説明

心磁図システムおよび心磁図画像を作成する方法

【課題】低解像度の2Dマップから正確な高解像度MCG画像を生成するより演算集約的でない、より正確な方法を提供することである。
【解決手段】MCG装置は通常少数の平面アレーになっている磁気センサーからなり、各センサーは非常に低解像度の2DのMCGマップを提供する。疎の測定から高解像度MCG画像を作成するために、モデル学習に基づくアルゴリズムが用いられる。モデルはビオ−サバールの法則に基づきランダムに生成された多数の高解像度MCG画像を用いて構築される。モデルを疎の測定に合わせることにより、高解像度MCG画像が作成される。次に、高解像度MCG画像の接線成分におけるピークを見出すことにより電流の2D位置が位置測定される。最後に2Dの電流位置測定は非線形最適化アルゴリズムにより精緻化され、これはセンサーから電流の深度およびその規模と配向を同時に復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心磁図(MCG)の画像化の分野に関する。より具体的に、電磁センサー部からのわずかなデータ入力による高解像度MCG画像の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋電流は心臓における電気生理学的プロセスにより生成される。異常な電流の位置測定をすることは心筋梗塞、狭心症、等々の虚血性疾患を診断する上で非常に重要である。また生体磁気国際会議の生体磁気における進捗、28:1‐8,2010年、においてF.Stroink著の「心磁図法の40年」(Forty Years of Magnetocardiology)で述べられるように、カテーテルラボにおける患者に対しても治療とフォローアップ双方について役立つ。
【0003】
従来、不整脈などの心筋電気活動は心電図(ECG)により診断される。しかし、ECGは時間的な情報のみを提供するので、虚血性疾患が検出されても直接心臓における異常電流の位置測定をできない。しかしWang他著の「心筋電気生理学の非侵入性容積画像化」(Noninvasive volumetric imaging of cardiac electrophysiology)、CVPR、2176‐2183頁、2009年、に述べられるように、多数の電極(リード)を用いることにより、対表面電位分布図(BSPM)は対表面の電位分布を再構成することができる。それにも拘わらず、人体組織の導電性の悪さにより信号がしばしば歪められるので電流の位置測定の精度は未だに限られている。
【0004】
心磁図、または心磁図法、(MCG)の到来は心筋電流の空間的および時間的双方のより正確な測定を提供する。図1Aを参照すると、MCGシステムは少数の電磁センサー13(通常64以下の、平面アレーに配列される)からなるセンサー部11からなる。体内の電気的インパルスは磁界15を作り出す。本出願の場合、人間の心臓19が観察される電流源17として機能する。
【0005】
各センサー13は取り込み点で、以降取り込み13として言及することができる。各取り込み13は患者の胸部21(すなわち人間の胴)から発せられる一次元(すなわち1D)磁気波形をセンサーの平面アレーに直角の方向(すなわちz方向)において測定する。MCGのセンサー部11は通常患者の胸部21の5から10センチ上に配置され、患者の心磁界を非侵入的に測定する。各取り込み13において、電磁活動の低解像度二次元(2D)MCGマップが測定される。
【0006】
ECGに比べると、MCGはいくつかの利点を有する。第1に、心臓の電気的インパルス(すなわち電流)により生成される磁界は体内組織の磁気特性により体表面に直角な方向(すなわちz方向)において歪められない。従ってMCGは心臓疾患の初期段階における弱い電気活動に対しより正確で敏感である。第2に、Second,the MCGセンサーアレーは心臓における電流の位置を局限することができる。最後に、MCG測定は非侵入的である。40年にわたるMCGに関する研究の結果、心筋電流の位置測定およびMCG測定に対する高解像度の視覚化は研究および臨床分野双方からより多くの関心を集めている。
【0007】
しかし、MCGに関してはいくつかの問題があり、これは心臓学においてMCGが主流な医療診断ツールになるのを今まで妨げてきた。1つの問題は低解像度の2D MCGマップが心臓における電流の位置測定をするのに充分でないことである。例えば、25mm のセンサー間隔を有する64チャンネルのHitachiTMMCGシステム(Hitachi Review,50(1):13‐17, 2001年、におけるTsukada他著の「新規開発の心臓疾患診断用心磁図システム」(Newly Developed Magnetocardiographic System for Diagnosing Heart Disease)に記載)は8×8のMCGマップ(すなわち64の測定点からなる8×8のアレー)しか測定できない。
【0008】
MCGマップの解像度はセンサー13のサイズのために限定され、これはMCGセンサー部11が有し得るセンサー13の数を制限する。
【0009】
従って、MCGにおいて必要なステップは低解像度の2D MCGマップから高解像度MCG画像、またはマップを作成することである。図1Bにこのような高解像度画像の2つの画像例23および25を示す。画像23は健康な心臓の復元された高解像度MCG画像の子午画像を示す。画像23内の極大点25(すなわち最強点)は心臓における電流の位置(または源)を示す。このように、高解像度MCG画像は医師が心臓における電気活動を直接「見る」ことを可能にする。画像25は不健康な心臓の復元された高解像度MCG画像の子午画像を示す。これは健康な心臓の画像23とは著しく異なり、従って診断用に重要な手掛かりを提供する。低解像度MCGマップに比べ、高解像度MCG画像は診断上の意味をより多く提供し、正確な電流位置測定の基礎となる。
