説明

心筋細胞集団

本発明は、本発明の方法により生成された心臓前駆細胞及び細胞集団の分化を誘導するための方法を提供する。本発明はさらに、心筋細胞に作用する薬剤をスクリーニングする方法、及び心筋細胞置換療法の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2005年6月23日に出願された米国特許出願第60/693,537号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府の資金による研究に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された認可番号R01 HL071800の下で政府支援により行われた。米国政府は本発明における一部の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
胚発生中に、生体の組織は、3種類の主要な細胞集団(外胚葉、中胚葉、及び胚体内胚葉)から形成される。初期生殖細胞層としても知られているこれらの細胞集団は、原腸形成として知られている過程により形成される。原腸形成に続いて、各々の初期生殖細胞層は、細胞集団及び組織の特異的集合を生成する。中胚葉から、血液細胞、内皮細胞、心筋及び骨格筋、並びに脂肪細胞が生じる。胚体内胚葉から、肝臓、膵臓、及び肺が生じる。外胚葉から、神経系、皮膚、及び副腎組織が生じる。
【0004】
これらの生殖細胞層からの組織発達の過程は、複雑な分子変化を反映する複数の分化段階を伴う。中胚葉及びその誘導体に関しては、3つの異なる段階が明確にされている。第1段階は、胚盤葉上層として知られている構造内の細胞からの中胚葉の誘導である。初期中胚葉としても知られている新たに形成された中胚葉は、初期胚における将来の組織発達の部位となるであろう異なる位置に移動する。パターン形成として知られているこの過程は、特異的組織への分化の初期段階を反映すると思われるいくつかの分子変化を伴う。特異化として知られている最終段階は、パターン形成された中胚葉の亜集団からの異なる組織の生成を伴う。最近の研究により、異なる発達能を有する亜集団を表す連続的な波において中胚葉が誘導されることを示唆する証拠が提供されている。最初に形成される中胚葉が胚体外域に移動し、造血細胞及び内皮細胞を生じ、一方、次の集団は発生中の胚の前方に移動し、心臓及び頭蓋の間葉を生じる。これらの系統関係は、最初に組織学的分析により明らかにされ、細胞追跡研究により大体が確認されている。
【0005】
造血分化(commitment)に関して、ES細胞の分化モデルに関する及びマウス胚での研究から、現在、同定可能な最も初期の前駆体は、血管能も示す細胞、すなわち血管芽細胞として知られている細胞であるという有力な証拠が存在する(Choiら、(1998);Development 125:725〜732;Huberら、(2004)Nature 432:625〜30)。この前駆体の分析によって、それが中胚葉遺伝子brachyury及び受容体型チロシンキナーゼFlk-1を同時発現することが明らかになり、それが造血及び血管系統へ分化している中胚葉の亜集団を表すことを示している(Fehlingら、(2003)Development 130:4217〜4227)。系統追跡研究によって、心臓はFlk-1+集団から発達することが示されており、このことは類似の多能性細胞が心臓血管系に存在し得ることを示している(Emaら、(2006)Blood 107:111〜117)。ES細胞分化培養物の分析により、心臓能及び内皮能を有するFlk-1+前駆体が存在する証拠が提供されている(Yamashitaら、(2005)FASEB 19:1534〜1536)。
【0006】
Notch経路は、細胞運命の決定及び分化に関与している。Notch経路及びNotchシグナル伝達は、Artavanis-Tsakanas(1995)Science 268:225〜232に概説されている。4種のNotchタンパク質(Notch 1、Notch 2、Notch 3、及びNotch 4)が、ヒトにおいて同定されている。Notchタンパク質は、膜貫通受容体である。リガンドによる活性化によって、Notchの細胞内ドメインは、タンパク分解的に切断され、核に輸送され、下流エフェクターの転写を活性化する。細胞外リガンド結合ドメインを欠いているNotchの切断型は、構成的に活性化している。例えば、米国特許第5,780,300号を参照されたい。
【0007】
Notchシグナル伝達は、多様な発生過程における細胞運命決定に関与し、造血、血管形成、及び心臓発生において役割を担っていることが示されたため、初期系統の分化において重要である。4種類の異なるNotch受容体であるNotch 1〜4は、5種類のリガンド、Delta様1〜3並びにJagged 1及び2と関連し得る。初期原腸形成マウス胚の発現分析によって、新たに形成された中胚葉内のNotch 1、2、及び3の重複するパターンが明らかになった。原腸形成が進むにつれ、異なるパターンがNotch 1の発現と共に現れ、他の中胚葉亜集団に加えて発達中の血島にまで及び、一方、Notch 2の発現は、沿軸及び側板中胚葉においてNotch 1の発現と重複する。Notch 3は、側板及び臓側中胚葉に加えて、心臓形成板中に検出される。造血系及び心臓血管系の構築と共に、発現のさらなる分離が観察される。4種類の遺伝子すべてが、様々な造血系統においてある程度発現することが報告されている(Radtkeら、(2004)Nat.Immunol.5:247〜253を参照されたい)。Notch 1は、未成熟の造血前駆体中(Milnerら、(1994)Blood 83:2057〜2062)、並びに発生中のT細胞系統中(Ellisenら、(1991)Cell 66:649〜661)で発現する。血管系内で、Notch 1は内皮細胞及び血管平滑筋細胞中で容易に検出され(Loomesら、(2002)Am.J.Med.Genet.112:181〜189)、一方、Notch 3は、平滑筋系統に限られているように思われる(Leimeisterら、(2000)Mech.Der.98:175〜178)。Notch 4は、主に内皮系統で見出される(Uyttendaeleら、(1996)Development 122:2251〜2259)。
【0008】
このような初期の比較的広範な発現パターンにもかかわらず、ターゲッティング研究によって、Notch受容体は、原腸形成、胚葉誘導、または特異化に必須ではないことが示されている。Notch 1突然変異体のES細胞が、キメラマウスにおいて野生型胚盤胞への注入後に二次造血に寄与しないことによって(Hadlandら、(2004)Blood 104:2097〜3105)、及びNotch 1-/-AGM移植片における造血発生の欠如によって(Kumanoら、(2003)Immunity 18:699〜711)示されるように、Notch 1は二次造血系の構築に必須である。ホモ欠損胚が血管新生の血管リモデリングにおける欠陥からE11.5で致死となるため、Notch 1は適切な血管の形態形成にも必要である(Krebsら、(2000)Genes Dev.14:1343〜1352)。Notch 1突然変異体と対照的に、Notch 4欠損動物は生存可能であり、この受容体が胚発生に必須ではないことを示す。Notch 1及びNotch 4の両方を欠く二重変異体マウスは、Notch 1欠損胚より重篤な表現型を示し、Notch 4が機能的血管系の発生においてある役割を担っていることを示す(同文献)。変異胚が胎生9.5〜11.5日に致死となり、多くの組織における広範な細胞死を示すため、Notch 2は胎仔発生に必要である(McCrightら、(2001)Development 128:491〜502)。一方、Notch 3欠損マウスは生存可能であるが、ある程度の動脈欠陥を示す(Domengaら、(2004)Genes Dev.18:2730〜2735)。それらの対応する遺伝子の初期発現パターンにもかかわらず、Notch欠損動物において観察される比較的後期の可変的欠陥は、この経路が原腸形成の間に必須ではないか、または代償機構が受容体のいくつかの本来の機能を隠している可能性を示唆している。
【0009】
造血、血管、及び心臓の系統分化におけるNotchシグナル伝達の役割に対するさらなる洞察が、様々なモデル系及び特定の細胞系における強制発現研究からもたらされてきた。このような研究からの知見によって、Notch 1は、マウスにおけるγ/δ及びα/βT細胞系統の樹立において重要な役割を果たし(Washburnら、(1997)Cell 88:833〜843)、初期造血前駆体中の受容体を介した構成的シグナル伝達は、分化より増殖を好み、リンパまたは骨髄のいずれかの特徴を有する不死化前駆体の発生をもたらすようである(Varnum-Finneyら、(2000)Nat.Med.6:1278〜1281)ことが示されている。ゼブラフィッシュにおいて、Notch活性化は、胚形成の間にAGM領域での造血細胞の増殖をもたらし、成体における放射線障害後に造血回復を促進した(Burnsら、(2005)Genes Dev.19:2331〜2342)。適切な段階におけるNotchシグナル伝達は造血発生を促進する一方で、アフリカツメガエル胚の心臓原基中のNotch 1の活性化が、心臓マーカーの発現を減少させていることが見出されたように、それは心筋細胞系統の確立に対して反対の効果を有していると思われる(Ronesら、(2000)Development 127:3865〜3876)。この知見と一致するのは、Notch経路の下流エフェクターであるRBP-JKを欠損したES細胞が、野生型の対応物よりも心筋細胞をより多く生成し、一方で、構成的に活性型のNotch 1受容体を発現しているものが、より少なく生成するようであるという観察である(Schroederら、(2003)Prac.Natl.Acad.Sci.100:4018〜4023)。受容体の細胞内ドメインの発現が、房室心筋の分化及び心室の成熟を抑制したように、心臓発生におけるNotchシグナル伝達の阻害作用が発生中のマウスにおいて示された(Watanabeら、(2006)Development 133:1625〜1634)。内皮系統に対する変化したNotch発現の効果は、培養下の内皮細胞内の(Leongら、(2002)Mol.Cell Biol.22:2830〜2841)、または胚の内皮系統内の(Uyttendaeleら、(2001)Proc.Natl.A
