説明

心筋前駆細胞の単離方法及び単離用デバイス

【課題】 心筋前駆細胞に特有な表面マーカーの提供、並びに当該表面マーカーを用いた、心筋前駆細胞の単離方法及びその為のデバイス及び心筋前駆細胞の体内導入用デバイスの提供。
【解決手段】 中胚葉細胞を含有する細胞集団についてCD44及びFlk1の発現を解析する工程、及びCD44及びFlk1を発現している細胞を回収する工程を含む、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を単離する方法、及び当該方法を用いるデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋前駆細胞の同定に関する。より詳細には心筋前駆細胞を単離する方法、並びに単離する為のデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幹細胞を生体組織から純化・採取するデバイスとしては、末梢血から造血幹細胞を含む単核球細胞分画を体外血液循環下で分離する血液分離装置と、さらに造血幹細胞を単離するための抗CD34抗体カラム装着装置とが知られている。このような2段階の幹細胞純化操作で幹細胞が採取されているが、現在のところ血液幹細胞以外では心筋組織になりうる心筋幹細胞も含め生体組織幹細胞を生体組織から純化・採取するデバイスは存在していない。
【0003】
心臓疾患の再生医療では、心筋幹細胞の選択的採取とそれに続く心筋幹細胞の患部への細胞移植が必要であり、心筋幹細胞を純化・採取するデバイスの開発が強く望まれている。しかしながらこのようなデバイスが存在しなかった理由としては、心筋幹細胞・心筋前駆細胞の分化過程の探索は、主に転写因子などの遺伝子やシグナル分子を心筋発生のマーカーとした場合、細胞膜を破壊して(いわば細胞を殺して)、それらの分子の挙動を検出しなければならなかったことが挙げられる。一方、生きたままの細胞を峻別するために細胞の表面抗原発現様式によって心筋幹細胞の分化・成熟度を峻別する方法があるが、現在まで心筋幹細胞・心筋前駆細胞の適切なマーカー、特に表面マーカーがなかったため、表面マーカーによる心筋幹細胞・心筋前駆細胞の同定の研究が進んでいなかった。
【0004】
中胚葉はES細胞から分化誘導できる胚葉の中で最も研究されたものの一つであり、中でも心筋細胞は側部中胚葉に由来する細胞系列に含まれる。側部中胚葉に由来する細胞のうちFlk1陽性(以下、Flk1(+)とも称す)として特徴付けられる細胞(Flk1(+)細胞)から血管系細胞(血液細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞)へ分化誘導が行われたという報告がある(非特許文献1)。
【非特許文献1】ヤマシタ ジェイ.(Yamashita J.)ら,「ネイチャー(Nature)」,2000年,第408巻,第6808号,p.92−96
【非特許文献2】スーザン シー.(Susan C.)ら,「セル アドヒージョン アンド コミュニケーション(Cell Adhesion and Communication),1995年,第3巻,p.217−230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、心筋前駆細胞に特有な表面マーカーの確立及び提供を目的とし、さらに当該表面マーカーを用いた、心筋前駆細胞の単離方法及びその為のデバイス並びに心筋前駆細胞の体内導入用デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、表面マーカーの発現様式の検討に、マウスES細胞を用いた心筋分化過程を選定し、未分化細胞が心筋細胞に分化する過程を経時的に解析できる培養系を用いた。すなわちES細胞を中胚葉系分化誘導条件下で培養することにより拍動能を有する心筋様細胞に分化誘導し、表面マーカーの発現様式の変化を解析した。
結果、血管系細胞への分化を特徴づける表面マーカーとして報告されているFlk1が、心筋前駆細胞においても顕著に発現上昇していることが確認された。さらに、Flk1の発現量の増加という特徴に加え、ES細胞を中胚葉分化誘導条件下で培養することによってCD44においてもその発現に顕著な上昇傾向が確認された。これらの知見を得て、本発明者らは、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を効率的に単離する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)中胚葉細胞を含有する細胞集団についてCD44及びFlk1の発現を解析する工程、及びCD44及び/又はFlk1を発現している細胞を回収する工程を含む、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を単離する方法。
(2)中胚葉細胞を含有する細胞集団についてCD44及びFlk1の発現を解析する工程、及びCD44及びFlk1を発現している細胞を回収する工程を含む、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を単離する方法。
(3)中胚葉細胞が幹細胞由来である、上記(1)記載の方法。
(4)幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、始原生殖細胞由来細胞(EG細胞)又は組織幹細胞である、上記(3)記載の方法。
(5)中胚葉細胞が、ES細胞を中胚葉系分化誘導することによって得られるものである上記(1)記載の方法。
(6)ES細胞がマウスEB5細胞である、上記(5)記載の方法。
(7)中胚葉系分化誘導が、ゼラチンコートされた培養皿上で培養することによって行われる、上記(5)記載の方法。
