説明

心臓血管疾患治療用のアンギオテンシン−II受容体遮断薬としてのロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、エプロサルタンおよびオルメサルタンのニトロオキシ誘導体

式(I):
R-(Y-ONO2)s (I)
のアンギオテンシンII受容体遮断剤ニトロ誘導体は、より広い薬理活性および高められた忍容性を有する。それらは、心臓血管性、腎性および慢性の肝臓疾患ならびに炎症性プロセスの治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギオテンシンII受容体遮断剤(ARB)誘導体に関する。より具体的には、本発明はARBニトロ誘導体、それらを含む医薬組成物および心臓血管性、腎性および慢性の肝臓疾患、炎症性プロセスならびに代謝性症候群の治療のための、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンギオテンシンII受容体遮断剤として、ロサルタン、EXP3174、カンデサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、エプロサルタン、イルベサルタンおよびオルメサルタンを主成分として含むクラスの化合物が意図されている。
ARBは高血圧の治療用としてのみ承認されており、その抗高血圧作用は、主にAT1受容体の選択的遮断によりアンギオテンシンIIの昇圧効果を減少させることによる。アンギオテンシンIIは、アルドステロンの合成および分泌を促進し、かつ強力な直接的血管収縮効果により血圧を上げる。
現在、アンギオテンシンII受容体遮断剤は、例えば低血圧症、高カリウム血症、筋肉痛、呼吸器疾患、腎不全、背痛、胃腸管障害、倦怠感および好中球減少症のような副作用を有することが報告されている(Martindale、33版、921頁)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、それらの親化合物に関係のある副作用を除去するかまたは少なくとも減少させることができるだけでなく、改善された薬理活性をも有するARBの新規誘導体を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
アンギオテンシンII受容体遮断剤ニトロ誘導体が、より広い薬理活性および高められた忍容性の両方の点で、本来の化合物に比べて、有意に改善された総合的なプロファイルを有することが見出されたことは、非常に驚くべきことであった。
特に、本発明のアンギオテンシンII受容体遮断剤ニトロ誘導体は、強力な抗炎症、抗血栓および抗血小板活性を示し、その上、心不全、心筋梗塞、虚血性発作、アテローム性動脈硬化、高眼圧、肺高血圧、高血圧、糖尿病性腎障害、末梢血管疾患、左心室不全および肥大、肝線維症、門脈圧亢進および代謝性症候群の治療または予防に使用することができることが認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
それゆえ、本発明の課題は、一般式(I):
R-(Y-ONO2)s (I)
[式中、
sは1または2の整数であり;
Rは、以下の式(II)または(III):
【化1】

(式中、
R0
【化2】

またはYに結合することができる基である-N0であって、次の意味:
-COO-、-O-、-CONH-、-OCO-、-OCOO- もしくは
【化3】

(式中、R'およびR''は同一または異なって、Hまたは直鎖もしくは分枝C1-C4アルキルである)
の1つを有し;
【0006】
R1
【化4】

(式中、mは0または1の整数であり、N0は上記で定義されたとおりである)
からなる群から選択される);
【0007】
【化5】

(式中、N1はN0と同じ意味を有するか、または-COOHである;但し、基N1の少なくとも1つは-COO-または-CONH-である、すなわちそれはYに結合することができる基である)
のアンギオテンシンII受容体遮断薬残基から選択され;
【0008】
Yは以下の意味を有する2価の基である:
a)
− ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2またはT0(ここで、T0は-OC(O)(C1-C10アルキル)-ONO2または-O(C1-C10アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換されていてもよい、直鎖または分枝C1-C20、好ましくはC1-C10アルキレン;
− シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン、該環は側鎖T(ここで、Tは1〜10の炭素原子を有する、直鎖または分枝アルキル、好ましくはCH3である)で任意に置換されていてもよい;
【0009】
【化6】

(式中、nは0〜20の整数であり、n1は1〜20の整数である);
【0010】
【化7】

(式中、
n1は上記で定義されたとおりであり、n2は0〜2の整数であり;
X1 = -OCO-または-COO-、そしてR2はHまたはCH3である);
【0011】
【化8】

(式中、
n1、n2、R2およびX1は上記で定義されたとおりであり;
Y1は-CH2-CH2-または-CH=CH-(CH2)n2-である);
【0012】
【化9】

(式中、
n1およびR2は上記で定義されたとおりであり、R3はHまたは-COCH3である);
但し、Yがb)〜f)で挙げた2価の基から選択されるときは、-ONO2基は-(CH2)n1基に結合している;
【0013】
【化10】

(式中、X2は-O-または-S-であり、n3は1〜6、好ましくは1〜4の整数であり、R2は上記で定義されたとおりである);
【0014】
【化11】

(式中、
n4は0〜10の整数であり;
n5は1〜10の整数であり;
R4、R5、R6、R7は同一または異なって、Hまたは直鎖もしくは分枝C1-C4アルキルであり、好ましくはR4、R5、R6、R7はHであり;
-ONO2基は、
【化12】

(式中、n5は上記で定義されたとおりである)
に結合しており;
【0015】
Y2は、窒素、酸素、硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしく芳香族の、5または6員の複素環であり、次の:
【化13】

