説明

心外膜マッピング及びアブレーション用のカテーテル

【課題】カテーテル本体と電極アセンブリとを有する、囲心腔から心外膜組織をマッピングし除去するように適合されたカテーテルを提供する。
【解決手段】近位及び遠位端部を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の遠位端部にある偏向可能な中間部分14と、中間部分の遠位側にあるマッピング及びアブレーション用の電極アセンブリ17とを有している。カテーテルはまた、カテーテル本体12の近位端部にある制御ハンドル16を有しており、この制御ハンドルは、中間部分14の偏向を制御するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心外膜心臓組織のアブレーション及び電気活動の検知に特に有用な電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心不整脈は、また特に心房細動は、とりわけ老年人口において、一般的でかつ危険な慢性病として持続するものである。洞調律が正常な患者において、心房組織、心室組織、及び興奮伝播組織から構成される心臓は、洞調的でパターン化された様式で拍動するように電気的に興奮される。心不整脈を有する患者においては、心組織の異常領域は、洞調律が正常な患者に見られるように正常に伝播する組織に関連付けられる洞調的な拍動周期に従わない。その代わりに、心組織の異常領域は、隣接組織に異常に伝播し、それによって、心周期を乱して非同期的な心律動にする。そのような異常な伝播は、例えば、房室結節(AV)及びヒス束の伝播経路に沿った洞房(SA)結節の領域、又は、心室及び心房室の壁を形成する心筋組織など、心臓の様々な領域で生じることが既に知られている。
【0003】
心不整脈は、心房性不整脈を含めて、このマルチウェーブレットリエントラント型では、心室の周りに散在し多くの場合に自己伝搬する電気インパルスの多数の非同期ループを特徴とするマルチウェーブレットリエントラント型(multiwavelet reentrant type)である可能性がある。マルチウェーブレットリエントラント型に代わって又はそれに加えて、心不整脈はまた、心房の組織の孤立領域が、急速で反復的な様式で自律的に興奮する場合など、局所的な起源を有することもある。
【0004】
心室性頻脈症(Vーtach又はVT)は、心室のうちの1つにおいて起こる頻脈症又は高速な心律動である。これは、心室細動及び突然死につながり得るため、場合によっては重篤な不整脈となる。
【0005】
心不整脈の診断及び治療には、心臓組織の、特に心内膜の電気的性質及び心臓容積をマッピングすること、並びに、エネルギーの印加によって心組織に選択的にアブレーションを施すことが含まれる。そのようなアブレーションにより、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止めるかあるいは修正することができる。アブレーションプロセスは、非伝導性の病変部を形成することによって、望ましくない電気的経路を破壊するものである。カテーテルに基づく装置及び治療方法の例は一般に、参照によって開示内容が本願に組み込まれる、ムンシフ(Munsif)への米国特許第5,617,854号、チャン(Jang)らへの米国特許第4,898,591号、アビトール(Avitall)への米国特許第5,487,385号、及びスワンソン(Swanson)への米国特許第5,582,609号において開示されているものなど、心室を画定する壁組織に直線状又は曲線状の病変部を形成するように適合されたアブレーションカテーテル及び方法を用いて、標的の心房を分節化することを目標するものであった。加えて、すべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる、ステム(Stem)らへの国際公開第93/20767号、イスナー(Isner)らへの米国特許第5,104,393号、及びシュワルツ(Swartz)らへの米国特許第5,575,766号においてそれぞれ開示されているように、そのような心房壁を形成するための様々なエネルギー送達様式が開示されており、マイクロ波、レーザー、より一般的には高周波エネルギーを使用して心組織壁に沿って伝導ブロックを生じさせることが含まれる。
【0006】
この2段階の手技、つまりマッピングに続くアブレーションにおいては、心臓内の各点における電気活動が、通常、1つ以上の電気センサーを収容したカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点におけるデータを取得することによって検知され測定される。次いでこれらのデータが利用されて、アブレーションが実施される心内膜の標的領域が選択される。しかしながら、最近の技術は、心室性頻脈症を治療するための心外膜マッピング及びアブレーションを目指している。この技術は、剣状突起下心膜の穿刺技術を用いて、標準的なアブレーションカテーテルを囲心腔に導入することを必要とする。
【0007】
壁側心膜は、心外膜、心筋、及び心内膜の3つの層を備える心臓を囲む外側保護層又は嚢である。囲心腔又は心膜腔は、壁側心膜と心外膜とを分離する。少量の流体が壁側心膜によって分泌されて表面を潤滑させ、その結果、心臓は壁側心膜の内部で自在に運動することができる。明らかに、壁側心膜と心外膜との粘着性は、心臓の筋収縮を妨げるものである。
【0008】
心外膜に接近する上でもう一つの潜在的な問題が、横隔神経によってもたらされる。横隔神経は、横隔膜の収縮を生じさせるために大部分が運動神経線維でできている。加えて、縦隔及び胸膜、並びに、上腹部、特に肝臓及び胆嚢の多数の構成要素に感覚神経支配をもたらす。右横隔神経は右心房の上を通り、左横隔神経は左心室の上を通り、横隔膜を別々に貫いている。これらの神経は共に、運動線維を横隔膜に、感覚線維を線維性心膜、縦隔胸膜、及び横隔腹膜に供給している。横隔神経のいかなる損傷も、特に年配の患者には、とりわけその損傷が持続的なものである場合、重篤な呼吸困難を引き起こすことがある。肺臓自体は、心外膜を除去するときに損傷を受けやすい一組織であるが、肺臓の組織は熱傷を受けた場合に、より容易に修復し得るものである。
【0009】
心内膜用に開発されたカテーテルは一般に、可撓性シャフトで支持される全方向性のアブレーションチップを有している。そのようなカテーテルは、心臓の又は心臓の近くの空洞及び他の管状の領域におけるマッピング及びアブレーションに特に有用であるが、全方向性のアブレーションチップは、心外膜上で使用されると、壁側心膜、横隔神経、及び/又は肺臓などの有害でかつ望ましくないアブレーションを生じる危険性を相当に増大させることがある。更に、そのような全方向性アブレーションチップが装着された可撓性シャフトは、潤滑された心外膜表面に対して牽引することも支持することもない。このシャフトはしばしば反転し、囲心腔の内部に滑り込む。
