応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法及びその装置
【課題】既設の鉄塔の部材には既に応力が掛かっているので、油圧ジャッキやターンバックル等の伸縮自在な工具により、部材に掛かっている応力を解放し、当該解放したときの前後の荷重又は歪みの差を測定することにより、容易に当該部材の応力を測定する。
【解決手段】山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に引張力が働いている。この腹材4に沿ってターンバックル6を設け、このターンバックル6の一端は前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7に固定され、他端はワーヤー8を介して主柱材3に固定し、この腹材4と主柱材3とを接続しているボルト、ナット5のナットを緩め、ターンバックル6を収縮させ、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する。
【解決手段】山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に引張力が働いている。この腹材4に沿ってターンバックル6を設け、このターンバックル6の一端は前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7に固定され、他端はワーヤー8を介して主柱材3に固定し、この腹材4と主柱材3とを接続しているボルト、ナット5のナットを緩め、ターンバックル6を収縮させ、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設の鉄塔の部材、特に腹材に掛かっている応力を解放して、当該応力を測定する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤等に立っている鉄塔は地盤沈下、地震変動等による基礎の不同変位により部材に二次的応力が加わる。これらの部材の変形、変動に伴う力が実際にどのくらい加わっているのかを知ることは、鉄塔の耐力を検討する上で重要な要素である。
【0003】
しかしながら、従来は、新設の鉄塔を設計する際にこれらの応力を予測乃至は推定しているだけである。特許文献1は、複数の節に分割された鉄塔の架構形状及び部材を入力して解析モデルデータを作成して応力解析その他の解析を行い、解析結果を出力して鉄塔の設計や診断を行う鉄塔設計・診断システムである。
【0004】
また、特許文献2は、鉄塔の腹材取替工法と鉄塔の腹材取替検討システムであり、既設の鉄塔に腹材取替装置を取り付け、既設の鉄塔から腹材を取り外し、腹材取替装置と腹材取替装置の周辺の周辺部材に働く応力と、応力に対応する腹材の取替装置と周辺部材の強度を検討する鉄塔の腹材取替検討システムである。この場合、取替える腹材を取り外すと、鉄塔構造が変化するため、腹材取替装置とその周辺の部材の応力が当初の設計値と異なるようになる。それで腹材取替装置とその周辺の部材の強度検討が必要になる。そこで、立体解析により、腹材取替装置とその周辺の部材の応力を求めている。
【0005】
【特許文献1】特許第3787799号公報
【特許文献2】特開2005−350954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2は、いずれも解析によって部材の応力を求めるものである。また、力が作用していない状態と力が作用している状態において、力の変化を別の物理量の変化として計測するものが一般的であり、力が作用していない状態(初期状態)における計測が必要である。構造物の部材のように、力が既に作用している状態において、その力の大きさを計測することが困難であった。
この様に、既設の鉄塔の、腹材等の部材の応力を実際に、簡単に測定する方法がないのが現状である。
【0007】
そこでこの発明は、既設の鉄塔の部材には既に応力が掛かっているので、油圧ジャッキやターンバックル等の伸縮自在な工具により、部材に掛かっている応力を解放し、当該解放したときの前後の荷重又は歪みの差を測定することにより、容易に当該部材の応力を測定する方法及びその装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これを当該腹材の応力に換算する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具にターンバックルを用い、当該ターンバックルの一端は前記固定治具に、他端はワイヤー又は固定治具により主柱材に係止し、前記ターンバックルを収縮させて、前記測定手段として当該ターンバックルに貼着した歪みゲージにより歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記ワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に係止し、前記油圧ジャッキを収縮させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記腹材に圧縮する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記固定治具又は係止治具により主柱材に係止し、前記油圧ジャッキを伸張させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法としたとした。
【0012】
また、請求項5の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在なターンバックルを設け、このターンバックルに貼り付けた歪みゲージにより当該ターンバックルの歪み度合いを測定する測定手段を設け、このターンバックルの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー又は固定治具を介して主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ターンバックルを収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の歪み度合いを前記歪みゲージにより測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する構成とした、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置とした。
