説明

心臓弁へ治療薬を局所送達するための方法およびデバイス

心臓弁に治療薬を送達するための医療用デバイスおよび方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、疾患を診断または治療するための医療用デバイスおよび方法に関する。より具体的には、本発明は心臓弁への治療薬または診断薬の送達に使用される医療用デバイス、および同デバイスを使用して対象者の心臓弁の疾患を診断または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁膜症は米国における疾病率および死亡率の主要な原因である。これらの症例の大多数は、大動脈弁の障害を伴っている。大動脈弁の弁膜症には、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、および大動脈弁の閉鎖症が含まれる。大動脈弁狭窄症は、米国で毎年およそ65,000例の大動脈弁置換手術をもたらしている。
【0003】
心臓弁膜症の治療法は、その診断結果の種類および重症度に依存する。軽度の弁疾患を有する患者については現行の有効な治療はない。より重篤な疾患を有する患者は、ACE阻害薬、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝血剤、利尿剤および変力剤のような治療薬で治療可能である。経口治療薬による治療は効果のないことが少なくない。大動脈弁の機械的拡張(弁形成術)、すなわち弁の外科的修復を含む他の治療の選択肢が利用可能であり、または弁置換手術が必要な場合もある。これらの侵襲性の高い処置はそれぞれ、合併症を招く重大なリスクを伴う。重症患者は、典型的には弁の外科的置換を必要とする。しかしながら、すべての患者が弁置換術で治療されるとは限らず、かつ薬物療法は効果がない可能性がある。
【0004】
大動脈弁膜症の経口治療薬による治療の限界のうちの1つは、経口投与後の疾患部位(罹患した弁尖)における治療薬の生物学的利用能に限界があることである。投薬用量を増やすことはできるが、罹患した弁組織への治療薬送達を改善するためのそのような手段は、毒性副作用のリスク増大のため限界がある。大動脈弁への治療薬送達のための様々な介入的方法が文献に記載されている。一般に、これらのデバイスは弁形成術デバイスである。例えば、特許文献1および2には、弁形成術と併せた治療薬の同時送達のために設計可能な弁形成術カテーテルおよび弁形成術デバイスについて記載されている。同文献に記載された弁形成術の処置は、大動脈弁尖に相当な量の力をかけ、ひいては弁の再狭窄または弁尖の損傷をもたらす可能性がある。さらに、そのようなデバイスを用いた弁形成術の適用は、弁形成術の際に弁の機能を大きく混乱させるリスクを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0229659号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2005/0075662号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、心臓弁へ診断薬または治療薬を送達するための医療用デバイスおよび方法に関する。そのようなデバイスの実施形態により、弁を通過する血流の乱れを最小限とし、かつ弁尖の損傷または弁尖からの石灰性小塊の放出のリスクを最小限として、弁組織に直接治療薬を投与することが可能となる。例えば、本発明の一例のデバイスは、狭窄大動脈弁に治療薬を送達するために使用可能である。そのような送達は、経口治療の代替治療として、経口治療の失敗の後に、大動脈弁の修復もしくは弁形成術に先立って、または大動脈弁の修復もしくは弁形成術の後に、実施することができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態は、心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、先端を有する本体と、本体に接続された複数の送達部材とを備え、各部材は第1端および第2端を有し、少なくとも1つの送達部材の第1端および第2端は、本体の先端より基端側の位置で本体に接続されていることを特徴とするデバイスである。いくつかの実施形態では、送達部材のうち少なくとも1つは、治療薬によって少なくとも部分的にコーティングされている。
【0009】
別の実施形態は、複数の送達部材が接続された治療薬送達カテーテルであって、各部材はカテーテルの一部に並列して配置される部分を有する、カテーテルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの送達部材は1以上の開口部を備えたルーメンを有し、該開口部は該ルーメンとの連通を提供して、液体が1以上の開口部を通して送達部材から流出できるようになっている。これらの実施形態はいずれも任意選択で、少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部が治療薬によりコーティングされていてもよい。1以上の開口部を備えたルーメンおよび治療薬コーティングについては、以下により詳細に議論する。
【0010】
別の実施形態は、心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、先端を有する本体と、本体の一部に沿って長手方向の向きに配置されたフィンとを備え、フィンは本体の先端から1mmを上回る距離に位置付けられた先端を有し、フィンは治療薬によって少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とするデバイスである。
【0011】
さらなる実施形態は、心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、先端を有する本体と、本体に接続された、複数のナノフィラメントを有する拡張可能なバルーンとを備え、バルーンは本体の先端から1mmを上回る距離に位置付けられていることを特徴とするデバイスである。
【0012】
別の実施形態は、心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、先端を有する本体と、本体に接続された拡張可能なバルーンとを備え、バルーンは1以上の開口部を有し、液体が1以上の開口部を通してバルーンから流出できるようになっているデバイスである。
【0013】
これらの実施形態のうちいずれか、ならびに以下に一層詳細に議論される実施形態のうちいずれかの、より特定の形態では、デバイスは既知の技術を使用して滅菌されてもよく、かつ任意の適切な容器内で密閉または他の方法で封入可能であり、使用説明書を備えていても備えていなくてもよく、使用説明書は任意の適切な形式であってよい。
【0014】
本発明はさらに、対象者の弁膜症を診断または治療する方法に関するものでもあり、該方法は、対象者の血管に前述のデバイスのうちの1つを挿入することと、該デバイスは、治療薬または診断薬によって少なくとも部分的にコーティングされた送達部材、ナノフィラメントまたはフィンを備えていることと、該デバイスを、送達部材、ナノフィラメントまたはフィンが弁の弁尖に接触するように配置することと、接触させた結果、治療薬または診断薬が弁に送達され、かつ対象者の弁膜症の診断または治療がもたらされることと、を要する。デバイスの挿入は、当業者に既知の任意の方法により、例えば対象者の血管内への挿入に続いてX線像による誘導を使用して適切な配置へと進めることにより、心尖の穿刺により、または経中隔的な順行性の手法により、行うことができる。
【0015】
他の実施形態は、対象者の弁膜症を診断または治療する方法であって、(a)対象者に前述のデバイスのうちいずれかを挿入することと、デバイスは、ルーメンと、1以上の開口部を有しておりその1以上の開口部を通して液体が流れることが可能となっている送達部材、フィン、またはバルーンとを備えていることと、(b)送達部材、フィンまたはバルーンが弁の弁尖に接触するように、デバイスを配置することと、(c)診断薬または治療薬と担体とを含む医薬組成物を、デバイスのルーメンを通して注入することと、注入により、デバイスから組成物が放出され、かつ弁膜症の診断または治療がなされることと、を要する方法に関する。デバイスは、当業者に既知の任意の方法を使用して対象者に挿入することができる。例えばいくつかの実施形態では、デバイスはガイドワイヤ上を伝って通される。例えばいくつかの実施形態では、デバイスは、1つのルーメンがガイドワイヤ上を伝うように構成され、第2のルーメンが液体の注入を可能にするように構成された、二重のルーメンを備えている。
【0016】
本方法の特定の実施形態は、大動脈弁膜症を治療する方法としてさらに定義される。大動脈弁膜症は、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全、または大動脈弁の閉鎖症のような任意の種類の弁膜症であってよい。本明細書中に示されたデバイスおよび方法は、僧帽弁および肺動脈弁の疾患の治療に適用することもできる。
【0017】
本発明はさらに、対象者の弁膜症を診断または治療する方法を他者に指導する方法に関するものでもあり、そのような方法の実施形態は、本発明の技術に従って診断または治療のうち少なくともいずれか一方を実施する方法の1以上の例を示すための機械読み込み可能な説明書を含んでなる、コンピュータ読取り可能なメディアを提供することを含んでいる。表示される技術は、仮想の処置手順を示すことも、実際の処置手順を示すこともできる。
【0018】
本方法のある実施形態は、対象者の弁膜症を診断する方法に関する。これらの実施形態ではさらに、治療薬は診断薬として定義される。該方法は、デバイスから放出される診断薬からのシグナルを検出することをさらに含むことができる。診断薬は、当業者に既知の任意の診断薬であってよい。非限定的な例には、ジアトリゾ酸、ガドリニウムキレート、およびフルオレセインナトリウムが挙げられる。シグナルの検出には、当業者に既知の任意の画像診断技術の使用を伴う場合がある。そのような技術の非限定的な例には、PET、PET/CT、CT、SPECT、SPECT/CT、MRI、光学的画像化および超音波が挙げられる。
【0019】
対象者の弁膜症を治療する方法に関する実施形態では、薬学的に有効な量の治療薬が本発明の治療薬送達デバイスを使用して対象者に投与される。治療薬は、対象者における弁膜症の治療または予防に有益であることが知られているかまたは有益と考えられる任意の治療薬であってよい。そのような治療薬の非限定的な例には、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、スタチン類、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、PPARアゴニスト、抗炎症剤、狭窄抑制物質、抗生物質、アトルバスタチン、キナプリルおよび酸化窒素を増強する薬剤が挙げられる。
【0020】
本発明のデバイスおよび方法のうちいずれかの任意の実施形態は、記載された特徴およびステップ(を含んでなるのではなく)で構成されるかまたはほぼ構成される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】先端を有する本体と、本体の先端より基端側の位置で本体に接続された2つの薬物送達部材とを示している本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図。
【図1B】図1Aの横断線160−160に沿って得られる断面図であって、中実の本体を示す断面図。
【図1C】中空の本体を備えた別の実施形態を示す断面図。
【図2A】先端を有する本体と、本体に接続された2つの薬物送達部材とを示している、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、送達部材は複数の開口部を有し、液体が1以上の開口部を通して送達部材から流出できるようになっている。
【図2B】図2Aの横断線35−35に沿って得られる断面図。
【図3A】先端を有する本体と、本体に接続された5つの薬物送達部材とを示している本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図。
【図3B】図3Aの横断線170−170に沿って得られる断面図。
【図4A】本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、先端を有する本体と、デバイスの本体に接続された薬物送達部材とを示しており、送達部材は、中心ルーメンと複数の開口部とを有し、液体が送達部材から流出できるようになっており、デバイスの本体は、ガイドワイヤを通すための中心ルーメンと、医薬組成物のような液体を注入するための周囲の環状ルーメンとを有する。
【図4B】図4Aの横断線58−58に沿って得られる断面図。
【図5A】先端を有する本体と、治療薬でコーティングされている送達部材とを示している本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図。
【図5B】図5Aの横断線69−69に沿って得られる断面図。
【図6A】本体および3つのフィンを有し、フィンは治療薬でコーティングされている本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図。
【図6B】図6Aの横断線76−76に沿って得られる断面図。
【図7A】本体と3つのフィンとを有する本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、フィンは本体のルーメンと連通しているルーメンを有し、かつそれぞれのフィンは複数の開口部を有して液体が複数の開口部を通過するのを可能にしている。
【図7B】図7Aの横断線86−86に沿って得られる断面図。
【図8】本体と本体に接続された拡張可能なバルーンとを有する本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、バルーンは複数の開口部を有し、液体が複数の開口部を通ってバルーンから流出できるようになっている。
【図9A】図8のデバイスの第1の部分的拡張後の状態を示す側面図。
【図9B】図8のデバイスの完全に拡張した状態を示す側面図。
【図10A】本体と本体に接続された拡張可能なバルーンとを有する本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、バルーンには複数のナノフィラメントが取り付けられており、バルーンは非拡張状態にあり、ナノフィラメントの少なくとも一部に治療薬が付着していてもよい。
【図10B】図10Aのバルーンの拡張状態を示す側面図。
【図11A】患者の大動脈弁に治療薬を送達するために配置された、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、デバイスの先端が左心室内にあること、および薬物送達部材が大動脈弁尖に接触していることを示す。
【図11B】図11Aのデバイスの配置後であって弁尖が閉鎖状態にある時に、上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図であり、大動脈弁尖と薬物送達部材との接触を示している。送達部材は治療薬でコーティングされており、放出は送達部材との接触によって促進される。
【図12A】患者の大動脈弁に治療薬を送達するために配置された、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、デバイスの先端が左心室内にあること、および薬物送達部材が大動脈弁尖に接触していることを示す。