【0010】
また、ラッソアセンブリを有するカテーテルも知られている。そのようなカテーテルは、例えば、すべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる米国特許第6728455号、同第6973339号、同第7003342号、同第7142903号、及び同第7412273号において開示されている。「ラッソ」は通常、ラッソが小孔に位置し得るようにカテーテル上にて横断方向に装着されるので、「ラッソ」カテーテルは、肺静脈の小孔の周りでの円周状アブレーションに特に有用である。そのような方向付けは、しかしながら、囲心腔などの比較的狭くかつ平坦な空間には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、アブレーションチップが方向性を有するように、またシャフトがアブレーションチップにおける組織との接触を支援し、アブレーションチップの位置決めにおいて更なる制御性及び予測性をユーザーにもたらすように、カテーテルが心外膜に適合されることが望ましい。その目的のためには、シャフトが心外膜に対して固定され、平面から離れて偏向可能であり、その結果、組織に外傷を与える危険性を最小にして囲心腔の境界内で心外膜の表面を掃引できることが望ましい。望ましくない電位が心外膜アブレーションによって有効に遮断されたか否かがユーザーに分かるように、カテーテルが、アブレーションの間、内部の電位記録又は電位図(ECG)を連続的にフィードバックすることが更に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、心膜嚢から心外膜組織をマッピングし除去するように適合されたカテーテルに関する。一実施形態において、カテーテルは、カテーテル本体と、中間部分と、電極アセンブリとを有し、その電極アセンブリは、概ね同じ平面内のチップ部分とループ部材とを有する。チップ部分は、心外膜に面するようにループ部材の一方の側に露出されたアブレーション電極と、心嚢に面するようにループ部材の反対の側に露出された絶縁部材とを有しており、中間部分は、電極アセンブリを二方向に同じ平面内で偏向させる。そのように構成されているため、アブレーション電極が確実に心外膜に面しかつ接触する状態で、カテーテルは、安全に心膜嚢内で操作され、心外膜の上で側方に掃引されることができる。
【0013】
子細な実施形態において、ループ部材は開端型であり、形状記憶性を有しており、その結果、囲心腔の狭小な制限域に適合する非侵襲的な形状を呈するが、カテーテルが患者の体に挿入されるときは直線状にされることができる。ループ部材はまた、ペーシング、マッピング、及びセンシングなどの電気生理学的機能に好適なリング電極を搭載している。
【0014】
安定化部材及びチップ部分における組織との接触を更に確実にするために、電極アセンブリが延びる中間部分は、アブレーション電極の側方に向かう曲げ又は湾曲を持たせて予め成形されることができる。偏向可能な中間部分は、ある程度の剛性をカテーテルに持たせて組織との接触を容易にするために、編み組まれ予め成形されたチューブ材で構成されてもよい。
【0015】
このチップ部分は風船を有することができ、その風船は、チップ部分の上方及び側方の組織を含めて、周囲の心嚢組織を押しのけるように膨張可能である。風船は、風船の入口に連結された膨張チューブから供給を受け、その入口はチップ部分内の通路へと延びている。
【0016】
またカテーテルは洗浄チューブ材を有することができ、洗浄チューブ材の遠位端部は、チップ部分内に形成された通路内で受容されている。洗浄チューブ材から送られた流体は、その通路を通過してチップ部分を冷却し、開口部を通してチップ部分を去って、除去された心外膜組織を冷却することができる。
【0017】
カテーテルは注射針を更に備えてもよく、その注射針の遠位端部は、チップ部分の外側に延びて心外膜組織を穿刺することができる。針内のルーメンにより、穿刺された組織に薬剤を直接送ることが可能となる。治療部位における温度検知のための熱電対ワイヤが、ルーメン内に収容され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のこれらの及び他の特徴と利点は、添付の図面と共に考慮すれば、以下の詳細な説明を参照することによって更に理解されよう。
【図1】本発明のカテーテルの実施形態の平面図。
【図2a】第1の直径に沿った、図1のカテーテルのカテーテル本体と中間部分の連結部の側断面図。
【図2b】第1の直径に概ね垂直な第2の直径に沿った、図2aの連結部の側断面図。
【図2c】線c−cに沿った、図2aのカテーテル本体の長手断面図。
【図2d】線d−dに沿った、図2aの中間部分の長手断面図。
【図3】心臓の壁側心膜と心外膜との間の囲心腔に位置する図1のカテーテルの側断面図。
【図4a】第1の直径に沿った、図1のカテーテルの中間部分とチップ部分との連結部の側断面図。
【図4b】第1の直径に概ね垂直な第2の直径に沿った、図4aの連結部の側断面図。
【図5】チップ部分と安定化部材とを有する電極アセンブリの実施形態の平面図。
【図6a】安定化部材の近位端部を示す、中間部分とチップ部分との間の連結チューブ材の実施形態の側断面図。
【図6b】図1の連結チューブ材とチップ部分との連結部の側断面図。
【図7a】アブレーション電極と絶縁部材とを含む、遠位チップの実施形態の分解斜視図。
【図7b】線b−bに沿った、図7aの遠位チップの長手図。
【図7c】線c−cに沿った、図7aの遠位チップの長手図。
【図8】線d−dに沿った、図7aの遠位チップの側断面図。
【図9a】本発明のカテーテルの実施形態に準じた制御ハンドルの操作によって制御される、カテーテル遠位部分の二方向偏向を示している。
【図9b】本発明のカテーテルの実施形態に準じた制御ハンドルの操作によって制御される、カテーテル遠位部分の二方向偏向を示している。
【図9c】本発明のカテーテルの実施形態に準じた制御ハンドルの操作によって制御される、カテーテル遠位部分の二方向偏向を示している。
【図10】囲心腔を遠位チップから持上げるように適合された膨張部材を有する、心臓の壁側心膜と心外膜との間の囲心腔に位置する本発明のカテーテルの別の実施形態の側断面図。
【図11a】膨張部材を有する、本発明の特徴に従った遠位チップの別の実施形態の上面斜視図。
【図11b】図11aの遠位チップの下面斜視図。
【図12】本発明の特徴に従った膨張部材の実施形態の斜視図。
【図13】膨張部材が膨張された、図11a及び11bの遠位チップの側断面図。
【図13a】線a−aに沿った、図13の遠位チップの長手断面図。
【図13b】線b−bに沿った、図13の遠位チップの長手断面図。