(8)中胚葉細胞を含有する細胞集団が、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織、及び臍帯血からなる群より選択される少なくとも1種の組織より得られるものである、上記(1)記載の方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法によって単離された心筋前駆細胞。
(10)CD44の発現を解析する工程が、CD44に特異的親和性を有する物質を用いて行うものである、上記(1)記載の方法。
【0008】
(11)CD44に特異的親和性を有する物質が抗CD44抗体である、上記(10)記載の方法。
(12)Flk1の発現を解析する工程が、Flk1に特異的親和性を有する物質を用いて行うものである、上記(1)記載の方法。
(13)Flk1に特異的親和性を有する物質が抗Flk1抗体である、上記(12)記載の方法。
(14)上記(9)記載の心筋前駆細胞をストローマ細胞と共培養することを特徴とする、インビトロで心筋細胞を産生する方法。
(15)(a)CD44に特異的親和性を有する物質を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段、(b)(a)で得られたCD44を発現している細胞集団から、Flk1に特異的親和性を有する物質を用いてFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段を少なくとも含む、心筋前駆細胞単離用デバイス。
(16)(a)Flk1に特異的親和性を有する物質を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段、(b)(a)で得られたFlk1を発現している細胞集団から、CD44に特異的親和性を有する物質を用いてCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段を少なくとも含む、心筋前駆細胞単離用デバイス。
(17)Flk1に特異的親和性を有する物質を用いてFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段が、抗Flk1抗体固定化固相担体である、上記(15)又は(16)記載のデバイス。
(18)CD44に特異的親和性を有する物質を用いてCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段が、抗CD44抗体固定化固相担体である、上記(15)又は(16)記載のデバイス。
(19)中胚葉細胞を含有する細胞集団が、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織、及び臍帯血からなる群より選択される少なくとも1種の組織より得られるものである、上記(15)〜(18)のいずれかに記載のデバイス。
(20)上記(15)〜(19)のいずれかに記載のデバイスと、心筋前駆細胞を患者に投与するための手段とを含む、心筋前駆細胞投与用デバイス。
【0009】
(21)心筋前駆細胞を患者に投与するための手段がシリンジ又はカテーテルである、上記(20)記載のデバイス。
(22)心筋前駆細胞の患者への投与が、移植によって行われるものである上記(20)記載のデバイス。
(23)移植が、該細胞を体外にて培養して得られる、単層若しくは多層構造を有するシート状の組織の形態で行われるものである、上記(22)記載のデバイス。
(24)移植が、該細胞を体外にて非生物由来若しくは生物由来の支持体の上で培養して得られるシート状の組織の形態で行われるものである、上記(22)記載のデバイス。
【発明の効果】
【0010】
心筋前駆細胞特異的な表面マーカーを用いる本発明の方法あるいはデバイスは、治療現場において、中胚葉系組織より細胞ソースを単離し迅速に心筋前駆細胞を純化・採取することが可能となる。従って、移植細胞の培養、培養にかかるコスト、培養による他の細胞への分化誘導などの懸念が不必要になる。また、迅速な移植細胞の純化・採取により、一期的な手術が可能となり、患者への負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において心筋前駆細胞とは、中胚葉由来(Flk1陽性)の細胞で分化すれば自己拍動し心筋特異的遺伝子発現を有するようになる(心筋細胞になる)性状を有した細胞集団のことを指す。
【0012】
本発明において中胚葉細胞を含有する細胞集団とは、中胚葉由来の組織を形成し得る細胞を含有している細胞の集合体であれば、その由来は特に問わない。例えば末梢血、骨髄組織、脂肪組織、骨格筋組織、羊膜組織、胎盤組織、臍帯血などから得られる組織幹細胞由来のものであってもよいし、また、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)あるいは始原生殖細胞由来細胞(EG細胞)から分化誘導されたものであってもよい。
【0013】
マウスES細胞としてはEB5細胞が、ヒトES細胞としては、H9.2細胞(Kehat et at.JCI,2001 vol.108 p.407-414)、HES−2細胞(Mummery et al.Journal of Anatomy,2002 vol.200 p.233-242)、H1、H7、H9細胞(Xu et al. Circulation Research,2002 vol.91 p.501-508)等が知られている。これらのヒトES細胞においてはいずれも胚葉体からの分化誘導モデルが報告されている。
【0014】
また供給源として臍帯血を用いる場合、以下のような利点がある。
