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心・血管系疾患の治療薬
説明

心・血管系疾患の治療薬

【課題】 本発明は、心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明により、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物性製剤、白金化合物等の骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、閉塞性動脈硬化等の心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心・血管系疾患の治療薬および心・血管系組織再生薬に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで報告されている心・血管系疾患の再生療法としては、主に骨髄内に存在する成体幹細胞を採取分離した後、心・血管組織内に直接的または経冠動脈的に注入する治療法が知られている。
【0003】
近年、虚血・再灌流により心筋梗塞を起したウサギに対して顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony-Stimulating Factor、以下「G-CSF」ともいう)を投与することにより(非特許文献1参照)、またはシクロホスファミドとG-CSFを投与することにより(非特許文献2参照)、骨髄由来の幹細胞が末梢血中に動員され、心筋の再生や血管新生が生じると共に治癒過程も促進され、心機能が改善することが報告されている。
【0004】
一方、マウスの骨髄中には、白血球や赤血球等の造血系組織に分化する造血幹細胞および骨格筋、脂肪細胞、骨などの中胚葉系組織に分化する間葉系幹細胞の他、心筋細胞や血管内皮細胞に分化しうる幹細胞が存在することが報告されており(特許文献1参照)、G-CSFまたはシクロホスファミドを投与したマウスにおいて、骨髄中の造血幹細胞が末梢血へ動員されることが報告されている(非特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/48151号パンフレット
【非特許文献1】「サーキュレーション(Circulation)」、2002年、第106巻、p.II−132
【非特許文献2】「サーキュレーション(Circulation)」、2003年、第108巻、p.IV−145
【非特許文献3】「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲイション(The Journal of Clinical Investigation)」、2003年、第111巻、p.187
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1)骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する心・血管系疾患の治療薬。
(2)心・血管系疾患が心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症および閉塞性動脈硬化からなる群から選ばれる1以上の疾患である、上記(1)記載の治療薬。
(3)骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する心・血管系組織再生薬。
(4)抗癌剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物性製剤および白金化合物からなる群から選ばれる1以上の抗癌剤である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の治療薬または再生薬。
(5)抗癌剤が、アルキル化剤または代謝拮抗剤の少なくとも1つを含む抗癌剤である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の治療薬または再生薬。
(6)アルキル化剤がシクロホスファミドである上記(4)または(5)記載の治療薬または再生薬。
(7)代謝拮抗剤が5−フルオロウラシルである上記(4)または(5)記載の医薬。
(8)骨髄抑制作用を有する抗癌剤の心・血管系疾患の治療薬の製造のための使用。
(9)骨髄抑制作用を有する抗癌剤の心・血管系組織再生薬の製造のための使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、心・血管系疾患としては、例えば心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、閉塞性動脈硬化等があげられる。
本発明において、抗癌剤が骨髄抑制作用を有するとは、骨髄に影響を及ぼし、血液(白血球、赤血球、血小板等)を作る働きを低下させる作用を抗癌剤が有していることをいう。
【0010】
本発明において、骨髄抑制作用を有する抗癌剤としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物性製剤、白金化合物等があげられる。
アルキル化剤としては、例えばイホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、塩酸ナイトロジェンマスタード-N-オキシド、塩酸ニムスチン、ブスルファン、メルファラン、ラニムスチン等があげられるが、本発明においてはシクロホスファミドを使用することが好ましい。
