説明

心筋疾患症状を治療するための方法および組成物

【課題】心筋梗塞を治療するための方法、装置、キットおよび組成物を提供する。
【解決手段】一つの実施形態において、当該方法は、心室の梗塞ゾーンのリモデリング防止を含んでいる。他の実施形態において、当該方法は、構造的補強剤の導入を含んでいる。他の実施形態においては、心室のコンプライアンスを増大させる薬剤を心室に導入する。別の実施形態において、リモデリングの防止は、心室梗塞ゾーンの薄化の防止を含んでいる。もう一つの実施形態において、梗塞ゾーンのリモデリングおよび薄化の防止は、コラーゲンの架橋およびコラーゲンの滑り防止を含んでいる。他の実施形態においては、構造的補強剤に他の治療剤が付随されてもよい。これらの薬剤には、繊維芽細胞促進剤および血管新生剤が含まれるが、これらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
心筋梗塞、更に特定すれば、一つの態様では心腔(heart chamber)の梗塞領域の壁の補強および/または心腔の梗塞領域の壁が薄くなること(薄化)の阻止に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血性心疾患は、典型的には、心筋血流と心筋の代謝要求との間の不均衡から生じる。増大する冠動脈閉塞を伴った進行性アテローム硬化症は、冠動脈血流の減少を導く。低灌流、血管痙攣または血栓症を導く循環系の変化のような追加の事象によって、血流は更に減少する可能性がある。
心筋梗塞は、全死亡例の約20%を占めている。それは成人における突然死の主要な原因である。
心筋梗塞(MI)は、屡々、酸素および他の栄養成分の突然の供給不足から生じる心疾患の一つの形態である。血液供給の不足は、心臓の筋肉の特定部分に栄養分を与える冠動脈の閉鎖の結果である。この現象の原因は、一般には動脈硬化、すなわち冠動脈血管における「動脈の硬化」によって生じる。
以前、MIは例えば95%から100%への閉塞の緩徐な進行から引き起こされると信じられていたが、MIはもっと小さい閉塞の結果である可能性もあり、この場合、例えば動脈内での血液凝固を生じるコレステロールプラークの破裂が存在する。従って、血流が阻止されて、下流の細胞の損傷が生じる。この損傷は、たとえ残りの筋肉が充分な量の血液をポンピングするのには充分に丈夫であっても、不規則な律動を生じる可能性があり、これは致死的であり得る。この心臓組織への障害の結果として、当然ながら瘢痕組織が生じ易い。
ACE阻害剤およびβブロッカーのような、MIを治療するための比較的有効な全身性薬物が存在するが、広範囲のMIを経験した人々の大部分が、最終的には心不全を発症する。心不全への進行において重要な構成要素は、左心室における不均一なストレスおよび歪み分布を生じる機械的な力に起因する心臓のリモデリングである。MIが生じると、心臓のリモデリングが開始する。リモデリング事象の主な構成要素としては、心筋細胞の死、浮腫および炎症、続く繊維芽細胞浸潤およびコラーゲン沈着、最終的には瘢痕形成が含まれる。瘢痕の主成分はコラーゲンである。成人の成熟心筋細胞は再生されないので、梗塞領域は顕著な薄化を受ける。心筋細胞の喪失は、壁の薄化および心腔拡張の主要な病理学的要因であり、それらは最終的には心筋症の進行を導く可能性がある。心筋細胞の細胞死が、可能性として且つ実際に生じる。他の領域においては、離れた領域に肥大(肥厚)が生じて、左心室の全体的な拡大をもたらす。これは、リモデリングカスケードの最終結果である。心臓におけるこれらの変化は、患者のライフスタイル、並びに歩行および運動の能力に変化を生じさせる。これらの変化はまた、血圧の上昇ならびに収縮および拡張の性能の悪化をもたらす生理学的変化と相関している。
【0003】
図1A〜図1Cは、動脈の縦方向横断面図を描くことによって血流を図示している。図1Aは、正常な、閉塞していない動脈を図示している。図1Bは、引裂きまたは攣縮に起因する動脈の損傷を示している。この図は、内壁に対する小さい損傷を示している。図1Cは、プラークの集積を有する動脈を図示しており、アテローム硬化塊の上の遮断された血液細胞によって示されるように、これは血流を低下させる。脂肪およびコレステロールが損傷部位に蓄積する。この塊は、ECG、SPECT、MRI、血管造影図等の現在利用可能な方法によって検出することができる。
図2A〜図2Bは、ひとたびプラークの集積が梗塞を引き起こした場合の心臓損傷の進行を図示している。この疾患の最も一般的な病因は閉塞性の冠動脈内血栓であり、この場合、血栓が、潰瘍化した狭窄性プラークを覆っている。これは、約90%の壁内急性心筋梗塞を引き起こす。その他可能性があるMIの引き金は、冠動脈アテローム硬化症を伴うかまたは伴わない血管攣縮であり、血小板凝集と関連する可能性もある。別の可能性のある引き金は、左側壁在血栓症由来の塞栓形成、増殖性心内膜炎、または卵円孔開存(patent foramen ovale)による心臓右側由来の奇異性塞栓症である。図2Aは、指摘した原因の何れかにより、遮断および制限された血流が生じ得る部位を図示している。図2Bは、血液によって心臓の左心室下方領域に運ばれる酸素および栄養素の流れが不足した結果であり得る、左心室への広範な損傷を示している。この領域は、リモデリングを受け易く、最終的には瘢痕が形成し、また機能しない領域(収縮しない領域)が存在することになるであろう。
【0004】
顕著なアテローム硬化性集積は、動脈内腔を減少させ、血流を低下させる可能性がある。この集積物は破裂して、動脈の全体的または部分的な閉塞を生じ得る。完全な冠動脈閉塞は、急性MIをもたらすであろう。こうして、T細胞、血小板、フィブリンならびに他の複数の因子および細胞は、血流を介しての前進を妨害され、その結果は、上記で見てきたような不充分な血管による供給である。これは心筋細胞の死を導く。コラーゲン沈着の形態の繊維症に加えて、心筋細胞の死は、左心室の障害をもたらし、残る心筋細胞に過剰な負担をかけ得る。この過程は、残る心筋細胞の肥厚(拡大)を生じる補償作用によって、更に複雑化される。このような補償作用は、左心室を拡大させる可能性があり、またこういったサイクルが継続すれば、最終的な心不全を生じる可能性がある。
MI後の梗塞した心臓組織の形態学的外観は変動し得る。壁内梗塞は、心内膜から心外膜までの左心室の壁の厚さ全体を巻き添えにする。壁内梗塞は、前方の自由壁および後方の自由壁へ広がる場合もある。この損傷は、右心室壁への広がりを含む場合もある。心内膜下梗塞は複数の病巣領域を有する場合もあり、また壊死領域が左心室壁の内部1/3〜1/2にとどまっている場合もある。心内膜下梗塞における漸進的変化は、壁内MIの場合と同様には展開しない。
MI後の形態的変化は、ゆっくり時間をかけて生じる。約7週間に亘って生じる全体の形態学的変化は、損傷領域を中心として、蒼白な心筋が幾らか充血し、次いで黄色化が始まる。約15日目には、この領域は殆ど黄色であり、柔らかい血管縁(vascular margin)を有する。この領域は、最終的には繊維症から白に戻る。微視的レベルでは、初期の検査によって、波状の心筋繊維が現れる。横紋の喪失と共に凝固および壊死が生じ、続いて収縮帯、浮腫、出血、および好中球浸潤が生じる。24〜72時間以内には、核および横紋が全て喪失し、重度の好中球浸潤が生じる。次いで、マクロファージおよび単核球の浸潤が開始され、血管結合組織の応答をもたらす。この血管結合組織の応答が起きると、次に組織の顕著な肉芽形成が続く。このようにして最終的には繊維症がもたらされ、MI後の約7週間で瘢痕が形成される。
【0005】
図3A〜図3Bは、MIをもたらし得る血管の閉塞を図示している。図3Aは、閉塞していない内腔(301)を有する正常な冠動脈の横断面を図示している。この正常な動脈壁(302)は、内膜層(303)、中膜層(304)および外膜層(305)でできている。動脈内腔において、内膜は血液の流れに直接接触している。この領域は、大部分が内皮細胞でできている。中膜層は、大部分が平滑筋細胞および細胞外基質タンパク質である。最後に、外膜層は、主にコラーゲン、神経、血管およびリンパ管でできている。図3Bは、アテローム硬化症の冠動脈を示している。この例において、当該動脈は約50%閉塞されている(動脈内腔の50%だけが閉塞していない)。このように、閉塞された動脈は、MI患者の心室で観察される損傷をもたらすだろう。
MIが起った後には、組織の三つの層を識別することができる。梗塞領域は、(1)顕著な壊死/アポトーシス組織の領域と、(2)広範に集中するアポトーシス組織および壊死組織ならびに生存組織とからなる境界ゾーンと、(3)主に生存組織からなる冒されていない領域とを有している。境界ゾーンにおいて、細胞は、MIからの損傷のために、酸素が欠乏した状態で存在する。
図3C〜図3Jは、心室のMI後リモデリングの詳細を図示している。MI後の心不全の進行は、梗塞後の心臓のリモデリングの結果である。このリモデリング過程は心臓の梗塞領域を伸展させ、薄くさせて、左心室直径を増大させる。心臓がリモデリングを継続するにつれて、心臓に対するストレスは増大する。図3Cは、細胞レベルでの、正常な心筋を図示している。図3Cは、健康な心筋細胞集団の横紋(306)および中心核(307)を示している。
【0006】
図3D〜図3Jは、MI後の心室リモデリングの進行を描いている。図3Dは、初期の急性MIを図示している。ここには、参照番号308で示されている顕著なピンクの収縮バンドが存在する。図3Eは、横紋および幾つかの収縮バンドの喪失の増大を図示している。この図の核は、核溶解を受けている(細胞核の断片化を含む細胞死の段階)。核は、損傷したクロマチンの小さな暗色の玉(309)に分解される。加えて、損傷を受けた心筋領域に、好中球が浸潤している。図3Fは、急性MIを図示している。核の喪失および横紋の喪失が明らかである。梗塞境界上には広範な出血(310)が存在する。図3Gは、顕著な壊死および出血(310)、並びに好中球浸潤(311)を図示している。その後、充血性の境界に囲まれている壊死および浸潤を伴う損傷領域内に、黄色がかった中心が形成されている。MIの3〜5日後に、壊死および浸潤は広範になる。この時点では、破裂の可能性がある。図3Hは、組織における鉄の長期保存物(貯蔵形態)であるヘモシデリン(312)で満たされている毛細血管、繊維芽細胞およびマクロファージと共に、MIの約1週間後を図示している。2〜3週間では、肉芽形成が最も顕著に観察される特徴である。図3Iは、2週間後に見られる広範なコラーゲン沈着(313)を図示している。コラーゲンの瘢痕が、遠く離れた心筋梗塞領域の心内膜下の位置に生じる。図3Jは、MI後の数週間の治癒後の心筋細胞(314)を図示している。これらの心筋細胞は、肥大しており、大きな暗色の核(315)および間質性繊維症(316)を有する。これらの拡大した細胞が、左心室の拡大に寄与する。
MIの合併症は、左心室壁において隆起の様に見える動脈瘤である。この動脈瘤は、収縮不能な機能的でない組織からできている。従って、心臓の拍出および1回拍出量は低下する。更に、この塊の一部は、剥がれ落ちて全身循環を閉塞する壁性血栓を形成する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[概要]
心室の心筋梗塞を治療するための組成物および方法について説明する。一つの態様では、心室壁を補強することができ且つ当該領域を安定化するために天然の細胞集団を補充する薬剤を放出できる組成物について説明する。もう一つの態様では、心室のコンプライアンスを増大させる方法について説明する。治療剤は、送達デバイスを介して梗塞領域へ進められる。幾つかの態様において、1又は2以上の治療剤を正確に送達する送達デバイスについて説明する。幾つかの態様において、該治療剤は、複数の小容積を介して当該領域へと送達される。これらの送達方法は、心室壁の画像化を使用して、梗塞ゾーンの部位へゲル形成剤のような治療剤の沈着を導いてもよい。他の態様において、治療剤は血管新生を誘導してもよい。
もう一つの態様において、ある方法は、繊維芽細胞の維持および/または梗塞ゾーンへの補充を含む。他の態様において、ある方法は、梗塞ゾーンにおけるMI後初期の繊維芽細胞の補充およびその後の維持を含む。成長因子および繊維芽細胞促進剤のような治療剤は、梗塞ゾーンへと送達されて、周囲の繊維芽細胞を当該エリアへと補充する。これらの治療剤は、該治療剤を内包するミクロ粒子によって、または該治療剤の直接送達によって、梗塞領域へ送達されてもよい。新たな繊維芽細胞を当該領域へと補充することに加えて、梗塞領域に浸潤している天然に存在する繊維芽細胞を刺激して、増殖させてもよい。他の態様においては、トランスフォーミング成長因子β1のような成長因子を梗塞領域に送達することによって、これらの繊維芽細胞が、非収縮性細胞から筋肉細胞への変換を助長されてもよい。当該梗塞ゾーンにおける該繊維芽細胞の維持は、当該領域を補強することおよび心室壁の薄化の過程を阻止することに適する。
心室壁における梗塞領域の薄化防止に向けられた他の態様も本発明に含まれる。梗塞領域に存在するコラーゲンを架橋できる治療剤について説明する。架橋されたコラーゲンは、梗塞領域において構造的に補強する壁を形成して、梗塞ゾーンを嵩高くし、薄化の効果を低減するであろう。
もう一つの態様において、一つの方法は、梗塞ゾーンの多成分療法を含んでいる。ある多成分療法は、繊維芽細胞の付着を容易にするため且つ成長因子および他の治療剤を送達するための、足場の形成を含んでいる。加えて、該足場を形成するミクロ粒子による血管新生因子の持続的な放出によって、新たな毛細血管の内部伸長(in-growth)が促進される。そのような治療剤は、2ケ月以下のあいだ放出されてもよい。この技術は、生存可能な組織の再生に最大の恩恵を提供するであろう。
【0008】
もう一つの態様において、別な梗塞ゾーンの多成分治療は、細胞増殖を容易にし且つMI後のリモデリング事象を阻止するマトリックスを提供する足場系を導入する。加えて、当該治療には、当該組織の再酸素添加を増強する過フッ化化合物が含まれる。
もう一つの態様において、梗塞領域に迅速に浸透する血液は、凝固させられてもよい。例えばフィブリン糊のような種々の薬剤による血液の凝固は、塊を生じるであろう。この凝固もまた、壁の補強と薄化過程の防止とを提供するであろう。この凝固による薄化過程の介入は、MI後4時間以内に起こされなければならないが、梗塞ゾーンの初期の構造的補強を提供するであろう。
もう一つの態様では、心室内の部位に溶液が送達される。該溶液は、当該領域の補強のために、ある領域において沈殿し得る薬剤を含んでいる。別の溶液は1又は2以上の薬剤を含み、その薬剤は心室内のある領域に送達されて当該領域に残留するが、一方、その支持溶液は周囲の組織の中に分散する。
一つの態様において、提案される治療は、梗塞の後、如何なるときに行ってもよい。もう一つの態様において、提案される治療は、MI事象後数週間以内に(または、心筋細胞の置換に先立って)行ってもよい。もう一つの態様において、提案される治療はMI事象後2週間以内に生じてよい。
更なる態様においては、キットが開示される。このようなキットの一例は、治療域に導入されるとゲルを形成する特性を有する、注射組成物を含むキットである。このゲルは、1または2以上の環境的変化に起因して形成されてもよく、あるいは1または2以上の内部成分に対する応答に起因して形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aは縦方向に切断された、健康な動脈およびその中の血流を図示している。図1Bは縦方向に切断された、引裂きまたは攣縮により損傷を受けた動脈を図示している。図1Cは縦方向に切断された、脂肪およびコレステロールの集積により閉塞された動脈を図示している。
【図2】図2Aは心臓への血液および酸素の流れの制限を生じ得る、動脈内のプラーク集積を図示している。図2BはMIを導く動脈内プラーク集積の結果としての、心臓への損傷を図示している。
【図3A】正常な動脈を図示している。
【図3B】MIを導く可能性のある動脈硬化(50%閉塞)を伴った動脈を図示している。
【図3C】正常な心筋を図示している。
【図3D】初期の急性心筋梗塞における心筋の一例を図示している。
【図3E】初期の心筋梗塞における心筋の一例を図示しており、そこでの心筋は増大する横紋喪失を示す。
【図3F】急性心筋梗塞における心筋、並びに横紋および核の喪失の一例を図示している。
【図3G】好中球浸潤および壊死をもたらす、急性心筋梗塞における心筋の一例を図示している。
【図3H】心筋梗塞が生じて約1週間後の、急性心筋梗塞における心筋の一例を図示している。毛細血管、繊維芽細胞およびマクロファージがヘモシデリンで満たされている。
【図3I】心筋梗塞の2週間後の心筋の一例を図示している。多くのコラーゲンが損傷部位に沈着されている。
【図3J】心筋梗塞の数週間後の心筋の一例を図示している。多くの生存心筋細胞が肥厚しているように見え、それらの核は暗い色である。介入性の繊維症も観察される。
【図4】梗塞領域への繊維芽細胞の保持および補充、膨潤可能な補強材料の送達、および/または追加のトロポエラスチンの導入を介して、梗塞領域のリモデリングを再構成するための種々の方法を図示している。
【図5】図5A〜図5Eは、梗塞ゾーンへの繊維芽細胞促進剤の導入、および構造的足場の形成を図示している。
【図6】梗塞領域を構造的に補強するための多成分法を示している。
【図7】梗塞領域を構造的に補強するため、および/または梗塞領域の酸素添加を容易にするための、多成分法を図示している。
【図8】図7における第一および第二の成分の一般的構造を示している。
【図9】図9A〜図9Fは、例えば図6および/または図7の梗塞領域に対する構造的補強のための、多成分法の導入および作用を図示している。
【図10】図7および図8に図示した態様の、少なくとも二つの成分により形成されたエステル結合を図示している。
【図11】図11A〜図11Fは、膨潤性ミクロ粒子の形態での、梗塞ゾーンへの構造的補強の導入を図示している。
【図12】梗塞領域に導入し得る幾つかの可能な構造補強剤のフローチャートを図示している。
【図13】可能な二成分系を開示した図12における1240の拡張を図示している。
【図14】図13のフローチャートに示された方法の、梗塞領域への導入および作用を図示している。
【図15】ある領域を嵩高くすることにより、梗塞ゾーンを構造的に補強するための二つの可能な方法を図示している。
【図16】梗塞領域を構造的に補強し得る嵩増加剤(バルキング剤)の例を図示している。
【図17】梗塞ゾーンにおけるコラーゲンの架橋による安定化を図示している。
【図18】梗塞領域におけるコラーゲンを架橋し得る種々の物質を図示している。
【図19】MI後の梗塞領域において、血液を凝固させる種々の態様を示している。
【図20】感光性成分を使用して、梗塞領域を補強する種々の方法を示している。
【図21】図21A〜図21Eは、梗塞領域への、図20の光重合性成分を使用した態様の導入を示す断面図を示している。
【図22A】光源および少なくとも一つの成分ルーメンを有するカテーテル装置の縦方向の図を示している。
【図22B】光源および少なくとも一つの成分ルーメンを有するカテーテル装置の横断面図を示している。
【図23】梗塞領域を補強し、および/または梗塞領域に酸素を再添加する多成分法の一例を図示している。
【図24A】第二の成分の前に一つの成分を送達するための、二つの送達ポートおよび制御機構を有するカテーテル装置の縦方向の図を示している。
【図24B】二つの送達ポートを備えたカテーテル装置の先端の正面図を示している。
【図24C】カテーテル装置の先端を示しており、ここでは一つの送達ポートが延出されるのに対して、第二のポートはカテーテルのハウジングに閉じ込められ得る。
【図25】図25A〜図25Dは、引込み可能な二重送達ポートを備えたカテーテルを使用することによる、心室の梗塞領域への二つの別々の成分の導入、および梗塞領域における構造的補強組成物の形成を図示している。
【図26】引込み可能な二重送達ポートを備えたカテーテルを使用することにより、一つの成分は静脈を通して、また第二の成分は動脈を通して導入することを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
「容器」−カートン、カン、バイアル、チューブ、ボトル、またはジャーなど、その中で物質が保存または担持される、容器(貯蔵所)。
「心筋細胞様の」−心筋細胞に変換され得る細胞、または心筋細胞の様に機能できる細胞若しくは構成成分。
「ポリマー形成性」−単独または組合せてゼラチン様材料を形成できる、いずれかの薬剤または薬剤類。
「送達デバイス」−溶液、粉末、濃縮物、単一の試薬および/または複数の試薬を堆積させ得る、装置またはシステム。
「繊維芽細胞促進(pro-fibroblastic)」剤−繊維芽細胞の維持、繊維芽細胞の増殖の誘導、および/または繊維芽細胞の補充を行うことのできる1又は2以上の化合物。
「コンプライアンス」−血管または心腔が、圧力の変化に応答してその容積を変化させる能力は、重要な生理学的意味を有する。物理的に言えば、容積の変化(DV)と圧力の変化(DP)との間の関係がコンプライアンス(C)と称され、このときCはΔV/ΔP(C=ΔV/ΔP)である。従って、コンプライアンスは、与えられた圧力の変化が容積の変化を生じる容易さに関係する。生物組織において、DVとDPとの間の関係は直線的ではない。コンプライアンスは、容積および圧力を関連付ける直線の傾斜であり、これは高い容積および圧力では減少する。これを考察するための別のやり方は、心腔または血管壁の「剛性」が、高い容積および圧力では増大するということである。コンプライアンスの変化は、心腔および血管における重要な生理学的作用を有する。
【0011】
[発明の詳細な説明]
種々の態様を完全に詳細に述べるために、以下の節では幾つかの態様、例えばプロセス、組成物、装置および方法が説明される。しかし、当業者であれば、種々の態様の実施は、ここに概説する具体的な詳細の全部(または幾つかですら)を用いる必要がないことを明らかに理解するであろう。時には、種々の態様を不必要に覆い隠すことを防止するために、周知の方法または成分は、ここでの説明に挙げられていない。
心筋梗塞(MI)後に、心室を治療するための方法および組成物が開示される。一つの態様において、梗塞領域または梗塞損傷を有する心室のエリアは、単独でまたは他の療法と組合せて治療され得る。そのような治療の一つの利益は、対象範囲外の健康な心臓組織に対して僅かしか、または全く影響しないで、損傷領域を標的化し得ることである。加えて、そのような治療の別の利益は、当該治療が、正常なリモデリングおよび瘢痕形成手続に起因する損傷領域の機能喪失を防止して、梗塞領域を回復させ得ることである。もう一つの利益は、当該治療が心室のコンプライアンスを増大させ得ることである。更にもう一つの利益は、梗塞ゾーンにおける心室壁の薄化の低減である。次の記載では、心室の梗塞領域の構造的補強について説明する。大部分の心筋梗塞は左心室において起きるので、大部分の説明が左心室修復に向けられるであろう。しかし、右心室の治療も同様な様式で達成し得ることが理解できる。
梗塞領域のリモデリングが、瘢痕形成および心室壁の最終的な薄化の前に改変され得るならば、機能的組織は救われ得る。瘢痕形成の阻害および生存細胞の誘導再生は、薄化および肥大した心筋細胞の代りに、壁強度の増加およびコラーゲン沈着の減少をもたらす。更に、壁薄化の可能性を低減することおよび繊維芽細胞のような構造成分の流入を強化することは、現在のMIの治療、即ち、疾患ではなく症状を治療するために全身性薬物に継続的に露出することよりも、有益且つ好ましいであろう。もう一つの利点は、本明細書中の治療法の何れかは、心室のコンプライアンスの増大をもたらし得ることである。従って、本発明の治療法の何れか一つ以上の組合せは、梗塞領域の治癒と更なる合併症の予防との可能性を提供することができる。
【0012】
他の態様においては、キット(例えば、予め製造されたパッケージ)が開示される。適切なキットは、少なくとも一つの薬剤と、該薬剤を収容するルーメン(lumen)とを含む。該薬剤は、梗塞領域の弾性係数(引張り強度、「剛性」)を増大し、心室のコンプライアンスを増大し、および/またはリモデリングにより引き起こされる薄化を防止または低減する特性を有する。当該キットは、一例として、説明される方法に適している。
〔心臓のマッピング〕
