説明

志賀毒性1型タンパク質に基づく方法および組成物

本発明は、Stx1タンパク質における13C4抗体に対するエピトープの発見に基づく。本発明は、13C4モノクローナル抗体エピトープに対するエピトープを含む、全長ではないStx1ポリペプチドを特徴とする。また、本発明は、Stx1タンパク質の13C4エピトープに対して特異的な抗Stx1抗体を産生するための方法を特徴とする。さらに、本発明は、13C4エピトープを含むポリペプチド、または本発明の方法を使用して開発された抗Stx1抗体により、志賀毒素関連疾病(例、溶血性尿毒症症候群、ならびに、大腸菌および志賀赤痢菌の感染に関連する疾病)を罹患する、または発症する危険性がある対象を治療するための方法を特徴とする。さらに、本発明は、本発明の方法を使用して開発された抗体を用いる、試料におけるStx1の検出を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
概して、本発明は、志賀毒素関連疾病を治療および予防するための分野に関する。
【背景技術】
【0002】
米国では、志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin(Stx)−producing Escherichia coli(STEC))の感染は、年間、約110,000件に上る。腸管出血性大腸菌(EHEC)、特に血清型O157:H7は、Stx媒介疾病を発症することで知られているSTECのサブセットである。Stx産生生物による感染から発症しうる合併症は、溶血性尿毒症症候群(HUS)であり、溶血性貧血、トロンビンの血小板減少症、および腎不全を特徴とする。HUSを罹患する人の致死率は約5〜10%であり、生存者は慢性的な腎障害を有する恐れがある。現在、Stx媒介疾病からの疾患を対処、または予防するためのFDAに認可された療法またはワクチンはないが、今後のいくつかの有望な選択肢には、Stx2に結合し、中和するヒト化モノクローナル抗体と、中和反応を引き起こし、Stx1もしくはStx2、またはStx1およびStx2の致死的処置に対して保護を提供するキメラStxA2/StxB1トキソイドとが挙げられる。
【0003】
本来、Stxの2つの主な型は、Stx/Stx1およびStx2である。Stx1およびStx2が大腸菌から産生される一方、Stxは、志賀赤痢菌1型から産生される。StxおよびStx1は、Aサブユニットに1つだけアミノ酸の違いがあるが、ほぼ同一である。Stx1およびStx2の成熟AおよびBサブユニットはそれぞれ、68%および73%の類似性を有する。アミノ酸配列の相違にも関わらず、StxおよびStx2の結晶構造は、著しく類似している(図1)。これらの毒素は、ポリクローナル抗血清により区別することができ、Stx1に対して生じるポリクローナル抗血清は、Stx2を中和せず、逆もまた同様である。Stx1およびStx2には変種が存在し、それには、Stx1c、Stx1d、Stx2c、Stx2d、活性化可能Stx2d(Stx2−act.)、Stx2e、およびStx2fが含まれる。
【0004】
志賀毒素は、AB構造を有する複合体ホロトキシンである。活性ドメイン(A)は、60Sリボソームサブユニットの28S rRNAを脱プリン化するN−グリコシダーゼを含み、それは、タンパク質合成を停止し、最終的には、細胞死に至らせる。Aサブユニットは、約32kDaであり、トリプシンまたはフューリンによって、約28kDaのAサブユニット、および単一ジスルフィド結合で結合した約5kDaのAペプチドにタンパク質分解的に切断される。Aサブユニットは、活性ドメインを含み、Aペプチドは、活性ドメインを結合ドメインに非共有結合する。結合ドメイン(B)は、AペプチドのC末端が横断する5量体を形成する5つの同一の約7.7kDaのモノマーからなる。Bサブユニットのそれぞれのモノマーは、それぞれのモノマー内でジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を有する(図2)。Bの5量体は、真核生物の受容体であるグロボトリアオシルセラミド(Gb)(またはStx2eの場合、Gb)を結合する。
【0005】
これらの毒素の曝露の結果についての知識にも関わらず、現在、HUSに対する治療法またはワクチンは知られていない。抗生物質の使用は、細菌からの毒素放出を増加させて状況を悪化させる場合がある。従って、志賀毒素により産生されるEHECの合併症を予防または治療するための化合物が必要とされる。CNS、血液、および腎臓において感染した対象を治療、毒素の全身的作用を低下するためにこのような化合物を使用することができる。さらに、毒素を中和することが可能である場合、消化管の細菌を殺すために、抗生物質を与えることが可能である。またこのような化合物を使用して、EHECに感染する前に、曝露した個人、または高いリスクを有する個人を治療することにより、感染合併症を予防することも可能である。このような個人には、デイケアセンターの幼児または老人ホームの高齢者が含まれ、EHECによる下痢が認められてきた。これらの個人は、多くの場合、重度の合併症を伴い、EHECを発症する危険性が高まり、これらの環境でのEHECのまん延は、珍しいことではない。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
モノクローナル抗体(MAb)13C4は、Stx1のBサブユニットを認識し、その細胞毒性を中和する。StxB1とStxB2との間で類似した73%のアミノ酸(aa)配列があるにも関わらず、13C4 Mabは、StxB2に結合しない。我々は、13C4エピトープが、StxB1とStxB2間の相違領域を包含することを発見した。13C4 Mabは、StxB1モノマー上に3つの領域が広がる不連続または立体配座エピトープを認識し、残基55位を必要とする。3つの相違領域は(aa1〜6位(配列番号:1)、25〜32位(配列番号:2)および54〜61位(配列番号:3))、StxB(StxBはStxB1と同一)の結晶構造上に互いに近接して位置することが分かった。2つの隣接領域(1〜6、54〜61位)のそれぞれは、システイン残基を含む。従って、13C4エピトープは、配列番号:1、2、および3に記載されている少なくとも1つ、2つ、または3つすべての配列を含む。
【0007】
従って、本発明は、Stx1の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体(例、モノクローナルおよびポリクローナル抗体)および抗体断片を産生する方法を特徴とする。このような抗体または抗体断片は、Stx1に特異的に結合し、Stx2には結合しない。本方法は、配列番号:1、2、および3に記載されている少なくとも1つ、2つ、または3つすべての配列を含む、Stx1の断片(すなわち、全長ではないStx1)を含むポリペプチドに対する哺乳動物の免疫付与を含み、本ポリペプチドには、全長Stx1を含まない。好ましくは、該方法は、配列番号:1および3を含むStx1の使用を含む。一実施形態において、該方法は、配列番号:1、2、および3を含む、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列と実質的に同一であるポリペプチドに対する哺乳動物の免疫付与を含む。
【0008】
Stx1に特異的に結合し、Stx2に結合しない抗体を同定するために、抗Stx1抗体は、当技術分野において公知の、または例えば、本明細書に記載のインビトロ中和アッセイを含む本明細書に記載の標準方法を使用して、スクリーニングすることができる。また、抗原性ポリペプチド、本ポリペプチドを調製する方法も、本ポリペプチドをコードする核酸分子とともに(本核酸がベクターにおいて発現構築物に結合し、本ベクターが宿主細胞に挿入される場合を含む)、本発明の関連態様として含まれる。
【0009】
また本発明は、Stx1の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体を特徴とし、該抗体は、Stx1に特異的に結合し、Stx2には結合しない。本発明の好ましい抗体は、配列番号:1、2、および3に記載されている少なくとも1つ、2つ、または3つすべての配列を含むエピトープに、好ましくは配列番号:1および3により形成される結合部位に、最も好ましくは、3つすべてを含む部位に、結合する。エピトープは、アミノ酸配列が、エピトープ、またはStx1タンパク質に存在する3つのエピトープ領域(配列番号:1、2、および3)を含むStx2キメラタンパク質を含むStx1ポリペプチドの立体構造に基づき、近接する、立体構造エピトープであり得る。該抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD、IgA、Fab、Fv、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、または抗体断片であり、本明細書に記載の方法により開発することができる。該抗体は、Stx1と100nM、50nM、10nM、1nM、100pM、10pM、または1pM以下のKで結合することが好ましい。一例において、本発明の抗体は、100nM〜1pMの間のK値の抑制を含み、Stx1、または13C4エピトープを含むキメラタンパク質への13C4抗体の結合を抑制する。また、望ましくは、該抗体は、真核生物の受容体であるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)への、Stx1の結合を抑制する。本発明の抗Stx1抗体は、13C4、モノクローナル5−5B、または2H3抗体のマウス、ヒト化、またはキメラ型を含むことを意味していない。本発明は、本発明のいかなる抗体を産生するハイブリドーマ細胞系をもさらに含む。
【0010】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのペプチドを使用して、Stx1に対する免疫反応を刺激する組成物であり、ペプチドは、配列番号:1、2、および3に記載されている少なくとも1つ、2つ、または3つすべての配列を含み、全長Stx1ではない。該組成物は、アジュバントをさらに含むことができる。望ましくは、該ポリペプチドは、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列、またはその断片に実質的に同一であるアミノ酸配列を含む。また本発明は、13C4エピトープを含むキメラペプチド(例、StxB2など、足場(scaffold)タンパク質に挿入される配列番号:1、2、または3の少なくとも1つ、2つ、または3つすべてを含む、キメラペプチド)の使用を特徴とする。本ペプチドを使用して、溶血性尿毒症症候群、および大腸菌または志賀赤痢菌感染に関連する疾病を含むいかなる志賀毒素関連疾病に対しても免疫化する、または治療することができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、本発明の抗体のいずれかを使用して、生体試料(例、組織、細胞、細胞抽出物、体液、または生検)において、Stx1を検出する方法を特徴とする。本発明の検出方法は、ELISA法、RIA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、またはフローサイトメトリー法を含む。本発明は、試料における、Stx1の同定に基づく志賀毒素関連疾病の診断を含む。また本発明は、志賀毒素関連疾病を検出するための免疫検査キットを特徴とし、該キットは、本発明の抗体および抗体を検出するための手段を含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、前述の方法のいずれかにより産生される抗体を使用して、志賀毒素関連疾病を治療する方法を特徴とする。志賀毒素関連疾病の例は、溶血性尿毒症症候群(HUS)および大腸菌または志賀赤痢菌感染に関連する疾病を含む。これらの抗体は、他の志賀毒素関連タンパク質(例、Stx2)に特異的に結合する抗体を含むがこれらに限定されない他の療法との併用で投与することができる。
【0013】
「13C4エピトープ」とは、直線構造、あるいは、三次元配座の結果として、13C4抗体に対する結合部位を形成するアミノ酸配列を意味する。本用語は、配列番号:1、2、および3に記載されている1つ、2つ、または3つの配列に実質的に同一である配列(例、配列番号:1および2、配列番号:2および3、配列番号:1および3、配列番号:1,2、および3)を含むいずれかの全長ではないStx1タンパク質を含むことを意味する。13C4エピトープを含むタンパク質の一例は、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列に実質的に同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0014】
