説明

心血管系疾患を診断及び処置する方法

本発明は、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントのインビトロ又はインビボ診断の方法であって、ヒトサンプル中のヒトARK2タンパク質をコードする核酸の950位のヌクレオチド、又はヒトARK2タンパク質の298位のアミノ酸が測定される方法、並びに心血管系疾患を処置する薬剤の開発及び/又は製造のためにARK2の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントのインビトロ又はインビボ診断の方法であって、ヒトのサンプル中のヒトARK2タンパク質をコードする核酸の950位のヌクレオチド、又はヒトARK2タンパク質の298位のアミノ酸を決定する方法、並びに心血管系疾患を処置する薬剤の開発及び/又は製造のためのARK2の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オーロラキナーゼは、多くの固形腫瘍で過剰発現される有糸分裂セリン/トレオニンキナーゼの発癌ファミリーである(Vankayalapati,H.ら(2003)Molecular Cancer Therapeutics、2、283−294)。最初に、ショウジョウバエ(Drosophila)の自然発生型染色体分離欠損突然変異体が同定され、そしてオーロラと命名された(Shindo,M.ら(1998)、244、285−292)。ヒトオーロラ1キナーゼはまた、AUR1、ARK2、Alk2、AIM−1及びSTK12としても知られている。本明細書では、用語ARK2を使用する。ARK2は、有糸分裂において役割を果たすようであり、具体的には、有糸分裂の間に中央体に蓄積している(Shindo,M.ら(1998)、前出)。ARK2欠損細胞はまた、細胞質分裂欠損も示している(Descamps及びPrigent(2001)、Sci.STKE、173、1)。ARK2遺伝子は、染色体17p13.1に位置している。
【0003】
ヒト疾患の発症及び進行においてARK2が関係する可能性をより良く理解するために、参照番号NM_004217として公開されたARK2参照配列の950位のCからTへの変異に関して、遺伝子型−表現型関連分析を、良く特徴付けられた患者群を用いて行った。この変異は、ARK2タンパク質の対応する298位でのトレオニンからメチオニン(Thr→Met)へのアミノ酸変化を導いている。ARK2遺伝子の異なる遺伝子変異体は、すでにSNP(一塩基多型)として公知であり、そしてhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp_ref.cgi?locusId=9212; http://www.ensembl.org/Homo_sapiens/genesnpview?db=&gene=ENSG00000178999で公開されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、特にヒトARK2タンパク質をコードする核酸の950位でのシトシンからチミジンへの変異、又は対応するARK2タンパク質の298位でのトレオニンからメチオニンへの変異が、心血管系疾患の発症と関連していることが見出された。
【0005】
従って本発明の主題は、ヒト又は患者のサンプル中のヒトARK2タンパク質をコードする核酸の950位のヌクレオチド又はヒトARK2タンパク質の289位のアミノ酸を決定する、心血管系疾患のインビトロ又はインビボ診断に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施態様において、心血管系疾患は、高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントである。
【0007】
特に、950位のヌクレオチドが、染色体DNA上でチミジン若しくはmRNA上でウラシルであると決定されるか、又は298位のアミノ酸がメチオニンであると決定される場合、高血圧及び/又は狭窄のリスクはより高くなる。
【0008】
本発明において、用語「ARK2−C950C」は、参照配列NM_004217のARK2をコードする遺伝子の950位の両方の対立遺伝子上にシチジンを有する(これは、対応するタンパク質の298位でアミノ酸トレオニンを導く)ヒトのグループをいう。これらのヒトは、このARK2変異体に関してホモ接合である。従って、用語「ARK2−C950T」は、ARK2をコードする遺伝子の一方の対立遺伝子上にシチジンを有し(これは、対応するタンパク質の298位でトレオニンを導く)、そしてARK2をコードする遺伝子の他の対立遺伝子上にチミジンを有する(これは、対応するタンパク質の298位でメチオニンを導く)ヒトのグループをいう。これらのヒトは、このARK2変異体に関してヘテロ接合である。本発明において、用語「ARK2−T950T」は、参照配列NM_004217のARK2をコードする遺伝子の950位の両方の対立遺伝子上にチミジンを有する(これは、対応するタンパク質の298位でアミノ酸メチオニンを導く)ヒトのグループをいう。これらのヒトは、このARK2変異体に関してホモ接合である。
【0009】
ヒトARK2タンパク質をコードする参照配列の核酸配列は、好ましくは、配列番号1の核酸配列を有し、そしてヒトARK2タンパク質のアミノ酸配列は、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を有する。しかし本発明はまた、この参照配列の950位に対応する位置でのシチジンからチミジンへのヌクレオチド変換及び/又はこの参照配列の298位に対応する位置でのトレオニンからメチオニンへのアミノ酸変換が存在するという条件で、そしてさらに、対応するタンパク質が、セリントレオニンキナーゼ活性を有するという条件で、ヒトARK2の他の変異体、及びその非ヒトホモログ(例えば、他の哺乳動物ARK2ホモログ、又はショウジョウバエ、センチュウ(Caenorhabdidis elegans)、マウス若しくはラット由来のARK2ホモログ)もまた含むものとする。この酵素活性は、当業者に公知かそして/又は本明細書に記載されるキナーゼアッセイによって決定できる。