【図12B】図12Aのデバイスの配置後であって弁尖が閉鎖状態にある時に、上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図であり、大動脈弁尖と薬物送達部材との接触を示している。デバイスのルーメンを通して注入された医薬組成物は、送達部材の開口部を通り抜ける。
【図13A】患者の大動脈弁に治療薬を送達するために配置された、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、デバイスは、先端を有する本体と、本体の一部に沿って長手方向の向きに配置された3つのフィンとを備えており、デバイスの先端が左心室内にあること、およびフィンが大動脈弁尖に接触していることを示す。
【図13B】図13Aのデバイスの配置後であって弁尖が閉鎖状態にある時に、上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図であり、デバイスのフィンが大動脈弁尖の交連部に配置されていることを示す。
【図14】患者の大動脈弁に治療薬を送達するために配置された、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、デバイスは、拡張可能なバルーンが接続された本体を備え、該バルーンは複数の開口部を備えており、液体が開口部を通ってバルーンから流出できるようになっている。
【図15】患者の大動脈弁に治療薬を送達するために配置された、本発明の医療用デバイスの1例を示す側面図であって、デバイスは、拡張可能なバルーンが接続された本体を備え、該バルーンは、治療薬でコーティングされた複数のナノフィラメントを備えており、図のように、バルーンの拡張により大動脈弁尖とナノフィラメントとの接触が促進され、かつ大動脈弁尖への治療薬の送達が促進される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語「含む、含んでなる(comprise)」(ならびに該用語の任意の形式、例えば「含む、含んでなる(comprises)」および「含んでいる、含んでなる(comprising)」)、「有する(have)」(ならびに該用語の任意の形式、例えば「有する(has)」および「有している(having)」)、「備える、含む(include)」(ならびに該用語の任意の形式、例えば「備える、含む(includes)」および「備えている、含んでいる(including)」)、「含有する、含む(contain)」(または該用語の他の任意の形式、例えば「含有する、含む(contains)」および「含有している、含んでいる(containing)」)は、制約のない(open−ended)連結動詞である。したがって、先端を有する本体と、本体に接続された複数の送達部材とを「含んでなる」、心臓弁に治療薬を送達するための医療用デバイスは、先端を有する本体と、本体に接続された複数の送達部材とを所有する医療用デバイスであるが、記載された本体および送達部材だけを所有すると限定されてはいない。
【0023】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は1または1以上を意味する。用語「別の、別のもの(another)」は少なくとも第2またはそれ以上(のもの)を意味する。
【0024】
数値はすべて、明示されているか否かにかかわらず、本明細書中では用語「約(about)」で修飾されるものと見なされる。用語「約」は一般に、記述された値と等価である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と当業者が考えると思われる範囲の数値を指す。多くの場合、用語「約」は有効数字の位に四捨五入される数値を含むことができる。
【0025】
同様に当業者には明らかであるが、本発明のデバイスおよび方法の特徴についての代替、改変、付加または再構成は、特許請求の範囲およびその等価物によって定義される該デバイスおよび方法の範囲から逸脱することなく実施可能である。添付の特許請求の範囲は、所与の請求項において「〜のための手段」または「〜のためのステップ」のうち少なくともいずれかの一方の語句を用いて明示的に限定が記述されないかぎり、そのような「手段+機能」の限定を含むものと解釈すべきではない。
【0026】
A.デバイス
本発明の医療用デバイスのうちの1つが図1A‐Bに示されている。図1Aは、医療用デバイス10が先端12および基端13を有する本体11と、本体11に接続された複数の送達部材14とを備えており、部材はそれぞれ第1端15および第2端16を有し、少なくとも1つの送達部材の第1端および第2端は本体11の先端12より基端側の位置で本体11に接続されることを示している。
【0027】
デバイス10は、先端12と基端13との間に様々な長さを有することができる。1つの実施形態では、先端12と基端13との間の長さは、デバイス10が経皮的に対象者の血管系を通って差し込まれて所定の位置に先端12が配置されるのを可能にするのに十分ということになる。1例では、所定の位置はヒトの心臓の左心室内である。当然ながら、先端12と基端13との間の長さは、各対象者の生理学的構造および対象者体内の所定位置によって変化することになる。単なる例として、先端12と基端13との間の長さは約10cm〜約200cmであってよい。より具体的な実施形態では、先端12と基端13との間の長さは約70〜約150cmである。さらに一層具体的な実施形態では、先端12と基端13との間の長さは約80cm〜約120cmである。
【0028】
図1Bは、図1Aの線160−160に沿ったデバイス10の断面図を示す。図に見られるように、本体11および送達部材14は中実である。送達部材14のために選択された1または複数の材料(以下に議論される)が、ある実施形態において該部材に可撓性を与える場合もあれば、他の実施形態では剛性を与える場合もある。いくつかの実施形態では、デバイスの本体11はルーメンを有し、先端12は開放されているか、または閉鎖されている(図1Cに示す断面図を参照)。
【0029】
本体11は、直径が一定であってもよいし、他の実施形態ではその長さに沿ってテーパ状をなして、先端12が基端13の断面直径よりも小さい断面直径を有するようになっていてもよい。同様に、送達部材14はその長さに沿ってテーパ状をなしてもよいし、その長さに沿って断面直径が一定であってもよい。送達部材は任意の長さL(図1Aを参照)であってよく、弁に近接して配置された時に該部材が治療薬を放出するのを可能にする任意の直径を有することができる。図11Bに示すように、送達部材は、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にある時にデバイス本体が心臓弁を横切って通されると対象者の心臓の弁尖と接触するように、構成される。いくつかの実施形態では、送達部材は長さ約1mm〜約15cmである。別の実施形態では、送達部材は長さ約1cm〜約20cmである。さらに別の実施形態では、送達部材は長さ約3cm〜約8cmである。
【0030】
図2Aは、本発明の医療用デバイス20の側面図を示す。医療用デバイス20は、先端22を有する本体21と、送達部材23,26とを備えている。送達部材23は、本体21に接続された第1端24と、本体21に接続された第2端25とを有する。送達部材26は、本体21に接続された第1端31と、本体21に接続された第2端32とを有する。デバイス20では、送達部材の第1端は、先端22からほぼ(正確な場合も含む)等距離にある部位で本体21に接続され;第2端の接続部位についても互いに同じことが当てはまる。しかしながら別の実施形態では、送達部材の第1端の接続部位は、先端22から等距離ではなく(例えば、位置をずらして配置され)、第2端の接続部位も等距離ではない。
【0031】
図2Bは、図2Aの線35−35に沿ったデバイス20の断面図を示す。デバイス20は、中空の本体21を備えている。より具体的には、デバイス20はその長さに沿ってルーメンを有する本体21を備えている。さらに、図2Bに描かれるように、送達部材23,26も中空である。より具体的には、デバイス20は、各々がそれぞれの長さに沿ってルーメンを有する送達部材23,26を備え、送達部材23,26のルーメンはそれぞれデバイス20の本体21のルーメンと直接連通している。他の実施形態では、いくつかの送達部材はルーメンを有し、その他の送達部材はルーメンを有していない。いくつかの実施形態では、すべての送達部材がルーメンを有するわけではない。ルーメンを備えた送達部材の中では、送達部材のルーメンはデバイス本体のルーメンと連通していてもよいし、連通していなくてもよい。
【0032】
デバイス20は、本体21の閉じた先端22を備えており、従って先端22より基端側の開口端に注入された何らかの液体が先端から出るのを防いでいる。別の実施形態では、先端は開口していて、液体が先端22を通って本体21のルーメンから抜けることができるようになっている。
【0033】
送達部材23,26は複数の開口部33を備えている。開口部33は送達部材23のルーメンと連通し、液体が開口部33を通って送達部材23から流出できるようになっている。したがって、本発明のデバイスのいくつかの実施形態、例えばデバイス10は、送達部材14に開口部を備えていないが、他の実施形態では、送達部材がそれぞれの送達部材のルーメンと連通している1以上の開口部を備え、液体が1以上の開口部を通ってその送達部材から流出できるようになっている。したがって、例えばデバイス20では、基端側の開口端34を介した液体の注入物は本体21のルーメンを通り、送達部材23,26のルーメンを通り、開口部33を通って送達部材から流出する。デバイス20のようないくつかの実施形態では、送達部材はそれぞれ、ルーメンおよびそのルーメンと連通している1以上の開口部を有し、液体が1以上の開口部を通してその送達部材から流出できるようになっている。他の実施形態では、ルーメンを備えた送達部材のうち一部のみがそのルーメンと連通している1以上の開口部を有し、液体が1以上の開口部を通して送達部材から流出できるようになっている。
【0034】
本発明のデバイスは、少なくとも2つの送達部材がありさえすれば、任意の数の送達部材を備えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、デバイスは2〜500個の送達部材を備えている。別の実施形態では、デバイスは10〜200個の送達部材を備えている。さらに別の実施形態では、デバイスは30〜60個の送達部材を備えている。上記に議論されたデバイス10,20はそれぞれ2個の送達部材を備えている。
【0035】
図3Aはデバイス40の側面図を示す。デバイス40は5つの送達部材を備えている。図3Bは、図3Aの線170−170に沿ったデバイス40の断面図を示す。図4A〜Bに描出されたデバイス50および図5A〜Bに描出されたデバイス60は、それぞれ40個の送達部材を備えている。
【0036】
図1A、2A、3A、4Aおよび5Aに示されたデバイスの実施形態では、各送達部材の第1端および第2端は、本体の先端より基端側の位置で本体に接続される。他の実施形態では、送達部材の第1端および第2端のすべてが両方とも本体に接続されるとは限らない。いくつかの実施形態のデバイスは、一端だけがデバイスの本体に接続された送達部材を備えている。別の実施形態は、本体の先端に接続されたいくつかの送達部材を備えている。
【0037】
いくつかの実施形態、例えばデバイス50では、本体54はその長さに沿って分離したルーメンを有し、該デバイスがその長さに沿って伸びる2以上のルーメンを効率的に有するようになっている。これは図4Bに図示されており、同図は図4Aの線58−58に沿ったデバイス50の断面図を示している。内側のルーメン56は、例えばデバイス配置用のガイドワイヤを通すために使用可能であり、一方で外側のルーメン57は、以下により詳細に議論されるように、治療薬を含有している薬剤液を注入するために利用可能である。図5Bは、図5Aの線69−69に沿ったデバイス60の断面図を示す。内側のルーメン68は図5Bに示されている。断面直径Dは約0.5cm〜約2.5cmであってよい。
【0038】
いくつかの実施形態、例えばデバイス10では、送達部材14の第1端15はデバイス10の先端12から等距離にある部位で本体11に接続され、送達部材14の第2端16はデバイス10の先端12から等距離にある部位でデバイス10の本体11に接続されている。他の実施形態、例えばデバイス40では、一群の第1端の接続部位は本体の先端から等距離にはない。例えば、先端41と送達部材42の第2端46との間の距離は、先端41と送達部材47の第2端48との間の距離より大きい。したがって、いくつかの実施形態では、本体の先端(例えば先端41)と、送達部材が本体に接続される最も先端側の位置(例えば、第2端48が本体に接続される位置)との間の最短距離は、約0.2cm〜約20cmである。さらなる実施形態では、本体の先端と、送達部材が本体に接続される最も先端側の位置との間の最短距離は、約1cm〜約15cmである。さらに特定の実施形態では、本体の先端と、送達部材が本体に接続される最も先端側の位置との間の最短距離は、約3cm〜約10cmである。以下に一層詳細に議論されるように、本体の先端と、送達部材が本体に接続される最も先端側の位置との間の距離は、対象者の特性および左心室の大きさのような、対象者特有のパラメータに主として基づいて選択される。例えば、以下に一層詳細に議論されるように、デバイスの先端は左心室の中に配置され、送達部材は、デバイスの先端が左心室の中に配置された時に大動脈弁尖と送達部材とが接触するように構成される。
【0039】
デバイス10は送達部材14を備え、送達部材14の長さLは、本体11への送達部材14の第1端15の接続部位と送達部材14の第2端16の接続部位との間の距離であるL’の2倍未満である。デバイス20は送達部材23を備え、送達部材23の長さL”は、デバイス21の本体への送達部材23の第1端24の接続部位と第2端25の接続部位との間の最短距離であるL”’の2倍未満である。したがって、いくつかの実施形態では、いかなる送達部材の長さも、デバイス本体へのその送達部材の第1端の接続部位と第2端の接続部位との間の最短距離の2倍未満である。さらに特定の実施形態では、すべての送達部材の長さが、デバイス本体への任意の送達部材の第1端の接続部位と第2端の接続部位との間の最短距離の2倍未満である。したがって、本願で述べるデバイスのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの送達部材は送達デバイス本体に並列して設置される。
【0040】
本発明の実施形態では、デバイスは、治療薬で少なくとも部分的にコーティングされた少なくとも1つの送達部材を備えることができる。いくつかの実施形態では、すべての送達部材の少なくとも一部が治療薬でコーティングされている。さらなる実施形態では、デバイスの少なくとも1つの送達部材の全体が治療薬でコーティングされている。さらに特定の実施形態では、デバイスのすべての送達部材が治療薬でコーティングされている。治療薬は、治療薬の混合物のような2以上の物質の混合物を含むことができる。
【0041】