本明細書に記載する方法のそれぞれでは、いずれか組込まれる方法の適用について、心臓の特定のエリアを標的とし得ることが理解され、従って、梗塞領域を標的化するのに使用できる先に説明した技術が存在することが理解される。梗塞ゾーンのような特定の領域を標的化する一例では、心臓のマッピングとして知られる技術(米国特許第6,447,504号明細書)を使用する。データは、心臓の中に進められる1又は2以上のカテーテルを使用することによって得られる。これらのカテーテルは、通常は、それらの遠位先端(distal tip)に電気的な位置センサを有している。カテーテルの幾つかは、三次元構造上に複数の電極を有しており、他のカテーテルは表面エリアに上に分布した複数の電極を有している。後者のカテーテルの一例は、互いに間隔を空けて平面内に置かれている、先端(distal end)部分の一連の外周上に分布したセンサ電極であってもよい。これらの技術は、心臓組織の電位、電気化学的マッピング、超音波マッピングを使用して幾つかの状況にある心臓の状態を特徴付けて、心臓の生存領域および非生存領域、例えば左心室および梗塞ゾーンを位置付けるための方法を提供する。加えて、超音波を使用すれば、超音波信号を分析してチャンネルの深さを決定することにより、例えば心臓組織の特徴を検知するようなプローブの近傍での心臓組織の厚さを決定できる。生存可能性マッピングとして知られている別の方法(例えばSPECT、MRI、PET)を使用してもよい。生存可能性マッピングは、虚血ではあるが未だ生存している心臓のエリア、並びに、梗塞により生存可能性を喪失してしまったエリアを特定するために使用することができる。これらのマップは、心臓組織を通る活性化信号の流れを示す電気生理学的データに基づいている。加えて、データは、生物医学的および/または機械的データ、例えば、心臓周期の心収縮段階と心拡張段階との間での心臓壁の厚さの変動であってもよい。また、マッピングにより心臓を分析するのに使用されるデータは、梗塞領域をより正確に位置付けて標的化するために、電気生理学的データおよび生物医学的データの組合せであってもよい。生存可能性マッピング装置がない場合、無活動領域または活動不足領域の位置を特定し得るLV血管造影法またはエコー法によって梗塞の位置を評価できることは理解されよう。
【0013】
〔送達システム〕
本発明の態様の何れか一つまたは複数の成分を梗塞領域エリアに送達するために、何れか1または2以上のカテーテルを使用してもよい。薬剤を心臓内の損傷領域、例えば梗塞領域に正確に送達するために、幾つかのカテーテルが設計されている。これらカテーテルの幾つかは既に記載されている(米国特許第6,102,926号、同第6,120,520号、同第6,251,104号、同第6,309,370号、同第6432,119号、同第6,485,481号)。これらの送達デバイスは、心臓内で位置決めするためのセンサと、所望の薬剤および量を位置センサの部位で投与する送達手段とを含む心臓内薬物投与のための装置(apparatus)を含んでいてもよい。この装置は、例えば、血管を行き来することができるカテーテル本体と、該カテーテル本体に連結されており且つ基部壁(proximal wall)を有するバルーンを備えた拡張可能なバルーンアセンブリーとを含んでいてもよい。カテーテル本体内には、ニードルが配置されていてもよく、またニードルを中に通して前進させるのに適した直径を有するルーメンを含んでいてもよい。ニードル本体は、バルーンの基部壁に連結された末端を含む。装置はまた、カテーテル本体内に配置されている撮像体を含んでおり、また撮像デバイスの一部を中に通して前進させるのに適した直径を有するルーメンを含んでいる。該装置は更に、心室内における梗塞領域の撮像信号を発生させるように適合された、前記撮像体内に配置された撮像デバイスの一部を含んでいる。このような機器は、治療剤を所望の治療部位に正確に導入するのに適し得る。
【0014】
もう一つの態様において、心室(例えば梗塞領域)に薬剤を送達するために使用される針カテーテルは、ニードル挿入の侵入深度(penetration depth)および位置をマッピングするためのフィードバックセンサを含むように構成されてもよい。フィードバックセンサの使用は、注射位置を正確に標的化するという利点を提供する。投与される薬剤の種類に応じて、該薬剤を送達するための標的位置は変動してもよい。例えば、ある薬剤が梗塞領域内において複数回の少量の注射を必要とし、その注射は2回以上同じ部位を貫通することがない場合もある。
他の態様において、カテーテルアセンブリーは操作し易い器具を含んでもよい。このカテーテルアセンブリーには、可撓性アセンブリーが含まれる。該カテーテルアセンブリーは、撓めることができ(deflectable)てもよく、また第一のカテーテル、第二のカテーテルおよび第三のカテーテルを含んでよい。第二のカテーテルは、第一のカテーテル内に同軸的に嵌合される。第一のカテーテルおよび第二のカテーテルの少なくとも一方は撓めることができる部分を含んで、そのカテーテルの第一の位置から第二の位置への撓みを可能にし、また第一のカテーテルおよび第二のカテーテルの他方は、予め形作られた部分(例えば、角をなす部分の二つのセグメントによって形成される屈曲部分)を含んでいる。第三のカテーテルは、鞘および該鞘内に配置される医療器具を有している。この第三のカテーテルは、第二のカテーテル内に同軸的に嵌合される。もう一つの実施例では、ドーナツ型バルーンのようなスタビライザが、第三のカテーテルの末端部分に連結される。各カテーテルは、他のカテーテルに対して、縦方向および半径方向に自由に移動できる。該カテーテルアセンブリーは、細胞療法のために使用される細胞、繊維芽細胞を維持するための1以上の成長因子、遺伝子療法のための遺伝子を含むベクターのような生物薬剤(bioagent)を、左心室に局部送達するために使用できるが、これだけに限定されるものではない。一つの態様において、記載するカテーテルアセンブリーは、心不全のための細胞療法を送達する際に、または虚血状態にある心臓の1または2以上の部分を治療するために使用してよい。該カテーテルアセンブリーは、左心室のような身体器官内の異なる標的位置に医療機器を位置付けるために、同軸的に伸縮自在の望遠鏡式の複数のカテーテル(その少なくとも1以上が撓めることができる)を使用する。該カテーテルアセンブリーは、身体器官の輪郭に従って曲がるように充分に可撓性であってよい。このカテーテルアセンブリーは、該カテーテルアセンブリーが、医療処置が必要とすることに従って設定された角度を達成し得る点において可撓性であればよい。該カテーテルアセンブリーは、角度変化において幾らか可撓性であるだけでなく、三つの座標系において、カテーテルアセンブリーの第二のカテーテルの動作部分に対するオペレータのより大きな制御を可能にし、また第三のカテーテルの遠位先端が数多くの位置に選択的且つ制御可能に配置されることを可能にするように移動する。或いは、前記撓めることができる部分が第二のカテーテル上にあってもよく、また前記予め形作られた部分が第一のカテーテル上にあってもよいことが理解されるであろう。
【0015】
更なる態様においては、一つの装置が開示される。一態様において、該装置は、第一の環状部材(該第一の環状部材の長さ回りに(about a length)配置された第一のルーメンを有する)と、該第一の環状部材に結合された第二の環状部材(該第二の環状部材の長さ回りに配置された第二のルーメンを有する)とを含んでおり、総体的に、前記第一の環状部材および第二の環状部材は、哺乳動物の身体内における治療部位に配置するために適した直径を有する。典型的には、第一の環状部材および第二の環状部材の先端は、互いに、第一の環状部材および第二の環状部材のそれぞれを通して導入される治療剤の混合を可能にするように配置されて、治療部位で治療剤を併用することを可能にする。このような装置は、多成分ゲル材料(例えば、それぞれの環状部材を通る個々の成分が心室の梗塞領域内で生分解性ゲルを形成する)を送達するために特に適している。
【0016】
本明細書に記載する態様では、物質送達設備と物質を送達するための方法とが開示される。該送達設備および方法は、治療剤組成物(複数の治療剤を含み得る、および/または徐放性組成物であり得る)がニードル送達を介して哺乳動物ホスト内の治療部位へと導入される局部的薬物送達に特に適しているが、これに限定されるものではない。治療剤組成物のキットもまた開示される。送達設備の適切な用途の一つは、ニードル送達系を含むカテーテル設備の用途である。適切な治療法としては、動脈再狭窄の治療、治療的血管新生、または癌治療の薬物/薬剤の送達が挙げられるが、これらに限定されない。
他の態様においては、例えば約2mL〜約250mLといった、静脈内逆注入、動脈内注入および針カテーテルシステム(Invigor)並びに剣状突起下(subxyphoid)アプローチのような何れか1以上の送達デバイスを必要とし得る幅広い用量の治療剤を考慮することができる。
【0017】
本明細書に記載される種々の装置類(設備)および方法は、開心術(例えば冠動脈バイパス移植(CABG))などのような、心臓のエリアが治療的血管新生に効果を挙げるために例えば成長因子で治療される外科的手術の際に、独立型(stand-alone)注入ニードル/カテーテルとして使用することができ、または経皮経管腔冠動脈形成術(PTCA)で一般的に使用される位置にアクセスするための、カテーテルをベースとするシステムに組込まれていてもよい。これらの装置類(設備)および方法は、癌関連手術(例えば脳、腹部、または大腸の癌の形成術又は外科手術)のような他の外科手術においても同様に使用されてよい。加えて、本明細書に記載する種々の装置類(設備)および方法は、特定の薬物または成長因子を組織に送達するために一般には最小侵襲を必要とする、種々のカテーテル関連手術または内視鏡手術と組合せて使用することができる。このような手術には、関節(例えば膝)の関節鏡手術、腹部の腹腔鏡手術、および胸部損傷に関連する胸腔鏡手術または治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
何等かの治療剤組成物を導入する場合の関心事の一つは、治療的血管新生に効果を挙げるために血管に隣接するか、腫瘍増殖を阻害するために腫瘍に隣接するか、または関節鏡手術におけるコラーゲン増殖を誘導もしくは刺激するかにかかわらず、所望の治療期間(またはその治療期間の一部)の間、該組成物が治療部位にとどまるかということである。このような方法では、正確な投与量を治療部位に配置することができ、該治療剤が消失し、恐らくは深刻な結果を伴うという懸念は低い。一つの態様においては、治療剤を治療部位(注射部位)に保持するための組成物および技術が記載される。一つの態様においては、治療剤および生分解性ゲルまたは非生分解性ゲルもしくは粒子が、治療部位(注射部位)に導入されてもよい。ゲルまたは粒子は、治療剤の前もしくは後、または治療剤と同時に導入されてもよい。好ましい態様において、当該ゲルまたは粒子は、代表的には、治療部位をシールすることまたは治療剤を治療部位にシールすることによって、治療剤を治療部位に保持するように働く。治療剤と共にゲルもしくは粒子を使用することは、治療剤の注射部位からの逆流量を低減することができ、また治療部位における治療剤の添加(load)要求量を低減することができる。例えば、ゲルまたは粒子のような生分解性生成物は局部圧力を減少させ、それによって、更に逆流の低減をもたらし得る。非生分解性生成物も、局部圧力を減少させて、より永続的な方法で逆流を低減することができ、同時にコンプライアンスの増大をもたらし得る。
【0019】
上で述べた技術を使用して、造影剤補助(contrast-assisted)蛍光スコープのような画像診断療法が加えられてよく、これは、心臓病専門医が、心腔内におけるカテーテル先端または他の器具の配置を観察することを可能にする。造影剤補助蛍光スコープは、心腔の中に注射され得る造影剤を利用して、当該エリアがスコープによる検査下で観察されるので、当該領域は、トポグラフィーが更に容易に観察され、更に容易に治療され得る(米国特許第6,385,476号、および同第6,368,285号)。適切な撮像技術には、超音波撮像、光学的撮像、および磁気共鳴撮像、例えばエコー、ECG、SPECT、MRI、血管造影図が含まれるが、これらに限定されない。従って、心臓のマッピングは、以下の態様において提案する技術と組み合わせて使用し得る一つの技術である。一つの態様においては、エコー血管造影法が行われて、梗塞領域の存在および位置を確認してもよい。もう一つの態様においては、Cat・Scanが行われて、MIが起きたことおよび該梗塞領域の位置を確認してもよい。もう一つの態様においては、EKGが行なわれて、梗塞の発生および位置を特定してもよい。
もう一つの態様において、当該方法は、徐放性組成物の形態の治療剤を導入することを含んでよい。一以上の薬剤を徐放する好ましい期間は、1〜12週間、好ましくは2〜8週間の期間である。徐放性薬剤を局部送達するための方法には、経皮デバイス、例えば心室内(冠血管)デバイスまたは血管内(冠血管および末梢血管)デバイスが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
〔A.繊維芽細胞の維持および補充用薬剤〕
1.薬剤
図4は、左心室の梗塞領域を治療する方法の一つの態様を説明している。これは、模式図を例示するだけであり、何れかの治療を平行して(例えば同時に)もしくは逐次的に使用してもよく、または如何なる療法の組合せで使用してもよい。図4に示した方法に従えば、心筋梗塞は、撮像プロセス、例えば磁気共鳴撮像、光学的撮像、または超音波撮像、例えばエコー、ECG、SPECT、MIR、血管造影図によって検出され得る(410)。次に、左心室のエリアが、周囲の繊維芽細胞の維持または補充によって補強される(420)。図4において、梗塞ゾーンの繊維芽細胞の占有を促進する一つの選択肢としては、梗塞ゾーンに送達される膨潤性材料(430)の使用が挙げられる。図4に要約される繊維芽細胞の梗塞ゾーンへの占有を促進するもう一つの方法(440)としては、トロポエラスチンを当該部位に送達することが挙げられる。繊維芽細胞の瘢痕領域中への注射は、末期的に損傷した心臓の構造的健全性を改善し得ることが、ウサギモデルにおいて示されている(Hutcheson et al. "Comparison of benefits on myocardial performance of cellular cardiomyoplasty with skeletal myoblasts and fibroblasts", Cell Transplant 2000 9 (3) 359-68参照)。繊維芽細胞は、治癒過程において当然に瘢痕に浸潤するから、梗塞領域内において繊維芽細胞を多数引寄せまたは繊維芽細胞の増殖を促進して、繊維芽細胞が当該領域に長期的にまたは永続的に残留するのを促すことは有益であろう。加えて、繊維芽細胞を梗塞領域に維持することの更なる利益は、非収縮性細胞から筋肉細胞への変換に影響を与えるような、繊維芽細胞の表現型を変換することであってもよい。この変換は、成長因子、例えばTGF−β1(トランスフォーミング成長因子β1)の存在下において促進される。従って、梗塞領域は、繊維芽細胞の維持および補充を促す薬剤で治療されてもよい。繊維芽細胞を改変または補充する適切な治療剤には、アンジオテンシンII、繊維芽細胞成長因子(FGF塩基性および酸性)、インスリン成長因子(IGF)、TGF-βのアイソフォームの何れも、血管内皮成長因子(VEGF)のアイソフォームの何れも、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、血小板由来の成長因子-BB(PDGF-BB)、アンジオゲニン、アンジオポエチン-1、Del-1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、プレイオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)、血管透過性因子(VPF)、LIH(白血病阻害因子)、これらのタンパク質をコードする遺伝子、これらのタンパク質の遺伝子を有するトランスフェクトされた細胞、補充特性を有する小分子およびプロタンパク質も含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
一つの態様において、塩基性繊維芽細胞成長因子は、記載された方法の少なくとも一つによって梗塞領域に導入されてよい。一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜1mLの容量にて1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載された薬剤も、約1μL〜300μLの容量にて1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜100μLの容量にて1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様では、記載された何れかの薬剤が、約1μL〜50μLの容量にて1又は2回以上の投与で導入され得る。
別の態様において、処置容量はもっと大きくてよい(例えば、静脈加圧潅流(IV)経路)。前記容量は、約2mL〜約250mLに亘ってよい。或いは、前記容量は、約2mL〜約100mLに亘ってよい。他の態様において、前記容量は、約2mL〜約30mLに亘ってよい。
2.治療の順序
図4は、繊維芽細胞を維持および補充することによってMIを治療するためのプロセスのフローチャートを示している。図5A〜図5Eは、繊維芽細胞の維持および補充の導入および作用を示している。急性の心筋壊死の検出は、ECG(心電図)を使用して行われてもよく、またはもっと現代的な技術によって行われてもよい。例えば、ピロリン酸99mテクネチウムまたは111In抗ミオシン抗体撮像のような技術が、最近になって米国食品医薬品局により承認された。これら二つの両トレーサーを用いると、急性梗塞の後24〜48時間でのみ結果が得られ、従って、これら技術の臨床的有用性は限定されている。グルクロン酸99mTcと呼ばれるもう一つの新しい薬剤が存在し、これは急性心筋梗塞後1時間以内に結果を出す(Iskandrian, AS, Verani MS, Nuclear Cardiac Imaging: Principles and Applications, Philadelphia, F. A. Davis1996)。MIが検出されたら、磁気共鳴撮像を使用して梗塞の正確な位置を特定し、次いで補強剤(501)によって心室梗塞領域を治療すればよい。薬剤(520)(例えばトロポエラスチン)が梗塞領域(510)に導入される。一つの方法において、該薬剤は、カテーテルを使用して経皮的に当該エリアに導入されてよい。カテーテルの先端は、梗塞ゾーン(530,540または550)へと進められ、薬剤(520)が放出される。次いで、繊維芽細胞(560)が当該部位に補充され、または維持される(570)。図5Eは、梗塞エリアの繊維芽細胞による補強を図示している。
【0022】
3.幾つかの利用可能な治療剤および送達の説明
a.トロポエラスチン
図5A〜5Eは、繊維芽細胞の維持および梗塞領域への移動の促進と、例えばトロポエラスチン(520)の添加との組合せについて説明している。エラスチンは、非常に柔軟な細胞外タンパク質である。in vivoでは、エラスチンは通常、架橋された不溶性の状態にある。トロポエラスチンと称される直線状の架橋されていない可溶性前駆体が利用可能である。トロポエラスチン(520)は組換え法によって生産することができ、商業的に入手可能である。トロポエラスチンは約70kDaのタンパク質であり、交互の疎水性領域(弾性の原因)および架橋ドメインからなっている。加えて、それは親水性のカルボキシ末端配列で終端しており、該配列は二つだけのシステイン残基を含んでいる。トロポエラスチンは、幼児の皮膚に顕著なタンパク質であり、成人ではこのタンパク質が作られる量は次第に少なくなる。トロポエラスチンは、心臓損傷に続いて血流中に放出されるので、ときにはMIのような幾つかの心臓症状の重要なマーカーとして使用される。細菌系での組換えトロポエラスチンの生産は、トロポエラスチンの入手可能性を非常に容易にした。加えて、それはヒト・トロポエラスチンを得るための価値ある手段を提供する。ヒト大動脈からの精製は、組織抽出法と比較して大きく単純化されたが、得られる収率は比較的低かった。大動脈からの精製は、ポリペプチドの分解の可能性を提示した。最近、ヒト・トロポエラスチンcDNAもまた、インフルエンザNS1タンパク質との融合体として細菌中で発現されている(Indik, Z., Abrams, W. R., Kucich, U., Gibson, C. W., Mecham, R. P. and Rosenbloom, J. (1990) Production of recombinant human tropoelastin: characterization and demonstration of immunologic and chemotactic activity Arch. Biochem. Biophys. 280,80-86)。トロポエラスチンのこのアイソフォーム(エキソン26Aおよびシグナルペプチドを含む)は、研究のために得られるヒト・トロポエラスチンの最初の形態であった。トロポエラスチンの極端なアミノ酸使用を考慮して、E.coliでの発現を最適化するように設計されたコドンを含む、合成ヒト・トロポエラスチン遺伝子が構築された(Martin, S. L., Vrhovski, B. and Weiss, A. S. (1995) Total synthesis and expression in Escherichia coli of a gene encoding human tropoelastin Gene 154,159-166)。この合成遺伝子は、グルタチオンSトランスフェラーゼとの融合体としても、直接に成熟ポリペプチドとしても、何れも可溶性形態で高レベルに発現される。或いは、アルコール可溶化を使用し且つ臭化シアン(CNBr)処理の必要性を無くした単純化精製スキームは、顕著に高い収率をもたらした。従って、精製されたまたは遺伝子的に操作されたトロポエラスチンが入手可能である。組換え型のトロポエラスチンは、組織由来のトロポエラスチンに対する価値ある代替物であることが証明されている。組換えトロポエラスチンはエラスチン抗体と反応し、化学走性物質であり、コアセルベーション能力を示し、天然に存在するトロポエラスチンに類似した幾つかの特性(例えば、円二色性)を有する。
一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜1mLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜300μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜100μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様において、記載された何れかの薬剤が、約1μL〜50μLの容量において1又は2回以上の投与で導入され得る。
【0023】
b.ミクロ粒子および成長因子の送達
