説明

微量試料計量デバイス、微量試料計量装置および微量試料の注入方法

【課題】 簡易な操作で、極微量の試料を定量性よく計量できる微量試料計量デバイス、微量試料計量装置、および微量試料計量方法を提供すること。
【解決手段】 試料を試料流入口から第一流路に流入させ、
第一流路の移送制御手段を移送可能状態、第二流路の移送制御手段を移送停止状態、第三流路の移送制御手段を移送可能状態、第四流路の移送制御手段を移送停止状態とし、流体試料を第一流路から計量用流路を経由して第三流路に移送し、
次いで、第一流路の移送制御手段を移送停止状態、第二流路の移送制御手段を移送可能状態、第三流路の移送制御手段を移送停止状態、第四流路の移送制御手段を移送可能状態とし、計量用流路に充填された試料を計量用流路から第二流路へ移送することにより微量試料を計量する微量試料計量デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の試料を計量して注入することの出来る微量試料計量デバイス、該微量試料計量デバイスの各機構を制御する機構を含む微量試料計量装置、および微量試料の計量方法に関する。本発明は、例えば、マイクロクロマトグラフィー用カラムに分析試料を注入する用途に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、内部に有する微細な毛細管状の流路中で反応や分析を行うデバイスであり、マイクロ流体デバイスを使用することにより、反応や分析の迅速化、必要試料量の減少、省資源・省エネルギー、さらには廃棄物の減少が可能となる。このようなマイクロ流体デバイスを例えばマイクロクロマトグラフィー分析に利用して、分析の迅速化、必要試料の微量化、および展開液の減少を計り、化学分析、生化学分析、医療診断などの方面に応用する試みが行われている。
【0003】
しかしながら、マイクロ流体デバイスのスケールは、従来のポンプ、切り替えバルブ、シリンジ、ピペットなどの試料取り扱い手段や装置に比べて桁違いに小さいため、マイクロ流体デバイスの流路中に極微量の試料を注入することは相当困難であった。例えば、マイクロ・ガスクロマトグラフィー、マイクロ・液体クロマトグラフィー、マイクロ・アフィニティ・クロマトグラフィー、マイクロ・ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーなどのマイクロ・クロマトグラフィー分析においては、短い展開距離で迅速に高分解能の分析を行うためには、試料を短いスポットとして分離カラムに注入する必要があるが、マイクロシリンジやバルブによる流路切り替え法などの従来法による試料注入手段では注入試料の体積が過大になりがちであり、そのため、クロマトグラムのピークの広がりや、テーリングが生じ、良好に分離するためにはカラム長を太く或いは長くする必要があり、分析時間の伸長を招いていた。又、微小な反応槽中へ極微量の溶液を定量して注入し、他の溶液と混合することも同等に困難であった。
【0004】
これを解決する方法として電気泳動分析に於いて、次の方法が試みられている(特許文献1参照。)。即ち、交差部に於いて交差する2本の流路の一方の一端に試料を注入し、該流路の両端に電圧を印加して電気泳動又は電気浸透流にて試料を移送し、試料が前記交差部を通過している時点で該電圧の印加を停止し、次いで、他方の流路の両端に電圧を印加することによって、交差部内の試料のみを他方の流路へ注入する方法である。
しかし、この方法では、分岐部の容積だけの極微量の試料を他方の流路に注入することが可能であるが、電気泳動による試料移送であるため、試料は荷電試料に限られ、また、媒体も電解質媒体に限られるため、多くの液体クロマトグラフィーや、ガスクロマトグラフィーのように気相中へ試料を注入する用途には適用できなかった。
【0005】
また、分析装置として、接合された二本のチャネルを有するデバイスを包含する装置が開示されている(特許文献2参照。)。該装置中のデバイスにおいては、デバイス内のチャネルに圧力勾配を適用させて、試料が注入されたチャネルから電気泳動分析用チャネルに試料を注入するものである。しかし、該方法においては、次のような点で、試料注入方法としては不十分なものであった。(1)試料注入用チャネルと電気泳動分析用チャネルの圧力や、その制御のタイミングを精密に行う必要があるため、ポンプやバルブなどの機構が複雑かつ大がかりとなりがちであること、(2)該公知文献には電気泳動分析用試料の注入について記載されていて、クロマトグラフィーの試料注入については記載されていないが、本発明者等の検討によれば、試料注入用チャネルとクロマトグラフィー用チャネルの二つの流路の圧力を厳密に制御する必要があり、制御装置が大がかりなものに成りがちであること、(3)注入試料がテーリングを生じがちであり、それを抑制するためには、更に複雑な機構や圧力制御操作が必要なこと、および、(4)拡散速度の高い気体試料には適用が困難であること。
【0006】
【特許文献1】特開平11−271273号公報
【特許文献2】特表2002−542489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、微量の試料を取り扱う機構、例えばマイクロ流体デバイスに組み込まれた機構に流体試料を計量して注入するための微量試料計量デバイスおよび微量試料の計量方法において、液体中の荷電試料だけでなく液体中の非イオン性試料や気体試料にも適用可能であり、また、非電解質液体媒体中や気体媒体中への試料を注入する場合の試料計量も可能であり、試料の計量に複雑で大がかりな装置や複雑な制御を要することなく、簡易な操作で、極微量の試料を定量性よく計量できる微量試料計量デバイス、微量試料計量装置、および微量試料計量方法を提供すること。特に、マイクロ・クロマトグラフィーへの試料注入に適した微量試料計量デバイス、装置、及び計量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一端に流体試料を流入させる試料流入口(11)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(21)を有する第一流路(1)と、一端に流体試料を流出させる試料流出口(12)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(22)を有する第二流路(2)と、端部(13)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を有していてもよい第三流路(3)と、一端に流体試料を移送する試料移送用流体を流入させる試料移送流体の流入口(14)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を有していてもよい第四流路(4)と、一定長さの計量用流路(5)とを有し、且つ、第三流路(3)の途中及び/又は第四流路の途中に移送制御手段を有さない場合には、第三流路(3)の端部(13)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を、第四流路(4)の流入口(14)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を接続可能であって、
第一流路(1)及び第二流路(2)の口を有する端部とは他の端部と計量用流路(5)の一端とが、流体試料を流通するように接合部(6)において接合され、第三流路(3)の延長流路を接続可能な端部(13)及び第四流路(4)の口を有する端部とは他の端部と、計量用流路(5)の接合部(6)とは他の端部とが第二接合部(7)において接合されてなり、
(a)移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とを移送可能状態、移送制御手段(22)と移送制御手段(24)を移送停止状態とすることにより、流体試料が試料流出口(11)より流入した際に、流体試料を第二流路(2)及び第四流路(4)に流入させず、第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて第三流路(3)内に流入させることができ、
(b)移送制御手段(22)と移送制御手段(24)とを移送可能状態、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とを移送停止状態とすることにより、計量用流路(5)中に充填された流体試料を試料移送用流体により移送させる際に、第一流路(1)及び第三流路(3)に流入させず、第二流路(2)中に移送させ、計量された試料を試料流出口(12)より流出させることができる微量試料計量デバイスを提供することにより上記課題を解決した。
【0009】
また、上記微量試料計量デバイスを有し、
(A)流体の移送と停止を行う機構
(B)第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三流路(3)の途中に設けられた又は端部(13)に接続された移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、流体試料を試料流入口(11)より流入し、流体試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に流入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)の途上に設けられた又は流入口(14)に接続された移送制御手段(24)とにより、
該流体試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構、
(C)移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された流体試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、流体試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構、を有することを特徴とする微少試料計量装置を提供することにより上記課題を解決した。
【0010】
また、上記微量試料計量デバイスを使用して、流体試料を試料流入口(11)から第一流路(1)に流入させ、
第一流路(1)の移送制御手段(21)を移送可能状態、第二流路(2)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送停止状態とし、流体試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を経由して第三流路(3)に移送し、
次いで、第一流路(1)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第二流路(2)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送停止状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送可能状態とし、計量用流路に充填された試料を計量用流路(5)から第二流路(2)へ移送し、試料流出口(12)より微量の計量された試料を得ることを特徴とする微量試料の計量方法を提供することにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のデバイス、装置及び方法は、微量の試料を取り扱う機構、例えばマイクロ流体デバイスに組み込まれた機構に注入するための、微量の流体試料を計量することができる。本発明は、液体中の荷電試料だけでなく液体中の非イオン性試料や気体試料にも適用可能であり、また、非電解質液体媒体中や気体媒体中へ試料を注入する場合の計量も可能であり、試料の計量に複雑で大がかりな装置や複雑な制御を要することなく、簡易な操作で、極微量の試料を定量性よく計量できる。本発明は前記のように適用範囲が広いため、マイクロ・液体クロマトグラフィー、マイクロ・アフィニティ・クロマトグラフィー、マイクロ・ゲル・パーミエーション・クロマトグラフフィーなどのマイクロ・液体クロマトグラフィーや、マイクロ・ガス・クロマトグラフィーへの試料注入、あるいは、マイクロ流体デバイス内の、即ち、マイクロ流体デバイスに組み込まれた反応槽や反応用流路への定量的試料注入に好適であり、さらに、マイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)に組み込むことが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[微量試料計量デバイス]
本発明の微量試料計量デバイスは、部材内部に毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスとして構成される。微量試料計量デバイスの外形は、板状(柔軟なシート状を含む)、棒状(柔軟なひも状を含む)、チューブ状(毛細管状を含む)、塊状、又は、組み合わせ型マイクロ流体デバイスを形成するコンポーネント(モジュール)となる形状、などの任意の形状であって良い。なかでも形状が板状のものは、製造が容易であり、流路などの構造に高い寸法精度や位置精度を持たせることができ、マイクロ流体デバイスの他の構造と一体化することが容易である上、使用時の温度調節や流路の観測が容易であるため好ましい。
【0013】
微量試料計量デバイスを構成する材料は任意であり、例えば、ガラス、水晶等の結晶、シリコンなどの半導体、ステンレススチールなどの金属、セラミック、炭素、有機重合体(ポリジメチルシロキサンのように、主鎖が無機元素のも含む。)、あるいはこれらの発泡体などを使用できる。また、例えば有機重合体などの上に金属やその他の物質を蒸着した複合材料なども使用できる。但し、後述のように、本発明のバルブが流路壁を圧迫変形させることにより流路を開閉するタイプのものである場合には、圧迫部においては、可撓性のある素材を使用する必要がある。そのため、前記の素材のなかでも有機重合体が好ましく、特に活性エネルギー線硬化性樹脂が、各種形状への成形が容易であり好ましい。