【0010】
Ann Noninvasive Electrocardiol,10(2):152‐160,2005年、におけるB.A.S.他著の「心磁図法による不整脈基質の位置測定:副経路切除を参照した方法研究」(Magnetocardiographic Localization of Arrhythmia Substrates:A Methodology Study With Accessory Path−Way Ablation as Reference)に示されるように、またInt.Congress Series,1300:512‐515,2007年、におけるNomura他著の「心磁図による梗塞ベクターの評価:心電図から推論できない起電力の検出」(Evaluation of an Infarction Vector by Magnetocardiogram:Detection of Electromotive Forces that Cannot be Deduced from an Electrocardiogram)に示されるように、現行MCGシステムのほとんどは曲線当てはめ補間法を用いて低解像度の2D MCGマップから高解像度MCG画像を再構成する。あいにく曲線当てはめ法の精度は通常制限されている。
【0011】
高解像度MCG画像の精度を向上させる別の方法は低解像度MCG測定が与えられたとしてまず電流の三次元(3D)位置、規模、および配向を再構成する。この方法は一般的逆方法と呼ばれ、Europace,11(2):169‐177,2009年、におけるR.J.他著の「心磁図法による不整脈基質の位置測定:副経路切除を参照した方法研究」(Magnetocardiographic Localization of Arrhythmia Substrates:A Methodology Study with Accessory Pathway Ablation as Reference)により詳しく説明され、またIEEE Trans.on Biomedical Engineering,47(7):869‐875,2000年、におけるM.B.他著の「2つの異なるマルチチャンネル超伝導量子干渉装置間の心磁図的記録の転換」(Conversion of Magnetocardiographic Recordings Between Two Different Multichannel Squid Devices)に説明される。この方法は一般的にビオ−サバールの法則による電流再構成に基づき高解像度MCG画像を演算する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Int.Congress Series,1300:512‐515,2007年、におけるNomura他著の「心磁図による梗塞ベクターの評価:心電図から推論できない起電力の検出」(Evaluation of an Infarction Vector by Magnetocardiogram:Detection of Electromotive Forces that Cannot be Deduced from an Electrocardiogram)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら技術的に知られているように、ヘルムホルツの相反原理によるとMCGの逆問題は電流の数が分かっていない限り不良設定問題である。しかし電流の数が分かっている場合でも、大規模な非線形最適化問題を解くことが必要となり、これは演算上高価で、望ましくない極小につながるかもしれない。
【0014】
従ってR.J.他はセンサーアレーから離れて世界起源に位置する単一の電流を仮定することによる簡略化された解を提案している。技術的に知られているように、電流位置が心臓における均一グリッドに固定される特殊な場合、線形解を呈示することができる。呈示される線形解は過度に制約または不十分に制約され得る。しかしながらこれらの方法はセンサーアレーと心臓が完璧に位置合わせされているという別の仮定をなしている。実際上これらの仮定は満足させるのが難しい。
従って、この種の方法に基づく高解像度MCG画像復元はしばしば信頼性がない。
【0015】
最近機械学習手法が高解像度MCG画像復元に適用されている。この方法の一例はニューラルネットワークを用い、学習された非線形補間関数を適用する。
【0016】
本発明の1つの目的はより正確な高解像度MCG画像を作成する方法である。
本発明の別の目的は低解像度の2Dマップから正確な高解像度MCG画像を生成するより演算集約的でない方法を提供することである。
本発明のさらなる目的はMCGシステムと患者の胴体との位置合わせに関する仮定の必要を排除することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は高解像度MCG画像の復元を実例に基づく超解像度問題として考慮することにより達成される。
【0018】
本発明の心磁図(MCG)システムは、M×Mのデータ単位の疎の測定出力を生み出すM×Mの電磁センサーを含むセンサー部であって、前記疎の測定出力は第1MCG画像を構成するセンサー部と、
前記第1MCG画像より実質的に高解像度の第2MCG画像を定義する線形モデルであって、前記第2MCG画像はP>MとしたP×Pの解像度を有し、前記線形モデルは前記線形モデルと前記M×Mの測定出力における任意のデータ点との特徴間で補間パターンを確立する線形モデルと、
前記第1MCG画像を前記線形モデルの部分空間に投影することにより第3MCG画像を生み出し、前記線形モデルおよび前記M×Mのデータ単位に従い前記第3MCG画像の係数を確立する高解像度MCH合成器と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記第3MCG画像はP×Pの解像度を有することを特徴とする。
【0020】