【0011】
代謝拮抗剤としては、例えばエノシタビン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、ユーエフティ、ドキシフルリジン、5−フルオロウラシル(以下「5−FU」という。)、ヒドロキシカルバミド、塩酸プロカルバジン、メトトレキサート、メルカプトプリン、塩酸ゲムシタビン等があげられるが、本発明においては5−FUを使用することが好ましい。
【0012】
抗腫瘍抗生物質としては、例えば塩酸イダルビシン、塩酸エピルビシン、ジノスタチン・スチマラマー、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ペプロマイシン、塩酸ブレオマイシン、マイトマイシンC等があげられる。
【0013】
植物性製剤としては、例えば塩酸イリノテカン、エトポシド、ドセタキセル水和物、硫酸ビンクリスチン、パクリタキセル、酒石酸ビノレルビン等があげられるが、本発明においてはパクリタキセルを使用することが好ましい。
白金化合物としては、例えばカルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等があげられるが、本発明においてはシスプラチンを使用することが好ましい。
【0014】
本発明の心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬を投与することにより、末梢血中等においてCD34陽性単核細胞等の心・血管系組織の前駆細胞となり得る細胞を増加させることができる。さらに、心筋梗塞後の心機能の改善、心筋や血管の再生、繊維化の抑制等の効果を得ることができる。
【0015】
本発明の心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬に使用する骨髄抑制作用を有する抗癌剤は、その有効成分を単独で投与することも可能であるが、通常は薬理学的に許容される一つまたはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として投与することが好ましい。
【0016】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、例えば経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、皮内、筋肉内もしくは静脈内等の非経口投与等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、例えば乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。
【0017】
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して、製剤化することができる。
【0018】
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加して、製剤化することができる。
【0019】
カプセル剤は、硬カプセルに充填する、またはカプセル基材で被包成型し、軟カプセル剤として製剤化することができる。カプセル基材としては、ゼラチンをあげることができ、軟カプセルでは可塑性を賦与するためにグリセリンまたはソルビトールを添加する。また、必要に応じて色素、遮光剤として酸化チタン、硫酸バリウム、沈降炭酸カルシウム、防腐剤としてパラオキシ安息香酸エステル類を添加することができる。
【0020】
非経口投与に適当な製剤としては、例えば注射剤、座剤、吸入剤等があげられる。
注射剤を製剤化する際には、水性溶剤、非水溶性溶剤、保存剤、安定剤、無痛化剤、等張化剤、緩衝剤および賦形剤等の添加剤を用いて製剤化することができる。
【0021】
水性溶剤としては、注射用水、生理食塩水およびリンゲル液等、非水溶性溶剤としては、落花生油、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油および綿実油等の植物油等、保存剤としては、フェノールおよびクレゾール等、安定剤としては、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸等、無痛化剤としては、ベンジルアルコールおよびクロロブタノール等、等張化剤としては食塩およびブドウ糖等、緩衝剤としては、クエン酸塩、酢酸塩およびリン酸塩等、賦形剤としてはソルビトール等をあげることができる。
【0022】
坐剤は、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を、常温で固体であるが直腸腔中で液化および/または溶解して薬剤を放出する適当な非刺激性賦形剤、例えば、ココアバター、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールと混合することにより製剤化できる。
【0023】
吸入剤は骨髄抑制作用を有する抗癌剤そのもの、または受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ該抗癌剤を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。担体として具体的には乳糖、グリセリン等があげられる。骨髄抑制作用を有する抗癌剤および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。