【0014】
[流路]
微量試料計量デバイスは、図1に示すように、試料流入口(11)から接合部(6)に至る第一流路(1)、該接合部(6)から試料流出口(12)に至る第二流路(2)、該接合部(6)からもう一つの接合部である第二接合部(7)に至る計量用流路(5)、第二接合部(7)から端部(13)に至る第三流路(3)、及び、第二接合部(7)から流入口(14)に至る第四流路(4)を有する。これらの流路を併せて流路(10)とする。
【0015】
(第一流路)
第一流路(1)は、その一端の試料流入口(11)から接合部(6)までの範囲の流路である。試料流入口(11)には、計量用流路(5)の容積より多量の試料を第一流路(1)に導入する構造を接続することが出来れば任意であり、例えば、微量試料計量デバイス外のリザーバタンクなどに接続することが出来る微量試料計量デバイス外に開口した開口部、微量試料計量デバイス外と連絡する配管が接続された配管接続部、等であり得るし、また、微量試料計量デバイス中の他の機構、例えばリザーバタンク、反応用流路、濾過機構、透析機構などに微量試料計量デバイス内で接続された接続部であっても良い。
又、第一流路(1)の途上には、流体の移送制御手段(21)が設けられている。移送制御手段(21)は、流体移送手段と共に稼働させて、第一流路(1)内の流体の移動と停止を制御する機構であり、バルブ類であり得るが、流体の移送と停止が可能なポンプ機構のように、流体移送手段を兼ねる移送制御手段であっても良い。これらは本発明の実施態様により、好適に選択して用いることが出来る。移送制御手段(22)、移送制御手段(23)、移送制御手段(24)についても同様である。
【0016】
第一流路(1)の横断面、即ち、流体の流動方向に直角な断面(以下、特に「縦割り断面」と断らない限り流路の該断面を単に「断面」と略記する。)の形状は特に限定されないが、矩形、台形、または半円形であることが、製造や内部の観察が容易であり好ましい。
流路(10)の断面の寸法は任意であるが、微量試料計量デバイス表面から見た平均深さは、1〜500μmが好ましく、3〜200μmがさらに好ましく、5〜100μmが最も好ましい。また、微量試料計量デバイス表面から見た幅方向の平均寸法は1〜3000μmが好ましく、3〜1000μmがさらに好ましく、5〜500μmが最も好ましい。この範囲の下限以上とすることにより、圧力損失が過大になることが無く、また計量と注入操作が不安定に成ることもない、また、この範囲の上限未満とすることにより、微小な試料の計量が容易に行える。勿論、流路の断面形状や断面寸法は、他の流路と異なっていて良いし、第一流路内においても、流路の流れ方向で変化していて良い。
【0017】
第一流路の長さは任意であり、例えば10μm〜100mmであり得るが、1mm〜30mmが好ましい。第二流路(2)へ導入される計量された試料のテーリングを抑制するために、移送制御手段(21)と接合部(6)の間の長さは短い方が良く、実質的にゼロが好ましい。従って、第一流路の長さは、最小の場合には、試料流入口(11)の内部の流路の長さと、移送制御手段(21)内部の流路の長さの和であり得る。
【0018】
(第二流路)
第二流路(2)は、計量用流路(5)にて計量された試料が接合部(6)から導入され、試料流出口へ送る流路である。第二流路(2)は単に試料流出口(12)へ導くだけの移送用流路であっても良いし、第二流路(2)中で試料の検出、分析、反応、処理などを行う場であっても良い。
試料流出口(12)は第二流路端であり、そこから計量された微量試料を流出させて得ることができる。試料流出口(12)の形状や構造は任意であり、微量試料計量デバイスの外部に開口していて、外部機構、即ち、微量試料計量デバイスとは独立した機構を接続することも出来るし、微量試料計量デバイス内の、即ち、該デバイスと一体化された他の機構の流路等と連続する接続部であっても良い。試料流出口(12)に接続できる好ましい機構としては、マイクロ・ガス・クロマトグラフィー・カラム、マイクロ・液体クロマトグラフィー・カラム、マイクロ・アフィニティ・クロマトグラフィー・カラム、マイクロ・ゲル・パーミエーション・クロマトグラフフィー・カラムなどのマイクロ・液体クロマトグラフィーカラムや、マイクロ・ガス・クロマトグラフィー・カラム、混合槽や混合用流路などの混合場、反応槽や反応用流路などの反応場、或いは、酵素増感法などによる検出機構が挙げられる。
本発明においては、試料流出口(12)に前記のクロマトグラフ・カラム類を接続する場合、単に該カラムを接続するだけで良く、計量された試料に続いて、試料流出口(12)から展開液やキャリアガスなどのキャリアをクロマト・カラムに導入することが出来る。そのため、キャリア導入用の流路を別に設ける必要がない。しかし、キャリア導入用の流路を別に設けることも可能である。
【0019】
第二流路(2)の途上には、移送制御手段(22)が設けられている。移送制御手段(22)は流体移送手段と共に稼働させて、第二流路(2)内の流体の移動と停止を制御する機構であり、バルブ類であり得るが、流体の移送と停止が可能なポンプ機構のように、流体移送手段を兼ねる移送制御手段であっても良い。これらは本発明の実施態様により、好適に選択して用いることが出来る。
【0020】
但し、第二流路(2)中に、検出、分析、反応、処理などの、計量された試料を利用する機構を設ける場合には、移送制御手段(22)をこれらの機構の下流側、即ちこれらの機構と試料流出部(12)との間に設けても良い。この様にすることにより、計量された微量試料は移送制御手段(22)内で乱されることなく前記の機構に注入されるため、テーリングの少ないパルス状に注入でき、好ましい。この場合、試料流出口(12)は計量された試料を利用する機構による処理の終わった試料の流出口となる。このような構造は、計量された試料を利用する機構が、試料を特に短いパルス状に注入する必要がある機構、例えばクロマトグラフィー・カラムである場合に好ましい。それに対して、計量された試料を利用する機構が容積の大きな機構例えば貯液層である場合や、試料が液状であり、かつ、該機構が気相部分を有して、第二流路内の流体が圧縮可能である場合などには、正確な計量を行うために、移送制御手段(22)は計量された試料を利用する機構の上流側に設けることが好ましい。
【0021】
第二流路(2)の寸法、形状については、基本的には第一流路の場合と同様である。試料流出口(12)に計量された微量試料を利用する機構を接続する場合には、接合部(6)と移送制御手段(22)との間の長さは短い方が好ましく、実質的にゼロであることがさらに好ましい。この距離を短くすることで、試料流出口(12)から流出させる計量された試料のテーリングを少なくすることができる。従って、第二流路の長さは、最小の場合には、移送制御手段(21)内部の流路の長さと試料流出口(12)の内部の流路の長さとの和であり得る。
【0022】
本発明は、計量された試料を利用する機構が、微量試料計量デバイス内に設けられたものである場合に、特に効果を発揮する。
【0023】
第二流路(2)の途中又は端に流体移送手段を設置してもよい。この場合、流体移送手段は、計量した試料を利用する機構の上流側に設置してもよいし下流側に設置しても良いが、試料をテーリングの少ないパルス状に注入することが望ましい場合には、計量した試料を利用する機構の下流側に設置することが好ましい。そのため、計量した試料を利用する機構が微量試料計量デバイス内部に形成されている場合には、試料流出口(12)に流体移送手段を接続しうる態様が好ましく用いられる。
【0024】
(第三流路)
第三流路(3)は、第二接合部(7)から端部(13)に至る流路であり、流体試料(以下、単に試料と称する場合がある)を計量用流路(5)に導入する際、あらかじめ計量用流路(5)に充填されていた流体や、余剰の流体試料を計量用流路(5)から排出し、計量用流路(5)に流体試料を充満させる目的で使用される。このとき、余剰の程度が低ければ、余剰の試料が第三流路(3)内に留まって端部(13)に至らないし、余剰の程度が高ければ端部(13)から排出される。 例えば後述のように、微量試料計量デバイスの外部で端部(13)と流入口(14)を連結する場合などのように、余剰の試料を端部(13)から流出させたくない場合には、第三流路(3)の容積を大きくしたり、第三流路(3)の途中にタンクを設けることも好ましい。
【0025】
第三流路の寸法、形状は、該流路に特有の構造部分を除いて、第一流路(1)の場合と同様である。
【0026】
端部(13)は、微量試料計量デバイス外に開口した開口部や接続口であっても良いし、配管が接続されていても良いし、微量試料計量デバイス内部の機構、例えばリザーバタンク、多孔質体や繊維集合体などの液体吸収機構、減圧機構、その他の流体移送手段に接続されていても良い。
【0027】
第三流路(3)の途中には、移送制御手段(23)が設けられていてもよい。また、第三流路(3)の途中に移送制御手段(23)を有さない場合には、第三流路(3)の端部(13)と連続した延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を接続可能にすることが必要である。
【0028】
移送制御手段(23)は流体移送手段と共に稼働させて、第三流路(3)内の流体の移動と停止を制御する機構であり、バルブ類であり得るが、流体の移送と停止が可能なポンプ機構のように、流体移送手段を兼ねるものであっても良い。これらは本発明の実施態様により、好適に選択して用いることが出来る。
【0029】
また、例えば図6に見られるように、端部(13)から連続して一体化されて延長された流路又は端部(13)に別途接続された外部流路(以下、これら流路を延長流路(3’)と称する。)が、第四流路(4)の流入口(14)から連続して一体化されて延長された流路又は流入口(14)に別途接続された外部流路(以下、これら流路を延長流路(4’)と称する。)と接続されていてもよい。この場合には、第三流路(3)の容積と延長流路(3’)の容積との和を計量用流路(5)の容積より大きくすることが好ましく、第三流路(3)の途中又は延長流路(3’)の途中に、微量試料計量デバイス外には開放されていないリザーバタンクを設けることが好ましい。このようにすることにより、余剰の試料が第三流路(3)からあふれて、第四流路(4)に入り込むことの防止が容易になる。延長流路(3’)は微量試料計量デバイスと同じマイクロ流体デバイスに組み込まれていることが好ましい。
【0030】
(第四流路)
第四流路(4)は、第二接合部(7)から流入口(14)に至る流路であり、流入口(14)から導入される移送用流体を第二接合部(7)を経て計量用流路(5)へ移送して、計量用流路(5)内の試料を該流体にて第二流路へ注入する用途に使用される。第四流路(4)の寸法、形状は、各流路に特有の構造部分を除いて、第一流路(1)の場合と同様である。
【0031】
流入口(14)は、微量試料計量デバイス外に開口した開口部であっても良いし、配管が接続されていても良いし、微量試料計量デバイス内部の機構、例えばリザーバタンクなどの液体供給機構に接続されていても良い。
【0032】
第四流路(4)の途中には、移送制御手段(24)が設けられていてもよい。また、第四流路(4)の途中に移送制御手段(24)を有さない場合には、第四流路(4)の端部(14)と連続した延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を接続可能にすることが必要である。
【0033】
移送制御手段(24)は流体移送手段と共に稼働させて、第四流路(4)内の流体の移動と停止を制御する機構であり、バルブ類であり得るが、流体の移送と停止が可能なポンプ機構のように、流体移送手段を兼ねるものであっても良い。これらは本発明の実施態様により、好適に選択して用いることが出来る。また、上述したように延長流路(4’)が、延長流路(3’)と接続されていてもよい。延長流路(4’)は微量試料計量デバイスと同じマイクロ流体デバイスに組み込まれていることが好ましい。
【0034】
(計量用流路)
計量用流路(5)は、第一接合部(6)と第二接合部(7)間の、試料の計量に用いる流路であり、第一流路(1)から一旦計量用流路(5)に試料を導入して計量した後、該試料を計量用流路(5)内を逆方向に流して、第二流路(2)へ注入する目的に使用される。計量用流路(5)の容積が計量される試料の量となる。計量用流路(5)の長さを幅や高さに比べて長くしたり、接合部(6)と計量用流路(5)との接続部の断面積や、第二接合部(7)と計量用流路(5)との接続部の断面積を、計量用流路(5)の断面積より小さくすることによって、試料とそれ以外の流体とが拡散によって混合することを抑制し、試料注入の定量性を向上させることが出来る。前記の方法は、特に、試料が微少量である場合や、試料が気体である場合に有用である。
【0035】
計量用流路(5)の途中に、試料移送手段や移送制御手段を設けることも可能であるが、試料計量の精度を損なわないために、これらを設けないことが好ましい。
【0036】
計量用流路(5)の寸法、形状は、各流路に特有の構造部分を除いて、第一流路の場合と同様であるが、断面積は1μm〜0.1mmが好ましく、3μm〜0.05mmがさらに好ましく、10μm〜0.02mmが最も好ましい。この下限以上にすることで、大きな困難なく試料の計量が可能となり、この上限未満とすることで、微小な試料の計量が容易に行える。また、各流路の長さは計量する量に応じて適宜調製すれば良く、微少量の計量においては10μm〜100mm程度の範囲であることが好ましく、100μm〜10mm程度の範囲で設定することが好ましい。
【0037】
〔流体移送手段〕
