説明

心室細動の反転/対処および/または予防のための、トリキリア種の植物原料を単独で、または他の植物の抽出物と組み合わせて含む医薬組成物

本発明は、心室細動の治療、反転、対処および/または予防における、トリキリア種の植物原料単独の、または一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)と組み合わせた使用に関する。本発明に特に含まれる生成物は、トリキリア種の植物原料を単独で、または他の植物に由来する抽出物と組み合わせて含む。本発明はまた、心室細動の治療、対処、予防および/または反転における、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスのような植物原料に由来する植物抽出物、および一つまたはそれ以上の画分の副画分の使用に言及している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、トリキリア種(Trichilia sp.)の植物原料を単独で、または一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(Paullinia cupana)(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(Croton moritibensis)(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(Zingiber officinale)(ショウガ科)に由来する抽出物と組み合わせた使用に関する。
本発明は、特に、心室細動の反転および/または心室細動の予防における、トリキリア・カティグア・エイ・ジュス(Trichilia catigua A.Juss.)のような植物原料に由来する、一つまたはそれ以上の植物抽出物の画分、または一つまたはそれ以上のその画分の副画分の使用に関する。
【0002】
(背景技術)
カツアバ(トリキリア種)として知られる医薬用植物は、神経系に対する刺激活性のための、特に男性生殖器の性的不能に対する用途として、および肉体的疲労および精神的疲労の治療における強壮剤として認識されてきた。例えば、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスは、そのような目的のために大いに用いられる。
トリキリア・カティグア・エイ・ジュスは、ブラジルの医薬用植物であり、その国の北部および北東部に豊富に生えている。この植物は原住民によって数世紀用いられてきたけれども、その医薬的特性またはその植物科学組成物を実証する化学研究はほとんど存在しない。
【0003】
例えばカツアバ植物(トリキリア種)の抽出物から調製された植物療法処方は既知であり、それは単独で、またはガラナのような他の医薬用植物抽出物と組み合わせて用いられ得る。他のカツアバ種の抽出物を含む幾つかの選択できる処方は、最先端技術でよく知られており、それらは全てこの植物群の強壮効果および刺激効果に関係している。
当該分野において、トリキリア種の植物、例えば特にトリキリア・カティグア(センダン科)、パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)に由来する抽出物の組み合わせを含む、植物療法生成物が既に存在している。
【0004】
強壮効果および刺激効果に関連し、上記した植物に由来する抽出物を、適当なキャリアと組み合わせて含む、市販で入手できる生成物が、カツアマ(Catuama)(登録商標)である。カツアマ(登録商標)は、特に、ブラジルにおいて広く用いられている植物療法薬剤である。その組成物は、カツアバ(トリキリア・カティグア・エイ・ジュス、センダン科 植物)、ガラナ(パウリニア・クバナ・クンス、ムクロジ科 種子)、ムイラプアマ(クロトン・モリチベンシス・バイル、トウダイグサ科 根)およびショウガ(ジンギベル・オッフィキナレ・ロスコ、ショウガ科 根茎)を含めた、医薬用植物に由来する4つの抽出物からなる。
【0005】
他方、心室細動は、突然死の主要な原因であり、心停止症例の70%で、特に冠動脈性の心臓病に罹患している患者において存在することが知られている。その電気生理学的機構は、心臓電気活性の大きな混乱が起こり、複数のリエントリー回路、いわゆる細動「ローター」の発達につながる、刺激の電動および刺激心室の再分極が変化することを含む。それは、心臓病の最終的な事象としてしばしば起こる。
この不整脈の生存率は、依然として非常に低く、5%に満たない。洞調律に反転できた人でさえ、退院率は絶望的である。従って、そのような危機的な状態において生存率を増加させる知見および標準化処置は、非常に興味深い。
【0006】
現在のところ、この不整脈に対して唯一利用できる治療は、電気的除細動である。米国心臓協会の勧告によれば、電気的除細動は常に最初の治療として試行されるべきであり、その後薬物療法の使用に移行してもよい。この療法の主要な難点は、二つの事実に帰する:第一に、除細動機は、半自動化モデルの場合でさえ、十分に訓練された人々のみが用いてよく、またその費用は非常に高い;第二に、除細動までの時間が重要で、有効な反転の可能性は毎分10%ずつ低下することが知られている。従って、特別な訓練をしていない人によって速やかに行われ得る、簡単な処置があれば非常に有用であるであろう。