「Stx1の13C4エピトープに特異的に結合する抗体」または「13C4エピトープ特異的抗体」とは、100nM〜1pMのK値の13C4エピトープを含む、Stx1タンパク質に結合する抗体を意味する。またこのような抗体は、Stx2タンパク質(例、Stx2に対して、100nM、200nM、500nM、1μM、10μM、100μM、あるいは、1mM以上のK値を有する)への結合がほとんどない、または検出されないことを特徴とする。表面プラスモン共鳴ベースのアッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)、および競合アッセイ(例、RIA法)を含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知のいかなるアッセイを使用して抗体親和性を決定してもよい。また、抗体は、本明細書に記載のように、インビトロ中和アッセイを施してもよい。13C4エピトープに特異的に結合する抗体は、本明細書に記載のアッセイまたは当技術分野で公知のアッセイを使用して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、またはそれ以上、Stx1の細胞毒性を中和する。
【0015】
「結合を抑制する」とは、例えば、ELISA法または本明細書に記載のGb受容体結合アッセイにより測定される場合、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%、90%、またはそれ以上、別のタンパク質に対するタンパク質の結合を減少させることを意味する。
【0016】
「抗体」という用語は、広義に使用され、このような分子が望ましい生物活性(例、本明細書に記載のように、Stx1毒素の中和)を有するという条件で、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例、2重特異性抗体)、または抗体断片を含む。
【0017】
「単離」とは、その自然環境の構成要素から同定され、分離および/または回収されるタンパク質を意味する。その自然環境の汚染物質の構成要素は、タンパク質に対する診断用または治療用の使用を典型的に妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含んでもよい。
【0018】
「全長ではないStx1」とは、全長Stx1ポリペプチドの90%、80%、70%、60%、またはそれ以下のアミノ酸を含むタンパク質を意味する。
【0019】
「実質的に同一」とは、例えば、下記に記載の方法を使用して最適に配置される場合、例えば、配列番号:4に記載されているものなどのStx1、Stx2、またはキメラタンパク質などの第2の核酸またはアミノ酸配列に対し、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有する核酸またはアミノ酸配列を意味する。「実質的な同一性」とは、全長配列、エピトープまたは抗原性ペプチド、機能ドメイン、コードおよび/または調節塩基配列、エクソン、イントロン、プロモータ、およびゲノム配列など、様々な型および長さの配列を指すために使用してもよい。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の同一性の程度は、例えば、Smith Waterman Alignmentなどの市販のコンピュータソフトウェア(Smith,T.F.and M. S. Waterman(1981)J.Mol.Biol.147:195−7)、GeneMatcher Plus(商標)、Schwarz and Dayhof(1979)Atlas of Protein Sequence and Structure,Dayhof,M.O.,Ed pp 353−358に組み込まれているような「Best Fit」(Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics,482−489(1981))、BLAST program(Basic Local Alignment Search Tool、(Altschul,S.F.,W.Gish,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10)、BLAST−2、BLAST−P、BLAST−N、BLAST−X、WU−BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当技術分野の技術内である様々な方法で決定する。さらに、当業者は、比較される配列の長さで最大配列を達成するために必要とされるいずれかのアルゴリズムを含む、配列を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。一般に、タンパク質に対して、比較配列の長さは、少なくとも6つのアミノ酸、好ましくは、10、20、30、40、50、60、または70のアミノ酸、またはタンパク質の最大の全長であり得る。核酸に対して、比較配列の長さは、一般に、少なくとも18、25、50、100、150または200のヌクレオチド、または核酸分子の最大の全長であり得る。配列の同一性を決定するために、DNA配列をRNA配列と比較する場合、チミンヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドと同等であることを理解されたい。同類置換は、典型的に、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。
【0020】
「断片」とは、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上を含むポリペプチドまたは核酸分子の一部を意味する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200以上のヌクレオチド、または10、20、30、40、50、60、または70以上のアミノ酸を含んでもよい。志賀毒素1型または志賀毒素2型のタンパク質の断片は、全長タンパク質よりも小さい任意の部分を含むことができる(全長を基準点とし、その後、例示的な長さを特定する)。断片はまた、StxB1およびB2などのStx1または2サブユニットを含むことができる。
【0021】
「志賀毒素関連疾病」とは、志賀毒素を発現する病原体から生じるいかなる疾病をも意味する。「志賀毒素関連疾病」という用語は、溶血性尿毒症症候群、細胞性赤痢、志賀毒素産生大腸菌または志賀赤痢菌感染から生じる疾病を含むことを意味する。
【0022】
発明の詳細な説明
概して、本発明は、Stx1タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗体の産生を特徴とする。発明者らは13C4エピトープを発見し、本エピトープが、配列番号:1、2、および3に記載されている少なくとも1つ、2つ、または3つすべての配列を含むことが明らかとなった。さらに、志賀毒素関連疾病(例、溶血性尿毒症症候群および大腸菌または志賀赤痢菌感染に関連する疾病)を罹患する対象、または発症する可能性のある対象を、13C4エピトープを含むポリペプチド、またはStx1タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗体で治療することができることも発見した。
【0023】
I.適応
本発明の化合物および方法は、志賀毒素関連疾病を罹患する対象、または発症する可能性のある対象を治療するために有用である。このような対象は、デイケアセンターの幼児または老人ホームの高齢者を含む。一例において、対象は、EHECの下痢が認められる、デイケアセンターの幼児または老人ホームの高齢者を含む。本例において、対象は、疾病を発症している、あるいは、していない可能性がある。志賀毒素関連疾病は、志賀赤痢菌または腸管出血性大腸菌(EHEC)、特に血清型O157:H7を発症する志賀毒素での感染から生じるものを含む。これらの感染は、多くの場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)を生じ、溶血性貧血、トロンビンの血小板減少症、および腎不全を特徴とする。
【0024】
II.抗体
本発明は、志賀毒素I型(Stx1)タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗体の産生を含む。望ましくは、このような抗体は、Stx2に検出可能に結合しない。標的タンパク質を認識し、特異的に結合する抗体の特異な能力は、志賀毒素産生大腸菌(STEC)に関連する疾病を診断し、治療するための手法を提供する。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、マウスおよび他の哺乳動物抗体、抗体断片、2重特異性抗体、抗体2量体または4量体、1本鎖抗体(例、Fab、2重特異性抗体、およびFab’断片などのscFvおよび抗原結合性抗体断片)、抗体結合領域に基づく組み換え結合領域、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化およびヒト抗体、ドメイン検出した抗体、および検出可能なマーカーで標識化した抗体、または毒素もしくは放射性核種で結合した抗体を含むが、これらに限定されない抗体の産生を提供する。このような抗体は、当技術分野に公知の従来の方法で産生される。一態様において、本発明は、Stx1の13C4エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体または抗体断片の調製を含み、該調製は、配列番号:1、2、または3に記載されている配列から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つの配列を含む全長ではないStx1の断片の使用を含む。このような断片の一例は、配列番号:4のタンパク質である。
【0025】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、抗原を注射した後、適切な間隔で追加免疫することによりウサギまたは他の動物に免疫化することで調製することができる。動物から採血し、通常、ELISA法により精製したタンパク質に対して血清を化学分析する。
【0026】
13C4エピトープに特異的に結合するポリクローナル抗体は、抗原およびアジュバントの複数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により、動物において、生じさせることができる。二官能性物質または誘導体化剤(例、マレイミドベンゾイルスルフォスクシンイミドエステル(システイン残基を介して接合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して)、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸)を使用して、免疫性のある種(例、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、またはダイズトリプシン抑制因子)において、抗原性であるタンパク質に、標的アミノ酸配列を含む抗原または断片を結合させることは、有用でありうる。
【0027】
例えば、1μgから1mgのペプチドまたは複合体(ウサギまたはマウスそれぞれに対して)を3容量のフロイント完全アジュバントと混合し、複数の部位に溶液を経皮注射することにより、13C4エピトープ、抗原性複合体、または誘導体に対する免疫性を動物に与えることができる。1ヶ月後、複数の部位に皮下注射することにより、ペプチドまたはフロイント完全アジュバントの複合体の元の量の1/5から1/10で動物に追加免疫を行う。7日から14日後、動物から採血し、抗原またはその断片への抗体滴定のために、血清を化学分析する。滴定が安定するまで、動物に追加免疫を行う。好ましくは、同一のポリペプチドの複合体で、動物に追加免疫を行うが、異なるタンパク質へ、および/または異なる架橋試薬によって結合する。また複合体は、タンパク質融合物として、組み換え細胞培養において作成することもできる。また、アルム(alum)などの凝集剤を適切に使用して、免疫反応を強化する。
【0028】
キメラ、ヒト化、またはヒトポリクローナルは、ヒト免疫グロブリン遺伝子の遺伝子組み換え動物において、または出発物質に対して対象から2つ以上のStx1反応性Bリンパ球を単離することにより、産生される場合がある。
