説明

忌避糊を用いた包装用カートン

【課題】本発明の課題は、害虫忌避効果を有する積層体およびそれを用いたカートンにおいて害虫忌避効果の継続性があり、取り扱い時に人体への影響の少ないカートンを提供することにある。
【解決手段】表面から順に印刷層/紙基材、または樹脂フィルム/印刷層/接着層/紙基材の構成からなる、紙を主体とする積層体からなり、カートンブランクスの複数の凹部(凹み)を有する組み立て用糊代部に忌避剤を含む糊が塗布されてなる害虫忌避効果を有する包装用カートン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用のカートンに関し、特に害虫忌避効果を長期間持続させることの出来る積層体およびそれを用いた包装用カートンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チョコレート等の菓子類、米等の穀物類、あるいは、カレーやシチュー等の加工調味品等の食品は、紙やプラスチックフィルム等の包装箱や包装袋等で包装されて流通・販売されている。これらの食品の包装においては保存、流通、販売時等においてコクゾウ虫やノシメマダラメイガ等の害虫が包装箱や包装袋等を食い破ったり、隙間から内部に侵入する場合があり、これにより顧客に不衛生感や不快感を与えると共に商品価値を著しく損なうという問題があった。
【0003】
包装された食品を害虫から守る手段としては、包装箱や包装袋等に防虫加工を施すことが考えられる。防虫加工の方法としては、害虫の侵入する隙間をなくしたり、包装材を食い破ったりすることを防止する方法と害虫の嫌いなにおいを放出して接近を防止する忌避剤を利用する方法がある。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載されている前者の方法の例としては、害虫が包装材を食い破ることが出来ないように最外層の基材フィルムと最内層のシーラント層との2層でなる食品用包装材料において、基材フィルムの表面にシリコーン樹脂層が施されている虫害防止機能を有する食品用包装材料が提案されている。
【0005】
紙カートンのような包装材において、包装時の隙間を完全になくすことや、包装材の虫による開口を防止することは簡単には困難であるために、虫を近づけないという忌避剤を用いた方法が多く提案されている。
この害虫忌避剤としては防虫効果の高い農業用や家庭用殺虫剤に用いられるピレスロイド系等の化合物を挙げることができるが、これらの化合物は人体への危険性が危惧されるものであり、食品の包装箱等に用いることは不適切であると共に防虫効果の持続性において不満の残るものであった。
【0006】
そこで近年、これに代わるものとして、β−カリオフィレンを含有したコパイバオイルを用いた害虫忌避剤が注目されている。たとえば、特許文献2には、油性のコパイバオイルをアクリル系樹脂からなる床用ワックスに添加して用いることにより、十分な忌避効果と光沢が得られるという結果が示されている。
【0007】
特許文献2には、コパイバオイルおよびカリオフィレンを適当な担体に吸着、混合、含浸させて固形剤として用いることが提案されており、さらに、特許文献3には、コパイバオイルおよび/またはカリオフィレンを含む徐放性多孔質微粒子を包装材等の用途に用いることが提案されている。
【0008】
上記のコパイバオイル等の害虫忌避剤を紙カートン等の食品用包装容器に適用した例として、たとえば、特許文献4においてはバリア性の不要な食品用包装容器にも容易に適用可能な食品用包装容器として、紙カップ本体等の外面に、苦味催吐剤が害虫忌避機能性塗膜として塗着されている害虫忌避機能を有する食品用包装容器が提案されている。
また、特許文献5には、経済性に優れた低価格の防虫カートンを提供することを目的として、紙箱に組み立てた際、害虫の侵入経路となりうる部分の表面にのみ、接触忌避タイプの薬剤を混ぜたオーバーコートニス層を形成させたカートンが提案されている。
【0009】
忌避剤の長期間の効果持続を期待した方法としては、特許文献6においては、光沢性に優れ、作業性が低下する虞のない程度の滑り性を有すると共に優れた忌避効果が一定期間持続する積層体を提供する目的で、鏡面からなる連続のフェロ板と呼ばれる金属板面にて熱圧プレスを行うことにより透明樹脂からなる熱プレスコート層が形成され、そのことによって、高級感を有する艶出し面からなる紙製カートンが得られるとされている。
