分析装置に関する。
【0011】
本発明の微量不純物分析装置においては、ガス分析手段を運転状態に維持して該ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことが好ましい。
【0012】
本発明の微量不純物分析装置におけるガス分析手段は大気圧イオン化質量分析装置を含むことが好ましい。また、該ガス分析手段が大気圧イオン化質量分析装置およびガスクロマトグラフからなることも好ましい。
【0013】
本発明の微量不純物分析装置においては、導入経路に接続してパージ経路がさらに設けられることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記のガス分析手段によって分析される試料ガスが、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスから選択される2種以上である微量不純物分析装置に関する。
【0015】
本発明の微量不純物分析装置は、あらかじめ設定されたプログラムに従い完全自動システムによって稼動することが好ましい。
【0016】
また、本発明の微量不純物分析装置においては、減圧手段によって減圧される経路の圧力をリアルタイム測定する圧力監視手段が設けられることが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、複数種類の試料ガスの各々に含まれる不純物成分を該試料ガス毎に検出するための微量不純物分析方法であって、該試料ガス毎に並列に配置され、各々に少なくとも2つの開閉弁と該2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられた、試料ガス送入のための複数の送入経路のうち、第1の試料ガスを送入するための第1の送入経路以外の送入経路における開閉弁を閉鎖して該開閉弁の間の経路を減圧状態とし、かつ、該第1の送入経路における2つの開閉弁を開放して該第1の試料ガスを該第1の送入経路内に送入する第1ステップと、該複数の送入経路が合流する導入経路を経て、該第1の試料ガスを該ガス分析手段に導入する第2ステップと、該ガス分析手段により該第1の試料ガスに含まれる微量不純物を検出する第3ステップと、該第1の送入経路における該2つの開閉弁を閉鎖して該開閉弁の間の経路を減圧状態とする第4ステップと、を含み、該第1ステップにおいて開閉弁が開放される送入経路を他の送入経路に順次切り替えて該ガス分析手段に導入される該試料ガスの種類を変える他は該第1ステップ〜第4ステップと同様の操作を繰り返すことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の該試料ガスを順次導入して微量不純物の検出を行なう微量不純物分析方法に関する。
【0018】
本発明の微量不純物分析方法においては、ガス分析手段に試料ガスを導入する前に、導入経路内をガスでパージするステップをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1のガス分析手段に対して複数種類の試料ガスを順次導入することによって試料ガスごとに微量不純物分析を行なうことができる微量不純物分析装置において、試料ガスの送入経路に減圧手段を設けることにより、ガス分析手段への異種ガスの混入を防止し、分析精度を向上させることができる。また本発明によれば、ガス分析手段への異種ガスの混入を防止できるため、試料ガスが互いの混合により危険が生じるガス種の組合せを含む場合にも分析を安全に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の微量不純物分析装置は、試料ガス毎に並列に配置された、試料ガス送入のための複数の送入経路と、該複数の送入経路が合流する導入経路と、該導入経路に接続された1または2以上のガス分析手段と、を含み、該複数の送入経路の各々に、少なくとも2つの開閉弁と、該2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられ、かつ、該ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の該試料ガスが順次導入される。
【0021】
以下図を参照しながら、本発明に係る微量不純物分析装置および微量不純物分析方法の典型的な態様について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は、本発明に係る微量不純物分析装置の構成の一例を説明する図である。図1に示す構成の微量不純物分析装置においては、試料ガスの送入経路として、減圧弁11a,開閉弁12a,13aを備えた試料ガスAの送入経路14aと、減圧弁11b、開閉弁12b,13bを備えた試料ガスBの送入経路14bとが並列に配置されている。
【0022】
送入経路14a,14bは導入経路16に合流し、該導入経路16はガス分析手段17に接続されている。また、送入経路14aの開閉弁12aと開閉弁13aとの間、および、送入経路14bの開閉弁12bと開閉弁13bとの間をそれぞれ減圧するための減圧手段15が設けられ、さらに送入経路14a,14bと減圧手段15との間には開閉弁15a,15bがそれぞれ設けられている。
