説明

心臓加齢バイオマーカー及び使用方法

本発明は、Wntシグナル伝達経路に関与するいくつかの遺伝子を含む、心臓における加齢の強力なバイオマーカーのセットを提供する。これらの遺伝子は、若齢者心臓組織に対して高齢者心臓組織において下方制御されることが見出されている。心臓の加齢を監視するために、及び心臓の加齢を遅らせるための栄養素及び食事療法を特定するためにそれらのバイオマーカーを使用する方法が開示される。心臓の加齢を遅らせるための遺伝子自体の調整方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その開示はこの参照によって本明細書に組み込まれる、2009年11月10日に出願の米国特許仮出願第61/280879号への優先権を主張する。
【0002】
[発明の背景]
[発明の分野]
[0002]本発明は、動物の健康及び寿命の栄養的支援の分野に一般に関する。詳細には、本発明は、Wntシグナル伝達経路に関与するいくつかの遺伝子を含む、心臓における加齢のバイオマーカーのセットを提供する。本発明は、心臓の加齢を遅らせるための、及び心臓の加齢を遅らせるための遺伝子自体を調整するための栄養素及び食事療法の特定のための、それらのバイオマーカーの使用をさらに提供する。
【0003】
[関連技術の説明]
[0003]生物体及びその構成器官の加齢は、生物学及び医薬の研究で現在非常に注目されている対象である。加齢の特質には、幹細胞及び始原細胞機能の低下並びに組織再生の減退が含まれる(Rando、2006年、Nature 441巻:1080〜1086頁)。高齢組織は、損傷又は傷害に対する内在性の抵抗性の低下を示す。定着及び循環している幹細胞及び始原細胞は、損傷組織の継続中の修復のために重要である分化していない細胞である。この再生機能は、組織の加齢とともに低下する。幹細胞及び始原細胞の機能障害は、加齢及び疾患に寄与し得ると仮定されている。
【0004】
[0004]最近の報告は、Wnt/ベータカテニンシグナル伝達経路と幹細胞加齢との間の関係を記載している(例えば、Whiteら、2007年、Current Biology 17巻(21号):R923〜925頁、Brackら、2007年、Science 317巻:807〜810頁、Liuら、2007年、Science 317巻:803〜806頁、Nusse、2008年、Cell Research 18巻:523〜527頁、Rando、2006年、上記を参照)。ベータカテニンは、Wntシグナル伝達経路の重要なメディエーターである(Willert & Nusse、1998年、Current Opinion in Genetics & Development 8巻:95〜102頁、Nusse、2008年、上記)。Wntタンパク質が細胞膜上のその受容体に結合すると、細胞内で生化学連鎖反応が引き起こされる。最終的に、シグナル伝達カスケードはベータカテニンを介して核まで送られ、これによりサイトゾルから核までWntシグナルが中継されて、他の核タンパク質とともに遺伝子発現を調節する(Huelsken & Birchmeirer、2001年、Curr.Op.Genet. & Devel.11巻:547〜553頁)。
【0005】
[0005]Wntシグナル伝達は、加齢を促進した動物モデルの様々な組織及び器官で増加したことが報告されている(Liuら、2007年、上記)。連続的Wnt曝露は、細胞老化を引き起こすことが報告された。同様に、高齢骨格筋幹細胞におけるWntシグナル伝達の増加が報告されている(Brackら、2007年、上記)。さらに、Wntシグナル伝達は、筋幹細胞の筋原性から線維形成性への転換を促進することが報告され、このシグナルの阻害は筋原性の運命を保存した。
【0006】
[0006]心臓では、細胞外のWntアンタゴニストである分泌されたfrizzled関連タンパク質2(SFRP2)でWntシグナル伝達を拮抗することが分化を阻害し、胚性及び成人心臓前駆体を未分化状態で維持することをDebらは報告した(Debら、2008年、Stem Cells 26巻:35〜44頁)。したがって、それらの研究者は、Wntシグナル伝達が加齢にともない増加し、このシグナル伝達が心臓幹細胞及び始原細胞を線維形成性系に至らせると仮定した(Deb、2008年、研究提案要約−加齢における新奨励賞、Ellison Medical Foundation URL ellisonfoundation.org/)。Ashtonらは、若齢者心臓に対して「高齢」者心臓におけるWntシグナル伝達経路の下方制御を報告した(Ashtonら、2005年、Experimental Gerontology 41巻:189〜204頁)が、ベータカテニンの発現はその研究では報告されなかった。さらに、機能的にコンピテントな心臓始原細胞はマウスでは20ヶ月齢でピークに達することが示されている(Gonzalesら、2008年、Circulation Research 102巻:597〜606頁)が、Ashtonらの研究の「高齢」群のマウスは、16〜18ヶ月齢の範囲であった。したがって、Ashtonらの研究で用いられたマウスは、真に高齢の個体でなかった。
【0007】
[0007]自由摂食レベルをはるかに下回るカロリー摂取の制限は、寿命を増加させ、多くの加齢に関連する状態を低減するかその開始を遅延させ、ストレス抵抗性を向上させ、齧歯動物及び霊長類などの哺乳動物を含む多数の動物種で機能低下を減速させることが示された。実際、ヒトにおけるカロリー制限(CR)の寿命促進効果を評価するために、治験が開始されている。しかし、ヒトでも動物でも同様に、必要とされる制限の程度及び長さのために、ほとんどの個体についてCRが寿命を増加させるための実行可能な戦略である可能性は低いようである。この理由から、食事摂取量を実質的に変化させずにCRの効果を模倣することが可能な物質、例えば薬剤、栄養物質などの特定に研究の重点が置かれた。
【0008】
[0008]CRの生理的又は生化学的効果の1つ又は複数を模倣することができる作用剤(例えば、Bargerら、2008年、PLoS ONE 3巻(6号):e2264.doi:10.1371/journal.pone.0002264)、又は特定の組織及び器官においてCRと関連する遺伝子発現プロファイルを模倣することができる作用剤(例えば、Spindler、米国特許第6,406,853号、米国特許出願公開第2003/0124540号、Bargerら、2008年、上記)を特定することについて努力がなされてきた。後者に関連して、CRと関連する遺伝子を分析し、遺伝子発現プロファイリングに基づいてCR模倣体をスクリーニングする方法が開示されている(Spindlerら、米国特許出願公開第2004/0180003号、2004/0191775号及び2005/0013776号、Panら、米国特許出願公開第2007/0231371号)。
【0009】
[0009]以下のものを含むいくつかの物質が、様々な心臓以外の細胞及び組織系でベータカテニン及び/又はWntシグナル伝達と相互作用することが報告されている:アルジネート(Dettmarら、2007年、Biomater Sci Polym Ed 18巻:317〜333頁)、アピゲニン(Shuklaら、2007年、Cancer Res.67巻:6925〜6935頁)、アスコルビン酸(Quintanillaら、2005年、J Biol Chem 280巻:11615〜11625頁)、クルクミン(Mahmoudら、2000年、Carcinogenesis 21巻:921〜927頁)、フラバノン(Parkら、2005年、Biochem Biophys Res Commun 331巻:1222〜1228頁)、ゲニステイン(Guoら、2002年、Am J Physiol Cell Physiol 283巻:C722〜C734頁)、ヒアルロン酸(Bourguignonら、2007年、J Biol Chem 282巻:1265〜1280頁)、マグネシウム(Cavedaら、1996年、J Clin Invest 98巻:886〜893頁)、モノオレイルホスファチジン酸(Malbon、2005年、Sci STKE 292巻:pe35頁)、ナリンゲニン(Leeら、2005年、Biochem Biophys Res Commun 335巻:771〜776頁)、一酸化窒素(ニトログリセリン)(Prevotatら、2006年、Gastroenterology 131巻:1142〜1152頁)、ケルセチン(van Erkら、2005年、Eur J Nutr 44巻:143〜556頁)、レスベラトロール(Hopeら、2008年、Mol Nutr Food Res 52巻:S52〜S61頁)、S−カルバミルシステイン(Prowellerら、2006年、Cancer Res 66巻:7438〜7444頁)、酪酸ナトリウム(Abramovaら、2006年、J Biol Chem 281巻:21040〜21051頁)、サリチル酸ナトリウム(Leeら、2003年、Int J Oncol 23巻:503〜508頁)、スペルミジン(Guoら、2002年、Am J Physiol Cell Physiol 283巻:C722〜734頁)、スフィンゴシン(Olssonら、2004年、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 287巻:G929〜937頁)、トロロックス(trolox)(ビタミンE誘導体)(Quintanillaら、2005年、上記)、及びグルコース(Linら、2006年、J Am Soc Nephrol 17巻:2812〜2820頁)。しかし、そのような相互作用が起こることが報告された機構及びそのような相互作用の影響は、多くの場合あまり解明されなかった。
【0010】
[0010]上で要約されている手法の利用可能性にもかかわらず、健康な加齢を促進し、寿命を増加させるために、全身又は特定の組織及び器官の加齢過程を遅らせるか元に戻すことができる作用剤をスクリーニングするための、より強力で速い低コストの方法が依然として必要である。さらに、上記の方法及び作用剤の利用可能性にもかかわらず、全身又は特定の組織及び器官、例えば心臓の加齢を遅らせるか、カロリー摂取を実質的に変えることを個体に要求することなくCRの効果を模倣することができる方法及び組成物が依然として必要である。本発明は、このような必要性に応えるものである。
【0011】
[発明の概要]
[0011]したがって、本発明の目的は、若齢対象と比較して高齢対象の心臓の細胞及び組織で示差的に発現される1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子セグメントを提供することである。
【0012】
[0012]本発明のさらなる目的は、若齢対象と比較して高齢対象の心臓の細胞及び組織で示差的に発現される複数のポリヌクレオチドを含む組合せを提供することである。
【0013】
[0013]本発明の別の目的は、若齢対象と比較して高齢対象の心臓の細胞及び組織で示差的に発現される遺伝子の発現を検出するために適する2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチドのプローブの組成物を提供することである。
【0014】
[0014]本発明のさらなる目的は、心臓の細胞又は組織の生物学的加齢を測定する方法を提供することである。
【0015】
[0015]本発明の別の目的は、若齢対象又は標準参照と比較して、高齢対象の心臓の細胞及び組織で示差的に発現される1つ又は複数の遺伝子の発現プロファイルに及ぼす試験物質の影響を測定する方法を提供することである。
【0016】
[0016]本発明の別の目的は、個体における心臓加齢を遅らせる方法を提供することである。
【0017】
[0017]若齢対象と比較して高齢対象の心臓の細胞及び組織で示差的に発現される遺伝子及び遺伝子セグメントに相当するポリヌクレオチド又はポリペプチドの新規組合せを使用して、これらの他の目的の1つ又は複数が達成され、そこで、これらの遺伝子は、心臓におけるWntシグナル伝達経路へのそれらの関与によって、若齢者心臓組織に対する高齢者組織におけるそれらの発現の減少によって、及びそのような加齢に関連する減少の、CR又はレスベラトロールの摂取による解消によって関係する。ポリヌクレオチドは、若齢対象又は標準参照と比較して、高齢対象の選択される組織で示差的に発現されるポリヌクレオチドの状態を判定するための組成物、プローブ、プローブに基づく装置、及び方法を生成するために用いられ、それらは、上で特定された目的、例えば心臓における加齢に関連する状態を予後診断及び診断することを達成するために、並びに物質が心臓で抗加齢効果を有する可能性があるかどうかについて判定するために物質をスクリーニングするために有用である。ポリヌクレオチドは、心臓でWntシグナル伝達に関与する遺伝子及び遺伝子産物、特にベータカテニン遺伝子及びベータカテニンタンパク質の発現又は活性の調整のためにさらに使用される。プローブなどの試薬、プローブを利用する装置、及び物質の組合せを含むキットも提供され、そのようなキット、情報を操作するためのコンピュータプログラム、並びに示差的に発現される遺伝子及びそれらの使用方法に関する情報を伝えるための通信媒体を含むためのパッケージも提供される。