送達デバイスのコーティングは、当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。デバイスに、治療薬を含有している組成物を用いた浸漬、吹付けまたは塗布が行われてもよい。いくつかの実施形態では、治療薬は、意図的に作出された不規則な表面または特有の表面フィーチャ、例えばディボットまたは穴部の中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、最初のポリマー/溶媒混合物が形成されてから、該ポリマー/溶媒混合物に治療薬が添加されてもよい。別例として、ポリマー、溶媒および治療薬が同時に添加されて混合物が形成されてもよい。このポリマー/溶媒/治療薬混合物は、分散物であっても、懸濁物であっても、溶液であってもよい。治療薬が溶媒の不在下でポリマーと混合されてもよい。治療薬は、ポリマー/溶媒混合物に溶解されるかまたはポリマーに溶解されて、該混合物またはポリマーとの真正溶液中に含められてもよいし、分散されて該混合物中またはポリマー中で微細な粒子またはマイクロ単位の粒子とされてもよいし、その溶解プロファイルに基づいて混合物中またはポリマー中で懸濁されてもよいし、界面活性剤のようなミセル形成化合物と組み合わせるか小さな担体粒子上に吸着させて、混合物中またはポリマー中で懸濁液が作成されてもよい。コーティングは、複数のポリマーまたは複数の治療薬のうち少なくともいずれかを含んでなることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、当業者に既知の生物分解性の治療薬‐ポリマーコーティングが使用されてもよい。そのようなポリマーまたは送達システムを使用する方法の例は、米国特許第5,591,227号;同第5,733,327号;同第5,899,935号;同第6,364,856号;同第6,403,635号;同第6,425,881号;同第6,716,242号;同第6,918,929号;および同第6,939,376号明細書によっても提供されており、これらの特許文献はそれぞれ全体が参照により本願に組み込まれる。上述の治療薬のうちいずれかがポリマーコーティングに組み込まれてもよい。
【0043】
ポリマーコーティングのポリマーは生物分解性であっても非生物分解性であってもよい。適切な非生物分解性ポリマーの非限定的な例には、ポリストレン(polystrene);ポリイソブチレンコポリマーおよびスチレン‐イソブチレン‐スチレンブロックコポリマー、例えばスチレン‐イソブチレン‐スチレンターシャリブロックコポリマー(SIBS);架橋ポリビニルピロリドンを含むポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、ビニルモノマーのコポリマー、例えばEVA;ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族;ポリエチレンオキシド;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリアクリルアミド;ポリエーテルスルホンを含むポリエーテル;ポリプロピレン、ポリエチレンおよび高分子量ポリエチレンを含むポリアルキレン;ポリウレタン;ポリカーボネート、シリコーン;シロキサンポリマー;酢酸セルロースのようなセルロース系ポリマー;ポリウレタン分散体(BAYHDROL(登録商標))のようなポリマー分散体;スクワレン乳剤;ならびに前述のうち任意のものの混合物およびコポリマー、が挙げられる。
【0044】
適切な生物分解性ポリマーの非限定的な例には、ポリカルボン酸、無水マレイン酸ポリマーなどのポリ無水物;ポリオルトエステル;ポリアミノ酸;ポリエチレンオキシド;ポリホスファゼン;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物、例えばポリ(L‐乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L‐ラクチド)、乳酸・グリコール酸共重合体、50/50(DL‐ラクチド・グリコリド共重合体);ポリジオキサノン;ポリプロピレンフマラート;ポリデプシペプチド;ポリカプロラクトンならびにそのコポリマーおよび混合物、例えばD,L‐ラクチド・カプロラクトン共重合体およびポリカプロラクトン・アクリル酸ブチル共重合体;ポリヒドロキシブチレート・バリレートおよびブレンド;ポリカーボネート、例えばチロシンで誘導体化したポリカーボネートおよびアリレート、ポリイミノカーボネート、ならびにポリジメチルトリメチルカーボネート;シアノアクリレート;リン酸カルシウム;ポリグリコサミノグリカン;巨大分子、例えば多糖類(ヒアルロン酸;セルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース;ゼラチン;デンプン;デキストラン;アルギナートおよびその誘導体)、タンパク質およびポリペプチド;ならびに前述のうち任意のものの混合物およびコポリマー、が挙げられる。生物分解性ポリマーは、表面腐食可能なポリマー、例えばポリヒドロキシ酪酸およびそのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物(結晶質および非晶質の両方)、無水マレイン酸コポリマー、およびリン酸亜鉛カルシウム(zinc−calcium phosphate)、が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、デバイスのコーティングには接着剤の使用を伴う。接着剤の例としては、アクリラート、例えばシアノアクリラート、メタクリラート、アルキルアクリラート、親水コロイド、ヒドロゲル、ポリイソブチレン、およびゲルマトリックスをベースとした接着剤、例えばポリアクリル酸系ゲルマトリックス接着剤が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、コーティングは治療薬の制御放出を可能にする。デバイス上にコーティングされる組成物は、1以上の追加成分、例えば上述の生物分解性ポリマー、生理学上許容可能な接着剤、タンパク質、多糖類などを有することができる。
【0047】
コーティングされる治療薬は、当業者に既知の任意の治療薬であってよい。「治療薬」は、本明細書中では疾患の診断、治療または予防に使用される物質を指すものと定義される。心臓または心臓弁の疾患の診断、治療または予防に有益であることが当業者に知られている任意の治療薬が、本発明との関連において治療薬として企図される。治療薬は、医薬として許容可能な任意の物質、例えば非遺伝子治療薬、生体分子、小分子、または細胞であってよい。任意の治療薬を、生物学的に両立可能な程度に組み合わせることも可能である。
【0048】
特定の実施形態では、治療薬は、シロリムス、ゾタボリムス(zotavolimus)、パクリタキセル、ラパマイシン、または酸化窒素を増強する薬剤である。
典型的な非遺伝子治療薬には、抗血管新生剤(例えばベバシズマブ)、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、ニトロナプロキセン、ニトロフルルビプロフェン、酸化窒素、酸化窒素模倣剤、抗血栓形成剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、プロスタグランジン(ミセルのプロスタグランジンE1を含む)、ウロキナーゼおよびPPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン);抗増殖剤、例えばエノキサプリン(enoxaprin)、アンギオペプチン、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス、エベロリムス、平滑筋細胞の増殖を阻害することができるモノクローナル抗体、ヒルジン、およびアセチルサリチル酸;抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、ロシグリタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、エストラジオール、スルファサラジン、フェンフィブラート(fenfibrate)、プロバスタチン(provastatin)、シンバスタチン、プログリタゾン(proglitazone)、アセチルサリチル酸、ミコフェノール酸およびメサラミン;抗新生物剤/抗増殖剤/抗有系分裂剤、例えばパクリタキセル、エポチロン、クラドリビン、5‐フルオロウラシル、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、トラピジル、ハロフジノンおよびアンギオスタチン;抗がん剤、例えばc‐myc腫瘍遺伝子のアンチセンス阻害剤;抗微生物剤、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン、銀イオン、銀化合物または銀塩;バイオフィルム合成阻害剤、例えば非ステロイド性抗炎症剤およびキレート剤または脱灰剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、O,O’‐ビス(2‐アミノエチル)エチレングリコール‐N,N,N’,N’‐四酢酸、硝酸、ギ酸、EDTA、クエン酸、およびこれらの混合物;抗生物質、例えばゲンタマイシン、リファンピン、ミノサイクリンおよびシプロフォルキサシン(ciprofolxacin);キメラ抗体および抗体フラグメントを含む抗体;ロピバカイン;酸化窒素;酸化窒素(NO)供与体、例えばリシドミン(lisidomine)、モルシドミン、L‐アルギニン、NO‐炭水化物付加物、ポリマーまたはオリゴマーのNO付加物;血管細胞増殖促進剤、例えば成長因子、転写活性化因子および翻訳プロモータ;血管細胞増殖阻害剤、例えば成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒とで構成される二機能分子、抗体と細胞毒とで構成される二機能分子;コレステロール降下剤;血管拡張剤;内因性の血管作動性機構を妨げる薬剤;熱ショックタンパク質の阻害剤、例えばゲルダナマイシン;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;β‐遮断薬;bARキナーゼ(bARKct)阻害剤;フォスフォランバン阻害剤;ならびに上記のものの任意の組み合わせおよびプロドラッグ、が挙げられる。
【0049】
典型的な生体分子には、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質;オリゴヌクレオチド;核酸、例えば二本鎖または一本鎖DNA(裸のDNAおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸、例えばアンチセンスDNAおよびアンチセンスRNA、小型干渉RNA(siRNA)、ならびにリボザイム;遺伝子;炭水化物;成長因子を含む血管新生因子;細胞周期阻害剤;ならびに再狭窄抑制物質、が挙げられる。核酸は、送達システム、例えばベクター(ウイルスベクターを含む)、プラスミドまたはリポソームに組み込まれてもよい。
【0050】
タンパク質の非限定的な例には、serca‐2タンパク質、オステオポンチン、単球走化性タンパク質(「MCP‐1」)および骨形態形成タンパク質(「BMP」)、例えばBMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6(Vgr‐1)、BMP‐7(OP‐1)、BMP‐8、BMP‐9、BMP‐10、BMP‐11、BMP‐12、BMP‐13、BMP‐14、BMP‐15が挙げられる。好ましいBMPは、BMP‐2、BMP‐3、BMP‐4、BMP‐5、BMP‐6およびBMP‐7のうちいずれかである。これらのBMPは、ホモダイマー、ヘテロダイマー、またはこれらの組み合わせとして、単独で、または他の分子と一緒に提供可能である。別例として、または追加として、BMPの上流または下流での作用を引き起こすことができる分子が提供されてもよい。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質のうちのいずれか、または該タンパク質をコードするDNAが含まれる。遺伝子の非限定的な例には、細胞死に対して保護作用を有する生存遺伝子、例えば抗アポトーシス性Bcl‐2ファミリーの因子およびAktキナーゼ;serca2遺伝子;ならびにこれらの組み合わせ、が挙げられる。血管新生因子の非限定的な例には、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮成長因子、表皮成長因子、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子、およびインスリン様成長因子、が挙げられる。細胞周期阻害剤の非限定的な例はカテスピン(cathespin)D(CD)阻害剤である。再狭窄抑制物質の非限定的な例には、p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkBデコイおよびE2Fデコイ、チミジンキナーゼ(「TK」)ならびにこれらの組み合わせならびに細胞増殖を妨げるのに有用なその他の物質が挙げられる。例となる小分子には、ホルモン、ヌクレオチド、アミノ酸、糖質、および脂質、ならびに分子量100kD未満の化合物が挙げられる。
【0051】
例となる細胞には、幹細胞、始原細胞、内皮細胞、成体の心筋細胞、および平滑筋細胞が挙げられる。細胞は、ヒトを起源とするもの(自己由来もしくは同種異系由来)でも、動物を供給源とするもの(異種由来)でもよいし、遺伝子操作されてもよい。細胞の非限定的な例には、サイドポピュレーション(SP)細胞、細胞系列陰性(lineage negative)の細胞、5‐aza処理した間充織幹細胞を含む間充織幹細胞、臍帯血細胞、心臓その他の組織に由来する幹細胞、全骨髄、骨髄単核細胞、内皮前駆細胞、骨格筋芽細胞または衛星細胞、筋肉由来細胞、go細胞、内皮細胞、成体の心筋細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞、5‐aza処理した成体の心臓繊維芽細胞、遺伝子組換え細胞、組織工学により作製されたグラフト、MyoD瘢痕繊維芽細胞、ペースメーカー細胞、胚性幹細胞クローン、胚性幹細胞、胎児または新生児の細胞、免疫学的にマスキングされた細胞、および奇形腫由来の細胞、が挙げられる。
【0052】
ある実施形態では、治療薬は血塊の除去または予防を助ける薬剤である。抗血栓性および/または線維素溶解性の薬剤の非限定的な例には、抗凝血剤、抗凝血剤アンタゴニスト、抗血小板剤、血栓溶解剤、血栓溶解剤アンタゴニストまたはこれらの組み合わせが挙げられる。抗血栓剤の例にはアスピリンおよびワルファリン(Coumadin(登録商標))が含まれる。抗凝血剤の例には、アセノクマロール、アンクロッド、アニシンジオン、ブロミンジオン、クロリンジオン、クメタロール、シクロクマロール、デキストラン硫酸ナトリウム、ジクマロール、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、エチリデンジクマロール、フルインジオン、ヘパリン、ヒルジン、アポラートナトリウム、オキサジジオン、ペントサンポリスルファート、フェニンジオン、フェンプロクモン、ホスビチン、ピコタミド、チオクロマロールおよびワルファリンが挙げられる。抗血小板剤の非限定的な例には、アスピリン、デキストラン、ジピリダモール(persantin(登録商標))、ヘパリン、スルフィンピラノン(sulfinpyranone)(anturane(登録商標))およびチクロピジン(ticlid(登録商標))が挙げられる。血栓溶解剤の非限定的な例には、組織プラミノーゲン(plaminogen)活性化因子(activase(登録商標))、プラスミン、プロウロキナーゼ、ウロキナーゼ(abbokinase(登録商標))ストレプトキナーゼ(streptase(登録商標))、およびアニストレプラーゼ/APSAC(eminase(登録商標))が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、治療薬は血液凝固剤である。血液凝固促進物質の非限定的な例には、血栓溶解剤アンタゴニストおよび抗凝血剤アンタゴニストが挙げられる。抗凝血剤アンタゴニストの非限定的な例には、プロタミンおよびビタミンK1が含まれる。