本発明の微量試料計量装置及び微量試料の計量方法に於いては、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)へ移送したり、試料移送用の流体を移送して試料を計量用流路(5)から第二流路(2)に移送するために、少なくとも一つの流体移送手段を要する。流体移送手段は、微量試料計量デバイスの内部に組み込まれた機構であっても、外部に接続される機構であってもよい。微量試料計量デバイス内部に組み込まれた機構(例えばポンプ機構)である場合、接液部の機構のみを本微量試料計量デバイスに組み込み、駆動部は外部に設けることも好ましい。また、前記した移送制御手段(21)〜(24)が、それぞれ流体移送手段を兼ねるものであっても良い。
【0038】
また、流体移送手段は、実施態様により、少なくとの二台の吸飲可能な流体移送手段、少なくとも一台の吸飲可能な流体移送手段と少なくとも一台の吐出可能な流体移送手段の組み合わせ、或いは、少なくとも一台の双方向に移送可能な流体移送手段であり得る。以下、好ましい流体移送手段を例示する。
【0039】
[1]微量試料計量デバイス外部の移送手段
[1−イ]吸引によって一方向へ流体を移送できるもの
例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、チューブポンプなどのポンプ、アスピレーターや真空ポンプなどの減圧手段、多孔質体、繊維の編織物、紙・不織布、繊維充填物、粉末充填物などの液体吸収機構、流路の一部に充填された磁性流体、音波や超音波発生機構などを例示できる。このような流体移送手段は、端部(13)に接続し、吸引により第一流路(1)から試料計量用流路(5)へ試料を移送する場合や、試料流出口(12)に接続し、吸引により計量用流路(5)から第二流路(2)へ試料を注入する場合に使用できる。勿論、本流体移送手段は、吸引された流体を吐出する吐出口を有するものであっても良い。
【0040】
「1−ロ」吐出によって一方向へ流体を移送できるもの
例えば、前記と同様のポンプ、圧力空気、加圧窒素などの加圧気体、流路の一部に充填された磁性流体、音波や超音波発生機構などを例示できる。このような流体移送手段は、試料移送流体の流入口(14)に接続して試料移送流体を導入する場合や、試料導入口(11)に接続し、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)へ移送する場合に使用できる。勿論、本流体移送手段は、吐出する流体を他の吸引口から吸引するものであっても良い。
【0041】
「1−ハ]流体移送手段の吸引吐出口から吸引し、同じ口から吐出できる、双方向に流体移送が可能なもの
例えば、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、チューブポンプなどのポンプ、流路の一部に充填された磁性流体、音波や超音波発生機構などが挙げられる。あるいは、前記の吸引が可能な流体移送手段と吐出が可能な流体移送手段の2台を使用して、バルブで切り替える方式も可能であるが、一台で双方向に移送可能なものが好ましい。このような流体移送手段は、延長流路(3’)との合流部より下流の延長流路(4’)に接続して、試料の第一流路(1)から計量用流路(5)への移送と、計量用流路(5)から第二流路(2)への移送の両方を行うことができる。勿論、前記の吸引が可能な流体移送手段や吐出が可能な流体移送手段の代わりに用いることも出来る。
【0042】
前記に示したような、微少量試料計量デバイス外部の各流体移送手段は、非運転時(移送停止時)に流路を閉じた状態で保持出来るものが好ましく、非運転時には何らエネルギーを消費する事なく流路を閉じた状態に持出来るものが好ましい。この観点から、シリンジポンプ、ギヤポンプ、チューブポンプが好ましい。
【0043】
[2]微量試料計量デバイス内部に設けられた流体移送手段
[2−イ]吸引による一方向への流体移送が可能なもの
ダイヤフラムポンプ機構、ギヤポンプ機構、プランジャンプ機構、しごきポンプ機構などのポンプ機構、減圧気体室、多孔質体、繊維の編織物、紙・不織布、繊維充填物、粉末充填物などの液体吸収機構、流路中の磁性流体を磁場で駆動するによる移送機構、音波や超音波式流体移送機構を例示できる。このような流体移送手段は、端部(13)に接続し、吸引により第一流路(1)から試料計量用流路(5)へ試料を移送する場合や、試料流出口(12)に接続し、吸引により計量用流路(5)から第二流路(2)へ試料を注入する場合に使用できる。これらの場合、移送制御手段(22)や移送制御手段(23)を兼ねる流体移送手段としても使用出来る。
【0044】
[2−ロ]吐出による一方向への流体移送が可能なもの
ダイヤフラムポンプ機構、ギヤポンプ機構、プランジャンプ機構、しごきポンプ機構などのポンプ機構、加圧気体、前記の磁性流体による移送機構、音波や超音波式流体移送機構を例示できる。このような吐出が可能な移送手段は、試料流入口(11)に接続して、吐出により第一流路(1)から試料計量用流路(5)へ試料を移送する場合や、流入口(14)に接続し、吐出により計量用流路(5)から第二流路(2)へ試料を注入する場合に使用できる。これらの場合、移送制御手段(21)や移送制御手段(24)を兼ねる流体移送手段としても使用出来る。
【0045】
[2−ハ]流体移送手段の吸引口から吸引した流体を吐出口から吐出するような、吸引と吐出による一方向への流体移送が可能なもの
ダイヤフラムポンプ機構、ギヤポンプ機構、プランジャンプ機構、しごきポンプ機構などのポンプ機構、前記の磁性流体による移送機構、音波や超音波式流体移送機構を例示できる。このような移送が可能な移送手段は、第一流路(1)や第三流路(3)の途中に設けて、第一流路(1)から試料計量用流路(5)へ試料を移送する場合や、第四流路(4)や第二流路(2)の途中に設けて、計量用流路(5)から第二流路(2)へ試料を注入する場合に使用できる。これらの場合、移送制御手段(21)や移送制御手段(24)を兼ねる流体移送手段としても使用出来る。勿論、本流体移送手段を、前記[2−イ]または[2−ハ]の流体移送手段の代わりに使用することも可能である。
【0046】
[2−ニ]流体移送手段の吸引吐出口から吸引し、同じ口から吐出できる、双方向に流体移送が可能なもの
ダイヤフラムポンプ機構、ギヤポンプ機構、シリンジポンプ機構、しごきポンプ機構チューブポンプ機構などのポンプ機構、前記の磁性流体による移送機構、音波や超音波式流体移送機構などを例示できる。このような移送が可能な移送手段は、延長流路(3’)との合流部より下流の延長流路(4’)に接続して、試料の第一流路(1)から計量用流路(5)への移送と、計量用流路(5)から第二流路(2)への移送の両方を行うことができる。この構成は、一台の流体移送手段の駆動のみで、微量試料の計量が可能になるため好ましい。勿論、本流体移送手段を、前記[2−イ〜ハ]の流体移送手段の代わりに使用することも可能である。
【0047】
[2−ホ]流体移送手段の第一吸引吐出口から吸引した流体を第二吸引吐出口から吐出する流体移送と、前記第二吸引吐出口から吸引して前記第一吸引吐出口から吐出する流体移送の、双方向の流体移送が可能なもの
【0048】
ギヤポンプ機構、しごきポンプ機構、などのポンプ機構、前記の磁性流体による移送機構、音波や超音波式流体移送機構などを例示できる。このような移送が可能な移送手段は、試料計量用流路(5)に設け、第一流路(1)から試料計量用流路(5)への試料の吸引移送と、試料計量用流路(5)から第二流路(2)への試料の注入を行うことができる。勿論、本流体移送手段を、前記[2−イ〜ニ]の流体移送手段の代わりに使用することも可能である。
【0049】
前記に示したような、微少量試料計量デバイス内に設けられる各流体移送手段は、非運転時(移送停止時)に流路を閉じた状態で保持できるものが好ましく、非運転時には何らのネルギーも消費せずに流路を閉じた状態に保持できるものが好ましい。このような流体移送手段を用いることによって、流体移送手段と移送制御手段を兼ねることが出来る。
【0050】
前記の微量試料計量デバイス内部の流体移送手段として、例えば本発明者等の出願になる、特開2002-371954号公報に記載されているような、流路中に配された磁性流体を磁気で移動させることにより移送すべき流体を移送する機構、特開2003-139065号公報、特開2003-139065号公報、および特開2003-083256号公報に記載されているような、逆止弁とダイヤフラムで構成されたダイヤフラム式ポンプ機構、特開2003-139660号公報に記載されている様な、常態では流路を閉じており、バルブの少なくとも一方の側の圧力が一定以上になると任意の低圧側へ流体を流通させる、或いは、両側の圧力差が一定以上になると任意の低圧側へ流体を流通させる弁(以下、このような弁を「圧力弁」と称する)を用い、柔軟な流路壁を圧迫することによって流体をするダイヤフラム式ポンプ機構、チューブポンプのようにローラーで柔軟な流路壁をしごく、しごきポンプ機構、を好適に使用できるし、ギアポンプ機構、プランジャーポンプ機構、プランジャーの代わりに磁性流体を使用したプランジャー式ポンプ機構なども使用可能である。なお。本明細書で言う「微量試料計量デバイス内部の流体移送手段」とは流体移送機構の接液部が微量試料計量デバイス内に組み込まれていることをいい、駆動部は微量試料計量デバイスの外部にあって良い。
【0051】
前記のポンプ機構の中で、圧力弁とダイヤフラムによるポンプ機構や、しごきポンプ機構が、圧迫位置を変えること、或いは、しごきの方向を変えることによって、双方向に移送可能であるため、微量試料計量デバイス内部の、双方向に移送可能な流体移送手段として好ましい。
【0052】
微量試料計量デバイス内部に組み込まれたポンプ機構を使用することによって、外部ポンプを接続する必要が無くなるため、配管接続機構を設ける必要が無くなる。また、試料流入口(11)に導入する試料や、試料移送流体の流入口(7)から導入する移送用の流体を交換することも容易になる。
【0053】
[移送制御手段]
試料を計量用流路(5)から第二流路(2)に移送する際に、試料が第一流路(1)へ逆流することを防ぐ機構を有することが必要である。そのために、第一流路(1)の途中に移送制御手段(21)を設ける。移送制御手段(21)は、試料を試料流入口(11)から第一流路(1)を経て計量用流路(5)へと導入する際に流体を通過させ、次いで、計量用流路(5)内の試料を接合部(6)を経て第二流路(2)へ注入する際には、流体を通過させないことができる機構であり、バルブを好ましく用いることが出来る。或いは、例えばそのようなバルブを機構の一部に使用したような、流体の移送と停止を制御できる流体移送機構とすることも可能である。このバルブは、流体移送手段の駆動に同期させた制御によって、例えば前記試料移送流体の流入口(7)の吸引/流体導入に同期した制御によって開閉する開閉バルブであっても良いし、試料流入口(11)から接合部(6)方向に流体を通過させる向きに設置された逆止弁であっても良いし、少なくとも一方の側の圧力が一定以上になると開いたり、両側の圧力差が一定以上になると開く圧力弁であっても良い。
【0054】
逆止弁は、特別な開閉操作を行わなくても、試料移送流体の流入口(7)を吸引する際には流路内の流体の圧力差によって自動的に開き、試料移送流体の流入口(7)から流体を導入する際には流路内の流体の圧力差によって自動的に閉じる。移送制御手段(21)は、注入試料の定量性を増し、テーリングを防ぐために、なるべく接合部(6)に近い位置に設けることが好ましく、接合部〔4〕に接して設けることがさらに好ましい。移送制御手段(21)は閉状態で僅かな漏れがあっても良く、注入試料のテーリングを防ぐために、極僅かな漏れがあることが、かえって好ましい。
【0055】
前記移送制御手段(21)として好ましく使用できる開閉バルブの構造は任意であり、例えば、本発明者等の出願になる下記の機構を使用できる。特開2004-073995号公報に記載されているような、流路内に配した磁性流体を磁気で駆動して流路を開閉するバルブ機構 、特開2002-239374号公報に記載されているようなダイヤフラム式バルブ、特開2002-219697号公報、特開2002-08639号公報、特開2003-084001号公報、に記載されているような、流路壁を外部から圧迫することによって流路断面積を変化させる開閉バルブ、などである。また、試料流出口(12)から他の機器への試料注入圧力が、例えば200KPa以下であるように、あまり高くない場合には、移送制御手段(21)として、特開2003-139660号公報に開示されたいるような、常態では閉じており、流路の一方の側の圧力が一定以上となると流体を通過させるバルブ機構を使用することも出来る。
【0056】
移送制御手段(21)として逆止弁を使用する場合には、例えば、本発明者等の出願になる、特開2002-086399号公報、特開2003-139661号公報、特開2002-239374号公報に開示されているような、フラップ型の弁体をフォトリソグラフィーで形成した逆止弁や、特願2003-013519号公報に記載されている、ゲルを弁体とした逆止弁を使用することが出来る。
前記移送制御手段(21)は、接合部(6)に対する第一流路(1)側の加圧や計量用流路(5)側の減圧、または計量用流路(5)側の加圧や第三流路(3)側の減圧によって開閉を制御できるものであることが、操作が単純となり好ましく、そのため逆止弁または圧力弁が好ましい。また、ゲルを弁体とする逆止弁が、構造が簡単であり、かつ、閉状態で、過剰でない程度の漏れを生じさせることが容易であるため好ましい。勿論、移送制御手段(21)に圧力弁を用いる場合には、例えば移送制御手段(21)が開く圧力は、計量用流路(5)への注入圧力以上の圧力に調節するなど、その特性は実施態様に合わせて調節する必要がある。
【0057】
移送制御手段(21)として用いることの出来るポンプ機構としては、流体移送手段として挙げた、微量試料計量デバイス内に組み込み可能なポンプ機構が挙げられる。
