説明

心臓血管疾患、関節炎、皮膚ガン、糖尿病、月経前症候群および経皮送達の予防および/または治療のためのオキアミおよび/または海洋生物の抽出物

【課題】心臓血管疾患、慢性関節リウマチ、皮膚ガン、糖尿病、月経前症候群および経皮送達増強の予防および/または治療する方法を提供する。
【解決手段】療治効果的な量のオキアミ油および/または海洋生物油を患者に投与することを含む。また、これら疾患の予防および/または治療のための組成物であり、抽出油は、例えば、南極海(ナンキョクオキアミ(euphasia superba))、太平洋(ツノナシオキアミ(euphasia pacifica))、大西洋、インド洋(特に、モーリシャス島および/またはマダガスカルのレユニオン島の沿岸領域)、カナダ西海岸、日本沿岸、セントローレンス湾およびファンディ湾など、世界中のどこにでも海洋環境にも生息するオキアミおよび/または海洋生物に由来する遊離脂肪酸脂質画分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの疾患を予防および/または治療することができる、オキアミおよび/または海洋生物に由来する多用途な療治用の抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
オキアミは、特に南極水域において密集した群で群がる小さいエビ様甲殻類(しかしながらエビとは異なる)に対する一般名である。オキアミは、重要なタンパク質源として、魚類、ある種の鳥類、そして特にヒゲクジラには最も重要な食物源の1つである。オキアミはまた、その健康上の利点がよく知られているω-3脂肪酸の良好な供給源でもある。
【0003】
オキアミおよび/または海洋生物の酵素を、感染症、炎症、ガン、HIV/AIDS、痛み、ポリプ、いぼ、痔、プラーク、しわ、薄毛、アレルギー性のかゆみ、接着不全、眼病、座瘡、嚢胞性線維症、および免疫障害(自己免疫疾患およびガンを含む)などのヒトおよび動物における非常に様々な疾患の治療のための使用が、この分野では知られている。
【0004】
オキアミ油および/または海洋生物油は、自己免疫性マウス狼瘡および他の自己免疫疾患の治療に使用できること、また心臓血管疾患の治療に使用できることが、この分野では知られている。
【0005】
しかし、これらの治療に使用されるオキアミ油および/または海洋生物油は、オキアミおよび/または海洋生物自身が持つ数ある有効成分の中のほんのひとつにしか過ぎないω-3脂肪酸を有効成分として含有しているだけである。そのため、これらの疾患に対する治療薬としてのオキアミ油および/または海洋生物油の潜在能力は弱められている。
【0006】
天然資源を由来とする産生物を使用した治療に対する要望が大きくなっている。それゆえ、疾患の予防および/または治療および/または疾病管理に対してより効果の高いオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を提供することが非常に望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明により、いくつかの疾患を予防および/または療治および/または治療する方法で、療治効果的な量のオキアミ油および/または海洋生物油を患者に投与することを含む方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、オキアミ油および/または海洋生物油は、以下の工程:
a)オキアミおよび/または海洋生物の材料をケトン溶媒(好ましくは、アセトン)に入れて、前記海洋動物材料および/または水生動物材料からの可溶性脂質画分を抽出し;
b)これを液体内容物と固体内容物に分離し;
c)分離した液体内容物に存在する溶媒を蒸発させることによって液体内容物から第1の脂質富含有画分を回収し;
d)前記固体内容物を、アルコール(好ましくは、エタノール、イソプロパノールまたはt-ブタノール)および酢酸エステル(好ましくは、酢酸エチル)からなる溶媒群から選択される有機溶媒に入れて、前記海洋動物材料および/または水生動物材料からの残留可溶性脂質画分を抽出し;
e)これを液体内容物と固体内容物に分離し;
f) 分離した液体内容物から溶媒を蒸発させることによって第2の脂質富含有画分を回収し;および
g)固体内容物を回収する工程
からなるプロセスから得られる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、オキアミ油および/または海洋生物油は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサンエン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、α−トコフェロール、全トランスレチノール、アスタキサンチンおよびフラボノイドを含む。