記載した方法に適した組成物の一つの態様は、上で述べた1又は2以上の成長因子を内包する生分解性ミクロ粒子の使用を含んでいる。生分解性ミクロ粒子は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のような生分解性ポリマーからなっていてよい。この生分解性ポリマーの組成物は、1〜2週間にわたって成長因子を放出するように制御される。生分解性ミクロ粒子、例えばポリ(ラクチド−コ−グリコリド)がオリゴヌクレオチドを制御放出できることは、既に示されている。前記ミクロ粒子は、多重エマルジョン−溶媒蒸発技術によって調製された。ポリヌクレオチドのミクロ粒子中への取込みを増大させるために、ポリエチレンイミン(PEI)が生分解性ミクロ粒子に加えられた。PEIは、前記ミクロ粒子をより多孔質にする傾向もあり、従って、該粒子からのオリゴヌクレオチドの送達を容易にする(De Rosa et al. "Biodegradable microparticles for the controlled delivery of oligonucleotides", lnt. J. Pharm. 2002 Aug 21;242 (1-2): 225を参照されたい)。組成物の一つの好ましい態様において、生分解性ミクロ粒子は、カルボン酸末端基を有するPLGAポリマー50:50であってよい。PLGAは、薬物(即ち、抗前立腺癌剤のような抗癌薬)の制御放出および医療用インプラント材料にしばしば使用されるベースポリマーである。制御放出用の一般的な二つの送達形態としては、マイクロカプセルおよびミクロ粒子(例えばミクロスフィア)が挙げられる。ポリマーおよび薬剤が混合され、通常は加熱されて、対象部位に送達される前にミクロ粒子が形成される(Mitsui Chemicals, Inc.)。ミクロ粒子が分解するときに(560)、梗塞領域にミクロ粒子組成物の多孔質ネットワークが形成され(570)、制御された孔サイズを持ったマトリックスを生じる(580)。多孔質ネットワークが形成されるときに、少なくとも一つの血管新生因子および/または繊維芽細胞促進因子が放出されて、新たな毛細血管の内殖を促進する。一つの態様において、生分解性ポリマーは、成長因子TGF−β1を内包している。一つの態様において、緩やかな放出のために、カルボン酸末端基を有するPLGAポリマー50:50がTGF−β1を内包している。各ミクロ粒子は、その内容物の少なくとも20%、より好ましくはその内容物の約90%を放出し得るのが好ましい。一つの態様において、少なくとも一つの血管新生および/または繊維芽細胞促進剤を内包するミクロ粒子は、緩やかに分解してこれら因子をゆっくり時間をかけて放出するか、または当該部位に繊維芽細胞を迅速に補充するために、梗塞領域と接触したときに直ちにこれら因子を放出するであろう。もう一つの態様において、該ミクロ粒子は、制御放出ミクロ粒子と即時放出ミクロ粒子との組合せであってよい。送達された因子の好ましい沈着速度は、治療を受けている患者の状態に依存して変化するであろう。
【0024】
記載した方法に適した組成物のもう一つの態様は、1又は2以上の上述した成長因子を内包できる非生分解性ミクロ粒子の使用を含む。成長因子は、制御放出または迅速放出によって、前記ミクロ粒子から放出されてよい。前記ミクロ粒子は、梗塞領域に直接的に配置されてよい。当該粒子を梗塞領域に直接配置することによって、それらは補強のための領域にバルクを提供することができる。この非生分解性ミクロ粒子は、アクリルをベースとするミクロ粒子、例えばトリスアクリルミクロスフェア(Biosphere Medicalにより提供される)のような非生分解性ポリマーからなっていてよい。一つの態様において、非生分解性ミクロ粒子は、単独で使用されてもよく、或いは繊維芽細胞を補充しおよび/または繊維芽細胞の増殖を刺激する薬剤と組合せて使用されてもよい。加えて、非生分解性ミクロ粒子は、心室のコンプライアンスを増大し且つ心室の梗塞領域に繊維芽細胞を補充するために使用されてよい。
一つの態様において、梗塞ゾーンの補強に適する本発明の治療剤組成物は、当該粒子組成物に対するオプソニンタンパク質の吸収を阻害することによって、食作用に対して抵抗性にされる。この点に関して、徐放担体を含む治療剤組成物は、約10マイクロメートルまでの平均直径を有する粒子を含むことが考えられる。他の状況において、粒子サイズは約1mm〜約200mmに亘ってよい。一定の場合には、マクロファージの欲求不満を回避し、また治療部位における慢性炎症を回避するために、より大きなサイズの粒子を考えてもよい。必要なときには、治療部位へのマクロファージ流入による慢性炎症を回避するために、本発明の態様の何れかについて、200mmまでの粒子サイズが考慮されて、心室内カテーテルまたは逆行性静脈カテーテルを介して導入されてもよい。
【0025】
治療剤のオプソニン化およびそれに続く迅速な食作用を阻止する一つの方法は、キャリア(例えば徐放性キャリア)と共に配置された治療剤を含有する組成物を形成し、該キャリアをオプソニン阻害剤でコーティングすることである。一つの適切なオプソニン阻害剤としてはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられ、これはオプソニン作用に対するブラシ様の立体的バリアを形成する。或いは、PEGはキャリアを構成するポリマーの中に混合されてもよく、またはキャリアを構成するポリマーの分子構造の中に組み込まれて、共重合体をなし、キャリアを食作用に対して抵抗性にしてもよい。オプソニン阻害化ミクロ粒子を調製する例としては、以下のものが挙げられる。
封入ポリマーについては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレン−1,2−グリコールまたはポリプロピレン−1,3−グリコールのようなポリアルキレングリコールのブレンドが、キャリア形成プロセスの間に、封入ポリマーと共に一般的な有機溶媒中に共溶解される。PEG/封入ポリマーブレンド中のPEGのパーセンテージは、5質量パーセント〜60質量パーセントである。ポリアルキレングリコールの代りにポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体のような他の親水性ポリマーを使用することができるが、一般には、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールが好ましい。
或いは、封入ポリマー、例えばポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とポリアルキレングリコールとのジブロック共重合体またはトリブロック共重合体が調製されてもよい。ジブロック共重合体は、(i)封入ポリマーを、1つの保護されたヒドロキシ基および封入ポリマーと反応できる1つの基を有するPEGのようなモノメトキシポリアルキレングリコールと反応させることにより、(ii)封入ポリマーを、1つの保護されたヒドロキシ基および封入ポリマーと反応できる1つの基を有するPEGのようなモノメトキシポリアルキレングリコール上で重合させることにより、または(iii)封入ポリマーを、アミノ官能性末端を有するPEGのようなポリアルキレングリコールと反応させることにより、調製することができる。トリブロック共重合体は、反応させない基を保護した分岐ポリアルキレングリコールを使用して、上述するように調製することができる。オプソニン化抵抗性のキャリア(ミクロ粒子/ナノ粒子)は、上述する技術を使用して、これら共重合体で徐放性キャリア(ミクロ粒子/ナノ粒子)を形成して、調製することができる。
【0026】
オプソニン作用を阻害する第二の方法は、生体模倣的アプローチである。例えば、「糖衣」として知られている細胞膜の外側領域は、他の分子および細胞の非特異的付着を妨げるグリコシル化された分子が多数を占める。表面活性剤ポリマーは、可撓性ポリ(ビニルアミン)骨格と、該ポリマー骨格を基体に平行に横たえるように拘束するランダムなデキストランおよびアルカノイル(ヘキサノイルまたはラウロイル)側鎖からなっている。水和したデキストラン側鎖は水相の中に突出し、糖衣様の単層コーティングを形成するが、これは外来体の表面上への血漿タンパク質の沈着を抑制する。糖衣を模倣するために、糖衣様分子は、キャリア(たとえばナノ粒子またはミクロ粒子)をコーティングすることができ、またはキャリアを構成するポリマーの中にブレンドされて、治療剤をオプソニン化に対して抵抗性にすることができる。別の生体模倣的アプローチは、ホスホリルコリン(ホスファチジルコリンの合成疑似体)で、キャリアをコーティングし、またはキャリアを構成するポリマー中にブレンドすることである。
【0027】
カテーテル送達のために、治療剤を含有するキャリア(例えばナノ粒子またはミクロ粒子の形態の組成物)は、ニードルを通して送達するための液体中に、約1%重量〜約20重量%の濃度で懸濁させてよい。一つの態様において、キャリア中への治療剤の添加量は、当該組成物の約0.5重量%〜約30重量%である。タンパク質または低分子治療剤と共に、組織内に注射したときに当該キャリア中の治療剤の生物学的半減期を延長させる安定剤を、同時封入することができ得る。この安定剤はまた、封入の際の安定性を付与するために治療剤に添加されてもよい。PEGのような親水性ポリマー、または生体模倣的ブラシ様デキストラン構造体、またはホスホリルコリンがキャリア表面にコーティングされ、キャリア表面にグラフトされ、キャリアを構成するポリマー中にブレンドされ、またはキャリアを構成するポリマーの分子構造の中に組込まれて、標的組織部位へ注射するに際して、キャリアを食作用に対して抵抗性にする。
何れか1以上のカテーテルを使用して、当該態様の何れか1または複数の成分を当該梗塞領域へ送達してよい。心臓内の損傷領域、例えば梗塞領域へと薬剤を正確に送達するために、幾つかのカテーテルが設計されて来た。これらカテーテルの幾つかが既に記載されている(米国特許第6,309,370号;同第6,432,119号;同第6,485,481号)。この送達デバイスは、心臓内薬物投与のための装置(心臓内での位置決めのためのセンサ、該位置センサの部位で所望の薬剤を所望の量で投与するための送達デバイスを含む)を含んでよい。
【0028】
〔血管新生〕
MIの後、梗塞組織ならびに境界ゾーンおよび遠隔ゾーンが、リモデリングを開始する。肉芽形成がコラーゲンで置換されて、瘢痕の薄化および伸展を生じるにつれて、梗塞領域内に瘢痕組織が形成される。この領域における灌流は、典型的には健康なゾーンの10%であり、活性な毛細血管の数を減少させる。毛細血管の数を増加することは、血液を充満させることにより、心室のコンプライアンスの増大を導くことができる。梗塞領域への血流を増大させることの他の利点は、幹細胞を循環させて、梗塞領域内で播種および増殖させるための経路を提供することである。血管新生はまた、梗塞領域内の生存している細胞の島のための増大した酸素供給を導き、またはそれに続く心筋再生のための細胞移植のために、当該梗塞領域をプライミングすることができる。境界ゾーンにおいても、生存細胞は、血管新生過程による血液供給の増大から利益を得るであろう。心臓細胞が肥厚しやすく且つある種の介入型繊維症で囲まれ易い遠隔ゾーンにおいては、細胞が酸素を受取る能力(従って完全な能力で機能する能力)が損なわれる;従って、血管新生はこれらの領域においても同様に有益であろう。一つの態様において、血管新生は、血管新生促進因子の送達を介して、心臓の何れの領域(梗塞、境界または遠隔領域)においても刺激される。これらの因子の例には、VEGFのアイソフォーム類(例えばVEGF121)、FGF(例えば b−FGF)、Del1、HIF1−α(低酸素症誘導因子)、PR39、MCP−1(単球走化性タンパク質)、ニコチン、PDGF(血小板由来成長因子)、IGF(インスリン成長因子)、TGFα(トランスフォーミング成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)、エストロゲン、フォリスタチン(Follistatin)、プロリファリン(Proliferin)、プロスタグランジンE1,E2、TNF-α(腫瘍壊死因子)、Il−8(インターロイキン8)、造血成長因子、エリスロポエチン、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、PD-ECGF(血小板由来内皮成長因子)、アンジオゲニンが含まれるが、これらに限定されない。他の態様において、これらの因子は、本出願に記載した何れかのゲル成分またはマイクロ粒子成分を用いて、独立な因子として、または他の因子もしくは適切な遺伝子ベクターと組合せて、徐放型製剤で供給されてもよい。
【0029】
c.ミクロ粒子ならびに血管新生材および繊維芽細胞促進剤: ミクロ粒子は、血管新生および/または繊維芽細胞促進剤を内包したミクロ粒子として調製されてよい。他方、該ミクロ粒子を調製し、次いで梗塞領域への導入に先立って、例えば拡散により、血管新生および/または繊維芽細胞促進剤をミクロ粒子中に導入してもよい。後者の例においては、ミクロ粒子を当該因子でコーティングしてもよく、これが梗塞領域に導入されると、該因子は直ちに繊維芽細胞を当該エリアに補充する。加えて、当該ミクロ粒子/因子の組成物は、上記で述べた治療剤の如何なる組合せからなっていてもよい。他の態様においては、血管新生剤または繊維芽細胞促進剤の分解を防止するための少なくとも一つの薬学的に許容可能な阻害剤を、当該ミクロ粒子に加えることが必要としてもよい。
d.ミクロ粒子成分: 図4は、梗塞領域を構造的に補強する方法を説明している。この方法は、血管新生剤および/または繊維芽細胞補充剤(例えば成長因子)を梗塞領域に補充して、このゾーンへの繊維芽細胞の移動を維持および/または促進することを記載している何れかの方法と組み合わされてよい。液体を取込むことができるミクロ粒子が梗塞領域に導入できる。これらのミクロ粒子の例には、膨潤性の非生物学的粒子または合成した生物学的粒子が含まれる。該ミクロ粒子は梗塞ゾーンに導入されて、組織内にトラップされるに至る。該ミクロ粒子は直ちに膨潤を開始する傾向にある。膨潤されたミクロ粒子は該組織中に留まったまま残り、心室壁に対する補強を提供し、また薄化している梗塞領域に対して厚みを加える。
梗塞ゾーンの寸法は、梗塞領域に導入されるミクロ粒子のサイズ範囲およびミクロ粒子の数を決定し得る。このことは、最適な水和後ミクロ粒子塊が達成されることを保証するであろう。一つの態様は、約200μm以下の直径のミクロ粒子に関する。もう一つの態様において、該ミクロ粒子は直径が約20μm以下であってよい。好ましい態様において、該粒子サイズは約5〜10μmの直径であってよい。約20μm以下の粒子はまた、オプソニン化阻害剤(先に述べたもの)を含んでもよい。この膨潤可能なミクロ粒子は、梗塞領域に導入される寸法範囲であってよい。一つの態様において、この膨潤性の非生物学的材料が、ヒドロゲルミクロスフェア材料であってもよい。これらのミクロ粒子は商業的に入手可能である(A. P. Pharma、またはBioSphere Medical)。これらのミクロ粒子は非特異的吸収に対して抵抗性であり、且つ生体安定性である。
【0030】
他の態様において、ヒドロゲルは、心筋梗塞のための治療剤として使用されてよい。ヒドロゲルの例は、高分子量ポリアクリルアミドまたは高分子量ポリビニルピロリドン(PVP)である。典型的には、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメチルアクリレート、またはビスアクリルアミドアセテートのような二官能性モノマーを含むモノマーがこれら生成物中に供給され、水性環境での溶解に抵抗する架橋ネットワークの形成をもたらし、または制御された大きさの血管新生応答を刺激する。これらの成分は、ミクロスフェアを生じさせるために使用してよい。或いは、二官能性ポリマーは、ヒドロゲルミクロスフェアを合成するために使用してもよい。
【0031】
本発明の一つの態様において、生合成ゲルの第一の成分は、(アクリルアミドメチル)セルロースアセテート・プロピオネートであってよく、第二の成分は、ジチオール官能性のポリエチレングリコールポリマー(例えば、Shearwater Polymers社により販売されているようなもの)であってよい。もう一つの実施例では、生物的合成ポリマーゲルの第一の成分は(アクリルアミドメチル)セルロースアセテートプロピオネートであってよく、第二の成分は還元されたペプチド配列であってよい。更なる態様において、この還元されたペプチド配列は、アミノ酸配列、グリシン-システイン-チロシン-リジン-アスパラギン-アルギニン-アスパラギン酸-システイン-グリシンのような、生物由来のものであることができる。二重内腔ニードルシステムは、両方の成分を梗塞ゾーンに別々に一度に、または同時に送達してよい。チオール含有成分のチオール基は、第一の成分のアクリルアミド官能基に求核付加を受ける。これにより、エラストマー的な構造的補強ゲルが形成される。
他の態様において、上記の非生物的または合成ゲルの送達は、梗塞領域における繊維芽細胞の保持および移動のために最適な速度で両薬剤を放出できるミクロ粒子を利用して、血管新生剤および/または繊維芽細胞補充剤と組み合わされてもよい。
一つの態様においては、生理食塩水のような溶液中に懸濁されたトロポエラスチンが、心室壁の構造的補強のために梗塞領域に導入される。もう一つの態様は、銅イオンの存在下での、生理食塩水中に懸濁されたトロポエラスチンの導入を含んでいる。もう一つの態様は、変換酵素の存在下でのトロポエラスチンの導入を含んでいる。もう一つの態様は、リジルオキシダーゼの存在下でのトロポエラスチンの導入を含んでいる。梗塞ゾーンに導入されると、当該溶液は、リジン残基の酸化を介した架橋によりエラスチンを形成する。架橋されたエラスチンは、梗塞領域に残留して組織を強化し、弾性係数(壁強度/伸び=弾性係数)を高める。
【0032】
[4.導入方法および作用]
図5A〜図5Eは、細胞成長のために繊維芽細胞を補充するための、繊維芽細胞促進剤の梗塞領域への導入および作用を示している。該繊維芽細胞促進剤は、最小侵襲法(510)によって当該部位(500)に導入されてよい。当該溶液は、開胸手術(520)の間に梗塞ゾーン中に注射してよい。繊維芽細胞促進剤の導入には以下の方法の一つが含まれる:剣状突起下(sub-xiphoid)導入および経皮導入(530)。経皮的注射による繊維芽細胞促進剤の導入様式は、心室内(冠血管)カテーテル、経血管針(transvascular needle)カテーテル、IC注入および逆行性静脈灌流からなるもののうちの一つを含んでいる。カテーテルのための一つの経皮経路は大腿動脈を通るものであり、これは大腿動脈を移動して、次いで大動脈弓を横断して左心室の中へと入る。撮像技術は、梗塞領域へと該カテーテルを案内することができる。梗塞領域は、例えばMIR技術を使用して健康な組織と識別することができる。インポートされたMRIデータを有するカテーテルは、次いで梗塞領域へと直接的に案内されてよい。薬剤(540)が梗塞領域(510)の全体に分布されたら、繊維芽細胞(560)は、化学走性応答によって当該エリアに引寄せられることができる。当該エリアに浸潤する繊維芽細胞は、当該エリアにおいて増殖することができる。該繊維芽細胞が増殖すると、それらは当該領域に対する補強塊を形成して、損傷部位(510)を強化する。本発明のこの側面における繊維芽細胞は、梗塞ゾーン(570)における構造的補強剤として作用することができる。これらの細胞は、当該エリアに対して嵩高さを加え、通常は梗塞領域壁の薄化を導く劣化した心筋細胞を置換する。次いで、生きた繊維芽細胞は、梗塞ゾーンの更なる補強のために、他の細胞を当該領域に補充できる因子を放出する。
【0033】
一つの態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜1mLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜300μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜100μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜50μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。薬剤がIV経路およびIC経路を介して導入されるならば、その容積は約1mL〜約500mLに亘ってよい。
上記態様の1以上の成分を送達するために、1以上のカテーテルが使用されてよい。心臓内の損傷領域、例えば梗塞領域へと正確に薬剤を送達するために、幾つかのカテーテルが設計されてきた。これらカテーテルの幾つかは既に記載されている(米国特許第6,309,370号;同第6,432,119号;同第6,485,481号)。該送達デバイスは、心臓内薬物投与のための装置(心臓内での位置決めのためのセンサ、該位置センサの部位で所望の薬剤を所望の量で投与するための送達デバイスを含む)を含んでよい。
【0034】
〔B.梗塞再建のための多成分系〕
[1.成分1]
心不全を防止するために、梗塞領域に心筋細胞を直接導入して、種々の起源(胚細胞および成体幹細胞を含む)の心臓機能細胞を修復できることが提案されてきた。心筋梗塞ゾーンについての組織操作の実行可能性は、酸素および栄養素の供給が容易に利用可能であることと、細胞代謝に由来する老廃物を除去するための様式とを必要とする。また、これらエリアにおける細胞は、付着のための支持構造体も必要とする。先に述べた血管新生剤および/または繊維芽細胞補充剤を伴った生分解性ゲルは、後者の支持構造体を提供する。文献においては、10μm未満のサイズの穴をもった足場の導入は、毛細血管の内殖に乏しい緻密な繊維性の封入された足場をもたらすことが知られている。他方、図6および図9に示すように、足場の穴の直径が約20μmであれば、該足場系の細胞封入は、毛細血管の内殖によって充分に灌流され、繊維の乏しく細胞に富んだ領域をもたらす。一つの態様は、梗塞ゾーン(610,910)に導入され、機械的補強材として作用する足場を含んでいる。梗塞領域において、力はより均一に分配され(990)、心室のリモデリングが防止される。
【0035】
一つの態様においては、上記で述べたようなネットワークを提供するために別の成分が含められる。一つの例が図6に記載されている。多成分組成物は、先に例示した生分解性マトリックスまたは足場(630,990)を含んだ、第一の成分を含んでいる。この特定の組成物において、該マトリックス(第一の成分)は、毛細血管の内殖を高めるための多孔質の足場を提供する。第一の成分のミクロ粒子は約20μmであってよい。もう一つの態様において、当該組成物の第一の成分は、経皮的導入等の最小侵襲法(960)で導入されてもよい。カテーテルの先端は梗塞ゾーン(910)へと進められ、生分解性ミクロ粒子(920)が放出される。更なる態様において、当該組成物の第一の成分は、心室内ニードルデバイス(930)を介して梗塞領域へと導入されてよい。更なる態様において、梗塞領域に複数の注射剤を導入することを含む心室内ニードルデバイスが、当該組成物の第一の成分を導入してよい。該第一の成分は、一つの側面において、細胞成長を促進するためのドメインとして働くことができる。加えて、毛細血管の内殖を導くように、多孔性が制御されてよい。第一の成分(920)は、成長因子および血管新生能力を備えた生分解性ミクロ粒子であってよい。該因子または他の薬剤は、1〜2週間の期間に亘って放出されてよい。一つの態様は、第一の成分が、カルボン酸末端基を備えたPLGA50:50(先に述べたようなもの)を含むものであってよい。第一の成分によって提供される前記ドメインへの毛細血管の内殖は、血管新生因子(980)の放出によって促進され得る。一つの態様は、梗塞領域に導入された後に迅速に放出される血管新生因子(980)を含有したミクロ粒子を含む。このようなミクロ粒子は、迅速な血管新生応答をもたらし易い。
生体材料は、天然に起こる現象(例えば、健康な個体での創傷治癒における組織再生など)を実行および促進させるために;通常は存在しないかもしれない細胞応答、例えば病気の個体における治癒、またはその後の細胞移植を受けるための新たな血管床の発生などを誘導するために;また、他の種からの細胞移植の免疫拒絶反応、または特定の状況下で瘢痕形成を刺激する成長因子シグナルの伝達などのような天然の現象を阻止するために、用いられている。
【0036】
[2.成分2]
当該発明の多成分組成物の第二の成分(640)は、生体適合性のアクリル化剤であってよい。第二の成分は、一つの側面において、境界ゾーンをも含み得る全体の梗塞ゾーンに亘って更に均一な足場を形成するために、第一の成分を分散させるように働く。それは、生体適合性成分に基づくオリゴマー性の二(多)官能性アクリル化剤(930)であってもよい。二成分組成物の態様は、ジアクリロイルポリエチレングリコール、テトラアクリロイルポリエチレングリコール(PEG)、または(アクリルアミドメチル)セルロースアセテートプロピオネートを含む第二の成分を含有してよい。このアクリルアミド官能性のセルロース成分を溶解させるためには、エタノールまたは生体適合性が必要とされる。第二の成分(930)は微小粒子(970/990)を分散させ、懸濁媒質として作用する。PEGでコーティングされたミクロ粒子(990)は、炎症性が低く、また繊維症応答を誘起しないように見えることが知られている。従って、一つの側面において、PEGでコーティングされたミクロ粒子は抗オプソニン化剤として働き得る。こうして、第二の成分は、該ミクロ粒子を梗塞領域へ導入するについての、免疫系からのカモフラージュとして働く。一つの態様は、二重内腔ニードルを使用して、成長因子を含むミクロ粒子および足場形成マトリックス(アクリロイル官能性マクロマー)の両方を注射することを含んでいる。図9Dは、足場ゲル(915)の最終形成を示している。二つの溶液を同時に導入することにより、殆ど瞬時(約10秒)に、足場内に埋設されたミクロ粒子網を有するゲルの形成を生じる(図915)。ミクロ粒子(925)が分解すると共に成長因子が放出されて、該マトリックス内での毛細管形成を促進する。加えて、細胞が梗塞エリア内で成長を始める(935)。これらの細胞はプロテアーゼを放出し、該プロテアーゼは足場を分解して、最終的には細胞の内殖のための更なるエリアを作ることができる。加えて、これらの細胞はそれら自身の細胞外マトリックスを分泌し、該ポリマーは分解し、得られた組織は、最終的には完全に天然の環境になることができる。毛細管の再成長が生じ得るので、この分解産物は腎臓のシステムによって当該エリアから除去され得る。