【図13c】線c−cに沿った、図13の遠位チップの長手断面図。
【図13d】線b−bに沿った、図13の遠位チップの長手断面図。
【図14】図13の遠位チップと共に使用するように適合された連結チューブ材の実施形態の側断面図。
【図15】図13の遠位チップと共に使用するように適合された中間部分の実施形態の長手断面図。
【図16a】膨張部材を有する、本発明の特徴に従った遠位チップの別の実施形態の上面斜視図。
【図16b】注射針開口部を有する、図16aの遠位チップの下面斜視図。
【図17】注射針の実施形態の長手断面図。
【図18a】本発明の特徴に従った、膨張した膨張部材及び配備された注射針を示す、図16aの遠位チップの側断面図。
【図18b】線b−bに沿った、図18aの遠位チップの長手断面図。
【図19】図16a及び16bの遠位チップと共に使用するのに適した中間部分の実施形態の長手断面図。
【図20】図18aの連結チューブ材及び遠位チップの実施形態の連結部の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、心外膜マッピング及びアブレーション用のカテーテル10の実施形態が、近位及び遠位端部を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体12の遠位端部にある偏向可能な中間部分14と、中間部分の遠位側にあるマッピング及びアブレーション用の電極アセンブリ17とを有している。カテーテルはまた、カテーテル本体12の近位端部にある制御ハンドル16を有しており、この制御ハンドルは、中間部分14の偏向を制御するためのものである。
【0020】
有利にも、電極アセンブリ17は、遠位チップ部分15の方向性アブレーション電極19と、安定化部材21に装着された複数の検知電極20とを有しており、安定化部材21は、心外膜の治療部位におけるアブレーション電極19の運動及び位置決めを容易にする。
【0021】
図2a、2b、及び2cを参照すると、カテーテル本体12は、単一の軸方向の又は中央のルーメン18を有する、細長いチューブ状の構造を備えている。カテーテル本体12は可撓性があり、すなわち曲がることができるが、その長さに沿って実質的に圧縮不可能である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造をなし、任意の好適な材料で作ることができる。現時点で好ましい構造は、ポリウレタン又はペバックス(PEBAX)で作られた外壁20を備えている。外壁20は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、それにより、制御ハンドル16が回転されると、カテーテル10の中間区分14がそれに対応する形で回転するようになっている。
【0022】
カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチ以下である。同様に、外壁20の厚さも重要ではないが、中央ルーメン18がプーラワイヤ、リードワイヤ、及び他の任意の所望のワイヤ、ケーブル又はチューブ材を収容できるように十分に薄いものである。所望により、外壁20の内部表面は補剛チューブ22で裏張りされて、捩り安定性が改善される。開示する実施形態において、このカテーテルは、約0.23cm(0.090インチ)〜約2.39cm(0.94インチ)の外径と、約0.15cm(0.061インチ)〜約0.17cm(0.065インチ)の内径とを有する外壁20を有している。補剛チューブ22と外壁20とを互いに固定するために、接着部(図示せず)が設けられている。接着部は、カテーテル本体12の近位端部及び遠位端部に設けられてもよい。
【0023】
制御ハンドル16と偏向可能な部分14及び/又はチップ部分15との間に延びる構成要素が、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通過している。これらの構成要素には、電極アセンブリ17のそれぞれマッピング及びアブレーション電極用のリードワイヤ30と、チップ部分15からアブレーション部位に流体を送るための洗浄チューブ材37と、電磁位置センサ75用のケーブル34と、中間部分14を偏向させるための一対のプーラワイヤ36と、チップ部分15における温度を検知するための一対の熱電対ワイヤ40及び41とが含まれる。
【0024】
図2a、2b、及び2dには、チューブ材13の短い断片を含む中間部分14の実施形態が示されている。このチューブ材は、複数の軸外ルーメン、例えばルーメン24、25、26、及び27を有する編組みメッシュ構造を有している。直径方向に対向するルーメン26及び27の各々は、カテーテルの二方向偏向が、同じ平面内で対向する2方向にて可能となるように(図1)それぞれのプーラワイヤ36を収容しており、この運動は、囲心腔内の心外膜組織表面のマッピング及びアブレーションに適したものである。第1のルーメン24は、リードワイヤ30、ケーブル34、熱電対ワイヤ40及び41、並びに、安定化部材21用の、形状記憶性を有する支持部材32を収容している。支持部材32の遠位端部は、当業者には理解されるように、例えばTバーアンカー33によって、チューブ材13の側壁に定着されている。第2のルーメン25は洗浄チューブ材37を収容している。
【0025】
中間部分14のチューブ材13は、好ましくはカテーテル本体12よりもわずかに可撓性の高い好適な非中毒性材料でできている。チューブ材13に好適な材料は、編み組まれたステンレス鋼などの埋込みメッシュを有する編組みポリウレタンである。各ルーメンの寸法は、これらのルーメンを通じて延びるそれぞれの構成要素を収容するのに十分な長さである限りは重要ではない。
【0026】
アセンブリ17を除いて患者の体の中に挿入され得るカテーテル、すなわちシャフト12及び部分14の有用な長さは、所望に応じて異なり得る。一実施形態において、有用な長さは、約110cm〜約120cm、より好ましくは約115cm〜約117cm、更に好ましくは約116cmに及ぶ。中間部分14の長さは、相対的にカテーテルの有用な長さのうちのごく一部であり、好ましくは約6.35cm〜約7.62cm、より好ましくは約6.43cm〜約6.5cm、更に好ましくは約6.4cmに及ぶ。
【0027】
カテーテル本体12を中間部分14に取り付ける手段が、図2a及び2bに示されている。中間部分14の近位端部は、カテーテル本体12の外壁20の内側表面を受容する外周ノッチ31を備えている。中間部分14とカテーテル本体12は、接着剤などで取り付けられる。
【0028】
所望により、カテーテル本体内において補剛チューブ(設けられる場合)の遠位端部と中間部分の近位端部との間にスペーサ(図示せず)が設置され得る。そのスペーサは、カテーテル本体と中間部分との連結部において可撓性を推移させるものであり、それによって、この連結部は折れたり捻れたりすることなく滑らかに曲がることが可能となる。そのようなスペーサを有するカテーテルが、米国特許第5,964,757号に記載されており、その開示内容は参照によって本願に組み込まれる。