【0021】




【0022】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記線形モデルは前記第2MCG画像と同じ解像度を有する複数の合成心磁図画像を作成するものと定義され、前記合成心磁図画像は予期される心磁図システムにおいて知覚されるような三次元空間の心臓容量内におけるシミュレートされた電気インパルスに基づくことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記複数の合成心磁図画像は前記心臓容量内の予め定義された深度レベル毎の知覚された電気インパルスをシミュレートした少なくとも1000個の合成画像を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記合成MCG画像はビオ‐サバールの法則を用いて合成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記合成MCG画像は前記心臓容量内でランダムに生成された電流に基づくことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の心磁図システムにおいて、前記線形モデルは主成分分析(PCA)を用いて作成されることを特徴とする。
【0027】

【0028】

【0029】
ここで、本発明の心磁図画像を作成する方法は、複数の電磁センサーを含むセンサー部により提供される疎の測定出力から心磁図(MCG)画像を作成する方法であって、各電磁センサーはその出力データを前記疎の測定出力に寄与し、前記方法は、
高解像度を前記疎の測定出力により提供される解像度より実質的に高い解像度を意味するように定義するステップと、
予期される心磁図システムにおいて知覚されるような三次元空間の心臓容量内でシミュレートされた電気インパルスに基づき複数の合成高解像度心磁図画像を作成するステップと、
前記合成高解像度心磁図画像の線形モデルを作成して前記線形モデルと任意の疎の測定出力との特徴間で補間パターンを確立するステップと、
前記疎の測定出力を前記線形モデルの部分空間に投影して係数を確立することにより代表的高解像度MCG画像を作成するステップと、を有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の心磁図画像を作成する方法において、前記複数の合成高解像度心磁図画像は前記心臓容量内の異なる深度で知覚された電気インパルスをシミュレートした1000個を超える画像を含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の心磁図画像を作成する方法において、前記合成高解像度MCG画像はビオ‐サバールの法則を用いて合成されることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の心磁図画像を作成する方法において、前記合成高解像度MCG画像は前記心臓容量内でランダムに生成された電流に基づくことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の心磁図画像を作成する方法において、前記線形モデルは主成分分析(PCA)を用いることにより作成されることを特徴とする。
【0034】

