説明

応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置

【課題】 短時間で容易にSCC試験体を製作することができる応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置を提供する。
【解決手段】 予めき裂進展計測器によりき裂の深さと指示値との相関を計測する工程S1と、試験体材料に荷重を付与する工程S3と、この荷重が付与された試験体材料を加速腐食溶液に浸漬する工程S4と、前記計測した欠陥深さと指示値との相関に基づいて、この加速腐食溶液に浸漬中に進展する試験体材料のき裂の深さをき裂進展計測器で計測する工程S5と、この計測した試験体材料のき裂の深さが所定の値に達したときに取り出して試験体を製作する工程S6と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力腐食割れ(以下、「SCC」という)に係るき裂検査方法の技術開発又は検査技術向上のための応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力用機器にあっては、プラントの健全性をより強固なものとし、またプラントの長寿命化を図る観点から、万が一、原子炉一次系水に晒された原子力用機器の材料表面にSCCによるき裂等の異常が生じた場合に、SCCによるき裂に係る進展寿命を精度良く予測して、プラントの健全性評価、予防診断に役立てる技術の開発が鋭意進められている。
【0003】
一般に、SCCは、応力と腐食の共同作用によって生ずる合金材料の割れをいう。応力で腐食が促進されやすい材料が、引張応力を受けていて、その材料に特有の腐食環境にあるとき、この割れが起こる。
【0004】
原子力用機器において、炭素鋼使用に伴う腐食生成を避ける目的でオーステナイト系ステンレス鋼が広く使用されている。このオーステナイト系ステンレス鋼は、塩素イオンを含む液中に置かれた場合にSCCが発生する場合があるが、この塩素イオンを管理した純水環境下においてもSCCが発生する場合がある。すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼の場合、応力、材料、環境の3因子が重複した場合にのみSCCが発生する。
【0005】
この応力因子として、自重、内圧等の1次応力、溶接残留応力、熱膨張による応力、据付による応力等の2次応力が挙げられる。この応力負荷状態が材料表面の化学的性質を変化させるともいわれている。
【0006】
材料因子として、溶接熱影響部、グラインダー加工層、合金組成等が挙げられる。オーステナイト系ステンレス鋼は、600から800℃で保持されると結晶粒界にクロム炭化物が析出し、その周辺において本来の耐蝕性を支えているクロム濃度が低下する(鋭敏化)。沸騰水型原子炉の運転温度のような低い温度でも炭化物の核が予め存在すると鋭敏化が進む。この鋭敏化は、含有炭素量を少なくすることにより軽減できる。また、材料表面が加工を受けている場合、母材内部と異なった機械的、化学的性質を示すようになる。
【0007】
環境因子として、溶存酸素、過酸化水素、温度、pH等が挙げられる。表面層若しくは新生面の腐食形態及び腐食速度は環境の腐食力に依存する。形成された被膜が初期において安定であっても、環境の局所的経時変化によって不安定となることもある。
【0008】
このように、原子力用機器の材料表面に発生するSCCは応力、材料、環境の3因子に影響を受けるために、SCCによるき裂に係る進展寿命を精度良く評価するには、SCC試験体による検査が必要となる。
【0009】
このSCCを模擬したSCC試験体を得るには、SCC感受性を高めた材料を高温高圧水中に浸漬しなければならない上に長時間浸漬が必要であった。
【0010】
また、原子炉冷却材を模擬した水環境では288〜350℃で70〜150kgf/cmと高温高圧となるため試験設備が大掛かりとなり、大型の試験体を製作することは困難であるという難点があった。
【0011】
また、簡易的な手法で欠陥を付与する場合には、疲労による欠陥付与という方法があるが、き裂の形状がSCCとは異なるために試験体としての信頼性が不十分であった。
【0012】
また、試験体を加速腐食溶液であるテトラチオン酸塩溶液と接触させて、試験体に粒界型応力腐食割れを発生、進展させる技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、加速腐食溶液であるテトラチオン酸塩溶液に応力を付与した試験体を浸漬させて、試験体に応力腐食割れを発生、進展させるものである。
【特許文献1】特開2002−333397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の従来の応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置においては、SCC試験体を製作するためには、SCC感受性を高めた試験体材料を高温高圧水中に浸漬しなければならない上に、進展速度が遅いために長時間浸漬が必要であるという解決すべき課題があった。