【0037】
[3.成分3]
多成分組成物のもう一つの成分および方法が、650および905に図示されている。第三の成分は、以下のうちの一つを含んでいる:チオール含有ペプチド、またはジチオ−PEGのような二官能性もしくは多官能性の生体適合性物質。チオール含有ペプチド(905)の一例は、ポリシステインオリゴマーであってよい。この一例は、保護された形態のポリシステインオリゴマー、即ち、ポリ−S−CBZ−L−システイン、またはポリ−S−ベンジル−L−システイン(それぞれSigma Chemical P0263およびP7639)である。これらの薬剤は、標準の有機化学プロトコールを使用して脱保護することができる(Berger et. al. "Poly-L-cysteine"J. Am. Chem. Soc 78,4483 (1956))。これらのチオール含有薬剤の調製については周知である(Zervas, L. et. al. "On Cysteine and Cystine Peptides", J. Am. Chem. Soc. 85:9 1337-1341,(1963))。多成分組成物の第三の成分として機能し得る追加の薬剤は、天然に存在するペプチドであってよい。一つの態様において、多成分足場の第三の成分は、ポリ−S−CBZ−L−システインおよびポリ−S−ベンジル−L−システインからなるものの一つであってよい。多成分組成物のもう一つの態様において、多成分足場の第三の成分は、天然に存在するペプチドであってよい。多成分組成物の更なる態様において、多成分足場の第三の成分は、天然に存在するペプチドであるグリシン−システイン−チロシン−リジン−アスパラギン−アルギニン−アスパラギン酸−システイン−グリシンのペプチド配列であり得る。該第三の成分は、好ましくは少なくとも二つのチオール基を含んでいる。図9A〜図9Fは、MIを治療するための、三成分の梗塞領域への導入を示している。一つの態様は、第一の成分および第二の成分(920/920)の二重内腔ニードルによる導入と、次いでチオールを含有する第三の成分(905)の第二のニードルによる導入であってよい。図9Dは、引続き繊維芽細胞成長(935)および毛細管(945)の梗塞領域への内殖を補充する最終構造体(915)の概略図である。チオール含有成分(905)は、足場の分解速度を低下させるため、またはミクロ粒子の繊維芽細胞補充成分の放出を制御するために、使用することもできる。
【0038】
当該態様の何れか一つまたは複数の成分を梗塞領域エリアに送達するために、1以上のカテーテルを使用してよい。心臓内の損傷領域、例えば梗塞領域へと薬剤を正確に送達するために、幾つかのカテーテルが設計されて来た。これらカテーテルの幾つかが既に記載されている(米国特許第6,309,370号;同第6,432,119号;同第6,485,481号)。送達デバイスは、心臓内薬物投与のための装置(心臓内での位置決めのためのセンサ、該位置センサの部位で所望の薬剤を所望の量で投与するための送達装置を含む)を含んでよい。
〔梗塞の再構築および梗塞の再酸素添加のための多成分系〕
MI後の心不全の進行は、梗塞後の心臓のリモデリングの結果である。リモデリング過程において、継続的な心臓拍出量を維持するために、心臓拍出量の減少に応答して、心臓はより薄くなり、直径は増大する。この薄化の過程は、心臓の半径の増大をもたらし、また心臓に対するストレスは増大する。
ペルフルオロカーボン化合物は、ガス(例えば二酸化炭素および酸素)に対する高い親和性を有することが示されてきた。比較可能な容積の各成分において、ペルフルオロカーボンの酸素を運搬する能力は、血漿よりも約8倍大きい。加えて、酸素添加/酸素除去の半減期は、数多くのペルフルオロ化合物について、ヘモグロビンと比較して約3.5倍であることが示された。従って、ペルフルオロ化合物は、梗塞領域のような患部領域の再酸素添加を補助するために、組織において使用してよい。患者における生体適合性を立証する幾つかの例が、表1で確認されている。表1は、生体適合性の過フッ化化合物の幾つかの例を示している。
【0039】
図7は、多成分系をフローチャートで示している。心筋梗塞の位置が突止められる(720)。次いで、先に説明した方法による最小侵襲法および/またはカテーテル送達を介して、当該成分が当該領域に送達される。アシロイル官能基(図6の成分2)のような電子不足の二重結合の存在下に、チオール官能基(図6の成分3)を添加すると、マイケル付加を起こすことが以前に開示された。塩基性条件下においてチオール官能基は非常に求核性であり、アクリロイル官能基をもった二重結合を迅速に(<<10秒)形成する(図10参照)。図6に示すように、梗塞の拡大および/または嵩高くなるのを防止して、心不全を導き得る心臓のリモデリングを防止するために、ゲルが形成されてよい。図7の730は、生分解性ゲルを含む第一の成分を示しており、また740は、組織の酸素添加を高める第二の成分としてフッ化化合物を伴ったゲルを示している。該ゲルは、三成分系によって形成される。第一の成分は、多官能性のスペーサ基を備えた、先に説明した生体適合性ポリマーを含んでいる(730)。第二の成分(740)は、二官能性または多官能性の過フッ化分子(810)を含んでいる。第三の成分(750)は、スペーサ基の一方の側には反応性官能基を備え、他方の末端には先に説明したペプチド配列のような細胞結合性ペプチド配列を備えたヘテロ官能性分子を含んでいる。ペプチド配列の一例としては、RGD配列が挙げられる。図8は、図7の三成分系の一つの化合物(830)を形成するための、チオール化合物(800)とアシロイル官能基(820)との反応を概略的な様式で示している。この三性分系は、薬剤の投与に先立って心臓のマッピングにより導かれ得るような、図6の方法について説明したのと同様の最小侵襲法により、梗塞領域に導入されてよい。この三成分系の例については、実施例の節において述べる。
一つの態様において、何れの記載された薬剤も、1又は2回以上の投与で、約1μL〜1mLの容積において導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載された薬剤も、1又は2回以上の投与で、約1μL〜300μLの容積において導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載された薬剤も、1又は2回以上の投与で、約1μL〜100μLの容積において導入されてよい。好ましい態様において、何れの記載された薬剤も、1又は2回以上の投与において、約1μL〜50μLの容積において導入され得る。より大きな治療剤容積(例えば約2mL〜約250mL)を伴う場合には、IVおよびIC経路が必要とされてもよい。
図10は、図6の多成分組成物の、第二の成分(1000)と第三の成分(1010)との間に形成されたエステル結合を示している。この結合(1020)は、足場の分解およびミクロ粒子内の活性薬剤の放出を遅延させるために必要である。この結合は、約2ヶ月間、分解に抵抗する傾向がある。
【0040】
〔補強のための膨潤剤系〕
図11A〜図11Fは、梗塞領域の構造的補強および/またはバルクのための、膨潤性の非生物学的材料の導入を示している。図11Aは、梗塞領域(1110)へのミクロ粒子(1130)の導入を示している。ミクロ粒子(1130)は、梗塞ゾーン内の左心室の部位で塊に集積した状態で示されている。ミクロ粒子を導入(1120)するための一つの方法は、カテーテル(1130)を使用した経皮的導入である。該カテーテルの先端が梗塞領域(1110)にまで進められ、ミクロ粒子(1130)が放出される。このミクロ粒子は梗塞組織の中に滞留するに至る(1140)。図11Bは、膨潤(1160/1170)に必要な周囲の液体(1150)を取込むミクロ粒子(1130)を示している。一つの態様は、梗塞領域において、当該領域を構造的に補強するために液体を取込むことができるミクロ粒子ビーズの使用を含んでいる。該粒子は、約5〜10μmの範囲の寸法であり得る。完全に膨潤した粒子が当該部位の中に留まるためには(1180)が、当該エリアにおける障害になるほど大き過ぎないためには、該ミクロ粒子は10μm未満であろう。加えて、この膨潤したミクロ粒子は、死滅および退化した心筋細胞を置き換えることによって、損傷を受けたエリアに機械的強度および厚みを提供する。
[1.物質]
a.ヒドロゲルスフェア: 例には、架橋ポリアクリルアミドまたは架橋PVPで構成されたヒドロゲルスフェアが含まれる。これら生成物のモノマー形態は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメチルアクリレート、またはビスアクリルアミド酢酸のような、二官能性モノマーを含むであろう。これらの物質は、水性の系での溶解に抵抗性の架橋ネットワークを形成する。
【0041】
b.商業的製品: A. P. PharmaまたはBiosphere Medicalから得られるミクロ粒子のような、使用し得る幾つかの商業的製品が入手可能である。これらのミクロ粒子は、非特異的タンパク質吸収に抵抗し、生体安定性の骨格結合を有している。これらミクロ粒子は、生分解性または生体吸収性ではない。図11Eは、当該領域に滞留されるに至る(図11F)まで周囲の液体を取り込んで膨潤する、梗塞領域に分散されたミクロ粒子を示している。
【0042】
〔構造的補強組成物および材料〕
図12は、MI患者の梗塞領域の心室壁を補強するための、幾つかの可能な方法を示している。心外膜ポリマーメッシュを縫合することにより、梗塞ゾーンを補強することが以前に示された(Kelley et al., Circ., 1999; 135-142)。この技術の性質のため、前記メッシュを組織中に直接縫合することが必要であった。これは更なる損傷を生じ得る。この方法は侵襲的手術を必要とする。加えて、ポリマーメッシュは経時的に分解せず、これもまた問題となり得る。補強剤を最小侵襲法により直接患部エリアに注射することによって、侵入的な縫合プロトコールは回避される。該溶液は、開胸手術の間に梗塞ゾーンに注射されてよい。一つの態様において、該補強溶液の導入は、剣状突起下(subxyphoid)導入および経皮導入からなる方法を含むものである。もう一つの態様において、経皮的注射による補強溶液の導入の様式は、心室内カテーテル、経血管針カテーテルおよび逆行性静脈灌流からなるうちの一つを含むものである。
【0043】
1.単一成分系: 図12の1210/1220/1230は、補強剤による介入に先立つ、MI領域の特定および補強を示している。図12の1210は、梗塞領域中に注射される単一成分の使用を記載している。この例は、梗塞領域の壁にゲル様の補強を形成できる、単一の擬似塑性材料またはチキソトロピー性材料を構成している。これら材料の幾つかの例が存在する。一つの態様において、当該構造的補強剤は、ヒアルロン酸、ウシコラーゲン、超純粋高分子量ポリアクリルアミドおよびポリビニルピロリドンからなるうちの一つを含んでいる。
本発明の一つ具体的な態様において、構造的補強のための単一の成分は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)ビーズが分散しているウシコラーゲンを含むものである。これらビーズは、ARTECOLL(Rofil Medical International, Breda, The Netherlands)の商品名の下で製造されているものでもよい。PMMAは、幾つかの架橋ミクロ粒子または高度に不溶性のミクロ粒子の一つである。PMMAは1900年代初めに発見され、歯科補綴学において最初に使用された。最近、それは顎および股関節部(hip)の骨置換において使用されている。加えて、それは人工眼レンズ、ペースメーカーおよび義歯のために使用されている。ARTECOLLTMは、主に、顔面の襞および皺の充填、唇の増強、不規則な鼻の矯正に使用されている。
【0044】
おそらく、不溶性ミクロ粒子の最も重要な特徴の一つは、該ミクロ粒子の表面が、コラーゲンの沈着を誘導するように平滑でなければならないことである。粗い表面は、マクロファージの活性を増進する一方、コラーゲンの沈着を防止する。当該方法は、平滑表面粒子の使用を組込んでいる。当該成分は、内因性コラーゲン沈着のための基体として作用し得る。補強ゲルが分解するにつれて、高度に安定で且つ平滑な粒子が、当該部位を占める繊維芽細胞集団に曝され得る。このことは、コラーゲンの産生を始動させて、分解している該ゲルを置換する。従って、梗塞ゾーンは、一時的なゲルのコラーゲン置換によって補強され得る。一つの態様において、分散する材料は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、P(MMA−co−BMA)(ポリメチルメチルアクリレート−コ−ブチルメタクリレート)、炭素ミクロ粒子(Durasphere)、ポリスチレン、架橋アクリルヒドロゲルおよびPLGAからなるミクロ粒子材料の群のうちの一つを含んでいる。もう一つの態様において、架橋アクリルヒドロゲルは、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、AA(アクリル酸)、AMPS(アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート)、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレンスルホネートおよび二官能性もしくは三官能性モノマーを含んでもよい。二官能性もしくは三官能性モノマーは、EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)およびDVB(ジビニルベンゼン)であってもよい。加えて、高度に結晶性(且つ加水分解耐性)のPLGAミクロ粒子の使用は、キャリアゲルよりも長持ちし、またコラーゲン沈着のための有用な基体を提供し得る。
【0045】
梗塞ゾーンに導入されるもう一つの単一の溶液は、水中のナトリウム塩に溶解されたヒアルロン酸である。これは、皮膚増強ゲルとして販売されている工業的に製造されたゲル(RESTYLANETM)である。ヒアルロン酸ヒドロゲルはまた、創傷部位における治療剤の送達を制御するために、ペースト状態で使用されてきた(Luo, Y. et al. "Cross-linked hyaluronic acid hydrogel films : new biomaterials for drug delivery"Journal of Controlled Release (2000) 69: 169-184)。他の可能な単一の導入される成分には、ウシコラーゲン(ZYDERMTMまたはZYPLASTTM)、即ち、Collagen Corpによって開発されたもう一つの皮膚増強ゲルが含まれる。水中の(in water)超純粋な高分子量ポリアクリルアミドは、他の皮膚増強ゲルであるFORMACRYLTMまたはBIOFORMTMであってよい。該ウシコラーゲンは、PMMA製品のARTECOLLTMによって分散されてよい。ARTECOLLTMは、再生のための生体適合性皮膚増強ゲルとして、その成功が最も良く知られている。RESOPLASTTM(Rofil Medical International, Breda, The Netherlands)もまた、単一成分ゲルとして使用してよい。
【0046】
図12の1220は、単一成分系を使用して、心室の梗塞ゾーンを補強するもう一つの方法を示している。この例は、内因性成分と反応した後にゲルを形成する単一成分の導入を利用する。一つのこのような成分は、トロポエラスチン(先に詳述した)であってよい。エラスチンは、大きな動脈、気管、気管支および靭帯の結合組織にみられる、高張力の不溶性弾性タンパク質である。トロポエラスチン(未架橋型)として内因的に認められるのは稀であり、トロポエラスチンは、in vivoに導入されるときに、酵素のリジルオキシダーゼによる酸化的脱アミノ化の過程において迅速にリジン残基が架橋される。先に述べたように、トロポエラスチンは、組換え細菌産物として商業的に入手可能である。水中で加熱されると、トロポエラスチンはコアセルベートを形成し、これは梗塞領域に注射されてよく、前記梗塞領域ではリジルオキシダーゼが酸化的脱アミノ化プロセスによるリジン架橋を誘導する。一つの態様において、トロポエラスチンは梗塞領域に導入されてよい。もう一つの態様において、トロポエラスチンは、上記で述べた高度に不溶性のミクロ粒子の導入後に、梗塞領域に導入されてよい。もう一つの反応性の単一成分は、シアノアクリレート接着剤であってよい。これは、広範に使用されるプラスチック接合剤である。一つの態様において、該シアノアクリレートは、オクチルシアノアクリレートであってよい。該オクチルシアノアクリレートは、ダーマボンドTM(DermabondTM;Johnson and Johnson)と呼ばれる工業的に製造された製品であってよい。この製品は、最近、創傷閉鎖用の組織接着剤として使用が認可された。オクチルシアノアクリレートは、液体として梗塞領域に導入されてよい。それは、梗塞領域に接触すると、その水分への露出に起因して固化する。もう一つの態様において、オクチルシアノアクリレートは、上記で述べた高度に不溶性の安定なミクロ粒子の導入後に、梗塞領域に導入されてもよい。
【0047】
もう一つの態様において、反応性の単一成分には、温度感受性の成分が含まれる。これは、図12の1230に示されている。このタイプの成分の一例は、室温では液体で、且つ体温にほぼ等しい温度に露出されるとゲル化し得る成分である。より具体的な成分には、絹タンパク様サブユニットと、エラスチン様のサブユニットとのブロック共重合体を導入することが含まれる。このブロック共重合体合成タンパク質の一例は、プロラスチン(ProLastin;PPTI, Protein Polymer Technologies)である。これらの成分は、非共有結合相互作用(絹様サブユニットの水素結合および結晶化)に起因して、例えば体温にほぼ等しい上昇した温度でゲル化する。温度変化によるゲルの形成は、添加剤を使用して調節されてよい。これらの添加剤には、塩化ナトリウム、ジグライム(diglyme)[ジエチレングリコールジメチルエーテル;2−メトキシエチルエーテル;ビス(2−メトキシエチルエーテル)]、およびエタノールが含まれるが、これらに限定されない。
数多くの熱的に可逆性の材料を、心筋組織の補強のために使用できる。一般的に、熱的に可逆性の成分は、約37℃以下の温度では液体または軟質ゲルである。温度が37℃以上に移行すると、該熱的に可逆性の成分は硬化する傾向にある。一つの態様において、該温度感受性の構造的補強成分は、トリブロックのポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−ポリエチレングリコール共重合体であってよい。これは商業的に入手可能である(REGELTM;Macromed, Utah)。もう一つの態様において、温度感受性の構造的補強成分は、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびポリアクリル酸とポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)との共重合体からなるものを含んでよい。もう一つの商業的に入手可能な温度感受性の構造的補強成分は、PLURONICSTM[PEO−PPO−PEO(ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロック共重合体; BASF, N. J.)(Huang, K. et al. "Synthesis and Characterization of Self-Assembling Block copolymers Containing Bioadhesive End Groups" Biomacromolecules 2002, 3, 397-406)である。もう一つの態様は、梗塞領域を構造的に補強するために、二以上の単一成分を組合せることを含んでいる。例えば、絹エラスチン、コラーゲンおよびラミニンを、系の一部分として使用してよい。この絹エラスチンは、絹ブロックに起因して、おそらくin situで架橋結合を形成するであろう。
【0048】
もう一つの態様において、反応性の単一成分にはpH感受性の成分が含まれる。該成分は、それが充分にプロトン付加されても液体状態のまま残り、ゲル化を防止する。もう一つの態様では、当該成分は、最初は低いpH(例えばpH3.0)に維持され、後で治療エリアに導入されて、環境の生理学的pHに起因して当該成分のゲル化をもたらす。この一つの例が実施例3において議論される。幾つかの可能なカチオン材料は、低いpHにおいてプロトン付加されたままである以下のカチオン材料、即ち、ポリ(アリルアミン)、DEAE−デキストラン、エトキシ化ポリ(エチレンイミン)、およびポリ(リジン)のうちの一つであってよいが、これらに限定されない。他の例は、以下のアニオン材料、例えば、硫酸デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルファナート(sulfanate)、および硫酸コンドロイチンのうちの一つであってよいが、これらに限定されない。
加えて、これらミクロ粒子成分は何れも、1以上の造影剤および/または当該領域の治療のための適切な薬剤を伴ってよい。該造影剤または治療剤は、梗塞領域への導入に先立って、構造成分に結合されるか、またはその中に溶解される。補強成分に随伴してよいこれらの薬剤には、血管新生剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、SRCA(筋小胞体カルシウムポンプ)ポンプ増加剤、ホスホランバン阻害剤および抗アポトーシス薬が含まれるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、小分子、ペプチド、タンパク質または遺伝子産物の形態であってよい。小分子は、補強成分の組織への接着を改善するために、場合により、溶液の成分に結合されても、溶液中に分散されても、または溶液中に溶解されてもよい。一つの態様は、接着過程を媒介する保存された領域を有するペプチドと結合させることである。ペプチドの保存された領域は、タンパク質ファミリーにおいて経時的に保存されてきた、特別な同定の機能を有するアミノ酸配列であってよい。もう一つの態様は、補強成分の存在下において、保存されたRGD(アルギニン(R)−グリシン(G)−アスパラギン(D))モチーフと結合された特定のペプチドの使用を含んでいる。更なる態様において、RGDモチーフペプチドは、フォンビルブラント因子、オステオポンチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンを含んでよい。一つの態様は、梗塞領域のリモデリングの間の薄化を最小限にしようとするものである。従って、MI後の梗塞領域を嵩高くし且つ補強することは、心室の形状を保存し得るであろう。
【0049】
当該態様の何れか一つまたは複数の成分を梗塞エリアに送達するために、何れか1以上のカテーテルを使用してよい。これらカテーテルの幾つかは既に記載されている(米国特許第6,309,370号、同第6,432,119号、同第6,485,481号)。この送達デバイスは、心臓内で位置決めするためのセンサ、該位置決めセンサの部位において望ましい薬剤および量を投与するための送達デバイスを含む、心臓内薬物投与のための装置を含んでいてよい。
