志賀毒素タイプ2タンパク質に基づいた方法と組成物
本発明は、11E10抗体に対するStx2タンパク質のエピトープの発見に基づく。本発明は、11E10モノクローナル抗体エピトープを含む非完全長Stx2ポリペプチドを含む組成物を特徴とする。本発明は、Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的な抗Stx2抗体を産生する方法も特徴とする。さらに、本発明は、志賀毒素関連疾患(例えば、溶血性尿毒症症候群および大腸菌およびシゲラ・ディゼンテリエ感染)を持つ、または発症するリスクを持つ被験者を、11E10エピトープを含むポリペプチドでまたは本発明の方法を使って作られた抗Stx2抗体で治療する方法を特徴とする。さらに、本発明は、本発明の方法を使用して産生した抗体を使った、試料中のStx2検出を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
一般的に、本発明は志賀毒素関連疾患の治療および予防の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
米国では、志賀毒素(Stx)産生性大腸菌(STEC)は、年間約110,000件の感染の主な原因となっている。腸管出血性大腸菌(EHEC)(中でも注目すべきは血清型O157:H7)は、Stx介在疾患を生じることが注目されているSTECのサブセットである。Stx産生微生物での感染から生じる可能性のある合併症は溶血性尿毒症症候群(HUS)であり、これは溶血性貧血、血栓性血小板減少症、および腎不全を特徴とする。HUS患者の死亡率は約5〜10%であり、生存者は永続的な腎障害を患うことがある。現在、Stx介在疾患による病気に対抗する、もしくはこれを予防するFDA承認治療またはワクチンはないが、いくつかの有望な将来的オプションには、Stx2に結合して中和するヒト化モノクローナル抗体および中和応答を引き起こしてStx1もしくはStx2またはStx1およびStx2の致命的攻撃に対して保護をもたらすキメラStxA2/StxB1トキソイドを含む。
【0003】
基本的にStxsにはStx/Stx1とStx2の2つの主なタイプがある 。Stxはシゲラ・ディゼンテリエタイプ1から産生されるが、Stx1およびStx2は大腸菌から産生される。Stx およびStx1は実質的に同一であり、Aサブユニットの1つのアミノ酸のみが異なる。Stx1およびStx2の成熟したAおよびBサブユニットはそれぞれ68%および73%の類似性を有する。アミノ酸配列の差異にもかかわらず、Stx およびStx2の結晶構造は酷似している(図1)。これらの毒素はポリクローナル抗血清によって区別することができ、Stx1に対して生じたポリクローナル抗血清はStx2を中和せず、その反対もしかりである。Stx1およびStx2の変異体が存在し、これにはStx1c、Stx1d、Stx2c、Stx2d、Stx2d活性化可能 (Stx2-act.)、Stx2eおよびStx2fが含まれる。
【0004】
志賀毒素はAB5構造を持つ複合ホロトキシンである。活性領域(A)は60Sリボソーム・サブユニットの28S rRNAを脱プリン化するN-グリコシダーゼを含み、タンパク質合成を停止し、最終的には細胞死をもたらす。Aサブユニットは約32 kDaであり、トリプシンまたはフリンによってタンパク質分解切断されて、単一のジスルフィド゛結合で結合されている約28 kDa A1サブユニットと約5 kDa A2ペプチドになる。A1サブユニットは活性領域を含み、A2ペプチドは活性領域を結合(B)領域に非共有結合性につないでいる。(B)領域は、A2ペプチド・トラバースのC末端を介して五量体を形成する同一の5つの約7.7 kDaモノマーから成る。各Bサブユニットモノマーは、各モノマー内にジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を持つ。B5量体は真核生物受容体グロボトリアオシルセラミド(Gb3)(またはStx2eの場合はGb4)に結合する。
【0005】
これらの毒素への暴露の結果は知られているものの、現在、Stx介在疾患に対する既知の治療法またはワクチンはない。抗生物質を使用すると、細菌からの毒素の放出を増加させることにより、状況を悪化させる場合がある。従って、志賀毒素により生じるEHEC感染の合併症を予防または治療するための化合物に対するニーズが存在する。このような化合物は、感染患者を治療し、CNS、血液および腎臓への毒素の全身的作用を減少させるために使用し得る。さらに、毒素を中和できる場合は、GI管内の細菌を殺すために抗生物質を安全に投与できる。STEC感染に対する抗生物質治療は、抗生物質が毒素遺伝子を持つファージを誘導することにより毒素の産生を増加させる可能性があるために禁忌となっている。このような化合物は、暴露したまたは高リスクの人がEHEC感染を起こす前に治療することによって、感染の合併症を予防するために使用することもできる。このような人には、EHEC下痢の症例が特定されているデイケアの子どもまたは養護ホームの高齢者が含まれる。これらの人々はEHEC感染発症のリスクが高く、しばしば重症の合併症を伴うため、これらの環境でのEHECの拡散は珍しくない。
【発明の概要】
【0006】
モノクローナル抗体11E10はStx2のAサブユニットを認識し、その細胞毒性を中和する。StxA1とStxA2の間のアミノ酸(aa)配列類似性は68%であるにもかかわらず、11E10モノクローナル抗体はStxA1には結合しない。11E10エピトープは、StxA2モノマー上の3つの領域にわたる不連続または立体構造エピトープを含むことを我々は発見した。aa 42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)および244〜259 (配列番号:3)を含む非類似の3領域は、Stx2 A サブユニットの結晶構造上に互いに近接して位置することがわかった。このように、11E10エピトープは、配列番号:1、2および3に示される配列セットの少なくとも1つ 、2つまたは3つすべてを含むことを我々は発見した。
【0007】
従って、本発明は、完全長Stx2でない配列番号:1、2および3に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つを含むポリペプチドを特徴とする。ポリペプチドは配列番号:1に示されるアミノ酸配列を少なくとも含む。望ましくは、ポリペプチドは配列番号:1および2、またはより望ましくは、配列番号:1、2、および3に示されるアミノ酸配列を含む。1つの実施態様では、配列番号:1、2、および3に示される配列の1つまたはそれ以上が、非Stx2タンパク質骨格に挿入されている。特定の実施態様では、タンパク質骨格は、Stx1またはその断片と実質的に同一(例えば、少なくとも90%、 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一)のタンパク質である。1つの実施態様では、タンパク質骨格は、1つ以上の保存的点突然変異を持つStx1、Stx、またはStx1である。別の実施態様では、本発明のポリペプチドには、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む。また別の実施態様では、ポリペプチドは、 配列番号:1、2、または3、配列番号:1および2、または配列番号:1、2、および3、例えば、ポリペプチド配列のアミノ酸29〜297、アミノ酸1〜158、またはアミノ酸29〜128を含むStx2の断片であって、完全長Stx2ではない断片を含んでいてもよい。一部の実施態様では、断片は例えばStx またはStx1などのタンパク質骨格に挿入されている。
【0008】
本発明は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列の断片と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドも特徴とする。1つの実施態様では、断片は、配列番号:8のアミノ酸64〜122と少なくとも80%, 85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一の配列を含み、さらに配列番号:1に示されるアミノ酸配列を少なくとも含む。好ましくは、断片はさらに、 配列番号:2 または配列番号:2 および3に示されるアミノ酸配列を含む。断片は、例えば20、40、59、60、150、200、219、236、250、300、または314個のアミノ酸の長さである。特定の実施態様では、ポリペプチドはトキソイド化されている。上記に列挙されたすべてのポリペプチドは「本発明のポリペプチド」という用語に含まれる。
【0009】
本発明はまた、核酸分子も含み、これには核酸がベクターの発現構造物に関連している場合およびこのベクターが宿主細胞に挿入されており、本発明の任意のポリペプチドをコードしている場合を含む。
【0010】
関連態様では、本発明は、本発明の任意の1つのポリペプチドを使用してStx2に対する免疫反応を刺激する組成物を特徴とする。望ましくは、ポリペプチドは 配列番号:1および2、より望ましくは、1、2、および3に示される配列を含む。これらの実施態様のいずれにおいても、組成物はさらにアジュバントを含み得る。特定の実施態様では、組成物はStx1に対する免疫反応を刺激しない。
【0011】
本発明はまた、本発明の任意のポリペプチド(例えば、配列番号:1、2、または3の少なくとも1つ、2つまたは3つすべてで示されるアミノ酸が挿入されているStx1などのタンパク質骨格)の使用も特徴とする。このようなペプチドは、溶血性尿毒症症候群および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連する疾患を含む、志賀毒素関連疾患に対する免疫化または治療に有用な可能性がある。1つの実施態様では、ペプチドは、配列番号:8に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも75%, 80%, 85%, 90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%, または100%の配列同一性を持つ。別の態様では、本発明は、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体)またはその断片の製造方法を特徴とする。このような抗体または断片はStx2に特異的に結合するがStx1には結合しない。この方法には、 配列番号:1、2および3に示される配列の少なくとも1つ、2つまたは3つを含むStx2の断片(すなわち、完全長Stx2ではない)を含むポリペプチドであって、完全長Stx2を含まないポリペプチドで哺乳類動物に免疫化することを含む。好ましくは、方法は、配列番号:1で示される配列、より好ましくは配列番号:1および2で示される配列、さらに好ましくは配列番号:1、2、および3で示される配列を少なくとも含むポリペプチドの使用を含む。1つの実施態様では、ペプチドは配列番号:1、2、および3で示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入されているタンパク質骨格、例えばStx1と実質的に同一のタンパク質を含む。方法は、例えば本明細書に記述されるように、ポリペプチドが完全長Stx2を含まない11E10エピトープを含むポリペプチドでの哺乳動物の免疫化を含んでいてもよい。1つの実施態様では、哺乳動物は、 配列番号:8で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドで免疫される。上記の方法で産生される抗Stx2抗体は、例えばインビトロ中和分析を含む当技術分野で知られているまたは本明細書に記載の標準方法を使ってスクリーニングし、Stx2に特異的に結合しStx1には結合しない抗体を特定するすることができる。免疫原性ポリペプチドとこのポリペプチドの製造方法は、このペプチドをコードする核酸分子(この核酸がベクターの発現構造に連結されており、このベクターが宿主細胞に挿入されている場合を含む)と共に、本発明の関連態様に含まれる。
【0012】
本発明はまた、抗体またはその断片がStx2に特異的に結合し、Stx1にはしない、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体またはその断片も特徴とする。本発明の好ましい抗体は、 望ましくは配列番号:1を少なくとも含み、さらに望ましくは配列番号:1および2を少なくとも含み、最も望ましくは配列番号:1、2、および3を含む、配列番号:1、2、および3に示される少なくとも1つ、2つまたは3つの配列すべてを含むエピトープに結合する。抗体エピトープは、アミノ酸配列がタンパク質骨格の立体構造に基づいて近接している立体構造エピトープであることができ、例えば本明細書に記述のキメラタンパク質のように、 配列番号:1、2、および3に示されるStx2配列の1つ以上が、Stx1と実質的に同一のタンパク質骨格に挿入されている。抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD、IgA、Fab、Fv、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、または抗体断片であることができ、本明細書に記述の方法で作ることができる。抗体は、100 nM、50 nM、10 nM、1 nM、100 pM、10 pM未満、または1 pM未満のKdでStx2に好ましくは結合する。1つの例では、本発明の抗体は、11E10抗体のStx2への結合または11E10エピトープを含むキメラタンパク質への結合を阻害し、Kd値が100 nM〜1 pMの間の阻害を含む。本発明の抗体は、Stx2の真核性受容体グロボトリアオシルセラミド(Gb3)への結合を阻害することがある。本発明の抗Stx2抗体は、以下の抗体のマウス、ヒト化、またはキメラ形態のすべてを具体的に除外する:11E10、TMA-15、VTM1.1、5C12(5C12ヒトモノクローナル抗体およびr5C12を含む)、6G3、5H8、11F11、11G10、2E1、10E10、IG3、2F10、3E9、4H9、5A4、5F3、5C11、1A4、1A5、BC5 BB12、DC1
【0013】
EH5、EA5 BA3、ED5 DF3、GB6、BA4、およびcαStx2抗体。本発明はさらに、本発明の任意の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、本発明の任意の抗Stx2抗体を使って、生体試料(例えば、組織、細胞、細胞抽出物、体液、および生検標本)中のStx2を検出する方法を特徴とする。本発明の検出方法には、ELISA、RIA、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、およびフローサイトメトリーを含むがこれに限定されない。本発明には、試料中のStx2の特定に基づく、志賀毒素関連疾患の診断を含む。本発明はまた、志賀毒素関連疾患の検出用免疫検査キットも特徴とし、キットには本発明の抗体、および抗体と試料中に存在するStx2との間の相互作用を検出するための手段を含む。
【0015】
本発明のまた別の態様では、本明細書で提供された、または任意の前述の方法で産生された抗体を使って、志賀毒素関連疾患を治療する方法を特徴とする。志賀毒素関連疾患の例には、溶血性尿毒症症候群(HUS)および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連した疾患を含む。これらの抗体は、他の志賀毒素関連タンパク質(例えばStx1)に特異的に結合する抗体を含むがこれに限定されない他の治療薬と併用して投与され得る。
【0016】
「11E10 エピトープ」とは、直線構造または三次元構造のどちらかの結果として、11E10抗体の結合部分を形成するアミノ酸の配列を意味する。 この用語は、配列番号:1、2、および3に示される配列の1つ、2つ、または3つ(例えば配列番号:1および2 または 配列番号:1、2、および3)と同一または実質的に同一な配列を含む任意の非完全長Stx2タンパク質を含み得る。望ましい実施態様では、 11E10エピトープは配列番号:1 および2 または 1、2および3を含む。11E10エピトープを含むタンパク質の一例は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0017】
「Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗体」または「11E10エピトープ特異抗体」という用語は、11E10エピトープを含むタンパク質に、100 nM〜1 pMの間のKd値で結合する抗体を意味する。このような抗体はまた、Stx1タンパク質に対して検出できる結合がほとんどまたは全くない(例えば、Stx1に対して100 nM、200 nM、500 nM、1 μM、10 μM、100 μM、1 mMより大きいまたはそれ以上のKd値を持つ)ことによっても特徴付けられる。
【0018】
抗体親和性は 当技術分野で知られている任意の分析を使って決定でき、これには表面プラズモン共鳴ベース分析、酵素免疫吸着法(ELISA)、および競合アッセイ(例えば、RIA)を含むがこれに限定されない。 また、本明細書に記述されるように、抗体はインビトロ中和分析に供してもよい。11E10エピトープに特異的に結合する抗体は、Stx2の細胞毒性効果を、本明細書に記載または当技術分野で知られている分析を使用して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、またはそれ以上中和することがある。この用語は以下の抗Stx2抗体の以下のマウス、ヒト化またはヒト形態を具体的に除外する:11E10, TMA-15, VTM1.1, 5C12(5C12ヒトモノクローナル抗体およびr5C12 (AkiyoshiおよびTzipori (2005) Infect. Immun. 73:4054-4061を含む), 6G3, 5H8, 11F11, 11G10, 2E1, 10E10 (Pereraら (1988) J. Clin. Microbiol. 26:2127-2131), IG3, 2F10, 3E9, 4H9, 5A4, 5F3, 5C11, 1A4, 1A5 (Maら (2008) Immunol. Lett. 121:110-115 (2008), BC5 BB12, DC1 EH5, EA5 BA3, ED5 DF3, GB6, BA4 (Downesら (1988) Infect. Immun. 56:1926-1933), cαStx2 抗体, Smithら ((2006) Vaccine 24:4122-4129)に記述の抗体, Donohue-Rolfeら ((1999) Infect Immun. 67:3645-364)に記述の抗体, およびSheoranら ((2003) Infect Immun. 71:3125-3130)に記述の抗体。
【0019】
「阻害結合」とは、1つのタンパク質の別のタンパク質への結合を、例えば本明細書に記述のウェスタンブロットまたは当技術分野で知られているELISAもしくはGb3受容体結合アッセイで測定した場合、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少させることを意味する。「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、 二重特異性抗体)、または抗体断片を含むが、これらの分子が望ましい生物活性(例えば、本明細書に記述のStx2毒素の中和)を持つことを条件とする。
【0020】
本明細書で使用される場合、「精製された」または「単離された」とは、その天然環境の成分から特定および分離され、および/または回収されたタンパク質を指す。天然環境の混入物成分は、一般にタンパク質の診断または治療での使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。
【0021】
「トキソイド化」とは、例えば、突然変異、抱合、または架橋などにより、抗原性を維持しながら細胞毒性を減少させるように変化させることを意味する。Stx2のトキソイド化型には、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド処理Stx2およびY77S変異を持つStx2を含む。トキソイド化Stxタンパク質の他の限定されない例には、Y77SおよびE167Q変異を持つStx2(Wenら (2006) Vaccine 24: 1142-1148)、E167Dおよび6ヒスチジンタグを持つStx2 (Robinsonら (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 103:9667-9672)、Y77S、E167Q、およびR170L変異を持つStxA2/StxB1トキソイド(Smithら Vaccine 24:4122-4129 (2006))がある。他の例はGordonら ((1992) Infect. Immunol. 60(2):485-490)に記述されている。
【0022】
「非完全長Stx2」とは、完全長Stx2ポリペプチドのアミノ酸を90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%未満、またはそれ以下含むタンパク質を意味する。非完全長Stx2の例には、配列番号:4-8に示されるアミノ酸配列を含むがこれに限定されない。他の例には、Stx2のアミノ酸29〜297、1〜158または29〜128を含むまたはそれから成るポリペプチドを含み、例えば、図1Aに提供したキメラポリペプチドを含む。野生株Stx1、Stx2またはこの願書に記述されているキメラ毒素のAサブユニットはすべて、除去された22アミノ酸リーダー配列を持ち、このため成熟Aサブユニットタンパク質を産生する。
【0023】
この明細書の目的では、「完全長Stx2」という用語およびStx2断片のアミノ酸番号は、完全長成熟StxA2サブユニットを指す。この成熟Aサブユニットは、その後トリプシンまたはフリンによって非対称的に切断されて、A1断片(N-末端 約248のアミノ酸)とA2ペプチド(C-末端 約50 aa)になる。天然またはキメラ形態のAサブユニットは、通常ホロ毒素との関連で存在するが、単独で発現され(例えば、Bサブユニットなし)、Aサブユニットまたはその断片は11E10エピトープに対する免疫反応を引き起こし得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「タンパク質骨格」または「骨格」という用語は、例えば配列番号:1、2、または3に示されるStx2アミノ酸配列などの異種タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列に挿入されたタンパク質構造を指す。好ましくは、タンパク質骨格の三次元構造は既知であり、異種タンパク質の断片は、例えば表面露出ループ位またはタンパク質骨格と異種タンパク質の間の構造相同領域などの戦略的位置に挿入されている。Stx2の断片の挿入は、タンパク質骨格の特定の配列(例えば、挿入される配列と構造が相同の配列)の選択的削除によって達成され得る。この例では、タンパク質骨格の非削除配列は、例えばStx1などの別のタンパク質に対する配列同一性パーセントの決定に使用され得る。タンパク質骨格として使用されている典型的タンパク質は、Stx またはStx1(本明細書に記述)、緑色蛍光タンパク質(Abedi ら (1998) Nucleic Acids Res. 26:623-630)、および細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)(Huftonら (2000) FEBS lett. 475:225-231)である。タンパク質骨格は、例えばFLAGエピトープまたはグルタチオンSトランスフェラーゼなど、その末端に異種タンパク質配列が結合されているタンパク質タグを具体的に除外する。
【0025】
「実質的に同一」とは、例えば以下に記述される方法を使って最適に配列された場合、第二の核酸またはアミノ酸配列(例えばStx2、Stx1、または配列番号:8に示されるもののようなキメラタンパク質)と、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を持つ核酸またはアミノ酸を意味する。「実質的同一性」は、完全長配列、エピトープまたは免疫原性ペプチド、機能領域、暗号および/または調節配列、エクソン、イントロン、プロモーター、およびゲノム配列などのさまざまなタイプおよび長さの配列を指すために使用される。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の同一性パーセントは、例えば、Smith Waterman Alignment (Smith, T. F. およびM. S. Waterman (1981) J. Mol. Biol. 147:195-7);GeneMatcher Plus(商標)(SchwarzおよびDayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhoff, M.O., Ed pp 353-358)に組み込まれた "Best Fit" (Smith およびWaterman (1981) Advances in Applied Mathematics, 482-489); BLAST プログラム (Basic Local Alignment Search Tool (Altschul, S. F., W. Gishら (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10), BLAST-2, BLAST-P, BLAST-N, BLAST-X, WU-BLAST-2, ALIGN, ALIGN-2, CLUSTAL, またはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使って、当技術分野のさまざまな方法で決定される。さらに、当業者であれば、比較される配列の長さにわたって最高の整列を達成するために必要なアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。一般的に、タンパク質では、比較配列の長さは少なくとも5つのアミノ酸、好ましくは、10、25、50、100、150、200、300、または315のアミノ酸またはそれ以上最大でタンパク質の全長であり得る。核酸では、比較配列の長さは、一般的に少なくとも15、75、150、300、450、600、900、または945ヌクレオチドまたはそれ以上最大で核酸分子の全長であり得る。当然のことながら、DNA配列をRNA配列と比較して配列同一性を決定する目的では、チミンヌクレオチドはウラシルヌクレオチドと同等である。1つの実施態様では、タンパク質(例えば、志賀毒素タンパク質の成熟Aサブユニット)の配列同一性は、配列番号:8の断片の長さ(例えば、配列番号:8のアミノ酸64〜122または64〜282)にわたって測定できる。アミノ酸配列では、保存的置換は一般的に以下の基の中での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0026】
「断片」とは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の100%未満、好ましくは少なくとも2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%を含むポリペプチドまたは核酸分子の一部を意味する。断片は例えば、10、15、75、150、300、450、600、900、または945個またはそれ以上のヌクレオチドまたは4、5、10、25、50、100、150、200、300、315個のアミノ酸またはそれ以上を含み得る。志賀毒素タイプ1または志賀毒素タイプ2タンパク質の断片には、完全長タンパク質未満の任意の部分(例えば長さが4、5、8、10、25、50、100、150、200、300、315、またはそれ以上のアミノ酸の断片)を含み得る。一例では、断片には配列番号:8のアミノ酸64〜122または64〜282を含む。
【0027】
「志賀毒素関連疾患」とは、志賀毒素を発現する病原体から生じる任意の疾患を意味する。「志賀毒素関連疾患」という用語は、溶血性尿毒症症候群、細菌性赤痢、および志賀毒素産生大腸菌およびシゲラ・ディゼンテリエ感染から生じる疾患を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】初期のハイブリッドStx1/Stx2 Aサブユニットを示す。Stx1は黒で、Stx2は白で表されている。キメラ毒素の名前はそれぞれのキメラタンパク質の左側に示され、Stx2の領域はキメラAサプユニットの下に示されている。
【図1B】ウサギ抗Stx1および抗Stx2ポリクローナル(上のパネル)またはモノクローナル11E10(下のパネル)でプローブされたStx1、Stx2および初期キメラ毒素のウェスタンブロット分析を示す。レーン1と2は、精製されたStx1またはStx2をそれぞれ25 ng含む。レーン3〜8は以下のキメラ毒を含む:レーン3, Stx1(2A29〜297); レーン4, Stx1(2A1〜158); レーン5, Stx1(2A29〜128); レーン6, Stx1(2A29〜76); レーン7, Stx1(2A42-76); レーン8, Stx1(2A42〜49)。
【図1C】11E10モノクローナル抗体による初期キメラ毒素の中和パーセントを示す。中和データは、完全長Stx2の中和%が100%(実際の中和%= 65%)に設定され、残りの毒素の中和レベルは正規化完全長Stx2中和のパーセントとして与えられるように正規化された。誤差バーは、正規化値の標準誤差を表す。
【図2A】11E10モノクローナル抗体エピトープを含む3つの領域内のStxA1およびStxA2のアミノ酸アラインメントを示す。黒およびグレーのアミノ酸は、保存および非保存アミノ酸をそれぞれ示し、点は同一の残基を表す。11E10モノクローナル抗体エピトープの3つの領域は以下の通りである:領域A(StxA2残基42〜49)、領域B(StxA2残基96-100)、領域C(StxA2残基244-259)。アラインメントに示されるアミノ酸の番号は、StxA1成熟タンパク質に関する。StxA1は、位置185に余分なアミノ酸を持ち、この追加のために、領域CではStxA2のエピトープがStx1の対応する領域とは番号が1つ異なる。
【図2B】11E10モノクローナル抗体エピトープの3つの領域を除いて、Stx2 A1 およびBサブユニットをライトグレーで示したStx2結晶構造のリボン図形を示す。領域A(緑)、B(青)、およびC(青緑)は、それぞれ黒、グレー、および白の矢印で示されている。A2ペプチドは黒で示されており、活性部位(赤)は星印でマークされている。
【図2C】Stx2結晶構造の空間充填表現を示す。領域A、BおよびCは矢印で示されている。
【図3A】キメラAサブユニットを含む第二世代キメラ毒素を図示している。Stx1は黒で表され、Stx2は白で示されている。キメラ毒素の名前はそれぞれのキメラタンパク質の左側に示され、Stx2の領域はキメラAサプユニットの下に示されている。領域A、BおよびCは、それぞれ、StxA2のアミノ酸42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)、244〜259 (配列番号:3)を指す。
【図3B】ウサギ抗Stx1(上のパネル)または11E10モノクローナル抗体(下のパネル)でプローブされたStx1、Stx2および5つの第二世代キメラ毒素ウェスタンブロット分析を示す。レーン1は25 ngの精製Stx2を含む。レーン2〜6は以下のキメラ毒素を含む:レーン2, Stx1 +A; レーン3, Stx1 +AB; レーン4, Stx1 +AC; レーン5, Stx1 +BC; レーン6, Stx1 +ABC。
【図3C】11E10モノクローナル抗体による第二世代ハイブリッド毒素の中和を示す。Stx2中和のレベルは、図1Cに見られるように100%に正規化された。誤差バーは正規化値の標準誤差を表す。
【図4A】11E10モノクローナル抗体でのStx2およびStx2変異体のウェスタンブロット分析示す。レーン1は25 ngの精製Stx2を含む。レーン2〜5は以下の毒素を含む: レーン2, Stx2c; レーン3, Stx2d; レーン4, Stx2dact; lane 5, Stx2e。ウェスタンブロットは、ウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体(上のパネル)またはモノクローナル抗体11E10(下のパネル)のどちらかでプローブした。
【図4B】Stx2変異体の11E10による中和パーセントを示す。Stx2中和のレベルは、図1Cに見られるように100%に正規化された。誤差バーは正規化値の標準誤差を表す。
