説明

微量液体の均一化方法及び装置

【課題】 複数の微量液体を迅速且つ精度良く混合する。
【解決手段】 吸引ノズル14により第1液25を吸引する((B)参照)。次に、吸引ノズル14により第2液26を吸引する((C)参照)。吸引した第1液25,第2液26をノズル先端14aに送り出し、ノズル先端14aに混合液27の液溜まり28を形成する((D)参照)。液溜まり28内で第1液25,第2液26の混合液27が慣性により流動化し、攪拌が促進される。次に、液溜まり28を吸引して液通路14b内に混合液27を引き込む。混合する液の種類に応じて攪拌が完了する液溜まり形成回数Nを予め求めておき、混合液種に応じて液溜まり形成回数Nを決定する。(D),(E)を繰り返し行い、液溜まりをN回分形成し、攪拌を終了する。液溜まり形成とこれの吸引との繰り返しによって複数の液が、迅速に混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量液体の均一化方法及び装置に関し、特に吸引ノズル先端部で微量液体を均一化する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置における試薬及び検体、検体及び希釈液などの複数種類の液体を混合する場合に、例えば反応セル内へ複数種類の液体を注ぎ、攪拌棒で攪拌することにより混合を行っていた。別の方法としては、容器に複数種類の液体を注ぎ、その後吸引ノズルで吸引・吐出を繰り返すことで混合する方法がある(例えば特許文献1)。さらには、吸引ノズルの内部に内径差を形成し、この内径差部分に複数の液体を繰り返し移動させて混合する方法も提案されている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−239334号公報
【特許文献2】特開2000−304754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の液体混合方法によると、微量(例えば20μL(リットル)以下)の液体を混合しようとすると、混合用容器、吸引ノズル内壁などへの付着量が多くなり、実質的に正確な均一化が行えなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、微量液体を正確に且つ迅速に均一化することができるようにした微量液体の均一化方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、吸引ノズルにより液を前記吸引ノズル内の液通路内に吸引する吸引工程と、吸引した液を前記液通路から送って前記吸引ノズルの先端で液溜まりを形成し、この液溜まりの形成により液を均一化する液均一化工程とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明では、液給排機構と、この液給排機構に連結された吸引ノズルと、前記液給排機構を制御して、液を前記吸引ノズル内の液通路内に吸引し、次に吸引ノズルの先端に液溜まりを形成して液を均一化させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記吸引ノズルの液通路内で前記吸引した液を移動させ、前記液溜まりを複数回形成することを特徴とする。また、前記液均一化工程は、前記吸引ノズルの液通路の途中に、液通路に対してその断面積が大きくなって拡開する拡開部を設けておき、この拡開部により液溜まりを形成することを特徴とする。また、本発明では、前記吸引工程により複数の液を順次吸引し、前記液均一化工程により前記複数の液を混合させることを特徴とする。また、前記複数の液を吸引する際に、次の液を吸引する前に気体を吸い込み、前記吸引ノズルの液通路内に気体による液分離層を形成することを本発明は特徴とする。さらに、前記液均一化工程により均一化された液を排出する工程を備えることを本発明は特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