【0058】
試料を第一流路(1)から計量用流路(5)へ移送する際に、試料が第二流路(2)へ侵入することを防ぐ機構を設けることが必要である。そのために、第二流路(2)の途中に移送制御手段(22)、を設ける。移送制御手段(22)は、試料移送流体の流入口(7)を吸引して試料を試料流入口(11)から第一流路(1)を経て計量用流路(5)へと導入する際には第二流路(2)を閉じ、次いで、試料移送流体の流入口(7)から流体を導入して、計量用流路(5)内の試料を接合部(6)を経て第二流路(2)へ注入する際には、流体を通過させることができるバルブを好ましく用いることが出来る。このバルブに関しては、前記移送制御手段(21)の場合と同様である。即ち、このバルブは前記試料移送流体の流入口(7)の吸引/流体導入に同期した制御によって開閉する開閉バルブであっても良いし、接合部(6)から試料流出口(12)方向には流体を通過させ、逆方向には通過させない向きに設置された逆止弁であっても良いし、圧力弁であっても良い。勿論、該バルブに圧力弁を用いる場合には、例えば第一流路(1)から計量用流路(5)への試料移動時には、バルブは閉じた状態を保つように、開く圧力を調節する必要がある。逆止弁や圧力弁は、特別な開閉操作を行わなくても、試料移送流体の流入口(7)を吸引する際には流路内の流体の圧力差によって自動的に閉じ、試料移送流体の流入口(7)から流体を導入する際には流路内の流体の圧力差によって自動的に開くため、駆動機構が単純になり好ましい。移送制御手段(22)のバルブも、注入試料の定量性を増すために、成るべく接合部(6)に近い位置に設けることが好ましく、接合部(6)に接して設けることがさらに好ましい。
【0059】
移送制御手段(22)のバルブの構造などについては、移送制御手段(21)の場合と同様であるが、閉状態での僅かな漏れは許容されるものの、試料計量の定量性を増すためには、漏れは少ない方が好ましい。移送制御手段(22)として用いることの出来るポンプ機構としては、流体移送手段として挙げた、微量試料計量デバイス内に組み込み可能なポンプ機構が挙げられる。
【0060】
必要に応じて使用できる移送制御手段(23)についても、前記移送制御手段(21)と同様である。また、移送制御手段(24)についても、前記移送制御手段(22)と同様である。
【0061】
但し、前記の流体制御機構(21)、(22)、(23)、(24)の2つ以上に、バルブ両側の圧力差が一定以上になると低圧側へ流体を流通させるような圧力弁を使用する場合には、その使用箇所に応じて、2つの該圧力バルブが開く圧力を好適に設定する必要がある。圧力弁を使用すると、移送制御手段部の死容積を逆止弁より小さくすることが容易であるため、注入試料のテーリングを減少させることが容易である。
【0062】
移送制御手段(21)の機構と移送制御手段(22)の機構の組み合わせ方法は、それぞれ前記のバルブ類やポンプ類から選択できる。但し、移送制御手段(21)と移送制御手段(22)共に圧力弁を用いる場合、一方が圧力弁を用いたポンプ機構で、他方が圧力弁である場合、又は、共に圧力弁を用いたポンプ機構を用いる場合、には、これらのバルブが開く圧力を、例えば第一流路(1)から計量用流路(5)への試料移動時には、移送制御手段(21)は移送制御手段(22)より低い圧力で開き、計量用流路(5)から第二流路(2)への試料注入字には、移送制御手段(21)は移送制御手段(22)より高い圧力で開くように、少なくとも一方を、順方向と逆方向で開く圧力が異なる圧力弁を使用する必要がある。
【0063】
さらに、必要に応じて、第三流路の途中に移送制御手段(23)を設けることが出来るし、また、第四流路の途中に移送制御手段(24)を設けることも出来る。これらの移送制御手段は、第三流路(3)の端部(13)や流入口(14)に流体移送手段(53)、(54)を接続して使用する態様に於いて、該流体移送手段が停止時に流体の移動を阻止する機能を有するものである場合にはは必ずしも必要ではない。しかし、流体移送手段(53)、(54)が停止時に流体の移動が可能なものである場合には必要となる。また、流体移送手段を第三流路(3)の途中や第四流路(4)の途中に設ける際にも必要となるが、これらの流体移送手段は移送制御手段(23)、(24)を兼ねることも出来る。
【0064】
本発明の微量試料計量デバイスは、前記の構造の他、任意の他の機構を有することが出来る。こそのような構造としては、例えば、センサ部(20)用や移送制御手段駆動用の電源、電源への接続部、センサ部(20)と外部に設けられたセンサ本体との接続機構、移送制御手段のための圧力気体接続機構、接続機構、移送制御手段や外部ポンプの制御のためのシーケンサやコンピュータなどを例示できる。
【0065】
[微量試料計量装置]
本発明の微量試料計量装置は、本発明の微量試料計量デバイスと組み合わせて使用する装置であって、
(A)流体の移送と停止を行う機構
(B)第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三流路(3)の途中に設けられた又は端部(13)に接続された移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、試料を試料流入口(11)より流入し、該試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に導入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)の途上に設けられた又は流入口(14)に接続された移送制御手段(24)とにより、該試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構、
(C)移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構、を有する。
【0066】
本発明の微量試料計量装置は、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)が開閉バルブやポンプ機構である場合には、前記(A)、(B)、(C)に示された論理とタイミングで運転するための論理制御機構を要する。該論理制御機構は任意であり、例えばシーケンサやコンピュータが使用できる。これらの論理機構は本装置内に組み込まれていても、本装置外にあって本装置に接続されていてもよい。それに対し、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)に逆止弁や圧力弁を使用した場合にはこれら自体が該論理制御機構の機能を有するため、それ以外の特別な論理制御機構を要しない。
【0067】
また、本発明の微量試料計量装置は、開閉バルブやポンプ機構の駆動機構を有する。該駆動機構としては、それらの種類に応じて、先に示した開閉バルブやポンプ機構の駆動機構、例えば、アクチュエータ、圧力気体、電磁力、などを使用できる。これについても、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)に逆止弁や圧力弁を使用した場合には流体の圧力変化でこれらは自動的に駆動されるため、特別な駆動機構を要しない。
【0068】
前記(B)の工程において、計量用流路(5)中に流入された試料の先端が第二接合部(7)を越えた時点で試料の流入を停止するための判断機構は、流速から計算されるタイミングにより停止させるような、微量試料計量デバイスに組み込まれた、或いは、微量試料計量デバイス外の電気回路やコンピューターであって良い。あるいは、タイミングの判定機構の代わりに、計量用流路(5)、第二接合部(7)、または第三流路(3)に設けられた、光学的、電気滝などのセンサ部を検出するセンサ機構、検出部のみが微量試料計量デバイスに組み込まれ、本体が微量試料計量デバイス外の機構であるようなセンサ機構、微量試料計量デバイスに、光学的に透明な窓などの読み取り部が設けられ、センサ本体が微量試料計量デバイス外の機構であるセンサ機構、などによる判定機構であってもよい。
【0069】
本発明の微量試料計量装置が微量試料計量デバイス外部の機構を有する場合には、微量試料計量デバイスと外部機構とを一体化して稼働させるが、微量試料計量デバイス部分を取り替え可能とすることが好ましい。中でも、微量試料計量デバイスにセンサ部を設ける場合には、センサ部としてセンサ機構の一部、センサの取り付け用構造、あるいはセンシング用の窓を設けた構造とし、さらに、ポンプ機構(及び、開閉バルブを使用する場合には開閉バルブも)の駆動部を微量試料計量デバイスの外部機構することにより、接液部である微量試料計量デバイスを単純な機構として、該デバイスを交換可能とすることが好ましい。
【0070】
[試料注入方法]
本発明に成る第一の微量試料の計量方法は、前記の微量試料計量デバイスや微量試料計量装置を使用して、試料を試料流入口(11)から第一流路(1)に流入させ、第一流路(1)の移送制御手段(21)を移送可能状態、第二流路(2)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第三流路(3)又は延長流路(3’)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第四流路(4)又は延長流路(4’)の移送制御手段(24)を移送停止状態とし、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を経由して第三流路(3)に移送し、
次いで、第一流路(1)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第二流路(2)の移送制御手段(22)を移送可能状態、第三流路(3)又は延長流路(3’)の移送制御手段(23)を移送停止状態、第四流路(4)又は延長流路(4’)の移送制御手段(24)を移送可能状態とし、計量用流路に充填された試料を計量用流路(5)から第二流路(2)へ移送し、試料流出口(12)より微量の計量された試料を得る。
【0071】
試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を経由して第三流路(3)に移送する時に、流路(10)内は空気であっても良いが、試料溶液の溶媒や、計量した試料を利用するに当たり、試料の媒体となる流体で満たしておいても良い。例えば、試料計量の目的がクロマトグラフィー・カラムへの試料注入のための計量である場合などには、あらかじめ流路(10)全体、或いは第一流路(1)と計量用流路(5)に試料溶液の溶媒や、該クロマトグラフィーのキャリア流体、例えば展開液となる液体を充満させておくことが好ましい。
【0072】
本発明の試料注入方法に適用できる試料や移送用の流体の種類は任意であり、液体、超臨界流体、気体であり得るが、液体であることが、定量性が向上し好ましい。液体試料の種類は任意であり、単一液体、混合液体、溶液、分散液であり得る。溶質は任意であり、化学物質、生化学物質、有機物質、無機物質、揮発性物質、不揮発性物質、ノニオン性物質、カチオン性物質、アニオン性物質、両性イオン性物質、親水性物質、疎水性物質、両親媒性物質、などであり得るし、溶媒は電解質、非電解質であり得る。
【0073】
移送用の流体も任意であるが、計量した試料を利用するに当たり、試料の媒体となる流体が好ましい。該液体としては、例えば反応溶媒やクロマトグラフィーの展開液であり得る。
【0074】
本発明の試料注入方法によれば、計量用流路(5)の断面積や長さの設計により、微少量、特に0.0001mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.001mm〜0.1mm、最も好ましくは0.0003mm〜0.05mm程度の微少量の試料を計量して注入することができる。
【0075】
本発明の試料注入方法は、クロマトグラフィー用分離カラムへの微量試料の注入方法であることが好ましい。この場合には、前記第二流路端(6)にこれらの分離カラムを接続して使用する。該分離カラムは、微量試料計量デバイス外のカラムであっても良いし、微量試料計量デバイス内に組み込まれたものであっても良い。ここで言う分離カラムの種類は、任意であり、例えば充填カラム、キャピラリー・カラム、モノリス型カラムなどであり得る。
【0076】
本発明の試料注入方法を適用する際の好適な態様の例としては、クロマトグラフィー・カラムへの微量試料の注入方法が挙げられる。この場合には、前記試料流出口(12)に該カラムを接続して使用する。該カラムは、微量試料計量デバイスの内部に組み込まれたカラムであっても良いし、該微量試料計量デバイスの外部に設けられたものであってもよい。この場合のクロマトグラフィー・カラムの種類は勿論任意であり、例えば内面に多孔質層が形成されたマイクロ流路、キャピラリー・カラム、モノリス型カラム、充填カラムなどであり得る。
【0077】
本発明の方法においては、前記微量試料計量デバイスの各部の構造、例えば、流体移送手段として用いる機構の種類、流体移送手段として用いる機構の接続部、流体移送制御手段(21)として用いる機構の種類、移送制御手段(21)、として用いる機構の種類、の組み合わせによって非常に多くの場合があり、前記の方法が可能な組み合わせを任意に選択することが出来るるが、以下に、特に好ましく用いることの出来る代表的な実施態様を示す。
【0078】
(I)第一態様
本発明の第一態様は、図2に構成を示したように、第一流路(1)の途中に移送制御手段(21)として開閉バルブ[以下、これを開閉バルブ(21)と称する場合がある。同様に、移送制御手段(22)、(23)、(24)として使用する開閉バルブをそれぞれ開閉バルブ(22)、(23)、(24)と称する場合がある。]を設け、第二流路(2)の途中に移送制御手段(22)として開閉バルブ(22)を設けた微量試料計量デバイスを使用し、延長流路(3’)の途中に吸引が可能な流体移送手段(53)を接続し、延長流路(4’)の途中に吐出が可能な流体移送手段(54)を経てリザーバタンク(52)を接続する。流体移送手段(54)としては、例えば流体移送手段(54)とリザーバタンク(52)を兼ねるシリンジポンプ[以下、シリンジポンプ(54)と称する場合がある。]を使用することができる。また、試料流入口(11)に試料用の構造として、例えばリザーバタンク(51)を接続する。
