説明

微量金属を含む輸液製剤

【課題】アミノ酸、糖、銅およびヨウ素イオンを含む総合輸液製剤であって、保存中に銅とヨウ素イオンが沈殿を生成しない総合輸液製剤を提供すること。
【解決手段】空気透過性である輸液容器が、実質的に酸素の非存在下に、ガスバリヤー性の外袋に封入されており、輸液容器が連通可能な隔壁手段で区画された複室からなり、輸液容器の第1室にアミノ酸含有溶液が、第2室に糖含有溶液がそれぞれ収容され、かつアミノ酸含有溶液および糖含有溶液のいずれか一方が銅を含有しており、他方がヨウ素イオンを含有していることを特徴とする銅とヨウ素イオンを含有する栄養輸液製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の調製や配合を行うことができる複数の部屋を有する輸液容器を備えた栄養輸液製剤および該容器を用いたヨウ素イオンまたは銅イオンの安定化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経口・経腸管栄養補給が不能または不十分な患者には、経静脈からの高カロリー輸液の投与が行われている。このときに使用される輸液製剤としては、糖製剤、アミノ酸製剤、電解質製剤、混合ビタミン製剤、脂肪乳剤などが市販されており、病態などに応じて用時に病院で適宜混合して使用されていた。
しかし、病院におけるこのような混注操作は煩雑なうえに、操作時に細菌汚染の可能性が高く不衛生であるという問題がある。このため連通可能な隔壁手段で区画された複数の室を有する輸液容器が開発され病院で広く使用されるようになった。この輸液容器の製品としては、例えば一室にアミノ酸輸液を収容し、他室にブドウ糖輸液を収容したものがあるが、アミノ酸輸液は酸素により酸化分解を受けやすいことから当該輸液容器は、ガスバリヤー性のプラスチックフィルムの袋に脱酸素剤と共に収容されている。
【0003】
一方、輸液中には、微量金属元素(銅、鉄、亜鉛、マンガンなど)が含まれていないことから輸液の投与が長期になると、患者の唇がひび割れたり、造血機能が低下したりする、いわゆる微量金属欠乏症を発症する。このため病院では、細菌汚染の問題をかかえながらも依然として輸液を投与する直前に微量金属元素を適宜混合しているのが現状である。
【0004】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、輸液容器の一室に微量金属元素をも収容した輸液製剤の研究を開始した。
しかしながら、アミノ酸輸液と微量金属元素を組み合わせた場合など、すなわち酸素の非存在下において、微量金属とヨウ素イオンを同じ一室に収容すると意外にも従来安定と考えられていた微量金属とヨウ素イオンが反応し、沈殿を生じることを本発明者らは知見した。
【0005】
すなわち、従来は微量金属とヨウ素イオンは水媒体中混合しても沈殿を生じることがないと認識されていたが、例えばアミノ酸製剤のような酸素に影響を受けやすい成分を含む輸液製剤が気体透過性容器内に収容され、酸素の影響を極力受けないように該容器が使用直前まで脱酸素剤とともに気体を透過しない外袋で覆われていて、外袋内および輸液容器内共に酸素の存在しない条件下では、微量金属(特に銅)とヨウ素イオンとを同じ室に収容すると容易に沈殿を生じ、輸液製剤の商品価値を失うことを本発明者らは発見した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、実質的に酸素が存在しない条件下において輸液容器の一室に微量金属溶液を収容し、他室にヨウ素イオン溶液、アミノ酸溶液などを収容することによって保存中に微量金属とヨウ素イオンが沈殿を生成せず、銅イオンとヨウ素イオンが安定な輸液製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記問題に鑑み、微量金属溶液とヨウ素イオン溶液を別々に収容することができる複室輸液容器を有する輸液容器を採用し、用時に複数の輸液容器に保存されている各種溶液を連通させることによって混合し、上記課題が解決できることを知見した。
【0008】
上記目的を達成するものは、例えば使用時に連通可能に区画された複数の室を有する輸液容器である。さらに、該輸液容器は、第1室と、第1室と区画された第2室と、第1室もしくは第2室と区画された第3室と、さらに所望により第1室、第2室および第3室のいずれかと区画された第4室を有し、第1室と第2室間に連通可能部が形成されており、第1室もしくは第2室と連通する閉塞された薬液流出口を備えている輸液容器である。
【0009】
前記輸液容器の各室には、薬剤が収容されている。また、前記連通可能部は、例えば、各室を区画する連通可能な隔壁全体もしくは一部に形成された弱シール部である。また、前記連通可能部は、例えば、輸液容器を区画する隔壁に設けられた破断可能な流路閉塞体であってよく、さらに該連通可能部と接触する輸液容器の一室を外部より押圧することにより当該室が隣接する他の一室と連通するものであることが好ましい。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 実質的に酸素の非存在下に、微量金属とヨウ素イオンとが隔離されて輸液容器内に収容されていることを特徴とする微量金属とヨウ素イオンを含有する栄養輸液製剤、
(2) 輸液容器が、空気透過性であり実質的に酸素の非存在下でガスバリヤー性の外袋に封入されていて、かつ輸液容器が連通可能な隔壁手段で区画された複室からなることを特徴とする上記(1)記載の栄養輸液製剤、
(3) 輸液容器の第1室にアミノ酸含有溶液が、第2室に糖含有溶液が、第3室に微量金属含有溶液がそれぞれ収容され、第1室または/および第2室の溶液が、さらにヨウ素イオンを含有していることを特徴とする上記(2)記載の栄養輸液製剤、