【0010】
一般に、950位の特定のヌクレオチドは、核酸シーケンス法、核酸の質量分析、ハイブリダイゼーション法及び/又は増幅法によって測定できる。核酸シーケンス法の例は、ピロシーケンス法及び/又は放射標識性及び/又は蛍光標識性ヌクレオチドの助けをかりたシーケンス法である。ハイブリダイゼーション法の例は、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析及び/又はDNAマイクロアレイ上のハイブリダイゼーション法である。増幅法の例は、TaqMan分析、差異RNA発現分析及び/又は発現量差異分析法である(Shi M.M.(2002)Am J Pharmacogenomics.、2(3)、197−205;Kozian及びKirschbaum(1999)Trends Biotechnol.、17(2)、73−8)。
【0011】
さらに、298位のアミノ酸配列は、特定のタンパク質の量を測定する方法及び/又は特定のタンパク質の活性を測定する方法によって測定され得る。特定のタンパク質の量を測定する方法の例は、ウエスタンブロット分析及び/又はELISAである。特定のタンパク質の活性を測定する例は、ヒト細胞、動物細胞、細菌細胞又は酵母細胞を用いたインビトロ試験アッセイ及び/又はインビトロ全細胞試験アッセイであり、これらはすべて当業者に公知かそして/又は本願に記載されている。
【0012】
それぞれの変異体を検出するためのサンプルの例は、細胞、組織又は体液、特に血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞である。好ましくはサンプルは、さらなる分析のためにサンプルの核酸又は染色体DNA又はタンパク質を単離及び/又は精製するために、当業者に公知の慣用の方法によって前処理される。
【0013】
任意のさらなる工程において、ヒトが心血管系疾患を患うリスクは、実施例に示されるように決定され得る。
【0014】
別の任意のさらなる工程において、適切な医薬品が選択されるか、又は医薬品の投薬量が決定される。
【0015】
一般に、ARK2遺伝子において見出された遺伝子の変異は、ヒトのリスク評価、遺伝的特性解析若しくは分類のための、及び/又は心血管系疾患(「冠動脈心疾患」としても知られている)、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/若しくは他の血栓イベントの予防的処置のための、遺伝子マーカーとして、本発明に従って使用され得る。
【0016】
さらにこの遺伝子の変異は、投薬量を適応させるため、又は一般にヒト若しくは患者(本明細書では以下「個人」ともいう)を処置するために有効な治療剤の有効性を増大させるための、及び/又は臨床試験研究下若しくは臨床試験研究のために選択された心血管系疾患、特に高血圧及び/若しくは狭窄のリスクが増大する個人を同定するための、遺伝子マーカーとして、本発明に従って使用され得る。この遺伝子の変異はまた、特定の個人のための薬学的に活性な物質の許容度、安全性及び有効性を評価するため、又はこの疾患の特定の処置に好適な個人を同定するために、本発明に従って使用され得る。
【0017】
本発明はまた、処置又は助言されるべき個々の個人のために、この疾患のリスクファクターを同定するために使用できる。
【0018】
一般に、好適な個人は、(i)心血管系疾患の症状を示していない個人、(ii)心血管系疾患を生じるリスクがすでに検出されているが、この疾患の症状をまだ示していない個人、及び(iii)心血管系疾患を患っていると以前に診断された個人である。
【0019】
本発明に従った心血管系疾患の好ましい診断方法は、次の工程:
(a)場合により、検査されるヒト又は患者からサンプル、特に細胞、組織、体液、血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞を得ること;
(b)サンプルから核酸プローブ、特にDNAプローブを単離すること;
(c)プライマー、特に実施例で特定されるプライマーを利用して、ARK2遺伝子の950位を含む特定の領域を増幅すること;
(d)増幅された領域をシーケンスすること;
(e)シーケンスされた領域を分析すること;及び
(f)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントのリスクを評価すること
を含むものである。
【0020】
本発明に従った心血管系疾患の別の診断方法は、次の工程:
(a)場合により、検査されるヒト又は患者からサンプル、特に細胞、組織、体液、血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞を得ること;
(b)サンプルからARK2タンパク質を単離すること;
(c)ARK2タンパク質の298位のアミノ酸を決定すること;及び
(d)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントのリスクを評価すること
を含むものである。
【0021】
本発明は一般にまた、ヒトが心血管系疾患を患うリスクを決定する方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロ又はインビボで決定すること、及び
(b)このヒトが心血管系疾患を発症するリスクを予測するために、(a)で得られたデータを変換すること
を含み、ここでARK2 Met298Met変異を検出することが、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを発症するリスクが増大することの指標となるものである。
【0022】
本発明の別の実施態様は一般に、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/若しくは他の血栓イベントを患うヒトに対して、薬学的に活性な化合物を選択するか若しくは薬学的に活性な化合物の投薬量を決定する方法、又は心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/若しくは他の血栓イベントの治療処置の有効性を決定する方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロで決定すること、及び