現状では、骨髄移植への利用(臍帯血バンク)が普及しており、公的組織が既に構築されているため、臍帯血採取における倫理面、技術面、社会的認知性において基盤となる問題が克服されている。同種非血縁者間の移植において、移植片対宿主反応、いわゆるGVHD(graft-versus-host disease)の発現が、頻度、強度とも、臍帯血では骨髄片移植に比し、少ないことが知られており、免疫的寛容が期待できる。新生児組織である臍帯血では、成人組織(骨髄等)に比して、細胞老化が少ないため、多分化能を有する未熟細胞の効率的な分離、増殖が期待できる。
【0015】
ES細胞から中胚葉細胞への分化誘導は、通常当分野で実施されている手法を用いて行えばよい(Yamashita J: Nature 2000: 408(6808):92-6、Nishikawa SI: Development 1998 125(9) 1747)。例えばマウスEB5を用いた場合について記載する。EB5細胞はゼラチン(好ましくは0.1%程度)コートした培養皿で、培養液(例えば、1%ウシ胎児血清(EQUITECH, Cotton Gin Lane Kerrville, TX)、10%ノックアウト血清リプレースメント(GIBCO/BRL)、1%L−グルタミン(GIBCO/BRL)、1%非必須アミノ酸(GIBCO/BRL)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO/BRL)、100μM 2−メルカプトエタノール(SIGMA, St. Louis, MO)、1000U/ml白血病抑制因子(Leukemia inhibitory factor; Chemicon International Inc. Temecula, CA)及び10μg/mlブラストサイジン(FUNAKOSHI,Tokyo, Japan)を添加したGlasgow最小必須培地(GIBCO/BRL, Long Island, NY等が例示される)中で培養する。分化誘導条件としては、以下のようなプロトコルが挙げられるが、最終的にFlk1及び/又はCD44の有意な発現上昇が確認されれば、その詳細は特に限定されるものではない。また、細胞の状況等の要因によっても適宜変更され得る。
(分化誘導プロトコル)
10cm培養皿(0.1%ゼラチンコート)あたり1×10個のEB5細胞を分化培地(10%ウシ胎児血清(EQUITECH, Cotton Gin Lane Kerrville, TX)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO/BRL)及び100μM 2−メルカプトエタノール(SIGMA)を添加した最小必須培地α培地(GIBCO/BRL))中で37℃、5%CO雰囲気下で5日間培養する。
【0016】
中胚葉細胞への分化は細胞表面マーカーの発現様式を解析することによって確認することができる。すなわち、分化誘導前には検出されないか、あるいは検出されても僅かであって、分化誘導後に顕著にその発現量が増加する細胞表面抗原(細胞表面マーカー)であるFlk1及びCD44の発現状況を単独で、あるいは組み合わせて測定する。中胚葉細胞のソースとしてES細胞を用いる場合には、中胚葉分化誘導条件下で培養した後の細胞(細胞集団)における細胞表面マーカーの発現を測定し、Flk1及び/又はCD44を、好ましくはFlk1及びCD44を両方とも発現している細胞を回収することによって心筋前駆細胞を単離することができる。中胚葉細胞のソースとして末梢血、骨髄組織、脂肪組織、骨格筋組織、羊膜組織、胎盤組織、臍帯血などから得られる組織幹細胞を用いる場合には、当該細胞(細胞集団)におけるFlk1及びCD44の発現状況を単独で、あるいは組み合わせて測定し、Flk1及び/又はCD44を、好ましくはFlk1及びCD44を両方とも発現している細胞を回収することによって心筋前駆細胞を単離することができる。
【0017】
Flk1の発現を解析する工程及びCD44の発現を解析する工程は、細胞の表面マーカーであるこれらの蛋白質の発現が解析できれば特にその手法は限定されないが、一般的に免疫反応を用いた方法が簡便であり、また細胞を傷つけることなく好ましい。細胞を傷つけないという利点は心筋前駆細胞の体内導入という本願発明の目的において特に有利である。具体的にはFlk1に特異的親和性を有する物質、並びにCD44に特異的親和性を有する物質を用いて行う。
【0018】
Flk1は、血管内皮増殖因子受容体VEGFの受容体として機能し、膜1回貫通型のチロシンキナ−ゼで、細胞外には7つの免疫グロブリン様構造をもち、細胞内にはキナーゼドメインとこれを二分するキナーゼインサートをもつことが特徴である(Developmental Biology S.F.Gilbert 7th Edition Chapter 15 Lateral Plate Mesoderm. Sinauer)。正常血管や腫瘍血管の新生、血管透過性に極めて重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。また、血管内皮前駆細胞のマーカー、中胚葉のマーカーと考えられている(Cortes et al 1999, Mech Dev. 83(1-2):161-4、Ogawa et al Blood 1999 93;(4):1168-77)
【0019】
一方、CD44は細胞接着機能をもつI型膜貫通糖蛋白質の1つで、ヒアルロン酸レセプターである。選択的スプライシングによってさまざまなアイソフォームが作り出され種々の分子サイズを有するCD44が特定の細胞に発現することが知られている。胎児性癌細胞(EC細胞)や胚幹細胞(ES細胞)の分化過程でその発現が誘導されることが報告されている(非特許文献2)。
【0020】
