説明

心筋層画像化法中の患者の耐性を増加させるための方法および組成物

本願は、心筋層画像化法中の患者の耐性を増加させるための、方法および組成物を開示する。この方法は、ある用量のカフェインおよび1種以上のアデノシンA2Aレセプターアゴニストを、心筋層画像化を受けている哺乳動物に投与する工程を包含する。この組成物は、例えば、少なくとも50mgのカフェイン、少なくとも10μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニスト、および少なくとも1種の薬学的賦形剤を含有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、心筋層画像化中に患者の耐性を増加させるための方法および組成物に関し、この方法は、ある用量のカフェインおよび1種以上のアデノシンA2Aレセプターアゴニストを、心筋層画像化を受けている哺乳動物に投与する工程を包含する。
【背景技術】
【0002】
(当該技術の説明)
心筋層灌流画像化(MPI)は、冠状動脈疾患の検出および特徴付けのために有用な診断技術である。灌流画像化は、放射性核種などの物質を使用して、不充分な血流の領域を同定する。MPIにおいて、血流が安静時に測定され、そしてその結果が、踏み車上での運動(心筋ストレス試験)中に測定された血流と比較される。このように力を出すことは、血流に刺激を与えるために必要である。不運なことに、多くの患者は、医学的状態(例えば、末梢血管疾患、関節炎など)に起因して、充分な血流を提供するために必要なレベルで運動を行うことが不可能である。
【0003】
従って、短時間にわたってCBFを増加させる薬理学的薬剤(特に、末梢血管の拡張を引き起こさないもの)が、非常に有利である。数種の異なる型の血管拡張薬が、灌流画像化における使用について現在公知である。ジピリダモールは、1つのこのような有効な血管拡張薬であるが、副作用(例えば、疼痛および悪心)が、この化合物での処置の有用性を制限している。
【0004】
現在市販されている別の血管拡張薬は、AdenoScan(登録商標)(Astellas Pharma US,Inc.)である。これは、天然に存在するアデノシンの処方物である。アデノシン(天然に存在するヌクレオシド)は、亜型A、A2A、A2B、およびAとして特徴付けられるアデノシンレセプターのファミリーと相互作用することによって、その生物学的効果をもたらす。不運なことに、アデノシンの使用は、副作用(例えば、潮紅、胸部の不快、深く呼吸することへの欲望、頭痛、咽喉の疼痛、頚部の疼痛、および顎の疼痛)に起因して、制限されている。アデノシンのこれらの不利な影響は、A2Aに加えて他のアデノシンレセプター亜型の活性化に起因する。これは、アデノシンの血管拡張効果を媒介する。さらに、アデノシンの短い半減期は、手順中に複数の処置を必須にし、その使用をさらに制限する。
【0005】
2Aアデノシンレセプターに対する他の強力かつ選択的なアゴニストが公知である。例えば、MRE−0470(Medco)は、アデノシンの強力かつ選択的な誘導体である、アデノシンA2Aレセプターアゴニストである。WRC−0470(Medco)は、画像化においてアジュバントとして使用されるアデノシンA2Aアゴニストである。これらの化合物は、A2Aレセプターに対する高い親和性を有し、その結果、作用の長い持続時間を有し、このことは、画像化において望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、放射性核種薬剤を用いる心筋層画像化のために有用な迅速かつ最大の冠状血管拡張を、対応する末梢血管の拡張を引き起こさずに哺乳動物において生じさせる方法が、依然として必要とされている。好ましい化合物は、A2Aアデノシンレセプターに対して選択的であり、そして作用の短い持続時間(しかし、アデノシンなどの化合物より長い作用)を有し、従って、複数回の投与の必要性を排除する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
以下は、本発明の局面である:
50mg〜1000mgのカフェイン、少なくとも10μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニスト、および少なくとも1種の薬学的賦形剤を含有する、薬学的組成物。
【0008】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に、患者の耐性を増加させる方法であって、治療有効量のカフェイン、および少なくとも10μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストをこの哺乳動物に投与する工程を包含し、このカフェインは、この哺乳動物に、この少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストの前に投与されるか、または同時に投与される。
【0009】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェインおよび約1000μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含する。
【0010】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェインおよび約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含する。
【0011】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、A2Aレセプターは、単回用量として投与される。
【0012】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、静脈内ボーラスによって投与される。
【0013】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、約10秒未満投与される。
【0014】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、約10μgより多い量で投与される。
【0015】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、約100μgより多い量で投与される。
【0016】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、600μg以下の量で投与される。
【0017】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、500μg以下の量で投与される。
【0018】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、約100μg〜約500μgの範囲の量で投与される。
【0019】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この部分A2Aレセプターアゴニストは、CVT−3033、リガデノソン(Regadenoson)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0020】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、放射性核種および部分A2Aレセプターアゴニストの投与後に不充分な血流の領域について心筋層が試験される。
【0021】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、放射性核種および部分A2Aレセプターアゴニストの投与後に不充分な血流の領域について心筋層が試験され、心筋層の試験が、部分A2Aレセプターアゴニストが投与された時点から約1分以内に開始される。
【0022】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、部分A2Aレセプターアゴニストの投与が、冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加を引き起こす。
【0023】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、部分A2Aレセプターアゴニストの投与が、冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加を引き起こし、この増加が、部分A2Aレセプターアゴニストの投与から約1分以内に達成される。
【0024】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この放射性核種とこの部分A2Aレセプターアゴニストとが、別々に投与される。
【0025】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、この放射性核種とこの部分A2Aレセプターアゴニストとが、同時に投与される。
【0026】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、部分A2Aレセプターアゴニストの投与が、約5分未満にわたって、冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加を引き起こす。
【0027】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェイン、放射性核種および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、部分A2Aレセプターアゴニストの投与が、約3分未満にわたって、冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加を引き起こす。
【0028】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェインおよび約10μg〜約600μgの範囲の量のリガデノソンを、単回静脈内ボーラスで投与する工程を包含する。
【0029】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、カフェインおよび約100μg〜約500μgの範囲の量のリガデノソンを、単回静脈内ボーラスで投与する工程を包含する。
【0030】
上記方法の全てにおいて、哺乳動物は、代表的に、ヒトである。
【0031】
上記方法の全てにおいて、用量は、代表的に、単回静脈内ボーラスで投与される。
【0032】
上記方法の全てにおいて、少なくとも1種の放射性核種は、A2Aレセプターアゴニストの投与前、投与と同時、または投与後に投与されて、心筋層画像化を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、リガデノソン(5μg/kg,i.v)の投与(2回)後の冠状動脈血流(CBF)の時間経過を示す折れ線グラフを図示する(破線は、CBFの2倍の増加を示す)。値は、平均±SEMである。
【図2】図2は、リガデノソン(5μg/kg,i.v.)の投与後の、カフェインの非存在下および存在下での、冠状血管血流(CBF)の時間経過をプロットする。パネルA、B、C、およびDは、カフェインの非存在下、または1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgでのカフェインの存在下での、CBFを表す。値は、平均±SEMであり、コントロールと比較して#P<0.05である。
【図3】図3は、IV投与後の血漿中のリガデノソン(上のパネル)およびカフェイン(下のパネル)の濃度を示す。値は、平均±SEMである。
【図4】図4は、リガデノソン(5μg/kg,IV)によって引き起こされたCBFの最大増加の百分率変化およびCBFの2倍の増加の持続時間を示す折れ線グラフを提示する。カフェインの存在下では、リガデノソンにより引き起こされたCBFの最大増加は有意に変化しなかったが、リガデノソンにより引き起こされたCBFの2倍の増加の持続時間は、用量依存様式で減少した。値は、平均±SEMであり、コントロールと比較して#P<0.05である。
【図5】図5は、実施例2において議論される耐性質問表の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の説明)
強力な部分A2Aアゴニストは、画像化剤の投与前または画像化剤と同時のいずれかに添加される場合、心臓画像化における添加物として有用である。適切な画像化剤は、201タリウムまたは99mテクネチウム−セスタミビ、99mTcテボロキシム、および99mTc(III)である。
【0035】
これらの組成物は、経口投与されても、静脈内投与されても、表皮を通して投与されても、当該分野において公知である、治療剤を投与するための他の任意の手段によって投与されてもよく、ボーラスIV投与が好ましい。
【0036】
CBFを増加させるが末梢血流を有意には増加させない、新規かつ強力な部分A2Aアゴニストが同定された。部分A2Aアゴニスト、特に、リガデノソンおよびCVT−3033は、投与される場合に、迅速な開始および短い持続期間を有する。これらの新規化合物の予測不可能かつ新規な同定された利点は、これらの化合物が、1回のボーラス静脈内注射において非常に少量投与される場合に非常に有用であることである。部分A2Aレセプターアゴニストは、10μg程度に低い量、および600μg以上もの高い量で投与され得、依然として有効であり、副作用があったとしてもほとんどない。最適な静脈内用量は、約100μg〜約500μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストを含む。この量は、代表的にIVによって約140μg/kg/分の速度で連続的に投与されるアデノシンと比較される場合、予測不可能なほど小さい。アデノシンとは異なり、同じ投薬量の部分A2Aレセプターアゴニスト、特に、リガデノソンおよびCVT−3033は、患者の体重とは無関係に、ヒト被験体に投与され得る。従って、心筋層画像化のための、ivボーラスによる部分A2Aレセプターアゴニストの1回の均一な量の投与は、時間および重量に依存するアデノシンの投与よりも劇的に単純であり、そして誤りを起こしにくい。
【0037】
驚くべきことに、カフェインが、心筋層画像化中に投与される部分A2Aレセプターアゴニストに対する患者の耐性を改善することが発見された。具体的には、患者の耐性は、部分A2Aレセプターアゴニストの投与前または投与とともにのいずれかで、カフェインが患者に投与される場合に改善される。患者の耐性の改善は、例えば、CBFの減少、および/またはカフェインの投与が部分A2Aレセプターアゴニストであるリガデノソンに対する耐性を改善したことを実証するヒト患者からの報告によって実証される。
【0038】
カフェインは、哺乳動物、および好ましくはヒト患者に、部分A2Aレセプターアゴニストの投与前に投与され得る。事前投与とは、治療有効量のカフェインが哺乳動物の血中に部分A2Aレセプターアゴニストの投与の時点で残ることを可能にするような、部分A2Aレセプターアゴニストの投与前の時点での投与をいう。より好ましくは、事前投与とは、部分A2Aレセプターアゴニストの投与前の約120分以内、なおより好ましくは、30分以内でのカフェインの投与をいう。
【0039】
あるいは、カフェインは、部分A2Aレセプターアゴニストと同時に投与され得る。この目的のために、カフェインは、部分A2Aレセプターアゴニストを含有する薬学的組成物に組み込まれ得るか、または別の薬学的組成物として投与され得る。
【0040】
カフェインは、本発明の方法および組成物に従って、治療有効量で哺乳動物に投与される。治療有効量とは、部分A2Aレセプターアゴニストの投与に対する哺乳動物の耐性の改善を生じるために充分なカフェインの量である。一般に、治療有効量は、約50mg〜約1000mgの範囲のカフェインの用量である。より好ましくは、カフェインの用量は、約100mg〜約500mgの範囲である。最も好ましくは、カフェインの用量は、約200mg〜約400mgの範囲である。
【0041】
カフェインは、液体または固体の薬学的投薬形態として哺乳動物に投与され得る。上で議論されたように、カフェインは、部分A2Aレセプターアゴニストと一緒に投与されても別々に投与されてもよい。カフェインが部分A2Aレセプターアゴニストと一緒に投与される場合、この組み合わせが単回ivボーラスとして投与されることが好ましい。カフェインが独立して(すなわち、部分A2Aレセプターアゴニストとは別に)投与される場合、このカフェインは、任意の公知の様式(固体経口投薬形態(錠剤)による様式、iv注入もしくはivボーラスによる様式、あるいは液体(例えば、カフェインを加えた液体)による様式、または天然に存在するカフェイン含有液体(例えば、コーヒーもしくは茶)による様式が挙げられる)で投与され得る。
【0042】
本発明の化合物および/またはその誘導体を含有する薬学的組成物は、非経口投与のための溶液または凍結乾燥粉末として処方され得る。粉末は、使用前に、適切な希釈剤または他の薬学的に受容可能なキャリアの添加によって再構成され得る。液体形態で使用される場合、本発明の組成物は、好ましくは、緩衝化された等張性の水溶液に組み込まれる。適切な希釈剤の例としては、通常の等張生理食塩水溶液、標準5%デキストロース水溶液、および緩衝化酢酸ナトリウム溶液または緩衝化酢酸アンモニウム溶液である。このような液体処方物は、非経口投与のために適切であるが、経口投与のためにもまた使用され得る。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、または当業者に公知である他の任意の賦形剤などの賦形剤を、本発明の化合物を含有する薬学的組成物に添加することが望ましくあり得る。
【0043】
本発明の方法において有用なA2Aアデノシンレセプターに対する強力かつ選択的なアゴニストである第一のクラスの化合物は、式:
【0044】
【化1】