【図5】ウサギ網状赤血球溶血液中のルシフェラーゼmRNAの翻訳によって測定されたタンパク質合成阻害を示す。精製Stx2の0.2 ngアリコートを0、0.2、または2 ngの11E10と混合して網状赤血球溶血液に加えた。タンパク質合成阻害は、ルシフェラーゼmRNAの翻訳の減少で示され、ルシフェリン基質に毒素処理溶血液を加えた後に生物発光で測定した。陰性対照として、アイソタイプ適合の無関係な抗体13C4の2 ng試料と2 ng Stx2を混合した。誤差バーは、平均比の標準誤差から計算された95%信頼区間を表す。スチューデント両側t検定から得られた確率値は、抗体がある場合とない場合の試料の間で、生物発光シグナルに有意な差異を示した(p < 0.005)。
【図6】モノクローナル抗体11E10がVero細胞中のStx2の全体的細胞分布を変化させることを示す。Stx2をPBS (A、H〜J) または11E10 (B、CおよびE〜G)と混合し、その後Vero細胞に6h加えた。対照として、Stx2のない状態で11E10 をVero細胞に加えた(D)。毒素は、Stx2に対するポリクローナル抗体に続いてAlexaFluor 488(AおよびB)と抱合された二次抗体で検出し、11E10はAlexaFluor 488(CおよびD)と抱合された抗マウスIgGで検出した。早期エンドソームマーカーEEA1でのStx2共局在化は、中毒性細胞の二重標識によって評価した。抗体11E10が存在する場合(パネルE)および不在の場合(パネルH)のStx2分布は、抗Stx2モノクローナル11F11および緑色蛍光二次抗体で可視化した。エンドソームマーカーEEA1の分布は、ヤギ抗EEA1および蛍光二次抗体(パネルFおよびI)で可視化した。これらの染色パターンを重ね合わせて(パネルGおよびJ)、エンドソームでの毒素の共局在化は橙黄色で示され、矢印で示されている。
【図7】Stx2 領域A (配列番号:1) (図7A)、Stx2 領域B (配列番号:2) (図7B)、Stx2 領域C (配列番号:3) (図7C)、およびStx2e 領域 B (配列番号:19) (図7D)のアミノ酸配列を示す。
【図8】(A)Stx1+Aキメラのアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 A領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(B)Stx1+ABキメラのアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 AおよびB領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(C)Stx1+ACキメラのアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 AおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(D)Stx1+BCキメラのアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 BおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(E)Stx1+ABCキメラのアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 A、BおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。
【図9】(A)StxAl開始コドンで始まりStxBl終止コドンで終わる、StxlオペロンのDNA配列 (配列番号:9) を示す。(B)StxAl開始コドンで始まりStxAl終止コドンで終わる、StxAlのDNA配列 (配列番号:10) を示す。(C)StxBl開始コドンで始まりStxBl終止コドンで終わる、StxBlのDNA配列 (配列番号:11) を示す。
【図10】(A)StxAlのアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(B)StxBlのアミノ酸配列(配列番号:13)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸89個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸69個の長さである。
【図11】(A)StxA2開始コドンで始まりStxB2終止コドンで終わる、Stx2オペロンのDNA配列 (配列番号:14) を示す。(B)StxA2開始コドンで始まりStxA2終止コドンで終わる、StxA2のDNA配列 (配列番号:15) を示す。(C)StxB2開始コドンで始まりStxB2終止コドンで終わる、StxB2のDNA配列 (配列番号:16) を示す。
【図12】(A)StxA2のアミノ酸配列(配列番号:17)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸319個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸297個の長さである。(B)StxB2のアミノ酸配列(配列番号:18)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸89個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸70個の長さである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
一般的に、本発明は、Stx2タンパク質の11E10エピトープの発見に関連した組成物および方法を特徴とする。11E10エピトープは、配列番号:1、2および3に示される配列セットの少なくとも1つ 、2つまたは3つを含むことを我々は発見した。本発明の組成物および方法は、志賀毒素関連疾患の検出、治療、または予防に有用であり得る。例えば、志賀毒素関連疾患(例えば溶血性尿毒症症候群および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連する疾患)を持つ、または発症のリスクがある被験者を、11E10エピトープを含むペプチドで、またはStx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗体で治療できる。
【0030】
I. 適応
志賀毒素関連疾患には、志賀毒素産生シゲラ・デォゼンテリエまたは腸管出血性大腸菌(EHEC)(中でも注目すべきは血清型O157:H7)による感染から生じるものを含む。これらの感染は、溶血性貧血、血栓性血小板減少症、および腎不全によって特徴付けられる溶血性尿毒症症候群(HUS)をしばしば生じる。
【0031】
本発明の化合物および方法は、志賀毒素関連疾患を持つ、または発症のリスクのある被験者の治療に有用である。このような被験者にはデイケアの子どもまたは養護ホームの高齢者を含む。一例では、被験者は、EHEC下痢の症例が発見されたデイケアまたは養護ホームにいる。この例では、被験者はその疾患を発症している、またはしていない場合がある。本発明の方法および組成物は、EHECに感染した人の感染を治療するため、他の感染者を検出するため、およびデイケアまたは養護ホームでのEHECのまん延を防止するために使用され得る。
【0032】
II. 抗体
本発明には、志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープおよび抗体自体に特異的に結合する抗体の産生を含む。望ましくは、このような抗体は検出可能な程度にはStx1に結合しない。標的タンパク質を認識して特異的に結合する抗体の特有の能力は、志賀毒素産生大腸菌(STEC)に関連する疾患の診断と治療の両方に対する方法を提供する。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、マウスおよび他の哺乳類抗体、抗体断片、二重特異性抗体、抗体二量体または四量体、単鎖抗体(例えば、Fab、二重特異性抗体、およびFab'断片などのscFv'および抗原結合抗体断片)、抗体結合領域に基づく遺伝子組み換え結合領域、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化および完全ヒト抗体、領域欠失抗体、並びに検出可能マーカーで標識された、または毒素もしくは放射性核種と連結した抗体を含むがこれに限定されない抗体の産生を提供する。このような抗体は、当技術分野で知られている従来方法で産生される。1つの態様では、本発明は、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体または抗体断片の産生を含み、産生には、配列番号:1、2、または3に示される配列から選択された少なくとも1つ、2つ、または3つの配列を含むポリペプチドの使用を含む。 1つの例は配列番号:8に示されるタンパク質である。
【0033】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、抗原の注射に続いて適当な間隔でその後追加免疫することにより、ウサギまたは他の動物に免疫化することによって産生できる。動物を出血させ、通常ELISAで、精製タンパク質に対して血清を分析する。
【0034】
11E10エピトープに特異的に結合するポリクローナル抗体は、抗原およびアジュバントの皮下(sc)または腹腔内(ip)複数回注射によって、動物内で育てることができる。二官能性物質または誘導化剤(例えば、マレイミドベンゾイル・スルホスクシンイミド・エステル(システイン残基を介した抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基媒介)、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸)を使って、11E10エピトープを含むペプチドを、免疫させる種で免疫原性のあるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロビン、または大豆トリプシン阻害剤)に抱合することが有用であろう。
【0035】
例えば、動物は、1 μg から1 mgのペプチドまたは抱合体(それぞれウサギまたはマウス)を3倍容積のフロイント完全アジュバントと混合し、溶液を複数部位に皮内注射することにより、11E10エピトープ、免疫原性抱合体、または誘導体に対して免疫化され得る。1ヶ月後、複数部位への皮下注射により、初期量の1/5 から1/10のフロイント完全アジュバント中のペプチドまたは抱合体で動物に追加免疫する。7〜14日後、動物を出血させ、抗原またはその断片に対する抗体力価について血清を分析する。力価が頭打ちになるまで動物に追加免疫する。好ましくは、動物は同じポリペプチドの抱合体で追加免疫されるが、異なるタンパク質へ、および/または異なる架橋試薬を介して抱合される。抱合体はまた、タンパク質融合として組み換え細胞培養で作ることもできる。また、免疫反応を促進するためにミョウバンなどの凝集剤が適切に使用される。
【0036】
キメラ、ヒト化、または完全ヒトポリクローナル抗体は、ヒト免疫グロビン遺伝子を遺伝子導入した動物で産生するか、または開始物質のために2つ以上のStx2反応性Bリンパ球を被験者から単離することによって産生し得る。
【0037】
ポリクローナル抗体はまた、モノクローナル抗体を提供するために、必要な場合は繰り返し精製および選択することもできる(たとえば、立体配座的に制限された抗原ペプチドに対する親和性を介して)。別の方法としてまたはこれに加えて、単一抗体をコードしている核酸をリンパ球からクローニングで取り出す方法が採用され得る。
【0038】
モノクローナル抗体
本発明の別の実施態様では、モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる(すなわち、集団を含む個別の抗体は、少量存在する可能性のある天然に存在する突然変異を除いて同一である)。従って、モノクローナルという用語は、別個の抗体の混合物としてではない抗体の特徴を示す。
【0039】
モノクローナル抗体は、免疫化されたマウスからの脾細胞を骨髄腫またはリンパ腫細胞などの連続的複製腫瘍細胞と融合することによるKohlerとMilsteinのハイブリドーマ法など、当技術分野で知られている方法で製造できる。(KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256: 495 - 497; Gulfre and Milstein (1981) Methods in Enzymology: Immunochemical Techniques 73: 1 - 46, LangoneおよびBanatis eds., Academic Press). ハイブリドーマ細胞は次に、限界希釈法によってクローニングされ、ELISA、RIA、またはバイオアッセイで抗体産生について上清分析をする。別の実施態様では、モノクローナル抗体は組み替えDNA法で作ってもよい。
【0040】
11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体(Mab)の産生では、培養において連続的な細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術が使用され得る。例えば、もともとKohler とMilsteinにより開発されたハイブリドーマ技術((1975) 上記、並びにKohlerおよびMilstein (1976) Eur J Immunol. 6: 511 - 519; Kohlerら(1976) Eur J Immunol. 6: 292 -295; Hammerlingら (1981): Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., pp. 563 - 681にも記述)、並びにヒトモノクローナル抗体を産生するためのトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら (1983) Immunol Today 4: 72 - 79)、およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら (1985) in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77 - 96)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。本発明のMab産生ハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養され得る。本発明の追加的実施態様では、モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている技術を使用して、無菌動物中で産生できる。
【0041】
一般的に、マウスまたは他の適切な宿主動物(ハムスターなど)は、11E10エピトープを含むポリペプチドで免疫され、免疫化に使用される抗原またはその断片に特異的に結合できる抗体を産生するまたは産生する能力のあるリンパ球を誘導する。または、リンパ球はインビトロで免疫化される。
【0042】
免疫化された宿主動物(例えばマウス)の脾細胞を抽出し、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使って適切な細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合してハイブリドーマ細胞を形成する(Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59 - 103, Academic Press)。本発明に従って、任意の適切な骨髄腫細胞株を用いることができるが、好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞で安定した高レベルの抗体産生を支持し、HAT培地などの培地に感受性のものである。これらのうち、好ましい骨髄腫細胞株は、MOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍から得られるもの(Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能)、およびSP-2細胞(American Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックビル)から入手可能)などのマウス骨髄腫株である。
【0043】
このように産生されたハイブリドーマ細胞は、未融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含む、適切な培地に播種して、増殖してもよい。このような選択および/またはハイブリドーマ細胞が維持される培地から得られたハイブリドーマ細胞は、その後分析されて、11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体の産生が特定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロの結合分析(放射免疫測定(RIA)または酵素免疫吸着法(ELISA)など)によって、またはBiacore機器を使って測定される。例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munson とRodbardのスキャッチャード分析((1980) Anal Biochem. 107: 220 - 239)によって決定することができる。
【0044】
ハイブリドーマ細胞が望ましい特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生することを特定した後、クローンを限界希釈手順でサブクローニングし、標準方法(Goding, 上記)で増殖してもよい。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物中の腹水腫瘍としてインビボで増殖させてもよい。サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えばタンパク質Aセファロース、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどの従来的免疫グロブリン精製手順で、培地、腹水、または血清から適切に分離される。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来手順を使って(例えば、マウス抗体の重鎖と軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に分離およびシーケンスされる。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦分離されると、DNAは発現ベクターに入れられ、これを次に、そうでなければ免疫グロブリンを産生しない大腸菌細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体合成をする(例えば、Skerraら (1993) Curr Opin Immunol. 5: 256 - 262およびPluckthun (1992) Immunol Rev. 130: 151 - 188を参照)。
【0046】
DNAはまた、相同配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常領域に対するコード配列のすべてもしくは一部を置き換えることによって(Morrisonら (1984) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 81: 6851 - 6855)、または非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列のすべてもしくは一部を免疫グロブリンコード配列と共有結合で結合させることによって修飾することもできる。そのように、抗11E10エピトープモノクローナル抗体の結合特異性を持つキメラまたはハイブリッド抗体が産生される。一般的にこのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常領域と置換されるか、またはこれらは、本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変領域と置換されて、本発明による11E10エピトープに対する特異性を持つ1つの抗原結合部位および異なる抗原に対する特異性を持つ別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体が産生される。
【0047】
修飾抗体
本発明の修飾抗体には、キメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)、ヒトモノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体が含まれるがこれに限定されない。キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域とマウスmAbから由来する可変領域を持つものなど、その異なる部分が異なる動物腫に由来する分子である(例えば、米国特許番号4,816,567 および4,816,397を参照)。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型は、非ヒト種からの相補性決定領域(CDR)の1つ以上およびヒト免疫グロブリン分子からの骨格領域など、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv, Fab, Fab', F(ab')2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である(米国特許番号5,585,089を参照)。
【0048】
ヒト化抗体には、受容者の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望ましい特異性、親和性、能力を持つマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されているヒト免疫グロブリン(受容者抗体)を含む。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFv骨格残基は、相当する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体は、受容者抗体、取り込まれたCDRまたは骨格配列にも見られない残基も含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンの領域に対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべて、およびFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である、少なくとも1つ、一般的には2つの可変領域の実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。
【0049】
キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている組み換えDNA技術で産生することができ、例えばWO 87/02671; EP 184,187; EP 171,496; EP 173,494; WO 86/01533; US 4,816,567; EP 125,023; Betterら (1988) Science 240: 1041 - 1043; Liu ら ((1987) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 84: 3439 - 3443); Liuら ((1987) J Immunol. 139: 3521 - 3526); Sunら ((1987) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 84: 214 - 218); Nishimura ら((1987) Cancer Res. 47: 999 - 1005); Woodら ((1985) Nature 314: 446 - 449); Shaw ら ((1988) J Natl Cancer Inst. 80: 1553 - 1559); Morrison ((1985) Science 229: 1202 - 1207); Oi ら ((1986) Biotechniques. 4: 214); 米国5,225,539; Jones ら. ((1986) Nature 321: 552 - 525); Verhoeyanら ((1988) Science 239: 1534); およびBeidler ら ((1988) J Immunol. 141: 4053 - 4060)に記述の方法を使用できる。ヒト化抗体およびそれに関する方法のさらなる考察については以下を参照。
【0050】
組み換え抗体産生のための効率の高い別の手段がNewman ((1992) Biotechnology. 10: 1455 - 1460)によって公開されている. 米国特許番号5,756,096、5,750,105、5,693,780、5,681,722、および5,658,570も参照のこと。
【0051】
非ヒト抗体のヒト化の方法は、当技術分野では周知である。ヒト化は、ヒト抗体の対応配列をげっ歯類CDRまたはCDR配列で置換することにより、上述のようにWinterらの方法(Jones ら ((1986) Nature 321: 522 - 525)、Riechmannら ((1988) Nature 332: 323 - 327)、Verhoeyenら ((1988) Science 239: 1534 - 1536)を含む)に従って原則的に実施し得る。従って、このようなヒト化抗体はキメラ抗体である(米国特許番号4,816,567および6,331,415参照)。実際にはヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基および場合によっては一部のFR残基が、げっ歯類抗体の類似部分からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0052】
ヒト化抗体を作るのに使用される軽、重両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる最良適合法によると、げっ歯類抗体の可変領域の配列を既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。げっ歯類の配列に最も近いヒト配列は、次にヒト化抗体のヒト骨格(FR)として受け入れられる(Simsら (1993) J Immunol. 151: 2296 - 2308; ChothiaおよびLesk (1987) J Mol Biol. 196: 901 - 917)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定の骨格を使用する。同じ骨格をいくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carter ら (1992) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 89: 4285 - 4289; Prestaら(1993) J Immunol. 151: 2623 - 2632)。
【0053】
抗原(すなわちStx2の11E10エピトープ)に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を維持したまま抗体がヒト化されることもまた望ましい。この目的を達成するために、ヒト化抗体は、親配列およびさまざまな概念のヒト化産物の分析を通して、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使って製造される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用でき、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を図解および表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定役割の分析(すなわち、抗原に結合するための候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析)が可能となる。このように、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性を達成するように、FR残基はコンセンサス配列および取り込み配列から選択して、組み合わせてもよい。一般的に、CDR残基は、直接的かつ最も実質的に影響抗原結合に関与する。
【0054】
完全ヒト抗体はヒト被験者の治療に有用である。このような抗体は、例えば、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子は発現できないがヒト重鎖および軽鎖遺伝子は発現できる遺伝子導入マウスを使用して産生できる。遺伝子導入マウスは、例えば11E10エピトープを含むポリペプチドなどの選択された抗原で通常の方法で免疫され得る。例えば、PCT公開番号WO 94/02602, WO 00/76310; U.S. Patent Nos. 5,545,806; 5,545,807; 5,569,825; 6,150,584; 6,512,097; および 6,657,103; Jakobovits ら ((1993) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 90: 2551); Jakobovits ら((1993) Nature 362: 255 - 258); Bruggemann ら ((1993) Year in Immunol. 7: 33 - 40); Mendez ら ((1997) Nat Gene. 15: 146 - 156), およびGreenおよびJakobovits ((1998) J Exp Med. 188: 483 - 495)を参照。
【0055】
ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法で作ることもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が、例えばKozbor ((1984) J Immunol. 133: 3001 - 3005); Brodeur ら ((1987) Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51 - 63, Marcel Dekker, Inc., New York); およびBoerner ら ((1991) J Immunol. 147: 86 - 95)によって記述されている。
【0056】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、ガイド選択と呼ばれる技術を使用して産生することもできる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespersら (1994) Biotechnology. 12: 899 - 903)。
【0057】
単鎖Fvsおよび抗体を産生するために使用され得る技術の例には、米国特許番号4,946,778および5,258, 498; Huston ら ((1991) Meth Enzymol. 203: 46 - 88); Shu ら ((1993) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 90: 7995 - 7999); およびSkerra ら((1988) Science 240: 1038 - 1040)を含む。