(i)試料計量の目的がクロマトグラフィー・カラムへの試料注入のための計量である場合などには、あらかじめ流路(10)全体、或いは第一流路(1)と計量用流路(5)に該クロマトグラフィーのキャリア流体、例えば展開液となる液体を充満させておくことが好ましい。
【0079】
その状態で、ます、試料流入口(11)に試料を配する。これは、例えば試料流入口(11)に接続して設けられた、微量試料計量デバイス外に開口したリザーバタンク(51)にピペットなどで試料を注入することで実施できる。試料流入口(11)に配する試料の量は、計量用流路(5)に注入する量以上であれば任意である。次いで、
【0080】
(ii)開閉バルブ(21)を開き、開閉バルブ(22)は閉じた状態で流体移送手段(53)を駆動し、第三流路端(7)を吸引して、試料を計量用流路(5)に移送し、試料の先端部を第二接合部(7)を通過させることによって、試料を計量用流路(5)に充満させる。このとき、閉じた開閉バルブ(22)により、第二流路(2)から計量用流路(5)への流体の流入は阻止され、流体移送手段(54)により、第四流路(4)から計量用流路(5)への流体の流入は阻止される。試料が第二接合部(7)を通過したことを確認する手段は任意であり、センサーを用いても良いし、ポンプ容量と駆動時間から計算して、十分な量だけ移送しても良い。試料が不足しない限り、第三流路(3)の端部(13)から流出するまで吸引してもよい。その後、
【0081】
(iii)開閉バルブ(21)を閉じ、開閉バルブ(22)を開き、流体移送手段(54)を駆動して流入口(14)から試料移送用の流体を導入して、該流体により第二接合部(7)と接合部(6)の間の試料だけを第二流路(2)へ注入する。このとき、流体移送手段(53)は停止していて、第三流路(3)内の試料は移動せず、また、第一流路(1)内の試料は開閉バルブ(21)が閉じているため移動せず、計量用流路(5)内の試料のみが第二流路(2)に注入される。そして、試料に続いて移送用の流体が注入される。
【0082】
本態様は、移送制御手段(21)、(22)として開閉バルブを用いるため動作が確実であり、特に微量の試料を注入する場合に好ましい方法である。
【0083】
本第一態様の変形として、図3に示されたように、流体移送手段(53)の代わりに、第三流路(3)の途中に組み込まれた、移送制御手段(23)を兼ねた流体移送手段[以下、これを流体移送手段(23)と称する場合がある。流体移送手段(21)、(22)、(24)についても同様である。]を使用することも好ましく、また、流体移送手段(54)の代わりに、第四流路(4)の途中に組み込まれた、移送制御手段(24)と兼ねた流体移送手段(24)を使用することも好ましい。これらの一方のみを内部の流体移送手段としても良い。流体移送手段(23)や流体移送手段(24)としては、前記の、特開2003-139660号公報に記載されているような、常態では流路を閉じており、一方の側の圧力が一定値以上で流体を流通させる圧力弁を用いたポンプ機構、順方向に開くにも一定以上の圧力差を要する逆止弁を用いたポンプ機構、或いはしごきポンプ機構を好ましく用いることが出来る。
【0084】
(II)第二態様
本発明の第二態様は、図2の構成に於いて、移送制御手段(21)として逆止弁が形成されていること[以下、この逆止弁を逆止弁(21)と称する場合がある。同様に、移送制御手段(22)、(23)、(24)として使用する逆止弁をそれぞれ逆止弁(22)、(23)、(24)と称する場合がある。」及び、移送制御手段(22)として逆止弁(22)が形成されていること以外は前記第一態様と同じ微量試料計量デバイスを使用する。逆止弁(21)は試料流入口(11)から接合部(6)方向には流体を通過させ、逆方向には通過させない向きに設置されており、逆止弁(22)は接合部(6)から第二流路端(6)方向には流体を通過させ、逆方向には通過させない向きに設置されている。試料流入口(11)には、試料供給用の機構としてと、例えばリザーバタンク(51)を接続する。
【0085】
第一態様と同様に、好ましくはあらかじめ流路(10)全体に液体を充満させておき、試料流入口(11)に試料を配して端部(13)を流体移送手段(53)で吸引すると、自動的に逆止弁(21)は開き、逆止弁(22)は閉じて、試料は計量用流路(5)の計量用流路(5)に移送される。このとき、閉じた逆止弁(22)により、第二流路(2)から計量用流路(5)への流体の流入は阻止され、停止している流体移送手段(54)により、第四流路(4)から計量用流路(5)への流体の流入は阻止される。
【0086】
試料が計量用流路(5)に充満し、第二接合部(7)を越えた後、流体移送手段(53)を停止し、流体移送手段(54)にて流入口(14)から試料移送用流体を導入すると、自動的に逆止弁(21)は閉じ、逆止弁(22)は開いて、該流体により第二接合部(7)と接合部(6)との間の試料は第二流路(2)へ注入される。このとき、閉じた逆止弁(21)により、第一流路(1)内の試料は移動せず、停止した流体移送手段(53)により、第三流路(3)内の流体は移動しない。このように、バルブの開閉操作を行わないこと以外は上述の第一態様と同様である。
【0087】
本第二態様は、バルブの操作が全く不要で、2つのポンプの操作のみによって試料の計量と注入が可能であるため、駆動装置を簡略化できる。
移送制御手段(21)として、逆止弁(21)の代わりに、両側の圧力差が一定以上になると開く圧力弁を使用することも出来る[以下、この圧力弁を圧力弁(21)と称する場合がある。同様に、移送制御手段(22)、(23)、(24)として使用する圧力弁を、それぞれ圧力弁(22)、(23)、(24)と称する場合がある。]。或いは、移送制御手段(22)として、逆止弁(22)の代わりに、両側の圧力差が一定以上になると開く圧力弁(22)を使用することも出来る。但し、本態様に於いては、移送制御手段(21)と移送制御手段(22)の両者共に両方向へ同じ圧力差で開く圧力弁を使用することは出来ない。但し、両方向へ異なる圧力で開く圧力弁であれば、同時に両者に使用することが可能である。このとき、接合部(6)が減圧されるときには圧力弁(21)が開き圧力弁(22)が開かず、接合部(6)が加圧されるときには圧力弁(21)が開かず圧力弁(22)が開くように、開閉圧力を調節する。
【0088】
本第二態様の変形として、図3に示されたように、流体移送手段(53)の代わりに、第三流路(3)の途中に組み込まれた、移送制御手段(23)と兼ねた流体移送手段(23)を使用することも好ましく、また、流体移送手段(54)の代わりに、第四流路(4)の途中に組み込まれた、移送制御手段(24)と兼ねた流体移送手段(24)を使用することも好ましい。これらの一方のみを内部の流体移送手段としても良い。流体移送手段(23)や流体移送手段(24)としては、前記の、特開2003-139660号公報に記載されているような、常態では流路を閉じており、一方の側の圧力が一定値以上で流体を流通させる圧力弁を用いたポンプ機構、順方向に開くにも一定以上の圧力差を要する逆止弁を用いたポンプ機構、或いはしごきポンプ機構を好ましく用いることが出来る。
【0089】
(III)第三態様
本発明の第三態様は、図4に構成が示されたように、第一流路(1)の途中に移送制御手段(21)を兼ねる流体移送手段(21)、第二流路(2)の途中に移送制御手段(22)を兼ねる流体移送手段(22)、第三流路(3)の途中に逆止弁(23)、および、第四流路(4)の途中に逆止弁(24)か設けられた微量試料計量デバイスを使用する。逆止弁(23)は、接合部(6)側から第三流路(3)の端部(13)方向へ流通させる向きに設置されており、逆止弁(24)は、流入口(14)側から接合部(6)方向へ流通させる向きに設置されている。
そして、端部(13)は微量試料計量デバイス外に開放するか、或いは、微量試料計量デバイス内の、気体が充満した大きな容積に接続し、流入口(14)には試料を移相するための液体が配されたリザーバタンク(52)を接続する。また、試料流入口(11)に試料用のリザーバタンク(51)を接続する。
【0090】
流体移送手段(21)としては、前記の、逆止弁を用いたポンプ機構、圧力弁を用いたポンプ機構、或いはしごきポンプ機構を好ましく用いることが出来、流体移送手段(22)としては、前記の、圧力弁を用いたポンプ機構、順方向に開くにも一定以上の圧力差を要する逆止弁を用いたポンプ機構、或いはしごきポンプ機構を好ましく用いることが出来る。
(i)好ましくはあらかじめ流路(10)全体に液体を充満させておき、試料流入口(11)に試料を配して、
(ii)流体移送手段(21)を試料導入口(11)側から接合部(6)方向に移送するように駆動すると、逆止弁(23)は自動的に開き、逆止弁(24)は自動的に閉じて、試料は第一流路(1)から計量用流路(5)に移送される。試料が計量用流路(5)に充満して第二接合部(7)から第三流路(3)に入ると流体移送手段(21)を停止させる。試料が第三流路(3)に入ったことを知る方法は前記第一態様と同様である。
(iii)次いで、流体移送手段(22)を接合部(6)側から試料流出口(12)方向へ移送する向きに駆動すると、逆止弁(23)は自動的に閉じ、逆止弁(14)は自動的に開いて、計量用流路(5)中の試料は吸引されて、接合部(6)から第二流路(2)へ注入される。試料に続いて、流入口(14)から導入された流体が第二流路(2)に注入される。
【0091】
本第三態様は、バルブの操作が全く不要で、2つのポンプの操作のみによって試料の計量と注入が可能であるため、駆動装置を簡略化できる。
【0092】
本第三態様の変形として、前記の逆止弁の一部又は全部を圧力弁に置き換えても良い。圧力弁を二つ以上使用する場合には、前記の流体移送が可能になるように、各圧力弁の開閉ある直を調節する。
【0093】
(IV)第四態様
本発明の第四態様は、図5に構成が示されたように、第三流路(3)の延長流路(3’)が、合流部(8)にて第四流路(4)の延長流路(4’)の途中に接合されている。また、第一流路(1)の途中に移送制御手段(21)として逆止弁(21)、第二流路(2)の途中に移送制御手段(22)として逆止弁(22)、第三流路(3)の途中に逆止弁(23)、および、第四流路(4)の途中に逆止弁(24)が設けられている。このような微量試料計量デバイスを使用する。逆止弁(21)、(22)は、前記第二態様と同様であり、逆止弁(23)、(24)は第三態様と同様である。
【0094】
そして、合流部(8)から先の延長流路(3’)と延長流路(4’)とが共通した流路(以下、共通延長流路と称する。)の途中には、双方向に移送可能な流体移送手段(55)を経て、試料を移相用の液体が配されたリザーバタンク(52)を接続する。流体移送手段(55)として、リザーバタンク(52)と流体移送手段(55)が一体化されたシリンジポンプを用いることが好ましい。また、試料流入口(11)に試料用のリザーバタンク(51)を接続する。
(i)好ましくはあらかじめ流路(10)全体に液体を充満させておき、試料流入口(11)に試料を配して、
【0095】
(ii)流体移送手段(55)をリザーバタンク(51)中の試料を吸引する方向に駆動すると、逆止弁(11)と逆止弁(13)は自動的に開き、逆止弁(22)と逆止弁(24)は自動的に閉じて、試料は第一流路(1)から計量用流路(5)に移送される。試料が計量用流路(5)に充満して第二接合部(7)から第三流路(3)に入り、かつ、接合部(8)を越えない時点で、流体移送手段(55)を停止する。試料が第三流路(3)に入り、かつ、接合部(8)を越えていないことを知る方法は前記第一態様と同様である。
(iii)次いで、流体移送手段(55)を吐出方向に駆動すると、逆止弁(21)と逆止弁(23)は自動的に閉じ、逆止弁(22)と逆止弁(24)は自動的に開いて、計量用流路(5)中の試料は、流入口(14)から導入された流体に押されて、接合部(6)から第二流路(2)へ注入される。
【0096】
本第四態様は、バルブの操作が全く不要で、1つのポンプの操作のみによって試料の計量と注入が可能であるため、駆動装置を極めて簡略化できる。
【0097】
流体移送手段(55)として、例えばギヤポンプやダイヤフラムポンプなどの外部ポンプや、リザーバタンク(52)を兼ねたマイクロシリンジポンプを使用することが出来る。また、微量試料計量デバイスと同じマイクロ流体デバイス内に設けられた、流体移送手段(55)を兼ねる移送制御手段(24)を使用することも好ましい。該流体移送手段としては、前記の、特開2003-139660号公報に記載されているような圧力弁を用いたポンプ機構、或いはしごきポンプ機構を好ましく用いることが出来る。
【0098】
本第四態様の変形として、前記の逆止弁の一部又は全部を圧力弁に置き換えても良い。圧力弁を二つ以上使用する場合には、前記の流体移送が可能になるように、各圧力弁の開閉ある直を調節する。
【0099】
本発明に成る第二の微量試料の計量方法は、本発明になる微量試料計量デバイスであって、かつ、第二流路(2)の接合部(6)と移送制御手段(22)の間に試料を注入すべき機構を有する微量試料計量デバイス(例えば図6にその基本構成が例示されている)を使用して、
流体試料を試料流入口(11)から第一流路(1)に流入させ、
第一流路(1)の移送制御手段(21)を移送可能状態、第二流路(2)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送停止状態とし、流体試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を経由して第三流路(3)に移送し、
