説明

心臓障害の治療におけるMIR−208およびMIR−499の二重ターゲティング

本発明は、対象の心臓細胞におけるmiR−499およびmiR−208の両方の発現または機能を阻害することによって、心臓障害を治療または予防する必要がある対象において心臓障害を治療または予防する方法を提供する。特に、効率的で長期にわたる抑制を達成する、2つのmiRNAの阻害剤を投与するための特定のプロトコールが開示される。さらに、本発明は、対象の骨格筋細胞における、miR−208およびmiR−499の両方の発現または活性を増大させることによって、筋骨格系障害を治療または予防する必要がある対象において筋骨格系障害を治療または予防するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2009年2月4日出願の米国仮出願第61/149,915号の利益を主張する。
【0002】
政府支援の陳述
本発明は、国立衛生研究所(the National Institutes of Health)により与えられた認可番号HL53351−06の下で政府支援によってなされたものである。政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0003】
電子提出されたテキストファイルの記述
本明細書と共に電子提出されたテキストファイルの内容は、その全体を参照により本明細書に組み込む:配列表のコンピュータ可読フォーマットコピー(ファイル名: MIRG_013_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日: 2010年2月1日、ファイルサイズ5キロバイト)。
【0004】
技術分野
本発明は、マイクロRNA(miRNA)の活性または発現を調節する薬剤を投与することによる、心臓障害および筋骨格系障害の治療に関する。特に、本発明は、ヒトを含む対象の心臓細胞における、miR−208a/miR−208bおよびmiR−499の両方の発現または活性を阻害することによって、心臓障害を治療または予防するための方法を提供する。さらに、本発明は、対象の骨格筋細胞における、miR−208bおよびmiR−499の両方の発現または活性を増大させることによって筋骨格系障害を治療または予防するための方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
冠動脈疾患や心筋梗塞、うっ血性心不全、心臓肥大などの心疾患およびその徴候は、今日の米国において主要な健康上のリスクであることを明らかに示している。これらの疾患に罹っている患者の診断、治療、および支援にかかるコストは、何十億ドルにもなる。心疾患の、2つの特に重篤な徴候は、心筋梗塞および心臓肥大である。
【0006】
心臓発作として一般的に知られている心筋梗塞は、心臓組織への血流量の突然の持続的な不足によって引き起こされ、これは、通常、冠状動脈の狭小化または閉塞の結果である。十分な血液供給がなければ、組織は、虚血性になり、心筋細胞(例えば心臓の筋肉細胞)および血管構造物の死に至る。心筋細胞の死に起因する壊死組織は、一般に、瘢痕組織によって置き換えられ、瘢痕組織は収縮を起こさず、心臓機能に寄与することができず、心収縮中に拡張することによってまたは心室のサイズおよび有効半径を増大させることによって、例えば肥大性になることによって、心臓機能にしばしば有害な役割を演じる。
【0007】
心臓肥大は、高血圧、機械的負荷、心筋梗塞、心不整脈、内分泌障害、および心収縮タンパク質遺伝子の遺伝変異を生じるものを含めた事実上全ての形の心疾患に対する心臓の適応反応である。肥大応答は、最初は心拍出量を増大させる補償的機構であるが、持続的肥大によって拡張型心筋症(DCM)、心不全、および突然死をもたらす可能性がある。米国では、約50万人が毎年心不全と診断されており、その死亡率は50%に達する。
【0008】
非常に数多くのシグナル伝達経路、特に、異常なカルシウムシグナル伝達が行われる経路は、心臓肥大および病理学的再構築を促進させる(Heineke & Molkentin、2006)。ストレスに応答する肥大成長では、運動に応答して引き起こされる生理的肥大とは異なるシグナル伝達経路および遺伝子発現パターンが行われる。ストレス媒介性心筋肥大は、非常に数多くの有害な結果に関連した複雑な現象であり、異なる分子および組織学的特性によって心臓が線維化し、拡張し、代償不全になり、心筋細胞の変性および死を通してしばしば心不全になる。したがって、基本的な分子機構の解明と、有害な心臓成長および究極的には心不全を抑制する新規な治療標的の発見に、強い関心が持たれている。これらの機構の理解は、心臓肥大および心不全を治療するための新たな治療の設計に対して必須である。
【0009】
マイクロRNAは、最近、とりわけ発生(developmental)タイミング、アポトーシス、脂肪代謝、および造血性細胞分化の調節を含めたいくつかの生物学的プロセスに関係している。マイクロRNA(miRNA)は、個々のmiRNA遺伝子から、またはタンパク質コーディング遺伝子のイントロンから、または多数の緊密に関連したmiRNAをしばしばコードするポリシストロン転写物から得られる長さ約18〜約25ヌクレオチドの小さな非タンパク質コーディングRNAである。Carringtonらの概説(Science, Vol. 301(5631):336-338, 2003)を参照されたい。miRNAは、その配列が完全に相補的である場合はその分解を促進させることによって、またはその配列がミスマッチを含有する場合は翻訳を阻害することによって、標的mRNAのリプレッサーとして働く。
【0010】
miRNAは、RNAポリメラーゼII(pol II)またはRNAポリメラーゼIII(pol III; Qiら、(2006)Cellular & Molecular Immunology Vol.3: 411-419参照)によって転写され、初期転写物から発生し、一般に数千塩基の長さである1次miRNA転写物(プリ−miRNA)で終わる。プリ−miRNAは、RNアーゼDroshaによって、核内で、約70〜約100ヌクレオチドヘアピン形前駆体(プレ−miRNA)に処理される。細胞質に輸送後、ヘアピンプレ−miRNAをさらにDicerで処理して、二本鎖miRNAを生成する。次いで成熟miRNA鎖をRNA誘発性サイレンシング複合体(RISC)に組み込み、その標的mRNAに、塩基対相補性によって結合させる。miRNA塩基がmRNA標的と完全に対になる比較的まれなケースでは、mRNA分解が促進される。より一般的には、miRNAは、不完全なヘテロ二本鎖を標的mRNAと形成し、mRNAの安定性に影響を及ぼしまたはmRNAの翻訳を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
最近、本発明者らは、α−ミオシン重鎖(MHC)遺伝子のイントロンによってコードされ、かつ心臓ストレスに応答したβ−MHC発現の上方制御および心臓における速骨格筋(fast skeletal muscle)遺伝子の抑制に必要とされる、心臓特異的マイクロRNA、miR−208aについて報告した(van Rooijら、(2007) Science, Vol. 316: 575-579)。本発明は、この発見をさらに拡大し、心臓障害および筋骨格系障害の治療に対する新規な治療上の手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、心臓細胞における、miR−208aおよびmiR−499の両方の組織的な下方制御は、ストレスに応答した心臓肥大、高い収縮性、および病的心臓のリモデリングの発達に対して相乗効果をもたらすという発見に部分的に基づく。本発明者らは、驚くべきことに、β−MHCなどのストレス関連遺伝子の発現を制御するための期間が、miR−208a阻害剤およびmiR−499阻害剤の同時または連続した投与によってmiR−208aおよびmiR−499の両方を下方制御することによって劇的に減少することを見出した。そのような二重ターゲティングは、miR−208aのみの下方制御で同様の効果を観察するのに必要とされる数か月の遅延と比較して、ストレス関連遺伝子発現に対する即時の効果をもたらす。したがって、本発明は、ヒトを含む、病的な心臓肥大、心不全、および心筋梗塞の治療の必要がある対象において病的な心臓肥大、心不全、および心筋梗塞を治療するための新規な治療上の手法を提供する。
【0013】
1つの実施態様において、前記方法は、miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤を対象に投与する工程を含み、投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208aまたはmiR−208bとmiR−499の発現または活性が低下する。いくつかの実施態様において、阻害剤の投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208aまたはmiR−208bおよびmiR−499の発現または活性は、60%超低下する。miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤は、アンタゴmir(antagomir)またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。1つの実施態様において、miRNA阻害剤は発現ベクター上にコードされる。
【0014】
別の実施態様において、miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤およびmiR−499の阻害剤の投与後、対象において心臓ストレス応答が低下する。心臓ストレス応答は、前記対象の、心筋細胞肥大、心臓の線維症、心臓細胞におけるα−MHCの発現低下、および/または心臓細胞におけるβ−MHCの発現増大を包含する。特定の実施態様において、心臓ストレス応答の低下は、miR−208a/miR−208b阻害剤およびmiR−499の阻害剤の投与後2ヶ月未満で起こる。好ましい実施態様において、心臓ストレス応答の低下は、阻害剤の投与後1週間未満で起こる。
【0015】
いくつかの実施態様において、miR−208a/miR−208b阻害剤とmiR−499阻害剤は連続して投与される。2つの阻害剤の投与は、分単位から週単位の間隔で分離することができる。1つの実施態様において、miR−208a/miR−208b阻害剤とmiR−499阻害剤は、少なくとも24時間離れて投与される。別の実施態様において、miR−208a/miR−208b阻害剤とmiR−499阻害剤は、同時投与される。2つの阻害剤は、それぞれ約1mg/kg〜約200mg/kgの用量で投与することができる。
【0016】
本発明はまた、筋骨格系障害の治療または予防を必要とする対象において筋骨格系障害を治療または予防する方法であって、miR−208のアゴニストおよびmiR−499のアゴニストを対象に投与する工程を含み、投与後、対象の骨格筋細胞におけるmiR−208およびmiR−499の発現または活性が増大する方法を提供する。1つの実施態様において、前記方法は、miR−208bのアゴニストおよびmiR−499のアゴニストを対象に投与する工程を含む。miRNAアゴニストは、成熟miR−208a、miR−208bまたはmiR−499配列をコードするポリヌクレオチドであることができる。いくつかの実施態様において、そのようなポリヌクレオチドはプロモーター配列に作動的に連結しており、発現ベクターにおいて対象の細胞に提供される。
【0017】
miRNAアゴニストは、同時投与されてもよいまたは特定の時間的間隔によって分離して、連続して投与されてもよい。いくつかの実施態様では、対象の骨格筋細胞における1または複数の速骨格筋遺伝子の発現は、対象へのmiR−499アゴニストおよびmiR−208aアゴニストまたはmiR−208bアゴニストの投与後に低下する。1または複数の速骨格筋遺伝子は、トロポニンI2、トロポニンT3、速骨格ミオシン軽鎖、およびα骨格アクチンを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】MiR−208ノックアウト動物は、胸部大動脈瘤絞扼術に応答した心臓肥大および線維症をそれほど示さない。A.胸部大動脈瘤絞扼術(TAB)処置を示す概略図(左)。野生型およびmiR−208−/−マウスの心臓の組織切片をTAB処置またはシャム処置の後にマッソントリクロームで染色した(右)。miR−208の不在により、TABに21日間供された野生型マウスに見られた肥大および線維症が減少する。B.シャム処置またはTAB処置の後の、野生型およびmiR−208−/−動物の心臓におけるβ−ミオシン重鎖(β−MHC)、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、および脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)についての相対発現レベル。C.シャム処置またはTAB処置の後の野生型およびmiR−208−/−動物の心臓におけるα−MHCおよびβ−MHCタンパク質レベルのウェスタン分析。GAPDHを、ローディングコントロールとして検出した。