cad.Sci.98:5643〜5648)Notch 4の構成的発現が、内皮の発芽及び分岐形態形成を阻害し、一方で、脳内皮細胞系中の発現が微小血管様構造の形成を誘導した(Uyttendaeleら、(2000)Microvasc.Res.60:91〜103)ように、解釈が困難である。まとめると、これらの知見は、Notchシグナル伝達が、造血、血管、及び心臓の発生に影響を及し得、観察された効果が、発生段階及び状況の両方に特異的であることを示している。
【0010】
驚くべきことに、Notchシグナル伝達は、中胚葉の誘導体系統への特異化に関与していることが、本発明により見出された。
【特許文献1】米国特許出願第60/693,537号
【特許文献2】米国特許第5,780,300号
【特許文献3】米国特許第5,843,780号
【特許文献4】WO2004/098490
【非特許文献1】Choiら、(1998)Development 125:725〜732
【非特許文献2】Huberら、(2004)Nature 432:625〜30
【非特許文献3】Fehlingら、(2003)Development 130:4217〜4227
【非特許文献4】Emaら、(2006)Blood 107:111〜117
【非特許文献5】Yamashitaら、(2005)FASEB 19:1534〜1536
【非特許文献6】Artavanis-Tsakanas、(1995)Science 268:225〜232
【非特許文献7】Radtkeら、(2004)Nat.Immunol.5:247〜253
【非特許文献8】Milnerら、(1994)Blood 83:2057〜2062
【非特許文献9】Ellisenら、(1991)Cell 66:649〜661
【非特許文献10】Loomesら、(2002)Am.J.Med.Genet.112:181〜189
【非特許文献11】Leimeisterら、(2000)Mech.Der.98:175〜178
【非特許文献12】Uyttendaeleら、(1996)Development 122:2251〜2259
【非特許文献13】Hadlandら、(2004)Blood 104:2097〜3105
【非特許文献14】Kumanoら、(2003)Immunity 18:699〜711
【非特許文献15】Krebsら、(2000)Genes Dev.14:1343〜1352
【非特許文献16】McCrightら、(2001)Development 128:491〜502
【非特許文献17】Domengaら、(2004)Genes Dev.18:2730〜2735
【非特許文献18】Washburnら、(1997)Cell 88:833〜843
【非特許文献19】Varnum-Finneyら、(2000)Nat.Med.6:1278〜1281
【非特許文献20】Burnsら、(2005)Genes Dev.19:2331〜2342
【非特許文献21】Ronesら、(2000)Development 127:3865〜3876
【非特許文献22】Schroederら、(2003)Prac.Natl.Acad.Sci.100:4018〜4023
【非特許文献23】Watanabeら、(2006)Development 133:1625〜1634
【非特許文献24】Leongら、(2002)Mol.Cell Biol.22:2830〜2841
【非特許文献25】Uyttendaeleら、(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.98:5643〜5648
【非特許文献26】Uyttendaeleら、(2000)Microvasc.Res.60:91〜103
【非特許文献27】Dontuら、(2004)Breast Cancer Res.6:R605〜R615
【非特許文献28】Tingら、(2005)Methods in Molecular Medicine 105:23〜46
【非特許文献29】Uyttendaeleら、(1996)Development 122:2251〜2259
【非特許文献30】Liら、(1998)Genomics 51:45〜58
【非特許文献31】Sorianoら、(2000)International Journal of Cancer 86:652〜659
【非特許文献32】Vercauterenら、(2004)Blood 104:2315〜2322
【非特許文献33】Evansら、(1981)Nature 292:154〜156
【非特許文献34】Thomsonら、(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92:7844
【非特許文献35】Reubinoffら、(2000)Nature Biotech.18:399
【非特許文献36】Smith、(2001)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.17:435〜462
【非特許文献37】Uyttendaele、(1996)Development 122:2251〜2259
【非特許文献38】Kybaら、(2002)Cell 109:29〜37
【非特許文献39】Kennedyら、(2003)Methods Enzymol.365:39〜59
【非特許文献40】Robertsonら、(2000)Development 127:2447〜2459
【非特許文献41】Schmittら、(2004)Nat.Immunol.5:410〜417
【非特許文献42】Huberら、(2004)Nature 432:625〜630
【非特許文献43】Kouskoffら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.102:13170〜13157
【非特許文献44】Kinderら、(1999)Development 126:4691〜4701
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、心臓前駆細胞のために濃縮された細胞集団及びそのような細胞集団を作製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、胚性幹(ES)細胞からの心臓前駆細胞の分化を誘導する方法をさらに提供し、前記方法は、EBを形成するのに十分な条件下でES細胞を培養する工程、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞への分化に十分な条件下でEBを培養する工程、及びNotchの存在下でこのような細胞を単離し再凝集させる工程を含む。
【0013】
本発明はまた、ES細胞からの心臓細胞の分化を阻害する方法を提供し、前記方法は、EBを形成するのに十分な条件下でES細胞を培養する工程、Bry+/Flk-1-集団への分化に十分な条件下でEBを培養する工程、及びNotchの存在下でこのような集団を単離し再凝集させる工程を含む。
【0014】
本発明はまた、心筋細胞に効果を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、心筋細胞置換療法の方法を提供する。
【0016】
本発明の方法は、前駆細胞の増殖に、細胞置換療法用の分化した細胞及び組織の生成に、並びに心臓前駆細胞及び内皮細胞に作用する薬剤のスクリーニング及び同定に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によれば、ES由来細胞またはそれらの子孫においてNotchを活性化または阻害することにより、ES細胞の分化を方向づけすることができることが見出された。Notchは、本明細書において、細胞外リガンド結合ドメインを欠損している活性切断型を含めた、Notch 1、Notch 2、Notch 3、Notch 4、並びにそれらの活性変異体及びフラグメントを含むと定義される。本明細書で使用されるように、Notchの活性化及び阻害という用語は、Notchシグナル経路の活性化及び阻害を示す。従って、細胞を、例えばNotchリガンドを含めたNotchアゴニストと接触させることにより、または細胞内に、活性化NotchまたはNotch経路を活性化する他の分子を発現する組換え核酸を導入することにより、Notchの活性化が達成され得る。Notchアゴニストは、当技術分野において公知であり、例えばNotchリガンドのDelta様l〜3並びにJagged 1及び2が含まれる。細胞をNotchアンタゴニストと接触させることにより、あるいはNotchを阻害するまたはNotch経路を阻害する組換え核酸を細胞内に導入することにより、Notchの阻害が達成され得る。アンタゴニストは、当技術分野において公知であり、例えばDontuら、(2004)Breast Cancer Res.6:R605〜R615に開示されている。
【0018】
Notch、あるいはNotch経路を活性化する、またはNotchもしくはNotch経路を阻害する他の分子を発現する核酸は、ウイルスベクターによる遺伝子導入、相同組換え、及びリコンビナーゼに基づく手法を含めた当業者に公知の方法によって、ES細胞またはES由来細胞内に導入され得る。好ましい実施形態では、Notchを活性化または阻害する核酸の発現が誘導できるように、核酸は、誘導可能な発現を制御する調節エレメントに作動可能に連結している。最も好ましい実施形態では、ドキシサイクリン誘導(「dox-on」)遺伝子発現系を使用する。このような系は、当技術分野において公知であり、例えばTingら、(2005)Methods in Molecular Medicine 105:23〜46において開示されている。
【0019】