【0054】
血栓溶解剤アンタゴニストの非限定的な例には、アミオカプロン酸(amiocaproic acid)(amicar(登録商標))およびトラネキサム酸(amstat(登録商標))が含まれる。抗血栓剤の非限定的な例には、アナグレリド、アルガトロバン、シルスタゾール(cilstazol)、ダルトロバン、デフィブロチド、エノキサパリン、fraxiparine(登録商標)、インドブフェン、ラモパラン(lamoparan)、オザグレル、ピコタミド、プラフィブリド、テデルパリン(tedelparin)、チクロピジンおよびトリフルサールが含まれる。
【0055】
治療薬は抗不整脈剤であってもよい。抗不整脈剤の非限定的な例には、I群の抗不整脈剤(ナトリウムチャネル遮断薬)、II群の抗不整脈剤(β‐アドレナリン遮断薬)、II群の抗不整脈剤(再分極時間を延長する治療薬)、IV群の抗不整脈剤(カルシウムチャネル遮断薬)および様々な抗不整脈剤が挙げられる。ナトリウムチャネル遮断薬の非限定的な例には、IA群、IB群およびIC群の抗不整脈剤が含まれる。IA群の抗不整脈剤の非限定的な例には、ジスピラミド(disppyramide)(norpace(登録商標))、プロカインアミド(pronestyl(登録商標))およびキニジン(quinidex(登録商標))が挙げられる。IB群の抗不整脈剤の非限定的な例には、リドカイン(xylocaine(登録商標))、トカイニド(tonocard(登録商標))およびメキシレチン(mexitil(登録商標))が挙げられる。IC群の抗不整脈剤の非限定的な例には、エンカイニド(enkaid)およびフレカイニド(tambocor(TM))が挙げられる。β遮断薬、別名β‐アドレナリン遮断薬、β‐アドレナリン受容体アンタゴニストまたはII群の抗不整脈剤の非限定的な例には、アセブトロール(sectral(登録商標))、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、ブチドリン塩酸塩、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール(brevibloc(登録商標))、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ニフェナロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロパノロール(inderal(登録商標))、ソタロール(betapace(登録商標))、スルフィナロール、タリノロール、テルタトロール、チモロール、トリプロロールおよびキシビノロール(xibinolol)が挙げられる。ある態様では、β遮断薬はアリールオキシプロパノールアミン誘導体を含んでなる。アリールオキシプロパノールアミン誘導体の非限定的な例には、アセブトロール、アルプレノロール、アロチノロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブニトロロール、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、エパノロール、インデノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、タリノロール、テルタトロール、チモロールおよびトリプロロールが挙げられる。III群の抗不整脈剤としても知られる、再分極時間を延長する薬剤の非限定的な例には、アミオダロン(cordarone(登録商標))およびソタロール(betapace(登録商標))が挙げられる。別名IV群の抗不整脈剤としても知られる、カルシウムチャネル遮断薬の非限定的な例には、アリールアルキルアミン(例えばベプリジル(bepridile)、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、プレニルアミン、テロジリン、ベラパミル)、ジヒドロピリジン誘導体(フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン)、ピペラジン誘導体(例えばシンナリジン、フルナリジン、リドフラジン)または様々なカルシウムチャネル遮断薬、例えばベンシクラン、エタフェノン、マグネシウム、ミベフラジルもしくはペルヘキシリン、が挙げられる。ある実施形態では、カルシウムチャネル遮断薬は長時間作用性のジヒドロピリジン(ニフェジピン型)カルシウム拮抗薬を含んでなる。様々な抗不整脈剤の非限定的な例には、アデノシン(adenocard(登録商標))、ジゴキシン(lanoxin(登録商標))、アセカイニド、アジュマリン、アモプロキサン、アプリンジン、ブレチリウムトシラート、ブナフチン、ブトベンジン、カポベン酸、シフェンリン、ジソピラニド(disopyranide)、ヒドロキニジン、インデカイニド、イパトロピウムブロミド(ipatropium bromide)、リドカイン、ロラジミン、ロルカイニド、メオベンチン、モリシジン、ピルメノール、プラジマリン、プロパフェノン、ピリノリン、キニジンポリガラクツロナート(quinidine polygalacturonate)、硫酸キニジンおよびビキジルが挙げられる。
【0056】
治療薬の他の例としては血圧降下剤が挙げられる。血圧降下剤の非限定的な例には、交感神経遮断剤、α/β遮断薬、α遮断薬、抗アンジオテンシンII剤、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張剤および様々な血圧降下剤が含まれる。α‐アドレナリン遮断薬またはα‐アドレナリン受容体アンタゴニストとしても知られるα遮断薬の非限定的な例には、アモスラロール、アロチノロール、ダピプラゾール、ドキサゾシン、メシル酸エルゴロイド、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ニセルゴリン、プラゾシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシンおよびヨヒンビンが挙げられる。ある実施形態では、α遮断薬はキナゾリン誘導体を含んでもよい。キナゾリン誘導体の非限定的な例には、アルフゾシン、ブナゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシンおよびトリマゾシンが挙げられる。ある実施形態では、血圧降下剤はαおよびβ両方のアドレナリン受容体アンタゴニストである。α/β遮断薬の非限定的な例には、ラベタロール(normodyne(登録商標)、trandate(登録商標))が含まれる。抗アンジオテンシンII剤の非限定的な例には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤およびアンジオテンシンII受容体アンタゴニストが含まれる。アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)の非限定的な例には、アラセプリル、エナラプリル(vasotec(登録商標))、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、リシノプリル、モベルトプリル(moveltopril)、ペリンドプリル、キナプリルおよびラミプリルが含まれる。アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、ANG受容体遮断薬またはANG‐IIタイプ1受容体遮断薬(ARBS)としても知られるアンジオテンシンII受容体遮断薬の非限定的な例には、アンジオカンデサルタン(angiocandesartan)、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタンおよびバルサルタンが含まれる。交感神経遮断剤の非限定的な例には、中枢作用性の交感神経遮断剤、または末梢作用性の交感神経遮断剤が挙げられる。中枢神経系(CNS)交感神経遮断剤としても知られる中枢作用性交感神経遮断剤の非限定的な例には、クロニジン(catapres(登録商標))、グアナベンズ(wytensin(登録商標))グアンファシン(tenex(登録商標))およびメチルドパ(aldomet(登録商標))が含まれる。末梢作用性の交感神経遮断剤の非限定的な例には、神経節遮断剤、アドレナリン作働性ニューロン遮断薬、β‐アドレナリン遮断薬またはα1‐アドレナリン遮断薬が含まれる。神経節遮断剤の非限定的な例には、メカミルアミン(inversine(登録商標))およびトリメタファン(arfonad(登録商標))が含まれる。アドレナリン作働性ニューロン遮断薬の非限定的な例には、グアネチジン(ismelin(登録商標))およびレセルピン(serpasil(登録商標))が含まれる。β‐アドレナリン遮断薬の非限定的な例には、アセニトロール(acenitolol)(sectral(登録商標))、アテノロール(tenormin(登録商標))、ベタキソロール(kerlone(登録商標))、カルテオロール(cartrol(登録商標))、ラベタロール(normodyne(登録商標)、trandate(登録商標))、メトプロロール(lopressor(登録商標))、ナダロール(nadanol)(corgard(登録商標))、ペンブトロール(levatol(登録商標))、ピンドロール(visken(登録商標))、プロプラノロール(inderal(登録商標))およびチモロール(blocadren(登録商標))が挙げられる。α1‐アドレナリン遮断薬の非限定的な例には、プラゾシン(minipress(登録商標))、ドキサゾシン(doxazocin)(cardura(登録商標))およびテラゾシン(hytrin(登録商標))が挙げられる。ある実施形態では、心血管治療薬は血管拡張剤(例えば脳血管拡張剤、冠血管拡張剤または末梢血管拡張剤)を含むことができる。ある好ましい実施形態では、血管拡張剤は冠血管拡張剤を含んでなる。冠血管拡張剤の非限定的な例には、アモトリフェン、ベンダゾール、ベンフロジルヘミスクシナート、ベンジオダロン、クロラシジン(chloracizine)、クロモナール、クロベンフロール、クロニトラート、ジラゼプ、ジピリダモール、ドロプレニルアミン、エフロキサート、エリトリチルテトラニトラート、エタフェノン、フェンジリン、フロレジル、ガングレフェン、ヘレストロール(herestrol)ビス(β‐ジエチルアミノエチルエーテル)、ヘキソベンジン、イトラミントシレート、ケリン、リドフラニン(lidoflanine)、マンニトールヘキサニトラン(mannitol hexanitrane)、メジバジン、ニコルグリセリン(nicorglycerin)、四硝酸ペンタエリスリトール、ペントリニトロール、ペルヘキシリン、ピメフィリン、トラピジル、トリクロミル、トリメタジジン、リン酸トロールニトラートおよびビスナジンが挙げられる。ある態様では、血管拡張剤は長期治療用の血管拡張剤を含んでもよいし、高血圧性緊急症の血管拡張剤を含んでもよい。長期治療用血管拡張剤の非限定的な例には、ヒドララジン(apresoline(登録商標))およびミノキシジル(loniten(登録商標))が挙げられる。高血圧性緊急症の血管拡張剤の非限定的な例には、ニトロプルシド(nipride(登録商標))、ジアゾキシド(hyperstat(登録商標)IV)、ヒドララジン(apresoline(登録商標))、ミノキシジル(loniten(登録商標))およびベラパミルが挙げられる。
【0057】
様々な抗高血圧剤の非限定的な例には、アジュマリン、γ‐アミノ酪酸、ブフェニオード、シクレタイニン(cicletainine)、シクロシドミン、タンニン酸クリプテナミン(cryptenamine tannate)、フェノルドパム、フロセキナン、ケタンセリン、メブタマート、メカミルアミン、メチルドパ、メチル4‐ピリジルケトンチオセミカルバゾン、ムゾリミン、パルギリン、ペムピジン、ピナシジル、ピペロキサン、プリマペロン(primaperone)、プロトベラトリン、ロイバシン、レシメトール、リルメニデン(rilmenidene)、サララシン、ニトロルシドナトリウム(sodium nitrorusside)、チクリナフェン、トリメタファンカムシラート、チロシナーゼおよびウラピジルが挙げられる。
【0058】
ある態様では、抗高血圧剤は、アリールエタノールアミン誘導体、ベンゾチアジアジン誘導体、N‐カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、グアニジン誘導体、ヒドラジン/フタラジン、イミダゾール誘導体、四級アンモニウム化合物、レセルピン誘導体またはスフロンアミド(suflonamide)誘導体を含むことができる。アリールエタノールアミン誘導体の非限定的な例には、アモスラロール、ブフラロール、ジレバロール、ラベタロール、プロネタロール、ソタロールおよびスルフィナロールが挙げられる。ベンゾチアジアジン誘導体の非限定的な例には、アルチジド(althizide)、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロサイアザイド、クロルサリドン、シクロペンチアジド、シクロチアジド、ジアゾキシド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチジド(hydrochlorothizide)、ヒドロフルメチジド(hydroflumethizide)、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド(polythizide)、テトラクロルメチアジドおよびトリクロルメチアジドが挙げられる。N‐カルボキシアルキル(ペプチド/ラクタム)誘導体の非限定的な例には、アラセプリル、カプトプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、フォシノプリル、リシノプリル、モベルチプリル、ペリンドプリルが挙げられる。ジヒドロピリジン誘導体の非限定的な例には、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニソルジピンおよびニトレンジピンが挙げられる。グアニジン誘導体の非限定的な例には、ベタニジン、デブリソキン、グアナベンズ、グアナクリン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアンファシン、グアノクロル、グアノキサベンズおよびグアノキサンが挙げられる。ヒドラジン/フタラジンの非限定的な例には、ブドララジン、カドララジン、ジヒドララジン、エンドララジン、ヒドラカルバジン、ヒドララジン、フェニプラジン、ピルドララジンおよびトドララジンが挙げられる。イミダゾール誘導体の非限定的な例には、クロニジン、ロフェキシジン、フェントラミン、チアメニジンおよびトロニジンが挙げられる。四級アンモニウム化合物の非限定的な例には、臭化アザメトニウム、塩化クロルイソンダミン、ヘキサメソニウム、ペンタシニウムビス(メチルスルファート)、臭化ペンタメトニウム、酒石酸ペントリニウム、フェナクトロピニウムクロリドおよびトリメチジニウムメトスルファートが挙げられる。レセルピン誘導体の非限定的な例には、ビエタセルピン、デセルピジン、レシナミン、レセルピンおよびシロシンゴピンが挙げられる。スルホンアミド誘導体の非限定的な例には、アンブシド、クロパミド、フロセミド、インダパミド、キネタゾン、トリパミドおよびキシパミドが挙げられる。
【0059】