【0058】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty ら (1990) Nature 348: 552 - 553)を使用して、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)領域レパートリーから、ヒト抗体および抗体断片を産生し得る。ファージディスプレイはさまざまな形式で実施できる。例えば、Johnson およびChiswell ((1993) Curr Opin Struct Biol. 3: 564 - 571)を参照。V遺伝子のいくつかの供給源をファージディスプレイに使用できる。Clacksonら ((1991) Nature 352: 624 - 628) は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さな無作為組み合わせライブラリーから、さまざまな一連の抗オキサゾロン抗体を単離した。非免疫ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーを構築でき、さまざまな一連の抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks ら ((1991) J Mol Biol. 222: 581 - 597)、またはGriffithら ((1993) EMBO J. 12: 725 - 734)によって記述された技術に基本的に従って単離できる。
【0059】
本発明は、11E10エピトープを含むタンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体または類似体を提供する。この文脈では機能的に活性とは、断片、誘導体、または類似体が、断片、誘導体または類似体がそれから由来する抗体によって認識される同じ抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を、誘導する能力を持つことを意味する。具体的には、好ましい実施態様では、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワーク配列およびその抗原を特異的に認識するCDR配列のC末端であるCDR配列および骨格の削除によって増強され得る。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、当技術分野で知られている任意の結合分析法による抗原との結合分析において、そのCDR配列を含む合成ペプチドを使用できる。
【0060】
本発明は、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、およびscFvsなどを含むがこれに限定されない抗体断片を提供する。特定のエピトープを認識する抗体断片は、既知の技術(例えばペプシンまたはパパイン媒介切断)により産生され得る。
【0061】
本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖二量体、またはFvsもしくは単鎖抗体(SCA)などのその任意の最小断片(例えば、米国特許番号4,946,778; Bird ((1988) Science 242: 423 - 42); Huston ら ((1988) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 85: 5879 - 5883); およびWard ら ((1989) Nature 334: 544 - 54)に記述)、または本発明の抗体と同じ特異性を持つ任意の他の分子も提供する。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖および軽鎖断片を、アミノ酸架橋を介して結合することによって形成される。大腸菌の機能的Fv断片の構築のための技術を使用し得る(Skerra ら (1988) Science 242: 1038 - 1041)。
【0062】
あるいは、特定抗原に結合するFab断片のクローンに対して、Fab発現ライブラリー(例えば、Huse ら ((1989) Science 246: 1275 - 1281)により記述)をスクリーニングすることによって、または抗体ライブラリー(例えば、Clackson ら ((1991) Nature 352: 624 - 628) およびHanes およびPluckthun ((1997) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 94: 4937 - 4942)参照)をスクリーニングすることによって、抗体の少なくともFab部分をコードしているクローンを取得し得る。
【0063】
他の実施態様では、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質、またはその機能的に活性な断片を提供する。1つの例では、免疫グロブリンは、免疫グロブリンではない別のタンパク質(またはその部分、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20または50個のアミノ酸部分)のアミノ酸配列のN末端またはC末端のどちらかに、共有結合(例えばペプチド結合)で融合される。好ましくは、免疫グロブリン、またはその断片は、他のタンパク質に定常領域のN末端で共有結合されている。上述のように、このような融合タンパク質は、精製を促進し、インビボでの半減期を増加させ、上皮バリアを超えた免疫系への抗原の送達を促進し得る。
【0064】
別の実施態様では、本発明は、プールされた抗体、抗体断片、および本明細書に記述の他の抗体変異体の組成物および使用を提供する。例えば、2つ以上のモノクローナル抗体を使用のためにプールし得る。1つの特定の実施態様では、本発明の抗体は、StxまたはStx1に特異的に結合する抗体と共にプールされる。
【0065】
治療的投与
本発明は、上記の方法を使って産生された抗体(例えば、Stx2の11E10に特異的に結合する抗体)の、志賀毒素関連疾患を持つ、またはこれを発症するリスクのある被験者への投与も特徴とする。
【0066】
本発明の抗体は、適正な医療行為にふさわしい方法で、処方、投薬、投与される。この場合の考慮要因には、治療する特定の疾患、治療する特定の被験者、個々の被験者の病態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に知られている他の要因を含む。Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する投与すべき抗体の治療効果のある量は、このような考慮に影響され、志賀毒素関連疾患、またはその関連症状を予防、緩和、治療、または安定化するたえに必要な最小量である。11E10エピトープに特異的な抗体は、志賀毒素関連疾患を予防または治療するために現在使用されている薬剤(例えば、13C4を含む、Stx1に特異的な抗体、またはそのヒト化またはキメラ誘導体)の1つ以上と共に随意に処方されるが、そうする必要はない。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するStx2の11E10エピトープに特異的な抗体の量、疾患または治療のタイプ、および上述の他の要因に依存する。
【0067】
抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を含む任意の適切な方法で投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。さらに、抗体は、特に抗体の用量を低下させながらのパルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投薬は、注射によって行われ、最も好ましくは静脈または皮下注射によって行われるが、これは投与が短期または長期であるかにある程度依存する。
【0068】
III. ワクチン
本発明は、Stx2タンパク質に対する免疫反応を刺激する組成物を特徴とする。
【0069】
志賀毒素関連疾患を持つ人または発症のリスクがある人は、ポリペプチドが好ましくは免疫原性的有効量の完全長Stx2ポリペプチドまたは処理されたStxA2サブユニットを含まない本発明の11E10エピトープを含む組成物(例えばワクチン)の投与によって治療できるで。組成物は、予防的および/または治療的に投与できる。
【0070】
当技術分野で知られている標準手順に従って、異なるタイプのワクチンを産生し得る。例えば、ワクチンは、ペプチドベース(例えば、Smith ら ((2006) Vaccine 24:4122-4129)を参照)、核酸ベース((例えば、Bentacor ら, "DNA vaccine encoding the enterohemorragic Escherichia coli 1 (EHEC) Shiga-like toxin 2 (Stx2) A2 and B subunits confers protective immunity to Stx challenge in the murine model" Clin. Vaccine Immunol. (印刷前の電子出版、PMID 19176691)を参照)、バクテリアまたはウィルスベースのワクチンであり得る。ポリペプチドまたは11E10エピトープを含むポリペプチドをコードする核酸を含むワクチン製剤は、安定剤などさまざまな他の成分を含み得る。ワクチンはまた、1つ以上の適切なアジュバントを含むか、またはこれと併用投与され得る。ワクチン中の11E10エピトープを含むポリペプチドに対するアジュバントの割合は、当業者により標準方法で決定され得る。
【0071】
別の実施態様では、ペプチドワクチンは、予防または治療ワクチンとして11E10エピトープまたはその機能的誘導体を含むペプチドを、多くの方法で使用することができ、これには以下を含む:1) 同じ配列のモノマーまたはマルチマーとして、2) 凝集を促進し、エピトープ(例えばクラス I/II標的配列)および/または追加的抗体、TヘルパーまたはCTLエピトープの提示または処理を促進して11E10エピトープの免疫原性を増加させ得る追加的配列と連続的または非連続的に組み合わせて、3) 化学的に修飾または、ワクチンの免疫原性または送達を増加させる薬剤(例えば、脂肪酸またはアシル鎖、KLH、破傷風トキソイド、またはコレラ毒素)と抱合して、4) 上記の任意の組み合わせ、5) 任意の上記を、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、不完全フロイントアジュバントなどの油中水乳剤、アルミニウム塩、サポニンまたはトリテルペン、MPL、コレラ毒素、ISCOM'S(登録商標)、PROVAX(登録商標)、DETOX(登録商標)、SAF、フロイントアジュバント、Alum(登録商標)、Saponin(登録商標)、とりわけ米国特許番号5,709,860、 5,695,770、および5,585,103に記述のものを含むがこれに限定されないアジュバントと組み合わせて、および/または、リポソーム、VPLまたはウィルス様粒子、マイクロエマルション、弱毒化または殺菌細菌およびウィルスベクター、および分解可能微小球を含むがこれに限定されない運搬手段と組み合わせて(例えば、Kersten およびHirschberg ((2004) Expert Rev of Vaccines. 3: 453 - 462); Sheikh ら ((2000) Curr Opin Mol Ther. 2: 37-54)を参照)、並びに6) 任意の経路で投与、または生体外で細胞に抗原を負荷する手段として投与する。
【0072】
ポリペプチドが完全長Stx2ではなく、志賀毒素関連疾患に対して予防的または治療的に人に投与される11E10エピトープを含むポリペプチドの用量は、当業者によって決定され得る。一般的に、用量は、約10 μg 〜1,000 mg、好ましくは約10 mg〜500 mg、より好ましくは約30 mg 〜120 mg、より好ましくは約40 mg 〜70 mg、最も好ましくは約60 mgの11E10エピトープを含むポリペプチドを含む。
【0073】
11E10エピトープを含むポリペプチドの投薬の少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは4回、最高6回またはそれ以上の合計投与回数までが被験者に投与される。最後の免疫化後、1週間または2週間の間隔で11E10エピトープを含むポリペプチドの追加免疫用量を投与することが望ましいであろうし、一般に、1回の追加免疫用量は最初に投与された用量より少ないかまたは同じ量の11E10エピトープを含む。1つの例では、免疫化レジメンは、1週間間隔で4回用量を投与する。ポリペプチドまたは核酸は胃で分解されるので、免疫化は好ましくは非経口的に投与される(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または皮内注射)。免疫化された被験者の経過は、一般的医学評価、血清学および/または胃カメラ検査で感染をスクリーニングすることによってフォローできる。
【実施例】
【0074】
IV. 例
実施例1
モノクローナル抗体11E10はStx2のA1サブユニットを認識する。11E10のStx2への結合は、Stx2の細胞毒性および致死作用の両方を中和するが、成熟Aサブユニットのアミノ酸は同一性が55%かつ類似性が68%であるにもかかわらず、モノクローナル抗体はStx1に結合またはこれを中和しない。この研究では、我々は、11E10エピトープを構成するStx2上のセグメントを特定し、その領域の11E10による認識がどのように毒素の不活化につながるかを究明しようとした。これらの目的に向かって、我々はキメラStx1/Stx2分子のセットを産生し、次にこれらのハイブリッド毒素を認識するための11E10の能力をウェスタンブロット分析で、毒素の中和能力をVero細胞細胞毒性分析で評価した。我々は、11E10に対するStx2上の結合エピトープを予測できる可能性のある一連の相違点について、アミノ酸配列とStx1 およびStx2の結晶構造も比較した。これらの評価を通して、11E10エピトープはStx2活性部位を取り囲む3つの不連続領域から成ると我々は結論付けた。11E10がどのようにStx2を中和するかを知るために、我々は、リボソームを標的にするための11E10/Stx2複合体の能力を調べた。インビトロ分析では、11E10のStx2への結合は毒素がタンパク質合成を阻害するのを防止するが、Vero細胞のStx2の全体的細胞分布も変化させることを見出した。11E10モノクローナル抗体のStx2への結合は、毒素の作用の全部でなくても少なくとも一部を中和し、これは毒素がリボソームに達するまたは不活性化するのを防止することによって起こるのではないかと我々は考える。
【0075】
我々は、STEC感染に関連するStxsを中和するための受動免疫化戦略を調査した( Dowlingら (2005) Antimicrob. AgentsChemother. 49:1808-1812、Edwards ら (1998) In J. B. KaperおよびA. D. O'Brien (ed.)、Escherichia coli O157:H7 and other Shiga toxin-producing E. coli strains. ASM Press, Washington, DC.、Kimuraら (2002) Hybrid. Hybridomics. 21:161-168、Ma ら (2008) Immunol. Lett. 121:110-115, Mukherjee ら (2002) Infect. Immun. 70:612-619、Mukherjee ら (2002) Infect. Immun. 70:5896-5899.)。我々の受動免疫化戦略は、この研究室で開発された、Stx/Stx1 またはStx2に特異的に結合して中和するマウスモノクローナル抗体に基づく(Strockbineら (1985) Infect. Immun. 50:695-700、Perera ら (1988) J Clin. Microbiol. 26:2127-2131)。モノクローナル抗体11E10は、ホルムアルデヒド処理でトキソイド化されたStx2でのBALB/cマウスの免疫化によって産生した(Pereraら, 上記)。ウェスタンブロット分析によると、11E10モノクローナル抗体は、Vero細胞のために、マウスのStx2のA1断片を特異的に認識し、Stx2を中和するが、Stx/Stx1には結合または中和しない(Edwards ら, 上記、Perera ら 上記)。マウス11E10モノクローナル抗体は、ヒト定常領域を含むように修飾して、抗体受容者が抗マウス抗体反応を起こす確率を減少させた。cαStx2と呼ばれるこのヒト/マウスキメラ抗体は、第一相臨床試験を成功裏に終えた(Dowling ら, 上記)。このレポートで、我々は、Stx2のAサブユニット上のマウス11E10モノクローナル抗体によって(さらに、従ってcαStx2によっても)認識されるStx2のAサブユニット上のエピトープを定義し、モノクローナル抗体がインビトロで毒素の酵素活性をブロックし、またVero細胞における毒素輸送を変化させることの証拠を示している。
【0076】
材料および方法
細菌の菌株、プラスミド、精製Stx1およびStx2、およびモノクローナル抗体11E10および13C4
細菌は、Luria-Bertani(LB)ブロス中またはLB寒天(Becton Dickinson and Company、メリーランド州スパークス)上、組み換えプラスミドの選択に対して必要に応じて100μg/mlのアンピシリンを補充して増殖させた。この研究で使用された細菌の菌株およびプラスミドは、表1に示されている。前述のように、Stx1 およびStx2は親和性クロマトグラフィーで精製され(Melton-CelsaおよびO'Brien (2000) p. 385-406. In Handbook of Experimental Pharmacology, vol. 145. Springer-Verlag, Berlin)、モノクローナル抗体11E10、11F11(Stx2に特異的(Perera ら,上記))、および13C4(Stx1に特異的(Strockbine ら (1985) Infect. Immun. 50:695-700))はこの研究室で産生されて、BEI Resources(バージニア州マナッサス)に寄託した。
【0077】
(表1)この研究で使用された細菌の菌株およびプラスミド
【0078】
キメラ毒素プラスミドの構築
stxA1 および stxA2の両方の部分を含む6つのキメラ毒素遺伝子を、スプライス重複延長(SOE)プロトコルのPCRで生成し(Higuchi (1989) p. 61-70. IN H.A. Erlich (ed.), PCR Technology. Stockton Press, New York)、PCR産物をpBluescript II KS (-)(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)に結合した。キメラ毒素遺伝子は天然プロモーターおよびシャイン・ダルガノ配列を含み、5つのクローンの毒素発現レベルはこれらの条件下十分であった。1つのクローン(pMJS11)のAサブユニットの発現レベルを増加させるために、二回目のPCRで毒素オペロンを増幅し、最適化されたシャイン・ダルガノ配列 [TAAGGAGGACAGCTATG (最適化シャイン・ダルガノ配列はアンダーラインで、StxA2の翻訳開始部位は太字で示されている)配列番号:20]をstxA2の上流に加えた。この後者のPCR産物は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモーターを持つpTrcHis2 C発現ベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)に結合させた。この研究で使用したすべてのプライマーを表2に示す。この研究のために作られた各構築物のDNA配列は、使用前に確認した。
【0079】
(表2)この研究で使用された合成オリゴヌクレオチド・プライマー
a 制限酵素部位はアンダーラインで示される。
b変異原性コドン部位は太字で示される。
【0080】
5つの追加的His標識キメラ毒素が、B遺伝子のすぐ下流に6つのヒスチジンコドンを含むstx1クローンから産生された(図2A)。これらのキメラにより産生された毒素は、Stx1の相当配列の代わりに推定11E10モノクローナル抗体エピトープを含むStx2 Aサブユニットの1、2、または3個の領域(以下、領域A、BおよびCと呼ぶ)を含む。領域A、BおよびCは、それぞれ、Stx2 Aサブユニットのアミノ酸42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)、244〜259 (配列番号:3)を指す。作られた5つのキメラ毒素は以下のように命名した:Stx1 +A (配列番号:4に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +AB(配列番号:5に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +AC(配列番号:6に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +BC(配列番号:7に示されるキメラStx2 A配列を含む)、またはStx1 +ABC(配列番号:8に示されるキメラStx2 A配列を含む)。
【0081】
部分的トキソイド化Stx1 +ABCの産生および精製
Stx1 +ABC毒素は、SOEプロトコルにより、Aサブユニットの位置77のチロシン残基をセリン残基に変えることによって部分的にトキソイド化した。Y77S変異は、Vero細胞に対する50%細胞毒性用量(CD50)を、誘導培養物1 mlあたり106から 102 CD50に減少させた。Y77S変異導入後の細胞毒性のこの4桁の減少は、Stx1のY77S変異で以前報告されたものと類似している(Deresiewicz ら (1992) Biochemistry 31:3272-3280)。
Stx1 +ABCトキソイドは、前述のようにニッケル親和性カラムで精製した(Smithら (2006) Infect. Immun. 74:6992-6998)。トキソイドの濃度は、ビシンコニン酸分析(Pierce、イリノイ州ロックフォード)で決定した。ドデシル硫酸ポリアクリルアミドナトリウムゲルの銀染色により、他の小さなバンドが観察されるものの、キメラトキソイドのAおよびBサブユニットが存在する主な2つのバンドであることが判明した(データ非表示)。
【0082】
Stx2cおよびStx2d変異体クローンの構築
His標識Stx2cを発現したクローンは、Stx2で上述のように、PCRで産生した(Robinsonら (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 103:9667-9672)。stx2dクローンは、PCRで大腸菌 EH250とプライマー2DFおよび2DRから産生した(Pierard ら (1998) J. Clin. Microbiol. 36:3317-3322)。PCR産物は発現ベクターpTrcHis2 Cに結合させた。stx2cおよびstx2dが正しく増幅されたことは配列分析で確認された。
【0083】
ウェスタンブロット分析
精製されたStx1、Stx2またはキメラStx1/Stx2毒素を発現した細菌の超音波溶解物を、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけ、次に前述のようにウェスタンブロットで分析した(Smith ら、 上記)。Stx1、Stx2Aまたはキメラ毒素を含む超音波溶解物中のAサブユニットの濃度は以下のように推定した。第一に、それぞれStx1 またはStx2の精製Aサブユニットを検出したウサギ抗Stx1 および抗Stx2ウサギポリクローナル抗体の、比較的同等レベルまでの特定希釈を、NIH Image Jソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/nih-image)を使用して決定した。第二に、キメラ含有超音波溶解物をSDS-PAGEで分離し、結果得られたゲルをニトロセルロースに移し、上記で決定されたように希釈されたウサギ抗Stx1 および抗Stx2ウサギポリクローナル抗体の混合物でこれらのブロットをプローブした。第三に、各レーンのキメラAサブユニットに対応するバンドをNIH Image Jプログラムで定量化して、各溶解物試料中の毒素濃度を決定した。第四に、2つの追加的ポリアクリルアミドゲルに、精製Stx1、Stx2またはキメラを含む正規化溶解物の試料を(ステップ3で決定されたように)同等濃度を含むように添加した。次に毒素調製物をSDS-PAGEにかけ、その後ウサギ抗Stx1とウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体の混合物(図1B上のパネル)(ブロット1)または11E10モノクローナル抗体(図1B下のパネル)(ブロット2)でウェスタンブロット分析を行った。これらのウェスタンブロットで使用された二次抗体は、ブロット1では1:15,000希釈(図1B上のパネル)の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG) (Bio-Rad、カリフォルニア州 ハーキュリーズ)、およびブロット2では1:3,000希釈(図1B下のパネル)のHRP抱合ヤギ抗マウスIgG(Bio-Rad、カリフォルニア州 ハーキュリーズ)であった。結合された二次抗体は、ECL-Plusウェスタンブロット検出キットを使った化学発光で検出した(Amersham Bioscience、イギリス、バッキンガムシャー州リトルチャルフォント)。
【0084】
ウェスタンブロットは、Stx2、 Stx2c、Stx2d、Stx2dactまたはStx2eを発現したクローンの超音波溶解物についても実施した。まず、これらの毒素試料からのAサブユニットの濃度は、ウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体をプローブとして使用したことを除いては、上記と同様に決定した。2つの追加的ポリアクリルアミドゲルに、正規化試料の同等量を添加し、一次抗体としてウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体または11E10モノクローナル抗体のどちらかを使用してウェスタンブロットを行った。二次抗体および検出方法は上記と同様である。
【0085】
Vero細胞でのインビトロ中和分析
Stx1、Stx2、キメラStx1/Stx2毒素、Stx2c、Stx2d、Stx2dact、またはStx2eを含む細菌からの超音波溶解物のインビトロ中和分析は、前述のように11E10を使ってVero細胞(ATCC、バージニア州マナッサス)で実施した((Marquesら (1986) J Infect. Dis. 154:338-341; Smithら., 上記)。つまり、イーグル最小必須培地(EMEM)中の毒素(1〜3個のCD50s)およびEMEM中の精製11E10モノクローナル抗体(0.5 mg/ml)を含む試料の同量を混合して、37℃ および5% CO2で2時間培養した。次に毒素抗体混合物を、96ウェルプレートのサブコンフルエントVero細胞に重ねて、48時間培養した。その後Vero細胞を固定、染色し、600 nm (OD600)での吸光度を測定した。これらの中和実験は重複して少なくとも2回行った。超音波溶解物の毒素の細胞毒性作用を中和するための11E10モノクローナル抗体の能力は、毒素のみまたは毒素と抗体を加えたウェルの細胞生存を比較することによって決定した。抗体による毒素の中和パーセントは、以下の式で計算した。中和パーセント:[(毒素+抗体ウェルの平均OD600 - 毒素のみのウェルの平均OD600 )/(細胞のみのウェルの平均OD600- 毒素のみのウェルの平均OD600)] x 100。11E10モノクローナル抗体は、野生型活性の約65%までStx2を中和した。11E10モノクローナル抗体による毒素誘導体の中和パーセントのレベルを比較しやすくするために、11E10によるStx2の中和量が100%に設定されるようにデータを正規化し、他の毒素の中和レベルはStx2のレベルに対して計算した。
【0086】
マウスの免疫化および抗原投与
体重が14〜16 gのCD-1雄マウス(Charles River Laboratories、マサチューセッツ州ボストン)から免疫前血清を採取した。これらの血清試料は、マウスがStx1またはStx2への既存の力価を持っているかどうかを判断するために、酵素免疫吸着法(ELISA)で使用した。どのマウスも、研究の開始時にはどちらの毒素にも免疫反応を示さなかった。次にマウスは、疑似接種グループ(以下陰性対照グループと呼ぶ)およびキメラトキソイドで免疫されたグループの2つのグループに分けた。陰性対照グループのマウスは、PBSとTiterMax(油中水アジュバント)(TiterMax, USA Inc.、ジョージア州ノークロス)の混合物で腹腔内免疫した。第二のグループのマウスは、TiterMaxと混合した1 ugのトキソイドで、腹腔内免疫した。マウスには、3週間ごとに合計4回追加接種をおこなった。最後の追加接種から2週間後に、陰性対照グループのマウス5匹とトキソイド免疫マウスの5匹に対してStx1の50%致死量(LD50)の10倍 (1,250 ng)を腹腔内に抗原投与し、陰性対照グループの29匹およびトキソイド免疫マウスの34匹には、Stx2のLD50の5倍(5 ng)を抗原投与した。
【0087】
インビトロタンパク質合成阻害分析
ウサギ網状赤血球溶解物、蛍ルシフェラーゼmRNA、およびルシフェリン基質は、Promega Corporation(ワイオミング州マジソン)から購入した。Stx2 (4 ng/μl) を同量の抗体(4 または40 ng/μlで)と混合し、この毒素/抗体混合物の1 μl を網状赤血球溶解物9 μl と混合した。混合物を30℃で培養して、毒素に溶解物中のリボソームを不活化させた。1時間後、ルシフェラーゼmRNAの1アリコートおよび70℃で2分加熱しておいたアミノ酸を加え、溶液をさらに90分間培養して、インビトロのタンパク質合成を進行させた。すべての分析は、3回行った。ルシフェラーゼ活性は、溶解物混合物1 μl を透明96ウェル(Fisher Scientific、ペンシルバニア州ピッツバーグ)の20 μlのルシフェリン基質 に加えることによって測定した。発光は、10分露光下Kodak Image Station 440CFで検出した。発光シグナルは、単一ウェルに対応する円形領域内の合計シグナル強度の総和によって分析した。
【0088】
中毒細胞中の11E10の局在
8ウェル組織培養スライド(Thermo Fisher Scientific、ニューヨーク州ロチェスター)に、1 X 105 細胞/mlの濃度で Vero細胞を播種し、5% CO2の雰囲気下、37℃で24時間接着させた。Stx2 (10 ng/mlの0.2 ml ) を10 ngの精製11E10モノクローナル抗体と混合、または陰性対照としてPBSと混合した。抗体/毒素またはPBS/毒素溶液をVero細胞と6時間培養し、その後細胞を緩衝化ホルマリン(Formalde-Fresh, Fisher Scientific, Pittsburg, PA)で固定し、PBS中0.001% Triton-X100 (Pierce、イリノイ州ロックフォード)で透過処理した。すべての免疫染色手順は、3%ウシ血清アルブミン(BSA, Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含むPBS中で行なわれた。細胞中のモノクローナル抗体11E10の存在は、Alexa-Fluor 488標識ロバ抗マウスIgG(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)で検出した。中毒細胞中の合計Stx2をウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体で標識して、Alexa-Fluor 488抱合ロバ抗ウサギIgGが二次抗体(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)として使用した。Stx2およびエンドソームの二重標識は、それぞれ抗Stx2モノクローナル抗体11F11 (Perera ら, 上記), BEI Resources、バージニア州マナッサス)および抗EEA1 (C-15)ヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルーズ)、並びにAlexa-Fluor標識二次抗体で行った。適切な一次および二次抗体と培養した後、37℃で20分間細胞をホルマリンで固定し、スライドをSlowFade培地(Invitrogen、カリフォルニア州カースルバッド)と共に乗せた。反射光蛍光アタッチメント付きOlympus顕微鏡およびSpot CCDデジタルカメラ(Diagnostic Instrument Products、ミシガン州スターリングハイツ)で、結合フルオロフォア標識二次抗体の40倍拡大イメージを取得した。蛍光イメージはAdobe Photoshop(Adobe Systems、カリフォルニア州サンノゼ)で処理して重ね合わした。
【0089】
結果
初期キメラ毒素のモノクローナル抗体11E10との相互作用
