説明

心臓核医学検査法による検査画像の解析装置及び方法

【課題】心臓核医学検査法による検査の際に撮影した心臓の画像を解析し、安静時に対する負荷時の心臓の変化を定量的に把握する。
【解決手段】心臓核医学検査法において、第1回撮影画像群と第2回撮影画像群とを記憶する記憶部11,12と、第1回及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定するRI投与量推定部14と、第1回撮影画像に基づいて、第1回撮影画像における心臓領域の指定を受け付け、第2回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第2回撮影画像群における心臓領域の指定を受け付けて、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータを生成するアレイデータ生成部17と、RI投与比に基づく補正を行い、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比する増加率算出部18と、対比結果をブルズアイ表示する表示処理部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓核医学検査法による検査の結果を解析する技術に関し、特に心臓核医学検査法による負荷/安静検査で心臓を撮影した画像を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安静時の心筋血流検査では、虚血心筋の検出は困難であり、負荷心筋血流検査を用いた心筋虚血の診断が行われている。(例えば、非特許文献1)。この検査では、被験者にRIを投与した後、2回の心筋血流SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像を撮影する。すなわち、安静時のSPECT画像、及び薬剤の投与または運動による負荷をかけたときのSPECT画像をそれぞれ撮影する。そして、安静時のSPECT画像と負荷時のSPECT画像とを比較して、血流障害を起こしている部位を検出する。
【非特許文献1】「SPECT機能画像 −定量化の基礎と臨床−」90−91ページ、1998年4月6日第1刷発行、編集者:西村恒彦、発行所:株式会社メジカルビュー社、発売所:株式会社グロービュー社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冠動脈疾患は年々増加し、その早期発見、診断、治療の重要性は言うまでもない。冠動脈狭窄の重症度判定においては、冠動脈血流予備能を定量的に把握することが必須である。しかしながら、従来、心臓核医学検査法の解析では、第1回目の画像と第2回の画像を、医師が目視で対比することが多く、定性的な比較が主流であった。なぜならば、心筋の動きを把握するには、毎軸画像及び長軸画像の多数枚の画像を用いることが多く、多数枚の画像同士を定量的に比較することが難しかった。
そこで、本発明の目的は、心臓核医学検査法による検査の際に撮影した心臓の画像を解析し、安静時に対する負荷時の心臓の血流増加の変化を定量的に算定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの実施態様に従う画像解析装置は、RI(Radio Isotope)を複数回に分けて投与する心臓核医学検査法において、RI投与後の同一被験者の心臓から放出される放射能に基づく画像を解析する画像解析装置であって、第1回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第1回撮影画像群と、第2回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第2回撮影画像群とを記憶する記憶手段と、第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定する推定手段と、前記第1回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第1回撮影画像群における心臓領域を指定する手段と、前記第2回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第2回撮影画像群における心臓領域を指定する手段と、指定された前記第1回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第1回撮影アレイデータを生成する手段と、指定された前記第2回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第2回撮影アレイデータを生成する手段と、推定された前記第1回及び第2回のRI投与量に基づく補正を行い、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比する手段と、前記対比による対比結果をブルズアイ表示するための表示処理手段と、を備える。