【0007】
(発明の開示)
本発明は、心室細動の反転/対処および/または予防において、トリキリア種の植物原料単独の(単一の植物原料またはその抽出物として)、または一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)に由来する抽出物と組み合わせた使用に言及している。
【0008】
他の態様として、本発明は、心室細動の反転/対処および/または予防のための植物原料を含む、医薬組成物に言及している。
さらに他の態様として、本発明は、その植物原料を単独で、または他の適切な植物に由来する抽出物と組み合わせて用いた、心室細動の反転/対処および/または予防のための方法に言及している。
さらに他の具体例として、本発明は、心室細動の反転/対処および/または予防のための医薬組成物を調製するための、トリキリア種の植物原料を含む生成物単独の、または一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)に由来する抽出物と組み合わせた使用に言及している。
【0009】
より詳細には、本発明は、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む(単独の抽出物としてまたは本明細書で言及されている他の植物と組み合わせて)医薬組成物、および心室細動の反転および/または心室細動に対する防護における、一つまたはそれ以上のトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物原料に由来する植物抽出物画分の使用、またはその画分の一つまたはそれ以上の副画分の使用に関する。
他の態様として、本発明は、特に、心室細動の反転および/または防護における、医薬組成物の製造のためにトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの画分または副画分の使用、または使用のための形態に関する。
【0010】
さらに他の態様として、本発明は、特にトリキリア種の画分および副画分を用いた、心室細動の反転および/または防護のための方法に言及している。
他の実施形態において、本発明は、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスのそれぞれの植物抽出物を得るために、植物原料を、特にトリキリア・カティグア・エイ・ジュスから抽出するための方法に言及している。
最後に、本発明は、その主要な画分および副画分を得るための、植物抽出物の細分化の方法に関する。
【0011】
(発明の詳細な記載)
本発明者らは、大規模な研究の後、トリキリア種の植物材料が、一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)に由来する抽出物と組み合わせてもまたは組み合わせずとも、心室細動の反転/対処および/または予防に対して驚くべき効果を有することを見出した。
より詳細には、本発明者らは、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物材料に由来する、一つまたはそれ以上の植物抽出物の画分が、画分の一つまたはそれ以上の副画分と共に、心室細動の反転および/または防護について驚くべき効果を有することを見出した。
【0012】
心筋収縮に対するその作用を検査するために単離した心臓において、トリキリア種の植物材料を単独で、または一つまたはそれ以上の上記した植物に由来する抽出物と組み合わせて用いて実施された研究の間に、ラットおよびウサギの心臓のうちの幾らかは、冠動脈の結紮後に心室細動を示し、トリキリア種の植物原料を単独で、またはそのような組み合わせで使用することによって、臓器が入っている組織浴内にて、幾つかの心臓においては永久的に細動を反転させた。
より詳細には、かかる状況にて、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物材料に由来する抽出物を使用し、およびその後抽出物の主たる画分、およびまた一つまたはそれ以上のその画分の副画分を使用することによって、臓器が入っている組織浴にて、永久的に細動を反転させ、幾つかの心臓においては新たに誘発される細動に対して心臓を保護することが観察された。
【0013】
心室細動は、多数の無秩序な電気インパルスによって生成される、協同性を欠いた、潜在的に致死性の一連の非常に迅速かつ非効果的な心室収縮によって特徴づけられる病態である。
電気という観点からは、心室細動は、心房細動に類似しているが、しかしながらそれよりも遙かに重大な予後を示す。心室細動において、心室は震えるが、協同的には収縮しない。血液が心臓に流入しないので、心室細動は、ある種の心停止を呈し、速やかに治療しなければ致死的となる。
【0014】
