説明

心拍検出用加湿装置及び心拍検出用加湿プログラム

【課題】過不足なく加湿すること。
【解決手段】心拍検出用加湿装置は、装置の操舵部に設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、操舵部とは別の箇所に設けられた電極と操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する。そして、心拍検出用加湿装置は、測定した電位差信号から、電位差信号の測定に用いられた電極と接触した被験者の衣服の極性、及び/又は、電位差信号の強度を算出する。そして、心拍検出用加湿装置は、算出結果に基づいて被験者の衣服の吸湿性を判定し、判定結果に基づいて電極と被験者との接触部に対する加湿処理の強さを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍検出用加湿装置及び心拍検出用加湿プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の脈拍や心拍の状態を用いて、被験者の生理状態を検出する検出装置がある。例えば、車両に設けられた検出装置は、運転者の生理状態を検出することで、生理状態悪化による事故発生を抑止する。
【0003】
例えば、検出装置は、被験者と接触した2つの電極間の電位差信号を測定し、測定した電位差信号から被験者の脈拍や心拍を示す心電信号を識別する。そして、検出装置は、識別した心電信号を用いて、被験者の生理状態として眠気や覚醒度などを検出する。
【0004】
例えば、被験者に接触される電極は、車両の操舵部(ハンドル)や座面などに設けられる。座面に設けられた電極は、被験者が座席に座わることで、被験者の臀部と電気的に接触する。ハンドルに設けられた電極は、被験者がハンドルを握ることで、被験者の手と電気的に接触する。
【0005】
電極は、被験者の衣服を介して被験者と電気的に接触することがある。例えば、座面に設けられた電極は、スカートやジーンズなどを介して被験者と電気的に接触する。衣服の素材には様々な種類があり、吸水性や電気信号の通しやすさなども衣服の素材ごとに様々である。
【0006】
ここで、被験者と電気的に接触した2つの電極間の電位差信号を測定する際に、電極近傍の相対湿度を高める相対湿度装置がある。つまり、相対湿度装置は、電極近傍にある衣服を加湿することで電気信号が衣服を通りやすくし、被験者の電気信号を検知しやすくする。なお、電極近傍にマイナスイオンを照射する装置もある。
【0007】
なお、相対湿度は、大気中に含まれる水蒸気の圧力を、現在の温度における飽和水蒸気圧で除算することで得られる値を示す。例えば、相対湿度が「100%」であれば、大気中の水蒸気量が飽和したことになり、結露が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−102188号公報
【特許文献2】特開2009−106673号公報
【特許文献3】特開2009−106675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の相対湿度装置では、被験者を不快にさせていたという課題があった。例えば、被験者が吸湿性の高い素材でできた衣服を着ている場合に、衣服が水分を効率よく吸収する結果、相対湿度装置は、衣服を加湿しすぎることがあった。この場合、被験者が湿りすぎた衣服を着用することになり、相対湿度装置は、被験者を不快にさせていた。
【0010】
また、上述の相対湿度装置では、電気信号を測定できるまでに時間がかかっていたという課題があった。例えば、被験者が吸湿性の低い衣服を着ている場合には、相対湿度装置は、被験者が吸湿性の高い衣服を着ている場合と比較して長い時間加湿しなければならず、電気信号を測定できるまでに時間がかかっていた。
【0011】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、過不足なく加湿可能である心拍検出用加湿装置及び心拍検出用加湿プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する心拍検出用加湿装置は、一つの態様において、装置の操舵部に設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、該操舵部とは別の箇所に設けられた電極と該操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する測定部を備える。また、心拍検出用加湿装置は、前記測定部によって測定された電位差信号から、該電位差信号の測定に用いられた電極と電気的に接触した被験者の衣服の素材の極性、及び/又は、該電位差信号の強度を算出する算出部を備える。また、心拍検出用加湿装置は、前記算出部による算出結果に基づいて前記電極と前記被験者との接触部に対する加湿処理の強さを制御する加湿制御部を備える。
【発明の効果】
【0013】
開示する心拍検出用加湿装置の一つの態様によれば、過不足なく加湿可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に係る心拍検出用加湿装置の構成の一例について説明するブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係る心拍検出用加湿装置の構成の一例について説明するブロック図である。
【図3】図3は、実施例2におけるハンドル電極の一例について説明する図である。
【図4】図4は、車両のシートに設けられたシート上部電極やシート下部電極の一例について説明する図である。
【図5】図5は、実施例2における電位測定部により測定される電位について説明する図である。
【図6A】図6Aは、実施例2における送風部について説明する図である。
【図6B】図6Bは、実施例2における送風部について説明する図である。
【図7】図7は、電位差信号の変化のしやすさについて更に説明する図である。
【図8】図8は、実施例2における判定用テーブルに記憶された情報の一例について説明する図である。
【図9】図9は、実施例2における制御用テーブルによって記憶された情報の一例について説明する図である。
【図10】図10は、RMSを算出する数2について説明する図である。
【図11】図11は、実施例2における安定的指標算出部による極性算出処理の一例について説明する図である。
【図12】図12は、実施例2における加湿制御部による処理の一例について説明する図である。
【図13】図13は、実施例2に係る心拍検出用加湿装置による処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【図14】図14は、実施例2における加湿制御部による処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【図15A】図15Aは、実施例2に係る心拍検出用加湿装置の効果について説明する図である。
【図15B】図15Bは、実施例2に係る心拍検出用加湿装置の効果について説明する図である。
【図16】図16は、実施例3における動作状態に基づいて閾値を調整する処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【図17】図17は、実施例4における加湿処理を実行するか除湿処理を実行するかを決定する処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【図18】図18は、乾燥した空気を加湿処理時に併せて送風する場合について説明する図である。
【図19】図19は、電極と接触した被験者の衣服の一部分に対して強く加湿する場合について説明する図である。
【図20】図20は、実施例2に係る心拍検出用加湿プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する心拍検出用加湿装置及び心拍検出用加湿プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例により開示する発明が限定されるものではない。各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0016】
図1を用いて、実施例1に係る心拍検出用加湿装置100の構成の一例について説明する。図1は、実施例1に係る心拍検出用加湿装置の構成の一例について説明するブロック図である。心拍検出用加湿装置100は、図1に示す例では、測定部101と、算出部102と、加湿制御部103とを有する。
【0017】
測定部101は、装置の操舵部に設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、操舵部とは別の箇所に設けられた電極と操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する。算出部102は、測定部101によって測定された電位差信号から、電位差信号の測定に用いられた電極と接触した被験者の衣服の素材の極性や、電位差信号の強度を算出する。そして、加湿制御部103は、算出部102による算出結果に基づいて被験者の衣服の吸湿性を判定し、判定結果に基づいて被験者に対する加湿制御の強さを制御する。
【0018】
すなわち、被験者の衣服の素材ごとに極性や電位差信号の強度が異なることに着目し、心拍検出用加湿装置100は、電位差信号から極性や電位差信号の強度を算出し、算出結果に対応する素材の吸湿性に応じて、被験者に対する加湿制御の強さを制御する。
【0019】