【0050】
2.二成分系: 図12の1240は、梗塞領域に適用する構造的補強ゲルを形成のための二成分系を示している。最初に、先に述べた撮像方法によって、梗塞領域が特定される(1300)。図13の1330/1340/1350/1360/1370/1380/1390は、梗塞領域において構造的補強ゲルを形成する図13の二成分系(1320)を更に説明するフローチャートを示している。一つの例(1330)において、二つの成分は、生理学的pH付近で梗塞ゾーンにおいて混合される。生理学的pH付近において、成分1は主としてアニオン溶液であり、第二の成分は主としてカチオン溶液である。二つの成分が梗塞ゾーンにおいて一緒に混合されると、迅速且つ不可逆的にゲルが形成される。一つの態様において、二成分系は、図13の1330に示すように、第一の成分としてのポリ(アクリル酸)および第二の成分としてのポリ(アリルアミン)を含んでよい。もう一つの態様において、二成分系は、二重注射ルーメンを備えたカテーテルによって送達され得る第一の成分としてポリ(アクリル酸)および第二の成分としてポリ(アリルアミン)を含んでよい。梗塞領域において構造的に補強するゲルを形成する他の二成分系は、第一の成分としてエラスチンおよび第二の成分としてリジルオキシダーゼ(1340);第一の成分としてアルギン酸ナトリウムおよび第二の成分として塩化カルシウムの水性溶液(1350);第一の成分としてトロポエラスチンおよびコラーゲン、並びに第二の成分として架橋剤リジルデヒドロゲナーゼを含んでもよく、またこの組合せに後でラミニン(1395)を加えてもよい。各成分の組成は、最終的な架橋系の機械的性質に依存するであろう。架橋するために使用されるグルタルアルデヒドおよび/または光活性化可能な架橋剤(例えば青色色素)のような、リジルデヒドロゲナーゼを置換でき又はその架橋能力を補完できる他の物質が使用されてもよいであろう。加えて、これらの二成分系は、AVITENETM(ミクロフィブリルコラーゲン止血剤)、SUGICEL(吸収性止血剤、Johnson & Johnson)、GELFOAMTM、FLOSEALTM(Baxter, matrix hemostatic sealant with a granular physicalstructure and thrombin)、FOCAL SEALTM(Focal, Inc.)またはFIBRIN SEALTMのような、他の個々の系と組み合わされてもよい。FLOSEALTMは、注射可能なコラーゲン由来の粒子および局所トロンビンを構成するゲルである。それは、血管シーリングを含む用途について認可されている。他の幾つかの可能なカチオン材料は、低いpHにおいてプロトン付加されたまま残る以下のカチオン材料、即ち、ポリ(アリルアミン)、DEAE−デキストラン、エトキシ化ポリ(エチレンイミン)、およびポリ(リジン)のうちの一つであってよいが、これらに限定されない。他の例は、以下のアニオン材料、例えば硫酸デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルファナート、および硫酸コンドロイチンのうちの一つであってよいが、これらに限定されない。好ましい態様において、第一の材料がDEAEデキストランで、第二の材料がポリスチレンスルファナートであり得る。
【0051】
図13の1370は、もう一つの二成分系、DOPA(3,4−ジヒドロキシフェニル−L−アラニン)、即ち、伝導性条件(conductive condition)においてヒドロゲルを形成できる、筋肉接着性タンパク質の主要な原因成分の使用を示している。詳細に言えば、酸化プロセスがDOPAをo−キノンに変換した後に、スターブロックとして知られるDOPA−ブロック−PEGがin situで架橋を受け、ヒドロゲルを形成する。この過程はin situで安定なヒドロゲルを形成する。図13の1380は、構造的補強のために梗塞領域に注射される、アクリレートマクロマーおよびジチオール溶液の使用を含んでいる。これらの成分は、梗塞部位で混合されるときに架橋反応を受けて、ヒドロゲルの形成に導く。特定の態様は、先に述べた二重ルーメン針システムを介して梗塞ゾーンに導入される、第一の成分としてのPEGトリアクリレートおよび第二の成分としてのPEGチオールの使用を包含するものである。図13の1390では、糊状成分系が用いられてよい。一つの態様は、梗塞ゾーンに導入され得る構造的補強剤としてのGRF糊の使用を含んでおり、これはゼラチン、レゾルシノールおよびホルムアルデヒド(GRF)からなっている。これを達成するために、梗塞ゾーンにおいて成分の混合時に架橋を誘導するために、二成分系が使用されてよい。他の態様では、GRFと共に、ポリグルタミン酸、ポリリジンおよびWSC(水溶性カルボジイミド)からなる群を含む構造的補強成分を加えてよい。
図14は、構造的補強のための、梗塞領域への単一成分または二成分の導入および作用を示している。図14は、先に述べた方法による心室(1400)の梗塞領域(1410)の特定、およびその後に行われる損傷部位に対する別々の成分の複数回注射(1420)を示している。二成分系においては、二つの成分(1430/1440)が当該部位において相互に接触し、補強構造的足場を形成する(1430/1440)。図15Bにおいては、単一の擬似塑性剤またはチキソトロピー剤が、多回注射(1450)により当該エリアに導入されて、壁(1460)を構造的に補強する。これらの薬剤は最終の形態で導入され、追加の薬剤を必要としない。図14は、それぞれ異なる部位での多回注射による(1405/1415)、少なくとも一つの薬剤の添加(1430/1440/1450/1480)を示しており、前記薬剤は、構造的補強形態(1450/1470/1495)へ変換するために内因性成分または温度変化(1460/1490)を必要とする。該構造的補強剤は、先に述べた最小侵襲法を介して梗塞領域に局化在される。
【0052】
更に、例示した何れかの単一成分系または他成分系と組合せて、生体適合性の増粘剤(例えば1型ゲル)を加えてもよい。例えば、梗塞ゾーンに導入されたときの天然の分解に対する活性剤の耐性を増大させるために、ヒアルロン酸またはPVPを使用してもよい。一つの態様において、治療剤の粘度は約0〜100センチポアズであってよい。もう一つの態様において、治療剤の粘度は約0〜50センチポアズであってよい。好ましい態様において、治療剤の粘度は約25〜40センチポアズであってよい。好ましい態様において、治療剤の粘度は約35センチポアズである。
一つの態様において、記載した薬剤は何れも、約1μL〜1mLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載した薬剤は何れも、約1μL〜300μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載した薬剤は何れも、約1μL〜100μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様において、記載した薬剤は何れも、約1μL〜50μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよく、また大きな治療剤容積(例えば約2mL〜約250mL)を含むIC経路が必要とされるかもしれない。
何れかの方法で梗塞領域内における成分を追跡するために、記載した何れかの態様の何れかの単一成分または成分の組合せに対して、生体適合性色素を添加してよい。他の色素を、例えばラットの心臓における何れかの薬剤の沈着を追跡する実験目的のために、添加してもよい。これら色素の幾つかの例には、スーダン赤B、ファット茶(Fat Brown)RR、エオシンYおよびトルイジン青が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
他方、組織接着剤成分はまた、図12、図13および図14に例示した何れかの単一もしくは二成分系と組合せて添加されてもよい。例えば、有効成分の組織保持性を増大させるために、ラミニン−5、ポリアクリル酸、キトサンおよび水溶性キトサンを使用してもよい。ラミニン−5は、上皮細胞、繊維芽細胞、ニューロンおよび白血球を含む広範な細胞型において、接着および移動のための付着基体を提供する基底膜細胞外マトリックスマクロ分子である。キトサンは、脱アセチル化キチンから得られる唯一の天然の陽イオン性多糖類である。キトサンは分解性、良好な膜形成状態、生体適合性、抗心筋および抗腫瘍機能を有する。キトサンは優れた粘度、圧縮性および流動性を有する。
【0054】
〔送達媒質中に懸濁されている単一成分〕
図15は、梗塞領域のリモデリングおよび最終的な薄化を防止するための、他の方法を記載したフローチャートを示している。先に述べた方法の幾つかと同様に、これらの方法は、梗塞領域に対して嵩増加剤または構造的補強剤を与える。図15の1510においては、先に述べたように、梗塞領域の特定の後に、溶液中にミクロ粒子を含む薬剤(分散液)が梗塞領域に導入される。このミクロ粒子は、約1〜200μmの予め定められた範囲であってよい。一つの態様において、ミクロ粒子は20μm以下である。好ましい態様において、ミクロ粒子は10μm以下である。梗塞領域に送達されるミクロ粒子サイズは、使用する送達方法によって決定されてよい。例えば、塞栓形成の危険を回避し得る200μm以下の粒子を送達するために、心室内カテーテルを使用してよい。ミクロ粒子のための一つの懸濁溶液は水であってよい。他方、この懸濁溶液はまた、溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)またはエタノールアジュバントであってよい。一つの態様においては、ミクロ粒子と共に懸濁溶液を懸濁液として拘束領域に導入してよく、溶液が周囲組織の中に消失するときに、ミクロ粒子は当該領域に残留する。従って、ミクロ粒子は、構造的に補強するバルクを当該領域に与える。これは、梗塞後の心筋に対するストレス低下をもたらし得る。それはまた、コラーゲン沈着のための更なる部位の基体として働くことができる。一つの態様において、分散液(上記で述べたもの)は、最小侵襲法を介して、開胸手術の際に梗塞ゾーンに注入されてよい。もう一つの態様において、この最小侵襲法は、少なくとも一つの剣状突起下(subxyphoid)導入および経皮的導入を含む。もう一つの態様において、梗塞ゾーンへの経皮的導入は、心室内ニードル、経血管カテーテルおよび逆行性静脈灌流のうちの一つを含んでよい。
【0055】
図15の1520は、ミクロ粒子が溶液(分散液)から沈殿することを除き、図15の1510と同様の、付加的な方法のフローチャートを示している。図15の1520において、溶液(分散液)中にミクロ粒子を含む薬剤が梗塞領域に導入される。このミクロ粒子は、0〜200μmの予め定められたサイズであってよい。好ましい態様において、該ミクロ粒子は10μm以下である。一つの態様において、ミクロ粒子を含む懸濁溶液が梗塞領域に導入されてよく、該ミクロ粒子は当該領域において懸濁液から沈殿する。こうして、ミクロ粒子は、当該領域に対して構造的に補強するバルクを提供する。これは、梗塞後の心筋に対するストレスの低下をもたらし得る。それはまた、コラーゲン沈着のための更なる部位の基体として働くことができる。一つの態様において、分散液(上記で述べたもの)は、最小侵襲法を介して、開胸手術の際に梗塞ゾーンに注入してよい。もう一つの態様においては、剣状突起下(subxyphoid)導入および経皮導入を含む最小侵襲法が用いられてよい。もう一つの態様において、梗塞ゾーンへの経皮的導入は、心室内ニードル、経血管カテーテルおよび逆行性静脈灌流のうちの一つを含んでよい。
図15の1510、および図15の1520におけるミクロ粒子の幾つかの例が、図16に示されている。図16の1610は、粘性液状のスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)を示している。SAIBは水溶性である。SAIBは、溶媒または溶媒の組合せ、例えばエタノール、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、トリアセチン、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、またはグリコフロール(glycofurol)の中に溶解されてよい。これらの溶媒は、ニードルまたはルーメンを通しての該薬剤の導入を容易にするために、SAIBの粘度を減少させる。一つの態様において、SAIBは溶媒を伴って梗塞領域に導入されてよく、該溶媒は当該部位で消失して、後には粘性のSAIBが当該領域に残される。
他の生体適合性ポリマー系が、梗塞ゾーンに導入されてもよい(図16の1620)。これら薬剤の幾つかは、生体適合性であるだけでなく、SAIBと同様に実質的には水不溶性である。梗塞ゾーンへの導入を容易にするために、溶媒または溶媒混合物を使用して該ポリマーを溶解してよい。一つの態様において、生体適合性の水不溶性ポリマーは、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリアンヒドリド類、ポリアルキレンオキセート類(polyalkylene oxates)、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリジオキサノン類、ポリヒドロキシバレレート類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトエステル類、ポリホスファゼン類、ポリヒドロキシブチレート類、ポリアルキレンスクシネート類、およびポリ(アミノ酸)からなる一つを含んでよい。これら不溶性ポリマーの何れの一つも、溶媒、例えばジグライム、ジメチルイソソルビド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール、テトラグリコール、ジエチルスクシネート、酢酸エチル、乳酸エチル、酪酸エチル、マロン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−n−ヘキシル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、トリブチリン、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、N,N−ジエチル−m−トルアミド、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、および正規のグリセロールに溶解されて、注射可能なポリマー溶液を形成し得る。当該分散液は心臓の梗塞領域の中に導入されてよく、そこでは溶媒が消失し、ポリマーが分散液から沈殿して梗塞領域壁を構造的に補強する。一つの態様において、開示されたポリマーは、梗塞領域に導入される二以上のポリマーの共重合体のような、何れかの組合せにおいて使用されてよい。
【0056】
図16の1630は、ビニルポリマーおよびアクリレート生体適合性ポリマー系の使用を記載したフローチャートを示している。梗塞ゾーンに注射されると、ビニルポリマー/アクリレート剤は水に接触し、ポリマーが沈殿して梗塞領域の周囲の組織を補強する。一つの態様において、該ビニルポリマー/アクリレート剤には、ポリビニルブチラール、PBMA−HEMA、PEMA−HEMA、PMMA−HEMA、並びにエタノール、アセトンおよびI−PA中に溶解する他のアクリレート共重合体が含まれる。もう一つの態様において、梗塞領域に導入される該ビニルポリマー/アクリレート剤は、固相または溶融相の形成プロセスを有するEVALTMであってよい。EVALTM樹脂は、高度の結晶性構造を有している。熱成形等級のEVALTM樹脂は単斜晶系構造を有するのに対して、殆どのポリオレフィンは六方晶系または斜方晶系のタイプの構造を有している。この特徴は、その熱成形能力内での可撓性を提供する。もう一つの態様において、梗塞領域に導入されるビニルポリマー/アクリレート剤は、BUTVARTM(ポリビニルブチラール)であってよい。一つの態様において、当該薬剤はジグライム中のP(BMA−コ−MMA)(Aldrich Chem.)であってよい。もう一つの態様において、該薬剤はEVALTM、即ち、ジメチルアセタミド中のエチレンおよびビニルアルコールの共重合体(EVAL Co. of America, Houston, TX)であってよい。もう一つの態様において、該ポリマーは、ジグライム中のPLGA[ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)](Birmingham Polymers, Birmingham, Alabama)であってよい。
【0057】
他の成分は、内因性コラーゲン沈着のための基体として作用し、また図16に記載した沈殿または残存したミクロ粒子を、分解から保護する可能性がある。補強ゲルが分解するにつれて、高度に安定且つ平滑なミクロ粒子は、当該部位を占有している繊維芽細胞に露出される。これはコラーゲンの産生をトリガーして、分解するゲルを置換する。従って、梗塞ゾーンは、暫定的ゲルのコラーゲン置換によって補強され得る。分散される材料には、PMMA、P(MMA−コ−BMA)、炭素ミクロ粒子(Durasphere)、ポリスチレン、架橋アクリルヒドロゲル、およびPLGAからなるミクロ粒子の群が含まれる。もう一つの態様において、架橋アクリルヒドロゲルは、例えばHEMA、AA、AMPS、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレンスルホネート、および二官能性もしくは三官能性モノマーを含んでよい。この二官能性もしくは三官能性モノマーは、EGDMAおよびDVBであってよい。耐久性ミクロ粒子のもう一つの例には、熱分解性の炭素コーティングされたミクロ粒子が含まれる。熱分解性炭素コーティングされたミクロ粒子の一例は、最初は尿失禁のために製造された(Carbon Medical Technologies)、塞栓形成粒子として使用するためのトリスアクリルゼラチンミクロ粒子である(Biosphere)。加えて、高度に結晶性の(且つ加水分解抵抗性の)PLGAミクロ粒子の使用は、キャリアゲルを長持ちさせ、またコラーゲン沈着のための有用な基体を提供することができる。
【0058】
1以上の造影剤(1540)および/または適切な治療剤(1550)が、梗塞領域の治療剤として、先に詳述した成分に随伴されてよい。該造影剤または治療剤は、梗塞エリアに導入される前に構造成分に結合されてよく、またはこれに溶解されてよい。該造影剤は、X線またはMR分析における検出のために使用されてよい。補強成分に随伴し得る薬剤には、血管新生剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、SRCAポンプ(筋小胞体カルシウムポンプ)増加剤、ホスホランバン阻害剤および抗アポトーシス薬が含まれるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、小分子、ペプチド、タンパク質または遺伝子産物の形態であってよい。小分子は任意に、補強成分の組織への付着を改善するために、溶液の成分に結合されてよく、溶液中に分散されてよく、溶液に溶解されてよい。一つの態様は、ペプチドを、付着プロセスを媒介する保存された領域に結合させるものである。もう一つの態様は、補強成分の存在下に、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン)モチーフとの特定のペプチド結合体の使用を含むものである。更なる態様において、該RGDモチーフペプチドは、フォンビルブラント因子、オステオポンチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンを含んでよい。
一つの態様においては、何れの記載された薬剤も、約1μL〜1mLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、記載された何れの薬剤も、約1μL〜300μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様においては、記載された何れの薬剤も、約1μL〜100μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様において、何れの記載された薬剤も、約1μL〜50μLの容量において1又は2回以上の投与で導入されてよい。
【0059】
〔構造的補強のためのコラーゲン架橋剤〕
図17は、心室の梗塞領域を構造的に補強する方法(1710)を記載したフローチャートを図示している。先に述べたように、薄化は、梗塞領域のリモデリングに続く事象のカスケードにおいて重要な因子である。薄化に寄与する一つの因子は、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)によるコラーゲン分解および血行力学的ストレスに起因するコラーゲンヘリックスの滑りである。コラーゲンの滑りは、更なるリモデリングおよび遠隔ゾーンの肥厚をもたらす梗塞瘢痕の拡大を生じる。コラーゲンの滑りを防止するための先の発明は、縫合術を含む(Kelley et al., Circ., 1999 ; 99: 135-142)。この方法は、心外膜ポリマーメッシュを該領域に直接縫合することを含む。一つの態様によると、薬剤は、コラーゲン滑りを防止するように、最小侵襲法によって当該領域に導入されるであろう。一つの態様において、薬剤または分散液は複数回の注射によって梗塞ゾーンに導入され、次いで、該薬剤はコラーゲン瘢痕と反応してそれを架橋するであろう。これにより、局所壁に対して滑りの防止および強度をもたらす。一つの態様において、当該薬剤(上記で詳述したもの)は、開胸手術の間に最小侵襲法によって梗塞ゾーンに注射されてよい。もう一つの態様において、最小侵襲法は、剣状突起下(subxyphoid)注射および経皮注射を含んでよい。もう一つの態様において、梗塞ゾーン中への経皮的導入は、心室内ニードル、経血管針カテーテルおよび逆行性静脈灌流のうちの一つを含んでよい。
造影剤または治療剤は、梗塞エリアに導入されるに先立って、構造成分に結合されても、または構造成分中に溶解されてもよい。該薬剤については詳述した。
幾つかの可能な架橋剤が図18に示されており、コラーゲンの滑りを防ぐ(1730)ための可能な薬剤(1720)を示している。梗塞領域に注射されたこの薬剤は、多官能性であってよい(ヘテロポリマーまたはホモポリマー)。架橋剤のもう一つの重要な特徴は、コラーゲン(I型およびIII型)のアミノ酸の側鎖に架橋する該架橋剤の能力である。一つの態様において、当該薬剤は、生体適合性の水混和性溶媒に可溶であって、心筋中に存在する水溶液により分散系から抽出されることができる。これは、該架橋剤が梗塞領域の中に沈殿することを可能にし、当該エリア外への架橋剤の移動を最小化する。もう一つの態様において、架橋剤の存在下で使用される前記生体適合性の溶媒は、ジグライムおよびジメチルイソソルビドであってよい。コラーゲンは、多数のリジン残基およびヒドロキシプロリン残基でできており、これら残基は、それぞれ一級アミン基およびヒドロキシル基の反応性側鎖基を有している。以下の例において、架橋剤はこれら側鎖基の少なくとも一つと反応する。図18の1810は、コラーゲンを架橋するために、ポリエポキシ官能樹脂を使用する方法を記載したフローチャートを示している。一つの態様では、ポリエポキシ官能樹脂が梗塞領域に導入されてよい。もう一つの態様では、ポリエポキシ官能樹脂は、ビスフェノールAエポキシ(Shell 828)、エポキシ−ノボラック樹脂(Ciba1138 及び1139, Dow 431)、グリシジルメタクリレートのホモポリマー(GMA)、またはGMAと他のアクリレートとの共重合体を含んでよい。もう一つの態様において、ポリエポキシ官能樹脂は多官能性エポキシドを含んでよい。もう一つの態様において、ポリエポキシ官能樹脂はアクリレートを含んでよい。後の樹脂、即ち、多官能性エポキシドおよびアクリレートは、八つのエポキシドまたはアクリレート官能基をもったキュービックシリコーン(Silsesquixanes)に基づくものである。もう一つの態様において、該ポリエポキシ官能樹脂は、四官能性エポキシドシリコーンを含んでよい。もう一つの態様において、該ポリエポキシ官能樹脂は、二官能性エポキシドシリコーンを含んでよい。
【0060】