から選択される)]
のアンギオテンシンII受容体遮断剤ニトロ誘導体およびその医薬的に許容される塩もしく立体異性体である。
【0016】
ここで使用される「C1-C20アルキレン」の語は、分枝または直鎖のC1-C20、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、ペンチレン、n-ヘキシレンなどのような1〜10の炭素原子を有する炭化水素をいう。
ここで使用される「C1-C10アルキル」の語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルなどを含む、1〜10の炭素原子を含む、分枝または直鎖のアルキル基をいう。
【0017】
ここで使用される「シクロアルキレン」の語は、直鎖または分枝(C1-C10)アルキル、好ましくはCH3のような側鎖で任意に置換されていてもよい、非限定的にシクロペンチレン、シクロへキシレンを含む、5〜7の炭素原子を有する環をいう。
【0018】
ここで使用される「複素環式」の語は、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジン、モルホリン、イミダゾールなどのような、窒素、酸素、硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしくは芳香族の、5または6員の環をいう。
【0019】
本発明のもう1つの観点は、ACE阻害剤、HMGCoA還元酵素阻害剤、ベータ受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿剤、アスピリンのような抗血栓剤、ニトロソ化ACE阻害剤、ニトロソ化HMGCoA還元酵素阻害剤、ニトロソ化ベータ受容体遮断剤、ニトロソ化アスピリンおよびニトロソ化利尿剤からなる群から選択される心臓血管疾患を治療するために使用される、少なくとも1つの化合物と組み合わせた式(I)の化合物の使用を提供する。
【0020】
適当なACE阻害剤、HMGCoA還元酵素阻害剤、ベータ受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、抗血栓剤および利尿剤は、The Merck Index(13版)のような文献に記載されている。
適当なニトロソ化化合物は、WO 98/21193、WO 97/16405およびWO 98/09948に開示されている。
上記の化合物の投与は、同時にまたは連続的に行なうことができる。
【0021】
本発明は、本発明の化合物および/または組成物の1以上、ならびに上記の心臓血管疾患を治療するために使用される化合物の1以上を充填した1以上の容器を含む医薬キットも提供する。
上記のように、本発明は、式(I)の化合物の医薬的に許容される塩およびそれらの立体異性体も含む。
【0022】
医薬的に許容される塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムの水酸化物のような無機塩基との塩であるか、あるいはリジン、アルギニン、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、ピペリジンおよびその他の許容される有機アミンのような有機塩基との塩である。
本発明の化合物が、分子中に塩形成性の1つの窒素原子を含むときは、アセトニトリル、テトラヒドロフランのような有機溶媒中、対応する有機または無機酸との反応によって、その対応する塩に変換することができる。
有機酸の例は、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸である。無機酸の例は、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸である。硝酸との塩が好ましい。
【0023】
1以上の不斉炭素原子を有する本発明の化合物は、光学的に純粋なエナンチオマー、純粋なジアステレオマー、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物、エナンチオマーラセミ混合物、ラセミ体またはラセミ体混合物として存在することができる。式(I)の化合物の可能な異性体、立体異性体およびそれらの混合物も全て本発明の課題の範囲内である。
【0024】
好ましい化合物は:
sおよびRが上記で定義されたとおりであり、
Yが次の意味:
a)
− T0(ここで、T0は上記で定義されたとおりである)で任意に置換されていていてもよい直鎖または分枝C1-C10アルキレン;
【化14】

(式中、nは0または1の整数であり、n1は整数1である。但し、-ONO2基は-(CH2)n1基に結合している);
【0025】
【化15】

(式中、X2は-O-または-S-であり、n3は整数1であり、R2はHである)
を有する2価の基である、
式(I)の化合物である。
【0026】
以下のものが、本発明の好ましい化合物である。
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【0027】
上記のように、本発明の課題は、医薬の分野で通常用いられる無毒性の佐剤および/または担体と一緒に、式(I)の本発明の化合物を少なくとも1つ含む医薬組成物でもある。
投与されるべき活性成分の1日用量は、単回量であり得るか、またはその日を通して投与することができるいくつかのより少ない量に分けられた有効量であり得る。通常、全1日用量は好ましくは50〜500 mgの量であってよい。本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物によって、上記の疾病を治療するための用法および投与回数は、例えば、患者の年齢、体重、性別および病状を含む種々の因子、ならびに疾病の重篤度、投与経路、薬理学的考慮および他の薬剤との併用療法によって選択されるであろう。ある場合には、上記の範囲以下もしくはそれ以上および/またはより多い回数の用量レベルが適当であり、必然的にこれは医師により判断され、その病状に依存するであろう。
【0028】
本発明の化合物は、慣用の無毒性の医薬的に許容される担体、佐剤および賦形剤を含んでいてもよい所望の製剤の形態で、経口、非経口、直腸または局所的に、吸入または噴霧によって投与され得る。局所投与は、経皮パッチまたはイオン導入装置のような経皮投与の使用をも含み得る。
ここで使用される「非経口」の語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または点滴法を含む。
【0029】
例えば無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液のような製剤は、当分野で公知の適当な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化され得る。無菌の注射可能な製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤の、溶液または懸濁液でもあり得る。許容される媒体および溶剤には、水、リンゲル溶液および等張食塩水がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶剤または懸濁化媒体として慣用的に使用される。この目的のために、合成のモノまたはジグリセライドを含むあらゆる無刺激の不揮発性油が使用され得るし、さらにオレイン酸のような脂肪酸が、注射可能な製剤の製造において使用され得る。
【0030】
医薬の直腸投与用坐剤は、活性成分をカカオバターおよびポリエチレングリコールのような適当な無刺激性の賦形剤と混合することにより製造することができる。
経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤およびゲル剤を含み得る。そのような固体剤形において、活性化合物は、ショ糖、乳糖またはデンプンのような不活性な希釈剤の少なくとも1つと混合され得る。そのような剤形は、慣例のように、不活性な希釈剤の他に追加物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤をも含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤において、その剤形は緩衝剤をも含み得る。さらに、錠剤および丸剤は腸溶コーティングにより製造することができる。
【0031】
経口投与用の液体剤形は、当分野で一般的に使用される水のような不活性希釈剤を含む、医薬的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含み得る。そのような組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤などのような佐剤をも含み得る。
【0032】
本発明の化合物は、次のようにして合成される。
A) Rが式(II)の残基であるとき、上記で定義されたような一般式(I):
R-(Y-ONO2)s (I)
の化合物または医薬的に許容される塩は、
i) 式(IV):
R2-(Y-Hal)s (IV)
[式中、s=1であり、
R2は式(IIA):
【化44】

(式中、R3は式(VA):
【化45】

(式中、A=HまたはWであり、ここでWはトリチル、tert-ブトキシカルボニル(BOC)およびエチルオキシカルボニルのようなテトラゾール保護基である)
の基であるか、または
R3は、Yに結合し得る基-COO-であり;
R1は上記で定義されたような基(IIa)〜(IIe)(ここで、N0はYに結合し得る基である)から選択される)
の残基であり;
Yは上記の定義のとおりであり;そして
Halはハロゲン原子、好ましくはCl、BrまたはIである]
【0033】
の化合物を、アセトニトリルまたはテトラヒドロフラン(THF)のような適当な有機溶媒中、窒素下、暗所で、20〜80℃の範囲の温度で、AgNO3と反応させるか;あるいは
AgNO3との反応は、アセトニトリルまたはTHFのような溶媒中、100〜180℃の範囲の温度で、短時間(1〜60分)、マイクロ波照射下に行なうことができ、そして
ii) テトラゾール保護基Wを、例えばT. W. Greene "Protective groups in organic synthesis", Harvard University Press, 1980に記載されていて当分野で周知のように、任意に酸加水分解し、そして
iii) 所望により、得られる一般式(I)の化合物をその医薬的に許容される塩に変換する
ことを含む方法によって得られる。
【0034】
− 式(IV)の化合物は、式(V):
【化46】