【0005】
好適な実施態様では、前記第1回撮影画像群及び第2回撮影画像群の一方が安静時に撮影した安静画像群であり、他方が負荷をかけたときに撮影した負荷画像群であり、前記対比手段は、前記安静画像群から生成されたアレイデータに対する前記負荷画像群から生成されたアレイデータの変化率を算出し、前記表示処理手段は、前記対比手段によって算出された変化率をブルズアイ表示するようにしてもよい。
【0006】
好適な実施態様では、第1回撮影及び第2回撮影を同日に行う場合、前記RI投与量の推定手段は、第1回投与前、第1回投与後第2回投与前、第2回投与後のそれぞれにおいて、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能に基づく画像を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定するようにしてもよい。
【0007】
好適な実施態様では、第1回撮影及び第2回撮影を同日に行う場合、前記RI投与量の推定手段は、第1回投与前、第1回投与後第2回投与前、第2回投与後のそれぞれにおいて、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能をキュリメータで測定した測定値を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定するようにしてもよい。
【0008】
好適な実施態様では、第1日目に前記第1回RI投与及び第1回撮影を行い、第2日目に第2回RI投与及び第2回撮影を行う場合、前記RI投与量の推定手段は、第1日目の第1回RI投与前及び第1回撮影後と、第2日目の第2回RI投与前及び第2回RI投与後において、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能に基づく画像を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定するようにしてもよい。
【0009】
好適な実施態様では、第1日目に前記第1回RI投与及び第1回撮影を行い、第2日目に第2回RI投与及び第2回撮影を行う場合、前記RI投与量の推定手段は、第1日目の第1回RI投与前及び第1回撮影後と、第2日目の第2回RI投与前及び第2回RI投与後において、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能をキュリメータで測定した測定値を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定するようにしてもよい。
【0010】
好適な実施態様では、前記対比手段は、第1回撮影に要した時間と第2回撮影に要した時間とに基づいて、さらに補正を行って、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比するようにしてもよい。
【0011】
好適な実施態様では、前記第1回撮影画像群及び第2回撮影画像群は、いずれも、同一被験者の心臓を撮影した3次元SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る心臓核医学検査法による検査及びその検査画像の解析装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、心臓核医学検査法(1日法)による検査の手順を示す図である。
【0014】
同図に示す心臓核医学検査法(1日法)では、まず被験者に第1回目のRIを投与する。
【0015】
そして、第1回目のRI投与から所定時間が経過し、被験者の体内のRI分布が安定した頃に、心臓の3次元SPECT画像を所定の時間(第1回収集時間)をかけて撮影する。
【0016】
次に、被験者に第2回目のRIを投与する。
【0017】