【0023】
図1に示す構成の微量不純物分析装置においては、ガス分析手段17に導入する試料ガスの種類を試料ガスAと試料ガスBとで順次切替えることにより、1のガス分析手段17に対して2種類の試料ガスを順次導入し、試料ガス中に含まれる不純物成分を該試料ガス毎に検出することができる。なお、図1では試料ガスが2種類の場合について示しているが、本発明はこれに限定されず、試料ガスが3種類以上とされても良い。3種類以上の試料ガスを分析する際にも、試料ガスの切替えを順次行ない、1のガス分析手段に対して複数種類の試料ガスを順次導入することによって分析を行なうことができる。
【0024】
本発明の微量不純物分析装置においては、ガス分析手段を運転状態に維持して該ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことがより好ましい。たとえば、試料ガスの送入経路とは別途にパージガスの送入経路を設け、試料ガスの切替え時に該パージガスをガス分析手段に導入することによって、ガス分析手段へのガスの供給を中断させないようにすることができる。すなわち、本発明の微量不純物分析装置においては、パージガスの送入経路を設けることがより好ましい。
【0025】
また、試料ガスの送入経路の他にパージガスの送入経路を別途設けた場合、試料ガス切替え時に導入経路等の配管をパージガスでパージし、配管内の残留試料ガスの除去をより短時間で行なうことができる点で好ましい。パージガスの送入経路を別途設ける場合、パージガスとしては、超高純度窒素ガス、超高純度アルゴンガス等の不活性ガスや、試料ガスと同じガス種の超高純度ガス等が好ましく使用され得る。
【0026】
本発明の微量不純物分析装置におけるガス分析手段は、大気圧イオン化質量分析装置を含むことが好ましい。大気圧イオン化質量分析装置は不純物の検出感度に優れ、微量不純物分析の有用な手段となる。また、分析される試料ガスの種類に応じ、該ガス分析手段が大気圧イオン化質量分析装置およびガスクロマトグラフからなることも好ましい。大気圧イオン化質量分析装置およびガスクロマトグラフを併用することは、いずれか一方のガス分析手段では分離して検出することが困難な複数の物質を分析する場合に有用である。
【0027】
本発明において分析される試料ガスとしては、たとえば半導体分野等の各種工程において原料ガスとして供給されるガス等が挙げられ、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、二酸化炭素ガス等が例示される。また典型的には、たとえば、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスから選択される2種以上の組合せが例示される。本発明の微量不純物分析装置は、異種の試料ガスの混合を防止することができるため、たとえば酸素ガスと水素ガスとの組合せのような、混合した場合に危険が生じるガス種の組合せであっても、高い安全性を維持しつつ、ガス分析手段に導入するガス種を切替えて順次分析を行なうことができる。
【0028】
本発明の微量不純物分析装置は、あらかじめ設定されたプログラムに従い完全自動システムによって稼動することが好ましい。本発明においてガス分析手段が無停止で連続運転される場合には、完全自動システムを比較的容易に構築することができる。完全自動システムを採用することによって、人為的操作によるガス分析結果のばらつきの問題や操業時の安全性の問題が解決される。
【0029】
本発明の微量不純物分析装置においては、減圧手段によって減圧される経路の圧力をリアルタイム測定する圧力監視手段が設けられることが好ましい。本発明の微量不純物分析装置においては、分析中の試料ガス以外の試料ガスについては、各々の送入経路の少なくとも一部を減圧状態に維持することにより、導入経路内または分析中の試料ガスの送入経路内へのリークが防止される構造となっている。送入経路内の開閉弁のリークが生じた場合には減圧手段によって減圧される経路の圧力が上昇する。よって、圧力監視手段によって該経路の圧力をリアルタイム測定することにより、送入経路内の開閉弁のリークの有無がリアルタイムでモニターできる。これにより、分析中の試料ガスと他のガスとの混合の有無を確認することができ、分析精度をより向上させることができる。圧力監視手段は、それぞれの送入経路において減圧される経路のいずれかの部位に適宜設置することができる。
【0030】
本発明の微量不純物分析装置においては、試料ガスの送入経路の合流点近傍を減圧状態にできる構成がより好ましく採用される。本発明においては、各々の試料ガスに対応した送入経路から全試料ガスに共通の導入経路を経由して試料ガスがガス分析手段に導入される。よって、送入経路の合流点近傍に試料ガスが残留すると、試料ガス切替え後に分析される試料ガスに、切替え前の試料ガスが混入し、分析精度を低下させる場合がある。試料ガスの切替え時に送入経路の合流点近傍を減圧した場合、該合流点近傍の残留試料ガスが比較的短時間で除去されるため、分析精度がより向上するという利点がある。
