説明

心不全を防止及び治療するための組成物及び方法

本明細書において、化合物、抽出物、及びダイコンソウ植物のみ又はセンテラ・アジアティカとの組み合わせの活性画分、並びに心不全を防止又は治療する方法を開示する。本明細書で提供される本化合物は、開示された方法において有用な薬学的組成物及び薬物へ配合されることが可能である。薬学的製剤及び薬物を調製するための化合物及び抽出物の使用もまた提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は2009年6月12日に出願された米国特許仮出願第61/186,709号及び2009年6月17日に出願された米国特許仮出願第61/187,905号の優先権を主張するものであり、その内容全体が、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の記載は、読み手の理解を助けるために提供するものである。提供された情報又は引用された参照のいずれも、本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
心不全(HF)は、多発性の病態生理学的変化及び適応の結果であり、左室(LV)肥大、機能不全及び拡張、全身血管抵抗の上昇、並びに神経内分泌系の活性化へと至る。HFの効果的な治療は、高い罹患率及び死亡率、並びにHFの治療に対する現在利用できる治療アプローチの厳しい制限のため、ますます大きな注目を集めている。HFは、生命にかかわる疾患で、欧米諸国における主な死亡率及び罹患率の主な原因の1つであり、香港及び中国といったアジアの先進地域においてもそうなりつつある。米国だけでも、約5百万人のHF患者がおり、毎年およそ550,000の新たに診断された症例がある。ここ数十年間でのHFの薬物療法の著しい向上にも関わらず、HFは依然として65歳以上の人々の入院の主な原因であり、10%の年間死亡率及び5年後は50%の年間死亡率である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HFは、適切な心拍出量を維持するには不十分な肥大への刺激に関連する細胞内異常を伴う血行動態パラメーター(前負荷及び心拍出量)の変化を特徴とする。傷害組織の同定、定量化及び特性化、異なる治療法の評価、並びにHFの発症機序を理解することに重点を置いたHFに関連する大掛かりな研究にも関わらず、HFの有効な治療法は現在まだ無い。しかしながら、基礎疾患を治療することによって、HFの悪化するペースを落とすことは可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、心不全(HF)を治療するための、トリテルペノイド及びポリフェノールを含む化合物の組成物に関する。一観点において、本発明は、心不全の治療又は防止を必要とする哺乳類対象において、心不全を治療又は防止する方法を提供し、該方法は、その哺乳類対象に、トリテルペノイドポリフェノール組成物(TP)の有効量を投与することを含み、このトリテルペノイドポリフェノール組成物は、
(i)アジアティック酸(Asiatic acid)、ニガ‐イチゴシドF1(Niga−ichigoside F1)、カジ‐イチゴシドF1(Kaji−ichigoside F1)、オイスカフ酸(Euscaphic acid)、アジアチコシド-(Asiaticoside)、トルメント酸(Tormentic acid)、及びマデカス酸(Madecassic acid)からなる群から選択される1つ以上のトリテルペノイドと、
(ii)ゲミンA(Gemin A)、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン(Potentillin)、及びエラグ酸からなる群から選択される1つ以上のポリフェノールと、を含む。一態様において、このトリテルペノイドポリフェノール組成物は、アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸を含む。
【0006】
一態様において、心不全は、高血圧、虚血性心疾患、心毒性化合物への曝露、心筋炎、甲状腺疾患、ウイルス感染、歯肉炎、薬物乱用、アルコール乱用、心膜炎、アテローム性動脈硬化、血管疾患、肥大型心筋症、急性心筋梗塞、左室収縮機能障害、冠状動脈バイパス手術、飢餓、摂食障害、又は遺伝的欠陥に起因する。一態様において、対象はヒトである。
【0007】
一態様において、本組成物は、経口、局所、全身、静注、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与される。一態様において、組成物は、約0.01mg/kg/日〜約2000mg/kg/日の量で投与される。一態様において、有効量の組成物は、組成物及び薬学的に許容される担体を含む製剤の形態にある。
【0008】
一態様において、本方法は、利尿薬、ACE阻害剤、ジゴキシン及びβ遮断薬からなる群から選択された追加の治療剤を投与することをさらに含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、哺乳類対象における心不全を防止又は治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に、ダイコンソウの有機抽出物の有効量を投与することを含む。
【0010】
一態様において、抽出物は、1日につき、その抽出物は、対象の体重1キログラム当たり、約0.001mg〜約2000mgの範囲の量で投与される。一態様において、抽出物は経口投与される。一態様において、抽出物は皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注入により投与される。一態様において、抽出物はダイコンソウの低級アルキルアルコール抽出物である。一態様において、低級アルキルアルコールは1〜6個の炭素原子を有する。一態様において、その低級アルキルアルコールはエタノールである。
【0011】
別の観点において、本発明は、トリテルペノイドポリフェノール組成物の有効量を含む、哺乳類対象における心不全を治療する薬学的組成物を提供し、このトリテルペノイドポリフェノール組成物は、
(i)アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、及びマデカス酸からなる群から選択される1つ以上のトリテルペノイドと、
(ii)ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸からなる群から選択される1つ以上のポリフェノールを含む。一態様において、このトリテルペノイドポリフェノール組成物は、アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸と、を含む。
【0012】
別の観点において、本発明は、ダイコンソウの有機抽出物の有効量及び薬学的に許容される担体を含む、哺乳類対象における心不全を治療する薬学的組成物を提供する。一態様において、この有機抽出物はエタノール抽出物である。一態様において、この有機抽出物はメタノール抽出物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はECG測定を表すデータを示す。TはTPs治療群を表し、Cはベヒクルで治療した対照群を表す。基準値T及び基準値C、手術前及び治療前にとられたECGグラフ。CHD−T0後及びCHD−C0後、両群のために手術の終了した日にとられたECGグラフ。CHD−T30後及びCHD−C30後、両群において、CHD手術の30日後及び治療前に、ST部分の有意な低下を表す。CHD−T40後及びCHD−C40後、手術の40日後及び10日間のTPs治療又は10日間のベヒクル治療後、STセグメントは、両方のグループで低いまま。CHD−T60後及びCHD−C60後、手術の60日後及びTPs又はベヒクル30日間の治療後、低下STセグメントは、TPsの投与群で復元し、ビヒクル処理対照の低下STセグメントは大幅に残った。
【0014】
【図2】図2は心機能の向上をもたらすTPs治療を表すデータを示す。ShamはLADの結紮を行わない開胸手術を表す。B、LADの結紮前。2W、結紮の2週間後。ラットの両群(治療&対照)のLVEF値が大幅に減少した。4W、結紮の4週間後、LVEFはさらに減少し、心不全につながる。TPsでの治療を、この心エコー検査直後に開始した。6W、結紮の6週間後、LVEFは2週間のTPs治療後20%以上増加した。8W、結紮の8週間後及びTPs治療の4週間後。LVEFはさらに向上した。それに比べて、ベヒクルで治療した対照の心臓(対照)におけるLVEFは漸進的に低下した。
【0015】
【図3】図3はHFの組織学的分析を表す。i−c、ベヒクルで治療した対照の心臓、左室は蒼白で、大きく、たるんで現れた。i−t、TPsで治療した心臓の出現は赤くコンパクトに現れた。ii−c、薄く蒼白なLV前壁及び拡大した心室が見られた(点線で丸く囲む)。ii-t、TPsで治療した心臓におけるLVの梗塞部分は、赤く厚く現れた(点線で丸く囲む)。iii−c、ベヒクルで治療した心臓の梗塞部分における線維性置換(Fib)。iii−t、梗塞心臓組織に代わる新血管形成及び心筋再生(RM)が観察された。Ctr、ベヒクルで治療した心臓の全梗塞部分は、マッソン三重染で青色に染まる線維性瘢痕により置換された。Com、それに比べ、梗塞領域が有意に小さかったと新しく再生された心臓組織と梗塞心筋の交換は、TPsで治療した心臓では(RM)が判明した。
【0016】