(b)この人に対して、薬学的に活性な化合物を選択するか若しくは薬学的に活性な化合物の投薬量を決定するか、又は治療処置の有効性を決定すること
を含み、ここでARK2 Met298Met変異を有するヒトに対して、薬学的に活性な化合物が選択されるか及び/又は薬学的に活性な化合物の投薬量及び/又は治療処置の有効性が決定されるものである。
【0023】
本発明のなお別の実施態様は一般に、心血管系疾患に対するリスクが増大したヒトを同定する方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロ又はインビボで決定すること、及び
(b)このヒトを同定するために、(a)で得られたデータを変換すること
を含み、ここでARK2 Met298Met変異を検出することが、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを発症するリスクが増大することの指標となるものである。
【0024】
ARK2遺伝子の遺伝子型の決定は、当業者に公知の任意の方法、特に本明細書に記載される任意の方法によって実施され得る。
【0025】
さらに、本明細書に記載されるARK2及び/又はARK2変異体は、心血管系疾患を処置する薬剤の製造のために、本発明に従って使用され得る。従って、本発明のさらなる実施態様は、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを処置する薬剤を製造するための、配列番号3のアミノ酸配列を含むARK2タンパク質、又はアミノ酸298位でのARK2変異体、及び/又はARK2タンパク質若しくはその変異体をコードする対応する核酸配列の使用に関する。特に変異体は、配列番号7のARK2タンパク質のMet298Met変異体又は配列番号6のARK2核酸のT950T変異体である。特に、当業者に公知か及び/又は本明細書に記載されるキナーゼアッセイは、ARK2タンパク質及び/又はARK2変異体、特にARK2−Met298Met変異体のモジュレーター、例えば活性化剤又は阻害剤を同定するために使用され得る。
【0026】
従って、本明細書に記載されるARK2及び/又はARK2変異体はまた、この疾患を処置するための薬学的に活性な化合物を検出及び評価するハイスループット−スクリーニングアッセイの一部として、本発明に従って使用され得る。そのために、本発明のさらなる実施態様は、心血管系疾患を処置するための薬学的に活性な因子をスクリーニングする方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むARK2タンパク質、又はアミノ酸298位のARK2変異体及び/又はARK2タンパク質若しくはその変異体をコードする対応する核酸を提供すること、
(b)試験化合物を提供すること、
(c)ARK2タンパク質若しくはARK2変異体、又は対応する核酸に対する試験化合物の影響を決定又は検出すること、並びに
(d)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントの処置に好適な化合物を単離すること
を含む。
【0027】
特に変異体は、配列番号7のARK2タンパク質のMet298Met変異体、又は配列番号6のARK2核酸のT950T変異体である。一般に、ARK2タンパク質、ARK2変異体、又はARK2タンパク質若しくは変異体をコードする核酸は、例えばアッセイ系で提供され、そして例えば化学化合物ライブラリの形態で試験化合物、特に生化学的又は化学的な試験化合物と直接又は間接的に接触させられる。次いで、ARK2タンパク質、又はARK2タンパク質をコードする核酸に対する試験化合物の影響が決定又は検出される。その後、好適なモジュレーター、例えば活性化剤又は阻害剤が、分析及び/又は単離できる。化学化合物ライブラリのスクリーニングに関して、当業者に知られているか又は市販されているハイスループットアッセイを使用することが好ましい。
【0028】
一般に、ARK2タンパク質若しくはARK2変異体、又はARK2タンパク質若しくは変異体をコードする核酸、に対する試験化合物の影響は、タンパク質若しくは核酸。又はタンパク質若しくは核酸を含む細胞、に対する化合物のいかなる物理的、化学的又は表現型的な効果であって良く、これによって、タンパク質又は核酸を調節する化合物が同定される。本発明の場合、本明細書に記載されるARK2タンパク質又はARK2変異体のキナーゼ活性に対する試験化合物の影響を決定又は検出することが好ましい。
【0029】
キナーゼアッセイの一般概念は、分析されるべきキナーゼ、ここではARK2セリン/トレオニンキナーゼが、好ましくはATPが存在する好適な緩衝液中で、このキナーゼによってリン酸化され得るセリン又はトレオニン残基を含む好適な物質又はペプチドと接触させられることである。好ましくはこの物質は、色素で標識される物質、例えば蛍光色素で標識されるペプチド、例えばフルオレセインで標識されるペプチドである。セリン/トレオニンキナーゼアッセイは市販されており、例えばApplied Biosystems,Inc.、California、USAからのHitHunterTMセリン/トレオニンキナーゼアッセイ又はPierce Biotechnology,Inc.、Illinois、USAからのIQTMセリン/トレオニンキナーゼアッセイがある。他のキナーゼアッセイは、以下にさらに詳細に記載される。
【0030】
本発明において、用語「化学化合物ライブラリ」は、化学合成分子及び天然物を含むあらゆる多様な源から集められているか、又はコンビナトリアルケミストリー技術によって作製されている多数の化学化合物をいう。
【0031】
一般に、ARK2、ARK2変異体又はARK2タンパク質若しくは変異体をコードする核酸に対する試験化合物の影響は、ヘテロジニアス又はホモジニアスアッセイにおいて決定又は検出される。本明細書で使用されるヘテロジニアスアッセイは、1つ又はそれ以上の洗浄工程を含むアッセイであるのに対し、ホモジニアスアッセイにおいては、このような洗浄工程は必要ではない。試薬及び化合物は、単に混合され、そして測定される。