【0013】
また、請求項6の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な油圧ジャッキを設け、この油圧ジャッキに設けたロードセルにより当該油圧ジャッキに掛かる荷重を測定する測定手段を設け、この油圧ジャッキの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかを介して主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記油圧ジャッキを伸張又は収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の前記油圧ジャッキに掛かる荷重を前記ロードセルにより測定し、これを応力に換算する構成とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、伸張又は収縮自在な工具で伸張又は収縮することにより腹材と主柱材とを接合している前記ボルトが回転可能となった状態とは、前記工具に腹材に作用している応力が移り、当該腹材の応力を解放した状態である。そこで、前記工具に設けた測定手段により、工具が受けている荷重又は歪み度合いを測定し、これを腹材に作用している軸力(応力)に換算するもので、簡単な方法で、既設の鉄塔の部材、特に腹材の応力を測定できるものである。
【0015】
また、請求項2及び5の発明によれば、前記伸張又は収縮自在な工具をターンバックルとし、前記測定手段はターンバックルに貼着した歪みゲージを用いた測定手段としているため、工具の操作及び測定が容易であり、鉄塔の腹材の応力測定をさらに容易にできる。
【0016】
また、請求項3、4及び6の発明によれば、前記伸張又は収縮自在な工具を油圧ジャッキとし、前記測定手段は油圧ジャッキに設けたロードセルとしているため、工具の操作及び測定が容易であり、鉄塔の腹材の応力測定をさらに容易にできる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端を主柱材にワイヤー又は固定治具に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これに基づいて当該腹材の応力を計測する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法である。
【0018】
これにより、簡単な方法で、既設の鉄塔の部材、特に腹材の応力を測定できるものである。
【実施例1】
【0019】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施例1の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、山形鋼から成る鉄塔の腹材には引張力が働いている場合である。
【0020】
実施例1の応力測定装置は、山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に引張力が働いている。この腹材4と主柱材3との接続は、ボルト、ナット5により接続されている。この腹材4に沿ってターンバックル6が設けられ、このターンバックル6の一端は、前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7にピン接続され、このターンバックル6の他端はワイヤー8を接続し、当該ワイヤー8を主柱材3に巻き付けて固定されている。また、前記ターンバックル6には歪みゲージが設けられ、これを測定手段としている。
【0021】
そして、前記ボルト、ナット5のナットを緩め、前記ターンバックル6を操作して、当該ターンバックル6を収縮させ、前記腹材4に掛かっている応力をターンバックル6に移す。そして、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記腹材4に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際、前記歪みゲージにより当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力を計測する。これが前記腹材4の応力となる。
【実施例2】
【0022】
また、この発明の実施例2を、図2に基づいて説明する。図2のA図及びB図は、それぞれ、この発明の実施例2の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、山形鋼から成る鉄塔の腹材には圧縮力が働いている場合である。A図とB図は油圧ジャッキ下端の係止治具が異なっているのみで、他は同一である。
【0023】
実施例2の応力測定装置は、山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に圧縮力が働いている。この腹材4と主柱材3との接続は、ボルト、ナット5により接続されている。この腹材4に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端は、係止治具10又は11にピン接続されている。これらの係止治具10又は11は鉄塔1の基礎2又は基礎2近くの主柱材3に係止されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0024】
そして、前記ボルト、ナット5のナットを緩め、前記油圧ジャッキ9を手動操作して、当該油圧ジャッキ9を伸張させ、前記腹材4に掛かっている応力を油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記腹材4に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際油圧ジャッキ9のロードセルにより当該油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これが前記腹材4の応力となる。
【実施例3】
【0025】