【図4】図4はHF患者のTPsの治療効果の評価である。臨床試験は、既知の心筋梗塞、高血圧、慢性冠動脈性心疾患、及び再発性心不全患者へのTPsの2〜4週間経口投与した後、すべての患者が心不全の症状の著しい改善を報告したことを示した。心エコー検査は、グローバルな左室機能も大幅に改善することを示した。左室駆出率の25から94パーセント(EF)と左室の短縮率(FS)の31から100パーセントが復元された。LVの拡大による間伐LV壁(5.5ミリメートル)の平均厚さは平均8ミリメートルに復元。LVの血液潅流(SPECT)と心電図の低下STセグメントはまた、大幅に改善された。
【0017】
【図5】図5は心臓発作を繰り返した重度のHF患者の心エコー検査を表す。治療前、左室径(LVD)は極度に170.8×78.3mmまで拡張した。重度のHFのため、左室壁の厚さは薄層化し(6.7mm)、LVEFは極度に低かった(8%)。しかしながら、本薬剤による4週間の治療後、LVDは72×70mmへ有意に回復し、左室壁の厚さは8mmへ回復し、LVEFは260%増加し21%になった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な観点において、本発明は心不全を防止又は治療する化合物、抽出物、及び方法を提供する。本明細書に記載される本化合物は、開示された方法おいて有用な薬学的組成物及び薬物へ配合されることが可能である。薬学的製剤及び薬物を調製するための化合物及び抽出物の使用もまた提供される。
【0019】
本発明の十分な理解を提供するために、本発明の特定の観点、様式、態様、変化、及び特徴の様々なレベルの詳細が以下に記載されていることを理解されたい。文脈において特記されない限り、下記に記載されたように、以下の用語が全体にわたり使用される。
【0020】
本明細書で使用するとき、対象への薬剤、薬、又はペプチドの「投与」には、その意図する機能を行うための化合物を対象に取り込む、又は送達するあらゆる経路が含まれる。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静注、筋肉内、腹腔内、又は皮下)あるいは局所、を含むいずれかの安定した経路により実行することができる。投与には自己投与及び他者による投与が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「鬱血性心不全」(CHF)、「慢性心不全」、「急性心不全」、及び「心不全」(HF)は、交換可能に用いられ、心臓が適切な速度又は適切な量で血液を送り出すことができないほど異常に低い心拍出量を特徴とするいずれかの状態を意味する。心臓が身体の他の部位に適切に血液を送り出すことができないとき、又は1つ以上の心臓弁が狭窄を起こすか、又はそうでなければ機能不全になるとき、血液は肺に逆流し、肺が液体で鬱血状態を引き起こす。もしこの逆流が長時間起きたら、心不全が生じる。心不全の典型的な症状は、息切れ(呼吸困難)、疲労、衰弱、横になった時の呼吸困難、脚、足首、又は腹部のむくみ(浮腫)、が挙げられる。心不全の原因には、冠動脈疾患、全身性高血圧、心筋症又は心筋炎、先天性心疾患、心臓弁の異常又は心臓弁膜症、重度の肺疾患、糖尿病、重度の貧血甲状腺機能亢進症、不整脈又は律動障害、及び心筋梗塞、を含む様々な疾患が関係している。鬱血性心不全の初期の兆候は、心肥大(拡張型心筋症)、頻呼吸(呼吸促進、左心不全の場合起こる)及び肝腫大(肥大肝、右心不全の場合起こる)である。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語、組成物の「有効量」、又は「薬学的に有効量」又は「治療的に有効量」は、所望の治療及び/又は予防効果を得るのに十分な量、例えば、治療される疾患に関連する症状の防止又は軽減をもたらす量である。対象に投与される本発明の組成物の量は、疾患のタイプ及び重篤度、並びに個人の特徴、例えば健康状態、年齢、性別、体重、及び薬物耐性によるだろう。また、疾患のレベル、重篤度及びタイプにもよるだろう。当業者はこれらの要素及び他の要素に応じて適切な投薬量を決定することが可能であろう。本発明の組成物は、1つ以上の追加の治療化合物の組み合わせで投与されることも可能である。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、ヒトなどの哺乳動物を意味するが、動物でもよい。例えば、家畜(イヌ、ネコ等など)、農家の家畜(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウシ、等)及び実験動物(サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、等)。
【0024】
本明細書で使用するとき、「実質上純粋」は、組成物又は混合物が、それに自然に付随する化学成分から切り離されることを意味する。通常、その物質は、質量で少なくとも60%、自然に関連する他の自然発生有機分子が存在しない場合、大部分は実質上純粋である。特定の態様において、製剤の純度は少なくとも75質量%、さらに好ましくは少なくとも質量で、90%、95%、そして最も好ましくは少なくとも99%である。実質上純粋化合物を生成するための化合物の精製方法は、同業者において既知である。実質上化学的純粋合物は、しかしながら、立体異性体の混合物でもよい。そうした例において、さらなる精製が組成物の比活性度を増加させる可能性がある。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「治療する」又は「治療」又は「緩和」とは治療療法及び予防又は防止方法の両方を意味し、目的は標的病態又は疾患を防止又は鈍化(減少)することである。本明細書に記載されている方法により芳香族カチオンペプチドの治療を受けた後、対象が1つ以上の、例えば心臓肥大、頻呼吸及び肝腫大といった心不全の兆候及び症状が観測可能及び/又は無視できないほどの減少、又は欠如を表したら、対象は心不全の「治療」は成功である。記載された病状の治療又は防止の様々なモデルは、「実質的」を意味することを目的とし、「実質的」にはモデルには、全て治療又は防止だけでなくそれに満たないものが含まれ、いくつかの生物学的又は医学的関連結果が得られた。心不全を治療することは、本明細書で使用するとき、心不全の原因となる症状の1つ以上のいずれかを治療することを含み、心収縮性の減少、拡張期コンプライアンス異常、1回拍出量の減少、及びの心拍出量減少を含むがこれに限定されるものではない。
【0026】
本明細書で使用するとき、疾患又は症状を「防止」又は「防止する」とは、統計サンプルにおいて、本化合物が未治療の対照サンプルと比較して治療したサンプルにおける疾患又は症状の発生を減少させ、あるいは未治療の対照サンプルと比較して疾患又は症状の1つ以上の症状の発病を遅らせる又は重篤度を軽減させることを意味する。本明細書で使用するとき、心不全を防止することには、心不全の開始を防止すること、心不全の開始を遅らせること、心不全の進行又は増進を防止すること、心不全の進行又は増進を緩慢にすること、心不全の進行又は増進を遅らせること、及び心不全の進行又は増進を、進行性からあまり進行していない段階へと逆行すること、が含まれる。
【0027】
(本発明の組成物)
本発明は、心不全を、抽出物及び化合物あるいはダイコンソウ、Xian he cao(別名キンミズヒキ(バラ科)、及びタイムモンゴリカスロン(Thymus mongolicus Ronn)(シソ科)、タイム草又はモンゴルタイムハーブ)を含む様々な植物からのそうした化合物の誘導体で治療又は防止する方法を提供する。
【0028】
いくつかの態様において、本化合物は植物全体、抽出物、例えばダイコンソウ;Xian he cao,Agrimonia pilosa Ledeb.(Rosaceae);及びThymus mongolicus Ronn(lamiaceae)の有機抽出物である。特定の態様において、本化合物はダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物又はその活性画分である。いくつかの態様において、本化合物はダイコンソウの抽出物の画分である。
【0029】
本発明は心不全を薬剤及び/又は抽出物、及び化合物、並びにダイコンソウを含む様々な植物からのそうした化合物の誘導体で治療又は防止する方法を提供する。いくつかの態様において、その薬剤は抽出物、例えば、ダイコンソウの有機抽出物である。特定の態様において、その薬剤はダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物又はその活性画分である。特定の態様において、その薬剤は、加水分解可能なタンニン、例えばゲミンA、B、C、D、E及びF又はその誘導体を含むタンニンである。他の態様において、その薬剤はテルペノイド、例えばウルソル酸、エピモリック酸、マスリニック酸、オイスカフ酸、トルメント酸、2−ヒドロキシウルソル酸、2,19−ジヒドロキシ−ウルソル酸、2α、3β、19α、23−テトラヒドロキシウルス−12−エン−28−オイック酸、2α、3β、19α、23−トリヒドロキシウルス−12−エン−23,28−ジオイック酸、及びそのグルコシド誘導体、例えばニガ‐イチゴシドF1、ロサムルチン及びSuavissimosideR1又はその混合物である。
【0030】
一態様において、トリテルペノイドポリフェノール組成物は、(i)アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、及びマデカス酸からなる群から選択される1つ以上のトリテルペノイド、及び(ii)ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸からなる群から選択される1つ以上のポリフェノールを含む。一態様において、そのトリテルペノイドポリフェノール組成物はアジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸を含む。