【0031】
さらに、本発明の微量不純物分析装置は、配管を所望の温度に維持することを可能とする温度調節手段を備えることが好ましい。具体的には、たとえば、各々の送入経路、該送入経路の合流点近傍、導入経路等に対し、配管を加熱状態に保ち、該配管のベーキングが可能となるような温度調節手段を設けることができる。特に、送入経路の合流点近傍、導入経路が比較的細い配管で形成される場合、配管内壁からのアウトガスが分析結果に大きな影響を与える傾向があり、この傾向は複数種のガスが接触する経路が長くなる程顕著である。これらの配管に温度調節手段を設け、試料ガス切替え時に配管のベーキングを行なうことにより、配管内の残留試料ガスを除去するとともにアウトガスを短時間で放出させることができる。さらに、その後該温度調節手段によって該配管を比較的低温に保ちながらガス分析を行なう場合には、ガス分析中の配管内壁からのアウトガスを低濃度に抑えることができるので、分析精度をより向上させることができる。
【0032】
以下本発明の具体的な実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
<実施の形態1>
本実施の形態においては、図1に示す構成の微量不純物分析装置を用い、試料ガスAの分析をまず行ない、続いて試料ガスBの分析を行なう場合について説明する。まず、試料ガスAの分析を行なうために、試料ガスAの送入経路における減圧弁11a,開閉弁12a,13aを開放し、試料ガスBの送入経路14bにおける減圧弁11b、開閉弁12b,13bを閉鎖する。また開閉弁15aを閉鎖し,15bを開放する(第1ステップ)。これにより、試料ガスAは送入経路14aから導入経路16を経てガス分析手段17に導入される一方、試料ガスBは減圧弁11bの閉鎖によって送入経路14b内への送入が停止される(第2ステップ)。ここで、送入経路14bの開閉弁12b,13b間は、開放された開閉弁15bを経て減圧手段15により減圧状態に維持されるため、万一減圧弁11bのリークが生じた場合にも、開閉弁12b,13b間の圧力が、開閉弁13bの下流の経路より低く維持されるために試料ガスBが開閉弁13bを通過することはなく、試料ガスAと試料ガスBとの混合が防止される。この状態で、試料ガスA中の不純物濃度をガス分析手段17にて測定する(第3ステップ)。試料ガスAの分析が終了した後、送入経路14aの減圧弁11a,開閉弁12a,13aを閉鎖してガス分析手段17への試料ガスAの導入を停止するとともに、開閉弁15aを開放し、開閉弁12a,13a間を減圧状態とする(第4ステップ)。以上の第1〜第4ステップにより、試料ガスAの分析を完了する。
【0034】
次に、上記の第1〜第4ステップと同様の操作を試料ガスBについて行ない、試料ガスBについての分析を行なう。試料ガスBの送入経路14bにおける減圧弁11b、開閉弁12b,13bを順次開放し、さらに開閉弁15bを閉鎖する。これにより、試料ガスBが送入経路14bから導入経路16を経てガス分析手段17に導入される。送入経路14aの開閉弁12a,13a間は、開放された開閉弁15aを経て減圧手段15により減圧状態に維持されるため、万一減圧弁11aのリークが生じた場合にも、開閉弁12a,13a間の圧力が、開閉弁13aの下流の経路より低く維持されるために試料ガスAが開閉弁13aを通過することはなく、試料ガスAと試料ガスBとの混合が防止される。この状態で試料ガスB中の不純物濃度をガス分析手段17にて測定する。試料ガスBの分析が終了した後、送入経路14bの減圧弁11b、開閉弁12b,13bを閉鎖してガス分析手段17への試料ガスBの導入を停止し、さらに開閉弁15bを開放する。
【0035】
以上を繰り返し、ガス分析手段17に導入するガスを試料ガスAと試料ガスBとで順次切替えることにより、試料ガスAおよび試料ガスBに含まれる微量不純物の分析をリアルタイムで行なうことができる。
【0036】
本実施の形態においては、試料ガスAおよび試料ガスBとを順次切替えてガス分析手段17に導入する際に、リアルタイム分析されていない方の試料ガスの送入経路の少なくとも一部が減圧状態に維持されることにより、分析中の試料ガスの送入経路または導入経路への混入が生じず、分析精度の低下が効果的に防止される。これにより、より微量の不純物の分析が可能となる。
【0037】
<実施の形態2>
図2は、本発明に係る微量不純物分析装置の構成の別の例を説明する図である。本実施の形態においては、図2に示す構成の微量不純物分析装置を用いる場合について説明する。図2に示す微量分析装置は、減圧弁21a,開閉弁22a,23aを備えた試料ガスAの送入経路24aと、減圧弁21b、開閉弁22b,23bを備えた試料ガスBの送入経路24bに加え、減圧弁21c、開閉弁22c,23cを備えたパージガスCの送入経路24cをさらに備える。送入経路24a,24b,24cは導入経路26に合流し、該導入経路26はガス分析手段27に接続されている。また、送入経路24aの開閉弁22aと開閉弁23aとの間、送入経路24bの開閉弁22bと開閉弁23bとの間、および、送入経路24cの開閉弁22cと開閉弁23cとの間をそれぞれ減圧するための減圧手段25が設けられ、さらに送入経路24a,24b,24cと減圧手段25との間には開閉弁25a,25b,25cがそれぞれ設けられている。図2に示す構成においては、試料ガスAの送入経路24aと試料ガスBの送入経路24bとが合流した後であってパージガスCの送入経路24cと合流する前の経路に開閉弁28が設けられ、さらに、開閉弁23a,23b,28と減圧手段25との間に開閉弁29が設けられている。