(式中、R5は、上記で定義されたような式(VA)の基であるか、または-COOHであり、
R4は、N0=-COOHまたは-OHであってR1と同じ意味を有する)
の化合物を
i.1) R5が基(VA)であり、R4=R1でR1が基(IIa)(ここで、m=1およびN0=-OH)であるときは、式(VI)または(VII):
Hal-Y-COAct (VI)
Hal-Y-OCOAct (VII)
(式中、HalおよびYは上記の定義のとおりであり、
ActはHalまたは
【化47】

のようなペプチド化学で使用されるカルボン酸活性化基である)
の化合物と反応させることにより得られる。
【0035】
一般的に、この反応は、無機または有機塩基の存在下、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性極性/無極性溶媒中、0〜65℃の範囲の温度で、またはH2O/Et2Oの2相系中、20〜40℃の範囲の温度で行なわれる。
ActがHalである式(VI)の化合物は、商業的に入手可能であるか、または式(VIII):
Hal-Y-COOH (VIII)
の対応する酸から、例えばトルエン、クロロホルム、DMF等のような不活性溶媒中、チオニルまたはオキサリルクロライド、PIIIまたはPVのハロゲン化物との反応のような周知の反応により得られる。対応する酸は商業的に入手可能な化合物である。ActがHalでない式(VI)の化合物は、式(VI)(ここで、ActはHalである)の対応する化合物から、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは適当な置換されたフェノールと、塩基の存在下、文献で公知のように反応させて得ることができる。
【0036】
ActがHalである式(VII)の化合物は、商業的に入手可能であるか、または式(IX):
Hal-Y-OH (IX)
の対応するアルコールから、有機塩基の存在下、トリホスゲンとの反応により得ることができる。
ActがHalでない式(VII)の化合物は、ActがHalである対応する化合物(VII)から、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは適当な置換されたフェノールと、塩基の存在下に、文献で公知のように反応させて得ることができる。
【0037】
あるいは、式(IV)の化合物は、i.1)で定義された式(V)の化合物を、上記で定義された、商業的に入手可能な式(VIII)の化合物と、DMAPの触媒量存在下にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、EDACのような縮合剤またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)のような活性化剤の存在下、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5〜50℃の範囲の温度で反応させて得ることができる。
【0038】
i.2) R5が基(VA)または-COOHであり、R4=R1でR1が基(IIa)〜(IId)(ここで、m=0およびN0=-COOH)から選択されるときは、上記で定義されたような式(IX)の化合物と、DMAPの触媒量存在下にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、EDACのような縮合剤またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)のような活性化剤の存在下、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5〜50℃の範囲の温度で反応させて得ることができる。
式(IX)の化合物は商業的に入手可能である。
【0039】
あるいは、文献で周知の方法により、基-COOHを活性化されたアシルクロライドまたはエステル化に適した別の基に変換し、無機または有機塩基の存在下、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性極性/無極性溶媒中、0〜65℃の範囲の温度で、またはH2O/Et2Oの2相系中、20〜40℃の範囲の温度でエステル化を行なう。
【0040】
A1) あるいは、Rが式(II)の残基であるとき、上記で定義された式(I)の化合物は、上記で定義された式(V)の化合物を、
i.1.1) R5が基(VA)であり、R4=R1で、R1が基(IIa)(ここで、m=1およびN0=-OH)であるとき、式(X):
O2NO-Y-COZ (X)
(式中、Yは前に定義されたとおりであり、ZはOHまたは既に定義されたActである)
の化合物と、例えばDMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5〜50℃の範囲の温度および/または有機もしくは無機塩基の存在下、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはEDACのような縮合剤の存在下、またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)で活性化するような最適な合成経路で、反応させることにより得ることができる。
式(X)の化合物は、-50℃〜0℃の範囲の温度で、硝酸と無水酢酸の反応により、対応するアルコールから得ることができるか、または既に記載したように、式(VI)または(VIII)の対応するハロゲン誘導体をAgNO3と反応させて得ることができる。
【0041】
i.2.1) R5が基(VA)または-COOHであり、R4=R1で、R1が基(IIa)〜(IId)(ここで、m=0およびN0=-COOH)から選択されるとき、式(XI):
O2NO-Y-OH (XI)
(式中、Yは上記で定義されたとおりである)
の化合物と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはEDACのような縮合剤またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)のような活性化剤の存在下、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で反応させる。
式(XI)の化合物は、アセトニトリルまたはTHFのような適当な有機溶媒中、窒素下、20〜80℃の範囲の温度で、式(IX)をAgNO3と反応させて得ることができる。
【0042】
あるいは、AgNO3との反応は、アセトニトリルまたはTHFのような溶媒中、100〜180℃の範囲の温度で、短時間(1〜60分)、マイクロ波照射下に行なうことができる。
あるいは、R5が基(VA)または-COOHであり、R4=R1で、R1が基(IIa)〜(IIe)(ここで、m=0およびN0=-COOH)から選択されるとき、式(XI.1):
O2NO-Y-Hal (XI.1)
(式中、YおよびHalは前に定義されたとおりである)
の化合物と、カルボキシ基を塩化することができる無機または有機の塩基の存在下に反応させる。
【0043】
B) Rが式(III)の残基であるとき、一般式(I)の化合物は、式(XII):
R6-(Y-Hal)s (XII)
(式中、s=2で、R6は残基(III)であり、かつN1は-COO-であり、YおよびHalは上記で定義されたとおりである)
の化合物を、既に記載したようにAgNO3と反応させることにより得ることができる。
式(XII)の化合物は、式(XIII):
【化48】

を、上記で定義された式(IX)の化合物と、既に記載したように、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはEDACのような縮合剤またはN,N'-カルボニルジイミダゾール(CDI)のような活性化剤の存在下、DMF、THF、クロロホルムのような溶媒中、-5℃〜50℃の範囲の温度で反応させて得ることができる。
【0044】
あるいは、文献で周知の方法により、基-COOHを、活性化されたアシルクロライドまたはエステル化に適した別の基に変換し、無機または有機塩基の存在下、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性極性/無極性溶媒中、0〜65℃の範囲の温度で、または2相系中でエステル化を行なう。
B1) あるいは、Rが式(III)の残基であるとき、上記で定義された一般式(I)の化合物は、上記で定義された式(XIII)の化合物を、式(XI)の化合物と、既に記載したように、縮合剤または活性化剤の存在下に反応させることにより得ることができる。
あるいは、基-COOHを、文献で周知の方法により、無機または有機塩基で塩に変換し、文献で公知のように、
O2NO-Y-Hal (XI.1)
と反応させる。
【0045】
C) s=1で、Rが式(II)[ここで、R0はテトラゾール基であり、R1は基(IIa)(ここで、m=1で、N0
【化49】

