説明

応力センサ、応力検知方法、応力検知システム及び応力検出部の施工方法

【課題】構造物などのひび割れの原因となる応力が発生した場合に、その発生した位置を視覚的な認識で検知可能とする応力センサ、これを用いた応力検知方法及び応力検出部の施工方法を提供する。
【解決手段】被検知部9に生じる応力が伝達されるように被検知部9に少なくとも一部が装着されると共に可視光が導入される光ファイバ2を備え、光ファイバ2の被検知部9に装着される部分の表面にマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸部2aを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いて披検知部に生ずる応力を検知する応力センサと応力検知システム、この応力センサを用いて披検知部に生ずる応力を検知する応力検知方法、披検知部に生ずる応力を検知するための光ファイバを被検出部に貼着する応力検出部の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物における日常的な維持管理では、外観を目視することによる目視点検が広く実施されている。目視点検は、構造物の損傷や劣化の早期発見、及び劣化の進み具合の確認等を目的として実施されているが、構造物にひび割れ、浮き、漏水、沈下、変形、変色等の損傷が発生した直後ではなく、しばらく時間が経過した後に点検されることが多いため、本質的な意味での維持管理とは言い難い。そのため、日常的な維持管理の点検方法としては、ひずみゲージ、光ファイバ、各種センサを用いる方法が知られている。
【0003】
従来、ひび割れ等の原因となる応力が構造物に発生した場合に、この応力を検知するためのセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたセンサには光ファイバが備えられており、このセンサが構造物の被検出部に固設されている。この光ファイバは、被検出部への応力により生じたひずみが所定値を超えたときに破断するように形成されている。又、この光ファイバには、可視光が導入されている。そのため、特許文献1のセンサでは、光ファイバに導入された可視光が破断した箇所で漏れて発光するため、ひび割れなどによる構造物の損傷を目視で容易に検知することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−175529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたセンサでは、光ファイバが破断する前の段階で、ひび割れの原因となる応力の発生を事前に検知することについては考慮されていない。このため、ひび割れの原因となる応力の発生をより早期に容易に検知し得るセンサが望まれていた。
【0006】
本発明は、ひび割れの原因となる応力の生じている場所を発光により容易に視覚的に検知することのできる応力センサ、応力検知方法、応力検知システム及び応力検出部の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の応力センサは、被検知部に生じる応力が伝達されるように該被検知部に少なくとも一部が装着されると共に可視光が導入される光ファイバを備え、該光ファイバの前記被検知部に装着される部分の表面にマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸部を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、被検知部に生じた応力によって光ファイバがマイクロベンディング現象を生ずる程に屈曲された場合に、可視光が光ファイバの屈曲部から漏れ出る。可視光の漏出は凹凸部により促進されるため、光ファイバの屈曲に対する可視光の漏出量が多くなり、該可視光の漏出を容易に視覚的に認識できる。このため、ひび割れ発生前又は光ファイバの破断前に被検出部に生じている応力を視覚的な認識によって容易に検知することができる。ひいては、被検知部のひび割れを防止するための対策等を早期に施すことも可能となる。なお、ここで、「視覚的な認識」は、人間の目による直接的な視認に限らず、監視カメラ等の視覚センサによる認識も含まれるものとする。このことは以降の説明でも同様とする。
【0009】
本発明の応力センサにおいて、光ファイバの凹凸部を表面に貼り付けた可撓性の基板を備え、該基板を前記被検知部に固着することによって前記凹凸部が該基板を介して前記被検知部に装着されることが好ましい。この場合、被検知部への光ファイバの装着は、光ファイバの凹凸部を貼り付けた基板を被検知部に固着させることにより行われる。そのため、光ファイバを被検知部に固着させる作業が容易となる。
【0010】