【0010】
本発明の別の実施形態において、オキアミ油および/または海洋生物油は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサンエン酸、リノレイン酸、α−リノレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ネルボン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロール、トリグリセリド、モノグリセリド、α−トコフェロール、全トランスレチノール、アスタキサンチン、カンタキサンチン、β−カロテン、フラボノイド、亜鉛、セレン、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムを含む。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態において、オキアミ油および/または海洋生物油は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサンエン酸、リノレイン酸、α−リノレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、コレステロール、トリグリセリド、モノグリセリド、α−トコフェロール、全トランスレチノール、アスタキサンチン、カンタキサンチン、β−カロテン、亜鉛およびセレンを含む。
【0012】
本発明の方法によって治療および/または予防され得る疾患には、心臓血管疾患、関節炎、皮膚ガン、糖尿病、月経前症候群および経皮輸送増強がある。
【0013】
本発明により、前記に記載された疾患を治療および/または予防および/または療治するための組成物で、療治効果的な量のオキアミ油および/または海洋生物油を薬学的に受容可能なキャリアとともに含む組成物もまた提供される。
【0014】
本発明により、前記に記載された疾患を治療および/または予防および/または療治するための、オキアミ油および/または海洋生物油の使用がさらに提供される。
【0015】
本発明により、前記に記載された疾患を治療および/または予防および/または療治するための医薬品を製造するための、オキアミ油および/または海洋生物油の使用もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明により、いくつかの疾患を防止および/または治療および/または療治するための、オキアミおよび/または海洋生物の抽出物が提供される。
【0017】
酵素を含まない多用途な療治用の抽出油は、例えば、南極海(ナンキョクオキアミ(euphasia superba))、太平洋(ツノナシオキアミ(euphasia pacifica))、大西洋、インド洋(特に、モーリシャス島および/またはマダガスカルのレユニオン島の沿岸領域)、カナダ西海岸、日本沿岸、セントローレンス湾およびファンディ湾など、世界中のどこにでも海洋環境にも生息するオキアミおよび/または海洋生物に由来する。この抽出油は遊離脂肪酸脂質画分である。
【0018】
抽出プロセスは下記のように記載することができる:
(a)海洋性および/または水生のオキアミおよび/または海洋生物をケトン溶媒(好ましくは、アセトン)に入れて、オキアミおよび/または海洋生物からの油脂を抽出する;
(b)液相および固相を分離すること;
(c)液相に存在する溶媒を蒸発させることによって、工程(b)で得られた液相から脂質富含有画分を回収する;
(d)固相を有機溶媒に入れる。その際、有機溶媒としてはアルコール(好ましくは、エタノール、イソプロパノールまたはt-ブタノール)または酢酸エステル(好ましくは、酢酸エチル)が使用できる。なお、これは、残留する可溶性脂質画分を固相から抽出するために行われる。;
(e)液相および固相を分離すること;および(f)液相に存在する溶媒を蒸発させることによって、工程(e)で得られた液相から脂質富含有画分を回収すること。
【0019】
酵素を含まないオキアミおよび/または海洋生物の抽出油の有効成分は下記の通りである:
〔脂質〕
i)ω-3:
i.エイコサペンタエン酸:>8g/100g
ii.ドコサヘキサンエン酸:>2g/100g
iii.リノレイン酸:>0.10g/100g
iv. α−リノレイン酸:>0.3g/100g
本発明においてω-3は30g/100gよりも多いことが好ましい実施形態である。
ii)ω-6:
i.リノール酸:>0.9g/100g
ii.アラキドン酸:<0.45g/100g、好ましくは<0.6g/100g
iii)ω-9:i.オレイン酸:>5g/100g
iv)パルミチン酸:>10g/100g
v)パルミトレイン酸:0.08g/100g
vi)ステアリン酸:>0.5g/100g
〔リン脂質〕
ホスファチジルコリン:>4.5g/100g
ホスファチジルイノシトール:>107mg/100g
