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微量元素製剤
説明

微量元素製剤

【課題】病態生理下にある患者に対し、栄養状態の改善を目的として各種の栄養製剤、例えば糖類製剤、たん白アミノ酸製剤、ビタミン製剤、無機質製剤、これら各種栄養成分(栄養素)の適宜の混合製剤、等が投与されているが、その栄養効果について期待されるに至らなかった例が見られ、また栄養製剤に含まれる成分による副作用も懸念されているところ、このような問題点の解消手段を提供すること。
【解決手段】マンガンを投与したときにマンガン排泄機能が正常に働き、且つ経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者用の微量元素製剤であって、高カロリー輸液と混注されるべき、且つ1日当りマンガンをマンガン元素量として0.2〜1.5μmolの量で投与されるべきことを特徴とする前記患者の血液中のマンガン濃度を正常に維持するた
めの微量元素製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病態生理下にある患者の栄養状態の改善、維持に用いられる栄養製剤、より詳しくは微量元素製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
病態生理下にある患者に対し、栄養状態の改善を目的として各種の栄養製剤、例えば糖類製剤、たん白アミノ酸製剤、ビタミン製剤、無機質製剤、これら各種栄養成分(栄養素)の適宜の混合製剤、等が投与されているが、その栄養効果について期待されるに至らなかった例が見られ、また栄養製剤に含まれる成分による副作用も懸念されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような問題点の解消手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
各種疾患に対して適切な栄養管理を行なうためには、患者の全身状態、治療対象の疾患とその病期、合併症、栄養素を摂取できる経路などを正確に認識し、経口栄養法、経腸栄養法および静脈栄養法等により最適の栄養補給を行なわなければならない。特に、経口または経腸管栄養補給が不能または不適な患者においては、栄養補給開始前に栄養状態を把握し、いくつかの栄養評価の指標について検査し、栄養補給の経過中に起こり得るリスクや予後を予測することではじめて期待される栄養状態の改善を計ることができる。
【0005】
従って、経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者に対して、病状と栄養状態を充分把握したうえで、各種の栄養製剤の投与方法、投与量、投与栄養素の種類と配合などを決定しなければならない。
【0006】
本発明者らは、経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者用に投与される微量元素製剤に含まれる有効成分について、前述の栄養指標の評価等を踏まえ過剰投与による副作用が懸念され、従って厳密な栄養管理を行なわなければならない成分を取捨選択した。
【0007】
いわゆる微量元素製剤には、例えば、鉄、亜鉛をはじめとする複数の無機質微量元素が含まれている製剤の「エレメンミック」(商品名、味の素ファルマ社製)や「ミネラリン」(商品名、日本製薬/武田薬品社製)が知られ、これらは例えば静脈栄養法において使用されている。これらの微量元素が含まれる微量元素製剤において、マンガンはマンガン依存性のSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)やピルビン酸カルボキシラーゼを含む種々のミトコンドリア内の酵素の活性を高める作用をし、また、骨の基質となるムコポリサッカライド合成に関与するグルコシルトランスフェラーゼを活性化する作用があり、欠乏すると骨の成長阻害や運動障害、炭水化物、脂肪等の代謝異常や生殖障害を起こし、生体において必須の微量元素であると考えられている。
【0008】
一方、マンガン鉱山労働者等においてマンガンの大量暴露による慢性マンガン中毒症に至る例が知られている。
【0009】
本発明者らは、マンガンによる中毒に関し、前記大量暴露でのみ中毒症状が生じるとの前提に立つことなく、栄養管理下におかれた患者の副作用を詳細に検討し、微量元素製剤に配合される微量のマンガンについては治療対象の疾患とその病期、合併症を考慮して慎
重に投与しなければならないことを明らかにした。併せて、マンガンの生体蓄積量の調整が胆汁への排泄等、吸収よりも排泄機能に依存していることを考慮した。
【0010】