【0031】
化合物ニガイチゴシドF1は、様々な植物種において見出すことができる。最も一般的な植物:覆盆、コンブレタム属クアドランギュラーレ(quadrangulare)、キイチゴ属インペリア、ナワシロイチゴ、アポリアテイフォミス(Aphloia theiformis)、デスフォンタイニアスピノサ、コナラ属イレックス(イレックス属)L、キイチゴ属ピンフェンシス(ピンファエンシス(Pinfaensis)、キイチゴ属テンヨウケンコウシ、キイチゴL。全植物:アカエナ属ピナティフィダ、アデナンドラ属ニティダ、アンクサオフィキナリスL、アフロイア属セイフォーミス(theiformis)、カリカルパボディニエリ、クレマトクレスラ(Clematoclethra)スキャンデンス、コンブレタム属クアドランギュラーレ(quadrangulare)、サイフォセカモナント(Cyphotheca montan)、ディスフォンタイニア属スピノーサ、フォリウムイリシス(Folium ilicis)、ダイコンソウ、ゲウムリワレ、ゲウムレワレ、モチノキ属リツェアファオリア(litseaefolia)、モチノキ属オブロンガ、モチノキ属パルプリエ(purpureae)、フキ、マルギリカルパスセトスス(Margyricarpus setosus)、パラドリモニア属マクロフィラ、ポリレピスインカナ(バラ科)、プルネラブルガリス、プルナスセルラタスポンタニア、コナラ属アクティッシマカールーサーズ、コナラ属セルリス(cerris)、コナラ属デンタ、コナラ属グラウカ、コナラ属イレックス、クエルクスインブリカリア、クエルクスラウリファリア、コナラ属サベル(Suber)、コナラ属バルジ二アーナ、ナニワイバラ、ナニワイバラ、ノイバラ、ノイバラ、ロサトランスモルリソネンシス(Rosa transmorrisonensis)、ルビフラクトース(覆盆)、キイチゴ属アルセアエフォリウス(alceaefolius)、クロミキイチゴ、キイチゴ属アマビリス(amabilis)、キイチゴ属コリアヌス、キイチゴ属コリイフォリウス(coriifolius)、クマイチゴ、キイチゴ属インペリア、キイチゴ属インペリア(バラ科)、キイチゴ属、ナワシロイチゴ;、キイチゴ属ピンファエンシスピンファエンシス(Pinfaensis)、キイチゴ属サンクトゥス、キイチゴ属種、キイチゴ属スワウィッムス、キイチゴ属キサントカルパス、サルビア属トリキュピス(tricupis)、ワレモコウ属ハクサネンシス、ワレモコウ属マイナー;ワレモコウ;サルコポテリウム属スピノスム;ストラスブレゲリア属ロブスタ、シジギウムレビネイ(Syzygium levinei);モウズイカ属ウイデマ二アナム(wiedemannianum)、ボキシア属ディベルゲン(divergens)、及びボキシア属パシィフィカ。
【0032】
化合物ロサマルティン(Rosamultin)は様々な植物種において見出すことが出来る。最も一般的な植物:ノイバラ、ハマナス、コンブレタム属クアドランギュラーレ(quadrangulare)、ムサンガ属セクロピオイデス(cecropioides)、キジムシロ属アンセリン、オオバナアザミ、及びキイチゴ.及びキイチゴ属。全植物:アカエナ属マゲラ二カ、アカエナ属ピナティフィダ、サルナシ、アデナンドラ属ニティダ、キンミズヒキ、ネムノキ、アンチューサ属ストリゴーサ、アプフロイアテイフォミス(Aphloia theiformis)、キャンプロトロピスヒルテーラ(Campylotropis hirtella)(フランチシンドル)、コンブレタム属クアドランギュラ、ダクステン(Daxueteng)(カウリスサルゲンドキシ)(Caulis sagentodoxae)、ディコトマンテス属トリスタニアエカルパ、カキ、;デュネスネア属インディカ、ダイコンソウ、イレックス属リツエアフォリア(litseaefolia)、イクソラ属フィンライソニアナ、クリソバラヌ、クリソバラヌエフローラ、クリソバラヌパイリフォリア(pyrifolia)、マルギリカルパスセトスス(Margyricarpus setosus)、ムサンガ属セクロピオイデス(cecropioides)、フキ、ミツバグサ属マグナ、キジムシロ属アンセリナ、キジムシロ属アンセリン、キジムシロ属エレクタ、キジムシロ属エレクタ、キジムシロ、オオバナアザミ、ロサダブリカ、ナニワイバラ、ノイバラ、ノイバラサンブ、ハマナス;ロサステリリス(sterilis)、ロサタイワネンシス(taiwanensis);ロサトランスモリソネンシス(transmorrisonensis);ロサマルティン(Rosamultin)、ルビフラクタス(ボグバンガ)(Bogbunja)、キイチゴ、;キイチゴ属サンクトゥス、キイチゴ属種;サルビア属トリキュピス(tricupis)、ワレモコウ属アルピナ、ワレモコウ属マイナー、ワレモコウ、サルコポテリウム属スピノスム、サルゲントドクサ属クネアタ、タルミナリア属アルジェンティア、モウズイカ属ウイデマ二アナム(wiedemannianum)、及びビテックスアルティシマ。
【0033】
化合物2α、3β、19α23テトラヒドロキシurs−12−エン−28−オイック酸が様々な植物種において見出すことが出来る。最も一般的な植物:キイチゴ属コレアヌス;コンブレタム属クアドランギュラ、デスフォンタイニアスピノサ、ノウゼンカズラ;イラクサアルボレウス、クエルクスイレックス、ナニワイバラ、ルビフラクトース、キイチゴ、キイチゴ属ピンファエンシ(pinfaensi)、及びギシギシ。全植物:マタタビ属デリシオサ、マタタビ属インドチャイネンシス、アンチューサ属オフィシナリス、ノウゼンカズラ、センテラ・アジアティカ、センティペーダミニマ;クレマトクレスラ(Clematoclethra)スキャンデンス、コリウスアンボイニクス、コリウスフォルスコリ、コンブレタム属クアドランギュラ、ウコギバンコエンシス(bancoensis)、デスフォンタイニアスピノサ、アカバナ、ビワ、ガンベヤボウココエンシス(Gambeya boukokoensis)、ダイコンソウ;イガニガクサ属キャピタタ、イレックスパープリア、シソ科の植物、バナバ、ロべリア属ロンジセパラ、マフアー属パスクエリー、ミコニア属トライリイ(trailii)、イラクサアルボレウス、オコテア属スアべオレンズ、パラドリモニア属オオバ、ミツバグサ属マグナ、プランコネラダクリタン(duclitan)、ポリレピス属インカナ;ポウロウマ属グイアネンシス、クヌギ、コナラ属イレックス、コナラ属ラウリファリア、コナラ属バージニアーナ、Rコエネアウス(koehneanus)、Rメディウス、Rミクロフィラス、Rトリフィダス、レンゲツツジ、ナニワイバラ、ナニワイバラ、ナニワイバラ、ノイバラ、ロサトランスモリソネンシス(transmorrisonensis)、ルビフラクトース、キイチゴ属ブルゲリ、キイチゴ属コレアヌス、キイチゴ属エリプティカス(ellipticus)、キイチゴ属インペリア、キイチゴ、キイチゴ属ピンファエンシス(Pinfaensis)、キイチゴ属プンゲンス、キイチゴ属サンクトゥス、ギシギシ、ワレモコウ属マイナー、サルコポテリウム属スピノスム、ストロベリーvsホウコウワセ(Houkouwase)、サワフタギ;ハイノキ属パニキュラータ、ハイノキ属スピカータ、シジギウムレビネイ(Syzygium levinei)、ボキシア属ディベルゲン(divergens)、及びボキシア属パシィフィカ。
【0034】
化合物スアビッシモシド(Suavissimoside)は様々な植物種において見出すことが出来る。最も一般的な植物:キイチゴ属ナワシロイチゴ、オオバナアザミ、ワレモコウ、及びキイチゴ。全植物:カリン、ダイコンソウ、イレックスアクレオラータ(aculeolata)、イレックスゴダジャム(godajam)、イレックスロトゥンダ、トモエシオガマオポジティフォリア、アラカシ、コナラ属ロブール、オオバナアザミ、キイチゴ属アルセアエフォリウス、キイチゴ属コチンチネンシス、キイチゴ属コレアヌス、キイチゴ属クラタエジフォリウス(crataegifolius)、キイチゴ、キイチゴ属パルビフロルス、キイチゴ属ピレアトゥス(pileatus)、キイチゴ属サンクトゥス、キイチゴ属スワウィッムス、ワレモコウ、及びテイカカズラ。
【0035】