吸引ノズルにより液を前記吸引ノズル内の液通路内に吸引する吸引工程と、吸引した液を前記液通路から送って前記吸引ノズルの先端で液溜まりを形成し、この液溜まりの形成により液を均一化する液均一化工程とを備えることにより、液溜まり内で液流動化現象によって液を効率良く均一化することができる。したがって、単に液通路内で例えば複数の液を往復移動させて混合させる場合に比べて、迅速且つ効率よく液を均一化することができる。特に、液溜まりを滴下直前のほぼ球状に近い液球とすることで、液球内で液が激しく流動することにより、より一層均一化効果が得られる。また、液の吸入及び送り出しという単純な操作で効率の良い攪拌が行えるとともに、吸引ノズルのみという簡単な構成で均一化が可能になる。しかも、吸引ノズル内での接液となり、混合容器や攪拌棒などを用いる必要がなく、これらの液付着がないため混合液が定量され、精度のよい混合が可能になる。
【0009】
吸引ノズルの液通路内で前記吸引した液を移動させ、前記液溜まりを複数回形成することにより、均一化をより促進することができる。前記吸引ノズルの液通路の途中に、液通路に対してその断面積が大きくなって拡開する拡開部を設けておき、この拡開部により液溜まりを形成することにより、密閉された空間内で液の混合が行われるため、液の蒸発が抑制され正確な混合が可能になる。しかも、吸引ノズル先端と拡開部との2か所で順次に液溜まりを形成することができ、より一層迅速に均一化することができる。
【0010】
吸引工程により複数の液を順次吸引し、前記液溜まり均一化工程により前記複数の液を混合させることにより、迅速且つ均一に複数の液の混合が可能になる。さらに、前記複数の液を吸引する際に、次の液を吸引する前に気体を吸い込み、前記吸引ノズルの液通路内に気体による液分離層を形成することにより、液分離層により前の液が次の液に接触することがなく、次の液中に前に吸引した液が混入してしまうことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すように、本発明の微量液体の均一化装置10は、液給排機構としてのシリンジポンプ11と、ポンプ駆動部12と、エアチューブ13と、吸引ノズル14と、ノズル移動部15と、圧力センサ16と、コントローラ17とから構成されている。コントローラ17は、圧力センサ16からの信号に基づき各部を制御して、微量液体の混合処理を行う。
【0012】
吸引ノズル14はノズル先端14aを下向きにして設置されており、上部にエアチューブ13の一端が接続されている。エアチューブ13の他端はシリンジポンプ11に接続されている。シリンジポンプ11は、ポンプ駆動部12により駆動される。ポンプ駆動部12は、モータ20と、このモータ20の回転を往復移動に変換する送りネジ機構21とから構成されている。そして、モータ20を正転または逆転することにより、シリンジポンプ11内のプランジャ22を往復移動させ、吸引ノズル14から液25,26や気体の吸引及び排出を行う。なお、モータ20の回転をプランジャ22の往復移動に変換する機構としては、送りネジ機構21に限られず、ボールネジ機構やラックアンドピニオン、その他の変換機構を用いてよい。
【0013】
ノズル移動部15は、図示しない昇降ユニットと水平移動ユニットとを備えており、吸引ノズル14を、第1液25を収納する第1容器30、第2液26を収納する第2容器31、これら各液25,26を混合した液を排出する排出位置間で水平移動させるとともに昇降させて、第1容器30から第1液25を液通路14b内に、第2容器31から第2液体26を液通路14b内に吸引するとともに、これら第1液25及び第2液26を混合して、この混合液27(図3参照)を排出位置にセットされた検査チップ32に滴下する。
【0014】
本発明の微量液体の均一化装置は、例えば、医療機関、研究所などで用いられる生化学分析機に組み込まれる。生化学分析機は、検体の小滴をドライタイプの乾式分析素子や電解質スライド(乾式イオン選択電極フィルム)などの検査チップ32に点着させて、この点着した検査チップ32を測定することで、物質濃度を求める。
【0015】
コントローラ17は、ポンプ駆動部12のモータ20とノズル移動部15とを制御することにより、第1液25及び第2液26の混合を行う。コントローラ17には、圧力センサ16から圧力信号が入力されている。圧力センサ16はチューブ13の中間位置に分岐管18を介して接続されており、チューブ13内の圧力を電気信号に変換し、この圧力信号をコントローラ17に入力する。コントローラ17は、この圧力信号に基づきノズル移動部15及びモータ20を制御することにより、図2に示すフローチャートのように第1液の吸引処理、第2液の吸引処理、混合処理、排出処理を行う。