(式中、R'およびR''は上記で定義されたとおりである)
である)である]の残基であるとき、上記で定義された式(I)の化合物は、式(IVa):
R2-(CR'R''-Hal)s (IVa)
(式中、s=1で、R2およびHalは上記で定義されたとおりであり、R3は基(VA)であり、R1は基(IIa)(ここで、m=1で、N0は-OCOO-である)である)
の化合物を、上記で定義された式(X)の化合物と、文献で既知のように、有機または無機塩基の存在下、DMF、THF、アセトニトリルのような極性溶媒中、-5℃〜60℃の範囲の温度で、または2相系中で反応させることにより得ることができる。
【0046】
化合物(IVa)は、上記で定義された式(V)[ここで、R5は基(VA)であり、R4=R1で、R1は基(IIa)(ここで、m=1、N0=-OHである)である]の化合物を、式(VIIa):
Hal-CR'R''-OCOAct (VIIa)
(式中、Actは(VII)について上記で定義されたとおりの意味である)
の化合物と、化合物(IV)について既に記載された同じ方法により反応させることにより、そして上記で記載したように、テトラゾール保護基を任意に酸加水分解することにより得ることができる。
【0047】
D) s=1で、Rが式(II)[ここで、R0はテトラゾール基であり、R1は基(IIa)〜(IIc)(ここで、m=0で、N0
【化50】

(式中、R'およびR''は上記で定義されたとおりである)である)
から選択される]の残基であるとき、上記で定義された式(I)の化合物は、式(V)(ここで、R5は基(VA)であり、R4=R1で、R1は基(IIc)(ここで、N0=-COOHである)である)の化合物を、式(XIV):
Hal-CR'R''-OCOO-Y-ONO2 (XIV)
(ここで、Hal、Y、R'およびR''は上記で定義されたとおりである)
の化合物と、有機または無機塩基の存在下、文献で既知のように、DMF、THF、アセトニトリルのような極性溶媒中、-5℃〜60℃の範囲の温度で、または2相系中で、反応させることにより得ることができる。
【0048】
式(XIV)の化合物は、上記で定義された化合物(XI)を、化合物(VIIa)と反応させることにより得ることができる。
一般的に、この反応は、塩基の存在下、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性極性/無極性溶媒中、0〜65℃の範囲の温度で、または2相系H2O/Et2O中、20〜40℃で行なわれ、そして上記で記載したように、テトラゾール保護基を任意に酸加水分解して行なわれる。
【0049】
E) s=1でRが式(II)(ここで、R0はテトラゾール基であり、R1が基(IIa)〜(IIc)から選択される)の残基であるとき、上記で定義された式(I)の化合物は、式(XV)の化合物を、商業的に入手可能な式(XVI)と反応させて得ることもできる。
【化51】

(式中、R7は残基(IIa)〜(IIc)であり、R3は基(VA)であり、Halは既に定義されたとおりである)
一般的に、この反応は、塩基の存在下、DMF、THFまたはCH2Cl2のような非プロトン性極性/無極性溶媒中、-15〜+80℃の範囲の温度で、または2相系H2O/Et2O中、20〜40℃で行なわれ、最終的に上記で記載したように、テトラゾール保護基を酸加水分解して行なわれる。
【0050】
式(XV)の化合物は、式(XVII):
R8-(Y-Hal) (XVII)
[式中、R8は式(IIa.1)、(IIb.1)または(IIc.1):
【化52】

(式中、PGはBOCまたはトリチルのようなN-保護基である)
の残基である]
の化合物を、既に記載したようにAgNO3と反応させることにより、そしてN-保護基を任意に加水分解することにより得ることができる。
【0051】
上記で定義されたアルコールは、商業的に入手可能な式(IIa.2):
【化53】

(式中、mは0であり、N00は-CHOである)
の化合物から、公知の保護および還元反応により得られる。
化合物(XVII)(ここで、R8は、m=0でN0=-COO-である(IIa.1)であるか、またはN0=-COO-である(IIb.1)もしくは(IIc.1)である)は、既に記載したように、式(IX)の化合物との反応により、対応する酸から得ることができる。
上記で定義された(IIa.1)の対応する酸は、化合物(IIa.2)(ここで、mは0であり、N00は-CHOである)から、公知の保護および酸化反応により得られる。
【0052】
上記で定義された(IIb.1)および(IIc.1)の対応する酸は、商業的に入手可能な(IIb.2)および(IIc.2):
【化54】