本発明の応力センサにおいて、前記基板の前記光ファイバを貼り付ける表面に凹凸部を設けることが好ましい。この場合、基板の表面に凹凸部が設けられているため、該表面に光ファイバを接着剤等により強固に貼り付けることができる。このため、被検知部に発生する応力が基板を介して光ファイバに伝達しやすくなり、該応力に対する応力センサの感度を高めることができる。
【0011】
本発明の応力検知方法は、前記応力センサを用いて、前記被検知部に生ずる応力を検知する方法であって、前記光ファイバの前記凹凸部を前記被検知部に装着した状態で、該光ファイバに可視光を導入し、該可視光の導入状態で、当該被検知部における前記光ファイバの表面からの可視光の漏れを視覚的に監視し、該可視光の漏れが視覚的に認識された場合に当該被検知部における応力の発生を検知することを特徴とする。
【0012】
この応力検知方法によれば、被検知部における前記光ファイバの表面からの可視光の漏れを視覚的に監視することで、専用的な高価は測定器具等を使用することなく、被検知部における応力の発生を視覚的な認識によって容易に検知することができる。
【0013】
本発明の応力検知システムは、前記応力センサを1つ以上備えるとともに、光ファイバの一端から可視光を導入させる可視光源を備えることを特徴とする。本発明によれば、応力センサと可視光源とがセットになっているので、被検知物の応力を検知するシステムを現場で容易に構築できる。
【0014】
本発明の応力検知システムは、前記応力センサを複数備えると共に、該複数の応力センサの光ファイバが直列に接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、複数の応力センサのそれぞれの光ファイバに、複数の可視光源を必要とすることなく、単一の可視光源から可視光を導入できる。
【0016】
この場合前記複数の応力センサの光ファイバを直列に接続してなる光ファイバ直列体は、その両端が互いに近接するように延設されていることが好ましい。これによれば、光ファイバ直列体の両端が互いに近接しているので、該光ファイバ直列体に可視光を導入する可視光源の設置箇所をほとんど変更することなく、該光ファイバ直列体の両端のうちの一方、又は両方から該光ファイバ直列体に可視光を導入することができ、現地での作業を簡略化することができる。
【0017】
なお、上記光ファイバ直列体は、一体構造の光ファイバ、すなわち単一の光ファイバにより構成されていてもよい。
【0018】
又、本発明の応力検知システムは、前記応力センサを複数備えると共に、入力された可視光を複数の出力部から分配して供給する光分配供給手段を備え、該光分配供給手段の各出力部は、各前記応力センサの光ファイバの一端に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、複数の応力センサのそれぞれの光ファイバに、複数の可視光源を必要とすることなく、単一の可視光源から光分配供給手段を介して可視光を導入できる。
【0020】
この場合、各前記光ファイバは、その両端が互いに近接するように延設されていることが好ましい。これによれば、各光ファイバ両端が互いに近接しているので、光分配供給手段や、これに可視光を導入する可視光源の設置箇所をほとんど変更することなく、各光ファイバの両端のうちの一方、又は両方から各光ファイバに光分配供給手段を介して可視光を導入することができ、現地での作業を簡略化することができる。
【0021】
本発明の応力検知部の施工方法は、可視光が導入可能な光ファイバの少なくとも一部の表面に、該光ファイバのマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸を付ける工程と、該凹凸を付けた光ファイバの部分を、被検知部に生じる応力が伝達されるように該被検知部に装着する工程とからなることを特徴とする。この場合、現場において光ファイバに凹凸を付した上で、該凹凸を付した光ファイバの部分を被検知部に装着するので、予め凹凸が付された専用的な光ファイバを使用せずとも、汎用的な光ファイバを用いて現場における施工作業を行なうことができる。なお、光ファイバに凹凸を付することは、汎用的な研磨剤などを使用して容易に行なうことができる。
【0022】
本発明において、光ファイバを貼着する工程では、光ファイバを装着する工程では、前記被検知部に予め固着した可撓性の基板上に、前記凹凸を付けた光ファイバの部分を接着剤で貼り付けることが好ましい。この場合、凹凸を付けた光ファイバの部分を貼り付ける面(基板の表面)を、その貼り付けに適した面にすることができるので、光ファイバの部分を基板を介して被検知部に装着することを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の応力センサの構成を示す説明図。
【図2】本発明の第1実施形態の応力センサの発光状態を説明する説明図。
【図3】本発明の第2実施形態の応力センサの構成を示す説明図。
【図4】応力センサを備える応力検出システムの一の構成例を示すシステム構成図。