次いで、第一流路(1)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第二流路(2)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送停止状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送可能状態とし、計量用流路に充填された試料を計量用流路(5)から第二流路(2)へ移送し、第二流路(2)中に設けられた試料を注入すべき機構に微量の計量された試料を注入することを特徴とする。
【0100】
この微量試料の計量方法は、計量された試料が試料流出口(12)から流出する形で得られる代わりに 接合部(6)から直接、計量された試料を利用する機構に注入され、該機構で処理された試料が移送制御手段(22)を経て試料流出口(12)から排出されること以外は、前記第一の方法と同様である。即ち、本第二の方法に関しても、前記第一の方法に於ける第一態様〜第四態様と同様の態様を例示することが出来る。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
本実施例で使用する紫外線硬化樹脂組成物の調製方法、および、紫外線照射方法を以下に示す。
【0102】
[流路形成用の紫外線硬化性組成物(X1)の調製]
活性ネルギー線重合性化合物として、大日本インキ化学工業株式会社製の平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、及び、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」20部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部を均一に混合して組成物(X1)を調製した。
【0103】
[蓋形成用の紫外線硬化性組成物(X2)の調製]
ネルギー線重合性化合物として前記「ユニディックV−4263」60部、前記「ニューフロンティアHDDA」20部、前記「N−177E」20部、光重合開始剤として前記「イルガキュアー184」2部を混合して、蓋用組成物を調製した。
【0104】
[蓋形成用の紫外線硬化性組成物(X3)の調製]
ネルギー線重合性化合物として前記「ユニディックV−4263」60部、前記「ニューフロンティアHDDA」40部、光重合開始剤として前記「イルガキュアー184」2部を混合して、蓋用組成物を調製した。
【0105】
[多孔質層形成用の紫外線硬化性組成物(Y)の調製]
ネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」(日本化薬株式会社製)18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)10質量部、貧溶剤(R)としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を180質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュアー184」3質量部を、均一に混合して多孔質層形成用の組成物(Y)を調製した。
【0106】
[ゲル形成用の紫外線硬化性組成物(Z)の調製]
活性ネルギー線重合性化合物として和光純薬社製アクリルアミド10部及びN,N−ジメチルビスアクリルアミド0.15部、光重合開始剤として「イルガキュア184」2部、及び、蒸留水90部を均一に混合して、ゲルを形成用の組成物(Z)を調製した。
【0107】
[紫外線ランプ1による照射]
3000Wメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用い、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0108】
[紫外線ランプ2による照射]
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cmの紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
【0109】
(実施例1)
本実施例では、図2に示した本発明の第一の方法の第一態様である、移送制御手段(21)、(22)に開閉バルブを使用し、流体移送手段(52)、(53)として外部ポンプを用いる例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0110】
[クロマトグラフィー・カラム用の多孔質層(33)の形成]
厚さ1mmのアクリル樹脂製の基板(31)にスピンコーターを用いて、組成物(X2)を塗布し、紫外線ランプ1にて 1秒間紫外線を照射して塗膜を半硬化させて第一樹脂層(32)とした。その上にスピンコーターにて組成物(Y)を塗工し、フォトマスクを通して紫外線ランプ2により、多孔質層(33)が形成される多孔質層形成領域(33)とする部分に紫外線を40秒照射して照射部分の組成物(Y)の塗膜を硬化させると同時に相分離させ、n−ヘキサンで貧溶剤(R)を洗浄除去して多孔質層(33)を形成した。
【0111】
[流路となる溝の形成]
前記多孔質層(33)の上に、バーコーターを用いて組成物(X1)を塗工し、第一流路(1)、第二流路(2)、計量用流路(5)、およびクロマトグラフィー・カラム(35)と成すべき部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線ランプ2による紫外線照射を40秒行って組成物(X1)の塗膜を半硬化させて第二樹脂層(34)を形成し、非照射部分の未硬化の前記組成物(X1)をエタノールで洗浄除去して、第一流路(1)、第二流路(2)第三流路(3)、第四流路(4)、計量用流路(5)、接合部(6)、第二接合部(7)、およびクロマトグラフィー・カラム(35)となる溝を形成した。
【0112】
[蓋(36)の固着]
一方、組成物(X2)を、片面がコロナ放電処理された厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンシート(二村化学株式会社製)を一時的な支持体(図示略)として、その上にバーコーターを用いて塗工し、紫外線ランプ1により紫外線を1秒照射して半硬化させ、これを前記で形成された溝を有する部材の溝形成面に張り合わせ、紫外線ランプ1により紫外線を40秒照射して完全に硬化させて蓋(36)を固着した。次いで、前記一時的な支持体を剥離除去して、毛細管状の第一流路(1)、第二流路(2)、)、第三流路(3)、第四流路(4)、計量用流路(5)、接合部(6)、第二接合部(7)から成る流路(10)、及び、試料流出口(12)に接続されたクロマトグラフィー・カラム(35)を有する微量試料計量デバイス前駆体を形成した。
【0113】
[その他の構造の形成]
この後、ドリルを使用して、前記蓋(36)を貫通し、試料流入口(11)において第一流路(1)に通じる直径0.5mmの孔を開け、該開口部にルアーフィッティング(38)を接着して接続口(38)とした。同様にして、試料流出口(12)に接続されたクロマトグラフィー・カラム(35)の他端(37)に直径0.5mmの孔を開け、ルアーフィッティング(39)を接着して接続口(39)を形成し、第三流路(3)の端部(13)に直径0.5mmの孔を開け、該開口部にルアーフィッティング(40)を接着して接続口(40)とし、さらに、流入口(14)に直径0.5mmの孔を開け、該開口部にルアーフィッティング(41)を接着して接続口(41)として、微量試料計量デバイス(100)を得た。この微量試料計量デバイス(100)の第一流路の途中の一部は図7に示されたように圧迫部(42)とされ、該圧迫(42)と、それに相対する流路部分(43)とで開閉バルブ(43)が構成され、これが移送制御手段821)である開閉バルブ(21)とされている。同様の開閉バルブ(43)が第二流路(2)の途中に設けられ、移送制御手段(22)である開閉バルブ(22)とされている。
【0114】
[流路の構造観察]
得られた微量試料計量デバイス(100)の各部の寸法を光学顕微鏡にて観察した。流路(10)全体の深さ、及びクロマトグラフィー・カラム(35)の深さ(但し、多孔質層の厚みを除く)は約50μmであり、幅は、第一流路(1)、第二流路(2)、第三流路(3)、第四流路(4)、及び、クロマトグラフィー・カラム(35)が約150μm、計量用流路(5)が約50μmであった。また、基板(31)の厚みは1mm、第一樹脂層(32)の厚みは10μm、多孔質槽(23)の厚みは約5μm、第二樹脂層(34)の厚みは50μm、蓋(36)の厚みは約100μmであった。また、第一流路(1)および第二流路(2)の長さはそれぞれ約10mm、第三流路(3)および第四流路(4)の長さはそれぞれ約20mm、クロマトグラフィー・カラム(35)の長さが約200mmであった。
【0115】
[微量試料計量装置]
(A)「該微量試料計量デバイスに組み込まれた、又は該微量試料計量デバイスとは独立した、流体の移送と停止を行う機構」として、微量試料計量デバイスとは独立した流体移送手段(53)および流体移送手段(54)であるシリンジポンプ(53)、(54)を使用した。
(B)「第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三流路(3)の途中に設けられた又は端部(13)に接続された移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、試料を試料流入口(11)より流入し、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に流入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)の途上に設けられた又は流入口(14)に接続された移送制御手段(24)とにより、
該試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構」および、
(C)「移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構」として、ゴム製の押圧部(64)を有し、コンピュータ(61)制御による電磁式のアクチュエータ(65)、及び、ゴム製の押圧部(66)を有し、コンピュータ(61)制御による電磁式のアクチュエータ(67)を作製し、使用した。
【0116】
図2に示したように配管し、接続口(38)に、リザーバタンク(51)を接続し、接続口(40)に流体移送手段(53)としてシリンジポンプ(53)を接続し、接続口(41)に、リザーバタンク(52)と流体移送手段(54)を兼ねた機構として、蒸留水の入ったシリンジポンプ(54)を接続した。
【0117】
以上の機構と、前記微量試料計量デバイス(100)でもって、図2、図8に示したような微量試料計量装置(101)を構成した。
【0118】
[試料計量試験]
開閉バルブ(21)及び開閉バルブ(22)を共に押圧部(65)、(66)を圧迫しない開いた状態として、該シリンジポンプ(54)を吐出方向に駆動することによって、流路(10)全体に蒸留水を充満させた。
次いで、図8に示した開閉バルブ(21)の圧迫部(42)及び開閉バルブ(22)の圧迫部(42)を図10に示したアクチュエータ(64)、(66)の押圧部(65)、(67)で圧迫して両開閉バルブ(21)、(22)を、図9に示したように閉じ、試料流入口(11)のルアーフィッティング(38)内にピペットにて蛍光色素フルオレシン(和光純薬製)の1×10−6M水溶液を10μl配した。
【0119】
その後、圧迫を解除して移送制御手段(21)を開き、シリンジポンプ(53)を吸引方向に駆動したところ、試料は第一流路(1)を通り接合部(6)を経て第二流路(2)に入った。試料が計量用流路(5)を満たし、第二接合部(7)を越えたたことを、コンピュータ(61)によりシリンジポンプ(53)の駆動時間から判断し、シリンジポンプ(53)を停止した。
【0120】
アクチュエータ(64)により、開閉バルブ(21)の圧迫部(42)を圧迫して開閉バルブ(21)を閉じ、アクチュエータ(66)による開閉バルブ(22)の圧迫部(42)の圧迫を解除して開閉バルブ(22)を開いた後、シリンジポンプ(54)を吐出方向に駆動して、流入口(14)から蒸留水を導入したところ、計量用流路(5)内の試料は、第二接合部(7)から計量用流路(5)に導入される蒸留水によって押され、接合部(6)を経て第二流路(2)に移送され、試料流出口(12)からクロマトグラフィー・カラム(35)に注入されて、接続口(36)から微量試料計量デバイス(100)外へ排出された。前記の移送制御手段(21)、(12)の開閉、流体移送手段(15)の駆動は全てコンピュータ(61)制御により行った。
【0121】
光電子増倍管付きの蛍光顕微鏡(図示略)を用いて、試料流出口(12)に於ける蛍光強度の時間変化を測定し、試料のフルオレセインに起因する蛍光強度の積分値を検量線と比較して注入量を求めたところ、注入量は約8.5nlと見積もられた。
【0122】
(実施例2)
本実施例では、図2に示した本発明の第一の方法の第二態様である、移送制御手段(21)及び移送制御手段(22)として逆止弁を使用し、流体移送手段(53)、(54)として外部ポンプを用いる例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス(100)内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0123】