この結果、実施例1によれば、過不足なく加湿可能である。例えば、従来の加湿装置では、被験者が吸湿性の高い衣服を着ている場合には、衣服が水分を効率よく吸収する結果、衣服を加湿しすぎることがあった。この場合、被験者が湿りすぎた衣服を着用することになり、被験者を不快にさせていた。また、例えば、従来の加湿装置では、被験者が吸湿性の低い衣服を着ている場合には、被験者が吸湿性の高い衣服を着ている場合と比較して長い時間加湿しなければならず、電気信号を測定できるまでに時間がかかっていた。これに対して、実施例1に係る心拍検出用加湿装置100は、衣服の吸湿性に基づいて加湿処理の強さを制御するので、被験者を不快にさせることなく、電気信号を速やかに測定可能である。
【実施例2】
【0020】
[心拍検出用加湿装置の構成]
次に、実施例2に係る心拍検出用加湿装置200について説明する。以下では、特に言及しない限り、心拍検出用加湿装置200が車両に設けられる場合を例に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、心拍検出用加湿装置200は、任意の装置に設けられて良い。
【0021】
図2を用いて、実施例2に係る心拍検出用加湿装置200の構成の一例について説明する。図2は、実施例2に係る心拍検出用加湿装置の構成の一例について説明するブロック図である。心拍検出用加湿装置200は、図2に示す例では、車両に搭載され、ハンドル電極201と、シート上部電極202と、シート下部電極203と、電位測定部204と、送風部205と、水分添加部206と、記憶部300と、制御部400とを有する。
【0022】
(電極)
以下では、特に言及しない限り、第2の電極としてハンドル電極201が車両のハンドルに設けられ、第1の電極としてシート上部電極202と第3の電極としてシート下部電極203とが車両のシート座面に設けられる場合を例に説明する。また、電位を測定する対象となる人を被験者と呼ぶことにする。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ハンドル電極201およびシート上部電極202とも、被験者が、電位を計測する対象となる期間において、継続して被験者に電気的に接触できる場所に設けられれば良い。例えば、被験者が装置の操作を行なっている間の心電に関する電位を計測する場合、被験者が操作をする動作の中で自然に被験者と電気的に接触できる場所にハンドル電極201およびシート上部電極202を設けることが考えられる。このような場所にハンドル電極201およびシート上部電極202を設ければ、被験者が意図的に電位を計測するための手間をとることを必要としないで済む。
【0023】
また、ハンドル電極201とシート上部電極202とは、被験者の心臓を間に挟む2つの位置に設けられれば良い。例えば、ハンドル電極201とシート上部電極202とは、車両のハンドルとシートの背もたれとにそれぞれ設けられても良く、任意の位置を組み合わせて良い。また、シート上部電極202とシート下部電極203とは、被験者の心臓を間に挟む2つの位置の一方に両方が設けられれば良い。例えば、シート上部電極202とシート下部電極203とは、シートの背もたれに設けられても良く、任意の場所に設けられて良い。被験者が立ったままの状態で電位を計測するのであれば、シート上部電極202とシート下部電極203とは、例えば、被験者が踏む場所に設けられても良い。
【0024】
ハンドル電極201は、電位測定部204と接続される。なお、ハンドルは、操舵部やステアリングホイールとも称される。図3を用いて、ハンドル電極201の構造の一例について説明する。図3は、実施例2におけるハンドル電極の一例について説明する図である。図3の501は、ハンドルを示す。図3の「1」及び「2」は、それぞれ、ハンドル電極201を示す。図3の(1)に示すように、2個のハンドル電極201が、ハンドル501の円周方向に沿って均等な大きさで設けられた場合を例に示した。以下では、「2」個あるハンドル電極201それぞれについて、ハンドル電極「1」やハンドル電極「2」と記載する。
【0025】
なお、以下では、特に言及しない限り、ハンドル電極201は、ハンドル501に2個設けられる場合を例に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ハンドル501に1個設けられても良く、3個以上設けられても良く、任意の数設けられて良い。
【0026】
ハンドル電極201は、ハンドル501が被験者に握られることで、被験者と接触する。図3の(2)に示す例では、ハンドル電極「1」は被験者の右手と接触し、ハンドル電極「2」は被験者の左手と接触する。
【0027】
シート上部電極202とシート下部電極203とについて説明する。シート上部電極202とシート下部電極203とは、電位測定部204と接続される。シート上部電極202は、ハンドル501に設けられた電極とは別の箇所に設けられる。例えば、シート上部電極202とシート下部電極203とは、車両のシート502に設けられる。シート下部電極203は、アースと接地され、車両の電位と等しくなる。シート下部電極203は、心拍検出用加湿装置100によって基準電極として用いられる。
【0028】
図4を用いて、車両のシート502に設けられたシート上部電極202やシート下部電極203の一例について説明する。図4は、車両のシートに設けられたシート上部電極やシート下部電極の一例について説明する図である。図4の(1)は、車両のシート上部から見た図であり、図4の(2)は、車両のシートの断面図である。図4において、502は車両のシートを示し、503はシート502の部材であるシート部材を示し、504はシート下部電極203を示し、505は絶縁層を示し、506と507とはシート上部電極202を示す。また、図4において、508は保護部材を示し、509は導電部を示す。
【0029】
図4に示す例では、シート部材503上に、シート下部電極504、絶縁層505、シート上部電極506や507、保護部材508が順に積層される。また、保護部材508には、導電部509が設けられる。導電部509は、シート上部電極506や507と接続される。例えば、保護部材508は、開口部を有し、導電部509は、開口部の内壁に設けられる。図4に示す例では、図4の506と507とに示すように、シート上部電極506や507は、2つに分離している場合を例に示した。この場合、シート上部電極506と507とは、それぞれ、被験者の臀部の右側と左側とに対応する。シート下部電極504は、絶縁層505を介してシート上部電極506や507と対向する。なお、シート上部電極202は、複数に分離している場合に限定されるものではなく、分離していなくても良い。
【0030】
なお、以下では、2つに分離したシート上部電極506と507とを区別しない場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2つに分離したシート上部電極506と507と、それぞれ電気的に独立し、後述する電位測定部204が、シート上部電極506と507とについて、別個に電位を測定しても良い。
【0031】
図2の説明に戻る。シート上部電極202は、被験者がシート502に着座することで被験者と電気的に接触する。図4に示す例では、被験者がシート502に着座する結果、シート上部電極202が導電部509を介して被験者の臀部と接触する。なお、実施例2では、特に言及しない限り、シート上部電極202が被験者と接触した場合を例に説明する。つまり、実施例2では、被験者がシート502に着座した場合を例に説明する。
【0032】
(電位測定部)
電位測定部204は、ハンドル電極201、シート上部電極202、シート下部電極203及び制御部400と接続される。電位測定部204は、オペアンプが該当する。電位測定部204は、被験者の心臓を間に挟む2つの位置の電位をそれぞれ測定する。具体的には、電位測定部204は、車両の電位を基準電位とした場合におけるハンドル電極201やシート上部電極202の電位をそれぞれ測定する。つまり、電位測定部204は、ハンドル電極「1」やハンドル電極「2」の電位を測定することで被験者の手の電位を測定し、シート上部電極202の電位を測定することで被験者の臀部の電位を測定する。
【0033】
図5を用いて、電位測定部204により測定される電位について更に説明する。図5は、実施例2における電位測定部により測定される電位について説明する図である。図5では、説明の便宜上、「2」個あるハンドル電極201が、それぞれ、被験者の左右の手によって接触された場合を例に説明する。
【0034】
被験者の心臓から腕までは、電気的には抵抗成分とみなせる。被験者の手は、電気的にはRC(resistor capacitor)並列回路とみなせる。被験者の心臓から臀部までは電気的には抵抗成分とみなせる。また、手袋やズボンやスカートなどの着衣は電気的にはRC並列回路とみなせる。この結果、被験者自身を含む等価回路は図5に示すようになる。図5において、510から512は、オペアンプを示し、電位測定部204に対応する。513は被験者の心臓を示す。514は、運転者の心臓513から右腕までの抵抗成分を示す。515は、右手に対応するRC並列回路を示す。516は、運転者の心臓513から左腕までの抵抗成分を示す。517は、左手に対応するRC並列回路を示す。518は、心臓513から臀部までの抵抗成分を示す。519は、被験者の衣服に対応するRC並列回路を示す。
【0035】
図5に示すように、オペアンプ510は、2つの入力を有する。オペアンプ510は、一方の入力に対して、抵抗514とRC並列回路515とを経由して心臓513の心筋活動電位がハンドル電極「1」から入力され、他方の入力に対して、基準電位となる車体の電位がシート下部電極203から入力される。そして、オペアンプ510は、車体フレームの電位を基準電位とした場合における心筋活動電位を増幅した上で出力する。つまり、図5に示す例では、オペアンプ510は、運転者の右手から心筋活動電位を検知し、検出した心筋活動電位を増幅した上で出力する。