【0014】
また、試験体を加速腐食溶液であるテトラチオン酸塩溶液中に浸漬させているときは、試験体材料に荷重を付与しかつ加速腐食溶液に浸漬した状態でモニタリングしながらき裂を付与することができないために、SCC試験体を精度良く容易に製作することが困難であるという解決すべき課題があった。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、短時間で容易にSCC試験体を製作することができる応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の応力腐食割れ試験体の製作方法においては、予めき裂進展計測器によりき裂の深さと指示値との相関を計測する工程と、試験体材料に荷重を付与する工程と、この荷重が付与された試験体材料を加速腐食溶液に浸漬する工程と、前記計測した欠陥深さ及び指示値の相関に基づいて、この加速腐食溶液に浸漬中に進展する試験体材料のき裂の深さをき裂進展計測器で計測する工程と、この計測した試験体材料のき裂の深さが所定の値に達したときに取り出して試験体を製作する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の応力腐食割れ試験体の製作装置においては、加速腐食溶液を貯蔵した試験槽と、この試験槽の外部に設けられた荷重付与機構と、この荷重付与機構により荷重を付与され前記加速腐食溶液に浸漬された試験体材料に発生するき裂の深さをモニタリングするき裂モニタと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試験体材料に荷重を付与しかつ加速腐食溶液に浸漬した状態でモニタリングしながらき裂を付与することができるために、短時間で容易にSCC試験体を製作することができる。
【0019】
これにより、SCC試験体のき裂を正確に測定できるために、SCCに係る欠陥検出技術の向上を図りひいては安全な原子炉プラントの運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る応力腐食割れ試験体の製作方法及び製作装置の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。ここで、互いに同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作方法の手順を示すフロー図である。本図に示すように、工程S1において、予め、き裂進展計測器によりSCC又は疲労き裂欠陥の深さと指示値との相関を計測しておく。このSCC又は疲労き裂欠陥の深さと指示値との相関を計測することにより、欠陥の深さを推定する手法を確立しておく。
【0022】
次に、工程S2において、試験体材料にSCCを発生させ易くするために熱処理又は冷間加工等を加える。さらに、工程S3において、試験体材料にSCCを発生させ易くするために荷重を付与して試験体材料に引張応力を発生させた状態としておく。
【0023】
工程S4において、荷重を付与した状態で試験体材料に適した加速腐食溶液に浸漬することにより、工程S1において計測したSCC又は疲労き裂欠陥の深さ並びに指示値の相関に基づいて、試験体材料に所期の欠陥であるSCC又は疲労き裂を付与する。
【0024】
次に、き裂メータ(き裂進展計測器)を必要に応じて校正し、工程S5において、加速腐食溶液に浸漬し欠陥を付与している期間中に、試験体材料において進展したき裂の深さをき裂進展計測器により計測する。
【0025】
工程S6において、試験体材料のき裂の深さが所定の値に達したところで取り出して試験体を製作する。
【0026】
このように形成された本実施の形態おいて、予め、き裂進展計測器により欠陥深さと指示値との相関を計測することにより、欠陥の深さを推定する手法を確立しておく。次に、試験体材料に荷重を付与した状態で試験体材料に適した加速腐食溶液に浸漬しておく。更に、き裂進展計測器により計測した欠陥深さと指示値との相関に基づいて、この加速腐食溶液に浸漬中に進展した試験体材料のき裂の深さを計測しながら、この試験体材料のき裂の深さが所定の値に達したところで取り出して試験体を得ることができる。
【0027】
本実施の形態によれば、発生するき裂は10−5mm/sのオーダーの進展速度が得られる。通常、高温水中で発生するき裂の進展速度は10−6〜10−8mm/sのオーダーである。したがって、本実施の形態によるき裂の進展速度は、従来の場合に比較して10〜1000倍の速度で応力腐食割れ試験体を製作することができる。また、温度は室温〜135℃で、大気圧であるため、応力腐食割れ試験体の製作装置が簡素化され大型の応力腐食割れ試験体の製作が可能となる。