本発明はこれらの蛋白質が心筋前駆細胞においてその発現量が顕著に増加するという新たな知見に基づいている。本明細書中、「マーカー(又は表面マーカー)」とは特にことわりのない限り、上記した心筋前駆細胞に特有な発現様式を示す一連の蛋白質から構成される群の各々を意味する。かかるマーカー蛋白質は哺乳動物の種類等によってそのアミノ酸配列が異なる場合があり、また特にCD44のように多彩なスプライシングにより幾つかのアイソフォームを有する場合がある。本発明においてはその心筋前駆細胞における発現様式が同じである限り、そのような蛋白質もマーカー蛋白質として使用することができ、本発明の範囲内である。
【0021】
本明細書中、「用いて」という用語について、その方法は特に限定されず、具体的には、例えばマーカー蛋白質と特異的親和性を有する物質を用いる場合であれば該マーカー蛋白質の抗体との抗原抗体反応を利用する方法が挙げられる(詳細な手順については後述する)。
【0022】
マーカー蛋白質と特異的な親和性を有する物質としては例えば当該蛋白質に特異的親和性を有する抗体又はその断片が挙げられ、その特異的親和性とは抗原・抗体反応により該蛋白質を特異的に認識し、結合する能力のことである。該抗体又はその断片は、当該蛋白質と特異的に結合可能なものであれば特に限定されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及びそれらの機能的断片のいずれであってもよい。これらの抗体あるいはその機能的断片は、通常当分野で行なわれている方法によって製せられる。例えばポリクローナル抗体を用いる場合であれば、該蛋白質をマウスやウサギといった動物の背部皮下あるいは腹腔内あるいは静脈等に注射して免疫し、抗体価が上昇するのを待った後に抗血清を採取する方法が挙げられ、またモノクローナル抗体を用いる場合であれば、常法に従いハイブリドーマを作製して、その分泌液を採取する方法が挙げられる。抗体断片を製造する方法としてはクローニングした抗体遺伝子断片を微生物等に発現させる方法がよく用いられている。当該抗体、抗体断片等の純度は、当該蛋白質との特異的親和性を保持している限り、特に限定されない。これらの抗体又はその断片は、蛍光物質、酵素やラジオアイソトープ等で標識されていてもよい。
さらに、これらは市販されているものを用いても良い。
【0023】
本発明の心筋前駆細胞を単離する方法はあるいはその為のデバイス、当該方法又はデバイスを用いる心筋前駆細胞投与用デバイスは、マーカー蛋白質、即ちFlk1及びCD44とそれぞれ特異的親和性を有する物質のうち1種、好ましくは2種を用いることを特徴とする。本発明の単離方法において、あるいはデバイスを用いて当該マーカー蛋白質の発現を解析する。かかる解析によりCD44及び/又はFlk1を発現している([CD44発現,Flk1非発現]([CD44+,Flk1−]とも記載される)[CD44非発現,Flk1発現]([CD44−,Flk1+]とも記載される)、及び[CD44発現,Flk1発現]([CD44+,Flk1+]とも記載される))細胞、好ましくはCD44及びFlk1を共に発現している[CD44+,Flk1+]細胞を単離し、回収することによって心筋前駆細胞を得ることができる。
【0024】
各特異的親和性を有する物質を用いて、それぞれのマーカー蛋白質を発現している細胞を単離、回収する方法は、通常、当分野で行われている方法及びそれらを組み合わせた方法が用いられる。CD44に特異的親和性を有する物質として抗CD44抗体を、Flk1に特異的親和性を有する物質として抗Flk1抗体を、それぞれ用いた場合の具体的手法について以下に述べるが、本願発明はかかる例示に何ら限定されるものではない。
【0025】
(1)抗CD44抗体固定化固相担体並びに抗Flk1抗体固定化固相担体を調製する工程
抗CD44抗体あるいは抗Flk1抗体を用いて通常当分野で実施されているような方法によって行う。具体的には固相担体を臭化シアン処理等によって活性化し、そこにアミノ基あるいはヒドロキシル基を有する抗体を結合させる方法等によって行う。抗CD44抗体及び抗Flk1抗体は商業的に入手可能であり、また、上記したような手順によって適宜調製することもできる。本発明において用いられる固相担体は、その上で抗CD44抗体とCD44抗原との抗原抗体反応(あるいは抗Flk1抗体とFlk1抗原との抗原抗体反応)が生じるものであれば特に限定されず、当分野で通常使用されるものが利用できる。材質としては、例えば、樹脂(ポリスチレン、メタクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド等)、ガラス等が用いられる。これらの固相担体は、いかなる形状のものであってもよく、また上記した材質の種類や、その後の工程等に応じて適宜決定される。例えば板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等が挙げられるが、樹脂からなるビーズであればカラムに充填することによりその後の操作を簡便にし得る。
【0026】
(2)抗CD44抗体固定化固相担体を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からCD44を発現している細胞集団を回収する工程
まず、上記(1)で調製した抗CD44抗体固定化固相担体(以下、単に抗CD44抗体固定化カラムともいう)と中胚葉細胞を含有する細胞集団とを接触させる。中胚葉細胞を含有する細胞集団とは上記したような、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織あるいは臍帯血などの組織由来のものであってもよいし未分化なES細胞、EC細胞あるいはEG細胞を中胚葉系分化誘導条件下で培養することによって得られるものであってもよい。組織を可溶化して得られた試料、あるいは分化誘導後の細胞懸濁液を抗CD44抗体固定化カラムに通す。試料を通したカラムを1回〜数回、好ましくは複数回、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBSともいう)等の細胞に悪影響を与えない緩衝液で洗浄する。洗浄後のカラムを緩衝液の極性を変える、あるいは過剰のCD44抗原を加える等の処理によって抗CD44抗体固定化固相担体に結合している細胞を固相担体から分離し、CD44を発現している細胞集団([CD44+]細胞)を回収する([CD44+]細胞懸濁液)。