【図5】応力センサを備える応力検出システムの他の構成例を示すシステム構成図。
【図6】応力センサを備える応力検出システムの他の構成例を示すシステム構成図。
【図7】応力センサを備える応力検出システムの他の構成例を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の応力センサの構成を示す説明図であり、(a)は応力センサを上面から見た図、(b)は応力センサの側面の断面図である。図1に示す応力センサ1は、光ファイバ2と、保護皮膜層3と、コネクタ4と、基板としてのベース5と、管6と、接着層7とを備える。
【0025】
光ファイバ2の一部には凹凸が形成されている。その凹凸は、光ファイバ2の一部の表面にざらつきを持たせるような形態で形成されている。凹凸の形成された光ファイバ2の凹凸部2aでは、凹凸の形成されていない光ファイバ2と比較して、マイクロベンディング現象による光の漏出が促進される。光ファイバ2の凹凸は、例えば研磨剤を用いた研磨により形成される。この光ファイバ2の表面の凹凸は、フッ化水素酸などによる侵食により形成することも可能である。
【0026】
保護皮膜層3(図1(a)では図示省略)は紫外線や水分、あるいは、異物との接触による損傷などから光ファイバ2を保護するための皮膜層である。保護皮膜層3は光ファイバ2の凹凸部2aを覆うように設けられている。
【0027】
コネクタ4は、光ファイバ2の一端部に装着されており、このコネクタ4に後述する可視光源8が着脱自在に接続されている。
【0028】
ベース5は、可撓性を有すると共に、板状に形成されている。部材には、エポキシをはじめとしたポリアミドイミドなどの樹脂が用いられる。ベース5は取付面5aと接着面5bとを有し、この接着面5b上に光ファイバ2の凹凸部2aが配置されている。ベース5は、接着面5bと被検知部9とを接着剤で固定することにより、被検知部9に固着される。
【0029】
管6はベース5の接着面5bの端部に固定されており、この管6に光ファイバ2が挿入されている。そのため、ベース5の接着面5bの端部付近で光ファイバ2の屈曲を防止することができる。
【0030】
接着層7は、光ファイバ2とベース5との間で層状に設けられており、可撓性を有している。この接着層7により、光ファイバ2とベース5とが固定されている。接着層7は、例えば、エポキシ系の接着剤を層状に塗布することにより形成される。
【0031】
可視光源8は、光ファイバ2に導入する可視光を発生させる光源であり、具体的には赤色レーザーが用いられている。可視光源8から発生される可視光は、光ファイバ2の内部に導入される。
【0032】
以上の構成の応力センサ1では、光ファイバ2の凹凸部2aが固定されたベース5の取付面5aが、応力の発生を検知しようとする被検知部9に接着剤(図示省略)により固着される。これにより、光ファイバ2の凹凸部2aは、被検知部9に発生する応力がベース5を介して伝達されるように該被検知部9に装着される。
【0033】
又、光ファイバ2の凹凸部2aを被検知部9に装着した状態で、光ファイバ2に可視光を導入し、可視光の導入状態で、被検知部9における光ファイバ2の表面からの可視光の漏れを視覚的に監視し、可視光の漏れが視覚的に認識された場合に被検知部9における応力の発生を検知することで、被検知部9に発生する応力を検知することができる。
【0034】
このとき、被検知部9に発生する応力により光ファイバ2が屈曲されると、装着された光ファイバ2に可視光が導入されることにより、マイクロペンディング現象が凹凸部2aで促進されて、光ファイバ2から漏出した可視光が視覚的に認識できるようになる。
【0035】
なお、本実施形態は、光ファイバ2をベース5に貼り付けて、このベース5を被検知部9に固着しているが、ベース5を用いずに光ファイバ2の凹凸部2aを直接的に被検知部9に装着することも可能である。光ファイバ2と被検知部9との装着には、接着剤などが用いられる。
【0036】
図2は第1実施形態の応力センサの発光状態を説明する説明図である。図2(a)は被検知部9の応力発生前の状態、図2(b)は被検知部9の応力発生時の状態、図2(c)は応力により被検知部9にひび割れが生じた状態を示している。
【0037】
図2(a)に示すように、ベース5を固着した被検知部9に応力が生じていない状態では、光ファイバ2を貼り付けたベース5は屈曲されていないため、光ファイバ2は屈曲しない。そのため、マイクロペンディング現象は光ファイバ2で生じておらず、可視光源8から入力された可視光は光ファイバ2の凹凸部2aで漏出しない。
【0038】
又、図2(b)に示すように、被検知部9に応力が生じてベース5が屈曲すると、ベース5に固定されている光ファイバ2が屈曲する。その際、光ファイバ2の凹凸部2aでマイクロペンディング現象が促進されるため、光ファイバ2から漏出した可視光を視覚的に認識することができる。
【0039】