【0036】
また、オペアンプ511は、オペアンプ510と同様に、抵抗516とRC並列回路517とを経由して心臓513の心筋活動電位がハンドル電極「2」から入力され、心筋活動電位を増幅した上で出力する。つまり、オペアンプ511は、運転者の左手から心筋活動電位を検知し、増幅した上で出力する。
【0037】
また、オペアンプ512は、オペアンプ510と同様に、抵抗518とRC並列回路519とを経由して心臓513の心筋活動電位がシート上部電極202から入力され、心筋活動電位を増幅した上で出力する。つまり、オペアンプ512は、運転者の臀部から心筋活動電位を検知し、増幅した上で出力する。
【0038】
なお、オペアンプ510〜512が心筋活動電位を増幅した上で送るのは、車体フレームの電位を基準電位とした場合における心筋活動電位が微弱だからである。また、オペアンプ510〜512は、固定の増幅率を用いて増幅する。また、被験者の臀部から検知される心筋活動電位は、RC並列回路519を介して検知される結果、つまり、被験者の衣服を介して検知される結果、被験者の手から検知される心筋活動電位と比較して小さい。言い換えると、被験者の臀部から検知される心筋活動電位は、被験者の手から検知される心筋活動電位と比較して、ノイズが大きい。
【0039】
(送風部及び水分添加部)
送風部205は、水分添加部206及び制御部400と接続される。送風部205は、例えば、車両の空調装置が該当する。送風部205は、ハンドル電極201やシート上部電極202と被験者との接触部に対して送風する。なお、送風部205によって送風される空気中には、水分添加部206によって水分が添加される。
【0040】
図6Aや図6Bを用いて、実施例2における送風部205について説明する。図6Aや図6Bは、実施例2における送風部について説明する図である。図6Aや図6Bに示す例では、車両のシートが、被験者に風を送るための送風路を座面に有する場合を例に説明する。
【0041】
図6Aや図6Bにおいて、501はハンドル電極201を示し、502は車両のシートを示す。また、図6Aや図6Bにおいて、520は、車両のシート502のうち、シート上部電極202やシート下部電極203が設けられた部分を示す。また、図6Aや図6Bにおいて、521や522は、送風部205によって送風される空気の流れを示す。
【0042】
図6Aに示す例では、送風部205は、車両のシート502に設けられた送風路を介して、シート502の座面から被験者に向けて送風する。例えば、図6Bに示す例では、送風部205は、シート上部電極202やシート下部電極203を貫通して設けられた送風部を介して、シート502の座面と被験者との接触部に対して送風する。
【0043】
水分添加部206は、送風部205及び制御部400と接続される。水分添加部206は、例えば、車両の空調装置が該当する。水分添加部206は、送風部205によって送風される空気中に水分を添加する。例えば、水分添加部206は、被験者の衣服を除湿する場合には、送風部205によって送風される空気中に水分を添加しなかったり、送風部205によって送風される空気中から水分を除去したりする。また、例えば、水分添加部206は、被験者の衣服を加湿する場合には、送風部205によって送風される空気中に水分を添加する。水分添加部206の例として、水分を霧状にする超音波式のミスト発生器が考えられる。
【0044】
(記憶部)
記憶部300は、制御部400と接続される。記憶部300は、制御部400による各種処理に用いるデータを記憶する。記憶部300は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスクや光ディスクなどの記憶装置である。記憶部300は、図2に示す例では、記憶部300は、判定用テーブル301と、制御用テーブル302とを有する。
【0045】
判定用テーブル301は、衣服の素材ごとに、電位差信号に含まれるノイズの強度や素材の極性、電位差信号の変化のしやすさを記憶する。ここで、電位差信号とは、制御部400の電位差測定部401によって測定される信号である。例えば、電位差信号は、ハンドルに設けられた複数のハンドル電極201間の電位差を示す信号や、ハンドル電極201とシート上部電極202との電位差を示す信号が該当する。
【0046】
また、判定用テーブル301によって記憶される極性とは、素材に発生する静電気の極性を示し、「プラス」又は「マイナス」となる。ハンドル電極201は、ハンドル握る素手、もしくは手袋を介して被験者と電気的に接触する。シート上部電極202は、スカートやジーンズなどを介して被験者と電気的に接触する。以下の説明では、手袋も衣服の一種として説明する。ここで、被験者と衣服との間の摩擦や、衣服と電極との間の摩擦によって、衣服には静電気が発生する。被験者の衣服の素材によって、衣服に発生する静電気の極性は異なる。つまり、判定用テーブル301によって記憶される極性とは、衣服の素材に静電気が発生した場合の、発生した静電気の極性を示す。なお、極性がプラスである場合とマイナスである場合では、電位差信号の位相が逆になる。
【0047】
また、判定用テーブル301によって記憶される電位差信号の変化のしやすさとは、電極と電気的に接触した衣服に対して加湿したり除湿したりすることで、電位差信号に含まれるノイズがうける影響の強さを示す。例えば、電位差信号の変化のしやすさが大きければ大きいほど、加湿したり除湿したりすることでノイズの強度は早く変化する。また、例えば、電位差信号の変化のしやすさが小さければ小さいほど、加湿したり除湿したりすることでノイズの強度は遅く変化する。
【0048】
図7を用いて、電位差信号の変化のしやすさについて更に説明する。図7は、電位差信号の変化のしやすさについて更に説明する図である。図7の601〜605は、電位差信号を示す。また、図7の606は、電位差信号に含まれるノイズを示し、図7の607は、電位差信号に含まれる心拍信号を示す。また、図7の611に示す矢印は、加湿した場合における電位差信号の変化の方向を示し、図7の612は、除湿した場合における電位差信号の変化の方向を示す。
【0049】
図7の611に示すように、電位差信号は、電極と被験者との接触部が加湿されると、電位差信号に含まれるノイズが減少する。図7に示すように、601〜605へと変化するに従って、電位差信号に含まれるノイズは減少する。また、図7の612に示すように、電位差信号は、電極と被験者との接触部が除湿されると、電位差信号に含まれるノイズが増加する。図7に示すように、605〜601へと変化するに従って、電位差信号に含まれるノイズは増加する。
【0050】
つまり、電位差信号の変化のしやすさが大きければ大きいほど、加湿時には、電位差信号に含まれるノイズの単位時間あたりの減少量が大きくなり、除湿時には、電位差信号に含まれるノイズの単位時間あたりの増加量が大きくなることを示す。また、同様に、電位差信号の変化のしやすさが小さければ小さいほど、加湿時には、電位差信号に含まれるノイズの単位時間あたりの減少量が小さくなり、除湿時には、電位差信号に含まれるノイズの単位時間あたりの増加量が小さくなることを示す。
【0051】
図8を用いて、実施例2における判定用テーブル301に記憶された情報の一例について説明する。図8は、実施例2における判定用テーブルに記憶された情報の一例について説明する。図8に示す例では、判定用テーブル301は、衣服の素材を示す「素材名」に対応付けて、電位差信号に含まれるノイズの強度を示す「両手ノイズ」や「片手ノイズ」と、衣服の極性を示す「極性」と、電位差信号の変化のしやすさを示す「変化」とを対応づけて記憶する。
【0052】
ここで、「両手ノイズ」とは、ハンドルに設けられた複数のハンドル電極201間の電位差を示す電位差信号に含まれるノイズの強度を示す。「片手ノイズ」とは、ハンドル電極201とシート上部電極202との間の電位差を示す電位差信号に含まれるノイズの強度を示す。
【0053】
図8に示す例では、判定用テーブル301は、素材名「ウール系」に対応づけて、両手ノイズ「中」と片手ノイズ「大」と極性「プラス」と変化「中」とを記憶する。すなわち、電極と接触した衣服の素材がウール系である場合に、両手ノイズは中程度であり、片手ノイズは大程度であり、ウール系の衣服に発生した静電気の極性はプラスであり、電位差信号の変化のしやすさは中程度であることを記憶する。また、判定用テーブル301は、素材名「ポリエステル系」や「綿系」などについても、「ウール系」と同様に、両手ノイズや片手ノイズ、極性や変化を記憶する。当然ながら判定用テーブル301に記憶する素材名は、図8に例示されたものに限る必要は無く、さらに多くの素材名を記憶しても構わない。
【0054】
なお、図8に示す例では、両手ノイズや片手ノイズ、変化について、説明の便宜上、「大」「中」「小」などを用いて示したが、本発明はこれに限定されるものではい。例えば、両手ノイズや片手ノイズについては、ノイズの強度の平均値を示す閾値を用いても良く、任意の情報を用いて良い。また、変化については、所定時間あたりの変化量の範囲を示す閾値を用いても良く、任意の情報を用いて良い。
【0055】
また、図8に示す例では、判定用テーブル301は、加湿処理時における電位差信号の変化のしやすさと、除湿処理時における電位差信号の変化のしやすさとをまとめて、「変化」として記憶する場合を例に説明した。つまり、図8に示す「変化」は、衣服の素材の吸湿性と放湿性とを考慮したうえで決定される値になる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、判定用テーブル301は、加湿処理時における電位差信号の変化のしやすさと、除湿処理時における電位差信号の変化のしやすさとを別個に記憶しても良い。この場合、加湿処理時における電位差信号の変化のしやすさは、衣服の素材の吸湿性によって決定される値になり、除湿処理時における電位差信号の変化のしやすさは、衣服の素材の放湿性によって決定される値になる。