好ましい実施形態では、活性化Notchを発現する組換え核酸を、細胞内に導入する。他の好ましい実施形態では、組換え核酸は、Notch 4またはその活性フラグメントをコードする。ヒト及びマウスのNotch 4の核酸配列は公知である。Uyttendaeleら、(1996)Development 122:2251〜2259;Liら、(1998)Genomics 51:45〜58。好ましい実施形態では、核酸は、Notch 4の構成的に活性型の細胞内ドメインをコードする。従って、Notch 4の切断型(Notch 4-IC)は、当技術分野で、例えばSorianoら、(2000)International Journal of Cancer 86:652〜659及びVercauterenら、(2004)Blood 104:2315〜2322322において開示されている。好ましい実施形態では、核酸は、ヒトNotch 4の(前記のLiらにより付番されたような)アミノ酸1476〜2003をコードする配列を有する。他の実施形態では、核酸は、ヒトNotch 4のアミノ酸1476〜2003をコードする配列と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%相同な配列を有する。
【0020】
ES細胞は、市販で、または当技術分野において公知の方法によって得ることができる。例えば、ES細胞は、当技術分野において公知の方法によって胚盤胞から得ることができ、例えば、Evansら、(1981)Nature 292:154〜156;Thomsonら、(1995)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 92:7844;米国特許第5,843,780号及びReubinoffら、(2000)Nature Biotech.18:399において開示されている。好ましい実施形態では、ES細胞はマウスまたは霊長類のES細胞である。他の好ましい実施形態では、ES細胞はヒトES細胞である。
【0021】
好ましい一実施形態では、ES細胞は、前記で説明した方法によってNotch 4の活性細胞内ドメインを誘導的に発現させるように操作することができ、これを便宜上本明細書において「Notch 4-ES細胞」と称する。このようなES細胞及びそれらの子孫は、適切な誘導物質に曝されることによって活性化Notch 4を発現する。好ましい実施形態では、発現系は、ドキシサイクリンにより誘導可能なdox-on系である。
【0022】
従って一実施形態では、本発明は、ES細胞から心臓前駆細胞の分化を誘導する方法を提供し、前記方法は、胚様体(EB)の形成に十分な時間及び条件下でES細胞を培養する工程、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞への分化に十分な時間及び条件下でEBを培養する工程、並びに活性化Notchの存在下で血管芽細胞/赤血球系前駆細胞を単離及び再凝集させて、心臓前駆細胞を得る工程を含む。心臓前駆細胞は、心筋細胞への分化に十分な条件下で培養され得る。他の実施形態では、前記方法は、活性化Notchの非存在下で、心臓培養条件下で、心臓前駆細胞または心筋細胞を培養する工程をさらに含む。
【0023】
EBは、広範囲の系統から発生している集団を含む三次元のコロニーである。EB形成の条件は、当技術分野において公知であり、例えばSmith(2001)Annu.Rev.Cell Dev. Biol.17:435〜462及びKellerら、WO2004/098490において開示されている。非限定的な例としては、2mMのL-グルタミン、200μg/mLのトランスフェリン、0.5mMのアスコルビン酸、4×10-4Mのモノチオグリセロール、15%ウシ胎仔血清を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中でESを培養し、EBを作製し得る。EBは、血管芽細胞/赤血球系前駆集団への分化に十分な時間、血清の存在下で培養し得る。好ましい実施形態では、EBを約2.5〜4.5日間培養する。さらに好ましい実施形態では、ES細胞を約3日間培養する。血管芽細胞/赤血球系前駆細胞は、本明細書においてBry+/Flk-1+として定義され、KDRまたはFlk-1としても知られているチロシンキナーゼ受容体VEGRF2などのこれらの細胞を示すマーカーを発現している細胞を、例えば選別及び単離することによって回収される。KDR+及びFlk-1+細胞を選別する方法は、当技術分野において公知であり、例えばKellerら、WO2004/098490において開示されている。
【0024】
心筋細胞への分化を誘導するために、Notchが活性化している条件下で、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞を再凝集させる。好ましい実施形態では、無血清条件を使用する。他の好ましい実施形態では、Notchを約12〜48時間活性化させる。さらに好ましい実施形態では、Notchを約24時間活性化させる。本明細書で前記に記載するように、例えば、Notchアゴニストを添加することにより、またはES細胞内に導入されたNotchをコードする核酸の発現を誘導することによって、Notchを活性化させ得る。例えば、ドキシサイクリン誘導Notch 4-ES細胞が使用される場合、ドキシサイクリンを約12〜48時間、好ましくは約24時間添加する。次いで、単一の凝集物を回収し、活性化Notchの非存在下で、心臓の分化条件下で、培養し得る。このような条件は、当技術分野において公知であり、例えば無血清培地での培養が含まれる。心筋細胞への分化は、拍動細胞塊の発育をモニターすることにより、トロポニンTなどの心臓マーカーの存在をアッセイすることにより、またはNkx2.5などの心血管マーカーの遺伝子発現を検出することにより決定し得る。
【0025】
Notch活性化の非存在下で、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞は、造血及び血管系統に分化する。従って、Notch活性化はこの集団を心臓細胞へ向け直すという発見によって、本発明はこのような細胞の新規な源を提供する。
【0026】
前記の方法は、少なくとも約10%の心筋細胞を含む細胞集団を提供する。好ましい実施形態では、細胞集団は、少なくとも約50%の心筋細胞を含む。さらに好ましい実施形態では、細胞集団は、約60%、または約70%、または約80%、または最も好ましくは約90%の心筋細胞を含む。
【0027】
心筋細胞のために濃縮された細胞集団は、心筋細胞に効果を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法において有用である。前記方法は、例えば、系統発生を変化させる薬剤を同定し、細胞機能を改善し、下位系統への分化を変化させ、収縮能に効果を及ぼし、または長期間の培養における細胞の増殖と維持を促進するために使用し得る。前記方法は、毒性及び有効性に関して薬理化合物をスクリーニングするために使用し得る。心筋細胞に効果を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法は、本発明の心筋細胞を候補薬剤と接触させる工程、及び前記薬剤の存在下で心筋細胞への効果をアッセイする工程を含み、効果があることが、心筋細胞に効果を及ぼす薬剤が同定されたことを示す。
【0028】
候補薬剤の例には、それだけに限らないが、核酸、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子、及び抗体が挙げられる。候補薬剤は、天然に存在するものまたは合成でもよく、コンビナトリアルライブラリー法を使用して得ることができる。
【0029】
心筋細胞への効果は、例えばマーカー発現、受容体結合、収縮能、電気生理、細胞生存率、生存、形態、またはDNA合成もしくは修復用のアッセイを含めた、表現型または活性用の任意の標準的アッセイによって決定し得る。
【0030】
心筋細胞のために濃縮された細胞集団は、細胞置換療法にも有用であり、例えば先天性の心疾患、冠動脈心疾患、心筋ミオパチー、心内膜炎、または完全心ブロックを含めた不十分な心機能を特徴とする疾患の治療に使用し得る。従って、一実施形態では、本発明は、本発明に従って得られた、心筋細胞のために濃縮された細胞集団から単離した心筋細胞を含む組成物を、そのような治療を必要としている対象に投与することを含む心筋細胞置換療法の方法を提供する。好ましい実施形態では、この対象はヒトである。前記組成物は、例えば、注射または移植を含めた心臓組織への送達をもたらす経路により投与され得る。
【0031】
本発明はまた、ES細胞及びES由来細胞からの心臓細胞の分化を阻害する方法を提供する。前記方法は、EBの分化及び形成に十分な時間及び条件下でES細胞を培養する工程、Bry+/Flk-1-細胞集団への分化に十分な時間及び条件下でEBを培養する工程、並びに心臓細胞の分化が阻害されている条件下で、Notch阻害剤の存在下で、Bry+/Flk-1-細胞集団を単離及び再凝集させる工程を含む。前記のように、例えば細胞表面マーカー及び系統特異的遺伝子発現を検出することによって、阻害を測定し得る。Notch 4阻害剤は、当技術分野において公知であり、例えばγ-セクレターゼ阻害剤Xが含まれる。好ましい実施形態では、EBを約2.5〜4.5日間培養する。他の好ましい実施形態では、EBを約3日間培養する。他の好ましい実施形態では、Notch阻害剤の存在下で約24時間、細胞を再凝集させる。前記方法は、Notch阻害剤の存在下で、心臓培養条件下で、単一の凝集物を培養するさらなる工程を任意的に含む。
【0032】
本明細書において引用されたすべての参照は、その内容全体が本明細書に組み込まれている。
【0033】
下記の実施例は、さらに本発明を例示する。
【実施例】
【0034】
<実施例1:材料及び方法>
[ES細胞培養及び分化]