被検知部9に生じた応力が大きくなるにつれてベース5の屈曲が大きくなるため、被検知部9に生じた応力が大きくなるにつれて光ファイバ2の屈曲が大きくなる。そのため、被検知部9に生じた応力が大きいときは光ファイバ2で漏出する可視光が強くなり、被検知部9に生じた応力が小さいときは光ファイバ2で漏出する可視光が弱くなる。
【0040】
又、図2(c)に示すように、被検知部9に生じる応力がさらに大きくなり、被検知部9に大きなひずみあるいはひび割れが生じると、ベース5に固定されている光ファイバ2が破断する。そのため、可視光源8から入力された可視光が破断箇所から漏出して、可視光を視覚的に認識することが可能となる。破断箇所で視覚的に認識することができる可視光は、マイクロペンディング現象により視覚的に認識することができる可視光よりも強い。
【0041】
以上のように、被検知部9に応力が発生すると、該応力が光ファイバ2の破断には至らない程度の応力であっても、光ファイバ2の凹凸部2aから漏出する可視光によって、該応力の発生を検知できる。
【0042】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態の応力センサの構成を示す説明図であり、応力センサの側面の断面図である。図3に示す応力センサ1は、第1実施形態の応力センサ1と共通する構成を有しているため、以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0043】
図3に示す応力センサ1では、ベース5の接着面5cに凹凸が形成されている。このため、被検知部9に生じている応力が効率よく光ファイバ2に伝達される。したがって、被検出部9に生じている応力をより感度よく検知することができる。ベース5の表面の凹凸は、例えば研磨剤を用いた研磨により形成される。
【0044】
[応力検知システムの構成]
次に、複数の被検知部9の応力を検知する応力検知システム11の例について説明する。
【0045】
図4(a)、(b)、(c)には、図1に示す応力センサ1を複数配設した応力検知システム11が示されている。図4(a)は、2つの応力センサの光ファイバが直列に接続された応力検知システムである。この応力検知システム11は、複数の、例えば2個の応力センサ1と、可視光源8とから構成されている。夫々の応力センサ1の光ファイバ2は直列に接続されており、直列体12を形成している。又、光ファイバ2の一端部にはコネクタ4が装着されており、このコネクタ4に可視光源8が着脱自在に接続されている。そのため、1つの可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2に可視光を導入できる。なお、それぞれの応力センサ1の光ファイバ2を共通の単一の光ファイバ2で構成してもよい。
【0046】
図4(b)は、2つの応力センサの光ファイバが直列に接続されると共に、光ファイバの両端が互いに近接するよう延設された応力検知システムである。図4(b)の応力検知システム11は、可視光源8と、複数の応力センサ1と、コネクタ4と、光カプラ13とを有している。光カプラ13は1つの入力部13aと複数の(図示例では2つの)出力部13bとを有している。
【0047】
光カプラ13の入力部13aには、接続用光ファイバ22aの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22の他端部にはコネクタ4aが装着されており、このコネクタ4aを介して接続用光ファイバ22aが可視光源8に接続されている。又、光カプラ13の各出力部13bには、接続用光ファイバ22bの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22bの他端部にはコネクタ4bが装着されており、このコネクタ4bが応力センサ1のコネクタ4に接続されている。かかる構成により、可視光源8からの可視光は、光カプラ13で分配されて各々の応力センサ1に供給される。
【0048】
図4(b)に示される応力センサ1は可視光源8に対して直列に接続されている。そのため、1つの可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2に可視光を導入できる。さらに、直列体12の両端部が光カプラ13を介して可視光源8に接続されるので、1つの応力センサ1の光ファイバ2が応力の増大により破断しても、他の応力センサ1の光ファイバ2に支障なく可視光が導入される。
【0049】
図4(c)の応力検知システム11は、複数の、例えば2つの応力センサの光ファイバが直列に接続された応力検知システムである。この応力検知システム11は、2個の応力センサ1と、可視光源8とから構成されている。夫々の応力センサ1は直列に接続されており、直列体12を形成している。又、光ファイバ2の一端部にはコネクタ4が装着されており、このコネクタ4に可視光源8が着脱自在に接続されている。そのため、1つの可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2に可視光を導入できる。