(イ)樹脂第二層(34)の形成時に、第一流路(1)の途中に移送制御手段(21)として、逆止弁(46)の弁室(44)となる凹部(44)を形成し、また、第二流路(2)の途中に、移送制御手段(22)として、逆止弁(46)の弁室(44)となる凹部(44)を形成したこと、
(ロ)第二樹脂層(34)の溝(10)と凹部(44)いっぱいに組成物(Z)を充填し、逆止弁(21)とする逆止弁(46)の弁体(45)及び逆止弁(22)とする逆止弁(46)の弁体(42)となす部分に紫外線ランプ2を用いて紫外線を40秒間照射し、未照射部の未硬化の組成物(Z)を蒸留水で洗浄除去して、逆止弁(21)の弁室(44)と逆止弁(22)の弁室(44)内に、それぞれゲル製の弁体(45)を形成したこと、
(ハ)蓋(36)の固着の工程に先だって、前記2箇所のゲル製の弁体(45)の上面に筆で界面活性剤を塗布し、該塗布部分を非接着性としたこと、
以外は実施例1と同様にして、微量試料計量デバイス(100)を作成し、移送制御手段(21)と移送制御手段(22)の両者を開閉バルブの代わりに逆止弁(21)、(22)としたこと以外は実施例1と同様の微量試料計量デバイス(100)を得た。
【0124】
[流路の構造観察]
得られた微量試料計量デバイス(100)の各部の寸法を光学顕微鏡にて観察したところ、逆止弁(21)、(22)の弁室(44)は共に幅が約300μmの、平面形状が砲弾型の柱状、弁体は共に、一辺が約300μmの三角柱状であった。これらの高さは流路(10)と同じ50μmであった。それ以外は実施例1と同様であった。この弁体(45)は両者とも、底と両側壁部において弁室(44)内面に固着していたが、蓋(36)には接触しているが固着していなかった。また、これらの逆止弁(21)、(22)は、それぞれ、接合部(6)から3mm離れた位置に形成されていた。
【0125】
[微量試料計量装置]
アクチュエータ(64)、(66)を有さないこと以外は実施例1と同様の微量試料計量装置(101)を作製した。
なお、本実施例に於いては、微量計量デバイス(100)内に形成された2つの逆止弁(21)、(22)が
「(B)第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三路(3)の途中に設けられた又は端部(13)に接続された移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、試料を試料流入口(11)より流入し、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に流入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)の途上に設けられた又は流入口(14)に接続された移送制御手段(24)とにより、
該試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構」及び、
「(C)移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構」
となる。
【0126】
[試料計量試験]
実施例1と同様に接続し、あらかじめ流路(10)に蒸留水を充満させるに当たって、接続口(38)と接続口(41)の内側をそれぞれリザーバタンク(51)(52)として用い、これらに蒸留水を満たしておき、シリンジポンプ(53)の吸引とシリンジポンプ(54)の吐出により、流路(10)全体に蒸留水を充満させたこと、移送制御手段(21)と移送制御手段(22)の特別な開閉操作を一切行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして試料注入試験を行った。
【0127】
その結果、逆止弁(21)と逆止弁(22)は、シリンジポンプ(53)の吸引とシリンジポンプ(54)の吐出に応じて自動的に開閉したこと、計量してクロマトカラムに注入した試料は、実施例1よりテーリングが多かったこと、及び、注入量が約7.9nlと見積もられた以外は、実施例1と同様であった。
【0128】
(実施例3)
本実施例では、本発明の第一の方法の第二態様である、図3に示したような構成の、移送制御手段(21)、(22)として逆止弁(21)、(22)を使用し、また、移送制御手段(23)、(24)として、流体移送手段(53)、(54)を兼ねたポンプ機構(23)、(24)を用いた例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス(100)内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0129】
第三流路(3)の途中に設ける、流体移送手段(53)を兼ねる移送制御手段(23)として、第二接合部(7)側から端部(13)方向へ移送可能なポンプ機構(23)を形成したこと、及び、第四流路(4)の途中に設ける、流体移送手段(54)を兼ねる移送制御手段(24)として、ポンプ機構(23)と同様のポンプ機構(24)を形成したこと、以外は実施例2と同様の微量試料計量デバイス(100)を得た。
但し、ポンプ機構(23)は、実施例2の逆止弁(21)と同様の構造の2つの逆止弁(46)とその間の圧迫部(48)で構成されており、また、ポンプ機構(24も同様に2つの逆止弁(46)とその間の圧迫部(48)で構成されている。
【0130】
[流路の構造観察]
ポンプ機構(23)及びポンプ機構(24)の各2つの逆止弁(46)間の距離は約5mmであり、ポンプ機構(23)は第二接合部(7)から5mm離れた位置に、ポンプ機構(24)は第二接合部(7)から15mm離れた位置に設けられていた。
【0131】
[微量試料計量装置]
シリンジポンプ(53)、(54)を有さないこと以外は、実施例1と同様の微量試料計量装置を作製して用いた。
【0132】
[試料計量試験]
(イ)前記ポンプ機構(23)、(24)が形成された微量試料計量デバイス(100)を用いたこと、
(ロ)シリンジポンプ(53)、(54)を装着しなかったこと、および、接続口(41)のルアーフィッティング(41)の内側をリザーバタンク(52)として使用し、蒸留水を注入したこと、以外は実施例2と同様の配管構成としたこと、
(ハ)シリンジポンプ(53)を駆動する代わりに、ポンプ機構(23)の圧迫部(48)をアクチュエータ(64)の押圧部(65)にて繰り返し押圧したこと、及び、シリンジポンプ(54)を駆動する代わりにポンプ機構(24)の圧迫部(48)をアクチュエータ(66)の押圧部(67)にて繰り返し押圧したこと、
以外は、実施例2と同様にして試料注入試験を行い、実施例2と同様の結果を得た。
【0133】
(実施例4)
本実施例では本発明の第一の方法の第三態様であり、図4に示したような構成の、移送制御手段(21)及び移送制御手段(22)として流体移送手段を兼ねるポンプ機構(21)、(22)を使用した例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス(100)内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0134】
(i)実施例2に於ける第一流路(1)の逆止弁(21)の代わりに、実施例3に於けるポンプ機構(23)と同様の構造の、試料流入口(11)から接合部(6)方向に移送可能な、移送制御手段(21)を兼ねるポンプ機構(21)を形成したこと、
(ii)実施例2に於ける第二流路(2)の逆止弁(22)の代わりに、実施例3に於けるポンプ機構(54)と同様の構造の、接合部(6)側から試料流出口(12)方向に移送可能な、移送制御手段(22)を兼ねるポンプ機構(22)を形成したこと
(iii)第三流路(3)の途中に、実施例2に於ける逆止弁(21)と同様の構造の、第二接合部(7)側から端部(13)方向へ流通可能な逆止弁(46)を形成し、移送制御手段(23)としての逆止弁(23)としたこと、及び、
(iv)第四流路(4)の途中に、実施例2に於ける逆止弁(22)と同様の構造の、流入口(14)側から第二接合部(7)方向へ流通可能な逆止弁(46)を形成し、移送制御手段(24)としての逆止弁(24)としたこと、
以外は実施例3と同様の微量試料計量デバイス(100)を得た。
【0135】
[流路の構造観察]
ポンプ機構(21)及びポンプ機構(22)の各2つの逆止弁(46)間の距離は約5mmであり、ポンプ機構(21)、(22)は両者とも接合部(6)から5mm離れた位置に設けられていた。
【0136】
[微量試料計量装置]
シリンジポンプ(53)、(54)を有さないこと以外は、実施例1と同様の微量試料計量装置を作製して用いた。
【0137】
前記ポンプ機構(21)、(22)が形成された微量試料計量デバイス(100)を用い、接続口(41)のルアーフィッティング(41)の内側をリザーバタンク(52)として使用し、図4に示した配管構成とした。
【0138】
(あ)あらかじめ流路(10)に蒸留水を充満させるに当たって、蒸留水を接続口(38)と接続口(41)に満たしておき、ポンプ機構(21)の圧迫部(48)をゴム製の押圧部(65)を持つアクチュエータ(64)により繰り返し圧迫することで、該蒸留水を第三流路まで移送し、次いで、ポンプ機構(22)の圧迫部(48)をゴム製の押圧部(67)を持つアクチュエータ(66)で繰り返し圧迫することで蒸留水第二流路の試料流出口(12)まで移送することによって、全流路(10)全体に蒸留水を充填した。
(い)接続部(11)に試料を注入し、ポンプ機構(21)の圧迫部(48)をアクチュエータ(64)の押圧部(65)にて繰り返し押圧したところ、逆止弁(23)は自動的に開き、逆止弁(24)は自動的に閉じて、試料は試料導入口(11)から計量用流路(5)に移送された。
(う)次いで、ポンプ機構(22)の圧迫部(48)をアクチュエータ(66)の押圧部(675にて繰り返し押圧したところ、逆止弁(23)は自動的に閉じ、逆止弁(24)は自動的に開き、試料は計量用流路(5)から第二流路(2)に注入され、それに引き続いて流入口(14)から流入した蒸留水が第二流路に注入された。
【0139】
(実施例5)
本実施例では、図5に示した本発明の第一の方法の第四態様の例であり、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)として全て逆止弁を使用し、流体移送手段(55)として双方向に移送可能な外部ポンプを用いる例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス(100)内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0140】
(イ)第三流路(3)の端部(13)が、第四流路(4)の途中の合流部(8)にて 第四流路(4)に接合されていて、マイクロ流体デバイス外部に開口していないこと、
(ロ)延長流路(3’)と延長流路(4’)とを有し、これら流路が合流部(8)で接合されていること、
(ハ)第三流路(3)の途上に、移送制御手段(23)として、実施例2における逆止弁(21)と同様の構造を持ち、第二接合部(7)側から合流部(8)方向に流通可能な逆止弁(23)が形成されていること、
(ニ)延長流路(4’)の途中に、移送制御手段(24)として、実施例2における逆止弁(21)と同様の構造を持ち、合流部(8)側から第二接合部(7)方向に流通可能な逆止弁(24)を形成したこと、
以外は実施例2と同様にして微量試料計量デバイス(100)を得た。
【0141】
[微量試料計量装置]
流体移送手段(53)を使用しなかったこと、および、流体移送手段(54)の代わりに、双方向に移送可能な流体移送手段(55)として、リザーバタンク(52)を兼ねるシリンジポンプ(55)を使用したこと以外は実施例2と同様の微量試料計量装置(101)を作製した。
【0142】
なお、本実施例に於いては、微量計量デバイス(100)内に形成された4つの逆止弁(21)、(22)、(23)、(24)が、
「(B)第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三路(3)又は延長流路(3’)の途中に設けられた移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、試料を試料流入口(11)より流入し、試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に流入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)又は延長流路(4’)の途上に設けられた移送制御手段(24)とにより、
該試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構」及び、
「(C)移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構」
となる。
【0143】
[試料計量試験]
(あ)接続口(38)と接続口(41)の内側をそれぞれリザーバタンク(51)、(52)として用い、まず、これらに蒸留水を満たしておき、シリンジポンプ(55)を合流部(8)から流入口(14)方向に駆動した後、逆方向に駆動して、あらかじめ流路(10)全体に蒸留水を充満させたこと、
(い)シリンジポンプ(53)を駆動する代わりにシリンジポンプ(55)を、合流部(8)側から流入口(14)方向へ移送するように駆動したこと、
(う)シリンジポンプ(54)を駆動する代わりにシリンジポンプ(55)を、流入口(14)から合流部(8)方向へ移送するように駆動したこと、及び、
(え)移送制御手段(21)と移送制御手段(22)の特別な開閉操作を一切行わなかったこと
以外は、実施例1と同様にして試料注入試験を行った。
【0144】
その結果、逆止弁(21)、(22)、(23)、(24)は、シリンジポンプ(55)の双方向への移送に応じて自動的に開閉したこと、計量してクロマトカラムに注入した試料は、実施例1よりテーリングがやや多かったこと、及び、注入量が約7.9nlと見積もられた以外は、実施例1と同様であった。