【0028】
次に、本実施の形態による応力腐食割れ試験体の製作装置について説明する。図2は、応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図である。
【0029】
応力腐食割れ試験体の製作装置は、加速腐食溶液14を貯蔵した試験槽13から構成される。この加速腐食溶液14として、一例として、テトラチオン酸溶液を使用する。
【0030】
このテトラチオン酸溶液は、一般に、濃度0.10〜5%のものが使用される。濃度0.10%未満の場合及び5%を越える場合は、試験体材料にSCCが発生しにくい傾向がある。この腐食液はSCC感受性を有する鋭敏化304鋼や、鋭敏化Ni基合金にSCCを付与する際に用いられる。室温かつ大気圧で簡便に粒界型SCC(IGSCC)を付与することができるため、大型の応力腐食割れ試験体の製作に対しても適用性が大きい。
【0031】
また、このテトラチオン酸溶液は、テトラチオン酸のpHを1〜4に調整している。pH1未満の場合及びpH4を越える場合は試験体材料にSCCが発生しにくい傾向がある。このように、テトラチオン酸のpHを調整して全面腐食を抑えSCCのみを付与するように条件を規定しているのである。
【0032】
また、この加速腐食溶液14として、テトラチオン酸溶液に0.01〜1%の塩化物溶液を添加したものを使用している。腐食孔を形成しSCCを加速させるためである。0.01%未満の場合及び1%を越える場合は、腐食孔を形成しSCCを加速させる傾向が乏しいからである。
【0033】
このように、テトラチオン酸溶液に0.01〜1%の塩化物溶液を添加したものを使用することにより、ややSCC感受性の低い材料に対しSCCを付与することが可能となる。
【0034】
この試験槽13の外部には、荷重付与機構として引張荷重を付与する引張冶具15を設置する。
【0035】
この引張冶具15により試験体材料11に引張荷重を付与する。この引張荷重を付与された状態の試験体材料11は、試験槽13に貯蔵したテトラチオン酸溶液に浸漬される。
【0036】
この引張荷重が付与されテトラチオン酸溶液に浸漬された試験体材料11には、リード線16aが接続される。試験体材料11に発生するき裂12の状況は、リード線16aを介して、試験槽13の外部に設けられたき裂進展計測器であるき裂モニタ16にてモニタリングされる。すなわち、き裂進展計測器として交流電位差法または直流電位差法により、試験体材料11を流れる電流の抵抗値からき裂12の深さを計測する方法が使用されている。この方法によれば、任意の深さのき裂12を随意に計測することが可能となる。
【0037】
このモニタリングされた試験体材料11に発生するき裂12に関するデータは、データ収集装置17に格納される。
【0038】
なお、試験体材料11に発生するき裂12は、放電加工により又は放電加工後に疲労き裂により付与し、荷重を集中させ特定の個所にSCCに係るき裂を付与することもできる。
【0039】
本実施の形態によれば、加速腐食溶液14としてテトラチオン酸溶液を用い、試験槽13の外部より引張荷重を付与し、試験体材料11のき裂12の深さをモニタリングしながらき裂12を付与できるので、き裂12の深さが所期の値に達したと判断したときに、試験体材料11を取り出して応力腐食割れ試験体を短時間で容易に製作することができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、応力腐食割れ試験体は、試験温度は室温〜135℃程度であり大気圧下における製作であるため、応力腐食割れ試験体の製作装置が簡素化され大型の応力腐食割れ試験体の製作が可能となる。
【0041】
次に、本発明の他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置について説明する。図3は、他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図である。図3において、図2と同一又は類似の部分には共通の符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
応力腐食割れ試験体の製作装置は、加速腐食溶液14を貯蔵した試験槽13から構成される。この加速腐食溶液14として、本実施の形態では、沸騰塩化マグネシウム溶液を使用する。この沸騰塩化マグネシウム溶液は、濃度41%〜43%できれば略42%の溶液を使用する。濃度41%未満の場合及び濃度43%を越える場合は試験体材料にSCCが発生しにくい傾向がある。
【0043】
この濃度略42%の沸騰塩化マグネシウム溶液は、SCC感受性の極めて低い材料に対しても速い速度でSCCき裂を進展させることができる。
【0044】