化合物トルメント(Tormentic)酸オイスカフ(Euscaphic)酸は様々な植物種において見出すことが出来る。最も一般的な植物:ビワ、ノイバラサンブ、ムサンガ属セクロピオイデス(cecropioides)、カリン、イラクサアルボレウス、シソ、ハマナス、アカンソクラミスブラクテアータ(Acanthochlamys bracteata)、キンミズヒキ、カリン、デュネスネア属インディカ、キジムシロ属ムルティフィダ(multifida)、オオバナアザミ;ナニワイバラ、ナニワイバラ、キイチゴ属シンギイ(chingii)、キイチゴ、ギシギシ及びワレモコウ。全植物:Cオリトリウス(olitoius)(植物のみ)、アカエナ属ピナティフィダ、アカンソクラミスブラクテアータ(Acanthochlamys bracteata)、キンミズヒキ、アンチューサ属ストリゴーサ;マンリョウ、アルネビアユークローマ(Arnebia euchroma)、アスパラガスフィリシナス(filicinus)、ボンプル(Bonpl)、ムラサキシキブ属ボディ二エリ(bodinieri)(II)、ノウゼンカズラ、キャンプロトロピスヒルテーラ(Campylotropis hirtella)(フランチシンドル)、セクロピアリラティロバ(Cecropia lyatiloba)、カリン、カリン(ソウリン(Thouin))、カリンコーネ(Koehne)、シリ(Cili)(ロサロクサバージ(Rosa roxburghii)、コリウスアンボイニクス、コリウスフォルスコリ、コリウススピカタス(spicatus)、ツナソ、コトネアスターシモンシ、コワイネア(Cowinea)メキシカーナ、クラテグスピナティフィダ、クニラリスリフォリア(lythrifolia)、デブレギアシア(Debregeasia)サリシフォリア、ディコンドラレペンス、デュランセライナルキュラータ(Duranthera inarculata)、デュネスネア属インディカ、デュネスネア属インディカ、エリショルティアボディニエリ、エリショルティアハーブ、アカバナ、エリオボトリアデフレクサ、ビワ、ビワカリイ、ビワ、ビワ、エリオペブランケティ(blanchetii)、ゴンズイ、フラクタスリガストリ、ダイコンソウ属リバーレ、ゴレイシ、ホスルンディアオポジタ(opposita)(シソ科)、イガニガクサ属キャピタタ、イソドン属ロクソシルサス(loxothyrsus)、イソドン属オレスビウス(oresbius)、ジャカランダウカナ(ノウゼンカズラ科)、バナバ、レペチニアコーレシーン(caulescens)、ミカエリソウ、クリソバラヌパイリフォリア(pyrifolia)、リコパスルシダス(Lycopus lucidus)、マルギリカルパスセトスス(Margyricarpus setosus)、マルシピアセスカマエドリス(marsypiathes chamaedrys)、マンサシトラータ、ムサンガ属セクロピオイデス(cecropioides)、イラクサアルボレウス、イラクサセラタス、ネペタパラティ(parattii)、バジル、パリウルスヘムスレイナス(Paliurus hemsleyanus)、パラドリモニア属オオバ、シソ、フロミス属アンブローサ、フィソカルパスインターミディアス、ミツバグサ属マグナ、ポリレピス属インカナ(バラ科)、キジムシロ属アンセリナ、キジムシロ属ディスカラー、キジムシロ属フルティコーサ、キジムシロ、キジムシロ属ムルティフィダ(multifida)、キジムシロ属ムルティフィダ(multifida)(バラ科)、キジムシロ属トルメンチラ、ポテリウム属アンシストロイデス、ポウロウマ属グイアネンシス、プルネラリン、プルネラブルガリス、プルナスジッペリアナ、ビジウム属アクミナツム、ビジウム属トペンジ、シカナシ、Rマルチブラクテアタ(multibracteata)、ラブドシアエフサ、ラブドシ(ブルーメ)、レルハニア、オオバナアザミ、ロサベラ、ロサダビジ(davidii)、ロサダブリカ、ナニワイバラ、ナニワイバラ、ノイバラ、ノイバラサンブ、ハマナス、ロサセリシア、ロサソウリエアナ、ロサステリリス(sterilis)、ロサタイワネンシス(taiwanensis)、ロサトランスモリソネンシス(transmorrisonensis)、キイチゴ属アルセアエフォリウス、キイチゴ属ブルゲリ、キイチゴ属シンギイ(chingii)、キイチゴ属コチンチネンシス、キイチゴ属エリプティカス(ellipticus)、キイチゴ属イノミネータス(innominatus)、キイチゴ属イレネウス、キイチゴ、キイチゴ属モルカナス(moluccanus)(バラ科)、キイチゴ属パーケリルート(parkeri root)、キイチゴ属ピンファエンシス(Pinfaensis)、キイチゴ属プンゲンス、キイチゴ属シエボルディ(sieboldii)、キイチゴ属種、キイチゴ属スインホエイ、キイチゴ属キサントカルパス、ギシギシ、Sグラブレセンス(glabrescens)、サビアパルビフローラ、サルビア属ブロッソネッティ(broussonetii)、アキノタムラソウ、サルビア属パラミリティオイザ(paramiltiorrhiza)、サルビア、サルビア属トリキュピス(tricupis)、サルビア属トリジュガ(trijuga)、ワレモコウ、ワレモコウ、シュナベリアテラドンタ(Schnaberia teradonta)、シジミバナ、シヌルスエクセルサス、テコマモリス、モッコクカルス、ティアレラポリフォラ、トダリアアシアティア、ターピナアルグータリーフ(Turpina arguta)、バーベナオフィシナリス、ビスミアグイネンシス、及びビテックスアルティシマ。
【0036】
ダイコンソウの有機抽出物の調製
ダイコンソウからの有機抽出物の調製方法が提供される。本方法は、(a)C1〜C4のアルコールからなる群から選択されるアルコールでダイコンソウの植物を抽出する、ステップを含む。このステップは、室温で、3〜6回典型的には5回繰り返されてもよい。ステップ(a)を行う前に植物材料が粉末状になってもよい。C1〜C4のアルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、及びテル−ブタノールが含まれる。通常アルコールは、抽出されるダイコンソウの量の1〜10倍の質量が加えられる。
【0037】
本方法は、(b)ステップ(a)から得られた抽出物を乾燥粉末へと乾燥させ、(c)続いてステップ(b)から得られた粉末をC6アルカン、EtOAc、及びC1〜4アルコールからなる群から選択されるアルコールで抽出する、ステップをさらに含んでもよい。C6アルカンは、6個の炭素原子を有する環状及び非環状アルカン、例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン、及びネオ−ヘキサンを含む。C1〜C4アルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、及びテル−ブタノール、が含まれる。使用される有機溶剤の量は典型的には、さらに抽出される粉末の量の質量の1〜10倍である。
【0038】
上記の方法はまた、抽出物を濾過してその中の不溶性粉末を除去することも含んでもよい。乾燥させるステップは、減圧下で、室温より高い温度、例えば50℃で完了できる。
【0039】
一態様において、本発明の抽出物、画分及び化合物は、水及び/又は以下の段階を含む粗製の植物性材料からの有機溶剤を使用した抽出によって得られる:
1.水及び/又は有機溶剤を植物材料へ添加し、全体を浸漬/浸出、超音波又はマイクロ波処理を行うことによる抽出。
2.石油エーテル、ヘキサン又はクロロホルム型の溶媒を使用した抽出段階の前又は後の脱脂
3.任意の、酢酸エチル又はエチルエーテル型の有機溶媒よる回収された抽出物の追加抽出。
4.任意の、得られた粗製抽出物の濃縮、及び、所望の場合にはその凍結乾燥。
【0040】
一観点によれば、達成され得る濃縮を考慮し、粗製抽出物に、クロマトグラフィーによる精製ステージを行ってもよい。一態様において、遠心分配クロマトグラフィー(CPC)が使用される。この手法は、具体的にA.P. FOUCAULT, Ed., Centrifugal Partition Chromatography, Chromatographic Science Series, Marcel Dekker Inc., 1995, 68、又はW.D. CONWAY, Ed., Countercurrent Chromatography apparatus theory and applications, VCH Publishers Inc., 1990に記載されている。CPCは、2つ以上の溶媒又は溶質により調製された2つの非混合液相間の分離に基づいている。2相の1つは、遠心力により固定さたままで保たれる。溶媒の割合及び近接して選択された流量は、静止期CPCカラム内の静止期及び実際の圧力の両方の安定性による。
【0041】
そのため当業者は、所望の精製された抽出物の性質により、最も適した溶媒又は複数の溶媒を選択するだろう。これらの異なる、すなわち粗製又は濃縮された抽出物もまた、本発明の範囲内に含まれる。追加の分離段階の実施は、1つ以上の化合物が富化されたこれらの抽出物の分離を可能にする。これらの分離は、粗製抽出物から濃縮された画分又は粗製抽出自体で、求められる分離に適した比率による適切な溶媒の混合物を使用して行われることが可能である。
【0042】
心不全の防止又は治療のための方法及び組成物
心不全(HF)は、兆候及び症状の合併症であり、それらの全ては心臓の、労作中に心拍出量が適切に増加する能力の低下に起因する。HFは、慢性高血圧、虚血、不整脈、梗塞、又は突発性心筋症に起因する可能性がある。鬱血性心不全の症状に関連する心疾患には、拡張型心筋症及び肥大型心筋症が挙げられる。この疾患の典型的な症状には、息切れ、浮腫及び強い疲労、が挙げられる。疾患が進行すると、心拍出量の不足が身体の他の臓器の障害の一因となり、心臓性ショック、不整脈、電気収縮解離及び死に至る可能性がある。
【0043】
一観点おいて、本技術は、トリテルペノイド及びポリフェノール(TPs)の組成物の投与による、心不全の治療又は防止に関連する。本発明者らは、低酸素ストレス(hs)、胎児期のストレス(ps)及び心臓に害のある毒素(ct)を含むストレスに対して、TPsが培養された胎児の心筋細胞を顕著に保護する作用を有することを見出した。無症状のHF動物モデルでのさらなる研究は、TPsが心筋梗塞に由来する動物モデルにおいて、HFの有効な治療を提供できることを明らかにした。さらに、動物モデルにおけるHFの効果的な治療は、過去に心筋梗塞、高血圧及び慢性冠動脈性心疾患を経験したヒトのHF患者における効果的な治療に成功裏に移転されてきた。
【0044】
一観点に従い、本発明は、HFの治療のためのトリテルペノイド及びポリフェノールからなる天然化合物の組成物に関する。適切なトリテルペノイドにはアジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸及び好ましいポリフェノールにはゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン及びエラグ酸が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0045】