【図2】miR−208の長期ノックダウンは、miR−208ノックアウト動物におけるストレス応答の阻害を表現型模写する。A.成熟miR−208配列(配列番号16)を標的とする合成オリゴヌクレオチドの配列。ミスマッチコントロール配列は、抗miR−208配列(配列番号17)と比較して、4つの塩基ミスマッチを含有する。B.リアルタイムPCR分析は、抗miR−208オリゴヌクレオチドを用いて治療された動物の心臓におけるmiR−208の効率的なノックダウンを示す。C.シャム処置または胸部大動脈瘤絞扼術(TAB)処置の後に抗miR−208オリゴヌクレオチド(抗208)またはミスマッチコントロール(mm)を受けた動物の心臓におけるβ−ミオシン重鎖(β−MHC)、心房性ナトリウム利尿因子(ANF)、および脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)についての相対発現レベル。ストレスマーカーANFおよびBNPは、TABに応答して誘発されるが、抗miR−208を受けた動物は、βMHC発現の誘発の減少を示した。
【図3】Myh7bおよびmiR−499は、miR−208によって調節される。野生型(+/+)、miR−208ヘテロ接合体(+/−)、およびmiR−208ノックアウト(−/−)マウスの心臓におけるmiR−499の発現を示すノーザンブロット。野生型および突然変異マウスにおける、miR−208およびmiR−499ならびにMyh7bの発現の間には直接相関がある。GAPDHの発現は、コントロールとして測定した。
【図4】Myh7bおよびmiR−499は、心筋および遅骨格筋(slow skeletal muscle)において発現する。A.ノーザン分析は、miR−499が心臓および遅骨格筋(例えばヒラメ筋)において発現することを示す。Myh7bについてのRT−PCRは、miR−499がその宿主遺伝子と共発現することを示す。B.心臓および4種の骨格筋型(腓腹筋/足底(GP)、前脛骨筋(TA)、長趾伸筋(EDL)、およびヒラメ筋)についてのmiR−499に関するリアルタイムPCR分析により、miR−499が心臓およびヒラメ筋において優勢に発現することが確認される。TAおよびEDLにおいては、miR−499のわずかなレベルの発現のみが検出できた。C.in situハイブリダイゼーションは、胚形成期間中、Myh7bが心臓および体節において特異的に発現することを示す。
【図5】miR−499は、ミオシン発現に影響しない。A.Myh7bについてのRT−PCR分析は、miR−499の遺伝欠失がその宿主遺伝子、Myh7bの発現に影響しないことを示す。GP−腓腹筋/足底筋;TA−前脛骨筋;EDL−長指伸筋。GAPDHの発現は、コントロールとして測定した。B.α−およびβ−MHCの両方についての野生型(WT)、ヘテロ接合体(+/−)、およびmiR−499ノックアウト(KO)動物からの心臓のウェスタンブロット分析は、miR−499の欠失がタンパク質レベルでいずれの遺伝子の発現にも影響しないことを示す。C.甲状腺ホルモン生合成を遮断し、β−MHCの強い誘発物質であるプロピルチオウラシル(PTU)は、野生型(WT)およびmiR−499ノックアウト(KO)動物の両方において、α−MHCの減少およびβ−MHCの増加をもたらす。
【図6A−B】miR−208のin vivoノックダウンによるmiR−499の制御。A.示す量の抗miR−208オリゴヌクレオチドまたは生理食塩液(Sal)の尾部静脈注射の3日後のmiR−208およびmiR−499の発現のノーザン分析。B.治療の2か月後の、単一80mg/kg用量の抗miR−208、2日連続の2×80mg/kg用量の抗miR−208、またはミスマッチコントロールオリゴヌクレオチド(mm)のいずれかを注射した動物の心臓組織のmiR−208およびmiR−499の発現についてのノーザン分析。
【図6C−D】C.単一用量の抗miR−208の、2日連続の2用量の抗miR−208、または2日連続の2用量のミスマッチオリゴヌクレオチドを用いる治療の2か月後の心臓組織におけるmiR−208、miR−499、miR−208b、α−MHC、Myh7b、およびβ−MHCの発現についてのリアルタイムPCR分析。D.抗miR−208(単一80mg/kg用量もしくは2連続の80mg/kg用量)またはミスマッチ(mm)コントロール治療の2か月後の心臓組織におけるβ−MHC発現のウェスタンブロット分析。
【図7A】miR−208およびmiR−499の二重ターゲティング。A.野生型およびmiR−499ノックアウト動物の心臓組織におけるmiR−208、miR−208b、およびmiR−499についてのノーザン分析は、PTUに応答した、miR−208bの強い誘発を示す。miR−208bは、β−MHCと共発現し、その発現を表す。miR−499ノックアウト動物では、miR−208bの誘発は、野生型と同等である。しかしながら、miR−499ノックアウト動物におけるmiR−208のノックダウンは、PTUによるmiR−208b発現の誘発を抑制する。
【図7B】B.PTUの存在下および不在下での、野生型動物、miR−208ノックアウト動物、miR−499ノックアウト動物、および抗miR−208を用いて治療したmiR−499ノックアウト動物の心臓組織におけるmiR−208、α−MHC、およびβ−MHCについてのリアルタイムPCR分析。
【発明を実施するための形態】
【0019】
心筋および骨格筋は、収縮の効率を規制する、ミオシンアイソフォームの発現を調節することによって、仕事負荷、甲状腺ホルモンシグナル伝達、および損傷などの様々な病態生理学的刺激に応答する。
【0020】
成人の心臓におけるα−およびβ−MHCアイソフォームの比は、心収縮性の主要な決定因子である。β−MHC、即ち成人の心臓の主なミオシンアイソフォームは、比較的低いATPアーゼ活性を示すのに対し、α−MHCは、高いATPアーゼ活性を有する。心筋梗塞や高血圧、その他の障害など、様々な病理学的刺激に応答して、β−MHC発現は増大し、一方、α−MHC発現は、結果として起こる筋原線維ATPアーゼ活性の低下および心筋線維の短縮速度の低下と共に減少し、最終的には収縮不全に至る。注目すべきことに、心臓のα−MHC含量の少しの変化は、心仕事量に対して深い影響力を及ぼす可能性がある。
【0021】
最近、本発明者らは、α−ミオシン重鎖遺伝子のイントロンによってコードされ、かつ心臓ストレスに応答したβ−MHC発現の上方制御および心臓の速骨格筋遺伝子の抑制に必要とされる、心臓特異的miRNA、miR−208aについて報告した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている同時係属出願WO2008/016924参照)。
【0022】
本発明者らはまた、miR−208aが、密接に関係するmiRNAであるmiR−499(Myh7b遺伝子のイントロンによってコードされている)の心臓発現にも必要とされていることを最近発見した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている同時係属出願PCT/US08/71837参照)。心臓、ならびに遅骨格筋でのMyh7bおよびmiR−499の発現は、MEF2転写因子、横紋筋遺伝子発現のシグナル依存性レギュレーターによって制御される。miR−499またはmiR−208の強制発現は、in vivoでの速遅筋線維変換を媒介するのに十分である。miR−208およびmiR−499は、Thrap1、甲状腺ホルモン受容体コレギュレーター、および転写因子のPURファミリーのメンバーの発現を、負に調節することができ、即ち、心筋および骨格筋でのβ−MHC発現を負に調節する。Sox6は、遅筋線維型特異的遺伝子のリプレッサーとして機能する。野生型筋管でのSox6発現のノックダウンは、β−MHC発現に著しい増加をもたらす。β−MHCプロモーターの分析は、胎児骨格筋の線維型分化および心臓のβ−MHC調節においてSox6が極めて重要な役割を演ずることを示唆する、Soxコンセンサス配列を明らかにした。これらの知見は、収縮性およびシグナル応答性を管理する調節miRNAをコードすることによって、横紋筋のMyh遺伝子が遺伝子発現パターンを調節するという、一般的な調節機構を明らかにする(van Roojiら、(2009) Developmental Cell, Vol. 17: 662-673)。
【0023】
本発明は、心臓ストレス応答を抑制する際に、心臓細胞におけるmiR−208およびmiR−499の両方の下方制御が相乗効果をもたらすという発見に部分的に基づく。心臓細胞におけるmiR−208a発現の阻害は、β−MHCのストレス誘発性発現の低下をもたらす。しかしながら、この効果は、miR−208阻害剤の投与の2か月後まで観察されない。発明者らは、驚くべきことに、miR−208aおよびmiR−499の両方の阻害が、投与のほぼ直後にストレス誘発性β−MHC発現の抑制をもたらし、したがって、心臓ストレス応答に対する効果を加速させることを見出した。したがって、心疾患の治療および予防のために同時にまたは連続してmiR−208およびmiR−499の発現を調節することによって骨格筋および心筋遺伝子発現を操作するための戦略を、これらの発見に照らして記述する。
【0024】
miR−208aは、α−MHC遺伝子のイントロンに位置する。正確なイントロン位置は、特定の種および特定の転写に依存する。例えば、ヒトでは、miR−208aはα−MHC遺伝子の28番目のイントロンにコードされ、一方、マウスでは、29番目のイントロンにコードされる。ヒト、マウス、ラットおよびイヌにおける、miR−208aのプレ−miRNAコード配列を、以下にそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4として示す。成熟miR−208a配列を、配列番号5に記載する。α−MHCと同様、miR−208aは心臓内で単独で発現する。
【0025】
【化1】

【0026】
miR−499のゲノム位置の分析により、α−MHC遺伝子のホモログであるMyh7b遺伝子の20番目のイントロンに含まれることが示された。マウス、ラット、ヒト、イヌ、オポッサム、ニワトリおよびX.tropicalisのmiR−499のプレ−miRNAコード配列を、それぞれ配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12として示す。配列番号13は、マウス前駆配列のステムループ構造であり、配列番号14は成熟miR−499配列である。Myh7b遺伝子は脊椎動物間で保存され、心臓および遅骨格筋(例えばヒラメ筋)内で単独で発現する。
【0027】
【化2】

【化3】

【0028】
本発明者らは、β−MHC遺伝子のイントロン31に位置する、miR−208bと呼ばれるmiR−208aの第2のバージョンを含むゲノムも発見し、β−MHCと同様、miRNA−208bが心臓および遅骨格筋(例えばヒラメ筋)内で単独で発現することを発見した。miR−208bで制御される遺伝子には、例えば、Sp3、ミオスタチン、PURベータ、THRAP1および速骨格筋タンパク質遺伝子が含まれる。このmiRNAの配列は、miR−208aと大幅に重複し、特定のmiRNAのmRNA標的を規定する「シード領域」における相同性は100%である。したがって、miR−208bはヒトにおける心収縮性および骨格筋収縮性に対し、深い影響力を有することができる。プレmiR−208b配列は複数の哺乳類種(例えば、ヒト、マウス、ラットおよびイヌ)間において保存されている。プレmiR−208b配列ならびに成熟miR−208b配列を以下に示す:
【化4】

【0029】
本明細書において開示されるRNA配列がデオキシリボヌクレオチドを必要とする実施態様において使用される場合、チミジン残基がウリジン残基の代わりに用いられることが理解される。同様に、リボヌクレオチドを必要とする実施態様では、ウリジン残基は、本明細書において開示されるDNA配列中のチミジン残基の代わりに用いられる。
【0030】
1つの実施態様では、本発明は、対象の心臓細胞におけるmiR−208(例えばmiR−208aおよび/またはmiR−208bあるいは言い換えればmiR208a/miR208b)ならびにmiR−499のいずれかまたは両方の発現ならびに/または活性を標的とすることによって、ヒトを含む、病的な心臓肥大、心筋梗塞、または心不全の治療の必要がある対象において、病的な心臓肥大、心筋梗塞、または心不全を治療する方法を提供する。いくつかの実施態様では、miR−208a/miR−208bの阻害剤およびmiR−499の阻害剤は、対象の心臓細胞におけるmiR−208a/miR−208bおよびmiR−499の発現または活性を低下させるために対象に投与される。
【0031】
別の実施態様では、前記の必要がある対象は、病的な心臓肥大、心不全、または心筋梗塞を発症する危険性があり得る。そのような対象は、これらに限定されないが、長期にわたって管理されていない高血圧、矯正されていない弁膜症、慢性アンギナ、最近の心筋梗塞、心疾患に対する先天的素因、または病的な肥大を含めた、1または複数の危険因子を示す可能性がある。危険性のある対象は、心臓肥大に対して遺伝的素因を有すると診断され得るか、または心臓肥大の家族歴を有する可能性がある。
【0032】
好ましくは、miR−208a/miR−208bの阻害剤およびmiR−499の阻害剤の両方の対象への投与の結果、対象の心臓肥大、心不全、または心筋梗塞の1または複数の症状が改善され、または心臓肥大から心不全への移行が遅くなる。1または複数の改善される症状は、例えば、高い運動能力、高い心臓駆出容積、低い左心室拡張末期圧、低い肺毛細血管楔入圧、高い心拍出量、高い心係数、低い肺動脈圧、低い左心室収縮末期および拡張末期径、低下した心臓線維症、心筋での少ないコラーゲン沈着、低い左心室および右心室壁応力、低い壁張力、高い生活の質、および低い疾患関連罹患率または死亡率であってもよい。
【0033】