【0056】
判定用テーブル301に記憶された情報は、例えば、心拍検出用加湿装置200を製造する製造者によって予め設定される。また、判定用テーブル301に記憶された情報は、後述する制御部400の素材判定部404によって用いられる。
【0057】
制御用テーブル302は、衣服の素材ごとに、送風部205や水分添加部206の制御情報を記憶する。つまり、制御用テーブル302は、衣服の素材ごとに、加湿や除湿の強さを記憶する。図9を用いて、実施例2における制御用テーブル302によって記憶された情報の一例について説明する。図9は、実施例2における制御用テーブルによって記憶された情報の一例について説明する図である。
【0058】
図9に示す例では、制御用テーブル302は、「素材名」ごとに、加湿処理時における「加湿量」及び「風量」と、除湿処理時における「除湿量」及び「風量」とを記憶する。ここで、図9の「加湿量」や「除湿量」は、送風部205によって送風される空気中に含まれる水分量を示す。例えば、「加湿量」が大きければ大きいほど、「除湿量」が小さければ小さいほど、水分量は多くなる。また、「加湿量」が小さければ小さいほど、「除湿量」が大きければ大きいほど、水分量は少なくなる。また、図9の「風量」は、送風部205による送風の強さを示す。例えば、「風量」が大きければ大きいほど、送風が強いことを示し、「風量」が小さければ小さいほど、送風が弱いことを示す。
【0059】
図9に示す例では、制御用テーブル302は、素材名「ウール系」に対応づけて、加湿処理時における加湿量「大」及び風量「大」と、除湿処理時における除湿量「中」及び風量「大」を記憶する。すなわち、電極と接触した衣服の素材がウール系である場合に、後述する加湿制御部405によって、加湿量「大」風量「大」として加湿処理が実行され、除湿量「中」風量「大」として除湿処理が実行されることを記憶する。また、同様に、制御用テーブル302は、素材名「ポリエステル系」や「綿系」などについての情報も記憶する。
【0060】
ここで、制御用テーブル302に記憶された加湿量は、衣服の素材の吸湿性によって決定される。つまり、衣服の素材の吸湿性が高ければ、衣服の素材の吸湿性が低い場合と比較して加湿量は小さくなる。また、衣服の素材の吸湿性が低ければ、衣服の吸湿性が高い場合と比較して加湿量は大きくなる。また、制御用テーブル302に記憶された除湿量は、衣服の素材の放湿性によって決定される。つまり、衣服の素材の放湿性が高ければ、衣服の素材の放湿性が低い場合を比較して除湿量は小さくなる。また、衣服の素材の放湿性が低ければ、衣服の素材の放湿性が高い場合を比較して除湿量は大きくなる。
【0061】
なお、図9に示す例では、加湿量や除湿量、風量について、説明の便宜上、「大」「中」「小」などを用いて示したが、本発明はこれに限定されるものではく、任意の値を用いて良い。例えば、加湿量や除湿量について、単位あたりの空気中に存在する水分量を示す閾値を用いても良く、任意の情報を用いて良い。また、風量について、風速を示す閾値を用いても良く、任意の情報を用いてよい。
【0062】
制御用テーブル302に記憶された情報は、例えば、心拍検出用加湿装置200を製造する製造者によって予め設定される。また、制御用テーブル302に記憶された情報は、後述する制御部400の加湿制御部405によって用いられる。
【0063】
(制御部)
制御部400は、電位測定部204、送風部205、水分添加部206及び記憶部300と接続される。制御部400は、各種の処理手順などを規定したプログラムを記憶する内部メモリを有し、種々の処理を制御する。制御部400は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。制御部400は、図2に示す例では、電位差測定部401と、安定的指標算出部402と、経過的指標算出部403と、素材判定部404と、加湿制御部405とを有する。
【0064】
電位差測定部401は、被験者の心臓を間に挟む2つの位置に設けられた2つの電極間の電位差を測定し、被験者の心臓を間に挟む2つの位置の一方に設けられた2つの電極間の電位差を測定する。以下では、ある瞬間の電位差の値に限定せず、ある時間位置から継続して測定された電位差の値各々を電位差信号と記載する。
【0065】
具体的には、電位差測定部401は、ハンドルとは別の箇所に設けられた電極とハンドル電極201との間の電位差信号を測定する。つまり、電位差測定部401は、ハンドル電極201とシート下部電極203との間の電位差信号を測定する。より詳細には、電位差測定部401は、ハンドル電極「1」とシート下部電極203との間の電位差信号を測定し、ハンドル電極「2」とシート下部電極203との間の電位差信号を測定する。また、電位差測定部401は、シート上部電極202とシート下部電極203との間の電位差信号を測定する。
【0066】
また、電位差測定部401は、ハンドルに設けられた複数のハンドル電極201電極のうち2つの電極間の電位差信号を測定する。つまり、例えば、電位差測定部401は、ハンドル電極「1」とハンドル電極「2」との間の電位差信号を測定する。より詳細には、ハンドル電極「1」とシート下部電極203との間の電位差と、ハンドル電極「2」とシート下部電極203との間の電位差との差を測定することで、ハンドル電極「1」とハンドル電極「2」との間の電位差信号を測定する。
【0067】
ところで、被験者が車両のシートに座っていたとしても、複数あるハンドル電極201には被験者の手と接触したものもあれば、接触していないものもある。また、複数あるハンドル電極201のすべてが、被験者と接触していない場合もある。ここで、被験者の手と接触した接触電極から算出される電位と、被験者の手と接触していない未接触電極から算出された電位とは、異なる値を示す。
【0068】
具体的には、運転者は車両と接触している。このため、ハンドル電極201は、運転者によって接触されると、車両の電位である基準電位に近い電位を検知する。言い換えると、接触電極では、未接触電極によって検知される電位と比較して、基準電位に近い値が検知される。なお、シート上部電極202もまた、運転者の臀部と接触する。このため、シート上部電極202では、未接触電極にて検知される電位よりも基準電位に近い値が検知される。
【0069】
このことを踏まえ、電位差測定部401は、電位の値に基づいて、被験者と電極とが電気的に接触したかを判定する。そして、電位差測定部401は、複数のハンドル電極201と被験者とが接触したと判定した場合には、ハンドルに設けられた複数のハンドル電極201電極のうち2つの電極間の電位差信号を測定する。また、電位差測定部401は、一つのハンドル電極201と被験者とが接触したと判定した場合には、ハンドル電極201とシート上部電極202との間の電位差信号を測定する。
【0070】
また、電位差測定部401は、電位差信号に対して各種フィルタリングを行うことで、受信した電位差信号に含まれるノイズを軽減しても良い。つまり、電位差測定部401は、電位差信号に含まれる成分のうち、心筋活動電位に関する成分以外の成分を軽減しても良い。
【0071】
例えば、電位差測定部401は、ノッチフィルタや、バンドパスフィルタ、相関フィルタを順に用いてフィルタリングしても良い。なお、ノッチフィルタは、特定の周波数の信号を減衰させるフィルタである。バンドパスフィルタは、特定の周波数を通過させるフィルタである。相関フィルタは、信号に対して、逆拡散処理(相関処理)を行うフィルタである。
【0072】
安定的指標算出部402は、電位差信号から安定的指標を算出する。安定的指標とは、電位差信号に含まれるノイズの強度や、被験者の衣服の極性が該当する。なお、電位差信号には、心拍信号とノイズとが含まれる。また、被験者と電極との接触部の状態によっても異なるが、ノイズの強度は、心拍信号の強度と比較して大きい。このことを踏まえ、以下では、電位差信号に含まれるノイズの強度として、電位差信号の強度を用いる場合を例に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、電位差信号に含まれる成分のうちノイズについての強度を識別し、識別した強度を用いても良い。
【0073】
電位差信号の強度を算出する処理の一例について説明する。安定的指標算出部402は、電位差信号のRMS(Root Mean Square Value)を算出することで、電位差信号の強度を算出する。例えば、安定的指標算出部402は、「数1」や「数2」を用いてRMSを算出する。そして、例えば、安定的指標算出部402は、ハンドル電極「1」と「2」との間について、電位差信号の強度が「中」であると算出する。つまり、安定的指標算出部402は、両手ノイズが「中」であると算出する。
【0074】
【数1】

【0075】
【数2】

【0076】
「数1」と「数2」とについて簡単に説明する。「数1」や「数2」は、時間「0」から「T」までにおけるRMSを算出する式である。「数1」や「数2」の「i」は、電位差信号の値を示す。つまり、「数1」は、「i」の2乗について時間「0」から「T」までの平均値を算出し、算出した平均値の平方根を算出することを示す。
【0077】
「数2」について、図10を用いて説明する。図10は、RMSを算出する数2について説明する図である。図10の(1)は、電位差測定部401によって測定された電位差信号の一例を示す。図10の(2)は、電位差測定部401によって測定された電位差信号にかかっているオフセットを示す。図10の(3)は、電位差測定部401によって測定された電位差信号の平均強度を示す。図10の(4)は、電位差測定部401によって測定された電位差信号からオフセットを除去した電位差信号の一例を示す。