また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0024】
本発明において、骨髄抑制作用を有する抗癌剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を2種以上組み合わせて使用する場合には、それぞれの有効成分を含有するように製剤化したものであれば、単剤(合剤)としてでも複数の製剤の組み合わせとしてでも使用または投与することができる。複数の製剤の組み合わせとして使用する際には、同時にまたは時間をおいて別々に使用または投与することができる。また、複数の製剤の組み合わせとして使用する際には、各抗癌剤の配合比は特に限定されない。なお、これら製剤は、例えば乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、注射剤、座剤、吸入剤等の形態として用いることができる。
【0025】
複数の製剤の組み合わせとして投与する際には、例えば(a)骨髄抑制作用を有する第一の抗癌剤を含有する成分と、(b)骨髄抑制作用を有する第二の抗癌剤を含有する成分とを、それぞれ上記のように別途製剤化し、キットとして作製しておき、このキットを用いてそれぞれの成分を同時にまたは時間をおいて、同一対象に対して同一経路または異なった経路で投与することもできる。
【0026】
該キットとしては、例えば保存する際に外部の温度や光による内容物である成分の変性、容器からの化学成分の溶出等がみられない容器であれば材質、形状等は特に限定されない2つ以上の容器(例えばバイアル、バッグ等)と内容物からなり、内容物である上記第一成分と第二成分が別々の経路(例えばチューブ等)または同一の経路を介して投与可能な形態を有するものが用いられる。具体的には、錠剤、注射剤、吸入剤等のキットがあげられる。
【0027】
骨髄抑制作用を有する抗癌剤の投与量および投与回数は、使用する抗癌剤、投与方法、目的とする治療効果、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり0.001〜100mg/kg、好ましくは0.01〜50mg/kg、より好ましくは0.1〜20mg/kgを投与する。
【0028】
本発明の心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬の有効性は、例えば以下の方法により確認することができる。
すなわち、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を、心・血管系疾患を発症したマウス、ラット、ウサギ、サルなどの実験動物に投与し、組織障害またはそれに伴う症状の軽減、新生した心・血管系組織の細胞を同定することにより、心・血管系疾患に有効であることを確認する。実験動物は、虚血・再灌流等の方法により、心・血管系組織に障害を与えた動物が好ましい。
【0029】
心・血管系組織で新生した細胞は、例えば、以下の方法により検出することができる。
あらかじめ、赤色蛍光色素1,1’-dioctadecyl-1 to 3,3,3’,3’,-tetramethylindocarbocyanine perchlorate(以下「DiI」という。)で標識した骨髄由来単核細胞を骨髄に戻したウサギを準備し、該ウサギに虚血・再灌流等の方法により心・血管系組織に障害を与えた後に、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を投与する。新生した心・血管系組織の細胞は、心・血管系組織におけるDilを測定することにより同定することができる。
【0030】
また、あらかじめ致死量の放射線を照射した後にGreen Fluorescent Protein(GFP)を構成的に発現する同系統のトランスジェニック・マウス由来の骨髄を移植した骨髄キメラ・マウスを準備し、該骨髄キメラ・マウスに上述した方法により心・血管系組織に障害を与えた後に、骨髄抑制作用を有する抗癌剤を投与する。新生した心・血管系組織の細胞は、心・血管系組織におけるGFPの蛍光を測定することにより同定することができる。
以下、試験例により、本発明の心・血管系疾患の治療薬または心・血管系組織再生薬の有効性を示す。
【0031】
(試験例1) シクロホスファミドによる心筋梗塞の薬物再生療法
実験には体重約2kgの日本白色ウサギ(中部科学資材より購入)を用い、各実験群は10匹のウサギで構成した。ウサギには臨床的に明らかな感染は認められなかった。実験結果は平均値±標準偏差で表し、有意差検定はANOVA(Tukey-Kramer’s test)により行い、危険率5%未満を有意差ありと判断した。
ウサギの両側腸骨より採取した約10mlの骨髄液から、フィコール(JIMRO社製)を用いて約1.0 x 10 8の単核細胞を単離・精製し、dimethyl sulfoxide (DMSO、和光純薬社製) を用いてDiI(Molecular Probes社製)で標識をした後、腸骨腔へ戻した。5日後、左冠状動脈の太い分枝を結紮することにより30分間虚血状態とし、続いて再灌流することにより、心筋梗塞を誘導した。再灌流後1日目に、第1群のウサギには生理食塩水を、第2群のウサギには20mg/kgのシクロホスファミド(バクスター社製)を、静脈投与した。