【0038】
本実施の形態におけるガス分析の手順を、試料ガスAの分析をまず行ない、次に試料ガスBの分析を行なう場合について以下に説明する。まず、試料ガスAの分析を行なうために、試料ガスAの送入経路における減圧弁21a,開閉弁22a,23aを開放し、試料ガスBの送入経路24bにおける減圧弁21b、開閉弁22b,23b、および、パージガスCの送入経路24cにおける減圧弁21c、開閉弁22c,23cを閉鎖する。また開閉弁25aを閉鎖し,開閉弁25b,25cを開放する(第1ステップ)。これにより、試料ガスAは送入経路24aから導入経路26を経てガス分析手段27に導入される一方、試料ガスBおよびパージガスCは減圧弁21b,21cの閉鎖によって送入経路24b,24cへの送入が停止される(第2ステップ)。ここで、送入経路24bの開閉弁22b,23b間、および、送入経路24cの開閉弁22c,23c間は、開放された開閉弁25b,25cを経て減圧手段25によりそれぞれ減圧状態に維持されるため、万一減圧弁21b,21cのリークが生じた場合にも、開閉弁22b,23b間および開閉弁22c,23c間の圧力が、それぞれ開閉弁23bおよび開閉弁23cの下流の経路より低く維持されるために試料ガスBおよびパージガスCが開閉弁23b,23cを通過することはなく、試料ガスAと試料ガスBまたはパージガスCとの混合が防止される。この状態で、試料ガスA中の不純物濃度をガス分析手段27にて測定する(第3ステップ)。試料ガスAの分析が終了した後、試料ガスAの送入経路24aにおける減圧弁21a、開閉弁22a,23aを閉鎖してガス分析手段27への試料ガスAの導入を停止し、続いてパージガスCの送入経路24cにおける減圧弁21c、開閉弁22c,23cを開放し、開閉弁25cを閉鎖して、パージガスCを導入経路26を経てガス分析手段27に導入する。また、開閉弁25aを開放し、開閉弁22a,23a間を減圧状態とする(第4ステップ)。
【0039】
本実施の形態においては、開閉弁23a,23b,28と減圧手段25との間に開閉弁29が設けられており、パージガスCによるパージの際に、開閉弁29を開放し、開閉弁23a,23bと開閉弁28との間に残留する試料ガスAを減圧手段25によって除去することができる。これにより、配管内に残留した試料ガスと、次に分析される試料ガスとの混合が防止される。その後、開閉弁29を閉鎖し、さらにパージガスCの送入経路24cにおける減圧弁21c、開閉弁22c,23cを閉鎖し、開閉弁25cを開放し、開閉弁22c,23c間も減圧状態とする。以上の手順により、試料ガスAの分析を完了する。
【0040】
次に、上記の第1〜第4ステップと同様の操作を試料ガスBについて行ない、試料ガスBについての分析を行なう。試料ガスBの送入経路24bにおける減圧弁21b、開閉弁22b,23bを順次開放し、さらに開閉弁25bを閉鎖する。これにより、試料ガスBが送入経路24bから導入経路26を経てガス分析手段27に導入される。送入経路24aの開閉弁22a,23a間、および送入経路24cの開閉弁22c,23c間は、開放された開閉弁25a,25cを経て減圧手段25により減圧状態に維持されるため、万一減圧弁21a,21cのリークが生じた場合にも、開閉弁22a,23a間および開閉弁22c,23c間の圧力が、それぞれ開閉弁23aおよび開閉弁23cの下流の経路より低く維持されるために試料ガスAおよびパージガスCが開閉弁23a,23cを通過することはなく、試料ガスAまたはパージガスCと試料ガスBとの混合が防止される。この状態で試料ガスB中の不純物濃度をガス分析手段27にて測定する。試料ガスBの分析が終了した後、送入経路24bの減圧弁21b、開閉弁22b,23bを閉鎖してガス分析手段27への試料ガスBの導入を停止し、さらに開閉弁25bを開放する。この後、前述の方法でパージガスCによるパージを行ない、配管内に残留する試料ガスBを除去する。
【0041】
以上を繰り返し、ガス分析手段27に導入するガスを試料ガスAと試料ガスBとで順次切替えることにより、試料ガスAおよび試料ガスBに含まれる微量不純物の分析をリアルタイムで行なうことができる。
【0042】
本実施の形態においては、試料ガスAおよび試料ガスBとを順次切替えてガス分析手段27に導入する際に、リアルタイム分析されていない方の試料ガスの送入経路の少なくとも一部が減圧状態に維持されることにより、分析中の試料ガスの送入経路または導入経路への混入が生じず、分析精度の低下が効果的に防止される。これにより、より微量の不純物の分析が可能となる。また、試料ガスの切替え時にパージガスを流すことによって、配管内に残留する試料ガスをより短時間で除去することができる。さらに、試料ガスの切替え時にパージガスをガス分析手段27に供給し続けることにより、ガス分析手段27の無停止連続運転が可能となる。一方、パージ時に送入経路の合流点近傍の減圧を行なうことによっても、配管内に残留する試料ガスをより短時間で除去することができる。