【0029】
中間シャフト14のルーメン26及び27の各々は、好ましくはテフロン(商標)でコーティングされたプーラワイヤ34を収容している。プーラワイヤ36は、ステンレス鋼若しくはニチノールなどの任意の好適な金属、又は、ベクトラン(商標)ナイロンチューブ材などのより強固な材料で作られることができ、テフロンコーティングはプーラワイヤに潤滑性を付与する。プーラワイヤは好ましくは、約0.015cm〜約0.025cm(約0.006インチ〜0.010インチ)に及ぶ直径を有している。
【0030】
図2aに示すように、各プーラワイヤ36は、プーラワイヤ36を囲む関係で圧縮コイル35を通過している。圧縮コイル35は、カテーテル本体12の近位端部から中間部分14の近位端部まで延びており、また、圧縮コイル35の近位端部及び遠位端部でそれぞれ補剛チューブ22及び中間部分14の近位端部に接着剤(図示せず)で固定されていてもよい。圧縮コイル35は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼でできており、圧縮には抗するが可撓性、すなわち曲げ性を備えるようにそれ自体で緊密に巻回されている。圧縮コイルの内径は好ましくは、プーラワイヤ34の直径よりもわずかに大きなものである。カテーテル本体12内で、圧縮コイル35の外側表面はまた、例えばポリイミドのチューブ材でできた、可撓性の非電導性シース39で被覆されている。圧縮コイル35は、近位端部にて近位側の接着部によってカテーテル本体12の外壁20に、また遠位側の接着部によって中間シャフト14に定着されている。中間部分14内で、各プーラワイヤは、偏向の間にプーラワイヤが中間部分14のチューブ材13の中に食い込むのを防止するために、保護シース49を通して延びている。
【0031】
プーラワイヤ36の近位端部は、制御ハンドル16に定着されている。プーラワイヤ36の遠位端部は、図4aに示すように、中間部分14のチューブ材13の遠位端部の近くに定着されている。具体的には、T形アンカーが形成されており、このT形アンカーは、チューブ状のステンレス鋼59の短片、例えば皮下ストック(hypodermic stock)を備え、この短片は、圧着されてプーラワイヤにしっかりと固定されたプーラワイヤの遠位端部に被せられている。チューブ状のステンレス鋼59の遠位端部は、ステンレス鋼のリボンなどで形成された十字片(cross-piece)45に、例えば溶接によってしっかりと取り付けられている。十字片45は、チューブ材13内に形成されたホール(図示せず)を通じて延びている。十字片45はそのホールよりも大きいため、そのホールから引き抜かれることがなく、また、十字片45は、プーラワイヤの遠位端部を中間部分14の遠位端部に定着する。図示のように、プーラワイヤ36の遠位端部の定着箇所は、互いにわずかに喰い違っている。編組み材がチューブ材13からなくなる領域において、喰い違い構成により、偏向の間に定着部材から与えられる応力を軽減することができる。また、当該技術分野において知られているように圧縮コイルの近位端部及び遠位端部の位置に応じて、様々な程度の偏向が可能である。偏向の程度は、約90度と180度との間、好ましくは約90度と135度との間、より好ましくは約±90度の範囲である。
【0032】
図3に示すように、偏向可能な部分14は有利にも、遠位端部の近くで角度θで予め成形されており、それにより、電極アセンブリ17は、偏向可能な中間部分14から角度θで延びている。この角度により、偏向可能な中間部分14及びチップ部分15は、幅が狭く湾曲した心膜腔24により適合する形状を与えられる。この角形成により、電極アセンブリが囲心腔内の部位間で移動するとき、電極アセンブリ17による心外膜表面22との組織接触性が改善される。角度θは、約10度〜15度、より好ましくは約10度〜12度に及び得る。本発明の特徴によれば、電極アセンブリ17の二方向偏向と、二方向偏向の平面に概ね垂直な方向における角度θの所定の曲げとが相まって、電極アセンブリ17は、部位から部位への掃引運動を取ることが可能となり、その掃引運動により、囲心腔の領域内での組織接触性と快適性が高められる。当業者には理解されるように治具に取り付けられたチューブ材をベーキングすることを含めて、この角度θをチューブ13に形成することができる。
【0033】
中間部分14の遠位端部には、連結チューブ材43で連結されたチップ部分15がある。図4a及び4bの図示の実施形態において、連結チューブ材43は、リードワイヤ30を通す単一のルーメンと、安定化部材21の支持部材32と、電磁センサーケーブル34と、洗浄チューブ材37とを有している。連結チューブ材43の単一のルーメンにより、これらの構成要素は、必要に応じて、中間部分14におけるそれぞれのルーメンから、安定化部材21及び遠位チップ部分15内のそれぞれの箇所に向かって、新たに向きをなすことが可能になっている。図示のように、様々な構成要素が互いに交差して、チップ部分15内で適切に整列している。
【0034】
電極アセンブリ17は、遠位チップ15(方向性アブレーション電極19を収容する)と安定化部材21(複数のリング電極20Sを収容する)とを有している。また、連結チューブ材43上にリング電極20Rがある。本発明の特徴に従って、安定化部材21のループは2次元で広がっており、概ね、同様に遠位チップ15を含む平面内にある。電極アセンブリ17のすべてが、この平面に収められ得る。図3に示すように、電極アセンブリ17は、概ね平坦な又は平面的な形状を取る。
【0035】
図5に示すように、安定化部材21は、遠位側に延びてアブレーション電極19を囲む概ね円形の主部分23と、連結チューブ材43から延びる概ね直線状の部分25とを有する、開端型の概ね円形のループ又はハローである。したがって、遠位チップ15と安定化部材21は、互いに直接連結されており、そのため、電極アセンブリ17は反転又は回転して、選択された心外膜の治療部位から離れにくくなっている。
【0036】
部分25は、連結チューブ材43からわずかな角度(例えば約45度未満)で喰い違っており、連結チューブ材43及びチップ電極19は、概ね円形の主部分23の径に沿って位置し、部分23は遠位側に延びてチップ電極19を囲んでいる。部分25の露出長さは、約70mm〜78mm、好ましくは約73mm〜76mm、より好ましくは約75mm〜76mmに及ぶが、所望に応じて異なり得る。部分23は、約70mm〜75mm、好ましくは約73mm〜75mm、より好ましくは約72mm〜73mmの長さを有するが、所望に応じて異なり得る。
【0037】
