心不全管理システム
種々のシステムの実施形態は、心不全治療のための刺激信号を送るように構成された刺激器と、心不全状態の第1測定及び心不全状態の第2測定を少なくとも提供するように構成された多数のセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、刺激器と、多数のセンサとに接続される。コントローラは、心不全状態インデックスを作り出すために第1及び第2測定を使用し、かつインデックスを使用して信号を変調するために刺激器を制御するように構成される。他の形態及び実施形態は、本明細書に提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
優先権の利益が、2006年5月8日に出願された米国特許出願第11/382128号に対して本明細書により請求され、その出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、一般的に医療装置に係り、特に、神経刺激を使用する心不全を管理するシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は、心機能が、末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回り得る、正常以下の心拍出量を引き起こす臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈及び肺の鬱血のために、鬱血性心不全(CHF)として現れることがある。心不全は、虚血性心疾患のような種々の病因に起因し得る。心不全は、概して呼吸困難(dyspnea) (呼吸の困難性(difficulty breathing))、静脈充血及び浮腫を特徴とし、かつ各代償不全事象は、心機能の長期の低下を更に引き起こし得る。
【0003】
心不全患者は、自律平衡の低下を有し、それは左心室機能障害及び死亡率の増加と関連する。交感及び副交感神経系の変調は、心不全及びMI(心筋梗塞)後患者におけるリモデリング及び死亡を防止することに潜在的な臨床的有益性を有する。
【0004】
臨床医は、ペースメーカ、除細動器(defibrillators)、心臓再同期装置等のような幾つかの公知の埋め込み型医療装置に、測定されたパラメータ閾値を設定する。各パラメータの閾値は、患者によって異なることがある。適切な装置治療は、閾値を超える時に引き起こされる。処置は、少なくとも幾つかの閾値を超える測定を含む非事象によって開始できる。これらの非事象は、偽陽性とも呼ばれる。偽陽性のために提供される治療は、電池残量を消耗させ、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性を高めることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心不全状態を正確に決定し、かつ正確に決定された心不全状態を使用して心不全治療を提供するために、改善された方法及びシステムが、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明の幾つかの態様は、システムに関する。種々のシステムの実施形態は、心不全治療のための刺激信号を送るように構成された刺激器と、心不全状態の第1測定及び心不全状態の第2測定を少なくとも提供するように構成された多数のセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、刺激器と、多数のセンサとに接続される。コントローラは、心不全状態インデックス(指標)を生成するために第1及び第2測定を使用し、かつインデックスを使用して信号を変調するために刺激器を制御するように構成される。
【0007】
本発明の幾つかの態様は、方法に関する。方法の種々の実施形態によれば、心不全状態の第1測定及び心不全状態の第2測定が、得られる。心不全インデックスは、第1測定及び第2測定を使用して作り出される。心不全治療は、心不全状態の標識(インジケータ)として心不全インデックスを使用して調整される。
【0008】
この要約は、本出願の教示内容の幾つかの概観であり、かつ本発明の唯一の又は網羅的な処置であることは意図されない。本発明に関する更なる詳細は、詳細な説明及び添付の請求項に見出される。他の形態は、以下の詳細な説明を読み、かつ理解し、かつその一部をなす図面を見れば、当業者に明らかになるであろうが、それらの各々は、限定的な意味で解釈されるべきでない。本発明の範囲は、添付の請求項及びそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】患者の生理的パラメータに関し、ある期間にわたって行われた測定に基づく確率密度関数pi(x|H0)の例を示す。
【図1B】非事象確率密度関数p(xi|H0)の一例を示す。
【図1C】関数pj(x|H0)が、種々の実施形態に従ってHF治療をいつ提供するか決定するために使用できるような、生理的パラメータに関する測定の負の尾部の分布によって表されるもう1つの例を示す。
【図2】種々の実施形態に従ってHF治療をいつ提供するか決定するために使用できるような、インテリジェント・システムに結合された心不全に関係するパラメータの複数のデータソースを有するシステムを示す。
【図3A−3C】HF治療としての神経刺激の有効性を示す。
【図4A】経血管的に供給されたリードを示す。
【図4B】幾つか治療で使用できる、心臓用の心外膜リードを示す。
【図5A−5B】それぞれ心臓の右側及び左側を示し、かつ幾つかの神経刺激治療のための神経標的を提供する心臓脂肪体を更に示す。
【図6】感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。
【図7】慢性又は長期感知HF状態インデックス及び急性又は短期感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつインデックスを使用してHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。
【図8】本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。
【図9】本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。
【図10】本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)を示す。
【図11】本発明の種々の実施形態に従った、神経刺激(NS)部品及び心律動管理(CRM)部品を有する埋め込み型医療装置(IMD)を示す。
【図12】種々の実施形態に従った、マイクロプロセッサに基づく埋め込み型装置の実施形態の系統図を示す。
【図13】本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)と、外部システム又は装置とを含むシステムを示す。
【図14】本発明の種々の実施形態に従った、外部装置と、埋め込み型神経刺激(NS)装置と、埋め込み型心律動管理(CRM)装置とを含むシステムを示す。
【図15】限定でなく、例として、種々の実施形態に従った、リードが心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつリードが迷走神経内の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために位置決めされる、患者の胸部に皮下又は筋肉下に設置されたIMDを示す。
【図16】種々の実施形態に従った、リードが心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつサテライトトランスデューサが神経標的を刺激/阻害するために位置決めされる、IMDを示す。
【図17】外部システムの実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の以下の詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施形態を例示する添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするために、十分に詳細に記載される。他の実施形態が利用でき、かつ構造的、論理的及び電気的変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、なされ得る。この開示における「ある」、「1つの」又は「種々の」実施形態への参照は、必ずしも同じ実施形態に向けられず、かつかかる参照は、1つ以上の実施形態を意図している。従って、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきでなく、かつ範囲は、添付の請求項と、かかる請求項が権利を与えられる法的同等物の全範囲によってのみ定義される。
【0011】
本発明は、少なくとも2つの測定HFパラメータを使用する心不全(HF)状態のインデックスを提供する。実施形態は、心不全状態に基づき心不全治療を変調する心不全(HF)治療の閉ループ神経刺激システムを提供する。システムの実施形態は、埋め込み型神経刺激器を含む。神経刺激治療は、HF患者における逆リモデリングを防止又は遅くするために適用される。HF状態は、生理的センサ一式から導かれる生理的変数の組み合わせによって決定される。例えば、HF状態は、HF状態に関係する2つ以上の測定パラメータを使用する複合インデックスとして決定できる。HF状態に関係する測定パラメータの例には、心拍数変動(HRV)、心拍数不整(HRT)、心音、活動、経胸腔インピーダンス、毎分換気量、肺動脈圧及び電気記録図の特性を含む。
【0012】
神経刺激パラメータの変調は、HF状態インデックスを作り出すために使用されるパラメータのいずれか又は全ての変化に応答して起こり得る。インデックスを作り上げる測定パラメータの幾つかは、測定を実行するために使用される装置の制約内で連続的に更新でき、他方で他の測定パラメータは、断続的に更新されるか、又は定期的に(例えば、毎時、毎日等)更新される。種々の実施形態は、変化を監視するためにパラメータの傾向を探る(trend)。(後述するような、HRV分析に関する低いSDANN、高い最小心拍数、弱いRSA結合及び活動への生理的応答のような)慢性の悪化する心不全のインデックスは、(副交感神経連絡を刺激し、かつ/又は交感神経連絡を阻害する)副交感神経応答を導くための神経刺激治療へのシフトを引き起こし、かつ改善する心不全のインデックス(上記インデックスの逆の傾向)は、副交感神経応答を導くことからのシフトを引き起こす(例えば、刺激の強度を減少させる)か、又は(交感神経連絡を刺激し、かつ/又は副交感神経連絡を阻害する)交感神経応答を導くことへのシフトを引き起こす。HRV、SDANN及びRSAは、後述する。神経刺激パラメータは、振幅、周波数、動作周期、パルス幅及び刺激部位を含み、かつこれらパラメータのいずれか又は全ては、より大きな若しくはより小さい副交感神経応答に、又は副交感神経応答と、交感神経応答との間で自律平衡をシフトするために変調できる。
【0013】
本発明の実施態様による制御システムは、偽陽性を減少させることによって、電池残量を効率的に管理し、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性を減少させる。装置の実施形態は、長期及び短期変化を説明するための二重フィードバック応答を有する。心不全状態の慢性変化を示す変数は、神経刺激治療の適用を判定するために使用される(例えば、悪化する心不全状態に応答した副交感神経刺激の増加)。二重フィードバック装置の実施形態は、HF状態の短期変化を示す変数(例えば、接近する代償不全事象)にも応答し、かつ代償不全事象を防止又は遅らせるための緊急神経刺激治療を適用する。例えば、適切な神経刺激は、患者が臨床環境に到着できるまで心拍出量を維持するために短期間、適切な交感神経応答を導くために提供できる。
【0014】
種々の装置の実施形態は、ペーシング、除細動及び/又は心臓再同期治療を含む心律動管理治療を提供し、かつこれらの治療を制御するためにHF状態を使用する。ある実施形態は、神経刺激HF治療に加えてCRM治療を提供する。フィードバックセンサは、埋め込み型装置に組み込むか、身体の外部にあるか、又は両方であっても良い。装置は、外部モニタと無線通信でき、システムが、HF状態及び治療適用を監視し、記録し、かつその傾向を探り、かつHF状態の変化に基づき警報を提供できるようにする。
【0015】
以下に続く考察は、生理学の短い考察、HF状態パラメータの例、少なくとも2つのHF状態パラメータに基づくHF状態インデックスの考察、神経刺激及び心筋刺激を含む治療の考察、装置の実施形態及びシステムの実施形態に分かれている。
【0016】
--- <生理学>> ---
神経系、心不全、高血圧及び心臓リモデリングの短い考察が、以下に提供される。この考察は、読者が開示された要旨を理解する一助になると考えられる。
【0017】
<神経系>
自律神経系(ANS)は、「不随意」器官を調節し、他方で随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の例には、呼吸及び消化器を含み、かつ血管及び心臓も含む。多くの場合、ANSは、腺を調節し、皮膚、眼、胃、腸及び膀胱の筋肉を調節し、かつ例えば心筋及び血管の周辺の筋肉を調節するために、不随意で、反射的に機能する。
【0018】
ANSは、交感神経系及び副交感神経系を含むが、それらに限定されない。交感神経系は、ストレス及び緊急事態への「闘争又は逃走応答」に密接に関係付けられる。幾つかの効果の中でも、「闘争又は逃走応答」は、骨格筋血流を増加させるために血圧及び心拍数を増加させ、かつ「闘争又は逃走」のためのエネルギーを提供するために消化を減少させる。副交感神経系は、緩和及び「休息及び消化応答」に密接に関係付けられ、それは、幾つかの効果の中でも、血圧及び心拍数を減少させ、かつエネルギーを保存するために消化を増加させる。ANSは、正常な内部機能を維持し、かつ体性神経系と連携する。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを搬送し、かつ遠心性神経は、神経中枢を避けてインパルスを搬送する。
【0019】
心拍数及び力は、交感神経系が刺激される時に増加し、かつ交感神経系が阻害される(副交感神経系が刺激される)時に減少する。心拍数、収縮性、及び興奮性は、中枢を介した反射経路によって変調されることが知られている。心臓、大血管及び肺内の圧受容器及び化学受容器は、迷走神経及び交感神経求心性線維を通して中枢神経系に心臓活動を伝達する。交感神経求心性神経の活性化は、反射性交感神経活性化、副交感神経阻害、血管収縮及び頻脈を引き起こす。対照的に、副交感神経活性化は、徐脈、血管拡張及びバソプレッシン遊離の阻害をもたらす。多くの他の要因の中で、減少した副交感神経若しくは迷走神経緊張、又は増加した交感神経緊張は、心室頻脈及び心房細動を含む種々の不整脈発症に関連する。
【0020】
圧反射は、圧受容器の刺激によって引き起こされる反射である。圧受容器は、内部からの圧力増加の結果生じ、かつその圧力を低下させる傾向がある中枢性反射機構の受容器の役割を果たす、壁の伸張に感受性がある、心耳、大静脈、大動脈弓、及び頸動脈洞の壁内の感覚神経終末のような、いかなる圧力変化センサも含む。神経細胞の群は、自律神経節と呼ぶことができる。これらの神経細胞はまた、交感神経活動を阻害し、かつ副交感神経活動を刺激する、圧反射を誘発するために電気刺激できる。自律神経節は、このように圧反射経路の一部をなす。感覚神経終末から通じる迷走、大動脈、及び頸動脈神経のような求心性神経幹も、圧反射経路の一部をなす。圧反射経路及び/又は圧受容器を刺激することは、交感神経活動を阻害し(副交感神経系を刺激し)、かつ末梢血管抵抗及び心臓収縮性を減少させることによって、全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、内圧及び血管壁(例えば動脈壁)の伸張によって自然に刺激される。
【0021】
交感及び副交感神経系を刺激することは、心拍数及び血圧以外の効果を有し得る。例えば、交感神経系を刺激することは、瞳孔を拡張させ、唾液及び粘液生成を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波及び胃の運動性を減少させ、肝臓によるグリコーゲンのブドウ糖への変換を増加させ、腎臓による尿分泌を減少させ、壁を弛緩させ、かつ膀胱の括約筋を閉鎖する。副交感神経系を刺激すること(交感神経系を阻害すること)は、瞳孔を収縮し、唾液及び粘液生成を増加させ、気管支筋を収縮し、胃及び大腸内の分泌及び運動性を増加させ、かつ小腸内の消化を増加させ、尿分泌を増加させ、かつ壁を収縮し、かつ膀胱の括約筋を弛緩させる。交感及び副交感神経系に関連する機能は、多く、かつ互いに複雑に統合できる。
【0022】
神経刺激は、神経連絡を刺激、又は神経連絡を阻害するために使用できる。神経連絡を刺激するための神経刺激の例は、(例えば、約20Hzから50Hzの範囲内の)低周波数信号である。神経連絡を阻害するための神経刺激の例は、(例えば、約120Hzから150Hzの範囲内の)高周波数信号である。神経連絡を刺激及び阻害する他の方法が、提案された。本発明の種々の実施形態によれば、交感神経標的は、腓骨神経、脊髄中の交感神経柱及び心臓節後交感神経ニューロンを含むが、それらに限定されない。本発明の種々の実施形態によれば、副交感神経標的は、迷走神経、圧受容器及び心臓脂肪体を含むが、それらに限定されない。
【0023】
<心不全>
心不全は、心機能が、末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回り得る、正常以下の心拍出量を引き起こす臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈及び肺の鬱血のために、鬱血性心不全(CHF)として現れることがある。心不全は、虚血性心疾患のような種々の病因に起因し得る。心不全患者は、自律平衡の低下を有し、それはLV機能障害及び死亡率の増加と関連する。交感及び副交感神経系の変調は、心不全及びMI後患者におけるリモデリング及び死亡を防止することに潜在的な臨床的有益性を有する。直接電気刺激は、圧反射を活性化でき、交感神経活動の減少を誘発し、かつ血管抵抗を低下させることによって血圧を減少させる。交感神経阻害及び副交感神経活性化は、おそらく急性虚血性心筋の側副灌流を増加させ、かつ心筋障害を低下させることによって、心筋梗塞に続く不整脈脆弱性の減少に関連した。
【0024】
<高血圧>
高血圧は、心疾患及び他の関係した心臓共存症の原因である。高血圧は、血管が収縮する時に起こる。結果として、心臓は、流れをより高い血圧で維持するために、一生懸命に働き、そのことは、心不全の一因となり得る。高血圧は、一般的に心臓血管損傷又は他の有害な結果を誘発しやすいレベルへの全身動脈血圧の一過性又は持続的上昇のような高い血圧に関連する。高血圧は、140mm Hgを超える収縮期血圧、又は90mm Hgを超える拡張期血圧と任意に定義された。制御されない高血圧の結果は、網膜血管疾患及び卒中、左心室肥大及び不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、及び腎血管疾患を含むが、それらに限定されない。
【0025】
大部分の一般集団、並びにペースメーカ又は除細動器を埋め込まれた大部分の患者は、高血圧を患っている。血圧及び高血圧を減少できるならば、長期死亡率並びに生活の質は、この集団に関して改善できる。高血圧を患う多くの患者は、生活様式の変化に関係する処置及び血圧降下剤のような処置に反応しない。
【0026】
<心臓リモデリング>
心筋梗塞(MI)又は心拍出量低下の他の原因の後に、構造、生化学、神経ホルモン及び電気生理学的要因を含む心室の複合リモデリングプロセスが起こる。心室リモデリングは、心室の拡張期充満圧を増加させ、かつこのことによりいわゆる前負荷(すなわち心室が、拡張期終了時に心室内の血液量によって伸張される程度)を増加させる、いわゆる後方不全のため心拍出量を増加させるために行う、生理的補償機構によって引き起こされる。前負荷の増加は、フランク−スターリングの原理として知られている現象である、収縮期中の拍出量の増加を引き起こす。しかしながら、心室が、ある期間にわたる前負荷増加のために伸張される時、心室は、拡張するようになる。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧で、心室壁応力の増加を引き起こす。心室によってなされる圧力容積作業の増加と共に、このことは、心室筋の肥大のための刺激として働く。拡張の短所は、正常な、残存心筋に課される余分な作業負荷、及び肥大のための刺激に相当する壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が、張力増加に適合させるために十分でないならば、更なる、かつ漸進的な拡張を引き起こす悪循環が起こる。
【0027】
心臓が拡張し始めると、求心性圧受容器及び心肺性受容器信号は、ホルモン分泌及び交感神経放電に反応する、血管運動神経中枢神経系制御所に送信される。最終的に、心室リモデリングに関与する細胞構造の有害な変化の原因となるのは、血行力学的、交感神経系、及び(アンジオテンシン変換酵素(ACE)活動の存在又は欠如のような)ホルモン変調の組合せである。肥大を引き起こす持続的な応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死)及び心機能の更なる悪化を引き起こす最終的な壁の菲薄化を誘発する。このようにして、心室拡張及び肥大が、最初は補償的であり、かつ心拍出量を増加させ得るが、プロセスは、最終的に収縮期及び拡張期両方の機能障害(代償不全)をもたらす。心室リモデリングの範囲が、MI後及び心不全患者における死亡率増加との間に正の相関が認められることが明らかにされた。
【0028】
-- <<HF状態パラメータ>> --
HF状態を決定するために使用できるパラメータの例には、心拍数変動(HRV)、心拍数不整(HRT)、心音、電気記録図の特性、活動、呼吸及び肺動脈圧を含む。これらのパラメータは、以下で手短に述べる。
【0029】
例えば、呼吸パラメータは、毎分換気量信号から導くことができ、かつ流体インデックスは、経胸腔インピーダンスから導くことができる。例えば、経胸腔インピーダンスの減少は、肺内の水分蓄積増加を反映し、かつ心不全の進行を示す。呼吸は、毎分換気量を有意に変化させる。経胸腔インピーダンスは、水分蓄積の兆候を提供するために合計又は平均化できる。
【0030】
<HRV>
心拍数変動(HRV)は、自律平衡を評価するために提案された一技術である。HRVは、自律神経系の交感及び副交感神経枝による心臓の天然のペースメーカである、洞房結節の調節に関係する。HRV評価は、心律動の心拍間隔の変動が、交感及び迷走神経活動の平衡程度によって定義されるような、心臓の健康の間接的測定を我々に与えるという想定に基づく。
【0031】
内因性の心室の心臓収縮間の時間間隔は、心拍数変化のための身体の代謝要求、及び循環系を通してポンピングされた血液量に応答して変化する。例えば、運動又は他の活動期間中に、人の内因性心拍数は、幾つかの又は多くの心拍動の期間にわたって一般的に増加する。しかしながら、心拍間隔ベースでも、すなわち1つの心拍動から次の心拍動まで、かつ運動なしでも、内因性の心臓収縮間の時間間隔は、正常者によって異なる。内因性心拍数のこれらの心拍間隔変動は、血圧及び心拍出量の自律神経系による適切な調節の結果であり、かかる変動の欠如は、自律神経系によって提供される調節不足の可能性を示す。HRVを分析する1つの方法は、内因性の心室収縮を検出し、かついかなる異所性収縮(正常洞律動の結果でない心室収縮)もフィルタにかけて除去した後に、R−R間隔と呼ばれるこれらの収縮間の時間間隔を記録することを含む。このR−R間隔信号は、そのスペクトル周波数成分が、分析でき、かつ低及び高周波帯域に分割できるように、高速フーリエ変換(「FFT」)技術を使用することによるような、周波数領域に概して変換される。例えば、低周波(LF)帯域は、周波数(「f」)範囲0.04Hz≦f<0.15Hzに対応でき、かつ高周波(HF)帯域は、周波数範囲0.15Hz≦f≦0.40Hzに対応できる。R−R間隔信号のHF帯域は、自律神経系の副交感/迷走神経成分のみによって影響される。R−R間隔信号のLF帯域は、自律神経系の交感及び副交感神経成分の両方によって影響される。従って、LF/HF比は、自律神経系の交感及び副交感/迷走神経成分の間の自律平衡の良好な標識とみなされる。LF/HF比の増加は、交感神経成分の優位増加を示し、かつLF/HF比の減少は、副交感神経成分の優位増加を示す。特定の心拍数に関して、LF/HF比は、患者が健康であることの標識とみなされ、低いLF/HF比は、心臓血管の健康の、より肯定的な状態を示す。R−R間隔信号の周波数成分のスペクトル分析は、時間領域から周波数領域へのFFT(又は自己回帰のような他のパラメータ変換)技術を使用して実行できる。かかる計算は、相当量のデータ記憶及び処理能力を必要とする。その上、かかる変換計算は、電力消費を増加させ、かつ埋め込まれた電池で動く装置が、その交換が必要とされる前に使用できる時間を短縮する。
【0032】
HRVパラメータの一例は、全記録に含まれる全ての連続する5分間のセグメントの平均値の標準偏差を表す、SDANN(平均NN間隔の標準偏差)である。他のHRVパラメータが、使用できる。
【0033】
<HRT>