【0018】
[0018]本発明の他の及びさらなる目的、特徴並びに利点は、当業者に容易に明らかになる。
【0019】
[発明の詳細な説明]
[定義]
[0019]用語「加齢」は、生物体、器官、組織又は任意のその部分の生物学的又は生理的加齢を意味する。これには、生物体、器官、組織又は任意のその部分での加齢に関連する疾患の発生が含まれる。同じように「心臓の加齢」は、心臓又は任意のその部分での加齢に関連する疾患の発生を含む、心臓又は任意のその部分の生物学的又は生理的加齢を意味する。心臓又は本明細書で言及される他の任意の器官への言及は、心臓又は他の器官を含む全ての細胞及び組織を含むものとする。
【0020】
[0020]用語「動物」は、ヒト、又はトリ、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヤギ(hicrine)、ネズミ、ヒツジ及びブタ動物を含む他の動物を意味する。この用語が試験対象を比較することとの関連で用いられる場合、比較される動物は同じ種、おそらく同じ品種又は血統の動物である。用語「ヒト以外の動物」は、本明細書でヒト以外の全ての動物を指すために用いることができる。「伴侶動物」は任意の家畜であり、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、スナネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタなどが含まれるが、これらに限定されない。特に、動物はヒト又は伴侶動物、例えばイヌ若しくはネコである。
【0021】
[0021]用語「抗体」は、特異的な抗原に結合する、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE抗体を含む任意の免疫グロブリンを意味する。この用語には、ポリエピトープ特異性を有するポリクローナル、モノクローナル、一価、ヒト化、ヘテロコンジュゲートの抗体組成物、キメラの二重特異性抗体、ダイアボディ、単鎖抗体並びにFab、Fab’、F(ab’)2及びFvなどの抗体断片、又は他の抗原結合性断片が含まれる。
【0022】
[0022]用語「アレイ」は、基板上の少なくとも2つのプローブの整然とした配置を意味する。プローブの少なくとも1つは対照又は標準であり、プローブの少なくとも1つは診断プローブである。基板上の約2〜約40,000個のプローブの配置は、プローブとポリヌクレオチド又はポリペプチド試料との間で形成される各標識複合体のサイズ及びシグナル強度が個々に識別可能なことを保証する。
【0023】
[0023]用語「結合複合体」は、試料中のポリペプチドが結合パートナー、例えば抗体又はその機能的断片に特異的に結合する(本明細書で定義されている通り)ときに形成される複合体を指す。
【0024】
[0024]「カロリー制限」又は「カロリー的制限」(「CR」)は、栄養欠乏を起こさない低カロリーの任意の食事療法を指す。一般に、制限は、炭水化物、脂肪及びタンパク質に由来する総カロリーのものである。制限は、それに限定されないが、自由摂食の消費と比較してカロリー摂取の一般に約25%〜約40%である。
【0025】
[0025]「栄養補助食品」は、動物の通常の食事に加えて摂取されることが意図される製品である。栄養補助食品は、任意の形、例えば固体、液体、ゲル、錠剤、カプセル、粉末などであってもよい。好ましくは、それらは便利な剤形で提供される。一部の実施形態では、それらは原末又は液体などの大量消費包装で提供される。他の実施形態では、補助食品は大量に提供されて、軽食、ご馳走、補助食品バー、飲料などの他の食品材料に含まれる。
【0026】
[0026]用語「有効量」は、化合物、材料、組成物、医薬若しくは他の材料の量を意味し、又は、本明細書で記載されるように、心臓などの選択される組織中の加齢を元に戻すか遅らせることなどの特定の生物学的結果を達成するのに有効な、食事又は運動療法などの療法の状態を指す。
【0027】
[0027]用語「発現」、例えば「遺伝子発現」は、mRNAを生成する遺伝子の転写、及びタンパク質を生成するmRNAの翻訳を意味する。転写若しくは翻訳の速度の増加、又は転写若しくは翻訳の生成物、例えばmRNA若しくはタンパク質の生成の増加は、用語「増加した遺伝子発現」、「上方制御された遺伝子発現」などに含まれる。同様に、転写若しくは翻訳の速度の低下、又は転写若しくは翻訳の生成物、例えばmRNA若しくはタンパク質の生成の低下は、用語「低下した遺伝子発現」、「下方制御された遺伝子発現」などに含まれる。用語「遺伝子発現の調整」、「遺伝子発現に影響を及ぼす」などは、遺伝子発現を増加又は減少させることを指す。用語「示差的な発現」又は「示差的に発現された」は、試料中の転写されたメッセンジャーRNA又は翻訳されたタンパク質の非存在、存在又はその量の少なくとも1.2倍の変化によって検出される、増加若しくは上方制御された遺伝子発現、又は低下若しくは下方制御された遺伝子発現を意味する。
【0028】
[0028]本明細書で用いる「長期」投与は、1カ月を上回る期間を一般に指す。2、3又は4カ月を超える期間が企図される。5、6、7、8、9又は10カ月を超えるものを含むより長期の期間も含まれる。11カ月又は1年を上回る期間も含まれる。1、2、3年又はそれ以上長い長期間の使用も本明細書で企図される。特定の動物の場合、動物は、本方法によって特定される物質を定期的に投与されることが想定される。本明細書で用いる「定期的」、「定期投与」及び/又は「定期摂取」は、少なくとも毎週の投与を指す。1週に2回又は3回などのより頻繁な投与が企図される。1日に少なくとも1回、2回、3回又はそれ以上の投与を含む療法も含まれる。本明細書で明示的に例示されるか否かを問わず、いかなる投与頻度も有用であるとみなされる。投与頻度が投与される物質の関数であり、所望の生化学的、生理的又は遺伝子発現効果、すなわち食物摂取、満腹、脂質代謝及び脂肪利用の1つ又は複数を含む効果、並びにそれと関連する遺伝子発現プロファイルを維持するために、一部の組成物はより高いか低い頻度の投与を必要とすることがあることを当業者は認識する。本明細書で用いる用語「長期定期的」、「長期定期的投与」及び/又は「長期定期的摂取」は、物質の定期的長期投与を指す。
【0029】
[0029]用語「食物」又は「食品組成物」は、ヒトを含む動物によって消費されることを意図する組成物を意味し、それらに栄養を提供する。「ヒトによる消費のために配合された食品」は、ヒトによる摂取を特に意図する任意の組成物である。「ペットフード」は、ペットによる、好ましくは伴侶動物による消費を意図する組成物である。「完全な及び栄養的に均衡したペットフード」は、食物の意図するレシピエント又は消費者のための全ての公知の必要栄養素を、例えば伴侶動物の栄養の分野で認定された当局の推奨に基づき、適当な量及び割合で含むものである。したがって、そのような食物は、補助的栄養源の追加なしで、生命を維持するか生産を促進するための食事摂取の単独供給源の役目を果たすことが可能である。栄養的に均衡したペットフード組成物は、当技術分野で広く知られ、広く使われている。
【0030】
[0030]用語「断片」は、(1)完全配列の一部であり、特定の使用に対して完全なポリヌクレオチド配列と同じか類似した活性を有するオリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチド配列、又は(2)完全配列の一部であり、特定の使用に対して完全なポリペプチド配列と同じか類似した活性を有するペプチド若しくはポリペプチド配列を意味する。そのような断片は、特定の使用に適すると考えられるいかなる数のヌクレオチド又はアミノ酸も含むことができる。一般に、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド断片は、少なくとも約10、50、100又は1000個のヌクレオチドを含み、ポリペプチド断片は完全配列の少なくとも約4、10、20又は50個の連続するアミノ酸を含む。この用語は、断片のポリヌクレオチド及びポリペプチド変異体を包含する。
【0031】
[0031]用語「遺伝子」又は「複数遺伝子」は、コード領域の前後の領域(リーダー及びトレーラー)並びに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含む、ポリペプチドの生成に関与するDNAの完全又は部分的セグメントを意味する。この用語は、遺伝子コード配列の補体とハイブリダイズする任意のDNA配列を包含する。
【0032】
[0032]用語「遺伝子産物」は、遺伝子の転写の生成物、例えばmRNA若しくはその誘導体(例えばcDNA)、又は遺伝子転写産物の翻訳の生成物を意味する。用語「遺伝子産物」は、タンパク質である翻訳産物を一般に指す。用語「遺伝子産物」は、本明細書で用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」と互換的に用いることができる。
【0033】
[0033]用語「ホモログ」は、(1)参照ポリヌクレオチドと30%、50%、70%又は90%を超える配列類似性を有し、参照ポリヌクレオチドと同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たし、又はストリンジェントな条件下で参照ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする能力を有する、同じか異なる動物種のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、或いは(2)参照ポリペプチドと30%、50%、70%又は90%を超える配列類似性を有し、参照ポリペプチドと同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たし、又は参照ポリペプチドに特異的に結合する能力を有する、同じか異なる動物種のポリペプチドを含むポリペプチドを意味する。完全長コード配列の断片に言及する場合、それらの断片の機能は特定の配列のポリペプチドの選択部分を単にコードすることであってよく、又はそのポリペプチドをコードする別のポリヌクレオチド断片とハイブリダイズするために最適に類似した配列のものであってよい。ポリペプチドの断片に言及する場合、それらの断片の機能は、抗体の生成のために適するエピトープを単に形成することであってよい。2つのポリペプチド配列又は2つのポリヌクレオチド配列の配列類似性は、当業者に公知である方法、例えばKarlin及びAltschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87巻:2264〜2268頁(1990年))のアルゴリズムを用いて判定される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、1990年、(J.Mol.Biol.215巻:403〜410頁)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。比較目的のためにギャップト整列を得るために、Altschulら、1997年、(Nucl.Acids Res.25巻:3389〜3402頁)に記載されているように、Gapped Blastを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが用いられる。
【0034】
[0034]用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、1つのポリヌクレオチドのプリンが相補的なポリヌクレオチドのピリミジンと水素結合するときにポリヌクレオチド試料間で形成される複合体、例えば3’−T−C−A−G−5’との5’−A−G−T−C−3’の塩基対を意味する。相補性の程度及びヌクレオチド類似体の使用は、ハイブリダイゼーション反応の効率及びストリンジェンシーに影響を及ぼす。
【0035】
[0035]用語「併用して」は、薬剤、食物又は他の物質が、(1)組成物、特に食品組成物で一緒に、又は(2)ほぼ同じ時間に又は定期的に同じか異なる投与経路を用いて同じか異なる頻度で別々に動物に投与されることを意味する。「定期的に」は、物質が特定の物質のために許容される投与計画に則って投与されることを意味する。「ほぼ同じ時間に」は、物質(食物又は薬剤)が同時に又は互いに約72時間以内に投与されることを一般に意味する。「併用して」には、薬剤などの物質が定められた期間中投与され、本発明の組成物が際限なく投与される投与スキームが特に含まれる。
【0036】
[0036]用語「個体」は、動物を指す場合、任意の種又は種類の個体動物を意味する。この用語は、用語「対象」と互換的に用いられる。
【0037】