【0016】
次に、第1液及び第2液の混合処理について説明する。先ず、図1に示すように、ノズル移動部15によって第1液25が収納された第1容器30の上方位置に吸引ノズル14が位置決めされた後に、降下する。この降下途中でシリンジポンプ11による吸引が開始される。吸引ノズル14の先端が第1液25に接触すると、圧力センサ16による検出圧力が高くなり、接液したことが検知される。次に、シリンジポンプ11が一定量移動して、図3(A)に示す空の状態から(B)に示す第1液吸引状態となり、第1液25が所定量、例えば2μLだけ吸引ノズル14の液通路14b内に吸引される。
【0017】
この第1液25の2μLの吸引後に、ノズル移動部15によって吸引ノズル14が上昇し、その後に吸引ノズル14が第2容器31の上方位置に位置決めされる。次に、吸引ノズル14が下降して、図3(C)に示すように、第1液25と同様にして第2液26が例えば2μLだけ吸引される。この吸引後に、シリンジポンプ11内のプランジャ22が押動して、図3(D)に示すように、例えば吸液した第1液25及び第2液26を3μLだけ吸引ノズル14の液通路14bから押し出す。この押し出しによりノズル先端14aから突出するようにほぼ球状となった滴下直前状態の液溜まり28が形成される。この液溜まり28はノズル先端14aとの表面張力により滴下することなくノズル先端14aに留まる。この液溜まり28の形成により、液溜まり28内では慣性により2液が流動して攪拌状態になる。これにより、第1液25及び第2液26の流動が促進され、両液25,26の混合が迅速に行われる。なお、液溜まりの形状は滴下直前のほぼ球状としたが、この液溜まり形状はこれに限られず、液の粘度などに応じて液の吸引ノズル14からの突出量を適宜変更してよく、半球状やその他の形状であってもよい。
【0018】
液溜まり28による2液の流動化は一定時間で収束するため、次に、シリンジポンプ11による吸引によって、図3(E)に示すように、液溜まり28が吸引ノズル14の液通路14b内に吸引される。この液溜まり28の吸引によって再度混合液が流動化し、攪拌効果が得られ、両液25,26の混合がより一層促進される。次に、(D)に示すように、吸引ノズル14の液通路14bから第1液25及び第2液26が混合された混合液27が押し出されて、同様に液溜まり28が形成される。この(D),(E)からなる液溜まり形成工程が複数回行われることで、第1液25及び第2液26の混合が促進される。用いる第1液25及び第2液26の種別毎に攪拌が完了する最小液溜まり形成回数Nが予め求められて、コントローラ17内のメモリ17aに記憶されている。そして、混合する第1液25及び第2液26の液種別を指定することにより、液溜まり形成回数Nが求められ、この形成回数分だけ液溜まり28が形成され、第1液25及び第2液26がほぼ均一に混合され、混合液27となる。
【0019】
混合液27はノズル移動部15によって測定位置である検査チップ32の上方位置に送られる。測定位置には検査チップ32が載置されており、この検査チップ32に所定量の混合液27が滴下される。本実施形態では、滴下量は4μLとされており、混合液27の全量が検査チップ32に滴下される。この検査チップ32は、図示しない生化学分析機内のチップ検出センサにより測光され、この測光信号はコントローラ17に送られる。コントローラ17ではこの測光信号に基づき予め記憶している測光信号と物質濃度との関係に基づき所定の生化学分析処理を行う。
【0020】
生化学分析処理では、周知のように、検体の小滴を点着供給するだけで検体中に含まれている特定の化学成分又は有形成分を定量分析することが可能なドライタイプの乾式分析素子や電解質スライド(乾式イオン選択電極フイルム)などの検査チップ32を使用することが一般的となっており、乾式分析素子を用いる比色測定法や、電解質スライドを用いる電位差測定法によって検体中の化学成分等の定量分析を行う。
【0021】