心拍数不整(HRT)は、短い初期心拍数加速と、それに続く心拍数減速からなる心室性期外収縮(PVC)への洞結節の生理的応答である。HRTは、HRVと密接に相関する自律機能のインデックスであることが明らかにされた。HRTは、自律圧反射であると考えられる。PVCは、動脈圧の短い不整(期外収縮の低振幅、次の正常収縮の高振幅)を引き起こす。この束の間の変化は、自律神経系が健康ならば、HRTの形状で瞬間応答により即時に記録されるが、自律神経系が損なわれたならば、弱められるか、又は欠落する。
【0034】
限定でなく、例として、不整発症(TO)及び不整傾斜(TS)を使用してHRTを定量化することが提案された。TOは、PVC直前及び後の心拍数間の差を指し、かつ百分率として表現できる。例えば、2つの拍動が、PVC前及び後で評価されるならば、TOは、以下のように表現できる:
【0035】
【数1】
【0036】
RR-2及びRR-1は、PVCに先立つ最初の2つの正常間隔であり、かつRR+1及びRR+2は、PVCに続く最初の2つの正常間隔である。種々の実施形態において、TOは、各個別のPVCに関して決定され、かつ次に全ての個別の測定の平均値が決定される。しかしながら、TOは、多くの測定にわたり平均化される必要はないが、1つのPVC事象に基づくことができる。正のTO値は、洞律動の減速を示し、かつ負の値は、洞律動の加速を示す。PVC前後に分析されるR−R間隔の数は、所望の用途に従って調整できる。例えばTSは、5つのR−R間隔の各シーケンスの線形回帰の最も急な傾斜として計算できる。種々の実施形態において、TS計算は、平均化された速度記録に基づき、かつRR間隔当たりのミリ秒で表現される。しかしながら、TSは、平均化せずに決定できる。TS計算で線形回帰を決定するために使用されるシーケンス内のR−R間隔の数は、所望の用途に従って同様に調整できる。
【0037】
規則又は基準が、PVCを選択するための使用、及びPVC前後の有効なRR間隔を選択する際の使用に、提供できる。PVC事象は、以前の間隔よりもある倍数又は割合だけ短い、ある間隔範囲のR−R間隔によって定義できるか、又はそれは、心房事象が測定されるならば、介在するP波(心房事象)なしにR−R間隔によって定義できる。種々の実施形態は、収縮が、以前の収縮からある種の範囲で起こる場合に、かつ収縮がその後の収縮からある種の範囲内で起こる場合にのみ、PVCを選択する。例えば、種々の実施形態は、HRT計算を、20%の最小期外性及び正常な間隔よりも少なくとも20%長い期外収縮後間隔を有するPVCに限定する。その上、PVC前R−R及びPVC後R−R間隔は、拍動のいずれもがPVCでないという条件を、それらが満たすならば、有効であると考えられる。例えば、1つのHRTプロセスは、第1の時間分より少なく、第2の時間分より長く、第3の時間分より多く、先行間隔と異なるか、又は所定量の時間分又は割合だけ基準間隔から異なるRR間隔を除外する。特定値を有する、かかるHRTプロセスの実施形態において、RR間隔は、それらが300ms未満であるか、2000msを超えるか、200msより多く先行間隔と異なるか、又は最後の5つの洞間隔の平均値から20%を超えて異なるならば除外される。本発明の種々の実施形態は、PVCを選択する際に使用する、又はPVC前後の有効なRR間隔を選択する際に使用するための、以上に特定されたパラメータのいずれかのようなプログラム可能なパラメータを提供する。
【0038】
自律平衡を評価するためにこの技術を組み込む神経刺激装置は、副交感神経刺激若しくは阻害、又は交感神経刺激若しくは阻害を提供するために使用できる。種々の装置の実施形態は、少なくとも1つの心室ペーシングリードのような、心室をペーシングする手段を含む。閉ループ治療判定に関して自律平衡を測定するために、装置は、PVCを断続的に導入又は感知し、かつ上記のような結果として生じた心拍数不整を測定する。
【0039】
自律平衡を監視するためにHRTを使用する利点には、単一の瞬間に自律平衡を測定する能力を含む。その上、HRVの測定とは異なり、HRT評価は、頻繁な心房ペーシングを有する患者において実行できる。更に、HRT分析は、自律平衡の簡易な、非プロセッサ集約型測定を提供する。従って、データ処理、データ記憶及びデータフローは、比較的小さく、コストが低く、かつ電力消費が低い装置をもたらす。同様に、HRT評価は、HRVよりも速く、遙かに少ないR−Rデータを必要とする。HRTは、例えば約数十秒のような、典型的な神経刺激バースト期間と、期間が類似した短い記録期間にわたる評価を可能にする。
【0040】
<心音>
識別可能な心音は、以下の4つの心音を含む。第1心音(S1)は、心室収縮期の開始で始められ、かつ混合した、無関係の低周波数の一連の振動からなる。それは、心音の中で最も大きく、かつ長く、かつ漸減性質を有し、かつ心臓の先端領域にわたって最も良く聞かれる。三尖弁音は、胸骨のすぐ左側の、第5肋間腔内で最も良く聞こえ、かつ僧帽弁音は心尖部の第5肋間腔内で最も良く聞こえる。S1は、心室腔内の血液の発振及び房室壁の振動によって主に引き起こされる。振動は、心房に向かって戻る血液の加速による心室内圧の急激な上昇、及び閉鎖されたA−V弁による血液の減速による、A−V弁及び隣接構造の突然の張力及び反跳によって発生する。心室及び含まれる血液の振動は、周囲組織を通して伝達され、かつ胸壁に達し、そこで聞くか、又は記録できる。S1の強度は、主に心室収縮力に依存するが、心房及び心室収縮期の間の間隔にも依存する。A−V弁膜が、心室収縮期前に閉鎖されないならば、A−V弁が上昇する心室内圧によって素早く閉じられる時まで、高い速度が、心房に向かって移動する血液に与えられ、かつ強い振動が、閉鎖したA−V弁によるこの急激な血液減速に起因する。
【0041】
半月弁の閉鎖で起こる第2心音(S2)は、高周波振動からなり、期間が短かく、かつ強度が低く、かつ第1心音よりもより「素早い」性質を有する。第2音は、閉鎖した弁の伸張及び反跳による血液の列及び緊張した血管壁の発振を開始する、半月弁の急激な閉鎖によって引き起こされる。肺動脈又は大動脈圧増加(例えば肺、又は全身性高血圧)のような、半月弁の急速な閉鎖をもたらす条件は、第2心音の強度を増加させる。成人において、大動脈弁音は、肺よりも通常大きいが、肺高血圧の場合に、逆が多くの場合真である。
【0042】
薄い胸壁を有する小児、又は左心室不全のために急速な充満波を有する患者において頻繁に聞かれる第3心音(S3)は、2、3の低強度の低周波振動からなる。それは、拡張早期に起こり、かつ房室弁が開放して、心室に流入する血液の急激な加速及び減速によって引き起こされる心室壁の振動によると考えられる。2、3の低周波発振からなる第4又は心房音(S4)は、時折、正常な個人において聞かれる。それは、血液の発振及び心房収縮によって作り出される心腔によって引き起こされる。際立ったS3及びS4音は、ある種の異常な状態を示すことがあり、かつ診断的意義を有する。
【0043】
従って、心音は、心不全状態を決定するために使用できる。例えば、より重度のHF状態は、大きなS3振幅に反映される傾向がある。
【0044】
<電気記録図>
HF状態の標識を提供するために抽出できるECGの特性の例には、左脚ブロックによるQRS複合期間、STセグメント偏差、及び心筋梗塞によるQ波を含む。これらの特性のいずれか1つ又は組み合わせが、HF状態の標識を提供するために使用できる。他の特性は、ECGから抽出できる。
【0045】
<活動>
活動センサは、患者の活動を評価するために使用できる。交感神経活動は当然に、活発な患者において増加し、かつ不活発な患者において減少する。従って、活動センサは、患者の自律平衡、及びそれ故に患者のHF状態を決定する際に使用するための状況的測定を提供できる。例えば種々の実施形態が、活動の標識を提供するために、心拍数及び/又は呼吸速度の傾向を探るセンサの組み合わせを提供する。
【0046】
<呼吸>
呼吸を検出するための2つの方法は、経胸腔インピーダンス及び毎分換気量の測定を含む。呼吸は、活動の標識であり得、かつHF状態と直接的に関係しない交感神経緊張の増加の説明を提供できる。例えば、運動に起因する、検出された交感神経活動の増加のために、HF治療を変更することは、適切でないことがある。
【0047】
呼吸測定(例えば、経胸腔インピーダンス)は、呼吸洞性不整脈(RSA)を測定するためにも使用できる。RSAは、洞房結節への交感及び迷走神経インパルスの流れに対する呼吸の影響を通して起こる不整脈の天然のサイクルである。心律動は主に、心拍数及び収縮力を阻害する、迷走神経の制御下にある。迷走神経活動が妨げられ、かつ呼気が吸入される時に、心拍数が増加し始める。吐き出される時、迷走神経活動が増加し、かつ心拍数が減少し始める。心拍数変動の程度は、大動脈及び頸動脈内の圧受容器(圧力センサ)からの規則的なインパルスによって同様に有意に制御される。従って、自律平衡の測定は、心拍数を呼吸サイクルと相関させることによって提供できる。
【0048】
<肺動脈圧>
上記のように、高血圧は、心不全の一因となり得る。慢性高血圧又は高い傾向を取る慢性血圧は、心不全の可能性増加の兆候を提供する。種々の実施形態は、充満圧に近付くために、肺動脈圧を使用する。充満圧は、前負荷のマーカであり、かつ前負荷は、心不全状態の標識である。
【0049】
--- <<HF状態インデックス>> ---
本発明の実施形態は、上記のHFパラメータのいずれか2つ以上のような、2つ以上のHFパラメータを使用するHF状態インデックスを提供する。インデックスは、偽陽性を減少させ、かつそれ故に不必要な治療と関連した電力消耗を減少させ、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性も減少させる。インデックスの実施形態には、入力として使用される各HPパラメータが、複合インデックスを発生させるために適切に加重される、複合インデックスを含む。例えば、インデックスは、(パラメータ1)*A+(パラメータ2)*Bによって提供できる。もう1つの例において、インデックスは、パラメータの積を含むことができる(例えば、(パラメータ1)*(パラメータ2))か、又は他方のパラメータで割った一方のパラメータを含むことができる(例えば、(パラメータ1)/(パラメータ2))。他のアルゴリズムが、2つ以上のパラメータからインデックスを作り出すために、使用できる。
【0050】
治療を制御するために、2つ以上のHF関係パラメータに基づきインデックスを作り出す他の例は、以下で提供される。これらの例は、2つ以上のHFパラメータに基づきHF状態を決定するための、統計的確率の使用及びインテリジェント・システムの使用を含む。
【0051】
<統計的確率>
参照によって組み込まれる、2006年3月13日に出願され、かつ「Physiological Event Detection Systems and Methods」という表題の米国出願11/276735号は、確率密度を使用して、偽陽性の問題を論じている。図1Aは、患者の生理的パラメータ(例えば、心音振幅、心拍数等)に関し、ある期間にわたって行われた測定に基づく確率密度関数pi(x|H0)の例を示す。示した関数pi(x|H0)は、生理的パラメータに関して行われた非事象(基線)測定の分布を示し、かつそれ故に安定した患者に関する測定分布を表す。これらの測定は、患者の非事象環境(すなわち、心不全、不整脈等のないこと)を統計的に特徴付ける。図1Aに破線で示された確率密度関数pi(x|H1)は、「事象」条件(例えば、心不全等)を代表する生理的パラメータに関する推定の測定分布を示す。事象測定は、概して稀であるので、関数pi(x|H1)は、概して事象関係測定の分布を概算するのみである。それによりH1は、有意の事象を示す仮説である。もう1つの例においてH1は、過去の事象の集団から推定される。図1Aに示すように、かつ以下で更に記載するように、事象分布pi(x|H1)に近付く生理的パラメータの異常値測定は、誤警報である可能性が低く(すなわち事象を示していない確率の減少)、かつ反対に事象(例えば、心不全、不整脈等)を示している確率の増加である。概念的に、pi(x|H0)にとって異常値である測定は、非事象測定よりも事象測定に極めて似ている。
【0052】
種々の実施形態において、確率密度関数pi(x|H0)は、実測値のヒストグラムを使用して発生する。実測値は、確率密度関数を直接的に推定するために使用される。測定の特性(例えば、中央値及びパーセンタイル測定)は、確率密度関数を作り出すために使用される。種々の実施形態において、(例えば平均値及び標準偏差を推定することによって)数学的に、又は他の方法で特定されるガウス分布又は他の関数のような、特定の確率分布が使用される。種々の実施形態において、確率密度関数は、ヒストグラムデータにわたる曲線の当てはめによって発生する。確率密度関数pi(x|H0)を発生させるために使用される測定は、収集及び記憶される。
【0053】
幾つかの実施例において、特定の測定は、破損した測定、古い測定、事象関係測定−関数pi(x|H0)は、非事象データのみを含むべきである−等のような確率密度関数p(xi|H0)を算出する際の使用から除外される。一実施例において、確率密度関数は、特定の(例えば、移動)時間窓中に行われる測定によって発生する。幾つかの実施例において、移動時間窓は、生理的パラメータの最新の測定の時間から戻る特定の間隔を延長する。幾つかの実施例において、移動時間窓外部の古い測定は、確率分布関数を算出する際の使用から除外される。このことは、確率分布関数が更新し、かつ最新の測定を使用することによって生理的パラメータの漸進的ドリフトを辿ることを可能にする。古い測定は、例えば履歴の使用のために、埋め込み型医療装置及び/又は外部システムに記憶させることができる。その上、測定が、下記のように事象を示すために決定される場合、かかる事象関係測定は、弱められ、かつ非事象確率分布関数を発生させる際の使用から除外される。
【0054】
幾つかの実施例において、信頼できない又は破損したとみなされる測定は、非事象確率分布関数を算出するために使用されない。例えば、幾つかの生理的パラメータは、他の効果によって混乱する。例えば、心音は、姿勢によって影響を及ぼされることがある。第2センサ(例えば、姿勢検出器)は、特定の姿勢と関連した心音のみが特定の確率分布関数を算出するために使用されるように、心音データを「修正する」ために姿勢を検出するために使用できるか、又は異なる確率分布関数が、種々の姿勢に関して算出できる。同様に、幾つかの生理的パラメータは、睡眠のような休息期間中に発生する測定が、覚醒時間に行われた測定と異なり得るように、睡眠状態によって影響を及ぼされる。この実施例において、睡眠検出器が、特定の睡眠状態に従って一次生理的パラメータを修正するために使用できる。活動は、感知された生理的パラメータにも影響を及ぼし得る。一般的に、1つ以上の二次生理的センサは、信頼できない又は破損したデータを、確率分布関数を算出する際の使用から除去するために、一次生理的センサからのデータを修正するために使用でき、そのことは、一次生理的センサが機能しなくなる状況でも有用である。従って、本発明によれば、2つ以上のセンサは、非事象確率分布関数によって提示できるような、HF状態のインデックスを作り出すために使用できる。
【0055】
図1Bは、非事象確率密度関数pi(x|H0)の一例を示す。上記のように、関数pi(x|H0)は、概して患者の生理的パラメータのセンサによって行われる非事象測定から導かれる。即時測定xi=kのような測定は、確率密度関数pi(x|H0)に沿って描くことができ、かつ信頼性が、次式に基づき尾部領域を積分することによって導かれる。
【0056】
【数2】
【0057】
信頼性Ciは、測定kが誤警報である(すなわち非事象測定)瞬間確率に比例する。測定kからの分布の端部に向かう確率密度関数pi(x|H0)尾部領域の積分は、それにより、測定kが誤警報である瞬間確率を決定する。分布の端部に近付く測定は、それが誤警報を示す確率の減少を有する。反対に、かかる測定が、異常な状態(例えば、心不全)の発症のような事象を示すことが、より起こり得る。測定kは、概してすでに記録された既存の測定である。
【0058】
図1Cは、関数pj(x|H0)が、生理的パラメータに関する測定の負の尾部の分布によって表されるもう1つの例を示す。負の尾部の分布を有する生理的パラメータの一例は、DC近傍胸腔インピーダンスである。一般的に、低下したDC胸腔インピーダンス測定(例えば、胸腔内総インピーダンス)は、肺水腫と関連し得る流体蓄積を示す。従って、かかる低下したDC胸腔インピーダンス測定は、肺水腫検出スキームにおける誤警報の確率減少を表す。関数pi(x|H0)のように、関数pj(x|H0)は、概して患者の生理的パラメータのセンサによって行われる非事象測定から導かれる。即時測定xj=lのような測定は、確率密度関数pj(x|H0)に沿って描くことができ、かつ信頼性が、次式に基づき尾部領域を積分することによって導かれる。
【0059】
【数3】
【0060】
信頼性Cjは、測定lが誤警報である(すなわち非事象測定)瞬間確率に比例する。測定lからの分布の左端部に向かう確率密度関数pj(x|H0)尾部領域の積分は、測定lが誤警報である瞬間確率を決定する。関数pi(x|H0)と同様に、分布の端部に近付く測定は、それが誤警報を示す瞬間確率の減少を有し、かつ測定が、状態(例えば、心不全)の発症のような事象を示すことが、より起こり得る。任意に、分布の「端部」に対応する値は、+/−無限大で起こる必要がないが、推定された分布端部を使用して代わりに概算できる(例えば、測定された分布端部に近付く近似値、実測値、+/−無限大に近付く値等)。
【0061】
幾つかの実施例において、臨床医は、一定の特定された誤警報率(FAR)(すなわち一定の誤警報率)に基づき閾値を設定する。例えば、医師は、閾値が全体の約5%(0.05)の誤警報を生じるように、自動的に設定されるべきことを特定できる。特定されたFARは、生理的パラメータの分布に関するいかなる統計に基づく分析とも無関係であり、かつそれにより分布からのいかなる影響とも無関係である。臨床医が特定したFARから、閾値は、Ci及びCjに関して示されるように、式によって発生した信頼性に対応する値に対して比較するように、自動的に決定できる。信頼性に対応する値が、FARに基づく閾値を超えるならば、幾つかの実施例において、治療は、検出された生理的事象に応答して提供される。一実施例において、閾値は、臨床医によって望まれる特異性に比例する値である。例えば、患者がある状態にかかりやすい状況において(例えば、前駆症状を示した、状態の履歴を有する等)、医師は、状態の危険性が高い患者が、治療を提供されることを確実にするために、低い閾値を恐らくは設定する。患者が状態を体験する可能性が低い(例えば、患者が、ペースメーカ/除細動器の組み合わせを有するが、心不全を経験することが予期されない)もう1つの実施例において、臨床医は、測定が状態の発症の高い瞬間確率があることを示す場合にのみ、低い危険性の患者が処置されることを確実にするために、高い閾値を設定する。
【0062】
--- <<インテリジェント・システム>> ---
参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開20060010090号は、埋め込み型及び外部センサの組み合わせからのデータを使用する、外来環境において患者の遠隔監視を提供するインテリジェント・システムの例を提供している。種々の実施形態において、種々のセンサ信号は、連続的に監視され、かつデータはリアルタイムで収集される。データは、一実施例において、インテリジェント・システムによって処理され、かつ幾つかの条件で、治療が、判定され、かつ/又は警報通知が、医師又は患者に送られる。
【0063】
センサの組み合わせは、種々の条件での、かつ種々の方法で測定された慢性患者データを提供する。例えば、センサデータの組み合わせは、患者の血行力学的状態を検出し、かつ鬱血、灌流、収縮性又は種々の他の状態の評価を容易にするために使用される。種々の実施形態において、心不全又は他の状態が、評価される。
【0064】
一実施例において、システムは、様々なソースから来る情報を集め、かつ本明細書において心不全インデックスとも呼ばれる心不全の要約を提供する推論エンジンを含む。種々の実施例における様々なソースは、埋め込み型センサ並びに外部センサを含む。
【0065】
図2は、インテリジェント・システム202に結合された心不全に関係するパラメータの複数のデータソース201を有するシステム200を示す。データソース201は、例えば埋め込み型センサ203、外部センサ204、医師入力205、患者入力206、患者履歴207、医薬データベース208及び集団/臨床研究データ209のような入力装置を含むが、それらに限定されない。
【0066】
埋め込み型センサ203は、種々の実施形態において、経胸腔インピーダンスセンサ、毎分換気量センサ、呼吸速度センサ、心臓モニタ、加速度計、心内圧センサ、HRVを測定するセンサ、HRTを測定するセンサ、及び他のタイプのセンサのような、1つ以上の埋め込み型センサを含む。
【0067】
外部センサ204は、1つ以上の外部又は非埋め込み型センサを含み、その例には計量秤(質量センサ)、血圧カフ(又は圧力センサ)、外部モニタ、並びに他のタイプの携帯型センサを含む。一実施例において、外部センサ204は、インテリジェント・システム202を有するディジタル通信リンクを含むことができるか、又は個人情報端末(PDA)に手動で入力されるか、又は他の方法でインテリジェント・システム202に提供されるデータを提供できる計量秤を含む。
【0068】
医師入力205は、医師、医療関係者又は他の利用者がアクセス可能なインタフェース又はデータ入力装置を含む。医師によって入力されるデータは、例えば処方情報、医療記録、患者の症状、観察データ並びに他の情報を含む。一実施例において、医師入力は、パラメータの特別な値又は閾値を特定するために使用できる。医師入力は、一実施例において、システムの性能に関する医師の確立した規則の入力を可能にする。
【0069】
患者入力206は、患者、患者代理人又は他の利用者がアクセス可能なインタフェース又はデータ入力装置を含む。患者入力を使用して、利用者は、リアルタイム又は以前の観察に対応するデータを入力できる。一実施例において、患者入力は、患者が食物摂取、運動活動、知覚された感覚、及び症状並びに他の注目される現象のようなデータを入力することを可能にする。
【0070】
患者履歴207は、例えば電子医療記録(EMR)、臨床情報システム(CIS)データ、又は特定の患者に対応する他のデータを含む情報を受信するように構成されるインタフェースを含む。データは、家族医療履歴、患者の生命兆候、傾向及び他の履歴医療及び臨床データを含むことができる。
【0071】
医薬データベース208は、特定の薬剤を医療状態及び症状と相関させるデータを含む。種々の実施形態において、医薬データベースは、例えば、米国を含む世界の特定の地理的領域に対応する研究に基づき発生したデータを含む。医薬データベースは、異なる薬剤に関する母集団薬物動態学を示すデータも含む。例えば、含まれるデータは、薬剤を服用した後の時間に応じた薬剤の効果を相互に関連付ける。種々の実施形態において、医薬データベースは、特定の患者の薬剤治療に関するデータを含む。
【0072】
集団/臨床研究データ209は、例えば選択された薬剤間の関係を示すデータを含む。一実施例において、集団/臨床研究データは、集団及び特定の薬剤の間の関係を示す規範的、かつ統計的データを含む。一実施例において、集団/臨床研究データは、特定の集団に関して臨床研究データから導かれたデータを含む。
【0073】
インテリジェント・システム202は、推論エンジンを含み、かつ種々の実施例において、ハードウェア又はソフトウェアによって実施される。一実施例において、インテリジェント・システムは、メモリ内に記憶された専門家システムアルゴリズムを実行するプロセッサを含む。インテリジェント・システムは、知識ベース及び測定された入力信号に基づき、推論を発生させるように構成される。推論エンジンの例には、ベイジアンネットワーク、ファジー論理、決定木、神経回路網又は自己組織化マップのような原因確率的ネットワークを含む。種々の実施形態において、インテリジェント・システム202は、測定された入力に基づき作動し、かつある期間にわたる知識ベースを発生させる。
【0074】
ベイジアンネットワークは、公知の以前の確率(すなわち観察された疾患の有病率)、及び新規に得られた情報(すなわちセンサ信号)に基づき、異なる結果の可能性を特徴付けるためにベイズの定理を使用する条件付き確率に基づくネットワークを含む。ベイジアンネットワークは、因果関係知識、及び異なる事象間の明確なモデル確率的依存性及び独立性関係を使用する。
【0075】
ファジー論理は、肯定又は否定としての簡易なカテゴリー化を、他の方法では可能にしない不確実な情報及び変数を操作する機構を提供する。ファジー論理は、不確実な情報へのif−then規則の適用を記載し、かつ以前の事象又は条件に基づき結果の確率を提供する。ファジー論理は、確率的if−then規則を使用する。ファジー論理の原理によれば、前提が真であるという確率は、予測可能であり、かつそれに続く結論は、ある種の確率によって同様に起こる。
【0076】
決定木は、複数の時間及び論理入力、及びこれらの入力の組み合わせに基づく可能な結果を表す方法を提供する。決定木は、分岐に関連した確率を伴わない。
【0077】
神経回路網は、情報記憶及びプログラミング機能を有する要素によって一緒に接続される多数の非線形処理モジュールを有するブラックボックス情報処理装置である。自己組織化マップは、学習が可能な適合アルゴリズムを実行するように構成された特定タイプのシート状神経回路網配列である。神経回路網は、競合的かつ監視されない学習プロセスに基づく。他のタイプの専門家システムも、検討できる。