を有する2−アデノシンN−ピラゾール化合物である。この式において、
は、CHOH、−CONRであり;
およびRは、H、C1〜6アルキルおよびアリールからなる群より選択され、このアルキル置換基およびアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、CN、CF、OR20およびN(R20で置換されており、ただし、Rが水素ではない場合、Rは水素であり、そしてRが水素ではない場合、Rは水素であり;
は、独立して、C1〜15アルキル、ハロ、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20、−CONR、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、このアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、アリール置換基、ヘテロシクリル置換基およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、NO、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20からなる群より選択される1個〜3個の置換基で置換されており、この必要に応じて置換されたヘテロアリール置換基、アリール置換基、およびヘテロシクリル置換基は、必要に応じて、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NCOR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20で置換されており;
およびRは、各々独立して、H、および1個〜2個の置換基で必要に応じて置換されたC〜C15アルキルから選択され、これらの置換基は、独立して、ハロ、NO、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20からなる群より選択され、各必要に応じた置換されたヘテロアリール置換基、アリール置換基、およびヘテロシクリル置換基は、必要に応じて、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NCOR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、およびOR20で置換されおり;
およびRは、各々独立して、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、アリール置換基、ヘテロシクリル置換基およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、NO、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20の群より独立して選択される1個〜3個の置換基で置換されており、この必要に応じて置換されたヘテロアリール置換基、アリール置換基、およびヘテロシクリル置換基は、必要に応じて、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NCOR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20で置換されており;
20は、H、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、ヘテロシクリル置換基、アリール置換基、およびヘテロアリール置換基は、ハロ、アルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NH、O−C1〜6アルキル、CF、アリール、およびヘテロアリールからなる群より独立して選択される1個〜3個の置換基で必要に応じて置換されており;そして
22は、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、ヘテロシクリル置換基、アリール置換基、およびヘテロアリール置換基は、ハロ、アルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NH、O−C1〜6アルキル、CF、アリール、およびヘテロアリールからなる群より独立して選択される1個〜3個の置換基で必要に応じて置換されている。
【0045】
本発明の化合物の関連する群において、
は、C1〜15アルキル、ハロ、CF、CN、OR20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、COR20、CO20、−CONR、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、このアルキル置換基、アリール置換基およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、COR20、CO20またはCON(R20からなる群より選択される1個〜3個の置換基で置換されており、各必要に応じたヘテロアリール置換基およびアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、CF、CN、およびOR20で置換されており;
およびRは、独立して、H、および1個の必要に応じたアリール置換基を有するC〜C15アルキルからなる群より選択され、各必要に応じたアリール置換基は、ハロまたはCFで必要に応じて置換されおり;
は、C1〜15アルキル、C2〜15アルキニル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルキニル置換基、アリール置換基、およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20からなる群より独立して選択される1個〜3個の置換基で置換されており、各必要に応じたヘテロアリール置換基およびアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、CF、CN、またはOR20で置換されており;
は、水素およびC1〜15アルキルからなる群より選択され;
20は、H、C1〜4アルキルおよびアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基およびアリール置換基は1個のアルキル置換基で必要に応じて置換されており;そして
22は、C1〜4アルキルおよびアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基およびアリール置換基は、各々独立して、1個〜3個のアルキル基で必要に応じて置換されている。
【0046】
化合物のなお別の関連するクラスにおいて、
は、CHOHであり;
は、CO20、−CONRおよびアリールからなる群より選択され、このアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、C〜Cアルキル、CFおよびOR20からなる群より独立して選択される1個〜2個の置換基で置換されており;
は、水素、C1〜8アルキルおよびアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基およびアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アリール、CF、CN、OR20からなる群より選択される1個の置換基で置換されており、各必要に応じたアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、CF、CN、およびOR20で置換されており;
は、水素およびC1〜8アルキルからなる群より選択され;そして
20は、水素およびC1〜4アルキルからなる群より選択される。
【0047】
本発明の化合物のなお別の関連するクラスにおいて、
は、CHOHであり;
は、CO20、−CONRおよびアリールからなる群より選択され、このアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、C1〜3アルキルおよびOR20からなる群より選択される1個の置換基で置換されており;
は、水素およびC1〜3アルキルからなる群より選択され;
は、水素であり;そして
20は、水素およびC1〜4アルキルからなる群より選択される。
【0048】
この好ましい実施形態において、Rは、最も好ましくは、−COEtおよび−CONHEtから選択される。
【0049】
化合物のなお別の関連するクラスにおいて、
は、−CONHEtであり;
は、CO20、−CONRおよびアリールからなる群より選択され、このアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、C1〜3アルキル、CFおよびOR20からなる群より独立して選択される1個〜2個の置換基で置換されており;
は、水素およびC1〜8アルキルからなる群より選択され、このアルキル置換基は、必要に応じて、ハロ、CF、CNまたはOR20からなる群より選択される1個の置換基で置換されており;
は、水素およびC1〜3アルキルからなる群より選択され;そして
20は、水素およびC1〜4アルキルからなる群より選択される。
【0050】
このより好ましい実施形態において、Rは、好ましくは、水素であり、Rは、好ましくは、水素およびC1〜3からなる群より選択され、そしてR20は、好ましくは、水素およびC1〜4からなる群より選択される。
【0051】
具体的な有用な化合物は、以下から選択される:
1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボン酸エチル、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[4−(4−クロロフェニル)ピラゾール]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[4−(4−メトキシフェニル)ピラゾール]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[4−(4−メチルフェニル)ピラゾール]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミド、
1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボン酸、
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N,N−ジメチルカルボキサミド、
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−エチルカルボキサミド、
1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−カルボキサミド、
1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−(シクロペンチルメチル)カルボキサミド、
(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−[(4−クロロフェニル)メチル]カルボキサミド、
2−[(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)カルボニルアミノ]酢酸エチル、
およびこれらの混合物。
【0052】
本発明の方法において有用なA2Aアデノシンレセプターに対する強力かつ選択的なアゴニストである第二のクラスの化合物は、以下の式:
【0053】
【化2】

を有する2−アデノシンC−ピラゾール化合物である。この式において、
は、先に定義されたとおりであり;
2’は、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、アリール置換基、ヘテロシクリル置換基、およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、NO、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20からなる群より独立して選択される1個〜3個の置換基で置換されており、この必要に応じたヘテロアリール置換基、アリール置換基、およびヘテロシクリル置換基は、必要に応じて、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NCOR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20で置換されており;
3’およびR4’は、独立して、水素、C1〜15アルキル、C2〜15アルケニル、C2〜15アルキニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール、ハロ、NO、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20からなる群より選択され、これらのアルキル置換基、アルケニル置換基、アルキニル置換基、アリール置換基、ヘテロシクリル置換基およびヘテロアリール置換基は、必要に応じて、ハロ、アルキル、NO、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、CF、CN、OR20、SR20、N(R20、S(O)R22、SO22、SON(R20、SONR20COR22、SONR20CO22、SONR20CON(R20、N(R20NR20COR22、NR20CO22、NR20CON(R20、NR20C(NR20)NHR23、COR20、CO20、CON(R20、CONR20SO22、NR20SO22、SONR20CO22、OCONR20SO22、OC(O)R20、C(O)OCHOC(O)R20、およびOCON(R20の群より独立して選択される1個〜3個の置換基で置換されており、この必要に応じたヘテロアリール置換基、アリール置換基、およびヘテロシクリル置換基は、必要に応じて、ハロ、NO、アルキル、CF、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミド、アリールアミド、ヘテロアリールアミド、NCOR22、NR20SO22、COR20、CO20、CON(R20、NR20CON(R20、OC(O)R20、OC(O)N(R20、SR20、S(O)R22、SO22、SON(R20、CN、またはOR20で置換されており;そして
、R、R20、およびR22もまた、先に定義されたとおりであり、
ただし、RがCHOHである場合、R3’はHであり、R4’はHであり、そしてピラゾール環はC4’を介して結合しており、そしてR2’はHではない。
【0054】
上記化合物が以下の式:
【0055】
【化3】