図18の1820は、架橋剤としてのポリイソシアネートの使用を記載したフローチャートを示している。一つの態様において、コラーゲンを架橋するために使用される該架橋剤は、ポリイソシアネートを含んでいてよい。もう一つの態様において、該ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含んでよい。これら生成物の両者は、それぞれ、DESMODUR N 100およびDESMODUR 3300の下で商業的に製造される(バイエル社から商業的に入手可能)。図18の1830は、可能なコラーゲン架橋剤としての芳香族ハロゲン化化合物の使用を説明するフローチャートを示している。一つの態様において、コラーゲンを架橋して滑りを防止し、梗塞領域を構造的に補強するために使用される該架橋剤は、ハロゲン化された化合物を含んでよい。もう一つの態様において、コラーゲンを架橋するために使用されるハロゲン化合物は、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(DFNB)を含んでよい。
植物性タンニンのようなポリヒドロキシ芳香族(レゾルシノール基)化合物が、動物獣皮を皮革に加工するためコラーゲンの架橋に使用されてきた。図18は、コラーゲン架橋のためのレゾルシノール基の使用を記載したフローチャートを示している。溶媒可溶性のレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂は、多くのレゾルシノール基を含んでいる。メチレンブリッジおよび/またはエーテルブリッジが、レゾルシノール基を連結する。レゾルシノール(RESORCINOL商標)はコラーゲンを架橋できるが、一つの問題は、モノマー形態では腐蝕性且つ水混和性であることである。一つの態様において、コラーゲンを固めて梗塞領域を構造的に補強する架橋剤は、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂であってよい。
【0061】
図18の1850は、梗塞領域におけるコラーゲンの滑りを防いで心室壁を構造的に補強する可能な架橋剤としての、アクリレート基で終端する薬剤の使用を説明するフローチャートを示している。このようなアクリレート終端剤は、コラーゲンの一級アミン基と反応して、安定化架橋を形成する。一つの態様において、該架橋剤はアクリレート終端剤であってよい。もう一つの態様において、コラーゲンを架橋するのに使用されるアクリレート終端剤は、水不溶性架橋剤であるウレタン−アクリレート類およびエポキシ−アクリレート類のうちの一つであってもよい。これらの化合物は商業的に入手可能である(Cognis Corp, OH)。架橋剤のもう一つの例が、図18のフローチャートの1860に示されている。リジルオキシダーゼは先に述べたように、単独または他の物質と組合せて、コラーゲンを架橋してコラーゲンの滑りを防止し、梗塞領域における構造的補強剤として使用することができる。リジルオキシダーゼは、リジン側鎖基を酸化的に脱アミノ化して、コラーゲンとの強い架橋結合を形成できる反応性アルデヒド基を形成する酵素である。一つの態様においては、存在するコラーゲンを架橋して滑りを防止するために、リジルオキシダーゼが梗塞領域に導入されてよい。
図18の最後のフローチャート例において、1870は、梗塞領域においてコラーゲンを架橋および安定化するための、ミクロ粒子の使用を記載したフローチャートを示している。一つの例としては、表面活性剤フリーの狭いサイズ分布のスチレンラテックス粒子の使用が挙げられ、該粒子は、クロロメチル、エポキシおよびアルデヒドを有する表面官能基も含んでいる。この表面のアルデヒド基は密に充填されてよく、従って、安定な結合のためのホウ化水素還元は不要であろう。クロロメチル基は一級および二級アミンと反応して、安定な架橋を形成する。他の可能な反応性官能基としては、スクシンイミジルエステル、ベンゾトリアゾールカーボネートおよびp−ニトロフェニルカーボネートが挙げられ得る。他の可能な官能基が使用されてもよい。一つの態様において、ミクロ粒子のサイズ限界は、マイクロメートル未満ないし1桁台のマイクロメートルサイズを含むものであってよい。このサイズ範囲は、当該部位から逆流するミクロ粒子が塞栓の危険を生じるのを防止する。他の態様において、架橋剤は、表面活性剤フリー且つ官能性を持たせたスチレンラテックスミクロ粒子であってよい。これらスチレンミクロ粒子の幾つかの例が存在する。商業的に入手可能なスチレンミクロ粒子の例は、インターフェイシャル・ダイナミック・コーポレーション(Interfacial Dynamics Corporation)社およびマグスフィア(Magsphere)社によって製造されているものである。
【0062】
加えて、図17および図18に示されたこれら薬剤の何れか一つは、1以上の造影剤(1740)、および/または当該領域の治療のための適切な薬剤(1750)を伴ってもよい。この造影剤または治療剤は、梗塞エリアに導入される前に、構造成分に結合または溶解されてもよい。そのように補強成分に付随し得る薬剤としては、血管新生剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、ARCAポンプ増加剤、ホスホランバン阻害剤および抗アポトーシス薬が挙げられるが、これらに限定されない。これら薬剤は、小分子、ペプチド、タンパク質または遺伝子産物の形態であってよい。小分子は、補強成分の組織への付着を改善するために、溶液の成分に結合されても、溶液中に分散されても、または溶液中に溶解されてもよい。一つの態様は、ペプチドを、接着プロセスを媒介する保存された領域と結合させることである。もう一つの態様としては、補強成分の存在下においてRGD(アルギニン(R)−グリシン(G)−アスパラギン(D))モチーフと特異的に結合するペプチドの使用が挙げられる。更なる態様において、RGDモチーフペプチドは、フォンビルブラント因子、オステオポンチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンを含む。
【0063】
〔心筋浮腫の防止および梗塞領域を「セメンテーションすること(cementing)」〕
図19は、MI直後(1900)の、凝固因子の導入を説明するフローチャートを示している。MI後プロセスの初期応答の一つは、心筋浮腫である。この浮腫は、梗塞後数時間内に認められる血管外遊出した血液からなる。それに続いて、次の数時間以内に浮腫が解消する。MI直後に起こる過程は、梗塞領域壁が厚くなり、次いで薄化することである。図19に示した本発明は、1以上の凝固因子を当該領域に導入し、それによって凝固したばかりの血液を「セメンテーションすること」により壁を補強し、且つ壁を厚くする(1910)。図19の1920/1930は、二重溶液技術を使用して血液を凝固させる一つの方法を示している。一つの態様においては、第一の溶液(1920)が、塩化カルシウムおよびトロンビンを含んでおり、第二の溶液(1930)は、フィブリノーゲンおよびトラネキサム酸(transexamic acid)を含んでいる。トラネキサム酸は、抗フィブリン分解剤である。これら二つの溶液の梗塞領域への導入は、引続き局部的な血液の凝固を生じ、該凝固は当該領域内において構造的補強塊(1940)を形成し、梗塞部位の薄化を防止する。もう一つの態様では、凝固誘導溶液を梗塞ゾーンに送達するために、静脈内加圧灌流を使用してよい。これは、動脈循環の中への凝血塊の放出の可能性を防止する。図19の1950は、局部的な凝血を誘導するための、剪断活性化された血小板画分の使用を記載したフローチャートを示している。この血小板画分は、MI患者自身の血液または他の供給源から単離されてよい。図19の1960は、凝血カスケードの、他のイニシエータのフローチャートを示している。これらの因子は、内因性因子および外因性因子と呼ばれる複数の因子を包含する。内因性因子は、外傷の不存在下でも凝血を開始させる。外因性因子は、外傷によって生じる凝血を開始させる。一つの態様において、心筋浮腫を停止して梗塞ゾーンの心室壁を補強するために使用される凝結因子は、フォンビルブラント因子(vWF)、高分子量キニノゲン(HMWK)、フィブリノーゲン、プロトロンビン、および組織因子III−Xを含んでよい。本発明のもう一つの態様では、梗塞領域壁に増大した引張り強度を与え得るような、先に述べた凝血因子の何れかの組合せを使用してもよい。
【0064】
〔梗塞領域で使用される、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤〕
MI外傷が生じた後に、マクロファージが梗塞領域に浸潤する傾向がある。該マクロファージは、マトリックスメタロプロテイナーゼ類(MMP)を放出する。亜鉛含有エンドプロテイナーゼ科のメンバーとして、MMPは構造的類似性を有するが、各々の酵素は異なる細胞によって産生された異なる基質特異性を有しており、また異なる誘導能を有している。これらの酵素は、当該梗塞ゾーンにおいて破壊を起こさせる。MMPによって破壊される一つの重要な構造的成分は、細胞外マトリックス(ECM)である。ECMは細胞を取囲んで支持する複雑な構造的実体であり、哺乳類組織内に見られる。ECMは、結合組織と称されることが多い。ECMは、三つの主要な分類の生体分子で構成される:即ち、構造タンパク質、例えば、コラーゲンおよびエラスチン;特殊化されたタンパク質、例えばフィブリン、フィブロネクチン、およびラミニン;およびプロテオグリカンである。これらはタンパク質コアで構成されており、これに、グリコサミノグリカン類(GAG)と称するECMの極めて複雑な高分子量成分を形成する長鎖の反復二糖類単位が結合されている。コラーゲンはECMの主要な成分であり、MMPは、ECM分解を誘導してコラーゲン沈着を生じさせる。MMPの阻害剤が存在し(1970)、これら阻害剤の幾つかは組織特異的である。MMPの急性薬理学的阻害、または幾つかの場合にはMMP−9の欠乏、左心室拡張が、マウスの梗塞心臓において減衰されることが以前に立証されている(Creemers, E.et. al. "Matrix Metalloproteinase Inhibition After Myocardial Infarction", A New Approach to Prevent Heart Failure? Circ Res. Vol 89 No. 5,2315-2326, 1994)。このMMPの阻害剤は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)と称される。合成形のMMPI、例えばBB−94、AG3340、Ro32−355b、およびGM6001も存在する。MMPIは、壁の薄化を減少させることによって左心室におけるリモデリングを低減することが、以前に示された。これらの実験は、ウサギに対して行われた。加えて、この研究は、MMPIが心内膜下における新血管新生を減少するのではなく、増大させることをも示した(Lindsey et. al. "Selective matrix metalloproteinase inhibitors reduce left ventricle remodeling but does not inhibit angiogenesis aftermyocardial infarction, "Circulation 2002 Feb. 12; 105 (6): 753-8)。一つの態様において、MMPIは、繊維芽細胞の移動およびコラーゲンの沈着を低減することにより、リモデリングプロセスを遅延させ、またECM分解を防止し、白血球流入を減少させ、壁ストレスを低減するために、梗塞領域に導入されてよい。一つの実施例において、MMPIは、記載した構造的補強剤の何れかを梗塞領域に導入することと組合せて、梗塞領域に導入されたTIMPを含んでよく、これにはTIMP−1、TIMP−2、TIPM−3およびTIMP−4が含まれるがこれらに限定されない。もう一つの態様においては、組換えTIMPの外因性の投与により、天然に存在するMMPSの阻害剤が増大されてもよい。もう一つの態様において、MMPIは、記載した構造的補強剤の何れかを梗塞領域に導入することと共に、梗塞領域に導入される合成的に誘導されたMMPIを含んでもよい。MMPIの梗塞ゾーンへの導入は、幾つかの異なる方法で達成されてよい。重要なことは、これらMMPI剤の導入が、最小侵襲技術によって達成されることである。一つの態様において、MMPI剤は、ECM分解を防止するために最小侵襲法によって当該領域に導入されるであろう。薬剤または懸濁液は、一つの態様においては、梗塞領域への多回注射によって導入されるであろう。これはECM分解の防止、および局所壁に対する増大した強度をもたらす。一つの態様において、MMPI剤は、最小侵襲法を介して、開胸手術の際に梗塞ゾーンに注入してよい。もう一つの態様において、この最小侵襲法は、剣状突起下(subxyphoid)的および経皮的注射のうちの一つを含んでよい。もう一つの態様において、梗塞ゾーンへの経皮的導入は、心室内ニードル、経血管カテーテルおよび逆行性静脈灌流のうちの一つを含んでよい。加えて、MMPI剤は、懸濁液または、例えば図6の三成分系において詳述したミクロ粒子に導入された、徐放処方を介して導入されてよい。一つの態様において、MMPIの導入は、コラーゲンの滑りを防止する何れかの架橋事象後に行ってもよい。もう一つの態様において、架橋剤は、MMPIの導入の前に、ターゲッティングされる梗塞エリアから除去されてもよい。
【0065】
MIの後に心筋が顕著に冒されて、組織の一部に無動性または運動障害をもたらす可能性がある。これは、閉塞した左下降性動脈によってMIが生じるときに屡々生じる。組織の20〜40%が冒される中程度の梗塞は、減少した心臓出力を生じ、神経ホルモン系の活性化をもたらす[RAAS(レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系)を介して]。従って、この神経ホルモンの活性化が血圧の増大を生じさせ、心筋に対して更なるストレスをもたらす。この誘導された壊死は炎症性の応答を生じ、これは壊死組織の部位を除去して最終的には心筋の薄化を導く。このサイクルは心筋に対するストレスの増大を伴って継続し、最終的には心不全をもたらす可能性がある。
〔誘導可能なゲル系による梗塞ゾーンの構造的補強〕
図20は、梗塞ゾーンの構造的補強のための、光重合性ヒドロゲルの梗塞領域への導入(2000)を記載したフローチャートを示している。ヒドロゲルは、組織エンジニアリング適用において以前に使用されている。これらのゲルは生体適合性であり、血栓症または組織損傷を起こさない。これらのヒドロゲルは、紫外線(UV)または可視光の存在において、光開始系に依存してin vivoおよびin vitroで光重合されてよい。光重合する材料は、重合速度によって空間的かつ時間的に制御され得る。これらのヒドロゲルは非常に迅速な硬化速度を有する。モノマーまたはマクロマー形態のヒドロゲルは、光開始剤と共に、増強のために梗塞ゾーンに導入されてよい。これらヒドロゲル材料の例には、PEGアクリレート誘導体、PEGメタクリレート誘導体、または改変多糖が含まれる。
【0066】
可視光(2030/2160)を使用して、開始剤、例えばQuanticare QTXの存在下に、PEG8000に基づくポリオキシエチレングリコール(PEG)−コ−ポリ(α−ヒドロキシ酸)共重合体(2100)の界面光重合を開始してよい。開始剤である塩化2−ヒドロキシ−3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ]−N,N,N−トリメチル−1−プロパニウム光開始剤は、Quanticare QTXとして入手すればよい。これは、紫外線および/または可視光線を吸収して励起状態を形成し、その後に該励起状態が電子供与性部位と反応して、遊離基を発生し得る特異的な水可溶性の光開始剤である。この技術は、ブタ大動脈組織に付着して、導入領域に順応したヒドロゲルバリアをもたらすことを示すために使用されてきた。得られたマトリックスはin vitroで最適化されて、厚さが5〜100μmのバリアの形成を生じた(Lyman, MD et. al., "Characterization of the formation of interfacially photopolymerized thin hydrogels in contact with arterial tissue Biomaterials", 1996 Feb. 17(3): 359-64)。足場(2004/2130)は、先に述べた最小侵襲法を用いて、心室の望ましいエリアのみに向けられてよい。構造的補強剤は、それが除去または分解されるまで、その場所に残留できるであろう。
【0067】
一つの態様は、ベンゾイン誘導体、ヒドロキシアルキルフェノン類、ベンジケタール類およびアセトフェノン誘導体、または同様の化合物の梗塞ゾーンへの導入を含んでいる。これらの光開始剤は、UV光に露出されると、光開裂または水素引き抜きによってラジカルを形成し、反応を開始させる。図21A〜図21E参照。UVまたは可視光の光源は、図21Cに示したカテーテル(2160)(例えば、光ファイバーチップカテーテル)またはカテーテル上のリードによって、または経皮的に供給されてよい。図22A〜図22Bは、感光性材料を送達するために使用し得るカテーテルアセンブリーを示している。カテーテル(2210)は、一以上の薬剤(2230)のための少なくとも一つのルーメン、および送達された薬剤の改変のための光源(2220)を備えた送達デバイスを提供するように設計される。カテーテルコントローラ(2240)は、光源(2220)のためのスイッチ(2250)および薬剤送達のためのコントローラ(2260)を収容してよい。もう一つの態様において、光開始剤であるカンファーキノンが使用されてよい。カンファーキノンは、歯科用途に広範に使用されており、467ナノメータのλmaxを有する。例えば、この薬剤は、カテーテルのチップ上のGaN青色LEDによって活性化されることができる。一つの態様は、感光性開始剤の存在下において重合事象を導入するために、送達カテーテル末端での可視光の使用を含んでいる。もう一つの態様は、光開始剤であるカンファーキノンの使用を含んでおり、これは梗塞領域内においてカテーテルチップ上の光によるヒドロゲルの架橋を容易にする。もう一つの態様は、感光性開始剤の存在下で重合事象を誘導するための、UVA光源を備えたカテーテルの使用を含んでいる。可視群における他の重合開始剤には、水溶性遊離ラジカル開始剤である塩化2−ヒドロキシ−3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ]−N,N,N−とリメチル−1−プロパニウムが含まれる。このカスケード事象は、梗塞領域内において、水性形態での適切なビニルモノマーまたはプレポリマーの重合を開始させるために必要な環境を提供する(Kinart et. al. "Electrochemical studies of 2-hydroxy-3-(3, 4-dimethyl-9-oxo-9H-thioxanthen-2-yloxy)-N,N,N-trimethyl-l-propanium chloride", J. Electroanal. Chem 294 (1990) 293-297)。
【0068】
光重合性物質を梗塞領域へ導入する一つの可能性な方法が、図21A〜図21Eに示されている。一つの態様において、光重合性材料は、最小侵襲法を介して、開胸手術の際に梗塞ゾーンに導入される(2130)。もう一つの態様において、この最小侵襲法は、剣状突起下(subxyphoid)的導入および経皮的導入を含む。もう一つの態様において、梗塞ゾーンへの経皮的導入は、心室内ニードル、経血管カテーテルおよび逆行性静脈灌流のうちの一つを含んでよい。単一内腔針カテーテル(2120)を使用して、光重合性材料(2140)を梗塞ゾーンへ導入してもよい。該薬剤が当該領域に導入されたら、幾つかの心臓拍動が、過剰な薬剤を心室の中へと除去し(2150)、この過剰な薬剤は心臓領域から除去される。過剰な物質が除去されたら、重合(2170)を誘導するために光源(2160)が導入されてよい。こうして、構造的補強剤は、組織増強が必要とされる局部的損傷エリアに限定される。図20に示したように、足場は、抵抗性材料または生分解性材料で造られてよい(2050)。生分解性材料の幾つかの例には、PEG−コ−ポリ(α−ヒドロキシ酸)ジアクリレートマクロマー、該共重合体におけるα−ヒドロキシ酸セグメントの長さおよび組成が変化する該材料の誘導体、ポリ(フマル酸プロピレン)−コ−エチレングリコール、およびヒアルロン酸誘導体が含まれる。該ポリマーの分解速度は、該材料が梗塞領域内に残留することが必要とされる最適時間長に従って変化してよい。これらゲルの分解速度は、オリゴ(α−ヒドロキシ酸)の適切な選択により、1日の短期間から4ヶ月の長期間までに亘って改変することができる(Sawhney, A. S. et. al., Bioerodible Hydrogels Based on Photopolymerized Poly(ethylene glycol)-co-poly(a-hydroxy acid) Diacrylare Macromers. Macromolecules (1993) 26,581-587)。これらポリマー鎖は何れも、Quanticare QTXのような光開始剤および光源の存在下で形成されてよい。
【0069】
図21A〜図21Eは、梗塞ゾーンへの、潜在的光重合性材料の導入プロセスを示している。図21Aおよび図21Bは、当該部位(2100および2110)への材料の導入を示している。図21Cは、過剰の材料を心室(2150)の中へ除去することを示している。次いで、図21Cにおいては、該材料を重合させるために、カテーテルを介して光源が導入されてよい(2160)。該材料は、それが分解するときまで、または使用される材料に依存せずに、構造的補強として当該部位(2170)に残留する。
一つの態様においては、何れの記載した薬剤も、約1μL〜1mLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜1mLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様において、何れの記載した薬剤も、約1μL〜300μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。もう一つの態様においては、何れの記載した薬剤も、約1μL〜100μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。好ましい態様においては、何れの記載した薬剤も、約1μL〜50μLの容積において1又は2回以上の投与で導入されてよい。
【0070】
図24Aおよび図24Bは、二成分組成物を送達するために使用し得るカテーテルアセンブリーを示している。図24Aにおいて、成分1(1240)および成分2(1420)は、送達デバイスの別々のルーメンに収容されている(2430)。これら成分の送達は、当該装置の基部において、ハンドル(2470)によって制御される。ハンドル(2470)が回転されて一つのニードルが延出され、次いで他方が延出される。一度には一方のニードルだけが連動する。図24Bに示された断面図は、第一のニードルポート(2450)および第二のニードルポート(2460)、並びにニードルの延出を制御する中央腱(2480)を示している。当該装置の先端(2490、図24C)においてハンドルが回転され、ニードルが延出する一方、他のニードルは引込められる。一つの態様において、このカテーテル装置は、左心室心筋内の梗塞領域へと成分を送達するために使用されてよい。もう一つの態様においては、当該カテーテル装置を使用して第一の成分を当該エリアに送達し、ときには過剰の第一の成分を洗い流した後に、第二の成分を送達してもよい。
図25A〜図25Dは、正確に同じ部位に薬剤を注射する可能性を回避しながら、図24のカテーテル装置を使用して、二成分を梗塞領域へ導入することを示している。図24の送達デバイスを使用して、当該成分を梗塞領域へと送達する。該梗塞は、心内膜と新外膜の間の領域として図示されている。該装置(2540)がこの部位へと進められて、ニードル1(2550)を延出することによって第一の成分が送達され、該成分(2560)が梗塞エリアに撒布される。次いで、このニードル(2550)が引込められる一方、第二のニードル(2570)が延出される。第二の成分(2580)が撒布される。当該エリアへの二つの成分の送達により、ゲル(2590)を形成することができる。