【0029】
また、モノクローナル抗体を得るために、必要ならば反復して、ポリクローナルを(配座固定した抗原ペプチドに対する親和性を通して)精製および選択してもよい。代替的に、または付加的に、リンパ球からの単一抗体をコードする核酸のクローニングを使用してもよい。
【0030】
モノクローナル抗体
本発明の別の実施形態において、モノクローナル抗体を、実質的に均質抗体の一集団(すなわち、集団を含む個々の抗体は、微量に存在する自然に生じる突然変異を除いて同一である)から得る。従って、「モノクローナル」という用語は、別個の抗体の混合物ではない抗体の特徴を示す。
【0031】
モノクローナル抗体は、骨髄腫細胞またはリンパ腫細胞などの継続的に複製する腫瘍細胞を有する、免疫化マウス由来の脾細胞を融合することにより、Kohler and Milsteinのハイブリドーマ法などの当技術分野で公知の方法により調製することができる。(Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497;Gulfre and Milstein(1981)Methods in Enzymology:Immunochemical Techniques 73:1−46,Langone and Banatis eds.,Academic Press)。その後、ハイブリドーマ細胞を、限界希釈法によってクローン化し、ELISA法、RIA法、またはバイオアッセイによる抗体産生のために上澄みを分析する。別の実施形態において、モノクローナルを組み換えDNA法により調製してもよい。
【0032】
13C4エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体(Mab)の調製のために、培養において、連続継代細胞系による抗体分子の産生を提供するいかなる技術を使用してもよい。例えば、もともとKohlerおよびMilsteinにより開発されたハイブリドーマ技術(上記の(1975)、ならびにKohler and Milstein(1976)Eur J Immunol.6:511−519、Kohlerら(1976)Eur J Immunol.6:292−295、Hammerlingら(1981)in:Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas,Elsevier,N.Y.,pp.563−681)、およびトリオーマ技術(trioma technique)、ヒトB−細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol Today.4:72−79)、およびヒトモトクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら(1985)in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R. Liss, Inc.,pp.77−96)がある。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのいずれのサブクラスを含むいずれの免疫グロブリン集合であってもよい。本発明において、Mabsを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養されてもよい。本発明の追加の実施形態において、モノクローナル抗体は、無菌動物において、当技術分野に公知の技術を使用して、産生することができる。
【0033】
一般に、ハムスターなどのマウスまたは他の適切な宿主動物は、免疫付与に対して使用される抗原またはその断片に特異的に結合できる抗体を産生する、または産生することが可能なリンパ球を誘導するための13C4エピトープを含むポリペプチドで免疫化する。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化する。
【0034】
免疫宿主動物(例、マウス)の脾細胞は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールなどの適切な融剤を使用して、適切な骨髄腫細胞系で抽出し、融合される(Goding(1986)Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,pp.59−103,Academic Press)。本発明によって、いかなる適切な骨髄腫細胞系も使用してもよいが、好ましい骨髄腫細胞は、効果的に融合し、選択した抗体産生細胞により抗体の安定した高レベル産生を支援し、HAT培地などの培地に感受性であるものである。これらの中の好ましい骨髄腫細胞系は、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,Calif.USA)のSalk Institute Cell Distribution Centerから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍由来のものなどのマウス骨髄腫系、および米国メリーランド州ロックビル(Rockville,Md,USA)のAmerican Type Culture Collectionから入手可能なSP−2細胞である。
【0035】
従って、好ましくは、調製されたハイブリドーマ細胞を、融解していない、親骨髄腫細胞の増殖または生存を抑制する1つ以上の物質を含む適切な培地において、播種し、および生育させてもよい。その後、ハイブリドーマ細胞が保持される、このような選択および/または培地で得られるハイブリドーマ細胞を、化学分析し、13C4エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体の産生を同定することができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降、または放射免疫測定(RIA)、あるいは酵素免疫測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイ、もしくはBiacoreを使用して、決定される。例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munson and Rodbard(1980)Anal Biochem.107:220−239のScatchard分析により決定することができる。
【0036】
望ましい特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、限界希釈法によって、クローンをサブクローン化し、標準方法により増殖してもよい(上記Goding)。さらに、動物において、ハイブリドーマ細胞を腹水癌などのインビボに増殖してもよい。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体を、例えば、タンパク質Aセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析法、または親和性クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、または血清から適切に分離する。
【0037】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を使用して(例、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に、特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用)、容易に単離および配列する。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい源として役立つ。単離されると、DNAは、発現ベクターに配置され、その後、組み換え宿主細胞において、モノクローナル抗体の合成を得るために、大腸菌細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの宿主細胞、またはその他免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされる(例、Skerraら(1993)Curr Opin Immunol. 5:256−262およびPluckthun (1992) Immunol Rev.130:151−188を参照)。
【0038】
またDNAは、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常領域に対するコード配列のすべて、または一部を置換することにより(Morrisonら(1984)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.81:6851−6855)、または非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列のすべて、あるいは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合で結合することにより、修飾してもよい。そのような方法で、抗13C4エピトープモノクローナル抗体の結合特異性を有するキメラまたはハイブリッド抗体を調製する。通常、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常領域に対し置換されるか、本発明による、13C4エピトープに対して特異性を有する抗原結合部位と、異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を生み出すために、本発明の抗体の抗原結合部位の可変領域に対し置換される。
【0039】
修飾抗体
本発明の修飾抗体は、キメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト−マウスキメラ)、ヒトモノクローナル抗体、および霊長類化モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。キメラ抗体は、マウスmAb由来のヒト免疫グロブリン定常領域および可変領域を有するものといった、異なる部分が異なる動物種に由来する、分子である(例えば、米国特許第4,816,567号および第4,816,397号を参照)。非ヒト(例、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)、およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域などの非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列など)である(例えば、米国特許第5,585,089号を参照)。
【0040】
ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、望ましい特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基により置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。またヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、導入されたCDR配列またはフレームワーク配列の中にも見られない残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変領域の実質的にすべてを含むが、CDR領域のすべて、または実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域と対応し、FR領域のすべて、または実質的にすべては、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。またヒト化抗体は、好ましくは、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み、通常はヒト免疫グロブリンのものである。
【0041】
キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えば、WO 87/02671号、EP 184,187号、EP 171,496号、EP 173,494号、WO 86/01533号、US 4,816,567号、EP 125,023号、Betterら(1988)Science 240:1041−1043、Liuら(1987)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.84:3439−3443、Liuら(1987)J Immunol.139:3521−3526、Sunら(1987)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.84:214−218、Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005、Woodら(1985)Nature 314:446−449、Shawら(1988)J Natl Cancer Inst.80:1553−1559、Morrison(1985)Science.229:1202−1207、Oiら(1986)Biotechniques.4:214;US 5,225,539号、Jonesら(1986)Nature 321:552−525、Verhoeyanら(1988)Science 239:1534、およびBeidlerら(1988)J Immunol.141:4053−4060に記載の方法を使用して、当技術分野に公知の組み換えDNA技術により産生することができる。ヒト化抗体のさらなる考察、およびその関連方法に関しては下記を参照。
【0042】
組み換え抗体を生成するための別の高効率の手段は、Newman((1992)Biotechnology.10:1455−1460)により開示される。また、米国特許第5,756,096号、第5,750,105号、第5,693,780号、第5,681,722号、および第5,658,570号も参照。
【0043】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野に公知である。ヒト化は、Winterおよびその共同研究者らの方法(Jonesら(1986)Nature 321:522−525、Riechmannら(1988)Nature 332:323−327、Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536を含む)に従って、げっ歯類CDRまたはCDR配列とヒト抗体の対応する配列とを置換することによって、本質的に実行され得る。従って、そのようなヒト化抗体は、キメラ抗体である(米国特許第4,816,567号および第6,331,415号)。実際には、ヒト化抗体は、典型的にいくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体における類似部位からの残基によって置換される抗体である。
【0044】
ヒト化抗体を調製するために使用される、軽鎖および重鎖の双方のヒト可変領域の選択は、抗原性を低下するために非常に重要である。いわゆる最良適合法に従い、げっ歯類抗体の可変領域の配列は、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリに対して、スクリーニングされる。その後、げっ歯類配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として認められる(Simsら(1993)J Immunol.151:2296−2308;Chothia and Lesk(1987)J Mol Biol.196:901−917)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同一のフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carterら(1992)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.89:4285−4289;Prestaら(1993)J Immunol.151:2623−2632)。
【0045】
また、抗体は、抗原(すなわち、Stx1の13C4エピトープ)および他の好ましい生物学的特性に対する高親和性の保持によりヒト化されることが望ましい。この目的を達成するために、親ならびにヒト化配列の三次元のモデルを使用した、親配列および様々な概念的ヒト化生成物の分析を通じて、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の有望な三次元の立体配座構造を例示し、表示するコンピュータプログラムも使用可能である。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能において、残基の可能性のある役割の分析、すなわち、その抗原に結合するための候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基は、標的抗原に対する増大した親和性のような、望ましい抗体特性を達成するために、コンセンサスおよびインポート配列から選択され結合され得る。一般に、CDR残基は直接、かつ最も実質的に、抗原結合への影響に関与する。
【0046】
完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療処置のために有用である。例えば、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することはできないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができる遺伝子導入マウスを使用して、このような抗体を産生してもよい。例えば、13C4エピトープを含むポリペプチドなどの選択した抗原で標準の方法において、遺伝子導入マウスに免疫を与えることができる。例えば、PCT公開番号第WO 94/02602号、第WO 00/76310号、米国特許第5,545,806号、第5,545,807号、第5,569,825号、第6,150,584号、第6,512,097号、および第6,657,103号、Jakobovitsら(1993)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.90:2551、Jakobovitsら(1993)Nature 362:255−258;Bruggemannら(1993)Year in Immunol.7:33−40、Mendezら(1997)Nat Gene.15:146−156、およびGreen and Jakobovits(1998)J Exp Med.188:483−495を参照。
【0047】
またヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の導入に対するヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は、例えば、Kozbor(1984)J Immunol.133:3001−3005、Brodeurら(1987)Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York、およびBoernerら(1991)J Immunol.147:86−95に記載されている。
【0048】
また選択したエピトープを認識する完全ヒト抗体は、誘導選択といわれる技術を使用して、生成することもできる。この手法では、例えば、マウス抗体などの選択された非ヒトモノクローナル抗体を使用して、同一のエピトープを認識する、完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespersら(1994)Biotechnology.12:899−903)。
【0049】
1本鎖Fvおよび抗体を産生するために使用できる技術例は、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号、Hustonら(1991)Meth Enzymol. 203:46−88、Shuら(1993)Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 90:7995−7999、およびSkerraら (1988)Science 240:1038−1040に記載されるものを含む。
【0050】
あるいは、ファージ提示法(McCaffertyら(1990)Nature 348:552−553)を使用して、非免疫ドナー由来免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体およびインビトロ抗体断片を産生することができる。ファージ提示は、様々な形式において実施することができる。例えば、Johnson and Cliiswell(1993)Curr Opin Struct Biol.3:564−571を参照。ファージ提示のために、V遺伝子セグメントのいくつかのソースを使用することができる。Clacksonら、Nature 352:624−628(1991)は、免疫マウスの膵臓に由来するV遺伝子の小さなランダムランダムコンビナトリアルライブラリからの抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。非免疫ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ、多様なアレイの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marksら(1991)J Mol Biol.222:581−597、またはGriffithら(1993)EMBO J.12:725−734に記載される技術に本質的に従って単離することができる。
【0051】
本発明は、13C4エピトープを含むタンパク質に特異的に結合する、免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体またはアナログを提供する。この文脈において、「機能的に活性な」とは、断片、誘導体またはアナログが、断片、誘導体またはアナログが由来する抗体により認識される、同一の抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、3次抗体)を誘導することができることを意味する。具体的には、好ましい実施形態において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、抗原を特異的に認識するCDR配列のC末端にあるフレームワークおよびCDR配列の削除により強化されてもよい。抗原に結合するCDR配列を決定するために、CDR配列を含む合成ペプチドを、当技術分野に公知の任意の結合アッセイ法により抗原を有する結合アッセイに使用することができる。
【0052】
本発明は、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、およびscFvなどだが、それに限定されない抗体断片を提供する。特異的エピトープを認識する抗体断片は、例えば、ペプシンまたはパパイン媒介分割などの公知の技術により生成することができる。
【0053】
また本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖2量体、またはFvまたは1本鎖抗体(SCA)などのいずれかの最小断片(例、米国特許第4,946,778号、Bird(1988)Science 242:423−42、Hustonら(1988)Proc Natl Acad Sci.U.S.A.85:5879−5883、およびWardら(1989)Nature 334:544−54に記載)、または本発明の抗体と同一の特異性を有する他の任意の分子を提供する。1本鎖抗体は、アミノ酸橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖断片を架橋することにより形成され、1本鎖ポリペプチドを得る。大腸菌における、機能的Fv断片アセンブリ法を使用してもよい(Skerraら(1988)Science 242:1038−1041)。
【0054】