ES細胞を、15%ウシ胎仔血清(FCS)、10%ES細胞馴化培地、ペニシリン、ストレプトマイシン、1.5×10-4Mのモノチオグリセロール(MTG、Sigma社製)、及びLIF(1%馴化培地)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、照射フィーダー上に保持した。分化誘導の前に、前記と同様の添加物を含有したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中、ゼラチンコーティングしたプレート上で細胞を2回継代し、支持細胞集団を枯渇させた。EB生成のために、細胞を回収し、2mMのL-グルタミン(Gibco社製/BRL)、200μg/mLのトランスフェリン(Boehringer Mannheim社製)、0.5mMのアスコルビン酸(Sigma社製)、4×10-4MのMTG、及び15%FCSを補充したIMDMを有する60mm低接着ペトリグレード皿(VWR社製)中で培養した。造血及び血管系統の分化を支持する再凝集培養のために、3×105Flk-1+細胞/mlを、同じEB分化培地及び5%無タンパク質ハイブリドーマ培地-II(PFHM-II、Invitrogen社製)を有する超低接着24ウェルプレート(Corning Costar社製)中で2日間培養した。
【0035】
[Notch 4誘導ES細胞]
ヘマグルチニン(HA)配列で標識されたNotch 4 cDNA(int-3)の活性型は、Uyttendaele、(1996)Development 122:2251〜2259に記載されている。Tingら、(2005)Methods Mol.Med.105:23〜46に記載されているtet-on誘導ES細胞系であるAinv18は、Fehlingら、(2003)Development 130:4217〜4227に記述されているように、EGFP cDNAをbrachyury遺伝子座にターゲティングすることによってさらに改変した。Kybaら、(2002)Cell 109:29〜37に記載された方法によって、Notch 4 cDNAを、Ainv18及び改変したAinv ES細胞系内に導入した。要するに、HAで標識されたNotch 4の活性型のcDNAフラグメントを、好都合な制限部位によってploxプラスミドに挿入し、plox-Notch 4/HAを生成した。Ainv18及び改変細胞系に、各々40μgのplox-Notch 4/HAとCreリコンビナーゼ発現プラスミドpSalk-Creとの共エレクトロポレーションによって、plox-Notch 4/HAをターゲティングした。陽性クローンを、300μg/mlのG418(GIBCO社製)を有するES培地中でスクリーニングし、単離し、誘導可能な細胞系、Ainv-Notch 4及びGFP-Bry/Ainv-Notch 4を生成した。陽性クローンを、誘導後のHA発現を検出する免疫組織化学によって確認した。
【0036】
[フローサイトメトリー]
解離細胞を、10%FCSを含有するPBS中で、(Flk-1、VE-cad、またはCD41に対する)ビオチン化mAbと共に、氷上で30分間インキュベーションした。次いで、細胞を1回洗浄し、ストレプトアビジン-PE-Cy5(BD Pharmingen社製)と共に、さらに30分間氷上でインキュベーションした。さらなる2回の洗浄に続いて、細胞を、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson社製)で分析、またはMofloセルソーター(Cytomation社製)で選別した。トロポニンTまたはHA染色のために、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で30分間細胞を固定し、次いで10%FCSを含有するPBSと、0.1%サポニン(Sigma社製)とからなる透過緩衝液中で10分間インキュベーションした。固定及び透過処理に続いて、細胞を2回洗浄し、抗トロポニンT(非抱合型マウス抗体、Lab Vision社製)または抗HA(ビオチンと抱合、Covance社製)抗体と共に30分間インキュベーションした。2回の洗浄の後、(トロポニンT抗体用)二次APC抱合型ヤギ抗マウス抗体または(ビオチン化HA抗体用)ストレプトアビジン-PE-Cy5と共に、細胞を30分間インキュベーションした。最後に、細胞を透過緩衝液で2回、次いでサポニンを含有しない緩衝液で2回洗浄した。
【0037】
[コロニーアッセイ]
Kennedyら、(2003)Methods Enzymol.365:39〜59に記載のように、芽細胞及び造血コロニーアッセイを行った。0.5μg/ml のDoxを加えてNotch 4発現を誘導し、5μMのγ-セクレターゼ阻害剤X(L685,458、Calbiochem社製)を加え、芽細胞コロニー培養中のNotchシグナル伝達を阻害した。血管芽細胞/心臓の混合コロニーを生成するために、Doxを含有する標準的芽細胞コロニー培養物中で芽細胞コロニー増殖を24時間誘導した。次いで発生中のコロニーを、10%FCSを含有するIMDMと共にメチルセルロースで洗浄し、Doxを除去した。コロニーを、エリスロポエチン(2U/ml)及びIL-3(1%馴化培地)を補充した芽細胞コロニーメチルセルロース中で再培養した。外側を造血細胞で囲まれた内側の心臓コアを含有する混合コロニーを、7日目に分析のために採取した。
【0038】
[心臓アッセイ]
選別された細胞を、超低接着24ウェルプレート(Costar社製)中、3×105細胞/mlで、2mMのL-グルタミン(GIBCO/BRL社製)、トランスフェリン(200μg/ml)、0.5mMアスコルビン酸、及び4.5×10-4MのMTGを含有するStemPro-34無血清培地(Invitrogen社製)中で、24時間再凝集させた。心臓培養のために2mMのL-グルタミンを有するStemProを含有するゼラチンコーティングした96または24ウェルプレートに、単一の凝集物または凝集物プールを再び播いた。培養の2〜4日後に、収縮した細胞を含有する凝集物の割合を記録し、トロポニンT陽性細胞の数をフローサイトメトリー分析によって評価した。凝集した心臓培養物のために、0.5μg/mlのドキシサイクリン(Dox)を、及び(DMSOに溶解した)5μMのγ-セクレターゼ阻害剤Xを使用した。同濃度のDMSOを、コントロールの培養物中に加えた。培地を毎日交換し、新鮮なDox及び阻害剤を提供した。
【0039】
[遺伝子発現解析]
Robertsonら、(2000)Development 127:2447〜2459に記載のように、ポリA+大規模増幅ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、コロニーまたは少量のmRNAの遺伝子発現解析を行った。増幅したPCR産物を、アガロースゲル上で分離し、ZetaプローブGTメンブレン(Bio Rad社製)に転写した。次いで、対象とする遺伝子を、遺伝子の3'領域に対応する32PランダムプライムドcDNAフラグメント(Ready-to-Goラベリング、Pharmacia社製)でプローブした。遺伝子特異的PCRのために、RNeasyミニキット(Qiagen社製)を使用して、全RNAを細胞から抽出した。1マイクログラムの全RNAを使用し、Omniscript RTキット(Qiagen社製)を用いてランダム6量体による逆転写によってcDNAを生成し、次いでcDNAをPCRにかけた。
【0040】
[免疫組織化学]
細胞凝集体またはコロニーを、ゼラチンコーティングしたカバーガラス上に播き、2mMのL-グルタミンを有するStemPro中で3日間培養した。カバーガラス上で培養した細胞を、4%パラホルムアルデヒド中で30分間固定し、PBS中で2回洗浄し、0.2%Triton X-100/PBS中で10分間透過処理し、10%FCS/1%Tween20/PBS中で洗浄した。カバーガラスに付着した細胞を、心臓トロポニンTに対する抗体と共に1時間インキュベーションした。3回の洗浄後、カバーガラス上の細胞を、FITC抱合型ヤギ抗マウス抗体(Jackson Immuno Research社製)と共に暗所で1時間インキュベーションした。最後に、カバーガラスを3回洗浄し、次いで1滴のDAPI(Vector Laboratories社製)上に反転させた。Leica DMRA2蛍光顕微鏡(Wetzlar社製)を使用して、蛍光を可視化した。
【0041】
[間質細胞を発現するDll-1上での細胞培養]
Schmittら、(2004)Nat.Immunol.5:410〜417に記載されたOP9-DL1細胞を、24ウェルプレート中で培養し、使用前に照射した。3.25日EB由来Flk-1+細胞(3×l04/ウェル)を、心臓培養物用に使用したものと同じ培地中で、OP9細胞に接種した。5μMのγ-セクレターゼ阻害剤X(DMSOに溶解)または対応する容量のDMSOを培養物中に含めた。培地を毎日交換し、新鮮な阻害剤を供給した。培養の3日後に細胞を収集し、フローサイトメトリー分析にかけ、トロポニンT-陽性細胞の数を決定した。
【0042】
[胚の解剖及び移植片培養]
雌Swiss Websterマウス(Taconic社製)を、Huberら、(2004)Nature 432:625〜630に記載された雄GFP-Bry+/-マウスと交配させた。妊娠中のマウスを、交尾後7.5日後に屠殺し、胚を単離した。Leica MZFLIII蛍光解剖実体顕微鏡下で解剖を行い、原始線条(PS)におけるGFP発現を可視化した。タングステン針(Fine Science tools社製)を使用して、GFP-Bry+/-胚のPSを単離し、後部及び前部に分離した。前部及び後部PS断片の各々を、心臓培養物用の培地と共に、ゼラチンコーティングした96ウェル皿中に播いた。10μMのγ-セクレターゼ阻害剤または対応する容量のDMSOを培養物中に含めた。培地を毎日交換し、新鮮な阻害剤を提供した。3〜5日後に、存在移植片を収縮する増殖巣について記録し、遺伝子発現解析のために収集した。
【0043】
<実施例2:ES細胞由来集団におけるNotch発現>