(IIb.2) (IIc.2)
(式中、N0は-COOHである)
から、公知の保護反応により得られる。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、さらに説明するためのものである。
実施例1
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル (化合物(4)に相当)
トリフェニルメチルクロライド(4.68 g, 16.8 mmol)を、THF(150 ml)中のロサルタンカリウム塩(7.0 g; 15.2 mmol)の溶液に、分割して加えた。得られた混合物を室温で、24時間撹拌した。次いで、反応物をシリカゲルに吸着し、フラッシュクロマトグラフ(n-ヘキサン/酢酸エチル 6:4)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(6.7 g, 66%)を得た。
この化合物から、標題の化合物(4)は、2つの異なる合成方法を経て得られる。
【0054】
合成方法A
0℃に冷却した、CH2Cl2(20 ml)およびTHF(6 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(1.7 g, 2.6 mmol)、4-(ニトロオキシメチル)安息香酸(0.66 g, 3.38 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.049 g, 0.4 mmol)の溶液に、CH2Cl2(5 ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(0.722 g, 3.50 mmol)の溶液をゆっくり加え、反応物を室温で24時間撹拌した。次いで、生成したジシクロヘキシルウレアを濾別し、有機相を濃縮した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(1.2 g, 55%)を、白色の固体として得た。
【0055】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(1.2 g, 1.42 mmol)をCH2Cl2(10 ml)に溶解し、この溶液に、HClを20分間バブルした。次いで、混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2、次いでアセトン)で精製し、粗化合物を得、それをH2O/CH3CNに溶解し、凍結乾燥して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(0.304 g, 36 %)を白色の固体として得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 7.73-7.56 (7H,m); 7.24 (1H,d); 7.00(4H,m); 5.60(2H,s); 5.39(2H,s); 5.28(2H,s); 2.61(2H,t); 1.53(2H,m); 1.28(2H,m); 0.82(3H,t).
【0056】
合成方法B
0℃に冷却した、CH2Cl2(20 ml)およびTHF(6 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(1.7 g, 2.6 mmol)、4-(クロロメチル)安息香酸(0.571 g, 3.35 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.049 g, 0.4 mmol)の溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.644 g, 3.12 mmol)をゆっくり加え、反応物を室温で24時間撹拌した。次いで、生成したジシクロヘキシルウレアを濾別し、有機相を濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(クロロメチル)安息香酸エステル(1.56 g, 収率73%)を得た。
【0057】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(クロロメチル)安息香酸エステル(0.807 g, 0.98 mmol)をCH3CN(15 ml)に溶解し、暗所、窒素下でAgNO3(0.305 g, 1.8 mmol)を加えた。混合物を60℃で6時間撹拌した。次いで、析出した銀塩を濾別し、有機相をAcOEtで希釈し、NaH2PO4 (5%, 2×10 ml)および食塩水(2×10 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(0.553 g, 66%)を得た。
【0058】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステルから、方法Aで記載した酸加水分解により、標題の化合物2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステルを得た。
【0059】
実施例2
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(化合物(2)に相当)
この化合物は4つの異なる方法を経て得られる。
合成方法A
0℃に冷却した、CH2Cl2(20 ml)およびTHF(6 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(実施例1で取得)(1.7 g, 2.6 mmol)、4-ニトロオキシブタン酸(0.536 g, 3.6 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.05 g, 0.4 mmol)の溶液に、CH2Cl2(5 ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.722 g, 3.50 mmol)の溶液をゆっくり加え、反応物を室温で24時間撹拌した。次いで、生成したジシクロヘキシルウレアを濾別し、有機相を濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 7:3)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(1.45 g, 70%)を得た。
【0060】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(1.0 g, 1.25 mmol)をCH2Cl2(20 ml)に溶解し、この溶液にHClを20分間バブルした。次いで、反応物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2、次いでアセトン)で精製し、白色の泡状物として粗化合物を得た。それをH2O/CH3CNに溶解し、凍結乾燥して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(0.507 g, 収率71%)を白色の固体として得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 7.66 (2H,d); 7.57 (1H,d); 7.49 (1H,d); 7.09 (2H,d); 6.95 (2H,d); 5.25 (2H,s); 4.99 (2H,s); 4.49 (2H,t); 2.54 (2H,t); 2.01 (2H,t); 1.60 (2H,m); 1.49 (2H,m); 1.32 (4H,m); 0.84 (3H,t).
【0061】
合成方法B
0℃に冷却した、CH2Cl2(20 ml)およびTHF(6 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(実施例1で取得)(1.7 g, 2.6 mmol)、4-ブロモブタン酸(0.561 g, 3.36 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.05 g, 0.4 mmol)の溶液に、CH2Cl2(5 ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(0.722 g, 3.50 mmol)の溶液をゆっくりと加え、反応物を室温で24時間撹拌した。次いで、生成したジシクロヘキシルウレアを濾別し、有機相を濃縮した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/ETOAc 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ブロモブタン酸エステル(1.27 g, 収率60%)を得た。
【0062】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ブロモブタン酸エステル(1.2 g, 1.47 mmol)をCH3CN(20 ml)に溶解し、暗所、窒素下でAgNO3(0.475 g, 2.8 mmol)を加えた。混合物を60℃で6時間撹拌した。次いで、EtOAcおよびリン酸緩衝液(pH=3, 40 ml)の間で分配した。有機相をリン酸緩衝液(pH=3, 2×25 ml)、食塩水(3×25 ml)、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 7:3)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(0.819 g, 収率70%)を泡状物として得た。
【0063】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステルから、実施例2の方法Aに記載した酸加水分解により、標題の化合物2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(0.507 g, 71 %)を得た。
【0064】
合成方法C
0℃に冷却した、THF(60 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(3.6 g, 8.5 mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(0.1 g, 0.85 mmol)およびTEA(1.18 ml, 0.85 mmol)の溶液に、窒素下、THF(1 ml)中の4-ブロモブタノイルクロライド(0.98 ml, 8.5 mmol)の溶液をゆっくり加え、反応物を室温で1.5時間撹拌した。次いで、それをEtOAcおよびリン酸緩衝液(pH=3, 40 ml)の間で分配し、EtOAc(3×15 ml)で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ブロモブタン酸エステル(2.5 g, 収率51%)を白色の固体として得た。
【0065】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ブロモブタン酸エステル(0.56 g, 0.98 mmol)をCH3CN(15 ml)に溶解し、窒素下、暗所でAgNO3(0.83 g, 4.9 mmol)を加えた。混合物を60℃で8時間撹拌した。次いで、それを冷却し、リン酸緩衝液(pH=3, 40 ml)中に注いだ。固体NaClを加え、混合物をEtOAcで抽出した。有機相を、リン酸緩衝液(pH=3, 2×25 ml)、食塩水(3×25 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2、次いでアセトン)で精製し、白色の泡状物として粗化合物を得た。それをH2O/CH3CNに溶解し、凍結乾燥して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 4-ニトロオキシブタン酸エステル(0.3 g, 収率55%)を白色の固体として得た。
【0066】
合成方法D
窒素下、0℃に冷却した、CH2Cl2(10 ml)中の4-ブロモ酪酸(0.91 g, 5.4 mmol)、ペンタフルオロフェノール(1.00 g, 5.4 mmol)およびDMAP(0.13 g, 1.1 mmol)の溶液に、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.70 g, 8.1 mmol)を分割して加えた。1時間後、反応物をゆっくりと室温に暖め、5時間撹拌した。ジシクロヘキシルウレアを濾別し、母液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 98:2)で精製して、4-ブロモ酪酸ペンタフルオロフェニルエステル(1.40 g, 78%)を無色の油状物として得た。
【0067】
CH3CN(8 ml)中の4-ブロモ酪酸ペンタフルオロフェニルエステル(0.65 g, 1.9 mmol)およびAgNO3(0.83 g, 4.9 mmol)混合物を、マイクロ波で20分間、70℃に温めた。生成した塩を濾別し、溶媒を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 95:5)で精製して、4-ニトロオキシ酪酸ペンタフルオロフェニルエステル(0.38 g, 62 %)を澄んだ油状物として得た。
【0068】
0℃に冷却した、DMF(3 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(0.48 g, 1.1 mmol)、TEA(0.16 ml, 1.1 mmol)およびDMAP(0.14 mg, 1.1 mmol)の溶液に、DMF(3 ml)中の4-ニトロオキシ酪酸ペンタフルオロフェニルエステル(0.36 g, 1.1 mmol)の溶液を加えた。反応物をゆっくりと室温に温め、3時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下に蒸発させた。残渣をEtOAc(10 ml)に溶解し、緩衝液(pH=3)、次いで食塩水で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH 98:2)で精製して、標題の化合物(0.41 g, 66%)を得た。
【0069】
実施例3
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 11-ニトロオキシウンデカン酸エステル(化合物(68)に相当)
実施例2に記載した方法Aを用いて、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(1.7 g, 2.6 mmol)および11-ニトロオキシウンデカン酸(0.78 g, 3.36 mmol)から出発して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 11-ニトロオキシウンデカン酸エステル(1.65 g, 80%)を得た。
この化合物(1.6 g, 2.0 mmol)を酸加水分解し、Et2O/n-ヘキサンから結晶化して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 11-ニトロオキシウンデカン酸エステル(0.91 g, 70%)を得た。
(DMSO): 7.66(2H,d); 7.57(1H,d); 7.59(1H,d); 7.09(2H,d); 6.95(2H,d); 5.25(2H,s); 4.99(2H,s); 4.49(2H,t); 2.54(2H,t); 2.01(2H,t); 1.62(2H,m); 1.49(2H,m); 1.35-1.14(16H,m); 0.84(3H,t).