心室細動の原因は、心停止の原因と同一である。最も頻度が高いのは、冠動脈疾患または心筋梗塞によって、心筋への血流量が不十分となる場合である。他の原因には、カリウムの血中濃度が非常に低くなった際(低カリウム血症)のショックを含む。
心室細動は、わずか数秒間で意識の消失をもたらす。治療しなければ、酸素が脳に輸送されないために、通常痙攣を発症し、約5分後には不可逆的な脳障害を来す。その後には、死が訪れる。
【0015】
種々の濃度の上記の植物の抽出物を含む数種の生成物が市販されている。その利用は、現在のところ当該分野において推奨されているのは、肉体的疲労および精神的疲労の治療に関するものである。
【0016】
この度、本発明者によりなされた研究および調査は、トリキリア種の植物原料を単独で、または一つまたはそれ以上の上記の植物から由来する抽出物と組み合わせることに基づく生成物と関連して、心室細動の対処/反転および/または予防におけるその有効性を示す。当該研究は、特に、本明細書において開示されているデータおよび検査によって確認されるように、抽出物の一つまたはそれ以上の画分およびその画分のうちの一つまたはそれ以上の副画分を用いた、特にトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物材料を基にした抽出物に関して、心室細動に対する反転および/または防護についての有効性を示す。
【0017】
本発明の生成物または医薬組成物における、トリキリア種、パウリニア・クバナ、クロトン・モリチベンシスおよびジンギベル・オッフィキナレの各々の植物の抽出物の濃度は、次の通りである:
【表1】

【表2】

【0018】
その乾燥かつ賦形剤不含の形態において、本発明の生成物または医薬組成物は:
【表3】

を有する。
【0019】
生成物は、保存剤、着色剤、キャリア等などの処方のための、通常の賦形剤を含んでいてよい。適当な賦形剤は、当業者によく知られており、本発明の態様を制限するものではない。
「植物原料」または「植物原料の抽出物」は、例えばトリキリア種、特にトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの、特にそれから適切な抽出物を生成することが可能な植物の外皮、茎、枝、葉および他の部分または断片に由来する、それぞれの植物に由来する抽出物を意味する。
【0020】
本発明の目的のために、例えばトリキリア・カティグア・エイ・ジュス、トリキリア・エマルギナタ(Turcz)C.DC.、トリキリア・クローセニ C.DC.、トリキリア・カサレッチ C.DC.、トリキリア・パリダ・スワルツおよびトリキリア・エレガンス・エイ・ジュスのような、トリキリア属の全ての植物は、有用であることが判明した。本発明の好ましい実施形態によれば、意図した目的に特により適しているのは、トリキリア種、トリキリア種およびトリキリア・カティグア・エイ・ジュスからなる種族であることが判明した。その上、トリキリア種およびトリキリア・カティグア・エイ・ジュスから抽出された原料は、植物全体の断片、外皮、茎、枝、葉および抽出物として用いるのに都合のよい他の部分であってよく、より好ましくは、医薬上許容される不活性のキャリアと共に処方してよい。本発明において有用なトリキリア種、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの処方は、例えば、錠剤、被覆した錠剤、硬質および軟質ゼラチンカプセル、溶液、乳濁液および懸濁液の形態で経口的に;または坐薬の形態で経直腸的に投与してよいが、これらに限定されない。適当なキャリアには、経口投与のための固形処方の場合は、ラクトース、澱粉またはその誘導体、雲母、ステアリン酸またはその塩を含むが、これらに限定されない。軟質ゼラチンカプセルのための適当なキャリアは、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールを含む。溶液は、水、ポリオールおよび炭水化物のような選別されたキャリアを含むように、調製してよい。坐薬の場合においては、適当なキャリアは、天然油または硬化油、ワックス、脂肪およびポリオールを含む。
【0021】
キャリアに加えて、本発明の生成物または医薬組成物の処方は、保存剤、可溶剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、染料、調味剤、浸透圧調整物質、緩衝剤、被覆剤または抗酸化剤を含んでいてよい。
しかしながら、ヒトに対して投与するための有効用量は、本発明の生成物または医薬組成物10mgから0.5gに対応する範囲であることが判明した。
トリキリア種の植物原料を単独で、または上記した植物に由来する抽出物と組み合わせて含む医薬処方の場合は、目的とする効果が、総処方に対する抽出物の重量で0.2ないし100%を用いて、効果的に達成され得る。
【0022】