心臓、造血、及び血管の運命への分化の間の最も初期の細胞のいくつかに焦点をあてて、胚様体(EB)分化の間に生じた初期中胚葉集団におけるNotch 4の発現を評価した。血清刺激の3.0〜3.5日後に、brachyury遺伝子座(GFP-Bry)を標的とした緑色蛍光タンパク質(GFP)cDNAを有するES細胞は、Flk-1及びGFP発現に基づいた3種の異なる集団(GFP-Bry-/Flk-1-、GFP-Bry+/Flk-1-、及びGFP-Bry+/Flk-1+)を生成した(図1A)。機能調査によって、分化の初期段階のGFP-Bry+/Flk-1+集団は血管芽細胞を含有し、一方、GFP-Bry+/Flk-1-集団は心臓能を示すことが示された(Kouskoffら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.102:13170〜13157)。発現分析によって、Notch 4は、分化の3.0日目、3.25日目、及び3.5日目に単離したGFP-Bry+/Flk-1-及びGFP-Bry+/Flk-1+集団の両方で発現することが明らかになった。相対的な発現のレベルは、この期間にわたってこれらの集団間で変化するようであり、より高いNotch 4のレベルがGFP-Bry+/Flk-1-細胞において3.0日目に、GFP-Bry+/Flk-1+細胞において3.5日目に検出された(図1B)。NotchリガンドであるJagged-1の発現は、両方の集団において検出されたが、そのレベルは、遅い方の2回の時点でGFP-Bry+/Flk-1-集団においてより高いようであった。Notch 1、2、及び3もまた、両方の集団において、これらの時期に発現していた。
【0044】
GFP-Bry+/Flk-1+集団を、VEGF及びIL-6の存在下で、メチルセルロース培養物中に播いた場合、これらの細胞は、造血能及び血管能の両方を示す芽細胞コロニーを生成する(Fehlingら、(2003)Development 130:4217〜4227)。これらのコロニーをもたらす前駆体である芽細胞のコロニー形成細胞(BL-CFC)は、血管芽細胞のin vitroの同等物を表すと考えられている。それらの発生早期に分析した場合、2種類の形態的に異なる集団、すなわち外側の集団に囲まれた内側のコアをこれらのコロニー中に検出することができる(図1C)。これらの集団をピペッティングによって分離し、PCRによる発現分析にかけた。外側の細胞はgata-1を発現したが、内皮の遺伝子は何も発現せず、このことはそれらが発生中の造血細胞を表すことを示している。コアの試料は、内皮の遺伝子、及び低レベルのgata-1を発現し、このことはそれらが造血細胞及び内皮細胞の混合物からなることを示唆している。Notch 4発現は、コア集団に限定していた。芽細胞コロニーに加えて、Notch 4の発現を、内皮、造血、及び血管系の平滑筋系統を表す3種のES細胞由来の細胞系中でも分析した(図1D)。Notch 4は、内皮細胞系内のみに検出され、その内皮に限定されたパターンが確認された。まとめると、これらの観察結果は、Notch 4及び他のNotch遺伝子が、ES細胞分化の初期段階には中胚葉の集団に広く発現していることを示している。Notch 4の発現は、血管芽細胞への特異化に続いて内皮系統に限定されるようになる。
【0045】
<実施例3:Flk-1+集団を含有する血管芽細胞における構成的活性型Notch 4の強制発現は、造血分化を阻害する>
Notch 4が造血及び血管分化の間に役割を担っているか否かを決定するために、Notch 4の活性型を発現する誘導可能なES細胞系を作製した。Notch 4の細胞内ドメイン(Notch 4-IC)をコードするcDNAを、Ainv18 ES細胞中に巧みに処理して導入した。この形態の受容体は、活性化のために遍在性酵素であるγ-セクレターゼによる切断が必要なアンカードメインを含有する。Ainv ES細胞系では、対象の遺伝子の発現は、テトラサイクリンまたはその類似体であるドキシサイクリン(Dox)によって誘導される。ヘマグルチニンエピトープ(HA)配列を、Notch 4 cDNAのカルボキシ末端に挿入し、発現したタンパク質の検出を可能にした。Ainv-Notch 4 ES細胞系は、内皮(Flk-1、VE-cad)及び造血(CD41)発生を示すマーカーの発現パターンに関して、親Ainv18系と同一の分化動態を示した。HA発現についてフローサイトメトリー分析によって決定したところ、Dox(0.5μg/m1)誘導の1日後に、Ainv-Notch 4 ES細胞の90%がNotch 4を発現した(図2A)。
【0046】
造血及び内皮系統の特異化におけるNotch 4シグナル伝達の効果を調査するために、血管芽細胞が発生中のEB由来細胞の集団中で、この経路を誘導した。分化の血管芽細胞段階は、BL-CFCの存在によって定義されるように、大部分のES細胞系に対するEB発生の2.75〜4.0日の間にFlk-1+集団中に見出される。3.25日目のEBから蛍光活性化細胞選別(FACS)によって単離されたFlk-1+細胞を、血清含有分化培地中で2日間、高細胞密度で培養し、BL-CFCの造血及び血管系統への分化を支持する凝集物を形成させた。Doxの非存在下で、Flk-1+集団は、2日間の再凝集工程の間、大きなCD41+造血集団(図2B)及び多数の造血前駆体(図2C)を生成した。Doxを添加により、CD41+集団の大きさ及び凝集物の造血前駆体含量が劇的に縮小し、Notch 4がこのFlk-1集団からの造血発生を阻害したことを示した。Notch 4の誘導は、凝集物中のVE-cad+内皮細胞の割合の僅かな増加をもたらした(図2B)。遺伝子発現プロファイルによって、造血発生におけるNotch 4過剰発現の阻害作用を確認した。誘導された培養物からの凝集物は、誘導されていない培養物からの凝集物と比較して、相当に低いレベルの造血特異的遺伝子gata-1を発現した(図2D)。対照的に、flk-1、ve-cad、SM22、及びpdgfβrを含めた、内皮及び血管の平滑筋の発生を示す遺伝子の発現は、Notch 4により誘導された凝集物中で上方制御された(図2D)。Notch 4の誘導は、心臓の特異化の初期段階の間に通常発現する遺伝子であるNkx2.5の発現も引き起こした。この実施例は、3日目のEBからのFlk-1+細胞におけるNotch 4過剰発現が、造血分化を阻害することを示している。
【0047】
<実施例4:Notch 4過剰発現は、非心臓形成Flk-1+細胞の運命を心筋細胞へ向け直す>
Notch 4が血管芽細胞集団のこの初期段階における心臓発生のプログラムを開始させる潜在能を調査するために、3.25日目のAinv-Notch 4 EBから単離されたFlk-1+細胞を、前記のように、Doxの存在下または非存在下で、24時間再凝集させた。次いで、得られた凝集物を、無血清培地を含有するゼラチンコーティングしたマイクロタイターウェル中で培養した(以下、心臓培養物と称する)。これらの条件は、効率的に心原性中胚葉からの心筋細胞発生を支持する(Kouskoffら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.102:13170〜13175)。単一の凝集物及び凝集物のプールの両方を、2〜3日間培養した。この成熟工程の後に、単一の凝集物の培養物を、心筋細胞への分化を示す収縮した細胞の存在について記録した。Doxの非存在下(-Dox/-Dox)で生成された凝集物のどれもが、収縮した細胞を含有しなかった(図3A)。むしろ、ヘモグロビン化した赤血球系細胞の発生によって示されるように、これらの凝集物には造血分化が起こった。これは、この集団の血管芽細胞能と一致する観察である。対照的に、24時間誘導された集団からのすべての凝集物は、収縮した細胞を含有した(+Dox/-Dox、図3A)。個々の凝集物からの収縮した細胞の免疫染色は、トロポニンTの心臓形態(cTnT)の存在を示し、さらにこれらの細胞の心筋細胞的性質を確認した。(図3B、右パネル)。誘導されていない凝集物から生成された付着細胞には、cTnT細胞はほとんど検出されなかった(図3B、左パネル)。プールした誘導された凝集物の培養物は、広範な領域にわたる収縮した細胞を生成した。収縮した細胞は、誘導されていない凝集物の培養物中には検出されなかった。心臓培養物中で2日後に全細胞集団の60%超がcTnTを発現したように、プールした誘導された凝集物からの分化した子孫のフローサイトメトリー分析によって、Notch 4の劇的な心臓発生効果を確認された(+Dox/-Dox、図3C)。誘導されていない集団から生成された細胞の1%未満が、cTnTを発現した(-Dox/-Dox、図3C)。cTnT発現及び収縮した細胞の存在と一致して、誘導された集団は、nkx2.5、心臓mhc、α-アクチン、mlc2a、及びmlc2vを含めた心臓特異的遺伝子を発現した(図3D)。凝集物由来の集団における収縮した細胞の生成及び心臓遺伝子の発現は、再凝集工程の間にNotch 4シグナル伝達をγ-セクレターゼ阻害剤で遮断することによって阻害することができた(+Dox+阻害剤/-Dox、図3A、3C、及び3D)。阻害剤によるこの運命の反転は、観察される心臓系統の誘導がNotchシグナル伝達に依存していることを明らかに示している。
【0048】
心臓培養物中に凝集物を播く間にDoxを保持した場合、収縮する凝集物は観察されず、cTnT陽性集団では、大きさが有意に縮小し、心臓遺伝子の発現が下方制御された(+Dox/+Dox、図3A、3C、及び3D)。心臓能がこれらの培養物中で維持されているか否かを決定するために、心臓培養物中での2日間の曝露の後にDoxを除去し、Doxの非存在下でさらに2日間細胞を増殖させた。図3Eに示すように、cTnT発現細胞の大きな集団が、Dox除去の2日以内にこれらの培養物中に発生した(Dox+/Dox+/Dox-、図3E)。収縮した細胞の集団は、これらの培養物中に容易に検出された。これらの観察結果は、長時間にわたるNotch 4の発現が、心臓系統の成熟を阻害することを示している。Doxの除去後に成熟が進展し、心臓能が前記集団中で持続していることが示された。この実施例は、Notch 4シグナル伝達の活性化が、初期の非心臓形成Flk-1+細胞の運命を、造血前駆細胞ではなく心筋細胞に向け直し得、且つNotch 4誘導の期間が心臓の運命決定に影響を与えることを示している。
【0049】
<実施例5:Notch 4の心臓発生効果は、初期段階EBからのFlk-1+細胞に限定される>