【0078】
1つ以上のセンサ203及び204が、感知されたHF状態210を提供するために使用される。インテリジェント・システム202は、データソース201から受信された情報の組み合わせに基づき、推論(例えば、HF状態インデックス)を発生させる。HF状態インデックスは、HF治療神経標的212への神経刺激211を制御するために使用される。データソース201から導かれた情報は、誤差及び他の不正確ソースが生じやすい。一実施例において、情報は、不確実性を定量化する確率を使用して表現される。例えば、臨床研究から導かれたデータは、特定レベルのパラメータが、その場合規定レベルの信頼性によって注目されるならば、患者が、特定の疾病を患っていることを示すことがある。追加ソースからのデータは、特定の結論の信頼性レベルを更に修正し、かつ更に特定精度を強化する。一実施例において、インテリジェント・システムは、タイムラグを有する事象に関する時間推論を組み込む。例えば、事象に関する情報は、時間スタンプと、従属事象がネットワークを通して伝播され、かつ後の事象の可能な原因として印を付される間の時間間隔とを含む。
【0079】
--- <<治療>> ---
<神経刺激治療>
神経刺激治療の例には、心不全、高血圧を処置するためのような血圧制御、睡眠呼吸障害のような呼吸困難、心律動管理、心筋梗塞及び虚血、癲癇、うつ病、疼痛、片頭痛、摂食障害及び肥満、及び運動障害のための神経刺激治療を含む。他の神経刺激治療のこの一覧は、網羅的リストであることが意図されない。
【0080】
図3A〜図3Cは、HF治療としての有効な神経刺激を示す。図3A及び図3Bに反映されるように、神経刺激は、対照群と比較して、拡張終期領域及び収縮終期領域の増加を減少させるか、又は防止し、かつ拡張終期領域及び収縮終期領域を減少させるように見える。図3Cに反映されるように、神経刺激は、対照群と比較して、高い短縮率に相当する。短縮率(FS)は、左心室機能の尺度であり、かつ以下のように:
【0081】
【数4】
【0082】
(式中、EDDは、LV拡張終期径であり、かつESDは、LV収縮終期径である)計算できる。
【0083】
<心室リモデリング>
1つの治療は、心室リモデリングを防止及び/又は処置することを含む。自律神経系の活動は、MIの結果として、又は心不全のために起こる心室リモデリングに少なくとも部分的に関与する。リモデリングが、例えばACE阻害剤及びベータ遮断薬の使用による薬理学的介入によって影響を及ぼされ得ることが証明された。薬理学的処置は、副作用の危険性が伴うが、薬剤の効果を正確に変調することも、困難である。薬剤治療に関するもう1つの問題点は、患者の服薬不履行である。本発明の実施形態は、抗リモデリング治療又はARTと呼ばれる、自律神経活動を変調する電気刺激手段を用いる。リモデリング制御治療(RCT)とも呼ばれる、心室再同期ペーシングと併せて提供される時、かかる自律神経活動の変調は、心臓リモデリングを改善又は防止するために相乗的に働く。
【0084】
虚血に続く交感神経系活動の増加は、多くの場合、エピネフリン及びノルエピネフリンへの心筋の曝露増加をもたらす。これらのカテコールアミンは、筋細胞内の細胞内経路を活性化するが、そのことは、心筋の死及び線維症を招く。副交感神経(迷走神経)の刺激は、この効果を阻害する。種々の実施形態によれば、本発明は、心筋が更にリモデリングすること、及び不整脈原性から保護するために、心不全患者において、CRTに加えて迷走心臓神経を選択的に活性化する。CRTに加えて迷走心臓神経を刺激する他の潜在的利益には、心筋梗塞に続く炎症反応を減少させること、及び除細動用の電気刺激閾値を減少させることを含む。例えば、心室頻脈が感知される時、迷走神経刺激が適用され、かつ次に除細動ショックが適用される。迷走神経刺激は、除細動ショックが少ないエネルギーで適用されることを可能にする。同様に副交感神経刺激は、不整脈を終結させ得るか、又は抗不整脈処置の有効性を他の方法で増加させ得る。
【0085】
図4A及び図4Bに示すように、心臓413は、上大静脈414、大動脈弓415及び肺動脈416を含む。CRMリード417は、本発明に従って刺激できる神経部位を通過する。図4Aは、経血管的に供給されたリードを示し、かつ図4Bは、心外膜リードを示す。電極位置の例は、符号「X」によって図中に与えられる。例えば、CRMリードは、末梢静脈を通して、かつ冠状静脈洞に血管内挿入されることが可能であり、かつ心臓ペースメーカリードのように、末梢静脈を通して、かつ三尖弁を通して、心臓の右心室に(図中に明確に示されない)血管内挿入されることが可能であり、かつ右心室から肺動脈弁を通して肺動脈に続く。冠状静脈洞及び肺動脈は、血管系の内又は近接した神経を刺激するために、リードが血管内挿入できる心臓に近接した血管系の例として提供される。従って、本発明の種々の形態によれば、神経は、内部に血管内挿入された少なくとも1つの電極によって心臓に近接して位置する血管系内又はその周囲で刺激される。
【0086】
図5A及び図5Bは、それぞれ心臓の右側及び左側を示し、かつ幾つかの神経刺激治療のための神経標的を提供する心臓脂肪体を更に示す。図5Aは、右心房518、右心室519、洞房結節520、上大静脈514、下大静脈521、大動脈522、右肺静脈523及び右肺動脈524を示す。図5Aは、上大静脈及び大動脈の間に心臓脂肪体525も示す。心臓脂肪体525内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体にねじ込まれたか、又は他の方法で設置された電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば右肺動脈又は上大静脈のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリードを使用して刺激される。図5Bは、左心房526、左心室527、右心房518、右心室519、上大静脈514、下大静脈521、大動脈522、右肺静脈523、左肺静脈528、右肺動脈524及び冠状静脈洞529を示す。図5Bは、右心静脈に近接して位置する心臓脂肪体530と、下大静脈及び左心房に近接して位置する心臓脂肪体531も示す。脂肪体530内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体530にねじ込まれた電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば右肺動脈524又は右肺静脈523のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリードを使用して刺激される。脂肪体531内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体531にねじ込まれた電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば下大静脈521又は冠状静脈洞のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリード、又は左心房526内のリードを使用して刺激される。
【0087】
種々のリードの実施形態は、所定の血管壁に当接するように寸法が決定されたメッシュ表面を有する拡張型ステント状電極、コイル状電極、固定ネジタイプの電極等を含む、多数の設計を実施する。種々の実施形態は、電極を血管内部、血管壁、又は血管内部の少なくとも1つの電極及び血管壁への少なくとも1つの電極の組み合わせで設置する。神経刺激電極は、CRTに使用される同じリード、又はCRTリードに加えてもう1つのリード内で統合できる。
【0088】
本明細書で経血管リードとも呼ばれる、血管外部の標的を経血管的に刺激するように構成された、血管内供給されるリードは、他の神経部位を刺激するために使用できる。例えば、ある実施形態は、迷走神経上の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために、右奇静脈に経血管刺激リードを供給し、かつある実施形態は、迷走神経上の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために、内頸静脈に経血管刺激リードを供給する。種々の実施形態は、CRTの一部として、心室ペーシングのように、神経刺激を経血管的に適用し、かつ心筋を電気刺激するためにリード経路に沿って血液内供給される少なくとも1つのリードを使用する。
【0089】
他の経血管位置が、図5A及び図5Bに対して言及された。神経刺激電極の血管内位置に応じて、右迷走神経分岐、左迷走神経分岐、又は右及び左迷走神経分岐の組み合わせが、刺激されることが可能である。左及び右迷走神経分岐は、心臓の異なる領域に神経を分布し、かつそれ故に刺激される時、異なる結果を提供する。現在の知識によれば、右迷走神経は、右心房及び右心室を含む、心臓の右側に神経を分布するように見え、かつ左迷走神経は、左心房及び左心室を含む、心臓の左側に神経を分布するように見える。右迷走神経の刺激は、洞結節が心臓の右側にあるので、より大きな変時効果を有する。従って、種々の実施形態は、心臓の右及び/又は左側で収縮性、興奮性、及び炎症反応を選択的に制御するために右迷走神経及び/又は左迷走神経を選択的に刺激する。静脈系は、大部分が対称的であるので、リードは、右又は左迷走神経を経血管刺激するために、適切な血管に供給できる。例えば、右内頸静脈内のリードは、右迷走神経を刺激するために使用でき、かつ左内頸静脈内のリードは、左迷走神経を刺激するために使用できる。
【0090】
刺激電極は、末梢神経刺激への経血管アプローチが使用される時に、神経と直接神経接触しない。従って、直接接触電極と一般に関連する、神経炎症及び障害に関連する問題は、減少する。
【0091】
<高血圧>
上記のように、高血圧は、心不全の一因となり得る。1つの神経刺激治療は、高血圧を減少させるために十分な持続期間に圧反射を刺激することによって高血圧を処置することを含む。圧反射は、圧受容器又は求心性神経幹の刺激によって引き起こすことができる反射である。圧反射神経標的は、内部からの圧力増加に起因する壁の伸張に感受性があり、かつその圧力を減少させる傾向がある中枢反射機構の受容器の役目を果たす、心耳の壁内、心臓脂肪体、大静脈、大動脈弓及び頸動脈洞の知覚神経終末のような、いかなる圧力変化センサも含む。圧反射神経標的として役立つ求心性神経幹の例には、迷走、大動脈及び頸動脈神経を含む。圧受容器の刺激は、交感神経活動を阻害し(副交感神経系を刺激し)、かつ末梢血管抵抗及び心臓収縮性を低下させることによって全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、当然に内圧及び動脈壁の伸張によって刺激される。本発明の幾つかの形態は、神経系の無差別な刺激の望ましくない効果を減少させながら、所望の応答(例えば、高血圧の減少)を刺激しようとして、求心性神経幹を刺激するよりもむしろ、動脈壁内の特定の神経終末を局所的に刺激する。例えば、幾つかの実施形態は、肺動脈内で圧受容器部位を刺激する。本発明の幾つかの実施形態は、圧受容器部位又は大動脈、心腔、心臓脂肪体内の神経終末を刺激することを含み、かつ本発明の幾つかの実施形態は、迷走、頸動脈及び大動脈神経のような、求心性神経幹を刺激することを含む。幾つかの実施形態は、カフ電極を使用して求心性神経幹を刺激し、かつ幾つかの実施形態は、電気刺激が、求心性神経幹を刺激するために血管壁を通過するように、神経に近接して血管内に位置決めされた血管内リードを使用して求心性神経幹を刺激する。
【0092】
<心筋刺激治療>
種々の実施形態は、心筋刺激治療のフィードバックとしてHF状態を使用する。例えば、幾つかの実施形態は、HF状態インデックスに応答してCRTを提供又は調整する。種々の実施形態は、神経刺激治療と、心筋刺激を同様に含むか、又は統合する。これらの心筋治療の幾つかは、後述する。
【0093】
<徐脈ペーシング/CRTペーシング>
ペースメーカは、通常心拍数が遅すぎる、徐脈を処置するために、時限ペーシングパルスによって心臓をペーシングする装置である。房室伝導欠損(すなわちAVブロック)及び洞不全症候群が、永続的なペーシングが指示できる徐脈の最も一般的な原因に相当する。適切に機能するならば、ペースメーカは、最小心拍数を強制することによって代謝要求を満たすために適切な律動で、心臓がそれ自身をペーシングできないことを補う。
【0094】
血液の効率的なポンピングを促進するために、心腔が心周期中に収縮する方法及び程度に影響を与える埋め込み型装置もまた開発された。心臓は、心筋にわたる急速な興奮の伝導(すなわち脱分極)を可能にする、心房及び心室両方での特別な伝導路によって通常提供される結果である、心腔が強調して収縮する時に、効果的にポンピングする。これらの経路は、両心房及び両心室の協調した収縮をもたらすために、洞房結節から心房心筋に、房室結節に、かつそれ故に心室心筋に興奮性インパルスを伝導する。このことは、各心腔の筋繊維の収縮を同期させ、かつ各心房又は心室の収縮を、対側心房又は心室と同期させる。正常に機能する特殊な伝導路によって与えられる同期化がないならば、心臓のポンピング効率は、極めて低下する。これら伝導路及び他の心室間又は心室内の伝導欠損の病変は、心機能の異常性により、心拍出量が末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回る臨床的症候群を指す、心不全の原因因子であり得る。これらの問題を扱うために、心臓再同期治療(CRT)と呼ばれる心房及び/又は心室収縮の協調を改善しようとして、1つ以上の心腔に適切な時限電気刺激を提供する埋め込み型心臓装置が、開発された。心室再同期は、直接的に変力性でないが、ポンピング効率が改善され、かつ心拍出量が増加した、心室のより協調した収縮を、再同期がもたらし得るので、心不全を処置する際に有用である。現在、CRTの共通の形状は、同時に、又は特定の両心室オフセット間隔によって分離されて、かつ心房ペースの伝達又は内因性心房収縮の検出に対して、規定の房室遅延間隔後に、両心室に刺激パルスを適用する。
【0095】
<抗頻脈治療>
QRS群と同期して心臓に送られる電気ショックである電気除細動(カーディオバージョン)、及びQRS群との同期化なしに送られる電気ショックである除細動は、大部分の頻脈性不整脈を終結させるために使用できる。電気ショックは、同時に心筋を脱分極化し、かつそれを不応性にすることによって頻脈性不整脈を終結させる。埋め込み型電気除細動器(ICD)として知られる、あるクラスのCRM装置は、装置が頻脈性不整脈を検出する時に、心臓にショックパルスを送ることによってこの種類の治療を提供する。頻脈のためのもう1つのタイプの電気治療は、抗頻脈ペーシング(ATP)である。心室ATPにおいて、心室は、頻脈を引き起こすリエントリー回路を遮断しようとして、1つ以上のペーシングパルスによって競合的にペーシングされる。現代のICDは、概してATP能力を有し、かつ頻脈性不整脈が検出される時に、ATP治療又はショックパルスを送る。
【0096】
<心臓リモデリングの治療>
CRTは、MI後及び心不全患者において起こり得る、有害な心室リモデリングを減少させる際に有益であり得る。推定上、このことは、CRTが適用される時、心臓ポンピングサイクル中に心室が経験する壁応力の分布変化の結果として起こる。心筋繊維が収縮する前に伸張される程度は、前負荷と呼ばれ、かつ筋繊維の最大張力及び短縮速度が、前負荷の増加によって増加する。心筋領域が、他の領域に対して遅く収縮すると、これらの反対領域の収縮は、遅く収縮する領域を伸張し、かつ前負荷を増加させる。心筋繊維が収縮する時に、心筋繊維に対する張力又は応力の程度は、後負荷と呼ばれる。心室内の圧力は、血液が大動脈及び肺動脈に送り出される時に、拡張期から収縮期値へ急速に上昇するので、興奮刺激パルスによって最初に収縮する心室の一部が、後に収縮する心室の一部よりも低い後負荷に対してそれを行う。従って、他の領域よりも後に収縮する心筋領域は、増加した前負荷及び後負荷の両方を受ける。この状況は、MIによる心室機能障害及び心不全と関連した心室伝導遅延によって頻繁に作り出される。遅く活性化する心筋領域への壁応力の増加は、ほぼ確実に心室リモデリングの誘因である。より協調した収縮を引き起こす方法で心室内の1つ以上の部位をペーシングすることにより、CRTは、さもなければ収縮期中に後で活性化され、かつ壁応力増加を経験する心筋領域の早期興奮を提供する。他の領域に対してリモデリングされた領域の早期興奮は、機械的応力から領域を取り除き、かつ起こるリモデリングの改善又は防止を可能にする。
【0097】
--- <<装置の実施形態>> ---
図6は、感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。示した装置の実施形態において、多数のHF関係パラメータ632が、測定できる。例には、HRV633、HRT634、心音635、肺動脈圧636及び/又は他の血圧、経胸腔インピーダンス637又は他の感知パラメータ638を含む。これらの測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ632に応じて感知HF状態インデックス640を発生させるインデックス発生器639によって、又は少なくとも2つの測定パラメータ632を使用して他の方法で受信される。コンパレータ641は、インデックス640をインデックス用の標的642と比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。比較の結果は、HF治療神経標的644に適用される、神経刺激643を制御するために使用される。種々の実施形態において、神経刺激は、慢性HF治療の副交感神経応答を引き出すために、副交感神経活動を刺激でき、かつ/又は交感神経活動を阻害できる。種々の実施形態において、神経刺激は、患者が臨床環境に赴けるまで、心拍出量を維持するために、事象に応答して短期治療として望ましいであろうような、交感神経応答を引き出すために、交感神経活動を刺激でき、かつ/又は副交感神経活動を阻害できる。
【0098】
図7は、慢性又は長期感知HF状態インデックス及び急性又は短期感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつインデックスを使用してHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ732に応じて長期感知HF状態インデックス740Aを発生させる、長期インデックス発生器739Aによって、又は少なくとも2つの測定パラメータ732を使用して他の方法で受信される。コンパレータ741Aは、インデックス740Aをインデックス用の標的742Aと比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。種々の実施形態において、インデックス値が高い、又は低い傾向を取るか、コンパレータが決定できるように、標的は、インデックス用の多数の以前の値の平均又は傾向に基づく。比較の結果は、HF治療神経標的744に適用される、神経刺激743の慢性フィードバックとして使用される。例えば、長期HF状態インデックスは、HF治療の一部として副交感神経応答を増加又は減少させるために、神経刺激の強度、期間又は位置を調整するために使用できる。測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ732に応じて短期感知HF状態インデックス740Bを発生させる、短期インデックス発生器739Bによって、又は少なくとも2つの測定パラメータ732を使用して他の方法で受信される。コンパレータ741Bは、インデックス740Bをインデックス用の標的742Bと比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。種々の実施形態において、インデックス値が高い、又は低い傾向を取るか、コンパレータが決定できるように、標的は、インデックス用の多数の以前の値の平均又は傾向に基づく。比較の結果は、HF治療神経標的744に適用される、神経刺激743の短期フィードバックとして使用される。例えば、長期HF状態インデックスは、代償不全事象による急性HF治療の一部として交感神経応答を増加又は減少させるために、神経刺激の強度、期間又は位置を調整するために使用できる。
【0099】
図8は、本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。例えば、図6の装置の実施形態は、この方法を実行できる。845で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、HF状態インデックスに変換される。846で、HF治療用の神経刺激は、HF状態インデックス及びインデックス用の標的を使用して制御される。
【0100】
図9は、本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。例えば、図7の装置の実施形態は、この方法を実行できる。図9のボックス945及び946は、図8の845及び846に一般的に対応する。947で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、短期HF状態を示すインデックスに変換され、かつ948で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、長期HF状態を示すインデックスに変換される。949で、短期HF治療用の神経刺激は、短期HF状態インデックス及び短期インデックス用の標的を使用して制御され、かつ950で、長期HF治療用の神経刺激は、長期HF状態インデックス及び長期インデックス用の標的を使用して制御される。短期インデックスは、1分又は1時間以内に測定されたパラメータのような、最近測定されたHF関係パラメータに基づくことができる。長期インデックスは、例えば数時間、数日、数週、及び数ヶ月のような、長い期間にわたって測定されたパラメータに基づくことができる。 図10は、本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)1051を示す。示したIMDは、心不全治療を提供するために、所定神経標的へ送るための神経刺激信号を提供する。示した装置は、コントローラ回路1052と、メモリ1053とを含む。コントローラ回路は、ハードウェア、ソフトウェア、並びにハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを使用して実装できる。例えば、種々の実施形態によれば、コントローラ回路は、神経刺激治療と関連する機能を実行するための、メモリに埋設された命令を実行するために、プロセッサを含む。例えば、示した装置は、トランシーバ1054と、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と通信するために使用する関連した回路とを更に含む。種々の実施形態は、無線通信能力を有する。例えば、幾つかのトランシーバの実施形態には、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と無線通信するために使用する遠隔測定コイルを含む。
【0101】
示した装置は、神経刺激回路1055を更に含む。装置の種々の実施形態は、センサ回路1056も含む。幾つかの実施形態によれば、1つ以上のリードが、センサ回路及び神経刺激回路に接続できる。幾つかの実施形態は、センサ及びセンサ回路の間に無線接続を使用し、かつ幾つかの実施形態は、刺激回路及び電極の間に無線接続を使用する。種々の実施形態によれば、神経刺激回路は、例えば所定の位置に位置決めされた1つ以上の刺激電極1057を通して、電気刺激パルスを所望の神経標的に適用するために使用される。幾つかの実施形態は、超音波、光又は磁気エネルギーのような他のタイプのエネルギーを提供するために、トランスデューサを使用する。種々の実施形態において、センサ回路は、生理的応答を検出するために使用される。生理的応答の例には、心拍数及び毎分換気量、血圧のような心臓活動、及び1回換気量及び毎分換気量のような呼吸、並びに感知HRV及びHRTデータを含む。コントローラ回路は、神経刺激/阻害の強度を適切に調整するために、メモリ内に記憶された感知生理的応答の標的範囲(又は複数の範囲)を、感知生理的応答に比較できる。
【0102】