そして、第1回目のときと同様に、第2回目のRI投与から所定時間が経過し、被験者の体内のRI分布が安定した頃に、心臓の3次元SPECT画像を所定の時間(第2回収集時間)をかけて撮影する。
【0018】
ここで、第1回目と第2回目のいずれか一方を、被験者が安静にした状態で撮影し、他方を被験者に負荷がかかった状態で撮影する。安静状態での撮影と負荷状態での撮影は、いずれを先に行っても良い。また、被験者にかける負荷は、運動による負荷と薬剤による負荷のいずれか一方でも良いし、両方でも良い。以下、安静状態で撮影したSPECT画像を安静画像、負荷状態で撮影したSPECT画像を負荷画像と呼ぶ。
【0019】
また、この心臓核医学検査法では、RI投与に用いる装置(ここではシリンジ)の放射能の測定を3回行う。すなわち、シリンジの測定は、第1回RI投与前(シリンジ測定(1))と、第1回RI投与後で第2回RI投与前(シリンジ測定(2))と、第2回RI投与後(シリンジ測定(3))とに、それぞれ行う。シリンジの測定(1)〜(3)は、例えば、SPECT画像の撮影を行う装置と同じ装置で画像撮影により行ってもよいし、キュリメータで直接的に放射能強度を測定しても良い。シリンジの測定(1)〜(3)の測定結果は、後述する画像解析装置1のシリンジ測定データ記憶部13に格納される。
【0020】
このようにして、被験者の心臓について、3次元SPECT画像を2回撮影する。心臓の3次元SPECT画像には、短軸方向への断層画像と長軸方向への断層画像とが含まれる。長軸方向への断層画像は、水平長軸画像と垂直長軸画像がある。第1回目に撮影した3次元SPECT画像と第2回目に撮影した3次元SPECT画像は、それぞれ、次に説明する画像解析装置1の第1回撮影画像記憶部11及び第2回撮影画像記憶部12に格納される。
【0021】
図2は、心臓核医学検査法による検査画像の解析装置1の構成図を示す。
【0022】
この画像解析装置1は、例えば汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する画像解析装置1の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
画像解析装置1は、上述した心臓核医学検査法で取得したデータの解析を行う。そのために、画像解析装置1は、第1回撮影画像記憶部11と、第2回撮影画像記憶部12と、シリンジ測定データ記憶部13と、RI投与量推定部14と、収集時間比算出部15と、アレイデータ生成部17と、増加率算出部18と、表示処理部19とを備える。
【0024】
第1回撮影画像記憶部11は、第1回撮影で取得した心臓の3次元SPECT画像(第1回撮影画像)を記憶する。
【0025】
第2回撮影画像記憶部12は、第2回撮影で取得した心臓の3次元SPECT画像(第2回撮影画像)を記憶する。
【0026】
第1回撮影画像及び第2回撮影画像の各画素(ボクセル)の値は、撮像素子がカウントしたカウント値であって、放射能強度を示す。従って、画素値が大きいほど、血流が多いことを示す。
【0027】
シリンジ測定データ記憶部13は、上述したシリンジ測定(1)〜(3)の測定結果データを記憶する。
【0028】
RI投与量推定部14は、第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定する。例えば、RI投与量推定部14は、シリンジ測定データ記憶部13に記憶されている測定結果データに基づいて、第1回目と第2回目におけるRIの投与量を推定し、その比を算出する。第1回撮影画像の撮影時と第2回撮影画像の撮影時では、被験者に投与されたRI量が同量とは限らないので、被験者から放出される放射能強度も必ずしも同一ではない。従って、第1回撮影画像の画素値のレベルと第2回撮影画像の画素値のレベルとが相違するので、両画像を単純に比較することはできない。また、RIの半減期を考慮する必要もある。そこで、RI投与量推定部14は、第1回撮影画像及び第2回撮影画像が比較可能になるよう補正するために、投与比D_ratioを算出する。
【0029】
例えば、キュリメータでシリンジ測定を行った場合は、シリンジ測定(1)〜(3)の測定値をそれぞれs1,s2,s3とする。シリンジ測定(1)〜(3)のそれぞれの開始時刻を、Ts1,Ts2,Ts3とする。そして、s2及びs3について、時刻Ts1を基準とする半減期補正をするための補正係数をDCSi2,DCSi3とすると、投与比D_ratioは式(1)で求まる。
【数1】