BL-CFCは、EB分化の2.75〜4日目にFlk-1+集団中に見出される。この段階を過ぎると、この集団は限られた造血及び血管前駆体から構成される。Notch 4の心臓発生効果が、血管芽細胞段階に限定されるのか、またはこれより後の段階のFlk-1集団に観察観察され得るのかを決定するために、Flk-1+細胞を、3日、4日、及び5日目のEBから単離し、Doxの存在下または非存在下で再凝集させ、次いで心臓能を評価した。3日目のFlk-1+細胞からのすべての凝集物は、収縮した細胞を含有した(図4A)。対照的に、4日目のFlk-1+細胞からの凝集物の25%のみがこの活性を示し、5日目の集団からのものはまったくこの活性を示さなかった。凝集工程直後のnkx2.5発現の分析は、3日目及び4日目のFlk-1+細胞からの凝集物中に転写物の存在を示したが、5日目のFlk-1+細胞からの凝集物中にはその存在が示されなかった(図4B)。これは収縮した細胞の分布と一致する観察結果である。この動態分析からの知見は、Notch 4の効果が、発生段階特異的であることを示し、運命変化を受け得る集団が一時的であり、血管芽細胞段階のFlk-1+細胞に限定されることを示している。
【0050】
<実施例6:Notch 4誘導は、BL-CFCの潜在能を造血から心臓の運命へと変化させる>
BL-CFCが、Notch 4により誘導された運命変化の標的であるか否かを決定するために、3.25日目のFlk-1+細胞を、BL-CFCアッセイ中に、Doxの存在下または非存在下で培養した。Doxの非存在下では、この集団は、細胞のブドウ状クラスターのように見える典型的な芽細胞コロニーを生成した。Doxの存在下で培養した場合、これらの細胞は、芽細胞コロニーと容易に見分けることができる密に詰まった細胞のコロニーを形成した(図5A)。これらの密集コロニーの数は、誘導されていない培養物中で発生した芽細胞コロニーの数と同程度であった(図5B)。Doxと共にγ-セクレターゼ阻害剤を加えることによって、芽細胞コロニーへの逆転をもたらし、このことにより密集コロニーの発生はNotchシグナル伝達により媒介されたことが示された。分子解析によって、密集コロニーの大部分が、心臓遺伝子であるnkx2.5、心臓α-アクチン、及びmlc-2a、内皮遺伝子であるflk-1及びve-cad、並びに血管平滑筋遺伝子であるsm22を発現していることが明らかになった(図5C、左のパネル)。これらのコロニーのどれもが、gata-1を発現しなかった。前記で示したように、芽細胞コロニーは、内皮遺伝子及びgata-1を発現した。それらは、測定できるレベルの心臓遺伝子を発現しなかった(図5C、右のパネル)。メチルセルロース培養物中で長時間にわたると、密集コロニーのいくつかは、収縮した細胞を生成した。収縮した細胞を生成するコロニーの割合を定量化するために、個々のコロニーを培養の7日目に採取し、マイクロタイターウェル中の心臓培養物中に再び播いた。培養の2〜7日間に、密集コロニーの約70%が、収縮した細胞を生成した。収縮した細胞はcTnTを発現し、このことによってそれらが心筋細胞であることが確認された(図5D)。芽細胞コロニーは、心臓培養物中で増殖された場合、収縮した細胞を生じなかった。密集コロニーの発現プロファイル及び発達能は、それらが血管及び心臓細胞のコロニーを表すことを示唆している。
【0051】
Dox誘導後に芽細胞コロニーの代わりに密集コロニーが出現したことは、Notch 4の発現が新規な前駆体の増殖を誘導し、一方、BL-CFCの発生を阻害するという事実によるという可能性がある。あるいは、BL-CFCにおけるNotch 4の発現は、その運命を造血から心臓の系統に向け直す可能性がある。同程度の数の芽細胞及び密集コロニーが発生したという観察結果は、後者の解釈と一致する。密集コロニーの起源をさらに調査するために、BL-CFCのDoxへの曝露を24時間までに制限した。この段階で、発生中のコロニーを、Doxを含有するメチルセルロースから取り出し、Epo及びIL-3を補充した血管芽細胞メチルセルロース中に再び播き、任意の造血細胞の増殖を促進させた。Notch 4がBL-CFCに作用している場合は、制限された誘導期間によって、造血を完全に阻害せずに心臓発生が始まり、造血/心臓の混合コロニーの発生をもたらす可能性がある。培養の5日後に、造血細胞に囲まれた細胞の内側のコアを含有するコロニーを観察することができた(図5E)。コアのいくつかは、7日間のメチルセルロース中での培養後に収縮し始めた。採取し、マイクロタイターウェル中の心臓培養物に再び播いた場合、これらの混合コロニーの45%が、収縮した細胞を生成した。これらのコロニーの分子解析によって、造血(gata-1)、内皮(flk-1、ve-cad)、及び心臓(心臓α-アクチン、mlc-2a)系統の存在を確認した(図5F)。まとめると、これらの知見は、Notch 4の発現が、BL-CFCの運命を、造血能及び血管能を有する前駆体から、心臓能及び血管能を有する前駆体へ向け直すことを示す。
【0052】
<実施例7:Notchリガンドは、Flk-1+細胞から心臓発生を誘導する>
前記の実施例は、Notch 4の活性型の発現が、中胚葉性の血管芽細胞からの心臓発生を誘導し得ることを示している。当該効果が、内在性Notch受容体を介したシグナル伝達によっても示され得るか否かを決定するために、Bry-GFP ES細胞からのFlk-1+細胞を、NotchリガンドDelta様-1を発現するOP9細胞上に接種した。培養の3日後に、OP9ストローマ細胞上に収縮した細胞の領域が検出され、細胞の約24%がcTnTを発現していた(図6A)。構成的活性型Notch受容体と同様に、OP9-DL1細胞上の心筋細胞発生は、γ-セクレターゼ阻害剤の存在下で阻害された。このことは、当該効果がNotchシグナル伝達に特異的であることを示している(図6B)。
【0053】
<実施例8:Notchシグナル伝達の遮断は、GFP-Bry+/Flk-1-集団からの心臓分化を阻害する>
EB発生の初期段階で、brachyuryを発現している中胚葉(GFP-Bry+/Flk-1-)のFlk-1-フラクションに、心臓能が位置付けられた(Kouskoffら、前記)。この中胚葉の心臓分化の間のNotch 4の役割を調査するために、GFPのcDNAは、Ainv細胞のbrachyury遺伝子座を標的にし、GFP-Bry+/Flk-1-集団におけるNotch 4の過剰発現を可能にした。GFP-Bry+/Flk-1-フラクションを、GFP-Bry/Ainv-Notch 4 ES細胞由来の3.25日目のEBから単離し、1日間再凝集させ、得られた凝集物を心臓培養物中に播いた。γ-セクレターゼ阻害剤またはDoxを、再凝集工程の間または心臓培養物に細胞に加え、Notch 4の発生段階特異的な効果をさらに明らかにした。心臓培養物中の凝集物の分化の3日後に、cTnT陽性細胞の割合及び心臓遺伝子の発現を分析した(図7)。凝集段階(+I/-I)の間にγ-セクレターゼ阻害剤の添加によるNotchシグナル伝達の遮断によって、cTnT陽性の収縮した細胞の発生が抑制され、心臓遺伝子の発現のレベルが減少した(図7A及び7B)。このことは、Notchシグナル伝達が、この集団からの心筋細胞発生に重要であるを示している。阻害剤を、凝集物ではなく心臓培養物に加えた場合(-I/+I)、cTnT発現集団の割合は、コントロール(-/-)と比較して穏やかに増加した(図7A及び7B)。予想どおりに、この集団は一連の心臓遺伝子を発現した。再凝集段階(+Dox/-Dox)の間のNotch 4の誘導は、コントロールの培養物において観察されるものをよりも心筋細胞発生を促進した(図7C)。対照的に、コントロールの培養物(-Dox/-Dox)と比較してcTnT陽性細胞の減少及び心臓遺伝子の低い発現によって示されるように、心臓培養物(-Dox/+Dox)における誘導は心筋細胞発生を阻害した(図7C及び7D)。この実施例は、Notchシグナル伝達が、ES細胞由来のGFP-Bry+/Flk-1-集団からの心筋細胞の特異化の初期段階にとって必須であることを示している。しかし、Flk-1+集団で観察されるように(図3C)、心臓の培養工程におけるNotch 4発現は、心臓系統の成熟に対して抑制的である。
【0054】
<実施例9:Notchシグナル伝達の遮断は、胚の原始線条からの心臓分化を阻害する>
マウス胚の系統追跡研究は、心臓原基の心臓中胚葉となる前駆体が、7.0〜7.5日胚(E7.0〜7.5)の先端部及び後部の原始線条の境界に隣接した領域から主に由来することを示す(Kinderら、(1999)Development 126:4691〜4701)。E7.5日胚からの先端部PS(DPS)及び後部PS(PPS)の分析(図8A)によって、4種のNotch受容体及びリガンドであるJagged-1の、重複するが異なる発現パターンを明らかになった(図8B)。Jagged-1及びNotch 1は、PSの両方の領域で発現した。Notch 2及びNotch 3の発現は、PPSにおいてより高いようであり、一方、Notch 4のレベルは、DPSにおいてより高かった。Nkx2.5は、発生のこの段階でPS中に検出されなかった。
【0055】
単離されたPPSを心臓培養物中に播いた場合、3〜5日以内は収縮する心筋細胞を検出することができる。Notchシグナル伝達が胚由来の組織からの心筋細胞系統の発生に必要か否かを調査するために、PPSをγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で培養し、次いで収縮した細胞の発生及び心臓遺伝子の発現を分析した。γ-セクレターゼ阻害剤の非存在下では、PS移植片の80%超が収縮した細胞を生成した。阻害剤と共に培養したものの10%未満がこれらの細胞を生じた(図8C)。分子解析によって、γ-セクレターゼ阻害剤の非存在下で各PSから生成された収縮した細胞は、心臓α-アクチン、mlc-2a、及びmlc-2vを含めた心臓マーカーを発現することが明らかになった(図8D)。阻害剤の存在下で、すべてではないがいくつかの移植片において心臓遺伝子の発現が阻害された。すべての培養物における発現が減少しなかったのは、単一の細胞よりむしろ無傷の組織片をアッセイすることによって、阻害剤がすべての細胞に接近することが困難になったという事実による可能性がある。胚の研究からの知見は、ES細胞の分化培養物からの知見と一致し、Notchシグナル伝達が心臓系統の発生に必要であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】Notch 4の遺伝子発現パターンを表した図である。GFP-Bry+/Flk-1+血管芽細胞集団及びGFP-Bry+/Flk-1-心臓形成集団を表す、3.25日目の集団のフローサイトメトリー分析を示す。