のうちの1つを有するように選択される場合、好ましくは、Rは−CHOHであり;R2’は、水素、C1〜8アルキルからなる群より選択され、このアルキルは、アリール、CF、CNからなる群より独立して選択される1個の置換基で必要に応じて置換されており、そして各必要に応じたアリール置換基は、ハロ、アルキル、CFまたはCNで必要に応じて置換されており;そしてR3’およびR4’は、各々独立して、水素、メチルからなる群より選択され、そしてより好ましくは、R3’およびR4’は、各々水素である。
【0056】
上記化合物が以下の式:
【0057】
【化4】

を有する場合、好ましくは、Rは−CHOHであり;R2’は、水素、および必要に応じてフェニルにより置換されたC1〜6アルキルからなる群より選択される。より好ましくは、R2’は、ベンジルおよびフェニルから選択され;R3’は、水素、C1〜6アルキル、アリールからなる群より選択され、これらのアルキル置換基およびアリール置換基は、ハロ、アリール、CF、CNからなる群より独立して選択される1個〜2個の置換基で必要に応じて置換されており、そして各必要に応じたアリール置換基は、ハロ、アルキル、CFまたはCNで必要に応じて置換されており;そしてR4’は、水素およびC1〜6アルキルからなる群より選択され、そしてより好ましくは、R4’は、水素およびメチルから選択される。
【0058】
化合物のより具体的なクラスは、からなる群より選択される:
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−ベンジルピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−ペンチルピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−メチルピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(メチルエチル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(3−フェニルプロピル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(4−t−ブチルベンジル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−(6−アミノ−2−ピラゾール−4−イルプリン−9−イル)−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−ペンタ−4−エニルピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−デシルピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(シクロヘキシルメチル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(2−フェニルエチル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(3−シクロヘキシルプロピル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
(4S,2R,3R,5R)−2−{6−アミノ−2−[1−(2−シクロヘキシルエチル)ピラゾール−4−イル]プリン−9−イル}−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−3,4−ジオール、
およびこれらの組み合わせ。
【0059】
2Aアデノシンレセプターに対する非常に有用な強力かつ選択的アゴニストは、リガデノソン、すなわち、(1−{9−[(4S,2R,3R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]6−アミノプリン−2−イル}ピラゾール−4−イル)−N−メチルカルボキサミドであり、以下の式:
【0060】
【化5】

を有する。
【0061】
作用の短い持続時間を有する選択的な部分A2Aアデノシンレセプターアゴニストとして有用な、別の好ましい化合物は、以下の式:
【0062】
【化6】

の化合物である。CVT−3033は、心臓病学的画像化におけるアジュバントとして、特に有用である。
【0063】
上で同定された、第一のクラスおよび第二のクラスの化合物は、米国特許第6,403,567号および同第6,214,807号により詳細に記載されており、これらの米国特許の各々の明細書は、本明細書中に参考として援用される。
【0064】
以下の定義は、本明細書中で使用される場合の用語に適用される。
【0065】
「ハロ」または「ハロゲン」は、単独または組み合わせで、全てのハロゲン(すなわち、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)、ヨード(I))を意味する。
【0066】
「ヒドロキシル」とは、基−OHをいう。
【0067】
「チオール」または「メルカプト」とは、基−SHをいう。
【0068】
「アルキル」は、単独または組み合わせで、1個〜20個、好ましくは、1個〜15個の炭素原子を(他に特定されない限り)含む、アルカンから誘導される基を意味する。これは、直鎖アルキル、分枝鎖アルキルまたはシクロアルキルである。好ましくは、1個〜15個、より好ましくは1個〜8個、なおより好ましくは、1個〜6個、さらにより好ましくは、1個〜4個、そして最も好ましくは1個〜2個の炭素原子を含む、直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなどである。用語「低級アルキル」とは、本明細書中で、すぐ上に記載された直鎖アルキル基を記載するために使用される。好ましくは、シクロアルキル基は、1個の環あたり3個〜8個、より好ましくは3個〜6個の環員の、単環式環系、二環式環系、または三環式環系であり、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどである。アルキルはまた、シクロアルキル部分を含むか、またはシクロアルキル部分が介在する、直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基を包含する。直鎖アルキル基または分枝鎖アルキル基は、安定な化合物を生じるために利用可能な任意の点で結合する。この例としては、4−(イソプロピル)−シクロヘキシルエチルまたは2−メチル−シクロプロピルペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。置換アルキルとは、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されている)、アミジノ、ウレア(必要に応じて、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基で置換されている)、アミノスルホニル(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基でN−一置換もしくはN,N−二置換されている)、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの、1個〜3個の基または置換基で独立して置換された、先に定義された直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基である。
【0069】
「アルケニル」とは、単独または組み合わせで、2個〜20個、好ましくは2個〜17個、より好ましくは2個〜10個、なおより好ましくは2個〜8個、最も好ましくは2個〜4個の炭素原子、および少なくとも1個、好ましくは1個〜3個、より好ましくは1個〜2個、最も好ましくは1個の、炭素から炭素への二重結合を含む、直鎖炭化水素、分枝鎖炭化水素、または環状炭化水素を意味する。シクロアルキル基の場合、1個より多くの、炭素から炭素への二重結合の共役は、その環に芳香族性を与えないようなものである。炭素から炭素への二重結合は、シクロアルキル部分に含まれても(シクロプロピルを除く)、直鎖部分または分枝鎖部分に含まれても、いずれでもよい。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルアルキルなどが挙げられる。置換アルケニルとは、安定な化合物を生じるために利用可能な任意の点で結合した、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されている)、アミジノ、ウレア(必要に応じて、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基で置換されている)、アミノスルホニル(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基でN−一置換もしくはN,N−二置換されている)、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニルなどの、1個〜3個の基または置換基で独立して置換された、先に定義された直鎖アルケニル基、分枝鎖アルケニル基またはシクロアルケニル基である。
【0070】
「アルキニル」とは、単独または組み合わせで、2個〜20個、好ましくは2個〜17個、より好ましくは2個〜10個、なおより好ましくは2個〜8個、最も好ましくは2個〜4個の炭素原子を含み、少なくとも1個、好ましくは1個の、炭素から炭素への三重結合を含む、直鎖炭化水素または分枝鎖炭化水素を意味する。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニルなどが挙げられる。置換アルキニルとは、安定な化合物を生じるために利用可能な任意の点で結合した、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されている)、アミジノ、ウレア(必要に応じて、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基で置換されている)、アミノスルホニル(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基でN−一置換もしくはN,N−二置換されている)、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの、1個〜3個の基または置換基で独立して置換された、先に定義された直鎖アルキニル基または分枝鎖アルキニル基である。
【0071】
「アルキルアルケニル」とは、基−R−CR’=CR’”R””をいい、ここでRは、低級アルキルまたは置換低級アルキルであり、R’、R’”、R””は、独立して、水素、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、hetアリール、または置換hetアリール(以下で定義される)であり得る。
【0072】
「アルキルアルキニル」とは、基−RC≡CR’をいい、ここでRは、低級アルキルまたは置換低級アルキルであり、R’は、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、hetアリール、または置換hetアリール(以下で定義される)であり得る。
【0073】
「アルコキシ」は、基−ORを表し、ここでRは、低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、または置換シクロヘテロアルキル(以下で定義される)である。
【0074】
「アルキルチオ」は、基−SR、−S(O)n=1〜2−Rを表し、ここでRは、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アラルキルまたは置換アラルキル(以下で定義される)である。
【0075】
「アシル」は、基−C(O)Rを表し、ここでRは、水素、低級アルキル置換低級アルキル、アリール、置換アリールなど(以下で定義される)である。
【0076】
「アリールオキシ」は、基−OArを表し、ここでArは、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、または置換ヘテロアリール基(以下で定義される)である。
【0077】
「アミノ」は、基NRR’を表し、ここでRおよびR’は、独立して、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、hetアリール、または置換hetアリール(以下で定義される)またはアシルであり得る。
【0078】
「アミド」は、基−C(O)NRR’を表し、ここでRおよびR’は、独立して、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、hetアリール、置換hetアリール(本明細書中に定義される)であり得る。
【0079】
「カルボキシル」は、基−C(O)ORを表し、ここでRは、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、hetアリール、および置換hetアリール(本明細書中に定義される)である。
【0080】
「アリール」とは、単独または組み合わせで、フェニルまたはナフチルを意味し、このフェニルまたはナフチルは、必要に応じて、好ましくは5個〜7個、より好ましくは5個〜6個の環員のシクロアルキルと縮合しており、そして/または必要に応じて、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されている)、アミジノ、ウレア(必要に応じて、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基で置換されている)、アミノスルホニル(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基でN−一置換もしくはN,N−二置換されている)、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの、1個〜3個の基または置換基で置換されている。
【0081】
「置換アリール」とは、1個以上の官能基(例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなど)で必要に応じて置換されたアリールをいう。
【0082】
「複素環」とは、単一の環(例えば、モルホリノ、ピリジルもしくはフリル)または複数の縮合した環(例えば、ナフトピリジル、キノキサリル、キノリニル、インドリジニルもしくはベンゾ[b]チエニル)を有し、そして少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を環内に有する、飽和酸素環式基、不飽和炭素環式基、または芳香族炭素環式基をいい、これらの環式基は、必要に応じて、非置換であっても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0083】
「ヘテロアリール」とは、単独または組み合わせで、1個以上、好ましくは1個〜4個、より好ましくは1個〜3個、なおより好ましくは1個〜2個のヘテロ原子(O、S、およびNからなる群より独立して選択される)を含み、5個〜6個の環原子を含む単環式芳香族環構造、または8個〜10個の原子を含む二環式芳香族基を意味する。この芳香族基は、必要に応じて、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アミノ(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で一置換もしくは二置換されている)、アミジノ、ウレア(必要に応じて、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基で置換されている)、アミノスルホニル(必要に応じて、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基でN−一置換もしくはN,N−二置換されている)、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの、1個〜3個の基または置換基で独立して置換されている。ヘテロアリールはまた、酸化されたSまたはN(例えば、スルフィニル、スルホニルおよび第三級環窒素のN−オキシド)を含むことを意図される。炭素原子または窒素原子は、安定な芳香族環が得られるような、ヘテロアリール環構造の結合点である。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、キナゾリニル、プリニル、インドリル、キノリニル、ピリミジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサチアジアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、フラニル、ベンゾフラニル、インドリルなどである。置換ヘテロアリールは、安定な化合物を生じるように利用可能な炭素または窒素で結合した置換基を含む。
【0084】
「ヘテロシクリル」とは、単独または組み合わせで、環内の1個〜3個の炭素原子がO、SまたはNのヘテロ原子で置き換えられている、5個〜10個の原子を有する非芳香族シクロアルキル基を意味し、この基は、必要に応じて、ベンゾ縮合もしくは5個〜6個の環員のヘテロアリールと縮合しており、そして/または必要に応じて、シクロアルキルの場合と同様に置換されている。ヘテロシクリルはまた、酸化されたSまたはN(例えば、スルフィニル、スルホニルおよび第三級環窒素のN−オキシド)を含むことを意図される。結合点は、炭素原子または窒素原子にある。ヘテロシクリル基の例は、テトラヒドロフラニル、ジヒドロピリジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロインドリルなどである。置換ヘテロシクリルは、安定な化合物を生じるように利用可能な炭素または窒素に結合した置換基窒素を含む。
【0085】
「置換ヘテロアリール」とは、1個以上の官能基(例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなど)で必要に応じて一置換またはた置換されている、複素環をいう。
【0086】
「アラルキル」とは、基−R−Arをいい、ここでArは、アリール基であり、そしてRは、低級アルキル基または置換低級アルキル基である。アリール基は、必要に応じて、置換されていなくても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0087】
「ヘテロアルキル」とは、基−R−Hetをいい、ここでHetは、複素環基であり、そしてRは、低級アルキル基である。ヘテロアルキル基は、必要に応じて、置換されていなくても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0088】
「ヘテロアリールアルキル」とは、基−R−HetArをいい、ここでHetArは、ヘテロアリール基であり、そしてRは、低級アルキルまたは置換低級アルキルである。ヘテロアリールアルキル基は、必要に応じて、置換されていなくても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0089】
「シクロアルキル」は、3個〜15個の炭素原子を含む、二価の環式アルキル基または多環式アルキル基をいう。
【0090】
「置換シクロアルキル」とは、1個以上の置換基(例えば、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなど)を含むシクロアルキル基をいう。
【0091】
「シクロヘテロアルキル」とは、環炭素原子のうちの1つ以上がヘテロ原子(例えば、N、O、SまたはP)で置き換えられている、シクロアルキル基をいう。
【0092】
「置換シクロヘテロアルキル」とは、1個以上の置換基(例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなど)を含む、本明細書中に定義されるようなシクロヘテロアルキル基をいう。
【0093】
「アルキルシクロアルキル」は、基−R−シクロアルキルを表し、ここでシクロアルキルは、シクロアルキル基であり、そしてRは、低級アルキルまたは置換低級アルキルである。シクロアルキル基は、必要に応じて、置換されていなくても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0094】
「アルキルシクロヘテロアルキル」は、基−R−シクロヘテロアルキルを表し、ここでRは、低級アルキルまたは置換低級アルキルである。シクロヘテロアルキル基は、必要に応じて、置換されていなくても、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、カルボキシル、アセチレン、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、複素環、置換複素環、hetアリール、置換hetアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されていてもよい。
【0095】
上で同定された第一のクラスの化合物は、スキーム1〜4に概説されるように調製され得る。
【0096】
一般式IVを有する化合物は、スキーム1に示されるように調製され得る。
【0097】
【化7】