【0032】
1.末梢血CD34陽性単核細胞の増加
フローサイトメトリーの結果、第2群における末梢血中のCD34陽性単核細胞数は、再潅流後7日目では第1群の65.5 %と一時的に低下したが、再潅流後14日目では第1群の4.1倍、再潅流後21日目では第1群の3.5倍と有意な高値を示した。
以上の結果から、心筋梗塞状態においてシクロホスファミドを投与することにより、末梢血中において、心・血管系組織の前駆細胞となり得るCD34陽性単核細胞が顕著に増加することが明らかとなった。
【0033】
2.心機能の改善
再灌流後28日目に心エコーにて左心室の駆出分画(left ventricular ejection fraction、以下「LVEF」ともいう)および拡張終期径(left ventricle end-diastolic dimension、以下「LVEDD」ともいう)を測定した。その結果、LVEFについては、第1群では56±5 %であったのに対し第2群では65±3 %であり、第2群で有意な改善がみられた。また、LVEDDについては、第1群では13±2 mmであったのに対し第2群では9±2 mmであり、第2群で有意な改善がみられた。
これらの結果から、心筋梗塞状態においてシクロホスファミドを投与することにより、心筋梗塞後の心機能が顕著に改善することが明らかとなった。
【0034】
3.心筋、血管の再生
再灌流後28日目にウサギを屠殺し、心臓を摘出した後、左室リスク領域における梗塞部と残存心筋組織部の境界部から凍結切片を作製し、心筋細胞に特異的に反応する抗体であるmouse anti-troponin I monoclonal antibody(Chemicon社製)を用いて免疫染色を行った。該免疫組織標本を共焦点レーザー顕微鏡で観察し、toroponinn I陽性心筋細胞に対するDil標識された心筋細胞の割合を求めた結果、第1群では0.08±0.06 %であったのに対し、第2群では0.9±0.6 %と第1群の約10倍の高値を示した。
この結果から、心筋梗塞状態においてシクロホスファミドを投与することにより、組織破壊後の心筋の再生が顕著に亢進することが明らかとなった。
【0035】
また、凍結切片を血管内皮細胞に特異的に反応する抗体であるmonoclonal mouse anti-human endothelial cell, CD31 antibody (Dako社製)を用いて免疫染色を行い、400倍で顕微鏡観察した。その結果、梗塞部に接する残存心筋組織における1視野あたりのCD31陽性血管内皮細胞数は、第1群では48±11個、第2群では81±14個であり、第2群で有意に高い値を示した。
この結果から、心筋梗塞状態においてシクロホスファミドを投与することにより、心筋梗塞後の血管新生が顕著に亢進することが明らかとなった。
【0036】
4.繊維化の抑制
再灌流後28日目に摘出した心臓組織をホルマリン固定・パラフィン包埋後、Masson trichrome 染色を行い、イメージアナライザーにて陳旧性梗塞領域である繊維化部位を定量的に測定した。その結果、左心室領域に占める梗塞領域の割合は第1群の15.3±2.1 %に対し、第2群では10.2±2.4 %と有意に低値を示した。
この結果から、心筋梗塞状態においてシクロホスファミドを投与することにより、心筋梗塞後の繊維化が顕著に抑制されることが明らかとなった。
【0037】
(試験例2) 5−FUによる心筋梗塞の薬物再生療法
実験には10〜12週齢のC57/BL6J雄マウス(中部科学資材より購入)を用い、第1群、第2群および第4群は5匹、第3群は14匹のマウスで構成した。マウスには臨床的に明らかな感染は認められなかった。実験結果は平均値±標準偏差で表し、有意差検定はANOVA(Tukey-Kramer’s test)により行い、危険率5%未満を有意差ありと判断した。
【0038】
1.末梢血CD34陽性単核細胞の増加
第1群のマウスには生理食塩水を、第2群のマウスには100mg/kgの5−FU(協和醗酵工業社製)を、腹腔内投与した。フローサイトメトリーの結果、第2群における末梢血中の単核細胞数に対するCD34陽性単核細胞数の割合は、5−FU投与後7日目では第1群の2.9倍、5−FU投与後14日目では第1群の2.0倍と有意な高値を示した。
この結果から、5−FUを投与することにより、末梢血中において、心・血管系組織の前駆細胞となり得るCD34陽性単核細胞が顕著に増加することが明らかとなった。
【0039】
2.心機能の改善
マウスの左冠状動脈の太い分枝を結紮することにより虚血状態とし、心筋梗塞を誘導した。心筋梗塞誘導後1日目に、第3群のマウスには生理食塩水を、第4群のマウスには100mg/kgの5−FUを、腹腔内投与した。
心筋梗塞誘導後28日目に心エコーにてLVEFおよびLVEDDを測定した。その結果、LVEFについては、第3群では33.5±4.5 %であったのに対し第4群では44.4±10.2 %であり、第4群で有意な改善がみられた。また、LVEDDについては、第3群では5.9±1.1 mmであったのに対し第4群では3.9±0.5 mmであり、第4群で有意な改善がみられた。
【0040】