【0070】
実施例4
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 3-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(化合物(5)に相当)
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(実施例1で製造)(1.0 g, 1.5 mmol)、トリエチルアミン(0.42 ml, 3.0 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(36 mg, 0.30 mmol)をCH2Cl2(10 ml)に溶解した。次いで、3-(クロロメチル)ベンゾイルクロライド(0.24 ml, 1.7 mmol)を加え、反応物を室温で4時間撹拌した。混合物をEtOAc(50 ml)で希釈し、有機相をNaH2PO4(5 %, 2×25 ml)、NaHCO3(5 %, 2×25 ml)、食塩水(2×25 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 3-(クロロメチル)安息香酸エステル(1.0 g, 81 %)を油状物として得た。
【0071】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 3-(クロロメチル)安息香酸エステル(0.66 g, 0.20 mmol)をCH3CN(10 ml)に懸濁し、NaI(0.24 g, 1.6 mmol)を加えた。反応物を1時間還流し、次いでEtOAc (25 ml)で希釈した。有機相をH2O(3×25 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をCH3CN(4 ml)に溶解し、窒素下、暗所でAgNO3(0.34 g, 2 mmol)を加えた。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで、それをEtOAc(10 ml)で希釈した。有機相をNaH2PO4(5 %, 2×10 ml)および食塩水(2×10 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 75:25)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 3-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(230 mg, 33 %)を得た。
【0072】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 3-(ニトロオキシメチル)安息香酸エステル(0.23 g, 0.27 mmol)をCH2Cl2(5 ml)に溶解し、その溶液にHClをバブルした。10分後、反応物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2、次いでアセトン)で精製した。得られた黄色の泡状物を、脱色炭で処理し、H2O/CH3CNに溶解し、凍結乾燥して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール m-ニトロベンジル安息香酸エステル(0.11 g, 63 %)を白色の固体として得た。
(CDCl3): 7.90 (2H,m); 7.78 (1H,d); 7.56 (3H,m); 7.40 (1H,m); 7.19 (1H,d); 7.06 (2H,d); 6.83 (2H,d); 5.40 (2H,s); 5.24 (2H,s); 5.14 (2H,s); 2.47 (2H,t); 1.61 (2H,m); 1.32 (2H,m); 0.87 (3H,m).
【0073】
実施例5
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ニトロオキシヘキサン酸エステル(化合物(69)に相当)
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール(実施例1で製造)(2.0 g, 3.0 mmol)、6-ブロモヘキサン酸(0.90 g, 4.6 mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(38 mg, 0.3 mmol)、トリエチルアミン(1.3 ml, 9.3 mmol)をCH2Cl2(20 ml)に溶解し、その溶液を0℃に冷却した。次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)(0.94 g, 9.3 mmol)を加え、反応物をゆっくり室温に温め、一晩撹拌した。有機相をNaH2PO4(5 %, 20 ml)および食塩水(20 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、フラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 7:3)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ブロモへキサン酸エステル(1.94 g, 76 %)を油状物として得た。
【0074】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ブロモへキサン酸エステル(0.77 g, 0.90 mmol)およびNaI(0.30 g, 2.0 mmol)をCH3CN(10 ml)に溶解し、その混合物を1時間還流した。次いで、それをEtOAc(50 ml)で希釈し、有機相をH2O(2×25 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をCH3CN(7 ml)に懸濁し、AgNO3(0.60 g, 3.5 mmol)を加えた。反応物を、暗所で窒素下に室温で3時間撹拌した。次いで、それをEtOAc(30 ml)およびリン酸緩衝液(pH=3, 25 ml)の間で分配した。有機相をリン酸緩衝液(pH=3, 2×25 ml)および食塩水(3×25 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 7:3)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ニトロオキシヘキサン酸エステル(0.69 g, 64 %)を泡状物として得た。
【0075】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ニトロオキシヘキサン酸エステル(0.88 g)をCH2Cl2(20 ml)に溶解し、この溶液に、HClを20分間バブルした。次いで、混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/アセトン 8:2、次いでアセトン)で精製し、生成物を黄色の泡状物として得た。それを脱色炭で処理し、H2O/CH3CNに溶解し、凍結乾燥して、生成物2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-メタノール 6-ニトロオキシヘキサン酸エステル(0.41 g, 68 %)を白色の固体として得た。
(CDCl3): 7.79 (1H, d); 7.63-7.49 (2H, m); 7.41 (1H, d); 7.08 (2H, d); 6.77 (2H, d); 5.14 (2H, s); 4.88 (2H, s); 4.38 (2H, t); 2.38 (2H, t); 2.06 (2H, m); 1.70-1.50 (6H, m); 1.37-1.30 (4H, m); 0.85 (3H, t).
【0076】
実施例6
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-カルボン酸 (3-ニトロオキシ)プロピルエステル(化合物(7)に相当)
t-ButOH(35 ml)および5% Na2HPO4水溶液(25 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-5-ホルミル イミダゾール(1.2 g, 6.4 mmol)の溶液に、水(40 ml)中のKMnO4(6.1 g, 38.6 mmol)の溶液を加えた。室温で6分後、40% NaHSO3水溶液を加えて混合物をクエンチした。懸濁液を濾過し、H2Oで洗浄し、濾液を凍結乾燥した。残渣を3N HClでpH 2.5の酸性にしたH2O(50 ml)に採取し、EtOAc(3×70 ml)で抽出した。合わせた有機抽出液をNa2SO4で乾燥し、蒸発乾固して、2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸(1.07 g, 83%)を白色の固体として得た。
【0077】
0℃に冷却した、THF(12 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸(0.61 g, 3 mmol)、3-ブロモプロパノール(0.52 g, 3.74 mmol)およびN,N-ジメチルアミノピリジン(0.08 g, 0.65 mmol)の溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.91 g, 4.4 mmol)を分割してゆっくりと加え、反応物を室温で4時間撹拌した。次いで、生成したジシクロヘキシルウレアを濾別し、有機相を濃縮した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 8:2)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ブロモプロピルエステル(0.5 g, 50%)を白色の泡状物として得た。
【0078】
2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ブロモプロピルエステル(0.807 g, 2.47 mmol)をCH3CN(15 ml)に溶解し、AgNO3(0.63 g, 3.7 mmol)を加えた。混合物を室温で8時間撹拌した。次いで、析出した銀塩を濾別し、有機相をAcOEtで希釈し、NaH2PO4 (5%, 2×10 ml)および食塩水(2×10 ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘキサン/AcOEt 70:30)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ニトロオキシプロピルエステル(0.377 g, 50%)を得た。
【0079】
窒素下、0℃に冷却した、ジメチルアセトアミド(DMA)(13 ml)中の2-ブチル-4-クロロ-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ニトロオキシプロピルエステル(0.76 g, 2.5 mmol)の溶液に、カリウムtert-ブチレート(0.28 g, 2.5 mmol)を分割してゆっくりと加えた。10分間撹拌後、DMA(10 ml)中のN-(トリフェニルメチル)-5-(4'-ブロモメチルビフェニル-2-イル)テトラゾール(1.7 g, 3 mmol)の溶液を加え、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を水およびEtOAcの間で分配した。有機相を分離し、Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗物質をフラッシュクトマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc 7:3)で精製して、2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ニトロオキシプロピルエステル(1.56 g, 80%)を得た。
【0080】
2-ブチル-4-クロロ-1-[[2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-1H-イミダゾール-5-カルボン酸 3-ニトロオキシプロピルエステル(1 g, 1.28 mmol)から、実施例1の方法Aで類似の化合物について記載した酸加水分解により、標題の化合物(白色の固体)(0.28 g, 40%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 7.60-7.20 (4H,m); 7.12 (2H,d); 6.92 (2H,d); 5.72 (2H,s); 4.58 (2H,t); 4.50 (2H,t); 2.54 (2H,t); 2.31 (2H,m); 1.49 (2H,m); 1.32 (2H,m); 0.84 (3H,t).
【0081】
血管緊張における試験
元のARBと比較した、ARBのニトロ誘導体の血管緊張低下能が、in vitroで、摘出されたウサギの胸部大動脈で試験された(Wanstall J.C.ら, Br. J. Pharmacol., 134:463-472, 2001)。雄性ニュージーランドラビットをチオペンタール-Naで麻酔し、全採血により屠殺し、次いで胸部を開き、大動脈を切開した。大動脈輪標本(4 mmの長さ)が、小器官チャンバー(5 ml)中で、生理食塩水(PSS)中に37℃でセットされた。PSSの組成は、(mM): NaCl 130、NaHCO3 14.9、KH2PO4 1.2、MgSO4 1.2、HEPES 10、CaCl2 、アスコルビン酸 170およびグルコース 1.1 (95% O2 /5% CO2 ; pH 7.4)であった。各輪は、2 gの受動張力で取り付けられた。等尺性張力がBIOPAC MP150システムに付属したグラス・トランスデューサー(Grass FT03)により記録された。標本は1時間平衡状態にされ、次いで、ノルアドレナリン(NA、1μM)で最大下に収縮され、その収縮が安定となったとき、アセチルコリン(ACh、10μM)が加えられた。AChに対する弛緩応答は機能性内皮の存在を示した。NA収縮を起こさないか、またはAChに対して弛緩を示さなかった血管は捨てられた。安定な前収縮が達せられたときに、緊張低下剤のどちらかの累積濃度-応答曲線が、機能性内皮の存在下に得られた。各大動脈輪は、阻害剤と緊張低下剤の組み合わせの1つに曝された。さらに、化合物により誘発された血管緊張低下における、可溶性グアニル・サイクレース阻害剤ODQ(1-H-(1,2,4)-オキサジアゾール(4,3-a)キノキサリン-1-オン)の効果が、大動脈輪とODQ(10μM)を20分間プレインキュベートして試験された。
【0082】
緊張低下剤に対する応答は、残留収縮のパーセントで表わされ、試験化合物の濃度に対してプロットされた。IC50値(ここで、IC50は、最大緊張低下の50%を生じる試験化合物の濃度である)は、これらのプロットから内挿された。試験期間中、NAで得られたプラトーは、大動脈輪における有意な自発性の収縮の損失を起こさず、安定であった。これらの試験条件下、ARBのロサルタンは、試験された濃度のいずれにおいても緊張低下を起こさず、その曲線は、媒体だけの存在で得られたものと異なっていなかった。
表1に示されたように、本発明のニトロ誘導体は、濃度依存的に緊張低下を誘発することができた。さらに、ODQ(10μM)の存在下に行なわれた試験において、試験化合物の緊張低下の応答は阻害されなかった。
【0083】
【表1】