本発明の抽出物を調製する方法は、通常、トリキリアの外皮をすりつぶし、続いて例えば水およびアルコールのような溶媒中に抽出することを含む。抽出は、通常、適当な抽出物を得るために適切な時間、約60℃の温度で実行される。1回以上の抽出周期を実行してよく、各々の周期のそれぞれの抽出物は、目的の最終抽出生成物を得るために組み合わせてよい。各々の周期の中間抽出物は、加圧して濃縮され、望ましい濃度の最終抽出物を生成するために、その後組み合わせる。次に、出発物質としてその外皮を用いた、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物の調製を説明する。画分およびその副画分をどのようにして得るかを、さらに説明する。
【0023】
(植物原料の調製)
トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物を製造する方法は、植物の外皮をすりつぶすことに始まる。その後最初の抽出の工程を、アルコールおよび水の比率(5:1)を用いて60℃で4時間行い、圧縮空気を用いて植物を除去する。その後最初の濃縮を、蒸気圧を用いて80℃の温度で行う。二回目および三回目の抽出においては、最初の抽出の残留物の抽出を、アルコールおよび水の比率(5:1)20%を用いて、60℃の温度で3時間行い、その抽出混合物の80%を回収する。この手順は、圧縮空気を用いた植物の除去に終わる。その後、蒸気圧を用いた80℃の温度で2回目および3回目の濃縮を実行する。その後、三つ全ての抽出物を共に混合し、望ましいマーカー含有量に達するまで、最後の濃縮を実行する。
【0024】
(画分および副画分の調製)
抽出過程は、上で述べたように、乾燥した残留物の形成による、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの未加工の抽出物(H:A)の調製に始まる。ヘキサンを用いて未加工の抽出物から、二回抽出を実行する。二つの形成された層を分離する(ヘキサン層および画分残留物H:A)。ヘキサン層:溶媒を蒸発させ、乾燥したヘキサン層を得る;画分残基H:A:酢酸エチルを用いて、二回抽出を実行する。層を分離し組み合わせる(酢酸画分および画分残留物H:A)。酢酸画分:溶媒を蒸発させ、乾燥した酢酸エチル画分を得る;画分残留物H:A:ブタノールを用いて、二回抽出を行い、形成された二つの画分を分離する(水画分およびブタノール画分);水層:凍結乾燥し、乾燥した水画分を得る;ブタノール画分:溶媒を蒸発させ、乾燥したブタノール画分を得る;ブタノール画分の画分:ブタノール層を、乾燥したカラム(8カラム)に分別する。各々のカラムは、60cm、100gシリカ、クロロホルム:メタノール(60:40)の比率での溶出を示し、その後各々10cmの四つの画分を得る(沈殿物;画分1と2;画分3と4;残留物)。図11は、画分および副画分をどのようにして得るかの、可能なフローチャートを示している。
【0025】
本発明は、現在、特にトリキリア種の植物原料に関して記述しているであろう。単独で、または他の引用した植物に由来する抽出物と組み合わせて、幾つかの他の長期的な疾患を治療するために、ブラジルでは既に市販で入手可能である。この生成物の利点は、たとえ生成物が長期間用いられても、何らかの副作用または望ましくない効果が報告されていないことが挙げられる。
【0026】
より詳細には、本発明は、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物原料、この植物抽出物の最初の画分およびその画分の副画分に関してより特異的に記述しているであろう。
【0027】
概して、考察した結果は、本発明において現在記述している、トリキリア種、特にトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物原料(単独で、または前に言及した他の植物抽出物と組み合わせて)が、心室細動の反転および/または予防する際の有効性を示すことを、明確に示している。
【0028】
本発明は、本質的に、心室細動に対処し、予防し、および/または反転するにおいて、心臓血管系の変化を伴う病理組織に基づいた、トリキリア種の植物原料、より詳細にはトリキリア・カティグア・エイ・ジュス単独の、または上記した他の植物抽出物と組み合わせた効果に言及している。トリキリア種の植物原料単独、またはその組み合わせなどの、心室細動の対処/反転の可能性がある物質は、心室細動は緊急事態として治療しなければならず、心室細動に対して現在利用できる唯一の手順は心臓に対する電気ショックのみであるので、急速に投与する場合特に重要である。
【0029】
さらに一層重要なことは、心室細動の再発は、心臓に対する電気ショックを用いた現在利用できる操作で起こらないこともあるが、トリキリア種が単独でまたは上記した組み合わせにて存在する下では、一旦反転すれば起こらないということである。
【0030】
(図面の簡単な記載)
図1は、単離したウサギの心臓のエレクトログラムのPおよびDのプロットを示す。
図2は、トリキリア種の植物原料単独または上記した組み合わせを用いた、心内膜刺激による、単離したウサギの心臓における心室細動の反転を示す。