11E10モノクローナル抗体と相互作用するStx2の部分を決定するために、我々はstxA1の領域に対応する位置に挿入されたstxA2遺伝子の異なる領域を含む6つのキメラ毒素オペロンの初期セットを構築した(図1A)。精製Stx1、Stx2または6つの異なるキメラStx1/Stx2毒素を発現する大腸菌DH5αの溶解物のウェスタンブロットを、11E10モノクローナル抗体でプローブした。抗体は、Stx2およびStx2 Aサブユニットの29〜297、1〜158、および29〜128領域からのアミノ酸を含むキメラ毒素と強く反応した(図1B)。11E10によって認識されるStx2の最小部分を持つキメラ毒素は、弱くではあるが、StxA2、領域42〜49からの8つのアミノ酸のみを含んでいた。
【0090】
次に、Stx1、Stx2または6つの初期キメラ毒素の1つを含む細菌溶解物の毒性を中和するための11E10モノクローナル抗体の能力をVero細胞について調査した。予測されたように、11E10モノクローナル抗体はStx2を中和したが、Stx1は中和しなかった(図1C)。しかし、Stx2と比較して、StxA2の領域1〜158 または29〜297を持つハイブリッド毒素は11E10によって約85%中和され、その結果、11E10エピトープの重要成分はStx2の残基29〜158の間にあることが示唆された。対照的に、Stx2からのアミノ酸29〜128を持つキメラ毒素は、免疫ブロットでは強く認識されたが、Stx2のレベルの約32%のみ中和された。これらの知見を合わせると、11E10中和エピトープは、ウェスタンブロットにおける11E10の Stx1(2A29〜128)への結合に要求されるよりも多数のアミノ酸を含み、このため、中和エピトープの一部がこのハイブリッドから欠如していることが示唆される。ウェスタンブロット分析で11E10モノクローナル抗体によって弱く検出された他の3つのキメラ毒素は、Stx2中和の正規化レベルと比較した場合、11E10によって適切に中和されなかった(15%未満)。これらの結果を合わせると、Stx2上の11E10中和エピトープの重要成分の1つ以上がアミノ酸 29〜76の外側に存在することが示される。
【0091】
Stx1とStx2の間のAサブユニットアミノ酸配列と結晶構造の差異分析
キメラ毒素の第一のセットのウェスタンブロットおよび中和分析では、11E10エピトープは、毒素検出のためにStx2 Aサブユニットのアミノ酸42〜49(配列番号:1)を少なくとも必要とすることが示されたが、完全な認識および毒素中和のためには追加的アミノ酸が必要であることも判明した。従って、Stx1およびStx2からの成熟Aサブユニットのアミノ酸配列は、11E10によるStx2の認識および中和に関与する可能性のあるアミノ酸の追加的固有ストレッチを特定するように整列した。次に、Stx (Fraser ら (1994), 上記)とStx2 (Fraserら (2004), 上記)の結晶構造(Protein Data Bankの受入番号はそれぞれ1RQ4および1R4P)をDeep View/Swiss-PDBビューアーを使用して比較し、三次元構造中の毒素間での配列の領域の位置の違いとこのような領域のお互いの近接性を評価した。前述のように、Stx2 Aサブユニットの残基42〜49にわたる8つのアミノ酸は11E10結合部位の一部を形成し、以下、領域Aまたは配列番号:1と称する(図2A、領域A強調アミノ酸)。領域Aからの8つのアミノ酸をStx2結晶構造の中で見ると、それらは毒素構造の中で大きな屈曲を形成しているように見え(図2Bにおいて緑色で示され、黒矢印によって示され、また図2Cにおいても同様に示されている)、さらに、それらはStx2の外面上の、アミノ酸167の周りの活性部位の裂け目の近くにあった。
【0092】
Stx1およびStx2のAサブユニットの間の第二の相違領域は、これらの2つの毒素のアミノ酸配列および結晶構造を比較した時に特定され、これは我々が領域Bまたは配列番号:2と呼ぶセグメントであった(図2A、領域B強調アミノ酸)。領域BはStx2のAサブユニットの5つの残基(96THISV100)(配列番号:2)にわたり、この領域の5つのアミノ酸のうち4つはStx1 と Stx2とで異なる(図2A)。領域Bは領域Aからアミノ酸約50個分離れているが、アミノ酸のこの部分は Stx2結晶構造の領域Aに向かって伸びている(図2Bで、領域Bは青色で示され、グレーの矢印で示されている)。三次元構造での領域Aの領域Bへの近接性は、空間充填モデルではより明白である(図2C)。
【0093】
我々が領域Cまたは配列番号:3と名付けたStx1 とStx2のAサブユニット間の第三の相違領域は、Stx2の残基246の周りのフリン切断部位に重なる(図2A、領域C強調アミノ酸)。領域Cは、その位置のStx1とStx2の間のアミノ酸配列の違いのみだけでなく、領域C(図2Cで青緑色で示され、白い矢印で示される)が領域AおよびBに空間的に近接していることを示したStxとStx2の結晶構造の比較によっても特定された。Stx およびStx2の結晶構造の分析から、領域A、B、およびCは触媒活性部位の比較的近くにあるStx2の同じ面上に群がっていると我々は結論付けた(図2Cで最もよくわかる)。
【0094】
第二世代キメラ毒素のモノクローナル抗体11E10との相互作用
領域BおよびCが11E10エピトープの一部であるかどうかを判断するために、Stx1上の対応する領域の代わりに、Stx2の領域A、BまたはCのさまざまな組み合わせを含むキメラ毒素の第二のセットを産生した(図3A)。次に、Stx1、Stx2またはキメラ毒素のウェスタンブロットを11E10でプローブした(図3B、下のパネル)。11E10モノクローナル抗体は、領域Aを含むすべての毒素を検出した(Stx2、Stx1 +A、Stx1 +AB、Stx1 +AC、およびStx1 +ABC)(図3B、下のパネル)。領域Aを持たない毒素は11E10モノクローナル抗体では検出されず(Stx1およびStx1 +BC)、これは、領域Aが11E10エピトープの必須成分であることを確認する知見である。しかし、領域AおよびB(Stx1 +AB またはStx1 +ABC)を取り込んだ2つのキメラ毒素は、11E10モノクローナル抗体によって、領域Aのみまたは領域Aと領域Cの組み合わせを含むキメラ毒素よりも強く検出されるように思われた(図3B、下のパネル)。これらの結果をまとめると、領域AおよびBは両方とも毒素の完全11E10認識にとって重要であることを示す。
【0095】
我々は、次に、5つの第二世代キメラ毒素(図3A)のそれぞれの超音波溶解物を、11E10モノクローナル抗体でインビトロ中和について分析した。抗体は、領域A、BおよびC(Stx1 +ABC)を含むキメラ毒素を、 Stx2中和レベルの約65%まで中和した。対照的に、領域AとB(Stx1 +AB)のみ、またはAとC(Stx1 +AC)のみを含むキメラ毒素は、Stx1 +ABCキメラの中和レベルの約半分まで中和された(図3C)。11E10による感知できるほどの中和はStx1 +A またはStx1 +BCキメラ毒素に対して観察されなかった(それぞれ約6.9および4.3%)。キメラ毒素のより広範な(> 50%)中和にはStx2からの領域A、B、およびCを必要とすることから、11E10による50%を超える中和には3つの領域すべて(A、B、およびC)が必要であると我々は結論付けた。
【0096】
Stx2とStx2変異体および11E10モノクローナル抗体のウェスタンブロットおよびインビトロ中和分析の結果
11E10によってStx2変異体のどれが認識および/または中和されるかを判断するために、Stx1、Stx2、またはStx2変異体(Stx2c、Stx2d、Stx2dactおよびStx2e)をウェスタンブロットで分析した。Stx2およびすべてのStx2変異体は11E10によって認識されたが、Stx2eはより少ない程度で検出された(図4A、下のパネル)。ウェスタンブロット形式での11E10によるStx2eのこの弱い検出は、コロニーブロットで11E10はStx2e産生株を検出できなかったという我々の以前の報告と一致している(Perera ら, 上記)。Stx2eは、Stx2と比較して、領域Bに2つの保存アミノ酸の相違点を持つ(THISV (配列番号:2)よりはむしろAHISL (配列番号:19))。また、領域Aに直接隣接するいくつかのアミノ酸配列の相違点もある(示されていない)。これらの相違点は、ウェスタンブロット上での11E10によるStx2eの認識が低下したためではないかと我々は推測する。
【0097】
Stx2変異毒素に対するモノクローナル抗体11E10の中和能力を評価した際、11E10はすべてのStx2変異毒素を、Stx2の中和レベルの60%以上まで中和することがわかった(図4B)。ウェスタンブロット形式での11E10によるStx2eの認識が限られていることから、観察されたStx2eの11E10による中和レベルは驚きであった(図4A、下のパネル)。しかし、この研究での11E10によるStx2eの中和は、11E10が部分的にStx2eを中和することを示した我々の以前の結果と一致する(Pereraら, 上記)。
【0098】
マウスにおけるStx1 +ABCトキソイドの免疫および保護反応
次に我々は、Stx1 +ABCハイブリッド分子のトキソイド化誘導体が、マウスのStx2に対して血清中和または保護反応を誘発するかどうかを解明しようとした。マウスのグループをキメラトキソイドまたは対照としてPBSで免疫した。次に、5匹のトキソイド免疫マウスおよび5匹のPBS免疫マウスの血清を、抗Stx1中和反応について評価した。PBS免疫マウスの血清はどれもStx1中和活性を含んでいなかった。以前の研究から予測されるように、5匹のトキソイド免疫マウスすべてがStx1に対する中和抗体を持っていた(Smith ら (2006) Vaccine 24:4122-4129、Wen ら, 上記)。これらの5匹のマウスの血清に対する抗Stx1中和力価の平均は、バックグランドより4.0 ± 0.9ログ上であった。残りの34匹のトキソイド免疫マウスの血清のうち11個がStx2に対する中和反応をいくらか持っていたが、29匹のPBS免疫マウスの血清のどれも抗Stx2反応を示さなかった(データ非表示)。
【0099】
最後の追加接種から2週間後に、陰性対照グループのマウス5匹とトキソイド免疫マウスの5匹に対して、Stx1のLD50の10倍量を腹腔内投与した。以前の研究の結果から予測されるように、陰性対照グループのすべてのマウスが死亡したが、すべてのトキソイド免疫マウスは致死的攻撃を生き延びた(表3)(Smith ら, 上記、Wenら 上記)。さらに、Stx1で抗原投与されたトキソイド免疫マウスの生存は、これらのマウスのインビトロ中和力価に直接相関していた。
【0100】
(表3)Stx1またはStx2での致死的攻撃に対する免疫マウスの保護
a LD50は、Stx1およびStx2に対してそれぞれ125 および1 ng/マウスとして過去に決定した。
b 抗原投与された時のマウスの平均体重は 47.1 gであった。
c フィッシャーの直接確率検定を用いて、グループCおよびD中の生存割合を比較し、p値は0.2667であった。
【0101】
トキソイド免疫グループで低いStx2中和抗体力価が観察されたため、残りのマウスにはStx2のLD50の5倍量のみで抗原投与することにした。29匹の陰性対照マウスのうち6匹(20.7%)がStx2での抗原投与を生き延びた一方、34匹のトキソイド免疫マウスのうち12匹(35.3%)が生き延びた(表3)。これは統計的には有意でないが、キメラトキソイドはStx2からのいくらかの保護を提供したことを示唆する知見である。
【0102】
インビトロタンパク質合成阻害分析
11E10エピトープがStx2活性部位の切れ目の周りの表面ループから成っているようであるという我々の知見から、11E10はタンパク質合成を阻害する毒素の能力をブロックすることによってStx2を中和するという仮説を立てた。したがって、我々は、ルシフェラーゼmRNAを添加したウサギ網状赤血球タンパク質合成分析で、11E10モノクローナル抗体がStx2のリボソーム不活化作用を中和できるかどうかを評価した。ルシフェラーゼ・レポータータンパク質からのシグナルを、毒素を添加しなかった時に測定されたシグナルと比較して約60%減少させた毒素の濃度が選択された(図5)。分析への11E10の添加によって、Stx2が存在する場合でもウサギ網状赤血球溶解物中でタンパク質合成を起こすことができたが、アイソタイプ適合の無関係な抗体では起こらなかった(図5)。
【0103】
モノクローナル抗体11E10は、Vero細胞中のStx2の全体的分布を変化させる
インビトロタンパク質合成分析で、モノクローナル抗体11E10は、Stx2によるタンパク質合成阻害を防止することがわかったが、我々はさらに、11E10はStx2が中毒Vero細胞の細胞質中のリボソームに達するのを妨げるかもしれないという仮説を立てた。従って、我々は、モノクローナル抗体11E10が標的細胞中のStx2局在を変化させるかどうかを判断しようとした。(11E10結合Stx2はVero細胞に結合でき、11E10はVero細胞に結合したStx2に付着できることを我々は以前見出した(データ非表示))。Stx2を11E10またはPBSと混合して、抗体/毒素またはPBS/毒素混合物をVero細胞と共に培養した。次に、ウサギポリクローナル抗体抗Stx2およびフルオロフォア標識抗ウサギIgG二次抗体で、標的細胞中のStx2の分布を可視化した(図6)。Stx2は、11E10が存在しない場合は細胞質全体に渡って分布されているように見える(図6A)が、11E10の存在下では大部分が核周囲体に集中したままに見える(図6B)。毒素/11E10混合物と共に培養した細胞を抗マウスIgGで染色した時、11E10はStx2と同じ核周囲点状構造で観察された(図 6C)11E10モノクローナル抗体は、毒素が存在しない場合には細胞に入ることができなかった(図6D)。核の周りの点状体内の11E10結合Stx2の局在は、抗体毒素複合体は細胞に入ったが細胞質へは入らなかったことを示唆した。従って我々は、中毒細胞を早期エンドソームマーカー・モノクローナル抗体EEA-1で免疫染色することによって、Stx2または11E10結合Stx2は早期エンドソーム内で局在化しているかを確かめた。染色パターンを重ねた時に橙黄色で示されるように、11E10結合Stx2で中毒させた細胞のStx2の多くは、早期エンドソームマーカーと共局在化した(図6E〜G)。対照的に、Vero細胞をStx2飲みと培養した場合は、毒素は細胞質全体に渡って見られ、少量のみが早期エンドソームマーカーと共局在化した(図6H〜J)。
【0104】
考察
結果から、11E10モノクローナル抗体エピトープは立体配座であり、結晶構造の毒素の活性部位に近いと思われるStx2 Aサブユニットの3つの非直線領域を含むことが示される(図2C)。11E10エピトープを特定する我々の戦略には、キメラStx1/Stx2毒素の産生を含み、これは、Stx2配列をStx1骨格に配置することにより抗体エピトープの三次元三次構造が維持され、11E10モノクローナル抗体による認識が可能になるという仮説に基づいていた。ウェスタン分析で11E10による認識を可能にしたStxA2の最小領域は、8つのStx2アミノ酸(42NHTPPGSY49) (配列番号:1)からのみ構成されることを我々は見出した。しかし、Stx2(領域A)からのこれらの8つのアミノ酸のみを持つキメラStx1/Stx2は、11E10モノクローナル抗体によって中和されなかった。11E10はStx2を中和するので、我々が特定した8つのアミノ酸は11E10エピトープの必須領域から成るものの、完全な中和エピトープを含まないと考えた。我々はさらに、Stx1 とStx2のアミノ酸配列および結晶構造両方における相違を分析し、11E10の認識および中和に関与している可能性のあるStx2上の追加的領域を特定しようとした。これらの比較を通して、11E10エピトープに寄与する可能性のあるStx2のセグメントの2つ以上を特定した。実際に、これらの領域がStx1上の対応セグメントを置換するために使用される場合、11E10による最も完全な認識および中和のためには、3つの領域すべてが必要であることを我々は見出した。
【0105】
モノクローナル抗体は、ウェスタンブロットの推定上の変性状態下でStx2を認識するので、完全11E10中和エピトープはStx2上の3つの非連続領域を含むという我々の結論はおそらく驚きであろう。この後者の観察に対するいくつかの説明が考えられる。これらには、ウェスタン反応が主に11E10と領域A(42NHTPPGSY49)の相互作用による、または別の研究(Smithraら (2006) Infect. Immun. 74:6992-6998)でモノクローナル抗体13C4に対して観察されたように、Aサブユニットの部分的な再折り畳みがウェスタンブロットプロセスの間に起こる、というものが含まれる可能性がある。
【0106】
Stx2上の11E10モノクローナル抗体中和エピトープを形成する3つの表面ループの配列は、Stx2変異体の中に保存されている。ヒト分離物ではめったに見られない2つの毒素である、Stx2d およびStx2eのこれらの領域中で異なるアミノ酸が2、3ある(Melton-Celsa ら (2005), 上記)。しかし、11E10モノクローナル抗体は、Stx2およびこのレポートで分析されたStx2変異体のすべて(Stx2c、Stx2d、Stx2dact、およびStx2e)の細胞毒性活性を検出し、これを部分的に中和した。Vero細胞上Stx2eは11E10によって中和されるが、ウェスタン形式ではStx2と比べてあまり認識されないという知見は、Stx2 と Stx2eの間で異なる領域Bの配列は、中和に対するよりもウェスタンブロットでの認識にとってより重要であるということを示す可能性がある。しかし、11E10がこれらの変異毒素のすべてを中和する能力を持つという事実は、これがヒトにおいてStx2 およびStx2関連毒素で媒介される疾患を治療するための良い候補である可能性を示唆する。実際、疾患の毒血症(Stx2)モデル(Sauterら (2008) Infect. Immun. 76:4469-4478)およびStx2dactを産生する株の疾患の経口給餌マウスモデル(Edwardsら, 上記)で、11E10は保護的であることを我々は見出した。我々は現在、11E10、cαStx2のヒト化バージョンの進行中の実験室評価に関与しており、これの第 I 相安全性試験が完了している(Dowling ら, 上記)。
【0107】
我々は、11E10エピトープを含むStx2からの29のアミノ酸のみを含むトキソイド化キメラ Stx1分子で免疫することにより、Stx2抗原投与からマウスを守ろうとした。免疫マウスはStx1に対する保護反応を起こしたが、Stx2中和抗体を産生したマウスはわずかであり、これらの力価は低かった。Stx2に対する反応は、キメラトキソイドのさらなる追加免疫で改善された可能性がある。
【0108】
11E10はインビトロでStx2の酵素活性をプロックし、これは毒素活性部位に11E10エピトープが近接していることに基づいて我々が予測した事実である。さらに、11E10が細胞内の毒素の全体的分布を変化させたことも観察され、この知見は異なるStxA2モノクローナル抗体(5C12)によるStx2中和でのデータ(Krautz-Petersonら ( (2008) Infect. Immun. 76:1931-1939)により報告)に類似している。これらの研究者は、モノクローナル抗体5C12がStxA2に結合すると、毒素の細胞内輸送パターンを変化させると結論付けた(Krautz-Peterson ら, 上記)。我々のデータは、一旦11E10/Stx2複合体が宿主細胞に結合してこの中に入ると、抗体は、細胞質ゾルの標的リボソームへの毒素の輸送を妨げる可能性があることを示している。しかし、11E10がインビトロで毒素の酵素機能を妨げることが示されたので、11E10と複合されたStx2のAサブユニットが細胞質ゾル中のその酵素標的に達した場合、毒素は細胞を殺すことができないであろうと我々は予測した。
【0109】
他の実施態様
記述された本発明の方法および組成物のさまざまな変更およびバリエーションは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者にとっては明らかである。本発明は、特定の望ましい実施態様に関連して記述されているが、当然のことながら、請求されている本発明はこのような特定の実施態様に不当に制限されるべきではない。
【0110】
この明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、それぞれの個別の刊行物が参照により具体的かつ個別に組み込まれるのと同じ程度に、参照によって本書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
一般的に、本発明は志賀毒素関連疾患の治療および予防の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
米国では、志賀毒素(Stx)産生性大腸菌(STEC)は、年間約110,000件の感染の主な原因となっている。腸管出血性大腸菌(EHEC)(中でも注目すべきは血清型O157:H7)は、Stx介在疾患を生じることが注目されているSTECのサブセットである。Stx産生微生物での感染から生じる可能性のある合併症は溶血性尿毒症症候群(HUS)であり、これは溶血性貧血、血栓性血小板減少症、および腎不全を特徴とする。HUS患者の死亡率は約5〜10%であり、生存者は永続的な腎障害を患うことがある。現在、Stx介在疾患による病気に対抗する、もしくはこれを予防するFDA承認治療またはワクチンはないが、いくつかの有望な将来的オプションには、Stx2に結合して中和するヒト化モノクローナル抗体および中和応答を引き起こしてStx1もしくはStx2またはStx1およびStx2の致命的攻撃に対して保護をもたらすキメラStxA2/StxB1トキソイドを含む。
【0003】
基本的にStxsにはStx/Stx1とStx2の2つの主なタイプがある 。Stxはシゲラ・ディゼンテリエタイプ1から産生されるが、Stx1およびStx2は大腸菌から産生される。Stx およびStx1は実質的に同一であり、Aサブユニットの1つのアミノ酸のみが異なる。Stx1およびStx2の成熟したAおよびBサブユニットはそれぞれ68%および73%の類似性を有する。アミノ酸配列の差異にもかかわらず、Stx およびStx2の結晶構造は酷似している(図1)。これらの毒素はポリクローナル抗血清によって区別することができ、Stx1に対して生じたポリクローナル抗血清はStx2を中和せず、その反対もしかりである。Stx1およびStx2の変異体が存在し、これにはStx1c、Stx1d、Stx2c、Stx2d、Stx2d活性化可能 (Stx2-act.)、Stx2eおよびStx2fが含まれる。
【0004】
志賀毒素はAB5構造を持つ複合ホロトキシンである。活性領域(A)は60Sリボソーム・サブユニットの28S rRNAを脱プリン化するN-グリコシダーゼを含み、タンパク質合成を停止し、最終的には細胞死をもたらす。Aサブユニットは約32 kDaであり、トリプシンまたはフリンによってタンパク質分解切断されて、単一のジスルフィド゛結合で結合されている約28 kDa A1サブユニットと約5 kDa A2ペプチドになる。A1サブユニットは活性領域を含み、A2ペプチドは活性領域を結合(B)領域に非共有結合性につないでいる。(B)領域は、A2ペプチド・トラバースのC末端を介して五量体を形成する同一の5つの約7.7 kDaモノマーから成る。各Bサブユニットモノマーは、各モノマー内にジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を持つ。B5量体は真核生物受容体グロボトリアオシルセラミド(Gb3)(またはStx2eの場合はGb4)に結合する。
【0005】
これらの毒素への暴露の結果は知られているものの、現在、Stx介在疾患に対する既知の治療法またはワクチンはない。抗生物質を使用すると、細菌からの毒素の放出を増加させることにより、状況を悪化させる場合がある。従って、志賀毒素により生じるEHEC感染の合併症を予防または治療するための化合物に対するニーズが存在する。このような化合物は、感染患者を治療し、CNS、血液および腎臓への毒素の全身的作用を減少させるために使用し得る。さらに、毒素を中和できる場合は、GI管内の細菌を殺すために抗生物質を安全に投与できる。STEC感染に対する抗生物質治療は、抗生物質が毒素遺伝子を持つファージを誘導することにより毒素の産生を増加させる可能性があるために禁忌となっている。このような化合物は、暴露したまたは高リスクの人がEHEC感染を起こす前に治療することによって、感染の合併症を予防するために使用することもできる。このような人には、EHEC下痢の症例が特定されているデイケアの子どもまたは養護ホームの高齢者が含まれる。これらの人々はEHEC感染発症のリスクが高く、しばしば重症の合併症を伴うため、これらの環境でのEHECの拡散は珍しくない。
【発明の概要】
【0006】
モノクローナル抗体11E10はStx2のAサブユニットを認識し、その細胞毒性を中和する。StxA1とStxA2の間のアミノ酸(aa)配列類似性は68%であるにもかかわらず、11E10モノクローナル抗体はStxA1には結合しない。11E10エピトープは、StxA2モノマー上の3つの領域にわたる不連続または立体構造エピトープを含むことを我々は発見した。aa 42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)および244〜259 (配列番号:3)を含む非類似の3領域は、Stx2 A サブユニットの結晶構造上に互いに近接して位置することがわかった。このように、11E10エピトープは、配列番号:1、2および3に示される配列セットの少なくとも1つ 、2つまたは3つすべてを含むことを我々は発見した。
【0007】
従って、本発明は、完全長Stx2でない配列番号:1、2および3に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つを含むポリペプチドを特徴とする。ポリペプチドは配列番号:1に示されるアミノ酸配列を少なくとも含む。望ましくは、ポリペプチドは配列番号:1および2、またはより望ましくは、配列番号:1、2、および3に示されるアミノ酸配列を含む。1つの実施態様では、配列番号:1、2、および3に示される配列の1つまたはそれ以上が、非Stx2タンパク質骨格に挿入されている。特定の実施態様では、タンパク質骨格は、Stx1またはその断片と実質的に同一(例えば、少なくとも90%、 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一)のタンパク質である。1つの実施態様では、タンパク質骨格は、1つ以上の保存的点突然変異を持つStx1、Stx、またはStx1である。別の実施態様では、本発明のポリペプチドには、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む。また別の実施態様では、ポリペプチドは、 配列番号:1、2、または3、配列番号:1および2、または配列番号:1、2、および3、例えば、ポリペプチド配列のアミノ酸29〜297、アミノ酸1〜158、またはアミノ酸29〜128を含むStx2の断片であって、完全長Stx2ではない断片を含んでいてもよい。一部の実施態様では、断片は例えばStx またはStx1などのタンパク質骨格に挿入されている。
【0008】
本発明は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列の断片と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドも特徴とする。1つの実施態様では、断片は、配列番号:8のアミノ酸64〜122と少なくとも80%, 85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一の配列を含み、さらに配列番号:1に示されるアミノ酸配列を少なくとも含む。好ましくは、断片はさらに、 配列番号:2 または配列番号:2 および3に示されるアミノ酸配列を含む。断片は、例えば20、40、59、60、150、200、219、236、250、300、または314個のアミノ酸の長さである。特定の実施態様では、ポリペプチドはトキソイド化されている。上記に列挙されたすべてのポリペプチドは「本発明のポリペプチド」という用語に含まれる。
【0009】
本発明はまた、核酸分子も含み、これには核酸がベクターの発現構造物に関連している場合およびこのベクターが宿主細胞に挿入されており、本発明の任意のポリペプチドをコードしている場合を含む。
【0010】
関連態様では、本発明は、本発明の任意の1つのポリペプチドを使用してStx2に対する免疫反応を刺激する組成物を特徴とする。望ましくは、ポリペプチドは 配列番号:1および2、より望ましくは、1、2、および3に示される配列を含む。これらの実施態様のいずれにおいても、組成物はさらにアジュバントを含み得る。特定の実施態様では、組成物はStx1に対する免疫反応を刺激しない。
【0011】
本発明はまた、本発明の任意のポリペプチド(例えば、配列番号:1、2、または3の少なくとも1つ、2つまたは3つすべてで示されるアミノ酸が挿入されているStx1などのタンパク質骨格)の使用も特徴とする。このようなペプチドは、溶血性尿毒症症候群および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連する疾患を含む、志賀毒素関連疾患に対する免疫化または治療に有用な可能性がある。1つの実施態様では、ペプチドは、配列番号:8に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも75%, 80%, 85%, 90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%, または100%の配列同一性を持つ。別の態様では、本発明は、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体)またはその断片の製造方法を特徴とする。このような抗体または断片はStx2に特異的に結合するがStx1には結合しない。この方法には、 配列番号:1、2および3に示される配列の少なくとも1つ、2つまたは3つを含むStx2の断片(すなわち、完全長Stx2ではない)を含むポリペプチドであって、完全長Stx2を含まないポリペプチドで哺乳類動物に免疫化することを含む。好ましくは、方法は、配列番号:1で示される配列、より好ましくは配列番号:1および2で示される配列、さらに好ましくは配列番号:1、2、および3で示される配列を少なくとも含むポリペプチドの使用を含む。1つの実施態様では、ペプチドは配列番号:1、2、および3で示されるアミノ酸配列の1つ以上が挿入されているタンパク質骨格、例えばStx1と実質的に同一のタンパク質を含む。方法は、例えば本明細書に記述されるように、ポリペプチドが完全長Stx2を含まない11E10エピトープを含むポリペプチドでの哺乳動物の免疫化を含んでいてもよい。1つの実施態様では、哺乳動物は、 配列番号:8で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドで免疫される。上記の方法で産生される抗Stx2抗体は、例えばインビトロ中和分析を含む当技術分野で知られているまたは本明細書に記載の標準方法を使ってスクリーニングし、Stx2に特異的に結合しStx1には結合しない抗体を特定するすることができる。免疫原性ポリペプチドとこのポリペプチドの製造方法は、このペプチドをコードする核酸分子(この核酸がベクターの発現構造に連結されており、このベクターが宿主細胞に挿入されている場合を含む)と共に、本発明の関連態様に含まれる。
【0012】
本発明はまた、抗体またはその断片がStx2に特異的に結合し、Stx1にはしない、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体またはその断片も特徴とする。本発明の好ましい抗体は、 望ましくは配列番号:1を少なくとも含み、さらに望ましくは配列番号:1および2を少なくとも含み、最も望ましくは配列番号:1、2、および3を含む、配列番号:1、2、および3に示される少なくとも1つ、2つまたは3つの配列すべてを含むエピトープに結合する。抗体エピトープは、アミノ酸配列がタンパク質骨格の立体構造に基づいて近接している立体構造エピトープであることができ、例えば本明細書に記述のキメラタンパク質のように、 配列番号:1、2、および3に示されるStx2配列の1つ以上が、Stx1と実質的に同一のタンパク質骨格に挿入されている。抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD、IgA、Fab、Fv、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、または抗体断片であることができ、本明細書に記述の方法で作ることができる。抗体は、100 nM、50 nM、10 nM、1 nM、100 pM、10 pM未満、または1 pM未満のKdでStx2に好ましくは結合する。1つの例では、本発明の抗体は、11E10抗体のStx2への結合または11E10エピトープを含むキメラタンパク質への結合を阻害し、Kd値が100 nM〜1 pMの間の阻害を含む。本発明の抗体は、Stx2の真核性受容体グロボトリアオシルセラミド(Gb3)への結合を阻害することがある。本発明の抗Stx2抗体は、以下の抗体のマウス、ヒト化、またはキメラ形態のすべてを具体的に除外する:11E10、TMA-15、VTM1.1、5C12(5C12ヒトモノクローナル抗体およびr5C12を含む)、6G3、5H8、11F11、11G10、2E1、10E10、IG3、2F10、3E9、4H9、5A4、5F3、5C11、1A4、1A5、BC5 BB12、DC1