比色測定法を用いる生化学分析処理では、検体を乾式分析素子に点着させた後、これをインキュベータ(恒温器)内で所定時間恒温保持して呈色反応(色素生成反応)させ、予め選定された波長を含む測定用照射光をこの乾式分析素子に照射してその光学濃度を測定し、この光学濃度から、生化学物質の濃度を求める。一方、電位差測定法を用いる生化学分析装置は、上記の光学濃度を測定する代わりに、電解質スライドに点着された検体に、同種の乾式イオン選択電極の2個1組からなる電極対を接触させて、特定イオンの活量を、ポテンシオメトリで定量分析することによって物質濃度を求める。
【0022】
図4は、別の実施形態の吸引ノズル及び均一化方法を示している。この実施形態では、吸引ノズル40内の液通路40bにテーパー状の拡開部41を形成する。この拡開部41は、液通路40b内で矢印A1で示す吸引方向に向かうに従い断面積が次第に大きくなるテーパー状に形成されている。
【0023】
この実施形態では、(A)に示すように、第1液25を例えば2μLだけ吸引する。次に、(B)に示すように、第1液25からノズル先端40aを離した状態で空気を1μLだけ吸引する。次に、(C)に示すように、第2液26にノズル先端40aを接液させて第2液26を2μLだけ吸引する。この状態では吸引ノズル40に空気層43が形成されているため、この空気層43によって第1液25が第2液26に接液することがなく、第2容器内の第2液26内に、吸引ノズル40内の第1液25が混入してしまうことがなく、コンタミネーションが防止される。次に、(D)に示すように、第2容器内の第2液26からノズル先端40aを離した状態で空気を吸引し、拡開部41で第1液25及び第2液26の混合液27の液溜まり45を形成する。この液溜まり45の形成によって、液溜まり45内で第1液25と第2液26とが流動することによって、第1液25と第2液26との混合が促進される。
【0024】
次に、(E)に示すように、吸引ノズル40からのエア押し出しにより液溜まり45の混合液27が液通路40b内に押し出される。そして、(F)に示すように、ノズル先端40aに新たな液溜まり46が形成される。この液溜まり46の形成により、液溜まり46内の液が流動化され、第1液25と第2液26とが効率よく混合される。この後、(E)に示すように、ノズル先端40aの液溜まり46が液通路40b内に吸引される。以下、(D),(E),(F),(E)が所定回数行われることにより、第1液25と第2液26との混合が促進され、迅速な混合が可能になる。
【0025】
この実施形態では、第1液25と第2液26との間に空気層43を形成したから、第2液26の吸引の際に第2液26に第1液25が接触することがなくなり、第2容器内の第2液26への第1液25のコンタミネーションが防止される。また、拡開部41とノズル先端40aとで液溜まりを交互に形成するため、迅速且つ効率よく混合することができ、しかも均一な混合が可能になる。なお、第1液が吸引された状態で第2液と接触しても、吸引ノズルの開口面積が約1mm2と小さいため、第2液との間のコンタミネーションは僅かである。したがって、コンタミネーションの影響が少ない場合には空気層は省略してもよい。また、拡開部41はテーパー状に形成したが、この拡開角度は180°以内であればよい。
【0026】
上記拡開部41に形成される液溜まり45による混合は、ノズル先端40aの液溜まり47に比べて、密閉された空間内で行われるため、液の蒸発が抑制され、正確な混合が可能になる。したがって、蒸発が懸念される液の混合には、拡開部41における液溜まり形成回数をノズル先端の液溜まり形成回数よりも多くする。また、必要に応じて、拡開部における液溜まりのみによって液の混合を行ってもよい。さらには、逆に、拡開部41は空気層43のガス抜きのためにだけ利用し、2液の均一化はノズル先端40aの液溜まり47のみで行うようにしてもよい。この場合には、拡開部41の内壁面における液の付着が抑えられ、液付着分が少なくなる分だけ正確な混合が可能になる。また、拡開部41は1個に限らず液通路40b内に複数個形成してもよい。
【0027】
混合する液体としては、検体(例えば、尿、血液など)と試薬、希釈液(例えば水)と検体などがある。第2液の吸液の際に第1液が第2液に混ざってしまうことを防止するために、コンタミネーションによって汚染されたくないものを第1液とすることが好ましい。