IC50は、応答の50%を阻害する濃度である。
【0084】
炎症経路における、in vitroでのロサルタン ニトロ誘導体の効果
試験は、単核マクロファージ細胞系RAW 264.7を用いて行なわれた。細胞は、リポポリサッカライド(LPS)(1μg/ml)の存在下、16時間刺激された。インキュベーションの最後に、培養媒体が集められ、標準的なグリース(Griess)反応によりナイトライト(nitrite)含量が分析された。
表2に示された結果は、LPS処理試料に対する各処理のナイトライト含量のパーセントで表わされる。
【0085】
【表2】

表2に示されたように、親化合物とは異なり、ニトロ誘導体(実施例4の化合物)は、LPSで誘発されたナイトライトの蓄積を阻害することができた。
【0086】
ロサルタン ニトロ誘導体の抗血小板活性のin vitroでの試験
ヒト血小板により、ロサルタン ニトロ誘導体の、血小板凝集の阻害能がin vitroで評価された。血小板凝集は、ボーン(Born)法により多血小板血漿(PRP)試料0.25mlで測定された(Gresele P, Arnout J, Deckmyn Hら, J Clin Invest. 1987;80:1435-45)。使用された凝集剤は、このアゴニストが一酸化窒素の作用に感受性があることの証拠に基づいたU46619、TxA2類縁体であった。凝集剤を加える前に、化合物は37℃で2分間インキュベートされた。5分間の凝集に続いて、最大幅(cm)が測定された。DMSO(0.05%最終濃度)が媒体として使用された。化合物は、10〜100μMの範囲の濃度で試験された。
【0087】
【表3】

表3に示されたように、ニトロ誘導体は、U46619で誘発された血小板凝集を有意に阻害することができた。ロサルタンは弱い効果を示した。
【0088】
ロサルタン ニトロ誘導体の抗高圧活性のin vivoでの試験
ロサルタン ニトロ誘導体(実施例2の化合物)の血圧低下能が、覚醒の自然発症高血圧ラット(SHR)で評価された。SHR(250〜300g)の2群は、ロサルタン(10 mg/kg 経口)またはロサルタン ニトロ誘導体(等モル用量)のどちらかの1日経口用量を3日間受けた。収縮期血圧(SBP)および心拍数が、投薬後、異なる時間で、遠隔測定により記録された。
【0089】
【表4】