【0013】
EH5、EA5 BA3、ED5 DF3、GB6、BA4、およびcαStx2抗体。本発明はさらに、本発明の任意の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、本発明の任意の抗Stx2抗体を使って、生体試料(例えば、組織、細胞、細胞抽出物、体液、および生検標本)中のStx2を検出する方法を特徴とする。本発明の検出方法には、ELISA、RIA、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、およびフローサイトメトリーを含むがこれに限定されない。本発明には、試料中のStx2の特定に基づく、志賀毒素関連疾患の診断を含む。本発明はまた、志賀毒素関連疾患の検出用免疫検査キットも特徴とし、キットには本発明の抗体、および抗体と試料中に存在するStx2との間の相互作用を検出するための手段を含む。
【0015】
本発明のまた別の態様では、本明細書で提供された、または任意の前述の方法で産生された抗体を使って、志賀毒素関連疾患を治療する方法を特徴とする。志賀毒素関連疾患の例には、溶血性尿毒症症候群(HUS)および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連した疾患を含む。これらの抗体は、他の志賀毒素関連タンパク質(例えばStx1)に特異的に結合する抗体を含むがこれに限定されない他の治療薬と併用して投与され得る。
【0016】
「11E10 エピトープ」とは、直線構造または三次元構造のどちらかの結果として、11E10抗体の結合部分を形成するアミノ酸の配列を意味する。 この用語は、配列番号:1、2、および3に示される配列の1つ、2つ、または3つ(例えば配列番号:1および2 または 配列番号:1、2、および3)と同一または実質的に同一な配列を含む任意の非完全長Stx2タンパク質を含み得る。望ましい実施態様では、 11E10エピトープは配列番号:1 および2 または 1、2および3を含む。11E10エピトープを含むタンパク質の一例は、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸配列を含むタンパク質である。
【0017】
「Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する抗体」または「11E10エピトープ特異抗体」という用語は、11E10エピトープを含むタンパク質に、100 nM〜1 pMの間のKd値で結合する抗体を意味する。このような抗体はまた、Stx1タンパク質に対して検出できる結合がほとんどまたは全くない(例えば、Stx1に対して100 nM、200 nM、500 nM、1 μM、10 μM、100 μM、1 mMより大きいまたはそれ以上のKd値を持つ)ことによっても特徴付けられる。
【0018】
抗体親和性は 当技術分野で知られている任意の分析を使って決定でき、これには表面プラズモン共鳴ベース分析、酵素免疫吸着法(ELISA)、および競合アッセイ(例えば、RIA)を含むがこれに限定されない。 また、本明細書に記述されるように、抗体はインビトロ中和分析に供してもよい。11E10エピトープに特異的に結合する抗体は、Stx2の細胞毒性効果を、本明細書に記載または当技術分野で知られている分析を使用して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、またはそれ以上中和することがある。この用語は以下の抗Stx2抗体の以下のマウス、ヒト化またはヒト形態を具体的に除外する:11E10, TMA-15, VTM1.1, 5C12(5C12ヒトモノクローナル抗体およびr5C12 (AkiyoshiおよびTzipori (2005) Infect. Immun. 73:4054-4061を含む), 6G3, 5H8, 11F11, 11G10, 2E1, 10E10 (Pereraら (1988) J. Clin. Microbiol. 26:2127-2131), IG3, 2F10, 3E9, 4H9, 5A4, 5F3, 5C11, 1A4, 1A5 (Maら (2008) Immunol. Lett. 121:110-115 (2008), BC5 BB12, DC1 EH5, EA5 BA3, ED5 DF3, GB6, BA4 (Downesら (1988) Infect. Immun. 56:1926-1933), cαStx2 抗体, Smithら ((2006) Vaccine 24:4122-4129)に記述の抗体, Donohue-Rolfeら ((1999) Infect Immun. 67:3645-364)に記述の抗体, およびSheoranら ((2003) Infect Immun. 71:3125-3130)に記述の抗体。
【0019】
「阻害結合」とは、1つのタンパク質の別のタンパク質への結合を、例えば本明細書に記述のウェスタンブロットまたは当技術分野で知られているELISAもしくはGb3受容体結合アッセイで測定した場合、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれ以上減少させることを意味する。「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、 二重特異性抗体)、または抗体断片を含むが、これらの分子が望ましい生物活性(例えば、本明細書に記述のStx2毒素の中和)を持つことを条件とする。
【0020】
本明細書で使用される場合、「精製された」または「単離された」とは、その天然環境の成分から特定および分離され、および/または回収されたタンパク質を指す。天然環境の混入物成分は、一般にタンパク質の診断または治療での使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。
【0021】
「トキソイド化」とは、例えば、突然変異、抱合、または架橋などにより、抗原性を維持しながら細胞毒性を減少させるように変化させることを意味する。Stx2のトキソイド化型には、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド処理Stx2およびY77S変異を持つStx2を含む。トキソイド化Stxタンパク質の他の限定されない例には、Y77SおよびE167Q変異を持つStx2(Wenら (2006) Vaccine 24: 1142-1148)、E167Dおよび6ヒスチジンタグを持つStx2 (Robinsonら (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 103:9667-9672)、Y77S、E167Q、およびR170L変異を持つStxA2/StxB1トキソイド(Smithら Vaccine 24:4122-4129 (2006))がある。他の例はGordonら ((1992) Infect. Immunol. 60(2):485-490)に記述されている。
【0022】
「非完全長Stx2」とは、完全長Stx2ポリペプチドのアミノ酸を90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%未満、またはそれ以下含むタンパク質を意味する。非完全長Stx2の例には、配列番号:4-8に示されるアミノ酸配列を含むがこれに限定されない。他の例には、Stx2のアミノ酸29〜297、1〜158または29〜128を含むまたはそれから成るポリペプチドを含み、例えば、図1Aに提供したキメラポリペプチドを含む。野生株Stx1、Stx2またはこの願書に記述されているキメラ毒素のAサブユニットはすべて、除去された22アミノ酸リーダー配列を持ち、このため成熟Aサブユニットタンパク質を産生する。
【0023】
この明細書の目的では、「完全長Stx2」という用語およびStx2断片のアミノ酸番号は、完全長成熟StxA2サブユニットを指す。この成熟Aサブユニットは、その後トリプシンまたはフリンによって非対称的に切断されて、A1断片(N-末端 約248のアミノ酸)とA2ペプチド(C-末端 約50 aa)になる。天然またはキメラ形態のAサブユニットは、通常ホロ毒素との関連で存在するが、単独で発現され(例えば、Bサブユニットなし)、Aサブユニットまたはその断片は11E10エピトープに対する免疫反応を引き起こし得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「タンパク質骨格」または「骨格」という用語は、例えば配列番号:1、2、または3に示されるStx2アミノ酸配列などの異種タンパク質の1つ以上のアミノ酸配列に挿入されたタンパク質構造を指す。好ましくは、タンパク質骨格の三次元構造は既知であり、異種タンパク質の断片は、例えば表面露出ループ位またはタンパク質骨格と異種タンパク質の間の構造相同領域などの戦略的位置に挿入されている。Stx2の断片の挿入は、タンパク質骨格の特定の配列(例えば、挿入される配列と構造が相同の配列)の選択的削除によって達成され得る。この例では、タンパク質骨格の非削除配列は、例えばStx1などの別のタンパク質に対する配列同一性パーセントの決定に使用され得る。タンパク質骨格として使用されている典型的タンパク質は、Stx またはStx1(本明細書に記述)、緑色蛍光タンパク質(Abedi ら (1998) Nucleic Acids Res. 26:623-630)、および細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)(Huftonら (2000) FEBS lett. 475:225-231)である。タンパク質骨格は、例えばFLAGエピトープまたはグルタチオンSトランスフェラーゼなど、その末端に異種タンパク質配列が結合されているタンパク質タグを具体的に除外する。
【0025】
「実質的に同一」とは、例えば以下に記述される方法を使って最適に配列された場合、第二の核酸またはアミノ酸配列(例えばStx2、Stx1、または配列番号:8に示されるもののようなキメラタンパク質)と、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を持つ核酸またはアミノ酸を意味する。「実質的同一性」は、完全長配列、エピトープまたは免疫原性ペプチド、機能領域、暗号および/または調節配列、エクソン、イントロン、プロモーター、およびゲノム配列などのさまざまなタイプおよび長さの配列を指すために使用される。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の同一性パーセントは、例えば、Smith Waterman Alignment (Smith, T. F. およびM. S. Waterman (1981) J. Mol. Biol. 147:195-7);GeneMatcher Plus(商標)(SchwarzおよびDayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhoff, M.O., Ed pp 353-358)に組み込まれた "Best Fit" (Smith およびWaterman (1981) Advances in Applied Mathematics, 482-489); BLAST プログラム (Basic Local Alignment Search Tool (Altschul, S. F., W. Gishら (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10), BLAST-2, BLAST-P, BLAST-N, BLAST-X, WU-BLAST-2, ALIGN, ALIGN-2, CLUSTAL, またはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使って、当技術分野のさまざまな方法で決定される。さらに、当業者であれば、比較される配列の長さにわたって最高の整列を達成するために必要なアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。一般的に、タンパク質では、比較配列の長さは少なくとも5つのアミノ酸、好ましくは、10、25、50、100、150、200、300、または315のアミノ酸またはそれ以上最大でタンパク質の全長であり得る。核酸では、比較配列の長さは、一般的に少なくとも15、75、150、300、450、600、900、または945ヌクレオチドまたはそれ以上最大で核酸分子の全長であり得る。当然のことながら、DNA配列をRNA配列と比較して配列同一性を決定する目的では、チミンヌクレオチドはウラシルヌクレオチドと同等である。1つの実施態様では、タンパク質(例えば、志賀毒素タンパク質の成熟Aサブユニット)の配列同一性は、配列番号:8の断片の長さ(例えば、配列番号:8のアミノ酸64〜122または64〜282)にわたって測定できる。アミノ酸配列では、保存的置換は一般的に以下の基の中での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0026】
「断片」とは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の100%未満、好ましくは少なくとも2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%を含むポリペプチドまたは核酸分子の一部を意味する。断片は例えば、10、15、75、150、300、450、600、900、または945個またはそれ以上のヌクレオチドまたは4、5、10、25、50、100、150、200、300、315個のアミノ酸またはそれ以上を含み得る。志賀毒素タイプ1または志賀毒素タイプ2タンパク質の断片には、完全長タンパク質未満の任意の部分(例えば長さが4、5、8、10、25、50、100、150、200、300、315、またはそれ以上のアミノ酸の断片)を含み得る。一例では、断片には配列番号:8のアミノ酸64〜122または64〜282を含む。
【0027】
「志賀毒素関連疾患」とは、志賀毒素を発現する病原体から生じる任意の疾患を意味する。「志賀毒素関連疾患」という用語は、溶血性尿毒症症候群、細菌性赤痢、および志賀毒素産生大腸菌およびシゲラ・ディゼンテリエ感染から生じる疾患を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】初期のハイブリッドStx1/Stx2 Aサブユニットを示す。Stx1は黒で、Stx2は白で表されている。キメラ毒素の名前はそれぞれのキメラタンパク質の左側に示され、Stx2の領域はキメラAサプユニットの下に示されている。
【図1B】ウサギ抗Stx1および抗Stx2ポリクローナル(上のパネル)またはモノクローナル11E10(下のパネル)でプローブされたStx1、Stx2および初期キメラ毒素のウェスタンブロット分析を示す。レーン1と2は、精製されたStx1またはStx2をそれぞれ25 ng含む。レーン3〜8は以下のキメラ毒を含む:レーン3, Stx1(2A29〜297); レーン4, Stx1(2A1〜158); レーン5, Stx1(2A29〜128); レーン6, Stx1(2A29〜76); レーン7, Stx1(2A42-76); レーン8, Stx1(2A42〜49)。
【図1C】11E10モノクローナル抗体による初期キメラ毒素の中和パーセントを示す。中和データは、完全長Stx2の中和%が100%(実際の中和%= 65%)に設定され、残りの毒素の中和レベルは正規化完全長Stx2中和のパーセントとして与えられるように正規化された。誤差バーは、正規化値の標準誤差を表す。
【図2A】11E10モノクローナル抗体エピトープを含む3つの領域内のStxA1およびStxA2のアミノ酸アラインメントを示す。黒およびグレーのアミノ酸は、保存および非保存アミノ酸をそれぞれ示し、点は同一の残基を表す。11E10モノクローナル抗体エピトープの3つの領域は以下の通りである:領域A(StxA2残基42〜49)、領域B(StxA2残基96-100)、領域C(StxA2残基244-259)。アラインメントに示されるアミノ酸の番号は、StxA1成熟タンパク質に関する。StxA1は、位置185に余分なアミノ酸を持ち、この追加のために、領域CではStxA2のエピトープがStx1の対応する領域とは番号が1つ異なる。
【図2B】11E10モノクローナル抗体エピトープの3つの領域を除いて、Stx2 A1 およびBサブユニットをライトグレーで示したStx2結晶構造のリボン図形を示す。領域A(緑)、B(青)、およびC(青緑)は、それぞれ黒、グレー、および白の矢印で示されている。A2ペプチドは黒で示されており、活性部位(赤)は星印でマークされている。
【図2C】Stx2結晶構造の空間充填表現を示す。領域A、BおよびCは矢印で示されている。
【図3A】キメラAサブユニットを含む第二世代キメラ毒素を図示している。Stx1は黒で表され、Stx2は白で示されている。キメラ毒素の名前はそれぞれのキメラタンパク質の左側に示され、Stx2の領域はキメラAサプユニットの下に示されている。領域A、BおよびCは、それぞれ、StxA2のアミノ酸42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)、244〜259 (配列番号:3)を指す。
【図3B】ウサギ抗Stx1(上のパネル)または11E10モノクローナル抗体(下のパネル)でプローブされたStx1、Stx2および5つの第二世代キメラ毒素ウェスタンブロット分析を示す。レーン1は25 ngの精製Stx2を含む。レーン2〜6は以下のキメラ毒素を含む:レーン2, Stx1 +A; レーン3, Stx1 +AB; レーン4, Stx1 +AC; レーン5, Stx1 +BC; レーン6, Stx1 +ABC。
【図3C】11E10モノクローナル抗体による第二世代ハイブリッド毒素の中和を示す。Stx2中和のレベルは、図1Cに見られるように100%に正規化された。誤差バーは正規化値の標準誤差を表す。
【図4A】11E10モノクローナル抗体でのStx2およびStx2変異体のウェスタンブロット分析示す。レーン1は25 ngの精製Stx2を含む。レーン2〜5は以下の毒素を含む: レーン2, Stx2c; レーン3, Stx2d; レーン4, Stx2dact; lane 5, Stx2e。ウェスタンブロットは、ウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体(上のパネル)またはモノクローナル抗体11E10(下のパネル)のどちらかでプローブした。
【図4B】Stx2変異体の11E10による中和パーセントを示す。Stx2中和のレベルは、図1Cに見られるように100%に正規化された。誤差バーは正規化値の標準誤差を表す。
【図5】ウサギ網状赤血球溶血液中のルシフェラーゼmRNAの翻訳によって測定されたタンパク質合成阻害を示す。精製Stx2の0.2 ngアリコートを0、0.2、または2 ngの11E10と混合して網状赤血球溶血液に加えた。タンパク質合成阻害は、ルシフェラーゼmRNAの翻訳の減少で示され、ルシフェリン基質に毒素処理溶血液を加えた後に生物発光で測定した。陰性対照として、アイソタイプ適合の無関係な抗体13C4の2 ng試料と2 ng Stx2を混合した。誤差バーは、平均比の標準誤差から計算された95%信頼区間を表す。スチューデント両側t検定から得られた確率値は、抗体がある場合とない場合の試料の間で、生物発光シグナルに有意な差異を示した(p < 0.005)。
【図6】モノクローナル抗体11E10がVero細胞中のStx2の全体的細胞分布を変化させることを示す。Stx2をPBS (A、H〜J) または11E10 (B、CおよびE〜G)と混合し、その後Vero細胞に6h加えた。対照として、Stx2のない状態で11E10 をVero細胞に加えた(D)。毒素は、Stx2に対するポリクローナル抗体に続いてAlexaFluor 488(AおよびB)と抱合された二次抗体で検出し、11E10はAlexaFluor 488(CおよびD)と抱合された抗マウスIgGで検出した。早期エンドソームマーカーEEA1でのStx2共局在化は、中毒性細胞の二重標識によって評価した。抗体11E10が存在する場合(パネルE)および不在の場合(パネルH)のStx2分布は、抗Stx2モノクローナル11F11および緑色蛍光二次抗体で可視化した。エンドソームマーカーEEA1の分布は、ヤギ抗EEA1および蛍光二次抗体(パネルFおよびI)で可視化した。これらの染色パターンを重ね合わせて(パネルGおよびJ)、エンドソームでの毒素の共局在化は橙黄色で示され、矢印で示されている。
【図7】Stx2 領域A (配列番号:1) (図7A)、Stx2 領域B (配列番号:2) (図7B)、Stx2 領域C (配列番号:3) (図7C)、およびStx2e 領域 B (配列番号:19) (図7D)のアミノ酸配列を示す。
【図8】(A)Stx1+Aキメラのアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 A領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(B)Stx1+ABキメラのアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 AおよびB領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(C)Stx1+ACキメラのアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 AおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(D)Stx1+BCキメラのアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 BおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(E)Stx1+ABCキメラのアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示され、Stx2 A、BおよびC領域は太字のアンダーラインで示されている。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。
【図9】(A)StxAl開始コドンで始まりStxBl終止コドンで終わる、StxlオペロンのDNA配列 (配列番号:9) を示す。(B)StxAl開始コドンで始まりStxAl終止コドンで終わる、StxAlのDNA配列 (配列番号:10) を示す。(C)StxBl開始コドンで始まりStxBl終止コドンで終わる、StxBlのDNA配列 (配列番号:11) を示す。
【図10】(A)StxAlのアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸315個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸293個の長さである。(B)StxBlのアミノ酸配列(配列番号:13)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸89個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸69個の長さである。
【図11】(A)StxA2開始コドンで始まりStxB2終止コドンで終わる、Stx2オペロンのDNA配列 (配列番号:14) を示す。(B)StxA2開始コドンで始まりStxA2終止コドンで終わる、StxA2のDNA配列 (配列番号:15) を示す。(C)StxB2開始コドンで始まりStxB2終止コドンで終わる、StxB2のDNA配列 (配列番号:16) を示す。
【図12】(A)StxA2のアミノ酸配列(配列番号:17)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸319個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸297個の長さである。(B)StxB2のアミノ酸配列(配列番号:18)を示す。処理されたリーダー配列はアンダーラインで示される。未処理のタンパク質はアミノ酸89個の長さで、成熟タンパク質はアミノ酸70個の長さである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
一般的に、本発明は、Stx2タンパク質の11E10エピトープの発見に関連した組成物および方法を特徴とする。11E10エピトープは、配列番号:1、2および3に示される配列セットの少なくとも1つ 、2つまたは3つを含むことを我々は発見した。本発明の組成物および方法は、志賀毒素関連疾患の検出、治療、または予防に有用であり得る。例えば、志賀毒素関連疾患(例えば溶血性尿毒症症候群および大腸菌とシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連する疾患)を持つ、または発症のリスクがある被験者を、11E10エピトープを含むペプチドで、またはStx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗体で治療できる。
【0030】
I. 適応
志賀毒素関連疾患には、志賀毒素産生シゲラ・デォゼンテリエまたは腸管出血性大腸菌(EHEC)(中でも注目すべきは血清型O157:H7)による感染から生じるものを含む。これらの感染は、溶血性貧血、血栓性血小板減少症、および腎不全によって特徴付けられる溶血性尿毒症症候群(HUS)をしばしば生じる。
【0031】
本発明の化合物および方法は、志賀毒素関連疾患を持つ、または発症のリスクのある被験者の治療に有用である。このような被験者にはデイケアの子どもまたは養護ホームの高齢者を含む。一例では、被験者は、EHEC下痢の症例が発見されたデイケアまたは養護ホームにいる。この例では、被験者はその疾患を発症している、またはしていない場合がある。本発明の方法および組成物は、EHECに感染した人の感染を治療するため、他の感染者を検出するため、およびデイケアまたは養護ホームでのEHECのまん延を防止するために使用され得る。
【0032】
II. 抗体
本発明には、志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープおよび抗体自体に特異的に結合する抗体の産生を含む。望ましくは、このような抗体は検出可能な程度にはStx1に結合しない。標的タンパク質を認識して特異的に結合する抗体の特有の能力は、志賀毒素産生大腸菌(STEC)に関連する疾患の診断と治療の両方に対する方法を提供する。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、マウスおよび他の哺乳類抗体、抗体断片、二重特異性抗体、抗体二量体または四量体、単鎖抗体(例えば、Fab、二重特異性抗体、およびFab'断片などのscFv'および抗原結合抗体断片)、抗体結合領域に基づく遺伝子組み換え結合領域、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化および完全ヒト抗体、領域欠失抗体、並びに検出可能マーカーで標識された、または毒素もしくは放射性核種と連結した抗体を含むがこれに限定されない抗体の産生を提供する。このような抗体は、当技術分野で知られている従来方法で産生される。1つの態様では、本発明は、Stx2の11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体または抗体断片の産生を含み、産生には、配列番号:1、2、または3に示される配列から選択された少なくとも1つ、2つ、または3つの配列を含むポリペプチドの使用を含む。 1つの例は配列番号:8に示されるタンパク質である。
【0033】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、抗原の注射に続いて適当な間隔でその後追加免疫することにより、ウサギまたは他の動物に免疫化することによって産生できる。動物を出血させ、通常ELISAで、精製タンパク質に対して血清を分析する。
【0034】
11E10エピトープに特異的に結合するポリクローナル抗体は、抗原およびアジュバントの皮下(sc)または腹腔内(ip)複数回注射によって、動物内で育てることができる。二官能性物質または誘導化剤(例えば、マレイミドベンゾイル・スルホスクシンイミド・エステル(システイン残基を介した抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基媒介)、グルタルアルデヒド、または無水コハク酸)を使って、11E10エピトープを含むペプチドを、免疫させる種で免疫原性のあるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロビン、または大豆トリプシン阻害剤)に抱合することが有用であろう。
【0035】
例えば、動物は、1 μg から1 mgのペプチドまたは抱合体(それぞれウサギまたはマウス)を3倍容積のフロイント完全アジュバントと混合し、溶液を複数部位に皮内注射することにより、11E10エピトープ、免疫原性抱合体、または誘導体に対して免疫化され得る。1ヶ月後、複数部位への皮下注射により、初期量の1/5 から1/10のフロイント完全アジュバント中のペプチドまたは抱合体で動物に追加免疫する。7〜14日後、動物を出血させ、抗原またはその断片に対する抗体力価について血清を分析する。力価が頭打ちになるまで動物に追加免疫する。好ましくは、動物は同じポリペプチドの抱合体で追加免疫されるが、異なるタンパク質へ、および/または異なる架橋試薬を介して抱合される。抱合体はまた、タンパク質融合として組み換え細胞培養で作ることもできる。また、免疫反応を促進するためにミョウバンなどの凝集剤が適切に使用される。
【0036】
キメラ、ヒト化、または完全ヒトポリクローナル抗体は、ヒト免疫グロビン遺伝子を遺伝子導入した動物で産生するか、または開始物質のために2つ以上のStx2反応性Bリンパ球を被験者から単離することによって産生し得る。
【0037】
ポリクローナル抗体はまた、モノクローナル抗体を提供するために、必要な場合は繰り返し精製および選択することもできる(たとえば、立体配座的に制限された抗原ペプチドに対する親和性を介して)。別の方法としてまたはこれに加えて、単一抗体をコードしている核酸をリンパ球からクローニングで取り出す方法が採用され得る。
【0038】
モノクローナル抗体
本発明の別の実施態様では、モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる(すなわち、集団を含む個別の抗体は、少量存在する可能性のある天然に存在する突然変異を除いて同一である)。従って、モノクローナルという用語は、別個の抗体の混合物としてではない抗体の特徴を示す。
【0039】
モノクローナル抗体は、免疫化されたマウスからの脾細胞を骨髄腫またはリンパ腫細胞などの連続的複製腫瘍細胞と融合することによるKohlerとMilsteinのハイブリドーマ法など、当技術分野で知られている方法で製造できる。(KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256: 495 - 497; Gulfre and Milstein (1981) Methods in Enzymology: Immunochemical Techniques 73: 1 - 46, LangoneおよびBanatis eds., Academic Press). ハイブリドーマ細胞は次に、限界希釈法によってクローニングされ、ELISA、RIA、またはバイオアッセイで抗体産生について上清分析をする。別の実施態様では、モノクローナル抗体は組み替えDNA法で作ってもよい。
【0040】