【0035】

【0036】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1Aは、本発明によるMCG測定システムを示す図であり、図1Bは、健康な心臓の復元された高解像度MCG画像の子午像を不健康な心臓のそれと比較する図である。
【図2】本発明によりシミュレーション設定における心臓容量と空間的関係にある2Dセンサーアレーを示す図である。
【図3】本発明により画像を訓練するさまざまな例を示す図である。
【図4】図4aは、異なる深度層における電流のランダムな生成を示す図であり、図4bは、異なる深度、z、における64の試験の結果をグラフ化している図である。
【図5】本発明を用いて作成された高解像度MCG画像を先行技術の方法およびグラウンドトルース例と比較する図である。
【図6】本発明によるセンサーおよび電流の空間的構成を示す図である。
【図7】本発明を用いて作成された高解像度MCG画像を先行技術の方法およびグラウンドトルース例と比較する。
【図8】ボクセル電流の異なるサイズに関し2Dのボクセル電流位置測定エラーを示す図である。
【図9】本発明による実ファントム実験設定を示す図である。
【図10】実測定およびビオ−サバールの法則に基づき演算されたグラウンドトルース間の絶対および相対エラーを示す図である。
【図11】センサーとコイルの距離を5cm、10cm、および15cmに変えながらの3測定に対するB'xy(i,j)に示される2D位置測定結果を示す図である。
【図12A】本発明の説明に有用なさまざまな方程式を示す図である。
【図12B】本発明の説明に有用なさまざまな方程式を示す図である。
【図12C】本発明の説明に有用なさまざまな方程式を示す図である。
【図13】図13a〜図13dは、試験結果を示すさまざまな表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
はじめに本発明の概要としては、以下となる。通常、真の実例の特徴を学習するためにこのような真の実例のライブラリーを必要とする。しかし、密な磁界を測定するのは実行不可能であり、従って直接の測定からこのような真の実例を得るのは実行不可能であるので、本発明において好ましい実施形態は高解像度の合成MCGに基づくモデル学習アルゴリズムを用いる。サンプル画像はビオ−サバールの法則に基づき無作為に生成される。これらのサンプルからアルゴリズムは主成分分析(PCA)により線形モデルを構築する。疎の測定を線形モデルの部分空間に投影することにより、モデル係数が推定され、高解像度MCG画像はモデル事例として復元することができる。
【0039】
上述のように、MCG画像は通常低解像度の2D MCGマップを提供し、逆問題(すなわち電流の位置およびモーメントの再構成)は通常低解像度の2D MCGマップに適用される。しかし、本発明においては逆問題が復元された高解像度MCG画像に適用されることが好ましい。
【0040】
高解像度MCG画像が与えられると、電流の2D位置は高解像度MCG画像の接線成分の最大点として位置測定できる。2D位置測定の精度を向上させるために、逆問題を解く非線形最適化アルゴリズムが作成される。同時に電流の深度、規模、および配向も回収される。より具体的に、好ましいアルゴリズムは2つのステップを交互に反復する。第1のステップは3Dの電流位置を推定し、第2のステップはその規模および配向を再構成する。モデルに基づく復元から推定された2Dの電流位置が初期化として用いられる。本方法は特殊な仮定を必要とせずに効率的、正確で、かつ信頼性がある。
【0041】
上述の目的は、M×Mのデータ単位からなり、第1のMCG画像を構成する疎の測定出力を生み出すM×Mの電磁センサーを含むセンサー部と、前記第1のMCG画像より実質的に高い解像度の第2のMCG画像を定義する線形モデルで、前記第2のMCG画像はP>MであるP×P解像度を有し、前記線形モデルと前記M×Mの測定出力の任意のデータ点との特徴間で補間パターンを確立する、線形モデルと、および前記第1のMCG画像を線形モデルの部分空間に投影し、前記線形モデルおよび前記M×Mのデータ単位に従い第3のMCG画像の係数を確立することにより前記第3のMCG画像を生み出す高解像度MCG画像合成器と、を有する心磁図(MCG)システムにより満足される。
【0042】