図3は、トリキリア種の植物原料単独または上記した組み合わせの存在下での、単離したウサギの心臓における心室細動の再誘発の試行を示す。他の植物原料と組み合わせていてもいなくとも、トリキリア種の植物原料の存在下で起こされた電気刺激によっては、新たに心室細動は発生しない。
図4は、単離した細胞−単離したニューロンにおける、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。ナトリウムチャネルが開いたままであることを示している。
【0031】
図5は、時間(T)=0で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、組み合わせまたは組み合わせることなく用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
図6は、時間(T)=2分で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、組み合わせまたは組み合わせることなく用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
図7は、時間(T)=5分で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、単独でまたは上記した組み合わせで用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
図8は、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物を用いた典型的な実験(カツアマ群)によって立証される、心室細動の反転を示す。その後の上室調律(恐らく洞調律)の制御と共に、灌流液にカツアバを付加した直後の、心室細動の反転に注意してほしい。P=近位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラム;D=遠位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラム;矢印=心房のエレクトログラムを記録しているプロットである。
【0032】
図9−トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物を用いた典型的な実験(カツアマ群)における、心室細動の再誘発の試行。電気刺激を与えたにもかかわらず、新しい心室細動が発生しないことに注意してほしい。P=近位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラム;D=遠位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラムである。
図10−カツアバ群(トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物)を用いた典型的な実験において立証される、心室細動の反転。その後の上室調律(恐らく洞調律)の制御と共に、灌流液にカツアバを付加した直後の、心室細動の反転に注意してほしい。P=近位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラム;D=遠位の電極の組から得られるものを記録しているエレクトログラム;矢印=心房のエレクトログラムを記録しているプロットである。
【0033】
図11は、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物の画分および副画分をどのようにして得るかの、可能なフローチャートを図示している。
図5、6および7に開示された結果は、トリキリア種の植物原料を、組み合わせるか、組み合わせることなく用いることで(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物、時間(T)0、2および5分で、それらを閉鎖状態に維持する)、ナトリウムチャネルの阻害を示す。
【0034】
トリキリア種の植物原料単独または上記した組み合わせの、単離した心臓に対する効果を決定するために、次のプロトコールを実行した。
その実験を実行するために、ホワイトニュージーランドウサギを頚部変位により殺した。胸郭を速やかに開き、心臓を取り出して、伝統的なランゲンドルフ調製に懸濁した。カルボゲン(carbogen)飽和の標準クレブス液を用いた灌流を行った。10分間の安定化期間の後、その系をクレブス液150ml中に閉じた。その後電極対を、左室の心外膜表面(VE)上;一方の組をVEの頂部(近位=P)および他方の組を動脈の分岐部DAおよびDI(遠位=D)に縫合した。50および500ヘルツの間の周波数のカットオフで、双極エレクトログラムPおよびDの記録が得られた。刺激の心室内伝導時間(P−D)を計測した。電気刺激および心室細動の発生を20分間維持することが可能であるように、二極の電極を心内膜上に配置した。刺激を、5分間10Vの電圧で、3分間の持続時間および50ヘルツの周波数で継続した。
【0035】
安定した細動を達成した後、対照群を20分間観察し;本発明の生成物または医薬組成物を、心室細動の20分後に検査群(20μg/ml)に投与し、一方心室細動の20分後にSHAM群にはツゥイーン80(20μg/ml)を与えた。