あるいは、少なくとも抗体のFabをコードするクローンを、特異的抗原を結合するFab断片のクローンに対して、Fab発現ライブラリをスクリーニングすることにより(例、Huseら(1989)Science 246:1275−1281に記載)、または抗体ライブラリをスクリーニングすることにより(例、Clacksonら(1991)Nature 352: 624 − 628、Hanes and Pluckthun (1997)Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 94:4937−4942を参照)、採取してもよい。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、本発明の免疫グロブリンの縮合タンパク質、またはその機能的に活性な断片を提供する。一例において、免疫グロブリンは、免疫グロブリンではない別のタンパク質のアミノ酸配列(またはその部分、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20または50のアミノ酸部分)のN末端またはC末端のいずれかにおいて、共有結合(例、ペプチド結合)を介して縮合される。好ましくは、免疫グロブリン、またはその断片は、定常ドメインのN末端で、他のタンパク質に共有結合される。上記のように、縮合タンパク質は、精製を促進し、インビボ半減期を増加し、免疫系への上皮バリアーを通して抗原の送達を強化する場合がある。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、プールした抗体、抗体断片、および本明細書に記載の他の抗体変異体の組成物および使用を提供する。例えば、2つ以上のモノクローナルを使用のためにプールしてもよい。
【0057】
治療のための投与
また本発明は、志賀毒素関連疾病を罹患する対象、または発症する危険性がある対象に、上記の方法を使用して開発された抗体(例、Stx1の13C4エピトープに特異的に結合する抗体)を投与することを特徴とする。
【0058】
本発明の抗体は、良好な医療と合致する方法において、調剤され、投薬され、投与されるであろう。これに関連して、考慮すべき要因は、治療中の特定の疾患、治療中の特定の対象、個々の対象の病態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与法、投与計画、および医師に既知の他の要因を含む。投与されるStx1の13C4エピトープに特異的に結合する抗体の薬学的な有効量は、このような考慮事項に準拠し、志賀毒素関連疾病、またはそれと関連する症状を予防、回復、または治療、あるいは安定させるために必要な最小量である。13C4エピトープに対する特異的な抗体は、任意で、志賀毒素関連疾病を予防または治療するために現在使用される1つ以上の薬剤(例、11E10およびTMA−15、またはそのヒト化またはキメラ誘導体を含む、Stx2に対する特異的な抗体)で調剤されるが、必ずしもそうである必要はない。このような他の薬剤の有効量は、製剤に存在するStx1の13C4エピトープの特異的な抗体の量、疾患または治療の型、および上記に記載の他の要因により異なる。
【0059】
抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を含む、いずれかの適切な手段により投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。さらに、抗体は、特に次第に低下する抗体の用量を用いる、パルス注入により適切に投与される。ある程度、投与が一時的または慢性であるかどうかにより、好ましくは、注射により、最も好ましくは、静脈注射または皮下注射により投薬される。
【0060】
III.ワクチン
本発明は、Stx1タンパク質に対して免疫反応を刺激するための組成物を特徴とする。
【0061】
志賀毒素関連疾病を罹患する対象、または発症する危険性がある個人を、本発明の13C4エピトープを含む組成物(例、ワクチン)の、好ましくは抗原性有効量における投与により治療することができ、ここで、該ポリペプチドは、全長Stx1ポリペプチドを含まない。該ペプチドは、予防的および/または治療的に投与することができる。
【0062】
異なるワクチンの型を当技術分野に公知の標準手順に従い、開発することができる。例えば、ワクチンは、ペプチド、核酸、細菌またはウイルスから作られるワクチンであってよい。13C4エピトープを含むポリペプチドをコードするポリペプチドまたは核酸を含むワクチン製剤は、安定剤を含む様々な他の成分を含んでよい。またワクチンは、1つ以上の適切なアジュバントを含む、またはそれと併用することもできる。ワクチンにおける13C4エピトープを含むアジュバントとポリペプチドとの比率は、当業者による標準方法で決定してもよい。
【0063】
別の実施形態において、ペプチドワクチンは、以下を含む多くの方法において、予防または治療ワクチンとして、13C4エピトープまたはその機能的な誘導体を含むペプチドを使用してもよい:1)同一配列のモノマーまたは多量体として、2)13C4エピトープの抗原性を増加するために、エピトープ(例、クラスI/II標的配列)および/または追加的な抗体、TヘルパーまたはCTLエピトープの凝集を促進し、提示またはプロセシングを促進することができる追加的配列と連続的、または非連続的に結合、3)ワクチン(例、脂肪酸またはアシル鎖、KLH、破傷風トキソイド、またはコレラ毒素)の抗原性または送達を増加する薬剤に化学修飾、または共役、4)上記のいずれかの組み合わせ、5)水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、フロイントアジュバントなどの油中水乳剤、アルミニウム塩、サポニンまたはトリペルテン、MPL、コレラ毒素、ISCOM’S(登録商標)、PROVAX(登録商標)、DETOX(登録商標)、SAF、フロイントアジュバント、Alum(登録商標)、Saponin(登録商標)など、特に、米国特許第5,709,860号、第5,695,770号、第5,585,103号に記載される特定のものを含むが、これらに限定されないアジュバント;および/またはリポソーム、VPLまたはウイルス様粒子、マイクロエマルジョン、弱毒化細菌または死細菌およびウイルスベクター、ならびに分散性ミクロスフェアを含むが、これらに限定されない送達媒体(例、Kersten and Hirschberg(2004)Expert Rev of Vaccines.3:453−462、Sheikhら(2000)Curr Opin Mol Ther.2:37−54を参照)、と上記の任意の組み合わせ、および6)任意の経路による投与、またはエクスビボで抗原により細胞を負荷する手段として。
【0064】
志賀毒素関連疾病に対する予防的治療または治療のいずれかとして投与した、ポリペプチドが全長ではないStx1である、13C4エピトープを含むポリペプチドの用量は、当業者により決定することができる。通常、用量は、約10μgから1,000mg、好ましくは約10mgから500mg、さらに好ましくは約30mgから120mg、さらに好ましくは約40mgから70mg、最も好ましくは約60mgの13C4エピトープを含むポリペプチドを含む。
【0065】
13C4エピトープを含むポリペプチドの少なくとも1用量が、対象に投与され、好ましくは少なくとも2用量、さらに好ましくは4用量、投与の最大総用量は6以上までである。初回量を投与する場合、最後に免疫付与してから1週間または2週間の間隔で、13C4エピトープを含むポリペプチドの追加抗原投与量、13C4エピトープより少ない、または同一量を含む1つの追加抗原投与量を投与することが望ましい場合がある。一例において、免疫付与の投与計画は、1週間間隔で、4用量で投与されるであろう。ポリペプチドまたは核酸が胃で分解される恐れがあるため、免疫付与は、非経口投与(例、皮下、筋肉内、静脈内、または皮内投与)が好ましい。免疫性を与えられた対象の経過は、一般の医学的評価、血清および/または胃内視鏡検査による感染に対するスクリーニングにより追跡してもよい。
【0066】
IV.実施例
マウス13C4モノクローナル抗体(MAb)は、StxB1に結合し、Stx1を中和するが、約73%のアミノ酸の類似性があるにもかかわらず、StxB2に結合せず、Stx2を中和しない(図3に記載される配列)。13C4 MAbエピトープは、StxB1において、6つの連続アミノ酸のいずれにも及ばない非線形エピトープであったことを上記に示した。Boydら((1991)Infect.Immun.59:750−757)は、13C4 MAbエピトープは、立体配座エピトープであり、それぞれのStx1Bモノマー内に形成されるジスルフィド結合は、13C4 MAbがStx1に結合するのに適切な立体構造を生成するために不可欠であるという結論を下した(図4)。近年、13C4 MAbは、成熟Bサブユニットにおいて、3つのアミノ酸のみStx1とは異なるStx1dを検出しないことが報告された。本願では、Stx1に結合し、中和する13C4 MAbのエピトープマッピングを記載する。
【0067】
13C4 MAbは、Stx1、StxB1、および、StxB1の3つの固有領域全てを含む3重キメラBサブユニットと強力に反応したが、StxB1の2つの隣接領域を含む2重キメラBサブユニットとは、弱く反応するのみであった。他のキメラについては、シグナルを検知しなかった。3重キメラBサブユニットで免疫化したマウスは、Stx1の致死的処置に対して保護されたが、Stx2に対してはそうではなかった。この結果は、同定されたアミノ酸が13C4エピト−プであることを実証し、また、このStxB1エピトープをStx2B五量体に組み込むことで、抗Stx2中和抗体の誘導に必要なStxB2上の部位を遮断、あるいは置換したであろうことを示唆する。13C4 MAbは、Stx1からの成熟Bサブユニット内において3つのアミノ酸が異なるStx1変異型であるStx1dを検出できないため、単一のアミノ酸置換をStxB1において行い、Stx1dを模倣させるようにした(T1A、G25A、およびN55T)。13C4 MAbは、T1AおよびG25A変異型のStxB1のどちらをも認識したが、N55T変異型は認識しなかった。この結果は、残基55位が13C4 MAbエピトープにとって重大な意味を持つことを示唆している。13C4 MAbはまた、N55T変異型のStx1ホロ毒素を中和することはできなかったが、Stx1ならびにT1AおよびG25A変異型のStx1ホロ毒素のどちらをも中和した。ここで、13C4 MAbは、StxB1上の3領域にまたがる不連続、あるいは立体配位のエピトープを認識し、残基55位を必要とすることが結論付けられる。
【0068】
材料および方法
細菌株、プラスミドおよび培地
組み換えプラスミドの選択のため、ルリア−ベルターニ(Luria−Bertani)(LB)培地またはLB寒天(Becton Dickinson and Company, Sparks,MA)で細菌を増殖させ、必要に応じて、100μg/mlのアンピシリンを補った。
【0069】
キメラstxB/stxBをコードするプラスミドの構築
13C4 MAbエピトープを含む1つ、2つ、または3つすべての推定StxB1領域を含む7つのキメラstxB/stxBセットを、一連のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により生成し、続いて、オーバーラップ伸長によるスプライシング(SOE)工程を行った。初めに、stxBおよびstxBを、PCRによりstxまたはstxを含むクローンから増幅し、stxAおよびstxA遺伝子を除去し、stxおよびstx天然プロモータ領域ならびにstxBおよびstxBを、それぞれSOEにより共にスプライスした。これらの構築物は、その後、pBluescript II KSに連結した(Stratagene, La Jolla,CA)。次に、キメラstxB/stxB遺伝子をPCRで増幅し、発現ベクターpTrcHis2 Cに連結し(Invitrogen, Carlsbad,CA)、大腸菌株BL21(DE3)にトランスフォーメーションした。このPCRの間、天然stxまたはstxプロモータを除去し、最適化されたシャイン・ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列(TAAGGAGGACAGCTATG(配列番号:15))を翻訳開始コドンの上流に添加した。さらに、6つのヒスチジンコドンに対応する18の塩基対を、すべてのBサブユニット上で共通の6つのヒスチジンエピトープを組み入れるために、B遺伝子の下流に直ちに添加した。この方法における、Bサブユニットに対する遺伝子のクローニングは、pTrcプロモータの制御下で、キメラ遺伝子の発現を可能にし、すべての構造に共通エピトープを添加する。この共通エピトープは、同一の溶解物上で仮のウエスタンブロット法を行い、6つのヒスチジンエピトープを認識するMAbで検出することにより、Bサブユニットの標準化を可能にした。3つの追加の個別変異は、成熟StxB1dとStxB(TlAまたはG25AまたはN55T)との間の3つのアミノ酸の相違を模倣するために、stxB1のSOE PCRにより生成された。構成物は、正しい変異を生成したことを確認するために、Uniformed Services University of the Health SciencesのBiomedical Instrumentation Centerにおいて配列決定された。