【0027】
(3)抗Flk1抗体固定化固相担体を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からFlk1を発現している細胞集団を回収する工程。
まず、上記(1)で調製した抗Flk1抗体固定化固相担体(以下、単に抗Flk1抗体固定化カラムともいう)と中胚葉細胞を含有する細胞集団とを接触させる。中胚葉細胞を含有する細胞集団とは上記したような、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織あるいは臍帯血などの組織由来のものであってもよいし未分化なES細胞、EC細胞あるいはEG細胞を中胚葉分化誘導条件下で培養することによって得られるものであってもよい。組織を可溶化して得られた試料あるいは分化誘導後の細胞懸濁液を抗Flk1抗体固定化カラムに通す。試料を通したカラムを1回〜数回、好ましくは複数回、PBS等の細胞に悪影響を与えない緩衝液で洗浄する。洗浄後のカラムを緩衝液の極性を変える、あるいは過剰のFlk1抗原を加える等の処理によって抗Flk1抗体固定化固相担体に結合している細胞を固相担体から分離し、Flk1を発現している細胞集団([Flk1+]細胞)を回収する([Flk1+]細胞懸濁液)。
【0028】
工程(3)において、中胚葉細胞を含有する細胞集団として上記(2)で調製された[CD44+]細胞懸濁液を用いた場合、最終的に回収される細胞は[CD44+,Flk1+]細胞であり、上記(2)で抗CD44抗体固定化カラムを素通りした画分(即ち[CD44−]細胞懸濁液)を用いた場合には得られる細胞は[CD44−,Flk+]細胞である。
【0029】
工程(2)において、中胚葉細胞を含有する細胞集団として上記(3)で調製される[Flk1+]細胞懸濁液を用いた場合、最終的に回収される細胞は[CD44+,Flk1+]細胞であり、上記(3)で抗Flk1抗体固定化カラムを素通りした画分(即ち[Flk1−]細胞懸濁液)を用いた場合には得られる細胞は[CD44+,Flk1−]細胞である。
工程(2)と工程(3)は単独で行っても良く、また逐次的に行っても良い。逐次的に行う場合、工程(2)と工程(3)の実施の順番は特に限定されないが、好ましくは発現量の観点から、工程(3)→工程(2)の順で行う、即ち、Flk1を先にその後にCD44の精製を行うことが好ましい。
【0030】
分離、回収には種々の公知の手段が適用できるが、膜を用いた濾過処理等が好ましい。例えば工程(2)あるいは工程(3)、もしくは工程(2)及び工程(3)を経て得られた各心筋前駆細胞の懸濁液を、例えば内部にフィルターを仕込んだシリンジ等を用いて、まずシリンジ内のフィルターに細胞をトラップさせ、次いでシリンジ内のプランジャーを押してフィルターから前駆細胞をはずして回収する。回収の為のデバイスの一例を図1に示すが、何ら限定されるものではない。
図1中、「試料」は中胚葉細胞を含有する細胞集団であり、抗体カラム1及び2は抗CD44抗体固定化カラム及び抗Flk1抗体固定化カラム(順序は問わない)である。三方活栓を使用することにより所望の細胞画分を容易に得ることができる。
【0031】
上記デバイスに、さらに得られた心筋前駆細胞を患者に投与するための手段を含めて心筋前駆細胞投与用デバイスを構築することができる。心筋前駆細胞を患者に投与するための手段としては、通常細胞を用いた治療に利用されるような手段、用具等が用いられ、例えばシリンジやカテーテル等が挙げられる。シリンジは図1で示した回収用のシリンジと同一のものであっても構わないし、回収した細胞を別の新しいシリンジに充填して患者に投与することもできる。同様にカテーテルも回収用に用いたものと同一のものであってもよいし、別途用意されるものであってもよい。
【0032】
さらに、本発明の心筋前駆細胞を体外にて培養して、単層若しくは多層構造を有するシート状の組織とした後そのシートを投与対象(患者)に移植してもよいし、又、該細胞を体外にて非生物由来若しくは生物由来の支持体の上で培養して得られるシート状の組織を投与対象(患者)に移植してもよい。支持体は当分野で通常用いられるものが利用できるが、非生物由来の支持体としては(1)ポリグリコール酸(Poly glycolic acid(PGA))、(2)ポリ乳酸(Poly lactic acid(PLA))、(3)ポリ乳酸・ポリグリコール酸共重合体(lactic−co−glycolic acid(PLGA)、(4)ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)等が、生物由来の支持体としては(1)界面活性剤、リボヌクレアーゼ等を用いて脱細胞化処理を施すことによって得た、コラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスからなる組織、(2)コラーゲン、エラスチン等の細胞外マトリックス成分を用いて人工的に構成した組織等が挙げられる。
【0033】
本発明の心筋前駆細胞のヒトへの治療における適用は、例えば心筋梗塞亜急性期、あるいは心筋症慢性期患者への移植が想定される。治療評価としては、一般的な心不全治療に対する効果判定基準に、現在、既に実用化されている血液疾患領域における同種臍帯血幹細胞移植の治療評価基準(特に、GVHD等の有害副反応の評価基準)を加味したものが適当と考えられる。より具体的には、既に公開されている大規模臨床試験プロトコールの治療効果評価を参照することができる(例えばhttp://poppy.ac/j-chf/doc/jchfplot_ver2_030925.pdf等)。