【0032】
好適な機能アッセイは、ARK2の遺伝子発現又はそのセリン/トレオニンキナーゼ活性に基づくものであり得る。一般に、市販のキナーゼアッセイ系は、基質に取り込まれるホスフェートの量を定量的に検出している。
【0033】
ヘテロジニアスアッセイは、例えばELISA、DELFIA、SPA及びフラッシュプレートアッセイである。
【0034】
ELISA(酵素免疫測定法)に基づくアッセイは、種々の会社によって提供されている。このアッセイは、ARK2のようなキナーゼによってリン酸化され得るランダムペプチドを利用している。キナーゼを含むサンプルは、例えばATP及び必要な陽イオンを含む反応緩衝液に通常希釈され、次いでプレートのウェルに添加される。反応は、混合物を単に除去することによって停止する。その後、プレートを洗浄する。反応は、例えばビオチン化基質をキナーゼに添加することによって開始される。反応後、特異的抗体が添加される。サンプルは、あらかじめブロッキングされたプロテインGプレートに通常移され、そして洗浄後、例えばストレプトアビジン−HRPが添加される。その後、非結合性のストレプトアビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)が除去され、ペルオキシダーゼの呈色反応が、ペルオキシダーゼ基質の添加によって開始され、そして吸光度が、好適な濃度計で測定される。
【0035】
DELFIA(分離強化型ランタニド蛍光免疫測定法)に基づくアッセイは、固相アッセイである。抗体は、通常ユーロピウム又は別のランタニドで標識され、そして非結合性のユーロピウム標識化抗体を洗い流した後に、ユーロピウム蛍光が検出される。
【0036】
SPA(シンチレーション近接度測定法)及びフラッシュプレートアッセイは、放射標識された基質を捕獲するためにビオチン/アビジン相互作用を通常利用する。一般に反応混合物は、キナーゼ、ビオチン化ペプチド基質及びγ−[P33]ATPを含んでいる。反応後、ビオチン化ペプチドが、ストレプトアビジンによって捕獲される。SPA検出において、ストレプトアビジンは、シンチラント含有ビーズ上に結合するのに対し、フラッシュプレート検出においては、ストレプトアビジンは、シンチラント含有マイクロプレートのウェルの内部に結合する。一旦固定化されると、放射標識された基質は、シンチラントに発光を刺激するに十分なだけ近接する。
【0037】
別のホモジニアスアッセイは、例えばTR−FRET、FP、ALPHA及び遺伝子アッセイである。
【0038】
TR−FRET(時間分解型蛍光共鳴エネルギー転移)に基づくアッセイは、ユーロピウムとAPC、修飾アロフィコシアニン又は重複するスペクトルを有する他の色素(例えば、Cy3/Cy5若しくはCy5/Cy7)との間の蛍光共鳴エネルギー転移を通常利用するアッセイである(Schobel,U.ら(1999)Bioconjugate Chem.10、1107−1114)。例えば、337nmの光でユーロピウムを励起した後、分子は620nmで蛍光を発する。しかし、このフルオロフォアがAPCに十分に近接する場合、ユーロピウムは、その励起エネルギーをAPCに転移させ、665nmで蛍光を発する。キナーゼ基質は、通常ビオチンで標識された基質である。キナーゼ反応後、ユーロピウムで標識された(P)−特異的抗体が、ストレプトアビジン−APCとともに添加される。リン酸化ペプチドは、ユーロピウムで標識された抗体及びストレプトアビジン−APCを近接して接触させる。ユーロピウムフルオロフォアとAPCが近接することにより、APC蛍光が付与されると同時にユーロピウム蛍光の消光が引き起こされる(FRET)。
【0039】
蛍光偏光(FP)に基づくアッセイは、偏光を用いて溶液中で蛍光基質ペプチドを励起させるアッセイである。これらの蛍光ペプチドは、溶液中で遊離し、そして崩壊しており、放出光を脱偏光させる。しかし、基質ペプチドがより大きな分子、例えば(P)−Tyrに結合すると、その崩壊速度は極めて減少し、そして放出光は強く偏光したままである。キナーゼアッセイについては、一般に次の2つの選択肢がある:
(a)蛍光リンペプチドトレーサーが、(P)−特異的抗体に結合される。リン酸化産物は、抗体由来の蛍光リンペプチドと競合し、高から低への偏光変化をもたらす。
(b)リン酸化基質ペプチドは、リン特異的抗体に結合し、低から高への偏光変化をもたらす。
【0040】
ALPHA(増幅型ルミネッセンス近接ホモジニアス)に基づくアッセイは、リン酸化ペプチドによって近接させられたドナービーズとアクセプタービーズとの間の一重項酸素の転移に基づくアッセイである。680nmでの励起において、ドナービーズ中の光増感剤は、周囲の酸素を一重項状態の酸素に転換し、その酸素が200nmの距離まで拡散する。アクセプタービーズ中の化学発光基は、エネルギーをビーズ内の蛍光アクセプターに転移させ、次いでおよそ600nmで光を放射する。
【0041】
EFC(酵素断片相補性)に基づくアッセイ又はそれと同等のアッセイは、特に化合物のハイスループットスクリーニングに使用され得る。EFCアッセイは、2つの断片、すなわち酵素アクセプター(EA)及び酵素ドナー(ED)からなる設計されたβ−ガラクトシダーゼ酵素に基づいている。断片が分離すると、β−ガラクトシダーゼ活性が失われるが、断片が合わさると、それらは連携して(補完して)、活性酵素を形成する。EFCアッセイは、ED−分析物結合体を利用し、この場合、この分析物は、抗体又は受容体のような特異的結合タンパク質によって認識され得る。特異的結合タンパク質の非存在下では、ED−分析物結合体は、EAを補完し、活性なβ−ガラクトシダーゼを形成することが可能であり、正の発光シグナルを産生する。ED−分析物結合体が、特異的結合タンパク質によって結合される場合、EAとの相補性が阻害され、シグナルは生じない。遊離の分析物が(サンプル中に)提供される場合、その分析物は、特異的結合タンパク質との結合に関してED−分析物結合体と競合する。遊離の分析物は、EAとの相補性のためにED−分析物結合体を遊離し、サンプル中に存在する遊離分析物の量に応じてシグナルを産生する。