【0070】
ウエスタンブロット法
精製したStx1、または、StxB1、StxB2もしくはキメラStxB1/StxB2のhisタグ融合タンパク質を発現する全細菌溶解物を、前述の記載のように、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)およびウエスタンブロット法に供した(Smithら(2006)Vaccine 24:4122−42129)。簡潔に述べると、pTrcHis2 C−stxBまたはstxBを含んだ大腸菌BL21(DE3)、または、7つのキメラstxB/stxBクローンを一晩培養した培地を、を1:50で5mLのLB培地に希釈した。3時間後、培地を1mMのイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導し、さらに5時間培養した。その後、誘導した培地をミクロチューブに等分し、SDS−PAGE試料緩衝液(0.6Mのジチオスレイトール、10%のドデシル硫酸ナトリウムを含む)を添加し、試料を−80℃で保存した。15%のポリアクリルアミドゲルに充填する前に、試料を95℃で5分間加熱した。野生型または充填したキメラBサブユニットの濃縮を、抗6連ヒスチジンモノクローナル抗体(Novagen)で検出することにより、予備的なウエスタンブロット法で標準化し、イメージJプログラム(NIH)を使用して定量化した。2回目のウエスタンブロット法を標準化試料上で1次抗体として、13C4 MAbハイブリドーマ組織培地の上澄みを使用して、実施した。双方のウエスタンブロット法に対する2次抗体は、1:3,000の希釈で、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Bio−Rad)に共役したヤギ抗マウス免疫グロブリンG(IgG)であった。2次抗体をECL−Plus Western Blotting Detectionキットを使用して、化学発光により検出した(Amersham Bioscience, Little Chalfont Buckhamshire,England)。
【0071】
StxB/StxBの3重キメラBサブユニットの精製
pTrcHis2 C−stxB/stxBの3重キメラBサブユニットクローンpMJS36ABCを含む大腸菌BL21(DE3)を一晩培養したものを、1:50で3LのLB培養液に希釈した。増殖してから3時間後、培養物を1mMのIPTGで誘導し、さらに5時間培養した。細菌を遠心分離機で分離し、沈殿させ、300mM NaCl pH7.6を含む40mlの50mMリン酸緩衝液(超音波処理緩衝液)において再懸濁することにより、75倍に濃縮した。その後、濃縮した細菌懸濁液を超音波で分解し、遠心分離機で分離することにより清澄化した。その後、ヒスチジン標識化StxB1/StxB2の3重キメラBサブユニットを有する清澄溶解物をニッケル親和性カラム(Qiagen Inc.,Valencia,CA.)に適用し、20mM イミダゾールを含む超音波処理緩衝液で洗浄し、250mMイミダゾールを含む超音波処理緩衝液で溶離した。溶離タンパク質をリン酸塩で緩衝された生理食塩水、pH7.4(PBS)に対して透析し、Centricon3,000分子量カットオフフィルタ(Millipore corporation, Bedford,MA)で濃縮し、0.2μmフィルタでろ過した。ろ過後、BCAアッセイ(Pierce)で決定したStxB1/StxB2の3重キメラBサブユニット調製物の総タンパク質濃度は、288ng/μlであった。13C4 MAbおよび銀染色ゲルを使用したウエスタンブロット法により、いくつかの他の微量タンパク質を共精製したが、主要の精製タンパク質はStxB1/StxB2の3重キメラBサブユニットであることが示された。
【0072】
マウス免疫付与および処置
前免疫血清を14〜16gの体重である13CD−1雄マウスから採取した(Charles River,Boston,MA)。その後、マウスは、油中水アジュバントであるTiterMax Gold(TiterMax USA Inc.,Norcross,GA)(全容積100μl)と1:1で混合したPBS中の精製された約14.4μgのStxB1/StxB2 3重キメラBサブユニットを使用して、腹腔内に(i.p.)免疫化された。マウスは、合計4回の追加免疫のために、3週間間隔で、同量の精製したキメラBサブユニットで追加免疫された。最終の追加免疫から2週間後、13匹の免疫マウスは、7匹(B群)および6匹(D群)のマウスを含む2つの群に分けられ、それぞれは、50%致死量(LD50)の10倍のStx1(1,250ng)またはStx2(10ng)いずれかを使用して処置された。14匹の非免疫CD−1雄マウスは、7匹ずつのマウスを含む2つの群に分けられ、10LD50のStx1またはStx2のいずれかで処置された(処置A群およびC群)。
【0073】
酵素免疫測定法(ELISA)
4回目と最終の追加免疫をしてから10日後、血清を免疫マウスから採取し、以前に報告されたように、StxB1またはStxB2に対する、血清免疫グロブリンG(IgG)レベルを決定するために、免疫付与前および免疫付与後の免疫マウスからの血清、および14匹の実験未使用のマウスからの血清を酵素免疫測定法(ELISA)に使用した(Smithら(2006)Vaccine 24:4122−42129)。つまり、PBS中の100ngの精製したStx1またはStx2を抗原として使用し、マウス血清を0.05% Tween−20を含むPBS(PBST)に希釈後、1次抗体として使用した。PBST中に1:3,000で希釈した、2次抗体であるHRP共役ヤギ抗マウスIgGを添加した。ELISA滴定値は、バックグラウンドを差し引いた後、採血前の値を上回る+0.1O.D.405ユニットである免疫付与後の血清の希釈値として定義された。
【0074】
インビトロ中和アッセイ
以前に報告されたように、免疫付与前および免疫付与後の13匹の免疫マウスからの血清、および14匹の実験未使用のマウスからの血清をStx1およびStx2に対するインビトロ中和アッセイに使用した。約10 CD50および25 CD50の精製したStx1およびStx2をそれぞれ使用した。実験後、実際のCD50値を遡って算出した。13C4 MAbは、Stx1dを検出しないため、抗体は、野生型Stx1またはBサブユニット(TlAまたはG25AまたはN55T)における3つの単一アミノ酸変異のうちの1つを含むStx1のいずれかを発現した細菌の清澄超音波溶解物に対する中和アッセイに使用された。約10CD50のStx1またはBサブユニット変異のうちの1つを含むStx1をこれらの中和実験に使用した。中和滴定は、マウス血清またはベロ細胞上のStx1またはStx2の細胞毒性の50%を中和した13C4 MAbの希釈として定義された。これらのアッセイを二つ組測定で1度実施した。
【0075】
真核生物受容体グロボトリアオシルセラミド(Gb3)結合抑制アッセイ
13C4 Mabが、Stx1とその受容体との相互作用を抑制できるかどうか決定するために、Gb3結合アッセイを使用した。簡潔に述べると、1,200pgの精製したStx1を0.05%Tween80および0.1%ウシ血清アルブミンを含んだPBS(PBST−80)(以下、結合液と称する)に希釈し、Stx1の等容積を、結合液、未希釈13C4 MAb(Hycult Biotechnology,Uden,The Netherlands)、または結合液中に遂次希釈(1:4)した13C4 MAbのいずれかと混合した。毒素抗体混合物(全容積、120μl)は、5%CO2において、37℃で2時間インキュベーションされ、その後、PBST−80で洗浄済のGb3(Matreya,Inc.,State College,PA)でコーティングされたマイクロタイタープレート(1μg/well)に100μlを適用した。試料は、結合液中で1:5,000に希釈された1次抗体、ウサギ抗Stx1ポリクローナル抗体で、2時間37℃でインキュベーションされた。PBST−80およびPBSで、ウェルから非結合1次抗体を洗浄した後、1:1,000に希釈して、2次抗体であるHRPに共役したヤギ抗ウサギIgG(Bio−Rad)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。PBST−80、PBSの順でさらに洗浄した後、2次抗体をテトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ酵素免疫基質キット(Bio−Rad)で検出し、色素変化を起こすために、マイクロタイタープレートを室温で15分間インキュベーションした。その後、反応混合物を未使用のマイクロタイタープレートに移し、600nmで読み込んだ。これらのアッセイを三組み測定で2度実施した。本実験の対照は、アイソタイプが一致した無関係なMAb(11E10;Hycult Biotechnology)と共に、または抗体を伴わずにStx1をインキュベーションすることを含んだ。
【0076】
結果
StxB1およびStxB2のアミノ酸配列の分析もしくはStxおよびStx2の結晶構造の比較
成熟StxB1およびStxB2タンパク質のアミノ酸を配置する時、2つのタンパク質の間の相違性が高い3つの領域は明らかである(図5)。これらの領域のうちの2つは、タンパク質のN末端およびC末端でシステイン残基周辺に中心があり、アミノ酸1〜6および54〜61位のそれぞれを含む。第3の領域は、アミノ酸25〜32位に及ぶStxB1の中央である。これらの3つの領域の相違性は、StxBの結晶構造上に互いに近接して位置することがわかり(StxBは、StxB1と同一である)、図5において、StxB5量体の結晶構造上に示された。
【0077】
キメラStxB1/StxB2タンパク質の構造
野生型StxB1およびStxB2、ならびに、特異StxB1領域のうちの1つ、2つ、または3つすべてからなる7つのキメラStx1/Stx2 Bサブユニットは、1連のPCRおよびオーバーラップ伸長反応によるスプライシングにより生成された(図6)。さらに、これらのBサブユニットは、Bサブユニットの標準化を可能にするためにC末端でヒスチジン標識化された。
【0078】
13C4モノクローナル抗体を有するキメラStxB1/StxB2タンパク質のウエスタンブロット分析
予備のウエスタンブロット法を、タグ融合された野生型StxB1、StxB2またはキメラStxB1/StxB2タンパク質を含む全細胞細菌溶解物の同一試料に関して、Novagen α−6−ヒスチジンMAbを使用して実施した。これらの試料においてBサブユニットの量は、イメージJプログラムを使用して標準化され、その後、1次抗体として13C4 MAbを使用して、第2のウエスタンブロット法を実施した。13C4 MAbは、Stx1、StxB1およびStxB1の3つすべての特異領域を含んだ3重キメラBサブユニットと強力に反応したが、StxB1の2つの隣接領域を含んだ2重キメラBサブユニットとは、弱くのみ反応し、他のキメラの場合は、シグナルを検出しなかった(図7)。領域1〜6および54〜61位により形成された抗体結合部位および、25〜32位領域を介した結合部位に対する配座効果を示す。
【0079】
ウエスタンブロット法および13C4 MAbでのインビトロ中和による単一アミノ酸変異を含むStxB1の分析
13C4 MAbは、Stx1から成熟Bサブユニットにおいて、3つだけアミノ酸の相違を有するStx1dを認識しない(図8およびBurkら(2003)J.Clin.Microbiol.41:2106−2112)。このため、これらの3つの相違(T1A、G25AおよびN5T)を模倣する3つの単一StxB1変異型を生成し、ウエスタンブロット分析により、13C4 MAbで精査した。13C4 MAbは、Stx1、StxB1およびT1AおよびG25A変異型を有するStxB1を検出したが、N55T変異は検出しなかった(図7)。StxB1における単一アミノ酸変異に機能的に結合する13C4 MAbの能力をさらに調査するために、インビトロ中和アッセイを実施した。stxAをコードする第2のプラスミドを、StxB1、または、T1AまたはG25AまたはN55T変異を有するStxB1に同時形質転換し、これらのプラスミドで同時形質変換された細菌がホロ毒素を産生するようにした。Stx1ホロ毒素を形成する細菌の清澄超音波溶解物は、13C4 MAbを用いて、インビトロ中和アッセイを受けた(毒素あたり約10CD50)。13C4 MAbは、野生型Stx1、ならびに、SxtB1 T1AおよびG25A変異を有するStxB1を中和するが、N55T変異は中和しない。13C4が、単一のN55T変異を有するBサブユニットを認識せず、N55T変異を有するStx1を中和しないという事実は、残基55位が機能的な13C4結合に対して必須残基であることを強く示唆する。