11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体(Mab)の産生では、培養において連続的な細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術が使用され得る。例えば、もともとKohler とMilsteinにより開発されたハイブリドーマ技術((1975) 上記、並びにKohlerおよびMilstein (1976) Eur J Immunol. 6: 511 - 519; Kohlerら(1976) Eur J Immunol. 6: 292 -295; Hammerlingら (1981): Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., pp. 563 - 681にも記述)、並びにヒトモノクローナル抗体を産生するためのトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら (1983) Immunol Today 4: 72 - 79)、およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら (1985) in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77 - 96)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。本発明のMab産生ハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養され得る。本発明の追加的実施態様では、モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている技術を使用して、無菌動物中で産生できる。
【0041】
一般的に、マウスまたは他の適切な宿主動物(ハムスターなど)は、11E10エピトープを含むポリペプチドで免疫され、免疫化に使用される抗原またはその断片に特異的に結合できる抗体を産生するまたは産生する能力のあるリンパ球を誘導する。または、リンパ球はインビトロで免疫化される。
【0042】
免疫化された宿主動物(例えばマウス)の脾細胞を抽出し、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使って適切な細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合してハイブリドーマ細胞を形成する(Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59 - 103, Academic Press)。本発明に従って、任意の適切な骨髄腫細胞株を用いることができるが、好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞で安定した高レベルの抗体産生を支持し、HAT培地などの培地に感受性のものである。これらのうち、好ましい骨髄腫細胞株は、MOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍から得られるもの(Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能)、およびSP-2細胞(American Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックビル)から入手可能)などのマウス骨髄腫株である。
【0043】
このように産生されたハイブリドーマ細胞は、未融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含む、適切な培地に播種して、増殖してもよい。このような選択および/またはハイブリドーマ細胞が維持される培地から得られたハイブリドーマ細胞は、その後分析されて、11E10エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体の産生が特定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロの結合分析(放射免疫測定(RIA)または酵素免疫吸着法(ELISA)など)によって、またはBiacore機器を使って測定される。例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munson とRodbardのスキャッチャード分析((1980) Anal Biochem. 107: 220 - 239)によって決定することができる。
【0044】
ハイブリドーマ細胞が望ましい特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生することを特定した後、クローンを限界希釈手順でサブクローニングし、標準方法(Goding, 上記)で増殖してもよい。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物中の腹水腫瘍としてインビボで増殖させてもよい。サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えばタンパク質Aセファロース、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどの従来的免疫グロブリン精製手順で、培地、腹水、または血清から適切に分離される。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体をコードしているDNAは、従来手順を使って(例えば、マウス抗体の重鎖と軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に分離およびシーケンスされる。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦分離されると、DNAは発現ベクターに入れられ、これを次に、そうでなければ免疫グロブリンを産生しない大腸菌細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体合成をする(例えば、Skerraら (1993) Curr Opin Immunol. 5: 256 - 262およびPluckthun (1992) Immunol Rev. 130: 151 - 188を参照)。
【0046】
DNAはまた、相同配列の代わりに、ヒト重鎖および軽鎖定常領域に対するコード配列のすべてもしくは一部を置き換えることによって(Morrisonら (1984) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 81: 6851 - 6855)、または非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列のすべてもしくは一部を免疫グロブリンコード配列と共有結合で結合させることによって修飾することもできる。そのように、抗11E10エピトープモノクローナル抗体の結合特異性を持つキメラまたはハイブリッド抗体が産生される。一般的にこのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常領域と置換されるか、またはこれらは、本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変領域と置換されて、本発明による11E10エピトープに対する特異性を持つ1つの抗原結合部位および異なる抗原に対する特異性を持つ別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体が産生される。
【0047】
修飾抗体
本発明の修飾抗体には、キメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)、ヒトモノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体が含まれるがこれに限定されない。キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域とマウスmAbから由来する可変領域を持つものなど、その異なる部分が異なる動物腫に由来する分子である(例えば、米国特許番号4,816,567 および4,816,397を参照)。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型は、非ヒト種からの相補性決定領域(CDR)の1つ以上およびヒト免疫グロブリン分子からの骨格領域など、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv, Fab, Fab', F(ab')2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である(米国特許番号5,585,089を参照)。
【0048】
ヒト化抗体には、受容者の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望ましい特異性、親和性、能力を持つマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されているヒト免疫グロブリン(受容者抗体)を含む。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFv骨格残基は、相当する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体は、受容者抗体、取り込まれたCDRまたは骨格配列にも見られない残基も含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンの領域に対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべて、およびFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である、少なくとも1つ、一般的には2つの可変領域の実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。
【0049】
キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている組み換えDNA技術で産生することができ、例えばWO 87/02671; EP 184,187; EP 171,496; EP 173,494; WO 86/01533; US 4,816,567; EP 125,023; Betterら (1988) Science 240: 1041 - 1043; Liu ら ((1987) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 84: 3439 - 3443); Liuら ((1987) J Immunol. 139: 3521 - 3526); Sunら ((1987) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 84: 214 - 218); Nishimura ら((1987) Cancer Res. 47: 999 - 1005); Woodら ((1985) Nature 314: 446 - 449); Shaw ら ((1988) J Natl Cancer Inst. 80: 1553 - 1559); Morrison ((1985) Science 229: 1202 - 1207); Oi ら ((1986) Biotechniques. 4: 214); 米国5,225,539; Jones ら. ((1986) Nature 321: 552 - 525); Verhoeyanら ((1988) Science 239: 1534); およびBeidler ら ((1988) J Immunol. 141: 4053 - 4060)に記述の方法を使用できる。ヒト化抗体およびそれに関する方法のさらなる考察については以下を参照。
【0050】
組み換え抗体産生のための効率の高い別の手段がNewman ((1992) Biotechnology. 10: 1455 - 1460)によって公開されている. 米国特許番号5,756,096、5,750,105、5,693,780、5,681,722、および5,658,570も参照のこと。
【0051】
非ヒト抗体のヒト化の方法は、当技術分野では周知である。ヒト化は、ヒト抗体の対応配列をげっ歯類CDRまたはCDR配列で置換することにより、上述のようにWinterらの方法(Jones ら ((1986) Nature 321: 522 - 525)、Riechmannら ((1988) Nature 332: 323 - 327)、Verhoeyenら ((1988) Science 239: 1534 - 1536)を含む)に従って原則的に実施し得る。従って、このようなヒト化抗体はキメラ抗体である(米国特許番号4,816,567および6,331,415参照)。実際にはヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基および場合によっては一部のFR残基が、げっ歯類抗体の類似部分からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0052】
ヒト化抗体を作るのに使用される軽、重両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる最良適合法によると、げっ歯類抗体の可変領域の配列を既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対してスクリーニングする。げっ歯類の配列に最も近いヒト配列は、次にヒト化抗体のヒト骨格(FR)として受け入れられる(Simsら (1993) J Immunol. 151: 2296 - 2308; ChothiaおよびLesk (1987) J Mol Biol. 196: 901 - 917)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定の骨格を使用する。同じ骨格をいくつかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carter ら (1992) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 89: 4285 - 4289; Prestaら(1993) J Immunol. 151: 2623 - 2632)。
【0053】
抗原(すなわちStx2の11E10エピトープ)に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を維持したまま抗体がヒト化されることもまた望ましい。この目的を達成するために、ヒト化抗体は、親配列およびさまざまな概念のヒト化産物の分析を通して、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使って製造される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用でき、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を図解および表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の推定役割の分析(すなわち、抗原に結合するための候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析)が可能となる。このように、標的抗原に対する親和性の増大など、望ましい抗体特性を達成するように、FR残基はコンセンサス配列および取り込み配列から選択して、組み合わせてもよい。一般的に、CDR残基は、直接的かつ最も実質的に影響抗原結合に関与する。
【0054】
完全ヒト抗体はヒト被験者の治療に有用である。このような抗体は、例えば、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子は発現できないがヒト重鎖および軽鎖遺伝子は発現できる遺伝子導入マウスを使用して産生できる。遺伝子導入マウスは、例えば11E10エピトープを含むポリペプチドなどの選択された抗原で通常の方法で免疫され得る。例えば、PCT公開番号WO 94/02602, WO 00/76310; U.S. Patent Nos. 5,545,806; 5,545,807; 5,569,825; 6,150,584; 6,512,097; および 6,657,103; Jakobovits ら ((1993) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 90: 2551); Jakobovits ら((1993) Nature 362: 255 - 258); Bruggemann ら ((1993) Year in Immunol. 7: 33 - 40); Mendez ら ((1997) Nat Gene. 15: 146 - 156), およびGreenおよびJakobovits ((1998) J Exp Med. 188: 483 - 495)を参照。
【0055】
ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法で作ることもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が、例えばKozbor ((1984) J Immunol. 133: 3001 - 3005); Brodeur ら ((1987) Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51 - 63, Marcel Dekker, Inc., New York); およびBoerner ら ((1991) J Immunol. 147: 86 - 95)によって記述されている。
【0056】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、ガイド選択と呼ばれる技術を使用して産生することもできる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドする(Jespersら (1994) Biotechnology. 12: 899 - 903)。
【0057】
単鎖Fvsおよび抗体を産生するために使用され得る技術の例には、米国特許番号4,946,778および5,258, 498; Huston ら ((1991) Meth Enzymol. 203: 46 - 88); Shu ら ((1993) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 90: 7995 - 7999); およびSkerra ら((1988) Science 240: 1038 - 1040)を含む。
【0058】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty ら (1990) Nature 348: 552 - 553)を使用して、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)領域レパートリーから、ヒト抗体および抗体断片を産生し得る。ファージディスプレイはさまざまな形式で実施できる。例えば、Johnson およびChiswell ((1993) Curr Opin Struct Biol. 3: 564 - 571)を参照。V遺伝子のいくつかの供給源をファージディスプレイに使用できる。Clacksonら ((1991) Nature 352: 624 - 628) は、免疫マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さな無作為組み合わせライブラリーから、さまざまな一連の抗オキサゾロン抗体を単離した。非免疫ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーを構築でき、さまざまな一連の抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks ら ((1991) J Mol Biol. 222: 581 - 597)、またはGriffithら ((1993) EMBO J. 12: 725 - 734)によって記述された技術に基本的に従って単離できる。
【0059】
本発明は、11E10エピトープを含むタンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体または類似体を提供する。この文脈では機能的に活性とは、断片、誘導体、または類似体が、断片、誘導体または類似体がそれから由来する抗体によって認識される同じ抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を、誘導する能力を持つことを意味する。具体的には、好ましい実施態様では、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワーク配列およびその抗原を特異的に認識するCDR配列のC末端であるCDR配列および骨格の削除によって増強され得る。どのCDR配列が抗原に結合するかを決定するために、当技術分野で知られている任意の結合分析法による抗原との結合分析において、そのCDR配列を含む合成ペプチドを使用できる。
【0060】
本発明は、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、およびscFvsなどを含むがこれに限定されない抗体断片を提供する。特定のエピトープを認識する抗体断片は、既知の技術(例えばペプシンまたはパパイン媒介切断)により産生され得る。
【0061】
本発明は、本発明の抗体の重鎖および軽鎖二量体、またはFvsもしくは単鎖抗体(SCA)などのその任意の最小断片(例えば、米国特許番号4,946,778; Bird ((1988) Science 242: 423 - 42); Huston ら ((1988) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 85: 5879 - 5883); およびWard ら ((1989) Nature 334: 544 - 54)に記述)、または本発明の抗体と同じ特異性を持つ任意の他の分子も提供する。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖および軽鎖断片を、アミノ酸架橋を介して結合することによって形成される。大腸菌の機能的Fv断片の構築のための技術を使用し得る(Skerra ら (1988) Science 242: 1038 - 1041)。
【0062】
あるいは、特定抗原に結合するFab断片のクローンに対して、Fab発現ライブラリー(例えば、Huse ら ((1989) Science 246: 1275 - 1281)により記述)をスクリーニングすることによって、または抗体ライブラリー(例えば、Clackson ら ((1991) Nature 352: 624 - 628) およびHanes およびPluckthun ((1997) Proc Natl Acad Sci. U.S.A. 94: 4937 - 4942)参照)をスクリーニングすることによって、抗体の少なくともFab部分をコードしているクローンを取得し得る。
【0063】
他の実施態様では、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質、またはその機能的に活性な断片を提供する。1つの例では、免疫グロブリンは、免疫グロブリンではない別のタンパク質(またはその部分、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20または50個のアミノ酸部分)のアミノ酸配列のN末端またはC末端のどちらかに、共有結合(例えばペプチド結合)で融合される。好ましくは、免疫グロブリン、またはその断片は、他のタンパク質に定常領域のN末端で共有結合されている。上述のように、このような融合タンパク質は、精製を促進し、インビボでの半減期を増加させ、上皮バリアを超えた免疫系への抗原の送達を促進し得る。
【0064】
別の実施態様では、本発明は、プールされた抗体、抗体断片、および本明細書に記述の他の抗体変異体の組成物および使用を提供する。例えば、2つ以上のモノクローナル抗体を使用のためにプールし得る。1つの特定の実施態様では、本発明の抗体は、StxまたはStx1に特異的に結合する抗体と共にプールされる。
【0065】
治療的投与
本発明は、上記の方法を使って産生された抗体(例えば、Stx2の11E10に特異的に結合する抗体)の、志賀毒素関連疾患を持つ、またはこれを発症するリスクのある被験者への投与も特徴とする。
【0066】
本発明の抗体は、適正な医療行為にふさわしい方法で、処方、投薬、投与される。この場合の考慮要因には、治療する特定の疾患、治療する特定の被験者、個々の被験者の病態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に知られている他の要因を含む。Stx2の11E10エピトープに特異的に結合する投与すべき抗体の治療効果のある量は、このような考慮に影響され、志賀毒素関連疾患、またはその関連症状を予防、緩和、治療、または安定化するたえに必要な最小量である。11E10エピトープに特異的な抗体は、志賀毒素関連疾患を予防または治療するために現在使用されている薬剤(例えば、13C4を含む、Stx1に特異的な抗体、またはそのヒト化またはキメラ誘導体)の1つ以上と共に随意に処方されるが、そうする必要はない。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するStx2の11E10エピトープに特異的な抗体の量、疾患または治療のタイプ、および上述の他の要因に依存する。
【0067】
抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内を含む任意の適切な方法で投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。さらに、抗体は、特に抗体の用量を低下させながらのパルス注入によって適切に投与される。好ましくは、投薬は、注射によって行われ、最も好ましくは静脈または皮下注射によって行われるが、これは投与が短期または長期であるかにある程度依存する。
【0068】
III. ワクチン
本発明は、Stx2タンパク質に対する免疫反応を刺激する組成物を特徴とする。
【0069】
志賀毒素関連疾患を持つ人または発症のリスクがある人は、ポリペプチドが好ましくは免疫原性的有効量の完全長Stx2ポリペプチドまたは処理されたStxA2サブユニットを含まない本発明の11E10エピトープを含む組成物(例えばワクチン)の投与によって治療できるで。組成物は、予防的および/または治療的に投与できる。
【0070】
当技術分野で知られている標準手順に従って、異なるタイプのワクチンを産生し得る。例えば、ワクチンは、ペプチドベース(例えば、Smith ら ((2006) Vaccine 24:4122-4129)を参照)、核酸ベース((例えば、Bentacor ら, "DNA vaccine encoding the enterohemorragic Escherichia coli 1 (EHEC) Shiga-like toxin 2 (Stx2) A2 and B subunits confers protective immunity to Stx challenge in the murine model" Clin. Vaccine Immunol. (印刷前の電子出版、PMID 19176691)を参照)、バクテリアまたはウィルスベースのワクチンであり得る。ポリペプチドまたは11E10エピトープを含むポリペプチドをコードする核酸を含むワクチン製剤は、安定剤などさまざまな他の成分を含み得る。ワクチンはまた、1つ以上の適切なアジュバントを含むか、またはこれと併用投与され得る。ワクチン中の11E10エピトープを含むポリペプチドに対するアジュバントの割合は、当業者により標準方法で決定され得る。
【0071】
別の実施態様では、ペプチドワクチンは、予防または治療ワクチンとして11E10エピトープまたはその機能的誘導体を含むペプチドを、多くの方法で使用することができ、これには以下を含む:1) 同じ配列のモノマーまたはマルチマーとして、2) 凝集を促進し、エピトープ(例えばクラス I/II標的配列)および/または追加的抗体、TヘルパーまたはCTLエピトープの提示または処理を促進して11E10エピトープの免疫原性を増加させ得る追加的配列と連続的または非連続的に組み合わせて、3) 化学的に修飾または、ワクチンの免疫原性または送達を増加させる薬剤(例えば、脂肪酸またはアシル鎖、KLH、破傷風トキソイド、またはコレラ毒素)と抱合して、4) 上記の任意の組み合わせ、5) 任意の上記を、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、不完全フロイントアジュバントなどの油中水乳剤、アルミニウム塩、サポニンまたはトリテルペン、MPL、コレラ毒素、ISCOM'S(登録商標)、PROVAX(登録商標)、DETOX(登録商標)、SAF、フロイントアジュバント、Alum(登録商標)、Saponin(登録商標)、とりわけ米国特許番号5,709,860、 5,695,770、および5,585,103に記述のものを含むがこれに限定されないアジュバントと組み合わせて、および/または、リポソーム、VPLまたはウィルス様粒子、マイクロエマルション、弱毒化または殺菌細菌およびウィルスベクター、および分解可能微小球を含むがこれに限定されない運搬手段と組み合わせて(例えば、Kersten およびHirschberg ((2004) Expert Rev of Vaccines. 3: 453 - 462); Sheikh ら ((2000) Curr Opin Mol Ther. 2: 37-54)を参照)、並びに6) 任意の経路で投与、または生体外で細胞に抗原を負荷する手段として投与する。
【0072】
ポリペプチドが完全長Stx2ではなく、志賀毒素関連疾患に対して予防的または治療的に人に投与される11E10エピトープを含むポリペプチドの用量は、当業者によって決定され得る。一般的に、用量は、約10 μg 〜1,000 mg、好ましくは約10 mg〜500 mg、より好ましくは約30 mg 〜120 mg、より好ましくは約40 mg 〜70 mg、最も好ましくは約60 mgの11E10エピトープを含むポリペプチドを含む。
【0073】
11E10エピトープを含むポリペプチドの投薬の少なくとも1回、好ましくは2回、より好ましくは4回、最高6回またはそれ以上の合計投与回数までが被験者に投与される。最後の免疫化後、1週間または2週間の間隔で11E10エピトープを含むポリペプチドの追加免疫用量を投与することが望ましいであろうし、一般に、1回の追加免疫用量は最初に投与された用量より少ないかまたは同じ量の11E10エピトープを含む。1つの例では、免疫化レジメンは、1週間間隔で4回用量を投与する。ポリペプチドまたは核酸は胃で分解されるので、免疫化は好ましくは非経口的に投与される(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または皮内注射)。免疫化された被験者の経過は、一般的医学評価、血清学および/または胃カメラ検査で感染をスクリーニングすることによってフォローできる。
【実施例】
【0074】
IV. 例
実施例1
モノクローナル抗体11E10はStx2のA1サブユニットを認識する。11E10のStx2への結合は、Stx2の細胞毒性および致死作用の両方を中和するが、成熟Aサブユニットのアミノ酸は同一性が55%かつ類似性が68%であるにもかかわらず、モノクローナル抗体はStx1に結合またはこれを中和しない。この研究では、我々は、11E10エピトープを構成するStx2上のセグメントを特定し、その領域の11E10による認識がどのように毒素の不活化につながるかを究明しようとした。これらの目的に向かって、我々はキメラStx1/Stx2分子のセットを産生し、次にこれらのハイブリッド毒素を認識するための11E10の能力をウェスタンブロット分析で、毒素の中和能力をVero細胞細胞毒性分析で評価した。我々は、11E10に対するStx2上の結合エピトープを予測できる可能性のある一連の相違点について、アミノ酸配列とStx1 およびStx2の結晶構造も比較した。これらの評価を通して、11E10エピトープはStx2活性部位を取り囲む3つの不連続領域から成ると我々は結論付けた。11E10がどのようにStx2を中和するかを知るために、我々は、リボソームを標的にするための11E10/Stx2複合体の能力を調べた。インビトロ分析では、11E10のStx2への結合は毒素がタンパク質合成を阻害するのを防止するが、Vero細胞のStx2の全体的細胞分布も変化させることを見出した。11E10モノクローナル抗体のStx2への結合は、毒素の作用の全部でなくても少なくとも一部を中和し、これは毒素がリボソームに達するまたは不活性化するのを防止することによって起こるのではないかと我々は考える。