【0050】
又、直列体12を構成する光ファイバ2の両端部がベース5上から逸脱しており、その両端部が近接している。各応力センサ1の光ファイバ2の両端部が近接しているので、単一の可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2にその一端部から可視光を供給したとき、該可視光源8の設置場所において、各応力センサ1の光ファイバ2の他端部から可視光が導出するか否かを視覚的に認識することができる。ひいては、各応力センサ1の光ファイバ2を正常に可視光が通過しているか否かを確認できる。又、図4(b)のものと同様に、1つの応力センサの光ファイバ2が披検知部9で破断しても、他の応力センサ1の光ファイバ2に支障なく可視光を供給できる。
【0051】
図5(a)、(b)、(c)には、図1に示す応力センサ1を複数配設した応力検知システム11が示されている。図5(a)は、2つの応力センサの光ファイバが並列に接続された応力検知システムである。この応力検知システム11は、2個の応力センサ1と、可視光源8と、コネクタ4と、光カプラ13とを有している。光カプラ13は1つの入力部13aと複数の(図示例では2つの)出力部13bを有している。
【0052】
光カプラ13の入力部13aには、接続用光ファイバ22aの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22aの他端部にはコネクタ4aが装着されており、このコネクタ4aを介して接続用光ファイバ22aが可視光源8に接続されている。又、光カプラ13の各出力部13bには、接続用光ファイバ22bの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22bの他端部にはコネクタ4bが装着されており、このコネクタ4bが応力センサ1のコネクタ4に接続されている。かかる構成により、可視光源8からの可視光は、光カプラ13で分配されて各々の応力センサ1に供給される。
【0053】
図5(a)に示される応力センサ1は可視光源8に対して並列に接続されている。そのため、1つの可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2に可視光を導入できる。さらに、1つの応力センサ1の光ファイバ2が応力の増大により破断しても、他の応力センサ1の光ファイバ2に支障なくに可視光が導入される。
【0054】
図5(b)は、夫々の応力センサ1が並列に接続された応力検知システム11である。図5(b)の応力検知システム11は、可視光源8と、複数の応力センサ1と、コネクタ4と、光カプラ13とを有している。光カプラ13は1つの入力部13aと複数の(図示例では4つの)出力部13bを有している。
【0055】
光カプラ13の入力部13aには、接続用光ファイバ22aの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22aの他端部にはコネクタ4aが装着されており、このコネクタ4aを介して接続用光ファイバ22aが可視光源8に接続されている。又、光カプラ13の各出力部13bには、接続用光ファイバ22bの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22bの他端部にはコネクタ4bが装着されており、このコネクタ4bが応力センサ1のコネクタ4に接続されている。
【0056】
図5(b)に示される各応力センサ1は、その光ファイバ2の両端部がベース5上から逸脱しており、その両端部にそれぞれコネクタ4が装着されている。又、各応力センサ1の光ファイバ2の両端部は近接している。
【0057】
各応力センサ1の光ファイバ2の両端部がそれぞれ光カプラ13を介して可視光源8に接続されている。このため、各応力センサ1の光ファイバ2にはその両端部から可視光が導入される。このため、各応力センサ1の光ファイバ2は、ベース5を固着した被検知部9との光カプラ13との間で破断しても、光ファイバ2の凹凸部2aに可視光を供給できる。
【0058】
又、各応力センサ1の光ファイバ2の両端部が近接しているので、可視光源8の設置場所を動かすことなく、各応力センサ1の光ファイバ2が被検知部9で破断しても、他の応力センサ1の光ファイバ2に支障なく可視光を供給できる。
【0059】
図5(c)の応力検知システム11は、可視光源8と、一つの入力部13a及び複数の(図示例では2つの)出力部13bを有する光カプラ13と、複数の応力センサ1と、コネクタ4とを有している。
【0060】