ホスファチジルセリン:>75mg/100g
ホスファチジルエタノールアミン:>0.5g/100g
スフィンゴミエリン:>107mg/100g
〔中性脂質〕
コレステロール:<3g/100g
トリグリセリド:<55g/100g
モノグリセリド:>0.5g/100g
本発明の別の実施形態において、オキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の中性脂質は以下を含む:
ジグリセリド:>0.5g/100g
〔抗酸化物質〕
α−トコフェロール(ビタミンE):>1.0IU/100g
全トランスレチノール(ビタミンA):>1500IU/100g
β-カロテン:>3000μg/100ml
〔色素〕
アスタキサンチン:>20mg/100g
カンタキサンチン:>2mg/100g
〔金属〕
亜鉛:>0.1mg/100g
セレン:>0.1mg/100g
本発明の別の実施形態において、オキアミ抽出物および/または海洋生物の抽出物にはまた、下記が含まれる:
フラボノイド:>0.5mg/100g
ナトリウム:<500mg/100g
カルシウム:>0.1mg/100g
カリウム:>50mg/100g
アルミニウム:<8.5mg/100g
タンパク質:>4g/100g
水分および揮発性成分:<0.8%。
【0020】
オキアミ油抽出物および/または海洋生物抽出油の特性、抽出物が、抽出プロセスに由来する溶媒残渣を25ppm未満で含有するものした。
該抽出油は下記の安定度指数を有している:
過酸化物価:<0.1(mEq/kg)
油安定度指数: <0.1(97.8℃で50時間後の数値)
けん化指数:70〜180
ヨウ素価:60〜130%
本発明をよりわかりやすく説明するために、以下に本発明の実施例を示して本発明に詳細な説明するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
心臓血管疾患の防止および/または治療 オキアミ抽出油および/または海洋生物抽出油は、コレステロールを生体内で低下させることが示されている。この抽出油はまた、血小板の接着およびプラークの形成を阻害し、患者における血管内皮炎症を軽減させる。この抽出油は高血圧を予防できる。この抽出油は低密度リポタンパク質の酸化を妨げる。この抽出油は、アポB-100の増大した細胞内分解によってVLDLの分泌に対する阻害作用を有し得る。この抽出油はまた、CIIIアポリポタンパク質BおよびCIII非アポリポタンパク質Bリポタンパク質を減少させ、かつアンチトロンビンIIIレベルを増大させる作用を示すことから、心筋梗塞後症候群を予防できる。
オキアミ抽出油および/または海洋生物抽出油は、冠状動脈疾患、高脂血症、高血圧、虚血性疾患(すなわち狭心症、心筋梗塞、脳虚血、虚血の医学的や分析学的な証拠を伴わない発作、不整脈)に関連するヒトでの心臓血管疾患に対する予防的使用に好適である。
【0022】
動脈硬化性冠状動脈疾患および高脂血症の経過に対するオキアミ油および/または海洋生物油の効果を評価するために、高脂血症が知られている患者で試験を行った(前向き臨床試験、統計学的有意性p<0.05)。
【0023】
13名の患者グループにオキアミ油および/または海洋生物油の高濃度カプセル剤を投与した。魚油と、オキアミ油および/または海洋生物油とはともに、等しい量のω-3脂肪酸を含有していた。推奨される投薬量は、800mgの油をそれぞれが含有するカプセルで1日あたり1錠〜6錠である。この試験では、それぞれの患者に1日あたり6錠のカプセルを投与した。
【0024】
該患者より、投薬前および2ヶ月の投薬後に、LDL、HDL、トリグリセリド、バイタルサイン(血圧や心拍数)、CBC、SGOT/SGPT、γ−GT、ALP、尿素、クレアチン、グルコース、K+、Na+、Ca2+および総間接的ビリルビンコレステロールのデータを採取した。
【0025】
表1には、前記の試験結果が示されている:
【0026】
【表1】

以上より、1g〜4.8gのオキアミ抽出物を毎日の摂取することにより、被験患者に対して15%の範囲でコレステロールが低下し、15%の範囲でトリグリセリドが低下し、8%の範囲でHDLが増大し、13%の範囲でLDLが低下し、またコレステロール/HDL比が14%低下するという効果が認められた。
【0027】
このことは、オキアミ抽出物の摂取が、アテローム性動脈硬化の主要な原因因子であることが知られている高脂血症に苦しんでいる患者に対して優れた効果を有することを示している。
【実施例2】
【0028】
関節炎の治療
オキアミ油および/または海洋生物油は、ヒト患者におけるインターロイキン-8およびインターロイキン-1の産生を低下させることで、痛みを発する関節の数および日々使用する鎮痛剤量を少なくするという臨床的な改善効果をもたらすことより、成人の関節炎、スティル病、多関節性または少数関節性の若年性関節リウマチ、慢性関節リウマチ、変形性関節症に伴う関節炎の症状を緩和する。なお、出血傾向のある患者または重度の精神病患者はこの調査では除外した。