ここで、DCSi2,DCSi3は、それぞれ以下の通りである。
【数2】

【数3】

ここで、Tは、本実施形態で投与するRIの半減期(時間)である。例えば、99mTcでは、6.02時間である。
【0030】
また、各シリンジ測定において画像を撮影した場合は、まずRI投与量推定部14が、シリンジ測定(1)〜(3)で撮影した各画像の全画素値の合計を算出する。全画像の画素値合計をそれぞれ、c1,c2,c3とすると、投与比は式(2)で求まる。
【数4】

収集時間比算出部15は、第1回撮影画像記憶部11及び第2回撮影画像記憶部12に記憶されている各SPECT画像を撮影(データ収集)するのに要した時間の比(収集時間比)A_ratioを算出する。つまり、収集時間比算出部15は、第1回収集時間A1と第2回収集時間A2の比A_ratio(=A2/A1)を算出する。
【0031】
投与比D_ratio、及び収集時間比A_ratioは、いずれも、第1回画像が負荷画像(後述する)の場合には、分母が負荷時の投与量となる。従って、これらを負荷画像に掛ける(積算)ことによって、負荷画像の画素値のレベルを安静画像の画素値のレベルにあわせる。一方、第1回画像が安静画像(後述する)の場合には、分母が安静時の投与量となる。従って、これらで負荷画像を割る(除算)ことによって、負荷画像の画素値のレベルを安静画像の画素値のレベルにあわせる。
【0032】
アレイデータ生成部17は、第1回撮影画像記憶部11に記憶されている画像データに基づいて、第1回撮影画像に基づいてブルズアイ表示をするためのアレイデータを生成する。同様に、アレイデータ生成部17は、第2回撮影画像記憶部12に記憶されている画像データに基づいて、第2回撮影画像に基づいてブルズアイ表示をするためのアレイデータを生成する。
【0033】
表示処理部19は、表示装置22に心臓の断層画像、ブルズアイマップ、及び種々のインタフェース画面を表示する。
【0034】
ここで、図3はアレイデータ生成部17が行うアレイデータの生成手順を示すフローチャートである。同図に従って、アレイデータ生成部17の処理手順を詳細に説明する。
【0035】
まず、アレイデータ生成部17は、処理対象となる画像群の画像データを読み込む(S11)。
【0036】
アレイデータ生成部17は、各画像における心臓領域の範囲を選択し、その範囲を処理範囲として設定する(S12)。この心臓領域の選択は、オペレータの指示に従って行っても良いし、アレイデータ生成部17が自動的に心臓領域を検出して行っても良い。
【0037】
図4は、心臓の断層画像を模式的に示す。同図Aは垂直長軸画像の模式図であり、同図Bは短軸画像の模式図である。オペレータは、例えば、表示処理部19によって同図A,Bのような画像が表示装置22に表示されているときに、それぞれの心臓領域を選択する。例えば、オペレータは、同図Aの垂直長軸画像を用いて、心基部be及び心尖部aeを指定する。また、同図Bの短軸画像を用いて心臓の中心ce及び半径re(外周)を設定する。
【0038】
図3に戻ると、アレイデータ生成部17は、短軸画像の画像データに基づいて、心基部beと心尖部aeの間の長さに応じて、短軸画像を所定枚数(ここでは16枚)に正規化する(S13)。
【0039】
アレイデータ生成部17は、短軸画像において、図4Bに示すように、心臓の中心ceから3時方向の半径reを起点として、7.5度おき、48方向の半径reについて、それぞれの半径re上で最も大きい画素値を抽出する(S14)。アレイデータ生成部17は、この処理を、正規化によって得られた16枚の短軸画像のそれぞれについて行う(S15)。
【0040】
これにより、48×16のアレイデータが抽出される。このアレイデータに基づいて、後述するブルズアイ表示がされる。
【0041】
アレイデータ生成部17は、第1回撮影画像記憶部11と第2回撮影画像記憶部12のそれぞれについて上記処理を行う。
【0042】
増加率算出部18は、アレイデータ生成部17が生成した安静画像のアレイデータと負荷画像のアレイデータとを対比して、心臓のどの領域の血流がどれくらい増加したかを示す増加率を算出する。この増加率は、心臓の循環予備能(Flow Reserve)と呼ばれる。第1回撮影画像と第2回撮影画像のいずれが安静画像であり、負荷画像であるかは、例えば、オペレータの指定に従って特定しても良いし、または、第1回撮影画像と第2回撮影画像の全体の画素値のレベルから特定しても良い。
【0043】
増加率算出部18は、例えば、第1回画像が安静画像であり、第2回画像が負荷画像であるとき(安静先行)は、それぞれの対応するアレイデータごとに、対応する部位の増加率F[x,y]を算出する。ここで、安静画像の撮影開始時刻をTR、負荷画像の撮影開始時刻をTStとし、安静画像Rのアレイデータの値をR[x,y]、負荷画像Sのアレイデータの値をS[x,y]とし、安静画像の半減期補正係数をDCR、負荷画像の半減期補正係数をDCStとする。さらに、
安静画像を負荷時まで減衰させる係数:
【数5】

正味の負荷画像:
【数6】

としたとき、F[x,y]は式(3)で表される。
【数7】

ここで、DCR及びDCStは、それぞれ以下の通りである。
【数8】

【数9】

安静先行の場合、安静画像を撮影した後に負荷画像を撮影しているので、現実に撮影された負荷画像は残存する安静画像の影響を受ける。そこで、正味の負荷画像とは、現実に撮影された負荷画像から残存している安静画像を除去したものである。
【0044】
また、これとは反対に、第1回画像が負荷画像であり、第2回画像が安静画像であるとき(負荷先行)は、増加率算出部18は以下のようにして増加率F[x,y]を算出する。ここで、
負荷画像を安静時まで減衰させる係数:
【数10】