治療薬の他の例としては血管収縮剤が挙げられる。抗低血圧剤としても知られる血管収縮剤の非限定的な例には、アメジニウムメチルスルファート、アンジオテンシンアミド、ジメトフリン、ドーパミン、エチフェルミン、エチレフリン、ゲペフリン、メタラミノール、ミドドリン、ノルエピネフリン、ホレドリンおよびシネフリンが挙げられる。
【0060】
治療薬の他の例には、抗アンジオテンシンII剤、後負荷・前負荷軽減治療、利尿剤および変力剤が含まれる。後負荷・前負荷軽減薬の例には、ヒドララジン(apresoline(登録商標))および硝酸イソソルビド(isordil(登録商標)、sorbitrate(登録商標))が含まれる。利尿剤の非限定的な例には、チアジド誘導体またはベンゾチアジアジン誘導体(例えばアルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ブチアジド、クロロサイアザイド、クロロサイアザイド、クロルサリドン、シクロペンチアジド、エピチアジド、エチアジド、エチアジド、フェンキゾン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチジド(polythizide)、テトラクロロメチアジド(tetrachloromethiazide)、トリクロルメチアジド)、有機水銀化合物(例えばクロルメロドリン、メラルリド、メルカムファミド(mercamphamide)、メルカプトメリンナトリウム、メルクマリル酸、メルクマチリンドディウム(mercumatilin dodium)、塩化第一水銀、マーサリル)、プテリジン(例えばフルテレン(furterene)、トリアムテレン)、プリン(例えばアセフィリン、7‐モルホリノメチルテオフィリン、パモブロム(pamobrom)、プロテオブロミン(protheobromine)、テオブロミン)、アルドステロンアンタゴニストを含むステロイド(例えばカンレノン、オレアンドリン、スピロノラクトン)、スルホンアミド誘導体(例えばアセタゾラミド、アンブシド、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾルアミド、クロロアミノフェナミド、クロフェナミド 、クロパミド、クロレキソロン、ジフェニルメタン‐4,4’‐ジスルホンアミド、ジスルファミド、エトクスゾラミド、フロセミド、インダパミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、キネタゾン、トラセミド、トリパミド、キシパミド)、ウラシル(例えばアミノメトラジン、アミソメトラジン)、カリウム保持性拮抗薬(例えばアミロライド、トリアムテレン)または様々な利尿剤、例えばアミノジン(aminozine)、アルブチン、クロラザニル、エタクリン酸、エトゾリン、ヒドラカルバジン、イソソルビド、マンニトール、メトカルコン、ムゾリミン、ペルヘキシリン、チクルナフェン(ticrnafen)および尿素、が含まれる。強心薬としても知られる陽性変力剤の非限定的な例には、アセフィリン、アセチルジギトキシン、2‐アミノ‐4‐ピコリン、アムリノン、ベンフロジルヘミスクシナート、ブクラデシン、セルベロシン(cerberosine)、カンホタミド(camphotamide)、コンバラトキシン、シマリン、デノパミン、デスラノシド、ジギタリン、ジギタリス、ジギトキシン、ジゴキシン、ドブタミン、ドーパミン、ドペキサミン、エノキシモン、エリトロフレイン、フェナルコミン、ギタリン(gitalin)、ギトキシン、グリコシアミン、ヘプタミノール、ヒドラスチニン、イボパミン、ラナトシド、メタミバム(metamivam)、ミルリノン、ネリホリン(nerifolin)、オレアンドリン、ウアベイン、オキシフェドリン、プレナルテロール、プロシラリジン、レシブホゲニン、シラレン、シラレニン、ストルファンチン(strphanthin)、スルマゾール、テオブロミンおよびキサモテロール、が含まれる。特定の態様では、変力剤は、強心性配糖体、β‐アドレナリン受容体アゴニストまたはホスホジエステラーゼ阻害剤である。強心性配糖体の非限定的な例には、ジゴキシン(lanoxin(登録商標))およびジギトキシン(crystodigin(登録商標))が含まれる。β‐アドレナリン受容体アゴニストの非限定的な例には、アルブテロール、バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、クロルプレナリン、デノパミン、ジオキセテドリン(dioxethedrine)、ドブタミン(dobutrex(登録商標))、ドーパミン(intropin(登録商標))、ドペキサミン、エフェドリン、エタフェドリン、エチルノルエピネフリン、フェノテロール、ホルモテロール、ヘキソプレナリン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテレノール、マブテロール、メタプロテレノール、メトキシフェナミン、オキシフェドリン、ピルブテロール、プロカテロール、プロトキロール、レプロテロール、リミテロール、リトドリン、ソテレノール、テルブタリン、トレトキノール、ツロブテロールおよびキサモテロールが挙げられる。ホスホジエステラーゼ阻害剤の非限定的な例には、アムリノン(inocor(登録商標))が含まれる。抗狭心症薬は、硝酸エステル、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬およびこれらの組み合わせを含むことができる。ニトロ系血管拡張剤としても知られる硝酸エステルの非限定的な例には、ニトログリセリン(nitro‐bid(登録商標)、nitrostat(登録商標))、硝酸イソソルビド(isordil(登録商標)、sorbitrate(登録商標))および硝酸アミル(aspirol(登録商標)、vaporole(登録商標))が挙げられる。
【0061】
ある実施形態では、治療薬は抗微生物剤である。例としては、アンピシリン、アモキシシリン、ペニシリン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ナタマイシン、ナフシリン、リファムプシン、テトラサイクリン、バンコマイシン、ブレオマイシン、ドキシサイクリン、アミカシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、イミペネム、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、テイコプラニン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミクシンb、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム・スルファメトキサゾール配合剤、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、スペクチノマイシン、およびテリスロマイシンが挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、デバイスは、複数の送達部材を備えた送達カテーテルであって、送達部材はカテーテルに接続され、各送達部材がカテーテルの一部に並列して配置された部分を有している、送達カテーテルとしてさらに定義される。「カテーテル」は、身体に挿入することができる可撓性のチューブとして定義される。本発明における「並列して」とは、カテーテルと送達部材との相対的な配置であって、カテーテルおよび送達部材に負荷がかからない状態にある時に送達部材の最も先端側の部分とカテーテルとの最短距離が5cm以下となる配置を指す。本体の一部分と「並列して」配置される部分を有する送達部材とは、本体のその一部分に垂直(その一部分が直線状である場合)でありかつ本体のその一部分と交差するように位置付けられた平面が、該送達部材の部分とも交差することを意味する。
【0063】
カテーテルは、任意の数の送達部材を備えることができる。例えば、送達部材の数は2〜500個であってよい。より具体的な実施形態は10〜200個の送達部材を備えている。さらにより具体的な実施形態は30〜60個の送達部材を備えている。いくつかの実施形態では、カテーテルはルーメンを有する。少なくとも1つの送達部材はルーメンを有することができる。任意の送達部材のルーメンは、例えば、カテーテルのルーメンと連通していてもよい。特定の実施形態では、送達部材はそれぞれ、カテーテルのルーメンと連通するルーメンを有し、液体がカテーテルのルーメンから任意の送達部材のルーメン中へと流入できるようになっている。カテーテルおよび送達部材は、以下により詳細に議論されるように、当業者に既知の任意の材料で構成することができる。いくつかの実施形態では、カテーテルは、ルーメンおよびそのルーメンとの連通を提供する1以上の開口部を備えた少なくとも1つの送達部材を有し、液体が1以上の開口部を通してその送達部材から流出できるようになっている。送達部材は、内径が約10μm〜約300μm、外径が約0.0025cm〜約0.5cmとなろう。特定の実施形態では、送達部材の内径は約0.0025cm〜約0.025cmである。特定の実施形態では、外径は約0.0127cm〜約0.25cmである。本体は外径が約3Fr〜10Fr(約1mm〜3.3mm)となろう。上記に議論されるように、少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部は治療薬でコーティングされてもよい。実施形態には、送達部材のうちの一部または全部が治療薬で少なくとも部分的にコーティングされているカテーテルが挙げられる。別の実施形態としては、送達部材のうちの一部または全部が治療薬で完全にコーティングされているカテーテルが挙げられる。コーティングは当業者に既知の任意の治療薬を成分として構成されていてよい。実例は上記に述べた通りである。特定の実施形態では、治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、または酸化窒素を増強する薬剤である。
【0064】
本発明の医療用デバイスの他の実施形態には、心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、先端を有する本体と、本体の一部に沿って長手方向に配置された、治療薬で少なくとも部分的にコーティングされたフィンとを備え、フィンは本体の先端からの距離が1mmを超えるように配置された先端を有することを特徴とするデバイスが挙げられる。そのような医療用デバイスの1つは図6A−6Bに示されている。図6Aは、デバイス70の側面図を示す。デバイス70は、先端72を有する本体71と、本体71に沿って長手方向に配置された、治療薬でコーティングされた3つのフィン73とを備えている。フィンはそれぞれ、本体71の先端72からの距離が1mmを超えるように配置された先端74を有する。特定の実施形態では、デバイスは、弁の機能に与える混乱を最小限としながら大動脈弁尖の閉鎖を可能にするように構成された、3つのフィンを備えている。フィンの先端は、少なくとも1つのフィンが本体の先端から1mmを超えるように位置付けられる限り、本体の先端から同じ距離に位置付けられてもよいし、本体の先端から異なる距離に位置付けられてもよい。特定の実施形態では、デバイスの各フィンの先端は本体の先端から約2mm〜約20cmに位置付けられる。より具体的な実施形態では、デバイスの各フィンの先端は本体の先端から約1cm〜約20cmに位置付けられる。さらにより具体的な実施形態では、デバイスの各フィンの先端は本体の先端から約3cm〜約15cmに位置付けられる。さらなる実施形態では、デバイスの各フィンの先端は本体の先端から約1mm〜約5cmに位置付けられる。
【0065】
図6Aの線76−76に沿ったデバイス70の断面図が、図6Bに示されている。治療薬77のコーティングがフィン73の上に存在している。デバイス70のフィンは、デバイス70が対象者に挿入されて、かつフィン73が大動脈弁の弁尖と接触するように配置されたときに、ヒト対象者の大動脈弁尖と接触し、かつ大動脈弁の機能の混乱を最小限とすることが可能なように構成される。いくつかの実施形態では、1または複数のフィンが、治療薬で部分的にコーティングされる。さらなる実施形態では、1または複数のフィンが、治療薬で完全にコーティングされる。治療薬を用いたフィンのコーティングは、当業者に既知の任意の方法により実施可能であり、以下に一層詳細に議論される。フィンは、治療薬で部分的にコーティングされてもよいし、全体が治療薬でコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、すべてのフィンが治療薬でコーティングされるとは限らない。さらなる実施形態では、すべてのフィンが治療薬で少なくとも部分的にコーティングされる。さらに別の実施形態では、すべてのフィンが治療薬で完全にコーティングされる。
【0066】
デバイス80の側面図が図7Aに示されている。デバイス80は、先端82を有する本体81と、フィン83とを備えている。本体81およびフィン83はルーメンを有している。フィン83は複数の開口部87を備え、液体が1以上の開口部87を通してフィン83から流出できるようになっている。図7Aの線86−86に沿ったデバイス80の断面図が、図7Bに示されている。図7Bは、フィン83のルーメン89と連通している本体81のルーメン88と、開口部87を通したフィン83からの液体の流出が可能なように配置された開口部87とを示している。本発明のデバイスは2以上の開口部を備えることができる。特定の実施形態では、フィンはそれぞれ1〜200個の開口部を有する。より具体的な実施形態では、フィンはそれぞれ20〜120個の開口部を有する。さらにより具体的な実施形態では、フィンはそれぞれ40〜80個の開口部を有する。先端82は解放されていても閉止されていてもよい。本体81は、液体注入用のルーメンとは別個のルーメンを備えて、ガイドワイヤが通過するように構成されてもよい。図7Aに示された実施形態では、デバイス80の本体81および/またはフィン83は拡張することができない。他の実施形態では、本体81および/またはフィン83は拡張することができる。
【0067】
さらなる実施形態は図8に示されたデバイス90である。デバイス90は、本体91および先端96と、本体91に接続された拡張可能なバルーン94とを有し、バルーン94は複数の開口部を有し、バルーン94は本体の先端96から1mmを超える距離97に位置づけられている。デバイス90は、2つのルーメン、すなわちガイドワイヤ通過用の中央ルーメン93および環状ルーメン92、を備えた本体91を備えている。他の実施形態は、単一(非分割型)の中央ルーメンを備えている。周囲ルーメン92はバルーン94と連通し、液体が本体91の周囲ルーメン92を通して注入されてバルーン94の開口部95を通って出ることが可能になっている。デバイス90は、ガイドワイヤの通過のために解放されている先端96を備えている。バルーンと連通している環状ルーメン92は、本体91の先端とは連通していない。本発明のデバイスの実施形態は開口部を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。開口部を備えていない実施形態では、バルーンは治療薬で少なくとも部分的にコーティングされている。いくつかの実施形態は、治療薬で少なくとも部分的にコーティングされた、複数の開口部を有するバルーンを備えている。図9Aに描出されるように、100は第1の部分的拡張の後のバルーン94を示している。バルーン94はさらに本体91のルーメンを通した流体の注入によって拡張して、図9Bに描出されるようなバルーン94の拡張をもたらすことができる。バルーン94の拡張により、開口部を通した液体の通過の結果として開口部95が拡がる。完全に拡張したバルーンは、従来の弁形成術バルーンとほぼ同じ直径を有することができる。いくつかの実施形態では、拡張したバルーンの径は約2cm〜約3cmである。