[0037]用語「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドの重合体を意味する。この用語は、一本鎖又は二本鎖のDNA及びRNA(cDNA及びmRNAを含む)分子、及び一本鎖の場合ならば直鎖又は環状形のその相補配列を包含する。この用語は、元の配列と同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たす、その配列に応じて適当な断片、変異体、ホモログ及び対立遺伝子も包含する。特に、この用語は異なる種、例えばマウス及びイヌ又はネコからのホモログを包含する。配列は、整列させるとき完全に相補的(ミスマッチがない)であってもよく、又は約30%までの配列ミスマッチを有することができる。任意選択で、ポリヌクレオチドについては、鎖は約50〜10,000ヌクレオチド、より好ましくは約150〜3,500ヌクレオチドを含む。任意選択で、オリゴヌクレオチドについては、鎖は約2〜100ヌクレオチド、より好ましくは約6〜30ヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの正確なサイズは、様々な因子に、並びにポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの特定の適用及び用途に依存する。この用語には、合成される、及び天然源から単離、精製されるヌクレオチド重合体が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」は、「オリゴヌクレオチド」を含む。
【0038】
[0038]用語「ポリペプチド」、「ペプチド」又は「タンパク質」は、アミノ酸の重合体を意味する。この用語は、天然に存在する及び天然に存在しない(合成的な)重合体、並びに人工化学的模倣体が1つ又は複数のアミノ酸について置換されている重合体を包含する。この用語は、元の配列と同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たす断片、変異体及びホモログも包含する。この用語は、任意の長さの重合体、任意選択で約2〜1000アミノ酸、より具体的には約5〜500アミノ酸を含むポリマーを包含する。この用語には、合成される、及び天然源から単離、精製されるアミノ酸重合体が含まれる。
【0039】
[0039]用語「プローブ」は、(1)プローブに相補的な配列を有するポリヌクレオチドとアニールするかそれと特異的にハイブリダイズすることが可能である、精製された制限酵素消化物として天然に存在するか合成的に生成される、RNA又はDNAのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、或いは(2)他のタンパク質又はタンパク質断片の実質的な排除まで特定のタンパク質又はタンパク質断片に特異的に結合することが可能である、ペプチド又はポリペプチドを含む化合物又は物質を意味する。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブは、一本鎖又は二本鎖であってよい。プローブの正確な長さは、温度、供給源及び用途を含む多くの因子に依存する。例えば、診断適用のためには、標的配列の複雑性に従い、オリゴヌクレオチドプローブは、約10〜100、15〜50、又は15〜25ヌクレオチドを一般に含む。特定の診断適用では、ポリヌクレオチドプローブは、約100〜1000、300〜600ヌクレオチド、好ましくは約300ヌクレオチドを含む。本明細書で、プローブは特定の標的配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択される。これは、プローブが所定条件のセットの下でそれらのそれぞれの標的配列と特異的にハイブリダイズ又はアニールするために十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プローブ配列は、標的の正確な相補配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片をプローブの5’末端又は3’末端に結合することができ、プローブ配列の残りは標的配列に相補的である。或いは、標的ポリヌクレオチドに特異的にアニールするのに、プローブ配列が標的ポリヌクレオチドの配列に対して十分な相補性を有するならば、非相補的塩基又はより長い配列をプローブに点在させてもよい。ペプチド又はポリペプチドプローブは、タンパク質又はペプチドが特異的に結合する、DNA(DNA結合タンパク質の場合)、抗体、細胞膜受容体、ペプチド、コファクター、レクチン、糖、多糖、細胞、細胞膜、オルガネラ及び細胞小器官膜を含む任意の分子であってよい。
【0040】
[0040]用語「試料」は、例えば、DNA及びRNAを含む細胞及び他の組織を含む、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、代謝産物などを含む任意の動物の組織又は流体を意味する。例には、脂肪、血液、軟骨、結合物、上皮、リンパ、筋肉、神経、痰などが含まれる。試料は固体又は液体であってよく、DNA、RNA、cDNA、体液、例えば血液若しくは尿、細胞、細胞調製物又はその可溶性分画若しくは培地分割量、染色体、オルガネラなどであってよい。
【0041】
[0041]用語「単一のパッケージ」は、キットの構成成分が1つ又は複数の容器内で又はそれと物理的に関連し、製造、流通、販売又は使用のための単位とみなされることを意味する。容器には、袋、箱、ボトル、シュリンクラップパッケージ、ステープルで留められているかさもなければ添付されている構成成分、又はその組合せが含まれるが、これらに限定されない。単一のパッケージは、それらが製造、流通、販売又は使用のための単位とみなされるように物理的に関連させられる個々の食品組成物の容器であってよい。
【0042】
[0042]用語「特異的に結合する」は、それらの構造、特にそれらの分子側基に依存する、2つの分子間の特別及び正確な相互作用を意味する。例えば、DNA分子の主溝への調節タンパク質の挿入、2つの一本鎖核酸の間の骨格に沿った水素結合、又はタンパク質のエピトープとアゴニスト、アンタゴニスト若しくは抗体との間の結合。
【0043】
[0043]用語「特異的にハイブリダイズする」は、当技術分野で一般に用いられる所定条件下でそのようなハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補的な(「実質的に相補的である」と言われることもある)配列の、2つの一本鎖ポリヌクレオチドの間の結合を意味する。例えば、この用語は、非相補的配列の一本鎖ポリヌクレオチドとのポリヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを実質的に排除するほどの、本発明の態様による一本鎖DNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列との、ポリヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを指すことができる。
【0044】
[0044]用語「標準」又は「参照」は、(1)例えば、その使用の状況に適切なように、試験物質が示差的な遺伝子発現を引き起こすかどうか判定するために、試験物質を投与された個体の組織を含む試料と比較して、対照若しくは参照物質を投与されたか又は物質を投与されていない個体の組織を含む対照試料を意味する。
【0045】
[0045]用語「ストリンジェントな条件」は、(1)42℃での0.1%ウシ血清アルブミンを含む50%(容量/容量)ホルムアミド、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mM NaClを含むpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、75mMクエン酸ナトリウムでのハイブリダイゼーション、(2)42℃での50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理されたサケ精液DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%硫酸デキストランでのハイブリダイゼーションと、0.2×SSC及び0.1%SDSでの42℃での洗浄、又は0.015M NaCl、0.0015Mクエン酸ナトリウム、0.1%Na2SO4での50℃での洗浄、又は類似した低イオン強度及び高温洗浄剤並びに類似した変性剤を使用する類似した手法を意味する。
【0046】
[0046]用語「変異体」は、(1)ポリヌクレオチド配列からの又はそれへの1つ又は複数のヌクレオチドの任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失又は付加を含み、元の配列と同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たすポリヌクレオチド配列、(2)ポリペプチド配列からの又はそれへの1つ又は複数のアミノ酸の任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失又は付加を含み、元の配列と同じであるか実質的に同じ特性を有し、同じであるか実質的に同じ機能を果たすポリペプチド配列を意味する。したがって、この用語には一塩基多型(SNP)及び対立遺伝子変異体が含まれ、ポリペプチド中の保存的及び非保存的なアミノ酸置換を含む。この用語は、適宜、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの化学的誘導体化、及び天然に存在しないヌクレオチド又はアミノ酸によるヌクレオチド又はアミノ酸の置換も包含する。
【0047】
[0047]用語「仮想パッケージ」は、キットの構成成分が、例えば、1つの構成成分と、ウェブサイトを訪れ、記録されたメッセージと接触し、視覚的メッセージを見るか、又はキットをどのように用いるかについての指示を得るために看護者若しくは指導者と接触するように使用者に指導する指示とを含む袋において、他の構成成分をどのように得るかを使用者に指導する1つ又は複数の物理的又は仮想のキット構成成分上の指示によって関連させられることを意味する。
【0048】
[0048]用語「Wntシグナル伝達」、「Wnt経路」などは、胚形成、並びに成体動物における正常な生理過程に関与する遺伝子及びそれらのコードタンパク質の複雑なネットワークを含む、周知のシグナル伝達経路を指す。本明細書で「Wnt関連の」遺伝子又はタンパク質と呼ばれることもあるこれらの遺伝子及びタンパク質は、Wntシグナル伝達分子、標的細胞上の受容体とのそれらの相互作用、及び細胞外のWntリガンドへの細胞の曝露から生じる標的細胞の生理的応答を生成するか、その生成を調節する。
【0049】
[0049]「若齢」は、青年期、すなわち公知のパラメータに従って種、又は種の中の系統、血統若しくは人種集団によって規定されるような、思春期後の成熟又は青春期の個体を一般に指す。本明細書で用いる「高齢」又は「老齢」は、公知のパラメータに従って種、又は種の中の系統、血統若しくは人種集団によって決定される、身体的に又は年代的にその平均寿命の最後の30%の範囲内にある個体を指す。
【0050】
[0050]範囲は、範囲内のそれぞれのすべての値を列挙及び記載する必要を避けるために、本明細書で省略表現として用いられる。範囲内のいかなる適当な値も、適切な場合、範囲の上の値として、下の値として、又は末端として選択することができる。
【0051】
[0051]本明細書で用いるように、前後関係が明らかに別途表さない限り、語の単数形には複数形が含まれ、逆もまた同じである。したがって、参照語「a」、「an」及び「the」は、それぞれの用語の複数形を一般に含む。例えば、「個体」、「動物」、「方法」又は「疾患」への言及は、そのような「対象」、「動物」、「方法」又は「疾患」の複数形が含まれる。同様に、単語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。同様に用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は」は、そのような構築が文脈から明らかに禁止されていない限り、全て包括的であるとみなすべきである。同様に、用語「例」は、特に用語のリストが後に続く場合は、単に例証的及び例示的なだけであり、排他的又は包括的であるとみなすべきでない。
【0052】
[0052]用語「含む」には、用語「事実上からなる」及び「からなる」によって包含される実施形態が含まれるものとする。同様に、用語「事実上からなる」には、用語「からなる」に包含される実施形態が含まれるものとする。
【0053】
[0053]本明細書で開示される方法及び組成物及び他の進歩は、当業者が認識するようにそれらを変更することができるので、特定の方法論、プロトコル及び試薬に限定されない。さらに、本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を記載することだけが目的であり、開示又は請求されるものの範囲を限定するものではなく、実際限定しない。
【0054】
[0054]別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語、当技術分野の用語並びに頭字語は、本発明の分野(複数可)、又はその用語が用いられる分野(複数可)での当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書で記載されるものに類似するか等しいいかなる組成物、方法、製造品又は他の手段若しくは材料も本発明の実施で用いることができるが、好ましい組成物、方法、製造品又は他の手段若しくは材料が本明細書で記載される。