種々の実施形態によれば、刺激回路1055は、以下のパルス特性:刺激パルスの振幅1058、刺激パルスの周波数1059、パルスのバースト周波数1060、パルスの波形態1061及びパルス幅1062のいずれか、又はそれらの2つ以上のいかなる組み合わせも設定又は調整するためのモジュールを含む。示したバースト周波数1060パルス特性は、バースト周波数パルス特性の一部として調整できるか、又は別個に調整できるバースト期間1063と、デューティ・サイクル1064とを含む。例えば、バースト周波数は、毎分バースト数を参照できる。これらのバーストの各々は、バースト期間(刺激のバーストが提供される時間量)と、デューティ・サイクル(刺激が提供された時間の、時間全体に対する比)を有する。従って、限定でなく例として、6つのバースト(バースト長さ(パルス幅)がそれぞれ5秒であり、バースト間の期間が5秒である、6つのバースト)を、1分の刺激時間(バースト期間)中に送ることができる。この実施例において、バースト周波数は、毎分6バーストであり、バースト期間は、60秒であり、かつデューティ・サイクルは、50%である((6バースト×5秒/バースト)/60秒)。その上、1つ以上のバーストの期間は、いかなる定常バースト周波数も参照せずに、調整できる。例えば、所定バースト期間の単一の刺激バースト又は所定パルス幅のバーストパターン、及びバーストタイミングは、感知信号に応答して提供できる。更に、デューティ・サイクルは、バーストを定常バースト周波数で送ら必要なしに、バースト数を調整することによって、かつ/又は1つ以上のバースト期間を調整することによって調整できる。波形態の例には、方形波、三角波、正弦波、及び自然発生的な圧反射刺激を示すような、白色雑音を模倣するための所望の調和成分を有する波を含む。その上、種々のコントローラの実施形態は、刺激期間を制御することが可能である。センサ回路は、HF状態インデックスを作り出すように、HF関係パラメータを検出するために使用される。コントローラは、インデックスをメモリ内に記憶された標的範囲と比較し、かつ応答を標的範囲内に保持しようとして、比較に基づき神経刺激を制御する。標的範囲は、プログラム可能であり、かつ/又は過去の測定から導かれる。
【0103】
図11は、本発明の種々の実施形態に従った、神経刺激(NS)部品1166及び心律動管理(CRM)部品1167を有する埋め込み型医療装置(IMD)1165を示す。示した装置は、コントローラ1168と、メモリ1169とを含む。種々の実施形態によれば、コントローラは、神経刺激及びCRM機能を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、並びにハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを含む。例えば、本開示において論じられたプログラムされた治療応用は、メモリにおいて具体化され、かつプロセッサによって実行されるコンピュータ読み取り可能な命令として記憶されることができる。種々の実施形態によれば、コントローラは、神経刺激及びCRM機能を実行するための、メモリに埋設された命令を実行するために、プロセッサを含む。神経刺激治療は、心不全治療を含む。種々の実施形態は、抗高血圧(AHT)治療、及び抗リモデリング治療(ART)を含む。CRM機能の例には、徐脈ペーシング、ATP、除細動及び電気除細動、並びにCRTのような抗頻脈治療を含む。コントローラは、頻脈を検出するための命令を同様に実行する。示した装置は、トランシーバ1170と、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と通信するために使用する関連した回路とを更に含む。種々の実施形態は、遠隔測定コイルを含む。
【0104】
CRM治療セクション1167は、1つ以上の電極を使用して、心臓を刺激し、かつ/又は心臓信号を感知するために、コントローラの制御下で部品を含む。示したCRM治療セクションは、心臓を刺激するために電極を通して電気信号を提供するために使用するパルス発生器1171を含み、かつ感知心臓信号を検出及び処理するための感知回路1172を更に含む。インタフェース1173は、コントローラ1168及びパルス発生器1171及び感知回路1172の間で通信するために使用するために一般的に示される。3つの電極は、CRM治療を提供するために使用する例として示される。しかしながら、本発明は、特定数の電極部位に限定されない。各電極は、それ自身のパルス発生器と、感知回路とを含むことができる。しかしながら、本発明は、そのように限定されない。パルス発生及び感知機能は、複数の電極と機能するために多重化できる。
【0105】
NS治療セクション1166は、神経刺激標的を刺激し、かつ/又は血圧及び呼吸のような、神経活動若しくは神経活動の代用物と関連するパラメータを感知するために、コントローラの制御下で、部品を含む。3つのインタフェース1174が、神経刺激を提供するための使用のために示される。しかしながら、本発明は、特定数のインタフェース、又はいかなる特定の刺激若しくは感知機能にも限定されない。パルス発生器1175は、トランスデューサ、又は神経刺激標的を刺激ために使用するトランスデューサに、電気パルスを提供するために使用される。種々の実施形態によれば、パルス発生器は、刺激パルスの振幅、刺激パルスの周波数、パルスのバースト周波数、及び方形波、三角波、正弦波、及び白色雑音又は他の信号を模倣するための所望の調和成分を有する波のようなパルスの形態を設定し、かつ幾つかの実施形態では変更する回路を含む。感知回路1176は、神経活動、血圧、呼吸等のセンサのような、センサからの信号を検出及び処理するために使用される。インタフェース1174は、一般的にコントローラ1168及びパルス発生器1175及び感知回路1176の間で通信するための使用のために示される。各インタフェースは、例えば別個のリードを制御するために使用できる。NS治療セクションの種々の実施形態は、神経標的を刺激するパルス発生器のみを含む。
【0106】
図12は、種々の実施形態に従った、マイクロプロセッサに基づく埋め込み型装置の実施形態の系統図を示す。装置のコントローラは、双方向データバスを介してメモリ1278と通信するマイクロプロセッサ1277である。コントローラは、状態機械タイプの設計を使用する、他のタイプの論理回路(例えば、個別部品又はプログラマブルロジックアレイ)によって実装できるが、マイクロプロセッサに基づくシステムが、好ましい。本明細書で使用されるように、用語「回路」は、個別論理回路か、マイクロプロセッサのプログラミングを指すと解釈されるべきである。図中に、リング電極1279A−C及びチップ電極1280A−Cを有する双極リードと、感知増幅器1281A−Cと、パルス発生器1282A−Cと、チャネルインタフェース1283A−Cとを含む、「A」から「C」と指定される感知及びペーシングチャネルの3つの例が、示される。各チャネルは、このようにして電極に接続されるパルス発生器で構成されるペーシングチャネルと、電極に接続される感知増幅器で構成される感知チャネルとを含む。チャネルインタフェース1283A−Cは、マイクロプロセッサ1277と双方向で通信し、かつ各インタフェースは、ペーシングパルスを出力し、ペーシングパルスの振幅を変え、かつ感知増幅器の利得及び閾値を調整するために、マイクロプロセッサによって書き込めるレジスタ及び感知増幅器からの感知信号入力をディジタル化するアナログ−ディジタル変換器を含むことがある。ペースメーカの感知回路は、特定のチャネルによって発生した電気記録図信号(すなわち心臓電気活性を表す電極によって感知された電圧)が、規定の検出閾値を超える時、心腔感知、心房感知又は心室感知を検出する。特定のペーシングモードで使用されるペーシングアルゴリズムは、ペーシングを引き起こすか、又は阻害するためにかかる感知を用いる。内因性心房及び/又は心室拍数は、それぞれ心房及び心室感知の間の時間間隔を測定することによって測定でき、かつ心房及び心室頻脈性不整脈を検出するために使用できる。
【0107】
各双極リードの電極は、リード内の導体を介して、マイクロプロセッサによって制御されるスイッチング回路網1284に接続される。スイッチング回路網は、内因性心臓活動を検出するために感知増幅器の入力に、かつペーシングパルスを送るためにパルス発生器の出力に、電極を切り替えるために使用される。スイッチング回路網は、装置が、リードのリング及びチップ電極の両方を使用する双極モードで、又はリードの電極の一方のみを使用する単極モードで感知又はペーシングすることも可能にし、装置ハウジング(缶)1285、又は他のリード上の他の電極が、接地電極の役目を果たす。ショックパルス発生器1286は、ショックを与えられる頻脈性不整脈を検出すると、心房又は心室に一対のショック電極1287及び1288を介して除細動ショックを送るコントローラにもインタフェースで接続される。
【0108】
チャネルD及びEと識別される、神経刺激チャネルは、副交感神経刺激及び/又は交感神経阻害を提供するために装置に組み込まれ、そこで一方のチャネルは、第1電極1289Dと、第2電極1290Dと、パルス発生器1291Dと、チャネルインタフェース1292Dとを有する双極リードを含み、かつ他方のチャネルは、第1電極1289Eと、第2電極1290Eと、パルス発生器1291Eと、チャネルインタフェース1292Eとを有する双極リードを含む。他の実施形態は、単極リードを使用でき、その場合に神経刺激パルスが、缶又は他の電極に関係付けられる。各チャネルのパルス発生器は、振幅、周波数、デューティ・サイクル等に関してコントローラによって異なっても良い、一連の神経刺激パルスを出力する。この実施形態において、神経刺激チャネルの各々は、適切な神経標的の近くに血管内配置できるリードを使用する。他のタイプのリード及び/又は電極も、用いることができる。神経カフ電極は、神経刺激を提供するために、血管内配置電極の代わりに使用できる。幾つかの実施形態において、神経刺激電極のリードは、無線リンクによって置き換えられる。
【0109】
図は、外部装置と通信するために使用できる、マイクロプロセッサに接続された遠隔測定インタフェース1293を示す。示したマイクロプロセッサ1277は、神経刺激治療ルーチン及び心筋刺激ルーチンを実行することが可能である。NS治療ルーチンの例には、心不全治療、抗高血圧治療(AHT)、及び抗リモデリング治療(ART)を含む。心筋治療ルーチンの例には、徐脈ペーシング治療、電気除細動又は除細動治療のような抗頻脈ショック治療、抗頻脈ペーシング治療(ATP)、及び心臓再同期治療(CRT)を含む。
【0110】
--- <<システムの実施形態>> ---
図13は、本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)1394と、外部システム又は装置1395とを含むシステムを示す。IMDの種々の実施形態は、NS及びCRM機能の組み合わせを含む。IMDは、生物剤と、医薬品も提供できる。外部システム及びIMDは、データ及び命令を無線通信することが可能である。種々の実施形態において、例えば外部システム及びIMDは、データ及び命令を無線通信するために、遠隔測定コイルを使用する。従って、プログラマが、IMDによって提供されるプログラムされた治療を調整するために使用でき、かつIMDは、例えば、無線遠隔測定を使用してプログラマに、(電池及びリード抵抗のような)装置データと、(感知及び刺激データのような)治療データとを報告できる。種々の実施形態によれば、IMDは、HF治療を提供するために神経標的を刺激/阻害する。
【0111】
外部システムは、医師若しくは他の介護者又は患者のような利用者が、IMDの操作を制御し、かつIMDによって獲得された情報を得ることを可能にする。一実施形態において、外部システムは、IMDと遠隔測定リンクを介して双方向に通信するプログラマを含む。もう1つの実施形態において、外部システムは、電気通信網を通して遠隔装置と通信する外部装置を含む患者管理システムである。外部装置は、IMDの近傍にあり、かつIMDと遠隔測定リンクを介して双方向に通信する。遠隔装置は、利用者が離れた位置から患者を監視し、かつ処置することを可能にする。患者監視システムは、更に後述する。
【0112】
遠隔測定リンクは、埋め込み型医療装置から外部システムへのデータ伝送を提供する。このことは、例えばIMDによって獲得されたリアルタイム生理的データを伝送することと、IMDによって獲得され、かつ記憶された生理的データを抽出することと、埋め込み型医療装置に記憶された治療履歴データを抽出することと、IMDの作動状態(例えば、電池状態及びリードインピーダンス)を示すデータを抽出することとを含む。遠隔測定リンクは、外部システムからIMDへのデータ伝送も提供する。このことは、例えば生理的データを獲得するためにIMDをプログラミングすることと、(装置作動状態のような)少なくとも1つの自己診断テストを実行するためにIMDをプログラミングすることと、少なくとも1つの治療を提供するために、IMDをプログラミングすることとを含む。
【0113】
図14は、本発明の種々の実施形態に従った、外部装置1495と、埋め込み型神経刺激(NS)装置1496と、埋め込み型心律動管理(CRM)装置1497とを含むシステムを示す。種々の形態は、NS装置及びCRM装置又は他の心臓刺激器の間で通信する方法を含む。種々の実施形態において、この通信は、他の装置から受信したデータに基づき、装置1496又は1497の一方がより適切な治療(すなわちより適切なNS治療又はCRM治療)を提供することを可能にする。幾つかの実施形態は、オンデマンド通信を提供する。種々の実施形態において、この通信は、装置の各々が、他の装置から受信したデータに基づき、より適切な治療(すなわち、より適切なNS治療及びCRM治療)を提供することを可能にする。示したNS装置及びCRM装置は、互いに無線通信することが可能であり、かつ外部システムは、NS及びCRM装置の少なくとも一方と無線通信することが可能である。例えば、種々の実施形態は、互いにデータ及び命令を無線通信するために、遠隔測定コイルを使用する。他の実施形態において、データ及び/又はエネルギーの通信は、超音波手段による。NS及びCRM装置の間に無線通信を提供するよりもむしろ、種々の実施形態は、NS装置及びCRM装置の間で通信するために使用する静脈内供給されるリードのような、通信ケーブル又はワイヤを提供する。幾つかの実施形態において、外部システムは、NS及びCRM装置の間の通信ブリッジの役目を果たす。
【0114】
図15は、限定でなく、例として、種々の実施形態に従った、リード1502が心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつリード1503が迷走神経内の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために位置決めされる、患者の胸部に皮下又は筋肉下に設置されたIMD1501を示す。種々の実施形態によれば、神経刺激リード1503は、神経標的に皮下で貫通され、かつ神経標的を刺激するために神経カフ電極を有することができる。幾つかのリードの実施形態は、神経標的に近接して血管に血管内供給され、かつ神経標的を経血管刺激するために血管内でトランスデューサを使用する。例えば、幾つかの実施形態は、内頸静脈内に位置決めされる電極を使用して迷走神経を標的にする。
【0115】
図16は、種々の実施形態に従った、リード1602が心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつサテライトトランスデューサ1603が神経標的を刺激/阻害するために位置決めされる、IMD1601を示す。サテライトトランスデューサは、無線リンクを介して、衛星に対する惑星の役目を果たす、IMDに接続される。刺激及び通信は、無線リンクを通して実行できる。無線リンクの例には、RFリンク及び超音波リンクを含む。示さないが、幾つかの実施形態は、無線リンクを使用して心筋刺激を実行する。サテライトトランスデューサの例には、皮下電極、神経カフ電極及び血管内電極を含む。
【0116】
図17は、外部システム1704の実施形態を示すブロック図である。外部システムは、幾つかの実施形態においてプログラマを含む。示した実施形態において、外部システムは、患者管理システムを含む。示すように、外部システム1704は、外部装置1705と、電気通信網1706と、遠隔装置1707とを含む患者管理システムである。外部装置1705は、IMDの近傍に設置され、かつIMDと通信するために外部遠隔測定システム1708を含む。遠隔装置1707は、1つ以上の遠隔位置にあり、かつ通信網1706を通して外部装置1705と通信し、このようにして医師又は他の介護者が離れた位置から患者を監視及び処置することを可能にし、かつ/又は1つ以上の離れた位置からの種々の処置情報源へのアクセスを可能にする。示した遠隔装置1707は、ユーザインタフェース1709を含む。
【0117】
当業者は、本明細書に示され、かつ記載されたモジュール及び他の回路が、ソフトウェア、ハードウェア、並びにソフトウェア及びハードウェアの組み合わせを使用して実施できることを理解するであろう。このようにして、用語モジュールは、ソフトウェアの実装、ハードウェアの実装、並びにソフトウェア及びハードウェアの実装を包含することが意図される。
【0118】
本開示に示した方法は、本発明の範囲内には他の方法を含まないと言うことを意図するものではない。当業者は、本開示を読んで理解すれば、本発明の範囲内に含まれ得る他の方法を理解するであろう。上記実施形態、及び示した実施形態の部分は、必ずしも相互に排他的でない。これらの実施形態、又はその部分は、組み合わせることができる。種々の実施形態において、以上で提供された方法は、プロセッサによって行われる時に、プロセッサにそれぞれの方法を実行させる、命令シーケンスを表す搬送波又は伝搬信号において具体化されるコンピュータデータ信号として実施される。種々の実施形態において、以上に提供された方法は、プロセッサがそれぞれの方法を実行することを命令できるコンピュータアクセス可能な媒体に含まれる1組の命令として実施される。種々の実施形態において、媒体は、磁気媒体、電子媒体又は光学媒体である。
【0119】
具体的な実施形態が、本明細書に示され、かつ記載されたが、同じ目的を達成するために求められるいかなる構成も、示した具体的な実施形態の代わりに用い得ることが、当業者には認められるであろう。本願は、本発明の適応例及び変形例をカバーすることが意図される。上記の記述は、例示的であり、かつ限定的でないことを意図するものであることを理解すべきである。上記実施形態の組み合わせ、並びに他の実施形態における上記実施形態の一部の組み合わせは、上記記述を検討すれば、当業者にとって明らかであろう。本発明の範囲は、添付の請求項を、かかる請求項が権利を与えられる同等物の全範囲と共に参照して、決定されるべきである。
【符号の説明】
【0120】
203 埋め込み型センサ
204 外部センサ
1052 コントローラ回路
1056 センサ
1168 コントローラ
【技術分野】
【0001】
優先権主張
優先権の利益が、2006年5月8日に出願された米国特許出願第11/382128号に対して本明細書により請求され、その出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、一般的に医療装置に係り、特に、神経刺激を使用する心不全を管理するシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心不全は、心機能が、末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回り得る、正常以下の心拍出量を引き起こす臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈及び肺の鬱血のために、鬱血性心不全(CHF)として現れることがある。心不全は、虚血性心疾患のような種々の病因に起因し得る。心不全は、概して呼吸困難(dyspnea) (呼吸の困難性(difficulty breathing))、静脈充血及び浮腫を特徴とし、かつ各代償不全事象は、心機能の長期の低下を更に引き起こし得る。
【0003】
心不全患者は、自律平衡の低下を有し、それは左心室機能障害及び死亡率の増加と関連する。交感及び副交感神経系の変調は、心不全及びMI(心筋梗塞)後患者におけるリモデリング及び死亡を防止することに潜在的な臨床的有益性を有する。
【0004】
臨床医は、ペースメーカ、除細動器(defibrillators)、心臓再同期装置等のような幾つかの公知の埋め込み型医療装置に、測定されたパラメータ閾値を設定する。各パラメータの閾値は、患者によって異なることがある。適切な装置治療は、閾値を超える時に引き起こされる。処置は、少なくとも幾つかの閾値を超える測定を含む非事象によって開始できる。これらの非事象は、偽陽性とも呼ばれる。偽陽性のために提供される治療は、電池残量を消耗させ、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性を高めることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心不全状態を正確に決定し、かつ正確に決定された心不全状態を使用して心不全治療を提供するために、改善された方法及びシステムが、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明の幾つかの態様は、システムに関する。種々のシステムの実施形態は、心不全治療のための刺激信号を送るように構成された刺激器と、心不全状態の第1測定及び心不全状態の第2測定を少なくとも提供するように構成された多数のセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、刺激器と、多数のセンサとに接続される。コントローラは、心不全状態インデックス(指標)を生成するために第1及び第2測定を使用し、かつインデックスを使用して信号を変調するために刺激器を制御するように構成される。
【0007】
本発明の幾つかの態様は、方法に関する。方法の種々の実施形態によれば、心不全状態の第1測定及び心不全状態の第2測定が、得られる。心不全インデックスは、第1測定及び第2測定を使用して作り出される。心不全治療は、心不全状態の標識(インジケータ)として心不全インデックスを使用して調整される。
【0008】
この要約は、本出願の教示内容の幾つかの概観であり、かつ本発明の唯一の又は網羅的な処置であることは意図されない。本発明に関する更なる詳細は、詳細な説明及び添付の請求項に見出される。他の形態は、以下の詳細な説明を読み、かつ理解し、かつその一部をなす図面を見れば、当業者に明らかになるであろうが、それらの各々は、限定的な意味で解釈されるべきでない。本発明の範囲は、添付の請求項及びそれらの同等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】患者の生理的パラメータに関し、ある期間にわたって行われた測定に基づく確率密度関数pi(x|H0)の例を示す。
【図1B】非事象確率密度関数p(xi|H0)の一例を示す。
【図1C】関数pj(x|H0)が、種々の実施形態に従ってHF治療をいつ提供するか決定するために使用できるような、生理的パラメータに関する測定の負の尾部の分布によって表されるもう1つの例を示す。
【図2】種々の実施形態に従ってHF治療をいつ提供するか決定するために使用できるような、インテリジェント・システムに結合された心不全に関係するパラメータの複数のデータソースを有するシステムを示す。
【図3A−3C】HF治療としての神経刺激の有効性を示す。
【図4A】経血管的に供給されたリードを示す。
【図4B】幾つか治療で使用できる、心臓用の心外膜リードを示す。
【図5A−5B】それぞれ心臓の右側及び左側を示し、かつ幾つかの神経刺激治療のための神経標的を提供する心臓脂肪体を更に示す。
【図6】感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。
【図7】慢性又は長期感知HF状態インデックス及び急性又は短期感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつインデックスを使用してHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。
【図8】本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。
【図9】本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。
【図10】本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)を示す。
【図11】本発明の種々の実施形態に従った、神経刺激(NS)部品及び心律動管理(CRM)部品を有する埋め込み型医療装置(IMD)を示す。
【図12】種々の実施形態に従った、マイクロプロセッサに基づく埋め込み型装置の実施形態の系統図を示す。
【図13】本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)と、外部システム又は装置とを含むシステムを示す。
【図14】本発明の種々の実施形態に従った、外部装置と、埋め込み型神経刺激(NS)装置と、埋め込み型心律動管理(CRM)装置とを含むシステムを示す。
【図15】限定でなく、例として、種々の実施形態に従った、リードが心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつリードが迷走神経内の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために位置決めされる、患者の胸部に皮下又は筋肉下に設置されたIMDを示す。
【図16】種々の実施形態に従った、リードが心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつサテライトトランスデューサが神経標的を刺激/阻害するために位置決めされる、IMDを示す。
