説明

微量反応追跡装置および反応方法

【課題】ストップドフローと呼ばれる反応を微量の試料で実現すること。
【解決手段】撥水基板上で水を主体とする溶媒が液滴となり、転がる現象を利用する。液滴はわずかな外力で任意の位置に移動できる。この現象を利用し、反応させたい溶質を含む複数の極微量液を液滴として基板上に配し、液滴同士を衝突させることで高速に反応を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水基板上で、水を溶媒とする反応させたい物質を含む液体が液滴となる現象と、液滴を転がして所定の位置に移動できる現象を利用し、反応させたい溶質を含む複数の極微量液滴を基板上で衝突させ、それぞれの液滴が含む溶質の化学反応を高速に行なわせる反応装置及び反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、化学反応においては、反応させたい物質同士を混合して反応を行うが、このため、一般的には反応させたい溶質を溶液状態にして、別々の容器に入れ、片方の容器から他方の容器に溶液を添加し反応を開始させる。2種の溶液は混じり合い、反応が進行する。
【0003】
ここで、反応の素過程を分析する方法として、ストップドフローと呼ばれる方法が知られている。これは、酵素反応のような、非常に高速で起こる反応を追跡するために開発された方法で、その装置は、たとえば、検出に用いる分光装置に取り付けて使用する。ストップドフローはミリ秒オーダーの反応を追跡するのに向いている。多くの場合、一定温度での測定が可能となっている。
【0004】
原理は、2つの容器に数mlの反応させる溶液を別々にシリンジに入れ、ピペットから急速に押し出して混合し、測定セル内で流れを止めて反応に伴って変化する物理量を高速記録するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストップドフローは、上記のように、ミリ秒オーダーの高速反応を追跡するのに適しているが、近年の生化学分野では、反応の微量化が進み、ほとんどの酵素反応は数μlからおおくても数十μlで反応が行われるようになってきた。生化学分野では、反応させたい試料の組み合わせが多岐にわたり、反応の微量化と、マルチ同時反応によるハイスループット化が主流である。
【0006】
このような流れの下、従来の2本のシリンジに反応させたい液を入れ、同時にセルの中に高速で押し出すタイプのストップドフローでは、微量化とマルチ化が困難である点が問題となってきている。マイクロリットルオーダーの微量反応で同時に多種類の反応の反応素過程を追跡することのできる技術と装置のニーズが高まっている。
【0007】
本発明は、このような世の中のニーズに答えるため、従来のストップドフローとは異なる原理の高速反応追跡が可能な極微量反応追跡装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、撥水基板上で水を主体とする溶媒が液滴となり、転がる現象を利用している。液滴はわずかな外力で任意の位置に移動できる。この現象を利用し、反応させたい溶質を含む複数の極微量液を液滴として基板上に配し、液滴同士を衝突させることで高速に反応を開始させる。液滴は基本的にサブマイクロリットルから数マイクロリットルであるので、瞬時に反応を開始させることができる。
【発明の効果】
【0009】
近代生化学で必須となっているマイクロリットルオーダーでの高速な反応追跡が可能となるのみならず、ハイスループットが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施例1)
実施例1では、DNAのハイブリダイゼーション過程を追跡する目的で本発明を用いる例で説明する。
【0011】
図1(A)は、本発明の実施に好適な反応基板100の平面図、(B)は平面図のA−A位置で矢印方向に見たときの断面図である。1はシリコン基板であり、例えば、その厚さは1mm、大きさは20mm×20mmである。基板1の表面は疎水性領域2とされ、そのなかに、三つの親水性領域3,3,3が配列される。親水性領域3の大きさは、この親水性領域3に保持したい液滴の直径に比べ十分に小さい大きさ、例えば、0.01mmである。三つの親水性領域3,3,3間は、幅の狭い、例えば、2μmの親水性の溝4,4で結ばれる。5は位置決め用のマーカーであり、シリコン基板1の一面に形成される。
【0012】
図1(B)で、基板1の中央部の全部が親水性領域となっているのは、断面位置が、三つの親水性領域3,3,3と、これらを結ぶ親水性の溝4,4であるからである。
【0013】