【0071】
図26は、図24および図25に示したカテーテル装置の送達を示している。両方の成分が、カテーテル(例えばバルーンカテーテル)のルーメン(2630/2640)を通して同時に送達される。例えば、第一の成分(2650)は、静脈ルート(2610)を通して送達されてよく、また第二の成分(2660)は、動脈ルート(2620)を通して送達されてよい。この方法は、該成分を微小循環内に含めるために適切な圧力バランスを保証する。これは、静脈側または動脈側への漏れを回避する。静脈側についての駆動圧力は、100mmHgよりも大きく(ΔP2670は毛細管レベル内での当該成分の閉じ込めを保証するように計算される)、動脈側は外圧勾配を必要としない。動脈側は、注入によって達成されてよい。一つの態様において、当該カテーテルは、静脈ツリーを通して第一の成分を送達し、次いで動脈ツリーを通して第二の成分を送達するために使用してよい。この装置は、先に詳述した態様において説明した、何れかの成分組合せ法を送達するために使用されてよい。
〔心室プラグ〕
心室の損傷壁を補強するためのもう一つの方法は、固体物質の損傷エリアへの導入を含んでよい。該固体物質は、該固体物質のプラグを当該部位に導入することによって、当該領域を充填または嵩高くするために使用してよく、また心室のコンプライアンスを増大させてよい。これら材料は、有機ポリマーまたはシリコーンをベースとするポリマー、生分解性ポリマー、操作された生体材料(engineered biomaterial)および/または金属でできている。一つの態様において、該プラグは、該物質を当該エリアに留め、それがそこに残留するのを保証するために、顎部または尖った端部を有してよい。他の態様において、シール剤またはプラグは、心筋梗塞後の薄化する壁に対して嵩高さを加えることができる。これは、損傷エリアにおける弾性係数の増大をもたらし得る。他の態様において、該シール剤またはプラグは、梗塞領域に対する炎症応答を引き起こす場合もある。この炎症応答は、繊維芽細胞の補充および活性化を生じることができる血管新生応答の増大をもたらし、これは追加のコラーゲンを沈着して、薄化する梗塞領域を嵩高くし、この領域の弾性係数を増大させるであろう。更に他の態様は、心室の損傷領域へのプラグの添加を含んでおり、これは壁に強度を付加し、また該領域に対する炎症応答を生じさせる。
【0072】
一つの態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、生体適合性の有機成分を含んでよい。他の態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、生体適合性のシリコーンベースのポリマーを含んでよい。他の態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、生体適合性の生分解性ポリマー、例えば、PLGA、ポリ(ヒドロキシバレレート)およびポリオルトエステルなどを含んでよい。他の態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、生体適合性の非生分解性材料、例えばポリプロピレンおよびPMMAを含んでよい。更なる態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、生体適合性の金属化合物、例えば316L、Co−Cr合金、タンタルおよびチタン等を含んでよい。問題の領域に直接インプラントされるプラグを使用することのもう一つの利点は、側鎖基のような追加の表面成分をプラグに追加することであり得る。これらの側鎖基は、外因的に供給されたコラーゲンまたは内因性コラーゲン、例えばI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンと反応する反応性側鎖基を含んでよい。コラーゲンは有意な数のリジンおよびヒドロキシプロリン残基を含むので、これらの残基は、他の部分と反応できる一級アミノ基およびヒドロキシ基を有する。一つの態様において、心室の損傷領域に供給されるプラグは、コラーゲンにおけるリジンの一級アミンと反応できる表面アルデヒド基を含んでよい。
【0073】
プラグのサイズおよび形状は、状況に応じて変化してよい。例えば、先に述べたポリマープラグは機械加工、射出成形、押出し成形または溶液キャスト成形してよい。一つの態様において、カテーテル装置による送達を容易にするために、プラグの形状は細長く且つ薄くてよい。これらのプラブはまた、プラグが心室の損傷部位に導入されたときに、それが当該部位から滑落するのを防止するように、顎部または側方突起を有してよい。他の態様において、該プラグはネジまたは螺旋に類似した形状に作製されてよい。一つの態様において、該プラグはポリマー材料であってよい。他の態様において、該プラグはSSアンカーを備えたポリマー材料、例えば、プラグを問題の部位の中に埋設するために、アンカーを有するステンレススチール帯を備えたプラグであってよい。プラグのサイズもまた変化してよい。一つの態様において、該プラグの直径は約0.1mm〜約5mmであってよい。他の態様において、該プラグの直径は約0.2mm〜約3mmであってよい。他の態様において、該プラグの長さは約1〜約20mmであってよい。他の態様において、該プラグの長さは約2mm〜約12mmであってよい。プラグのサイズおよび形状に加えて、心室内の領域に供給されるプラグの数もまた、患者の損傷および症状の範囲に応じて変化してよい。一つの態様において、当該領域に供給されるプラグの数は、約1〜約200であってよい。他の態様において、当該領域に供給されるプラグの数は、約5〜約50であってよい。更なる態様において、当該領域に供給されるプラグの数は約2〜約20であってよい。
好ましい態様において、該プラグは、加工された生体適合性の生体材料であってよい。この生体材料は、細胞を損傷領域に補充して、当該部位に追加の強度を与えるために適している。生体材料の一つの例は、SISと称される、ブタ由来の小腸粘膜下組織である。この操作された生体材料は、DePuy・IncおよびCook・Groupから供給され得る。それはステンレススチールの中に収納した状態で入手可能である。SISは、細胞除去された本来の構成の細胞外マトリックス(ECM)を含む、完全な小腸粘膜下組織である。それはまた、外マトリックスに付着した重要な内因性成長因子を含んでいる。SISは、SISに付着する多能性骨髄由来の幹細胞を補充し、治癒を誘導することが以前に示されている。SISは、以前に、回旋腱板損傷、糖尿病性足潰瘍、および股関節を修復するために使用された。SISは、約3〜4月の期間の後に再吸収することが示されている。再吸収の後、治癒した生存組織が該マトリックスを置換する。一つの態様において、SISの小ディスクが心室内の領域(例えば梗塞領域)に共有されてよい。該SISディスクは、損傷した心筋の中へ同様の細胞補充を提供する。これら細胞は、次いで生存可能な筋肉組織に変形し、収縮性の心筋細胞を形成する。
【0074】
説明した何れかのプラグを導入するために使用してよい幾つかの方法が存在する。プラグの導入のための最適なアプローチには、心臓切開手術の際に梗塞領域および/または梗塞領域の境界ゾーンに導入すること;または最小侵襲法、例えば剣状突起下導入および経皮的導入[例えば心室内カテーテルまたは経血管カテーテル(静脈または動脈)]を介しての導入が含まれるが、これらに限定されない。プラグを梗塞領域に導入するための一つの態様は、心臓切開手術の際にプラグを当該部位に直接導入することを含んでよい。
1以上の造影剤および/または適切な治療剤が、先に詳述した成分に随伴してもよい。この造影剤または治療剤は、梗塞領域に導入される前のプラグ成分の中に分散され、結合され、または溶解されてよい。該造影剤は、X線分析またはMR分析における検出のために使用されてよい。補強成分に随伴してよい薬剤には、血管新生剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、SRCA(筋小胞体カルシウムポンプ)ポンプ増加剤、ホスホランバン阻害剤および抗アポトーシス薬が含まれるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、小分子、ペプチド、タンパク質または遺伝子産物の形態であってよい。これらの薬剤は、生物学的効果(例えばインプラントの接着を改善し、細胞を補充し、治癒を促進する)を引出すために、プラグを形成する樹脂混合物の成分に最適に結合されてよく、プラグを形成する前にプラグ溶液中に分散されてよく、プラグを形成する前にプラグ溶液中に溶解されてよく、またはプラグ中に加工されたポケットまたは貯蔵所の中に充填されてよい。一つの態様は、ペプチドを、接着プロセスを媒介する保存された領域と結合させることである。もう一つの態様は、補強成分の存在下において、保存されたRGD(アルギニン(R)−グリシン(G)−アスパラギン(D))モチーフとの特定のペプチド結合体、例えばDDM(アスパラギン酸−アスパラギン酸−メチオニン)の使用を含んでいる。更なる態様において、RGDモチーフペプチドは、フォンビルブラント因子、オステオポンチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンを含んでよい。
上記の明細においては、特定の例示的態様を参照して態様を説明してきた。しかし、特許請求の範囲に詳述した本発明のより広義の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変および変更がなされ得ることは明らかであろう。従って、本明細書および図面は、限定的意味ではなく例示とみなされるべきである。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
実施例1は、心筋梗塞を治療するための、図7に記載した一つの可能な三成分系を示している。図22におけるようなエチレン官能基を備えたフッ素化された分子から出発して、架橋性官能基を合成することができる。フッ素化された分子(2300)に臭素(2310)が付加される。還元されたチオールが迅速に臭素基を置換して、二官能性チオール成分(2320)を形成する。次いで、この二官能性チオール(2330)を、何れもチオール官能基およびRGD(2380)ペプチド配列を備えたテトラアクリロイル(ポリエチレングリコール)(2340)、および二官能性ポリエチレングリコールと反応させることができる。該テトラアクリロイル(ポリエチレングリコール)は、特別なポリマー(製品番号OJOOOOD04;M1=2,000、各アームは500g/モルの分子量、または〜15PEG配列長を有する)として、シアウオーター・ポリマー社(Shearwater Polymers)から得ることができる。それは、三級アミンの存在下で、テトラヒドロキシ末端ポリエチレングリコールおよびアクリロイルの反応によって発生される。
第三の成分は、ポリエチレングリコール官能基を備えたペプチド結合性配列(2350)である。ポリエチレングリコールスペーサ(2370)は、マトリックス成分の立体障害を防止して、ペプチド結合性配列の生体利用性を保証するために、他の二つの成分のスペーサ官能基よりも長くなければならない。これら三つの成分の混合物において、望ましいゲル形成を保証するために、平均の官能基は2以上でなければならない
MIの治療にこの成分系を使用するために、アクリロイル官能基のアリコートは、好ましくは塩基性pHの水中に希釈される。次いで、該アリコートは、二重内腔ニードルにおける内腔に供給するためのシリンジに加えられる。アクリロイル官能基及びチオール官能基を備えたこれら二つの成分は、二重内腔システムまたはカテーテルを通して、梗塞領域に同時に加えられる。これら成分は、当該部位において相互に接触するに至り、高い酸素担持能力を持ったゲルネットワークを形成する。
【0076】
(実施例2)
実施例2は、追加の成分と共に、実施例1の全ての成分を組み込んでいる。心筋細胞へと分化できる成人皮膚細胞が、第二の成分(過フッ化化合物)に加えられる。この細胞は、過フッ化されたチオールと共に注射されてよい。これは、当該細胞の酸素要求性をサポートできるヒドロゲルの形成をもたらすであろう。加えて、該ゲルは、細胞のための栄養素を提供する液体を取込むことによって膨潤し、また細胞の老廃物を除去できると共に、繊維芽細胞の沈着用の細胞性足場として働くことができるであろう。送達および生存できるであろう他の細胞供給源は、成人、胎児および胚の幹細胞(例えば間葉細胞、骨格筋芽細胞等)を含んでよいが、これらに限定されない。
(実施例3)
実施例3は、死亡したラット心臓の梗塞領域へのゲル導入の使用を例示するものである。ex vivoでラット心臓を得て、梗塞領域について該心臓をマッピングした。30マイクロリットル未満の材料を梗塞領域に注射した。10%ポリ(アリルアミン)塩酸塩3.1グラム+35%ポリ(アクリル酸)0.7グラムの系をプロトン付加させ、得られた安定な水溶液を、カテーテルが標的エリアに到達するまで該カテーテル内でpH3.0に維持した。この溶液を、リン酸緩衝食塩水中の10%ゼラチンゲルの中に注入した。注入物は即座にゲル化する。この同じ注入物を、ex vivoのラット心臓に対して使用した。注入物は、梗塞領域において即座にゲル化した。
【0077】
(実施例4)
スプラグ・ドウリー系ラットを、開胸手術、LAD上での結紮により梗塞させた。瘢痕形成させるために7日間生存させ、次いで屠殺した。(Charles River Labs)心臓を除去し、氷冷したPBS中にパッキングした。
1ccのシリンジ(30ゲージニードル)によって、心臓の梗塞領域に注射した。該梗塞領域において以下のポリマーを使用した。
1.PLGA(ポリ酪酸−コ−グリコール酸ポリマー、Birmingham Polymers)、ジグライム中の20%溶液、1%脂肪ブラウンRR(Fat Brown RR)を含む。梗塞壁の中に注射された。組織は直ちに膨潤し、次いで該溶液は梗塞領域内で沈殿する。
2.ポリ(メタクリル酸ブチル−コ−メタクリル酸メチル)、Mr= 100,000ダルトン(Aldrich)、ジグライム中の20%溶液、1%脂肪ブラウンRR(Fat Brown RR)を含む。梗塞壁の中に注射した。組織は直ちに膨潤し、次いで溶液は梗塞領域内で沈殿する。
3.ポリアリルアミン(Aldrich)10%溶液の3.1グラムアリコートを、水中の35%ポリ(アクリル酸)0.7グラムと混合した。加えて、該溶液に1%トルイジン青を加えた。この組成物を梗塞壁に注射した。組織は直ちに膨潤し、溶液は沈殿を生じる。
組織切片(10μmにスライスされたもの)は、染色されたポリマーが、梗塞領域における梗塞組織内で沈殿したことを示した。
限定としてでなく一例として、以下の添付図面の各図において、当該方法および組成物を例示する。
【0078】
上述する本発明の好ましい実施態様は、具体的には、以下の通りである。
(実施態様1)
患者の心室内の梗塞領域を特定すること;および
前記梗塞領域に少なくとも一つの構造的補強剤を送達すること;
を含む方法。
(実施態様2)
少なくとも一つの構造的補強剤を送達することが、梗塞領域の弾性係数を増大させる、実施態様1の方法。
(実施態様3)
少なくとも一つの構造的補強剤を送達することが、心室の薄化を防止する、実施態様1の方法。
(実施態様4)
少なくとも一つの構造的補強剤の送達が、心筋梗塞(MI)後2週間以内に行われる、実施態様1の方法。
(実施態様5)
MIの患者が、少なくとも20パーセントの心室損傷を示している、実施態様1の方法。
(実施態様6)
構造的補強剤が擬似塑性特性を有する、実施態様1の方法。
(実施態様7)
擬似塑性特性を有する構造的補強剤が、ヒアルロン酸、ウシコラーゲン、水中の超純粋高分子量ポリアクリルアミド、分散状態のウシコラーゲン、および高分子量ポリビニルピロリドン(PVP)の群の少なくとも一つからなる、実施態様6の方法。
(実施態様8)
構造的補強剤は材料を液相で梗塞領域に送達することを含み、前記材料は送達されると内因性物質の存在下で固相に移行できる、実施態様1の方法。
(実施態様9)
構造的補強剤が、トロポエラスチン、シアノアクリル酸オクチル、および局所トロンビンと一緒になったコラーゲン由来の粒子の少なくとも一つからなる、実施態様8の方法。
(実施態様10)
更に、少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMPI)を心室に送達することを含む、実施態様1の方法。
(実施態様11)
構造的補強剤を送達することが、処置によって構造的補強剤を心室に導入することを含む、実施態様1の方法。
(実施態様12)
心室領域への処置が、剣状突起下的、経皮的(カテーテルをベースとする)のような少なくとも一つの最小侵襲法または冠動脈バイパス移植(CABG)と組合された開胸手術のような外科的アプローチから選択される、実施態様11の方法。
(実施態様13)
構造的補強剤の心室への経皮的導入が、冠動脈注入、心室内カテーテル、静脈加圧灌流、経血管針カテーテルおよび逆行性静脈灌流からなる少なくとも一つの様式を含む、実施態様12の方法。
(実施態様14)
構造的補強剤を送達することは、溶液中に懸濁された組成物を送達することを含む、実施態様1の方法。
(実施態様15)
組成物がポリメタクリレート組成物を含む、実施態様14の方法。
(実施態様16)
溶液中に懸濁された組成物は、更に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)中に懸濁されたポリ(メタクリル酸n-ブチル−コ−メタクリル酸メチル)を含む、実施態様14の方法。
(実施態様17)
溶液中に懸濁された組成物は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)50/50を含む、実施態様14の方法。
(実施態様18)
溶液中に懸濁された組成物は、更に、ジエチレングリコールジメチルエーテル中に懸濁されたポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、実施態様14の方法。
(実施態様19)
少なくとも一つの構造的補強剤を梗塞領域に送達することは、心室のコンプライアンスを増大することができる、実施態様1の方法。
(実施態様20)
送達ルーメン;
前記送達ルーメンから送達される薬剤;および
構造的補強剤を含む少なくとも一つの薬剤;
を含むキットであって、
前記構造的補強剤は、心室内においてマトリックス生成物を形成できる前記キット。
(実施態様21)
更に、心室の梗塞領域内においてマトリックス生成物を形成することを含む、実施態様20のキット。
(実施態様22)
更に、送達デバイスを含む、実施態様20のキット。
(実施態様23)
構造的補強剤が液相の材料を含み、前記材料は、梗塞領域に送達されると、内因性物質の存在下で固相に移行することができる、実施態様20のキット。
(実施態様24)
送達ルーメン;および
前記送達ルーメンから送達される薬剤;
を含むキットであって、
前記薬剤は心室のコンプライアンスを増大することができる、前記キット。
(実施態様25)
更に、送達デバイスを含む、実施態様24のキット。
(実施態様26)
液相の構造的補強剤を心室に送達することを含む方法であって、
前記構造的補強剤は、環境温度が哺乳動物患者の体温に近い場合に固体に移行できる、前記方法。
(実施態様27)
液相の構造的補強剤を心室に送達することが、液相の構造的補強剤を心室の梗塞領域へ送達することを含む、実施態様26の方法。
(実施態様28)
構造的補強剤は、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO100−PPO65−PEO100、PEO78PPO30PEO78、PEO96−PPO69−PEO96(プルロニクスF127)、トリブロックポリ(ラクチド−コ−グリコリド)−ポリエチレングリコール共重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(NIPAM)、ポリアクリル酸とポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)との共重合体(99/1)、並びに絹エラスチン、コラーゲンおよびラミニンタンパク質の組合せのうちの少なくとも一つを含む、実施態様26の方法。
(実施態様29)
第一の材料と、それと異なる第二の材料を心室に送達することを含む方法であって、
前記第一の材料および前記第二の材料は、最終生成物の成分である前記方法。
(実施態様30)
第一の材料はポリアニオン材料を含み、第二の材料はポリカチオン材料を含む、実施態様29の方法。
(実施態様31)
第一の材料はポリスチレンスルファナートを含み、第二の材料はDEAEデキストランを含む、実施態様30の方法。
(実施態様32)
最終生成物が心室の薄化を防止する、実施態様29の方法。
(実施態様33)
少なくとも二つの送達ルーメン;
各送達ルーメンから送達される薬剤;および
第一の材料と、それと異なる第二の材料;
を含むキットであって、
前記第一の材料および前記第二の材料が最終生成物の成分であり、前記最終生成物を心室内で形成できる、前記キット。
(実施態様34)
第一の材料および第二の材料が別々のルーメン内に収容されている、実施態様33のキット。
(実施態様35)
心室の梗塞領域内で最終生成物を形成することを更に含む、実施態様33のキット。
(実施態様36)
送達デバイスを更に含む、実施態様33のキット。
(実施態様37)
送達デバイスが、第一の材料および第二の材料のための別々のチャンバを含んでいるデュアルチャンバ送達デバイスを含む、実施態様36のキット。
(実施態様38)
構造的補強剤を心室に送達することを含む方法であって、
前記構造的補強剤が、光源および光開始剤に曝された場合に相転移できる光重合性材料を含む、前記方法。
(実施態様39)
重合性材料が、PEGアクリレート誘導体、PEGメタクリレート誘導体および改変多糖類のうちの少なくとも一つを含む、実施態様38の方法。
(実施態様40)
光開始剤が、ベンゾイン誘導体、ヒドロキシアルキルフェノン類、ベンジルケタール類およびアセトフェノン誘導体のうちの少なくとも一つを含む、実施態様38の方法。
(実施態様41)
光源に曝された場合とは、光源を備えたカテーテルによって光源に曝されることを含む、実施態様38の方法。
(実施態様42)
構造的補強剤を心室の梗塞領域に送達することを更に含む、実施態様38の方法。
(実施態様43)
構造的補強剤が心室のコンプライアンスを増大できる、実施態様38の方法。
(実施態様44)
構造的補強剤が心室の薄化を防止できる、実施態様38の方法。
(実施態様45)
送達ルーメン;および
前記送達ルーメンから送達される材料;
を含むキットであって、
前記材料が、光源に曝された場合に相転移できる少なくとも一つの光重合性材料と、光開始剤とを含む前記キット。
(実施態様46)
更に、送達デバイスを含む、実施態様45のキット。
(実施態様47)
送達デバイスは、少なくとも一つの送達ルーメンと少なくとも一つの光源とを備えた装置を含む、実施態様45のキット。
(実施態様48)
心室送達用の装置であって、
少なくとも一つの送達ルーメンに接続されている少なくとも一つの送達ポート;
少なくとも一つの薬剤の送達を制御するために、前記送達ルーメンに接続されている少なくとも一つの制御機構;
光源を収容している少なくとも一つの第二のポート;および
前記光源の照明を制御するために、前記光源に接続されている少なくとも一つの制御機構;
を含む前記装置。
(実施態様49)
光源を収容している第二のポートは、少なくとも一つの送達ルーメンに隣接している、実施態様48の装置。
(実施態様50)
光源を収容する第二のポートは、少なくとも一つの送達ポートを取り囲んでいる、実施態様48の装置。
(実施態様51)
更に、手動または自動の制御機構を含む、実施態様48の装置。
(実施態様52)
心室の梗塞領域に、前記領域で血液を凝固させることができる薬剤を送達することを含む方法。
(実施態様53)
梗塞領域に前記領域で血液を凝固させることができる薬剤を送達することが、心筋梗塞後4時間以内に行われる、実施態様52の方法。
(実施態様54)
血液を凝固させることが心室の薄化を防止する、実施態様52の方法。
(実施態様55)