一観点において、HFの防止又は治療のための方法は、それを必要とする哺乳動物に、薬剤、活性画分、及び/又は抽出物及び化合物、並びに、ダイコンソウ、R.インペリア、ボキシア属パシィフィカ、キイチゴ属コレアヌス、キイチゴ属アレゲニエンシス(allegheniensis)、キイチゴ属パルビフォリウス、キンミズヒキ、キジムシロ属クレイニアナ、イチロベゴロシ、及びブドウ種子、を含む様々な植物の該化合物の誘導体を投与することを含む。いくつかの態様において、抽出物はダイコンソウから得られた有機抽出物である。特定の態様において、薬剤はダイコンソウのメタノール/エタノール抽出物又はその活性画分である。典型的な薬剤は、加水分解性タンニン、例えばゲミンA、B、C、D、E、及びF又はその誘導体を含むトリテルペノイド及びポリフェノールを含む。他の態様において、薬剤は、トリテルペノイド、例えば、ウルソル酸、エピモリック酸、マスリニック酸、オイスカフ酸、トルメント酸、2−ヒドロキシウルソル酸、2,19−ジヒドロキシ−ウルソル酸、2α、3β、19α、23−テトラヒドロキシウルス−12−エン−28−オイック酸、2α、3β、19α、23−トリヒドロキシウルス−12−エン−23,28−ジオイック酸、及びそのグルコシド誘導体、例えばニガ‐イチゴシドF1、ロサムルチン及びSuavissimosideR1又はその混合物である。
【0046】
別の観点において、心不全の治療又は防止のための薬剤は、1つ以上の、賦形剤、担体又は増量剤を含む薬学的組成物の一部である。一態様において、薬学的組成物は単位投与形態にパッケージされる。この単位投与形態は、対象の心拍出量、息切れ、浮腫、及び疲労を改善するのに効果的である。
【0047】
いくつかの態様において、心不全のインビボモデルは、対象における薬剤の効果を評価するのに使用される。適切なインビボのモデルには、ラットにおける冠状動脈結紮、毒性心筋症モデルが挙げられ、それには動物の対象へのドキソルビシン又はアントラサイクリンの投与が含まれる。動物対象において心不全を調節する薬剤の効果は、研究され、適切な対照と比較される。
【0048】
薬学的組成物の調製及び投与量
本明細書に記載の治療され得る対象には、真核生物、例えば哺乳動物、例えばヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒトの霊長類、マウス、及びラットが挙げられる。治療され得る細胞には、真核細胞、例えば上記に記載の対象からの細胞、又は植物細胞、イースト細胞、及び原核細胞、例えば細菌細胞が挙げられる。例えば、修飾化合物は農家の家畜動物に、飼育状態に長く耐える力を向上させるために投与されてもよい。
【0049】
本発明の様々な態様において、本発明の薬剤(抽出物、画分及び化合物)の効果を決定し、かつ対象における罹患した疾患又は病状の治療にこの薬剤の投与が指示されるかどうかを決定するために適切なインビトロ又はインビボアッセイが行われる。これらのアッセイの例は、特定の疾患又は治療に関連して、上記に記載されている。
【0050】
典型的には、本発明の本組成物の有効量は、治療又は予防効果を得るために、1日体重1キログラム当たり約0.001mgから1日体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲である。適切には、投与量は、1日体重1キログラム当たり約0.01から1日体重1キログラム当たり約1000mgの範囲である。薬剤に投与には、毎日、2日に1度又は3日に1度、投与量の範囲は、受容者の体重の約0.01〜1000mg/kgでもよく、さらに通常は0.1〜500mg/kgである。典型的な治療法は、2日に1度又は1週間に1度又は1ヶ月に1度の投与を課す。本薬剤は通常複数回投与される。1回の投与量間の間隔は、毎日、毎週、毎月、又は毎年になり得る。あるいは、本薬剤が徐放性製剤として投与され得る場合は、より少ない投与が必要とされる。投与量及び頻度は、対象における薬剤の半減期により異なる。投与の投与量及び頻度は、その治療が予防又は治療かにより異なる予防の適用には、長期間、比較的不定期に比較的低投与量が投与される。治療の適用には、患者の進行が弱まる又は終わるまで、好ましくはその対象が疾患症状の部分的又は全体の改善まで、比較的頻繁に比較的高投与量が必要とされることもある。その後、患者は予防体制の投与が可能になる。
【0051】
毒性。適切には、本明細書に記載の薬剤の有効量(例えば1回の用量)は、対象に実質的な毒性を生じさせることなく、治療的な有効性を提供する。本明細書に記載される薬剤の毒性は、細胞培養又は実験動物における標準の薬物処置により明らかにされる、例えばLD50(母集団の50%が死に到る用量)又はLD100(母集団の100%が死に至る用量)。毒性と治療効果の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータはヒトでの使用に有毒でない投与量の範囲を考える際に使用できる。本明細書に記載の薬剤の投与量は、好ましくは毒性がごくわずか又は全く無い有効量を含む血中濃度内である。投与量は、用いられる投与形態及び使用される投与経路により、この範囲内で異なる。正確な製剤投与経路及び投与量は、医師が対象の症状を考慮し、個別に選択される。例えば、Fingl et al.,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1(1975)参照。
【0052】
本発明の方法によれば、薬剤は、投与に適切な薬学的組成物中に組み込まれ得る。いくつかの態様において、本薬学的組成物は、対象に投与するのに適切な形態の精製された、又は実質的に精製されたTPs、及び薬学的に許容された担体を含んでいてもよい。他の態様において、本薬学的組成物は、組成物を投与するのに使用される特定の方法とともに、投与される特定の組成物により部分的に決められる、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。それにより、組成物を投与するために適した様々な薬学的組成物の製剤がある(例えば、Remington’s、Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton PA 18thed., 1990参照)。本薬学的組成物は通常、無菌で、実質的に等張で、及び米国食品医薬品局の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)の基準に全面的に従い調製される。
【0053】
用語「薬学的に許容される」、「生理学的に耐性のある」及びその文法的変異は、これらの用語が組成物、担体、希釈剤、及び試薬を意味する場合、交換可能に用いられ、又は組成物の投与を禁止するほどの望ましくない生理学的効果の生成がなく、対象に投与可能な材料であることを表す。例えば、薬学的に許容される賦形剤は、通常安全、非毒性、及び望ましい薬学的組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、ヒトの製薬学的用途ともに、家畜への使用に許容できる賦形剤を含む。そうした賦形剤は、固形、液体、半固形、又はエアロゾル組成物の場合、ガス状になり得る。当業者であれば、特定の薬剤及び本発明の組成物の投与の適切なタイミング、順番、及び投与量を決定することは困難ではない。
【0054】
こうした担体又は希釈剤の適切な例は、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及び5%のヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されるわけではない。リポソーム及び固定油といった非水性ベヒクルも使用されてもよい。そうした媒体及び薬学的に活性な物質の化合物の使用は、当業者には既知である。あらゆる通常媒体又は化合物が薬剤と混合できない場合を除いて、本組成物におけるその化合物の使用が考えらえる。補足的な活性化合物もまた、本組成物中に組み込まれ得る。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、その意図した投与経路に適応するように調製される。本発明の組成物は、非経口、局所性、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内経路又は吸入剤として、投与され得る。この薬剤は、治療している様々な疾患に少なくとも部分的に効果のある薬剤と任意で組み合わせて投与され得る。
【0056】
非経口、内皮又は皮下の適用に使用される溶液又は懸濁液には以下の化学成分が含まれる:滅菌希釈剤、例えば注入用の水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコロール、グリセリン、ポリピレングリコロール、又は他の合成溶媒;抗菌化合物、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酢塩;及び調性調整剤、例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖。
【0057】