【実施例】
【0034】
以下実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、実施例は本発明の説明のために記載するものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1:Flk1+,CD44+細胞からの心筋細胞への分化の検討
実験プロトコルを図2に示す。
ES細胞としてEB5細胞を用いた。EB5細胞は0.1%ゼラチンコートした6cm培養皿で、培養液(1%ウシ胎児血清(EQUITECH, Cotton Gin Lane Kerrville, TX)、10%ノックアウト血清リプレースメント(GIBCO/BRL)、1%L−グルタミン(GIBCO/BRL)、1%非必須アミノ酸(GIBCO/BRL)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO/BRL)、100μM 2−メルカプトエタノール(SIGMA, St. Louis, MO)、1000U/ml白血病抑制因子(Leukemia inhibitory factor; Chemicon International Inc. Temecula, CA)及び10μg/mlブラストサイジン(FUNAKOSHI,Tokyo, Japan)を添加したGlasgow最小必須培地(GIBCO/BRL, Long Island, NY等が例示される)中で培養した。0.1%ゼラチンコートは、0.1%ゼラチン(Nakarai Japan)/蒸留水を培養皿上に積層し常温で固相化することによって行った。
【0035】
分化誘導は、10cm培養皿(0.1%ゼラチンコート)あたり1×10個のEB5細胞を分化培地(10%ウシ胎児血清(EQUITECH, Cotton Gin Lane Kerrville, TX)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO/BRL)及び100μM 2−メルカプトエタノール(SIGMA)を添加した最小必須培地α培地(GIBCO/BRL))中で37℃、5%CO 雰囲気下で5日間培養することによって行った。分化誘導後、経時的にフローサイトメトリー解析(FACS解析)を行うことによってFlk1及びCD44の発現を測定した(結果を図3に示す)。
Flk1抗体としてはマウスモノクローナル抗体「AVAS12α1」(理化学研究所、西川氏より供与された)を用い、ビオチン標識した後、FACS解析を行った。該解析は「calibur」及び「Aria」(ともにBDバイオサイエンス(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社))を使用して行った。CD44抗体はBDバイオサイエンス社のClone IM7を用いた。Flk1抗体についてはShin-Ichi Nishikawa et al. Development, 1998 vol. 125 p.1747-1757及びKataoka H et al. Dev Growth Differ. 1997 vol. 39, p.729-740等に詳述されている。
【0036】
分化誘導5日目の細胞からFlk1+細胞をソーティングした。得られたFlk1+細胞をストローマ細胞OP9上で共培養した。
ストローマ細胞OP9と共培養することによりES細胞が血液細胞、神経細胞、リンパ球等へと分化誘導されることは既に知られており(Nishikawa SI: Development 1998 125(9) 1747、Yamashita J: Nature 2000: 408(6808):92-6、Ogawa et al Blood 1999 93;(4):1168-77)、本実施例においても心筋細胞への分化を期待してストローマ細胞OP9との共培養を行った。尚、OP9細胞はATCC等の公的機関からも入手可能であり、本実施例においてはコダマ氏より供与された。
またコントロールとしてFlk1−細胞についても同様にストローマOP9細胞との共培養を行い、心筋細胞への分化を検討した。
セルソーターにて分離した細胞群(3.6×104細胞ずつ)をOP9と6cm培養皿上で分化培地(上述)にて7日間培養した。
OP9との共培養から7日経過した時点で心筋細胞の出現率(拍動細胞のコロニー数)について確認した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
さらに、7日目に拍動している細胞集団(コロニー)をカルチャーリング(culture ring)にて採取し、定量的RT−PCR(QRT−PCR;quantitative reverse transcriptional−PCR)解析に供し、Flk1+細胞由来の拍動細胞コロニーについて心筋分化マーカーの発現を確認した。合成したプライマーは以下の通り。
・Nkx2−5
Foward:cgggcggataaaaaagagct(配列番号1)
Reverse:ccatccgtctcggctttgt(配列番号2)
・GATA4
Foward:ggaagacaccccaatctcgat(配列番号3)
Reverse:ggccccacaattgacacact(配列番号4)
・αMHC:
Foward:gctgacagatcgggagaatcag(配列番号5)
Reverse:gctggcaaagtactggatgaca(配列番号6)
・MLC2v
Foward:gaccattctcaacgcattcaag(配列番号7)