【0075】
我々は、STEC感染に関連するStxsを中和するための受動免疫化戦略を調査した( Dowlingら (2005) Antimicrob. AgentsChemother. 49:1808-1812、Edwards ら (1998) In J. B. KaperおよびA. D. O'Brien (ed.)、Escherichia coli O157:H7 and other Shiga toxin-producing E. coli strains. ASM Press, Washington, DC.、Kimuraら (2002) Hybrid. Hybridomics. 21:161-168、Ma ら (2008) Immunol. Lett. 121:110-115, Mukherjee ら (2002) Infect. Immun. 70:612-619、Mukherjee ら (2002) Infect. Immun. 70:5896-5899.)。我々の受動免疫化戦略は、この研究室で開発された、Stx/Stx1 またはStx2に特異的に結合して中和するマウスモノクローナル抗体に基づく(Strockbineら (1985) Infect. Immun. 50:695-700、Perera ら (1988) J Clin. Microbiol. 26:2127-2131)。モノクローナル抗体11E10は、ホルムアルデヒド処理でトキソイド化されたStx2でのBALB/cマウスの免疫化によって産生した(Pereraら, 上記)。ウェスタンブロット分析によると、11E10モノクローナル抗体は、Vero細胞のために、マウスのStx2のA1断片を特異的に認識し、Stx2を中和するが、Stx/Stx1には結合または中和しない(Edwards ら, 上記、Perera ら 上記)。マウス11E10モノクローナル抗体は、ヒト定常領域を含むように修飾して、抗体受容者が抗マウス抗体反応を起こす確率を減少させた。cαStx2と呼ばれるこのヒト/マウスキメラ抗体は、第一相臨床試験を成功裏に終えた(Dowling ら, 上記)。このレポートで、我々は、Stx2のAサブユニット上のマウス11E10モノクローナル抗体によって(さらに、従ってcαStx2によっても)認識されるStx2のAサブユニット上のエピトープを定義し、モノクローナル抗体がインビトロで毒素の酵素活性をブロックし、またVero細胞における毒素輸送を変化させることの証拠を示している。
【0076】
材料および方法
細菌の菌株、プラスミド、精製Stx1およびStx2、およびモノクローナル抗体11E10および13C4
細菌は、Luria-Bertani(LB)ブロス中またはLB寒天(Becton Dickinson and Company、メリーランド州スパークス)上、組み換えプラスミドの選択に対して必要に応じて100μg/mlのアンピシリンを補充して増殖させた。この研究で使用された細菌の菌株およびプラスミドは、表1に示されている。前述のように、Stx1 およびStx2は親和性クロマトグラフィーで精製され(Melton-CelsaおよびO'Brien (2000) p. 385-406. In Handbook of Experimental Pharmacology, vol. 145. Springer-Verlag, Berlin)、モノクローナル抗体11E10、11F11(Stx2に特異的(Perera ら,上記))、および13C4(Stx1に特異的(Strockbine ら (1985) Infect. Immun. 50:695-700))はこの研究室で産生されて、BEI Resources(バージニア州マナッサス)に寄託した。
【0077】
(表1)この研究で使用された細菌の菌株およびプラスミド
【0078】
キメラ毒素プラスミドの構築
stxA1 および stxA2の両方の部分を含む6つのキメラ毒素遺伝子を、スプライス重複延長(SOE)プロトコルのPCRで生成し(Higuchi (1989) p. 61-70. IN H.A. Erlich (ed.), PCR Technology. Stockton Press, New York)、PCR産物をpBluescript II KS (-)(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)に結合した。キメラ毒素遺伝子は天然プロモーターおよびシャイン・ダルガノ配列を含み、5つのクローンの毒素発現レベルはこれらの条件下十分であった。1つのクローン(pMJS11)のAサブユニットの発現レベルを増加させるために、二回目のPCRで毒素オペロンを増幅し、最適化されたシャイン・ダルガノ配列 [TAAGGAGGACAGCTATG (最適化シャイン・ダルガノ配列はアンダーラインで、StxA2の翻訳開始部位は太字で示されている)配列番号:20]をstxA2の上流に加えた。この後者のPCR産物は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモーターを持つpTrcHis2 C発現ベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)に結合させた。この研究で使用したすべてのプライマーを表2に示す。この研究のために作られた各構築物のDNA配列は、使用前に確認した。
【0079】
(表2)この研究で使用された合成オリゴヌクレオチド・プライマー
a 制限酵素部位はアンダーラインで示される。
b変異原性コドン部位は太字で示される。
【0080】
5つの追加的His標識キメラ毒素が、B遺伝子のすぐ下流に6つのヒスチジンコドンを含むstx1クローンから産生された(図2A)。これらのキメラにより産生された毒素は、Stx1の相当配列の代わりに推定11E10モノクローナル抗体エピトープを含むStx2 Aサブユニットの1、2、または3個の領域(以下、領域A、BおよびCと呼ぶ)を含む。領域A、BおよびCは、それぞれ、Stx2 Aサブユニットのアミノ酸42〜49 (配列番号:1)、96〜100 (配列番号:2)、244〜259 (配列番号:3)を指す。作られた5つのキメラ毒素は以下のように命名した:Stx1 +A (配列番号:4に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +AB(配列番号:5に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +AC(配列番号:6に示されるキメラStx2 A配列を含む)、Stx1 +BC(配列番号:7に示されるキメラStx2 A配列を含む)、またはStx1 +ABC(配列番号:8に示されるキメラStx2 A配列を含む)。
【0081】
部分的トキソイド化Stx1 +ABCの産生および精製
Stx1 +ABC毒素は、SOEプロトコルにより、Aサブユニットの位置77のチロシン残基をセリン残基に変えることによって部分的にトキソイド化した。Y77S変異は、Vero細胞に対する50%細胞毒性用量(CD50)を、誘導培養物1 mlあたり106から 102 CD50に減少させた。Y77S変異導入後の細胞毒性のこの4桁の減少は、Stx1のY77S変異で以前報告されたものと類似している(Deresiewicz ら (1992) Biochemistry 31:3272-3280)。
Stx1 +ABCトキソイドは、前述のようにニッケル親和性カラムで精製した(Smithら (2006) Infect. Immun. 74:6992-6998)。トキソイドの濃度は、ビシンコニン酸分析(Pierce、イリノイ州ロックフォード)で決定した。ドデシル硫酸ポリアクリルアミドナトリウムゲルの銀染色により、他の小さなバンドが観察されるものの、キメラトキソイドのAおよびBサブユニットが存在する主な2つのバンドであることが判明した(データ非表示)。
【0082】
Stx2cおよびStx2d変異体クローンの構築
His標識Stx2cを発現したクローンは、Stx2で上述のように、PCRで産生した(Robinsonら (2006) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 103:9667-9672)。stx2dクローンは、PCRで大腸菌 EH250とプライマー2DFおよび2DRから産生した(Pierard ら (1998) J. Clin. Microbiol. 36:3317-3322)。PCR産物は発現ベクターpTrcHis2 Cに結合させた。stx2cおよびstx2dが正しく増幅されたことは配列分析で確認された。
【0083】
ウェスタンブロット分析
精製されたStx1、Stx2またはキメラStx1/Stx2毒素を発現した細菌の超音波溶解物を、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけ、次に前述のようにウェスタンブロットで分析した(Smith ら、 上記)。Stx1、Stx2Aまたはキメラ毒素を含む超音波溶解物中のAサブユニットの濃度は以下のように推定した。第一に、それぞれStx1 またはStx2の精製Aサブユニットを検出したウサギ抗Stx1 および抗Stx2ウサギポリクローナル抗体の、比較的同等レベルまでの特定希釈を、NIH Image Jソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/nih-image)を使用して決定した。第二に、キメラ含有超音波溶解物をSDS-PAGEで分離し、結果得られたゲルをニトロセルロースに移し、上記で決定されたように希釈されたウサギ抗Stx1 および抗Stx2ウサギポリクローナル抗体の混合物でこれらのブロットをプローブした。第三に、各レーンのキメラAサブユニットに対応するバンドをNIH Image Jプログラムで定量化して、各溶解物試料中の毒素濃度を決定した。第四に、2つの追加的ポリアクリルアミドゲルに、精製Stx1、Stx2またはキメラを含む正規化溶解物の試料を(ステップ3で決定されたように)同等濃度を含むように添加した。次に毒素調製物をSDS-PAGEにかけ、その後ウサギ抗Stx1とウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体の混合物(図1B上のパネル)(ブロット1)または11E10モノクローナル抗体(図1B下のパネル)(ブロット2)でウェスタンブロット分析を行った。これらのウェスタンブロットで使用された二次抗体は、ブロット1では1:15,000希釈(図1B上のパネル)の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG) (Bio-Rad、カリフォルニア州 ハーキュリーズ)、およびブロット2では1:3,000希釈(図1B下のパネル)のHRP抱合ヤギ抗マウスIgG(Bio-Rad、カリフォルニア州 ハーキュリーズ)であった。結合された二次抗体は、ECL-Plusウェスタンブロット検出キットを使った化学発光で検出した(Amersham Bioscience、イギリス、バッキンガムシャー州リトルチャルフォント)。
【0084】
ウェスタンブロットは、Stx2、 Stx2c、Stx2d、Stx2dactまたはStx2eを発現したクローンの超音波溶解物についても実施した。まず、これらの毒素試料からのAサブユニットの濃度は、ウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体をプローブとして使用したことを除いては、上記と同様に決定した。2つの追加的ポリアクリルアミドゲルに、正規化試料の同等量を添加し、一次抗体としてウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体または11E10モノクローナル抗体のどちらかを使用してウェスタンブロットを行った。二次抗体および検出方法は上記と同様である。
【0085】
Vero細胞でのインビトロ中和分析
Stx1、Stx2、キメラStx1/Stx2毒素、Stx2c、Stx2d、Stx2dact、またはStx2eを含む細菌からの超音波溶解物のインビトロ中和分析は、前述のように11E10を使ってVero細胞(ATCC、バージニア州マナッサス)で実施した((Marquesら (1986) J Infect. Dis. 154:338-341; Smithら., 上記)。つまり、イーグル最小必須培地(EMEM)中の毒素(1〜3個のCD50s)およびEMEM中の精製11E10モノクローナル抗体(0.5 mg/ml)を含む試料の同量を混合して、37℃ および5% CO2で2時間培養した。次に毒素抗体混合物を、96ウェルプレートのサブコンフルエントVero細胞に重ねて、48時間培養した。その後Vero細胞を固定、染色し、600 nm (OD600)での吸光度を測定した。これらの中和実験は重複して少なくとも2回行った。超音波溶解物の毒素の細胞毒性作用を中和するための11E10モノクローナル抗体の能力は、毒素のみまたは毒素と抗体を加えたウェルの細胞生存を比較することによって決定した。抗体による毒素の中和パーセントは、以下の式で計算した。中和パーセント:[(毒素+抗体ウェルの平均OD600 - 毒素のみのウェルの平均OD600 )/(細胞のみのウェルの平均OD600- 毒素のみのウェルの平均OD600)] x 100。11E10モノクローナル抗体は、野生型活性の約65%までStx2を中和した。11E10モノクローナル抗体による毒素誘導体の中和パーセントのレベルを比較しやすくするために、11E10によるStx2の中和量が100%に設定されるようにデータを正規化し、他の毒素の中和レベルはStx2のレベルに対して計算した。
【0086】
マウスの免疫化および抗原投与
体重が14〜16 gのCD-1雄マウス(Charles River Laboratories、マサチューセッツ州ボストン)から免疫前血清を採取した。これらの血清試料は、マウスがStx1またはStx2への既存の力価を持っているかどうかを判断するために、酵素免疫吸着法(ELISA)で使用した。どのマウスも、研究の開始時にはどちらの毒素にも免疫反応を示さなかった。次にマウスは、疑似接種グループ(以下陰性対照グループと呼ぶ)およびキメラトキソイドで免疫されたグループの2つのグループに分けた。陰性対照グループのマウスは、PBSとTiterMax(油中水アジュバント)(TiterMax, USA Inc.、ジョージア州ノークロス)の混合物で腹腔内免疫した。第二のグループのマウスは、TiterMaxと混合した1 ugのトキソイドで、腹腔内免疫した。マウスには、3週間ごとに合計4回追加接種をおこなった。最後の追加接種から2週間後に、陰性対照グループのマウス5匹とトキソイド免疫マウスの5匹に対してStx1の50%致死量(LD50)の10倍 (1,250 ng)を腹腔内に抗原投与し、陰性対照グループの29匹およびトキソイド免疫マウスの34匹には、Stx2のLD50の5倍(5 ng)を抗原投与した。
【0087】
インビトロタンパク質合成阻害分析
ウサギ網状赤血球溶解物、蛍ルシフェラーゼmRNA、およびルシフェリン基質は、Promega Corporation(ワイオミング州マジソン)から購入した。Stx2 (4 ng/μl) を同量の抗体(4 または40 ng/μlで)と混合し、この毒素/抗体混合物の1 μl を網状赤血球溶解物9 μl と混合した。混合物を30℃で培養して、毒素に溶解物中のリボソームを不活化させた。1時間後、ルシフェラーゼmRNAの1アリコートおよび70℃で2分加熱しておいたアミノ酸を加え、溶液をさらに90分間培養して、インビトロのタンパク質合成を進行させた。すべての分析は、3回行った。ルシフェラーゼ活性は、溶解物混合物1 μl を透明96ウェル(Fisher Scientific、ペンシルバニア州ピッツバーグ)の20 μlのルシフェリン基質 に加えることによって測定した。発光は、10分露光下Kodak Image Station 440CFで検出した。発光シグナルは、単一ウェルに対応する円形領域内の合計シグナル強度の総和によって分析した。
【0088】
中毒細胞中の11E10の局在
8ウェル組織培養スライド(Thermo Fisher Scientific、ニューヨーク州ロチェスター)に、1 X 105 細胞/mlの濃度で Vero細胞を播種し、5% CO2の雰囲気下、37℃で24時間接着させた。Stx2 (10 ng/mlの0.2 ml ) を10 ngの精製11E10モノクローナル抗体と混合、または陰性対照としてPBSと混合した。抗体/毒素またはPBS/毒素溶液をVero細胞と6時間培養し、その後細胞を緩衝化ホルマリン(Formalde-Fresh, Fisher Scientific, Pittsburg, PA)で固定し、PBS中0.001% Triton-X100 (Pierce、イリノイ州ロックフォード)で透過処理した。すべての免疫染色手順は、3%ウシ血清アルブミン(BSA, Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含むPBS中で行なわれた。細胞中のモノクローナル抗体11E10の存在は、Alexa-Fluor 488標識ロバ抗マウスIgG(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)で検出した。中毒細胞中の合計Stx2をウサギ抗Stx2ポリクローナル抗体で標識して、Alexa-Fluor 488抱合ロバ抗ウサギIgGが二次抗体(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)として使用した。Stx2およびエンドソームの二重標識は、それぞれ抗Stx2モノクローナル抗体11F11 (Perera ら, 上記), BEI Resources、バージニア州マナッサス)および抗EEA1 (C-15)ヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州サンタクルーズ)、並びにAlexa-Fluor標識二次抗体で行った。適切な一次および二次抗体と培養した後、37℃で20分間細胞をホルマリンで固定し、スライドをSlowFade培地(Invitrogen、カリフォルニア州カースルバッド)と共に乗せた。反射光蛍光アタッチメント付きOlympus顕微鏡およびSpot CCDデジタルカメラ(Diagnostic Instrument Products、ミシガン州スターリングハイツ)で、結合フルオロフォア標識二次抗体の40倍拡大イメージを取得した。蛍光イメージはAdobe Photoshop(Adobe Systems、カリフォルニア州サンノゼ)で処理して重ね合わした。
【0089】
結果
初期キメラ毒素のモノクローナル抗体11E10との相互作用
11E10モノクローナル抗体と相互作用するStx2の部分を決定するために、我々はstxA1の領域に対応する位置に挿入されたstxA2遺伝子の異なる領域を含む6つのキメラ毒素オペロンの初期セットを構築した(図1A)。精製Stx1、Stx2または6つの異なるキメラStx1/Stx2毒素を発現する大腸菌DH5αの溶解物のウェスタンブロットを、11E10モノクローナル抗体でプローブした。抗体は、Stx2およびStx2 Aサブユニットの29〜297、1〜158、および29〜128領域からのアミノ酸を含むキメラ毒素と強く反応した(図1B)。11E10によって認識されるStx2の最小部分を持つキメラ毒素は、弱くではあるが、StxA2、領域42〜49からの8つのアミノ酸のみを含んでいた。
【0090】
次に、Stx1、Stx2または6つの初期キメラ毒素の1つを含む細菌溶解物の毒性を中和するための11E10モノクローナル抗体の能力をVero細胞について調査した。予測されたように、11E10モノクローナル抗体はStx2を中和したが、Stx1は中和しなかった(図1C)。しかし、Stx2と比較して、StxA2の領域1〜158 または29〜297を持つハイブリッド毒素は11E10によって約85%中和され、その結果、11E10エピトープの重要成分はStx2の残基29〜158の間にあることが示唆された。対照的に、Stx2からのアミノ酸29〜128を持つキメラ毒素は、免疫ブロットでは強く認識されたが、Stx2のレベルの約32%のみ中和された。これらの知見を合わせると、11E10中和エピトープは、ウェスタンブロットにおける11E10の Stx1(2A29〜128)への結合に要求されるよりも多数のアミノ酸を含み、このため、中和エピトープの一部がこのハイブリッドから欠如していることが示唆される。ウェスタンブロット分析で11E10モノクローナル抗体によって弱く検出された他の3つのキメラ毒素は、Stx2中和の正規化レベルと比較した場合、11E10によって適切に中和されなかった(15%未満)。これらの結果を合わせると、Stx2上の11E10中和エピトープの重要成分の1つ以上がアミノ酸 29〜76の外側に存在することが示される。
【0091】
Stx1とStx2の間のAサブユニットアミノ酸配列と結晶構造の差異分析
キメラ毒素の第一のセットのウェスタンブロットおよび中和分析では、11E10エピトープは、毒素検出のためにStx2 Aサブユニットのアミノ酸42〜49(配列番号:1)を少なくとも必要とすることが示されたが、完全な認識および毒素中和のためには追加的アミノ酸が必要であることも判明した。従って、Stx1およびStx2からの成熟Aサブユニットのアミノ酸配列は、11E10によるStx2の認識および中和に関与する可能性のあるアミノ酸の追加的固有ストレッチを特定するように整列した。次に、Stx (Fraser ら (1994), 上記)とStx2 (Fraserら (2004), 上記)の結晶構造(Protein Data Bankの受入番号はそれぞれ1RQ4および1R4P)をDeep View/Swiss-PDBビューアーを使用して比較し、三次元構造中の毒素間での配列の領域の位置の違いとこのような領域のお互いの近接性を評価した。前述のように、Stx2 Aサブユニットの残基42〜49にわたる8つのアミノ酸は11E10結合部位の一部を形成し、以下、領域Aまたは配列番号:1と称する(図2A、領域A強調アミノ酸)。領域Aからの8つのアミノ酸をStx2結晶構造の中で見ると、それらは毒素構造の中で大きな屈曲を形成しているように見え(図2Bにおいて緑色で示され、黒矢印によって示され、また図2Cにおいても同様に示されている)、さらに、それらはStx2の外面上の、アミノ酸167の周りの活性部位の裂け目の近くにあった。
【0092】
Stx1およびStx2のAサブユニットの間の第二の相違領域は、これらの2つの毒素のアミノ酸配列および結晶構造を比較した時に特定され、これは我々が領域Bまたは配列番号:2と呼ぶセグメントであった(図2A、領域B強調アミノ酸)。領域BはStx2のAサブユニットの5つの残基(96THISV100)(配列番号:2)にわたり、この領域の5つのアミノ酸のうち4つはStx1 と Stx2とで異なる(図2A)。領域Bは領域Aからアミノ酸約50個分離れているが、アミノ酸のこの部分は Stx2結晶構造の領域Aに向かって伸びている(図2Bで、領域Bは青色で示され、グレーの矢印で示されている)。三次元構造での領域Aの領域Bへの近接性は、空間充填モデルではより明白である(図2C)。
【0093】
我々が領域Cまたは配列番号:3と名付けたStx1 とStx2のAサブユニット間の第三の相違領域は、Stx2の残基246の周りのフリン切断部位に重なる(図2A、領域C強調アミノ酸)。領域Cは、その位置のStx1とStx2の間のアミノ酸配列の違いのみだけでなく、領域C(図2Cで青緑色で示され、白い矢印で示される)が領域AおよびBに空間的に近接していることを示したStxとStx2の結晶構造の比較によっても特定された。Stx およびStx2の結晶構造の分析から、領域A、B、およびCは触媒活性部位の比較的近くにあるStx2の同じ面上に群がっていると我々は結論付けた(図2Cで最もよくわかる)。
【0094】
第二世代キメラ毒素のモノクローナル抗体11E10との相互作用
領域BおよびCが11E10エピトープの一部であるかどうかを判断するために、Stx1上の対応する領域の代わりに、Stx2の領域A、BまたはCのさまざまな組み合わせを含むキメラ毒素の第二のセットを産生した(図3A)。次に、Stx1、Stx2またはキメラ毒素のウェスタンブロットを11E10でプローブした(図3B、下のパネル)。11E10モノクローナル抗体は、領域Aを含むすべての毒素を検出した(Stx2、Stx1 +A、Stx1 +AB、Stx1 +AC、およびStx1 +ABC)(図3B、下のパネル)。領域Aを持たない毒素は11E10モノクローナル抗体では検出されず(Stx1およびStx1 +BC)、これは、領域Aが11E10エピトープの必須成分であることを確認する知見である。しかし、領域AおよびB(Stx1 +AB またはStx1 +ABC)を取り込んだ2つのキメラ毒素は、11E10モノクローナル抗体によって、領域Aのみまたは領域Aと領域Cの組み合わせを含むキメラ毒素よりも強く検出されるように思われた(図3B、下のパネル)。これらの結果をまとめると、領域AおよびBは両方とも毒素の完全11E10認識にとって重要であることを示す。
【0095】
我々は、次に、5つの第二世代キメラ毒素(図3A)のそれぞれの超音波溶解物を、11E10モノクローナル抗体でインビトロ中和について分析した。抗体は、領域A、BおよびC(Stx1 +ABC)を含むキメラ毒素を、 Stx2中和レベルの約65%まで中和した。対照的に、領域AとB(Stx1 +AB)のみ、またはAとC(Stx1 +AC)のみを含むキメラ毒素は、Stx1 +ABCキメラの中和レベルの約半分まで中和された(図3C)。11E10による感知できるほどの中和はStx1 +A またはStx1 +BCキメラ毒素に対して観察されなかった(それぞれ約6.9および4.3%)。キメラ毒素のより広範な(> 50%)中和にはStx2からの領域A、B、およびCを必要とすることから、11E10による50%を超える中和には3つの領域すべて(A、B、およびC)が必要であると我々は結論付けた。
【0096】
Stx2とStx2変異体および11E10モノクローナル抗体のウェスタンブロットおよびインビトロ中和分析の結果
11E10によってStx2変異体のどれが認識および/または中和されるかを判断するために、Stx1、Stx2、またはStx2変異体(Stx2c、Stx2d、Stx2dactおよびStx2e)をウェスタンブロットで分析した。Stx2およびすべてのStx2変異体は11E10によって認識されたが、Stx2eはより少ない程度で検出された(図4A、下のパネル)。ウェスタンブロット形式での11E10によるStx2eのこの弱い検出は、コロニーブロットで11E10はStx2e産生株を検出できなかったという我々の以前の報告と一致している(Perera ら, 上記)。Stx2eは、Stx2と比較して、領域Bに2つの保存アミノ酸の相違点を持つ(THISV (配列番号:2)よりはむしろAHISL (配列番号:19))。また、領域Aに直接隣接するいくつかのアミノ酸配列の相違点もある(示されていない)。これらの相違点は、ウェスタンブロット上での11E10によるStx2eの認識が低下したためではないかと我々は推測する。
【0097】
Stx2変異毒素に対するモノクローナル抗体11E10の中和能力を評価した際、11E10はすべてのStx2変異毒素を、Stx2の中和レベルの60%以上まで中和することがわかった(図4B)。ウェスタンブロット形式での11E10によるStx2eの認識が限られていることから、観察されたStx2eの11E10による中和レベルは驚きであった(図4A、下のパネル)。しかし、この研究での11E10によるStx2eの中和は、11E10が部分的にStx2eを中和することを示した我々の以前の結果と一致する(Pereraら, 上記)。
【0098】
マウスにおけるStx1 +ABCトキソイドの免疫および保護反応
次に我々は、Stx1 +ABCハイブリッド分子のトキソイド化誘導体が、マウスのStx2に対して血清中和または保護反応を誘発するかどうかを解明しようとした。マウスのグループをキメラトキソイドまたは対照としてPBSで免疫した。次に、5匹のトキソイド免疫マウスおよび5匹のPBS免疫マウスの血清を、抗Stx1中和反応について評価した。PBS免疫マウスの血清はどれもStx1中和活性を含んでいなかった。以前の研究から予測されるように、5匹のトキソイド免疫マウスすべてがStx1に対する中和抗体を持っていた(Smith ら (2006) Vaccine 24:4122-4129、Wen ら, 上記)。これらの5匹のマウスの血清に対する抗Stx1中和力価の平均は、バックグランドより4.0 ± 0.9ログ上であった。残りの34匹のトキソイド免疫マウスの血清のうち11個がStx2に対する中和反応をいくらか持っていたが、29匹のPBS免疫マウスの血清のどれも抗Stx2反応を示さなかった(データ非表示)。
【0099】
最後の追加接種から2週間後に、陰性対照グループのマウス5匹とトキソイド免疫マウスの5匹に対して、Stx1のLD50の10倍量を腹腔内投与した。以前の研究の結果から予測されるように、陰性対照グループのすべてのマウスが死亡したが、すべてのトキソイド免疫マウスは致死的攻撃を生き延びた(表3)(Smith ら, 上記、Wenら 上記)。さらに、Stx1で抗原投与されたトキソイド免疫マウスの生存は、これらのマウスのインビトロ中和力価に直接相関していた。
【0100】
(表3)Stx1またはStx2での致死的攻撃に対する免疫マウスの保護
a LD50は、Stx1およびStx2に対してそれぞれ125 および1 ng/マウスとして過去に決定した。
b 抗原投与された時のマウスの平均体重は 47.1 gであった。
c フィッシャーの直接確率検定を用いて、グループCおよびD中の生存割合を比較し、p値は0.2667であった。
【0101】
トキソイド免疫グループで低いStx2中和抗体力価が観察されたため、残りのマウスにはStx2のLD50の5倍量のみで抗原投与することにした。29匹の陰性対照マウスのうち6匹(20.7%)がStx2での抗原投与を生き延びた一方、34匹のトキソイド免疫マウスのうち12匹(35.3%)が生き延びた(表3)。これは統計的には有意でないが、キメラトキソイドはStx2からのいくらかの保護を提供したことを示唆する知見である。
【0102】
インビトロタンパク質合成阻害分析
11E10エピトープがStx2活性部位の切れ目の周りの表面ループから成っているようであるという我々の知見から、11E10はタンパク質合成を阻害する毒素の能力をブロックすることによってStx2を中和するという仮説を立てた。したがって、我々は、ルシフェラーゼmRNAを添加したウサギ網状赤血球タンパク質合成分析で、11E10モノクローナル抗体がStx2のリボソーム不活化作用を中和できるかどうかを評価した。ルシフェラーゼ・レポータータンパク質からのシグナルを、毒素を添加しなかった時に測定されたシグナルと比較して約60%減少させた毒素の濃度が選択された(図5)。分析への11E10の添加によって、Stx2が存在する場合でもウサギ網状赤血球溶解物中でタンパク質合成を起こすことができたが、アイソタイプ適合の無関係な抗体では起こらなかった(図5)。
【0103】
モノクローナル抗体11E10は、Vero細胞中のStx2の全体的分布を変化させる
インビトロタンパク質合成分析で、モノクローナル抗体11E10は、Stx2によるタンパク質合成阻害を防止することがわかったが、我々はさらに、11E10はStx2が中毒Vero細胞の細胞質中のリボソームに達するのを妨げるかもしれないという仮説を立てた。従って、我々は、モノクローナル抗体11E10が標的細胞中のStx2局在を変化させるかどうかを判断しようとした。(11E10結合Stx2はVero細胞に結合でき、11E10はVero細胞に結合したStx2に付着できることを我々は以前見出した(データ非表示))。Stx2を11E10またはPBSと混合して、抗体/毒素またはPBS/毒素混合物をVero細胞と共に培養した。次に、ウサギポリクローナル抗体抗Stx2およびフルオロフォア標識抗ウサギIgG二次抗体で、標的細胞中のStx2の分布を可視化した(図6)。Stx2は、11E10が存在しない場合は細胞質全体に渡って分布されているように見える(図6A)が、11E10の存在下では大部分が核周囲体に集中したままに見える(図6B)。毒素/11E10混合物と共に培養した細胞を抗マウスIgGで染色した時、11E10はStx2と同じ核周囲点状構造で観察された(図 6C)11E10モノクローナル抗体は、毒素が存在しない場合には細胞に入ることができなかった(図6D)。核の周りの点状体内の11E10結合Stx2の局在は、抗体毒素複合体は細胞に入ったが細胞質へは入らなかったことを示唆した。従って我々は、中毒細胞を早期エンドソームマーカー・モノクローナル抗体EEA-1で免疫染色することによって、Stx2または11E10結合Stx2は早期エンドソーム内で局在化しているかを確かめた。染色パターンを重ねた時に橙黄色で示されるように、11E10結合Stx2で中毒させた細胞のStx2の多くは、早期エンドソームマーカーと共局在化した(図6E〜G)。対照的に、Vero細胞をStx2飲みと培養した場合は、毒素は細胞質全体に渡って見られ、少量のみが早期エンドソームマーカーと共局在化した(図6H〜J)。