経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者において、経時的に血液中(全血中)のマンガン濃度が正常値を維持できている患者、逆に正常値を下回る患者の双方が存在する。
【0011】
他方、経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者には、例えば糖類、脂肪および/またはアミノ酸類を含有する(高カロリー)輸液を水分や栄養補給のため投与する。これらの輸液には原料や製造工程に由来してマンガンが極めて微量ではあるが無視しえない量存在するため、これらのマンガン量を正確に分析したうえで、前述のマンガン濃度の低下を招くことのないマンガンを含む微量元素製剤の組成を検討しなければならない。本発明は、このような検討を経て完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、マンガンを投与したときにマンガン排泄機能が正常に働き、且つ経口および経腸管栄養補給が不能で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者用の微量元素製剤であって、高カロリー輸液と混注されるべき、且つ1日当りマンガンをマンガン元素量として0.2〜1.5μmolの量で投与されるべきことを特徴とする前記患者の血液中のマンガン濃度を正常に維持するための微量元素製剤、ならびにこのような微量元素製剤を収容する容器に特徴を有するこれらの微量元素製剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者においては、肝機能障害患者、胆道閉塞のある患者、肝硬変患者などマンガン排泄に支障がある患者群と、肝機能が正常でマンガン排泄能が正常に機能する患者群に分けて適切な組成をもつ微量元素製剤の組成を検討し、かつ大量生産可能で確実に無菌保証された製剤を製造できる製法の完成を目指して研究し、前者の患者群に適する微量元素製剤については、マンガン非配合微量元素製剤として既にこれを完成して特許出願した(特願2000−394260)。
【0014】
後者の患者群、すなわち、本発明の微量元素製剤の投与対象となる患者群に関しては、マンガン排泄能が正常に機能しているので、マンガンを全く投与しない栄養管理を長期間行なうと、血液中のマンガン濃度が正常値を下回り適切な栄養状態の維持管理が難しくなる。特に高カロリー輸液の1日投与量(通常、2,000〜3,000ml)中に原料や製造工程に由来するマンガンが0.2μmol程度以下しか含まれていない場合は血液中のマンガン濃度の低下傾向は顕著となる。
【0015】
そのような場合、本発明の微量元素製剤によれば、通常の微量元素を含む栄養製剤の投与による、マンガンの過剰投与による副作用を懸念することなく生体に必須のマンガンを安全且つ継続的に投与することができ適切な栄養管理を施すことができることとなるのである。また、本発明の微量元素製剤は、前記特定の病態生理下の患者として肝機能が正常な患者を挙げることができるが、より好ましくは胆道閉塞をもたない患者に対してより優れた効果を発現し得る製剤と言える。
【0016】
因みに、先に言及した「エレメンミック」や「ミネラリン」は鉄、マンガン、亜鉛、銅およびヨウ素の5種類の微量元素が配合された高カロリー輸液用の微量元素製剤であるが、本発明の微量元素製剤との比較において、本発明の微量元素製剤のほうがマンガンの配合量が少なくマンガン排泄機能が正常な患者に至適な製剤である点が異なる。
【0017】
本出願人は、高カロリー輸液中の原料や製造工程に由来する微量元素を分析・定量し、また患者、健常人等の全血中のマンガン濃度、並びに各種の病態生理下におけるマンガンの経時的な濃度変化を慎重にモニタリングした結果、特に肝機能が正常でマンガン排泄能が正常に機能する患者に対して、マンガンが長期間投与可能で、マンガンが生体内特に脳内に蓄積し難く、パーキンソン様症状等の精神・神経症状の発生を懸念することなく、しかも無菌水溶液として品質保証できる大量供給可能な微量元素製剤の開発を試み、これに成功したのである。
【0018】
このように、本発明の微量元素製剤は、特定の病態生理下の患者に対して特に有効に適用可能な製剤ではあるが、従来の微量元素製剤では休薬あるいは投与量を減量する処置の必要な患者について、適切な栄養管理下で期待通りの病態改善に導く優れた製剤であると言うことができる。
【0019】
本発明の、上に説明した微量元素製剤の剤型や調製法そのものには特別の制限はなく、例えば特開2000−178181号公報記載のようなこの分野での常法に適宜よることができる。なお、配合する各元素においても、同特開2000−178181公報記載の各化合物を使用することができるが、鉄は塩化第二鉄、マンガンは塩化マンガン、亜鉛は硫酸亜鉛、銅は硫酸銅、そしてヨウ素はヨウ化カリウムを用いるのが好ましい。