【0028】
なお、上記実施形態では、吸引ノズル14,40により、直接に第1液25及び第2液26を吸引するため、次の混合処理を行う場合には必要に応じて洗浄処理を行う。これに代えて、図5に示すように、吸引ノズル本体51の先端にノズルチップ52を嵌めて吸引ノズル50を構成し、このノズルチップ52内の液通路を用いて混合処理を行ってもよい。そして、混合処理後には、使用済のノズルチップ52を廃棄して、新たなノズルチップ52を吸引ノズル本体51に取り付け、次の混合処理を行う。
【0029】
また、吸引ノズルのノズル先端形状や、液通路直径などは、混合する複数の液の比重、粘度、表面張力等の液の性質に応じて適宜変更する。吸引ノズルの液通路直径は、0.1〜3.0mmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.0mmである。このため、各種混合液に合わせたノズルチップ51を複数種類用意しておき、混合する液種に応じてこれらを適宜選択して使用することが好ましい。
【0030】
前記液溜まり28の形成は、上記実施形態では2μLずつ第1液25、第2液26を吸引し、3μL分だけ液通路14bから押し出して約3μL分が突出した液溜まりとしたが、この液溜まり容量は上記実施形態に限定されるものではなく、混合する液の性質に応じて適宜変更してよい。例えば、液溜まり容量(ノズル先端よりも下方の混合液総量)は、混合液の総量に対して5〜95%の範囲であり、好ましくは30〜90%の範囲内である。
【0031】
また、図示は省略したが、吸引ノズルの液通路内に螺旋突条などの微細な邪魔部材を設けることにより、攪拌効果が得られ、より一層迅速且つ均一に複数の液体を混合することができる。なお、螺旋突条に代えて、環状突条や螺旋溝、環状溝、突起などを形成してもよい。また、邪魔部材の代わりに、液通路を屈曲させることで液の均一化効果を上げるようにしてもよい。
【0032】
上記実施形態では2液の混合について説明したが、混合液の種類は2種類に限られず、3種類以上であってもよい。また、成分が不均一になっている液を均一化する場合にも本発明を実施してもよく、この場合には一つの液のみが吸引され、液溜まり形成によって、均一化が促進される。
【0033】
また、上記実施形態では、均一化工程の後に分析素子に混合液を点着して分析したが、分析方法としては点着に限られず、透過光または反射光などを用いて直接に液溜まりの濃度等を測定し、この測定値に基づき分析を行ってもよい。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の先端液溜まり形成による攪拌効果を確認するための実施例を説明する。図3に示す本実施形態による攪拌効果と、図6に示すように、単に吸引ノズル60の液通路60b内を第1液25,第2液26を往復移動させる比較例のものとを比較した。第1液として水を用い、第2液として水に黒インクを加えて液1との光学濃度差が1.0となる黒インク水を用いて、往復移動回数毎に上下の濃度差を採取した。これをグラフ化したものが、図7である。比較例の往復移動型では、往復移動回数を増やしても、それほど濃度差が縮まらない(攪拌されていない)のに対して、本実施例では、1回の液溜まり形成(1往復移動)で上下の濃度差が0.3となり、2回の液溜まり形成では上下の濃度差が0.1となり、3回目以降はほぼ濃度差が0近くになり、ほぼ均一に攪拌されていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の微量液体の均一化方法及び装置は、上記実施形態で説明したような生化学分析装置に用いられる他に、100μL以下の微量液体、特に1〜20μL程度の微量液体を混合する必要のあるμ−TAS、核酸抽出、免疫分析の分析装置や、その他の微量混合液体を用いる各種分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の微量液体の均一化装置の一例を示す概略の斜視図である。
【図2】微量液体の均一化方法を示すフローチャートである。
【図3】微量液体の均一化方法を順に示す説明図である。