【0043】
さらに好ましくは、本MCGシステムにおいて、線形モデルは前記第2のMCG画像と同じ解像度を有する複数の合成心磁図画像を作成すると定義され、前記合成心磁図画像は予期される心磁図システムにおいて知覚されるような三次元空間の心臓容量内のシミュレートされた電気的インパルスに基づく。
【0044】
この場合、複数の合成心磁図画像は前記心臓容量内の所定深度レベルにより知覚される電気的インパルスをシミュレートする少なくとも千個の合成画像を含む。
加えて合成MCG画像はビオ−サバールの法則を用いて合成される。
また、合成MCG画像は前記心臓容量内で無作為に生成された電流に基づく。
また、上述の目的はさらに複数の電磁センサーで各電磁センサーはその出力データを前記疎の測定出力に寄与するに複数の電磁センサーを含むセンサー部により提供される疎の測定出力から心磁図(MCG)画像を作成する方法により満足される。
発明のより完全な理解とともに他の目的および達成は添付図面と併せて以下の説明およびクレームを参照することにより明らかになり、理解されよう。
【0045】
続いて本発明において好ましい実施形態を説明する。
本発明の好ましい実施形態においては、高解像度MCG画像の復元を例に基づく超解像度問題とみなす。通常このような真の実例の特徴を学習するために真の実例のライブラリーが必要となる。しかし、密な磁界を測定するのは実際的でなく、従ってこのような真の実例を直接な測定から得るのは実行不可能であるので、本発明における好ましい実施形態は合成高解像度MCG画像に基づくモデル学習アルゴリズムを用いる。
【0046】
サンプル画像はビオ‐サバールの法則に基づきランダムに生成されることが好ましい。これらのサンプル画像から、主成分分析(PCA)を用いることにより線形モデルが構築される。MCGのセンサー部からの疎の測定が次に線形モデルの部分空間に投影され、モデル係数を推定し高解像度MCG画像をモデル事例として復元する。
【0047】
このように再構成された高解像度MCG画像が得られると、これを分析して電流の位置、深度、規模、および配向を特定することができる。
【0048】
上述のように、MCG画像は通常直接に電流の具体的な情報を回収するのに充分な情報を提供しない、低解像度の2D MCG画像を提供する。しかし、一旦高解像度画像が再構成されると、電流の2D位置は高解像度MCG画像の接線成分の最大点として位置測定できる。2D位置測定の精度を向上させるために、逆問題を解く非線形最適化アルゴリズムが作成される。同時に電流の深度、規模、および配向も回収される。より具体的に、好ましいアルゴリズムは2つのステップを交互に反復する。第1のステップは3Dの電流位置を推定し、第2のステップはその規模および配向を再構成する。モデルに基づく復元から推定された2Dの電流位置が初期化として用いられる。本方法は特殊な仮定を必要とせずに効率的、正確で、かつ信頼性がある。簡素化のために、本明細書において好ましいシステム/方法は単一の電流の場合のみに適用されるものとして説明される。しかし、本システム/方法を複数の電流に拡大することは簡単であることが理解されよう。
【0049】
本実施形態はさまざまな演算装置(またはデータ処理装置)を利用してランダムな電流により生成される高解像度MCG画像のセットから線形モデルを学習(すなわち作成)する。MCGのセンサー部から受信された疎のデータ(すなわち低解像度画像)は次に線形モデルに投影され、低解像度画像の高解像度画像表示がそこから作成される。この方法の例は図2に示される。
【0050】
図2を参照すると、左側の画像(a)はシミュレーション状況における側面図の3D空間の心臓容量33(右側画像(b))に対する2Dのセンサーアレー(またはセンサー平面)の平面図を示す。左側画像(a)は図1Aに示されるようなMCGシステムの平面図である。本例において、図の平面図(a)は64個の物理的センサー13が8×8のセンサーアレーに配列されたMCGのセンサー部11を示す。しかし本実施形態において、隣接する実の物理的センサー13の間に4個の仮想センサー31が挿入され、物理的センサー13および仮想センサー31により定義される四角形内の領域は4x4の追加仮想センサー31のアレーで埋められる。このように、本実施形態は64個の物理的センサー13に1232個の仮想センサー31を加え、合計1296個のセンサーとしている。これは36×36のセンサーアレーに相当し、本高解像度画像の基礎をなす。センサー毎に1個の画像ピクセルを割り当てると、本実施形態は高解像度MCG画像においてP×P(P>8)ピクセルを提供する。センサー平面は本例の場合10×10×10cm3である心臓容量の境界箱の5から10cm上方にあることが好ましい。電流は3D点に位置するベクターで表示される。
【0051】
仮想センサーの数、従ってPの値はデザイン上の選択であることが理解されよう。例えば後述の実験はより多数の仮想センサーを組み入れており、より高い解像度のMCG画像を実現している。
【0052】

【0053】

【0054】
訓練のステップにおいて、P×Pの高解像度MCG画像(P>>M)が生成される。各P×PのMCG画像を生成するために、ランダムなモーメントおよび3Dの位置双方を有する単一電流が作成される。P×Pの高解像度MCG画像は方程式2に基づき演算される。
【0055】
図3に訓練画像のいくつかの例が示される。各高解像度MCG画像はランダムなモーメントおよび3Dの位置双方を有する単一電流により生成される。心臓により生成される磁界は非常に弱いので(10-12から10-10テスラ)、高解像度MCG画像は0〜255に正規化されJETカラーマップを用いて表示される。異なる行からの画像は異なる深度(電流のz方向における距離)から生成される。このようにして、K個の高解像度MCG訓練画像が生成される。すべての画像ベクター(平均ベクターはμで示される)は中央集中化され、行列Aに積み重ねられる。行列Aは従ってK列のP×Pのベクターからなる。PCAが適用され行列Aの固有ベクターが抽出される。
【0056】