親水性領域と疎水性領域の作成方法は、例えば、疎水性のシリコン基板1の上面を酸化して、一旦、全領域を親水性のSiO薄膜とする。その後、疎水性とすべき領域のSiO薄膜をフッ酸で溶解除去して疎水性領域を作成すれば良い。あるいは、基板1の材質が表面があらかじめSiO2薄膜形成してある親水性表面の場合、フッ素系樹脂,シリコン系樹脂等の疎水性材料を、その上に配置することで、疎水性領域を形成すれば良い。この場合は、疎水性領域中に存在する親水性領域が、疎水性材料の厚さだけ低くなったものとなる。図1の例は後者方法によって疎水性領域3,4を形成した例である。
【0014】
実施例1では、予め、親水性領域3と3に反応させたい物質を含む液体の液滴を形成しておき、それぞれの液滴を親水性の溝4,4でガイドして親水性領域3に移動させ、親水性領域3で衝突させる。
【0015】
図2(A)は、本発明の実施に好適な反応基板100の親水性領域3と3に反応させたい物質を含む液滴を構成するシステム構成の例を説明する概念図、(B)は、反応基板100の親水性領域3に3と3に反応させたい物質を含む液滴が形成された反応基板100の一部を示す平面図である。
【0016】
図2(A)では、反応させたい物質を含む液滴を形成するためのピペット11の先端の液滴を光学的にモニターしながら反応基板100の親水性領域3と3に反応させたい物質を含む液滴を形成する。19はXY方向に駆動されるステージであり、27はステージ19の駆動装置である。ステージ19の上面には反応基板100が載置される。反応基板100の上部には、液滴に包含されるべき反応させたい物質を含む懸濁液13があらかじめ吸い上げられて保持されているピペット11が配置される。ピペット11の根元部には、チューブ30を介してシリンジポンプ31が設けられ、シリンジポンプ31には駆動装置32が取り付けられている。シリンジポンプ31が駆動装置32により駆動されると、ピペット11内の懸濁液13が反応させたい物質とともに押し出される。なお、ピペット11の根元部とチューブ30との接続部が離れたように図示されているのは、ピペット11を拡大して表示するためであり、分離されているわけではない。
【0017】
また、ピペット11の先端部に形成された液滴を反応基板100の親水性領域3と3に移すためのピペットの上下動駆動装置37が設けられる。ここでは、上下動駆動装置37はピペット11に連係するものとする。上下動駆動装置37に、使用者により、ピペット11を下げる信号が与えられると、ピペット11は下に動き、ピペット11の先端部に形成された液滴を反応基板100の親水性領域3と3に移す。上下動駆動装置37に、使用者により、ピペット11を復旧させる信号が与えられると、ピペット11は図に示す位置に戻る。ピペット11の図に示す位置への復旧は、下げ操作から、パソコン26により、タイムシーケンシャルに行われるものとしても良い。一点差線39は上下動駆動装置37とピペット11との連係を意味する。
【0018】
さらに、ピペット11の先端部の近傍の内部および先端部に形成される液滴の大きさをモニターするための光学系を構成する光源16、集光レンズ17が設けられ、これに対向する位置で反応基板100の下部にコリメートレンズ18およびモニター25が設けられる。したがって、反応基板100およびステージ19は、光学的に透明である必要がある。26は、いわゆる、パソコンであり、モニター25からの入力信号に応じて、あらかじめ格納してある所定のプログラムから得られる制御信号、および、使用者がモニター25の表示画面を見ながら与える操作入力信号28に応じて駆動装置27,32,36および37に必要な信号を与える。なお、ここでは、図示しなかったが、モニター25の検出している画面と同一の表示をパソコン26のモニターに表示するのが便利である。そうすれば、モニター25は、小型のCCDカメラとすることができる。また、操作入力信号28は、パソコン26の入力装置を介して与えられるものである。
【0019】
なお、反応基板100およびステージ19が、光学的に透明でない場合には、上面から照明して、反射光によるモニターとすれば良い。
【0020】
ここで、ピペット11のサイズについて考えると以下のようである。ピペット11は、その先端に、反応させたい物質を含む適当な大きさの液滴を構成できるようにすることが必要である。一方、ピペット11内には、反応させたい物質を含む懸濁液13をピペット11で吸い上げてから使用するので、必要な大きさの液滴21を構成するために必要な容積の懸濁液13を保持できるものである必要がある。
【0021】