【0020】
本発明の微量元素製剤は加熱滅菌された無菌水溶液として供給されるが、容器に小分け充填した後加熱滅菌処理することにより、高カロリー輸液に添加、混合しやすい無菌化された溶液剤が大量生産可能となる。
【0021】
また、本発明の製剤の態様としては、バリウムイオンが溶出しない容器に収容された微量元素製剤であることが好ましい。これは、微量元素製剤の調製に当たり、亜鉛や銅の微量元素を硫酸塩の形態で使用したときに、その容器がバリウムイオンを溶出するものであると溶出したバリウムイオンにより前記硫酸塩の硫酸根が硫酸バリウムとなって沈殿し、延いては再溶解しない不溶性微粒子となり、溶液剤とくに注射剤としては使用できなくなるからである。
【0022】
従って、容器がガラス製の場合は、容器の材質が実質的にBaOを含有しないガラスであることが好ましい。本発明の微量元素製剤は、例えば、糖類、脂肪および/またはアミノ酸類を含有する(高カロリー)輸液と一括混注が望まれる場合は、ガラスアンプル入りの製剤としておき、用時アンプルから注射器で吸い出してそのような高カロリー輸液にその容器栓体などを介して注入混合することが行われる。このとき、アンプルの材質としてBaOを含有しないガラスを使用するのである。
【0023】
また、本発明の微量元素製剤は、同じく先に説明したような一括混注の見地からは容器がポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネートおよびポリ−(4−メチルペンテン−1)から選ばれた1種又は2種以上の樹脂を用いた薬液注入器具であることが好ましい。すなわち、いわゆるプレフィルドシリンジ充填の製剤とするのである。
【0024】
このような材質の容器に充填した微量元素製剤の好ましい態様によれば、経時的に硫酸バリウム等の沈殿物を生じることなく製造当初の品質を維持でき長期間保存可能な製剤とすることができる。また、特にプレフィルドシリンジ充填の製剤によれば、例えば高カロリー輸液に添加するための操作を簡便に行なうことができ医療現場における利便性を高めることができる。
【0025】
なお、一日に投与される高カロリー輸液全量(多くの場合、2,000〜3,000ml)中に原料や製造工程に由来するマンガンが0.2μmol以下しか含まれていない場合において、本発明の微量元素製剤によりより好ましい栄養管理が実現できる。すなわち、マンガンを投与したときにマンガン排泄機能が正常に働き、且つ経口および経腸管栄養補給が不能、不充分な患者において、一日に投与される高カロリー輸液全量(上記のように2,000〜3,000ml)中に原料や製造工程に由来するマンガンが0.2μmol以下しか含まれていない高カロリー輸液を投与する場合、高カロリー輸液からのマンガン供給がほとんど期待できないので、マンガンがマンガン元素量として0.2〜1.5μmol溶解された水溶液の微量元素製剤は血液中のマンガン濃度を正常値に維持するより好ましい発明の一態様となる。
【0026】
なお、先に説明したように、鉄、マンガン、亜鉛、銅およびヨウ素の5種の元素が含まれている高カロリー輸液用の微量元素製剤が静脈栄養法において既に使用されていて、これら元素がいずれも有効性及び安全性に特に問題がなかった事実に照らし本発明の微量元素製剤の有効性及び安全性についてもなんらの問題もない。また、その投与方法や用量も従来公知のものに準ずることができる。
【0027】
さて、以上は本発明の微量元素製剤が有効成分として無機質微量元素のみを含有するもの(いわゆる微量元素製剤)を想定した説明であるが、このような微量元素を糖類、蛋白アミノ酸、電解質、ビタミンなどの1種または2種以上と混合した輸液に調製することも可能であり、このような輸液は微量元素配合製剤と言うことができる。
【0028】
このような形態の輸液としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。すなわち、味の素ファルマ社製高カロリー輸液用糖・電解質・アミノ酸液の「ピーエヌツイン」は、I層(糖・電解質)とII層(アミノ酸)が隔壁で仕切られたプラスチック製容器で構成される二室タイプのキット製品であるが、このI層の電解質組成を本発明の微量元素の組成をも満足するような組成に調製したものでよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0030】
実施例1:ガラスアンプル入り微量元素製剤