注入可能な使用に適した薬学的組成物は、無菌水性溶液(水溶性の)又は、無菌注入可能水溶液又は分散液の即時調製のための分散液及び無菌粉末を含む。静脈内投与のために適した安定した担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parisippany、NJ)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合、組成物は無菌でなくてはならず、容易に注射針通過ができる程度の液体であるべきである。本組成物は製造及び保存の状況下では安定し、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染活動に対し、守られなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、等)、並びにその適切な混合物、を含む溶媒又は分散媒であり得る。例えば、分散及び界面活性剤を使用する場合のレシチンのようなコーティングの使用、必要とされる粒径の維持により、適切な流動性は維持することが出来る。微生物の活動の防止は、様々な抗菌及び抗真菌化合物、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等により達成できる。多くの場合、本組成物中に等張化合物、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールといった多価アルコール類、塩化ナトリウム、を含むことが好ましい。注入可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる化合物、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、を組成物中に誘導することによりを引き起こすことができる。
【0058】
無菌の注入可能な溶液は、上記に列挙された成分の1つ又は組み合わせの適切な溶媒の、必要とされる量の薬剤を組み込むことにより調製でき、必要に応じ、続いて濾過殺菌される。通常分散液は、結合剤を、塩基性分散媒及び必要とされる上記に列挙された他の成分を含む無菌のベヒクルに組み込むことにより調製される。無菌の注入可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製方法は、有効成分プラス以前に無菌濾過されたその溶液からの望ましい追加成分のいずれかの粉末を得る、真空乾燥及びフリーズドライである。本発明の薬剤は、蓄積注射又は、有効成分の持続又はパルス放出を可能にする方法において調製され得る埋込み製剤の形態で投与することができる。
【0059】
経口組成物は通常、不活性の希釈剤又は食用の担体を含んでいる。これらは、ゼラチンカプセルに入れられるか、又は錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的で、結合剤は賦形剤と合体し、錠剤、トローチ又はカプセルの形態で使用される。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして使用される液体担体を使用し調製することができ、液体担体の化合物は経口適用され、すすぎ、吐く、又は飲み下される。薬学的に親和性の結合化合物、及び/又は補助材料は本組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ、等は以下の成分いずれか、又は同類の性質の化合物を含むことができる:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース;崩壊化合物、例えばアルギン酸、プリモゲル又はデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はステロテス;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味化合物、例えばスクロース又はサッカリン;あるいは風味化合物、例えばペパーミント、サルチル酸メチル又はオレンジ香味料。
【0060】
一態様において、この薬剤は、放出制御製剤といった身体からの急速な排出に抵抗する薬剤を保護する担体で調製され、この薬剤には埋込み及びマイクロカプセル化送達システムが含まれる。エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸といった生分解性、生体適合ポリマーが使用され得る。こうした製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。材料もAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から購入可能である。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対する単クローン抗体を伴う感染細胞を標的としているリポソーム)もまた、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、当業者に既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法により調製され得る。
【0061】
本技術は以下の実施例でさらに例示するが、いかなる意味でも限定的に解釈されるべきではない。
実施例1−ストレスに対する心筋細胞の保護及び心筋血液灌流に関する二重作用を伴う化合物の活性組成物の同定。
【0062】
バイオアッセイに誘導される分離戦略を使用して、天然成分をスクリーニングし、ストレス及び心筋の血液灌流の向上に対する心筋細胞の保護に対して二重作用を示す化合物の組成物を同定した。ラットの新生子の心筋細胞の初代培養、及び肉眼心筋梗塞に由来するHFラットのモデルを、バイオアッセイシステムとして使用した。
【0063】
植物材料。ダイコンソウ及びセンテラ・アジアティカの植物全体は2007年9月に貴州省から採取された。Avoucherの標本が中国のSchool of Chemical Biology and Pharmaceutical Science of Capital Univeristy of Medical Science、及び香港のLaboratory of Innovative Medicineに保管されている。
【0064】
抽出及び分離。ダイコンソウ(3.5kg)及びセンテラ・アジアティカ(1.5kg)の風乾された植物全体を、小片に切り、20リットルのメタノールに室温で1週間(3回)浸出した。真空での溶媒の蒸発後、残渣(510g)が回収された。この抽出物が、ストレスに対する心筋細胞の保護及び心筋の血液灌流の向上に対して二重作用を示すことがわかった。バイオアッセイに導かれた組成物分析は、活性化合物は主に2つの化合物(ポリフェノールとトリテルペノイド)に属し、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン、エラグ酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、及びマデカス酸から成ることを示した。
【0065】
トリペルテンを含むサブ組成物は、トリテルペンの画分(30μg/ml)が新生心筋細胞の培養物に適用された場合、hs、ps及びctストレスに対して心筋細胞を保護することがわかった。ポリフェノールの別のサブ組成物は、ポリフェノールの画分(100mg/kg/日で、2週間)がMI由来の心不全ラットモデルの胃内に投与された場合、心不全の血液灌流を有意に向上させることが確認された。質量分析に連結している液体クロマトグラフィー及び核磁気共鳴分光学は、両方のサブ組成物に含まれる主な生物活性化合物の識別の測定に使用された。心筋細胞に対して保護効果を示したサブ組成物は、アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸を含む主にトリテルペノイドを含んでいたことがわかった。ダイコンソウ及びセンテラ・アジアティカのメタノール抽出物からの化合物の2つの群の天然の割合は、HFを治療するのに活性であることがわかった。
【0066】
実施例2−培養新生心筋細胞を保護するTPsの組成物
in vivoで、アポトーシスによる心筋細胞の喪失は、心不全につながる。アポトーシス前のシグナルの過剰発現及び/又は細胞における抗アポトーシス(生存)シグナルのダウンレギュレーションは、HFの発症過程に密接に関与している。生存率を高めたり又は心筋細胞のアポトーシス死を防ぐことができる物質は、HFの治療における潜在的な治療有用性の対象となる可能性がある。そのため、TPsが生存率又は培養新生心筋細胞の細胞死の防止を強化できるかどうかの試験を行なった。主な筋細胞培養は、生まれて1日の新生ラットから得られた。新生ラットの心筋細胞の懸獨液25,000細胞/mlは、10%の子ウシ血清(BCS)及び1%のグルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン(GPS)を含むDMEMからつくられ、24−ウェル培養プレート上に置かれ、37℃で24時間インキュベートされた。次いで培養液は0.5mlのDMEM、5%のBCSと交換され、試験サンプル(50μgのTPsを含む5%DMSOの10μl)を各ウェルに加えた。5%DMSOと同じ量が対照に使用された。培養はそれぞれ37℃、5%のCO2で、24、48及び72時間維持された。環境チャンバーでのインキュベーションによる低酸素症の影響を受ける培養心筋細胞が試験された。チャンバーの酸素濃度は10mmHgで24時間維持された。低酸素症の期間の培養心筋細胞のTPs(50μg/ml)治療は、いくつかの細胞生存要素、例えばAkt1、BCL2及びEGFが有意に向上し、ベヒクルで処理した対照の筋細胞と比較して低酸素症に対する細胞死を防止したことが表された。アポトーシス細胞が、ベヒクルで処理した対照の心筋細胞において、持続性低酸素症により増加した。一方、TPs治療はカスパーゼ3、7の活性化を阻害し、アポトーシス細胞を減少させた(P<0.01)。