【図4】液通路に設けた拡開部で液溜まりを形成する別の実施形態における微量液体の均一化方法を順に示す説明図である。
【図5】ノズルチップを用いる別の実施形態の吸引ノズルを示す斜視図である。
【図6】比較例における微量液体の均一化方法を示す説明図である。
【図7】実施例と比較例との効果を示すもので、攪拌回数と濃度差の変化とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 微量液体の均一化装置
11 シリンジポンプ
12 ポンプ駆動部
14 吸引ノズル
14a ノズル先端
14b 液通路
15 ノズル移動部
20 モータ
21 送りネジ機構
22 プランジャ
25 第1液
26 第2液
27 混合液
28 液溜まり
30 第1容器
32 第2容器
33 検査チップ
40 吸引ノズル
40a ノズル先端
40b 液通路
41 拡開部
43 空気層
45,46 液溜まり
50 吸引ノズル
51 ノズルチップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引ノズルにより液を前記吸引ノズル内の液通路内に吸引する吸引工程と、
吸引した液を前記液通路から送って前記吸引ノズルの先端で液溜まりを形成し、この液溜まりの形成により液を均一化する液均一化工程とを備えることを特徴とする微量液体の均一化方法。
【請求項2】
前記吸引ノズルの液通路内で前記吸引した液を移動させ、前記液溜まりを複数回形成することを特徴とする請求項1記載の微量液体の均一化方法。
【請求項3】
前記液均一化工程は、前記吸引ノズルの液通路の途中に、液通路に対してその断面積が大きくなって拡開する拡開部を設けておき、この拡開部により液溜まりを形成することを特徴とする請求項1または2項記載の微量液体の均一化方法。
【請求項4】
前記吸引工程により複数の液を順次吸引し、前記液均一化工程により前記複数の液を混合させることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の微量液体の均一化方法。
【請求項5】
前記複数の液を吸引する際に、次の液を吸引する前に気体を吸い込み、前記吸引ノズルの液通路内に気体による液分離層を形成することを特徴とする請求項4記載の微量液体の均一化方法。
【請求項6】
前記液均一化工程により均一化された液を排出する工程を備えることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の微量液体の均一化方法。
【請求項7】
液給排機構と、
この液給排機構に連結された吸引ノズルと、
前記液給排機構を制御して、液を前記吸引ノズル内の液通路内に吸引し、次に吸引ノズルの先端に液溜まりを形成して液を均一化させる制御部とを備えることを特徴とする微量液体の均一化装置。
【請求項8】
前記制御部は、吸引ノズルの液通路内で前記吸引した液を移動させ、前記液溜まりを複数回形成することを特徴とする請求項7記載の微量液体の均一化装置。
【請求項9】
前記吸引ノズルの液通路の途中に、液通路に対してその断面積が大きくなって拡開する拡開部を設けておき、この拡開部により液溜まりを形成することを特徴とする請求項7または8項記載の微量液体の均一化装置。
【請求項10】
前記吸引ノズルにより複数の液を順次吸引し、前記液溜まりにより前記複数の液を混合させることを特徴とする請求項7ないし9いずれか1項記載の微量液体の均一化装置。
【請求項11】
前記制御部は、複数の液を吸引する際に、次の液を吸引する前に気体を吸い込み、前記吸引ノズルの液通路内に気体による液分離層を形成することを特徴とする請求項10記載の微量液体の均一化装置。
【請求項12】
前記制御部は、液の均一化後に前記吸引ノズルから送り出すことを特徴とする請求項7ないし11いずれか1項記載の微量液体の均一化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−349638(P2006−349638A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179742(P2005−179742)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】