本発明の1つの実施態様では、心臓ストレス応答は、miR−208(例えばmiR−208aおよび/またはmiR−208b)ならびにmiR−499の阻害剤の投与後に対象において低下する。心臓ストレス応答は、とりわけ、心筋細胞肥大、心臓の線維症、心臓細胞におけるα−MHCの発現低下、および/または心臓細胞におけるβ−MHCの発現増大を含む。対象へのmiR−208a/miR−208bの阻害剤およびmiR−499の阻害剤の両方の投与は、いずれかの阻害剤のみの投与と比較して、心臓ストレス応答に対するより迅速な効果をもたらす。例えば、心臓ストレス応答の低下は、阻害剤の投与後、8週間未満、6週間未満、4週間未満、3週間未満、2週間未満、1週間未満、5日未満、3日未満、または1日未満で生じる。他の実施態様では、心臓ストレス応答の低下は、阻害剤の投与後、12時間未満で生じる。
【0034】
いくつかの実施態様では、miR−208(例えば、miR−208aおよび/またはmiR−208b)阻害剤およびmiR−499阻害剤は、成熟miR−499および/またはmiR−208aもしくはmiR−208b配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドであってもよい。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの化学修飾を有する。例えば、適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1種または複数の「配座的に制限された」または二環式糖ヌクレオシド修飾、例えば「ロックト核酸」からなるものであってもよい。「ロックト核酸」(LNA)は、リボース糖部分の2’および4’炭素の間に余分な橋を含有することによって、LNAを含有するオリゴヌクレオチドに高い熱安定性を与える「ロックされた」構造をもたらす、修飾されたリボヌクレオチドである。miR−208a/miR−208bおよびmiR−499を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、LNAまたは他の修飾ヌクレオチドおよびリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの組合せを含有することができる。あるいは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、糖−リン酸主鎖ではなくペプチドをベースにした主鎖を含有するペプチド核酸(PNA)を含んでいてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドが含有していてもよいその他の化学修飾には、限定するものではないが、2’−O−アルキル(例えば、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル)、2’−フルオロ、および4’チオ修飾などの糖修飾と、1種または複数のホスホロチオエート、モルホリノ、またはホスホノカルボキシレート結合などの主鎖修飾が含まれる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第6,693,187号および第7,067,641号参照)。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、長さがより短いもの(例えば15未満のヌクレオチド)は、限定するものではないが、LNA、2環式ヌクレオシド、ホスホノギ酸、2’Oアルキルなどの1または複数の、親和性を高める修飾を含むことができる。いくつかの実施態様では、適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’および3’末端の両方に2’−O−メトキシエチル−修飾リボヌクレオチドを含有し少なくとも10デオキシリボヌクレオチドが中央にある、2’−O−メトキシエチル「ギャップマー」である。これらの「ギャップマー」は、RNA標的のRNアーゼH依存性分解機構を引き起こすことが可能である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第6,838,283号に記載されるように、安定性を高め効力を改善するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドのその他の修飾は当技術分野で知られており、本発明の方法で使用するのに適している。miRNAの活性を阻害するのに有用な好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが約5〜約50ヌクレオチド、長さが約10〜約30ヌクレオチド、または長さが約20〜約25ヌクレオチドである。ある実施態様では、miR−208a/miR−208bおよびmiR−499を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが約8〜約18のヌクレオチドであり、他の実施態様では、長さが約12〜16のヌクレオチドである。特に、miR208aまたはmiR208bに相補的である任意の8塩基長またはそれ以上のもの、つまり、miRの5’末端から開始して、成熟配列の3’末端に至る、miR208aまたはmiR208b中の任意の連続する配列に相補的な、任意の抗mir配列が、使用されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、いくつかの場合、成熟miRNA配列に対して少なくとも部分的に相補的な配列、例えば、成熟miRNA配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的な配列を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列に対して実質的に相補的であってもよく、即ち、標的ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%相補的であってもよい。1つの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列に対して100%相補的な配列を含む。
【0035】
他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンタゴmirである。「アンタゴmir」は、miRNA配列に少なくとも部分的に相補的な、一本鎖の、化学修飾されたリボヌクレオチドである。アンタゴmirは、2’−O−メチル−糖修飾など、1または複数の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、アンタゴmirは、修飾ヌクレオチドのみ含む。アンタゴmirは、部分または完全ホスホロチオエート主鎖をもたらす1または複数のホスホロチオエート結合を含んでいてもよい。in vivo送達および安定性を促進させるために、アンタゴmirは、コレステロールなどのステロイド、脂肪酸、ビタミン、炭水化物、ペプチド、または他の小分子リガンドにその3’末端で結合してもよい。miRNAを阻害するのに適したアンタゴmirは、長さが約15〜約50ヌクレオチドであってもよく、より好ましくは長さが約18〜約30ヌクレオチド、最も好ましくは長さが約20〜約25ヌクレオチドである。「部分的に相補的」は、標的ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的な配列を指す。アンタゴmirは、成熟miRNA配列に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的であってもよい。いくつかの実施態様では、アンタゴmirは、成熟miRNA配列に対して実質的に相補的であってもよく、即ち、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%が標的ポリヌクレオチド配列に対して相補的である。その他の実施態様では、アンタゴmirは、成熟miRNA配列に対して100%相補的である。
【0036】
いくつかの実施態様において、miR−499の阻害剤およびmiR−208a/miR−208bの阻害剤は、成熟miR−499および成熟miR−208aまたはmiR−208b配列と完全に相補的な配列を含むアンタゴmirである。1つの実施態様において、miR−499の阻害剤は、5’−UUAAGACUUGCAGUGAUGUUU−3’(配列番号14)と、部分的または完全に相補的な配列を有するアンタゴmirである。別の実施態様において、miR−208aの阻害剤は、5’−AUAAGACGAGCAAAAAGCUUGU−3’(配列番号5)と、部分的または完全に相補的な配列を有するアンタゴmirである。別の実施態様において、miR−208aの阻害剤は、配列5’−ACAAGCUUUUUGCUCGUCUUAU−3’(配列番号15)を有するアンタゴmirである。さらに別の実施態様において、miR−208aの阻害剤は、配列番号16の配列を有するアンタゴmirである。別の実施態様において、miR−208bの阻害剤は、5’−AUAAGACGAACAAAAGGUUUGU−3’(配列番号19)と、部分的または完全に相補的な配列を有するアンタゴmirである。
【0037】
いくつかの実施態様において、miR−499の阻害剤およびmiR−208aまたはmiR−208bの阻害剤は、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。1つの実施態様において、miR−499の阻害剤は、5’−UUAAGACUUGCAGUGAUGUUU−3’(配列番号14)と、実質的に相補的な配列を含む、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の実施態様において、miR−208aの阻害剤は、5’−AUAAGACGAGCAAAAAGCUUGU−3’(配列番号5)と、実質的に相補的な配列を含む、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに別の実施態様において、miR−208bの阻害剤は、5’−AUAAGACGAACAAAAGGUUUGU−3’(配列番号19)と、実質的に相補的な配列を含む、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。本明細書において、「実質的に相補的な」とは、標的ポリヌクレオチド配列(例えば、成熟または前駆miRNA配列)と、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的な配列を指す。
【0038】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、miR−499またはmiR−208a/miR−208bの前駆miRNA配列(プレ−miRNA)に実質的に相補的な配列を含み得る。いくつかの実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、プレ−miR−499またはプレ−miR−208a/miR−208b配列のステムループ領域の外側に位置する配列と実質的に相補的な配列を含む。1つの実施態様において、miR−499機能の阻害剤は、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群から選択されるプレ−miR−499配列と実質的に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の実施態様において、miR−208a機能の阻害剤は、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群から選択されるプレ−miR−208a配列と実質的に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに別の実施態様において、miR−208b機能の阻害剤は、配列番号18のプレ−miR−208b配列と実質的に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0039】
本発明の別の実施態様において、miR−208およびmiR−499の両方を同時に阻害するために、単一核酸(single nucleic acid)分子を用い得る。例えば、単一核酸は、成熟miR−208a配列(例えば、配列番号5)に少なくとも部分的に相補的な配列および成熟miR−499配列(例えば、配列番号14)に少なくとも部分的に相補的な配列を含み得る。別の実施態様において、単一核酸は、成熟miR−208b配列(例えば、配列番号19)に少なくとも部分的に相補的な配列および成熟miR−499配列(例えば、配列番号14)に少なくとも部分的に相補的な配列を含み得る。さらに別の実施態様において、単一核酸は、プレ−miR−208a配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4)に少なくとも部分的に相補的な配列およびプレ−miR−499配列(例えば、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12)に少なくとも部分的に相補的な配列を含み得る。別の実施態様において、単一核酸は、プレ−miR−208b配列(例えば、配列番号18)に少なくとも部分的に相補的な配列およびプレ−miR−499配列(例えば、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12)に少なくとも部分的に相補的な配列を含み得る。単一核酸は、さらに、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)とmiR−499標的配列との間に、1または複数のスペーサーヌクレオチドを含み得る。例えば、単一核酸は、miR−208a/miR−208bとmiR−499標的配列との間に、約1〜約200のスペーサーヌクレオチド、より好ましくは約5〜約100のスペーサーヌクレオチド、最も好ましくは約10〜約50のスペーサーヌクレオチドを含み得る。