【0078】
ここで、図10の(1)や(2)に示すように、電位差測定部401によって測定された電位差信号には、オフセットがかかっている。このため、図10の(4)に示すように、安定的指標算出部402は、電位差信号からオフセットを除去した上でRMSを算出しても良い。つまり、「数2」は、「iから(iの平均値)を減算した値」の2乗について時間「0」から「T」までの平均値を算出し、算出した平均値の平方根を算出することを示す。なお、(iの平均値)は、図10の(3)に示した電位差信号の平均強度が該当する。
【0079】
被験者の衣服の素材の極性を算出する処理の一例について説明する。安定的指標算出部402は、電位差信号の値の平均値を算出し、算出した値が「プラス」であるか「マイナス」であるかを算出する。言い換えると、安定的指標算出部402は、電位差信号の値の平均値を算出することで、電位差信号がマイナス側と比較してプラス側に大きく変化しているか、電位差信号がプラス側と比較してマイナス側に大きく変化しているかを識別する。
【0080】
図11を用いて、被験者の衣服の極性を算出する処理の一例について更に説明する。図11は、実施例2における安定的指標算出部402による極性算出処理の一例について説明する図である。図11の横軸は、時間軸を示す。図11の縦軸は、電位差信号の値の平均値を示す。図11に示す例では、電位差信号の値の平均値は、プラスとなっており、安定的指標算出部402は、被験者の衣服に発生した静電気の極性がプラスであると識別する。
【0081】
また、例えば、安定的指標算出部402は、安定的指標を算出する場合には、安定的指標を所定回数繰り返し算出し、算出結果として得られた値の分散を評価する。そして、安定的指標算出部402は、分散を評価することで、算出した安定的指標のうち最も確からしい値を安定的指標として確定しても良い。
【0082】
経過的指標算出部403は、電位差信号から経過的指標を算出する。経過的指標とは、電位差信号の変化のしやすさが該当する。例えば、経過的指標算出部403は、所定時間あたりのノイズの減少量や増加量を算出することで、電位差信号の変化のしやすさを算出する。
【0083】
また、例えば、経過的指標算出部403は、経過的指標を算出する場合には、経過的指標を所定回数繰り返し算出し、算出結果として得られた値の分散を評価する。そして、経過的指標算出部403は、分散を評価することでもっとも確からしい値を経過的指標として確定しても良い。
【0084】
素材判定部404は、安定的指標算出部402や経過的指標算出部403による算出結果に基づいて、被験者の衣服の素材を判定する。言い換えると、素材判定部404は、被験者の衣服の素材の吸湿性や放湿性を判定する。具体的には、素材判定部404は、安定的指標や経過的指標を検索キーとして判定用テーブル301を検索する。そして、素材判定部404は、検索キーに一致する素材名を判定用テーブル301から取得する。ここで、素材判定部404が判定用テーブル301から取得した素材名が、判定結果となる。
【0085】
例えば、安定的指標として、極性「プラス」と両手ノイズ「中」とが算出された場合を例に説明する。素材判定部404は、極性「プラス」と両手ノイズ「中」とを検索キーとして、判定用テーブル301を検索する。そして、素材判定部404は、判定用テーブル301から、極性「プラス」と両手ノイズ「中」とに一致する素材名「ウール系」を読み出す。
【0086】
加湿制御部405は、素材判定部404による判定結果に基づいて、電極と被験者との接触部に対する加湿制御の強さを制御する。例えば、加湿制御部405は、判定結果に対応する制御情報を制御用テーブル302から読みだす。そして、加湿制御部405は、読み出した制御情報を用いて送風部205と水分添加部206とを制御することで、加湿制御の強さを制御する。具体的には、加湿制御部405は、制御情報を用いて、加湿処理の強さを制御し、除湿処理の強さを制御する。
【0087】
例えば、素材判定部404によって、衣服の素材が「ウール系」であると識別された場合を用いて説明する。この場合、加湿制御部405は、判定結果となる「ウール系」に対応する制御情報を制御用テーブル302から読み出す。図9に示す例では、加湿制御部405は、制御用テーブル302から、加湿処理時における加湿量「大」及び風量「大」と、除湿処理時における除湿量「中」及び風量「大」を読み出す。そして、例えば、加湿処理時には、加湿制御部405は、加湿量が「大」になるように水分添加部206を制御し、風量が「大」になるように送風部205を制御する。また、例えば、除湿処理時には、加湿制御部405は、除湿量が「中」になるように水分添加部206を制御し、風量が「大」になるように送風部205を制御する。
【0088】
また、加湿制御部405は、電位差信号の強度を示す閾値を予め保持しておき、電位差信号の強度が閾値より大きい場合に、加湿処理を実行する。また、例えば、加湿制御部405は、電位差信号の強度が閾値より小さい場合には、除湿処理を実行する。また、例えば、加湿制御部405は、電位差信号の強度が閾値より大きくも小さくもない場合には、現在の衣服の状態を維持するための維持処理を実行する。なお、維持処理とは、例えば、被験者の汗などによる加湿と同程度の除湿処理を実行したり、自然乾燥と同程度の加湿処理を実行したり、送風部205や水分添加部206が何もしないように制御したりすることなどが該当する。
【0089】
図12を用いて、実施例2における加湿制御部405による処理の一例について説明する。図12は、実施例2における加湿制御部による処理の一例について説明する図である。図12において、横軸は時間軸を示し、縦軸は電位差信号の強度を示す。図12に示す例では、電位差信号の強度を示す閾値が「50」である場合を例に説明する。
【0090】
また、図12に示す例では、「t0」において、被験者が車両のシートに座った場合を例に説明する。また、「t0」から「t2」までの間に、素材判定部404が素材判定処理を実行した場合を例に説明する。また、「t0」から「t1」までの間には、送風部205や水分添加部206が、初期動作として、除湿処理を実行した場合を例に示した。つまり、図12に示すように、「t0」から「t1」までの間では、電位差信号の強度が上がる場合を例に示した。また、「t1」から「t2」までの間には、送風部205や水分添加部206が、初期動作として、加湿処理を実行した場合を例に示した。つまり、図12に示すように、「t1」から「t2」までの間では、電位差信号の強度が下がる場合を例に示した。以下では、図12の「t2」の時点において、素材判定部404による判定結果が得られた場合を例に説明する。
【0091】
図12の「t2」において、加湿制御部405は、判定結果に対応する制御情報を読み出し、「t2」以降、読み出した制御情報に従って、送風部205と水分添加部206とを制御する。例えば、加湿制御部405は、「t2」から「t3」までの間、制御用テーブル302から読み出した加湿処理時における加湿量及び風量を用いて、加湿処理を制御する。そして、図12の「t3」において、電位差信号の強度が閾値より小さくなると、「t3」から「t4」までの間、制御用テーブル302から読み出した除湿処理時における除湿量及び風量を用いて、除湿処理の強さを制御する。そして、図12の「t4」において、除湿処理の結果電位差信号の強度が閾値と等しくなると、加湿制御部405は、「t4」以降、維持処理を実行する。
【0092】
なお、図12に示す例では、加湿処理の後、除湿処理が実行される場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加湿処理の結果、電位差信号の強度が閾値より小さくなることなく等しくなると、加湿制御部405は、加湿処理の後、維持処理を実行する。
【0093】
ここで、加湿制御部405は、判定結果により特定される被験者の衣服の素材が他の衣服の素材と比較して吸湿性が低い場合には、他の衣服の素材と比較して高い電位差信号の強度を示す閾値になるように加湿制御を実行しても良い。また、加湿制御部405は、判定結果により特定される被験者の衣服の素材が他の衣服の素材と比較して吸湿性が高い場合には、他の衣服の素材と比較して低い電位差信号の強度を示す閾値になるように加湿制御を実行しても良い。
【0094】
つまり、加湿制御部405は、電位差信号の強度を示す閾値として、衣服の素材ごとに異なる値を用いても良い。例えば、加湿制御部405が、ウール系の衣服について、電位差信号の強度を示す閾値として「30」を用いる場合を例に説明する。この場合、加湿制御部405は、ウール系の衣服よりも吸湿性が低いポリエステル系の衣服について、「30」よりも大きい閾値「60」を用いても良い。つまり、この場合、加湿制御部405は、電位差信号の強度が「60」になるように、加湿処理や除湿処理などを実行する。
【0095】
なお、心拍検出用加湿装置200は、更に、電位差信号から被験者の脈拍や心拍を識別し、識別した被験者の脈拍や心拍の状態を用いて被験者の生理状態を検出しても良い。
【0096】
[心拍検出用加湿装置による処理]
次に、図13を用いて、実施例2に係る心拍検出用加湿装置200による処理の流れの一例について説明する。図13は、実施例2に係る心拍検出用加湿装置による処理の流れの一例について説明するフローチャートである。なお、以下では、特に言及しない限り、複数のハンドル電極201と被験者とが接触した場合を用いて説明する。
【0097】
図13に示すように、電位差測定部401が電位差信号を測定すると(ステップS101肯定)、安定的指標算出部402は、安定的指標を算出する(ステップS102)。例えば、安定的指標算出部402は、両手ノイズが「中」であると算出する。また、経過的指標算出部403は、経過的指標の算出を開始する(ステップS103)。