梗塞領域内で血液を凝固させることができる薬剤が、フィブリン糊、剪断活性化された血小板画分、内因性凝固カスケードイニシエータおよび外因性凝固カスケードイニシエータからなる群のうちの少なくとも1つからなる、実施態様52の方法。
(実施態様56)
フィブリン糊が二成分系を使用することを含む、実施態様55の方法。
(実施態様57)
二成分系が、更に、塩化カルシウム溶液およびトロンビン溶液の少なくとも一つの溶液と、フィブリノーゲンおよびトラネキサム酸の第二の溶液とを含む、実施態様56の方法。
(実施態様58)
送達ルーメン;および
前記送達ルーメンから送達される薬剤;
を含むキットであって、
前記薬剤は、心室の梗塞領域で血液を凝固させることができる前記キット。
(実施態様59)
送達デバイスを更に含む、実施態様58のキット。
(実施態様60)
ポリマー剤を含有する第一の生体適合性成分;および
過フッ化部分を含有する第二の生体適合性成分;
を含む組成物であって、
前記第一の成分と前記第二の成分が一緒になって、心室内でマトリックス生成物を形成できる前記組成物。
(実施態様61)
更に、心室の梗塞領域内でマトリックス生成物を形成することを含む、実施態様60の組成物。
(実施態様62)
第一の生体適合性ポリマー剤が、多官能性スペーサ基を有するポリマーを含む、実施態様60の組成物。
(実施態様63)
多官能性スペーサ基を有するポリマーが、更に、少なくとも一つのチオール部分を含む、実施態様62の組成物。
(実施態様64)
多官能性スペーサ基を備えたポリマーが、更に、少なくとも一つのアクリロイル部分を含む、実施態様62の組成物。
(実施態様65)
過フッ化部分が、少なくとも一つの二官能性過フッ化成分を含む、実施態様60の組成物。
(実施態様66)
少なくとも一つの二官能性過フッ化部分が、少なくとも一つのチオール官能基を含む、実施態様65の組成物。
(実施態様67)
少なくとも一つの二官能性過フッ化成分が、少なくとも一つのアクリロイル官能基を含む、実施態様65の組成物。
(実施態様68)
過フッ化部分が、少なくとも一つのエチレン部分を含む、実施態様60の組成物。
(実施態様69)
スペーサ基を含有するヘテロ官能成分を更に含む実施態様60の組成物であって、前記スペーサ基は、その第一の側に反応性官能基を有し、かつその第二の側に細胞結合性ペプチド配列を有する、前記組成物。
(実施態様70)
細胞結合性ペプチド配列が、ポリエチレングリコール部分を含有する薬剤を更に含む、実施態様69の組成物。
(実施態様71)
ポリエチレングリコール部分が、少なくとも2つの他の結合成分の立体障害を最小にするのに充分な長さを含む、実施態様70の組成物。
(実施態様72)
細胞性成分を更に含む、実施態様69の組成物。
(実施態様73)
細胞性成分が、心筋細胞様の細胞に分化できる細胞を含む、実施態様72の組成物。
(実施態様74)
過フッ化部分がペルフルオロカーボン化合物を含む、実施態様60の組成物。
(実施態様75)
ペルフルオロカーボン化合物が、1,2−ビス(ペルフルオロブチル)エタン、(1−ペルフルオロプロパン−2−ペルフルオロヘキシル)エタンおよびペルフルオロデカリンからなる群の少なくとも一つを含む、実施態様74の組成物。
(実施態様76)
生体適合性ポリマー形成剤を含む第一の成分を送達すること;および
生体適合性過フッ化部分を含有する第二の成分を送達すること;
を含む方法であって、
前記第一の成分および前記第二の成分が一緒になって、心室内でマトリックス生成物を形成できる、前記方法。
(実施態様77)
心室内でマトリックス生成物を形成することが、前記心室の梗塞領域内においてマトリックス生成物を形成することを含む、実施態様76の方法。
(実施態様78)
生体適合性の官能性過フッ化薬剤が、ペルフルオロカーボン化合物を含む、実施態様77の方法。
(実施態様79)
生体適合性ポリマー形成剤が、多官能性スペーサ基を有するポリマー形成剤を含む、実施態様76の方法。
(実施態様80)
スペーサ基を含有するヘテロ官能成分を送達することを更に含む実施態様76の方法であって、
前記スペーサ基は、その第一の側には反応性官能基を有し、その第二の側には細胞結合性ペプチド配列を有する、前記方法。
(実施態様81)
細胞性成分を送達することを更に含む、実施態様76の方法。
(実施態様82)
生体適合性成分を送達することが、第一の成分および第二の成分のための別々のチャンバを備えた送達デバイスによる送達を含む、実施態様76の方法。
(実施態様83)
生体適合性ポリマー形成化合物を送達することおよび生体適合性の過フッ化部分を心室に送達することが、処置によって第一および第二の成分を導入することを含む、実施態様76の方法。
(実施態様84)
心室領域への処置は、剣状突起下的若しくは経皮的(カテーテルをベースとする)のような最小侵襲法、または冠動脈バイパス移植(CABG)と組合せた開胸手術のような外科的アプローチの少なくとも一つから選択される、実施態様83の方法。
(実施態様85)
心室への経皮的導入は、冠動脈内注入、心室内カテーテル、静脈加圧灌流、経血管針カテーテルおよび逆行性静脈灌流からなる様式のうちの少なくとも一つを含む、実施態様84の方法。
(実施態様86)
心室の梗塞領域内にマトリックス生成物を形成することは、前記心室の薄化を防止することができる、実施態様77の方法。
(実施態様87)
心室の梗塞領域内にマトリックス生成物を形成することは、前記心室のコンプライアンスを増大することができる、実施態様77の方法。
(実施態様88)
送達ルーメン;
前記送達ルーメンから送達される薬剤;
ポリマー形成剤を含む第一の生体適合性成分;および
過フッ化部分を含有する第二の生体適合性成分と
を含むキットであって、
前記第一の成分および前記第二の成分が一緒になって、心室内においてマトリックス生成物を形成できる、前記キット。
(実施態様89)
心室の梗塞領域内でマトリックス生成物を形成することを更に含む、実施態様88のキット。
(実施態様90)
第一の成分および第二の成分が別々のチャンバ内に収容されている、実施態様88のキット。
(実施態様91)
送達デバイスを更に含む、実施態様88のキット。
(実施態様92)
送達デバイスは、第一の成分および第二の成分のための別々のチャンバを含有するデュアルチャンバ送達デバイスを含む、実施態様91のキット。
(実施態様93)
心室送達用の装置であって、
少なくとも二つの薬剤送達ルーメンAおよびB;
一つは動脈送達用ルーメンAに一つは静脈送達用ルーメンBにそれぞれ接続されている、少なくとも二つの送達ポート;ならびに
前記送達ルーメンに接続されており、Aの送達を制御する一方で送達ポートBを引込め、また逆にBの送達を制御する一方で送達ポートAを引込めさせる、少なくとも一つの制御機構;
を含む前記装置。
(実施態様94)
装置が、静脈を通して一つの薬剤を送達し、動脈を通して第二の薬剤を送達することを更に含む、実施態様93の装置。
(実施態様95)
心室送達は、心室の梗塞領域への送達を含む、実施態様93の装置。
(実施態様96)
手動または自動の制御機構を更に含む、実施態様92の装置。
(実施態様97)
患者の心室内における梗塞領域を特定すること;および
少なくとも一つの構造的補強剤を、前記梗塞境界ゾーン領域に送達すること;
を含む方法。
(実施態様98)
梗塞領域の弾性係数を増大させる少なくとも一つの構造的補強剤が送達される、実施態様97の方法。
(実施態様99)
少なくとも一つの構造的補強剤の送達は、心筋梗塞(MI)後2週間以内に行われる、実施態様97の方法。
(実施態様100)
MIの患者が少なくとも20%の心室損傷を示している、実施態様97の方法。
(実施態様101)
梗塞境界ゾーン領域に少なくとも一つの構造的補強剤を送達することが、梗塞領域に少なくとも一つの構造的補強剤を送達することと組合される、実施態様97の方法。
(実施態様102)
構造的補強剤を心室に送達することを含む方法であって、
前記構造的補強剤は、前記心室のコンプライアンスを増大できる1または2以上の固体材料を含む、前記方法。
(実施態様103)
構造的補強剤を心室の梗塞領域に送達することを更に含む、実施態様102の方法。
(実施態様104)
構造的補強剤は、梗塞領域の弾性係数を増大できる、実施態様103の方法。
(実施態様105)
構造的補強剤は、心室の薄化を防止できる、実施態様102の方法。
(実施態様106)
固体材料は、有機ポリマー、シリコーンをベースとするポリマー、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー、金属、および操作された生体材料からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含む、実施態様102の方法。
(実施態様107)
固体のポリマーは、操作された生体材料を含む、実施態様106の方法。
(実施態様108)
操作された生体材料は、ブタ由来の小腸粘膜下組織(SIS)を含む、実施態様107の方法。
(実施態様109)
更に、少なくとも一つの改変された固体材料を含む、実施態様102の方法。
(実施態様110)
改変が、穿孔付属物、1または複数の保存キャビティー、表面基、保存マトリックス、およびアンカー付属物からなるうちの少なくとも一つを含む、実施態様109の方法。
(実施態様111)
アンカー付属物は、固体材料をある部位に固定する、実施態様110の方法。
(実施態様112)
保存キャビティーは、少なくとも一つの固体材料を伴う、加工されたポケットおよび貯蔵所の少なくとも一つを含む、実施態様110の方法。
(実施態様113)
保存キャビティーが更に、薬物を保存することを含む、実施態様110の方法。
(実施態様114)
薬物は、小分子、ペプチド、タンパク質および遺伝子産物を含む、実施態様113の方法。
(実施態様115)
表面基は、内因性分子と相互作用できる表面基を含む、実施態様110の方法。
(実施態様116)
少なくとも一つの固体材料は、造影剤、薬物、バリウム化合物が混合したPLGA、および成長因子からなる群より選択される混合物から生成する固体材料を含む、実施態様102の方法。
(実施態様117)
構造的補強剤を心室の梗塞領域に送達することは、処置によって構造的補強剤を導入することを含む、実施態様103の方法。
(実施態様118)
心室領域への処置が、剣状突起下的、経皮的(カテーテルをベースとする)のような少なくとも一つの最小侵襲アプローチ、または冠動脈バイパス移植(CABG)と組合された開胸手術のような外科的アプローチから選択される、実施態様117の方法。
(実施態様119)
構造的補強剤の心室への経皮的導入は、冠動脈注入、心室内カテーテル、静脈加圧灌流、経血管針カテーテル、および逆行性静脈灌流からなる様式の少なくとも一つを含む、実施態様118の方法。
(実施態様120)
構造的補強剤を心室の梗塞領域に送達することは、少なくとも一つの固体材料の1回または2回以上の投与量を送達することを含む、実施態様103の方法。
(実施態様121)
投与量が、所定のサイズおよび形状の固体プラグを含む、実施態様119の方法。
(実施態様122)
形状が、ディスク、スフェアまたはロッドの少なくとも一つを含む、実施態様121の方法。
(実施態様123)
送達ルーメン;
前記送達ルーメンから送達される少なくとも一つの薬剤;および
構造的補強剤を含有する少なくとも一つの薬剤;
を含むキットであって、
前記構造的補強剤は、心室に送達される少なくとも一つの固体材料を含む前記キット。
(実施態様124)
更に、心室の梗塞領域へ送達される少なくとも一つの固体材料を含む、実施態様123のキット。
(実施態様125)
更に、送達デバイスを含む、実施態様123のキット。
(実施態様126)
送達デバイスがカテーテルを含む、実施態様125のキット。
(実施態様127)
更に、1または2以上の薬物を含む、実施態様123のキット。
(実施態様128)
薬剤は、操作された生体材料を含む実施態様123のキット。
(実施態様129)
操作された生体材料は、ブタ由来の小腸粘膜下組織(SIS)を含む、実施態様128の方法。
(実施態様130)
生分解性および/または非生分解性の粒子を心室に送達することを含む方法であって、前記粒子は少なくとも一つの繊維芽細胞促進剤を担持する、前記方法。
(実施態様131)
粒子を心室に送達することは、粒子を心室の梗塞領域に送達することを含む、実施態様130の方法。
(実施態様132)
粒子が200μm以下の寸法を含む、実施態様130の方法。
(実施態様133)
繊維芽細胞促進剤が、塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF)、白血球阻害因子(LIF)、血管内皮成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、アンジオゲニン、アンジオポエチン−1、Del−1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CFS)、プレイオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)、および血管透過性因子(VPF)の少なくとも一つから選択される、実施態様130の方法。
(実施態様134)
繊維芽細胞促進剤が、bFGF、LIFおよびPDGF−BBのうちの少なくとも一つを含む、実施態様133の方法。
(実施態様135)
非生物学的材料を梗塞領域に送達することを更に含む、実施態様130の方法であって、
前記非生物学的材料は液体を取込むことができる、前記方法。
(実施態様136)
更に、トロポエラスチンおよびトロポエラスチン前駆体の一方を梗塞領域に送達することを含む、実施態様130の方法。
(実施態様137)
更に、分散剤を梗塞領域に送達することを含む、実施態様130の方法。
(実施態様138)
分散剤が、オリゴマー官能性アクリレートのマクロマー溶液を含む、実施態様137の方法。
(実施態様139)
オリゴマー官能性アクリレートのマクロマー溶液が、ジアクリロイルポリエチレングリコール(ジアクリロイルPEG)、テトラアクリロイルポリエチレングリコール、および(アクリルアミドメチル)セルロースアセテートプロピオネートからなる群の少なくとも一つを含む、実施態様138の方法。
(実施態様140)
オリゴマー官能性アクリレートの溶液がジアクリロイルPEGを含む、実施態様138の方法。
(実施態様141)
更に、チオール含有成分を送達することを含む、実施態様140の方法であって、前記チオール含有成分は少なくとも二つのチオール基を含む、前記方法。
(実施態様142)
チオール含有成分は、多結晶オリゴマーおよび天然に存在するペプチドの少なくとも1つを含む、実施態様141の方法。
(実施態様143)
オリゴマー官能性アクリレートおよびチオール含有成分は、分解に対して抵抗性のエステル結合を形成するように選択される、実施態様141の方法。
(実施態様144)
更に、少なくとも一つのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(MMPI)を局部的に送達することを含む、実施態様130の方法。
(実施態様145)
粒子を送達することは、最小侵襲処置を介して前記粒子を梗塞領域に導入することを含む、実施態様130の方法。
(実施態様146)
梗塞領域への最小侵襲処置が、剣状突起下的冠動脈内注入、経皮的冠動脈内注入、および冠動脈バイパス移植(CABG)と組合された開胸手術のうちの少なくとも一つから選択される、実施態様145の方法。
(実施態様147)
梗塞領域への粒子の経皮的導入は、心室内カテーテル、経血管針カテーテル、および逆行性静脈灌流からなる様式の少なくとも一つを含む、実施態様146の方法。
(実施態様148)
心室へ粒子を送達することが、心室のコンプライアンスを増大できる、実施態様130の方法。
(実施態様149)
心室へ粒子を送達することが、心室の薄化を防止できる、実施態様130の方法。
(実施態様150)
心室に足場を送達することを含む方法であって、
前記足場は少なくとも一つの成長因子を担持する前記方法。
(実施態様151)
更に、足場を心室の梗塞領域に送達することを含む、実施態様150の方法。
(実施態様152)
成長因子は、塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF)、白血球阻害因子(LIF)、血管内皮成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、アンジオゲニン、アンジオポエチン−1、Del−1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CFS)、プレイオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)、および血管透過性因子(VPF)からなる群のうちの少なくとも一つを含む、実施態様150の方法。
(実施態様153)
足場が生分解性の足場を含む、実施態様150の方法。
(実施態様154)
更に、心室の梗塞領域に送達される足場を含む、実施態様150の方法。
(実施態様155)
送達ルーメン;および
前記送達ルーメンから心室へ送達される薬剤;
を含むキットであって、
少なくとも一つの前記薬剤は、少なくとも一つの繊維芽細胞促進剤を担持する粒子を含む前記キット。
(実施態様156)
送達ルーメンから送達される薬剤は、心室の梗塞領域に送達される、実施態様155のキット。
(実施態様157)
繊維芽細胞促進剤は、塩基性繊維芽細胞成長因子(b−FGF)、白血球阻害因子(LIF)、血管内皮成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、アンジオゲニン、アンジオポエチン−1、Del−1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CFS)、プレイオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF−α)、および血管透過性因子(VPF)からなる群のうちの少なくとも一つを含む、実施態様155のキット。
(実施態様158)
更に、送達デバイスを含む、実施態様155のキット。
(実施態様159)
生分解性ミクロ粒子;
生体適合性の官能性アクリレート;および
還元されたチオール含有化合物;
を含む組成物であって、
患者の心室において生分解性マトリックスを形成できる、前記組成物。
(実施態様160)
分解性ミクロ粒子がPLGA50:50を含む、実施態様159の組成物。
(実施態様161)
生体適合性アクリレートがジアクリロイルポリエチレングリコールを含む、実施態様159の組成物。
(実施態様162)
還元されたチオール含有化合物がポリ−s−ベンジル−L−システインを含む、実施態様159の組成物。
(実施態様163)
更に、患者の心室の梗塞領域内において生分解性マトリックスを形成することを含む、実施態様159の組成物。
(実施態様164)
少なくとも一つの薬剤を心室へ送達することを含む方法であって、
前記薬剤が心室領域においてコラーゲンを架橋できる、前記方法。
(実施態様165)
少なくとも一つの薬剤を心室へ送達することが、少なくとも一つの薬剤を梗塞領域へ送達することを含む、実施態様164の方法。
(実施態様166)
少なくとも一つのコラーゲン架橋剤の送達が、心筋梗塞(MI)後2週間以内に行われる、実施態様164の方法。
(実施態様167)
コラーゲンを架橋できる薬剤が心室の薄化を防止できる、実施態様164の方法。
(実施態様168)
心室内でコラーゲンを架橋できる薬剤は、ポリエポキシ官能樹脂、ポリイソシアネート、芳香族ハロゲン化化合物、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、アクリレート終端材料、リジルオキシダーゼ、および官能性を持たせたミクロ粒子からなる群の少なくとも一つを含む、実施態様164の方法。
(実施態様169)
更に、治療剤を含む、実施態様164の方法。
(実施態様170)
治療剤が、血管新生因子、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー、SRCAポンプ誘導剤、ホスホランバン阻害剤、および抗アポトーシス剤からなる群の少なくとも一つを含む、実施態様169の方法。
(実施態様171)
治療剤が、小分子、ペプチド、タンパク質または遺伝子からなる群のうちの少なくとも一つを含む、実施態様169の方法。
(実施態様172)
治療剤が、RGDモチーフ(Arg−Gly−Asp)を含有するタンパク質、フォンビルブラント因子、オステオポンチン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、ラミニン、およびコラーゲンからなるタンパク質の少なくとも一つを含む、実施態様171の方法。
(実施態様173)
構造的補強剤を送達することが、最小侵襲処置によって前記構造的補強剤を心室に導入することを含む、実施態様169の方法。
(実施態様174)
更に、構造的補強剤を、最小侵襲処置によって心室の梗塞領域に導入することを含む、実施態様173の方法。
(実施態様175)
送達ルーメン;および
前記送達ルーメンから送達される薬剤;
を含むキットであって、
前記薬剤は心室内でコラーゲンを架橋できる、前記キット。
(実施態様176)
更に、心室内に梗塞領域を含む、実施態様175のキット。
(実施態様177)
更に、送達デバイスを含む、実施態様175のキット。
(実施態様178)
薬剤が、ポリエポキシ官能樹脂、ポリイソシアネート、芳香族ハロゲン化化合物、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、アクリレート終端材料、リジルオキシダーゼ、および官能性を持たせたミクロ粒子からなる群の少なくとも一つを含む、実施態様175のキット。
(実施態様179)
生分解性および/または非生分解性の粒子を心室に送達することを含む方法であって、前記粒子が少なくとも一つの血管新生促進剤を担持する、前記方法。
(実施態様180)
心室に粒子を送達することが、心室の梗塞領域および/または境界ゾーン領域に粒子を送達することを含む、実施態様179の方法。
(実施態様181)
粒子が200μm以下の寸法を含む、実施態様179の方法。
(実施態様182)
血管新生促進剤は、VEGFのアイソフォーム類(例えば、VEGF121)、FGF(例えば、b−FGF)、Del−1、HIF1−α(低酸素症誘導因子)、PR39、MCP−1(単球走化性タンパク質)、ニコチン、PDGF(血小板由来成長因子)、IGF(インスリン成長因子)、TGFα(トランスフォーミング成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)、エストロゲン、フォリスタチン、プロリファリン、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、TNF-α(腫瘍壊死因子)、Il−8(インターロイキン8)、造血成長因子、エリスロポエチン、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、PD-ECGF(血小板由来内皮成長因子)、およびアンジオゲニンの何れか一つから選択される、実施態様179の方法。
(実施態様183)
血管新生促進剤が、b−FGFおよびVEGFのうちの少なくとも一つを含む、実施態様182の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心室内の梗塞領域を特定すること;および
前記梗塞領域に少なくとも一つの構造的補強剤を送達すること;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−240469(P2010−240469A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162711(P2010−162711)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2006−509975(P2006−509975)の分割
【原出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(591040889)アボット、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT CARDIOVASCULAR SYSTEMS INC.
【Fターム(参考)】