【図17】外部システムの実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の以下の詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施形態を例示する添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするために、十分に詳細に記載される。他の実施形態が利用でき、かつ構造的、論理的及び電気的変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、なされ得る。この開示における「ある」、「1つの」又は「種々の」実施形態への参照は、必ずしも同じ実施形態に向けられず、かつかかる参照は、1つ以上の実施形態を意図している。従って、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきでなく、かつ範囲は、添付の請求項と、かかる請求項が権利を与えられる法的同等物の全範囲によってのみ定義される。
【0011】
本発明は、少なくとも2つの測定HFパラメータを使用する心不全(HF)状態のインデックスを提供する。実施形態は、心不全状態に基づき心不全治療を変調する心不全(HF)治療の閉ループ神経刺激システムを提供する。システムの実施形態は、埋め込み型神経刺激器を含む。神経刺激治療は、HF患者における逆リモデリングを防止又は遅くするために適用される。HF状態は、生理的センサ一式から導かれる生理的変数の組み合わせによって決定される。例えば、HF状態は、HF状態に関係する2つ以上の測定パラメータを使用する複合インデックスとして決定できる。HF状態に関係する測定パラメータの例には、心拍数変動(HRV)、心拍数不整(HRT)、心音、活動、経胸腔インピーダンス、毎分換気量、肺動脈圧及び電気記録図の特性を含む。
【0012】
神経刺激パラメータの変調は、HF状態インデックスを作り出すために使用されるパラメータのいずれか又は全ての変化に応答して起こり得る。インデックスを作り上げる測定パラメータの幾つかは、測定を実行するために使用される装置の制約内で連続的に更新でき、他方で他の測定パラメータは、断続的に更新されるか、又は定期的に(例えば、毎時、毎日等)更新される。種々の実施形態は、変化を監視するためにパラメータの傾向を探る(trend)。(後述するような、HRV分析に関する低いSDANN、高い最小心拍数、弱いRSA結合及び活動への生理的応答のような)慢性の悪化する心不全のインデックスは、(副交感神経連絡を刺激し、かつ/又は交感神経連絡を阻害する)副交感神経応答を導くための神経刺激治療へのシフトを引き起こし、かつ改善する心不全のインデックス(上記インデックスの逆の傾向)は、副交感神経応答を導くことからのシフトを引き起こす(例えば、刺激の強度を減少させる)か、又は(交感神経連絡を刺激し、かつ/又は副交感神経連絡を阻害する)交感神経応答を導くことへのシフトを引き起こす。HRV、SDANN及びRSAは、後述する。神経刺激パラメータは、振幅、周波数、動作周期、パルス幅及び刺激部位を含み、かつこれらパラメータのいずれか又は全ては、より大きな若しくはより小さい副交感神経応答に、又は副交感神経応答と、交感神経応答との間で自律平衡をシフトするために変調できる。
【0013】
本発明の実施態様による制御システムは、偽陽性を減少させることによって、電池残量を効率的に管理し、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性を減少させる。装置の実施形態は、長期及び短期変化を説明するための二重フィードバック応答を有する。心不全状態の慢性変化を示す変数は、神経刺激治療の適用を判定するために使用される(例えば、悪化する心不全状態に応答した副交感神経刺激の増加)。二重フィードバック装置の実施形態は、HF状態の短期変化を示す変数(例えば、接近する代償不全事象)にも応答し、かつ代償不全事象を防止又は遅らせるための緊急神経刺激治療を適用する。例えば、適切な神経刺激は、患者が臨床環境に到着できるまで心拍出量を維持するために短期間、適切な交感神経応答を導くために提供できる。
【0014】
種々の装置の実施形態は、ペーシング、除細動及び/又は心臓再同期治療を含む心律動管理治療を提供し、かつこれらの治療を制御するためにHF状態を使用する。ある実施形態は、神経刺激HF治療に加えてCRM治療を提供する。フィードバックセンサは、埋め込み型装置に組み込むか、身体の外部にあるか、又は両方であっても良い。装置は、外部モニタと無線通信でき、システムが、HF状態及び治療適用を監視し、記録し、かつその傾向を探り、かつHF状態の変化に基づき警報を提供できるようにする。
【0015】
以下に続く考察は、生理学の短い考察、HF状態パラメータの例、少なくとも2つのHF状態パラメータに基づくHF状態インデックスの考察、神経刺激及び心筋刺激を含む治療の考察、装置の実施形態及びシステムの実施形態に分かれている。
【0016】
--- <生理学>> ---
神経系、心不全、高血圧及び心臓リモデリングの短い考察が、以下に提供される。この考察は、読者が開示された要旨を理解する一助になると考えられる。
【0017】
<神経系>
自律神経系(ANS)は、「不随意」器官を調節し、他方で随意(骨格)筋の収縮は、体性運動神経によって制御される。不随意器官の例には、呼吸及び消化器を含み、かつ血管及び心臓も含む。多くの場合、ANSは、腺を調節し、皮膚、眼、胃、腸及び膀胱の筋肉を調節し、かつ例えば心筋及び血管の周辺の筋肉を調節するために、不随意で、反射的に機能する。
【0018】
ANSは、交感神経系及び副交感神経系を含むが、それらに限定されない。交感神経系は、ストレス及び緊急事態への「闘争又は逃走応答」に密接に関係付けられる。幾つかの効果の中でも、「闘争又は逃走応答」は、骨格筋血流を増加させるために血圧及び心拍数を増加させ、かつ「闘争又は逃走」のためのエネルギーを提供するために消化を減少させる。副交感神経系は、緩和及び「休息及び消化応答」に密接に関係付けられ、それは、幾つかの効果の中でも、血圧及び心拍数を減少させ、かつエネルギーを保存するために消化を増加させる。ANSは、正常な内部機能を維持し、かつ体性神経系と連携する。求心性神経は、神経中枢に向かってインパルスを搬送し、かつ遠心性神経は、神経中枢を避けてインパルスを搬送する。
【0019】
心拍数及び力は、交感神経系が刺激される時に増加し、かつ交感神経系が阻害される(副交感神経系が刺激される)時に減少する。心拍数、収縮性、及び興奮性は、中枢を介した反射経路によって変調されることが知られている。心臓、大血管及び肺内の圧受容器及び化学受容器は、迷走神経及び交感神経求心性線維を通して中枢神経系に心臓活動を伝達する。交感神経求心性神経の活性化は、反射性交感神経活性化、副交感神経阻害、血管収縮及び頻脈を引き起こす。対照的に、副交感神経活性化は、徐脈、血管拡張及びバソプレッシン遊離の阻害をもたらす。多くの他の要因の中で、減少した副交感神経若しくは迷走神経緊張、又は増加した交感神経緊張は、心室頻脈及び心房細動を含む種々の不整脈発症に関連する。
【0020】
圧反射は、圧受容器の刺激によって引き起こされる反射である。圧受容器は、内部からの圧力増加の結果生じ、かつその圧力を低下させる傾向がある中枢性反射機構の受容器の役割を果たす、壁の伸張に感受性がある、心耳、大静脈、大動脈弓、及び頸動脈洞の壁内の感覚神経終末のような、いかなる圧力変化センサも含む。神経細胞の群は、自律神経節と呼ぶことができる。これらの神経細胞はまた、交感神経活動を阻害し、かつ副交感神経活動を刺激する、圧反射を誘発するために電気刺激できる。自律神経節は、このように圧反射経路の一部をなす。感覚神経終末から通じる迷走、大動脈、及び頸動脈神経のような求心性神経幹も、圧反射経路の一部をなす。圧反射経路及び/又は圧受容器を刺激することは、交感神経活動を阻害し(副交感神経系を刺激し)、かつ末梢血管抵抗及び心臓収縮性を減少させることによって、全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、内圧及び血管壁(例えば動脈壁)の伸張によって自然に刺激される。
【0021】
交感及び副交感神経系を刺激することは、心拍数及び血圧以外の効果を有し得る。例えば、交感神経系を刺激することは、瞳孔を拡張させ、唾液及び粘液生成を減少させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)の連続波及び胃の運動性を減少させ、肝臓によるグリコーゲンのブドウ糖への変換を増加させ、腎臓による尿分泌を減少させ、壁を弛緩させ、かつ膀胱の括約筋を閉鎖する。副交感神経系を刺激すること(交感神経系を阻害すること)は、瞳孔を収縮し、唾液及び粘液生成を増加させ、気管支筋を収縮し、胃及び大腸内の分泌及び運動性を増加させ、かつ小腸内の消化を増加させ、尿分泌を増加させ、かつ壁を収縮し、かつ膀胱の括約筋を弛緩させる。交感及び副交感神経系に関連する機能は、多く、かつ互いに複雑に統合できる。
【0022】
神経刺激は、神経連絡を刺激、又は神経連絡を阻害するために使用できる。神経連絡を刺激するための神経刺激の例は、(例えば、約20Hzから50Hzの範囲内の)低周波数信号である。神経連絡を阻害するための神経刺激の例は、(例えば、約120Hzから150Hzの範囲内の)高周波数信号である。神経連絡を刺激及び阻害する他の方法が、提案された。本発明の種々の実施形態によれば、交感神経標的は、腓骨神経、脊髄中の交感神経柱及び心臓節後交感神経ニューロンを含むが、それらに限定されない。本発明の種々の実施形態によれば、副交感神経標的は、迷走神経、圧受容器及び心臓脂肪体を含むが、それらに限定されない。
【0023】
<心不全>
心不全は、心機能が、末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回り得る、正常以下の心拍出量を引き起こす臨床的症候群を指す。心不全は、付随する静脈及び肺の鬱血のために、鬱血性心不全(CHF)として現れることがある。心不全は、虚血性心疾患のような種々の病因に起因し得る。心不全患者は、自律平衡の低下を有し、それはLV機能障害及び死亡率の増加と関連する。交感及び副交感神経系の変調は、心不全及びMI後患者におけるリモデリング及び死亡を防止することに潜在的な臨床的有益性を有する。直接電気刺激は、圧反射を活性化でき、交感神経活動の減少を誘発し、かつ血管抵抗を低下させることによって血圧を減少させる。交感神経阻害及び副交感神経活性化は、おそらく急性虚血性心筋の側副灌流を増加させ、かつ心筋障害を低下させることによって、心筋梗塞に続く不整脈脆弱性の減少に関連した。
【0024】
<高血圧>
高血圧は、心疾患及び他の関係した心臓共存症の原因である。高血圧は、血管が収縮する時に起こる。結果として、心臓は、流れをより高い血圧で維持するために、一生懸命に働き、そのことは、心不全の一因となり得る。高血圧は、一般的に心臓血管損傷又は他の有害な結果を誘発しやすいレベルへの全身動脈血圧の一過性又は持続的上昇のような高い血圧に関連する。高血圧は、140mm Hgを超える収縮期血圧、又は90mm Hgを超える拡張期血圧と任意に定義された。制御されない高血圧の結果は、網膜血管疾患及び卒中、左心室肥大及び不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、及び腎血管疾患を含むが、それらに限定されない。
【0025】
大部分の一般集団、並びにペースメーカ又は除細動器を埋め込まれた大部分の患者は、高血圧を患っている。血圧及び高血圧を減少できるならば、長期死亡率並びに生活の質は、この集団に関して改善できる。高血圧を患う多くの患者は、生活様式の変化に関係する処置及び血圧降下剤のような処置に反応しない。
【0026】
<心臓リモデリング>
心筋梗塞(MI)又は心拍出量低下の他の原因の後に、構造、生化学、神経ホルモン及び電気生理学的要因を含む心室の複合リモデリングプロセスが起こる。心室リモデリングは、心室の拡張期充満圧を増加させ、かつこのことによりいわゆる前負荷(すなわち心室が、拡張期終了時に心室内の血液量によって伸張される程度)を増加させる、いわゆる後方不全のため心拍出量を増加させるために行う、生理的補償機構によって引き起こされる。前負荷の増加は、フランク−スターリングの原理として知られている現象である、収縮期中の拍出量の増加を引き起こす。しかしながら、心室が、ある期間にわたる前負荷増加のために伸張される時、心室は、拡張するようになる。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧で、心室壁応力の増加を引き起こす。心室によってなされる圧力容積作業の増加と共に、このことは、心室筋の肥大のための刺激として働く。拡張の短所は、正常な、残存心筋に課される余分な作業負荷、及び肥大のための刺激に相当する壁張力の増加(ラプラスの法則)である。肥大が、張力増加に適合させるために十分でないならば、更なる、かつ漸進的な拡張を引き起こす悪循環が起こる。
【0027】
心臓が拡張し始めると、求心性圧受容器及び心肺性受容器信号は、ホルモン分泌及び交感神経放電に反応する、血管運動神経中枢神経系制御所に送信される。最終的に、心室リモデリングに関与する細胞構造の有害な変化の原因となるのは、血行力学的、交感神経系、及び(アンジオテンシン変換酵素(ACE)活動の存在又は欠如のような)ホルモン変調の組合せである。肥大を引き起こす持続的な応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死)及び心機能の更なる悪化を引き起こす最終的な壁の菲薄化を誘発する。このようにして、心室拡張及び肥大が、最初は補償的であり、かつ心拍出量を増加させ得るが、プロセスは、最終的に収縮期及び拡張期両方の機能障害(代償不全)をもたらす。心室リモデリングの範囲が、MI後及び心不全患者における死亡率増加との間に正の相関が認められることが明らかにされた。
【0028】
-- <<HF状態パラメータ>> --
HF状態を決定するために使用できるパラメータの例には、心拍数変動(HRV)、心拍数不整(HRT)、心音、電気記録図の特性、活動、呼吸及び肺動脈圧を含む。これらのパラメータは、以下で手短に述べる。
【0029】
例えば、呼吸パラメータは、毎分換気量信号から導くことができ、かつ流体インデックスは、経胸腔インピーダンスから導くことができる。例えば、経胸腔インピーダンスの減少は、肺内の水分蓄積増加を反映し、かつ心不全の進行を示す。呼吸は、毎分換気量を有意に変化させる。経胸腔インピーダンスは、水分蓄積の兆候を提供するために合計又は平均化できる。
【0030】
<HRV>
心拍数変動(HRV)は、自律平衡を評価するために提案された一技術である。HRVは、自律神経系の交感及び副交感神経枝による心臓の天然のペースメーカである、洞房結節の調節に関係する。HRV評価は、心律動の心拍間隔の変動が、交感及び迷走神経活動の平衡程度によって定義されるような、心臓の健康の間接的測定を我々に与えるという想定に基づく。
【0031】
内因性の心室の心臓収縮間の時間間隔は、心拍数変化のための身体の代謝要求、及び循環系を通してポンピングされた血液量に応答して変化する。例えば、運動又は他の活動期間中に、人の内因性心拍数は、幾つかの又は多くの心拍動の期間にわたって一般的に増加する。しかしながら、心拍間隔ベースでも、すなわち1つの心拍動から次の心拍動まで、かつ運動なしでも、内因性の心臓収縮間の時間間隔は、正常者によって異なる。内因性心拍数のこれらの心拍間隔変動は、血圧及び心拍出量の自律神経系による適切な調節の結果であり、かかる変動の欠如は、自律神経系によって提供される調節不足の可能性を示す。HRVを分析する1つの方法は、内因性の心室収縮を検出し、かついかなる異所性収縮(正常洞律動の結果でない心室収縮)もフィルタにかけて除去した後に、R−R間隔と呼ばれるこれらの収縮間の時間間隔を記録することを含む。このR−R間隔信号は、そのスペクトル周波数成分が、分析でき、かつ低及び高周波帯域に分割できるように、高速フーリエ変換(「FFT」)技術を使用することによるような、周波数領域に概して変換される。例えば、低周波(LF)帯域は、周波数(「f」)範囲0.04Hz≦f<0.15Hzに対応でき、かつ高周波(HF)帯域は、周波数範囲0.15Hz≦f≦0.40Hzに対応できる。R−R間隔信号のHF帯域は、自律神経系の副交感/迷走神経成分のみによって影響される。R−R間隔信号のLF帯域は、自律神経系の交感及び副交感神経成分の両方によって影響される。従って、LF/HF比は、自律神経系の交感及び副交感/迷走神経成分の間の自律平衡の良好な標識とみなされる。LF/HF比の増加は、交感神経成分の優位増加を示し、かつLF/HF比の減少は、副交感神経成分の優位増加を示す。特定の心拍数に関して、LF/HF比は、患者が健康であることの標識とみなされ、低いLF/HF比は、心臓血管の健康の、より肯定的な状態を示す。R−R間隔信号の周波数成分のスペクトル分析は、時間領域から周波数領域へのFFT(又は自己回帰のような他のパラメータ変換)技術を使用して実行できる。かかる計算は、相当量のデータ記憶及び処理能力を必要とする。その上、かかる変換計算は、電力消費を増加させ、かつ埋め込まれた電池で動く装置が、その交換が必要とされる前に使用できる時間を短縮する。
【0032】
HRVパラメータの一例は、全記録に含まれる全ての連続する5分間のセグメントの平均値の標準偏差を表す、SDANN(平均NN間隔の標準偏差)である。他のHRVパラメータが、使用できる。
【0033】
<HRT>
心拍数不整(HRT)は、短い初期心拍数加速と、それに続く心拍数減速からなる心室性期外収縮(PVC)への洞結節の生理的応答である。HRTは、HRVと密接に相関する自律機能のインデックスであることが明らかにされた。HRTは、自律圧反射であると考えられる。PVCは、動脈圧の短い不整(期外収縮の低振幅、次の正常収縮の高振幅)を引き起こす。この束の間の変化は、自律神経系が健康ならば、HRTの形状で瞬間応答により即時に記録されるが、自律神経系が損なわれたならば、弱められるか、又は欠落する。
【0034】
限定でなく、例として、不整発症(TO)及び不整傾斜(TS)を使用してHRTを定量化することが提案された。TOは、PVC直前及び後の心拍数間の差を指し、かつ百分率として表現できる。例えば、2つの拍動が、PVC前及び後で評価されるならば、TOは、以下のように表現できる:
【0035】
【数1】
【0036】
RR-2及びRR-1は、PVCに先立つ最初の2つの正常間隔であり、かつRR+1及びRR+2は、PVCに続く最初の2つの正常間隔である。種々の実施形態において、TOは、各個別のPVCに関して決定され、かつ次に全ての個別の測定の平均値が決定される。しかしながら、TOは、多くの測定にわたり平均化される必要はないが、1つのPVC事象に基づくことができる。正のTO値は、洞律動の減速を示し、かつ負の値は、洞律動の加速を示す。PVC前後に分析されるR−R間隔の数は、所望の用途に従って調整できる。例えばTSは、5つのR−R間隔の各シーケンスの線形回帰の最も急な傾斜として計算できる。種々の実施形態において、TS計算は、平均化された速度記録に基づき、かつRR間隔当たりのミリ秒で表現される。しかしながら、TSは、平均化せずに決定できる。TS計算で線形回帰を決定するために使用されるシーケンス内のR−R間隔の数は、所望の用途に従って同様に調整できる。
【0037】
規則又は基準が、PVCを選択するための使用、及びPVC前後の有効なRR間隔を選択する際の使用に、提供できる。PVC事象は、以前の間隔よりもある倍数又は割合だけ短い、ある間隔範囲のR−R間隔によって定義できるか、又はそれは、心房事象が測定されるならば、介在するP波(心房事象)なしにR−R間隔によって定義できる。種々の実施形態は、収縮が、以前の収縮からある種の範囲で起こる場合に、かつ収縮がその後の収縮からある種の範囲内で起こる場合にのみ、PVCを選択する。例えば、種々の実施形態は、HRT計算を、20%の最小期外性及び正常な間隔よりも少なくとも20%長い期外収縮後間隔を有するPVCに限定する。その上、PVC前R−R及びPVC後R−R間隔は、拍動のいずれもがPVCでないという条件を、それらが満たすならば、有効であると考えられる。例えば、1つのHRTプロセスは、第1の時間分より少なく、第2の時間分より長く、第3の時間分より多く、先行間隔と異なるか、又は所定量の時間分又は割合だけ基準間隔から異なるRR間隔を除外する。特定値を有する、かかるHRTプロセスの実施形態において、RR間隔は、それらが300ms未満であるか、2000msを超えるか、200msより多く先行間隔と異なるか、又は最後の5つの洞間隔の平均値から20%を超えて異なるならば除外される。本発明の種々の実施形態は、PVCを選択する際に使用する、又はPVC前後の有効なRR間隔を選択する際に使用するための、以上に特定されたパラメータのいずれかのようなプログラム可能なパラメータを提供する。
【0038】
自律平衡を評価するためにこの技術を組み込む神経刺激装置は、副交感神経刺激若しくは阻害、又は交感神経刺激若しくは阻害を提供するために使用できる。種々の装置の実施形態は、少なくとも1つの心室ペーシングリードのような、心室をペーシングする手段を含む。閉ループ治療判定に関して自律平衡を測定するために、装置は、PVCを断続的に導入又は感知し、かつ上記のような結果として生じた心拍数不整を測定する。
【0039】
自律平衡を監視するためにHRTを使用する利点には、単一の瞬間に自律平衡を測定する能力を含む。その上、HRVの測定とは異なり、HRT評価は、頻繁な心房ペーシングを有する患者において実行できる。更に、HRT分析は、自律平衡の簡易な、非プロセッサ集約型測定を提供する。従って、データ処理、データ記憶及びデータフローは、比較的小さく、コストが低く、かつ電力消費が低い装置をもたらす。同様に、HRT評価は、HRVよりも速く、遙かに少ないR−Rデータを必要とする。HRTは、例えば約数十秒のような、典型的な神経刺激バースト期間と、期間が類似した短い記録期間にわたる評価を可能にする。
【0040】
<心音>
識別可能な心音は、以下の4つの心音を含む。第1心音(S1)は、心室収縮期の開始で始められ、かつ混合した、無関係の低周波数の一連の振動からなる。それは、心音の中で最も大きく、かつ長く、かつ漸減性質を有し、かつ心臓の先端領域にわたって最も良く聞かれる。三尖弁音は、胸骨のすぐ左側の、第5肋間腔内で最も良く聞こえ、かつ僧帽弁音は心尖部の第5肋間腔内で最も良く聞こえる。S1は、心室腔内の血液の発振及び房室壁の振動によって主に引き起こされる。振動は、心房に向かって戻る血液の加速による心室内圧の急激な上昇、及び閉鎖されたA−V弁による血液の減速による、A−V弁及び隣接構造の突然の張力及び反跳によって発生する。心室及び含まれる血液の振動は、周囲組織を通して伝達され、かつ胸壁に達し、そこで聞くか、又は記録できる。S1の強度は、主に心室収縮力に依存するが、心房及び心室収縮期の間の間隔にも依存する。A−V弁膜が、心室収縮期前に閉鎖されないならば、A−V弁が上昇する心室内圧によって素早く閉じられる時まで、高い速度が、心房に向かって移動する血液に与えられ、かつ強い振動が、閉鎖したA−V弁によるこの急激な血液減速に起因する。
【0041】
半月弁の閉鎖で起こる第2心音(S2)は、高周波振動からなり、期間が短かく、かつ強度が低く、かつ第1心音よりもより「素早い」性質を有する。第2音は、閉鎖した弁の伸張及び反跳による血液の列及び緊張した血管壁の発振を開始する、半月弁の急激な閉鎖によって引き起こされる。肺動脈又は大動脈圧増加(例えば肺、又は全身性高血圧)のような、半月弁の急速な閉鎖をもたらす条件は、第2心音の強度を増加させる。成人において、大動脈弁音は、肺よりも通常大きいが、肺高血圧の場合に、逆が多くの場合真である。
【0042】
薄い胸壁を有する小児、又は左心室不全のために急速な充満波を有する患者において頻繁に聞かれる第3心音(S3)は、2、3の低強度の低周波振動からなる。それは、拡張早期に起こり、かつ房室弁が開放して、心室に流入する血液の急激な加速及び減速によって引き起こされる心室壁の振動によると考えられる。2、3の低周波発振からなる第4又は心房音(S4)は、時折、正常な個人において聞かれる。それは、血液の発振及び心房収縮によって作り出される心腔によって引き起こされる。際立ったS3及びS4音は、ある種の異常な状態を示すことがあり、かつ診断的意義を有する。
【0043】
従って、心音は、心不全状態を決定するために使用できる。例えば、より重度のHF状態は、大きなS3振幅に反映される傾向がある。
【0044】
<電気記録図>
HF状態の標識を提供するために抽出できるECGの特性の例には、左脚ブロックによるQRS複合期間、STセグメント偏差、及び心筋梗塞によるQ波を含む。これらの特性のいずれか1つ又は組み合わせが、HF状態の標識を提供するために使用できる。他の特性は、ECGから抽出できる。
【0045】
<活動>
活動センサは、患者の活動を評価するために使用できる。交感神経活動は当然に、活発な患者において増加し、かつ不活発な患者において減少する。従って、活動センサは、患者の自律平衡、及びそれ故に患者のHF状態を決定する際に使用するための状況的測定を提供できる。例えば種々の実施形態が、活動の標識を提供するために、心拍数及び/又は呼吸速度の傾向を探るセンサの組み合わせを提供する。
【0046】
<呼吸>
呼吸を検出するための2つの方法は、経胸腔インピーダンス及び毎分換気量の測定を含む。呼吸は、活動の標識であり得、かつHF状態と直接的に関係しない交感神経緊張の増加の説明を提供できる。例えば、運動に起因する、検出された交感神経活動の増加のために、HF治療を変更することは、適切でないことがある。
【0047】
呼吸測定(例えば、経胸腔インピーダンス)は、呼吸洞性不整脈(RSA)を測定するためにも使用できる。RSAは、洞房結節への交感及び迷走神経インパルスの流れに対する呼吸の影響を通して起こる不整脈の天然のサイクルである。心律動は主に、心拍数及び収縮力を阻害する、迷走神経の制御下にある。迷走神経活動が妨げられ、かつ呼気が吸入される時に、心拍数が増加し始める。吐き出される時、迷走神経活動が増加し、かつ心拍数が減少し始める。心拍数変動の程度は、大動脈及び頸動脈内の圧受容器(圧力センサ)からの規則的なインパルスによって同様に有意に制御される。従って、自律平衡の測定は、心拍数を呼吸サイクルと相関させることによって提供できる。