また、特許文献7には、マイクロカプセル等の手法の適用なしに衛生害虫忌避活性化合物の徐放性技術を適用した樹脂塗工積層体として、基材シート上に、活性エネルギー線硬化性組成物と衛生害虫忌避活性化合物を添加した塗料を塗布し活性エネルギー線を照射して得られた硬化樹脂層を表層に有する積層体が提案されている。
【0010】
しかしながら、以上のような害虫忌避剤の適用方法においては、食品等の包装材料の表面に忌避薬剤が施されているために、大気中への忌避薬剤の揮散による忌避効果の短期間での低下が避けられなかった。
さらに、忌避薬剤を含む表面が直接人の手に触れる部位であるために取り扱い時に薬剤が人体に及ぼす影響が危険視され、忌避剤の選定範囲が著しく制限されることも避けられなかった。
食品包装用のカートンに関する以上のような問題に鑑み、特に害虫忌避効果が長期間持続して、取り扱いが安全に出来るカートンが要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−36270号公報。
【特許文献2】特開2001−348304号公報
【特許文献3】特開2002−308705号公報
【特許文献4】特開2002−255187号公報
【特許文献5】特開2003−292056号公報
【特許文献6】特開2004−122445号公報
【特許文献7】特開2005−144257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、害虫忌避効果を有する積層体およびそれを用いたカートンにおいて害虫忌避効果の継続性があり、取り扱い時に人体への影響の少ない包装用カートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1の発明は、紙を主体とする積層体からなり、組み立て用糊代部に忌避剤を含む糊が塗布されてなることを特徴とする害虫忌避効果を有する包装用カートンである。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、カートン組み立て用糊に含まれた状態の害虫忌避効果のある忌避剤がカートンブランクスの糊代部に塗布されることで、組み立てられたカートンの接着部から忌避剤が徐々に揮散することによって害虫の接近を防止する。
忌避剤をカートンの表面にコーティングにより形成する場合に比べて、塗工可能な塗布量が多いことと併せて、忌避効果の持続する期間を長くすることが可能である。
また取り扱い時に手が触れるカートンの最表面に忌避薬剤が位置しないことから、取り扱い時に人体への影響が少ないという効果も有する包装用カートンを提供することができる。
【0015】
これによって、忌避剤層を表面に設けた従来のカートンの場合に避けられなかった、大気中への忌避薬剤の早期揮散による忌避効果の短期間での低下してしまうことと、忌避薬剤を含む表面が直接人の手に触れる部位であるために取り扱い時に薬剤が人体に及ぼす影響への懸念から、忌避剤の選定範囲が著しく制限されることもなくなった。
また、比較的人体に影響を与えない天然系忌避薬剤のみならず、口に入ったりすると重篤な症状を呈することがある合成系忌避薬剤のなかでも安心して使用出来る薬剤を選定することが出来ることから、効率的な薬剤の使用が可能になった。
【0016】
また、忌避剤を含む層が糊代部表面の、積層体同士に挟まれた位置にあり、カートン外側の目で見える場所には存在しないためにカートン表面に施す印刷デザインの自由度も増す。
糊代部の忌避剤を含む糊層を設ける領域の形状は、糊代部全面でもよく部分的であってもよい。
【0017】
また、請求項2の発明は、紙を主体とする積層体が印刷層/紙基材、または樹脂フィルム/印刷層/接着層/紙基材の構成からなることを特徴とする、請求項1に記載の害虫忌避効果を有する包装用カートンである。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、積層体の印刷層がカートン表面または樹脂フィルムのすぐ内側に設けられているために、デザインの自由度が増した美麗な印刷を直接見ることが出来る。また、カートン表面に樹脂フィルムを含む構成とすることによって、包装容器として必要な耐性を容易に付与することが出来る。
【0019】