【0042】
遺伝子アッセイの別の例は、キナーゼの活性が、機能的な細胞性応答、例えば増殖、増殖停止、分化又はアポトーシスに転換される機能的アッセイである。このタイプのスクリーニングに関して、酵母は、特に好適なモデル系である。例えばARK2−酵母の機能的アッセイにおいて、グルコース含有培地上で培養されると、例えばARK2−酵母細胞は、正常な酵母細胞のように増殖する。しかし、ガラクトースに曝露されると、ARK2の細胞内発現が誘導され、酵母細胞を死に至らしめる。ARK2活性を阻害する化合物は、この場合細胞死を妨げる。
【0043】
別のアッセイは、固相に結合したポリペプチド、例えばARK2及び試験されるべき化合物との干渉に基づいている。従って試験化合物は、検出可能なマーカーを含んでおり、例えば、この化合物は、上記ですでに説明されたように、放射標識、蛍光標識又は発光標識され得るものである。さらに化合物は、タンパク質に結合され得るものであり、これにより、例えば、発色性基質を用いるペルオキシダーゼアッセイを利用した酵素的な触媒作用によるか、又は検出可能な抗体を結合させることによる間接的な検出が可能となる。別の可能性は、質量分析によって、固相に結合したタンパク質複合体を調べることである(SELDI)。試験物質との相互作用の結果としての、例えば本明細書に記載のARK2又はARK2変異体のコンフォメーション変化は、例えば、ポリペプチド中の内在性のトリプトファン残基の蛍光変化によって検出することができる。
【0044】
固相に結合したポリペプチドはまた、アレイの一部となることも可能である。固相化学及び光解離性保護基を用いてこのようなアレイを製造する方法は、例えばUS5,744,305に開示されている。これらのアレイはまた、試験化合物又は化合物ライブラリと接触させられ、そして相互作用、例えば結合又はコンフォメーション変化について試験され得る。アレイの好適なフォーマットは、一次スクリーニング及び二次スクリーニングの両方に対して、現在96、384又は1,536のフォーマットである。
【0045】
本発明の別の実施態様において、この方法は、全細胞を用いて行われる。通常、マルチウェルプレートの底部で増殖する細胞は、固定、透過処理、ブロッキングが行われ、そして例えば目的の基質に対する一次(P)−特異的抗体とインキュベートされる。次いで、例えば上記のような特異的な化学発光物質又は比色物質と一緒になって、例えばユーロピウム標識されるか又はHRPに結合体化した二次抗体が、シグナル産生に利用される。顕微鏡の使用と組み合わせて、(P)−特異的抗体量が、単細胞レベルで定量され得るだけではなく、リン酸化により誘導される基質の移行又は細胞の形態学的変化もまた定量され得る。
【0046】
有利には、本発明の方法は、例えば微小流体制御技術(すなわち溝をつけた構造)を用いて、例えばロボット式プレーティング及びロボット式液体移動システムを含むロボットシステムで行われる。
【0047】
本発明の別の実施態様において、本方法は、ハイスループットスクリーニングシステムの形態で行われる。このようなシステムにおいて、有利にはこのスクリーニング方法は、自動化及び小型化されており、特に、ロボットで制御された小型化したウェル及び微小流体制御技術を用いるものである。
【0048】
上記の対象物を考慮して、本発明はまた、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを処置するための薬剤の製造方法に関し、この方法は、次の工程:
(a)上記で説明されたスクリーニング方法を行うこと、及び
(b)単離された化合物を、1つ又はそれ以上の薬学的に受容可能なキャリア又は補助剤とともに製剤化すること
を含むものである。
【0049】
上記の方法の工程(b)に従って検出される試験化合物は、通常、投与の種類如何により1つ又はそれ以上の薬学的に受容可能な添加剤又は補助剤、例えば生理緩衝溶液、例えば塩化ナトリウム溶液、脱塩水、安定剤、ε−アミノカプロン酸若しくはペプスタチンA、又は金属イオン封鎖剤、例えばEDTA、ゲル化剤、例えば白色ワセリン、低粘度パラフィン及び/又は黄ろうなどとともに処方される。
【0050】
好適なさらなる添加剤は、例えば、界面活性剤、例えばTriton X−100又はデオキシコール酸ナトリウム、さらにポリオール、例えばポリエチレングリコール又はグリセロール、糖類、例えばスクロース又はグルコース、両性イオン化合物、例えばアミノ酸、例えばグリシン、又は特にタウリン若しくはベタイン、及び/又はタンパク質、例えばウシ若しくはヒトの血清アルブミンである。界面活性剤、ポリオール及び/又は両性イオン化合物が好ましい。
【0051】
生理緩衝溶液は、好ましくは、およそ6.0〜8.0、特におよそ6.8〜7.8、特におよそ7.4のpHを有し、そして/又はおよそ200〜400ミリオスモル/リットル、好ましくはおよそ290〜310ミリオスモル/リットルの浸透圧モル濃度を有するものである。薬剤のpHは、一般的に、好適な有機又は無機の緩衝液を用いて、例えば好ましくは、リン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジノ]−エタンスルホン酸)、又はMOPS緩衝液(3−モルホリノ−1−プロパンスルホン酸)を用いて調整される。それぞれの緩衝液の選択は、一般的に、所望の緩衝液のモル濃度に左右される。例えばリン酸緩衝液は、注射溶液及び輸液に好適である。
【0052】
薬剤は、慣用の様式、本発明の薬剤を含む、例えば経口投薬形態、例えば錠剤又はカプセル剤によって、粘膜、例えば鼻又は口腔経由で、皮下に埋め込むデポ製剤(dispositories)の形態で、注射、輸液又はゲルによって投与され得るものである。さらに、薬剤を一時的に制御して放出することを可能にする経皮治療システム(TTS)によって処置を行うことができる。TTSは、例えばEP 0 944 398 A1、EP 0 916 336 A1、EP 0 889 723 A1又はEP 0 852 493 A1から公知である。
【0053】