【0043】
<実施の形態3>
図3は、本発明に係る微量不純物分析装置の構成のさらに別の例を説明する図である。本実施の形態においては、図3に示す構成の微量不純物分析装置を用いる場合について説明する。図3に示す構成の微量分析装置は、減圧弁301a、開閉弁302a,303aを備えた試料ガスAの送入経路304aと、減圧弁301b、開閉弁302b,303bを備えた試料ガスBの送入経路304bと、開閉弁302c,303cを備えたパージガスCの送入経路304cとを備える。送入経路304a,304b,304cは導入経路306に合流し、該導入経路306はガス分析手段307に接続されている。また、送入経路304aの開閉弁302aと開閉弁303aとの間、送入経路304bの開閉弁302bと開閉弁303bとの間、および、送入経路304cの開閉弁302cと開閉弁303cとの間をそれぞれ減圧するための減圧手段305が設けられ、さらに送入経路304a,304b,304cと減圧手段305との間には開閉弁305a,305b,305cがそれぞれ設けられている。
【0044】
図3に示す構成の微量不純物分析装置においては、試料ガスAの送入経路304aと試料ガスBの送入経路304bとが合流した後であってパージガスCの送入経路304cと合流する前の経路に開閉弁308が設けられ、さらに、開閉弁303a,303b,308と減圧手段305との間に開閉弁309が設けられている。試料ガス切替え時に開閉弁309を開放することにより、送入経路304aと送入経路304bとの合流点近傍を減圧状態とすることができるため、該合流点近傍の残留試料ガスを比較的短時間で除去することができる。
【0045】
さらに、図3に示す構成の微量不純物分析装置においてはパージ経路310が設けられ、パージガスCが、送入経路304c、導入経路306を経てパージ経路310から系外に排気されることができる。また、試料ガスAの送入経路304aと試料ガスBの送入経路304bとの合流点近傍と導入経路306とにそれぞれ温度調節手段311,312が設けられている。
【0046】
図3に示す構成の微量不純物分析装置においては、パージガスCの送入経路304c、導入経路306、パージ経路310の配管の内径が試料ガスの送入経路の配管の内径より大きくされることも好ましい。この場合、ガス分析手段307に負荷を与えたり、試料ガスの分析精度に影響を及ぼしたりすることなく、試料ガスの種類の切替え時に、送入経路304cから導入経路306を経てパージ経路310にパージガスCを大流量でパージすることができる。これにより、導入経路306の残留試料ガスはより短時間で除去され、試料ガスの切替え所要時間を短縮することができる。
【0047】
図3に示す構成においては、試料ガスの切替え時に該パージガスCがガス分析手段307に導入されることもでき、この場合パージ中もガス分析手段307へのガスの供給が中断されない。よってガス分析手段307を運転状態に維持したまま試料ガスの切替えを行なうことが可能である。
【0048】
本実施の形態におけるガス分析の手順を、試料ガスの分析をまず行ない、次に試料ガスBの分析を行なう場合について以下に説明する。まず、試料ガスAの分析を行なうために、試料ガスAの送入経路における減圧弁301a、開閉弁302a,303aを開放し、試料ガスBの送入経路304bにおける開閉弁302b,303b、および、パージガスCの送入経路304cにおける開閉弁302c,303cを閉鎖する。また開閉弁305aを閉鎖し,開閉弁305b,305cを開放する(第1ステップ)。これにより、試料ガスAは送入経路304aから導入経路306を経てガス分析手段307に導入される一方、試料ガスBおよびパージガスCについては、減圧弁301b、開閉弁302cの閉鎖によって送入経路304b,304cへの送入が停止される(第2ステップ)。ここで、送入経路304bの開閉弁302b,303b間、および、送入経路304cの開閉弁302c,303c間は、開放された開閉弁305b,305cを経て減圧手段305によりそれぞれ減圧状態に維持されるため、万一減圧弁301b,開閉弁302cのリークが生じた場合にも、開閉弁302b,303b間および開閉弁302c,303c間の圧力が、それぞれ開閉弁303bおよび開閉弁303cの下流の経路より低く維持されるために試料ガスBおよびパージガスCが開閉弁303b,303cを通過することはなく、試料ガスAと試料ガスBまたはパージガスCとの混合が防止される。この状態で、試料ガスA中の不純物濃度をガス分析手段307にて測定する(第3ステップ)。試料ガスAの分析が終了した後、試料ガスAの送入経路304aにおける減圧弁301a、開閉弁302a,303aを閉鎖して試料ガスAの送入を停止し、続いてパージガスCの送入経路304cにおける開閉弁302c,303cを開放し、開閉弁305cを閉鎖する。また、開閉弁305aを開放し、開閉弁302a,303a間を減圧状態とする(第4ステップ)。本実施の形態においては、パージガスCをガス分析手段307には導入せず、パージ経路310から系外に排気する。これにより、パージガスを大流量で導入経路306に流すことが可能となるため、該導入経路306内の残留試料ガスをより短時間で除去し、試料ガスの切替え所要時間を短縮できる。