また、請求項3の発明は、前記組み立て用糊代部に複数の凹部(凹み)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の害虫忌避効果を有する包装用カートンである。
請求項3記載の発明によれば、糊代部に塗布した糊が紙基材や樹脂フィルムの表面に弾かれることなく所定量が均一に施されて、カートン組み立て用の接着という機能と忌避剤を含む接着剤層を平滑な面への塗工のみでは達成できない量で形成する忌避効果保持という二つの機能を適切に果たすことが出来る。
【0020】
また、請求項4の発明は、前記複数の凹部の形状が、ミシン線、円形、楕円、四角形、×形であることを特徴とする請求項3に記載の害虫忌避効果を有するカートンである。
【0021】
本発明によれば、害虫忌避効果のある忌避剤を含む層がカートンの表面ではなく、カートンを構成する層の間の内側に設けられていることから、取り扱い時に手が触れるカートンの最表面には忌避薬剤が位置しないので、取り扱い時に人体への影響の少ないカートンを提供することができる。かつ、組み立て用の糊代部に複数の凹部が形成されていることから忌避剤を含む糊が十分な量存在できて薬剤の揮散が容易であり、圧着しても大きく広がることなく忌避剤の揮発速度が制御でき凹部の寸法や配置密度による揮散速度の制御も可能なカートンとすることが出来るようになった。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の害虫忌避効果を有する包装用カートンによれば、害虫忌避効果の継続性があり、取り扱い時に人体への影響の少ない包装用フィルムカートンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のカートンに用いるブランクス(a)及びカートン(b)の形状例。
【図2】本発明のカートンの積層体の層構成の例を示す断面略図。(a)は印刷層/紙基材の構成、(b)は樹脂フィルム/印刷層/接着層/紙基材の構成。
【図3】本発明のカートンの糊代部に設けられた複数の凹部が円形の場合の模式図。(a)は糊塗工面を上部にした場合の断面模式図、(b)は表面から見た平面模式図。
【図4】本発明のカートンの糊代部に設けられた複数の凹部の他の形状例の平面模式図。(a)ミシン線、(b)四角形、(c)×形状について例示。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の害虫忌避機能を有する包装用カートンの実施形態の例を、必要であれば図面を援用して説明する。
【0025】
本発明の害虫忌避機能を有する包装用カートンには、容器内部に保存される内容物の性質や保存状況に応じて、紙あるいは紙を基材とした積層体が使用されている。そして、この紙あるいは積層体を容器の形状に合わせて所定の形状に打ち抜き、同時に折曲げ用の罫線と組み立て用糊代部に複数の凹部を設けたブランクスとして成形する。そのブランクスを罫線に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を接着することによってカートンが製造される
【0026】
たとえば、図1(b)に概略図を示した包装用カートンは図1(a)に展開図で示したブランクスから以下のような通常の方法で容易に製造することが出来る。
一般的な紙箱ブランクスを折り曲げて箱を形成する場合には、まず、ブランクス(10)を製函機の給紙部から折りぐせ部に供給して折ぐせを付けた後、底折り部に供給して底面板(12)と天面板(11)を内側に折込んで側面板(13)に重ねると共に、フラップ(15)を内側に折込む。
【0027】
次に、糊付け部において、糊代部(14)の裏面側に糊層を形成した後、残りの底面板を内側に折り曲げて側面板に重ねる。この裏面側のブランクスにはあらかじめ金型エンボス等の方法で複数の凹部が形成してあり、糊付けプーリーや噴射式アプリケータノズルにより施される組み立て用糊が糊代部全面に、あるいは部分的なパターン状に糊層が形成されている。
次に、本折り部において、側面板を折込んで、糊代部の糊層が側面板に接着して折り畳まれた状態のカートンを完成する。
【0028】
本発明のカートンでは糊代部に複数の凹部が存在するために組み立て用糊の塗布厚が部分的に多くなり、この状態では糊代部(接着部分)の糊の乾燥が完了していない場合があるので、圧着搬送部の上下一対の圧着ベルトにてカートンを圧着しながら搬送して糊代部の接着を促進して成形を完了し、排出部によって次工程に排出される。