有利にも、安定化部材21の部分23及び25は、チップ電極19と同一平面内にあり、そのため、これら3つはすべて1つの平面に存在して平坦な形状をなしている。また、偏向可能な中間部分14のチューブ材13内にあるプーラワイヤ36とこれらのルーメン26及び27もまた、概ねこの平面内にあるため、安定化部材21は、チップ部分15及び中間部分14の二方向偏向する間に、横方向に掃引する運動を行う。
【0038】
部分23及び25を有する安定化部材21は、部分23及び25の長さにわたる非伝導性カバー又はチューブ材50(図5に部分的に破断図で示す)を備えている。カバー又はチューブ材50は、可撓性と生体適合性があり、好ましくはポリウレタン又はペバックスなどのプラスチックである、任意の好適な材料で作られ得る。チューブ材50は(本明細書におけるすべてのチューブ及びチューブ材と同様に)、任意の横断面形状を有してよく、また単一のルーメン又は複数のルーメンを有してよい。図示の実施形態、つまりチューブ材材50は単一のルーメンを有し、そのルーメンは、リング電極20S用のリードワイヤ30S若しくは他の電気接続線、又は安定化部材21に装着され得る任意の他の電気若しくは電磁要素で占められている。このルーメンはまた、支持部材32で占められており、この支持部材32は、形状記憶性を有するか、又は、部分23及び25の概ね直線状及び概ね円形状の形状で予め成形されることができる。形状記憶要素は、力が及ぼされると元の形状から直線状にされるか又は曲げることができ、力が除去されると実質的に元の形状に復元することが可能である。形状記憶要素に好適な材料は、ニッケル/チタン合金である。そのような合金は通常、ニッケルを約55%、チタンを約45%含むが、ニッケルを約54%〜約57%含み、残りがチタンであってもよい。好ましいニッケル/チタン合金はニチノールであり、ニチノールは、耐久性、強度、耐食性、電気抵抗、及び温度安定性と共に、優れた形状記憶性を有している。
【0039】
上述のように、概ね円形の部分23は、自由な遠位端部51を有する開端型である。これにより、安定化部材21は、遠位端部51をチップ電極20Rの遠位側にして伸長され得、その結果、安定化部材21は、患者の体の中に進入させるために、導入器及び/又は拡張器に容易に通され得る。当業者には理解されるように安定化部材21は、導入器又は拡張器から一旦出ると、予め成形された形状を容易に取ることができる。端部51は、半球状のポリウレタン系接着剤で密封されている。金属又はプラスチック、好ましくはポリイミドで作られた短リングが、非伝導性カバー50の遠位端部内に装着されている。この短リングは、非伝導性カバー50の遠位端部が圧壊するのを防止し、それによって、非伝導性カバーのその遠位端部における直径を維持する。
【0040】
安定化部材21のチューブ材50を連結チューブ材43に取り付ける手段が、図6aに示されている。開口部58が、連結チューブ材43の壁部に切断されるかないしは別の方法で形成され、チューブ材50の近位端部を受容しており、チューブ材50は、この開口部の中に約1mmの深さで挿入され、開口部58を同時に密封する接着剤61で固定されている。中間部分14のチューブ材13のルーメン24から延びるリードワイヤ30S及び安定化部材21の支持部材32は、チューブ材50に受容されており、ここで、概ね直線状の部分25を、次いで概ね円形状の主部分23を通過している。概ね円形の主部分23に、複数のリング電極20Sが互いに等間隔で隔置されており、各リング電極20Sは、図5に示すようにそれぞれのリードワイヤ30Sに連結されている。前述のように、部材32の近位端部は、中間部分14のルーメン24の近位端部の近くに定着されている(図2b)。
【0041】
図6bを参照すると、リング電極20Rが、安定化部材21の取付け位置から遠位側にて連結チューブ材43に装着されている。リング電極は、中間部分14のチューブ材13のルーメン24から延びるリードワイヤ30Rに連結されている。
【0042】
図7aに示す遠位チップ15に関して言えば、この遠位チップ15は、遠位端部と中ぐりされた近位端部とを有する概ね一体的な円柱状の構造を有しており、近位端部は、連結チューブ材43の遠位端部に受容される。円柱状の構造65は、アブレーション電極19と絶縁部材60とから形成されており、絶縁部材60は、アブレーション電極から組織を熱的にも電気的にも遮蔽するものである。絶縁部材は、アブレーション電極19に効果的に方向性を持たせており、その結果、電極19のうちの露出した側のみが組織と接触し得るようになっている。
【0043】
図7a〜7cの実施形態を参照すると、アブレーション電極19及び絶縁部材60は一般に、円筒形物体65の長手方向の軸線に沿って接合された2つの長手半部又は対応物である。有利にも、アブレーション電極19と絶縁部材60との分割平面62は、安定化部材21の平面、並びに中間部分14によって可能となる電極アセンブリ17の二方向偏向の平面と一致している。したがって、電極アセンブリ17は事実上、安定化部材21の一方の側に露出したアブレーション電極19と、安定化部材21のその反対側に露出した絶縁部材60とを有しており、電極アセンブリ17は、二方向偏向する間に側方に掃引されるとき、この向きを維持する。また、アブレーション電極19が心外膜に面し、絶縁部材60が心膜に面するように作業者が電極アセンブリ17を操作した場合、電極アセンブリが静止しているか、あるいは側方に掃引するように偏向されている間、安定化部材21はその向きを維持しようとする。
【0044】
図8に更に示すように、様々な構成がアブレーションチップ電極19内に設けられている。洗浄チューブ材37用の細長い通路70が、電極19の近位面の開口部にて電極19の長さに沿って形成されている。通路70の遠位端部72において、複数の枝路74により、遠位端部72とチップ電極19の外側との連通が可能となっている。図示の実施形態において、概ね垂直な3つの枝路74がある。アブレーションチップ電極19に通電するリードワイヤ30Tのための第2の止まり穴80が、電極19の長さに沿って形成されている。チップ温度を検知する熱電対ワイヤ40及び41のための第3の細長い止まり穴82が、電極19の長さに沿って形成されている。電極19の界面92と絶縁部材60の界面92との間に、電磁位置センサー75のための別の止まり穴90が、長手軸に沿って有効に形成されている。境界面92を接合するために、接着剤及び/又は他の好適な粘着剤95が使用されている。
【0045】