化合物Iは、化合物1を、適切に置換された1,3−ジカルボニルと、AcOHとMeOHとの混合物中で、80℃で反応させることにより調製され得る(Holzerら、J.Heterocycl.Chem.(1993)30,865)。化合物II(これは、化合物Iを、2,2−ジメトキシプロパンと、酸の存在下で反応させることにより得られ得る)を、構造が類似の化合物に基づいて、過マンガン酸カリウムまたはクロロクロム酸ピリジニウムを使用して酸化して、カルボン酸IIIにし得る(M.Hudlicky,(1990)Oxidations in Organic Chemistry,ACS Monographs,American Chemical Society,Washington D.C.)。式HNRを有する第一級アミンまたは第二級アミンと、化合物IIIとの、DCCカップリング条件(M.Fujinoら、Chem.Pharm.Bull.(1974),22,1857)、PyBOPカップリング条件(J.Martinezら、J.Med.Chem.(1988)28,1874)またはPyBropカップリング条件(J.Casteら、Tetrahedron,(1991),32,1967)を使用する反応は、化合物IVを与え得る。
【0098】
【化8】

化合物Vは、スキーム2に示されるように調製され得る。トリTBDMS誘導体4は、化合物2をTBDMSClおよびイミダゾールで、DMF中で処理し、続いてNaOHを使用してエチルエステルを加水分解することにより得られ得る。式HNRを有する第一級アミンまたは第二級アミンと、化合物4との、DCCカップリング条件(M.Fujinoら、Chem.Pharm.Bull.(1974),22,1857)、PyBOPカップリング条件(J.Martinezら、J.Med.Chem.(1988)28,1874)またはPyBropカップリング条件(J.Casteら、Tetrahedron,(1991),32,1967)を使用する反応は、化合物Vを与え得る。
【0099】
【化9】

化合物11の具体的な合成が、スキーム3に示されている。市販のグアノシン5を、以前に記載されたように、三酢酸6に変換した(M.J.RobinsおよびB.Uznanski,Can.J.Chem.(1981),59,2601−2607)。化合物7(Cersterらの文献(J.F.Cerster,A.F.Lewis,およびR.K.Robins,Org.Synthesis,242−243)の手順に従って調製した)を、以前に記載されたように、2工程で化合物9に変換した(V.Nairら、J.Org.Chem.,(1988),53,3051−3057)。ヒドラジン水和物を化合物9とエタノール中で80℃で反応させることにより、化合物1を得た。化合物1とエトキシカルボニルマロンジアルデヒドとの、AcOHとMeOHとの混合物中で80℃での縮合は、化合物10を生成した。過剰のメチルアミン中で化合物10を加熱すると、化合物11が得られた。
【0100】
1,3−ジアルデヒドVIIの合成は、スキーム4に記載されている。
【0101】
【化10】

3,3−ジエトキシプロピオネートまたは3,3−ジエトキシプロピオニトリルまたは1,1−ジエトキシ−2−ニトロエタンVI(R=COR、CNまたはNO)の、ギ酸エチルまたはギ酸メチルとの、NaHの存在下での反応は、ジアルデヒドVIIを与え得る(Y.Yamamotoら、J.Org.Chem.(1989)54,4734)。
【0102】
上記第二のクラスの化合物は、スキーム5〜9に概説されるように調製され得る。
【0103】
【化11】

スキーム5に示されるように、化合物12と式IXにより表されるハロピラゾール(合成はスキーム8に示されている)との、銅塩の存在下または非存在下での、パラジウムにより媒介されるカップリング(K,Katoら、J.Org.Chem.1997,62,6833−6841;Palladium Reagents and Catalysis−Innovations in Organic Synthesis,Tsuji,John Wiley and Sons,1995)、引き続いてTBAFまたはNHFのいずれかを用いる脱保護(Markiewiczら、Tetrahedron Lett.(1988),29,1561)によって、一般式VIIIを有する化合物を調製した。化合物12の調製は、以前に記載されており(K,Katoら、J.Org.Chem.1997,62,6833−6841)、スキーム11に概説されている。
【0104】
一般式XIVを有する化合物は、スキーム6に示されるように調製され得る。
【0105】
【化12】

化合物XI(これは、VIIを2,2−ジメトキシプロパンと酸の存在下で反応させることにより得られ得る)を、構造が類似の化合物に基づいて、過マンガン酸カリウムまたはクロロクロム酸ピリジニウムなどを使用して酸化して、カルボン酸XIIにし得る(Jonesら、J.Am.Chem.Soc.(1949),71,3994;Hudlicky,Oxidations in organic chemistry,American Chemical Society,Washington D.C.,1990)。
【0106】
式HNRを有する第一級アミンまたは第二級アミンと、化合物XIIとの、DCCカップリング条件(M.Fujinoら、Chem.Pharm.Bull.(1974),22,1857)、PyBOPカップリング条件(J.Martinezら、J.Med.Chem.(1988)28,1874)またはPyBropカップリング条件(J.Casteら、Tetrahedron,(1991),32,1967)を使用する反応は、化合物XIIIを与え得る。
【0107】
化合物XIIIの脱保護を、80%酢酸水溶液(T.W.GreenおよびP.G.M.Wuts,(1991),Protective Groups in Organic Synthesis,A,Wiley−Interscience出版)または無水HCl(4N)と共に加熱することにより実施し、一般式XIIIの化合物が得られる。
【0108】
あるいは、一般式VIIIを有する化合物はまた、スキーム7に示されるように、Suzuki型カップリングによって調製され得る。
【0109】
【化13】