【0067】
実施例3−HF動物モデルにおいて治療効果を誘導するTPsの組成物
心筋虚血又は梗塞は、ヒトにおける虚血性HFの発症の主な危険因子である。虚血又は梗塞心臓は、形状、構造及び機能の変化を含む持続的な左室改造を受ける。持続的な改造は、初めは適応しても、最終的にはHFの進行を引き起こす。最も多いHFの原因は、心筋梗塞、高血圧、及び化学療法により誘導された心筋の損傷である。そのため、まず心筋梗塞から発症したHF動物モデルでTPsの治療効果を試験した。
【0068】
心筋梗塞(MI)は、HFの最も多い原因の1つであるため、MI由来の虚血性HFがTPsの治療効果を評価するために使用された。MIに続発するHFのラットモデルは、心機能障害の進行を研究するのに、及び治療法を試験するのに有用である。本実施例において、SDラットを利用したHFのモデルを開発した。冠動脈左前下行枝(LAD)の永続的な結紮が、LVにおける肉眼で見える梗塞をつくるのに使用された。このラットモデルを使用して、LV機能不全のコース及び結紮後1〜8週間の拡張をさらに研究した。心臓の虚血により、ECGのSTセグメントは有意に低下し、心室の虚血を暗示している(図1)。LV駆出率(EF)範囲は、対照ラットにおいて56〜68%の間、LADの結紮後、EFは1週で48±6%、2週で38±5%、4週で36±4%、8週で29±3%(P<0.001、結紮対虚偽)に減少した。虚偽手術のラットにおけるLV拡張末期容積(LVEDV)は0.36〜0.45mlの範囲であった。MI後、1、2、4、及び8週で、それぞれ0.63±0.03、0.69±0.05、0.76±0.06、及び0.81±0.07に増加した(P<0.001対虚偽)。LV拡張末期容積は、全時点で有意に上昇した。
【0069】
5%のDMSO(0.5ml)に溶解したTPs(300mg/kg、毎日)は、結紮後4週間、MIラットの胃内に投与され、ベヒクルで治療したMIラットに同量の5%のDMSOが4週間毎日投与された。虚偽手術したラット(n=8)には、LAD結紮なしの開胸術が行われた。3〜4週間のTPs治療は、虚血により低下したECGのST部分を回復し、心臓機能の働きを向上させたことがわかった(図1)。その有意に増加したLVEDV(0.763±0.06ml)及び減少した心拍出量(96±12ml/分/kg)は、それぞれ0.58±0.03ml及び172±16ml/分/kgに回復した。有意に減少したEFは、治療前の36.3±5%から、4週間のTPs治療後には42.3±3.9%に増加した(図2)。一方、ベヒクルで治療した対照においてはそれぞれ、LVEDVは0.83±0.08mlに増加し、EFは28.6±3.9%に減少した(図2)(P<0.001対TPsで治療)。
【0070】
結紮後8週目の最終心エコー検査測定後、動物は屠殺された。屠殺されたラットの心臓は摘出されPBSで洗浄された。ベヒクルで治療した対照の心臓、とくに左心室は、白く、大きく、たるんで現れた。一方、TPsで治療した心臓の外観は赤く、コンパクトであった(図3)。採取された全標本は組織学及び免疫組織化学の分析のどちらかに区分され、又はウエスタンブロット法及びDNAマイクロアレイ研究に使用された。TPsで治療した心臓の梗塞部分は赤く現れ、ベヒクルで治療した心臓の薄く白いLV左前壁と比較すると梗塞左前壁は厚い。組織学試験のために左心室は摘出され、頂から底部に3つの横軸にスライスし、パラフィンに埋め込んだ。LVにおける梗塞のサイズ及び血管密度はそれに応じて測定された。ベヒクルで治療した心臓の梗塞面積は有意に大きかったとLVの壁の厚さは著しく薄くした(図3)。梗塞心臓の組織をマッソン三重染色により青色に染色された線維性の瘢痕によって置き換えられた(図3)。比較では、TPs治療した梗塞面積は有意に小さく、心臓左心室前壁は厚く、赤くなった(図3)。組織学的分析はまた、TPs治療において新たに再生した心臓組織が梗塞心筋と置換したことを示した(図3)。LVの毛細血管の平均数を定量化するために、心臓の3横断スライスから合計18のセクションを解析した。これは、TPsで治療した心臓の左心室の平均的な毛細血管密度は、ベヒクル処理のそれより有意に高かったことがわかった(図3)(P<0.01)。
【0071】
実施例4−ヒト対象においてHFへの治療効果を有するTPsの組成物
本実施例は臨床設定でヒトにおけるダイコンソウ及びセンテラ・アジアティカから得られた抽出物を含むTPsの効果を試験した。HFを伴う心筋梗塞、高血圧及び慢性冠動脈心疾患といった心疾患とわかっている患者(十分な認識及び同意書のある男女6人の患者)への抽出物の4週間の経口投与(2グラム/日)後に、予備臨床試験を実施した。治療の2週間後、全患者が、HFの症状、例えば安静時のめまい、下肢の浮腫、疲労、吐き気、咳において有意な向上を報告した。心エコー検査により、広範囲の左心室(LV)機能が30〜61%のLV駆出率(EF及び)21〜76.9%のLV短縮率(FS)によって有意に向上したことを実証した。LVの拡張ために薄層化したLV壁の平均厚さ(6.2mm)は、有意に向上した壁の動きによって、平均7.7mmに回復した(図4及び表1)。
【0072】
運動負荷試験において、治療前の胸部の抑圧の誘導が、座っている状態から登り6〜10歩であったが、治療の2〜4週後のこれらの患者において、50〜60歩の登りでも胸部の抑圧を誘導しなかった(表2)。症状及び心エコー検査測定における目覚しい向上は、同じ病院で従来の治療を受けている他の同様のHF患者には見られなかった。これらの結果は、TPsを含んだ抽出物の投与は、検査した患者において、従来の治療モダリティには上手く反応しなかったHFの症状を著しく向上させ、そしてそのHFの向上は、数ヶ月又は数年維持され得ることを示した。
【0073】
重度の心不全患者へのTPsの抽出物の治療効果が試験された。1人の男性患者は、病気の末期で重度の心不全を有していた。この患者は心筋梗塞、高血圧及び反復性HFを繰り返し、心臓ペーシング中であった。患者の心臓は、HFのため極度に拡張(左心室の直径:170.8×78.3mm)し(図5)、心臓の80%以上が十分に灌流されていなかった(図5)。患者の心臓機能は、約8%のLVEFによって極度に低下した。しかしながら、薬剤(2グラム/日)を用いた4週間の治療により、左心室の直径が72×70mmへ、LVEFは260%増加し21%へと有意に回復した。
【0074】
運動負荷試験において、治療前の胸部の抑庄の誘導が、座っている状態から登り3〜6歩であったが、抽出物を含んだ4週間のTPsの治療後のこの患者において、20歩の登りでも胸部の抑庄を誘導しなかった。症状及び心エコー検査測定における目覚しい向上は、同じ病院で従来の治療を受けている他の同様のHF患者には見られなかった。これらの結果は、TPsを含んだ抽出物の投与は、従来の治療には上手く反応しなかったHFの症状を著しく向上させ、そしてそのHFの向上は、数ヶ月又は数年維持され得ることを示した。
【表1】

【表2】

【0075】
特定の態様が例示され記載されてきたが、以下に記載された、その広範な観点における技術から逸脱することなく、当業者により変更及び修正を行うことができることを理解されたい。
【0076】
本開示は、本明細書に記載された特定の態様に限定されない。当業者に理解されるように、その精神と範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変化を行うことができる。本開示の範囲内の機能的に均等な方法及び装置は、本明細書に列挙したものに加えて、前述の記載から当業者には明白であろう。そうした修正及び変化は、添付の請求項の範囲内に収まるように意図される。本開示は、権利が与えられたそうした請求項と同等のものの全範囲に沿って添付の請求項の条項のみに限定される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物系に限定されず、可能であるが、もちろん変化する、ことを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを説明することが目的で用いられ、限定されることを意図したものではないこともまた理解されたい。
【0077】
加えて、本開示の特徴又は観点がマーカッシュ群によって記載される場合、当業者は、この開示もまたマーカッシュ群の個々のメンバー又は下位のメンバーの意味で記載されることを認識するだろう。
【0078】
当業者に理解されるように、あらゆる全ての目的のために、特に明細書の観点から、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分的な範囲とその部分的な範囲の組み合わせも含む。あらゆる記載された範囲は、少なくとも同等な半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、などに分類される同じ範囲を十分に説明しかつ可能にすると容易に認識される。非制限の例として、本明細書で述べられているそれぞれの範囲は、容易に下位、中位、上位、などに分類できる。当業者に理解されるように、「次第」「少なくとも」「より大きい」「未満」等、といった全ての言葉は、列挙された数字を含み、その後上記で述べられたように部分的な範囲に分類できる範囲を意味する。最後に、当業者に理解されるように、範囲はそれぞれの個人メンバーが含まれる。そのため、例えば、1〜3個の原子を有する群は、1、2、又は3個の原子を有する群を意味する。同様に、1〜5個の原子を有する群は、1、2、3、4、又は5個の原子を有する群を意味する、など。
【0079】