下記第1表に示す組成のガラスアンプル入り製剤を作成した。すなわち、同表に示す成分のうち、コンドロイチン硫酸ナトリウムを注射用蒸留水に溶解し、これに攪拌下塩化第二鉄水溶液を加え水酸化ナトリウム溶液でpHを6〜8に調整して鉄コロイド液を調製した。この鉄コロイド液に注射用蒸留水を加え攪拌しながら塩化マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅およびヨウ化カリウムを加えて溶かした後、水酸化ナトリウム水溶液にてpHを4.5〜6.0に調整した。このようにして調製した微量元素製剤をBaO含量が0.01%以下の実質的にBaOが含まれていないガラスアンプル20本に各2ml宛充填し、高圧蒸気滅菌装置にて滅菌してアンプル入りの最終製品(製剤)とした。
【0031】
【表1】

【0032】
このガラスアンプルに充填された溶液剤は微量元素としてマンガン、鉄、亜鉛、銅およびヨウ素の5種類の元素を含み、高カロリー輸液添加用のいわゆる微量元素製剤として安全に、継続的に使用することができる。
【0033】
実施例2:プレフィルドシリンジ充填の微量元素製剤
実施例1で調製の溶液剤2mlを、先端にブチルゴム製の摺動可能な密閉栓有するプランジャーと、端部に充填液を用時に排出可能な密閉部を有する環状ポリオレフィン製(エチレン・テトラシクロドデセンコポリマー製)のバレル内に充填後、滅菌処理しプレフィルドシリンジに充填されたマンガン、鉄、亜鉛、銅およびヨウ素の各元素を含有する微量元素製剤を製造した。
【0034】
実施例3:微量元素としてマンガンのみを配合した微量元素製剤
注射用蒸留水にその2ml中に塩化マンガン0.1979mg(マンガン元素量として2ml中に1μmol)を含むように塩化マンガンを溶解して塩化マンガン水溶液を調製し、ガラスアンプルに各2ml宛充填し、高圧蒸気滅菌装置にて滅菌してアンプル入りの、微量元素としてマンガンのみを配合した製品(製剤)を調製した。
【0035】
[発明の効果]
病態生理下にある患者に対し、栄養状態の改善を目的として各種の栄養製剤、例えば糖類製剤、たん白アミノ酸製剤、ビタミン製剤、無機質製剤、これら各種栄養成分(栄養素)の適宜の混合製剤、等が投与されているが、その栄養効果について期待されるに至らなかった例が見られ、また栄養製剤に含まれる成分による副作用も懸念されているところ、本発明によれば、このような問題点を容易に解消することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガンを投与したときにマンガン排泄機能が正常に働き、且つ経口および経腸管栄養補給が不能、不充分で高カロリー静脈栄養に頼らざるを得ない患者用の微量元素製剤であって、高カロリー輸液と混注されるべき、且つ1日当りマンガンをマンガン元素量として0.2〜1.5μmolの量で投与されるべきことを特徴とする前記患者の血液中のマンガン濃度を正常に維持するための微量元素製剤。
【請求項2】
前記患者が肝機能が正常な患者であることを特徴とする請求項1に記載の微量元素製剤。
【請求項3】
微量元素としてマンガンのみをマンガン元素量として0.2〜1.5μmol溶解した水溶液を1〜100ml容の容器に充填密封したことを特徴とする請求項1または2に記載の微量元素製剤。
【請求項4】
マンガンに加え鉄、亜鉛、銅及びヨウ素をさらに含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微量元素製剤。
【請求項5】
前記微量元素製剤がバリウムイオンが実質的に溶出しない容器に収容され、且つ加熱滅菌処理された溶液剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微量元素製剤。
【請求項6】
前記容器の材質が実質的にBaOを含有しないガラスであることを特徴とする請求項5に記載の微量元素製剤。
【請求項7】
前記容器がポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネートおよびポリ−(4−メチルペンテン−1)から選ばれた1種又は2種以上の樹脂を用いた薬液注入器具であることを特徴とする請求項5に記載の微量元素製剤。

【公開番号】特開2012−193182(P2012−193182A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121528(P2012−121528)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【分割の表示】特願2001−54370(P2001−54370)の分割
【原出願日】平成13年2月28日(2001.2.28)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【出願人】(000231648)日本製薬株式会社 (17)
【Fターム(参考)】