【0145】
(実施例6)
本実施例では、図5に示した本発明の第一の方法の第四態様の例であり、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)として全て逆止弁を使用し、流体移送手段(55)として双方向に移送可能な微量計量デバイスが形されたマイクロ流体デバイス内に組み込まれたポンプ機構を用いる例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)に接続して微量試料計量デバイス(100)内に形成されたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0146】
(イ)第二樹脂層(34)の形成工程に於いて、第四流路(4)の途中の堰状構造(47)となす部分に紫外線照射して、図14に示したような堰状構造(47)を形成したこと、及び、
(ロ)蓋(36)の固着の工程に先だって、該堰状構造(47)の上面に筆でシリコンオイルを塗布し、該塗布部分を非接着性としたこと、以外は実施例5と同様にして、堰状構造(47)の上面は蓋(36)に接触しているが固着していない、圧力弁(49)を形成したこと、
(ハ)圧力弁(49)の第二接合部(7)側の流路部分に圧迫部(48a)を設け、流入口(14)側の流路部分に圧迫部(48b)を設けること、
(ニ)前記以外は実施例5と同様にして微量試料計量デバイスを作製したこと。
以外は実施例5と同様にして、第四流路(4)の途中に形成した、圧力弁(49)と圧迫部(48a)と圧迫部(48b)から成り、図15に示したような機構でもって、流体を双方向に移送可能なポンプ機構(55)が形成されていること以外は、実施例5と同様の微量試料計量デバイス(100)を得た。
【0147】
[流路の構造観察]
得られた微量試料計量デバイス(100)の各部の寸法を光学顕微鏡にて観察したところ、堰状構造(47)は流路方向の長さが約150μm、高さ50μm四角柱状であり、その上面は蓋に接触しているが固着していなかった。
【0148】
[微量試料計量装置]
シリンジポンプの代わりに、ポンプ機構(25)を駆動するためのアクチュエータ(64)、(66)を有すること以外は実施例5と同様の微量試料計量装置(101)を作製した。
[試料注入試験]
(あ)流体移送手段(55)として、シリンジポンプを使用する代わりに、ポンプ機構(55)を用いたこと、
(い)流体を第位置流路(1)から流乳口(14)方向へ移送する場合には、圧迫部(48a)をアクチュエ−タ(64)の押圧部(65)で繰り返し圧迫したこと、及び、
(う)流体を流乳口(14)から第二流路(2)方向へ移送する場合には、圧迫部(48b)をアクチュエ−タ(66)の押圧部(67)で繰り返し圧迫したこと、
以外は、実施例5と同様にして試料注入試験を行い、実施例5と同様の結果を得た。
【0149】
(実施例7)
本実施例では、図6に示した本発明の第二の方法の第四態様の例であり、移送制御手段(21)、(22)、(23)、(24)として全て逆止弁を使用し、流体移送手段(55)として、双方向に移送可能であって、量計量デバイスが形されたマイクロ流体デバイス内に組み込まれたポンプ機構を用いる例を示す。本実施例ではまた、第二流路(2)の接合部(6)と移送制御手段(22)との間に設けられたクロマトグラフィー・カラムに計量した試料を注入する例を示す。
【0150】
[微量試料計量デバイスの形成]
移送制御手段(22)とクロマトグラフィー・カラム(25)の形成位置を交換し、クロマトグラフィー・カラム(25)を接合部(6)と移送制御手段(22)との間に形成したこと以外は実施例6と同様にして、微量試料計量デバイスを作製した。
【0151】
[微量試料計量装置]
実施例6と同様にして微量試料計量装置(101)を作製した。
【0152】
[試料注入試験]
実施例6と同様にして試料注入試験を行い、実施例6と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の微量試料計量デバイスの構成を示す配管図模式図である。
【図2】本発明の第一の方法の第一態様および実施例1、2に使用した微量試料計量デバイスの配管図模式図である。
【図3】本発明の第一の方法の第二態様、および実施例3に使用した微量試料計量デバイスの配管図模式図である。
【図4】本発明の第一の方法の第三態様および実施例4に使用した微量試料計量デバイスの配管図模式図である。
【図5】本発明の第一の方法の第四態様および実施例5に使用した微量試料計量デバイスの配管図模式図ある。
【図6】本発明の第二の方法に使用した微量試料計量デバイスの配管図模式図である。
【図7】本発明の実施例に使用した微量試料計量デバイスの平面図模式図と側面図模式図である。
【図8】本発明の実施例に使用した微量試料計量デバイスの開閉バルブ部分の、該開閉バルブが開いた状態を示す部分平面図模式図と縦割り断面模式図である。
【図9】本発明の実施例に使用した微量試料計量デバイスの開閉バルブ部分の、該開閉バルブが閉じた状態を示す縦割り断面模式図である。
【図10】本発明の実施例に使用した微量試料計量装置の構成を示す見取り図である。
【図11】本発明の実施例に使用した逆止弁部分の部分平面図模式図と縦割り断面模式図である。
【図12】本発明の実施例に使用した微量試料計量デバイスの平面図模式図である。
【図13】本発明の実施例に使用した逆止弁を用いたポンプ機構の、部分平面図模式図と縦割り断面模式図である。
【図14】本発明の実施例に使用した圧力弁の、該圧力弁が閉じた状態を示す部分平面図模式図と縦割り断面模式図である。
【図15】本発明の実施例に使用した、圧力弁を用いたポンプ機構の、流体移送の様子を示す縦割り断面模式図である。
【符号の説明】
【0154】
1 第一流路
2 第二流路
3 第三流路
3’、4’ 延長流路
4 第四流路
5 計量用流路
6 接合部
7 第二接合部
8 合流部
9 共通延長流路
10 流路、溝
11 試料流入口
12 試料流出口
13 第三流路端
14 流入口
21、22、23、24 移送制御手段(逆止弁、圧力弁、ポンプ機構)
31 基板
32 第一樹脂層
33 多孔質層、多孔質層形成領域
34 第二樹脂層
35 クロマトグラフィー・カラム
36 蓋
37 カラムの他端
38、39、40、41 ルアーフィッティング、接続口
42 圧迫部
43 開閉バルブ
44 弁室、凹部
45 ゲル、弁体
46 逆止弁
47 堰状構造
48a、48b 圧迫部
49 圧力弁
51,52 リザーバタンク
53、54、55 流体移送手段、ポンプ機構
56 流通方向
61 コンピュータ
64、66 押圧機構、アクチュエータ
65,67 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に流体試料を流入させる試料流入口(11)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(21)を有する第一流路(1)と、一端に流体試料を流出させる試料流出口(12)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(22)を有する第二流路(2)と、一定長さの計量用流路(5)とが、流体試料を流通するように第一接合部(6)において接合され、更に該計量用流路(5)の他端部と、端部(13)を有する第三流路(3)と、一端に流体試料移送用流体の流入口(14)を有する第四流路(4)とが流体試料を流通するように第二接合部(7)において接合されてなり、
(a)該試料流出口(11)より流体試料を流入し、該移送制御手段(22)により第二流路(2)に流体試料を流入させず、第三流路(3)に流体試料が流通するようにすると同時に第四流路(4)に流体試料が流通しないようにして流体試料を計量用流路(5)に流入させた後、
(b)該移送制御手段(21)により第一流路(1)を閉鎖し、第三流路(3)に流体試料が流通しないようにして、該移送制御手段(22)により第二流路(2)が流通できるようにし、次いで該流入口(14)から流体試料移送用流体を流入することにより計量された試料を第二流路(2)へ移送することができる微量試料計量デバイス。
【請求項2】
前記第三流路(3)の流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を有し、前記第四流路(4)の流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を有する請求項1に記載の微量試料計量デバイス。
【請求項3】
前記移送制御手段が、それぞれ逆止弁、圧力弁、開閉バルブ又は流体の移送及び停止が可能なポンプである請求項1又は2に記載の微量試料計量デバイス。
【請求項4】
前記計量用流路(5)の流路断面積が、1μm〜0.1mmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の微量試料計量デバイス。
【請求項5】
前記計量用流路(5)の長さが、0.1〜100mmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の微量試料計量デバイス。
【請求項6】
前記試料流出口(12)にクロマトグラフィーカラムが接続された請求項1〜5のいずれかに記載の微量試料計量デバイス。
【請求項7】
一端に流体試料を流入させる試料流入口(11)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(21)を有する第一流路(1)と、一端に流体試料を流出させる試料流出口(12)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(22)を有する第二流路(2)と、一定長さの計量用流路(5)とが、流体試料を流通するように第一接合部(6)において接合され、更に該計量用流路(5)の他端部と、端部(13)を有し、流路途中又は端部(13)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を有する第三流路(3)と、一端に流体試料移送用流体の流入口(14)を有し、流路途中又は流入口(14)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を有する第四流路(4)とが流体試料を流通するように第二接合部(7)において接合されてなる微量試料計量デバイスを有し、
(A)流体の移送と停止を行う機構
(B)第一流路(1)途中の移送制御手段(21)と、第三流路(3)の途中に設けられた又は端部(13)に接続された移送制御手段(23)とを液送可能状態とし、流体試料を試料流入口(11)より流入し、流体試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を通じて計量用流路(5)内に流入し、その際、第二流路(2)途中の移送制御手段(22)と、第四流路(4)の途上に設けられた又は流入口(14)に接続された移送制御手段(24)とにより、
該流体試料が第二流路(2)及び第四流路(4)に流入しないようにする機構、
(C)移送制御手段(13)と移送制御手段(24)とを流通可能状態として、計量用流路(5)中に充填された計量された流体試料を第二流路(2)中に移送し、計量された試料を試料流出口(12)から流出させ、その際に、移送制御手段(21)と移送制御手段(23)とにより、流体試料又は試料移送用流体が第一流路(1)及び第三流路(3)に流入しないようにする機構、
を有することを特徴とする微少試料計量装置。
【請求項8】
一端に流体試料を流入させる試料流入口(11)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(21)を有する第一流路(1)と、一端に流体試料を流出させる試料流出口(12)を有し、流路途中に流体の移送を制御する移送制御手段(22)を有する第二流路(2)と、一定長さの計量用流路(5)とが、流体試料を流通するように第一接合部(6)において接合され、更に該計量用流路(5)の他端部と、端部(13)を有し、流路途中又は端部(13)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(23)を有する第三流路(3)と、一端に流体試料移送用流体の流入口(14)を有し、流路途中又は流入口(14)に接続された延長流路に流体の移送を制御する移送制御手段(24)を有する第四流路(4)とが流体試料を流通するように第二接合部(7)において接合されてなる微量試料計量デバイスを使用して、
流体試料を試料流入口(11)から第一流路(1)に流入させ、
第一流路(1)の移送制御手段(21)を移送可能状態、第二流路(2)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送停止状態とし、流体試料を第一流路(1)から計量用流路(5)を経由して第三流路(3)に移送し、
次いで、第一流路(1)の移送制御手段(22)を移送停止状態、第二流路(2)の移送制御手段(23)を移送可能状態、第三流路(3)の移送制御手段(23)を移送停止状態、第四流路(4)の移送制御手段(24)を移送可能状態とし、計量用流路に充填された試料を計量用流路(5)から第二流路(2)へ移送し、試料流出口(12)より微量の計量された試料を得ることを特徴とする微量試料の計量方法。
【請求項9】
0.0001mm〜0.5mmの試料を計量して得る請求項8に記載の微量試料の計量方法。
【請求項10】
クロマトグラフィー用分離カラムへ注入する試料の計量である請求項8又は9に記載の微量試料の計量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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