光カプラ13の入力部13aには、接続用光ファイバ22aの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22aの他端部にはコネクタ4aが装着されており、このコネクタ4aを介して接続用光ファイバ22aが可視光源8に接続されている。又、光カプラ13の各出力部13bには、接続用光ファイバ22bの一端部が接続されている。この接続用光ファイバ22bの他端部にはコネクタ4bが装着されており、このコネクタ4bが応力センサ1のコネクタ4に接続されている。かかる構成により、可視光源8からの可視光は、光カプラ13で分配されて各々の応力センサ1に供給される。
【0061】
図5(c)に示される各応力センサ1は、その光ファイバ2の両端部がベース5上から逸脱しており、その両端部が近接している。各応力センサ1の光ファイバ2の両端部が近接しているので、単一の可視光源8から各応力センサ1の光ファイバ2にその一端部から可視光を供給したとき、該可視光源8の設置場所において、各応力センサ1の光ファイバ2の他端部から可視光が導出するか否かを視覚的に認識できる。ひいては、各応力センサ1の光ファイバ2を正常に可視光が通過しているか否かを確認できる。又、図5(b)のものと同様に、1つの応力センサ1の光ファイバ2が被検知部9で破断しても、他の応力センサ1の光ファイバ2に支障なく可視光を供給できる。
【0062】
図6には、図1に示す応力センサ1を橋梁に複数配設した応力検知システム11の施工例が示されている。応力センサ1は、被検知部9である橋梁において大きな応力の生じやすい箇所、例えば溶接部に固着される。応力センサ1は、応力の生じやすい箇所毎に固着される。又、各々の応力センサ1は、コネクタ4同士を接続させることにより直列若しくは並列に接続させることができる。又、橋梁には、可視光源8が取り付けられており、この可視光源8と各々の応力センサ1とは、光ファイバ2により接続されている。可視光源8からの可視光を光ファイバ2に導入することにより、各々の応力センサ1に可視光が導入される。そして、応力センサ1から漏出される可視光の位置と強さとから、橋梁に生じている応力とひずみを検知することができる。
【0063】
図7には、図1に示す応力センサ1を被検知部9であるガス管に複数配設した応力検知システム11の施工例が示されている。応力センサ1は、被検出部であるガス管の管部の外周に沿って固着される。このとき、応力センサ1と管部とは、光ファイバ2の屈曲が最小となるように被検知部9に固着される。この応力センサ1は、可視光源8からの可視光が光ファイバ2に導入されることにより、可視光が応力やひずみの生じている箇所で漏出する。この可視光の位置と強さとから、被検知部9に生じている応力とひずみを検知することができる。
【0064】
[応力検出部の施工方法]
次に、応力検出部の施工方法の一例について説明する。
【0065】
光ファイバ2のマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸を付ける工程では、まず、光ファイバ2の周囲を覆う被覆がある場合には、被覆を剥がす工程が実行される。被覆の剥離はファイバストリッパを用いて実行される。なお、被覆がない場合には、この作業は不要である。
【0066】
次に、光ファイバ2の被検知部9に装着しようとする部分の表面に凹凸を形成する工程が実行される。凹凸の形成は、研磨剤を用いることにより実行される。又、凹凸の形成は、研磨材の代わりに薬品によるエッチングで実行されてもよい。凹凸の形成された光ファイバ2は、十分に洗浄される。
【0067】
凹凸を付けた光ファイバ2を被検知部9に貼着する工程では、まず、被検知部9と接触する光ファイバ2の凹凸部2aに接着剤が塗布される。次に、接着剤を塗布した光ファイバ2の凹凸部2aを被検知部9に貼着する工程が実行される。光ファイバ2を被検知部9に貼着する際には、光ファイバ2の凹凸部2aは視覚的に認識可能となる位置に設けられる。なお、被検知部9に接着剤を塗布した後に、その塗布箇所に光ファイバ2の凹凸部2aを貼着してもよい。その後、光ファイバ2を覆うように保護皮膜層3が貼り付けられる。応力センサ1と可視光源8との間の配線には、必要に応じてコネクタ4が用いられる。
【0068】
このような応力検出部の施工方法により、予め凹凸が付された専用的な光ファイバを使用せずとも、汎用的な光ファイバを用いて現場における施工作業を行なうことができる。なお、光ファイバに凹凸を付することは、汎用的な研磨剤などを使用して容易に行なうことができる。
【0069】
又、光ファイバ2は、ベース5を介して被検知部9に貼着することも可能である。その際、光ファイバ2を貼着する工程では、まず被検知部9に応じた大きさにベース5を切断する工程が実施される。ベース5は容易に切断できる樹脂で構成されているため、被検出部9の位置と大きさに応じて、カッター等を用いてベース5の形状と大きさとを任意に切り出すことができる。次に、切り出されたベース5が十分に洗浄された後、ベース5が接着剤により被検知部9に貼着される。
【0070】