【0040】
本明細書に記載の、miR−208a/miR−208bおよびmiR−499の任意の阻害剤は、miR−208a/miR−208b阻害剤およびmiR−499阻害剤をコードする発現ベクターを細胞に送達することにより、標的細胞(例えば心臓細胞、骨格筋細胞)に送達することができる。miR−208a/miR−208bの阻害剤およびmiR−499の阻害剤は、同一の発現ベクターによってコードされることができる。あるいは、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)の阻害剤およびmiR−499の阻害剤は、別々の発現ベクター上にコードされる。「ベクター」とは、対象核酸を細胞内部へと送達するのに用いることができる物質の組成物である。直鎖ポリヌクレオチド、イオン化合物または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスが含まれるがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語は、自己複製型のプラスミドまたはウイルスを包含する。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるがこれらに限定されない。発現コンストラクトは、生細胞内で複製することもでき、合成することもできる。本出願の目的において、「発現コンストラクト」、「発現ベクター」、および「ベクター」という用語は、互換的に用いられ、一般的で例示的な意味において本発明の適用を示すものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0041】
1つの実施態様において、miR−208a/miR−208bおよび/またはmiR−499の阻害剤を発現する発現ベクターは、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするオリヌクレオチドに「作動的に連結された(operably linked)」プロモーターを含み、ここで、発現したアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)および/またはmiR−499の成熟配列に、部分的または完全に相補的である。本明細書において、「作動的に連結された」または「転写制御下にある」という語句は、プロモーターが、ポリヌクレオチドに対して、RNAポリメラーゼによる転写の開始および該ポリヌクレオチドの発現を制御するのに適正な位置および方向にあることを意味する。別の実施態様において、発現ベクターは、本明細書に記載のmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)およびmiR−499の両方を標的とする単一核酸をコードしてもよく、ここで、単一核酸はプロモーターに作動的に連結する。別の実施態様において、単一発現ベクターは、miR−208a/miR−208b阻害剤とmiR−499阻害剤の両方をコードしてもよく、ここで、miR−208a/miR−208b阻害剤は、miR−499阻害剤とは異なるプロモーターによって作動する。
【0042】
本明細書において、「プロモーター」とは、細胞の合成機構または導入された合成機構により認識され、遺伝子に特異的な転写を開始するのに必要とされるDNA配列を指す。適切なプロモーターは、RNA polI、polII、polIIIおよびウイルスプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス長末端反復)を含むがこれらに限定されない。1つの実施態様において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。特に関与するのは筋特異的プロモーターであり、より特定すれば、心臓特異的プロモーターである。これらには、ミオシン軽鎖2プロモーター(Franzら、(1994) Cardioscience, Vol. 5(4):235-43; Kellyら(1995) J. Cell Biol., Vol. 129(2):383-396)、アルファアクチンプロモーター(Mossら (1996) Biol. Chem., Vol. 271(49):31688-31694)、トロポニン1プロモーター(Bhavsarら(1996) Genomics, Vol. 35(1):11-23);Na+/Ca2+交換プロモーター(Barnesら(1997) J. Biol. Chem., Vol. 272(17):11510-11517)、ジストロフィンプロモーター(Kimuraら(1997) Dev. Growth Differ., Vol. 39(3):257-265)、アルファ7インテグリンプロモーター(ZioberおよびKramer (1996) J. Bio. Chem., Vol. 271(37):22915-22)、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター(LaPointeら(1996) Hypertension, Vol. 27(3 Pt 2):715-22)およびアルファB−クリスタリン/低分子熱ショックタンパク質プロモーター(Gopal-Srivastava (1995) J. Mol. Cell. Biol., Vol. 15(12):7081-7090)、アルファミオシン重鎖プロモーター(Yamauchi-Takiharaら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 86(10):3504-3508)およびANFプロモーター(LaPointeら(1988) J. Biol. Chem., Vol. 263(19):9075-9078)が含まれる。
【0043】
特定の実施態様において、miR−499および/またはmiR−208a/miR−208b阻害剤をコードするポリヌクレオチドに作動的に連結したプロモーターは、誘導プロモーターであり得る。誘導プロモーターは技術分野で既知であり、テトラサイクリンプロモーター、メタロチオネインIIAプロモーター、熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答因子、アデノウイルス後期プロモーターおよび誘導マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRが含まれるがこれらに限定されない。発現ベクターは、本明細書に記載のmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)およびmiR−499の両方を標的とする単一核酸をコードしてもよく、ここで、単一核酸は誘導プロモーターに作動的に連結する。あるいは、単一発現ベクターは、miR−208a/miR−208b阻害剤およびmiR−499阻害剤をコードしてもよく、ここで、miR−208a/miR−208b阻害剤は第1誘導プロモーターによって作動し、miR−499阻害剤は第2誘導プロモーターによって作動する。別の実施態様において、第1発現ベクターは、miR−208a/miR−208b阻害剤をコードしてもよく、ここで、miR−208a/miR−208b阻害剤は第1誘導プロモーターに作動的に連結し、そして、第2発現ベクターは、miR−499阻害剤をコードしてもよく、ここで、miR−499阻害剤は第2誘導プロモーターに作動的に連結する。miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)阻害剤およびmiR−499阻害剤の発現を制御するための、誘導プロモーターと構成的プロモーターの他の組み合わせもまた企図される。例えば、miR−208a/miR−208b阻害剤は構成的プロモーターを用いたベクターから発現し得る一方、miR−499阻害剤は誘導プロモーターを用いたベクターから発現し得る。
【0044】
本発明は、処理後にmiR−499阻害剤およびmiR−208a/miR−208b阻害剤を除去(scavenging)または取り除く(clearing)方法もまた含む。前記方法は、心臓組織中でmiR−499阻害剤およびmiR−208a/miR−208b阻害剤の結合部位を過剰発現する工程を含み得る。別の実施態様において、本発明は、処理後にmiR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)を除去または取り除く方法を提供する。1つの実施態様において、前記方法は、骨格筋および心筋特異的プロモーター(筋クレチンキナーゼ(MCK))を用いた骨格筋中でのmiR−499およびmiR−208a/miR−208bの結合部位領域の過剰発現を含む。前記結合部位領域は、好ましくはmiR−499およびmiR−208aまたはmiR−208bのためのシード領域の配列を含む。シード領域は、2〜8塩基にわたるmiRNAの5’部分であり、標的認識に重要である。いくつかの実施態様において、結合部位は、例えばTHRAP1またはPURベータのような、miR−499またはmiR−208の1または複数の標的の3’UTRからの配列を含み得る。別の実施態様において、miRNAの機能を弱めるか停止するために、miR−499およびmiR−208の後、miR−499阻害剤およびmiR−208阻害剤を投与し得る。
【0045】
本発明の別の実施態様において、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)の阻害剤およびmiR−499の阻害剤は、同時投与される。miR−208阻害剤およびmiR−208は、単一製剤中で投与され得る。例えば、miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤を含む医薬組成物を、2つの阻害剤を同時投与するために用いることができる。あるいは、miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤は、本願明細書中に記載の発現ベクターのような単一核酸によってコードされ得る。長期間(たとえば、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年または5年)にわたって2つの阻害剤の同時投与を複数回行うことができる。
【0046】
いくつかの実施態様において、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)の阻害剤およびmiR−499の阻害剤は、連続して投与される。1つの実施態様において、miR−208の阻害剤は、miR−499の阻害剤に先立って投与される。別の実施態様において、miR−499の阻害剤は、miR−208の阻害剤に先立って投与される。miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤の投与を分離する間隔は、数分〜数日の範囲であり得る。例えば、該間隔は、約1時間〜約72時間、6時間〜約48時間または約12時間〜約24時間であることができる。好ましい実施態様において、miR−208阻害剤とmiR−499阻害剤の投与の間の間隔は、少なくとも24時間である。本発明者らは、miR−499阻害剤を、miR−208阻害剤の少なくとも24時間前に投与すると、miR−208阻害剤投与の約3日後のストレス誘導性β−MHC発現が少なくとも約50%低下することを確認した。miR−499阻害剤を投与しない場合、miR−208阻害剤投与の少なくとも約2ヶ月後まで、ストレス誘導性β−MHC発現における同等の効果は確認されなかった。
【0047】
本発明の他の実施態様において、持続的効果を発揮するために、miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤の連続投与は1または複数回実施される。この点では、各種の組合せを用いることができる。例示を目的として述べると、miR−499の阻害剤が「A」であり、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)の阻害剤が「B」である場合、合計投与回数3および4回に基づく以下の順列が例示的である:
【化5】

【0048】
他の組合せも同様に意図される。
【0049】
好ましくは、対象の心臓細胞におけるmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)およびmiR−499の発現または活性は、miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤の投与後に低下する。特定の実施態様において、miR−208a/miR−208bおよび/またはmiR−499の発現または活性は、miR−208阻害剤およびmiR−499阻害剤の投与後、50%超、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超または95%超、50%超低下する。1つの実施態様において、阻害剤の投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208a/miR−208bおよびmiR−499の発現または活性は、60%超低下する。別の実施態様において、阻害剤の投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208a/miR−208bおよびmiR−499の発現または活性は、80%超低下する。さらに別の実施態様において、阻害剤の投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208a/miR−208bおよびmiR−499の発現または活性は、90%超低下する。