リング電極20S及び20Rは、適当なマッピング又は監視システム(図示せず)にリードワイヤ30S及び30Rで電気的に接続されている。遠位チップ電極19は、アブレーションのエネルギー源(図示せず)にリードワイヤ30Tで電気的に接続されている。各電極のリードワイヤは、制御ハンドル16の近位端部にてコネクタ内で終端する近位端部を有している。更に遠位側に、電極のリードワイヤは、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通じて、また中間部分14のルーメン24を通じて延びている。リードワイヤのうちの、カテーテル本体12の中央ルーメン18及びルーメン24の近位端部を通じて延びる部分は、保護シース(図示せず)に封入され得て、その保護シースは、任意の好適な材料、好ましくはポリイミドで作られ得る。保護シースは、ルーメン24にポリウレタン系接着剤などで接着することにより、遠位端部にて中間部分14の近位端部に定着される。
【0046】
各リードワイヤは、対応する電極に任意の好適な方法で取り付けられる。リードワイヤをリング電極に取り付けるための好ましい方法は、まず、非伝導性カバー又はチューブ材の壁部を貫く小ホールを形成することを伴う。そのようなホールは、例えば、永久的なホールを形成するように十分に非伝導性カバーを貫いて針を挿入することによって生じさせることができる。リードワイヤは次いで、マイクロフックなどを使用することによって、ホールの中に引き込まれる。次いでリードワイヤの端部がコーティングを剥ぎ取られ、リング電極の下側に溶接され、次いでその電極が、ホールの上の所定位置に滑り込まされ、ポリウレタン系接着剤などで適所に固定される。別法として、各リング電極は、非伝導性カバーの周りにリードワイヤを複数回巻き付け、リードワイヤの絶縁コーティングを外向きに面する表面においてリードワイヤから剥ぎ取ることによって形成される。
【0047】
この電極は、白金又は金、好ましくは白金とイリジウムの組み合わせなど、任意の好適な固体導電材料で作ることができる。このリング電極は、チューブ材の上に接着剤などで装着され得る。別法として、リング電極は、白金、金、及び/又はイリジウムのような伝導性材料でチューブ材をコーティングすることによって形成されることができる。コーティングは、スパッタリング、イオンビーム蒸着、又は等価な技術を用いて施されることができる。開示する実施形態は、安定化部材21上の双極リング電極及び連結チューブ43材上の単極リング電極を使用しているが、任意の個数又は組み合わせの単極及び双極リング電極が、必要に応じて又は状況に応じて使用されてよいことは理解されよう。
【0048】
アセンブリ上のリング電極の個数は、所望に応じて異なり得る。好ましくは、安定化部材21上のリング電極の個数は、互いに等間隔で隔置されて約6個〜20個、好ましくは約8個〜約12個に及ぶ。連結チューブ材43上において、リング電極の個数は、約1個〜約4個に及ぶ。開示する実施形態において、約5mmの距離が、安定化部材21上の各リング電極の間に設けられている。連結チューブ材43が複数のリング電極を搭載する場合、各リング電極の間には約2mmの距離が望ましい。
【0049】
プーラワイヤ36は、近位端部において制御ハンドル16に定着されている。偏向ワイヤ36がカテーテル本体12とは別にかつ独立に運動することにより、結果として、中間部分14及びチップ部分15が平面65に沿ってそれぞれ偏向することになるが、この運動は、制御ハンドル16の適切な操作によって達成される。好適な制御ハンドルが、2008年5月27日に発行された「二方向カテーテルの操縦機構(STEERING MECHANISM FOR BI-DIRECTIONAL CATHETER)」という名称の米国特許第7,377,906号に、また2008年9月16日に出願された「調節可能な偏向感度を有するカテーテル(CATHETER WITH ADJUSTABLE DEFLECTION SENSITIVITY)」という名称の米国特許出願第12/211728号において開示されており、これらのすべての開示内容は参照によって本願に組み込まれる。
【0050】
図9a〜9cの図示の実施形態において、制御ハンドル16は、偏向アーム118と回転可能な又はロッカーアーム131とを有する偏向アセンブリ148を有しており、ロッカーアーム131は、プーラーワイヤに作用して中間部分14を、したがってチップ部分15を偏向させる一対のプーリー134を支持している。偏向アーム118とロッカーアーム131は、ユーザーが偏向アームを回転させるとプーリーアームが回転するように回転可能に整列され結合されている。ロッカーアーム131が偏向アーム118によって回転されると、一方のプーリーがカテーテルの一方の側のプーラーワイヤ36を、部分14を同じ側に向かって偏向させるようにそのカテーテルの定着された近位端部に対して引っ張り、プーリー134は中立位置(図9a)から変位される。偏向アームの回転を交互に切り替えることにより、電極アセンブリ17は側方に掃引する。
【0051】
使用時に、剣状突起下での接近法を用いて、好適な案内シースが、その遠位端部を心膜嚢に配置して患者に挿入される。本発明に関連して使用するのに好適な案内シースの例が、バイオセンスウェブスター社(カリフォルニア州ダイアモンドバー(Diamond Bar))から市販されているPreface(商標)Braiding Guiding Sheathである。安定化部材21は、その自由端部51をチップ電極19の遠位側にして直線状にされ、その結果、チップ部分15は案内シースに容易に進入し、送り込まれることができる。カテーテル10は、チップ部分15が組織の治療部位に又はその近くに達するまで、案内シースの中に送り込まれる。案内部材は近位側に引っ張られ、安定化部材21を、概ね円形の形状を戻すことができるチップ部分15が、また必要に応じて中間部分14が露出する。
【0052】
図3に示すように、ユーザーは、アブレーション電極19が心外膜に面し、絶縁部材60が心嚢に面するように電極アセンブリ17を向き付けする。安定化部材21は事実上、心外膜と心嚢との間に挟まれるので、電極アセンブリ17は、この向きを維持するように適合される。ユーザーが、制御ハンドルの偏向アーム118を操作すると、電極アセンブリ17は、心外膜組織の表面領域の上で、周囲の組織に損傷を与える危険性を最小にして側方に掃引される。特に、安定化部材21の円形形状は非侵襲的なものであり、チップ部分15を組織に引っ掛かけることなく心膜嚢内で掃引することを可能にしている。更に、中間部分14がアブレーション電極19の側方に向かって予め曲げられることにより、電極が心外膜と接触することを確実にする湾曲した又は円弧状の形状が得られる。加えて、中間部分14の編組みチューブ材13は、「裏側の(back)」支持と、ある程度の剛性とをカテーテルにもたらして、更に組織の接触を確実にすると共に、電極アセンブリ17が回転又は反転して適所から外れる危険性を最小限にしている。
【0053】
