説明

心理状態改善剤

【課題】日常的に摂取して気分を改善し、かつ心理的な緊張を緩和し、これを介して快適感を高めることが可能な新規の心理状態改善剤を提供。
【解決手段】ビール系飲料において苦味成分として利用され、生体に対する安全性が確立されており、日常的、継続的に摂取可能であるイソアルファ酸及び還元型イソアルファ酸、例えば、イソフムロン、イソコフムロン、ローイソフムロンなどを医薬品、飲食品等に使用できる有効成分とする心理状態改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心理状態改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、生活が便利になる一方で、人々は種々のストレスに曝されており、心理的に快適な状態で生活するのがますます困難になっている。
【0003】
このような状況の下、近年、心理状態改善に関与する種々の物質又は組成物が知られるようになっている。例えば、特許文献1には、ホップを含有する不眠症用組成物が開示されている。また、特許文献2には、ホップを含有する抗鬱又は抗不安医薬組成物が開示されている。また、特許文献3には、ミルセノールを含有する抗ストレス剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−183174号公報
【特許文献2】特開2005−272342号公報
【特許文献3】特開2006−213628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心理状態改善に関与する物質又は組成物はいくつか知られているものの、未だ、消費者の多様な需要を満たすのに十分な選択肢が存在するとはいえない。
【0006】
そこで、本発明は、日常的に摂取して快適感を高めることが可能な新規の心理状態改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、イソアルファ酸又は還元型イソアルファ酸を有効成分として含有する心理状態改善剤を提供する。
【0008】
本発明の心理状態改善剤は、気分を改善し、かつ心理的な緊張を緩和し、これを介して快適感を高めることを可能とする。また、気分の改善及び心理的な緊張の緩和を介して、例えば、イライラ状態、抑鬱状態、不安感、倦怠感を解消又は緩和することを可能とする。
【0009】
本発明において、「心理状態改善」とは、気分を改善し、又は心理的な緊張を緩和することをいい、「快適感」とは、気分が改善され、又は心理的な緊張が緩和されるほど高くなる心理的感覚をいうものとする。
【0010】
本発明の心理状態改善剤は、気分改善作用、リラクゼーション(緊張緩和)作用、快適感向上作用を有することから、特に気分改善剤、リラクゼーション(緊張緩和)剤又は快適感向上剤として使用することもできる。
【0011】
イソアルファ酸としては、例えば、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン及びイソプレフムロンが挙げられ、イソフムロン、イソコフムロン及びイソアドフムロンが好適である。
【0012】
還元型イソアルファ酸は、イソアルファ酸のケトン基及び/又はプレニル基の二重結合を還元することによって得られる化合物であり、例えば、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸が挙げられる。
【0013】
ローイソアルファ酸としては、例えば、ローイソフムロン、ローイソコフムロン、ローイソアドフムロン、ローイソポストフムロン及びローイソプレフムロンが挙げられ、ローイソフムロン、ローイソコフムロン及びローイソアドフムロンが好適である。
【0014】
テトラヒドロイソアルファ酸としては、例えば、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、テトラヒドロイソアドフムロン、テトラヒドロイソポストフムロン及びテトラヒドロイソプレフムロンが挙げられ、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン及びテトラヒドロイソアドフムロンが好適である。
【0015】
ヘキサヒドロイソアルファ酸としては、例えば、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、ヘキサヒドロイソアドフムロン、ヘキサヒドロイソポストフムロン及びヘキサヒドロイソプレフムロンが挙げられ、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン及びヘキサヒドロイソアドフムロンが好適である。
【0016】
イソアルファ酸及び還元型イソアルファ酸は、既にビール系飲料において苦味成分として利用され、生体に対する安全性が確立されている。そのため、本発明の心理状態改善剤は、生体に対する安全性が高く、日常的、継続的に摂取可能であり、医薬品、飲食品(飲料、食品)、飲食品添加物、飼料、飼料添加物等の成分として使用するのに好適である。また、例えば、化粧品、ヘアケア用品、オーラルケア用品、生理用品、消臭・芳香剤、石鹸、浴用剤、洗剤の成分として使用することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、日常的に摂取して快適感を高めることが可能な新規の心理状態改善剤が提供される。また、そのような心理状態改善剤を含有する医薬品、飲食品、飲食品添加物、飼料、飼料添加物等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】イソアルファ酸(10ppm)水溶液を摂取した被験者の左脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。
【図2】イソアルファ酸(10ppm)水溶液を摂取した被験者の右脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。
【図3】イソアルファ酸(10ppm)水溶液を摂取した被験者の快適度を示すグラフである。
【図4】イソアルファ酸(30ppm)水溶液を摂取した被験者の左脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。
【図5】イソアルファ酸(30ppm)水溶液を摂取した被験者の右脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。
【図6】イソアルファ酸(30ppm)水溶液を摂取した被験者の快適度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
本発明の心理状態改善剤は、イソアルファ酸又は還元型イソアルファ酸を有効成分として含有する。
【0021】
イソアルファ酸は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0022】
【化1】


[Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH、−CHCHCH(CH等から選択される基を表す。]
【0023】
イソアルファ酸としては、例えば、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン及びイソプレフムロンが挙げられる。イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン及びイソプレフムロンは、それぞれ、一般式(1)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH及び−CHCHCH(CHである化合物である。
【0024】
還元型イソアルファ酸は、イソアルファ酸のケトン基及び/又はプレニル基の二重結合を還元することによって得られる化合物であり、例えば、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸が挙げられる。
【0025】
ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、それぞれ、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物である。
【0026】
【化2】


[Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH、−CHCHCH(CH等から選択される基を表す。]
【0027】
【化3】


[Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH、−CHCHCH(CH等から選択される基を表す。]
【0028】
【化4】


[Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH、−CHCHCH(CH等から選択される基を表す。]
【0029】
ローイソアルファ酸としては、例えば、ローイソフムロン、ローイソコフムロン、ローイソアドフムロン、ローイソポストフムロン及びローイソプレフムロンが挙げられる。ローイソフムロン、ローイソコフムロン、ローイソアドフムロン、ローイソポストフムロン及びローイソプレフムロンは、それぞれ、一般式(2)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH及び−CHCHCH(CHである化合物である。
【0030】
テトラヒドロイソアルファ酸としては、例えば、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、テトラヒドロイソアドフムロン、テトラヒドロイソポストフムロン及びテトラヒドロイソプレフムロンが挙げられる。テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、テトラヒドロイソアドフムロン、テトラヒドロイソポストフムロン及びテトラヒドロイソプレフムロンは、それぞれ、一般式(3)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH及び−CHCHCH(CHである化合物である。
【0031】
ヘキサヒドロイソアルファ酸としては、例えば、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、ヘキサヒドロイソアドフムロン、ヘキサヒドロイソポストフムロン及びヘキサヒドロイソプレフムロンが挙げられる。ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、ヘキサヒドロイソアドフムロン、ヘキサヒドロイソポストフムロン及びヘキサヒドロイソプレフムロンは、それぞれ、一般式(4)で表される化合物のうち、Rが−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH及び−CHCHCH(CHである化合物である。
【0032】
イソアルファ酸、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸はいずれも、所望の成分を含有する市販のイソ化ホップエキスから、HPLC等を用いて分取することによって得ることができる。
【0033】
また、イソアルファ酸、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸及びヘキサヒドロイソアルファ酸は、例えば、下記反応式で表される方法に従って得ることができる。下記反応式において、一般式(1)〜(5)は、それぞれ、イソアルファ酸、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸及びアルファ酸を表す。
【0034】
【化5】