(4) 酸素が存在しない条件が、脱酸素剤を外袋に封入することにより達成されている、または/および不活性ガスを外袋に導入することにより達成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(5) 微量金属が銅であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(6) 糖がブドウ糖であることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(7) 第1室に収容されている溶液のpHが5〜8、第2室に収容されている溶液のpHが2.5〜5、および第3室に収容されている溶液のpHが4〜6.5であることを特徴とする上記(3)〜(6)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(8) 第1室または第2室に収容されている溶液が、電解質としてカルシウムイオンまたはリンの少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする上記(7)記載の栄養輸液製剤、
(9) 第1室に収容されている溶液、第2室に収容されている溶液および第3室に収容されている溶液を混合した溶液のpHが4〜7であることを特徴とする上記(3)〜(8)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(10) 第1室に収容されている溶液、第2室に収容されている溶液および第3室に収容されている溶液を混合した時の成分組成が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0.4〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0.2〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄5〜100μmol/L、銅1〜20μmol/L、マンガン0〜5μmol/L、亜鉛5〜150μmol/L、ヨウ素0.2〜5μmol/Lであることを特徴とする上記(3)〜(9)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(11) 第1室、第2室および第3室の少なくともそのいずれかと連通可能な隔壁手段で区画された第4室を有する輸液容器において、第4室に収容されている溶液がビタミンA、ビタミンE、ビタミンDおよびビタミンKの1以上を含有することを特徴とする上記(3)〜(10)のいずれかに記載の栄養輸液製剤、
(12) 第1室に収容されている溶液、第2室に収容されている溶液および第3室に収容されている溶液のいずれかの溶液が、さらにビタミンB、ビオチン、ビタミンC、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸類、ビタミンB、ニコチン酸類およびビタミンHの1以上を含有することを特徴とする上記(11)記載の栄養輸液製剤、
(13) 第1室に収容されている溶液、第2室に収容されている溶液、第3室に収容されている溶液および第4室に収容されている溶液を混合した時の成分組成がブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0.4〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0.2〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、ナトリウム20〜80mEq/L、カリウム10〜40mEq/L、マグネシウム2〜20mEq/L、カルシウム2〜20mEq/L、リン2〜20mmol/L、塩素20〜80mEq/L、鉄5〜100μmol/L、銅1〜20μmol/L、マンガン0〜5μmol/L、亜鉛5〜150μmol/L、ヨウ素0.2〜5μmol/L、ビタミンB0.8〜30mg/L、ビタミンB1.0〜6.0mg/L、ビタミンB1.0〜8.0mg/L、ビタミンB121.0〜20μg/L、ニコチン酸アミド10〜80mg/L、パントテン酸類3.0〜30mg/L、葉酸100〜800μg/L、ビタミンC25〜200mg/L、ビタミンA800〜6500IU/L、ビタミンD1.0〜10μg/L、ビタミンE2.5〜20mg/L、ビタミンK0.5〜4mg/L、ビオチン15〜120μg/Lであることを特徴とする上記(11)または(12)に記載の栄養輸液製剤、
(14) 空気透過性の輸液容器内で、実質的に酸素の非存在下にヨウ素イオンと銅イオンとを分離して収容することを特徴とするヨウ素イオンまたは銅イオンの安定化方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の輸液容器は、微量金属元素と沃素イオンを別々の容器に充填することにより、外袋内に酸素が存在しない条件下において沈殿を生じない輸液製剤を提供することができる。また、本発明の輸液容器を用いることにより、輸液製剤の投与時における混合操作の煩雑さ、混合時の菌汚染の問題などを解消し、各輸液製剤を簡便でかつ無菌的に混合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る栄養輸液製剤を収容する輸液容器の一態様を図を用いて具体的に説明する。図1は、輸液容器の平面図であり、外袋2内に4室(I〜IV)を有する輸液容器を示しており、外袋2内には脱酸素剤10が封入されている。第1室Iにはアミノ酸含有溶液、第2室IIにはヨウ素イオンおよび糖含有溶液、第3室IIIには微量金属含有溶液、さらに第4室IVにはビタミン含有溶液が充填されている。第1室Iと第2室IIには連通可能部5が形成されており、第1室Iまたは第2室IIを押圧することにより製剤が外気に触れることなく第1室Iと第2室IIが連通される。第3の室IIIおよび第4室IVは、第1室I内に吊着されており、外側から押圧することにより破袋され、第1室Iと連通する。第2室IIと連通する閉塞された薬液流出口9は、患者への内部薬液の注入のための輸液セットとの接続、さらにはシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられる。