【0029】
この折り畳まれた状態のカートンに充填装置によって内容物の充填と必要な部分の封止を行うことによって使用状態の本発明のカートン(20)が完成する。なお、図では分かり易くする為にカートンを開封した状態を示してある。
【0030】
このような方法で作成することが出来る、本発明の害虫忌避効果を有する包装用カートンの実施の形態を、必要に応じて図面を参照しながら以下に説明する。
本発明の害虫忌避効果を有する包装用カートンは、例えば、図1(a)に示すようなブランクスを組み立てて成形されるカートン(b)である。
【0031】
このブランクスに用いられる積層体(1)は、図2(a)に示したように、カートンの表面から順に少なくとも、印刷層(4)/紙基材(6)からなり、必要に応じて、樹脂フィルム(2)/印刷層(4)/接着層(5)/紙基材(6)(図2(b))とからなり、糊代部の表面には複数の凹部(7)を設けてある。
【0032】
図3には本発明のカートンの糊代部に設けられた複数の凹部が円形の場合の模式図を示した。(a)は糊塗工面を上部にした場合の断面模式図、(b)は表面から見た平面模式図である。
図4には本発明のカートンの糊代部に設けられた複数の凹部の他の形状例の平面模式図を示した。(a)はミシン線、(b)は四角形、(c)は×形状について例示してある。
【0033】
本発明の害虫忌避効果を有する包装用カートンは、害虫忌避剤をカートン組み立て用糊に混入しカートンブランクスの糊代部に塗布することで、組み立てられたカートンの接着部から忌避剤が揮散するとともに、表面コーティングよりも塗布量を多くすることが出来るので忌避効果の持続する期間が長くなり、最表面に忌避薬剤が位置しないことから生産時や消費時に人体に影響を与えることがない。
【0034】
本発明のカートンに用いる組み立て用の糊は通常のエマルジョン系の接着剤が用いられ、塗布方法にはプーリー(糊車)と噴射式(アプリケータノズル)がある。組み立て用の糊への害虫忌避剤の混合は原液状態でもよくマイクロカプセル化した状態でもよい。いずれの場合も糊としての接着機能を損なわずに害虫忌避効果を発現するためには配合量は10%近辺が望ましい。この程度の配合量であれば忌避剤をカートン表面のニスに含ませて塗布した場合に比べても忌避剤量は2倍程度となり、害虫忌避効果が向上する。
【0035】
本発明の害虫忌避効果を有する包装用カートンにおいては、樹脂フィルム(2)としては気体透過の遮断性があり、印刷やエンボスが可能な通常の樹脂フィルムが使用可能な対象となるが、本発明の用途の紙基材(6)と積層したカートンでは寸法安定性の観点からポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ナイロン樹脂(Ny)のそれぞれ延伸フィルムが望ましい。フィルムの延伸方向は二軸延伸でも一軸延伸でもどちらでも構わない。樹脂フィルム(2)の厚さは適宜決めることが出来るが通常は15〜60μmの範囲のものが用いられる。
【0036】
図3は本発明のカートンの糊代部に設けられた、断面が円形の凹部(7)の形状と深さを示す模式図であり、図4は本発明のカートンの糊代部に設けられた凹部の形状を示す他の例の模式図であり、(a)ミシン線、(b)四角形、(c)×形状について例示してある。
【0037】
複数の凹部(7)は忌避剤を含む組み立て用糊が糊代部表面ではじかれることを防止して、かつ、組み立て用糊層の塗布量を確保するために設けられたものであり、トムソン刃により半切れ刃を入れる方法で形成できる。
複数の凹部(7)の大きさと形成数(密度)はとくに限定されないが組み立て用糊の塗布膜厚のばらつきをなくし、糊の表面積を少なくする観点からは、形状(平面形状)は、円形、楕円や、図4に例示したようにミシン線、四角形、×形のような対称性のよい形状が望ましい。
【0038】
組み立て用糊に配合する忌避剤は害虫の嫌う忌避剤成分を含有して該成分の揮散によりカートンに害虫を寄せ付けないための成分である。
忌避剤には、殺虫成分、天然成分、植物精油などから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
【0039】