【0055】
[0055]本明細書で引用又は参照される全ての特許、特許出願、刊行物、技術及び/又は学術論文及び他の参考文献は、法律によって許される範囲でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。それらの参考文献についての議論は、その中で下される断定を単に要約するだけのものである。いかなるそのような特許、特許出願、刊行物又は参考文献又はその任意の部分も、関連すること、材料であること又は先行技術であることを認めるものではない。そのような特許、特許出願、刊行物及び他の参考文献を関連するもの、材料又は先行技術であるとする任意の断定の正確性及び適切性に異議申し立てする権利が特に留保される。
【0056】
[発明]
[0056]本明細書で記載される本発明の多くの態様は、発明者による、心臓中のWntシグナル伝達経路の正の決定因子であるいくつかの遺伝子の発現の加齢に関連する減少の発見から一部生じる。この観察は2つの異なる動物種でされ、加齢心臓で観察されたWnt経路の下方制御が種特異的でないことを示した。特に、Wntシグナル伝達における重要なプレーヤーであるベータカテニンも下方制御される。これらの観察は、Wntシグナル伝達が加齢とともに増加するとの過去及び最近の知見の多くと対照的である。本発明者らは、一般に加齢過程を遅らせることが知られているカロリー制限(CR)及びレスベラトロール補充などの栄養的介入が、Wnt経路遺伝子発現の加齢関連の減少を抑制し、Wnt遺伝子の多くの発現を若齢動物の心臓組織で観察されるレベルに戻るまで増加させることも見出した。
【0057】
[0057]上記の発見に従って、本発明の様々な態様では、Wntシグナル伝達経路は、加齢心臓組織で下方制御されることを発明者が発見した、経路に関与する1つ又は複数の遺伝子の発現を測定又は調節することによって監視又は操作される。そのような遺伝子には、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1及びPias4が含まれる。これらの遺伝子を形成するポリヌクレオチド及びその断片、並びにそれらのコードタンパク質及び断片は、例えば、心臓の細胞若しくは組織の生物学的年齢を測定するための診断アッセイ若しくは予後アッセイにおいて、又は心臓の加齢を遅らせるそれらの効果について試験化合物をスクリーニングするのに有用なアッセイにおいて、又は心臓の加齢を遅らせるための心臓におけるWntシグナル伝達の操作において用いることができる。
【0058】
[0058]本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの示差的に発現される遺伝子の発現を測定することができる。他の実施形態では、2つ以上の示差的に発現される遺伝子の発現を測定して、遺伝子発現パターン又は遺伝子発現プロファイルを提供することができる。
【0059】
[0059]本発明の様々な実施形態では、遺伝子発現の変化は、以下の2つの方法の一方又は両方で測定することができる:(1)特定の遺伝子によって生成されるmRNAの検出を通して転写を測定すること;及び(2)特定の転写産物によって生成されるタンパク質の検出を通して翻訳を測定すること。
【0060】
[0060]減少又は増加した発現は、例えばPCR(それらに限定されないがRT−PCR及びqPCRを含む)、RNアーゼ保護、ノーザンブロッティング、マイクロアレイ、マクロアレイ及び他のハイブリダイゼーション方法などの、ポリヌクレオチドの定量化のための当技術分野で周知である方法のいずれかを用いてRNAレベルで測定することができる。本発明によって分析されるか調べられる遺伝子は、一般的にmRNA又は逆転写されたmRNAの形である。遺伝子は、クローニング及び/又は増幅することができる。クローニングは、それ自体で、集団内での遺伝子の表示を偏らせることはないようである。しかし、ポリA+RNAはより少ない処理ステップで用いることができるので、それを供給源として用いることが好ましい場合がある。
【0061】
[0061]したがって、本発明の一態様は、若齢対象と比較して高齢対象の心臓組織で示差的に発現される複数のポリヌクレオチド又はそれから発現されるタンパク質を含む組合せであって、ポリヌクレオチドが心臓組織のWntシグナル伝達に関与する2つ以上の遺伝子又はその断片から選択される組合せを特徴とする。特定の実施形態では、遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1及びPias4から選択される。他の実施形態では、遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1及びSenp2から選択される。さらに他の実施形態では、遺伝子は、Magi3、Ctnnb1及びCamk2dである。特定の実施形態では、示差的発現は、CRによって、或いは食事療法の一部として、例えば食物若しくは食餌への添加物として、又は栄養補助食品として投与されてもよいレスベラトロールの摂取によって元に戻される。
【0062】
[0062]一実施形態では、組合せは、2つ以上のポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドから発現されるタンパク質を含む。好ましくは、組合せは、複数のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドから発現されるタンパク質を含み、上記遺伝子又はその断片の全てを表すポリヌクレオチド又はタンパク質の全てまでを含むことができる。組合せが1つ又は複数の断片を含む場合、断片は、元のポリヌクレオチド又はタンパク質の特性及び機能を、好ましくは元の約30%、60%又は90%保持する任意のサイズであってよい。
【0063】
[0063]ポリヌクレオチド及びタンパク質は、任意の動物、例えばヒト又は伴侶動物、例えばイヌ若しくはネコ由来のものであってよい。異なる動物種のポリヌクレオチド及びタンパク質のホモログは、当業者に周知である標準の情報検索及び分子手法によって入手できる。例えば、遺伝子又はタンパク質の名称又は機能の記載をいくつかの公開データベースの1つに入力することができ、それは、異なる種からその遺伝子に関する配列情報を含む情報を提供する提供源のリストを生成する。そのようなデータベースの1つは、「Information Hyperlinked over Proteins(iHOP)データベース」であり、それはURL:ihop−net.orgを通してインターネット上でアクセス可能である。或いは、既知の遺伝子又はタンパク質の公開データベース受託番号を利用して、その遺伝子又はタンパク質の配列情報にアクセスすること、及び配列比較検索を用いて他の種でのホモログ又はオルソログを検索することができる。例えば、マウスの遺伝子又はタンパク質のGenBank受託番号をNational Institutes of HealthのNational Center for Biotechnology Inofrmation(NCBI)データベースに入力し、それによってそのマウス遺伝子のDNA又はポリペプチド配列にアクセスすることができる。同じデータベースを用いて、遺伝子又はタンパク質を規定するのに十分な長さのマウスのDNA又はタンパク質配列、又はその断片でBLAST検索を実行し、他の種、例えばイヌからの十分な相同性の配列を同定することができる。対象の他の種の配列の受託番号を次にデータベースに入力し、それらの完全長ヌクレオチド又はタンパク質配列に関係する情報、並びに他の記述的情報を得ることができる。
【0064】
[0064]本発明の別の態様は、若齢対象と比較して高齢対象の心臓組織中の示差的遺伝子発現を検出するためのプローブを含む組成物であって、プローブが、心臓組織でWntシグナル伝達に関与する2つ以上の遺伝子又は遺伝子産物を検出する、組成物を特徴とする。特定の実施形態では、遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1及びPias4から選択される。他の実施形態では、遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1及びSenp2から選択される。さらに他の実施形態では、遺伝子は、Magi3、Ctnnb1及びCamk2dである。特定の実施形態では、示差的発現は、CRによって、或いは食事療法の一部として、例えば食物若しくは食餌への添加物として、又は栄養補助食品として投与されてもよいレスベラトロールの摂取によって元に戻される。
【0065】
[0065]プローブは、Wnt関連の遺伝子又はその断片と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むことができる。或いは、プローブは、Wnt関連の遺伝子又はその断片の発現によって生成されるポリペプチドに特異的に結合するポリペプチド結合剤を含むことができる。特定の実施形態では、ポリペプチド結合剤は抗体であり、特定の実施形態では、それらはモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、プローブは、ヒト、イヌ又はネコのポリヌクレオチド又はポリペプチドに特異的にハイブリダイズするか結合する。
【0066】
[0066]一般的に、組成物は、特定の種及び用途に応じて、ポリヌクレオチド又はタンパク質又はその断片を検出するための複数のプローブ、一般に約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個又はそれ以上のプローブを含む。プローブを利用するアッセイの感度又は正確度を洗練するために、単一の標的遺伝子又はタンパク質のために複数の異なるプローブを利用することができることが当業者によって理解される。例えば、標的ポリヌクレオチド上の異なる配列と特異的にハイブリダイズするいくつかのオリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。同様に、標的タンパク質上の異なるエピトープに免疫学的に特異的ないくつかの抗体を利用することができる。
【0067】
[0067]試料を調べるための1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブは、ヒト、イヌ又はネコなどの任意の種の、本明細書に記載される遺伝子のいずれかの配列情報を用いて調製することができる。プローブは、実質的に適当な相補的遺伝子又は転写産物だけと特異的にハイブリダイズするのに十分な長さであるべきである。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、長さが少なくとも約10、12、14、16、18、20又は25ヌクレオチドである。一部の実施形態では、少なくとも約30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチドのより長いプローブが望ましく、約100ヌクレオチドより長いプローブが一部の実施形態では適することがある。プローブは、機能的タンパク質をコードする完全長配列を含むことができる。核酸プローブは、当業者に公知である方法、例えばヌクレオチドからのin vitro合成、天然源からの単離及び精製、又は本発明のポリヌクレオチドの酵素切断を用いて作製されるか得られる。
【0068】
[0068]Wnt関連の遺伝子を含むポリヌクレオチドとハイブリダイズした核酸プローブを含むハイブリダイゼーション複合体は、当技術分野で公知である様々な方法によって検出することができる。本発明の特定の実施形態では、ポリヌクレオチド及びそれらの発現パターンの迅速で特異的な検出のために、固定化核酸プローブを用いることができる。一般的に、核酸プローブは固体支持体に連結され、標的ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、転写産物、アンプリコン、又は最も一般的には増幅された混合物)はプローブにハイブリダイズされる。プローブ又は標的、又は両方とも、一般的に蛍光団又は他のタグ、例えばストレプトアビジンで標識することができる。標的が標識される場合、ハイブリダイゼーションは結合した蛍光を検出することによって検出することができる。プローブが標識される場合、ハイブリダイゼーションは標識のクエンチングによって一般に検出される。プローブ及び標的の両方が標識される場合、ハイブリダイゼーションの検出は、2つの結合した標識の近接性から生じる色ずれを監視することによって一般に実施される。様々な標識手法、標識などが、特に蛍光ベースの適用について当技術分野で公知である。
【0069】
[0069]別の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子の1つ又は複数又はその断片の発現によって生成される、ポリペプチド又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤をプローブは含む。そのようなタンパク質結合性のプローブは、本明細書で特定されるWnt関連のタンパク質のいずれかについて利用できる配列情報を用いて調製することができる。