【0098】
そして、素材判定部404は、安定的指標を用いて素材判定処理を実行する(ステップS104)。つまり、素材判定部404は、安定的指標に基づいて、被験者の衣服の吸湿性を判定する。ここで、例えば、素材判定部404は、安定的指標を検索キーとして判定用テーブル301を検索する。例えば、素材判定部404は、極性「プラス」と両手ノイズ「中」とを検索キーとして、判定用テーブル301を検索する。そして、素材判定部404は、一致した素材名が判定用テーブル301にあると(ステップS105肯定)、一致した素材名を判定用テーブル301から読み出す。例えば、素材判定部404は、判定用テーブル301から、極性「プラス」と両手ノイズ「中」とに一致する素材名「ウール系」を読み出す。
【0099】
そして、加湿制御部405は、素材判定部404による判定結果に基づいた加湿制御を実行する(ステップS106)。例えば、素材名「ウール系」であると判定された場合には、加湿制御部405は、素材名「ウール系」を検索キーとして制御用テーブル302から制御情報を取得し、取得した制御情報を用いて加湿制御を実行する。
【0100】
一方、素材判定部404は、一致した素材名が判定用テーブル301にないと(ステップS105否定)、経過的指標算出部403によって経過的指標が算出済みであるかを判定する(ステップS107)。ここで、素材判定部404が、経過的指標が算出済みでないと判定すると(ステップS107否定)、安定的指標算出部402が安定的指標を再度算出する(ステップS108)。その後、素材判定部404は、上述のステップS104に戻り、再度算出された安定的指標を用いて、素材判定処理を再度実行する(ステップS104)。その後、上述したステップS105において一致した素材名が判定用テーブル301にある場合や(ステップS105肯定)、経過的指標が算出済みと判定されるまで(ステップS107肯定)、上述したステップS104〜S108の処理を繰り返す。
【0101】
そして、経過的指標算出部403によって経過的指標が算出済みと判定されると(ステップS107肯定又はステップS109肯定)、素材判定部404は、経過的指標を用いて素材判定処理を実行する(ステップS110)。具体的には、上述したステップS102にて算出された安定的指標に加えて、経過的指標を更に用いて、素材判定処理を実行する。例えば、経過的指標算出部403によって変化「中」が算出された場合を例に説明する。この場合、素材判定部404は、極性「プラス」と両手ノイズ「中」と変化「中」とを検索キーとして、判定用テーブル301を検索する。
【0102】
ここで、安定的指標算出部402は、一致した素材名が判定用テーブル301にあると(ステップS111肯定)、一致した素材名を判定用テーブル301から読み出す。例えば、素材判定部404は、判定用テーブル301から、極性「プラス」と両手ノイズ「中」と変化「中」とに一致する素材名「ウール系」を読み出す。そして、加湿制御部405は、上述したステップS106と同様に、素材判定部404による判定結果に基づいた加湿制御を実行する(ステップS112)。
【0103】
一方、素材判定部404は、一致した素材名が判定用テーブル301にないと(ステップS111否定)、安定的指標算出部402は、安定的指標を再度算出する(ステップS113)。そして、経過的指標算出部403は、経過的指標を再度算出する(ステップS114)。そして、上述のステップS110に戻り、素材判定部404は、再度算出された安定的指標と経過的指標とを用いて、素材判定処理を再度実行する(ステップS110)。その後、上述したステップS110において判定用テーブル301の素材名と一致するまで(ステップS111肯定)、上述したステップS110〜S114の処理を繰り返す。
【0104】
なお、上記の処理手順は、上記の順番に限定されるものではなく、処理内容を矛盾させない範囲で適宜変更しても良い。例えば、上述のステップS102とS103、あるいは、ステップS113とS114とについて、処理を平行して実行しても良く、順番を入れ替えても良い。また、図13に示す例では、まず、安定的指標を用いて素材名を判定する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、安定的指標と経過的指標とが算出された後に、素材判定処理を実行しても良い。
【0105】
[加湿制御部による処理]
次に、図14を用いて、実施例2における加湿制御部405による処理の流れの一例について説明する。図14は、実施例2における加湿制御部による処理の流れの一例について説明するフローチャートである。図14に示す一連のフローチャートは、図13におけるステップS106やS112において、加湿制御部405によって実行される。
【0106】
図14に示すように、加湿制御部405は、ノイズの強度が閾値よりも大きいかを判定する(ステップS201)。ここで、加湿制御部405は、ノイズの強度が閾値より大きいと判定すると(ステップS201肯定)、加湿処理を実行する(ステップS202)。また、加湿制御部405は、ノイズの強度が閾値より大きいと判定しないと(ステップS201否定)、ノイズの強度が閾値よりも小さいかを判定する(ステップS203)。ここで、加湿制御部405は、ノイズの強度が閾値よりも小さいと判定すると(ステップS203肯定)、除湿処理を実行する(ステップS204)。
【0107】
そして、加湿制御部405は、ノイズの強度が閾値より大きいと判定せず(ステップS201否定)、ノイズの強度が閾値よりも小さいと判定しないと(ステップS203否定)、維持処理を実行する(ステップS205)。つまり、加湿制御部405は、例えば、加湿処理も除湿処理も実行しないことで、電極と被験者との接触部の状況をそのままに維持する。
【0108】
なお、上記の処理手順は、上記の順番に限定されるものではなく、処理内容を矛盾させない範囲で適宜変更しても良い。例えば、上記のステップS201とS203との順番を入れ替えても良い。
【0109】
[実施例2の効果]
上述したように、実施例2によれば、心拍検出用加湿装置200は、ハンドルに設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、操舵部とは別の箇所に設けられた電極と操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する。そして、心拍検出用加湿装置200は、電位差信号から、被験者の衣服の極性や電位差信号の強度を算出する。そして、心拍検出用加湿装置200は、算出結果に基づいて被験者の衣服の吸湿性を判定し、判定結果に基づいて電極と被験者との接触部に対する加湿処理の強さを制御する。この結果、実施例2によれば、過不足なく加湿可能である。この結果、被験者を不快にさせることなく電気信号を速やかに測定可能である。例えば、車両の運転者である被験者の心拍信号に基づいて生理状態を推定し、生理状態悪化による事故発生を抑止することを考える。その場合、電気信号を速やかに測定可能であることは、運転開始から時間をおかずに事故発生を抑止できることを意味する。
【0110】
図15Aと図15Bとを用いて、実施例2に係る心拍検出用加湿装置200の効果について説明する。図15Aと図15Bとは、実施例2に係る心拍検出用加湿装置の効果について説明する図である。図15Aは、加湿処理時における電位差信号の強度の一例を示し、図15Bは、除湿処理時における電位差信号の強度の一例を示す。図15Aの(1)や(2)、図15Bの(1)や(2)において、横軸は時間軸を示し、縦軸は、電位差信号の強度を示す。また、図15Aの621は、被験者の衣服の吸湿性が高い場合における電位差信号の強度を示し、図15Aの622や622aは、被験者の衣服の吸湿性が低い場合における電位差信号の強度を示す。図15Bの623は、被験者の衣服の放湿性が高い場合における電位差信号の強度を示し、図15Bの624や624aは、被験者の衣服の吸湿性が低い場合における電位差信号の強度を示す。
【0111】
図15Aの(1)を用いて、被験者の衣服の吸湿性に関係なく加湿処理を実行する場合について説明する。この場合、図15の622に示すように、被験者の衣服の吸湿性が低い場合には、図15の621に示すように、被験者の衣服の吸湿性が高い場合と比較して、電位差信号の強度を閾値に近づけるのに時間がかかっていた。また、例えば、被験者が吸湿性の高い衣服を着ている場合には、衣服が水分を効率よく吸収する結果、衣服を加湿しすぎることがあった。この結果、被験者が湿りすぎた衣服を着用することになり、被験者を不快にさせていた。
【0112】
これに対して、実施例2によれば、衣服の吸湿性に応じて加湿処理の強さを制御する。この結果、図15Aの(2)の622aに示すように、被験者の衣服の吸湿性が低い場合には、加湿処理を相対的に強くすることで、電位差信号のノイズを迅速に減少させることが可能である。また、被験者が吸湿性の高い衣服を着ている場合であっても、加湿処理を相対的に弱くすることで、被験者を不快にさせることなく、加湿することが可能である。
【0113】
また、図15のBの(1)を用いて、被験者の衣服の放湿性に関係なく除湿処理を実行する場合について説明する。この場合、図15の624に示すように、被験者の衣服の放湿性が低い場合には、図15の623に示すように、被験者の衣服の放湿性が高い場合と比較して、電位差信号の強度を閾値に近づけるのに時間がかかっていた。また、除湿に時間がかかる結果、被験者を不快にさせていた。また、例えば、被験者が放湿性が高い衣服を着ている場合には、衣服が水分を効率よく放湿する結果、衣服を除湿しすぎることがあった。
【0114】