【0057】
図3は4行の異なるMCG画像を示す。4行のMCG画像は4つの各々の深度、または層(すなわち電流位置または源へのz方向における異なる距離)において生成される。深度を変えるとMCG画像間に大きな変動が見える。
【0058】
これらの深度層41の図は図4aに示される。本明細書において好ましい実施形態で、電流は異なる深度層41においてランダムに生成される。深度層のセットを選択するためにすべての深度をサンプルするのは余りにも徹底し過ぎる。この方法はより詳細に後述するように、Bzが電流深度の一次関数として近似できると仮定する。
【0059】

【0060】

【0061】
本実験において、10の均一に分布された深度層において1000のサンプルが生成された。復元高解像度MCG画像を作成する本明細書の好ましい方法は次に双三次補間法とともに実際のグラウンドトルース画像と比較された。
【0062】
図5に関し、双三次補間により生成された復元高解像度MCG画像が本方法に従い生成された対応高解像度MCG画像に隣接して示される。評価の目的から、ビオ−サバールに基づくグラウンドトルース電流から最構成された高解像度MCG画像が右に示される。物理的条件をより良くシミュレートするために、5%の均一に分布された雑音が各センサーに加えられる。3つの画像を並べた比較から視覚的に明らかなように、本方法により構成される高解像度MCG画像の方がグラウンドトルースのMCG画像により近い。従って本方法は高解像度MCG画像を構成するにあたりより高い精度を達成する。
【0063】
上述のように、高解像度MCG画像を分析することにより電流位置の2D推定が得られる。本明細書において位置測定を向上させる好ましい方法は電流の3D位置およびモーメント双方を再構成する非線形の最適化、すなわち逆問題、を解くことである。線形モデルにより復元される正確な高解像度MCG画像は逆問題に対し良好な初期化を提供し、より迅速に大域的最適に収束するのを助長する。高解像度MCG画像から2D推定を生成する好ましい方法は以下の通りである。
【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】
図13aから図13dの各々表1から4はいくつかのシミュレーション結果を示す。図13aの表1は200の試験にわたり異なる種類の雑音に関する2Dの電流位置測定エラーを示す(この場合深度は考慮されない)。2Dの電流位置測定の精度を報告する先行研究がいくつかある。例えば、Pacing and Clinical Electrophysiology、14(111):1961‐1965、1991年、におけるWeismuller他による「ウォルフパーキンソンホワイト症候群における副経路の生体磁気的な非侵入性位置測定」(Biomagnetic Noninvasive Localization of Accessory Pathways in Wolff−Parkinson−White Syndrome)、およびEuropean Heart J、13(5):616‐622、1992年、におけるP.Weismuller他による「多重チャンネルシステムによるウォルフパーキンソンホワイト症候群における副経路の心磁図による非侵入性位置測定」(Magnetocardiographic Non−invasive Localization of Accessory Pathways in the Wolff−Parkinson−White Syndrome by a Multichannel System)において、ウォルフパーキンソンホワイト(WPW)症候群についてthe 2Dの位置測定精度は0cmから5cmであり、平均は1.8cmである。さらに、IEEE Trans.on Medical Imaging、17(3):479‐485、1998年、におけるP.L.Agren他の「心磁図による不整脈基質の位置測定:副経路切除を基準として方法研究」は不整脈基質の2Dの位置測定精度は2.1cmおよび9.6cmと報告している。最後に、J.of Arrhythmia、16:580‐586、2000年、におけるS.Yamada他による「心磁図を用いた不整脈病巣の非侵入性診断−磁気解剖学的マッピングシステムの方法および精度」(Noninvasive Diagnosis of Arrhythmic Foci by Using Magnetocardiograms,‐Method and Accuracy of Magneto‐Anatomical Mapping System)、およびArrhythmias and Fetal Diagnosis、2005年、におけるS.Yamada他による「臨床医学における心磁図:心臓虚血に関する独特の情報」(Magnetocardiograms in clinical medicine:unique information on cardiac ischemia)は8×8のセンサー、2.5cmのセンサー間隔、および5%のランダムな雑音からなる類似設定を示すが、センサーの深度および雑音の種類のいずれも報告されていない。これらは2Dの位置測定精度をシミュレーションの場合1.4mm+/−0.7mm、WPWの場合8mm、およびのPCVの場合7mmと報告している。先行研究に比べ、本方法は現在の最新技術より高い精度を示す。
【0070】
さらに、本方法は逆問題を解くので、本方法は電流の3D位置そのモーメントの再構成を可能にする。出願者は本分野においてこの3Dの電流を再構成できる能力は新規であると信じる。
図13bの表2は3Dの電流位置測定エラーを示す。雑音レベルが増加されると、深度再構成の精度は下がり、これは不正確な初期化が原因であるかもしれない。
【0071】