【0080】
StxB1/StxB2の3重キメラBサブユニット免疫付与への免疫反応
13CD−1マウスは、3重キメラStxB1/StxB2タンパク質で免疫性を与えられ、合計4回の追加免疫のために、3週間間隔で追加免疫された。最終の追加免疫をしてから10日後、免疫付与後の血清を採取し、ELISA法およびインビトロ中和アッセイで評価し、適切な前免疫血清および14匹の非免疫マウスから採取した血清と比較した。免疫マウスは、上記のバックグラウンドより、Stx1およびStx2のそれぞれが5.12および3.77対数値だけELISA滴定が高いことを示した(表1)。13匹の免疫マウスからの前免疫血清または14匹の非免疫マウスからの血清は、いずれもStx1またはStx2に対する検知できるELISA滴定値を示さなかった。
【0081】
【表1】

a Stx1またはStx2に対するIgG血清滴定対数値の相乗平均。エラーバーは±1S.D.を示す。
b それぞれ、Stx1またはStx2の約10または25 CD50に対する50%中和滴定対数値。エラーバーは±1S.D.を示す。
c 13匹のうちの12匹または2匹の血清は、それぞれStx1またはStx2を中和した。Stx1またはStx2を中和しなかった試料には、0.3の値を割り当てた。
【0082】
インビトロ中和滴定がELISA滴定よりも保護免疫反応の良好な指標であるため、インビトロ中和滴定を、精製したStx1またはStx2に対して血清試料上で実施した(それぞれ10または25CD50)。13匹の免疫マウスのうち12匹が、Stx1に対して高い中和滴定を示した一方、2匹のマウスのみがStx2への中和滴定を示した(表2)。13匹の免疫マウスからの前免疫血清、および14匹の非免疫マウスからの血清は、いずれもStx1またはStx2への中和滴定を示さなかった。これらのデータは、Stx1であるキメラBサブユニットの領域が中和エピトープを示すことを示唆する。
【0083】
【表2】

a LD50は、Stx1およびStx2のそれぞれに対して125および1ng/マウスであることを事前に決定した。
b 処置時のマウスの平均体重は44.9gであった。
【0084】
致死毒素の試験に対する免疫マウスの保護
最終の追加免疫から2週間後、13匹の免疫マウスおよび14匹の対照マウスをStx1またはStx2のいずれかの10LD50で処置した。13匹の免疫マウスは、2つの処置群に分けられ、Stx1の試験群(B群)は、7匹のマウスを含み、Stx2の試験群(D群)は、6匹のマウスを含んだ。14匹の非免疫マウスを7匹の2つの群に分け、Stx1(A群)またはStx2(C群)のいずれかで試験した。7匹の免疫マウスのうち6匹がStx1処置で生存し、一方、6匹の免疫マウスのうち1匹がStx2処置で生存した(表2)。14匹の非免疫マウスは、Stx1またはStx2処置で一匹も生存せず、4日目ですべて死亡した。
【0085】
Gb3結合抑制アッセイ
13C4 MAbがGb3へのStx1の結合を防ぐことが可能であるかを決定するために、インビトロ結合抑制アッセイを使用した。Stx1および13C4 MAbは、ともにインキュベーションされ、その後、Gb3コーティングしたマイクロタイタープレートにオーバーレイした。Gb3へのStx1結合は、13C4 MAbが0.1mg/mlのストックから、1:512を超えて希釈されるまでは、検出されなかった(図9)。最大のStx1結合は、13C4が1:8,000またはそれ以上に希釈されてから生じた。これらの結果は、13C4 Mabが、用量依存の形態で、Gb3への1,000pgのStx1の結合を完全に抑制することを示す。
【0086】
考察
StxB1およびStxB2のアミノ酸配列の比較、および、StxB5量体の結晶構造の分析後、我々は、13C4 MAbエピトープに対するStxB1上の3つの非線状領域を特定した。一連のStxB1/StxB2キメラタンパク質のウエスタンブロット分析では、13C4 MAbが、Stx1、StxB1、およびStxB1の3つすべての特異領域を含んだ3重キメラBサブユニットと強力に反応したが、StxB1の第一および第三の領域を含んだ2重キメラBサブユニットとは、弱くのみ反応し、他のキメラの場合は、シグナルを検出しなかったことを示した。
【0087】
一連の部位特異的突然変異型は、13C4 MAbが、野生型Stx1、StxB1およびT1AおよびG25A変異を含むStxB1に特異的に結合するが、N55T変異を含むStxB1には特異的に結合しないことを示した。さらに、13C4 MAbは、野生型Stx1、およびT1AおよびG25A変異を有するStx1を中和するが、N55T変異を含むものは中和しない。これらのデータを総合すると、StxB1の残基55位のアスパラギンは、13C4 MAbエピトープにとって決定的に重要なアミノ酸であることを示す。また、StxB1の残基55位おけるアスパラギンは、Stx1 Bサブユニットに結合するがStx1dを認識できない別のStx1抗体であるモノクローナル5−5Bの結合に対する、決定的に重要なアミノ酸である(Nakaoら(2002)Microbiol.Immunol.46:777−780)。さらに、StxB1を認識するが、StxB1dは認識しない第3のMAb(2H3)が産生されており、残基55位がその相違にも役割を果たしている可能性がある(Burkら(2003)J.Clin.Microbiol.41:2106−2112)。最後に、別のMAbであるVTm1.1(後に、ヒト化され、およびTMA−15と称する)は、StxB2に結合し、Stx2を中和するが(Nakaoら(1999)Infect.Immun.67:5717−5722,Kimuraら(2002)Hybrid.Hybridomics.21:161−168)、56番目のアミノ酸を突然変異させた場合(E56H)、StxB2に結合できない。StxB1の残基55位およびStxB2の残基56位の双方は、ほぼ同一の位置において、Bモノマーの外側に位置する。我々の結果および上記に概説した結果は、StxB1およびStxB2の、それぞれ55番目および56番目のアミノ酸が、Stx1およびStx2に対して行われるMabの中和に対して決定的に重要な残基であるという考えを支持する。
【0088】
StxB1/StxB2の3重キメラBサブユニットは、大部分StxB2を含み(71のアミノ酸のうちの22のみがStxB1である)、より高いStx1のELISAおよび中和滴定値は、3重キメラBサブユニットで免疫性を与えた後、達成された。13C4エピトープを含む22のアミノ酸が、B5量体の外側にあり、免疫優性であり、抗体を中和する良好な標的であるためである可能性がある。これは、13C4 MAbエピトープを含む22のアミノ酸がStxB2に挿入される場合、7匹のマウスのうちの6匹が10LD50のStx1による致死的処置で生存したが、6匹のマウスのうちの1匹のみが10LD50のStx2による致死的処置で生存した理由を説明しうる。
【0089】
他の実施形態
本発明の、記載された方法および組成物の種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明白となるであろう。本発明は、特定の望ましい実施形態に関連して記載されているが、請求の範囲に記載される本発明は、そのような特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際には、医学、免疫学、薬理学、内分泌学の分野、または関連分野における当業者に明白である、本発明を実施するために記載された形態の種々の修正は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0090】
すべての特許、特許出願、および本明細書に記載の刊行物は、それぞれの独立した刊行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられるように、同程度で参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】StxおよびStx2の結晶構造を示す。
【図2】志賀毒素の一般構造を示す。
【図3】望ましいStxタンパク質の核酸およびアミノ酸配列を示す。
【図4】BサブユニットのMab 13C4認識を示すウエスタンブロット法を示す。カルボキサミドメチル化Bサブユニット(レーン1)、非還元試料緩衝液において変性したBサブユニット(レーン2)、およびβ−メルカプトエタノールの存在下で変性したBサブユニット(レーン3)をSDS−Pageにより分析し、続いて、クマーシーブルー染色(A)またはMab 13C4を有するウエスタンブロット法(B)またはペプチド1−25に対する抗血清(C)で分析した(Boydら(1991)Infect lmmun.59:750−757))。
【図5】図5Aは、StxB2およびStxB1のアミノ酸配列を示す。下線を付したアミノ酸は、非保存アミノ酸を示す。それ以外の示されたStxB1アミノ酸は保存されており、点は同一性を示す。1、2、および3と標識がつけられた配列の領域はそれぞれ、配列番号:1(TPDCVT)、配列番号:2(GDKELFTN)、および配列番号:3(TNACHNGG)に対応する。13C4 Mabの3つのセグメントは、パネルAにおいて、囲まれ、図5Bに番号で示される。これらのセグメントは、StxB2タンパク質に挿入される場合、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列を形成する(TPDCVTGKIEFSKYNEDDTFTVKVGDKELFTNRWNLQPLLQSAQLTGMTVTIKTNACHNGGGFAEVQFNND)。StxB1とStxB1dとの間の3つのアミノ酸の相違は、StxB1配列の真下に星印で示し、最後の星は、臨界アスパラギン残基を示す。図5Bは、StxB5量体の結晶構造の下面図および側面図を示す。矢印は、ジスルフィド結合を生じる2つのシステイン残基を示す。
【図6】キメラStxB1/StxB2タンパク質の図解を示す。StxB1を黒色で示し、Stx2を白色で示し、6つのヒスチジンの標識は、網がけで示す。StxB1の領域をキメラBサブユニットの真下に記入する。それぞれのBサブユニットの2つのシステイン残基をBサブユニットの上の棒で表示する。
【図7】キメラStxB1/StxB2タンパク質(上のパネル)、およびα−6 His Mabまたはα−13C4 MAb(下のパネル)でプロービングした単一アミノ酸の変異(下のパネル)を有するStxB1のウエスタンブロット分析を示す。上のパネル:レーン1、100ng Stx1;レーン2、ベクターのみ;レーン3、StxB1;レーン4、StxB2;レーン5、StxB1=1〜6;レーン6、StxB1=25〜32;レーン7、StxB1=54〜61;レーン8、StxB1=25〜32、54〜61、レーン9、StxB1=1〜6、25〜32;レーン10、StxB1=1〜6、54〜61、レーン11、StxB1=1〜6、25〜32、54〜61。下のパネル:レーン1、100ng Stx1;レーン2、ベクターのみ;レーン3、StxB1;レーン4、StxB1 TlA;レーン5、StxB1 G25A;レーン6、StxB1 N55T。
【図8】Stx1、Stx1cおよびStx1dのBサブユニットのアミノ酸配置を示す(配列番号:9)。成熟タンパク質を生成するために除去される20のアミノ酸リーダー配列をStx1に下線を付す。StxB1とStxBd1との間の3つのアミノ酸の相違を囲んだ。矢印は、保存アミノ酸残基を示し、示された残りのStx1cおよびStx1dアミノ酸残基は、非保存アミノ酸である。点は、同一のアミノ酸を示す。
【図9】13C4 MAbが、用量依存的にGb3へのStx1の結合を抑制することを示すグラフである。個々の円は、三つ組で行なった2つの実験の平均を示し、エラーバーは、標準偏差(+/−1)を示す。実線は、バックグラウンド(1次抗体のないStx1および2次抗体の1μg Gb3+1,000pg)を示し、一方、破線は、13C4 MAb O.D.600(光学濃度600nm)を添加しないStx1結合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号:1、2、および3に記載されている配列から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むポリペプチドにより哺乳動物を免疫化する段階であって、該ポリペプチドが全長Stx1を含まない、段階;および