これに対して、実施例2によれば、衣服の放湿性に応じて加湿処理の強さを制御する。この結果、図15Bの(2)の624aに示すように、被験者の衣服の放湿性が低い場合には、除湿処理の強さを相対的に強くすることで、電位差信号のノイズを迅速に減少させることが可能である。また、被験者が放湿性が高い衣服を着ている場合には、除湿処理の強さを相対的に弱くすることで、過不足なく除湿可能である。
【0115】
また、実施例2によれば、加湿制御部405は、判定結果により特定される被験者の衣服が他の衣服と比較して吸湿性が低い場合には、他の衣服と比較して高い強度を示す閾値を用いて、加湿制御を実行する。また、加湿制御部405は、判定結果により特定される被験者の衣服が他の衣服と比較して吸湿性が高い場合には、他の衣服と比較して低い強度を示す閾値を用いて、加湿制御を実行する。この結果、実施例2によれば、衣服ごとに適した閾値を用いて加湿処理を制御することが可能である。
【0116】
例えば、吸湿性が低い衣服は、吸湿性が高い衣服と比較して、加湿によりノイズの強度が下がる速度が遅い。このため、吸湿性が高い衣服である場合には、被験者に不快を与えることなく到達できる閾値であったとしても、吸湿性が低い衣服である場合には、なかなか衣服が吸湿しない結果衣服の周囲の湿度が上がり、被験者に不快を感じさせる場合がある。このことを踏まえ、吸湿性が低ければ相対的に高い閾値を用い、吸湿性が高ければ相対的に低い閾値を用いることで、被験者に不快を感じさせない範囲でノイズの強度を下げることが可能である。
【実施例3】
【0117】
実施例3では、図16を用いて、加湿制御部405が、車両の動作状態に基づいて、電位差信号の強度を示す閾値を調整する場合について説明する。図16は、実施例3における動作状態に基づいて閾値を調整する処理の流れの一例について説明するフローチャートである。なお、実施例3にて調整する閾値は、加湿制御部405が加湿処理か除湿処理か維持処理かを決定する際に用いる閾値である。
【0118】
動作状態に応じて閾値を調整する意義について簡単に説明する。被験者が体を動かしたり、装置が振動したりすることで、座面に設けられた電極と被験者との接触状態は、操舵部に設けられた電極と被験者との接触状態と比較して簡単に変化する。また、電位差信号の強さは、電極自体のインピーダンスや、電極と被験者との接触部のインピーダンスによって変化する。インピーダンスが上がると、電位差信号に含まれるノイズが強くなり、電位差信号の強さも強くなる。接触部のインピーダンスは、電極と被験者との接触状態によって変化する。この結果、車両の振動や被験者の体の動きによって、電位差信号に含まれるノイズの強さが変化する。このことを踏まえ、動作状態に応じて閾値を調整することで、車両の走行状態が変化することに起因して電位差信号に含まれるノイズの強度が変化したとしても、過不足なく加湿処理を制御することが可能になる。
【0119】
図16の説明に戻る。図16に示すように、加湿制御部405は、心拍検出用加湿装置200による処理が開始されると(ステップS301肯定)、車両の動作状態を示す情報である動作状態情報を取得する(ステップS302)。動作状態情報とは、例えば、車両のブレーキやアクセル、サイドブレーキ、ウインカなどの操作状態や、エンジンの回転数、ギアのポジション、車両速度、あるいは、車両の運行状態などが該当する。また、動作状態情報とは、例えば、ハンドルが両手で握られているか片手で握られているかを示す情報や、GPS(Global Positioning System)から得られる現在位置情報などが該当する。例えば、加湿制御部405は、車両のMCU(Memory Control Unit)と接続され、MCUから動作状態情報を取得する。
【0120】
そして、加湿制御部405は、動作状態情報から動作状態を判定する(ステップS303)。具体的には、加湿制御部405は、車両がアイドリング状態にあるのか、低速走行状態にあるのか、高速走行状態にあるのかを判定する。例えば、加湿制御部405は、車両速度が100km以上である場合に、高速走行状態であると判定する。また、例えば、加湿制御部405は、車両速度が40km以下である場合に、低速走行状態であると判定する。また、例えば、加湿制御部405は、車両速度が0kmであり、エンジンの回転数が所定回数以上である場合に、アイドリング状態であると判定する。
【0121】
そして、加湿制御部405は、電位差信号の強度を示す閾値の調整処理を実行する(ステップS304)。具体的には、加湿制御部405は、車両の速度が所定の閾値よりも早い場合に、所定の閾値よりも遅い場合と比較して電位差信号の強度を示す閾値を大きな値に変更する。また、加湿制御部405は、車両の速度が所定の閾値よりも遅い場合に、所定の閾値よりも早い場合と比較して閾値を小さい値に変更する。
【0122】
例えば、加湿制御部405は、アイドリング状態にあると判定された場合には、初期状態における閾値に対して「0.1」を乗算し、乗算により得られた値を閾値とする。また、例えば、加湿制御部405は、低速走行状態にあると判定された場合には、初期状態における閾値に対して「1」を乗算し、乗算により得られた値を閾値とする。また、例えば、加湿制御部405は、高速走行状態にあると判定された場合には、初期状態における閾値に対して「10」を乗算し、乗算により得られた値を閾値とする。
【0123】
このように、実施例3では、動作状態に応じて、電位差信号の強度を示す閾値を調整する。例えば、アイドリング時や低速走行時には、車両の振動が少ないと考えられ、全体的にノイズの強度が下がると考えられるので、閾値を小さい値に変更する。また、実施例3では、高速走行時には、車両の振動が大きくなると考えられ、全体的にノイズの強度が上がると考えられるので、閾値を大きな値に変更する。この結果、実施例3によれば、車両の走行状態が変化したとしても、過不足なく加湿制御を実行することが可能である。
【実施例4】
【0124】
実施例2では、送風部205や水分添加部206が、初期動作として、除湿処理を一律に実行する場合を例に示した。そこで、実施例4では、被験者の着衣状態に基づいて、加湿処理を実行するか除湿処理を実行するかを決定する場合について説明する。ここで、被験者の着衣状態は、例えば、厚着であるかや薄着であるか、着衣が湿っているかや乾燥しているかなどが該当する。
【0125】
図17を用いて、被験者の着衣状態に基づいて、加湿処理を実行するか除湿処理を実行するかを決定する処理の流れの一例について説明する。図17は、実施例4における加湿処理を実行するか除湿処理を実行するかを決定する処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【0126】
図17に示すように、電位差測定部401が電位差信号を測定すると(ステップS401肯定)、心拍検出用加湿装置は、環境情報を取得する(ステップS402)。例えば、心拍検出用加湿装置は、ネットワークに接続し、季節・時刻・天候(降雨)状況や、温度、湿度をネットワーク上にある任意のデータベースから取得する。そして、心拍検出用加湿装置は、着衣状態を推定する(ステップS403)。例えば、心拍検出用加湿装置は、天候が雨であったり湿度が高かったりした場合には、着衣が湿っていると推定し、天候が晴れであったり湿度が低かったりした場合には、着衣が乾いていると推定する。また、心拍検出用加湿装置は、温度が低かったり季節が冬であったりした場合には、厚着であると推定し、温度が高かったり季節が夏であったりした場合には、薄着であると推定する。
【0127】
ここで、心拍検出用加湿装置は、着衣が乾燥状態にあると推定したり、厚着であると推定したりした場合には(ステップS404肯定)、初期動作として加湿処理を実行する(ステップS405)。一方、心拍検出用加湿装置は、着衣が乾燥状態であったり、厚着であると推定しなかった場合には(ステップS404否定)、つまり、着衣が湿った状態であったり、薄着であると推定した場合には、初期動作として除湿処理を実行する(ステップS406)。
【0128】
このように、実施例4によれば、被験者の着衣状態に基づいて初期設定を変更することで、被験者に不快を与えることなく、電気信号を速やかに測定可能である。
【実施例5】
【0129】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上記した実施例以外にも、その他の実施例にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施例について説明する。
【0130】
[車内水分量に基づいた加湿量や除湿量の調整]
例えば、加湿制御部405は、車内の空気に含まれる水分量を示す車内水分量に基づいて、つまり、車内の湿度に基づいて、加湿処理時における加湿量を調整しても良い。例えば、加湿制御部405は、車内の湿度が低い場合には、車内の湿度が高い場合と比較して加湿量が多くなるように調整しても良く、車内の湿度が高い場合には、車内の湿度が低い場合と比較して加湿量が少なくなるように調整しても良い。
【0131】
また、同様に、加湿制御部405は、車内の湿度に基づいて、除湿処理時における除湿量を調整しても良い。例えば、加湿制御部405は、車内の湿度が低い場合には、車内の湿度が高い場合と比較して除湿量が低くなるように調整しても良く、車内の湿度が高い場合には、車内の湿度が低い場合と比較して除湿量が高くなるように調整しても良い。
【0132】
[加湿処理時における送風処理]
また、例えば、加湿制御部405は、加湿処理時に、被験者に対して乾燥した空気を併せて送風するように送風部205や水分添加部206を制御しても良い。すなわち、加湿処理時には、被験者が衣服のムレを感じ、不快に感じる場合がある。このため、電極と被験者との接触部に対して加湿処理を実行する場合に、被験者の他の部位に対して乾燥した空気を送風することで、被験者が不快に感じることを防止しても良い。