【0029】
クラスI、IIまたはIIIの進行である変形性関節症と診断され治療を受けており、試験前少なくとも3ヶ月間は非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)および/または鎮痛剤の投与を受けている患者に関して、変形性関節症の臨床的経過に対するオキアミ油および/または海洋生物油の投与効果を評価するために、試験を行った(前向き臨床試験、統計学的有意性p<0.05)。
【0030】
13名の患者グループに、オキアミ油および/または海洋生物油の高濃度カプセルを、オキアミ油がカプセルあたり800mgであるカプセルの1日あたり6錠の割合で投与した。推奨される投薬量は、純度の高いオキアミ抽出物で1日あたり1グラム〜4.8グラムの範囲内である。被験患者には20%の脂肪(動物脂肪は10%未満)、40%のタンパク質、および40%の炭水化物からなる通常の健康食療法に従うことを依頼した。
【0031】
本試験において被験者の要件は、年齢が50歳〜65歳の間であること(性別は男女どちらでもよい)、試験6ヶ月前〜12ヶ月前に痛みとこりがあって原発性の変形性関節症の臨床的診断(軽度〜中程度)を受けた患者で、試験に先立ちX線撮影で病変が確認されていることである。あわせて、少なくとも試験前の3ヶ月間にわたって、アセトアミノフェン、抗炎症剤、もしくはオピオイド鎮痛剤の使用を必要とする変形性関節症(OA)のある程度の症状が認められていることも上記要件に含まれる。患者には、ウォッシュアウト目的のために試験開始前の1週間はあらゆる鎮痛薬の使用を止めるように依頼した。
【0032】
被験者より除外する基準は、重度の変形性関節症である場合、NSAIDs、アスピリン、もしくは他の抗炎症剤を継続的に使用し止めることが出来ない場合、無作為訪問で4週間以内に局所的鎮痛剤の使用したと認められる場合、過去3ヶ月以内に膝へのステロイド注射を行っている場合、3ヶ月以内に理学療法または筋肉調整を開始した場合、海産食物アレルギー、抗凝血剤またはサリチラートを使用している場合、1日あたりカクテル3杯を越えるアルコールを摂取している場合、痛みの評価に影響をきたすような医学的疾患や関節炎疾患を併発している場合、どちらかの膝が手術前(関節鏡検査を含む)である場合、公知の「二次性」変形性関節症の要因が認められる場合である。
【0033】
評価は、NSAIDsおよび/または鎮痛剤および/またはSAARDsの1日量、痛みを有する関節の数、腫れた関節の数、朝のこわばりの持続時間、目視によるアナログスケール(0〜100)でのWOMACスケール、ならびにSF36に基づいた。予備的な結果が2ヶ月後に得られた。日常活動のために要求されるNSAIDおよび/または鎮痛剤および/またはSAARDの数が開始時および開始後2ヶ月で記録されている。
【0034】
表2に示した結果より、関節炎の緩和に対するオキアミ抽出物の摂取の効果が明らかにとなった。
【0035】
【表2】

これは、13名の内の10名(76.9%)が痛みの著しい緩和および大きい関節(下部背骨、膝、肩)の柔軟性の著しい改善を報告したことを示している。
【実施例3】
【0036】
皮膚ガンの予防
オキアミ油および/または海洋生物油は、そのレチノールの抗ガン性作用、アスタキサンチンの抗ガン性作用、およびそのリン脂質の抗ガン性作用のために皮膚ガンの予防剤であることが示されている。
【0037】
UVBにより誘導される皮膚ガンに対するオキアミ油および/または海洋生物油の潜在的な光保護能力を評価するために、研究を、皮膚ガンに対するその感受性が証明されているので、ヌードマウス、好ましくは、C57BL6ヌード類遺伝子系マウスであるB6NU-T(ヘテロ接合体)に対して行った。
【0038】
被験マウスを下記のグループとした:魚油を投与するグループ(全48匹)、うち経口補給(po)による投与(16匹)、局所適用による投与(16匹)、poおよび局所適用による投与(16匹);オキアミ油および/または海洋生物油を投与するグループ(全48匹)、;poによる投与(16匹)、所適用による投与(16匹)、poおよび局所適用による投与(16匹)。皮膚ガンの防止に対するオキアミ油および/または海洋生物油の効力を明らかにするために、無作為化盲検対照方式で試験を行った(統計学的有意性p<0.05)。半数のマウスは100重量%のオキアミ油および/または海洋生物油を含有する油を経口的にまたは局所的にまたはそれらの両方の方法で投与し、残る半数についても魚油で同様に投与を行った。
【0039】
栄養摂取は、最初の1週間については無脂肪餌であり、その後の2週間〜20週間については、1日あたり1mlの油の量で下記に記載するグループに従って変更された。
【0040】
マウスは下記のように6群に分けられた:
グループA:魚油の補給(総カロリーの20%)を伴う無脂肪餌
グループB:無脂肪餌(100%のカロリー)+1日に2回の魚油の局所適用
グループC:魚油の補給(総カロリーの20%)を伴う無脂肪餌+1日に2回のダイズ油の局所適用
グループD:オキアミ油および/または海洋生物油の補給(総カロリーの20%)を伴う無脂肪餌グループE:無脂肪餌(100%のカロリー)+1日に2回のオキアミ油および/または海洋生物油の局所適用グループF:オキアミ油および/または海洋生物油の補給(総カロリーの20%)を伴う無脂肪餌+1日に2回のオキアミ油および/または海洋生物油の局所適用。
【0041】
マウスは、第2週〜第20週の期間中、蛍光試験ランプ(放射スペクトル:270〜400nm)を使用してUVB線に暴露した。該試験ランプをマウスから30cmの距離に配置し、1日あたり30分間UVBに暴露して試験を行った。試験開始20週間終了後、または悪性の腫瘍が生じた時点で、被験マウスをエーテルで麻酔し屠殺した。皮膚のガン発生の徴候を病理学者によって盲検的に調べられた。
【0042】
下記の表(表3〜表8)には、マウスの皮膚に紫外線照射試験を5週間の行った時のガンの発生について得られた結果が示されている。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

これらの結果より、オキアミ油の経口使用および局所的使用はともに、皮膚ガンを誘導するUVBの有害な作用から皮膚を保護する効果的があることが示された。
【実施例4】
【0049】
塗布療治薬における経皮輸送 オキアミ油および/または海洋生物油は、皮膚科学的な局所的に用いる塗布療治薬に対する基質として経皮輸送を増強する。オキアミ油および/または海洋生物油は、クリーム、軟膏、ゲル、ローションおよびオイルによって皮膚科学的処置において使用することができる。オキアミ油および/または海洋生物油はまた、麻酔剤、コルチコステロイド、抗炎症剤、抗生物質およびケトン分解機能に関連することなどの様々な治療適用において使用することができる。
【0050】
オキアミ油および/または海洋生物油を局所的治療のための基質として用いた場合の効力、またオキアミ油および/または海洋生物油を単独であるいは基質として用いた場合の経皮吸収速度を評価するために、C57BL6ヌード類遺伝子系マウスであるB6NU-T(ヘテロ接合体)に対する無作為化盲検対照方式で試験を行った。
【0051】
表5および表6に表される結果は、オキアミ油による局所的治療により、真皮を介したレチノールおよび他の抗酸化物質の吸収が促進され、これにより強力な光保護能力がもたらされ、その結果、UVBによって誘導される皮膚ガンからの100%保護されたのである。対照的に、魚油を全トランスレチノールとともに塗布した場合は、ガン発生率が68.8%であった。
【実施例5】
【0052】
皮膚に局所的に塗布する化粧品の経皮輸送を オキアミ油および/または海洋生物油は、クリーム、軟膏、ゲル、ローションまたはオイルによる皮膚の水和、しわ防止、角質溶解剤、剥皮および美顔用パックに関連する皮膚科学的な局所的化粧適用のための基質としての経皮送達を増強するために使用することができる。
【0053】
老化によるしわ、および顔面のしわにおけるオキアミ油および/または海洋生物油の効果を評価するために、顔の乾燥肌およびしわに悩む被験者に対する前向き臨床試験により研究を行った。これら被験者は、他の皮膚科学的もしくは非皮膚科学的な病気によって重度に限定された予後診断を受けた者ではなく、また出血傾向のある患者および重度の精神病患者はこの調査では除外した。顔の乾燥肌またはしわを有する13名の健康な白人女性がこの研究には含まれている。被験女性は、800mgのオキアミ油を含有するカプセルを、1日あたり6カプセル摂取することが依頼されている。推奨される1日投薬量は約1g〜4.8gのオキアミ抽出物である。
【0054】
表9には、前記に記載された方法に従って皮膚の水和について得られた結果が示されている。
【0055】
【表9】

2ヶ月にわたる試験的研究の結果では、13名の内の9名(69.2%)がヒト被験者における皮膚(顔、手および腕)の保湿効果の上昇、肌のきめと弾力性の著しい改善が見られた。
【0056】
さらに、これらの結果はまた、オキアミ抽出物がしわを取る方法として有用であることを示している。オキアミ油に含まれる全トランスレチノールのしわ取り剤としての仕組みは次のとおりである:
・再生作用および特有な抗炎症作用
・血液循環の改善
・細胞分裂および代謝回転の速度を増大させて表皮再生を活性化させること
・ケラチンの分化を促進させること
・コラーゲンを再生すること
・新陳代謝される皮膚の最表層の細胞について、処置を行わなかった日光による損傷細胞より正常に成熟できること
・皮膚を構造的に支持するタンパク質コラーゲンおよびエラスチンを分解する酵素の活性化を低減させること。