2−ヨードアデノシン16を、グアノシン25から出発し、文献の手順(M.J.Robinsら、Can.J.Chem.(1981),59,2601−2607;J.F.Cersterら、Org.Synthesis−242−243;V.Nairら、J.Org.Chem.,(1988),53,3051−3057)に従って、4工程で調製し得る。16と適切に置換されたピラゾールボロン酸との、塩基の存在下でのパラジウムにより媒介されるSuzukiカップリングは、一般式VIIIを有する最終化合物を提供し得る(A.Suzuki,Acc.Chem.Res,(1982)、15、178)。必要であれば、Suzukiカップリングの前に、16の2’位、3’位、5’位のヒドロキシルをTBDMSエーテルとして保護し得る。
【0110】
一般式IXを有する化合物は、市販されているか、またはスキーム8に示される工程に従って調製されるかの、いずれかであり得る。
【0111】
【化14】

式XVの1,3−ジケト化合物とヒドラジンとの、適切な溶媒中での縮合は、一般式XVIを有するピラゾールを与え得る(R.H.Wileyら、Org.Synthesis,Coll.第IV巻(1963)、351)。これらのピラゾールを、種々のハロゲン化アルキルでN−アルキル化して、式XVIIの化合物を与え得、これらの化合物は、ヨウ素化すると、一般式IXを有する4−ヨード誘導体を与える(R.Huttelら、Justus Liebigs Ann.Chem.(1955),593,200)。
【0112】
一般式XXIを有する5−ヨードピラゾールは、スキーム9に概説される工程に従って調製され得る。
【0113】
【化15】

式XVIIIの1,3−ジケト化合物とヒドラジンとの、適切な溶媒中での縮合は、一般式XIXを有するピラゾールを与え得る。これらのピラゾールは、種々のハロゲン化アルキルでN−アルキル化されて、式XXの化合物を与え得る。強塩基での5−Hの引抜き、引き続くヨウ化物でのクエンチにより、一般式XXIを有する5−ヨード誘導体が得られ得る(F.Effenbergerら、J.Org.Chem.(1984),49,4687)。
【0114】
4−ヨードピラゾールまたは5−ヨードピラゾールは、スキーム10に示されるように、対応するボロン酸に転換され得る。
【0115】
【化16】

n−BuLiとの金属交換反応、引き続くトリメチルボレートでの処理は、一般式XXIIを有する化合物を与え得、この化合物は、加水分解すると、一般式XXIIIを有するボロン酸を提供し得る(F.C.Fischerら、RECUEIL(1965)、84、439)。
【0116】
以下のスキーム11に示されるように、2−スタンニルアデノシン12を、市販の6−クロロプリンリボシドから、文献の手順(K.Katoら、J.Org,Chem.(1997),62,6833−6841)に従って、3工程で調製した。
【0117】
【化17】

トリTBDMS誘導体を、18をTBDMSClおよびイミダゾールでDMF中で処理することにより得た。LTMPでのリチウム化、引き続く塩化トリn−ブチルスズでのクエンチにより、2−スタンニル誘導体20のみを得た。2−プロパノール中でのアンモノリシスにより、2−スタンニルアデノシン12を得た。12と1−ベンジル−4−ヨードピラゾールとの、Pd(PPhおよびCuIの存在下でのStilleカップリングは、21を生じた(K.Katoら、J.Org.Chem.(1997),62,6833−6841)。メタノール中0.5Mのフッ化アンモニウムでの、2’位、3’位および5’位のヒドロキシル上のシリル基の脱保護は、22を良好な収率で与えた。
【0118】
本発明の化合物を調製するために使用される方法は、上に記載された方法に限定されない。さらなる方法は、以下の情報源に見出され得、そして本明細書中に参考として援用される(J.March,Advanced Organic Chemistry;Reaction Mechanisms and Studies(1992),A Wiley Interscience Publications;およびTsuji,Palladium reagents and catalysis−Innovations in organic synthesis,John Wiley and Sons,1995)。
【0119】
本発明の最終化合物が塩基性機を含む場合、酸付加塩が調製され得る。これらの化合物の酸付加塩は、標準的な様式で、適切な溶媒中で、親化合物および過剰の酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸、またはメタンスルホン酸)から調製される。塩酸塩形態が、特に有用である。最終化合物が酸性基を含む場合、陽イオン性塩が調製され得る。代表的に、親化合物は、適切な陽イオンを含む過剰のアルカリ試薬(例えば、水酸化物、炭酸塩またはアルコキシド)で処理される。Na、K、Ca+2およびNH4+などの陽イオンは、薬学的に受容可能な塩に存在する陽イオンの例である。内部塩または双性イオンから得られる特定の化合物もまた、認容可能であり得る。
【0120】
本発明が、ここで充分に記載された。多くの変更および改変が、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得ることが、当業者に明らかである。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
リガデノソン(5μg/kg、IV)による冠状血管拡張および血行力学に対するカフェイン(1mg/kg〜10mg/kg)の影響を、意識のあるイヌにおいて決定した。リガデノソンによる、冠状血管拡張の持続時間は、カフェインの用量に依存して減衰したが、冠状血管の充血のピークの増加は減衰しなかった。カフェイン(4mg/kgおよび10mg/kg)は、平均動脈圧および心拍数に対するリガデノソンの影響を有意に低下させた。これらの結果は、A2Aアデノシンレセプターアゴニストを用いる薬理学的ストレス試験の直前のカフェインの消費が、この薬物により引き起こされる冠状血管拡張の持続時間を短縮し得ることを示唆する。
【0122】
略語のリスト:
CBF:冠状血管血流
MAP:平均動脈圧
HR:心拍数
LVSP:左心室の収縮期血圧。
【0123】
(方法)
慢性的に器具を装着した16匹の雄性雑種犬(体重22kg〜30kg)を、この研究において使用した。動物のプロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committee of New York Medical Collegeによって認可されており、そしてGuide for the Care and Use of Laboratory Animal by the United States National Institutes of Healthに適合する。
【0124】
(外科手術手順)
イヌをアセプロマジン(0.3mg/kg、IM)で鎮静させ、そしてペントバルビタールナトリウム(25mg/kg、IV)で麻酔した。挿管後、イヌを室内の空気で人工的に換気した。開胸を、第五肋間隙に、滅菌技術を使用して作製した。Tygonカテーテル(Cardiovascular Instruments,Wakefield,MA)を下行胸大動脈に挿入し、そして別のカテーテルを左心房に挿入した。9匹のイヌにおいて、超音波流れ変換機(Transonic Systems,Ithaca,NY)を、左旋回冠状動脈の周囲に配置した。固相圧力ゲージ(P6.5、Konisberg Instruments,Pasadena,CA)を、尖を通して左心室内に配置した。胸部を層で閉じた。カテーテルおよびワイヤを皮下に通し、そしてイヌの頚部の後ろで皮膚を通して体外に出した。イヌを外科手術から回復させ、その後、実験を実施し、そして台の上に寝そべるように訓練した。
【0125】
(冠状血管血流および血行力学的測定)
大動脈カテーテルをひずみゲージ変換機(P23ID,LDS Test and Measurement,Valley View,OH)に接続することにより、段階ごとの動脈圧を測定した。左心室圧を固体圧力ゲージにより測定した。CBF(mL/分)を、超音波流れ変換機から、Transonic流量計(T206、Transonic Systems,Ithaca,NY)を使用して測定した。2つの指標(1)CBFの最大増加および2)CBFの2倍の増加の持続時間(CBFがベースラインCBFの2倍以上のレベルまで上昇する期間))を使用して、リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張を説明した。全ての圧力データおよび流量データを、Ponemah System(Version3.30または4.20、LDS Test and Measurement,Valley View,OH)を使用して獲得および分析した。MAPおよびHRを、段階ごとの血圧から計算し、そしてLV dP/dtMaxを、左心室の収縮期血圧から計算した。
【0126】
(実験プロトコル)
実験の日に、イヌを台に乗せ、この台の上で、イヌは実験中おとなしく横たわっていた。イヌを騒がせずに薬物を投与するために、カテーテルを脚の末梢静脈に挿入し、そして注入ラインに取り付けた。MAP、HRおよびCBFが安定した後に、実験を開始した。
【0127】
(MAPおよびHRに対するカフェイン単独の影響、ならびに血漿中カフェイン濃度の決定(パートI))
3つの実験を、群内の各イヌに対して実施した。各実験において、イヌにカフェインの(1分〜3分にわたる)IV注射を、2mg/kg、4mg/kgまたは10mg/kgの用量で与えた。各イヌに、ランダムな様式で、3用量までのカフェインを(異なる日に)与えた。MAPおよびHRを120分間連続的に記録し、そして血漿中カフェイン濃度の測定のために、3mLの血液を、大動脈カテーテルから、カフェインの投与の2.5分後、5分後、15分後、30分後、60分後、90分後および120分後に採取した。
【0128】
(リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張および血行力学の変化に対するカフェインの影響(パートII))
各イヌに、5μg/kgのリガデノソンのIV注射を与えた。45分後、1mg/kgのカフェイン(IV)を投与した。カフェインの注射の約45分後、リガデノソンの2回目の注射を与えた。LVSP、LV dP/dtMax、MAP、HRおよびCBFを連続的に記録した。血液サンプルを、リガデノソンの注射の1分後、3分後、5分後、15分後、30分後、45分後、および60分後に左心房カテーテルから採取した。
【0129】
その後の日に、プロトコルおよび血液サンプリングを、異なるカフェイン用量(2mg/kg、4mg/kgまたは10mg/kg)で同じイヌにおいて繰り返した。
【0130】
4匹のイヌにおいて、2用量のリガデノソン(5μg/kg、IV)を90分の間隔を空けて(血液サンプリングなしで)与え、リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張のタキフィラキシーが存在するか否かを決定した。
【0131】
(薬物)
リガデノソンは、滅菌ストック溶液としてCV Therapeutics,Inc.により供給され(ロット番号803604、0.08mg/mL)、これを、注射前に15%プロピレングリコール(pH7)を使用して作製し、そして通常の生理食塩水で希釈した。カフェインを、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、そして通常の生理食塩水に溶解した(10mg/mL)。
【0132】
(統計学的分析)
ベースラインにおけるパラメータの値と、薬物投与後の示される時点におけるパラメータの値との間の差の統計学的有意性を、One−Way Repeated Measures ANOVAを使用して、Tukey試験に従って決定した。カフェインの非存在下でのリガデノソンに対する応答と、カフェインの存在下でのリガデノソンに対する応答との間の差の統計学的有意性を、Two−Way Repeated Measures ANOVAを使用して、Tukey試験に従って決定した。p<0.05である結果を有意とみなした。コンピュータベースのソフトウェアパッケージ(SigmaStat 2.03)を、統計学的分析のために使用した。全てのデータは、平均±SEMとして与えられる。
【0133】
(結果)
(MAPおよびHRに対するカフェイン単独での影響、ならびに血漿中カフェイン濃度)
カフェインの2mg/kgでのIV注射は、MAPおよびHRに有意な変化をもたらさなかった。4mg/kgのカフェインは、注射の2.5分後と5分後との両方において、MAPの約12mm Hgの有意な増加をもたらし、HRには有意な変化がなかった。10mg/kgのカフェインは、MAPの有意な増加(2.5分、5分および15分において5mm Hg〜9mm Hg、p>0.05)をもたらしたが、注射の30分後〜120分後に、HRを16回/分〜24回/分だけ減少させた。血漿中カフェイン濃度は、カフェイン注射の30分後〜120分後の範囲で、比較的狭い範囲内のままであった(表1)。これらの結果に基づいて、カフェイン投与の45分後が、リガデノソンにより誘導されるCBFおよび血行力学の変化に対するカフェインの影響を決定するために最適であることが結論付けられた。
【0134】
【表1】

(リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張に対するカフェインの影響)
(時間コントロール群)
4匹のイヌにおいて、リガデノソン(5μg/kg)のIV注射は、CBFの有意な増加をもたらした。最大CBFは、ベースライン値である37±1mL/分から、178±17mL/分まで増加し、そしてCBFの2倍の増加の持続時間は、401±45秒であった。リガデノソンの2回目の注射は、90分後に同じ冠状血管拡張を生じた(図1)。最大CBFは、ベースライン値である35±1mL/分から、176±6mL/分まで増加し、そしてCBFの2倍の増加の持続時間は、395±43秒であった。リガデノソンの2回の注射により引き起こされるベースラインのCBF、最大CBF、またはCBFの2倍の増加の持続時間のいずれにも、統計学的に有意な差はなかった(図1)。
【0135】
(リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張に対するカフェインの影響)
カフェインの非存在下では、リガデノソン(5μg/kg)のIV注射は、CBFを、ベースライン値である34±2mL/分から、ピークである191±7mL/分まで増加させ、そしてリガデノソンにより引き起こされるCBFの2倍の増加の持続時間は、515±71秒であった(n=8)。
【0136】
CBFのベースライン値は、カフェイン処置の前後で有意には異ならなかった(1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、および10mg/kgの投与の45分後)(図2、時刻0)。1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンにより引き起こされるCBFの最大増加は、コントロール(カフェインの非存在下)から有意には低下しなかった。リガデノソンにより誘導されるCBFの最大増加は、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgのカフェインの存在下で、それぞれ2±3%、−0.7±3%、−16±5%および−13±8%変化したのみであった(全てp>0.05、図2)。対照的に、リガデノソンにより引き起こされるCBFの2倍の増加の持続時間は、試験した全てのカフェイン投薬量において、有意に減少した。CBFの2倍の増加の持続時間の減少は、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgのカフェインの存在下で、コントロールからそれぞれ17±4%、48±8%、62±5%および82±5%であった(全てp<0.05)(図4)。しかし、リガデノソンにより増加したCBFは、1mg/kg、2mg/kgおよび4mg/kgのカフェインの存在下で、3分間以上、ベースラインレベルの2倍以上のままであった(図2)。
【0137】
(リガデノソンおよびカフェインの血漿中濃度)
カフェインの非存在下で、リガデノソン(5μg/kg)のIV注射は、血漿中リガデノソン濃度の、持続時間の短い増加を引き起こし、この濃度は、約1分でピークに達し、そして急激に低下した。リガデノソンの薬理学的プロフィールは、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgまたは10mg/kgのカフェインによって変化しなかった(図3)。
【0138】
血漿中カフェイン濃度は、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgでのカフェインの投与後45分であってリガデノソンの2回目の注射前(図21の下のパネルにおける時刻0)において、それぞれ5±0.2μM、10±0.6μM、18±0.8μMおよび52±1.8μMであった。血漿中カフェイン濃度は、注射前の時点(時刻0)からリガデノソンの2回目の注射の30分後まで、比較的一定のレベルに維持された(図3、下のパネル)。
【0139】
(リガデノソンにより誘導される血行力学の変化に対するカフェインの影響)
表2は、カフェインの非存在下または1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgのカフェインの存在下のいずれかでの、リガデノソンの投与後の様々な時点における、MAPおよびHRの値を示す(ピーク応答を含まない)。表2に示されるように、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgまたは10mg/kgのカフェインは、カフェインの投与の45分後に、血行力学を有意には変更しなかった(コントロールならびに1mg/kg、2mg/kg、4mg/kgおよび10mg/kgのカフェインについてのベースライン値)。
【0140】
【表2】