正味の安静画像:
【数11】

としたとき、F[x,y]は式(4)で表される。
【数12】

負荷先行の場合、負荷画像を撮影した後に安静画像を撮影しているので、現実に撮影された安静画像は残存する負荷画像の影響を受ける。そこで、正味の安静画像とは、現実に撮影された安静画像から残存している負荷画像を除去したものである。
【0045】
次に、図5及び図6は、表示処理部19が表示装置22に表示するインタフェース画面100、200の一例である。これらの画面100、200に対するオペレータの操作とともに、上記構成を備えた画像解析装置1が実行する処理について説明する。
【0046】
図5のインタフェース画面100は、被験者情報の入力領域110と、シリンジデータの入力領域120と、安静画像の表示領域130と、負荷画像の表示領域140とを有する。
【0047】
オペレータは、被験者情報の入力領域110に被験者情報を入力する。
【0048】
シリンジデータの入力領域120には、シリンジ測定(1)〜(3)によって取得したデータが、それぞれ、シリンジデータ表示領域121〜123に表示される。ここに表示されるシリンジデータは、オペレータが手入力しても良いし、シリンジ測定データ記憶部13から読み込んで自動的に表示されるようにしても良い。
【0049】
RI投与量推定部14は、シリンジデータ表示領域121〜123に表示されたデータに基づいて、投与比D_ratioを算出する。
【0050】
オペレータが安静画像として、第1回撮影画像または第2回撮影画像のいずれか一方を選択すると、選択された画像が安静画像の表示領域130に安静画像として表示される。同様に、オペレータが負荷画像として第1回撮影画像または第2回撮影画像のいずれか一方を選択すると、選択された画像が負荷画像の表示領域140に負荷画像として表示される。
【0051】
ここで、オペレータが垂直長軸画像131,141を用いて、安静画像及び負荷画像における心基部be及び心尖部aeをそれぞれ特定する。さらに、心基部beの短軸画像132,142及び心尖部aeの短軸画像133,143において、心臓の中心部ceと外壁を特定する。
【0052】
アレイデータ生成部17は、上記のオペレータの設定に従って、安静画像及び負荷画像のそれぞれのアレイデータを生成する。
【0053】
表示処理部19は、安静画像及び負荷画像のそれぞれのアレイデータに基づいて、ブルズアイマップ134,144を表示する。なお、アレイデータに基づくブルズアイ表示の手法は公知であるから、詳細な説明は省略する。
【0054】
また、収集時間の表示領域135,145には、それぞれの画像の収集時間が表示される。ここに表示される収集時間は、オペレータが手入力しても良いし、第1回撮影画像記憶部11及び第2回撮影画像記憶部12から読み込んで自動的に表示されるようにしても良い。
【0055】
収集時間比算出部15は、収集時間の表示領域135,145に表示されたデータに基づいて、投与比A_ratioを算出する。
【0056】
図6のインタフェース画面200は、安静時のブルズアイマップ210、負荷時のブルズアイマップ220及び、血流量の増加率を示す安静画像に対する負荷画像の変化率のブルズアイマップ230のそれぞれの表示領域を有する。各ブルズアイマップ210,220,230は、それぞれのアレイデータの値に応じて異なる表示態様で表示される。例えば、変化率を示すブルズアイマップ230は、それぞれの領域を変化率に応じた色で表示することにより、心筋の血管の支配領域ごとの変化率の大小を容易に把握することができる。
【0057】
また、画面200には、各ブルズアイマップ210〜230を17セグメントに分けたときの、各セグメント内のアレイデータの最大値などの表示領域240、250,260も設けられている。
【0058】
次に、上述した実施形態では、実測したシリンジデータに基づいてRIの投与比D_ratioを算出し、これを用いて安静時に対する負荷時の血流の増加率Fを算出している。しかしながら、以下に説明する手法を用いれば、第1回撮影画像及び第2回撮影画像のみから安静時に対する負荷時の血流の増加率Fを算出することができる。すなわち、以下の手法によれば、シリンジデータの実測が不要となる。以下、その手法を説明する。
【0059】
まず、安静画像のアレイデータ及び負荷画像のアレイデータが比較可能になるよう補正するために、それぞれのアレイデータの値のレベル(放射能強度)の比(f:factor)を、以下の式により算出する。
【数13】