【0013】
以下に、本発明に係る栄養輸液製剤を収容する輸液容器の一例について詳細に説明する。
本発明の栄養輸液製剤を収容する輸液容器の各室は気体および液体を通さない性質の外袋に収容されている。またアミノ酸の酸化分解を防ぐために輸液容器は、脱酸素剤と共にガスバリヤー性外袋に収容するのが一般的であるが、必要に応じて不活性ガスの充填を行ってもよい。さらに、光分解性ビタミンを収容する場合には、外袋に遮光性をもたせるのが好ましい。
上記外袋に適した材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルムもしくはシートを使用することができ、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなどガスバリヤー素材をのうち少なくとも1種を含むフィルムもしくはシートなどが挙げられ、適宜に選択し、使用することができる。また、上記外袋に遮光性をもたせる場合には、例えば上記フィルムまたはシートにアルミラミネートを施すことにより実施できる。
【0014】
上記外袋内に封入する脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、活性炭と水、結晶水を有する化合物の無水物、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;および水との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類;および水との混合物などを用いることができる。これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。
また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えばエージレス(三菱ガス化学社製)、モデュラン(日本化薬社製)などが挙げられる。
上記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋にいれて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
【0015】
また、上記外袋内に不活性ガスを充填することで酸素を取り除いてもよく、そのような不活性ガスとしては、例えばヘリウムガス、窒素ガスなどが挙げられる。
【0016】
本発明の栄養輸液製剤を収容する輸液容器は、複数の室を有する。各室の形成材料としては、貯蔵する薬剤の安定性上問題のない樹脂であればよく、比較的大容量の室を形成する部分は、柔軟な熱可塑性樹脂、例えば軟質ポリプロピレンやそのコポリマー、ポリエチレンおよび/またはそのコポリマー、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、またポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル類、軟質塩化ビニル樹脂などまたそれらの内適当な樹脂を混合した素材、またナイロンなど他の素材も含めて前記素材を多層に成型したシートなどが利用可能である。
【0017】
各室を隔てている隔壁は、使用時に連通可能部を接触する一方の輸液容器を外部より押圧することにより、薬剤が外気にふれることなく開封できるものとなっているのが好ましい。例えば輸液容器の複数室のうち1つの室を外部より押圧することにより他室との間の隔壁を部分的に剥離し、他室と連通することにより両室の薬剤が混合される。
【0018】
図1の輸液容器1では、第1室Iもしくは第2室IIは、第3室IIIもしくは第4室IVと比べて大容量となっている。このような大容量の室は、例えば高カロリー輸液を収容することができ、第1室Iもしくは第2室IIには、高濃度のアミノ酸含有溶液もしくは糖含有溶液などが充填される。
本発明においては、アミノ酸含有溶液と糖含有溶液は、それぞれ別々の室に充填されていることが好ましく、例えば第1室Iにアミノ酸含有溶液が充填された場合には、糖含有溶液は第2室IIに充填されているのが好ましい。
【0019】
第1室Iもしくは第2室IIに充填されるアミノ酸含有溶液中に含有されるアミノ酸としては、例えば必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。具体的には例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、L−グリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩等の無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩等の有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でも良い。
【0020】
アミノ酸含有溶液のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約2.5〜10、好ましくは約5〜8に調製するのが好ましい。
【0021】
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されていることが好ましい。