【図1B】Notch 4の遺伝子発現パターンを表した図である。異なる段階のEBから単離されたGFP-Bry+/Flk-1+及びGFP-Bry+/Flk-1-集団におけるNotch 4の発現を示す。
【図1C】Notch 4の遺伝子発現パターンを表した図である。芽細胞コロニー由来のコア及び外側の細胞集団の発現分析を示す。4日目の芽細胞コロニーをメチルセルロース培養物から採取し、微細口ピペットを使用して外側の細胞及びコアを分離した。個々のコロニーからの各集団について、示した遺伝子の発現を分析した。L32を内部コントロールとして使用した。
【図1D】Notch 4の遺伝子発現パターンを表した図である。ES細胞由来の造血、内皮、及び血管平滑筋細胞系におけるNotch 4の発現を示す。HOX11-不死化造血細胞系EBHX11及び内皮細胞系D4T(endo)を、この分析のために使用した。EB由来のFlk-1+細胞を強制継代することによって、VSM細胞系を確立した。示した遺伝子の発現を用いて、3種の細胞系の系統忠実性を確認した。
【図2A】EB由来のFlk-1+集団からの造血発生におけるNotch 4シグナル伝達の効果を示した図である。Dox誘導の24時間後のES細胞におけるHA-Notch 4の発現を示す。造血発生におけるNotch 4シグナル伝達の役割を調査するために、3.25日目のFlk-1+細胞を細胞選別によって単離し、Dox(1μg/ml)の存在下(+Dox)または非存在下(-Dox)で、血清含有培地中で2日間再凝集させた。Dox誘導後に、凝集物を分離し、造血能を分析した。
【図2B】EB由来のFlk-1+集団からの造血発生におけるNotch 4シグナル伝達の効果を示した図である。凝集物中のVE-cad及びCD41陽性細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析を表す。
【図2C】EB由来のFlk-1+集団からの造血発生におけるNotch 4シグナル伝達の効果を示した図である。凝集細胞の造血コロニー形成能を示す。棒は、3種の培養物からのコロニー数の平均の標準誤差を表す。Ep:一次赤血球系、Ed:二次赤血球系、Mac:マクロファージ、E/Mac:二分化能赤血球系/マクロファージ。
【図2D】EB由来のFlk-1+集団からの造血発生におけるNotch 4シグナル伝達の効果を示した図である。凝集物の遺伝子発現解析を示す。
【図3A】Notch 4により誘導されたFlk-1+集団の心臓能を示した図である。3.25日目のFlk-1+集団のDox誘導の24時間後の、接触心筋細胞を含有する凝集物の割合を示す。単一の凝集物を、マイクロタイターウェル中の心臓培養物中に播き、再び播いた3日目に収縮した細胞の存在を評価した。-Dox/-Dox:誘導されていない細胞、+Dox/-Dox:凝集培養物へのDoxの添加、+Dox/+Dox:凝集及び心臓培養物の両方へのDoxの添加、+Dox+阻害剤/-Dox:凝集培養物へのDox(0.5μg/ml)及びγ-セクレターゼ阻害剤(5μM)の添加。
【図3B】Notch 4により誘導されたFlk-1+集団の心臓能を示した図である。誘導されていない(-Dox/-Dox)凝集物からではなく、誘導された(+Dox/-Dox)凝集物からの細胞中の心臓トロポニンT(cTnT)の存在を現す免疫染色を示す。
【図3C】Notch 4により誘導されたFlk-1+集団の心臓能を示した図である。プールされた凝集物から生成した培養物中に存在するcTnT+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。凝集物のプールを、心臓培養物中に3日間再び播き、その時点で細胞を回収し、cTnTに対する抗体による細胞内染色にかけた。濃い色の線はcTnT+細胞を表し、一方、陰影をつけた領域は二次抗体のみで染色したコントロールを表す。
【図3D】Notch 4により誘導されたFlk-1+集団の心臓能を示した図である。凝集物の再び播いた3日後の心臓培養物の遺伝子発現解析を示す。図の上に処理法を示してある。
【図3E】Notch 4により誘導されたFlk-1+集団の心臓能を示した図である。心臓培養物からDoxを除去した後に発生したcTnT陽性細胞の割合を示す(+Dox/+Dox/-Dox)。
【図4A】Notch 4による心臓誘導の影響を受けやすいFlk-1+EB集団の一時的発生を示した図である。Flk-1+細胞を、3日目、4日目、及び5日目のEBから単離し、Doxの存在下または非存在下で24時間凝集させた。両方の群からの凝集物を、マイクロタイターウェル中に播き、収縮した細胞の発生をモニターし、または遺伝子発現解析にかけた。培養の3〜5日間、凝集物について、収縮した細胞が存在するかどうかを毎日モニターした。収縮した細胞を含有する凝集物の割合を示す。
【図4B】Notch 4による心臓誘導の影響を受けやすいFlk-1+EB集団の一時的発生を示した図である。Flk-1+細胞を、3日目、4日目、及び5日目のEBから単離し、Doxの存在下または非存在下で24時間凝集させた。両方の群からの凝集物を、マイクロタイターウェル中に播き、収縮した細胞の発生をモニターし、または遺伝子発現解析にかけた。培養の3〜5日間、凝集物について、収縮した細胞が存在するかどうかを毎日モニターした。異なる集団からの誘導された(+)及び誘導されていない(−)凝集物におけるnkx2.5の発現を示す。
【図5A】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。培養4日後の芽細胞(上、-Dox)及び密集した(下、-Dox)コロニーの写真である。初期倍率400×。
【図5B】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。Doxの非存在下または存在下で、あるいはDox及びγ-セクレターゼ阻害剤の存在下で生成した芽細胞または密集したコロニーの数を示す。コロニーを培養4日後に記録した。
【図5C】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。個々の密集コロニー及び芽細胞コロニーの遺伝子発現解析を示す。各レーンは、単一の7日目のコロニーを示す。
【図5D】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。単一の密集コロニーの粘着性増殖物中のcTnTの存在を表す免疫染色を示す。ガラス製のカバーガラス上で、7日目の密集コロニーから、細胞を4日間増殖させた。
【図5E】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。混合系統の造血及び心臓のコロニーの写真である(初期倍率200×)。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下、芽細胞コロニーアッセイ中で1日間培養した。この誘導工程後に、メチルセルロース培養物の全内容物を回収し、発生中のコロニーを数回洗浄し、Doxの非存在下で芽細胞コロニーアッセイ中に同じ容量で再び播いた。第2の培養物に、Epo及びIL-3を補充し、コロニー内の赤血球形成の可視化を可能にした。
【図5F】BL-CFC由来の芽細胞コロニー発生におけるNotch 4発現の効果を示した図である。3.25日目のFlk-1+細胞を、Doxの存在下または非存在下で、メチルセルロース芽細胞コロニーアッセイ中で培養した。個々の混合系統のコロニーの遺伝子発現解析を示す。各レーンは単一の7日目のコロニーを表す。
【図6A】NotchリガンドDll-1によるFlk-1+集団中の心臓発生の誘導を示した図である。γ-セクレターゼ阻害剤(5μM)の非存在下または存在下で、3日間無血清条件で、OP9細胞を発現するDll-1上で、Bry-GFP ES細胞系からの3.25日目のFlk-1+細胞を培養した。この培養工程後に細胞を回収し、抗cTnT抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。阻害剤の非存在下で培養した細胞を示す。
【図6B】NotchリガンドD11-1によるFlk-1+集団中の心臓発生の誘導を示した図である。γ-セクレターゼ阻害剤(5μM)の非存在下または存在下で、3日間無血清条件で、OP9細胞を発現するD11-1上で、Bry-GFP ES細胞系からの3.25日目のFlk-1+細胞を培養した。この培養工程後に細胞を回収し、抗cTnT抗体で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。阻害剤の存在下で培養した細胞を示す。濃い色の線はcTnT抗体で染色した細胞を表し、一方、陰影をつけた領域は二次抗体のみで染色したコントロールを表す。
【図7A】EB由来のGFP-Bry+/Flk-1-中胚葉からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。FACSにより単離したGFP-Bry/Ainv-Notch 4ES細胞系から生成した、3.25日目のGFP-Bry+/Flk-1-細胞を、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で24時間再凝集させた。再凝集工程の後に、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、凝集物のプールを3〜4日間心臓培養物中に播いた。様々な条件下で培養した集団について、フローサイトメトリーによりcTnT+細胞の存在を分析した。γ-セクレターゼ阻害剤の非存在下で(-I/-I)、または再凝集工程の間にγ-セクレターゼ阻害剤に曝露した細胞から(+I/-I)、または心臓培養物中で(-I/+I)発生したcTnT+細胞の割合を示す。
【図7B】EB由来のGFP-Bry+/Flk-1-中胚葉からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。FACSにより単離したGFP-Bry/Ainv-Notch 4ES細胞系から生成した、3.25日目のGFP-Bry+/Flk-1-細胞を、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で24時間再凝集させた。再凝集工程の後に、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、凝集物のプールを3〜4日間心臓培養物中に播いた。様々な条件下で培養した集団について、フローサイトメトリーによりcTnT+細胞の存在を分析した。γ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、心臓培養物中で増殖した細胞の心臓遺伝子発現を示す。