殺虫成分としては、例えば、ピレトリン、シネリン、ジャスモリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、イミブロトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、プラレトリン、シフルトリン、シラフルオフェン、ビフェントリン、フルメトリン、フルバリネート、デルタメスリン、エンペントリン、メトフルトリン、トランスフルスリンなどのピレスロイド剤が挙げられる。
【0040】
天然成分としては、害虫忌避効果、殺虫効果などを有する天然成分が好ましく、例えば、p−メンタン−8−エン−1,2−ジオール、カラン−3,4−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2,3,4,5−ビス(△2−ブチレン)テトラヒドロフルフラール、ジ−n−プロピロイソシンコロネート、ジ−n−ブチルサクシネート、2−ヒドロキシオクチルスルフィド、(N−カルボ−sec−ブチロキシ)−2−(2’−ヒドロキシエチル−ピペリディンα−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、カジノール、カリオレフィレン、などが挙げられる。
【0041】
植物精油としては、たとえば、ティーツリーオイル、マツ、ヒノキ、クスノキ、ヒバ、シトロネラ、ローズ、ゲラニウム、セダーウッド、ラベンダー、アニス、スペアミント、ナツメグ、ペパーミント、シナモン、クローブ、ユーカリ、ガーリック、マージョラム、パルマローザ、クミン、コリアンダー、オリガナム、ハッカ、レモンピール、ローズマリー、ヒソップ油、コパイバオイルなどが挙げられる。尚、コパイバオイルは人体には悪影響を及ぼさない天然香料として、食品添加物として認可を受けている物質である。
【0042】
図2(b)に示した印刷層(4)は樹脂フィルム(2)の裏面に必要に応じた絵柄や文字等を印刷した層であり、図2(a)のように紙基材(6)の表面に印刷した場合に比較して平滑なフィルム面に印刷することによってより綺麗な印刷が出来るという効果も奏する。印刷層(4)の形成方法は通常のインキを用いたグラビア印刷等の公知の印刷方法で行うことが出来る。印刷層に用いられるインキとしては、例えばファインスター(東洋インキ製造)LPGT(東洋インキ製造)等が例示できる。
印刷層(4)は紙に印刷することも出来る。紙に印刷する場合はたとえばカルトンX(東洋インキ製造)等を用いてオフセットやグラビア印刷が可能である。
【0043】
図2(b)に示した接着層(5)は樹脂フィルム(2)と紙基材(6)を接着するための層である。接着方法としては通常のドライラミネート法やウェットラミネート法等が使用出来る。接着層(5)に用いる接着剤は通常のポリエーテル系や酢酸ビニル系の感熱系の接着剤が使用出来る。例示すれば、A969V/A5(三井武田ケミカル)、TM242A/TM242B(東洋モートン)RC902(サンデン化学)等々が挙げられる。
【0044】
紙基材(6)は本発明の包装用カートンを構成する基材であり、コートボール等の板紙が使われる。本発明に用いる紙基材は、坪量230〜550g/m、厚さ0.3〜0.8mmの範囲のコートボール等の板紙が使用出来る。
特に好ましい範囲は坪量230〜310g/m、厚さ0.3〜0.5mmである。
【実施例】
【0045】
以下実施例により本発明の実施形態の例を説明する。
<実施例1>
紙基材として、JETスターH(坪量230g/m)(日本大昭和製紙)を用い、その表面に印刷インキカルトンX(東洋インキ製造)を用いてオフセット印刷法にて絵柄印刷を行い積層体を作成した。
この積層体に必要な折れ線を刻設すると同時に糊代部にトムソン刃により半切れ刃を入れ、直径1mmの円形の凹部を10個/cmの密度で形成したのち、所定の形状に打ち抜きブランクスを作成した。
【0046】
このブランクスの糊代部に忌避剤を含む糊をプーリー(糊車)で塗布し、糊代部と側面板端部を貼着してサック貼りを行い、製函機でそれぞれのフラップを内側に折り曲げた状態で組み立てて5cm四方の包装用カートンを作成し、内容物として誘引剤である焼糖を
封入した。
忌避剤を含む糊としては、AV−650Y−6T(ライフボンド)に忌避薬剤としてコパイバオイル(原液)を10%含む糊を用いた。糊の平均塗布量は60g/mであった。
【0047】
この内容物を封入したカートンを用い、対象害虫としてノシメマダライガの幼虫を選定して害虫忌避率を算出する実験を行った。実験はノシメマダライガの幼虫20匹のうちでカートンに侵入もしくは外側に付着した数をカウントすることで行い、次の式により忌避率を算出した。この実験を5回繰り返した。結果は忌避率62%であった。