リング電極20S及び20Rはマッピングに、チップ電極19は、高周波エネルギー又はマイクロ波若しくはレーザーを含めた他のタイプのエネルギーによるアブレーションに使用され得る。またリング電極は、アブレーション部位の周囲の電気活動を測定することを可能とし、その結果、カテーテルは、アブレーションが実施されているとき、心外膜組織の電位図(ECG)又は電位記録を実時間でかつ連続的にフィードバックすることができる。絶縁部材60は、物理的障壁を設けることによって、隣接する組織、特に心嚢をアブレーションに対して熱的にも電気的にも絶縁する。
【0054】
組織を冷却し、凝血を減じ、及び/又はより深部の病変部の編成(formation)を促進するために、流体、例えば生理食塩水又はヘパリンが、チップ電極からアブレーション部位に輸送され得る。神経叢の状態を変化させる神経抑制剤(neuroinhibitors)及び神経興奮剤(neuroexcitors)など、診断用及び治療用の流体を含めて、他の流体が同様に送られ得ることは理解されよう。
【0055】
別の実施形態において、チップ部分15’は、膨張可能な部材、例えば風船100を有しており、この膨張可能な部材は、心膜組織を含めて、方向性チップ電極19’を隣接及び対向する組織との接触に対して熱的にも電気的にも絶縁するものである。図10に示すように、風船100は、膨張すると、心外膜26を持ち上げて電極アセンブリ19’から離れる。以下で議論するように、このチップ部分15’と上記のチップ15との間には、類似点だけでなく相違点もある。
【0056】
図11a〜11bの実施形態を参照すると、チップ部分15’は絶縁部材60’を有しており、この絶縁部材60’はアブレーション電極19’と共に、全体として細長い円筒形物体65’を形成している。円筒形物体65’は、非侵襲的な遠位端部66’と、中ぐりされた近位端部67’とを有しており、この近位端部67’は、連結チューブ材43’の遠位端部内に受容される。図示の実施形態において、洗浄チューブ材37’のための細長い経路70’が、アブレーション電極19’に形成されている。通路70’の遠位端部72’において、複数の枝路74’により、遠位端部72’とチップ電極19’の外側との連通が可能となっている。それぞれリードワイヤ30T’並びに熱電対ワイヤ40’及び41’のための細長い止まり穴80’及び82’が通路70’と並んで形成されている。しかしながら、より大きな空間がチップ部分15’に残るように電磁センサー75’が連結チューブ材43’(図14)に収容されている。電極19’と絶縁部材60’とを接合するために、接着剤及び/又は他の好適な粘着剤195が、アブレーション電極19’内に形成された凹部112で使用されている。加えて、インサート114と凹部116の形態をなすラッチが、チップ部分15の遠位端部66’に形成されており、それにより、電極19’と絶縁部材60’は互いに固定された状態を維持している。
【0057】
図12の実施形態に示すように、チップ部分15’の風船100は、概ね矩形の形状を有し、上面パネル102と下面パネル103と有する2枚重ねの構造をなしており、上面パネル102と下面パネル103は、端縁部104及び長手縁部109を含めて、周囲縁部の周りで互いに接合されて気密密封をなしている。上面パネル102及び下面パネル103は、ポリイソプレンなど、弾性と生体適合性の高い好適な材料でできている。下面103は、膨張チューブ106の遠位端部の上に装着するのに好適な入口105を備えて構成されており、流体は、この入口105を通じて、ポンプ(図示せず)によって供給源(図示せず)から制御ハンドル16を通じて、風船に及び風船から送られる。風船を膨張させるのに好適な流体には、空気及び生理用食塩水が挙げられる。この流体がまた、周囲の心嚢組織を冷却するのに好適な温度の流体であり得ることは理解されよう。
【0058】
風船100は、表面110と風船の下面パネル103との間の接着剤又は粘着剤115のコーティングによって、絶縁部材60’の外側表面110に固着されている。風船はまた、凹部又はポケット109に受容される遠位部分108を有しており、この凹部又はポケット109は、風船の遠位縁部を絶縁部材60’に固定するために接着剤111などで充填される。この安全な機構により、風船の遠位縁部がチップ部分15’から脱離することが防止されている。更に、風船100のパネル102及び103の長手縁部109は、アブレーション電極19’と絶縁部材60’との間で側縁部113に沿って、内向きに押し込まれ、接着剤又は粘着剤で固定されている。風船100に供給する膨張チューブ材106のために、細長い通路116が、アブレーション電極19’内に形成されている。通路116の遠位側に、横断通路117が形成されており、風船の入口105を受容している。
【0059】
開示する実施形態において、風船100は、特に上面パネル102は、風船が膨張されると、上面パネルが概ね球形の形状に拡大するように構成されており、その球形の形状は、アブレーション電極19’の相当に上方に、更には側方に拡大するものであり(図13c)、その結果、アブレーション電極の上方及び側方の組織が持ち上げられて離されることになる。
【0060】
風船100が別の実施形態において風船パネル103を有する必要のないことは理解されよう。つまり、上面パネル102のみで、絶縁部材60’の外側表面110と共に周囲縁部に沿って気密密封を発生させることができ、また、膨張チューブ材106は、膨張及び収縮のために風船に及び風船から効果的に流体を送るように通路116の遠位端部に密封されることができる。
【0061】
風船の構造にかかわらず、膨張チューブ材106は、図14に示すように、電極アセンブリ17’と中間部分14とを連結する連結チューブ材43’を通じて、近位側に延びている。膨張チューブ材106は、中間部分のチューブ材13’の第1のルーメン24’を通じて近位側に延びている。
【0062】
更に他の実施形態において、注射針120が、チップアブレーション電極19”内に形成された細長い通路132の開口部から延びるように適合されている。注射針120は、先細の遠位端部(図18a)を有しており、この遠位端部は、組織を穿刺し、注射針を通じて延びるルーメン134(図17)を通過した薬剤を送るように適合されている。ルーメン134の内側に熱電対ワイヤ41及び45があり、これらの遠位端部は針の遠位端部の近くに固着されているが、これらの熱電対ワイヤ41及び45は、針が挿入される組織の温度を測定するためのものである。ワイヤ41及び45は、これらの遠位端部にて、ルーメンの内壁に接着剤又は粘着剤136で固定されている。図19に示すように、注射針120は、連結チューブ材43及び中間部分のチューブ材13”内の第5のルーメン140を通じて近位側に延びている。
【0063】
注射針120は、プラスチック、又はステンレス鋼及びニチノールを含む金属を含めて、任意の適度に剛性のある材料でできている。その材料はまた形状記憶性を有し、針の遠位端部が予め形成された湾曲を有し、電極アセンブリの下方の組織を穿刺する際に針が角度をなすようになっていてもよい(図18aを参照)。