表4に示されたように、親化合物とは異なり、ニトロ誘導体(実施例2の化合物)は、処置期間で血圧レベルの明らかな減少を誘発することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
R-(Y-ONO2)s (I)
[式中、
sは1または2の整数であり;
Rは、以下の式(II)または(III):
【化1】

(式中、
R0
【化2】

またはYに結合することができる基である-N0であって、次の意味:
-COO-、-O-、-CONH-、-OCO-、-OCOO- もしくは
【化3】

(式中、R'およびR''は同一または異なって、Hまたは直鎖もしくは分枝C1-C4アルキルである)
の1つを有し;
R1
【化4】

(式中、mは0または1の整数であり、N0は上記で定義されたとおりである)
からなる群から選択される);
【化5】

(式中、N1はN0と同じ意味を有するか、または-COOHである;但し、基N1の少なくとも1つは-COO-または-CONH-である、すなわちそれはYに結合することができる基である)
のアンギオテンシンII受容体遮断剤残基から選択され;
Yは以下の意味を有する2価の基である:
a)
− ハロゲン原子、ヒドロキシ、-ONO2またはT0(ここで、T0は-OC(O)(C1-C10アルキル)-ONO2または-O(C1-C10アルキル)-ONO2である)からなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換されていてもよい、直鎖または分枝C1-C20、好ましくはC1-C10アルキレン;
− シクロアルキレン環中に5〜7の炭素原子を有するシクロアルキレン、該環は側鎖T(ここで、Tは1〜10の炭素原子を有する、直鎖または分枝アルキル、好ましくはCH3である)で任意に置換されていてもよい;
【化6】

(式中、nは0〜20の整数であり、n1は1〜20の整数である);
【化7】

(式中、
n1は上記で定義されたとおりであり、n2は0〜2の整数であり;
X1 = -OCO-または-COO-、そしてR2はHまたはCH3である);
e)
【化8】

(式中、
n1、n2、R2およびX1は上記で定義されたとおりであり;
Y1は-CH2-CH2-または-CH=CH-(CH2)n2-である);
【化9】

(式中、
n1およびR2は上記で定義されたとおりであり、R3はHまたは-COCH3である);
但し、Yがb)〜f)で挙げた2価の基から選択されるときは、-ONO2基は-(CH2)n1基に結合している;
【化10】

(式中、X2は-O-または-S-であり、n3は1〜6、好ましくは1〜4の整数であり、R2は上記で定義されたとおりである);
【化11】

(式中、
n4は0〜10の整数であり;
n5は1〜10の整数であり;
R4、R5、R6、R7は同一または異なって、Hまたは直鎖もしくは分枝C1-C4アルキルであり、好ましくはR4、R5、R6、R7はHであり;
-ONO2基は、
【化12】

(式中、n5は上記で定義されたとおりである)
に結合しており;
Y2は、窒素、酸素、硫黄から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和、不飽和もしく芳香族の、5または6員の複素環であり、次の:
【化13】

から選択される)]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしく立体異性体。
【請求項2】
Yが次の意味:
a) T0が上記で定義されたとおりである、T0で任意に置換されていてもよい、直鎖または分枝C1-C10アルキレン;
b)
【化14】

(式中、nは0または1の整数であり、n1は整数1である;但し、-ONO2基は-(CH2)n1基に結合している);
【化15】

(式中、X2は-O-または-S-であり、n3は整数1であり、R2はHである)
を有する2価の基である、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

からなる群から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
医薬として使用される、請求項1〜3に記載の化合物。
【請求項5】
抗炎症、抗血栓および抗血小板作用を有する医薬を製造するための、請求項1〜3に記載の化合物の使用。
【請求項6】
心臓血管性、腎性および慢性の肝臓疾患、炎症性プロセスおよび代謝性症候群の治療または予防に用いられる医薬を製造するための、請求項1〜3に記載の化合物の使用。
【請求項7】
心不全、心筋梗塞、虚血性発作、アテローム性動脈硬化、高眼圧、肺高血圧、高血圧、糖尿病性腎障害、末梢血管疾患、左心室不全および肥大、肝線維症および門脈圧亢進の治療または予防に用いられる医薬を製造するための、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
医薬的に許容される担体および請求項1〜3に記載の一般式(I)の化合物またはその塩もしくは立体異性体の医薬的有効量を含む医薬組成物。
【請求項9】
経口、非経口、直腸、局所および経皮投与用、吸入スプレーまたは噴霧もしくはイオン導入装置に適した形態にある、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
腸溶コーティングされていてもよい錠剤、カプセル剤および丸剤、散剤、顆粒剤、ゲル剤、乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射可能な形態、坐剤、経皮パッチまたはリポソームの形態にある、経口、非経口、直腸、局所および経皮投与用または吸入用の、請求項1〜3に記載の式(I)の化合物またはその塩もしくは立体異性体、および医薬的に許容される担体を含む、液体または固体の医薬組成物。
【請求項11】
一般式(I)の化合物、心臓血管疾患の治療に使用される少なくとも1つの化合物および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
心臓血管疾患の治療に使用される化合物が、ACE阻害剤、HMGCoA還元酵素阻害剤、ベータ受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿剤、アスピリンのような抗血栓剤、ニトロソ化ACE阻害剤、ニトロソ化HMGCoA還元酵素阻害剤、ニトロソ化ベータ受容体遮断剤、ニトロソ化アスピリンおよびニトロソ化利尿剤からなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物、心臓血管疾患の治療用に、同時に、分離して、連続的に使用するための組み合わせ製剤として心臓血管疾患の治療に使用される化合物を含む医薬キット。
【請求項14】
心臓血管疾患の治療に使用される化合物が、ACE阻害剤、HMGCoA還元酵素阻害剤、ベータ受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿剤、アスピリンのような抗血栓剤、ニトロソ化ACE阻害剤、ニトロソ化HMGCoA還元酵素阻害剤、ニトロソ化ベータ受容体遮断剤、ニトロソ化アスピリンおよびニトロソ化利尿剤からなる群から選択される、請求項13に記載の医薬キット。

【公表番号】特表2007−500684(P2007−500684A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521571(P2006−521571)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051550
【国際公開番号】WO2005/011646
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(398034032)ニコックス エス エイ (36)
【住所又は居所原語表記】Taissounieres HB4,1681 route des Dolines−BP313,06560 Sophia Antipolis−Valbonne,France
【Fターム(参考)】