忌避率=(供試虫数−箱に付着した虫数−箱に侵入した虫数)/供試虫数×100(%)
【0048】
<実施例2>
両面コロナ処理を施した、厚さ20μmの二軸延伸透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に多色グラビア印刷機を用いて、絵柄の印刷層を印刷インキLPGT(東洋インキ製造)を用いて施した。
この印刷層面に接着剤TM242A/B(東洋モートン)を60μm膜厚でドライラミネーターにより塗布して、紙基材JETスターH(坪量230g/m)(日本大昭和製紙)とドライラミネートして積層体を作成した。
この積層体に必要な折れ線を刻設すると同時に糊代部にトムソン刃により半切れ刃を入れ直径1mmの円形の凹部を10個/cmの密度で形成したのち、所定の形状に打ち抜きブランクスを作成した。
【0049】
このブランクスの糊代部に忌避剤を含む糊をプーリー(糊車)で塗布し、糊代部と側面板端部を貼着してサック貼りを行い、製函機でそれぞれのフラップを内側に折り曲げた状態で組み立てて5cm四方の包装用カートンを作成し、内容物として誘引剤である焼糖を封入した。
忌避剤を含む糊としては、AV−650Y−6T(ライフボンド)に忌避薬剤としてコパイバオイル(原液)を10%含む糊を用いた。糊の平均塗布量は60g/mであった。
実施例1と同様にしてカートンを作成してそれを用いた忌避率を算出した。結果は忌避率60%であった。
【0050】
<比較例1>
ブランクスの糊代部に塗布する糊に忌避薬剤を含まない糊(AV−650Y−6T)を用いたほかは、実施例1と同様にしてカートンを作成してそれを用いた忌避率を算出した。結果は忌避率11%であった。
<比較例2>
ブランクスの糊代部に塗布する糊に忌避薬剤を含まない糊(AV−650Y−6T)を用いたほかは、実施例2と同様にしてカートンを作成してそれを用いた忌避率を算出した。結果は忌避率11%であった。
【0051】
以上のような害虫忌避率の結果から、本発明のカートンの害虫忌避効果は従来のカートンに比べて明らかに向上し、実施例1と実施例2のカートンにおいては60%を越える忌避率を達成していて、比較例の結果である忌避率11%と比べて際立った効果を示している。
これにより本発明のカートンによれば、忌避薬剤が組み立て用糊に含まれていて、取り扱い時に手が触れる積層体の最表面には忌避薬剤が位置しない構造の害虫忌避効果のある包装用カートンを提供することが可能であることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0052】
1…積層体
2…樹脂フィルム
4…印刷層
5…接着層
6…紙基材
7…凹部
10…ブランクス
11…天面板
12…底面板
13…側面板
14…糊代部
15…フラップ
20…カートン
d…凹部の径
h…凹部の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とする積層体からなり、組み立て用糊代部に忌避剤を含む糊が塗布されてなることを特徴とする害虫忌避効果を有する包装用カートン。
【請求項2】
紙を主体とする積層体が表面から順に印刷層/紙基材、または樹脂フィルム/印刷層/接着層/紙基材の構成からなることを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避効果を有する包装用カートン。
【請求項3】
前記組み立て用糊代部に複数の凹部(凹み)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の害虫忌避効果を有する包装用カートン。
【請求項4】
前記複数の凹部の形状が、ミシン線、円形、楕円、四角形、×形であることを特徴とする請求項3に記載の害虫忌避効果を有するカートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−20742(P2012−20742A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157569(P2010−157569)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】