L−ロイシン約0.4〜20.0g/L、好ましくは約0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−バリン約0.1〜16.0g/L、好ましくは約0.3〜8.0g/L、L−リジン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−スレオニンを約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン約0.04〜3.0g/L、好ましくは約0.08〜1.5g/L、L−メチオニン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン約0.2〜12.0g/L、好ましくは約0.4〜6.0g/L、L−システイン約0.01〜2.0g/L、好ましくは約0.03〜1.0g/L、L−チロシン約0.01〜2g/L、好ましくは約0.02〜1.0g/L、L−アルギニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−アラニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−プロリン約0.1〜10.0g/L、好ましくは約0.2〜5.0g/L、L−セリン約0.1〜6.0g/L、好ましくは約0.2〜3.0g/L、グリシン約0.1〜12.0g/L、好ましくは約0.3〜6.0g/、L−アスパラギン酸約0.01〜4.0g/L、好ましくは約0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸約0〜6.0g/L、好ましくは約0〜3.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0022】
第1室Iもしくは第2室IIに充填される糖含有溶液中に含有される糖としては、従来から各種輸液に慣用されるものでよく、例えばブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示される。その中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースなどの還元糖が好ましく、特に血糖管理などの点で、ブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0023】
糖含有溶液は、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約2〜6、好ましくは約2.5〜5に調製するのが好ましい。
【0024】
全ての溶液を混合した溶液中にこれらの糖は、約20〜800g/L、好ましくは約50〜400g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0025】
上記アミノ酸含有溶液および/または糖含有溶液は、さらにヨウ素イオンを含有する。ヨウ素イオン供給源としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられ、好ましくはヨウ化カリウムが用いられる。
【0026】
図1の輸液容器1では、第1室Iもしくは第2室IIと区画された第3室IIIに微量金属含有溶液が充填されるのが好ましい。第3室IIIは、第1室Iもしくは第2室II内に収容して用いることができる。収容方法としては、例えば第1室Iもしくは第2室II内の液中に第3室IIIを浮遊させてもよいが、第3室IIIの周縁シール部の端を、収容する側(第1室Iもしくは第2室II)の室の周縁に挟み込んでシールすることにより、吊着するのが好ましい。この場合、シールをしやすくするために、微量金属含有溶液が収容されている室の素材を、収容する側の室の最内層の素材と同一にするのが一般的である。
なお、上記の場合の微量金属含有溶液を収容している室は、用時に室の外側から押圧して開封また、破袋できるように、易開封性シールを施すかまたは肉厚を100μm以下とするのが好ましい。
【0027】
微量金属としては、例えば銅、鉄、マンガン、亜鉛などが挙げられる。鉄はコロイドとして、また銅、マンガン、亜鉛は水に溶解させて充填させるのが好ましい。但し、マンガン、亜鉛は、アミノ酸含有溶液または糖含有溶液と混合して用いることもできる。
微量金属含有溶液において、銅の供給源としては、例えば硫酸銅などが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約0.5〜40μmol/L、好ましくは約1〜20μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
鉄の供給源としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄などが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約2〜200μmol/L、好ましくは約5〜100μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
マンガンの供給源としては、例えば塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約0〜10μmol/L、好ましくは約0〜5μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
亜鉛の供給源としては、例えば塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約2〜300μmol/L、好ましくは約5〜150μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0028】