【0050】
本発明はまた、心筋および/または骨格筋の収縮性を制御する方法も含む。成人骨格筋繊維は、特異的収縮および代謝特性に基づき、速単収縮および遅単収縮サブタイプに分類される。これらの特性は、ミオシン軽鎖および重鎖、トロポミオシンおよびトロポニンならびにミオグロビンの、速収縮および遅収縮タンパク質アイソフォームの特定のセットの発現を反映する(Nayaら (2000) J Biol Chem, Vol. 275(7):4545-4548)。遅−単収縮筋は、主に、姿勢維持および持続した自発運動のような慢性的活動に用いられる。速−単収縮繊維は、主に、力強い爆発的運動に用いられる。成人骨格筋表現型は、不変ではなく、負荷耐性および収縮使用パターンのバリエーションを調節する能力を保持し、形態、表現型および収縮特性の適応をもたらす。
【0051】
両方のmiR−208a対立遺伝子を欠くマウスの心臓において、複数の速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の上方制御が観察された。この、miR−208aノックアウトマウスの心臓における、速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の上方制御は、miR−208が速骨格筋タンパク質遺伝子プログラムを抑制するように通常は機能することを示す。miR−208a変異マウスにおいて、miR−499発現の随伴的現象が観察され(実施例3参照)、miR−499も、速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の発現の負の制御をすることが示唆された。上述したように、miR−208bも、遅骨格筋(例えば、ヒラメ筋)中で主に発現する。したがって、miR−208bは、ヒトにおける心筋および骨格筋収縮性に大規模な影響を有し得、また、速骨格筋遺伝子プログラムの制御および繊維特性の決定をし得る。本発明者らは、最近、miR−208bおよびmiR−499は、遅筋繊維遺伝子プログラムを活性化し、速筋繊維遺伝子プログラムを抑制することによって、筋繊維特性の特定において重要な役割を果たすことを示した。これらのmiRNAの働きは、Sox6、PURβ、Sp3およびHP1βのような、遅筋繊維遺伝子の転写抑制因子の堆積(collection)により、一部介在される。骨格筋特異的MCKプロモーターmiR−499遺伝子組み換え動物を用いて、遅筋繊維タイプへの変換も明らかになった。さらに著しいことに、マウスに強制トレッドミルランニング計画を行うと、野生型同腹子と比較してmiR−499遺伝子組み換え動物は50%超長く走り、速筋原繊維タイプからより遅い繊維タイプへの再プログラミングの結果として持久力が高まったことが示唆された。van Rooijら、(2009) Developmental Cell, Vol. 17:662-673)参照のこと。
【0052】
1つの実施態様において、心筋および/または骨格筋収縮性の制御方法は、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)発現または活性のモジュレータを心筋および/または骨格筋細胞に投与する工程を含む。別の実施態様において、前記方法は、miR−499およびmiR−208bのモジュレータを投与する工程を含む。別の実施態様において、心臓収縮タンパク質遺伝子の発現を制御する方法であって、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)発現または活性のモジュレータを心臓細胞に投与する工程を含む方法が提供される。別の実施態様において、骨格筋収縮タンパク質遺伝子の発現を制御する方法であって、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)発現または活性のモジュレータを骨格筋細胞に投与する工程を含む方法が提供される。別の実施態様において、骨格筋収縮タンパク質遺伝子の発現を制御する方法であって、miR−499およびmiR−208b発現または活性のモジュレータを骨格筋細胞に投与する工程を含む方法が提供される。さらに別の実施態様において、本発明は、骨格筋細胞の繊維タイプの交代を誘導する方法であって、骨格筋細胞に、miR−499およびmiR−208発現または活性のモジュレータを骨格筋細胞に投与する工程を含む方法を提供する。別の実施態様において、骨格筋細胞の繊維タイプの交代を誘導する方法は、miR−499およびmiR−208b発現または活性のモジュレータを骨格筋細胞に投与する工程を含む。モジュレータは、miR−499、miR−208および/またはmiR−208bの発現または活性のアゴニストまたは阻害剤であり得る。いくつかの実施態様において、miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)阻害剤を細胞に接触させることにより、細胞中のTHRAP1、PURベータ、ミオスタチン、Sp3、HP1βおよびSox6の発現が増大する。別の実施態様において、miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)のアゴニストを細胞に接触させることにより、細胞中のTHRAP1、PURベータ、ミオスタチン、Sp3、HP1βおよびSox6の発現が低下する。
【0053】
本発明の特定の実施態様において、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)発現または活性の阻害剤を心臓細胞に投与する工程を含む、心臓細胞中のβ−MHC発現を低下させる方法が提供される。1つの実施態様において、miR−499およびmiR−208b発現または活性の阻害剤を骨格筋細胞に投与する工程を含む、骨格筋細胞中のβ−MHC発現を低下させる方法が提供される。本発明の別の実施態様において、内因性miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)発現または活性を増大させる工程あるいは心臓細胞および/または骨格筋細胞に外因性miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)を投与する工程を含む、心臓細胞および/または骨格筋細胞中のβ−MHC発現を上昇させる方法が提供される。
【0054】
本発明の1つの実施態様において、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)発現または活性の阻害剤を心臓細胞に投与する工程を含む、心臓細胞中の速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の発現を増大させる方法が提供される。別の実施態様において、miR−499およびmiR−208b発現または活性の阻害剤を骨格筋細胞に投与する工程を含む、骨格筋細胞中の速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の発現を増大させる方法が提供される。本発明の別の実施態様において、内因性miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)発現または活性を増大させる工程あるいは心臓細胞および/または骨格筋細胞に外因性miR−499およびmiR−208a(またはmiR−208b)を投与する工程を含む、心臓細胞および/または骨格筋細胞中の骨格筋速筋収縮タンパク質遺伝子の発現を低下させる方法が提供される。本発明の方法によって増大または低下し得る速骨格筋収縮タンパク質遺伝子の例には、トロポニンI2;トロポニンT3、速骨格筋ミオシン軽鎖またはアルファ骨格筋アクチンが含まれるがこれらに限定されない。
【0055】
骨格筋において、遅繊維遺伝子の抑制および速繊維遺伝子の活性は、非活動性萎縮、反重力への応答における筋肉消耗および脱神経を含むがこれらに限定されない多数の筋骨格系障害に関与する。したがって、骨格筋細胞における、miR−208aまたはmiR−208bと組み合わせたmiR−499の発現は、速繊維遺伝子を抑制することによって遅繊維遺伝子の相互発現を活性化することに有用であり得る。よって、本発明はまた、筋骨格系障害の治療または予防を必要とする対象において、筋骨格系障害を治療または予防する方法も包含する。1つの実施態様において、前記方法は、miR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストおよびmiR−499のアゴニストを対象に投与する工程を含み、ここで、投与後、対象の骨格細胞におけるmiR−208a/miR−208bおよびmiR−499の発現または活性が増大する。別の実施態様において、前記方法は、miR−208bのアゴニストおよびmiR−499のアゴニストを対象に投与する工程を含み、ここで、投与後、対象の骨格細胞におけるmiR−208bおよびmiR−499の発現または活性が増大する。好ましくは、miR−499アゴニストおよびmiR−208a(またはmiR−208b)アゴニストの投与後、対象の骨格筋細胞における1または複数の速骨格筋遺伝子の発現が低下する。1または複数の速骨格筋遺伝子は、トロポニンI2;トロポニンT3、速骨格筋ミオシン軽鎖およびアルファ骨格筋アクチンを含むことができるがこれらに限定されない。
【0056】
別の実施態様において、本発明は、miR−499およびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストを骨格筋に投与する工程を含む、低下した重力環境への応答における筋肉消耗の治療または予防方法を提供する。別の実施態様において、低下した重力環境への応答における筋肉消耗の治療または予防方法は、miR−499およびmiR−208bのアゴニストを骨格筋に投与する工程を含む。さらに別の実施態様において、本発明は、miR−499のアゴニストおよびmiR−208(例えば、miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストを骨格筋に投与する工程を含む、筋萎縮の治療または予防方法を提供する。別の実施態様において、筋萎縮の治療または予防方法は、miR−499のアゴニストおよびmiR−208bのアゴニストを骨格筋に投与する工程を含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、miR−208(miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストおよびmiR−499のアゴニストは、成熟miR−208(miR−208aまたはmiR−208b)および/またはmiR−499配列をコードするポリヌクレオチドである。1つの実施態様において、ポリヌクレオチドは、成熟miR−208a配列(配列番号5)および成熟miR−499配列(配列番号14)を含む。別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、成熟miR−208b配列(配列番号19)および成熟miR−499配列(配列番号14)を含む。別の実施態様において、miR−499のアゴニストおよびmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストは、miR−499およびmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)のプリ−miRNAまたはプレ−miRNA配列を含むポリヌクレオチドであり得る。あるいは、miR−208(miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストおよびmiR−499のアゴニストは、それぞれmiRNAの成熟配列またはプレ−miRNA配列を含む、別々のポリヌクレオチドであり得る。成熟miR−499および/またはmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)配列を含むポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、ロックト核酸、ペプチド核酸、糖修飾、例えば、2’−O−アルキル(例えば、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル)、2’−フルオロおよび4’チオ修飾、ならびにバックボーン修飾、例えば、1または複数のホスホロチオエート、モルホリノまたはホスホノカルボキシレート連結などの、1または複数の化学修飾を含み得る。1つの実施態様において、miR−499、miR−208および/またはmiR−208b配列を含むポリヌクレオチドは、コレステロールに共有結合している。
【0058】