次に、光ファイバ2の凹凸部2aをベース5に貼着する工程が実施される。その際、光ファイバ2の凹凸部2aとベース5とがそれらのいずれかに塗布された接着剤からなる接着層7を介して貼着される。又、光ファイバ2とベース5との貼着の次の工程で、光ファイバ2と接着層7とを覆うように保護皮膜層3がベース5上に貼り付けられる。光ファイバ2を被検知部9に貼着する際には、光ファイバ2の凹凸部2aは視覚的に認識可能となる位置に貼着される。
【0071】
このような応力検出部の施工方法により、凹凸を付けた光ファイバ2の部分を貼り付ける面(基板の表面)を、その貼り付けに適した面にすることができるので、光ファイバ2の凹凸部2aを基板を介して被検知部に装着することを適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1…応力センサ、2、22a、22b…光ファイバ、2a…凹凸部、3…保護皮膜層、4…コネクタ、5…ベース、7…接着層、8…可視光源、9…被検知部、11…応力検知システム、12…直列体、13…光カプラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知部に生じる応力が伝達されるように該被検知部に少なくとも一部が装着されると共に可視光が導入される光ファイバを備え、
該光ファイバの前記被検知部に装着される部分の表面にマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸部を設けたことを特徴とする応力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の応力センサにおいて、
前記光ファイバの凹凸部を表面に貼り付けた可撓性の基板を備え、該基板を前記被検知部に固着することによって前記凹凸部が該基板を介して前記被検知部に装着されることを特徴とする応力センサ。
【請求項3】
請求項2記載の応力センサにおいて、
前記基板の前記光ファイバを貼り付ける表面に凹凸部を設けたことを特徴とする応力センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の応力センサを用いて、前記被検知部に生ずる応力を検知する方法であって、
前記光ファイバの前記凹凸部を前記被検知部に装着した状態で、該光ファイバに可視光を導入し、該可視光の導入状態で、当該被検知部における前記光ファイバの表面からの可視光の漏れを視覚的に監視し、該可視光の漏れが視覚的に認識された場合に当該被検知部における応力の発生を検知することを特徴とする応力検知方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の応力センサを1つ以上備えるとともに、前記光ファイバの一端から可視光を導入させる可視光源を備えることを特徴とする応力検知システム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の応力センサを複数備えると共に、該複数の応力センサの光ファイバが直列に接続されていることを特徴とする応力検知システム。
【請求項7】
請求項6記載の応力検知システムにおいて、前記複数の応力センサの光ファイバを直列に接続してなる光ファイバ直列体は、その両端が互いに近接するように延設されていることを特徴とする応力検知システム。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の応力センサを複数備えると共に、入力された可視光を複数の出力部から分配して供給する光分配供給手段を備え、
該光分配供給手段の各出力部は、各前記応力センサの光ファイバの一端に接続されていることを特徴とする応力検知システム。
【請求項9】
請求項8記載の応力検知システムにおいて、各前記光ファイバは、その両端が互いに近接するように延設されていることを特徴とする応力検知システム。
【請求項10】
可視光が導入可能な光ファイバの少なくとも一部の表面に、該光ファイバのマイクロベンディング現象による光の漏出を促進する凹凸を付ける工程と、
該凹凸を付けた光ファイバの部分を、被検知部に生じる応力が伝達されるように該被検知部に装着する工程とからなる、応力検出部の施工方法。
【請求項11】
請求項10記載の施工方法において、
前記光ファイバを装着する工程では、前記被検知部に予め固着した可撓性の基板上に、前記凹凸を付けた光ファイバの部分を接着剤で貼り付けることを特徴とする施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106966(P2011−106966A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262361(P2009−262361)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000151520)株式会社東京測器研究所 (29)