Rmean:安静画像のアレイデータR[x,y]の平均値
Smean:負荷画像のアレイデータS[x,y]の平均値
Rmean及びSmeanは、安静画像のアレイデータR[x,y]及び負荷画像のアレイデータS[x,y]の特定の領域の平均値でもよい。
【0060】
次に、アレイデータの各要素の変化率CR[x,y]を算出する。
【数14】

つぎに、アレイデータの要素ごとの変化率CR[x,y]を、要素間の相対値に変換する。つまり、安静画像Rから負荷画像Sへの変化の大きさを、アレイデータにおいて相対的に比較するために、変化率CRを要素ごとの変化率の相対値である相対変化率CRSに変換する。相対変化率CRS[x,y]は、以下の式により算出する。
【数15】

CRmean:アレイデータの要素ごとの変化率CR[x,y]の平均値
ただし、CRmeanは、CR[x,y]>1のCR[x,y]の平均値としてもよい。ここで、CR[x,y]>1となる要素は、アレイデータの値のレベルの比fで安静画像のアレイデータRと負荷画像のアレイデータSのレベル調整を行った後、対応する要素についてこれらのアレイデータ同士を比較したとき、負荷画像のアレイデータSの方が安静画像のアレイデータRよりも値が大きくなっている要素である。つまり、CR[x,y]>1となるアレイデータの要素は、負荷によって血流が増加している領域である。従って、CRmeanの算出に当たり、CR[x,y]>1となる画素以外を除外することは、血流が増加していないまたは血流が落ちている要素が除外されることを意味する。
【0061】
このようにして算出された相対変化率CRS[x,y]が増加率F[x,y]に相当する。この結果、予めシリンジデータを測定しなくても、シリンジデータを測定したときと同等の解析結果を得ることができる。
【0062】
次に、図7は、心臓核医学検査法(2日法)による検査の手順を示す図である。
【0063】
図1に示す心臓核医学検査法(1日法)(以下、1日法という)では、1日で2回の撮影を連続して行うが、図7に示す心臓核医学検査法(2日法)(以下、2日法という)では2回の撮影をそれぞれ別の日に行い、合計2日で行う。すなわち、同図に示す2日法では、検査第1日目に、被験者に第1回目のRI投与を行って、所定時間経過後に第1回撮影を行う。そして、検査第2日目に、被験者に第2回目のRI投与を行って、所定時間経過後に第2回撮影を行う。ここで、第1回撮影と第2回撮影のいずれか一方を安静状態で撮影し、他方を負荷状態での撮影することは、1日法と同様である。従って、2日法の場合、安静画像と負荷画像は異なる日に撮影されるので、1日法の場合のように、一方の画像に他方の画像が残存していることはない。つまり、安静画像及び負荷画像は、互いに一方が他方の影響を受けない。
【0064】
また、この2日法では、シリンジ測定を4回行う。すなわち、シリンジの測定は、第1回RI投与前(シリンジ測定(1))、第1回撮影後(シリンジ測定(2))、第2回RI投与前(シリンジ測定(3))、及び第2回撮影後(シリンジ測定(4))にそれぞれ行う。
【0065】
図2に示す検査画像の解析装置1は、2日法で収集したデータを解析することができる。そこで、以下では、解析装置1が2日法で収集したデータを解析する際に、1日法で収集したデータを解析する場合との相違点について説明する。
【0066】
まず、2日法の場合、シリンジ測定(1)〜(4)の測定値は、シリンジ測定データ記憶部13に格納される。
【0067】
RI投与量推定部14は、以下のようにして第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定する。例えば、RI投与量推定部14は、以下のようにして投与比D_ratioを算出する。ここでは、シリンジ測定(1)〜(4)の測定値をそれぞれs1,s2,s3,s4とし、シリンジ測定(1)〜(4)のそれぞれの開始時刻を、Ts1,Ts2,Ts3,Ts4とする。さらに、第1回撮影の開始時刻及び第2回撮影の開始時刻を、それぞれ、TSP1,TSP2とする。そして、s2を時刻Ts1を基準とする半減期補正をするための補正係数をDCSi2、s4を時刻Ts3を基準とする半減期補正をするための補正係数をDCSi4とすると、投与比D_ratioは式(8)で求まる。
【数16】