【0104】
考察
結果から、11E10モノクローナル抗体エピトープは立体配座であり、結晶構造の毒素の活性部位に近いと思われるStx2 Aサブユニットの3つの非直線領域を含むことが示される(図2C)。11E10エピトープを特定する我々の戦略には、キメラStx1/Stx2毒素の産生を含み、これは、Stx2配列をStx1骨格に配置することにより抗体エピトープの三次元三次構造が維持され、11E10モノクローナル抗体による認識が可能になるという仮説に基づいていた。ウェスタン分析で11E10による認識を可能にしたStxA2の最小領域は、8つのStx2アミノ酸(42NHTPPGSY49) (配列番号:1)からのみ構成されることを我々は見出した。しかし、Stx2(領域A)からのこれらの8つのアミノ酸のみを持つキメラStx1/Stx2は、11E10モノクローナル抗体によって中和されなかった。11E10はStx2を中和するので、我々が特定した8つのアミノ酸は11E10エピトープの必須領域から成るものの、完全な中和エピトープを含まないと考えた。我々はさらに、Stx1 とStx2のアミノ酸配列および結晶構造両方における相違を分析し、11E10の認識および中和に関与している可能性のあるStx2上の追加的領域を特定しようとした。これらの比較を通して、11E10エピトープに寄与する可能性のあるStx2のセグメントの2つ以上を特定した。実際に、これらの領域がStx1上の対応セグメントを置換するために使用される場合、11E10による最も完全な認識および中和のためには、3つの領域すべてが必要であることを我々は見出した。
【0105】
モノクローナル抗体は、ウェスタンブロットの推定上の変性状態下でStx2を認識するので、完全11E10中和エピトープはStx2上の3つの非連続領域を含むという我々の結論はおそらく驚きであろう。この後者の観察に対するいくつかの説明が考えられる。これらには、ウェスタン反応が主に11E10と領域A(42NHTPPGSY49)の相互作用による、または別の研究(Smithraら (2006) Infect. Immun. 74:6992-6998)でモノクローナル抗体13C4に対して観察されたように、Aサブユニットの部分的な再折り畳みがウェスタンブロットプロセスの間に起こる、というものが含まれる可能性がある。
【0106】
Stx2上の11E10モノクローナル抗体中和エピトープを形成する3つの表面ループの配列は、Stx2変異体の中に保存されている。ヒト分離物ではめったに見られない2つの毒素である、Stx2d およびStx2eのこれらの領域中で異なるアミノ酸が2、3ある(Melton-Celsa ら (2005), 上記)。しかし、11E10モノクローナル抗体は、Stx2およびこのレポートで分析されたStx2変異体のすべて(Stx2c、Stx2d、Stx2dact、およびStx2e)の細胞毒性活性を検出し、これを部分的に中和した。Vero細胞上Stx2eは11E10によって中和されるが、ウェスタン形式ではStx2と比べてあまり認識されないという知見は、Stx2 と Stx2eの間で異なる領域Bの配列は、中和に対するよりもウェスタンブロットでの認識にとってより重要であるということを示す可能性がある。しかし、11E10がこれらの変異毒素のすべてを中和する能力を持つという事実は、これがヒトにおいてStx2 およびStx2関連毒素で媒介される疾患を治療するための良い候補である可能性を示唆する。実際、疾患の毒血症(Stx2)モデル(Sauterら (2008) Infect. Immun. 76:4469-4478)およびStx2dactを産生する株の疾患の経口給餌マウスモデル(Edwardsら, 上記)で、11E10は保護的であることを我々は見出した。我々は現在、11E10、cαStx2のヒト化バージョンの進行中の実験室評価に関与しており、これの第 I 相安全性試験が完了している(Dowling ら, 上記)。
【0107】
我々は、11E10エピトープを含むStx2からの29のアミノ酸のみを含むトキソイド化キメラ Stx1分子で免疫することにより、Stx2抗原投与からマウスを守ろうとした。免疫マウスはStx1に対する保護反応を起こしたが、Stx2中和抗体を産生したマウスはわずかであり、これらの力価は低かった。Stx2に対する反応は、キメラトキソイドのさらなる追加免疫で改善された可能性がある。
【0108】
11E10はインビトロでStx2の酵素活性をプロックし、これは毒素活性部位に11E10エピトープが近接していることに基づいて我々が予測した事実である。さらに、11E10が細胞内の毒素の全体的分布を変化させたことも観察され、この知見は異なるStxA2モノクローナル抗体(5C12)によるStx2中和でのデータ(Krautz-Petersonら ( (2008) Infect. Immun. 76:1931-1939)により報告)に類似している。これらの研究者は、モノクローナル抗体5C12がStxA2に結合すると、毒素の細胞内輸送パターンを変化させると結論付けた(Krautz-Peterson ら, 上記)。我々のデータは、一旦11E10/Stx2複合体が宿主細胞に結合してこの中に入ると、抗体は、細胞質ゾルの標的リボソームへの毒素の輸送を妨げる可能性があることを示している。しかし、11E10がインビトロで毒素の酵素機能を妨げることが示されたので、11E10と複合されたStx2のAサブユニットが細胞質ゾル中のその酵素標的に達した場合、毒素は細胞を殺すことができないであろうと我々は予測した。
【0109】
他の実施態様
記述された本発明の方法および組成物のさまざまな変更およびバリエーションは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者にとっては明らかである。本発明は、特定の望ましい実施態様に関連して記述されているが、当然のことながら、請求されている本発明はこのような特定の実施態様に不当に制限されるべきではない。
【0110】
この明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、それぞれの個別の刊行物が参照により具体的かつ個別に組み込まれるのと同じ程度に、参照によって本書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤的に許容可能な担体と、少なくとも1つの精製ポリペプチドとを含む、Stx2に対する免疫反応を刺激するための組成物であって、該ポリペプチドが:
(i) 配列番号:1;
(ii) 配列番号:1 および 2; または
(iii) 配列番号:1, 2, および3;
並びに非Stx2タンパク質骨格を含み、該配列番号:1、配列番号:1 および 2、または配列番号:1, 2, および3が該非Stx2タンパク質骨格に挿入されており、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記組成物。
【請求項2】
前記骨格がStx1と実質的に同一のタンパク質、またはその断片を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが配列番号:1および2 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記組成物がStx1に対する免疫反応を刺激しない、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが配列番号:8で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
薬剤的に許容可能な担体と、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも92%の同一性を持つアミノ酸配列を含む少なくとも1つの精製ポリペプチドとを含む、Stx2に対する免疫反応を刺激するための組成物であって、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記組成物。
【請求項9】
前記組成物がさらにアジュバントを含む、請求項1または8の組成物。
【請求項10】
(i) 配列番号:1;
(ii) 配列番号:1 および 2; または
(iii) 配列番号:1, 2, および3;
並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、精製ポリペプチドであって、該配列番号:1、配列番号:1 および 2、または配列番号:1, 2, および3が該非Stx2タンパク質骨格に挿入されており、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記精製ポリペプチド。
【請求項11】
前記骨格が、Stx1と実質的に同一のタンパク質、またはその断片を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが配列番号:1 および2 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも92%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドであって、該ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つを含み、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記精製ポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列と93%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項14の精製ポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列と95%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項15の精製ポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項16の精製ポリペプチド。
【請求項18】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列から成る、請求項17の精製ポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号:8に示されるアミノ酸配列の断片であり、前記ポリペプチドが配列番号:8のアミノ酸64〜122と少なくとも80%の配列同一性を持つ断片を含み、該断片が配列番号:1を含む、精製ポリペプチド。
【請求項20】
前記断片が配列番号:1 および2 を含む、請求項19の精製ポリペプチド。
【請求項21】
前記断片が配列番号:1、2 および3 を含む、請求項20の精製ポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリペプチドがトキソイド化されている、請求項10〜21のいずれか1つの精製ポリペプチド。
【請求項23】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つをコードしている、単離された核酸分子。
【請求項24】
前記核酸分子が発現制御配列に動作可能なように結合されている、請求項23の単離された核酸分子。
【請求項25】
請求項23の核酸分子を含む、ポリペプチドを発現することができるベクター。
【請求項26】
請求項25のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含むポリペプチドの製造方法であって:
(a) 請求項23の核酸を宿主細胞に導入する工程、および
(b) 宿主細胞からの該ポリペプチドを精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項28】
志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10 エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体の産生方法であって、
a) 請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つで哺乳動物を免疫する工程、および
b) 該哺乳動物の組織から、または該組織を使用して作られたハイブリドーマから、Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する前記抗Stx2抗体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項29】
Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する前記抗Stx2抗体がStx1に結合しない、請求項28の方法。
【請求項30】
c) インビトロ中和分析でStx2およびStx1に対する前記抗体をスクリーニングする工程であって、Stx2の細胞毒性作用の少なくとも50%を中和する抗体が、Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体である、前記工程
をさらに含む、請求項28の方法。
【請求項31】
工程(a)がアジュバントを使用することをさらに含む、請求項28の方法。
【請求項32】
前記抗体がポリクローナル抗体またはその断片である、請求項28の方法。
【請求項33】
前記抗体がモノクローナル抗体またはその断片である、請求項28の方法。
【請求項34】
前記抗体が修飾抗体である、請求項28の方法。
【請求項35】
前記抗体がキメラまたはヒト化抗体である、請求項28の方法。
【請求項36】
請求項1〜9の組成物のいずれか1つを投与することを含む、被験者にStx2への免疫反応を誘導する方法。
【請求項37】
請求項1〜9の組成物のいずれか1つを投与することを含む、被験者の志賀毒素関連疾患を治療または予防する方法。
【請求項38】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項37の方法。
【請求項39】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連している、請求項37の方法。
【請求項40】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含む志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体またはその断片であって、該抗体が11E10抗体(ATCC 1907)、キメラ11E10抗体、またはヒト化11E10抗体の該Stx2タンパク質への結合を阻害する、前記抗体、またはその断片。
【請求項41】
志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体、またはその断片であって、該エピトープが請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含み、該抗体が5C12抗体、キメラ5C12抗体、またはヒト化5C12抗体の前記Stx2タンパク質への結合を阻害する、前記抗体、またはその断片。
【請求項42】
前記抗体が、配列番号:1, 2, および3に示される配列を含む前記ポリペプチド中のエピトープに特異的に結合する、請求項40または41の抗体またはその断片。
【請求項43】
前記11E10エピトープが立体配座エピトープである、請求項40または41の抗体またはその断片。
【請求項44】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項45】
前記抗体がキメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項46】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項47】
前記抗体がStx2と11E10抗体の間の結合を阻害し、該11E10抗体が0.50 nM以下のKdを持つ、請求項40の抗体またはその断片。
【請求項48】
前記抗体がStx2の酵素活性をブロックするかまたはStx2の細胞内分布を変化させる、請求項40の抗体。
【請求項49】
前記抗体がIgG、IgM、IgE、IgD、またはIgAである、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項50】
前記抗体またはその断片がFab またはFv断片である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項51】
請求項40〜50の抗体のいずれか1つおよび薬剤的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項52】
請求項40〜50の抗体のいずれか1つを産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項53】
生体試料中のStx2の検出方法であって:
(a) 前記生体試料を請求項40〜50の抗体、またはその断片と、該抗体とStx2の間に複合体が形成できる条件下で接触させる工程、および
(b) 該複合体を検出する工程、
を含む、前記方法。
【請求項54】
前記生体試料が組織、細胞、細胞抽出物、体液、または生検からのものである、請求項53の方法。
【請求項55】
前記複合体がELISA、RIA、ウェスタンブロット、免疫沈降、またはフローサイトメトリーを使用して検出される、請求項53の方法。
【請求項56】
被験者の志賀毒素関連疾患の診断方法であって:
(a) 該被験者から生体試料を取得する工程、
(b) 該生体試料を請求項40〜50の抗体のいずれか1つと、該抗体とStx2の間に複合体が形成できる条件下で接触させる工程、および
(c) 工程(b)の該複合体を検出する工程、
を含み、
該試料中のStx2の存在は、被験者が志賀毒素関連疾患であると診断する、前記方法。
【請求項57】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項56の方法。
【請求項58】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染である、請求項56の方法。
【請求項59】
志賀毒素関連疾患を検出するための免疫検査キットであって、請求項40〜50の抗体のいずれか1つと、該抗体を検出する手段とを含む、前記キット。
【請求項60】
被験者の志賀毒素関連疾患を治療または予防する方法であって、請求項40〜50の抗体のいずれか1つの薬剤的有効量を該被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項60の方法。
【請求項62】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連している、請求項60の方法。
【請求項1】
薬剤的に許容可能な担体と、少なくとも1つの精製ポリペプチドとを含む、Stx2に対する免疫反応を刺激するための組成物であって、該ポリペプチドが:
(i) 配列番号:1;
(ii) 配列番号:1 および 2; または
(iii) 配列番号:1, 2, および3;
並びに非Stx2タンパク質骨格を含み、該配列番号:1、配列番号:1 および 2、または配列番号:1, 2, および3が該非Stx2タンパク質骨格に挿入されており、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記組成物。
【請求項2】
前記骨格がStx1と実質的に同一のタンパク質、またはその断片を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが配列番号:1および2 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記組成物がStx1に対する免疫反応を刺激しない、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが配列番号:8で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが配列番号:8で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
薬剤的に許容可能な担体と、配列番号:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも92%の同一性を持つアミノ酸配列を含む少なくとも1つの精製ポリペプチドとを含む、Stx2に対する免疫反応を刺激するための組成物であって、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記組成物。
【請求項9】
前記組成物がさらにアジュバントを含む、請求項1または8の組成物。
【請求項10】
(i) 配列番号:1;
(ii) 配列番号:1 および 2; または
(iii) 配列番号:1, 2, および3;
並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、精製ポリペプチドであって、該配列番号:1、配列番号:1 および 2、または配列番号:1, 2, および3が該非Stx2タンパク質骨格に挿入されており、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記精製ポリペプチド。
【請求項11】
前記骨格が、Stx1と実質的に同一のタンパク質、またはその断片を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが配列番号:1 および2 並びに非Stx2タンパク質骨格を含む、請求項10の精製ポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも92%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドであって、該ポリペプチドが配列番号:1, 2, および3に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つを含み、該ポリペプチドがStx2の抗原性を持つ、前記精製ポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列と93%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項14の精製ポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列と95%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項15の精製ポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項16の精製ポリペプチド。
【請求項18】
前記ポリペプチドが配列番号:8に示されるアミノ酸配列から成る、請求項17の精製ポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号:8に示されるアミノ酸配列の断片であり、前記ポリペプチドが配列番号:8のアミノ酸64〜122と少なくとも80%の配列同一性を持つ断片を含み、該断片が配列番号:1を含む、精製ポリペプチド。
【請求項20】
前記断片が配列番号:1 および2 を含む、請求項19の精製ポリペプチド。
【請求項21】
前記断片が配列番号:1、2 および3 を含む、請求項20の精製ポリペプチド。
【請求項22】
前記ポリペプチドがトキソイド化されている、請求項10〜21のいずれか1つの精製ポリペプチド。
【請求項23】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つをコードしている、単離された核酸分子。
【請求項24】
前記核酸分子が発現制御配列に動作可能なように結合されている、請求項23の単離された核酸分子。
【請求項25】
請求項23の核酸分子を含む、ポリペプチドを発現することができるベクター。
【請求項26】
請求項25のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含むポリペプチドの製造方法であって:
(a) 請求項23の核酸を宿主細胞に導入する工程、および
(b) 宿主細胞からの該ポリペプチドを精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項28】
志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10 エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体の産生方法であって、
a) 請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つで哺乳動物を免疫する工程、および
b) 該哺乳動物の組織から、または該組織を使用して作られたハイブリドーマから、Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する前記抗Stx2抗体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項29】
Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する前記抗Stx2抗体がStx1に結合しない、請求項28の方法。
【請求項30】
c) インビトロ中和分析でStx2およびStx1に対する前記抗体をスクリーニングする工程であって、Stx2の細胞毒性作用の少なくとも50%を中和する抗体が、Stx2タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体である、前記工程
をさらに含む、請求項28の方法。
【請求項31】
工程(a)がアジュバントを使用することをさらに含む、請求項28の方法。
【請求項32】
前記抗体がポリクローナル抗体またはその断片である、請求項28の方法。
【請求項33】
前記抗体がモノクローナル抗体またはその断片である、請求項28の方法。
【請求項34】
前記抗体が修飾抗体である、請求項28の方法。
【請求項35】
前記抗体がキメラまたはヒト化抗体である、請求項28の方法。
【請求項36】
請求項1〜9の組成物のいずれか1つを投与することを含む、被験者にStx2への免疫反応を誘導する方法。
【請求項37】
請求項1〜9の組成物のいずれか1つを投与することを含む、被験者の志賀毒素関連疾患を治療または予防する方法。
【請求項38】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項37の方法。
【請求項39】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連している、請求項37の方法。
【請求項40】
請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含む志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体またはその断片であって、該抗体が11E10抗体(ATCC 1907)、キメラ11E10抗体、またはヒト化11E10抗体の該Stx2タンパク質への結合を阻害する、前記抗体、またはその断片。
【請求項41】
志賀毒素タイプ2(Stx2)タンパク質の11E10エピトープに特異的に結合する抗Stx2抗体、またはその断片であって、該エピトープが請求項10〜22のポリペプチドのいずれか1つを含み、該抗体が5C12抗体、キメラ5C12抗体、またはヒト化5C12抗体の前記Stx2タンパク質への結合を阻害する、前記抗体、またはその断片。
【請求項42】
前記抗体が、配列番号:1, 2, および3に示される配列を含む前記ポリペプチド中のエピトープに特異的に結合する、請求項40または41の抗体またはその断片。
【請求項43】
前記11E10エピトープが立体配座エピトープである、請求項40または41の抗体またはその断片。
【請求項44】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項45】
前記抗体がキメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項46】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項47】
前記抗体がStx2と11E10抗体の間の結合を阻害し、該11E10抗体が0.50 nM以下のKdを持つ、請求項40の抗体またはその断片。
【請求項48】
前記抗体がStx2の酵素活性をブロックするかまたはStx2の細胞内分布を変化させる、請求項40の抗体。
【請求項49】
前記抗体がIgG、IgM、IgE、IgD、またはIgAである、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項50】
前記抗体またはその断片がFab またはFv断片である、請求項40または41の抗体、またはその断片。
【請求項51】
請求項40〜50の抗体のいずれか1つおよび薬剤的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項52】
請求項40〜50の抗体のいずれか1つを産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項53】
生体試料中のStx2の検出方法であって:
(a) 前記生体試料を請求項40〜50の抗体、またはその断片と、該抗体とStx2の間に複合体が形成できる条件下で接触させる工程、および
(b) 該複合体を検出する工程、
を含む、前記方法。
【請求項54】
前記生体試料が組織、細胞、細胞抽出物、体液、または生検からのものである、請求項53の方法。
【請求項55】
前記複合体がELISA、RIA、ウェスタンブロット、免疫沈降、またはフローサイトメトリーを使用して検出される、請求項53の方法。
【請求項56】
被験者の志賀毒素関連疾患の診断方法であって:
(a) 該被験者から生体試料を取得する工程、
(b) 該生体試料を請求項40〜50の抗体のいずれか1つと、該抗体とStx2の間に複合体が形成できる条件下で接触させる工程、および
(c) 工程(b)の該複合体を検出する工程、
を含み、
該試料中のStx2の存在は、被験者が志賀毒素関連疾患であると診断する、前記方法。
【請求項57】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項56の方法。
【請求項58】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染である、請求項56の方法。
【請求項59】
志賀毒素関連疾患を検出するための免疫検査キットであって、請求項40〜50の抗体のいずれか1つと、該抗体を検出する手段とを含む、前記キット。
【請求項60】
被験者の志賀毒素関連疾患を治療または予防する方法であって、請求項40〜50の抗体のいずれか1つの薬剤的有効量を該被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記志賀毒素関連疾患が溶血性尿毒症症候群である、請求項60の方法。
【請求項62】
前記志賀毒素関連疾患が大腸菌またはシゲラ・ディゼンテリエ感染に関連している、請求項60の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−515551(P2012−515551A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548095(P2011−548095)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021610
【国際公開番号】WO2010/085539
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501051125)ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021610
【国際公開番号】WO2010/085539
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501051125)ザ ヘンリー エム. ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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