【0049】
本実施の形態においては、この後、開閉弁309も開放し、開閉弁303a,303bと開閉弁308との間に残留する試料ガスAを減圧手段305によって除去する。これにより、配管内に残留した試料ガスと次に分析される試料ガスとの混合が防止される。その後、開閉弁309を閉鎖し、さらにパージガスCの送入経路304cにおける開閉弁302c,303cを閉鎖し、開閉弁305cを開放し、開閉弁302c,303c間も減圧状態とする。以上の手順により、試料ガスAの分析を完了する。
【0050】
図3に示す構成の微量不純物分析装置は温度調節手段311,312を有する。本実施の形態においては、パージガスCによる導入経路306のパージの際、送入経路304aと送入経路304bとの合流点近傍、および導入経路306を、それぞれ温度調節手段311,312によってベーキングしても良い。ベーキングを行なうことにより、該合流点近傍および導入経路306に残留した試料ガスをさらに短時間で除去することができる。ベーキングの条件としては、たとえば、パージガスを高純度窒素ガスとし、流量60Nl/min、ベーキング温度50℃、パージ時間20時間でベーキングする条件等を採用できる。
【0051】
次に、上記の第1〜第4ステップと同様の操作を試料ガスBについて行ない、試料ガスBについての分析を行なう。試料ガスBの送入経路304bにおける減圧弁301b、開閉弁302b,303bを順次開放し、さらに開閉弁305bを閉鎖する。これにより、試料ガスBが送入経路304bから導入経路306を経てガス分析手段307に導入される。送入経路304aの開閉弁302a,303a間、および送入経路304cの開閉弁302c,303c間は、開放された開閉弁305a,305cを経て減圧手段305により減圧状態に維持されるため、万一減圧弁301a,開閉弁302cのリークが生じた場合にも、開閉弁302a,303a間および開閉弁302c,303c間の圧力が、それぞれ開閉弁303aおよび開閉弁303cの下流の経路より低く維持されるために試料ガスAおよびパージガスCが開閉弁303a,303cを通過することはなく、試料ガスAまたはパージガスCと試料ガスBとの混合が防止される。この状態で試料ガスB中の不純物濃度をガス分析手段307にて測定する。試料ガスBの分析が終了した後、送入経路304bの減圧弁301b、開閉弁302b,303bを閉鎖してガス分析手段307への試料ガスBの導入を停止し、さらに開閉弁305bを開放する。この後、前述の方法でパージガスCによるパージを行ない、配管内に残留する試料ガスBを除去する。
【0052】
以上を繰り返し、ガス分析手段307に導入するガスを試料ガスAと試料ガスBとで順次切替えることにより、試料ガスAおよび試料ガスBに含まれる微量不純物の分析をリアルタイムで行なうことができる。
【0053】
本実施の形態においては、試料ガスAおよび試料ガスBとを順次切替えてガス分析手段307に導入する際に、リアルタイム分析されていない方の試料ガスの送入経路の少なくとも一部が減圧状態に維持されることにより、分析中の試料ガスの送入経路または導入経路への混入が生じず、分析精度の低下が効果的に防止される。これにより、より微量の不純物の分析が可能となる。さらに、パージ経路を設けることにより、試料ガスの切替え時にはパージガスを大流量で流すことができ、この場合、配管内に残留する試料ガスをより短時間で除去することができる。また、パージ時に複数の試料ガスの送入経路の合流点近傍の減圧を行なうことによっても、配管内に残留する試料ガスをより短時間で除去することができる。
【0054】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
図2に示す構成の微量不純物分析装置を用い、試料ガスAが水素ガス、試料ガスBがアルゴンガス、パージガスCが窒素ガスである場合において、水素ガスの分析後、窒素ガスをパージし、アルゴンガスへの切替えが可能となるまでのパージ所要時間を評価した。ガス分析手段27としては、API−MS(大気圧イオン化質量分析計)(ルネサステクノロジ社製「UG510−II特型」)を用いた。また本実施例においては、各経路に、SUS316L−EP 1/8サイズ(直径3.2mm)および1/4サイズ(直径6.35mm)の配管を用いた。
【0056】
アルゴンガスの送入経路の開閉弁22b,23b間、および、窒素ガスの送入経路の開閉弁22c,23c間を減圧状態とし、水素ガスを送入し、API-MSにて水素ガスの不純物濃度を測定した。その後、水素ガスの送入経路の開閉弁22a,23a間を減圧状態とし,窒素ガスの送入経路の開閉弁22c,23cを開放して、送入経路24c、導入経路26を経てガス分析手段27に窒素ガスを流量12Nl/minでパージした。