【0068】
図10Aは、先端114を有する本体111と、本体111に接続された、複数のナノフィラメント113を有する拡張可能なバルーン112とを備えたデバイス110を示し、バルーンは先端114から1mmを超える距離115に位置付けられている。本体の先端からのバルーンの距離は、1mmより大きい限りは任意の距離であってよい。特定の実施形態では、バルーンは本体の先端から2mm〜20cmの位置に配置される。「ナノフィラメント」とは、長さ5mm未満のフィラメント、ファイバーまたは針を指すと定義される。いくつかの実施形態では、少なくとも1本のナノフィラメントは治療薬で少なくとも部分的にコーティングされている。コーティングは、上記に議論されるように、当業者に既知の任意の方法で行うことができる。いくつかの実施形態では、デバイスのナノフィラメントはそれぞれ治療薬で少なくとも部分的にコーティングされている。別の実施形態では、少なくとも1本のナノフィラメントは治療薬で完全にコーティングされている。さらに別の実施形態では、全てのナノフィラメントが治療薬で完全にコーティングされている。いくつかの実施形態では、本体111はルーメンを有する。ルーメンは、上記に議論されるように、ガイドワイヤの通過および別個の液体注入を可能にする分割型ルーメンであってよい。本体111のルーメンに液体を注入することによりバルーン112の拡張が可能となり、その結果、デバイスの位置が決まった後のナノフィラメント113と心臓弁の弁尖とのさらなる接触が促されて、バルーン112が弁と接触するようになる。
【0069】
ナノフィラメントは、該ナノフィラメントが切り離されて弁尖のような組織の中に埋め込まれるように設計されるような材料で構成されてもよい。例えば、ナノフィラメントは、上記に議論されるように、生体侵食性の治療薬送達マトリックスで構成されてもよい。他の実施形態では、ナノフィラメントは切り離されるようには設計されないが、ナノフィラメント上にコーティングされる治療薬は、ナノフィラメントが心臓弁のような組織と接触するとナノフィラメントから放出されるようになると期待されるような方法で適用される。図10Bに示すようなバルーンの膨張により、ナノフィラメントと弁尖との接触が促進されて、ナノフィラメントからの治療薬の放出を最大にすることができる。いくつかの実施形態では、バルーンは1以上の開口部を備えてデバイス本体のルーメンと連通し、液体が1以上の開口部を通してバルーンから流出できるようになっている。
【0070】
さらなる実施形態では、ナノフィラメントは極微針であり、各極微針はそれぞれの極微針から治療薬が放出されるように設計された開口部を有している。該デバイスを介して、1以上の治療薬を含む組成物を注入することにより、バルーンが膨張し、各針から治療薬含有組成物が放出される。バルーンの膨張と併せて弁尖が閉鎖することにより、弁尖が極微針と接触し、その結果弁尖への治療薬の放出がもたらされる。いくつかの実施形態では、極微針は格納式である。
【0071】
当業者に既知の任意の方法を適用して、本発明のデバイスを製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、送達部材はデバイスの本体とは別々に製造されてから取り付けられる。例としては、本体への送達部材の取り付けにはリングの使用を要する場合がある。他の実施形態では、送達部材が付属した本体が製作される。同様に、バルーンは、本明細書中に示されたデバイスの本体と別個に製作されてもよいし、同時に製作されてもよい。いくつかの例において、ナノフィラメントは当業者に既知の任意の方法を使用してバルーンに取り付けられる。例えば、ナノフィラメントは膠着剤または接着剤を使用してバルーンに装着させることができる。他の実施形態では、ナノフィラメントは、当業者に既知の技術を使用して本発明のバルーンと同時に製作される。
【0072】
本明細書中に示されたデバイスは、当業者に既知の任意の材料で構成される。デバイスは、プラスチック、金属、または金属とプラスチックとの組み合わせで作製可能である。例えば、材料には、限定するものではないが、1以上のラテックス、シリコーン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィンコポリマー(POC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリピロール、ポリアラニン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリビニリデンジフロライド、ポリスチレン‐ポリイソブチレン‐ポリスチレントリブロックコポリマー(SIBS)、ポリエチレンオキシド、シリコーンゴム、これらの混合物およびブロックコポリマーが挙げられる。別例として、材料には1以上の金属または様々な構成の合金が挙げられる。例えば、材料にはステンレス鋼(例えば316L)、チタン、またはその他の既知の医療グレード合金、例えばニッケル‐チタン合金が挙げられる。これらの材料はさらに、織り構造を有していてもよいし、切れ目のない押出成形構造を有していてもよい。デバイスは金属とプラスチックとの混合物で構成されてもよい。
【0073】
材料の選択により、本発明のデバイスが可撓性を有するとともに押引操作を受けることも可能となり、その結果本願において述べる方法が遂行される。当然ながら、材料の選択は一般に、広範囲の技術上の特性、例えば、限定するものではないが、本発明の実施形態に必要な弾性率、曲弾性率、およびショアA硬度に基づくことができる。いくつかの実施形態では、デバイスの少なくとも一部は自己拡張式であり、ニチノールまたはelgiloy(登録商標)のような適切な材料で作製される。送達部材は変形可能な部材であってもよいし、剛体であってもよい。
【0074】
デバイスは1以上のポリマー材料で構成されてもよい。本発明のデバイスの製造の適切に使用されるポリマー材料の例には、非エラストマー系およびエラストマー系両方の材料、例えば、限定するものではないが、ポリエステル類、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエーテル類、例えばポリエーテルブロックアミド、ポリエーテル・ポリエステルおよびポリエーテル/ポリアミド/ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、ポリウレタン類、例えばポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタンおよびポリ尿素、ポリオレフィン類、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンおよびエチレン酢酸ビニルコポリマー、ビニルモノマーのポリマー、例えばポリ塩化ビニルおよびフッ化ビニリデン、フルオロポリマー、例えばPTFE、FEP、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリカーボネート、これらの任意のコポリマー、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
他の例には、オレフィン系のポリマーおよびコポリマー、アクリル系、スチレン系およびビニル系のポリマー(例えばポリ(塩化ビニル))およびコポリマー;ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエステルおよびコポリエステル;ポリカーボネート;熱可塑性エラストマー;シリコーン‐ポリカーボネートコポリマー;ポリアミド;熱可塑性ポリイミド;液晶ポリマー;ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン);ANS(アクリロニトリル・スチレン);Delrin(登録商標)ポリアセタール;PEI(ポリエーテルイミド);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルスルホン(PES)、が挙げられる。オレフィン系のポリマーおよびコポリマーの例には、照射ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリオレフィン、低密度、直鎖状低密度、中密度および高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVA);ポリ(エチレンビニルアルコール)(EVOH)およびEVA/EVOHターポリマー;エチレン‐ブチレン‐スチレンブロックコポリマーを、低分子量ポリスチレンと、任意選択でポリプロピレンとともにブレンドしたもの、ならびに同様の組成物であってエチレンおよびブチレンの代わりにブタジエンまたはイソプレンを用いるもの、ならびにオレフィンアイオノマー(オレフィンモノマーと、オレフィン酸例えば(メタ)アクリル酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸の金属塩とのコポリマー)、が挙げられる。
【0076】
配向可能なポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、カテーテルバルーンを形成するための材料の1つである。適切なPETポリマーは、少なくとも0.5、例えば0.6〜1.3の初期固有粘度を有する。他の高強度ポリエステル素材、例えばポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)も使用可能である。ポリエステルコポリマー、例えば、米国特許第5,330,428号明細書に記載のテレフタル酸ジメチル、ジメチルイソフタレートおよびエチレングリコールから作られたランダムコポリマーも使用可能である。
【0077】
使用可能なポリアミドの例には、ナイロン6、ナイロン64、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12およびこれらの混合物が含まれる。
【0078】
医療用デバイス物品は、サーメディクス(Thermedics)のTecothane(登録商標)のようなポリウレタンから形成可能である。Tecothane(登録商標)は、メチレンジイソシアナート(MDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)および1,4ブタンジオール鎖伸長剤から合成された熱可塑性の芳香族系ポリエーテルポリウレタンである。Tecothane(登録商標)1065Dおよび1075Dが実例である。使用された他のポリウレタンは、高強度エンジニアリング熱可塑性ポリウレタンであるIsoplast(登録商標)301、およびPellethane(登録商標)2363‐75Dであり、いずれもダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)より販売されている。ポリウレタンのバルーン材料を例証している参照文献には、米国特許第4,950,239号、同第5,500,180号、同第6,146,356号、同第6,572,813号明細書が挙げられる。本発明のデバイスは、ポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマーで作製されてもよい。ポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマーは一般に、頭文字PEBA(ポリエーテルブロックアミド)として特定される。これらのブロックコポリマーのポリアミドセグメントおよびポリエーテルセグメントはアミド結合によって連結されてもよいが、最も好ましいのはエステル結合したセグメント化ポリマー、すなわちポリアミド/ポリエーテルポリエステルである。そのようなポリアミド/ポリエーテル/ポリエステルブロックコポリマーは、ジカルボン酸ポリアミドおよびポリエーテルジオールの溶融状態重縮合反応によって作製される。その結果得られるのは、ポリアミドおよびポリエーテルのブロックで構成された短鎖ポリエステルである。
【0079】
ポリエステル/ポリエーテルセグメント化ブロックコポリマーを利用し、かつバルーン特性を得ることも可能である。そのようなポリマーは、少なくとも2つのポリエステルセグメントおよび少なくとも2つのポリエーテルセグメントから構成される。ポリエステルセグメントは、芳香族ジカルボン酸および炭素数2〜4個のジオールのポリエステルである。ポリエステル/ポリエーテルセグメント化ブロックコポリマーのポリエーテルセグメントは、エーテル結合の間に少なくとも2個および10個以下の直鎖飽和脂肪族炭素原子を有する脂肪族ポリエーテルである。好適なテトラメチレンエーテルセグメントの代わりに使用可能な他のポリエーテルの例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(ペンタメチレンエーテル)およびポリ(ヘキサメチレンエーテル)が挙げられる。
【0080】
ポリエステルセグメントは、芳香族ジカルボン酸および炭素数2〜4個のジオールのポリエステルであってもよい。ポリエステル/ポリエーテルブロックコポリマーのポリエステルセグメントの調製に使用される適切なジカルボン酸は、オルト‐、メタ‐もしくはパラ‐フタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはメタ‐テルフェニル‐4,4’‐ジカルボン酸である。
【0081】
バルーンは多種多様なホモポリマー材料およびコポリマー材料から形成されている。バルーンの強度特性は、単一のポリマー層により、またはポリマー材料のいくつかの層により提供されうる。構造的ポリマー多層を備えたバルーンは、国際公開第92/19316号パンフレット、米国特許第5,270,086号および同第5,290,306号明細書に記載されるような共押出成形により、または米国特許第5,512,051号および同第5,587,125号明細書に記載されるようなチューブインチューブ技法により、生産可能である。米国特許第5,270,086号明細書には、引張強さの高いポリマーの外側層と、良好な溶融結合特性および膠着剤接着特性を有する膨脹性の高いポリマーの内側接着層とで、多層バルーンを作製することも考えられることが提言されている。
【0082】
医療用デバイスを形成するためのポリマー材料は、米国特許出願公開第2005/0142314号明細書、米国特許第7,026,026号、同第7,005,097号および同第7,112,357号明細書により詳細に記載されており、前記特許文献はそれぞれ参照により明確に本願に組み込まれる。
【0083】
B.治療の方法
1.定義
a.疾患の治療および予防
本明細書中で使用されるように、「治療」および「治療する」とは、治療上の利益を得ることを目的とした、対象者への治療薬の投与もしくは適用または対象者に対する処置もしくは治療法の実行を指す。治療上の利益は、疾患もしくは健康関連状態の兆候もしくは症候の軽減により、または対象者の健康もしくは安寧の向上を意味する生理学的反応により、得ることができる。例えば、本発明においては、治療上の利益は、(1)弁膜症の臨床的兆候および症候の重症度もしくは頻度の低減、または(2)心臓機能の改善もしくは弁機能の改善のような生理学的反応を引き起こすこと、によって得ることができる。治療後、疾患の兆候および症候は頻度または重症度が低減する場合もあれば、低減しない場合もある。治療とは、疾患の兆候および症候の完全な解消を伴ってその疾患が必ず治癒することを意味するものではない。治療はまた、疾患の兆候または症候における計測可能な低減も、心臓機能または弁機能のうち少なくともいずれか一方における計測可能な改善も必要としない。治療薬が治療上の利益を得る目的を意図して投与された場合は、疾患の症候または弁機能において計測可能な改善があったかどうかにかかわらず、治療は実施されたのである。