【0048】
<肺動脈圧>
上記のように、高血圧は、心不全の一因となり得る。慢性高血圧又は高い傾向を取る慢性血圧は、心不全の可能性増加の兆候を提供する。種々の実施形態は、充満圧に近付くために、肺動脈圧を使用する。充満圧は、前負荷のマーカであり、かつ前負荷は、心不全状態の標識である。
【0049】
--- <<HF状態インデックス>> ---
本発明の実施形態は、上記のHFパラメータのいずれか2つ以上のような、2つ以上のHFパラメータを使用するHF状態インデックスを提供する。インデックスは、偽陽性を減少させ、かつそれ故に不必要な治療と関連した電力消耗を減少させ、かつ患者に刺激を与えすぎる危険性も減少させる。インデックスの実施形態には、入力として使用される各HPパラメータが、複合インデックスを発生させるために適切に加重される、複合インデックスを含む。例えば、インデックスは、(パラメータ1)*A+(パラメータ2)*Bによって提供できる。もう1つの例において、インデックスは、パラメータの積を含むことができる(例えば、(パラメータ1)*(パラメータ2))か、又は他方のパラメータで割った一方のパラメータを含むことができる(例えば、(パラメータ1)/(パラメータ2))。他のアルゴリズムが、2つ以上のパラメータからインデックスを作り出すために、使用できる。
【0050】
治療を制御するために、2つ以上のHF関係パラメータに基づきインデックスを作り出す他の例は、以下で提供される。これらの例は、2つ以上のHFパラメータに基づきHF状態を決定するための、統計的確率の使用及びインテリジェント・システムの使用を含む。
【0051】
<統計的確率>
参照によって組み込まれる、2006年3月13日に出願され、かつ「Physiological Event Detection Systems and Methods」という表題の米国出願11/276735号は、確率密度を使用して、偽陽性の問題を論じている。図1Aは、患者の生理的パラメータ(例えば、心音振幅、心拍数等)に関し、ある期間にわたって行われた測定に基づく確率密度関数pi(x|H0)の例を示す。示した関数pi(x|H0)は、生理的パラメータに関して行われた非事象(基線)測定の分布を示し、かつそれ故に安定した患者に関する測定分布を表す。これらの測定は、患者の非事象環境(すなわち、心不全、不整脈等のないこと)を統計的に特徴付ける。図1Aに破線で示された確率密度関数pi(x|H1)は、「事象」条件(例えば、心不全等)を代表する生理的パラメータに関する推定の測定分布を示す。事象測定は、概して稀であるので、関数pi(x|H1)は、概して事象関係測定の分布を概算するのみである。それによりH1は、有意の事象を示す仮説である。もう1つの例においてH1は、過去の事象の集団から推定される。図1Aに示すように、かつ以下で更に記載するように、事象分布pi(x|H1)に近付く生理的パラメータの異常値測定は、誤警報である可能性が低く(すなわち事象を示していない確率の減少)、かつ反対に事象(例えば、心不全、不整脈等)を示している確率の増加である。概念的に、pi(x|H0)にとって異常値である測定は、非事象測定よりも事象測定に極めて似ている。
【0052】
種々の実施形態において、確率密度関数pi(x|H0)は、実測値のヒストグラムを使用して発生する。実測値は、確率密度関数を直接的に推定するために使用される。測定の特性(例えば、中央値及びパーセンタイル測定)は、確率密度関数を作り出すために使用される。種々の実施形態において、(例えば平均値及び標準偏差を推定することによって)数学的に、又は他の方法で特定されるガウス分布又は他の関数のような、特定の確率分布が使用される。種々の実施形態において、確率密度関数は、ヒストグラムデータにわたる曲線の当てはめによって発生する。確率密度関数pi(x|H0)を発生させるために使用される測定は、収集及び記憶される。
【0053】
幾つかの実施例において、特定の測定は、破損した測定、古い測定、事象関係測定−関数pi(x|H0)は、非事象データのみを含むべきである−等のような確率密度関数p(xi|H0)を算出する際の使用から除外される。一実施例において、確率密度関数は、特定の(例えば、移動)時間窓中に行われる測定によって発生する。幾つかの実施例において、移動時間窓は、生理的パラメータの最新の測定の時間から戻る特定の間隔を延長する。幾つかの実施例において、移動時間窓外部の古い測定は、確率分布関数を算出する際の使用から除外される。このことは、確率分布関数が更新し、かつ最新の測定を使用することによって生理的パラメータの漸進的ドリフトを辿ることを可能にする。古い測定は、例えば履歴の使用のために、埋め込み型医療装置及び/又は外部システムに記憶させることができる。その上、測定が、下記のように事象を示すために決定される場合、かかる事象関係測定は、弱められ、かつ非事象確率分布関数を発生させる際の使用から除外される。
【0054】
幾つかの実施例において、信頼できない又は破損したとみなされる測定は、非事象確率分布関数を算出するために使用されない。例えば、幾つかの生理的パラメータは、他の効果によって混乱する。例えば、心音は、姿勢によって影響を及ぼされることがある。第2センサ(例えば、姿勢検出器)は、特定の姿勢と関連した心音のみが特定の確率分布関数を算出するために使用されるように、心音データを「修正する」ために姿勢を検出するために使用できるか、又は異なる確率分布関数が、種々の姿勢に関して算出できる。同様に、幾つかの生理的パラメータは、睡眠のような休息期間中に発生する測定が、覚醒時間に行われた測定と異なり得るように、睡眠状態によって影響を及ぼされる。この実施例において、睡眠検出器が、特定の睡眠状態に従って一次生理的パラメータを修正するために使用できる。活動は、感知された生理的パラメータにも影響を及ぼし得る。一般的に、1つ以上の二次生理的センサは、信頼できない又は破損したデータを、確率分布関数を算出する際の使用から除去するために、一次生理的センサからのデータを修正するために使用でき、そのことは、一次生理的センサが機能しなくなる状況でも有用である。従って、本発明によれば、2つ以上のセンサは、非事象確率分布関数によって提示できるような、HF状態のインデックスを作り出すために使用できる。
【0055】
図1Bは、非事象確率密度関数pi(x|H0)の一例を示す。上記のように、関数pi(x|H0)は、概して患者の生理的パラメータのセンサによって行われる非事象測定から導かれる。即時測定xi=kのような測定は、確率密度関数pi(x|H0)に沿って描くことができ、かつ信頼性が、次式に基づき尾部領域を積分することによって導かれる。
【0056】
【数2】
【0057】
信頼性Ciは、測定kが誤警報である(すなわち非事象測定)瞬間確率に比例する。測定kからの分布の端部に向かう確率密度関数pi(x|H0)尾部領域の積分は、それにより、測定kが誤警報である瞬間確率を決定する。分布の端部に近付く測定は、それが誤警報を示す確率の減少を有する。反対に、かかる測定が、異常な状態(例えば、心不全)の発症のような事象を示すことが、より起こり得る。測定kは、概してすでに記録された既存の測定である。
【0058】
図1Cは、関数pj(x|H0)が、生理的パラメータに関する測定の負の尾部の分布によって表されるもう1つの例を示す。負の尾部の分布を有する生理的パラメータの一例は、DC近傍胸腔インピーダンスである。一般的に、低下したDC胸腔インピーダンス測定(例えば、胸腔内総インピーダンス)は、肺水腫と関連し得る流体蓄積を示す。従って、かかる低下したDC胸腔インピーダンス測定は、肺水腫検出スキームにおける誤警報の確率減少を表す。関数pi(x|H0)のように、関数pj(x|H0)は、概して患者の生理的パラメータのセンサによって行われる非事象測定から導かれる。即時測定xj=lのような測定は、確率密度関数pj(x|H0)に沿って描くことができ、かつ信頼性が、次式に基づき尾部領域を積分することによって導かれる。
【0059】
【数3】
【0060】
信頼性Cjは、測定lが誤警報である(すなわち非事象測定)瞬間確率に比例する。測定lからの分布の左端部に向かう確率密度関数pj(x|H0)尾部領域の積分は、測定lが誤警報である瞬間確率を決定する。関数pi(x|H0)と同様に、分布の端部に近付く測定は、それが誤警報を示す瞬間確率の減少を有し、かつ測定が、状態(例えば、心不全)の発症のような事象を示すことが、より起こり得る。任意に、分布の「端部」に対応する値は、+/−無限大で起こる必要がないが、推定された分布端部を使用して代わりに概算できる(例えば、測定された分布端部に近付く近似値、実測値、+/−無限大に近付く値等)。
【0061】
幾つかの実施例において、臨床医は、一定の特定された誤警報率(FAR)(すなわち一定の誤警報率)に基づき閾値を設定する。例えば、医師は、閾値が全体の約5%(0.05)の誤警報を生じるように、自動的に設定されるべきことを特定できる。特定されたFARは、生理的パラメータの分布に関するいかなる統計に基づく分析とも無関係であり、かつそれにより分布からのいかなる影響とも無関係である。臨床医が特定したFARから、閾値は、Ci及びCjに関して示されるように、式によって発生した信頼性に対応する値に対して比較するように、自動的に決定できる。信頼性に対応する値が、FARに基づく閾値を超えるならば、幾つかの実施例において、治療は、検出された生理的事象に応答して提供される。一実施例において、閾値は、臨床医によって望まれる特異性に比例する値である。例えば、患者がある状態にかかりやすい状況において(例えば、前駆症状を示した、状態の履歴を有する等)、医師は、状態の危険性が高い患者が、治療を提供されることを確実にするために、低い閾値を恐らくは設定する。患者が状態を体験する可能性が低い(例えば、患者が、ペースメーカ/除細動器の組み合わせを有するが、心不全を経験することが予期されない)もう1つの実施例において、臨床医は、測定が状態の発症の高い瞬間確率があることを示す場合にのみ、低い危険性の患者が処置されることを確実にするために、高い閾値を設定する。
【0062】
--- <<インテリジェント・システム>> ---
参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開20060010090号は、埋め込み型及び外部センサの組み合わせからのデータを使用する、外来環境において患者の遠隔監視を提供するインテリジェント・システムの例を提供している。種々の実施形態において、種々のセンサ信号は、連続的に監視され、かつデータはリアルタイムで収集される。データは、一実施例において、インテリジェント・システムによって処理され、かつ幾つかの条件で、治療が、判定され、かつ/又は警報通知が、医師又は患者に送られる。
【0063】
センサの組み合わせは、種々の条件での、かつ種々の方法で測定された慢性患者データを提供する。例えば、センサデータの組み合わせは、患者の血行力学的状態を検出し、かつ鬱血、灌流、収縮性又は種々の他の状態の評価を容易にするために使用される。種々の実施形態において、心不全又は他の状態が、評価される。
【0064】
一実施例において、システムは、様々なソースから来る情報を集め、かつ本明細書において心不全インデックスとも呼ばれる心不全の要約を提供する推論エンジンを含む。種々の実施例における様々なソースは、埋め込み型センサ並びに外部センサを含む。
【0065】
図2は、インテリジェント・システム202に結合された心不全に関係するパラメータの複数のデータソース201を有するシステム200を示す。データソース201は、例えば埋め込み型センサ203、外部センサ204、医師入力205、患者入力206、患者履歴207、医薬データベース208及び集団/臨床研究データ209のような入力装置を含むが、それらに限定されない。
【0066】
埋め込み型センサ203は、種々の実施形態において、経胸腔インピーダンスセンサ、毎分換気量センサ、呼吸速度センサ、心臓モニタ、加速度計、心内圧センサ、HRVを測定するセンサ、HRTを測定するセンサ、及び他のタイプのセンサのような、1つ以上の埋め込み型センサを含む。
【0067】
外部センサ204は、1つ以上の外部又は非埋め込み型センサを含み、その例には計量秤(質量センサ)、血圧カフ(又は圧力センサ)、外部モニタ、並びに他のタイプの携帯型センサを含む。一実施例において、外部センサ204は、インテリジェント・システム202を有するディジタル通信リンクを含むことができるか、又は個人情報端末(PDA)に手動で入力されるか、又は他の方法でインテリジェント・システム202に提供されるデータを提供できる計量秤を含む。
【0068】
医師入力205は、医師、医療関係者又は他の利用者がアクセス可能なインタフェース又はデータ入力装置を含む。医師によって入力されるデータは、例えば処方情報、医療記録、患者の症状、観察データ並びに他の情報を含む。一実施例において、医師入力は、パラメータの特別な値又は閾値を特定するために使用できる。医師入力は、一実施例において、システムの性能に関する医師の確立した規則の入力を可能にする。
【0069】
患者入力206は、患者、患者代理人又は他の利用者がアクセス可能なインタフェース又はデータ入力装置を含む。患者入力を使用して、利用者は、リアルタイム又は以前の観察に対応するデータを入力できる。一実施例において、患者入力は、患者が食物摂取、運動活動、知覚された感覚、及び症状並びに他の注目される現象のようなデータを入力することを可能にする。
【0070】
患者履歴207は、例えば電子医療記録(EMR)、臨床情報システム(CIS)データ、又は特定の患者に対応する他のデータを含む情報を受信するように構成されるインタフェースを含む。データは、家族医療履歴、患者の生命兆候、傾向及び他の履歴医療及び臨床データを含むことができる。
【0071】
医薬データベース208は、特定の薬剤を医療状態及び症状と相関させるデータを含む。種々の実施形態において、医薬データベースは、例えば、米国を含む世界の特定の地理的領域に対応する研究に基づき発生したデータを含む。医薬データベースは、異なる薬剤に関する母集団薬物動態学を示すデータも含む。例えば、含まれるデータは、薬剤を服用した後の時間に応じた薬剤の効果を相互に関連付ける。種々の実施形態において、医薬データベースは、特定の患者の薬剤治療に関するデータを含む。
【0072】
集団/臨床研究データ209は、例えば選択された薬剤間の関係を示すデータを含む。一実施例において、集団/臨床研究データは、集団及び特定の薬剤の間の関係を示す規範的、かつ統計的データを含む。一実施例において、集団/臨床研究データは、特定の集団に関して臨床研究データから導かれたデータを含む。
【0073】
インテリジェント・システム202は、推論エンジンを含み、かつ種々の実施例において、ハードウェア又はソフトウェアによって実施される。一実施例において、インテリジェント・システムは、メモリ内に記憶された専門家システムアルゴリズムを実行するプロセッサを含む。インテリジェント・システムは、知識ベース及び測定された入力信号に基づき、推論を発生させるように構成される。推論エンジンの例には、ベイジアンネットワーク、ファジー論理、決定木、神経回路網又は自己組織化マップのような原因確率的ネットワークを含む。種々の実施形態において、インテリジェント・システム202は、測定された入力に基づき作動し、かつある期間にわたる知識ベースを発生させる。
【0074】
ベイジアンネットワークは、公知の以前の確率(すなわち観察された疾患の有病率)、及び新規に得られた情報(すなわちセンサ信号)に基づき、異なる結果の可能性を特徴付けるためにベイズの定理を使用する条件付き確率に基づくネットワークを含む。ベイジアンネットワークは、因果関係知識、及び異なる事象間の明確なモデル確率的依存性及び独立性関係を使用する。
【0075】
ファジー論理は、肯定又は否定としての簡易なカテゴリー化を、他の方法では可能にしない不確実な情報及び変数を操作する機構を提供する。ファジー論理は、不確実な情報へのif−then規則の適用を記載し、かつ以前の事象又は条件に基づき結果の確率を提供する。ファジー論理は、確率的if−then規則を使用する。ファジー論理の原理によれば、前提が真であるという確率は、予測可能であり、かつそれに続く結論は、ある種の確率によって同様に起こる。
【0076】
決定木は、複数の時間及び論理入力、及びこれらの入力の組み合わせに基づく可能な結果を表す方法を提供する。決定木は、分岐に関連した確率を伴わない。
【0077】
神経回路網は、情報記憶及びプログラミング機能を有する要素によって一緒に接続される多数の非線形処理モジュールを有するブラックボックス情報処理装置である。自己組織化マップは、学習が可能な適合アルゴリズムを実行するように構成された特定タイプのシート状神経回路網配列である。神経回路網は、競合的かつ監視されない学習プロセスに基づく。他のタイプの専門家システムも、検討できる。
【0078】
1つ以上のセンサ203及び204が、感知されたHF状態210を提供するために使用される。インテリジェント・システム202は、データソース201から受信された情報の組み合わせに基づき、推論(例えば、HF状態インデックス)を発生させる。HF状態インデックスは、HF治療神経標的212への神経刺激211を制御するために使用される。データソース201から導かれた情報は、誤差及び他の不正確ソースが生じやすい。一実施例において、情報は、不確実性を定量化する確率を使用して表現される。例えば、臨床研究から導かれたデータは、特定レベルのパラメータが、その場合規定レベルの信頼性によって注目されるならば、患者が、特定の疾病を患っていることを示すことがある。追加ソースからのデータは、特定の結論の信頼性レベルを更に修正し、かつ更に特定精度を強化する。一実施例において、インテリジェント・システムは、タイムラグを有する事象に関する時間推論を組み込む。例えば、事象に関する情報は、時間スタンプと、従属事象がネットワークを通して伝播され、かつ後の事象の可能な原因として印を付される間の時間間隔とを含む。
【0079】
--- <<治療>> ---
<神経刺激治療>
神経刺激治療の例には、心不全、高血圧を処置するためのような血圧制御、睡眠呼吸障害のような呼吸困難、心律動管理、心筋梗塞及び虚血、癲癇、うつ病、疼痛、片頭痛、摂食障害及び肥満、及び運動障害のための神経刺激治療を含む。他の神経刺激治療のこの一覧は、網羅的リストであることが意図されない。
【0080】
図3A〜図3Cは、HF治療としての有効な神経刺激を示す。図3A及び図3Bに反映されるように、神経刺激は、対照群と比較して、拡張終期領域及び収縮終期領域の増加を減少させるか、又は防止し、かつ拡張終期領域及び収縮終期領域を減少させるように見える。図3Cに反映されるように、神経刺激は、対照群と比較して、高い短縮率に相当する。短縮率(FS)は、左心室機能の尺度であり、かつ以下のように:
【0081】
【数4】
【0082】
(式中、EDDは、LV拡張終期径であり、かつESDは、LV収縮終期径である)計算できる。
【0083】
<心室リモデリング>
1つの治療は、心室リモデリングを防止及び/又は処置することを含む。自律神経系の活動は、MIの結果として、又は心不全のために起こる心室リモデリングに少なくとも部分的に関与する。リモデリングが、例えばACE阻害剤及びベータ遮断薬の使用による薬理学的介入によって影響を及ぼされ得ることが証明された。薬理学的処置は、副作用の危険性が伴うが、薬剤の効果を正確に変調することも、困難である。薬剤治療に関するもう1つの問題点は、患者の服薬不履行である。本発明の実施形態は、抗リモデリング治療又はARTと呼ばれる、自律神経活動を変調する電気刺激手段を用いる。リモデリング制御治療(RCT)とも呼ばれる、心室再同期ペーシングと併せて提供される時、かかる自律神経活動の変調は、心臓リモデリングを改善又は防止するために相乗的に働く。
【0084】
虚血に続く交感神経系活動の増加は、多くの場合、エピネフリン及びノルエピネフリンへの心筋の曝露増加をもたらす。これらのカテコールアミンは、筋細胞内の細胞内経路を活性化するが、そのことは、心筋の死及び線維症を招く。副交感神経(迷走神経)の刺激は、この効果を阻害する。種々の実施形態によれば、本発明は、心筋が更にリモデリングすること、及び不整脈原性から保護するために、心不全患者において、CRTに加えて迷走心臓神経を選択的に活性化する。CRTに加えて迷走心臓神経を刺激する他の潜在的利益には、心筋梗塞に続く炎症反応を減少させること、及び除細動用の電気刺激閾値を減少させることを含む。例えば、心室頻脈が感知される時、迷走神経刺激が適用され、かつ次に除細動ショックが適用される。迷走神経刺激は、除細動ショックが少ないエネルギーで適用されることを可能にする。同様に副交感神経刺激は、不整脈を終結させ得るか、又は抗不整脈処置の有効性を他の方法で増加させ得る。
【0085】
図4A及び図4Bに示すように、心臓413は、上大静脈414、大動脈弓415及び肺動脈416を含む。CRMリード417は、本発明に従って刺激できる神経部位を通過する。図4Aは、経血管的に供給されたリードを示し、かつ図4Bは、心外膜リードを示す。電極位置の例は、符号「X」によって図中に与えられる。例えば、CRMリードは、末梢静脈を通して、かつ冠状静脈洞に血管内挿入されることが可能であり、かつ心臓ペースメーカリードのように、末梢静脈を通して、かつ三尖弁を通して、心臓の右心室に(図中に明確に示されない)血管内挿入されることが可能であり、かつ右心室から肺動脈弁を通して肺動脈に続く。冠状静脈洞及び肺動脈は、血管系の内又は近接した神経を刺激するために、リードが血管内挿入できる心臓に近接した血管系の例として提供される。従って、本発明の種々の形態によれば、神経は、内部に血管内挿入された少なくとも1つの電極によって心臓に近接して位置する血管系内又はその周囲で刺激される。
【0086】
図5A及び図5Bは、それぞれ心臓の右側及び左側を示し、かつ幾つかの神経刺激治療のための神経標的を提供する心臓脂肪体を更に示す。図5Aは、右心房518、右心室519、洞房結節520、上大静脈514、下大静脈521、大動脈522、右肺静脈523及び右肺動脈524を示す。図5Aは、上大静脈及び大動脈の間に心臓脂肪体525も示す。心臓脂肪体525内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体にねじ込まれたか、又は他の方法で設置された電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば右肺動脈又は上大静脈のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリードを使用して刺激される。図5Bは、左心房526、左心室527、右心房518、右心室519、上大静脈514、下大静脈521、大動脈522、右肺静脈523、左肺静脈528、右肺動脈524及び冠状静脈洞529を示す。図5Bは、右心静脈に近接して位置する心臓脂肪体530と、下大静脈及び左心房に近接して位置する心臓脂肪体531も示す。脂肪体530内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体530にねじ込まれた電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば右肺動脈524又は右肺静脈523のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリードを使用して刺激される。脂肪体531内の神経標的は、幾つかの実施形態において、脂肪体531にねじ込まれた電極を使用して刺激され、かつ幾つかの実施形態において、例えば下大静脈521又は冠状静脈洞のような血管内で脂肪体に近接して位置決めされた、静脈内供給されたリード、又は左心房526内のリードを使用して刺激される。
【0087】
種々のリードの実施形態は、所定の血管壁に当接するように寸法が決定されたメッシュ表面を有する拡張型ステント状電極、コイル状電極、固定ネジタイプの電極等を含む、多数の設計を実施する。種々の実施形態は、電極を血管内部、血管壁、又は血管内部の少なくとも1つの電極及び血管壁への少なくとも1つの電極の組み合わせで設置する。神経刺激電極は、CRTに使用される同じリード、又はCRTリードに加えてもう1つのリード内で統合できる。
【0088】
本明細書で経血管リードとも呼ばれる、血管外部の標的を経血管的に刺激するように構成された、血管内供給されるリードは、他の神経部位を刺激するために使用できる。例えば、ある実施形態は、迷走神経上の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために、右奇静脈に経血管刺激リードを供給し、かつある実施形態は、迷走神経上の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために、内頸静脈に経血管刺激リードを供給する。種々の実施形態は、CRTの一部として、心室ペーシングのように、神経刺激を経血管的に適用し、かつ心筋を電気刺激するためにリード経路に沿って血液内供給される少なくとも1つのリードを使用する。
【0089】