【0057】
パージの完了は、送入経路24c、導入経路26を経由した窒素ガスをガス分析手段27としてのAPI−MSに導入し、該窒素ガス中の水素ガス濃度を測定することにより確認した。本実施例における窒素ガスパージの所要時間は、不純物成分分析値が1ppb未満となるまでに数日間であった。
【0058】
(実施例2)
図3に示す微量不純物分析装置を用い、試料ガスAが水素ガス、試料ガスBがアルゴンガス、パージガスCが窒素ガスである場合において、水素ガスの分析後、窒素ガスをパージし、アルゴンガスへの切替えが可能となるまでのパージ所要時間を評価した。ガス分析手段307としては、実施例1と同機種のAPI−MS(大気圧イオン化質量分析計)を用いた。なお本実施例においては、送入経路304c、導入経路306、パージ経路310に、実施例1で使用したものと同じ1/4サイズ(直径6.35mm)の配管を用い、他の経路に、実施例1で使用したものと同じ1/8サイズ(直径3.2mm)の配管を用いた。
【0059】
アルゴンガスの送入経路の開閉弁302b,303b間、および、窒素ガスの送入経路の開閉弁302c,303c間を減圧状態とし、水素ガスを送入し、API−MSにて水素ガス中の不純物濃度を測定した。その後、水素ガスの送入経路の開閉弁302a,303a間を減圧状態とし、窒素ガスの送入経路の開閉弁302c,303cを開放して、送入経路304c、導入経路306、およびパージ経路310に、窒素ガスを流量60Nl/minでパージした。さらに、パージの開始時から終了時まで、温度調節手段311,312により送入経路の合流点近傍および導入経路306を50℃でベーキングした。
【0060】
パージの完了は、送入経路304c、導入経路306を経由した窒素ガスをガス分析手段307に導入し、水素ガス濃度を測定することにより確認した。本実施例における窒素ガスパージの所要時間は、不純物成分分析値が1ppb未満となるまでに1日であった。
【0061】
(実施例3)
図3に示す構成の微量不純物分析装置を用い、購入直後のコイルチューブ配管、すなわちベーキングを行なっていないコイルチューブ配管を各送入経路として取り付け、アウトガス濃度を評価した。なお該コイルチューブ配管としては、KUZE SUS316L−EP1/4(直径6.35mm) 1.0t×28mを用いた。
【0062】
送入経路Aからアルゴンガスを送入し、導入経路306を経てガス分析手段307に導入し、該アルゴンガス中の水素ガスおよび水の濃度をアウトガス濃度として測定した。ガス分析手段としては、実施例1と同機種のAPI−MSを用いた。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
各送入経路に、あらかじめベーキングを行なったステンレスの配管(KUZE SUS316L−EP1/4 1.0t×28mコイルチューブ配管)を用いた他は、実施例3と同様の操作を行ない、アルゴンガス中の水素ガスおよび水の濃度をアウトガス濃度として測定した。なお上記のベーキングは、0.2〜0.5ppbの水分量の精製アルゴンガスをパージしながら、350℃で24時間行なった。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1および2の結果より、本発明の微量不純物分析装置によれば、ガス分析手段に導入される試料ガスの切替え周期が比較的短時間であっても、不純物成分分析値の誤差が1ppb以下という極めて優れた分析精度が得られることが分かる。さらに、実施例2の結果より、試料ガスの切替え時に大流量でパージガスを流し、また送入経路の合流点近傍をパージ時にベーキングした場合には、配管内の残留試料ガスの除去効率がさらに向上することが分かる。
【0066】
表1に示す結果より、あらかじめベーキングを施した配管を用いた実施例4においては、アルゴンガス中の水素ガスおよび水の濃度が、送入開始から2.0時間経過後には送入開始時の濃度まで復元している。よって、本発明においてあらかじめベーキングされた配管を送入経路として使用した場合には、配管内壁からのアウトガスが試料ガス中に混入することが防止され、分析精度がさらに向上することが分かる。
【0067】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の微量不純物分析装置および微量不純物分析方法は、たとえば半導体製造工程等、純度の安定した原料ガスを供給することが要求される種々の用途に対して好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る微量不純物分析装置の構成の一例を説明する図である。
【図2】本発明に係る微量不純物分析装置の構成の別の例を説明する図である。
【図3】本発明に係る微量不純物分析装置の構成のさらに別の例を説明する図である。
【図4】従来の不純物分析装置の構成の一例を説明する図である。
【図5】従来の不純物分析装置の構成の別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0070】