また、この加速腐食溶液14の他の例として、濃度10〜60%で、温度150〜350℃の高温酸化ナトリウム溶液を使用した。濃度9%未満の場合及び60%を越える場合で、温度150未満の場合及び温度350℃を越える場合は、試験体材料にSCCが発生しにくい傾向がある。
【0045】
この濃度10〜60%で、温度150〜350℃の高温酸化ナトリウム溶液は、SCC感受性の極めて低い材料に対しても速い速度でSCCき裂を進展させることができる。この溶液は、略42%の沸騰塩化マグネシウム溶液と同様に、SCC感受性の極めて低い材料に対しても速い速度でSCCき裂を進展させることができる。この略42%の沸騰塩化マグネシウム溶液と異なる点はSCCの形態が粒界型となることである。
【0046】
次に、この試験槽13の外部には、荷重付与機構として曲げ荷重を付与する曲げ冶具19を設置する。曲げ冶具19は、凸状の冶具に試験体材料11aの両端をボルト19aで押し付けて曲げ荷重を付与するための物である。
【0047】
このように、三点曲げ又は四点の曲げ治具19を用いることにより、曲げ応力を付与することで、大掛かりな装置を用いることなく、簡便にSCCを付与することを特徴とする。
【0048】
加速腐食溶液14として、沸騰塩化マグネシウム溶液を使用しているので、蒸発による液濃度変化を防ぐために試験槽13の上部に冷却器18を設け、環流を行いながら応力腐食割れ試験体の製作を行っている。
【0049】
この曲げ荷重が付与されテトラチオン酸溶液に浸漬された試験体材料11aには、リード線16aが接続される。試験体材料11aに発生するき裂の状況は、リード線16aを介して、試験槽13の外部に設けられたき裂モニタ16にてモニタリングされる。
【0050】
このように構成された本実施の形態において、加速腐食溶液14としてテトラチオン酸溶液を用い、試験槽13の外部より曲げ荷重を付与し、試験体材料11aのき裂の深さをモニタリングしながらき裂を付与できるので、き裂の深さが所期の値に達したと判断したときに、試験体材料11aを取り出して応力腐食割れ試験体を製作することができる。
【0051】
次に、本発明の他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置について説明する。図4は、他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図である。図4において、図3と同一又は類似の部分には共通の符号を付して重複説明を省略する。
【0052】
本発明の実施の形態において、荷重付与機構として曲げ荷重を付与する曲げ冶具20を設置する。曲げ冶具20は、試験体材料11bの両端を曲げ冶具20の両端で支持し、この支持した状態で試験体材料11bの中央部をボルト20bで押し付けて曲げ荷重を付与する冶具である。
【0053】
この試験体材料11bの上部に加速腐食溶液14aを貯蔵した溶液保持セル13aが設置される。すなわち、荷重付与機構である曲げ冶具20により曲げ荷重が付与されて試験体材料11bのき裂12が発生する部分及びこの近傍に、溶液保持セル13aが設置され、溶液保持セル13a内の加速腐食溶液14aが接液される。
【0054】
この溶液保持セル13aは、図3と比較して小型の容器から構成される。これは、試験体材料11bのき裂が発生する部分及びこの近傍のみを加速腐食溶液14aに接液させるためである。
【0055】
なお、漏洩した加速腐食溶液14aは、曲げ冶具20の下端に設置された液受け21で回収される。
【0056】
この曲げ荷重が付与されテトラチオン酸溶液に浸漬された試験体材料11bには、リード線16aが接続される。試験体材料11bに発生するき裂12の状況は、リード線16aを介して、溶液保持セル13aの外部に設けられたき裂モニタ16にてモニタリングされる。
【0057】
このように構成された本実施の形態において、加速腐食溶液14aとしてテトラチオン酸溶液を用い、溶液保持セル13aの外部より曲げ荷重を付与し、試験体材料11bのき裂12の深さをモニタリングしながらき裂12を付与できるので、き裂12の深さが所期の値に達したと判断したときに、試験体材料11bを取り出して応力腐食割れ試験体を製作することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、予めき裂を付与した試験体材料に曲げ治具により曲げ荷重を付与し、試験体材料11bの上に溶液保持セル13aを設置して、き裂を付与する部分及びこの近傍のみ接液させることにより、加速腐食溶液の軽減化を図っている。また、大型の応力腐食割れ試験体の製作に対しては、本実施の形態を用いることにより、外部から荷重を追加しながらき裂を進展させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作方法の手順を示すフロー図。
【図2】本発明の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図。