微量金属含有溶液は、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いてpH約3.5〜7.5、好ましくは約4〜6.5に調製するのが好ましい。
【0029】
上記した糖含有溶液、アミノ酸含有溶液もしくは微量金属含有溶液は、電解質を含んでいてもよい。そのような電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、リンなど無機成分の水溶性塩、例えば塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリセロリン酸塩などが挙げられる。
ナトリウムイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カリウムイオン供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カルシウムなどがあげられ、全ての溶液を混合した溶液中に約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0030】
マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
リン供給源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸カリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
クロルイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0031】
上記電解質のうちカルシウムイオンおよびリンに関しては、アミノ酸含有溶液と同一の室に充填する場合、どちらか一方のみを混合させるのが好ましい。また、糖含有溶液と同一の室に充填する場合には、カルシウムイオン供給源およびリン供給源は共に充填させてもよい。
【0032】
上記アミノ酸含有溶液、糖含有溶液および微量金属含有溶液を混合したときの溶液のpHは、約2〜10、好ましくは約4〜7となるようにするのが好ましい。
【0033】
本発明は、所望によりさらに第4室IVに脂溶性ビタミン溶液を収容してもよい。そのような脂溶性ビタミンとしては、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンEが挙げられ、必要に応じてビタミンKを配合することもできる。
ビタミンAとしては、例えばパルミチン酸エステル、酢酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンDとしては例えばビタミンD、ビタミンD、ビタミンD(コレカルシフェロール)およびそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられる。ビタミンE(トコフェロール)としては、例えば酢酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンK(フィトナジオン)としては、例えばフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオンなどの誘導体が挙げられる。
【0034】
これらの脂溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンAは約400〜13000IU/L、好ましくは約800〜6500IU/L、ビタミンDは約0.5〜20μg/L、好ましくは約1.0〜10μg/L、ビタミンEは約1.0〜40mg/L、好ましくは約2.5〜20mg/L、ビタミンKは約0.2〜8mg/L、好ましくは約0.5〜4mg/L配合するのが好ましい。
【0035】
さらに、水溶性ビタミンを第1室、第2室、第3室もしくは第4室と同一の室に収容してもよい。そのような水溶性ビタミンとしては、例えばビタミンB、ビタミンB、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミン12、パントテン酸類、ビタミンB、ニコチン酸類およびビタミンHなどが挙げられる。
かかるビタミンは誘導体であってもよく、具体的にはビタミンB1としては例えば塩酸チアミン、プロスルチアミン、オクトチアミンなどが挙げられる。ビタミンBとしては、例えばリン酸エステル、そのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなどが挙げられる。ビタミンCとしては例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。パントテン酸類としては、遊離体に加え、カルシウム塩や還元体であるパンテノールの形態などが挙げられる。ビタミンBとしては、例えば塩酸ピリドキシンなどの塩の形態などが挙げられる。ニコチン酸類としては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどが挙げられる。ビタミンB12としては、例えばシアノコバラミンなどが挙げられる。
【0036】
上記ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に以下の配合割合で配合されるのが好ましい。ビタミンB約0.4〜60mg/L、好ましくは約0.8〜30mg/L、ビタミンB約0.5〜12mg/L、好ましくは約1.0〜6.0mg/L、ビタミンB約0.5〜16mg/L、好ましくは約1.0〜8.0mg/L、ビタミンB12約0.5〜40μg/L、好ましくは約1.0〜20μg/L、ニコチン酸アミド約5.0〜160mg/L、好ましくは約10〜80mg/L、パントテン酸類約1.5〜60mg/L、好ましくは約3.0〜30mg/L、葉酸約50〜160μg/L、好ましくは約100〜800μg/L、ビタミンC約12.5〜400mg/L、好ましくは約25〜200mg/L、ビオチン約7.5〜240μg/L、好ましくは約15〜120μg/L配合するのが好ましい。