反応基板100の親水性領域3に反応させたい物質を含む液滴21を形成する操作について以下説明する。まず、システムが起動されると、使用者は、図1(A)で説明したマーカー5に着目して反応基板100が所定の起動位置にあるように位置決めする。次に、反応させたい物質を含む液滴21の載置位置をピペット11の先端部に対応する位置に移動させる操作入力信号28に応じて、駆動装置27によりステージ19を操作する。反応基板100が所定の位置まで来ると、ピペット11内部の反応させたい物質を含む懸濁液13を排出する操作を行う。この際、ピペット11の先端部の外側と先端部近傍の内部を光源16とモニター25からなる光学系で監視する。モニター25の出力をパソコン26に取り込み、パソコン26の画像演算結果をもとに駆動装置32を動作させて、シリンジポンプ31の送液を制御することができる。
【0022】
モニター25でピペット11の先端を監視しながら、駆動装置32を動作させて、シリンジポンプ31を動かし、反応させたい物質を含む懸濁液13をピペット11の先端から排出して、ピペット先端に液滴21を形成する。このとき、液滴21が所定の大きさになったことをモニター25を通してパソコン26が認識し、駆動装置32に停止指令を出して、シリンジポンプ31を停止させる。
【0023】
このようにして作成した反応させたい物質を含む懸濁液の液滴21は、ピペット11の上下動駆動装置37により、ステージ19の上に置かれた基板1の上の親水性領域3に接触させられ、反応基板100の親水性領域3に移動する。液滴21は、疎水性領域2にはじかれ、エネルギー的に安定な親水性領域3の位置で自己形成的に固定される。反応させたい物質を含む液滴21が反応基板100の親水性領域3に移動したことが確認されると、使用者は、ステージ19を移動させ、反応基板100の親水性領域3に液滴21を載置する操作に移る。この操作は、ピペット11を交換して、中に、他の反応させたい物質を含む懸濁液を吸引して、前述した操作をくり返して、実行できる。
【0024】
図2(B)は、図2(A)を参照して説明した、反応基板100に反応させたい物質を含む液滴を形成するシステムによって、反応基板100の親水性領域3、3に反応させたい物質を含む液滴が載置された結果を示す平面図である。反応基板100上の親水性領域3、3に反応させたい物質を含む液滴15、15が配置されている。
【0025】
図3(A)は、図2(B)に示すように、反応基板100上に形成された二つの液滴15、15を衝突させて反応させるための装置の実施例の概要を示す斜視図、(B)は、二つの液滴15、15が衝突して、一つの液滴になった様子を模式的に示す図である。図3で説明する装置は、独立の形であるが、図2で説明した液滴を構成するシステムと一体的で隣接した形で構成され、ステージ19の制御による反応基板100の移動、二つの液滴15、15を移動させるガスの噴射等をパソコン26で制御できるものとするのが好都合である。
【0026】
図3(A)において、反応基板100の上下には、液滴のモニターおよび反応のモニターのために、それぞれ光学系が設けられる。二つの液滴15、15とこれらを結ぶ親水性の溝4,4の延長線上にガス噴射ノズル22,22が設けられる。それぞれのガス噴射ノズル22,22には、ガス圧力タンクに接続されたチューブ24,24が接続され、バルブ23,23の開閉により、ガス噴射ノズル22,22によるガス噴射が制御される。ガス噴射ノズル22,22からガスが噴射されると、液滴15、15は親水性の溝4,4にガイドされて親水性領域3に移動し、親水性領域3上で衝突する。
【0027】
図3(B)は、二つの液滴15、15が親水性の溝4,4上を移動して、親水性領域3上で衝突して、一体化した状態を示す。
【0028】
図3(A)において、上部の光源41より照射された光は、フィルター42により特定の波長に調整されコンデンサレンズ43によって集光されて、親水性領域3に照射される。照射された光は、透過光として対物レンズ47、ダイクロイックミラー48、ミラー49、フィルター51を介してカメラ52に誘導され、親水性領域3の透過光像は、カメラ52の受光面に結像する。すなわち、親水性領域3が所定の位置にあることを確認できる。従って、液滴形成と同様、反応基板100およびステージ19は光学的に透明な素材であることが望ましい。具体的には、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等のガラスや、ポリスチレン等の樹脂やプラスチック、あるいはシリコン基板等の固体基板等が好適である。反応基板100の基板1にシリコン基板を用いる場合は、上部の光源41は波長900nm以上の波長の光とするのが良い。
【0029】