11a,11b,21a,21b,21c,301a,301b,41a,41b,51a,51b 減圧弁、12a,12b,13a,13b,15a,15b,22a,22b,22c,23a,23b,23c,25a,25b,25c,28,29,302a,302b,302c,303a,303b,303c,305a,305b,305c,308,309,42a,42b,52a,52b 開閉弁、14a,14b,24a,24b,24c,304a,304b,304c,43a,43b,53a,53b 送入経路、15,25,305 減圧手段、16,26,306,54 導入経路、17,27,307,44,55 ガス分析手段、310 パージ経路、311,312 温度調節手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の試料ガスに含まれる不純物成分を前記試料ガス毎に検出するための微量不純物分析装置であって、
前記試料ガス毎に並列に配置された、試料ガス送入のための複数の送入経路と、
前記複数の送入経路が合流する導入経路と、
前記導入経路に接続された1または2以上のガス分析手段と、
を含み、
前記複数の送入経路の各々に、少なくとも2つの開閉弁と、前記2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられ、かつ、
前記ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なうことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の前記試料ガスが順次導入される、微量不純物分析装置。
【請求項2】
前記ガス分析手段を運転状態に維持して前記ガス分析手段に導入する試料ガスの種類の切り替えを行なう、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項3】
前記ガス分析手段が大気圧イオン化質量分析装置を含む、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項4】
前記ガス分析手段が大気圧イオン化質量分析装置およびガスクロマトグラフからなる、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項5】
前記導入経路に接続してパージ経路がさらに設けられる、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項6】
前記試料ガスが、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガスから選択される2種以上である、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項7】
あらかじめ設定されたプログラムに従い完全自動システムによって稼動する、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項8】
前記減圧手段によって減圧される経路の圧力をリアルタイム測定する圧力監視手段が設けられる、請求項1に記載の微量不純物分析装置。
【請求項9】
複数種類の試料ガスの各々に含まれる不純物成分を前記試料ガス毎に検出するための微量不純物分析方法であって、
前記試料ガス毎に並列に配置され、各々に少なくとも2つの開閉弁と前記2つの開閉弁の間の経路を減圧するための減圧手段とが設けられた、試料ガス送入のための複数の送入経路のうち、第1の試料ガスを送入するための第1の送入経路以外の送入経路における開閉弁を閉鎖して前記開閉弁の間の経路を減圧状態とし、かつ、前記第1の送入経路における2つの開閉弁を開放して前記第1の試料ガスを前記第1の送入経路内に送入する第1ステップと、
前記複数の送入経路が合流する導入経路を経て、前記第1の試料ガスを前記ガス分析手段に導入する第2ステップと、
前記ガス分析手段により前記第1の試料ガスに含まれる微量不純物を検出する第3ステップと、
前記第1の送入経路における前記2つの開閉弁を閉鎖して前記開閉弁の間の経路を減圧状態とする第4ステップと、
を含み、前記第1ステップにおいて開閉弁が開放される送入経路を他の送入経路に順次切り替えて前記ガス分析手段に導入される前記試料ガスの種類を変える他は前記第1ステップ〜第4ステップと同様の操作を繰り返すことにより、1のガス分析手段に対して2以上の種類の前記試料ガスを順次導入して微量不純物の検出を行なう、微量不純物分析方法。
【請求項10】
前記ガス分析手段に前記試料ガスを導入する前に、前記導入経路内をガスでパージするステップをさらに含む、請求項9に記載の微量不純物分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322790(P2006−322790A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145679(P2005−145679)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】