【0084】
本発明のある実施形態は、対象者において弁膜症を予防する方法に関する。「予防」および「予防する」とは、該用語の通常かつ平易な意味に従って、「先んじて作用する」こと、またはそのような行為を意味するために使用される。特定の疾患または健康関連状態に関しては、それらの用語は、疾患または健康関連状態の発症を阻止することを目的とした、対象者への薬剤、治療薬もしくは医薬品の投与もしくは適用、または対象者に対する処置もしくは治療法の実行を指す。例えば、1つの心臓弁の疾患を有する対象者は、別の心臓弁の疾患を発症するリスクを有する可能性がある。
【0085】
b.疾患の診断
本明細書中で使用されるように、「疾患を診断する」とは、対象者における疾患の存在の同定を指す。例えば、診断薬の投与を伴う試験の結果のような、試験の結果からの情報が熟練した専門家により検討されて、疾患の有無が決定されうる。
【0086】
c.心臓弁膜症
「弁膜症」および「心臓弁膜症」は、対象者の心臓弁の構造または機能に悪影響を及ぼす可能性のある任意の疾患を指す。例えばヒトでは、心臓弁には大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁および三尖弁が含まれる。ヒトでの主な心臓弁膜症には、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁逆流および僧帽弁狭窄症が挙げられる。特定の実施形態では、弁膜症は大動脈弁の疾患である。
【0087】
d.対象者
本明細書中で使用される「対象者」は、哺乳動物のような任意の対象者を指す。哺乳動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、霊長動物およびヒトが挙げられる。特定の実施形態では、対象者は既知の弁膜症の患者または弁膜症が疑われる患者である。特定の実施形態では、対象者は既知の大動脈弁疾患の患者または大動脈弁疾患が疑われる患者である。
【0088】
2.デバイスの挿入
上記に議論されたデバイスに加えて、本発明の実施形態は、対象者における弁膜症を診断または治療する方法に関し、該方法は、上述のデバイスのうちいずれかであって、該デバイスの少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部分が治療薬でコーティングされているデバイスを、対象者の血管内に挿入することと、デバイスを、弁の弁尖がその送達部材と接触するように配置し、接触の結果、弁への治療薬の送達または弁膜症の診断もしくは治療がなされることと、を伴う。
【0089】
弁膜症は上記に議論されるような任意の疾患であってよいが、特定の実施形態では、弁膜症は、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症(機能不全)、または大動脈弁閉鎖症のような大動脈弁疾患である。治療薬は上記に議論された治療薬のうち任意のものであってよいが、特定の実施形態では、治療薬はラパマイシン、パクリタキセル、シロリムスまたは酸化窒素を増強する薬剤である。
【0090】
デバイスの挿入は、当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。例えば、デバイスは大腿動脈に挿入されて、デバイスの先端が対象者の左心室内に配置されるように進められてもよい。デバイスの配置は、当業者に既知の任意の画像診断法、例えば蛍光透視法を使用して観察可能である。デバイスは、デバイスの一部、例えばデバイスの先端に印をつけるために放射線不透過性マーカーを備えていてもよい。放射線不透過性マーカーは、例えば蛍光透視法の下での、デバイスの一部の場所および配置の視覚化を可能にする。放射線不透過性材料は、当業者に既知の任意のそのような材料であってよい。例としては、限定するものではないが、金、タンタルおよび白金が挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、デバイスはガイドワイヤ上を伝って進められる。当業者であれば、対象者の血管系に挿入されたデバイスを配置するためのガイドワイヤの使用には精通しているであろう。
【0092】
図11Aは、患者の大動脈弁疾患の治療のために適切に配置されているデバイス110を示している。解剖学上の詳細に関しては、111は左心室、112は左心室の側壁、113は大動脈弁尖、114は上行大動脈の側壁、および115は上行大動脈の管腔である。デバイス110は、大腿動脈の挿入地点からガイドワイヤ上を伝って進められている。デバイス110の本体118の先端116は左心室111の内部に配置されて、図11Aに示されるように、大動脈弁尖113が閉鎖状態にあるときに送達部材117が大動脈弁尖に接触するようになっている。その後、ガイドワイヤは除去される。該実施形態の図では、デバイス110は40本の送達部材を備えている。
【0093】
図11Bは、デバイス110の配置後に弁尖が閉鎖状態にあるときに上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図を示している。図11Bに示されるように、送達部材は、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にあるときにデバイスの本体が心臓の弁を横切って通されると、送達部材が対象者の心臓の弁尖と接触するように構成されている。送達部材117は弁尖113と接触している。ガイドワイヤを通すためのデバイス110のルーメン119が示されている。弁尖と接触すると、所与の送達部材上にコーティングされた治療薬が弁尖と接触する。弁尖と送達部材との接触をもたらす弁閉鎖の機械的プロセスは、結果としていくつかの送達部材からの治療薬の放出を生じさせる。治療薬は、弁尖に付着するようになるか、またはさらに対象者の血液循環中へ放出されて、疾患部位(大動脈弁)における治療薬の生物学的利用能の増大をもたらす可能性がある。放出は、例えば治療薬もしくはデバイスが特定のpHに、例えば生理学的pHに曝露されることにより、またはデバイスのルーメンを通した液体の注入により、開始させることができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、周囲の室温に対して温度が高いことによって促進される放出のような、制御放出がなされるように設計されている。図11Bは、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にあるときに、弁の閉鎖による弁尖からの圧力の結果として送達部材が弁の交連部に沿って様々な距離の間隔を置いて配置されるように、送達部材が配置構成されるようになることを示している。
【0094】
図12Aは、患者の大動脈弁疾患の治療のためのデバイス120の配置を示す側面図である。デバイス120の先端122は左心室111の内部に配置されている。送達部材123はそれぞれ、ルーメンおよびそのルーメンと連通している複数の開口部125を備え、液体が1以上の開口部を通してその送達部材から流出できるようになっている。デバイス120の本体121は各送達部材のルーメンと直接連通しているルーメンを備え、液体が本体から流出できるようになっている。図12Bは、デバイス120の配置後に弁尖が閉鎖状態にあるときに上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図を示している。図12Bに示されるように、送達部材は、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にあるときにデバイスの本体が心臓の弁を横切って通されると、送達部材が対象者の心臓の弁尖と接触するように構成されている。図12Bは、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にあるときに、弁の閉鎖による弁尖からの圧力の結果として送達部材が弁の交連部に沿って様々な距離の間隔を置いて配置されるように、送達部材が配置構成されるようになることを示している。
【0095】
図12Bに見られるように、送達部材123は弁尖113と接触している。弁尖113と送達部材123との間の接触は、図12Bに示されるように、弁尖113が閉鎖位置にあるときに最大であると予想される。送達部材123はルーメンを備えている。デバイス120の本体121は中央ルーメン126を備えている。適切に配置されると、1以上の治療薬と担体とを含んでいる医薬組成物がデバイスの本体121のルーメン126を通して注入され、該組成物が送達部材123から放出されて弁尖113と接触することが可能となる。送達部材の開口部は、医薬組成物がごく微量浸出するのを可能にするように十分小さくてもよいし、大動脈弁小尖に送達される輸液のより迅速またはより大量の注入を可能にする大きさであってもよい。送達部材の開口部は任意の大きさでよいが、特定の実施形態では、開口部の直径は、約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1.0mm、約1.2mm、約1.4mm、約1.6mm、約1.8mm、約2.0mm、またはさらに大きくてもよい。
【0096】
デバイスを介した医薬組成物の注入は心臓周期に合わせることができる。デバイスを介した医薬組成物の注入のタイミングは、当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。例えば米国特許出願公開第2007/0005011号明細書(参照により明確に組み込まれる)は、時間を合わせる、例えば心臓周期に合わせることが可能なカテーテルを介した治療薬の送達のためのデバイスおよび方法について教示している。例えば、送達は心臓の高頻度ペーシングとともに行われるように時間設定されてもよいし、一気に行われてもよいし、数分から数時間かけた持続注入で行われてもよい。
【0097】
図13Aは、対象者の大動脈弁に治療薬を送達するために適切に配置されたデバイス130を示す。先端132は、左心室111の中に先端132を配置するのを容易にするために放射線不透過性マーカー136を備えている。デバイス130は本体131と3つのフィン133とを備えている。フィン133は複数の開口部134を備えている。デバイスの配置には、フィン133が大動脈弁尖113の交連部に位置づけられるようにデバイスを置くことが必要である。図13Bは、デバイス130の配置後に弁尖が閉鎖状態にあるときに上行大動脈の管腔から大動脈弁を見降ろしている拡大断面図を示している。図13Bに示されるように、フィンは、弁尖が閉鎖状態またはほぼ閉鎖状態にあるときに、デバイスの本体が心臓の弁を横切って通されると、フィンが対象者の心臓の弁尖と接触するように構成されている。
【0098】
デバイス130は、フィンのルーメン137と連通しているルーメン138を有する本体131を備え、デバイス130のルーメンを通して注入される液体が開口部134を通して該送達部材から流出できるようになっている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのフィンは、薬物で少なくとも部分的にコーティングされている。他の実施形態では、デバイスのフィンは複数の開口部を備えていないが、薬物で少なくとも部分的にコーティングされている。フィンからの薬物の放出は、弁尖とデバイスとの接触、および大動脈弁尖の交連部内へのフィンの配置によって促進される。
【0099】
図14は、対象者の大動脈弁に治療薬を送達するために適切に配置されたデバイス140の側面図を示す。デバイス140の先端142は左心室111の中に配置されている。デバイス140は本体141を備え、本体141には拡張可能なバルーンが接続されている。デバイス140の本体141は中央ルーメンを備え、該ルーメン内へ注入される治療薬を含んだ医薬組成物が、1以上の開口部を通してバルーンから流出できるようになっている。このようにして、デバイスから放出される治療薬は弁尖と接触する。デバイスを介した治療薬の送達は、上記に議論されるように、当業者に既知の任意の方法を使用して、心臓周期に合わせることができる。
【0100】
図15は、対象者の大動脈弁に治療薬を送達するために適切に配置されたデバイス150の側面図を示す。デバイス150の先端152は左心室111の中に配置され、バルーン153が弁尖113と接触するようになっている。バルーン153は治療薬でコーティングされた複数のナノフィラメント154を備えている。図15は拡張状態のバルーンを示し、拡張状態によりナノフィラメント154と大動脈弁の弁尖113との間の接触の増大がもたらされている。ナノフィラメント154と弁尖113との間の接触により、ナノフィラメントからの治療薬の放出、および治療薬と弁尖の表面との接触がもたらされる。他の実施形態と同様に、該デバイスを使用する治療薬の送達は、上記に議論されるように、当業者に既知の任意の方法を使用して心臓周期に合わせることができる。例えば、バルーンの膨張を、左心室が収縮していない期間に対応させるように設定することができる。さらに、左心室の収縮期間に弁の表面を横切る血液の流れをほとんど妨げないために十分な大きさであるように、デバイスを設計することもできる。
【0101】
本発明の医療用デバイスは、臨床上の必要に応じて任意の時間持続して所定位置に留めることができる。治療の持続時間は、多くの要因、例えば弁膜症の性質および重症度、年齢、根本的な健康要因のような患者特異的な要因、ならびに利用される特定のデバイスおよび治療薬のようなその他の要因に左右される。例えば、1以上の治療薬を含有している医薬組成物の注入は、30秒間〜1時間かけて行われうる。治療薬でコーティングされたデバイスに関しては、該デバイスが適所に留置されて、約30秒間〜約1日の間対象者の体内でモニタリング可能である。
【0102】
いくつかの実施形態では、治療は、一度または二度以上繰り返すことができる。再治療に関する判断は、治療法に対する初期応答、その疾患の性質、および患者特異的な要因などの要因に基づいて決定される。当業者であれば、反復療法の必要性が示唆されるか、いつ必要であるかを決定するために、そのような要因について評価することができるであろう。本明細書中で述べた実施形態のうちのいくつかでは、方法は、治療を必要とする対象者を同定することをさらに含む。例えば、そのような対象者の同定は、疾患の重症度または従来の薬物療法に対する応答の欠如のような、臨床学的要因に基づくことができる。さらに、以下により詳細に議論されるように、本発明の方法のいくつかの実施形態は、1以上の補助的な形の弁膜症治療法の適用を含んでいる。
【0103】
3.注入
用語「医薬組成物」は、哺乳動物またはヒトに適切に投与された時に、副作用、アレルギー反応、またはその他の好ましくない反応を生じない分子組成物を指す。本明細書中で使用されるように、「医薬組成物」にはありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌性および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。用語「薬学的に有効な」は、対象者の疾患の診断、治療、または予防に有益であると知られているかまたは予想される特定の組成物の量を指す。
【0104】
注入は、当業者によって決定されるような任意の時間にわたって提供可能である。例えば、注入は、約1分間、約2分間、約5分間、約10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約1時間などにわたって提供可能である。投与は術中に行われても術後に行われてもよい。
【0105】
C.指導方法