【0064】
また、リモート磁気技術(Remote Magnetic Technology)(RMT)を取り入れるために、上述のチップ部分15、15’、15”のうちのいずれかが、全体的に又は部分的に磁気材料で構成され得ることも企図される。例えば、カテーテルが操作者によって遠隔地から磁気によって案内され得るようにチップ電極及び/又は絶縁部材のうちのいずれかが磁気材料で作られるか、あるいは磁気部材を収容することができる。そのようなカテーテルが、2008年5月22日に出願された「同軸針ポートを有する磁気案内式カテーテル(MAGNETICALLY GUIDED CATHETER WITH CONCENTRIC NEEDLE PORT)」という名称の米国特許出願第12/125903号に記載されており、そのすべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる。
【0065】
上記の説明は、本発明の特定の例示的実施形態を参照して提示されたものである。本発明に関連する分野及び技術の当業者には、説明した構造に対する変形及び変更が、本発明の原理、趣旨、及び範囲から大きく逸脱することなく実施され得ることは理解されよう。したがって、上記の説明は、添付の図面に記載し説明した厳密な構造のみに関するものとして解釈されるべきではない。むしろ、上記の説明は、以下の特許請求の範囲と整合するものとして、またその特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきであり、この特許請求の範囲は、最も完全でかつ公正な範囲を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の心外膜組織と心嚢組織との間の腔での使用に適合されたカテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位側にあって、概ね平面内にあるチップ部分とループ部材とを有し、前記チップ部分は、前記ループ部材の一方の側に露出したアブレーション電極と、前記ループ部材の反対側に露出した絶縁部材とを有する電極アセンブリと、
前記カテーテル本体と前記電極アセンブリとの間に延びていて、前記ループ部材及び前記チップ部分を前記平面内で概ね二方向に偏向させるように適合された中間部分と、を備えるカテーテル。
【請求項2】
前記アブレーション電極は、前記心外膜組織を除去するように適合されており、前記絶縁部材は、前記心嚢組織を前記アブレーション電極から絶縁するように適合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記ループ部材は、遠位側に延びて前記遠位チップを囲む所定の形状を呈するように、形状記憶性を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記ループ部材は開端型である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記チップ部分は膨張可能な部材を有する、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記チップ部分は、長手軸を有する概ね円筒形の形状をなし、前記アブレーション電極と前記絶縁部材は、前記長手軸に沿って互いに固着されている、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記アブレーション電極及び前記絶縁部材の各々は、概ね半円形の横断面を有する、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記チップ部分内に形成された通路内に遠位端部が受容される洗浄チューブ材を更に備え、前記洗浄チューブ材は、前記通路を通過させて流体を送るように適合されている、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記チップ部分内に遠位端部が受容される膨張チューブ材を更に備え、前記膨張チューブ材は、前記膨張可能な部材に流体を送り且つ前記膨張可能な部材から流体を送るように適合されている、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記中間部分は、所定の角度を有して構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記チップ部分は、前記チップ部分の遠隔磁気案内に応じる磁気材料を収容する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記所定の形状は概ね円形である、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記チップ部分内に形成された通路内に遠位端部が受容される注射針を更に備え、前記注射針は、前記チップ部分の外側に延びて組織を穿刺するように適合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記ループ部材はリング電極を搭載する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記ループ部材は、概ね直線状の部分と概ね円形の部分とを有し、これらの部分の両方が二方向偏向の前記平面内にある、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記膨張可能な部材は、前記絶縁部材の外側表面に装着されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記針を通じて延びる熱電対ワイヤを更に備える、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記カテーテル本体及び前記中間部分を通じて延びて前記二方向偏向を可能にするプーラワイヤを更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記カテーテル本体の近位側にある制御ハンドルを更に備え、前記プーラワイヤの前記近位端部は前記制御ハンドルに定着されており、前記制御ハンドルは、ユーザーが前記プーラワイヤを操作できるように構成されている、請求項18に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−246914(P2010−246914A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90509(P2010−90509)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】