洞調律に反転した後、新しい刺激を実行して、新たな心室細動の発生を試みた。
好ましい実施形態において、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの植物原料の、単離した心臓における心室細動に対する効果を検証するために、次のプロトコールを実行した。
【0036】
その実験を実行するために、体重が2.5kgから3.5kgまでの、オスおよびメス両方の27匹のホワイトニュージーランドウサギを、100Ul/kgのヘパリン静脈内投与を用いてヘパリン化し、頚部変位により殺した。
胸郭を正中切開により速やかに開き、胸郭の内面を完全に露出させるために、胸骨を両方向に開いた。心外膜を除去し、単離した大動脈の上行部を綿糸3−0を用いて修復した。その後金属のカニューレを大動脈の近位部に挿入して固定し、酸素化して37℃に加熱したクレブス−ヘンゼライト液の逆灌流を、持続点滴ポンプHarvardApparatusモデルRS232によって維持した、13ml/分の一定の速度で、そのカニューレを介して開始した。カニューレの先端を、適当な冠動脈灌流が可能であるように、大動脈弁に非常に近傍に位置させた。
【0037】
その後心臓を取り出して、伝統的なランゲンドルフ調製に懸濁した。クレブス−ヘンゼライト液の組成は、115mMの塩化ナトリウム;5.4mMの塩化カリウム;1.25mMの塩化カルシウム;25mMの炭酸水素ナトリウム;1.2mMの硫酸マグネシウム;1.15mMのリン酸二水素ナトリウム;および11nMのグルコースであった。ドレーンを左室(VE)内に配置し、液体の蓄積を防いだ。
二組の電極(Monicron2−O)を、左室の表面;一方を近位(P)と呼ばれる頂部に、および他方を遠位(D)と呼ばれる冠動脈の前下行枝の第一対角枝との分岐部に縫合した。電極PおよびDから得られたエレクトログラムは、Biopac Systems社の捕捉システムECG100Bによって捕捉し、その上50および500ヘルツの間の周波数のカットオフで、Biopac Systems社のソフトウェアのAcknowledge version3.5.5による実験によって連続的に記録した。二つの連続エレクトログラムの間の間隔を測定し、1分あたりの拍動(bpm)に変換することによって、心拍数を決定した。考慮に入れるべき値は、5つの連続測定の平均値であった。
【0038】
安定化のため、最初に調製を、クレブス液の開放灌流を用いて維持し、その液は冠動脈を灌流して廃棄した。20分間の安定化の後、系を閉鎖して、灌流液を150mlの溶液によって回収した。
二極の電極を配置し、肺動脈を横断する切開によって、右室の心内膜表面(VO)に固定した。この電極を介して、心室細動を誘発するために、5分間VDの心内膜で、連続電気刺激を引き起こした。カスタマイズしたプログラム化可能な刺激機を用いて、刺激を行った。電気刺激は、50ヘルツの周波数;2分の持続時間;10Vの電圧;および10mAの電流であった。
【0039】
20分間維持した心室細動の後、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの抽出物を、抗細動効果について検査するために組成物の形態(出願人の製品:カツアマ(商標登録))として、またはカツアバの抽出物として灌流液に付加し、反転が起こった場合は、5分後心室細動を誘導する新しい試行を、保護効果を決定するために行った。
次の表は、実験群の心臓における所見を開示している。結果は、他の抽出物を組み合わせたトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの抽出物の生成物(カツアマ群−表1)ならびにトリキリア・カティグア・エイ・ジュスの抽出物自体(カツアバ群−表2)を含む組成物の使用に言及しており、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの抽出物の陽性効果ならびに本明細書に記載のさらなる植物抽出物とのその組み合わせの効果を示す。
【0040】
【表4】

【0041】
表1−心室細動の状態にある単離したウサギの心臓の灌流液への、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物(上記したカツアマ群)の投与に際して得られた結果。時間VF=心臓の細動の時間;FC pre=心室細動誘発前のbpm単位の心拍数;FC post=心室細動の反転後のbpm単位の心拍数;時間=灌流液へのトリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物の付加、および不整脈の反転の間の、ミリ秒単位での時間経過;休止=心室細動の反転、および洞調律の開始の間の、ミリ秒単位での時間経過;NT=検査していない;NF=反転後心室細動を再誘発できない;S.E.=標準誤差。
【0042】
【表5】

【0043】