比較的少量の溶液又は懸濁液、例えばおよそ1ml〜およそ20mlのみが体に投与されるべき場合には、一般的に注射溶液が用いられる。より大量の溶液又は懸濁液、例えば1リットル以上が投与されるべき場合には、一般的に、輸液が用いられる。輸液とは対照的に、注射溶液の場合は数ミリリットルだけが投与されるため、注射の際の血液又は組織液のpH及び浸透圧のわずかな差は、痛覚に関して、それ自体重要ではないか、又はそれ自体問題にならない程度の重要性しか有さない。従って一般的に、使用前に本発明の処方物を希釈する必要はない。しかし、比較的大量の投与の場合、本発明の処方物は、投与前に、少なくともほぼ等張の溶液が得られるような程度に簡単に希釈されるべきである。等張溶液の例は、0.9%強度の塩化ナトリウム溶液である。輸液の場合、希釈は、例えば滅菌水を用いて行い得るが、その一方、投与は、例えばいわゆるバイパスを介して行い得る。
【0054】
より好ましい工程は、実施例で個々に又はまとめて述べられており、そして各工程に対する参照によって本明細書に組み込まれる。
【0055】
以下の表、配列、実施例及び添付図面は、本発明の範囲を限定することなく本発明を説明する。
【0056】
配列表の説明
配列番号1は、NCBI番号NM_004217を有するヒトARK2タンパク質の核酸配列を示している。
配列番号2は、番号AC135178を有するARK2の染色体核酸配列の一部を示している。
配列番号3は、NCBI番号NM_004217を有する核酸配列に由来するヒトARK2のアミノ酸配列を示している。
配列番号4は、第一のプライマー配列ARK2−298Rを示している。
配列番号5は、相補配列の第二のプライマー配列ARK2−298Fを示している。
配列番号6は、ヒトARK2遺伝子のT950T変異体の核酸配列を示している。
配列番号7は、ヒトARK2 Met298Met変異体のアミノ酸配列を示している。
【実施例】
【0057】
5’−ヌクレアーゼアッセイによるSNP検出(TAQMANTM
増幅のためのオリゴヌクレオチド(プライマー):
以下のプライマーを、参照番号NM_004217を有するARK2配列の950位でのCからTへのヌクレオチド変換を検出するために使用した:
プライマー1:5’−GCCTGAGCAGTTTGGAGATGAG−3’(参照配列AC135178のヌクレオチド179605−179584;図1B;配列番号5);
プライマー2:5’−CCTGCAGGTGGACCTAAAGTTC−3’(参照配列AC135178の塩基179532−179553の相補配列;図1B;配列番号4)。
【0058】
増幅のためのPCRプロトコル:
使用した試薬は、Applied Biosystems(Foster City、USA)のものであった。PCR反応を、SuperHot−Master−Mix(Bioron GmbH、Germany)2.5μl、Assay−by−Design−Mix(Applied Biosystems、Austria)0.125μl、H2O 0.375μl及びDNA 2μlを含む総量5μlで、Primus96plusサーマルサイクラー(MWG Biotech AG、Germany)で行った。この反応混合物を、鉱油15μlで覆った。
【0059】
PCR反応の増幅プログラム:
94℃で1分間×1サイクル
92℃で15秒間×45サイクル
60℃で1分間×1サイクル
【0060】
PCR産物の分析
蛍光を、FAMで標識したプローブ(298Thr対立遺伝子;ARK2−298M1(Thr)FAM−TCCCGTGGGCACG)については485nm/520nmの、及びVIC標識されたプローブ(298Met対立遺伝子;ARK2−298V1(Met)VIC−CTCCCATGGGCACG)にについては530nm/572nmの、励起/発光フィルタを用いて、VICTOR蛍光プレートリーダー(HVD Life Sciences、Austria)で検出した。データを、MS−Excelフォーマットでエクスポートし、そして散布図で分析した。
【0061】
結果
ヒトのグループの特徴
表1は、研究されたヒトのグループの特徴を示している。
【表1】

【0062】
ARK2遺伝子の変異体の頻度及び分布
表2は、研究された患者群における参照配列NM_004217の950位でのARK2遺伝子の遺伝子変異体の頻度及び分布を示している。
【表2】

【0063】
ARK2の変異体Thr298Metの影響
表3は、研究された患者群における、高血圧、冠動脈心疾患(20%を超える狭窄を伴う)、1を超える心筋梗塞の発生率、及び発作/TIA/PRIND(TIA=一過性脳虚血発作;PRIND=遷延性可逆性虚血性神経障害)の発生に対するARK2の変異体Thr298Metの影響を示している。0.05未満のp値は、統計上関連性を有していると考えられる。
【表3】

【0064】
結果
ARK2−T950Tを有する患者は、この950位に異なるARK2遺伝子型を有する患者と比較して、高血圧及び冠動脈心疾患の発生率、1を超える心筋梗塞、及び発作/TIA/PRINDの発生率が統計上より高いことを示した。
【0065】
結論:
上記で示される、ARK2をコードする遺伝子の遺伝子変異体及び/又はタンパク質ARK2との間での統計上の有意な関連性は、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントの発症において、この遺伝子変異体が関与することを明確に示している。従って、この遺伝子変異体は、例えば心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントを予測するための生物学的マーカーである。本発見に基づく本発明のさらなる実施態様は、本明細書にさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】NCBI番号NM_004217を有するヒトARK2遺伝子の核酸配列を示している。
【図1B】番号AC135178を有するARK2の染色体核酸配列の一部を示している。参照配列NM_004217の950位に対応するCからTへの遺伝的変異を有する遺伝子の区分の増幅に使用されるプライマーに、太字で下線を付している。(ARK2−298R=CCTGCAGGTGGACCTAAAGTTC;ARK2−298F=GCCTGAGCAGTTTGGAGATGAG)