親水性領域3が所定の位置にあること、すなわち、二つの液滴15、15とガス噴射ノズル22,22がライン上に並んだことが確認されると、使用者はパソコン26に操作信号28を与えて、バルブ23,23をパルス的に開として、ガス噴射ノズル22,22からガスを噴射させる。ガス噴射ノズル22,22からガスが噴射されると、液滴15、15は親水性の溝4,4にガイドされて親水性領域3に移動し、親水性領域3上で衝突する。
【0030】
ここでは、液滴15、15は同じサイズのイメージとしたが、計測したい反応によっては、それぞれの大きさが異なっていても良い。この場合、二つの液滴15、15が、親水性領域3上で衝突するように、ガス噴射ノズル22,22から噴射されるガスが制御される必要がある。このためには、パソコン26に対して、二つの液滴15、15のサイズを入力して、パソコン26が与える信号が適当なものになるように、パソコンに適当なプログラムを持たせることは当然である。この問題は、サイズのみならず、液滴に含まれる反応させたい物質によっても考慮する必要がある場合があり得る。
【0031】
二つの液滴15、15が、親水性領域3上で衝突して、液滴15となって、親水性領域3上で反応が起こる状況は上述した光学系で計測できるのみならず、下部の光学系でも計測できる。
【0032】
下部の光源45より照射された光は、フィルター46により波長選択された後に、ダイクロイックミラー48によって対物レンズ47に誘導され、液滴15内部の反応観察の励起光として用いられる。液滴15内部から発した蛍光は再度対物レンズ47によって観測され、ダイクロイックミラー48とフィルター51によって励起光をカットした後の蛍光をカメラ52で観察することができる。
【0033】
このとき、ダイクロイックミラー48、フィルター42、46、51の組み合わせを調整することで、透過光のみをカメラ52で観察したり、あるいは蛍光のみを観察したり、透過光像と蛍光像を同時にカメラ52で観察することもできる。
【0034】
カメラで得られた画像データはパソコン26によって解析される。CCDカメラ52で観察を行う。ここでも、図示しなかったが、CCDカメラ52の検出している画像信号はパソコン26のモニターに表示するのが便利である。
【0035】
DNAのハイブリダイゼーション過程を追跡する目的の例について、具体例を説明する。二つの液滴15、15に、お互いに相補的な28塩基長の合成1本鎖DNAを0.2pmol/μlの濃度にしてそれぞれA液とB液とする。溶媒は、500mMのNaClを含む10mMのTris−HCl(pH8.0)である。A液,B液ともに、2本鎖DNAに特異的にインターカレーとするエチヂウムホモダイマーが添加されている。反応基板100上の親水性領域3にA液を1μl滴下し液滴15を形成する。親水性領域3にB液を1μl滴下して液滴15を形成する。二つの液滴を転がして親水性領域で衝突させる。衝突した二つの液滴は、一つの液滴15になり親水性領域3にアンカーされて、安定にその位置に留まりいるので、A液とB液によるハイブリダイゼーション過程が進む。
【0036】
二つの15、15の親水性領域3で衝突する様子は上側の光学系でモニターして検出することができ、一つの液滴15に合体されたA液とB液によるハイブリダイゼーションは下側の光学系でモニターし、560nm近傍の蛍光強度を分光して計測することができる。
【0037】
図4は、液滴15の蛍光強度をモニターして得られる蛍光強度の経時的な変化を示す波形図である。液滴衝突後数十m秒のスレッショルド61後に蛍光強度が急激に増強する。蛍光強度の増加は1本鎖DNA同士がハイブリダイズし、2本鎖となり、そこにエチヂウムホモダイマーがインターカレートするために起きる。反応は少なくても62,63,64の3段階になっており、ハイブリダイゼーションが、1本鎖DNA同士のハイブリダイズしやすい部分を核として起こり、順次ハイブリダイゼーションが分子内で進行していくと考えられる。
【0038】
実施例1では、反応液を衝突により混合して流れを止めて測定するというストップドフローと同様な反応形式となっているので、従来のストップドフローと同様なデータを得ることが容易にできる。また、液量が極微量なので貴重な試料の使用量を少なくできる。反応は液滴の衝突面での分光学的変化を顕微分光を用いて追跡してもよいし、大きな液滴に小さな液滴を打ち込み、同じく液滴の衝突面での分光学的変化を追跡しても良い。外部からのエネルギーを与えて反応が促進される問題はあるが、一瞬超音波を照射して攪拌混合して反応を開始させて液滴全体を分光することも有効である。
【0039】
(その他の実施例)