【0133】
図18を用いて、乾燥した空気を加湿処理時に併せて送風する場合について説明する。図18は、乾燥した空気を加湿処理時に併せて送風する場合について説明する図である。図18の701〜705は、それぞれ、送風口を示す。図18の701〜703は、電極と被験者との接触部からは外れた位置にある送風口である。また、図18の704と705とは、電極と被験者との接触部に位置する送風口である。この場合、加湿制御部405は、加湿処理時に、送風部205が、送風口701〜703については、乾燥した空気を送風するように制御し、送風口704〜705については、加湿した空気を送風するように制御しても良い。
【0134】
[一部分に対して強く加湿]
また、例えば、加湿制御部405は、加湿処理開始時に、電極と接触した被験者の衣服の一部分に対して、他の部分と比較して強く加湿しても良い。図19を用いて、電極と接触した被験者の衣服の一部分に対して強く加湿する場合について説明する。図19は、電極と接触した被験者の衣服の一部分に対して強く加湿する場合について説明する図である。図19に示す例では、図19の710の部分に対して、加湿処理開始時に強く加湿する場合を例に示した。
【0135】
この結果、加湿処理開始直後であっても、図19の710の部分において電位差信号を測定することで、速やかに、ノイズ強度が減少した電位差信号を速やかに測定可能である。
【0136】
[システム構成]
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行っても良い。例えば、図17を例に説明すると、環境情報を被験者が手動にて入力しても良い。この場合、心拍検出用加湿装置は、被験者によって入力された環境情報を用いて処理を実行する。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報(図1〜19)については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0137】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2に示す例を用いて説明すると、ハンドル電極201やシート上部電極202を心拍検出用加湿装置200の外部装置としてネットワーク(無線LAN(Local Area Network)など)経由で接続されて協働するようにしても良い。また、判定用テーブル301や制御用テーブル302を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク経由で接続されて協働することで、上記した心拍検出用加湿装置200の機能を実現するようにしても良い。
【0138】
[コンピュータ]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図20を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する心拍検出用加湿プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。なお、図20は、実施例2に係る心拍検出用加湿プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する図である。
【0139】
図20に示すように、実施例2におけるコンピュータ3000は、入出力インターフェイス3001、通信部3006、CPU3010、ROM3011を有する。また、コンピュータ3000は、HDD(Hard Disk Drive)3012、RAM(Random Access Memory)3013を有する。また、コンピュータ3000は、各部がバス3009で接続される。また、コンピュータ3000は、入出力インターフェイス3001を介して、電位測定装置4001、送風装置4002及び水分添加装置4003と接続される。なお、電位測定装置4001と送風装置4002と水分添加装置4003とは、それぞれ、電位測定部204と送風部205と水分添加部206とに対応する。
【0140】
ROM3011は、上記の実施例2で示した電位差測定部401と、安定的指標算出部402と、経過的指標算出部403と、素材判定部404と、加湿制御部405と同様の機能を発揮する制御プログラムを予め記憶する。つまり、図20に示すように、ROM3011は、電位差測定プログラム3011aと、安定的指標算出プログラム3011bと、経過的指標算出プログラム3011cと、素材判定プログラム3011dと、加湿制御プログラム3011eとが予め記憶される。なお、これらのプログラム3011a〜3011eについては、図2に示した心拍検出用加湿装置200の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。
【0141】
そして、CPU3010は、プログラム3011a〜3011eをROM3011から読み出して実行する。この結果、各プログラム3011a〜3011e、それぞれ、電位差測定プロセス3010aと、安定的指標算出プロセス3010bと、経過的指標算出プロセス3010cと、素材判定プロセス3010dと、加湿制御プロセス3010eとして機能する。なお、各プロセス3010a〜3010eは、図2に示した、電位差測定部401と、安定的指標算出部402と、経過的指標算出部403と、素材判定部404と、加湿制御部405とにそれぞれ対応する。
【0142】
そして、HDD3012には、判定用テーブル3012aと、制御用テーブル3012bとが設けられている。なお、各テーブル3012a〜3012bは、図2に示した、判定用テーブル301と、制御用テーブル302とにそれぞれ対応する。
【0143】
そして、CPU3010は、判定用テーブル3012aと、制御用テーブル3012bとを読み出してRAM3013に格納する。また、CPU3010は、RAM3013に格納された判定用データ3013aと、制御用データ3013bと、電位差信号データ3013cと、安定的指標データ3013dと、経過的指標データ3013eとを用いて、心拍検出用加湿プログラムを実行する。
【0144】
[その他]
なお、本実施例で説明した心拍検出用加湿プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、心拍検出用加湿プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【符号の説明】
【0145】
100 心拍検出用加湿装置
101 測定部
102 算出部
103 加湿制御部
200 心拍検出用加湿装置
201 ハンドル電極
202 シート上部電極
203 シート下部電極
204 電位測定部
205 送風部
206 水分添加部
300 記憶部
301 判定用テーブル
302 制御用テーブル
400 制御部
401 電位差測定部
402 安定的指標算出部
403 経過的指標算出部
404 素材判定部
405 加湿制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の操舵部に設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、該操舵部とは別の箇所に設けられた電極と該操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された電位差信号から、該電位差信号の測定に用いられた電極と電気的に接触した被験者の衣服の素材の極性、及び/又は、該電位差信号の強度を算出する算出部と、
前記算出部による算出結果に基づいて前記電極と前記被験者との接触部に対する加湿制御の強さを制御する加湿制御部と、
を備えたことを特徴とする心拍検出用加湿装置。
【請求項2】
前記加湿制御部は、前記算出部による算出結果に基づいて前記素材の吸湿性を判定し、前記判定した結果により特定される素材が他の素材と比較して吸湿性が低い場合に、他の素材と比較して高い強度を示す閾値になるように加湿制御を実行し、前記判定した結果により特定される素材が他の素材と比較して吸湿性が高い場合に、他の素材と比較して低い強度を示す閾値になるように加湿制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の心拍検出用加湿装置。
【請求項3】
前記加湿制御部は、前記電極と電気的に接触した被験者の衣服の一部分に対して、他の部分と比較して強く加湿することを特徴とする請求項1に記載の心拍検出用加湿装置。
【請求項4】
装置の操舵部に設けられた複数の電極のうち2つの電極間の電位差信号、又は、該操舵部とは別の箇所に設けられた電極と該操舵部に設けられた電極との間の電位差信号を測定する測定手順と、
前記測定手順によって測定された電位差信号から、該電位差信号の測定に用いられた電極と電気的に接触した被験者の衣服の素材の極性、及び/又は、該電位差信号の強度を算出する算出手順と、
前記算出手順による算出結果に基づいて前記電極と前記被験者との接触部に対する加湿制御の強さを制御する加湿制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする心拍検出用加湿プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−115216(P2011−115216A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272827(P2009−272827)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】