【0057】
患者の皮膚に施されたオキアミ抽出物を用いて得られた結果は、オキアミ抽出物が、水和を増大させること、および上記に記載される仕組みによるしわ取り効果を有していることを示している。
【実施例6】
【0058】
月経前症候群
表10には、女性における月経前症候群に関連する痛みおよび気分変化を軽減させるためのオキアミ油の使用から得られた結果が示される。オキアミ油の抽出物が、2ヶ月間にわたり7名の女性に投与した。被験女性には、800mgのオキアミ油を含有するカプセルを、1日あたり6カプセルを投与した。推奨される1日投薬量は約1g〜4.8gのオキアミ抽出物である。被験者はすべて、自身の普段の食習慣を続けること、また食事について何らかの制限を開始しないように指示された。重大な副作用は何ら報告されなかった。
【0059】
被験者の女性はすべて、顕著な情緒的および/または身体的な不快を月経の7日前〜10日前に訴えている人である。月経前症候群の評価は、既に確立している0(症状なし)〜10(耐えられない)で表される自己評価の視覚的アナログ尺度を用いて行い、これによって月経前の不快症状に対するオキアミ抽出物の効果を評価する予備的なデータとして使用した。
【0060】
2ヶ月間の投薬治療をおこなった本研究の被験女性の60%にあたるデータ分析を行った。大多数の女性(73.3%)は、月経前の情緒的苦悩および身体的苦悩の両方について、臨床的に著しい軽減が認められた(表10参照)。
【0061】
【表10】

【実施例7】
【0062】
糖尿病
ヒト患者8名に対し、800mgのオキアミ油を含有するカプセルを、1日あたり6カプセル、2ヶ月間に渡り投与した。推奨される1日投薬量は約1g〜4.8gのオキアミ抽出物である。表11には、2ヶ月後の患者について試験されたグルコースの変化が示されている。
【0063】
【表11】

血中グルコースの20%の低下が、オキアミ抽出物を摂取した患者について認められた。このことは、オキアミ抽出物の摂取が血中グルコース含有量を抑制し、従って、ヒト患者において糖尿病を抑制することを示している。
【0064】
本発明をその具体的な実施形態に結び付けて記載したが、さらなる改変が可能であり、付記される請求項の範囲に従うような、そして本明細書に記載した本質的特徴に当てはめることが可能であるような、そして本発明に関連する技術分野における公知のあるいは慣例的な方法の範囲内にあるような、本発明が開示する内容からの逸脱を含み、また本発明の原理に一般的に従うような本発明のあらゆる適応、利用もしくは改変を含むものとして、この出願は意図されるものであると理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における高血圧を予防するための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項2】
患者における血中グルコースレベルを制御するための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項3】
患者における関節炎を症状的に制御または治療するための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項4】
患者における皮膚癌を予防するための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項5】
患者における塗布治療薬の経皮輸送を増強するための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項6】
患者における月経前症候群の症状を低下させるための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項7】
患者における血小板接着およびプラーク形成を低下させるための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項8】
患者における炎症を低減させるための医薬品の製造におけるオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物の使用。
【請求項9】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物が少なくとも一つの海洋生物材料から得られたものである請求項1から8のいずれかの使用。
【請求項10】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物がエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リン脂質および抗酸化物質を含む請求項9の使用。
【請求項11】
前記のリン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項10の使用。