【0037】
本発明の栄養輸液製剤を患者に投与するに際して、外袋を破り、第1室、第2室および第3室、または第1室、第2室、第3室および第4室を連通させることにより、各室の薬液を混合する。
【実施例】
【0038】
〔実施例1〕
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質溶液を溶解し、酢酸でpHを4.4とした後、ろ過して、表1に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸および電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを6.5とした後、ろ過し、表2および表3に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
これとは別に、コンドロイチン硫酸ナトリウムの注射用蒸留水溶液に、塩化第二鉄の注射用蒸留水溶液と水酸化ナトリウムの注射用蒸留水溶液を交互に添加しながら、所定量の塩化第二鉄を添加した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガンを添加した後、pHを水酸化ナトリウムまたは塩酸で5.3に調整し、注射用蒸留水で液量を調整し、表4に示した組成の溶液(C)を調製した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムは濃度2.5g/Lとなるように添加した。
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した小袋に、溶液(C)2mLを充填し、溶着した。この小袋を図1の第3室IIIとしてポリエチレン製容器第1室Iに予め挟着した。該第1室Iと第2室IIのそれぞれに、溶液(A)の600mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い高温蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。なお、本実施例においては、図1に示す第4室IVを欠いている。
【0039】
〔実施例2〕
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質水溶液を溶解し、酢酸でpHを4.4とし、糖電解質液を調製した。さらに、ビタミンB(塩酸チアミン)、ビタミンB(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、パンテノールおよびビオチンを注射用蒸留水に溶解し、これを上記の糖電解質液と混合後、ろ過して表1に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸、ニコチン酸アミド、葉酸および電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpHを6.0とした後、ろ過し、表2および表3に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には安定剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
これとは別に、ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)およびビタミンK(フィトナジオン)をポリソルベート80(溶液(D)中の濃度10g/L)およびポリソルベート20(溶液(D)中の濃度2g/L)に可溶化した後、注射用蒸留水に溶解し、更にビタミンB(リン酸リボフラビンナトリウム)およびビタミンC(アスコルビン酸)を加え、水酸化ナトリウムでpH6とした後、ろ過して表5に示した組成の溶液(D)を調製した。
別に、実施例1と同様にして、表4に示した組成の溶液(C)を調製した。
厚さ50μmのポリエチレンフィルムより成形した2つの小袋に、それぞれ溶液(C)4mLおよび溶液(D)4mLを充填し、溶着した。これらの小袋を図1に示される第3室IIIおよび第4室IVのように、ポリエチレン製容器第1室Iに挟着した。該第1室Iおよび第2室IIに、溶液(A)の600mLおよび溶液(B)の300mLをそれぞれ別個に窒素置換下で充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行い、輸液を得た。これを、脱酸素剤(三菱瓦斯化学社製、商品名エージレス)と共に、遮光性ナイロン多層袋で包装した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
〔試験例1〕安定性試験
銅イオンとヨウ素イオンを同一の室に収容した輸液製剤と、別々の室に収容した輸液製剤とを作製し、60℃で2〜4週間保管し、微量金属の安定性の変化を比較した。
【0046】
(1)銅イオンとヨウ素イオンを同一の室にいれた場合
ヨウ化カリウムを溶液(C)に添加する以外は、実施例1と同様にしてアミノ酸含有溶液、ブドウ糖含有溶液および銅イオン含有微量金属溶液を調整し、輸液製剤を作製した。該輸液製剤を60℃で2週間保管し、このときの微量金属の安定性の変化を表6に示した。
【0047】
【表6】

【0048】
(2)銅イオンとヨウ素イオンを別々の室にいれた場合