【0070】
[0070]試料中のタンパク質のレベルを判定するために用いることができるアッセイ技術も、当業者に周知である。そのようなアッセイ方法には、ラジオイムノアッセイ、競合結合検定法、ウェスタンブロット分析及びELISAアッセイが含まれる。抗体を利用するアッセイ方法では、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が本発明で使用するために適する。当業者に十分理解されるように、そのような抗体は、特定のタンパク質、又はタンパク質のエピトープ、又はタンパク質断片に免疫学的に特異的であってよい。タンパク質又はペプチドに免疫学的に特異的なポリクローナル及びモノクローナル抗体の作製方法も、当技術分野で周知である。
【0071】
[0071]本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載される遺伝子の発現によって生成されるタンパク質の検出及び定量化のために、抗体を利用することができる。タンパク質は免疫沈降、親和性分離、ウェスタンブロット分析などによって検出することができるが、好ましい方法は、抗体が固体支持体に固定化され、標的タンパク質又はペプチドが固定化抗体に曝露させられる、ELISA型の方法を利用する。プローブ又は標的、又は両方とも標識されてよい。様々な標識手法、標識などが当技術分野で公知である。
【0072】
[0072]一実施形態では、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドプローブのアレイを利用することができるが、別の実施形態は、示差的に発現される遺伝子産物に特異的に結合する抗体又は他のタンパク質のアレイを利用することができる。そのようなアレイは、公知の方法、例えば固体支持体上のin−situ合成又はマイクロ印刷技術による固体支持体への前合成プローブの給合によってカスタムメードすることができる。好ましい実施形態では、本明細書に記載される示差的に発現される遺伝子又は遺伝子断片の2つ以上によって生成される転写産物又はタンパク質を特異的に検出するように、核酸又はタンパク質結合性のプローブのアレイがカスタムメードされる。
【0073】
[0073]本発明は、遺伝子発現の変化を監視することを含むアッセイ方法も提供する。これらの態様の1つによると、心臓の細胞又は組織の相対的な生物学的年齢を測定するための方法が提供される。この方法は、以下のステップを含む:(a)心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって試験遺伝子発現プロファイルを判定するステップ、(b)試験遺伝子発現プロファイルを、既知の生物学的年齢の同等の心臓の細胞又は組織の参照遺伝子発現プロファイルと比較するステップ、及び(c)比較から心臓の細胞又は組織の相対的な生物学的年齢を判定するステップ。
【0074】
[0074]特定の実施形態では、Wnt関連遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である。他の実施形態は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2を利用する。さらに他の実施形態は、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dを利用する。具体的な実施形態では、ベータカテニンをコードする遺伝子、例えばCtnnb1の発現が測定される。
【0075】
[0075]特定の実施形態では、下記のセクションでより詳細に記載されるように、この方法は培養細胞集団に対して実施される。より一般的には、この方法は動物の細胞又は組織に対して実施される。好ましい実施形態では、この方法は、ヒト又は伴侶動物、最も一般的にはイヌ又はネコのWnt関連の遺伝子の示差的発現を検出することによる、生物学的心臓年齢を測定するために用いられる。特定の実施形態では、プローブは、好ましくはアレイ中の基板に結合されている。
【0076】
[0076]一部の実施形態では、試験遺伝子発現プロファイルと参照プロファイルとの間の比較は、比較的同時的である(すなわち、老齢及び若齢対象の心臓の細胞又は組織が実施される)。しかし、別の実施形態では、比較のために用いられる参照は、この方法を用いて前に得られるデータに基づく。この実施形態では、プローブは試料に曝露されてハイブリダイゼーション又は結合複合体を形成し、それらは検出されて、Wnt遺伝子発現レベルを心臓の細胞又は組織の既知の生物学的年齢と相関させる前に集められた情報を含むことができる標準のものと比較される。試料及び標準のハイブリダイゼーション又は結合複合体の間の差は、若齢対象又は別の種類の参照対象から前に単離されたmRNAを含むことができる標準に対して、老齢対象の組織で示差的に発現されるポリヌクレオチド、したがって遺伝子の示差的な発現を示す。
【0077】
[0077]CR及び/又は栄養的療法、又は運動療法などの抗加齢療法を実施、促進又は指導するために、上記のものなどの方法が役立ち得る。そのような方法は、そのような療法を受けている対象から心臓組織の試料を得ることを含む。次に、本明細書に記載される遺伝子若しくはタンパク質アレイ又は他の検出方法を用いて、1つ又は複数のWnt関連の遺伝子の調節された発現について組織試料が分析される。治療又は療法が個体における心臓加齢を遅らせるのに有効かどうかについて、分析の結果は明らかにする。
【0078】
[0078]本発明の別の態様は、心臓の加齢を遅らせる能力について作用剤又は療法をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、以下のステップを含む:(a)作用剤又は療法の非存在下で高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって第一の遺伝子発現プロファイルを判定するステップ、(b)作用剤又は療法の存在下で高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって第二の遺伝子発現プロファイルを判定するステップ、及び(c)第一の遺伝子発現プロファイルを第二の遺伝子発現プロファイルと比較するステップであって、第二の遺伝子発現プロファイルの変化が、個体に投与された場合に剤又は療法が心臓の加齢を遅らせるのに役立つ可能性が高いことを示す。
【0079】
[0079]この種類の方法は、少なくとも第二の遺伝子発現プロファイルを、個体に投与されたときに心臓の加齢を遅らせることが知られている参照物質又は療法の存在下で、若齢対象の心臓組織又は高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって得られる参照遺伝子発現プロファイルと比較するステップをさらに含むことができる。そのような療法又は物質には、例えばCR又はレスベラトロールの摂取が含まれる。
【0080】
[0080]前の方法と同様に、試験遺伝子発現プロファイルと参照プロファイルとの間の比較は比較的同時的であり、すなわち、高齢及び若齢対象の心臓の細胞又は組織が並行して試験される。しかし、代替として、比較のために用いられる参照は、この方法を用いて前に得られるデータに基づくことができる。この実施形態では、プローブは試料に曝露されてハイブリダイゼーション又は結合複合体を形成し、それらは検出されて、Wnt遺伝子発現レベルを心臓の細胞又は組織の既知の生物学的年齢と相関させる、前に集められた情報を含むことができるか、或いは、Wnt関連の遺伝子発現によって測定される、心臓加齢に対する既知の効果を有する参照療法又は治療(例えば、CR又はレスベラトロールの摂取)を受けた標準のものと比較される。
【0081】
[0081]特定の実施形態では、Wnt関連遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である。他の実施形態は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2を利用する。さらに他の実施形態は、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dを利用する。具体的な実施形態では、ベータカテニンをコードする遺伝子、例えばCtnnb1の発現が測定される。
【0082】
[0082]一実施形態では、この方法は培養細胞集団に対して実施される。本発明によるWnt関連の遺伝子を含む核酸構築物は、培養宿主細胞に導入される。宿主細胞は、当技術分野で公知であるように、哺乳動物の好ましくは心臓起源若しくは系統の細胞株、又は心細胞に分化することが知られている前駆株であってよい。遺伝子のコード配列は、利用される特定の宿主細胞に適する適当な調節発現エレメントに作動可能に連結される。核酸構築物は、それらに限定されないがトランスフェクション、形質転換、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション及びリポフェクションを含む、当技術分野の任意の許容される手段によって宿主細胞に導入することができる。そのような技術は当技術分野で周知であり、常用されている。
【0083】
[0083]遺伝子発現アッセイは、リポーター遺伝子に作動可能に連結されている、選択される加齢関連の遺伝子のプロモーターを含む遺伝子構築物を使用して実行することができる。リポーター構築物は、それらに限定されないが、上記の標準宿主細胞株、又は脂肪若しくは筋細胞などの対象から新たに単離される細胞を含む、適する培養細胞に導入することができる。試験化合物の存在下又は非存在下でリポーター遺伝子の発現を監視することによって、アッセイは実施される。
【0084】
[0084]別の実施形態では、この方法は動物で実施される。一般的に、Wnt関連の遺伝子又は遺伝子産物の転写又は翻訳に及ぼす試験化合物の影響を判定するために、試験化合物又は試験療法(食事、運動など)が対象に投与され、対象の選択される心臓組織中の遺伝子発現プロファイルが分析される。試験化合物の影響を判定するために、遺伝子発現をin situ又はex vivoで分析することができる。別の実施形態では、対象のタンパク質の活性に及ぼす試験化合物の影響を判定するために、試験化合物又は療法が対象に投与され、遺伝子から発現されるタンパク質の活性が当技術分野で適する任意の手段によってin situ又はex vivoで分析される。さらに、試験化合物が対象に投与される場合、化合物の生理的、全身的及び物理的影響、並びに化合物の潜在的毒性を評価することもできる。
【0085】
[0085]試験物質は、上で記載されるWnt関連の遺伝子の発現の変化、又はその加齢に関連する変化の解消によって判定される心臓の加齢に影響を及ぼすことができる任意の物質又は物質の組合せであってよい。適する試験物質には、それらに限定されないが、アミノ酸;タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、小分子、巨大分子、ビタミン、ミネラル、単糖;複合糖;多糖;炭水化物;中鎖トリグリセリド(MCT);トリアシルグリセリド(TAG);DHA、EPA、ALAを含むn−3(オメガ3)脂肪酸;LA、γ−リノレン酸(GLA)及びARAを含むn−6(オメガ6)脂肪酸;SA、共役リノール酸(CLA);レシチンなどのコリン源;ビタミンA及びカロテノイドなどのその前駆体(例えばβ−カロテン)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)及びビタミンD3(コレカルシフェロール)などのビタミンD源、トコフェロール(例えばα−トコフェロール)及びトコトリエノールなどのビタミンE源、並びにトロロックスなどのビタミンE誘導体、並びにビタミンK1(フィロキノン)及びビタミンK2(メナジオン)などのビタミンK源を含む脂溶性ビタミン;リボフラビン、ナイアシン(ニコチンアミド及びニコチン酸を含む)、ピリドキシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン及びコバラミンなどのBビタミン;並びにビタミンC(アスコルビン酸)を含む水溶性ビタミン;上記ビタミンのいくつか、特にビタミンE及びC;並びにアピゲニン、カテキン、フラボノン、ゲニステイン、ナリンゲニン、ケルセチン及びテアフラビンなどのビオフラボノイド;ユビキノンなどのキノン;リコペン及びリコキサンチンなどのカロテノイド;並びにα−リポ酸を含む抗酸化剤;L−カルニチン;d−リモネン;グルコサミン;S−アデノシルメチオニン;キトサン;アルジネート;カルシウム;ヒアルロン酸;マグネシウム;モノオレイルホスファチジン酸;一酸化窒素(例えば、ニトログリセリン);S−カルバミルシステイン(アミノ酸類似体);酪酸ナトリウム;サリチル酸ナトリウム;スペルミジン;スフィンゴシン;並びにグルコースが含まれる。好ましい実施形態では、試験物質は、食物に加えることができるか、補助食品として食することができる栄養素である。
【0086】