(b)該哺乳動物の組織、または該組織を使用して作製したハイブリドーマ細胞から、Stx1タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体を精製する段階
を含む、志賀毒素1型(Stx1)タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体を産生する方法。
【請求項2】
Stx1タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体が、Stx2に結合しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(c)インビトロ中和アッセイにおいて、Stx1およびStx2に対する抗体をスクリーニングする段階であって、Stx1の細胞毒性の少なくとも50%を中和する抗体が、Stx1タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する抗Stx1抗体である、段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリペプチドが、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸のうちの少なくとも2つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ポリペプチドが、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ポリペプチドが配列番号:4のアミノ酸配列からなる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
段階(a)が、アジュバントを使用することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
抗体がポリクローナル抗体またはその断片である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
抗体がモノクローナル抗体またはその断片である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
抗体が修飾抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
抗体がキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのポリペプチドを薬学的に許容される担体とともに含む、Stx1に対する免疫反応を刺激するための組成物であって、該ポリペプチドが、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含み、該ポリペプチドがStx1の抗原性を有し、該ポリペプチドが全長Stx1を含まない、組成物。
【請求項13】
ポリペプチドがキメラタンパク質である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
キメラタンパク質が、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列、ならびにStx1ではないタンパク質を含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
Stx1ではないタンパク質が足場(scaffold)タンパク質であり、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列が該足場タンパク質に挿入されている、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
Stx1ではないタンパク質が、StxB2タンパク質またはその断片を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
Stx2に対する免疫反応を刺激しない、請求項12記載の組成物。
【請求項18】
キメラタンパク質が、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
キメラタンパク質が、配列番号:4に記載されているアミノ酸配列を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
アジュバントをさらに含む、請求項12記載の組成物。
【請求項21】
請求項12または18記載の組成物を対象に投与する段階を含む、対象においてStx1に対する免疫反応を誘導する方法。
【請求項22】
請求項12または18記載の組成物を対象に投与する段階を含む、対象において志賀毒素関連疾病を治療または予防する方法。
【請求項23】
志賀毒素関連疾病が溶血性尿毒症症候群である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
志賀毒素関連疾病が大腸菌または志賀赤痢菌の感染に関連する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む志賀毒素1型(Stx1)タンパク質の13C4エピトープに特異的に結合する、抗Stx1抗体、またはその断片であって、13C4抗体(ATCC CRL−1794)、キメラ13C4抗体、またはヒト化13C4抗体の該Stx1タンパク質への結合を抑制する、抗Stx1抗体、またはその断片。
【請求項26】
配列番号:1、2、および3に記載されている配列を含むポリペプチドのエピトープに特異的に結合する、請求項25記載の抗体。
【請求項27】
エピトープが配列番号:1、2、および3に記載されている配列を含む、請求項26記載の抗体。
【請求項28】
エピトープが立体配座エピトープである、請求項26記載の抗体。
【請求項29】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項30】
抗体がヒト化されている、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項31】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項32】
Stx1と13C4抗体との間の結合を抑制し、該13C4抗体が0.50nM以下のKを有する、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項33】
13C4抗体が、マウス、ヒト化、またはキメラ13C4抗体である、請求項32記載の抗体またはその断片。
【請求項34】
IgG、IgM、IgE、IgD、またはIgAである、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項35】
FabまたはFv断片である、請求項25記載の抗体またはその断片。
【請求項36】
請求項25記載の抗体またはその断片、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項37】
請求項25記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項38】
真核生物受容体であるグロボトリアオシルセラミドに対するStx1の結合を抑制する、請求項25記載の抗体。
【請求項39】
(a)抗体とStx1との間の複合体形成を可能とする条件下で、生体試料を請求項25記載の抗体またはその断片と接触させる段階;および
(b)該生体試料において該複合体を検出する段階
を含む、生体試料においてStx1を検出する方法。
【請求項40】
生体試料が、組織、細胞、細胞抽出物、体液、または生検標本に由来する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
ELISA法、RIA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、またはフローサイトメトリー法を使用して複合体を検出する、請求項39記載の方法。
【請求項42】
(a)対象から生体試料を採取する段階;
(b)抗体とStx1との間の複合体形成を可能とする条件下で、該生体試料を請求項25記載の抗体またはその断片と接触させる段階;および
(c)該生体試料において該複合体を検出する段階
を含む、対象において志賀毒素関連疾病を診断する方法であって、
該試料におけるStx1の存在により、志賀毒素関連疾病を罹患する対象を診断する、方法。
【請求項43】
志賀毒素関連疾病が溶血性尿毒症症候群である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
志賀毒素関連疾病が大腸菌または志賀赤痢菌の感染である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
請求項25記載の抗体または抗原結合部分、および、該抗体を検出するための手段を含む、志賀毒素関連疾病を検出するための免疫検査キット。
【請求項46】
請求項25〜36のいずれか一項記載の抗体またはその断片の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、対象において志賀毒素関連疾病を治療または予防する方法。
【請求項47】
志賀毒素関連疾病が溶血性尿毒症症候群である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
志賀毒素関連疾病が大腸菌または志賀赤痢菌の感染に関連する、請求項46記載の方法。
【請求項49】
配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列の少なくとも1つを含むポリペプチドであって、全長Stx1を含まない、ポリペプチド。
【請求項50】
配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列を含む、請求項49記載のポリペプチド。
【請求項51】
Stx1ではないポリペプチドをさらに含むキメラタンパク質である、請求項49または50記載のポリペプチド。
【請求項52】
Stx1ではないタンパク質が、StxB2タンパク質またはその断片を含む、請求項51記載のポリペプチド。
【請求項53】
Stx1ではないタンパク質が足場タンパク質であり、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列が該足場タンパク質に挿入されている、請求項51記載のポリペプチド。
【請求項54】
配列番号:4に記載されているアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項55】
配列番号:4に記載されているアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項56】
配列番号:4に記載されているアミノ酸からなる、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項57】
請求項49、54、または55のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
【請求項58】
発現制御配列に動作可能に結合されている、請求項57記載の単離された核酸分子。
【請求項59】
請求項58記載の単離された核酸分子を含む、ポリペプチドを発現することが可能なベクター。
【請求項60】
請求項59記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項61】
(a)請求項52記載の核酸を宿主細胞に導入する段階、
(b)宿主細胞からポリペプチドを精製する段階
を含む、配列番号:1、2、および3に記載されているアミノ酸配列を含むポリペプチドを調製する方法であって、該ポリペプチドが全長Stx1を含まない、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−536818(P2009−536818A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506629(P2009−506629)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/009799
【国際公開番号】WO2007/124133
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501051125)ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】