Reverse:gtcagcatctcccggacatagt(配列番号8)
・MLC2a
Foward:tcagctgcattgaccagaaca(配列番号9)
Reverse:cgagctgggaataggtctcctt(配列番号10)
・Tbx5
Foward:tgaacgtgaactgtggctgaa(配列番号11)
Reverse:tcctccctgccttggtgat(配列番号12)
・cTnT
Foward:tccctcaaagacaggatcgaa(配列番号13)
Reverse:gcggttctgcctttccttct(配列番号14)
・Flk1
Foward:tcgagacagaaatacgttgagaac(配列番号15)
Reverse:gcaaactggtgtgagtgattcg(配列番号16)
・c−Kit
Foward:ggaagcgtgactcgtttattttc(配列番号17)
Reverse:ctccgttgagtgcagaaggtt(配列番号18)
いずれのマーカーの発現も他のコロニー群に比べて顕著に増加していた。
【0039】
Flk1+細胞をOP9と共培養するとFlk1−細胞をOP9と共培養したときよりも高頻度に拍動細胞が認められ。この拍動細胞は心筋マーカーを発現していることから、心筋細胞であることが確認できた。
【0040】
以下さらに実施例を挙げて本発明を説明するが、細胞培養技術や細胞の単離技術等は特に言及しない限り実施例1に準じて行う。
【0041】
実施例2:中胚葉分化誘導系における表面抗原の検討
Flk1の発現がピークになる分化誘導5日目の中胚葉系細胞の表面抗原の解析を行った。解析は各表面抗原に対する特異抗体を用い、免疫細胞染色を行った。1次抗体は各表面抗原に対する特異抗体(抗Flk1抗体以外は全てBDバイオサイエンス(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社より入手し、抗Flk1抗体は上述の通り、理化学研究所西川氏より供与されたマウスモノクローナル抗体AVAS12を用いた)を抗Gr1抗体及び抗Mac1抗体については400倍希釈したものを、それ以外の抗体は200倍希釈したものを用いて反応に供した。2次抗体としては、ストレプトアビジン−APC−Cy7を400倍希釈で使用した。
分化誘導は概ね実施例1と同様な手法に基づくが、実験プロトコルを図4に示す。
分化とともに発現が増加する表面抗原として、Flk1以外にCD24及びCD44抗原が、分化とともにその発現量を増強させた。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
次いで、Flk1+細胞、Flk1−細胞におけるCD24、CD44の発現を比較するとCD24の発現パターンは両細胞間で違いはなかったが、CD44の発現においてはFlk1+細胞の集団の方がより多くのCD44発現細胞を含んでいた。
【0044】
実施例3:CD44と心筋細胞出現率の関係の検討
Flk1+細胞集団中のCD44+細胞(Flk1+/CD44+)及びCD44−細胞(Flk1+/CD44−)、Flk1−細胞集団中のCD44+細胞(Flk1−/CD44+)及びCD44−細胞(Flk1−/CD44−)をそれぞれソーティングし、心筋分化誘導(OP9細胞上での共培養)を行い、拍動コロニー出現率を比較した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
[Flk1+,CD44+]の細胞集団からは高率に心筋細胞が誘導された。しかし[Flk1−,CD44−]の細胞集団からは心筋細胞が誘導されなかった。
【0047】
配列表フリーテキスト
配列番号1:Nkx2−5のPCR用プライマー(フォワード)
配列番号2:Nkx2−5のPCR用プライマー(リバース)
配列番号3:GATA4のPCR用プライマー(フォワード)
配列番号4:GATA4のPCR用プライマー(リバース)
配列番号5:αMHCのPCR用プライマー(フォワード)
配列番号6:αMHCのPCR用プライマー(リバース)
配列番号7:MLC2vのPCR用プライマー(フォワード)
配列番号8:MLC2vのPCR用プライマー(リバース)
配列番号9:MLC2aのPCR用プライマー(フォワード)
配列番号10:MLC2aのPCR用プライマー(リバース)
配列番号11:Tbx5のPCR用プライマー(フォワード)
配列番号12:Tbx5のPCR用プライマー(リバース)
配列番号13:cTnTのPCR用プライマー(フォワード)
配列番号14:cTnTのPCR用プライマー(リバース)
配列番号15:Flk1のPCR用プライマー(フォワード)
配列番号16:Flk1のPCR用プライマー(リバース)
配列番号17:c−KitのPCR用プライマー(フォワード)
配列番号18:c−KitのPCR用プライマー(リバース)
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の心筋前駆細胞単離用デバイスあるいは心筋前駆細胞投与用デバイスの一例を示す模式図である。
【図2】図2はFlk1+/CD44+細胞からの心筋細胞への分化を検討する際の実験プロトコルを模式化したものである。
【図3】図3はEB5細胞の分化誘導におけるCD44及びFlk1の経時的発現の結果を示す図である。。
【図4】図4はEB5細胞の中胚葉分化誘導系における表面抗原を検討する際の実験プロトコルを模式化したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中胚葉細胞を含有する細胞集団についてCD44及びFlk1の発現を解析する工程、およびCD44及び/又はFlk1を発現している細胞を回収する工程を含む、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を単離する方法。