【0072】
実際には、電流は点よりボクセルに似ている。小型の立方体内において0.5mmの間隔で点電流のセットを生成することにより異なるサイズのボクセル電流がシミュレートされた。
【0073】
図8はボクセル電流の2Dの位置測定エラーを示す。ボクセル電流の幾何学的中心がグラウンドトルースとして用いられる。結果は本明細書の位置測定アルゴリズムが電流のサイズに対し頑強で、最新技術(点電流のみ考慮する)に匹敵することを明らかにしている。
【0074】
図9に実ファントム実験が示される。この設定において、グラウンドトルース電流として4回巻きの垂直円形コイル51が用いられる。これは「信号コイル」部品に形成されている。コイルの上にはコイル51に対し(x,y)位置が固定されているがz位置は変化する台53がある。台上には各方向に−4から3にかかる2cm間隔でマークされた8×8のグリッド55が印刷される。コイル51は(0,0)座標の真下にある。フラックスゲートセンサー57(Mag639TM)を用いて各グリッド点における磁界のz成分を測定する。スペクトル分析器59を用いてフラックスゲートセンサーからの信号が読まれる。
【0075】
この実ファントム実験において、電流は物理的形状およびサイズを有し、小さい線分の電流のセットとみなすことができる。本明細書の位置測定アルゴリズムはコイルの幾何学的中心の2D位置を推定する。フラックゲートセンサー測定をAC発電器と同期化することにより、8×8のMCGシステムをシミュレートすることができる。フラックスゲートセンサー57の出力はスペクトル分析器59にインポートされ、テスラの計量に転換される。
【0076】
実ファントム設定は全くシールドされておらず、従って測定雑音は大きく、図10に示される。センサーとコイルとの距離を5cm、10cm、および15cmに変えて3つのMCG測定がシミュレートされ、次にコイルの2Dの幾何学的中心が推定された。図10は実エラーとビオ−サバールの法則に基づき演算されたグラウンドトルース測定との間の絶対および相対エラーを比較する。z=5cmの場合、1/4を超えるセンサー測定が70%を越える雑音を有する。他の2例の場合雑音率はやや少ないものの、約半分のセンサーが30%を超える雑音を有する。このような雑音の多い設定においても、本明細書の位置測定方法は図11に示すように6:9mmの2D精度を達成することができる。
【0077】