【図2】NCBI番号NM_004217を有する核酸配列に由来するヒトARK2のアミノ酸配列を示している。ARK2タンパク質の298位のアミノ酸に、太字で下線を付している。
【図3】ヒトARK2遺伝子のT950T変異体の核酸配列を示している。
【図4】ヒトARK2のMet298Met変異体のアミノ酸配列を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトサンプル中のヒトARK2タンパク質をコードする核酸の950位のヌクレオチド、又はヒトARK2タンパク質の298位のアミノ酸が決定される、心血管系疾患のインビトロ診断方法。
【請求項2】
心血管系疾患が、高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
950位のヌクレオチドが、染色体DNAのチミジン若しくはmRNAのウラシルであると決定されるか、又は298位のアミノ酸がメチオニンであると決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ヒトARK2タンパク質をコードする核酸が、配列番号6のヌクレオチド配列を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ヒトARK2タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
950位のヌクレオチドが、核酸シーケンス法、核酸の質量分析、ハイブリダイゼーション法及び/又は増幅法からなる群より選択される方法によって決定される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
核酸シーケンス法が、ピロシーケンス及び/又は放射標識性及び/又は蛍光標識性ヌクレオチドを利用したシーケンス法からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ハイブリダイゼーション法が、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析及び/又はDNAマイクロアレイ上のハイブリダイゼーション法からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
増幅法が、TaqMan分析、差異RNA発現分析及び/又は発現量差異分析からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
298位のアミノ酸配列が、特定のタンパク質の量を測定する方法、及び/又は特定のタンパク質の活性、好ましくはセリン/トレオニンキナーゼ活性を測定する方法からなる群より選択される方法によって決定される、請求項1〜3及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
特定のタンパク質の量が、ウエスタンブロット分析及び/又はELISAからなる群より選択される方法によって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
特定のタンパク質の活性が、ヒト細胞、動物細胞、細菌細胞又は酵母細胞を用いて、インビトロ試験アッセイ及び/又はインビトロ全細胞試験アッセイによって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サンプルが、細胞、組織及び/又は体液からなる群より選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
さらなる工程において、ヒトの心血管系疾患を患うリスクが決定される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
さらなる工程において、適切な医薬品が選択されるか、又は医薬品の投薬量が決定される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
次の工程:
(a)場合により、検査されるヒトからサンプルを得ること;
(b)サンプルから核酸プローブ、特にDNAプローブを単離すること;
(c)プライマーを利用して、ARK2遺伝子の950位を含む特定の領域を増幅すること;
(d)増幅された領域をシーケンスすること;
(e)シーケンスされた領域を分析すること;及び
(f)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントのリスクを評価すること
を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プライマーが、配列番号4及び/又は配列番号5から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
次の工程:
(a)場合により、検査されるヒト又は患者から、サンプル、特に細胞、組織、体液、血液の細胞成分、内皮細胞又は平滑筋細胞を得ること;
(b)ARK2タンパク質をサンプルから単離すること;
(c)ARK2タンパク質の298位のアミノ酸を決定すること;及び
(d)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントのリスクを評価すること
を含む、請求項1〜4、6〜9又は13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロで決定すること、及び
(b)上記ヒトが心血管系疾患を発症するリスクを予測するために、(a)で得られたデータを変換すること
を含み、
ARK2 Met298Met変異を検出することが、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントを発症するリスクが増大することの指標となる、ヒトが心血管系疾患を患うリスクを決定する方法。
【請求項20】
次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロで測定すること、及び