また、収縮期内圧(left ventricular systolic pressure:LVSP)については、第3群では62.9±13.3 mmHgであったのに対し第4群では77.0±2.5 mmHgであり、拡張期内圧(left ventricular end-diastolic pressure:LVEDP)については、第3群では13.3±3.9 mmHgであったのに対し第4群では5.3±3.8 mmHgであり、いずれも第4群で有意な改善がみられた。
【0041】
さらに、最大内圧変化率(max dP/dt)については、第3群では3557±982 mmHg/sであったのに対し第4群では5625±576 mmHg/sであり、最小内圧変化率(min dP/dt)については、第3群では-2925±869 mmHg/sであったのに対し第4群では-4957±734 mmHg/sであり、いずれも第4群で有意な改善がみられた。
以上の結果から、心筋梗塞状態において5−FUを投与することにより、心筋梗塞後の心機能が顕著に改善することが明らかとなった。
【0042】
3.繊維化の抑制
心筋梗塞誘導後28日目に摘出した心臓組織をホルマリン固定・パラフィン包埋後、Masson trichrome 染色を行い、イメージアナライザーにて陳旧性梗塞領域である繊維化部位を定量的に測定した。その結果、左心室領域に占める梗塞領域の割合は第3群の30.5±9.6 %に対し、第4群では19.1±11.0 %と有意に低値を示した。
この結果から、心筋梗塞状態において5−FUを投与することにより、心筋梗塞後の繊維化が顕著に抑制されることが明らかとなった。
以下に本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0043】
注射剤(シクロホスファミド):
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。シクロホスファミド20gを精製大豆油100gに溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mlとして練合・乳化する。得られた分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに5mlずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分250mgを含有する)を得る。
処方 シクロホスファミド 100 mg
精製大豆油 500 mg
精製卵黄レシチン 60 mg
注射用グリセリン 125 mg
注射用蒸留水 4.3 ml
【実施例2】
【0044】
注射剤(5−FU):
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。5−FU50gを精製大豆油100gに溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mlとして練合・乳化する。得られた分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに5mlずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分250mgを含有する)を得る。
処方 5−FU 250 mg
精製大豆油 500 mg
精製卵黄レシチン 60 mg
注射用グリセリン 125 mg
注射用蒸留水 4.3 ml

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する心・血管系疾患の治療薬。
【請求項2】
心・血管系疾患が心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症および閉塞性動脈硬化からなる群から選ばれる1以上の疾患である、請求項1記載の治療薬。
【請求項3】
骨髄抑制作用を有する抗癌剤を有効成分として含有する心・血管系組織再生薬。
【請求項4】
抗癌剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、植物性製剤および白金化合物からなる群から選ばれる1以上の抗癌剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療薬または再生薬。
【請求項5】
抗癌剤が、アルキル化剤または代謝拮抗剤の少なくとも1つを含む抗癌剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療薬または再生薬。
【請求項6】
アルキル化剤がシクロホスファミドである請求項4または5記載の治療薬または再生薬。
【請求項7】
代謝拮抗剤が5−フルオロウラシルである請求項4または5記載の治療薬または再生薬。
【請求項8】
骨髄抑制作用を有する抗癌剤の心・血管系疾患の治療薬の製造のための使用。
【請求項9】
骨髄抑制作用を有する抗癌剤の心・血管系組織再生薬の製造のための使用。

【公開番号】特開2006−62997(P2006−62997A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245111(P2004−245111)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(504323227)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】