ヨウ化カリウムを溶液(B)に添加する以外は、実施例1と同様にしてアミノ酸含有溶液、ブドウ糖含有溶液および銅イオン含有微量金属溶液を調整し、輸液製剤を作製した。該輸液製剤を60℃で2〜4週間保管し、このときの微量金属の安定性の変化を表7に示した。
【0049】
【表7】

【0050】
(3)銅イオンとヨウ素イオンを別々の室にいれた場合
実施例1と同様にしてアミノ酸含有溶液、ブドウ糖含有溶液および銅イオン含有微量金属溶液を調整し、輸液製剤を作製した。該輸液製剤を60℃で2〜4週間保管し、このときの微量金属の安定性の変化を表8に示した。
【0051】
【表8】

【0052】
表6〜8より、銅イオンとヨウ素イオンを同一の室に収容した場合には、2週間後には結晶が認められており、輸液製剤中におけるイオンの含量はそれぞれ減少していた。また、銅イオンとヨウ素イオンを別々の室に収容した場合は、同一の室に収容した場合と比べて、イオンの含量の減少は少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の輸液容器は、微量金属元素とヨウ素イオンを別々の容器に充填することにより、外袋内に酸素が存在しない条件下において沈殿を生じない輸液製剤を提供することができる。また、本発明の輸液容器を用いることにより、輸液製剤の投与時における混合操作の煩雑さ、混合時の菌汚染の問題などを解消し、各輸液製剤を簡便でかつ無菌的に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る輸液容器の実施例の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 輸液容器
2 外袋
5 連通可能部
9 薬液流出口
10 脱酸素剤
I 輸液容器の第1室
II 輸液容器の第2室
III 輸液容器の第3室
IV 輸液容器の第4室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気透過性である輸液容器が、実質的に酸素の非存在下に、ガスバリヤー性の外袋に封入されており、輸液容器が連通可能な隔壁手段で区画された複室からなり、輸液容器の第1室にアミノ酸含有溶液が、第2室に糖含有溶液がそれぞれ収容され、かつアミノ酸含有溶液および糖含有溶液のいずれか一方が銅を含有しており、他方がヨウ素イオンを含有していることを特徴とする銅とヨウ素イオンを含有する栄養輸液製剤。
【請求項2】
酸素が存在しない条件が、脱酸素剤を外袋に封入することにより達成されている、または/および不活性ガスを外袋に導入することにより達成されていることを特徴とする請求項1に記載の栄養輸液製剤。
【請求項3】
糖がブドウ糖であることを特徴とする請求項1または2に記載の栄養輸液製剤。
【請求項4】
第1室に収容されている溶液のpHが5〜8、および第2室に収容されている溶液のpHが2.5〜5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の栄養輸液製剤。
【請求項5】
第1室または第2室に収容されている溶液が、電解質としてカルシウムイオンまたはリンの少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする請求項4記載の栄養輸液製剤。
【請求項6】
第1室に収容されている溶液および第2室に収容されている溶液を混合した溶液のpHが4〜7であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の栄養輸液製剤。
【請求項7】
第1室に収容されている溶液および第2室に収容されている溶液を混合した時の糖、アミノ酸、銅およびヨウ素の配合量が、ブドウ糖50〜400g/L、L−ロイシン0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン0.4〜7.0g/L、L−バリン0.3〜8.0g/L、L−リジン0.5〜7.0g/L、L−スレオニン0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン0.08〜1.5g/L、L−メチオニン0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン0.4〜6.0g/L、L−システイン0.03〜1.0g/L、L−チロシン0.02〜1.0g/L、L−アルギニン0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン0.3〜4.0g/L、L−アラニン0.4〜7.0g/L、L−プロリン0.2〜5.0g/L、L−セリン0.2〜3.0g/L、グリシン0.3〜6.0g/L、L−アスパラギン酸0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸0〜3.0g/L、銅1〜20μmol/L、ヨウ素0.2〜5μmol/Lであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の栄養輸液製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−195737(P2008−195737A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110449(P2008−110449)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【分割の表示】特願2001−356594(P2001−356594)の分割
【原出願日】平成13年11月21日(2001.11.21)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】