(b)上記ヒトに対して、薬学的に活性な化合物を選択するか若しくは薬学的に活性な化合物の投薬量を決定するか、又は治療処置の有効性を決定すること
を含み、
ARK2 Met298Met変異を有するヒトについて、薬学的に活性な化合物が選択されるか及び/又は薬学的に活性な化合物の投薬量及び/又は治療処置の有効性が決定される、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/若しくは血栓イベントを患うヒトに対して、薬学的に活性な化合物を選択するか若しくは薬学的に活性な化合物の投薬量を決定する方法、又は心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/若しくは血栓イベントの治療処置の有効性を決定する方法。
【請求項21】
次の工程:
(a)ヒトのARK2遺伝子の遺伝子型をインビトロで測定すること、及び
(b)上記ヒトを同定するために、(a)で得られたデータを変換すること
を含み、
ARK2 Met298Met変異を検出することが、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は血栓イベントを発症するリスクが増大することの指標となる、心血管系疾患に対するリスクが増大したヒトを同定する方法。
【請求項22】
心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを処置する薬剤を製造するための、配列番号3のアミノ酸配列を含むARK2タンパク質若しくはアミノ酸298位でのARK2変異体、及び/又はARK2タンパク質若しくはその変異体をコードする対応する核酸配列の使用。
【請求項23】
変異体が、配列番号7のARK2タンパク質のMet298Met変異体、又は配列番号6のARK2核酸のT950T変異体である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
次の工程:
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むARK2タンパク質、アミノ酸298位でのARK2変異体、及び/又はARK2タンパク質若しくはその変異体をコードする対応する核酸を提供すること、
(b)試験化合物を提供すること、
(c)ARK2タンパク質若しくはARK2変異体又は対応する核酸に対する試験化合物の影響を決定又は検出すること、並びに
(d)心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントの処置に好適な化合物を単離すること
を含む、心血管系疾患を処置するための薬学的に活性な因子をスクリーニングする方法。
【請求項25】
変異体が、配列番号7のARK2タンパク質のMet298Met変異体、又は配列番号6のARK2核酸のT950T変異体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
試験化合物が、化学化合物ライブラリの形態で提供される、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
ARK2タンパク質若しくはARK2変異体又は対応する核酸に対する試験化合物の影響が、ヘテロジニアス又はホモジニアスアッセイにおいて決定又は検出される、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ヘテロジニアスアッセイが、ELISA(酵素免疫測定法)、DELFIA(分離強化型ランタニド蛍光免疫測定法)、SPA(シンチレーション近接度測定法)又はフラッシュプレートアッセイである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ホモジニアスアッセイが、TR−FRET(時間分解型蛍光共鳴エネルギー転移)アッセイ、FP(蛍光偏光)アッセイ、ALPHA(増幅型ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ)、EFC(酵素断片相補性)アッセイ又は遺伝子アッセイである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
アレイ上で行われる、請求項24〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
全細胞を使用して行われる、請求項24〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ロボットシステムで行われる、請求項24〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
微小流体制御技術を使用して行われる、請求項24〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ハイスループットスクリーニングの方法である、請求項24〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
次の工程:
(a)請求項24〜34のいずれかに記載の方法を行うこと、及び
(b)単離された化合物を、1つ又はそれ以上の薬学的に受容可能な担体又は補助剤とともに製剤化すること
を含む、心血管系疾患、特に高血圧、狭窄、血管閉塞及び/又は他の血栓イベントを処置するための薬剤の製造方法。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれかに記載の方法、又は実施例を含む明細書に記載されるいずれかの主題。

【公表番号】特表2009−518018(P2009−518018A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543688(P2008−543688)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011220
【国際公開番号】WO2007/065562
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】