[0086]本発明は、個体に投与された場合に心臓の加齢を遅らせる可能性が高いと前記の方法によって特定される物質又は療法をさらに提供する。それらが特定される方法のために、そのような物質は、心臓でWntシグナル伝達を増加させるか、心臓でWntシグナル伝達に関与する1つ又は複数の遺伝子若しくは遺伝子産物の発現若しくは活性を増加させるか、又は心臓でWnt関連の遺伝子発現若しくは遺伝子産物活性の加齢に関連する減少を少なくとも部分的に元に戻す。
【0087】
[0087]本発明の別の態様は、心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を測定するためのキットを提供する。単一のパッケージ内の別々の容器に、又は仮想パッケージ内の別々の容器に、キットは以下を含む:(1)心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の発現を測定するために適する試薬、及び(2)心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現の測定値を使用して、心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を判定する方法についての指示。特定の実施形態では、キットは、2つ以上のWnt関連の遺伝子を測定するために適する試薬を含む。特定の実施形態では、Wnt関連遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である。他の実施形態は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2を利用する。さらに他の実施形態は、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dを利用する。具体的な実施形態では、ベータカテニンをコードする遺伝子、例えばCtnnb1の発現が測定される。別の具体的な実施形態では、試料中のベータカテニンの量又は活性が測定される。
【0088】
[0088]特定の実施形態では、試薬の少なくともいくつかは、(a)遺伝子発現の転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド;又は(b)遺伝子発現の翻訳産物又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤を含むプローブである。一実施形態では、ポリペプチド結合剤は、ポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体であってよい抗体である。一部の実施形態では、プローブは基板に結合され、アレイの基板の上に構成されてもよい。
【0089】
[0089]キットは、遺伝子の発現レベルを心臓の加齢と相関させるための参照をさらに含むことができる。そのような参照は、(1)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞若しくは組織、又は(2)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞又は組織中の各遺伝子について予期される発現レベルを伝える情報の1つ又は複数を含むことができる。キットは、その摂取が、Wnt遺伝子発現に及ぼす心臓の加齢の影響を元に戻すことが本発明者によって示された、レスベラトロールなどの参照物質を含むこともできる。
【0090】
[0090]前記の種類のキットのいずれでも、キットが仮想パッケージを含む場合、キットは、1つ又は複数の物理的キット構成要素と組み合わせた仮想環境における指示に制限される。一実施形態では、キットは、プローブ及び/又は他の物理的構成要素を含み、プローブ及び他の構成要素を用いるための指示はインターネットを通して利用できる。キットは、試料を混合するための装置、プローブ並びにキットを用いるための試薬及び装置、例えば試験管又は混合用具などのさらなる品目を含むことができる。
【0091】
[0091]さらに別の態様に従い、本発明は心臓の細胞又は組織でWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現の測定に適する試薬を含むパッケージを特徴とし、このパッケージは、パッケージに添付されているラベルをさらに含み、前記ラベルは、パッケージの内容物が心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を判定するための試薬を含むことを示す語若しくは複数の語、画像、デザイン、頭字語、スローガン、句又は他の意匠又はその組合せを含む。
【0092】
[0092]本発明の別の態様は、若齢動物と比較して高齢動物の心臓で減少する、心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の発現レベルを特定する情報を格納するデータベース、及び使用者がデータベース内の情報にアクセスするかそれを操作することを可能にするユーザーインターフェースを含むコンピュータシステムを提供する。データベースは、Wntシグナル伝達に関与する1つ又は複数の遺伝子、例えばDlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4の発現レベルを特定する情報、並びにデータベースと相互作用するための、特に異なる動物又は動物カテゴリーについての情報を入力、操作及び精査するためのユーザーインターフェースを含むことができる。一実施形態では、データベースは、Wnt関連の遺伝子によってコードされる1つ又は複数のポリペプチドの活性レベルを特定する情報をさらに含む。別のものでは、好ましくは様々な種のWnt関連の遺伝子の1つ又は複数及びそれらのコードタンパク質の配列情報をデータベースはさらに含む。他の実施形態では、データベースは、1つ又は複数の動物種での遺伝子の記載に関係するさらなる情報を含む。コンピュータシステムは、データを含むこと及び操作することができ、使用者と相互作用することができる任意の電子的装置、例えば、本発明を用いること、及び動物の状態に関する結果を出力することを容易にするように設計された一般的なコンピュータ又は分析機器である。
【0093】
[0093]本発明のさらに別の態様は、(1)若齢動物と比較して高齢動物の心臓で減少する、心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子、(2)個体の心臓中のWntシグナル伝達を増加させること及び/又はベータカテニンの量若しくは活性を増加させることによって個体における心臓加齢を遅らせること、(3)個体の心臓中のWntシグナル伝達を増加させ、及び/又はベータカテニンの量若しくは活性を増加させる作用剤又は療法を投与することによって個体における心臓加齢を遅らせること、(4)心臓中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現を調節することによって心臓の加齢を遅らせるそれらの能力について試験化合物又は療法をスクリーニングすること、(5)心臓の細胞及び組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現を測定することによって心臓の細胞及び組織の生物学的年齢を判定すること、並びに(6)若齢動物と比較して高齢動物の心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の示差的発現を測定するためのキット及び試薬のうちの1つ又は複数に関する情報又はその使用のための指示を伝えるための媒体を特徴とし、前記媒体は、情報又は指示を含む物理的若しくは電子的文書、デジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声提示、視聴覚提示又は視覚表示の1つ又は複数を含む。
【0094】
[0094]媒体は、当技術分野で公知である様々な媒体又はそのような媒体の任意の組合せ、例えば、それらに限定されないが、表示ウェブサイト、視覚表示キオスク、パンフレット、製品ラベル、添付文書、広告、ちらし、公示、録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、コンピュータ可読カード、コンピュータ可読ディスク、USBデバイス、FireWire装置及び/又はコンピュータメモリから選択することができる。
【0095】
[0095]別の態様では、本発明は、個体の心臓でWntシグナル伝達を増加させることを重視する、個体において心臓加齢を遅らせる方法を提供する。個体は、高齢であるか、心臓の加齢を引き起こす疾患若しくは状態に感受性であるか、それに罹患している任意の年齢、種、健康状態などの動物を含む、任意の種又は種類の動物であってよい。好ましくは、動物はヒト又は伴侶動物、例えばイヌ若しくはネコである。一実施形態では、動物は、心臓の様々な細胞及び組織の加齢に感受性であるか、それに罹患している加齢動物である。別の実施形態では、動物は、心臓にストレスを与えるか加齢させる疾患若しくは状態、又はより老齢の個体と関連し、体の他の部分で有害作用を引き起こす心臓の疾患若しくは状態に感受性であるか、罹患している動物である。いずれの場合も、心臓の加齢を遅らせるための本発明の方法の適用は、個体の心臓に、及びそれによって個体全体に有益な影響を及ぼすであろう。そのような状態又は疾患には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:癌、AIDS、うっ血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患、腎不全、重度の熱傷、心臓発作(虚血)、冠状動脈疾患、アテローム硬化症、手術、例えば血管形成術又は心臓バイパス、心臓弁膜症、肥大型心筋症など。個体が心疾患、血管病などへの1つ又は複数のリスク因子を示す場合、個体は、心臓の加齢又は心臓の加齢と関連する疾患若しくは状態の発生に「感受性である」とみなすことができる。そのようなリスク因子は当業者に公知であり、それらに限定されないが以下のものが含まれる:過体重、身体的な不活動性、高血圧、高いコレステロール及び/又はトリグリセリド、狭心症、糖尿病、喫煙、遺伝、男性であること、ストレス並びに過度のアルコール摂取。
【0096】
[0096]個体における心臓加齢を遅らせるための一般的な方法は、(a)心臓の加齢を遅らせることが望ましい個体を特定するステップと、(b)個体の心臓中のWntシグナル伝達に影響を及ぼす少なくとも1つの遺伝子の発現を調整するステップを含み、調整するステップは心臓中のWntシグナル伝達の増加をもたらし、それによって個体における心臓加齢を遅らせる。特定の実施形態では、Wnt関連遺伝子は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である。他の実施形態は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2の調整を重視する。さらに他の実施形態は、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dを利用する。具体的な実施形態では、ベータカテニンをコードする遺伝子、例えばCtnnb1の発現が調整される。別の具体的な実施形態では、個体中のベータカテニンの量又は活性が調整される。
【0097】
[0097]一実施形態では、調整は1つ又は複数の遺伝子の発現を増加させることを含む。別の実施形態では、Wntシグナル伝達の増加は、個体の心臓中のベータカテニンの量又は活性の増加と関連している。
【0098】
[0098]別の実施形態は、個体に1つ又は複数の作用剤の有効量を投与するステップ、又は心臓中のWntシグナル伝達を増加させる、若しくは心臓中のWntシグナル伝達の加齢に関連する減少を少なくとも部分的に元に戻す1つ又は複数の療法を個体に受けさせるステップを含み、それによって個体における心臓加齢を遅らせる。作用剤は、個体の心臓中のベータカテニンの活性を模倣することによって作用することができる。
【0099】
[0099]特定の実施形態では、個体の心臓でWntシグナル伝達を増加させることによって、又は心臓中のWntシグナル伝達の加齢に関連する減少を少なくとも部分的に元に戻すことによって心臓の加齢を遅らせるために、CR又はレスベラトロールの摂取を含む療法を利用することができる。そのような療法は、本明細書に記載される方法によって特定されるものなどの他の療法又は剤と組み合わせることができる。
【0100】
[00100]好ましい実施形態は、心臓でWntシグナル伝達を増加させ、それによって心臓の加齢を遅らせる物質を定期的に、好ましくは長期間定期的に、個体に経口投与することを含む。一般的に、物質は少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも4週間以上定期的に投与される。物質の投与は、際限なしに、例えば1、2、3、6若しくは9カ月の間、又は1年以上の間、又はさらには個体の一生の間続いてもよい。物質は一般に少なくとも毎日投与されるが、投与計画は物質の性質及び効能によって決まる。したがって、投与はより頻繁、例えば1日に2回若しくは3回、又はより低い頻度、例えば週3回、週2回、週1回、月2回若しくは月1回であってもよい。
【0101】