他の経血管位置が、図5A及び図5Bに対して言及された。神経刺激電極の血管内位置に応じて、右迷走神経分岐、左迷走神経分岐、又は右及び左迷走神経分岐の組み合わせが、刺激されることが可能である。左及び右迷走神経分岐は、心臓の異なる領域に神経を分布し、かつそれ故に刺激される時、異なる結果を提供する。現在の知識によれば、右迷走神経は、右心房及び右心室を含む、心臓の右側に神経を分布するように見え、かつ左迷走神経は、左心房及び左心室を含む、心臓の左側に神経を分布するように見える。右迷走神経の刺激は、洞結節が心臓の右側にあるので、より大きな変時効果を有する。従って、種々の実施形態は、心臓の右及び/又は左側で収縮性、興奮性、及び炎症反応を選択的に制御するために右迷走神経及び/又は左迷走神経を選択的に刺激する。静脈系は、大部分が対称的であるので、リードは、右又は左迷走神経を経血管刺激するために、適切な血管に供給できる。例えば、右内頸静脈内のリードは、右迷走神経を刺激するために使用でき、かつ左内頸静脈内のリードは、左迷走神経を刺激するために使用できる。
【0090】
刺激電極は、末梢神経刺激への経血管アプローチが使用される時に、神経と直接神経接触しない。従って、直接接触電極と一般に関連する、神経炎症及び障害に関連する問題は、減少する。
【0091】
<高血圧>
上記のように、高血圧は、心不全の一因となり得る。1つの神経刺激治療は、高血圧を減少させるために十分な持続期間に圧反射を刺激することによって高血圧を処置することを含む。圧反射は、圧受容器又は求心性神経幹の刺激によって引き起こすことができる反射である。圧反射神経標的は、内部からの圧力増加に起因する壁の伸張に感受性があり、かつその圧力を減少させる傾向がある中枢反射機構の受容器の役目を果たす、心耳の壁内、心臓脂肪体、大静脈、大動脈弓及び頸動脈洞の知覚神経終末のような、いかなる圧力変化センサも含む。圧反射神経標的として役立つ求心性神経幹の例には、迷走、大動脈及び頸動脈神経を含む。圧受容器の刺激は、交感神経活動を阻害し(副交感神経系を刺激し)、かつ末梢血管抵抗及び心臓収縮性を低下させることによって全身動脈圧を減少させる。圧受容器は、当然に内圧及び動脈壁の伸張によって刺激される。本発明の幾つかの形態は、神経系の無差別な刺激の望ましくない効果を減少させながら、所望の応答(例えば、高血圧の減少)を刺激しようとして、求心性神経幹を刺激するよりもむしろ、動脈壁内の特定の神経終末を局所的に刺激する。例えば、幾つかの実施形態は、肺動脈内で圧受容器部位を刺激する。本発明の幾つかの実施形態は、圧受容器部位又は大動脈、心腔、心臓脂肪体内の神経終末を刺激することを含み、かつ本発明の幾つかの実施形態は、迷走、頸動脈及び大動脈神経のような、求心性神経幹を刺激することを含む。幾つかの実施形態は、カフ電極を使用して求心性神経幹を刺激し、かつ幾つかの実施形態は、電気刺激が、求心性神経幹を刺激するために血管壁を通過するように、神経に近接して血管内に位置決めされた血管内リードを使用して求心性神経幹を刺激する。
【0092】
<心筋刺激治療>
種々の実施形態は、心筋刺激治療のフィードバックとしてHF状態を使用する。例えば、幾つかの実施形態は、HF状態インデックスに応答してCRTを提供又は調整する。種々の実施形態は、神経刺激治療と、心筋刺激を同様に含むか、又は統合する。これらの心筋治療の幾つかは、後述する。
【0093】
<徐脈ペーシング/CRTペーシング>
ペースメーカは、通常心拍数が遅すぎる、徐脈を処置するために、時限ペーシングパルスによって心臓をペーシングする装置である。房室伝導欠損(すなわちAVブロック)及び洞不全症候群が、永続的なペーシングが指示できる徐脈の最も一般的な原因に相当する。適切に機能するならば、ペースメーカは、最小心拍数を強制することによって代謝要求を満たすために適切な律動で、心臓がそれ自身をペーシングできないことを補う。
【0094】
血液の効率的なポンピングを促進するために、心腔が心周期中に収縮する方法及び程度に影響を与える埋め込み型装置もまた開発された。心臓は、心筋にわたる急速な興奮の伝導(すなわち脱分極)を可能にする、心房及び心室両方での特別な伝導路によって通常提供される結果である、心腔が強調して収縮する時に、効果的にポンピングする。これらの経路は、両心房及び両心室の協調した収縮をもたらすために、洞房結節から心房心筋に、房室結節に、かつそれ故に心室心筋に興奮性インパルスを伝導する。このことは、各心腔の筋繊維の収縮を同期させ、かつ各心房又は心室の収縮を、対側心房又は心室と同期させる。正常に機能する特殊な伝導路によって与えられる同期化がないならば、心臓のポンピング効率は、極めて低下する。これら伝導路及び他の心室間又は心室内の伝導欠損の病変は、心機能の異常性により、心拍出量が末梢組織の代謝要求を満たすために適切なレベルを下回る臨床的症候群を指す、心不全の原因因子であり得る。これらの問題を扱うために、心臓再同期治療(CRT)と呼ばれる心房及び/又は心室収縮の協調を改善しようとして、1つ以上の心腔に適切な時限電気刺激を提供する埋め込み型心臓装置が、開発された。心室再同期は、直接的に変力性でないが、ポンピング効率が改善され、かつ心拍出量が増加した、心室のより協調した収縮を、再同期がもたらし得るので、心不全を処置する際に有用である。現在、CRTの共通の形状は、同時に、又は特定の両心室オフセット間隔によって分離されて、かつ心房ペースの伝達又は内因性心房収縮の検出に対して、規定の房室遅延間隔後に、両心室に刺激パルスを適用する。
【0095】
<抗頻脈治療>
QRS群と同期して心臓に送られる電気ショックである電気除細動(カーディオバージョン)、及びQRS群との同期化なしに送られる電気ショックである除細動は、大部分の頻脈性不整脈を終結させるために使用できる。電気ショックは、同時に心筋を脱分極化し、かつそれを不応性にすることによって頻脈性不整脈を終結させる。埋め込み型電気除細動器(ICD)として知られる、あるクラスのCRM装置は、装置が頻脈性不整脈を検出する時に、心臓にショックパルスを送ることによってこの種類の治療を提供する。頻脈のためのもう1つのタイプの電気治療は、抗頻脈ペーシング(ATP)である。心室ATPにおいて、心室は、頻脈を引き起こすリエントリー回路を遮断しようとして、1つ以上のペーシングパルスによって競合的にペーシングされる。現代のICDは、概してATP能力を有し、かつ頻脈性不整脈が検出される時に、ATP治療又はショックパルスを送る。
【0096】
<心臓リモデリングの治療>
CRTは、MI後及び心不全患者において起こり得る、有害な心室リモデリングを減少させる際に有益であり得る。推定上、このことは、CRTが適用される時、心臓ポンピングサイクル中に心室が経験する壁応力の分布変化の結果として起こる。心筋繊維が収縮する前に伸張される程度は、前負荷と呼ばれ、かつ筋繊維の最大張力及び短縮速度が、前負荷の増加によって増加する。心筋領域が、他の領域に対して遅く収縮すると、これらの反対領域の収縮は、遅く収縮する領域を伸張し、かつ前負荷を増加させる。心筋繊維が収縮する時に、心筋繊維に対する張力又は応力の程度は、後負荷と呼ばれる。心室内の圧力は、血液が大動脈及び肺動脈に送り出される時に、拡張期から収縮期値へ急速に上昇するので、興奮刺激パルスによって最初に収縮する心室の一部が、後に収縮する心室の一部よりも低い後負荷に対してそれを行う。従って、他の領域よりも後に収縮する心筋領域は、増加した前負荷及び後負荷の両方を受ける。この状況は、MIによる心室機能障害及び心不全と関連した心室伝導遅延によって頻繁に作り出される。遅く活性化する心筋領域への壁応力の増加は、ほぼ確実に心室リモデリングの誘因である。より協調した収縮を引き起こす方法で心室内の1つ以上の部位をペーシングすることにより、CRTは、さもなければ収縮期中に後で活性化され、かつ壁応力増加を経験する心筋領域の早期興奮を提供する。他の領域に対してリモデリングされた領域の早期興奮は、機械的応力から領域を取り除き、かつ起こるリモデリングの改善又は防止を可能にする。
【0097】
--- <<装置の実施形態>> ---
図6は、感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。示した装置の実施形態において、多数のHF関係パラメータ632が、測定できる。例には、HRV633、HRT634、心音635、肺動脈圧636及び/又は他の血圧、経胸腔インピーダンス637又は他の感知パラメータ638を含む。これらの測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ632に応じて感知HF状態インデックス640を発生させるインデックス発生器639によって、又は少なくとも2つの測定パラメータ632を使用して他の方法で受信される。コンパレータ641は、インデックス640をインデックス用の標的642と比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。比較の結果は、HF治療神経標的644に適用される、神経刺激643を制御するために使用される。種々の実施形態において、神経刺激は、慢性HF治療の副交感神経応答を引き出すために、副交感神経活動を刺激でき、かつ/又は交感神経活動を阻害できる。種々の実施形態において、神経刺激は、患者が臨床環境に赴けるまで、心拍出量を維持するために、事象に応答して短期治療として望ましいであろうような、交感神経応答を引き出すために、交感神経活動を刺激でき、かつ/又は副交感神経活動を阻害できる。
【0098】
図7は、慢性又は長期感知HF状態インデックス及び急性又は短期感知HF状態インデックスを発生させるための、2つ以上のHF関係パラメータを使用し、かつインデックスを使用してHF治療神経標的への神経刺激を制御する装置の実施形態を示す。測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ732に応じて長期感知HF状態インデックス740Aを発生させる、長期インデックス発生器739Aによって、又は少なくとも2つの測定パラメータ732を使用して他の方法で受信される。コンパレータ741Aは、インデックス740Aをインデックス用の標的742Aと比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。種々の実施形態において、インデックス値が高い、又は低い傾向を取るか、コンパレータが決定できるように、標的は、インデックス用の多数の以前の値の平均又は傾向に基づく。比較の結果は、HF治療神経標的744に適用される、神経刺激743の慢性フィードバックとして使用される。例えば、長期HF状態インデックスは、HF治療の一部として副交感神経応答を増加又は減少させるために、神経刺激の強度、期間又は位置を調整するために使用できる。測定HF関係パラメータは、少なくとも2つの測定パラメータ732に応じて短期感知HF状態インデックス740Bを発生させる、短期インデックス発生器739Bによって、又は少なくとも2つの測定パラメータ732を使用して他の方法で受信される。コンパレータ741Bは、インデックス740Bをインデックス用の標的742Bと比較する。標的は、プログラムされた値であっても良い。種々の実施形態において、インデックス値が高い、又は低い傾向を取るか、コンパレータが決定できるように、標的は、インデックス用の多数の以前の値の平均又は傾向に基づく。比較の結果は、HF治療神経標的744に適用される、神経刺激743の短期フィードバックとして使用される。例えば、長期HF状態インデックスは、代償不全事象による急性HF治療の一部として交感神経応答を増加又は減少させるために、神経刺激の強度、期間又は位置を調整するために使用できる。
【0099】
図8は、本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。例えば、図6の装置の実施形態は、この方法を実行できる。845で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、HF状態インデックスに変換される。846で、HF治療用の神経刺激は、HF状態インデックス及びインデックス用の標的を使用して制御される。
【0100】
図9は、本発明の種々の実施形態に従った、HF治療を制御する方法を示す。例えば、図7の装置の実施形態は、この方法を実行できる。図9のボックス945及び946は、図8の845及び846に一般的に対応する。947で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、短期HF状態を示すインデックスに変換され、かつ948で、少なくとも2つのHF関係パラメータが、長期HF状態を示すインデックスに変換される。949で、短期HF治療用の神経刺激は、短期HF状態インデックス及び短期インデックス用の標的を使用して制御され、かつ950で、長期HF治療用の神経刺激は、長期HF状態インデックス及び長期インデックス用の標的を使用して制御される。短期インデックスは、1分又は1時間以内に測定されたパラメータのような、最近測定されたHF関係パラメータに基づくことができる。長期インデックスは、例えば数時間、数日、数週、及び数ヶ月のような、長い期間にわたって測定されたパラメータに基づくことができる。 図10は、本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)1051を示す。示したIMDは、心不全治療を提供するために、所定神経標的へ送るための神経刺激信号を提供する。示した装置は、コントローラ回路1052と、メモリ1053とを含む。コントローラ回路は、ハードウェア、ソフトウェア、並びにハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを使用して実装できる。例えば、種々の実施形態によれば、コントローラ回路は、神経刺激治療と関連する機能を実行するための、メモリに埋設された命令を実行するために、プロセッサを含む。例えば、示した装置は、トランシーバ1054と、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と通信するために使用する関連した回路とを更に含む。種々の実施形態は、無線通信能力を有する。例えば、幾つかのトランシーバの実施形態には、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と無線通信するために使用する遠隔測定コイルを含む。
【0101】
示した装置は、神経刺激回路1055を更に含む。装置の種々の実施形態は、センサ回路1056も含む。幾つかの実施形態によれば、1つ以上のリードが、センサ回路及び神経刺激回路に接続できる。幾つかの実施形態は、センサ及びセンサ回路の間に無線接続を使用し、かつ幾つかの実施形態は、刺激回路及び電極の間に無線接続を使用する。種々の実施形態によれば、神経刺激回路は、例えば所定の位置に位置決めされた1つ以上の刺激電極1057を通して、電気刺激パルスを所望の神経標的に適用するために使用される。幾つかの実施形態は、超音波、光又は磁気エネルギーのような他のタイプのエネルギーを提供するために、トランスデューサを使用する。種々の実施形態において、センサ回路は、生理的応答を検出するために使用される。生理的応答の例には、心拍数及び毎分換気量、血圧のような心臓活動、及び1回換気量及び毎分換気量のような呼吸、並びに感知HRV及びHRTデータを含む。コントローラ回路は、神経刺激/阻害の強度を適切に調整するために、メモリ内に記憶された感知生理的応答の標的範囲(又は複数の範囲)を、感知生理的応答に比較できる。
【0102】
種々の実施形態によれば、刺激回路1055は、以下のパルス特性:刺激パルスの振幅1058、刺激パルスの周波数1059、パルスのバースト周波数1060、パルスの波形態1061及びパルス幅1062のいずれか、又はそれらの2つ以上のいかなる組み合わせも設定又は調整するためのモジュールを含む。示したバースト周波数1060パルス特性は、バースト周波数パルス特性の一部として調整できるか、又は別個に調整できるバースト期間1063と、デューティ・サイクル1064とを含む。例えば、バースト周波数は、毎分バースト数を参照できる。これらのバーストの各々は、バースト期間(刺激のバーストが提供される時間量)と、デューティ・サイクル(刺激が提供された時間の、時間全体に対する比)を有する。従って、限定でなく例として、6つのバースト(バースト長さ(パルス幅)がそれぞれ5秒であり、バースト間の期間が5秒である、6つのバースト)を、1分の刺激時間(バースト期間)中に送ることができる。この実施例において、バースト周波数は、毎分6バーストであり、バースト期間は、60秒であり、かつデューティ・サイクルは、50%である((6バースト×5秒/バースト)/60秒)。その上、1つ以上のバーストの期間は、いかなる定常バースト周波数も参照せずに、調整できる。例えば、所定バースト期間の単一の刺激バースト又は所定パルス幅のバーストパターン、及びバーストタイミングは、感知信号に応答して提供できる。更に、デューティ・サイクルは、バーストを定常バースト周波数で送ら必要なしに、バースト数を調整することによって、かつ/又は1つ以上のバースト期間を調整することによって調整できる。波形態の例には、方形波、三角波、正弦波、及び自然発生的な圧反射刺激を示すような、白色雑音を模倣するための所望の調和成分を有する波を含む。その上、種々のコントローラの実施形態は、刺激期間を制御することが可能である。センサ回路は、HF状態インデックスを作り出すように、HF関係パラメータを検出するために使用される。コントローラは、インデックスをメモリ内に記憶された標的範囲と比較し、かつ応答を標的範囲内に保持しようとして、比較に基づき神経刺激を制御する。標的範囲は、プログラム可能であり、かつ/又は過去の測定から導かれる。
【0103】
図11は、本発明の種々の実施形態に従った、神経刺激(NS)部品1166及び心律動管理(CRM)部品1167を有する埋め込み型医療装置(IMD)1165を示す。示した装置は、コントローラ1168と、メモリ1169とを含む。種々の実施形態によれば、コントローラは、神経刺激及びCRM機能を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、並びにハードウェア及びソフトウェアの組み合わせを含む。例えば、本開示において論じられたプログラムされた治療応用は、メモリにおいて具体化され、かつプロセッサによって実行されるコンピュータ読み取り可能な命令として記憶されることができる。種々の実施形態によれば、コントローラは、神経刺激及びCRM機能を実行するための、メモリに埋設された命令を実行するために、プロセッサを含む。神経刺激治療は、心不全治療を含む。種々の実施形態は、抗高血圧(AHT)治療、及び抗リモデリング治療(ART)を含む。CRM機能の例には、徐脈ペーシング、ATP、除細動及び電気除細動、並びにCRTのような抗頻脈治療を含む。コントローラは、頻脈を検出するための命令を同様に実行する。示した装置は、トランシーバ1170と、プログラマ又は他の外部若しくは内部装置と通信するために使用する関連した回路とを更に含む。種々の実施形態は、遠隔測定コイルを含む。
【0104】
CRM治療セクション1167は、1つ以上の電極を使用して、心臓を刺激し、かつ/又は心臓信号を感知するために、コントローラの制御下で部品を含む。示したCRM治療セクションは、心臓を刺激するために電極を通して電気信号を提供するために使用するパルス発生器1171を含み、かつ感知心臓信号を検出及び処理するための感知回路1172を更に含む。インタフェース1173は、コントローラ1168及びパルス発生器1171及び感知回路1172の間で通信するために使用するために一般的に示される。3つの電極は、CRM治療を提供するために使用する例として示される。しかしながら、本発明は、特定数の電極部位に限定されない。各電極は、それ自身のパルス発生器と、感知回路とを含むことができる。しかしながら、本発明は、そのように限定されない。パルス発生及び感知機能は、複数の電極と機能するために多重化できる。
【0105】
NS治療セクション1166は、神経刺激標的を刺激し、かつ/又は血圧及び呼吸のような、神経活動若しくは神経活動の代用物と関連するパラメータを感知するために、コントローラの制御下で、部品を含む。3つのインタフェース1174が、神経刺激を提供するための使用のために示される。しかしながら、本発明は、特定数のインタフェース、又はいかなる特定の刺激若しくは感知機能にも限定されない。パルス発生器1175は、トランスデューサ、又は神経刺激標的を刺激ために使用するトランスデューサに、電気パルスを提供するために使用される。種々の実施形態によれば、パルス発生器は、刺激パルスの振幅、刺激パルスの周波数、パルスのバースト周波数、及び方形波、三角波、正弦波、及び白色雑音又は他の信号を模倣するための所望の調和成分を有する波のようなパルスの形態を設定し、かつ幾つかの実施形態では変更する回路を含む。感知回路1176は、神経活動、血圧、呼吸等のセンサのような、センサからの信号を検出及び処理するために使用される。インタフェース1174は、一般的にコントローラ1168及びパルス発生器1175及び感知回路1176の間で通信するための使用のために示される。各インタフェースは、例えば別個のリードを制御するために使用できる。NS治療セクションの種々の実施形態は、神経標的を刺激するパルス発生器のみを含む。
【0106】
図12は、種々の実施形態に従った、マイクロプロセッサに基づく埋め込み型装置の実施形態の系統図を示す。装置のコントローラは、双方向データバスを介してメモリ1278と通信するマイクロプロセッサ1277である。コントローラは、状態機械タイプの設計を使用する、他のタイプの論理回路(例えば、個別部品又はプログラマブルロジックアレイ)によって実装できるが、マイクロプロセッサに基づくシステムが、好ましい。本明細書で使用されるように、用語「回路」は、個別論理回路か、マイクロプロセッサのプログラミングを指すと解釈されるべきである。図中に、リング電極1279A−C及びチップ電極1280A−Cを有する双極リードと、感知増幅器1281A−Cと、パルス発生器1282A−Cと、チャネルインタフェース1283A−Cとを含む、「A」から「C」と指定される感知及びペーシングチャネルの3つの例が、示される。各チャネルは、このようにして電極に接続されるパルス発生器で構成されるペーシングチャネルと、電極に接続される感知増幅器で構成される感知チャネルとを含む。チャネルインタフェース1283A−Cは、マイクロプロセッサ1277と双方向で通信し、かつ各インタフェースは、ペーシングパルスを出力し、ペーシングパルスの振幅を変え、かつ感知増幅器の利得及び閾値を調整するために、マイクロプロセッサによって書き込めるレジスタ及び感知増幅器からの感知信号入力をディジタル化するアナログ−ディジタル変換器を含むことがある。ペースメーカの感知回路は、特定のチャネルによって発生した電気記録図信号(すなわち心臓電気活性を表す電極によって感知された電圧)が、規定の検出閾値を超える時、心腔感知、心房感知又は心室感知を検出する。特定のペーシングモードで使用されるペーシングアルゴリズムは、ペーシングを引き起こすか、又は阻害するためにかかる感知を用いる。内因性心房及び/又は心室拍数は、それぞれ心房及び心室感知の間の時間間隔を測定することによって測定でき、かつ心房及び心室頻脈性不整脈を検出するために使用できる。
【0107】
各双極リードの電極は、リード内の導体を介して、マイクロプロセッサによって制御されるスイッチング回路網1284に接続される。スイッチング回路網は、内因性心臓活動を検出するために感知増幅器の入力に、かつペーシングパルスを送るためにパルス発生器の出力に、電極を切り替えるために使用される。スイッチング回路網は、装置が、リードのリング及びチップ電極の両方を使用する双極モードで、又はリードの電極の一方のみを使用する単極モードで感知又はペーシングすることも可能にし、装置ハウジング(缶)1285、又は他のリード上の他の電極が、接地電極の役目を果たす。ショックパルス発生器1286は、ショックを与えられる頻脈性不整脈を検出すると、心房又は心室に一対のショック電極1287及び1288を介して除細動ショックを送るコントローラにもインタフェースで接続される。
【0108】
チャネルD及びEと識別される、神経刺激チャネルは、副交感神経刺激及び/又は交感神経阻害を提供するために装置に組み込まれ、そこで一方のチャネルは、第1電極1289Dと、第2電極1290Dと、パルス発生器1291Dと、チャネルインタフェース1292Dとを有する双極リードを含み、かつ他方のチャネルは、第1電極1289Eと、第2電極1290Eと、パルス発生器1291Eと、チャネルインタフェース1292Eとを有する双極リードを含む。他の実施形態は、単極リードを使用でき、その場合に神経刺激パルスが、缶又は他の電極に関係付けられる。各チャネルのパルス発生器は、振幅、周波数、デューティ・サイクル等に関してコントローラによって異なっても良い、一連の神経刺激パルスを出力する。この実施形態において、神経刺激チャネルの各々は、適切な神経標的の近くに血管内配置できるリードを使用する。他のタイプのリード及び/又は電極も、用いることができる。神経カフ電極は、神経刺激を提供するために、血管内配置電極の代わりに使用できる。幾つかの実施形態において、神経刺激電極のリードは、無線リンクによって置き換えられる。
【0109】
図は、外部装置と通信するために使用できる、マイクロプロセッサに接続された遠隔測定インタフェース1293を示す。示したマイクロプロセッサ1277は、神経刺激治療ルーチン及び心筋刺激ルーチンを実行することが可能である。NS治療ルーチンの例には、心不全治療、抗高血圧治療(AHT)、及び抗リモデリング治療(ART)を含む。心筋治療ルーチンの例には、徐脈ペーシング治療、電気除細動又は除細動治療のような抗頻脈ショック治療、抗頻脈ペーシング治療(ATP)、及び心臓再同期治療(CRT)を含む。