別の実施態様において、miR−499およびmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)のアゴニストは、発現ベクター上にコードされ得る。miR−499およびmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)発現のための発現ベクターは、miR−499および/またはmiR−208(miR−208aまたはmiR−208b)をコードするポリヌクレオチドに作動的に連結した少なくとも1つのプロモーターを含む。miR−499をコードするポリヌクレオチドは、一次miRNA−499配列(プリ−miR−499)、前駆体miRNA−499配列(プレ−miR−499)または成熟miR−499配列をコードし得る。miR−208a/miR−208bをコードするポリヌクレオチドは、一次miRNA−208a/208b配列(プリmiR−208/プリmiR−208b)、前駆体miRNA−208/208b配列(プレmiR−208a/プレmiR−208b)または成熟miR−208a/208b配列をコードし得る。いくつかの実施態様において、発現ベクターは、プロモーターに作動的に連結したポリヌクレオチドを含み、ここで、前記ポリヌクレオチドは、配列番号5および配列番号14の配列を含む。別の実施態様において、発現ベクターは、プロモーターに作動的に連結したポリヌクレオチドを含み、ここで、前記ポリヌクレオチドは、配列番号19および配列番号14の配列を含む。このようなポリヌクレオチドは、約18〜約2000ヌクレオチド長、約70〜約200ヌクレオチド長、約20〜約50ヌクレオチド長または約18〜25ヌクレオチド長であり得る。別の実施態様において、発現ベクターは、miR−499アゴニスト(例えば、miR−499配列を含むポリヌクレオチド)およびmiR−208アゴニスト(例えば、miR−208aまたはmiR−208b配列を含むポリヌクレオチド)を、異なるプロモーターから発現し得る。miR−499、miR−208aおよび/またはmiR−208bをコードするポリヌクレオチドは、イントロンをコードする核酸またはmRNAの非翻訳領域をコードする核酸または非コードRNA中に位置し得る。1つの実施態様において、発現ベクターは、Myh7b遺伝子の20番目のイントロンからの配列またはMyh7(β−MHC)遺伝子の31番目のイントロンからの配列を含み得る。
【0059】
対象に対し、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストは、miR−499のアゴニストと同時投与し得る。2つのアゴニストは、単一製剤、例えば、miR−208aまたはmiR−208bアゴニストとmiR−499アゴニストを含む医薬組成物で投与し得る。あるいは、2つのアゴニスト(例えば、miR−208aとmiR−499またはmiR−208bとmiR−499)は、2つのmiRNAの成熟またはプレ−miRNA配列をコードする単一のポリヌクレオチドであり得る。2つのアゴニストの複数回の同時投与は、長期間(たとえば、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年または5年)にわたって行うことができる。
【0060】
特定の実施態様において、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストは連続して投与される。1つの実施態様において、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストは、miR−499のアゴニストに先立って投与される。別の実施態様において、miR−499のアゴニストは、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストに先立って投与される。アゴニストの投与を分離する間隔は、数分〜数週の範囲、例えば、約1時間〜約72時間、6時間〜約48時間または約12時間〜約24時間であることができる。好ましい実施態様において、miR−208aまたはmiR−208bアゴニストとmiR−499アゴニストの投与の間の間隔は、少なくとも24時間である。
【0061】
本発明はまた、miR−499、miR−208aおよび/またはmiR−208bの阻害剤またはアゴニストを含む医薬組成物を包含する。臨床適用が企図される場合、医薬組成物は意図する適用に適切な形態に調製されるであろう。一般的に、これは、発熱物質ならびにヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物を実質的に含まない組成物の調製を伴うであろう。
【0062】
1つの実施態様において、医薬組成物は、有効用量のmiR−499阻害剤および/または有効用量のmiR−208aもしくはmiR−208b阻害剤を含む。別の実施態様において、医薬組成物は、有効用量のmiR−499アゴニストおよび/または有効用量のmiR−208aもしくはmiR−208bアゴニストを含む。「有効用量」は、有利または所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。本発明のmiRNA阻害剤またはmiRNAアゴニストの有効用量は、約1mg/kg〜約200mg/kg、約20mg/kg〜約160mg/kgまたは約40mg/kg〜約100mg/kgであり得る。1つの実施態様において、miR−208またはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤は、それぞれ、約20mg/kg〜約200mg/kgの用量で投与される。別の実施態様において、miR−208またはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤は、それぞれ、約80mg/kgの用量で投与される。別の実施態様において、miR−208またはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストは、それぞれ、約20mg/kg〜約200 mg/kgの用量で投与される。さらに別の実施態様において、miR−208またはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストは、それぞれ、約80mg/kgの用量で投与される。何を有効用量と考えるかの正確な決定は、サイズ、年齢、障害のタイプ(例えば、心筋梗塞、心不全、心臓肥大、または筋骨格系)を含む、各患者の個別の要素および阻害剤またはアゴニストの本質(例えば、アンタゴmir、発現コンストラクト、アンチセンスオリゴヌクレオチド、等)に基づくことができる。したがって、当業者であれば、本開示および技術常識から、用量を容易に確定することができる。
【0063】
高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを包含する脂質ベース系などの、コロイド分散系を、miRNA機能の阻害剤、miRNAアゴニストをコードするポリヌクレオチドまたは特定のmiRNA阻害剤もしくはアゴニストを発現するコンストラクトのための送達担体として用い得る。心筋組織および骨格筋組織に対して本発明の核酸を送達するのに適する市販の脂質エマルジョンには、Intralipid(登録商標)、Liposyn(登録商標)、Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、Nutrilipid、および他の類似の脂質エマルジョンが含まれる。in vivoにおける送達担体として用いるのに好ましいコロイド系は、リポソーム(すなわち、人工膜小胞体)である。このような系の調製および使用は、当技術分野でよく知られている。例示的な製剤はまた、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、US5,981,505;US6,217,900;US6,383,512;US5,783,565;US7,202,227;US6,379,965;US6,127,170;US5,837,533;US6,747,014;およびWO03/093449においても開示されている。
【0064】
一般に、送達担体を安定させ、標的細胞による取込みを可能とするのに適する塩および緩衝液を用いることが所望される。本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体中に溶解または分散した、有効量の送達担体を含み、前記送達担体は、阻害剤ポリヌクレオチドまたはmiRNAポリヌクレオチド配列(例えば、リポソームまたは他の複合体または発現ベクター)を含む。「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与した場合に、有害反応、アレルギー性反応、または他の都合の悪い反応をもたらさない分子的実体および組成物を指す。本明細書において「薬学的に許容される担体」には、ヒトに対する投与に適する医薬などの医薬の製剤化に用いるのに許容される、溶媒、緩衝液、溶液、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのこのような媒体および剤の使用は、当技術分野でよく知られている。任意の従来の媒体または剤は、本発明の有効成分に適合しない場合を除いて、治療組成物における使用が意図される。補完的な有効成分もまた、それらが組成物のベクターまたはポリヌクレオチドを不活化しない場合に、組成物中に組み込むことができる。
【0065】
本発明の活性組成物は、従来の医薬調製物を包含する。本発明によるこれらの組成物の投与は、その経路を介して標的組織に達し得る限りにおいて、任意の一般的な経路を介し得る。これには、経口経路、鼻腔内経路、または口腔内経路が含まれる。あるいは、投与は、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射によるものであり得、あるいは心臓組織内への直接的な注射によるものでもあり得る。miRNA阻害剤、miRNA配列をコードするポリヌクレオチドまたはmiRNA配列を含む発現コンストラクトを含む、医薬組成物はまた、カテーテルシステムを介して投与することもでき、心臓への治療剤の送達のために冠動脈循環を分離するシステムを介して投与することもできる。当技術分野では、心臓および冠動脈血管系へと治療剤を送達するための各種のカテーテルシステムが知られている。本発明において用いるのに適する、カテーテルベースの送達方法または冠動脈分離方法の一部の非限定的な例は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,416,510号;米国特許第6,716,196号;米国特許第6,953,466号;WO2005/082440;WO 2006/089340;米国特許公開第2007/0203445号;米国特許公開第2006/0148742号;および米国特許公開第2007/0060907号において開示されている。このような組成物ならば通常、本明細書に記載の薬学的に許容される組成物として投与されるであろう。
【0066】
活性化合物はまた、非経口投与も腹腔内投与も可能である。例示を目的として述べると、遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中、ならびに油中おいても調製することができる。保管および使用の通常の条件下において、これらの調製物は一般に、微生物の増殖を防止する防腐剤を含有する。
【0067】
注射用の使用またはカテーテル送達に適する医薬形態には、例えば、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射用溶液または分散液を即時調製するための無菌粉末が含まれる。一般に、これらの調製物は無菌であり、容易な注射可能性が存在する程度において流体である。調製物は、製造条件および保管条件の下において安定であり、細菌および真菌など、微生物の汚染作用に対して保護されるべきである。適切な溶媒または分散媒は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含有しうる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要とされる粒子サイズの維持により、また界面活性剤の使用により維持することができる。微生物作用の防止は、各種の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを組み入れることが好ましいであろう。注射用組成物の長時間吸収は、組成物中における吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0068】
無菌の注射用溶液は、所望の他の任意の成分(例えば、上記で列挙された)と共に、活性化合物を適切な量で溶媒内へと組み込んだ後で、濾過による滅菌を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒、また例えば、上記で列挙した通りの他の所望の成分を含有する無菌の担体内へと、各種の無菌の有効成分を組み込むことにより調製することができる。無菌の注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法には、(1または複数の)有効成分に、任意のさらなる所望の成分を添加した粉末をもたらす、あらかじめ無菌で濾過されたそれらの溶液からの、真空乾燥法および凍結乾燥法が含まれる。
【0069】