様々な観点及び態様が本明細書に開示されてきたが、他の観点及び態様が、当業者には明らかであろう。本明細書に開示された様々な観点及び態様は、例示の目的であり、制限する意図はなく、真の範囲及び精神は以下の請求項により示される。
【0080】
参考文献
Heart Disease and Stroke Statistics - 2007 Update, Heart Disease and Stroke Statistics - 2007 Update, A Report From the American Heart Association Statistics Committee and Stroke Statistics Subcommittee.
British Heart Foundation. European Cardiovascular Disease Statistics; 2000. Edition.
Ho KKL, Anderson KM, Kannel WB, Grossman W, Levy D. Survival after the onset of congestive heart failure in Framingham heart study subjects. Circulation 1993;88:107−15.
Redfield MM. Epidemiology and pathophysiology of heart failure. Curr Cardiol Rep 2000;2:179 −80.
Feldman AM, Li YY, McTiernan CF. Matrix metalloproteinases in pathophysiology and treatment of heart failure. Lancet 2001;357:654 −5.
Francis GS, Wilson Tang WH. Pathophysiology of congestive heart failure. Rev Cardiovasc Med 2003;4(suppl 2):S14−20.
McTiernan CF, Feldman AM. The role of tumor necrosis factor alpha in the pathophysiology of congestive heart failure. Curr Cardiol Rep 2000;2:189 −97.
Chen HH, Burnett JC. Natriuretic peptides in the pathophysiology of congestive heart failure. Curr Cardiol Rep 2000;2: 198−205.
Perry LM. Medicinal Plants of East and Southeast Asia. Cambridge, Mass: MIT Press (1980).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全の防止又は治療を必要とする哺乳類対象において心不全を防止又は治療するための方法であって、前記哺乳類対象に有効量のトリテルペノイドポリフェノール組成物を投与することを含み、前記トリテルペノイドポリフェノール組成物は、
(i)アジアティック酸(Asiatic acid)、ニガ‐イチゴシドF1(Niga−ichigoside F1)、カジ‐イチゴシドF1(Kaji−ichigoside F1)、オイスカフ酸(Euscaphic acid)、アジアチコシド(Asiaticoside)、トルメント酸(Tormentic acid)、及びマデカス酸(Madecassic acid)からなる群から選択される1つ以上のトリテルペノイドと、
(ii)ゲミンA(Gemin A)、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン(Potentillin)、及びエラグ酸からなる群から選択される1つ以上のポリフェノールと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記トリテルペノイドポリフェノール組成物は、アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン、及びエラグ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心不全が、心筋梗塞、高血圧、虚血性心疾患、心毒性化合物への曝露、心筋炎、甲状腺疾患、ウイルス感染、歯肉炎、薬物乱用、アルコール乱用、心膜炎、アテローム性動脈硬化、血管疾患、肥大型心筋症、急性心筋梗塞、左心室収縮機能障害、冠状動脈バイパス手術、飢餓、摂食障害、又は遺伝的欠陥に起因する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象がヒトである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、又は筋肉内に投与される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
利尿薬、ACE阻害剤、ジゴキシン、及びベータ遮断薬からなる群から選択される追加的治療剤を投与することをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、0.01mg/kg/日〜1000mg/kg/日の量で投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量の前記組成物が、前記組成物とその適切な担体又は賦形剤とを含む、薬学的製剤の形態にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
哺乳類対象における心不全を防止又は治療するための方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に、ダイコンソウ単独又はセンテラ・アジアティカと組み合わせた有効量の有機抽出物を投与することを含む、方法。
【請求項10】
前記抽出物が、1日につき対象の体重1キログラム当たり、前記抽出物約0.001mg〜約2000mgの範囲の量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出物が、経口投与される、請求項9〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出物が、皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注入によって投与される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
抽出物が、ダイコンソウ単独又はセンテラ・アジアティカと組み合わせた低級アルキルアルコール抽出物である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記低級アルキルアルコールが、1〜6個の炭素原子を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低級アルキルアルコールが、エタノールである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象がヒトである、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有効量のトリテルペノイドポリフェノール組成物を含む、哺乳類対象の心不全を治療するための薬学的組成物であって、前記トリテルペノイドポリフェノール組成物が、
(i)アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、及びマデカス酸からなる群から選択される1つ以上のトリテルペノイドと、
(ii)ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン、及びエラグ酸からなる群から選択される1つ以上のポリフェノール
とを含む、前記薬学的組成物。
【請求項18】
前記トリテルペノイドポリフェノール組成物は、アジアティック酸、ニガ‐イチゴシドF1、カジ‐イチゴシドF1、オイスカフ酸、アジアチコシド、トルメント酸、マデカス酸、ゲミンA、カスアリニン、テリマグランジンII、ポテンチリン、及びエラグ酸を含む、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
ダイコンソウの有効量の有機抽出物と、薬学的に許容される担体とを含む、哺乳類対象の心不全を治療するための薬学的組成物。
【請求項20】
前記有機抽出物がエタノール抽出物である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記有機抽出物がメタノール抽出物である、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529483(P2012−529483A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514548(P2012−514548)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001410
【国際公開番号】WO2010/143058
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300536)ジェネレックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】