[00101]特定の実施形態では、物質の長期間の定期経口投与は、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4の1つ又は複数の発現の変化、又はその発現の加齢に関連する変化の解消を引き起こす。他の実施形態は、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2の調整を重視する。さらに他の実施形態は、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dを利用する。具体的な実施形態では、ベータカテニンをコードする遺伝子、例えばCtnnb1の発現が、物質の長期間の定期経口投与によって調整される。別の具体的な実施形態では、個体におけるベータカテニンの量又は活性が調整される。レスベラトロールは、対象に対して長期間定期的に経口投与されると、心臓中のWnt関連の遺伝子発現の加齢に関連する変化を元に戻す物質の例である。
【0102】
[00102]一実施形態では、調整は1つ又は複数の遺伝子の発現を増加させることを含む。別の実施形態では、増加するWntシグナル伝達は、個体の心臓中のベータカテニンの量又は活性の増加と関連する。
【0103】
[00103]通常の食物必要量への補助食品として利用される場合、物質は動物に対して直接的に投与されてもよい。代わりに、物質は、飲料水などの流体を含む毎日の食餌若しくは食物と接触又は混合することができ、又は栄養補助食品として供給することができる。毎日の食餌又は食物と併用されるかそれに組み込まれる場合、投与は当業技術者に周知であるだろう。投与は、動物のための食事療法の一部として実行することができる。例えば、食事療法は、動物による、心臓の加齢を遅らせるのに有効な量の物質の定期摂取を引き起こすことを含むことができる。別の実施形態では、物質は、心臓の加齢を遅らせるための、又は一般に寿命を増加させるための1つ又は複数の薬剤、機能性食品又は栄養剤と併用して動物に投与される。
【0104】
[00104]特定の実施形態では、この方法に従って投与される物質のための1日又は定期の用量は、約0.001g/kg体重〜10g/kg体重の範囲である。より詳しくは、用量は0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09又は0.1g/kg体重を超える。他の実施形態では、物質及び投与頻度によって、投薬量は0.2、0.5、1、3、5、7又は10g/kg体重以上であってもよい。当業者は、対象のための投薬量及び投与計画の開発に精通している。
【0105】
[実施例]
[00105]本発明は以下の実施例によってさらに例示することができるが、この実施例は例示のためにだけ含まれ、特記されていない限り、本発明の範囲を限定するものでないことが理解される。
実施例1
材料及び方法
【0106】
[00106]2つの公開されている齧歯動物心臓加齢遺伝子発現データセットが、NCBIの遺伝子発現オムニバス(GEO)から選択された:(1)ワシントン大学のラット試験(UW)(Linford JLら(2007年)Transcriptional Response to Aging and Calorie Restriction in Heart and Adipose Tissue.Aging Cell 6巻:673〜688頁))(試験1);及び(2)LifeGenのマウス試験(Barger JLら(2008年)A Low Dose of Dietary Resveratrol partially Mimics Calorie Restriction and Retards Aging Parameters in Mice.PLoS ONE 3巻(6号):1〜10頁)(試験2)。2つの試験のための材料及び方法は、参考文献に示されている。第三のデータセットは、未発表のマウス心臓加齢試験からもたらされた。その試験では、マウスは2群(n=7)に分けられ、Barger試験の手順によって対照食餌を与えられた。マウスは、5ヶ月齢(若齢群)及び25ヶ月齢(高齢群)で屠殺された。心臓組織が収集され、マイクロアレイ遺伝子発現アッセイ(試験3)にかけられた。試験2及び試験3では、Affymetrixのマウスゲノム430 2.0遺伝子チップが用いられた。試験1では、Affymetrixのラットゲノム230 2.0遺伝子チップが用いられた。3つの試験の記載を表1において略述する。
【表1】

【0107】
[00107]データを先ず品質について検査し、可能な外れ値について調べた。各試験から1つの3つの試料を外れ値として特定し、さらなる分析から除外した。マイクロアレイの有意性分析(SAM)アルゴリズム(Tusher、Tibshirani及びChu(2001年)Significance analysis of microarrays applied to the ionizing radiation response.PNAS2001年98巻:5116〜5121頁)を用いて各試験の若齢及び高齢群の間で示差的な遺伝子を特定した。選択基準には、発現変化の大きさ(倍率≧1.2)及び偽発見率(FDR<0.5%)が含まれる。
【0108】
[00108]系レベルで遺伝子発現の変化の影響を判定するために、GenMAPP及びMAPPFinderソフトウェアを用いて試験2及び試験3のデータセットで経路分析を実行した(Salomonis、K Hanspers、AC Zambon、K Vranizan、SC Lawlor、KD Dahlquist、SW Doniger、J Stuart、BR Conklin及びAR Pico.GenMAPP 2:new features and resources for pathway analysis.BMC Bioinformatics、2007年6月;8巻:217頁)。チップ全体のプローブを同じ選択基準、1.2より大きい倍率及び0.5%未満のFDRで用いた。データ内で最も有意な関連性を有する経路が選択された。Wntシグナル伝達経路が、最も有意な関連性(試験2及び試験3のデータセットで0.011の調整p値)を有するものの1つであると本発明者らは判断した。
【0109】
[00109]Wnt経路の遺伝子を、それらの発現の変化についてさらに調べた。試験2では、約十数個の遺伝子が、若齢者心臓と比較して高齢者心臓で減少した発現を示した。それらの遺伝子/タンパク質は、それぞれの代表的なGenBank受託番号とともに表2に記載され、試験2の結果は表3に示す。これらの遺伝子の発現は、カロリー制限(CR)群及びレスベラトロール(「Resv」)群でも調べられた。表3に示すように、3つのこれらの遺伝子以外の全ての発現は、CR又はResv処置によってそれらの若齢レベルまで上昇した。加齢心臓で下方制御された遺伝子の大部分はWnt経路の正の決定因子であって、Wnt経路がマウスの若齢者心臓に対して高齢者心臓で下方制御されることを示した。
【表2】


【表3】

【0110】
[00110]3つ全ての試験で類似した発現プロファイルの変化を有する遺伝子を特定し、可能性のあるバイオマーカーを特定するために、統合試験を実行した。結果を表4に示す。3つの遺伝子、Magi3、Ctnnb1及びCamk2dは、3つ全ての試験で若齢者心臓に対して高齢者心臓で下方制御された。第四の遺伝子、Senp2は、2つの試験(試験1及び試験2)で下方制御された。Wntシグナル伝達経路の重要な成分であるベータカテニン(ctnnb1)が特に注目された。核へのWntシグナルを媒介し、様々な転写因子と組んで下流遺伝子のアレイを活性化するので、ベータカテニンはWntシグナル伝達経路で重要な役割を果たす。表4に示すように、ベータカテニンは試験2の高齢者心臓で最高3倍(−3.04)まで下方制御され、その発現はCR(3.18)又はレスベラトロール(2.79)を補充した食事ではその若齢レベルに復帰する。第二のベータカテニンプローブも、僅かに小さい類似した変化を示した。ベータカテニンの発現の変化倍率は、試験3及び試験1の高齢対若齢者心臓でそれぞれ−1.3及び−1.5であった。Magi3及びCamk2dで、類似した発現プロファイルの変化が明白であった。さらに、2つの遺伝子、Dlgh1及びMapk1は、試験1及び試験2で下方制御された。ベータカテニンが心臓加齢のバイオマーカーであることを、この結果は示す。
【表4】

【0111】
[00111]本明細書では、本発明の一般的な好ましい実施形態が開示されている。特定の用語が使用されているが、それらは一般的及び記述的な意味だけで用いられ、限定目的で用いられるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されている。明らかに、上記教示に照らして、本発明の多くの改変及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載されているものと別の方法で本発明を実施することができると理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
若齢対象と比較して高齢対象の心臓組織で示差的に発現される複数のポリヌクレオチドを含む組合せであって、前記ポリヌクレオチドが心臓組織のWntシグナル伝達に関与する2つ以上の遺伝子又はその断片から選択される、組合せ。
【請求項2】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1及びPias4である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1及びSenp2である、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記遺伝子が、Magi3、Ctnnb1及びCamk2dである、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
前記示差的な発現がカロリー制限(CR)又はレスベラトロールの摂取によって元に戻される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
若齢対象と比較して高齢対象の心臓組織中の示差的遺伝子発現を検出するためのプローブを含む組成物であって、前記プローブが前記心臓組織中のWntシグナル伝達に関与する2つ以上の遺伝子又は遺伝子産物を検出する、組成物。
【請求項7】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記遺伝子が、Magi3、Ctnnb1又はCamk2dである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記示差的な発現がCR又はレスベラトロールの摂取によって元に戻される、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記プローブが、
a)遺伝子発現の転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド、又は
b)遺伝子発現の翻訳産物又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記プローブが基板に結合されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記プローブがアレイ状である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
心臓の加齢を遅らせる能力について作用剤又は療法をスクリーニングする方法であって、
a)前記作用剤又は療法の非存在下で高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって第一の遺伝子発現プロファイルを判定するステップと、
b)前記作用剤又は療法の存在下で高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって第二の遺伝子発現プロファイルを判定するステップと、
c)第一の遺伝子発現プロファイルを第二の遺伝子発現プロファイルと比較するステップとを含み、第二の遺伝子発現プロファイルの変化が、個体に投与された場合に前記材料又は療法が心臓の加齢を遅らせるのに役立つ可能性が高いことを示す、方法。
【請求項16】
少なくとも第二の遺伝子発現プロファイルを、個体に投与されたときに心臓の加齢を遅らせることが知られている参照物質又は療法の存在下で、若齢対象の心臓組織又は高齢対象の心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって得られる参照遺伝子発現プロファイルと比較するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記参照物質又は療法がCR又はレスベラトロールの摂取を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子がMagi3、Ctnnb1又はCamk2dである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記遺伝子がCtnnb1である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記判定するステップが培養細胞集団に対して実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記判定するステップが動物の細胞又は組織に対して実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の転写又は翻訳産物を測定する前記ステップがプローブを用いて達成され、前記プローブが、