本発明の組成物は一般に、中性または塩の形態で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、例えば、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデリン酸など)に由来する酸添加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が含まれる。タンパク質の遊離カルボキシル基と形成される塩も、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄)あるいは、有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)に由来することができる。
【0070】
製剤化されたら、溶液は、投与製剤に適合する形で、かつ治療的に有効であるような量で投与することが好ましい。製剤は、注射用溶液、薬剤放出カプセルなど、各種の形態において容易に投与することができる。水溶液中の非経口投与の場合、例えば一般には、溶液を適する形で緩衝し、例えば、まず十分な生理食塩水またはグルコースにより希釈液を等張とする。このような水溶液は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、および腹腔内投与に用いることができる。特に、本開示に照らせば、当業者に知られる通り、無菌の水性媒体を用いることが好ましい。例示を目的として述べると、1回の用量は、等張NaCl溶液1ml中に溶解させてから、皮下注入液1000mlに添加することも、提起される注入部位に注射することもできる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035〜1038および1570〜1580頁を参照されたい)。治療される対象の状態に応じて、用量には何らかの変化が必然的に生じる。投与責任者は、いずれにせよ、個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDAの生物学的製剤事務局基準により要請される無菌性、発熱物質性、一般的な安全性、および純度の基準を満たすものとする。
【0071】
本明細書に記載の任意の組成物は、キット内に含まれ得る。1つの実施態様において、キットは、miR−208aまたはmiR−208b阻害剤を含む第1医薬組成物およびmiR−499阻害剤を含む第2医薬組成物を包含する。別の実施態様において、キットは、miR−208aまたはmiR−208b阻害剤とmiR−499阻害剤を含む単一医薬組成物を包含する。別の実施態様において、キットは、miR−208aまたはmiR−208bアゴニストを含む第1医薬組成物およびmiR−499アゴニストを含む第2医薬組成物を包含する。さらに別の実施態様において、キットは、miR−208aまたはmiR−208bアゴニストとmiR−499アゴニストを含む単一医薬組成物を包含する。いくつかの実施態様において、キットは、細胞へのmiRNAアゴニストまたは阻害剤の送達を促進する1または複数のトランスフェクション試薬も包含しうる。
【0072】
キットの成分は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかにパッケージングし得る。キットの容器手段には一般に、その中に成分を入れ、好ましくは、適切に分注される、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段が含まれる。キット内に複数の成分が存在する場合、キットはまた一般に、その中にさらなる成分を個別に入れることが可能な第2、第3、または他のさらなる容器も含有する(例えば、無菌の薬学的に許容される緩衝液および/または他の希釈剤)。しかし、成分の各種の組合せをバイアル内に含めることができる。本発明のキットはまた、販売用に、核酸および他の任意の試薬を含有するための手段を気密容器で包含することが典型的である。このような容器には、その中に所望のバイアルが保持される、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器が含まれうる。
【0073】
キットの成分が1および/または複数の溶液中において提供される場合、該溶液は水溶液であり、無菌の水溶液が特に好ましい。
【0074】
しかし、キットの成分は、(1または複数の)乾燥粉末として提供することができる。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、該粉末は、適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段内において提供し得ることが想定される。
【0075】
このようなキットはまた、miRNAアゴニストもしくはmiRNA阻害剤を保存または維持するか、あるいはそれらの分解に対して保護的である成分も包含する。このような成分は、DNAseフリー、RNAseフリーまたはヌクレアーゼ(例えば、RNAseおよびDNAse)に対して保護的であり得る。このようなキットは一般に、適切な手段で、各個別の試薬または溶液ごとに異なる容器を含む。
【0076】
キットはまた、キット成分を用いる他、該キット内に包含されない他の任意の試薬を用いるための指示書も包含する。指示書は、実装の可能性がある変更も包含しうる。キットはまた、非経口投与もしくはカテーテルによる投与など、各種の投与経路によりmiRNAのアゴニストまたは阻害剤を投与するための器具またはデバイスも包含する。
【0077】
そのような試薬は、本発明のキットの実施態様であることが企図される。そのようなキットは、しかしながら、上記に特定された特定の品目に限定されず、miRNAの操作および特徴付けのために用いられる任意の試薬を包含し得る。
【0078】
以下の実施例は、本発明の多様な側面を例示する目的でのみ包含される。実施例および図面におけるmiR208への言及は、マウスのmiR208aを指す。しかし、当業者は、本開示に照らして、任意のヒトまたは他の動物に対して本発明を同様に適用可能であり、miR208aおよび/またはmiR208bのいずれかの変更を包含することを理解されたい。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
miR−208ノックアウトマウスは、圧負荷に応答して低減された心臓肥大および線維症を示す
miR−208を、α−MHC遺伝子のイントロン内にコードする。α−MHCと同様に、miR−208を、心臓において特異的に発現し、肺においてわずかに発現する。miR−208を、別個の転写産物として転写するのではなく、α−MHCのプレ−mRNAの外側に処理する。しかし、興味深いことに、miR−208は、少なくとも14日の著しく長い半減期を示し、その結果α−MHCのmRNAの発現が下方制御された場合でも、機能を発揮できる。
【0080】
miR−208ノックアウトマウスは、miR−208コード領域の上流に伸長した0.4kbの断片(5’アーム)を、ScaIIおよびNotIを用いて消化し、loxP部位およびFrt−隣接ネオマイシンカセットの上流のpGKneoF2L2dta標的プラスミドに連結することにより、miR−208標的ベクターを作製することによって作製される。3.3kbの断片(3’アーム)を、SalIおよびHindIIIを用いて消化し、ネオマイシン耐性およびDta陰性選択カセットの間のベクターに連結した。破壊された対立遺伝子を担持する標的ES細胞を、5’および3’のプローブを用いてサザンブロット分析により特定した。3種のmiR−208標的ESクローンを特定し、胚盤胞注入に使用した。得られたキメラマウスをC57BL/6に交配させ、突然変異対立遺伝子の生殖細胞系列伝達を得た。
【0081】
マウスにおけるmiR−208の遺伝的欠失では、明白な表現型の誘導に失敗したが、2月齢の野生型およびmiR−208−/−動物由来の心臓についてのマイクロアレイ分析により、miR−208の除去が多数の速骨格筋収縮性タンパク質遺伝子(通常は心臓において発現しない)の顕著な発現をもたらすことを明らかにした。したがって、これらの結果は、通常の状態下でmiR−208は、単独の心臓特異的MHC遺伝子と共発現し、心臓における骨格筋遺伝子の発現を抑制することにより、心筋細胞の同一性を維持することを示唆する。
【0082】
miR−208の最も注目に値する機能が、心臓ストレスに対するmiR−208ヌルマウスの異常応答によって明らかになった(van Rooijら、(2007) Science, Vol. 316: 575-579)。心臓の病理的リモデリングを起動する胸部大動脈絞扼(TAB)による圧負荷に応答して、miR−208ノックアウトマウスからの心臓の組織切片は、野生型マウスからの切片と比較して実質的には心筋細胞の肥大または線維症がなかった(図1A)。さらに、miR−208ノックアウトマウスは、圧負荷に応答してβ−MHCの発現を上方制御できなかった(図1BおよびC)。対照的に、ANFおよびBNPをコードするストレス応答遺伝子などの他のストレス応答遺伝子は、miR−208突然変異動物において強く誘導され(図1B)、miR−208が、心臓ストレス応答の他のファセットから切り離すことができる、β−MHCの発現の調節に特異的に関与することを実証した。
【0083】
(実施例2)
miR−208のノックダウンは、ストレスへの応答において、miR−208ノックアウト動物を表現型模写する
心臓ストレス応答に対するmiR−208の不在の効果の特異性を調べるために、動物に、成熟miR−208配列に相補的な配列(抗208;配列番号16)またはミスマッチ配列(mm;配列番号17)を有するアンタゴmirを毎日、静脈内注射した。ヌクレオシドはすべて、2’−OMe修飾されており、5’末端の2塩基および3’末端の4塩基は、ヌクレオシド間にホスホロチオエートを含有した。コレステロールは、ヒドロキシプロリノールリンカーを通してパッセンジャー鎖の3’末端に結合させた(図2A)。miR−208アンタゴmirを注射した動物の心臓のリアルタイムPCR分析は、処置の2か月後に、miR−208の効率的なノックダウンを示した(図2B)。
【0084】
心臓ストレス応答に対するin vivo miR−208下方制御の効果を試験するために、抗miR−208アンタゴmirまたはミスマッチコントロールを受けている動物に、圧負荷を誘発するために、シャム処置または胸部大動脈瘤絞扼術処置に供した。ミスマッチコントロールを用いて処置した動物は、β−MHCならびに他のストレス遺伝子(ANFおよびBNP)の上方制御と共に、典型的なストレス応答を示した。対照的に、抗miR−208アンタゴmirを用いて処置した動物は、ストレス刺激に応答したβ−MHCの上方制御を示さなかった。しかしながら、他のストレス遺伝子(ANFおよびBNP)の発現の増加が観察された(図2C)。抗miR−208アンタゴmirを用いて処置した動物のストレス応答は、miR−208ノックアウト動物に著しく類似し、miR−208が、ストレスに応答したβ−MHC発現の制御において重大な役割を果たすことを示唆した。
【0085】
(実施例3)
miR−208は、miR−499の発現に必要とされる
心臓におけるmiR−208の作用機構をさらに探求するために、本発明者らは、野生型およびmiR−208ノックアウトマウス由来の心臓におけるmiRNAの発現パターンを、マイクロアレイ分析により明確にした。miR−208ノックアウト心臓において上方制御および下方制御されるいくつかのmiRNAの中で、本発明者らは、miR−499が、正常な心臓において非常に豊富であるが、miR−208ノックアウト動物においてバックグラウンドレベルを超えて発現しなかったことを発見した。これらの知見は、ノーザンブロットにより確認した(図3)。miR−499遺伝子のゲノムの位置の分析は、miR−499遺伝子のゲノムが、α−MHC遺伝子の相同体であるMyh7b遺伝子の20番目のイントロン内に含まれることを示した。Myh7bに関するRT−PCRが、宿主遺伝子のmRNAが、miR−208の不在下で用量依存的に無効になることを示すので、miR−208は、Myh7bを制御し、その結果miR−499の転写レベルの発現を制御すると思われる(図3)。
【0086】
Myh7b遺伝子は、脊椎動物において保存され、心筋および遅骨格筋(例えば、ヒラメ筋)だけにおいて発現する(図4A)。同様に、miR−499は、リアルタイムPCR分析によって確認されるようにその宿主遺伝子と同じ発現パターンを有する(図4A&B)。Myh7b遺伝子の3’末端を対象とするプローブを使用したin situハイブリダイゼーションは、このミオシン(およびmiR−499)が心臓においてE10.5と同様に早く発現したことを示した(図4C)。その後、胚形成期間中、Myh7b/miR−499はまた、体節においても発現する。これらのデータは、miR−208がさらなるミオシンのMyh7bの起動に必要であり、Myh7bは関連miR−499を生み出す。さらに、miR−499は心臓肥大期間に下方制御される。
【0087】
病的な心臓肥大および筋肉収縮性の制御におけるmiR−499の役割をさらに探求するために、miR−499ノックアウト動物を作製した。miR−499の遺伝欠失は、その宿主遺伝子、Myh7bの発現に対して影響を有していなかった(図5A)。α−およびβ−MHCの両方についてのmiR−499突然変異体および野生型の動物からの心臓のウェスタンブロット分析は、miR−499の欠失がタンパク質レベルでいずれの遺伝子の発現にも影響しないことを示した(図5B)。miR−499がβ−MHC制御に対する効果を有するかどうかを調べるために、野生型およびmiR−499ノックアウト動物に、甲状腺機能低下を誘発し、β−MHCを上方制御するプロピルチオウラシル(PTU)を受けさせた。野生型およびmiR−499ノックアウト動物の両方は、PTUに応答したα−MHCの減少およびβ−MHCの増加を示した(図5C)。驚くべきことに、miR−208と異なり、miR−499は、α−MHCまたはβ−MHCのいずれの発現の制御にも必要とされない。