リガデノソン(5μg/kg)のIV注射は、MAPの穏やかな低下をもたらした。リガデノソンは、MAP(ピーク)を、カフェインの非存在下でのベースライン値である102±2mm Hgから15±2%だけ低下させた(n=9)。1mg/kgおよび2mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンにより引き起こされるMAPのピーク減少は変化しなかった(それぞれ、ベースラインから13±2%対13±1%)。しかし、4mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンは、ピークMAPをベースラインから2±5%のみ低下させた。10mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンは、MAPを増加させたが、有意ではなく、ベースラインから9±6%であった。
【0141】
リガデノソン(5μg/kg)のIV注射は、8分間〜9分間続くHRの増加をもたらした。リガデノソンは、HR(ピーク)を、ベースライン値である80±4回/分から114±14%だけ増加させた(n=9)。1mg/kgのカフェインは、リガデノソンにより引き起こされる心頻拍を顕著には変化させなかった。ピークHRは、ベースラインから124±12%だけ増加した。2mg/kg、4mg/kgまたは10mg/kgのカフェインは、リガデノソンにより誘導される心頻拍を、用量依存様式で有意に変化させた。ピークHRは、ベースラインからそれぞれ109±21%、79±20%、および74±16%だけ増加した(全て、コントロールと比較してp<0.05)。
【0142】
リガデノソンは、LVSP(ピーク)を、ベースライン値である139±5mm Hgから9±1%だけ低下させた(n=8)。1mg/kgおよび2mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンは、LVSPを、ベースラインからそれぞれ9±3%および6±2%だけ、さらに有意に低下させた。4mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンは、LVSPの有意な低下をもたらさず(コントロールから1±5%の低下、p>0.05)、一方で、10mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンは、LVSPを有意に増加させた(コントロールから11±7%の増加)。
【0143】
5μg/kgのリガデノソンのIV注射は、LV dP/dtMaxの増加をもたらした。リガデノソンは、LV dP/dtMax(ピーク)を、ベースライン値である3240±196mm Hg/sから65±7%だけ増加させた。リガデノソンにより誘導されるLV dP/dtMaxの増加に対するカフェインの影響は、一貫しなかった。リガデノソンにより引き起こされるLV dP/dtMaxの増加は、1mg/kgのカフェインの存在下でわずかに大きかった。2mg/kgおよび4mg/kgのカフェインの存在下では、リガデノソンにより誘導されるLV dP/dtMaxの増加は、わずかに小さかった。リガデノソンにより誘導されるLV dP/dtMaxの増加は、10mg/kgのカフェインの存在下では、変化しなかった。
【0144】
CBFの増加の大きさと、冠状血管拡張の持続時間との両方が、心筋層灌流画像化における正確な診断のために重要である。この研究の最も重要な知見は、カフェインが、リガデノソンに応答しての冠状血管拡張の持続時間を減衰させるが、CBFのピーク増加を減衰させないことである。従って、A2Aレセプターにより媒介される冠状血管拡張の持続時間は、カフェインによる拮抗作用に対して、ピークCBFよりも感受性が高い。
【0145】
カフェインは、全てのアデノシンレセプター亜型の、非特異的かつ非選択的なアゴニストである。ヒトアデノシンA、A2A、A2BおよびAレセプターに対するカフェインの親和性(Ki)は、それぞれ12μM、2.4μM、13μMおよび80μMである(Fredholmら(1999).Pharmacol Rev,51:83−133)。多数の研究が、ヒトおよびイヌにおいて、アデノシン(Smitsら(1990)Clin Pharmacol Ther,48:410−8;Kuboら(2004)J Nucl Med,45:730−8;Lapeyreら(2004)J Nucl Cardiol,11:506−44)、ジピリダモール(Smitsら(1991)J Nucl Med,32:1538−41;Kuboら(2004)J Nucl Med,45:730−8;Lapeyreら(2004)J Nucl Cardiol,11:506−11)およびA2AレセプターアゴニストであるATL−146e(Riouら(2002)J Am Coll Cardiol,40:1687−94)により誘導される冠状血管拡張をカフェインが減衰させ得ることを示している。従って、カフェインの作用は、これらのストレス剤を使用する研究において、偽陰性の心筋層灌流画像化を生じ得る(Smitsら(1991)J Nucl Med,32:1538−41)。しかし、1つの報告は、カフェインが、冠状動脈疾患を有する患者において、分画流れ余量により測定される、アデノシンにより誘導される冠状血管充血を変化させないことを示した(Aqelら(2004)Am J Cardiol,93:343−6)。
【0146】
本実施例の結果は、リガデノソンにより誘導される冠状血管充血をカフェインが独特のパターンで減衰させる(すなわち、リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張の持続時間をカフェインが用量依存様式で選択的に減衰する)が、CBFの最大増加を顕著には変化させないことを、初めて明らかにする。1mg/kg〜10mg/kgの用量のカフェインは、血漿中リガデノソンのピーク濃度を低下させず、リガデノソンの薬理学的プロフィールも変化させなかった。A2Aレセプターの異なる親和性、ならびにリガデノソンおよびカフェインの薬理学的プロフィールは、カフェインの存在下でリガデノソンにより引き起こされる冠状血管充血の減衰の独特なパターンを説明し得る。注射の直後に、リガデノソン分子は、冠状血管循環におけるA2Aレセプターのほとんどと結合し得、これによって、全ての用量のカフェインの存在下で、CBFの類似の最大増加をもたらす。注射の短時間後に、血漿中リガデノソン濃度は急激に低下したが、血漿中カフェイン濃度は、比較的一定なままであった。従って、カフェイン分子がより多くのA2Aレセプターを占有するので、リガデノソンに対するピーク応答後のCBFの増加は、カフェインの存在下ではより急激に低下し、これによって、リガデノソンによりもたらされる冠状血管拡張の持続時間が短縮する。これらの結果は、カフェインが、意識のあるイヌにおいて、リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張の持続時間の用量依存的な減衰をもたらしたが、リガデノソンにより増加したCBFは、1mg/kg、2mg/kgおよび4mg/kgのカフェイン(1杯〜2杯のコーヒーの消費と等価)の存在下で、3分間以上にわたってベースラインの2倍以上に維持されたことを示す。より最近は、アデノシン投与の1時間前に摂取される1杯の8オンスカップのコーヒーが、シングルフォトンエミッションコンピュータ連動断層撮影によって研究される可逆的欠損の、存在も重篤度も妨害しなかったことが報告された(Zoghbiら(2006)J Am Coll Cordiol,47:2296−302)。
【0147】
2Aレセプターの脱感作が、細胞ベースの実験モデルにおいて報告されている(Anand−Srivastavaら(1989)Mol Cell Endocrinol,62:273−9、Ramkumarら(1991)Mol Pharmacol,40:639−47)。しかし、関連する研究は、1.0μg/kgのリガデノソンの3つの連続した投与(5分〜10分の間隔を空ける)が、意識のあるイヌにおいて、CBFの類似のピーク増加をもたらすことを実証した(Trochuら(2003)J Cardiovasc Pharmacol,41:132−9)。さらに、本研究において、時間コントロール実験を意識のある4匹のイヌに対して実施し、リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張のタキフィラキシーが存在するか否かを決定した。これらの結果は、リガデノソンの2回の注射により誘導される、CBFの最大増加またはCBFの2倍の増加の持続時間のいずれにも、有意な差がないことを示した(図1)。従って、カフェインの存在下でリガデノソンにより誘導される減衰した冠状血管の充血は、主として、カフェインによるA2Aレセプターの競合的な拮抗作用に起因するようである。
【0148】
本研究はまた、リガデノソンのIV注射が、意識のあるイヌにおいて、MAP(表2)およびLVSPの穏やかな低下、ならびにHR(表2)およびLV dP/dtMaxのわずかな増加をもたらすことを示した。本研究における、MAPおよびHRのリガデノソンにより誘導される変化は、関連する研究(Trochuら(2003)J Cardiovasc Pharmacol,41:132−9、Zhaoら(2003)J Pharmacol Exp Ther,307:182−9)と一致した。これらの関連する研究は、リガデノソンにより誘導されるMAPの穏やかな低下が、末梢血管の拡張に起因することを示した。このことは、リガデノソンによる、全末梢血管抵抗(TPR)の低下および下半身の血管の拡張により証明された(Zhaoら(2003)J Pharmacol Exp Ther,307:182−9)。
【0149】
カフェインは、ヒトにおいて、ジピリダモールにより誘導される血圧の増加を、用量依存様式で減衰させることが示されている(Smitsら(1991)Clin Pharmacol Ther,50:529−37)。本研究は、意識のあるイヌにおいて、リガデノソン(新しいアデノシンA2Aレセプターアゴニスト)により誘導される低血圧症の減衰を、カフェインが用量依存的にもたらすことをさらに確認した。アデノシンは、ヒトにおいて、交感神経の活性を増加させ得、これによって心頻拍をもたらすことが報告された(Biaggioniら(1991)Circulation、83:1668−75)。本実施例の結果は、リガデノソンのIV注射が、意識のあるイヌにおいて、かなりの心頻拍をもたらすことを示した。このことは、関連する研究と一致する(Trochuら(2003)J Cardiovasc Pharmacol,41:132−9、Zhaoら(2003)J Pharmacol Exp Ther.307:182−9)。より重要なことには、1つの最近の研究は、目覚めたラットにおけるリガデノソンにより誘導される心頻拍が、交感神経の興奮により直接媒介されることを示した(Dhallaら(2006)J Pharmacol Exp Ther,316:695−702)。この研究において、リガデノソンにより誘導される心頻拍は、ヘキサメトニウム(神経節遮断薬)により除かれた。本実施例の研究は、カフェインが、意識のあるイヌにおいて、リガデノソンにより誘導される心頻拍を用量依存様式で減衰させることを実証した。しかし、リガデノソンにより誘導される心頻拍の、カフェインによる低下についての機構は、未決定である。
【0150】
要約すると、上記実施例の結果は、1mg/kg〜10mg/kgのカフェインのIV用量が、
(1)カフェインの血漿中濃度が52±2μM程度に高い場合、45分においてベースラインCBFおよび血行力学を変化させなかったこと;
(2)リガデノソンにより誘導されるCBFのピーク増加を有意には低かさせなかったこと;
(3)リガデノソンにより誘導される冠状血管拡張の持続時間の用量依存的な減少をもたらしたこと;ならびに
(4)リガデノソンにより誘導される洞性頻拍および低血圧症を弱めたこと
を示す。
【0151】
(実施例2)
(目的)
一次的な目的は、200mgの経口用量のカフェインの、リガデノソンにより誘導された心筋層血流(MBF)(カフェイン摂取の約2時間後に測定された)に対する影響を評価することであった。二次的な目的は、以下のものを含んだ:
・事前のカフェインありおよびなしでの、リガデノソンにより誘導される心拍数(HR)の応答を評価すること
・リガデノソンにより誘導される、MBFの増加とHRの変化との間の関係、および経口カフェインにより変化するか否かを評価すること
・事前のカフェインありおよびなしでの、リガデノソンにより誘導される血圧(BP)応答を評価すること
・事前のカフェインありおよびなしでの、リガデノソンの安全性および許容性を評価すること
・リガデノソンに対するMBF応答に対する、事前のカフェインの影響が、男性志願者と女性志願者との間で異なるか否かを評価すること。
【0152】
(方法)
この試験は、カフェインありおよびなしでの、正常な被験体におけるリガデノソンの、無作為化された二重マスクの交差研究であった。安静時およびストレス時の陽電子断層撮影(PET)走査を、リガデノソン投与(1回の400μgの静脈内(IV)用量、10秒間にわたって投与、続いて5mLの生理食塩水でフラッシュ)後、およびカフェイン200mgまたはプラシーボを2日の試験日の各々に投与した後に実施した。15O水を、PET走査における放射性核種として使用した。投与日と投与日との間に1日〜14日の洗い流し期間が存在した。血液サンプルおよび安全性の測定値を、薬物投与の120分後まで収集した。
【0153】
(被験体の数(計画および分析))
40人の被験体が評価可能なデータを伴う研究を完了するように、研究を、52人の被験体(各交代の順序に26人)を登録するように設計した。45人の被験体が登録されて無作為化され、そして43人の被験体にリガデノソンを投与し、このうちの41人の被験体がこの研究を完了し、40人の被験体が効力について評価可能であり、そして2人の被験体が尚早に終了した。
【0154】
(診断および包含の主要な基準)
文書によるインフォームドコンセントを提供し、そして非喫煙者でありかつ規則的にコーヒーを飲む(1日あたり少なくとも1杯)、健常な成人の男性または女性(18歳以上)を、この研究に含まれる被験体とみなした。登録される被験体は、臨床的に関連する身体的知見も、ベースラインにおける心電図(ECG)の知見も有さないべきであった。これらの被験体にはまた、各試験日前の24時間にわたって、カフェインまたは他のメチルキサンチンの摂取を控えるように、そしてベースライン評価の4時間前から最後の血液サンプルが採取されるまで(ストレスPET走査の5分後)、全ての食料および水以外の飲料を控えるように要求した。妊娠の可能性のある女性被験体は、陰性のベースライン妊娠試験を有さなければならず、そして投与前の3ヶ月および試験後の1週間にわたって、認容可能な出産制御方法を使用しなければならなかった。
【0155】
被験体が絶えず処置を必要とする何らかの疾患を有する場合、これらの被験体は、この研究への登録に適格ではなかった。アルコールの乱用または薬物嗜癖の経歴、あるいは既知もしくは疑われる気管支収縮疾患および気管支痙攣疾患の病歴、あるいはテオフィリンもしくはアミノフィリンに対する既知のアレルギーを有する被験体は、登録を許可されなかった。
【0156】
(試験製品、用量および投与様式、バッチ番号)
オープンラベルの研究用薬物を、各々が5mLのリガデノソン(0.08mg/mL)を含む単回使用バイアル中に滅菌ストック溶液として供給した。リガデノソン400μgを、ivカテーテルを通して約10秒間にわたり急激なボーラスとして投与し、その直後に、5mLの生理食塩水でフラッシュした。リガデノソン(試験用薬物)は、以下のCVTロット番号を有した:803604。
【0157】
(処置の持続時間)