a)前記転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド、又は
b)前記翻訳産物又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
対象に投与されたときに心臓の加齢を遅らせる可能性が高いと請求項15に記載の方法によって特定される物質又は療法。
【請求項27】
心臓の細胞又は組織の相対的な生物学的年齢を測定する方法であって、
a)心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の転写又は翻訳産物を測定することによって試験遺伝子発現プロファイルを判定するステップと、
b)前記試験遺伝子発現プロファイルを、既知の生物学的年齢の同等の心臓の細胞又は組織の参照遺伝子発現プロファイルと比較するステップと、
c)前記比較から前記心臓の細胞又は組織の相対的な生物学的年齢を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子がMagi3、Ctnnb1又はCamk2dである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子がCtnnb1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記判定するステップが培養細胞集団に対して実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記判定するステップが動物の細胞又は組織に対して実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
心臓組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の転写又は翻訳産物を測定する前記ステップがプローブを用いて達成され、前記プローブが、
a)前記転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド、又は
b)前記翻訳産物又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を測定するためのキットであって、(1)心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する2つ以上の遺伝子の発現を測定するために適する試薬、及び(2)前記心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現の測定値を使用して、前記心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を判定する方法についての指示を含む、キット。
【請求項37】
前記遺伝子の発現レベルを心臓の加齢と相関させるための参照をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記参照が、(1)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞若しくは組織、又は(2)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞若しくは組織中の各遺伝子について予期される発現レベルを伝える情報のうちの1つ又は複数を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である、請求項36に記載のキット。
【請求項40】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2である、請求項37に記載のキット。
【請求項41】
前記遺伝子がMagi3、Ctnnb1又はCamk2dである、請求項38に記載のキット。
【請求項42】
前記試薬が、
a)遺伝子発現の転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド、又は
b)遺伝子発現の翻訳産物又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含むプローブである、請求項36に記載のキット。
【請求項43】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記プローブが基板に結合されている、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記プローブがアレイ状である、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を測定するためのキットであって、(1)心臓の細胞又は組織中のベータカテニンの量又は活性を測定するために適する試薬、及び(2)前記心臓の細胞又は組織中のベータカテニンの量又は活性の測定値を使用して、前記心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を判定する方法についての指示を含む、キット。
【請求項47】
ベータカテニン量又は活性のレベルを心臓の加齢と相関させるための参照をさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記参照が、(1)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞若しくは組織、又は(2)1つ又は複数の既知の生物学的年齢の心臓の細胞又は組織中のベータカテニンの量又は活性を伝える情報のうちの1つ又は複数を含む、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記試薬が、
a)ベータカテニン遺伝子転写産物又はその断片と特異的にハイブリダイズするかそれを増幅するポリヌクレオチド、又は
b)ベータカテニン又はその断片に特異的に結合するポリペプチド結合剤
を含むプローブである、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記ポリペプチド結合剤が抗体である、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記プローブが基板に結合されている、請求項46に記載のキット。
【請求項52】
前記プローブがアレイ状である、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現を測定するために適する試薬を含むパッケージであって、前記パッケージが該パッケージに添付されているラベルをさらに含み、前記ラベルが、前記パッケージの内容物が心臓の細胞又は組織の生物学的年齢を判定するための試薬を含むことを示す語若しくは複数の語、画像、デザイン、頭字語、スローガン、句又は他の意匠又はその組合せを含む、パッケージ。
【請求項54】
若齢動物と比較して高齢動物の心臓で減少する、心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する1つ又は複数の遺伝子の発現レベルを特定する情報を格納するデータベース、及び使用者が前記データベース内の前記情報にアクセスするかそれを操作することを可能にするユーザーインターフェースを含むコンピュータシステム。
【請求項55】
(1)若齢動物と比較して高齢動物の心臓で減少する、心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子、(2)個体の心臓中のWntシグナル伝達を増加させること及び/又はベータカテニンの量若しくは活性を増加させることによって前記個体における心臓加齢を遅らせること、(3)個体の心臓中のWntシグナル伝達、及び/又はベータカテニンの量若しくは活性を増加させる作用剤又は療法を投与することによって前記個体における心臓加齢を遅らせること、(4)心臓中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現を調整することによって心臓の加齢を遅らせるそれらの能力について試験化合物又は療法をスクリーニングすること、(5)心臓の細胞及び組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の発現を測定することによって前記心臓の細胞及び組織の生物学的年齢を判定すること、並びに(6)若齢動物と比較して高齢動物の心臓の細胞又は組織中のWntシグナル伝達に関連する遺伝子の示差的発現を測定するためのキット及び試薬のうちの1つ又は複数に関する情報又はその使用のための指示を伝えるための媒体であって、前記情報又は指示を含む物理的若しくは電子的文書、デジタル記憶媒体、光学的記憶媒体、音声提示、視聴覚提示又は視覚表示の1つ又は複数を含む、媒体。
【請求項56】
表示ウェブサイト、視覚表示キオスク、パンフレット、製品ラベル、添付文書、広告、ちらし、公示、録音テープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、コンピュータ可読カード、コンピュータ可読ディスク、USBデバイス、FireWire装置、コンピュータメモリ、及び任意のその組合せから選択される、請求項55に記載の媒体。
【請求項57】
個体において心臓の加齢を遅らせる方法であって、
a)心臓の加齢を遅らせることが望ましい個体を特定するステップと、
b)前記個体の心臓中のWntシグナル伝達に影響を及ぼす少なくとも1つの遺伝子の発現を調整するステップとを含み、前記調整するステップが前記心臓中のWntシグナル伝達の増加をもたらし、それによって前記個体における心臓の加齢を遅らせる、方法。
【請求項58】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Akt1、Dab2、Rac1、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1、Senp2、Smad3、Mark2、Ccnd1又はPias4である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記遺伝子が、Dlgh1、Magi3、Ctnnb1、Camk2d、Mapk1又はSenp2である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記遺伝子がMagi3、Ctnnb1又はCamk2dである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記遺伝子がCtnnb1である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記調整するステップが前記1つ又は複数の遺伝子の発現を増加させるサブステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記Wntシグナル伝達の増加が、前記個体の心臓中のベータカテニンの量又は活性の増加と関連している、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記個体に1つ又は複数の作用剤の有効量を投与するステップ、又は心臓中のWntシグナル伝達を増加させる、若しくは心臓中のWntシグナル伝達の加齢に関連する減少を少なくとも部分的に元に戻す1つ又は複数の療法を前記個体に受けさせるステップを含み、それによって前記個体における心臓の加齢を遅らせる、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
前記作用剤が前記個体の心臓中のベータカテニンの活性を模倣する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記療法がカロリー制限又はレスベラトロールの摂取を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
心臓の加齢を遅らせるための医薬の製造における、心臓組織中のWntシグナル伝達を増加させる、又は心臓組織中のWntシグナル伝達の加齢に関連する減少を少なくとも部分的に元に戻す1つ又は複数の作用剤の使用。
【請求項68】
前記作用剤がレスベラトロールである、請求項67に記載の使用。

【公表番号】特表2013−509877(P2013−509877A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537864(P2012−537864)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/002950
【国際公開番号】WO2011/059490
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】