表2−心室細動の状態にある単離したウサギの心臓の灌流液への、カツアバの投与に際して得られた結果。時間VF=心臓の細動の時間;FC pre=心室細動誘発前のbpm単位の心拍数;FC post=心室細動の反転後のbpm単位の心拍数;時間=灌流液への物質の付加、および不整脈の反転の間の、ミリ秒単位での時間経過;休止=心室細動の反転、および洞調律の開始の間の、ミリ秒単位での時間経過;NT=検査していない;NF=反転後心室細動を再誘発できない;S.E.=標準誤差。
【0044】
トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物(カツアマ群)、または植物に由来する抽出物(カツアバ群)は、伝統的なランゲンドルフ調製中で、単離したウサギの心臓において誘導された心室細動の反転を維持した。その上、その心臓における心室細動の再誘発を予防した。トリキリア・カティグア・エイ・ジュスがそのような効果を発揮する機構は、完全には理解されていない。
【0045】
心室細動は、複数のリエントリー回路、または「ローター」に依存しており、それを維持することが知られている。複数のリエントリー回路の存在は、組織がそれが位置するに十分長いこと、および刺激伝導および心室の再分極が決定的な速度および持続時間を有していることが必要となる。特に、心室の再分極は、適合した波長を維持するために、やむを得ず短縮するか、または非同期的にならざるを得ない。
【0046】
幾つかの薬剤および物質は、心室の再分極を変化させ、QT間隔が延長する状況を導き、結果として悪性の心室性不整脈を導く。従って、心室の再分極の変化は、そのような不整脈の状況を作り出す上で、およびことによるとその反転において、決定的な役割を果たすと思われる。
【0047】
現在のところ、心臓の電気生理学的パラメーターに対する、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの効果を示す研究はない。従って、その抗細動効果についての機構を呈示することは、困難となる。抗不整脈効果のある他の物質と同様に、心室の再分極に対する効果は、その作用において重要な役割を果たしていることが考えられる。
【0048】
しかしながら、これは最初の観察結果にすぎない。心臓の電気生理学的パラメーターに対する、または心筋細胞の膜のチャネル生理機能に対する、トリキリア・カティグア・エイ・ジュスの効果に焦点を当てた他の多くの研究が、その機構を解明するために実行されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】単離したウサギの心臓のエレクトログラムのPおよびDのプロットを示す。
【図2】トリキリア種の植物原料単独または上記した組み合わせを用いた、心内膜刺激による、単離したウサギの心臓における心室細動の反転を示す。
【図3】トリキリア種の植物原料単独または上記した組み合わせの存在下での、単離したウサギの心臓における心室細動の再誘発の試行を示す。
【図4】単離した細胞−単離したニューロンにおける、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。ナトリウムチャネルが開いたままであることを示している。
【図5】時間(T)=0で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、組み合わせまたは組み合わせることなく用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
【図6】時間(T)=2分で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、組み合わせまたは組み合わせることなく用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
【図7】時間(T)=5分で、トリキリア種の植物原料を(200μg/mlの本発明の生成物または医薬組成物)、単独でまたは上記した組み合わせで用いた、パッチクランプ制御の実験の結果を示す。
【図8】トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物を用いた典型的な実験(カツアマ群)によって立証される、心室細動の反転を示す。
【図9】トリキリア・カティグア・エイ・ジュスを含む生成物を用いた典型的な実験(カツアマ群)における、心室細動の再誘発の試行を示す。
【図10】カツアバ群(トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物)を用いた典型的な実験において立証される、心室細動の反転を示す。
【図11】トリキリア・カティグア・エイ・ジュスに由来する抽出物の画分および副画分をどのようにして得るかの、可能なフローチャートを図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリキリア種の植物原料から由来する抽出物の使用であり、心室細動の対処、反転および/または予防のために用いられるところの使用。
【請求項2】
植物原料がトリキリア・カティグア・エイ・ジュスであるところの、請求項1記載の使用。