2日の試験日の各々に、被験体に、単回用量のリガデノソンを与え、5mLの急激な(10秒間の)ボーラスとして静脈内に投与し、続いて5mLの生理食塩水でフラッシュした。投与と投与との間に1日〜14日の洗い出し期間が存在した。
【0158】
(参照治療、用量および投与の様式、バッチ番号)
カフェイン(200mg po)またはプラシーボカプセルを、リガデノソンの約105分前に投与した。カフェインカプセルについてのCVT追跡番号は、1341(Leg3)であった。これらのカプセルは、Bristol−Myers Squibb製のカフェイン錠剤(NoDoz(登録商標))を含み、ロット番号405542を有した。プラシーボカプセルについてのCVT追跡番号は、1341(Leg2)であった。
【0159】
(評価基準)
(効力)
主要な効力の測定値は、冠状血管血流余量(CFR)の対数であり、これは、リガデノソン投与後のストレスMBF対安静時MBFの比である。血漿中のカフェイン、テオフィリン、およびリガデノソンの濃度を測定し、そして診査分析において使用した。
【0160】
(安全性)
安全性の測定値は、有害事象(AE)、重篤な有害事象、生命兆候(HRおよびBP)、ECG、共同投薬、ならびに耐性質問表を含んだ。リガデノソンの単回用量を受けた被験体からの全ての入手可能なデータが、統計学的要約に含まれた。
【0161】
主要な効力分析は、リガデノソン投与後のCFRをカフェインが少なくとも10%低下させるか否かを、順序、順序内の被験体、期間および処置についての項を用いて、分散の分析(ANOVA)を使用して試験することであった。処置の平均値の差(カフェイン−プラシーボ;対数スケール)についての95%および90%の信頼区間(CI)の限界を指数にして、生データスケール(rawscale)の中央値の比についてのCIを得た。この後者の90%CIの下限が0.9を超える場合、事前のカフェイン投与がCFRを10%未満低下させることの95%の信頼を有するといえる。これらのデータをまた、Wilcoxon順位−合計試験を使用して分析した。
【0162】
カフェインの影響を、男性被験体と女性被験体とで比較した。診査の薬理学的分析は、HRおよびBPに対するカフェインの影響、ならびにMBFとHR/BPとの間の関係に対するカフェインの影響、ならびにCFRと血漿中カフェイン濃度との間の相関を含んだ。リガデノソンの投与後に発生または悪化するAEを、重篤度、研究用薬物との関係、および事前のカフェインの状態によって要約した。生命兆候(HR、心収縮期および拡張期のBP、ならびに計算した平均動脈圧)を、個々の時点で要約し、そしてベースライン値からの変化を計算した。平均値の差(カフェイン−プラシーボ)についてのCIを決定した。
【0163】
カフェインとテオフィリンとの血漿中濃度の間の関係、およびHRおよびBPとの間の関係を調査した。ECG間隔、およびECG間隔のベースライン値からの変化を、律動または伝導の異常の発生と同様に提供した。共同投薬利用を要約した。
【0164】
耐性質問表への回答を、Wilcoxen順序合計試験(「どのように感じたか」との質問)および完全Cochran−Mantel−Haenszel試験(2日目のみの質問「今回の試験が1回目の試験と比較して同であったか」)を使用して分析した。
【0165】
(効力の結果)
プラシーボ群(n=40)についてのlog CFR±SEは、1.03±0.06であり、そしてカフェイン群(n=40)についてのlog CFRは、0.95±0.06であった。CFR(ストレス/安静)は、プラシーボ群については2.97±0.16であり、そしてカフェイン群については2.75±0.16であった。
【0166】
この研究において検出されたCFRには変化がなかったが、この研究は、log CFRに対するリガデノソンとカフェインとの間の有意な相互作用を除外するものでも確立するものでもない。log CFRについての95%および90%の信頼区間の指数化された上限および下限(カフェイン対プラシーボの差)は、それぞれ1.08および0.78、ならびに1.06および0.80である。
【0167】
この下限は0.9未満であるが上限が1より大きいので、この研究は、相互作用を確立も除外もし得ない。しかし、CFRの変化が20%以上ではないことの95%の信頼がある。
【0168】
CFRに対するカフェインとリガデノソンとの性別による有意な相互作用は、存在しなかった。
【0169】
(安全性の結果)
AEは、以下の分類において任意の時点に起こった(被験体の百分率による):心臓の障害25/43(58%)、呼吸、胸郭および縦郭の障害25/43(58%)、神経系の障害18/43(42%)、脈管の疾患13/43(30%)、筋骨格および結合組織の障害12/43(28%)、一般的な障害および投与部位の状態11/43(26%)、胃腸の障害2/43(5%)、ならびに耳および半規管の障害1/43(2%)。
【0170】
最も頻繁に起こるAEは、呼吸困難24/43(56%)、動悸21/43(49%)、潮紅13/43(30%)、頭痛12/43(28%)、無気力の感覚12/27(28%)、および感覚異常症8/43(19%)であった。
【0171】
40%(17/43)の被験体が、最大重篤度を有する少なくとも1つのAEを穏やかに有し、49%(21/43)が中程度に、そして9%(4/43)が重篤に有した。95%の被験体(41/43)が、おそらく関連するとみなされた少なくとも1つのAEを有し、そして2%(1/43)の患者が、リガデノソン処置におそらく関連するとみなされた少なくとも1つのAEを有した。
【0172】
リガデノソンにより誘導される頭痛の重篤度は、カフェインを用いると低下した(p=0.012)。死またはSAEについての報告はなかった。
【0173】
カフェインは、リガデノソンにより引き起こされるHR増加を減衰させた(p<0.001)。リガデノソンの存在下で、心収縮期および拡張期の血圧に対するカフェインの影響はなかった。
【0174】
リガデノソンの投与後、ECGにより決定される場合、1人の被験体は、1度のAVブロックを発症し、そして1人の被験体は、QTc持効(500ミリ秒より長く、60ミリ秒より長い変化)を有したようであった。これらは、AEとして報告されなかった。
【0175】
耐性質問表によれば、被験体は、カフェインを用いた試験中により快適に感じ(p<0.001)、そしてプラシーボ試験後よりもカフェイン試験後に良くなったと感じた(p<0.001)。図5。
【0176】
この研究において検出されたCFRには変化がなかったが、この研究は、log CFRに対するリガデノソンとカフェインとの間の有意な相互作用を除外するものでも確立するものでもない。log CFRについての95%および90%の信頼区間の指数化された上限および下限(カフェイン対プラシーボの差)は、それぞれ1.08および0.78、ならびに1.06および0.80である。
【0177】
この下限は0.9未満であるが上限が1より大きいので、この研究は、相互作用を確立も除外もし得ない。しかし、CFRの変化が20%以上ではないことの95%の信頼がある。
【0178】
CFRに対するカフェインとリガデノソンとの性別による有意な相互作用は、存在しなかった。
【0179】
プラシーボ群とカフェイン群との間に、AEの全体的な発生数の差はなかった。しかし、カフェインは、AEの重篤度を減衰させた。リガデノソンにより誘導される頭痛の重篤度は、カフェインを用いて低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、少なくとも50mgのカフェイン、少なくとも10μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニスト、および少なくとも1種の薬学的賦形剤を含有する、薬学的組成物。
【請求項2】
前記部分A2Aレセプターアゴニストの量が、約10μg〜約600μgの範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記カフェインの量が、約50mg〜約1000mgの範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記カフェインの量が、約100mg〜約500mgの範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記カフェインの量が、約200mg〜約400mgの範囲である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、CVT−3033、リガデノソン(Regadenoson)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記部分A2Aレセプターアゴニストがリガデノソンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
薬学的組成物であって、約200mg〜約400mgのカフェイン、約10μg〜約600μgのリガデノソン、および少なくとも1種の薬学的賦形剤を含有する、薬学的組成物。
【請求項9】
哺乳動物の、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に、患者の耐性を増加させる方法であって、該方法は、治療有効量のカフェイン、および少なくとも10μgの少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項10】
前記治療有効量のカフェインが、前記少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストの投与の前に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療有効量のカフェインが、前記少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストの投与前の120分以内に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記治療有効量のカフェインが、前記少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストの投与前の30分以内に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記治療有効量のカフェインが、前記少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストの投与と同時に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量のカフェインおよび前記少なくとも1種の部分A2Aレセプターアゴニストが、単一の薬学的組成物として投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、約10μg〜約600μgの範囲の量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、単回用量として投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、静脈内ボーラスで投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、約10秒未満で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、約100μgより多い量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、約500μg以下の量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、約100μg〜約500μgの範囲の量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、CVT−3033、リガデノソン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記部分A2Aレセプターアゴニストが、リガデノソンである、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項25】
ヒトにおける、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、該方法は、約50mg〜約1000mgのカフェイン、放射性核種、および約10μg〜約600μgの範囲の量の部分A2Aレセプターアゴニストを投与する工程を包含し、該放射性核種および該部分A2Aレセプターアゴニストの投与後に不充分な血流の領域について心筋層が試験される、方法。
【請求項26】
前記心筋層の試験が、前記部分A2Aレセプターアゴニストが投与された時点から約1分以内に開始される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記部分A2Aレセプターアゴニストの投与が、冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加を引き起こす、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記冠状血管血流の少なくとも2.5倍の増加が、前記部分A2Aレセプターアゴニストの投与から約1分以内に達成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記放射性核種と前記部分A2Aレセプターアゴニストとが、別々に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記放射性核種と前記部分A2Aレセプターアゴニストとが、同時に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記カフェインと前記部分A2Aレセプターアゴニストとが、別々に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記カフェインが、前記部分A2Aレセプターアゴニストの投与前の120分以内に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ヒトにおいて、血管拡張薬により誘導される心筋層ストレス灌流画像化中に患者の耐性を増加させる方法であって、該方法は、約50mg〜約1000mgのカフェイン、および約10μg〜約600μgのリガデノソンを、該ヒトに、単回静脈内ボーラスで投与する工程を包含する、方法。
【請求項34】
前記リガデノソンが、約100μg〜約500μgの範囲の量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記カフェインが、約100mg〜約500mgの範囲の量で投与される、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−502649(P2010−502649A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526935(P2009−526935)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077410
【国際公開番号】WO2008/028140
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(504003226)シーブイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド (62)
【氏名又は名称原語表記】CV Therapeutics, Inc.
【Fターム(参考)】