[Rは、−CHCH(CH、−CH(CH、−CH(CH)CHCH、−CHCH、−CHCHCH(CH等から選択される基を表す。]
【0035】
このように、イソアルファ酸は、アルファ酸をアルカリ条件下で加熱することによって得ることができる。また、ローイソアルファ酸は、イソアルファ酸を水素化ホウ素ナトリウムと反応させることによって得ることができる。また、テトラヒドロイソアルファ酸は、イソアルファ酸をパラジウム付活性炭の存在下、水素ガスで接触還元させることによって得ることができる。また、ヘキサヒドロイソアルファ酸は、テトラヒドロイソアルファ酸を水素化ホウ素ナトリウムと反応させることによって得ることができる。なお、アルファ酸はホップ由来の苦味成分であり、公知の方法(例えば、特開平7−330594号公報に記載の方法)に従って、天然のホップを抽出し、抽出物を分画・精製することによって得ることができる。アルファ酸はまた、市販のホップエキスから、HPLC等を用いて分取することによって得ることもできる。
【0036】
本発明の心理状態改善剤は、固体(例えば、凍結乾燥させて得られる粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、本発明の心理状態改善剤はイソアルファ酸からなるものであってもよい。
【0037】
上述の各種製剤は、イソアルファ酸と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)と、を混和することによって調製することができる。
【0038】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール、米糠油、魚油(DHA、EPA等)、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、上述の界面活性剤の他、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
本発明の心理状態改善剤は、医薬、飲食品(飲料、食品)、飲食品添加物、飼料、飼料添加物等の成分として使用することができる。例えば、飲料としては、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。本発明の心理状態改善剤はまた、特定保健用食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、病者用食品等の成分として使用することもできる。
【0040】
本発明の心理状態改善剤は、発泡性アルコール飲料の成分として使用することもできる。本発明において、「発泡性アルコール飲料」とは、原料となる穀類(例えば、麦芽、大麦、米、コーン)、豆類(例えば、エンドウ、大豆)等を酵母にアルコール発酵させて得られる発泡性の飲料のことをいい、例えば、ビール、発泡酒が挙げられる。「ビール」とは、麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの、又は麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品(麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類、又は財務省令で定める苦味料若しくは着色料)を原料として発酵させたものであって、麦芽使用比率が2/3以上のものである。また、「発泡酒」とは、麦芽又は麦を原料の一部とする、発泡性を有する酒類であって、麦芽使用比率が2/3未満のものである。発泡性アルコール飲料は、ビール、発泡酒以外のもの(例えば、麦芽及び麦の代わりにエンドウ、大豆、コーン等を原料に使用して醸造したもの)でもよい。本発明の心理状態改善剤はまた、例えば、麦芽、ホップ及び水を原料の一部とする、アルコール度数1%(v/v)未満の飲料の成分として使用することもできる。
【0041】
飲料、食品等における心理状態改善剤(イソアルファ酸)の含有割合は、例えば、10〜60質量ppmが好ましく、20〜50質量ppmがより好ましく、30〜40質量ppmが更に好ましい。
【0042】
飲料、食品等は、当該分野で通常使用される添加物を更に含有していてもよい。そのような添加物としては、例えば、苦味料、香料、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂;グルテン等のタンパク質;大豆、エンドウ等の豆類;グルコース、フルクトース等の単糖類;スクロース等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類;亜鉛、銅、マグネシウム等のミネラル類;CoQ10、α−リポ酸、カルニチン、カプサイシン等の機能性素材、が挙げられる。これらの添加物は、各々を単独で、又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明の心理状態改善剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。摂取量及び摂取方法は、摂取する個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。好適な摂取方法としては、例えば、経口摂取が挙げられる。
【0044】
本発明の心理状態改善剤はまた、例えば、化粧品、ヘアケア用品(シャンプー、リンス等)、オーラルケア用品(歯磨き粉等)、生理用品、消臭・芳香剤、石鹸、浴用剤、洗剤等の成分として使用することもできる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例(試験例)に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、「ppm」は、特に断らない限り「質量ppm」を表すものとする。
【0046】
[試験例1]
(試験サンプルの調製)
イソアルファ酸(イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン等)を30%含有するイソ化ホップエキス(ISOHOP、Barth)を100%メタノールに溶解後、水を加えて60%メタノール溶液とし、ヘキサンを用いて二層分配を行なった。ヘキサン層を、90%メタノールを用いて二層分配し、90%メタノール層を減圧濃縮、凍結乾燥した。得られた乾燥物を少量のメタノールに溶解し、5%酢酸/80%メタノールで平衡化したODSオープンカラム(YMC−Gel ODS−A(12nm、150μm)、φ25mm×210mm)にチャージした。5%酢酸/80%メタノールで溶出を行い、イソアルファ酸を多く含有する溶出画分100〜200mLを回収した。減圧濃縮及び凍結乾燥により溶媒を除去後、イソアルファ酸濃度が20000ppmとなるようにエタノールに溶解した。そして、これを水に溶解してイソアルファ酸10ppm水溶液を得た。
【0047】
(脳波の測定)
健康な成人被験者7名について、安静時の脳波を測定し、次いで、イソアルファ酸10ppm水溶液200mLを摂取させ、摂取直後(0分後)、4分後、8分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を解析して、各被験者の左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度を得た。
【0048】
なお、脳のゆらぎリズム度とは、前頭部α波の周波数ゆらぎスペクトルの傾きの大きさ(0〜1)のことであり、左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度は、それぞれ気分の良さの度合い、心理的な緊張の度合いと相関する。具体的には、左脳ゆらぎリズム度は、気分が改善されるほど1に近づき、右脳ゆらぎリズム度は、心理的な緊張が緩和されるほど1に近づく。例えば、イライラした状態は、(左脳ゆらぎリズム度)<0.5、(右脳ゆらぎリズム度)<0.5の場合にほぼ対応する。また、ワクワクした状態は、(左脳ゆらぎリズム度)>0.5、(右脳ゆらぎリズム度)<0.5の場合にほぼ対応する。快適度は、式:
[{(左脳ゆらぎリズム度)+(右脳ゆらぎリズム度)}/2]1/2×100%
で表されるものであり、快適感が向上するほど100%に近づく(以上について、Japanese Psychological Review 2002,Vol.45,No.1,38−56参照)。
【0049】
(結果)
結果を表1〜3及び図1〜3に示す。図1は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の左脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。図2は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の右脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。図3は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の快適度を示すグラフである。表1〜3及び図1〜3において、データは平均±標準偏差で示されている。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表1〜3及び図1〜3から明らかなように、左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度はいずれも、イソアルファ酸水溶液の摂取により上昇し、特に摂取8分後において顕著に高い値を示した。
【0054】
[試験例2]
(試験サンプルの調製)
試験例1と同様にしてイソアルファ酸(20000ppm)のエタノール溶液を得、これを水に溶解してイソアルファ酸30ppm水溶液を得た。
【0055】
(脳波の測定)
健康な成人被験者5名について、安静時の脳波を測定し、次いで、イソアルファ酸30ppm水溶液200mLを摂取させ、摂取直後(0分後)、4分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を解析して、各被験者の左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度を得た。なお、別の日に、同じ5名の被験者について、イソアルファ酸30ppm水溶液の代わりに水を摂取させて、同様の測定を行った。
【0056】
(結果)
結果を表4〜6及び図4〜6に示す。図4は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の左脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。図5は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の右脳ゆらぎリズム度を示すグラフである。図6は、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者の快適度を示すグラフである。表4〜6及び図4〜6において、データは平均±標準偏差で示されている。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
表4〜6及び図4〜6から明らかなように、左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度はいずれも、イソアルファ酸水溶液を摂取した被験者において、安静時に比べて高い値を示した。
【0061】
[試験例3]
(試験サンプルの調製)
イソアルファ酸20ppmを含有する市販のビール(アルコール度数:約5%(v/v))にイソアルファ酸15ppmを添加して、イソアルファ酸添加ビールを得た。
【0062】
(脳波の測定)
健康な成人被験者1名について、安静時の脳波を測定し、次いで、イソアルファ酸添加ビール100mLを摂取させ、摂取8分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を解析して、各被験者の左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度を得た。
【0063】
(結果)
結果を表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
表7から明らかなように、左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度はいずれも、イソアルファ酸添加ビールの摂取により上昇した。
【0066】
[試験例4]
(試験サンプルの調製)
イソアルファ酸2ppmを含有する市販のビールテイスト炭酸飲料(麦芽、ホップ及び水を原料の一部とする。アルコール度数:約0.5%(v/v))にイソアルファ酸30ppmを添加して、イソアルファ酸添加ビールテイスト炭酸飲料を得た。
【0067】
(脳波の測定)
健康な成人被験者1名について、安静時の脳波を測定し、次いで、イソアルファ酸添加ビールテイスト炭酸飲料100mLを摂取させ、摂取8分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を解析して、各被験者の左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度を得た。
【0068】
(結果)
結果を表8に示す。
【0069】
【表8】

【0070】
表8から明らかなように、左脳ゆらぎリズム度、右脳ゆらぎリズム度、快適度はいずれも、イソアルファ酸添加ビールテイスト炭酸飲料の摂取により上昇した。
【0071】
以上の試験例により、本発明の心理状態改善剤を使用すれば、気分を改善し、かつ心理的な緊張を緩和し、これを介して快適感を高めることが可能であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソアルファ酸又は還元型イソアルファ酸を有効成分として含有する心理状態改善剤。
【請求項2】
イソフムロン、イソコフムロン及びイソアドフムロンのうちの少なくとも1種のイソアルファ酸を有効成分として含有する、請求項1に記載の心理状態改善剤。
【請求項3】
気分改善剤として使用される、請求項1又は2に記載の心理状態改善剤。
【請求項4】
リラクゼーション剤として使用される、請求項1又は2に記載の心理状態改善剤。
【請求項5】
快適感向上剤として使用される、請求項1又は2に記載の心理状態改善剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の心理状態改善剤を含有する医薬品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の心理状態改善剤を含有する飲食品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の心理状態改善剤を含有する飲食品添加物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の心理状態改善剤を含有する発泡性アルコール飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−209022(P2010−209022A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58528(P2009−58528)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)
【Fターム(参考)】