【請求項2】
中胚葉細胞を含有する細胞集団についてCD44及びFlk1の発現を解析する工程、およびCD44及びFlk1を発現している細胞を回収する工程を含む、中胚葉細胞を含有する細胞集団から心筋前駆細胞を単離する方法。
【請求項3】
中胚葉細胞が幹細胞由来である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、始原生殖細胞由来細胞(EG細胞)又は組織幹細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
中胚葉細胞が、ES細胞を中胚葉系分化誘導することによって得られるものである請求項1記載の方法。
【請求項6】
ES細胞がマウスEB5細胞である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
中胚葉系分化誘導が、ゼラチンコートされた培養皿上で培養することによって行われる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
中胚葉細胞を含有する細胞集団が、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織、および臍帯血からなる群より選択される少なくとも1種の組織より得られるものである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって単離された心筋前駆細胞。
【請求項10】
CD44の発現を解析する工程が、CD44に特異的親和性を有する物質を用いて行うものである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
CD44に特異的親和性を有する物質が抗CD44抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
Flk1の発現を解析する工程が、Flk1に特異的親和性を有する物質を用いて行うものである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
Flk1に特異的親和性を有する物質が抗Flk1抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項9記載の心筋前駆細胞をストローマ細胞と共培養することを特徴とする、インビトロで心筋細胞を産生する方法。
【請求項15】
(a)CD44に特異的親和性を有する物質を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段、(b)(a)で得られたCD44を発現している細胞集団から、Flk1に特異的親和性を有する物質を用いてFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段を少なくとも含む、心筋前駆細胞単離用デバイス。
【請求項16】
(a)Flk1に特異的親和性を有する物質を用いて中胚葉細胞を含有する細胞集団からFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段、(b)(a)で得られたFlk1を発現している細胞集団から、CD44に特異的親和性を有する物質を用いてCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段を少なくとも含む、心筋前駆細胞単離用デバイス。
【請求項17】
Flk1に特異的親和性を有する物質を用いてFlk1を発現している細胞集団を回収する為の手段が、抗Flk1抗体固定化固相担体である、請求項15または16記載のデバイス。
【請求項18】
CD44に特異的親和性を有する物質を用いてCD44を発現している細胞集団を回収する為の手段が、抗CD44抗体固定化固相担体である、請求項15または16記載のデバイス。
【請求項19】
中胚葉細胞を含有する細胞集団が、骨格筋組織、脂肪組織、末梢血、骨髄組織、および臍帯血からなる群より選択される少なくとも1種の組織より得られるものである、請求項15〜18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載のデバイスと、心筋前駆細胞を患者に投与するための手段とを含む、心筋前駆細胞投与用デバイス。
【請求項21】
心筋前駆細胞を患者に投与するための手段がシリンジ又はカテーテルである、請求項20記載のデバイス。
【請求項22】
心筋前駆細胞の患者への投与が、移植によって行われるものである請求項20記載のデバイス。
【請求項23】
移植が、該細胞を体外にて培養して得られる、単層若しくは多層構造を有するシート状の組織の形態で行われるものである、請求項22記載のデバイス。
【請求項24】
移植が、該細胞を体外にて非生物由来若しくは生物由来の支持体の上で培養して得られるシート状の組織の形態で行われるものである、請求項22記載のデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−34199(P2006−34199A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220820(P2004−220820)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年2月13日 大阪大学主催の「修士論文発表会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)3月24日 日本再生医療学会主催の「第3回 日本再生医療学会総会」において文書をもって発表
【出願人】(300061835)財団法人先端医療振興財団 (28)
【Fターム(参考)】