【0078】
これはシールドされたMCGシステムを用いた最新技術と比較して非常に有望な結果である。最良の精度は測定エラーが最大ではあるもののz=5cmの場合に達成されることが特記される。1つの理由はコイルにより近い局所測定が他の2例の場合より正確であるからである。
【0079】
2,3のパラメーターが高解像度MCG画像の復元および電流の位置測定の精度に影響を与え得る。本明細書において、解像度はNを351から141に変える、すなわち50の代わりに20ピクセルが隣接する実(または物理的)センサー間に挿入される、ことにより減少し、位置測定エラーは150%増加する。他方、50を超えるピクセルを挿入すると、精度はあまり変わらない。センサー数も精度に影響する。同じ対象範囲(17.5×17.5cm2)の場合、MCGシステムにおいてより多くのセンサーを使用すればするほど、本明細書のアルゴリズムのより高い精度を達成できる。例えば、5%の白色ガウス雑音の場合、位置測定エラーは8×8のセンサーについて0.878mm、10×10のセンサーについて0.850mm、12×12のセンサーについて0.837mm、18×18のセンサーについて0.768mm、および36×36のセンサーについて0.660mmである。これらの2つのパラメーターは従ってMCGシステムの設計において非常に重要である。
【0080】
本明細書の上記において、単一電流の位置測定問題が考慮され、密のMCG画像から良好な初期化を演算することができる。実際には、1つを超えるボクセル電流があり得る。複数電流の位置測定の初期化には信号分解が必要かもしれない。要約すると、本方法は正確な高解像度MCG画像を復元/作成することができる。単一電流の2Dの位置測定に対し高解像度MCG画像は効率的、正確、かつ信頼性のある方法で作成される。加えて、本アルゴリズムは電流の深度およびモーメントを再構成することができる。また簡単に複数の電流源について解くように拡張することができる。
【0081】
発明はいくつかの具体的な実施形態と併せて説明されたが、当業者であれば前述の説明に照らしさらに多くの代替、改変、および変形が明らかになることは明白であろう。従って、本明細書に説明される発明は添付クレームの精神および範囲に入るこのような代替、改変、用途、および変形のすべてを包含することが意図される。
【符号の説明】
【0082】
11…センサー部、15…磁界、17…電流源、21…胸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心磁図(MCG)システムであって、
M×Mのデータ単位の疎の測定出力を生み出すM×Mの電磁センサーを含むセンサー部であって、前記疎の測定出力は第1MCG画像を構成するセンサー部と、
前記第1MCG画像より実質的に高解像度の第2MCG画像を定義する線形モデルであって、前記第2MCG画像はP>MとしたP×Pの解像度を有し、前記線形モデルは前記線形モデルと前記M×Mの測定出力における任意のデータ点との特徴間で補間パターンを確立する線形モデルと、
前記第1MCG画像を前記線形モデルの部分空間に投影することにより第3MCG画像を生み出し、前記線形モデルおよび前記M×Mのデータ単位に従い前記第3MCG画像の係数を確立する高解像度MCH合成器と、を有する心磁図システム。
【請求項2】
前記第3MCG画像はP×Pの解像度を有する、請求項1に記載の心磁図システム。
【請求項3】

【請求項4】




【請求項5】
前記線形モデルは前記第2MCG画像と同じ解像度を有する複数の合成心磁図画像を作成するものと定義され、前記合成心磁図画像は予期される心磁図システムにおいて知覚されるような三次元空間の心臓容量内におけるシミュレートされた電気インパルスに基づく、請求項1に記載の心磁図システム。
【請求項6】
前記複数の合成心磁図画像は前記心臓容量内の予め定義された深度レベル毎の知覚された電気インパルスをシミュレートした少なくとも1000個の合成画像を含む請求項5に記載の心磁図システム。
【請求項7】
前記合成MCG画像はビオ‐サバールの法則を用いて合成される、請求項5に記載の心磁図システム。
【請求項8】
前記合成MCG画像は前記心臓容量内でランダムに生成された電流に基づく、請求項5に記載の心磁図システム。
【請求項9】
前記線形モデルは主成分分析(PCA)を用いて作成される、請求項5に記載の心磁図システム。
【請求項10】

【請求項11】

【請求項12】

【請求項13】
複数の電磁センサーを含むセンサー部により提供される疎の測定出力から心磁図(MCG)画像を作成する方法であって、各電磁センサーはその出力データを前記疎の測定出力に寄与し、前記方法は、
高解像度を前記疎の測定出力により提供される解像度より実質的に高い解像度を意味するように定義するステップと、
予期される心磁図システムにおいて知覚されるような三次元空間の心臓容量内でシミュレートされた電気インパルスに基づき複数の合成高解像度心磁図画像を作成するステップと、
前記合成高解像度心磁図画像の線形モデルを作成して前記線形モデルと任意の疎の測定出力との特徴間で補間パターンを確立するステップと、
前記疎の測定出力を前記線形モデルの部分空間に投影して係数を確立することにより代表的高解像度MCG画像を作成するステップと、を有する心磁図画像を作成する方法。
【請求項14】
前記複数の合成高解像度心磁図画像は前記心臓容量内の異なる深度で知覚された電気インパルスをシミュレートした1000個を超える画像を含む、請求項13に記載の心磁図画像を作成する方法。
【請求項15】
前記合成高解像度MCG画像はビオ‐サバールの法則を用いて合成される、請求項13に記載の心磁図画像を作成する方法。
【請求項16】
前記合成高解像度MCG画像は前記心臓容量内でランダムに生成された電流に基づく、請求項13に記載の心磁図画像を作成する方法。
【請求項17】
前記線形モデルは主成分分析(PCA)を用いることにより作成される、請求項13に記載の心磁図画像を作成する方法。
【請求項18】

【請求項19】

【請求項20】


【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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