【0088】
(実施例4)
miR−208およびmiR−499の二重ターゲティング
miR−208は、miR−208ヘテロ接合体およびmiR−208ノックアウト動物におけるmiR−499発現の用量依存的減少によって示されるようにmiR−499の発現を調節する(図3および実施例3)。miR−208およびmiR−499の間の相互作用をさらに明らかにするために、野生型動物に、生理食塩液または成熟miR−208配列に相補的な配列を有する合成オリゴヌクレオチド(例えばアンタゴmir)(抗miR−208;配列番号16)の4用量(20mg/kg、40mg/kg、80mg/kg、および160mg/kg)のうちの1つを静脈内注射した。尾部静脈注射の3日後の心臓組織のノーザン分析は、成熟miR−208の発現の用量依存的減少を明らかにしたが、プレ−miR−208の発現は完全なままであった(図6A)。しかしながら、遺伝欠失モデルと異なり、miR−499の発現は、変わらなかった。さらに、β−MHCの発現レベルもまた、抗miR−208アンタゴmirの注射の3日後に影響を受けなかった(データ示さず)。
【0089】
実験の第2のシリーズでは、野生型動物に、単一用量の抗miR−208(80mg/kg)、2日連続の2回の連続的な用量(80mg/kg)の抗miR−208、または2日連続の2回の連続的な用量(80mg/kg)のミスマッチコントロールオリゴヌクレオチド(配列番号17)を静脈内注射した。処置の2か月後の心臓組織のノーザン分析は、miR−208およびmiR−499の両方の発現が、抗miR−208を用いて処置した動物において低下したことを示した(図6B)。リアルタイムPCR分析により、これらの結果を確認した(図6C)。さらに、β−MHCのイントロン内にコードされ、β−MHCと共発現するmiR−208bの発現の減少もまた、観察された。対応する宿主ミオシン遺伝子についてのリアルタイムPCR分析は、miR−208のノックダウンが、α−MHCの発現に影響しないが、β−MHCおよびMyh7bの発現の減少を誘発することを明らかにした(図6C)。β−MHCタンパク質の減少もまた、抗miR−208を用いる処置の2か月後に観察された(図6D)。これらの結果は、miR−499およびβ−MHCの発現のmiR−208制御が遅れて生じることを示し、miR−208がmiR−499の上流にあり、同様にβ−MHCの上流にあることを示唆する。したがって、β−MHC発現の低下の促進を達成するためにmiR−208およびmiR−499の両方を下方制御する必要がある。miR−208下方制御のみで、miR−499発現の最終的な減少が起こり、これは、次にβ−MHC発現の減少を誘発する。β−MHC発現に対するより即時の効果を得るために、miR−499およびmiR−208の両方は、下方制御のために標的とすることができる。
【0090】
miR−208およびmiR−499の両方を下方制御することの複合効果を調べるために、miR−499ノックアウト動物は、プロピルチオウラシル(PTU)、β−MHC発現の誘発物質を受ける前に、抗miR−208オリゴヌクレオチドを投与した。先の結果と同様に、PTUは、抗miR−208オリゴヌクレオチドを用いる処置がない状態で、野生型およびmiR−499ノックアウト動物の両方において、α−MHC発現の減少およびβ−MHC/miR−208b発現(miR−208bはβ−MHCと共発現する)の増加を誘発した(図7A、B)。そのような効果は、心臓ストレス応答の特性である。対照的に、処置の2週間後の、抗miR−208オリゴヌクレオチドを用いて処置したmiR−499ノックアウト動物からの心臓組織のノーザン分析およびリアルタイムPCR分析は、PTUに応答したβ−MHC/miR−208b発現の増加が観察されなかったことを示した(図7A、B)。抗miR−208を用いて処置したmiR−499ノックアウト動物の応答は、miR−208ノックアウト動物の応答に似ていた(図7B)。これらの結果は、β−MHCの効率的で迅速な下方制御が、miR−208およびmiR−499の両方を標的とすることによって達成することができることを示唆する。動物に投与した抗miR−208オリゴヌクレオチドの用量は、miR−208発現の60%の低下をもたらした。この減少のパーセンテージは、miR−499の不在下、PTUによるβ−MHCの誘発を抑制するのに十分であった(図7B)。これらの知見は、miR−499およびmiR−208の両方の低下が、病的な心臓肥大および心不全などの心臓障害の治療のための効率的な治療上の戦略であるかもしれないことを示す。
【0091】
(実施例5)
miR−208およびmiR−499のノックダウンは、心臓ストレス応答を阻害する
心臓障害を治療するためにmiR−208およびmiR−499を標的とする治療価値をさらに評価するために、マウスに、成熟miR−208a配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(抗208)、成熟miR−499配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(抗499)、または抗208および抗499オリゴヌクレオチド配列の両方を静脈内注射する。抗208および抗499の両方は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合によって結合したロックト核酸(LNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)の組合せを含有する。処置の3週間〜2か月後の、アンチセンスオリゴヌクレオチドを注射した動物の心臓のリアルタイムPCR分析を、miR−208およびmiR−499のノックダウンを評価するために使用する。
【0092】
心臓ストレス応答に対するin vivo miR−208およびmiR−499下方制御の効果を試験するために、抗208、抗499、または抗208および抗499オリゴの両方を受けている動物に、圧負荷を誘発するためにシャム処置または胸部大動脈瘤絞扼術処置に供した。未処置の動物は、β−MHCならびに他のストレス遺伝子(ANFおよびBNP)の上方制御と共に、典型的なストレス応答を示すことが予想される。対照的に、抗208および抗499の両方を用いて処置する動物は、いずれかのアンチセンスオリゴのみを受けている動物よりも明白に、ストレス刺激に応答した、β−MHCの上方制御の低下を示すことが予想される。
【0093】
本明細書に論じられ引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。開示された本発明は、これらが変更可能なように、記載される特定の方法論、プロトコール、および材料に限定されないことが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の実施態様のみについて記載する目的のためのものであり、添付の請求項によってのみ限定される本発明の範囲を限定するようには意図されないこともまた理解される。
【0094】
当業者らは、本明細書において記載される本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物をルーチン的な実験のみを使用して認識するまたは確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の請求項によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的な心臓肥大、心筋梗塞、または心不全を治療する必要がある対象において病的な心臓肥大、心筋梗塞、または心不全を治療する方法であって、miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤を対象に投与する工程を含み、投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208aまたはmiR−208bとmiR−499の発現または活性が低下する方法。
【請求項2】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が発現ベクターによってコードされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が同一の発現ベクターによってコードされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が連続して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤が、miR−499の阻害剤に先立って投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
miR−499の阻害剤が、miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤に先立って投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が、少なくとも24時間離れて投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
miR−208aまたはmiR−208bの阻害剤とmiR−499の阻害剤が約1mg/kg〜約200mg/kgの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
阻害剤の投与後、対象の心臓細胞におけるmiR−208aまたはmiR−208bとmiR−499の発現または活性が60パーセント超低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
阻害剤の投与後、対象における心臓ストレス応答が低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
心臓ストレス応答が、前記対象の心臓細胞におけるα−MHCの低下した発現および/またはβ−MHCの増大した発現を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
心臓ストレス応答の低下が、阻害剤の投与後、8週間未満で起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
心臓ストレス応答の低下が、阻害剤の投与後、4週間未満で起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
心臓ストレス応答の低下が、阻害剤の投与後、1週間未満で起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
筋骨格系障害を治療または予防する必要がある対象において筋骨格系障害を治療または予防する方法であって、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストを対象に投与する工程を含み、投与後、対象の骨格筋細胞におけるmiR−208aまたはmiR−208bとmiR−499の発現または活性が増大する方法。
【請求項18】
miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストおよびmiR−499のアゴニストが、成熟miR−208aもしくはmiR−208bおよび/またはmiR−499配列をコードするポリヌクレオチドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストが発現ベクター上にコードされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストが同時投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストとmiR−499のアゴニストが連続して投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストが、miR−499のアゴニストに先立って投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
miR−499のアゴニストが、miR−208aまたはmiR−208bのアゴニストに先立って投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
miR−499アゴニストおよびmiR−208アゴニストの投与後、前記骨格筋細胞における1または複数の速骨格筋遺伝子の発現が低下する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
1または複数の速骨格筋遺伝子が、トロポニンI2、トロポニンT3、速骨格筋ミオシン軽鎖およびアルファ骨格筋アクチンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図6C−D】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−516856(P2012−516856A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548431(P2011−548431)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/023234
【国際公開番号】WO2010/091204
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】