【請求項3】
植物原料がトリキリア・カティグア・エイ・ジュスであり、パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)と組み合わせられるところの、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
抽出物が、特に次の組成:
【表1】

【表2】

を有する、生成物または医薬組成物の形態であるところの、請求項1、2または3記載の使用。
【請求項5】
乾燥かつ賦形剤不含の形態である生成物または医薬組成物が、次の組成:
【表3】

を有するところの、請求項4記載の使用。
【請求項6】
自発性および電気刺激誘発性の心室細動の対処/反転のためであるところの、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
自発性および電気刺激誘発性の心室細動の反転のためであるところの、請求項6記載の使用。
【請求項8】
心室細動を予防するためのものであるところの、請求項1ないし7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
あらゆる病因の心室細動を治療するためのものであるところの、請求項1ないし7のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
規則的な心臓のリズムを維持するための細動後の治療のためであるところの、請求項1ないし7のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
自発性および電気刺激誘発性の心室細動に対処し/反転させるための、トリキリア種の植物原料を単独で、あるいは単独でなく一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)の抽出物と組み合わせて含むところの、医薬組成物。
【請求項12】
請求項4または5のいずれかに記載される組成物を有するところの、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
自発性および電気刺激誘発性の心室細動を反転させるために、植物原料をトリキリア・カティグア・エイ・ジュス単独にて、または上記した組み合わせにて用いるところの、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項6ないし10に記載の病態を治療および/または予防するために用いられるところの、請求項11ないし13のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
トリキリア種の植物原料を含む生成物または抽出物を、その必要のある患者に投与すること含むところの、心室細動を反転させ/対処するための方法。
【請求項16】
植物原料がトリキリア・カティグア・エイ・ジュスであるところの、請求項15記載の心室細動を反転させるための方法。
【請求項17】
その生成物が請求項4または5のいずれか一項ににおいて記載される組成を有するところの、請求項15記載の心室細動を反転させ/対処するための方法。
【請求項18】
請求項6ないし10に記載の病態を治療および/または予防するためのものである、請求項15ないし17のいずれか一項記載の治療および/または予防法。
【請求項19】
心室細動を反転させ、対処し、および/または予防するための医薬組成物を調製するために用いられるところの、トリキリア種の植物原料を単独で、または一つまたはそれ以上の次の植物:パウリニア・クバナ(ムクロジ科)、クロトン・モリチベンシス(トウダイグサ科)およびジンギベル・オッフィキナレ(ショウガ科)の抽出物と組み合わせて含む、生成物の使用。
【請求項20】
植物原料がトリキリア・カティグア・エイ・ジュスであり、心室細動の反転のために用いられるところの、請求項19記載の方法。
【請求項21】
生成物が請求項4または5に記載の組成を有するところの、請求項19記載の使用。
【請求項22】
生成物が請求項6ないし10に記載の心室細動の反転のために使用されるところの、請求項19または21記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−501808(P2007−501808A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522853(P2006−522853)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/BR2004/000141
【国際公開番号】WO2005/014018
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506044890)ラボラトリオ・カタリネンセ・ソシエダデ・アノニマ (1)
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIO CATARINENSE S.A.
【Fターム(参考)】