【図7C】EB由来のGFP-Bry+/Flk-1-中胚葉からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。FACSにより単離したGFP-Bry/Ainv-Notch 4ES細胞系から生成した、3.25日目のGFP-Bry+/Flk-1-細胞を、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で24時間再凝集させた。再凝集工程の後に、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、凝集物のプールを3〜4日間心臓培養物中に播いた。様々な条件下で培養した集団について、フローサイトメトリーによりcTnT+細胞の存在を分析した。Dox誘導の非存在下または存在下で発生するcTnT+細胞の割合を示す。(-Dox/-Dox):誘導されていない細胞、(+Dox/-Dox):再凝集工程の間にDoxを添加された、(-Dox/+Dox):心臓培養物にDoxを添加された。
【図7D】EB由来のGFP-Bry+/Flk-1-中胚葉からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。FACSにより単離したGFP-Bry/Ainv-Notch 4ES細胞系から生成した、3.25日目のGFP-Bry+/Flk-1-細胞を、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で24時間再凝集させた。再凝集工程の後に、Doxまたはγ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、凝集物のプールを3〜4日間心臓培養物中に播いた。様々な条件下で培養した集団について、フローサイトメトリーによりcTnT+細胞の存在を分析した。Doxの存在下または非存在下で培養された細胞の心臓遺伝子発現を示す。
【図8A】E7.5の原始線条移植片からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。Notch遺伝子分析のために、先端部原始線条(DPS)、及び後部原始線条(PPS)を生成させるために使用する解剖計画を示す、E7.5日胚の写真である。
【図8B】E7.5の原始線条移植片からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。PPS及びDPSの発現分析を示す。
【図8C】E7.5の原始線条移植片からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。γ-セクレターゼ阻害剤の存在下(+阻害剤)または非存在下(-阻害剤)での培養5日後の、収縮した細胞を有するPPS移植片の割合を示す。
【図8D】E7.5の原始線条移植片からの心臓発生におけるNotchシグナル伝達の役割を示した図である。γ-セクレターゼ阻害剤の存在下または非存在下で、5日間培養した、PPS移植片の遺伝子発現解析を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
胚様体(EB)の形成に十分な条件下で胚性幹(ES)細胞を培養する工程、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞への分化に十分な条件下で前記EBを培養する工程、並びに活性化Notchの存在下で前記血管芽細胞/赤血球系前駆細胞を単離及び再凝集させて、心臓前駆細胞を得る工程を含む、ES細胞から心臓細胞の分化を誘導する方法。
【請求項2】
Notchの非存在下、心筋細胞への分化に十分な条件下で、前記心臓前駆細胞を培養する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性化Notchが、Notchリガンドを添加することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Notchリガンドが、Delta様-1、Delta様-2、Delta様-3、Jagged 1、及びJagged 2からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ES細胞が、誘導可能な発現を制御する調節エレメントに作動可能に連結しているNotchをコードする核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸がNotchの細胞内ドメインをコードする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Notchが、Notch 1、Notch 2、Notch 3、またはNotch 4である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NotchがNotch 4である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
NotchがNotch 4の細胞内ドメインである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
活性化Notchが、血管芽細胞/赤血球系前駆細胞においてNotchをコードする核酸の発現を誘導することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ES細胞が、マウスES細胞または霊長類ES細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ES細胞がヒトES細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ES細胞がNotch 4-ES細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Notchの非存在下で心筋細胞を培養する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記EBを血清中で約2.5〜4.5日間培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記EBを血清中で約3日間培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記再凝集した血管芽細胞/赤血球系前駆細胞を活性化Notchの存在下で約12〜48時間培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記再凝集した血管芽細胞/赤血球系前駆細胞をNotchの存在下で約24時間培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記再凝集した血管芽細胞/赤血球系前駆細胞を無血清条件下で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
誘導物質によって誘導可能な発現を制御する調節エレメントに作動可能に連結しているNotch 4の活性細胞内ドメインをコードする核酸を含有する胚性幹(ES)細胞を、胚様体(EB)を形成するのに十分な条件下で培養する工程、前記EBを血清中で約3日間培養する工程、Flk-1+細胞を単離する工程、前記誘導物質の存在下で約24時間前記Flk-1+細胞を再凝集させて、心臓前駆細胞を得る工程、及び前記誘導物質の非存在下、無血清培地中で前記心臓前駆細胞を培養して、心筋細胞を得る工程を含む、ES細胞からの心臓細胞の分化を誘導する方法。
【請求項21】
少なくとも約10%の心筋細胞を含む、請求項2に記載の方法によって生成された細胞集団。
【請求項22】
少なくとも約50%の心筋細胞を含む、請求項21に記載の細胞集団。
【請求項23】
少なくとも約60%の心筋細胞を含む、請求項21に記載の細胞集団。
【請求項24】
請求項2に記載の方法によって生成された心筋細胞を候補薬剤と接触させる工程、及び心筋細胞への効果をアッセイする工程を含み、効果があることが心筋細胞に効果を及ぼす薬剤が同定されたことを示す、心筋細胞に効果を及ぼす薬剤のスクリーニング方法。
【請求項25】
請求項2に記載の方法によって生成された心筋細胞を含む組成物を、心筋細胞置換療法を必要としている対象に投与する工程を含む、心筋細胞置換療法。
【請求項26】
前記組成物を注射または移植によって投与する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
胚様体(EB)の形成に十分な条件下で胚性幹(ES)細胞を培養する工程、Bry+/Flk-1-細胞への分化に十分な条件下で前記EBを培養する工程、Bry+/Flk-1-細胞を単離する工程、及びNotch阻害剤の存在下でBry+/Flk-1-細胞を再凝集させる工程を含む、ES細胞からの心臓細胞の分化を阻害する方法。
【請求項28】
前記Notch阻害剤がγ-セクレターゼ阻害剤Xである、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546413(P2008−546413A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518414(P2008−518414)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/024418
【国際公開番号】WO2007/002358
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(502375437)マウント シナイ スクール オブ メディスン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】