図5は、顕微分光装置を用いた分光測定に好都合な反応基板100の例を示す平面図である。図1(A)と対比して容易に分かるように、この実施例では、基板1上に、親水性領域3,3および3と、親水性の溝4,4の組を、多数併設したものである。したがって、Aグループの反応物質を含む多数種の液滴を親水性領域3にアレー状に並べ、これと反応させるBグループの反応媒質を含む多数種の液滴を親水性領域3にアレー状に並べ、Bグループの液滴アレーの液滴を順次Aアレーの液滴に衝突させることで、多数種の反応を時間差で開始させ、計測を行うことができる。このためには、ガス噴射ノズル22,22の組を、親水性領域3,3および3と、親水性の溝4,4の組の数だけ設けて、それぞれのバルブをパソコン26で時系列的に開閉するか、パソコン26でステージ19を少しずつ移動させて、所定の位置まで移動するつどバルブを開閉する等の制御が必要である。
【0040】
実施例1では、親水性領域3,3および3と、親水性の溝4,4の組により、二つの液滴を衝突させるものとしたが、例えば、図1の親水性領域3,3および3と、親水性の溝4,4の組と同じ構成の組を親水性領域3が重なる形で形成するとともに、これに対応するガス噴射ノズル22,22の組を設ければ、四つの液滴の衝突による反応を観察することができる。
【0041】
また、反応させる目的の複数の反応前駆体をそれぞれ異なる液滴に溶解して、衝突させ反応させたり、細胞を挿入した液滴と、異細胞活性物質を含む液滴とを異なる液滴に溶解して、衝突させ反応させ細胞への影響を観察したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は、本発明の実施に好適な反応基板100の平面図、(B)は平面図のA−A位置で矢印方向に見たときの断面図である。
【図2】(A)は、本発明の実施に好適な反応基板100の親水性領域3と3に反応させたい物質を含む液滴を構成するシステム構成の例を説明する概念図、(B)は、反応基板100の親水性領域3に3と3に反応させたい物質を含む液滴が形成された反応基板100の一部を示す平面図である。
【図3】(A)は、図2(B)に示すように、反応基板100上に形成された二つの液滴15、15を衝突させて反応させるための装置の実施例の概要を示す斜視図、(B)は、二つの液滴15、15が衝突して、一つの液滴になった様子を模式的に示す図である。
【図4】液滴15の蛍光強度をモニターして得られる蛍光強度の経時的な変化を示す波形図である。
【図5】顕微分光装置を用いた分光測定に好都合な反応基板100の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
100…反応基板、1…シリコン基板、2…疎水性領域、3,3,3…親水性領域、4,4…親水性の溝、5…位置決め用のマーカー、11…ピペット、13…反応させたい物質を含む懸濁液、16…光源、17…集光レンズ、18…コリメートレンズ、19…XY方向に駆動されるステージ、21…液滴、22,22…ガス噴射ノズル、23,23…バルブ、24,24…チューブ、25…モニター、26…パソコン、27,32,37…駆動装置、28…操作入力信号、30…チューブ、31…シリンジポンプ、41…光源、42…フィルター、43…コンデンサレンズ、47…対物レンズ、48…ダイクロイックミラー、49…ミラー、51…フィルター、52…カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる反応前駆体をそれぞれ独立に含む液滴を基板上で移動させて衝突させる手段と、衝突した液滴の反応を追跡する検出手段を有する高速微量反応装置。
【請求項2】
異なる反応前駆体をそれぞれ独立に含む液滴を基板上で移動させて衝突させる手段と、衝突した液滴を攪拌する手段と、衝突した液滴中の反応を追跡する検出手段を有する高速微量反応装置。
【請求項3】
反応させる目的の複数の反応前駆体をそれぞれ異なる液滴に溶解し、各液滴を基板上の異なる位置に配置させ、各液滴を基板上で衝突させ反応を行う微量反応方法。
【請求項4】
細胞を挿入した液滴と、異細胞活性物質を含む液滴とを、各液滴を基板上の異なる位置に配置させ、各液滴を基板上で衝突させ細胞への影響を観察する微量反応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−105752(P2006−105752A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292142(P2004−292142)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(504296024)有限責任中間法人 オンチップ・セロミクス・コンソーシアム (39)
【Fターム(参考)】