【請求項12】
前記の抗酸化物質が、α−トコフェロール、アスタキサンチンおよびフラボノイドからなる群より選択される少なくとも一つである請求項10の使用。
【請求項13】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物が、リノール酸、α−リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、コレステロール、トリグリセリド、モノグリセリド、全トランスレチノール、カンタキサンチン、β−カロテン、亜鉛、セレン、ネルボン酸、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つの化合物をさらに含む請求項10の使用。
【請求項14】
前記の関節炎が、慢性関節リウマチおよび変形性関節症からなる群より選択される請求項3の使用。
【請求項15】
前記の炎症が、血管内皮炎症である請求項8の使用。
【請求項16】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、高血圧を予防するための医薬品。
【請求項17】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、血中グルコースレベルを制御するための医薬品。
【請求項18】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、関節炎を症状的に制御または治療するための医薬品。
【請求項19】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、皮膚癌を予防するための医薬品。
【請求項20】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、塗布治療薬の経皮輸送を増強するための医薬品。
【請求項21】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、月経前症候群の症状を低下させるための医薬品。
【請求項22】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、血小板接着およびプラーク形成を低下させるための医薬品。
【請求項23】
有効量のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物を含有する、炎症を低減させるための医薬品。
【請求項24】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物が少なくとも一つの海洋生物材料から得られたものである請求項16から23のいずれかの医薬品。
【請求項25】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物がエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リン脂質および抗酸化物質を含む請求項24の医薬品。
【請求項26】
前記のリン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項25の医薬品。
【請求項27】
前記の抗酸化物質が、α−トコフェロール、アスタキサンチンおよびフラボノイドからなる群より選択される少なくとも一つである請求項25の医薬品。
【請求項28】
前記のオキアミ抽出物および/または海洋生物抽出物が、リノール酸、α−リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、コレステロール、トリグリセリド、モノグリセリド、全トランスレチノール、カンタキサンチン、β−カロテン、亜鉛、セレン、ネルボン酸、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも一つの化合物をさらに含む請求項25の医薬品。
【請求項29】
前記の関節炎が、慢性関節リウマチおよび変形性関節症からなる群より選択される請求項18の医薬品。
【請求項30】
前記の炎症が、血管内皮炎症である請求項23の医薬品。

【公開番号】特開2010−90140(P2010−90140A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276478(P2009−276478)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2003−504980(P2003−504980)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(503459752)ネプチューン テクノロジーズ アンド バイオリソーシイズ インク (3)
【Fターム(参考)】