ここで、DCSi2,DCSi4は、それぞれ以下の通りである。
【数17】

【数18】

ここで、Tは、本実施形態で投与するRIの半減期(時間)である。
【0068】
収集時間比算出部15は、収集時間比A_ratioを、1日法と同様に算出する。
【0069】
次に、例えば、1日目画像(第1回画像)が安静画像であり、2日目画像(第2回画像)が負荷画像であるときは、増加率算出部18は、それぞれの対応するアレイデータごとに、それぞれに対応する部位の増加率F[x,y]を算出する。ここで、1日目画像の撮影開始時刻をTSP1、2日目画像の撮影開始時刻をTSP2とし、1日目画像の半減期補正係数をDCSP1、2日目画像の半減期補正係数をDCSP2とする。さらに、安静画像Rのアレイデータの値をR[x,y]、負荷画像Sのアレイデータの値をS[x,y]すると、増加率F[x,y]は式(9)で表される。
【数19】

ここで、DCSP1,DCSP2は、それぞれ以下の通りである。
【数20】

【数21】

また、これとは反対に、1日目画像が負荷画像であり、2日目画像が安静画像であるときは、増加率算出部18が式(10)に従って増加率F[x,y]を算出する。
【数22】

2日法の場合、1日法の場合と異なり、安静画像及び負荷画像は、いずれも他方の画像の影響を受けないので、1日法の場合のように正味の安静画像ないしは負荷画像を算出する必要がない。
【0070】
本実施形態によれば、冠動脈血流予備能を非観血的に診断でき、冠動脈疾患の精緻な診断、予後の推定、さらには治療効果の判定が可能となる。その結果、冠動脈疾患患者に多大な貢献ができる。
【0071】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】心臓核医学検査法(1日法)による検査の手順を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像解析装置の構成図である。
【図3】アレイデータの生成手順を示すフローチャートである。
【図4】心臓の断層画像を模式的に示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る画像解析装置のインタフェース画面の一例である。
【図6】本発明の一実施形態に係る画像解析装置のインタフェース画面の一例である。
【図7】心臓核医学検査法(2日法)による検査の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 画像解析装置
11 第1回撮影画像記憶部
12 第2回撮影画像記憶部
13 シリンジ測定データ記憶部
14 投与量推定部
15 収集時間比算出部
17 アレイデータ生成部
18 増加率算出部
19 表示処理部
21 入力装置
22 表示装置
100、200 インタフェース画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RI(Radio Isotope)を複数回に分けて投与する心臓核医学検査法において、RI投与後の同一被験者の心臓から放出される放射能に基づく画像を解析する画像解析装置であって、
第1回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第1回撮影画像群と、第2回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第2回撮影画像群とを記憶する記憶手段と、
第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定する推定手段と、
前記第1回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第1回撮影画像群における心臓領域を指定する手段と、
前記第2回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第2回撮影画像群における心臓領域を指定する手段と、
指定された前記第1回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第1回撮影アレイデータを生成する手段と、
指定された前記第2回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第2回撮影アレイデータを生成する手段と、
推定された前記第1回及び第2回のRI投与量に基づく補正を行い、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比する手段と、
前記対比による対比結果をブルズアイ表示するための表示処理手段と、を備える画像解析装置。
【請求項2】
前記第1回撮影画像群及び第2回撮影画像群の一方が安静時に撮影した安静画像群であり、他方が負荷をかけたときに撮影した負荷画像群であり、
前記対比手段は、前記安静画像群から生成されたアレイデータに対する前記負荷画像群から生成されたアレイデータの変化率を算出し、
前記表示処理手段は、前記対比手段によって算出された変化率をブルズアイ表示することを特徴とする請求項1記載の画像解析装置。
【請求項3】
第1回撮影及び第2回撮影を同日に行う場合、
前記RI投与量の推定手段は、第1回RI投与前、第1回RI投与後第2回RI投与前、第2回RI投与後のそれぞれにおいて、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能に基づく画像を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
第1回撮影及び第2回撮影を同日に行う場合、