【0110】
--- <<システムの実施形態>> ---
図13は、本発明の種々の実施形態に従った、埋め込み型医療装置(IMD)1394と、外部システム又は装置1395とを含むシステムを示す。IMDの種々の実施形態は、NS及びCRM機能の組み合わせを含む。IMDは、生物剤と、医薬品も提供できる。外部システム及びIMDは、データ及び命令を無線通信することが可能である。種々の実施形態において、例えば外部システム及びIMDは、データ及び命令を無線通信するために、遠隔測定コイルを使用する。従って、プログラマが、IMDによって提供されるプログラムされた治療を調整するために使用でき、かつIMDは、例えば、無線遠隔測定を使用してプログラマに、(電池及びリード抵抗のような)装置データと、(感知及び刺激データのような)治療データとを報告できる。種々の実施形態によれば、IMDは、HF治療を提供するために神経標的を刺激/阻害する。
【0111】
外部システムは、医師若しくは他の介護者又は患者のような利用者が、IMDの操作を制御し、かつIMDによって獲得された情報を得ることを可能にする。一実施形態において、外部システムは、IMDと遠隔測定リンクを介して双方向に通信するプログラマを含む。もう1つの実施形態において、外部システムは、電気通信網を通して遠隔装置と通信する外部装置を含む患者管理システムである。外部装置は、IMDの近傍にあり、かつIMDと遠隔測定リンクを介して双方向に通信する。遠隔装置は、利用者が離れた位置から患者を監視し、かつ処置することを可能にする。患者監視システムは、更に後述する。
【0112】
遠隔測定リンクは、埋め込み型医療装置から外部システムへのデータ伝送を提供する。このことは、例えばIMDによって獲得されたリアルタイム生理的データを伝送することと、IMDによって獲得され、かつ記憶された生理的データを抽出することと、埋め込み型医療装置に記憶された治療履歴データを抽出することと、IMDの作動状態(例えば、電池状態及びリードインピーダンス)を示すデータを抽出することとを含む。遠隔測定リンクは、外部システムからIMDへのデータ伝送も提供する。このことは、例えば生理的データを獲得するためにIMDをプログラミングすることと、(装置作動状態のような)少なくとも1つの自己診断テストを実行するためにIMDをプログラミングすることと、少なくとも1つの治療を提供するために、IMDをプログラミングすることとを含む。
【0113】
図14は、本発明の種々の実施形態に従った、外部装置1495と、埋め込み型神経刺激(NS)装置1496と、埋め込み型心律動管理(CRM)装置1497とを含むシステムを示す。種々の形態は、NS装置及びCRM装置又は他の心臓刺激器の間で通信する方法を含む。種々の実施形態において、この通信は、他の装置から受信したデータに基づき、装置1496又は1497の一方がより適切な治療(すなわちより適切なNS治療又はCRM治療)を提供することを可能にする。幾つかの実施形態は、オンデマンド通信を提供する。種々の実施形態において、この通信は、装置の各々が、他の装置から受信したデータに基づき、より適切な治療(すなわち、より適切なNS治療及びCRM治療)を提供することを可能にする。示したNS装置及びCRM装置は、互いに無線通信することが可能であり、かつ外部システムは、NS及びCRM装置の少なくとも一方と無線通信することが可能である。例えば、種々の実施形態は、互いにデータ及び命令を無線通信するために、遠隔測定コイルを使用する。他の実施形態において、データ及び/又はエネルギーの通信は、超音波手段による。NS及びCRM装置の間に無線通信を提供するよりもむしろ、種々の実施形態は、NS装置及びCRM装置の間で通信するために使用する静脈内供給されるリードのような、通信ケーブル又はワイヤを提供する。幾つかの実施形態において、外部システムは、NS及びCRM装置の間の通信ブリッジの役目を果たす。
【0114】
図15は、限定でなく、例として、種々の実施形態に従った、リード1502が心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつリード1503が迷走神経内の神経連絡を刺激及び/又は阻害するために位置決めされる、患者の胸部に皮下又は筋肉下に設置されたIMD1501を示す。種々の実施形態によれば、神経刺激リード1503は、神経標的に皮下で貫通され、かつ神経標的を刺激するために神経カフ電極を有することができる。幾つかのリードの実施形態は、神経標的に近接して血管に血管内供給され、かつ神経標的を経血管刺激するために血管内でトランスデューサを使用する。例えば、幾つかの実施形態は、内頸静脈内に位置決めされる電極を使用して迷走神経を標的にする。
【0115】
図16は、種々の実施形態に従った、リード1602が心臓にCRM治療を提供するために位置決めされ、かつサテライトトランスデューサ1603が神経標的を刺激/阻害するために位置決めされる、IMD1601を示す。サテライトトランスデューサは、無線リンクを介して、衛星に対する惑星の役目を果たす、IMDに接続される。刺激及び通信は、無線リンクを通して実行できる。無線リンクの例には、RFリンク及び超音波リンクを含む。示さないが、幾つかの実施形態は、無線リンクを使用して心筋刺激を実行する。サテライトトランスデューサの例には、皮下電極、神経カフ電極及び血管内電極を含む。
【0116】
図17は、外部システム1704の実施形態を示すブロック図である。外部システムは、幾つかの実施形態においてプログラマを含む。示した実施形態において、外部システムは、患者管理システムを含む。示すように、外部システム1704は、外部装置1705と、電気通信網1706と、遠隔装置1707とを含む患者管理システムである。外部装置1705は、IMDの近傍に設置され、かつIMDと通信するために外部遠隔測定システム1708を含む。遠隔装置1707は、1つ以上の遠隔位置にあり、かつ通信網1706を通して外部装置1705と通信し、このようにして医師又は他の介護者が離れた位置から患者を監視及び処置することを可能にし、かつ/又は1つ以上の離れた位置からの種々の処置情報源へのアクセスを可能にする。示した遠隔装置1707は、ユーザインタフェース1709を含む。
【0117】
当業者は、本明細書に示され、かつ記載されたモジュール及び他の回路が、ソフトウェア、ハードウェア、並びにソフトウェア及びハードウェアの組み合わせを使用して実施できることを理解するであろう。このようにして、用語モジュールは、ソフトウェアの実装、ハードウェアの実装、並びにソフトウェア及びハードウェアの実装を包含することが意図される。
【0118】
本開示に示した方法は、本発明の範囲内には他の方法を含まないと言うことを意図するものではない。当業者は、本開示を読んで理解すれば、本発明の範囲内に含まれ得る他の方法を理解するであろう。上記実施形態、及び示した実施形態の部分は、必ずしも相互に排他的でない。これらの実施形態、又はその部分は、組み合わせることができる。種々の実施形態において、以上で提供された方法は、プロセッサによって行われる時に、プロセッサにそれぞれの方法を実行させる、命令シーケンスを表す搬送波又は伝搬信号において具体化されるコンピュータデータ信号として実施される。種々の実施形態において、以上に提供された方法は、プロセッサがそれぞれの方法を実行することを命令できるコンピュータアクセス可能な媒体に含まれる1組の命令として実施される。種々の実施形態において、媒体は、磁気媒体、電子媒体又は光学媒体である。
【0119】
具体的な実施形態が、本明細書に示され、かつ記載されたが、同じ目的を達成するために求められるいかなる構成も、示した具体的な実施形態の代わりに用い得ることが、当業者には認められるであろう。本願は、本発明の適応例及び変形例をカバーすることが意図される。上記の記述は、例示的であり、かつ限定的でないことを意図するものであることを理解すべきである。上記実施形態の組み合わせ、並びに他の実施形態における上記実施形態の一部の組み合わせは、上記記述を検討すれば、当業者にとって明らかであろう。本発明の範囲は、添付の請求項を、かかる請求項が権利を与えられる同等物の全範囲と共に参照して、決定されるべきである。
【符号の説明】
【0120】
203 埋め込み型センサ
204 外部センサ
1052 コントローラ回路
1056 センサ
1168 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全治療のための刺激信号を送るように構成された刺激器と、
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を少なくとも提供するように構成された多数のセンサと、
前記刺激器と、前記多数のセンサとに接続されたコントローラとを含むシステムであって、前記コントローラは、心不全状態インデックスを作り出すために前記第1及び第2測定を使用し、かつ前記インデックスを使用して前記信号を変調するために前記刺激器を制御するように構成されるシステム。
【請求項2】
前記刺激器は、神経刺激信号を心不全治療用の神経標的に送るように構成された神経刺激器を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、短期心不全状態を示す短期インデックスを提供するために、前記心不全状態の少なくとも2つの測定を使用し、かつ前記短期インデックスを使用して前記信号を変調するために、前記刺激器を制御するように構成され、かつ
前記コントローラは、長期心不全状態を示す長期インデックスを提供するために、前記心不全状態の少なくとも2つの測定を使用し、かつ前記長期インデックスを使用して前記信号を変調するために、前記刺激器を制御するように構成される請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき副交感神経応答を増加させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき副交感神経応答を減少させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき交感神経応答を増加させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記長期インデックスが、第1閾値よりも小さい時に副交感神経応答を増加させ、かつ前記長期インデックスが、第2閾値を超える時に前記副交感神経応答を減少させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2測定の少なくとも一方が、上方又は下方への傾向を取るか決定することを更に含む請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心拍数変動(HRV)測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心拍数不整(HRT)測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、呼吸測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、活動測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心音測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、血圧測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定は、心拍数変動(HRV)測定、心拍数不整(HRT)測定、呼吸測定、心音測定、血圧測定、又は胸腔インピーダンス測定から選択される測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記刺激信号は、心筋刺激信号を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
単一の埋め込み型装置内の回路は、前記神経刺激信号と、前記心筋刺激信号とを提供する請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
第1埋め込み型装置内の回路は、前記神経刺激信号を提供し、かつ第2埋め込み型装置内の回路は、前記心筋刺激信号を提供する請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記多数のセンサの全ては、埋め込み型センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記多数のセンサは、埋め込み型センサと、外部センサとを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を得る手段と、
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段と、
前記心不全状態の標識として前記心不全インデックスを使用して心不全治療を調整する手段とを含むシステム。
【請求項22】
心不全治療を調整する前記手段は、神経刺激パラメータを調整する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
心不全治療を調整する前記手段は、神経刺激標的を調整する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段は、推論エンジンを使用して心不全インデックスを作り出す手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段は、確率密度関数を提供するために前記第1測定及び前記第2測定を使用する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を得ることと、
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出すことと、
前記心不全状態の標識として前記心不全インデックスを使用して心不全治療を調整することとを含む方法。
【請求項27】
前記心不全治療を調整することは、神経刺激信号を調整することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の振幅を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の周波数を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の持続時間を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
心不全インデックスを作り出すことは:
短期心不全インデックス及び長期心不全インデックスを作り出すことを含み、かつ
前記心不全治療を調整することは、前記短期心不全インデックスを使用して前記心不全治療を調整することと、前記長期心不全インデックスを使用して前記心不全治療を調整することとを含む請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心拍数変動(HRV)測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心拍数不整(HRT)測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、呼吸測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、活動測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心音測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、血圧測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記第1測定及び前記第2測定を得ることは、心拍数変動(HRV)測定、心拍数不整(HRT)測定、呼吸測定、心音測定、又は血圧測定から選択される測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項39】
心不全治療を調整することは、心不全インデックスの傾向を探ることと、前記インデックスの傾向を使用して前記心不全治療を調整することとを含む請求項26に記載の方法。
【請求項1】
心不全治療のための刺激信号を送るように構成された刺激器と、
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を少なくとも提供するように構成された多数のセンサと、
前記刺激器と、前記多数のセンサとに接続されたコントローラとを含むシステムであって、前記コントローラは、心不全状態インデックスを作り出すために前記第1及び第2測定を使用し、かつ前記インデックスを使用して前記信号を変調するために前記刺激器を制御するように構成されるシステム。
【請求項2】
前記刺激器は、神経刺激信号を心不全治療用の神経標的に送るように構成された神経刺激器を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、短期心不全状態を示す短期インデックスを提供するために、前記心不全状態の少なくとも2つの測定を使用し、かつ前記短期インデックスを使用して前記信号を変調するために、前記刺激器を制御するように構成され、かつ
前記コントローラは、長期心不全状態を示す長期インデックスを提供するために、前記心不全状態の少なくとも2つの測定を使用し、かつ前記長期インデックスを使用して前記信号を変調するために、前記刺激器を制御するように構成される請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき副交感神経応答を増加させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき副交感神経応答を減少させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記短期インデックスと、標的との比較に基づき交感神経応答を増加させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記長期インデックスが、第1閾値よりも小さい時に副交感神経応答を増加させ、かつ前記長期インデックスが、第2閾値を超える時に前記副交感神経応答を減少させるために前記刺激器を制御するように構成される請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2測定の少なくとも一方が、上方又は下方への傾向を取るか決定することを更に含む請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心拍数変動(HRV)測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心拍数不整(HRT)測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、呼吸測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、活動測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、心音測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記心不全状態の第1測定又は前記心不全状態の第2測定は、血圧測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定は、心拍数変動(HRV)測定、心拍数不整(HRT)測定、呼吸測定、心音測定、血圧測定、又は胸腔インピーダンス測定から選択される測定を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記刺激信号は、心筋刺激信号を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
単一の埋め込み型装置内の回路は、前記神経刺激信号と、前記心筋刺激信号とを提供する請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
第1埋め込み型装置内の回路は、前記神経刺激信号を提供し、かつ第2埋め込み型装置内の回路は、前記心筋刺激信号を提供する請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記多数のセンサの全ては、埋め込み型センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記多数のセンサは、埋め込み型センサと、外部センサとを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を得る手段と、
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段と、
前記心不全状態の標識として前記心不全インデックスを使用して心不全治療を調整する手段とを含むシステム。
【請求項22】
心不全治療を調整する前記手段は、神経刺激パラメータを調整する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
心不全治療を調整する前記手段は、神経刺激標的を調整する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段は、推論エンジンを使用して心不全インデックスを作り出す手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出す手段は、確率密度関数を提供するために前記第1測定及び前記第2測定を使用する手段を含む請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
心不全状態の第1測定及び前記心不全状態の第2測定を得ることと、
前記第1測定及び前記第2測定を使用して心不全インデックスを作り出すことと、
前記心不全状態の標識として前記心不全インデックスを使用して心不全治療を調整することとを含む方法。
【請求項27】
前記心不全治療を調整することは、神経刺激信号を調整することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の振幅を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の周波数を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記神経刺激信号を調整することは、前記神経刺激信号の持続時間を調整することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
心不全インデックスを作り出すことは:
短期心不全インデックス及び長期心不全インデックスを作り出すことを含み、かつ
前記心不全治療を調整することは、前記短期心不全インデックスを使用して前記心不全治療を調整することと、前記長期心不全インデックスを使用して前記心不全治療を調整することとを含む請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心拍数変動(HRV)測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心拍数不整(HRT)測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、呼吸測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、活動測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、心音測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記第1測定及び前記第2測定の少なくとも1つを得ることは、血圧測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記第1測定及び前記第2測定を得ることは、心拍数変動(HRV)測定、心拍数不整(HRT)測定、呼吸測定、心音測定、又は血圧測定から選択される測定を得ることを含む請求項26に記載の方法。
【請求項39】
心不全治療を調整することは、心不全インデックスの傾向を探ることと、前記インデックスの傾向を使用して前記心不全治療を調整することとを含む請求項26に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−536557(P2009−536557A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509916(P2009−509916)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/066543
【国際公開番号】WO2007/133873
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/066543
【国際公開番号】WO2007/133873
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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