【図3】本発明の他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図。
【図4】本発明の他の実施の形態の応力腐食割れ試験体の製作装置を示す概略縦断面図。
【符号の説明】
【0060】
11・・・試験体材料、12・・・き裂、13・・・試験槽、13a・・・溶液保持セル、14・・・加速腐食溶液、15・・・引張冶具(荷重付与機構)、16・・・き裂モニタ(き裂進展計測器)、17・・・データ収集装置、18・・・冷却器、19、20・・・曲げ治具(荷重付与機構)、21・・・液受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めき裂進展計測器によりき裂の深さと指示値との相関を計測する工程と、
試験体材料に荷重を付与する工程と、
この荷重が付与された試験体材料を加速腐食溶液に浸漬する工程と、
前記計測した欠陥深さ及び指示値の相関に基づいて、この加速腐食溶液に浸漬中に進展する試験体材料のき裂の深さをき裂進展計測器で計測する工程と、
この計測した試験体材料のき裂の深さが所定の値に達したときに取り出して試験体を製作する工程と、
を有することを特徴とする応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項2】
前記加速腐食溶液は、濃度0.1〜5%のテトラチオン酸溶液であること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項3】
前記加速腐食溶液は、前記テトラチオン酸のpHが1〜4に調整されること、を特徴とする請求項2記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項4】
前記加速腐食溶液は、前記テトラチオン酸に0.01〜1%の塩化物溶液が添加されることを特徴とする請求項2又は3記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項5】
前記加速腐食溶液は、濃度41〜43%の沸騰塩化マグネシウム溶液であること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項6】
前記加速腐食溶液は、濃度10〜60%で、温度150〜350℃の高温酸化ナトリウム溶液であること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項7】
前記加速腐食溶液に浸漬する工程において、試験体材料のき裂を付与する部分及びその近傍のみを加速腐食溶液に接液させること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項8】
前記荷重を付与する工程において、曲げ治具を使用して曲げ荷重を付与すること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項9】
前記き裂進展計測器は、交流電位差法又は直流電位差法により試験体材料に流れる電流の抵抗値からき裂の深さを計測すること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項10】
前記試験体材料のき裂を、放電加工により又は放電加工後に疲労き裂により付与すること、を特徴とする請求項1記載の応力腐食割れ試験体の製作方法。
【請求項11】
加速腐食溶液を貯蔵した試験槽と、
この試験槽の外部に設けられた荷重付与機構と、
この荷重付与機構により荷重を付与され前記加速腐食溶液に浸漬された試験体材料に発生するき裂の深さをモニタリングするき裂モニタと、
を有することを特徴とする応力腐食割れ試験体の製作装置。
【請求項12】
前記荷重付与機構は、前記試験体材料に引張荷重を付与する引張治具であること、を特徴とする請求項11記載の応力腐食割れ試験体の製作装置。
【請求項13】
前記荷重付与機構は、前記試験体材料に曲げ荷重を付与する曲げ治具であること、を特徴とする請求項11記載の応力腐食割れ試験体の製作装置。
【請求項14】
前記試験槽は、前記荷重付与機構により荷重を付与された試験体材料のき裂が発生する部分及びこの近傍のみを前記加速腐食溶液に接液させる手段を具備すること、を特徴とする請求項11記載の応力腐食割れ試験体の製作装置。
【請求項15】
前記き裂モニタでモニタリングする試験体材料に発生するき裂に関するデータを格納するデータ収集装置を具備すること、を特徴とする請求項11記載の応力腐食割れ試験体の製作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−10427(P2006−10427A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186067(P2004−186067)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】