前記RI投与量の推定手段は、第1回RI投与前、第1回RI投与後第2回RI投与前、第2回RI投与後のそれぞれにおいて、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能をキュリメータで測定した測定値を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像解析装置。
【請求項5】
第1日目に前記第1回RI投与及び第1回撮影を行い、第2日目に第2回RI投与及び第2回撮影を行う場合、
前記RI投与量の推定手段は、第1日目の第1回RI投与前及び第1回撮影後と、第2日目の第2回RI投与前及び第2回RI投与後において、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能に基づく画像を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像解析装置。
【請求項6】
第1日目に前記第1回RI投与及び第1回撮影を行い、第2日目に第2回RI投与及び第2回撮影を行う場合、
前記RI投与量の推定手段は、第1日目の第1回RI投与前及び第1回撮影後と、第2日目の第2回RI投与前及び第2回RI投与後において、前記RI投与に使用した装置から放出される放射能をキュリメータで測定した測定値を用いて、前記第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像解析装置。
【請求項7】
前記対比手段は、第1回撮影に要した時間と第2回撮影に要した時間とに基づいて、さらに補正を行って、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像解析装置。
【請求項8】
前記第1回撮影画像群及び第2回撮影画像群は、いずれも、同一被験者の心臓を撮影した3次元SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像解析装置。
【請求項9】
RI(Radio Isotope)を複数回に分けて投与する心臓核医学検査法において、RI投与後の同一被験者の心臓から放出される放射能に基づく画像を解析する方法であって、
第1回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第1回撮影画像群と、第2回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第2回撮影画像群とを記憶手段に記憶するステップと、
第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定し、
前記第1回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第1回撮影画像群における心臓領域を指定するステップと、
前記第2回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第2回撮影画像群における心臓領域を指定するステップと、
指定された前記第1回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第1回撮影アレイデータを生成するステップと、
指定された前記第2回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第2回撮影アレイデータを生成するステップと、
推定された前記第1回及び第2回のRI投与量に基づく補正を行い、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比するステップと、
前記対比による対比結果をブルズアイ表示するステップと、を行う画像解析方法。
【請求項10】
RI(Radio Isotope)を複数回に分けて投与する心臓核医学検査法において、RI投与後の同一被験者の心臓から放出される放射能に基づく画像を解析するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
第1回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第1回撮影画像群と、第2回RI投与後に、心臓を短軸方向に断層撮影した複数の短軸画像及び長軸方向に断層撮影した複数の長軸画像を含む第2回撮影画像群とを記憶手段に記憶するステップと、
第1回のRI投与量及び第2回のRI投与量をそれぞれ推定し、
前記第1回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第1回撮影画像群における心臓領域を指定するステップと、
前記第2回撮影画像群に含まれる複数の画像に基づいて、第2回撮影画像群における心臓領域を指定するステップと、
指定された前記第1回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第1回撮影アレイデータを生成するステップと、
指定された前記第2回撮影画像群の心臓領域の画像データから、ブルズアイ表示のための第2回撮影アレイデータを生成するステップと、
推定された前記第1回及び第2回のRI投与量に基づく補正を行い、第1回撮影アレイデータと第2回撮影アレイデータとを対比するステップと、
前記対比による対比結果をブルズアイ表示するステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−98131(P2009−98131A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241468(P2008−241468)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】