本発明のさらなる実施形態は、処置を実施するように人に指導する方法に関し、該方法は、コンピュータを使用して実行すると前述のデバイスまたはカテーテルのうち任意のものを使用して心臓弁に治療薬を送達する実際または仮想の処置が表示される、機械読取り可能な説明書を含んでいるコンピュータ読取り可能なメディアをその人に提供することを含んでなり、該処置は対象者の血管にデバイスまたはカテーテルを挿入するステップと、弁の弁尖がデバイスまたはカテーテルと接触するようにデバイスまたはカテーテルの位置を決めるステップとを含んでなる。特定の実施形態では、心臓弁は対象者の大動脈弁である。治療薬は上記に議論された薬物のうち任意のものであってよい。特定の実施形態では、治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムスまたは酸化窒素を増強する薬剤である。特定の実施形態では、コンピュータ読取り可能なメディアはCDまたはDVDである。
【0106】
D.キット
本発明のある実施形態は、概してキットに関する。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、1以上の本発明の医療用デバイスと、少なくとも1つの密閉容器とを含んでいる。キットが2以上の本発明の医療用デバイスを含む実施形態では、該デバイスは密閉容器内に別々に包装されてもよい。キットは、デバイスの挿入のための説明書を含むこともできる。デバイスが液体を注入するためのルーメンを備えて設計されている実施形態では、キットは、カテーテルを介して注入するための薬学的に許容可能な担体を含んでなる組成物の入った少なくとも1つの密閉容器をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は1以上の治療薬を含んでいる。治療薬は上記に議論された治療薬のうち任意のものであってよい。
【0107】
E.診断薬および画像化
本発明のいくつかの実施形態では、治療薬は診断薬である。いくつかの実施形態では、診断薬は薬剤であって該薬剤からのシグナルを検出することができる薬剤である。したがって、本発明の方法のいくつかの実施形態は、デバイスを通して注入された治療薬組成物からのシグナルを検出することをさらに含む場合がある。最も好ましくは、検出されるシグナルは、対象者における注目の弁の領域に注入された診断薬からのシグナルである。診断薬は、画像化剤、例えばCT、MRI、γ線カメラ、PET、SPECT、超音波または光学的画像を使用して画像化可能な画像化剤であってよい。特定の実施形態では、診断薬は放射性核種である。例えば、治療薬の送達を画像化と組み合わせて、薬物の放出を画像化できるようにすることも考えられる。例えば、治療薬を、脂質およびペルフルオロカーボンで構成されたナノ粒子に含めて送達することができる。
【0108】
F.併用療法
本発明のいくつかの実施形態は、本願に記載されたデバイスのうち任意のものを使用して対象者の弁膜症を治療する方法であって、1以上の補助的な形の心臓弁膜症治療法が対象者に対して適用される方法に関する。
【0109】
補助的な形の治療法は、当業者に既知の任意の種類の心臓弁膜症治療法であってよい。特定の実施形態では、補助的な形の治療法は、従来の投与方法を使用した1以上の補助的薬物療法の適用を伴う。治療法は、任意の薬理作用物質の投与を含むことが可能であり、該物質の例は本明細中の他所に記載されている。例えば、投与は経口投与または静脈内投与であってよい。弁膜症治療法の他の例には、弁形成術および心臓弁の外科療法が含まれる。
【0110】
本発明の組成物の患者への投与は、治療薬療法の適用に関する一般的なプロトコールに従い、存在する場合は治療薬の毒性を考慮に入れて行われることになる。必要に応じて治療が反復される場合もあることが予想される。
【0111】
G.実施例
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。当業者には当然のことであるが、以下の実施例において開示される技術は本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技術に相当し、従って本発明の実施のための好ましい態様を構成すると考えることができる。しかしながら当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えてもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを認識しているはずである。
【0112】
実施例1
局所的弁送達の実証
リポーター物質の局所的弁送達を実証するために実験を実施した。本実験には外植したラットおよびウサギの心臓を利用した。図8に示すデバイス90に類似のデバイスは、特定の動物の体内構造に適合する様々な径(例えば3.0mm径、4.0mm径)の微孔性バルーンを備えたものである。収縮させた微孔性バルーンを、大動脈弁を横切って取り付けた。1%エバンスブルー溶液の注入によりバルーンを膨張させて、バルーンの側面が弁開口部と接触するようにして、弁領域への物質の送達を視覚化した。注入の時間を変化させた。試験した時間は5秒〜1分である。すべての試験片は、左心房を経た心臓の血流を模倣する連続的な生理食塩水の流れが存在する状態でも、溶液が微孔を通ってバルーンから漏出して弁尖を染色することを示した。
【0113】
当業者には当然のことであるが、上記に詳述したように、本発明の医療用デバイスおよび方法が不必要に詳細で不明瞭にならないように、ある種の良く知られた構成要素および組み立て技術は省略されている。英単位系で提供される寸法は、四捨五入してミリメートルの位にすることにより対応するメートル法に変換可能である。
【0114】
開示された本発明の実施形態はすべて、本開示に照らせば過度の実験を行うことなく作製かつ使用することができる。上述の個々の医療用デバイスは、正確に開示された通りの形態で作製される必要も、正確に開示された通りの構成に組み合わされる必要もなく、任意の適切な形態で提供されかつ/または特許請求の範囲と矛盾の無い任意の適切な構成に組み合わせることが考えられる。さらに、本発明の方法は特定の開示された要素を使用して実行可能であるが、そのような方法を、添付の特許請求の範囲と矛盾の無い他の要素または技術を組み込んで実行することもできる。
【0115】
参照文献
次の参照文献は、該文献が本明細書中に記載された詳細を補足する例示的な手順その他の詳細を提供する限りにおいて、参照により明確に本願に組み込まれる。
米国特許第4,950,239号明細書
米国特許第5,270,086号明細書
米国特許第5,290,306号明細書
米国特許第5,330,428号明細書
米国特許第5,500,180号明細書
米国特許第5,512,051号明細書
米国特許第5,587,125号明細書
米国特許第5,591,227号明細書
米国特許第5,733,327号明細書
米国特許第5,899,935号明細書
米国特許第6,146,356号明細書
米国特許第6,364,856号明細書
米国特許第6,403,635号明細書
米国特許第6,425,881号明細書
米国特許第6,572,813号明細書
米国特許第6,716,242号明細書
米国特許第6,918,929号明細書
米国特許第6,939,376号明細書
米国特許第7,005,097号明細書
米国特許第7,026,026号明細書
米国特許第7,112,357号明細書
米国特許出願公開第2005/0075662号明細書
米国特許出願公開第2005/0142314号明細書
米国特許出願公開第2006/0229659号明細書
米国特許出願公開第2007/0005011号明細書
Henson et al, AJNR Am. J. Neuroradiol., 25(6):969−972, 2004
Strunk and Schild, Eur. Radiol., 14(6): 1055−1062, 2004
国際公開第92/19316号パンフレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、
先端を有する本体と、
本体に接続された複数の送達部材であって、各部材は第1端および第2端を有し、少なくとも1つの送達部材の第1端および第2端は、本体の先端より基端側の位置で本体に接続されていることを特徴とする、送達部材と
を含んでなるデバイス。
【請求項2】
本体はルーメンを有するものとしてさらに規定される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
少なくとも1つの送達部材がルーメンを有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
送達部材はそれぞれルーメンおよび該ルーメンと連通している1以上の開口部を有し、液体が1以上の開口部を通してその送達部材から流出できるようになっている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
2〜500個の治療薬送達部材を含んでなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
全ての送達部材の第1端および第2端が本体に接続されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部が治療薬でコーティングされている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、酸化窒素を増強する薬剤、スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、PPARアゴニスト、抗炎症剤、狭窄抑制物質、抗生物質、アトルバスタチン、およびキナプリルのいずれかである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
複数の送達部材が接続された治療薬送達カテーテルであって、各部材はカテーテルの一部に並列して配置される部分を有する、カテーテル。
【請求項10】
少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部が治療薬でコーティングされている、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、酸化窒素を増強する薬剤、スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、PPARアゴニスト、抗炎症剤、狭窄抑制物質、抗生物質、アトルバスタチン、およびキナプリルのいずれかである、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
少なくとも1つの送達部材は1以上の開口部を備えたルーメンを有し、該開口部はそのルーメンとの連通を提供して、液体が1以上の開口部を通してその送達部材から流出できるようになっている、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項13】
少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部が治療薬でコーティングされている、請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、酸化窒素を増強する薬剤、スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、PPARアゴニスト、抗炎症剤、狭窄抑制物質、抗生物質、アトルバスタチン、およびキナプリルのいずれかである、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項15】
心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、
先端を有する本体と、本体の一部に沿って長手方向の向きに配置され、本体の先端から1mmを上回る距離に位置付けられた先端を有する、治療薬でコーティングされているフィンと、を含んでなるデバイス。
【請求項16】
心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、
先端を有する本体と、
本体に接続された、複数のナノフィラメントを有する拡張可能なバルーンであって、本体の先端から1mmを上回る距離に位置付けられているバルーンと
を含んでなるデバイス。
【請求項17】
心臓弁に治療薬を送達するためのデバイスであって、
先端を有する本体と、
本体に接続された、連通を提供するための複数の開口部を有する拡張可能なバルーンであって、流体が1以上の開口部を通してバルーンから流出できるようになっており、本体の先端から1mmを上回る距離に位置付けられているバルーンと
を含んでなるデバイス。
【請求項18】
対象者の弁膜症を診断または治療する方法であって、
a)請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイスまたは請求項15に記載のカテーテルを対象者に挿入することと、デバイスの少なくとも1つの送達部材の少なくとも一部が治療薬でコーティングされていることと、
b)デバイスを、弁の弁尖が送達部材と接触するように配置することと
からなり、
接触させた結果、治療薬が弁に送達されて弁膜症の診断または治療がなされることを特徴とする方法。
【請求項19】
治療薬は、ラパマイシン、パクリタキセル、シロリムス、酸化窒素を増強する薬剤、スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、PPARアゴニスト、抗炎症剤、狭窄抑制物質、抗生物質、アトルバスタチン、およびキナプリルのいずれかである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象者の弁膜症を診断または治療する方法であって、
a)請求項4に記載のデバイスまたは請求項12〜14のいずれか1項に記載のカテーテルを対象者の血管に挿入することと、
b)デバイスを、弁の弁尖が送達部材と接触するように配置することと、
c)治療薬と担体とを含んでなる医薬組成物を、デバイスまたはカテーテルのルーメンを通して注入することと、注入した結果、送達部材から組成物が放出されて弁膜症の診断または治療がなされることと
からなる方法。
【請求項21】
対象者の弁膜症を診断または治療する方法であって、
a)請求項16に記載のデバイスを対象者の血管に挿入することと、ナノフィラメントは治療薬で少なくとも部分的にコーティングされていることと、
b)デバイスを、バルーンが弁と接触するように配置することと、
c)バルーンを膨張させることと、膨張させた結果、治療薬が弁に送達されて弁膜症の診断または治療がなされることと
からなる方法。
【請求項22】
対象者の弁膜症を診断または治療する方法であって、
a)請求項17に記載のカテーテルを対象者の血管に挿入することと、送達部材の一部が治療薬でコーティングされていることと、
b)デバイスを、弁の弁尖が送達部材と接触するように配置することと、
からなり、
接触させた結果、治療薬が弁に送達されて弁膜症の診断または治療がなされることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−537788(P2010−537788A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524185(P2010−524185)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/075408
【国際公開番号】WO2009/033026
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】