また、この発明の実施例3を、図3及び図4に基づいて説明する。図3のA図、B図及び図4は、それぞれ、この発明の実施例3の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、鋼管から成る鉄塔の腹材に引張力が働いている場合である。図3のA図とB図はターンバックル6を用いた場合、図4は油圧ジャッキ9を用いた場合である。
【0026】
実施例3の応力測定装置は、鋼管から成る鉄塔12の主柱材14の下端部に接続した腹材15に引張力が働いている。この腹材15と主柱材14との接続は、ボルト、ナット16により接続されている。この実施例3の図3のA図及びB図のものは、この腹材15に沿ってターンバックル6が設けられ、このターンバックル6の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具17又は18にピン接続され、このターンバックル6の他端はワイヤー8が接続され、当該ワイヤー8が主柱材14に巻き付けられて固定されている。また、前記ターンバックル6には歪みゲージが設けられ、これを測定手段としている。
【0027】
また、実施例3の図4のものは、前記腹材15に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具18にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端はワイヤー8が接続され、当該ワイヤー8が主柱材14に巻き付けられて固定されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0028】
これらの実施例3の測定操作は、上記実施例1とほぼ同じであり、ターンバックル6又は油圧ジャッキ9を収縮させて、腹材15に掛かっている応力をターンバックル6又は油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット16のボルトが回転可能となった際、前記腹材15に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際、前記歪みゲージ又はロードセルにより当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力を計測し、又は油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これらが前記腹材15の応力となる。
【実施例4】
【0029】
実施例4の応力測定装置は、鋼管から成る鉄塔12の主柱材14の下端部に接続した腹材15に圧縮力が働いている。この腹材15と主柱材14との接続は、ボルト、ナット16により接続されている。この実施例4の図5のA図及びB図のものは、油圧ジャッキ9の他端が固定された下部固定治具19、20が異なり、他の構成は同じである。
【0030】
この実施例4のA図及びB図のものは、前記腹材15に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具18にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端は鋼管用下部固定治具19又は20に接続されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0031】
そして、前記実施例2と同様に、前記油圧ジャッキ9を手動操作して、当該油圧ジャッキ9を伸張させ、前記腹材15に掛かっている応力を油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット16のボルトが回転可能となった際、前記腹材15に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際油圧ジャッキ9のロードセルにより当該油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これが前記腹材15の応力となる。
【0032】
以下、前記実施例1〜4において使用した、山形鋼用固定治具7、係止治具10及び11、鋼管用固定治具17及び18、下部固定治具19及び20の各構造について説明する。
【0033】
前記実施例1及び2において使用した、腹材4に固定する山形鋼用固定治具7の構成を図6に示す。図6の(a)図及び(b)図と、(c)図及び(d)図とは山形鋼のアングルの向きが反対のものであり、構成は同じである。また、図6において、(a)図及び(c)図はそれぞれ腹材4を挟んだ断面図であり、(b)図及び(d)図はそれぞれ(a)図、(c)図の平面図である。
【0034】
この山形鋼用固定治具7は、一枚の平板7aとアングル鋼7b及び7cとを合わせて山形鋼から成る腹材4を被い、各端縁でボルト7dを通してナット7eで固定したものである。なお、腹材4を挟んでいない平板7aとアングル鋼7bとの間には、前記腹材4の厚さと略同じスペーサー板7fを挟んで、各部材のがたつきを防止している。そして、図6では、前記平板7aに、前記ターンバックル6の一端をボルト6aで固定したものである。図示は省略するが、この山形鋼用固定治具7に前記油圧ジャッキ9を固定する場合は、前記平板7aに穿った適宜の孔に油圧ジャッキ9のピンを通してピン接続するものである。
【0035】
また、前記実施例2で使用した、油圧ジャッキ9の他端に接続された係止治具10及び係止治具11の構成を図7及び図8で説明する。図7は、前記係止治具10を示し、鉄塔1の基礎2上に載せる係止基板10aの上に垂直片10bを立設し、当該垂直片10bの前方の係止基板10aの端縁に係止切り込み10cを設け、前記垂直片10bに孔10dを設けたものである。
【0036】
この係止治具10は、図2のA図に示すように、係止基板10aを鉄塔1の基礎2の上に置き、係止切り込み10cを主柱材3の一片に差し込み、前記孔10dに前記油圧ジャッキ9の他端のピンを差し込み、ピン接続するものである。
【0037】
また、図8は、前記係止治具11を示し、これは鉄塔1の基礎2に固定するもので、(a)図は斜視図、(b)図は鉄塔1の基礎に固定した状態を示す側面図である。
【0038】
この係止治具11は、二枚のアングル材11a、11bを図8の(a)図に示すように、相対向させて設け、これらのアングル材11a、11bの両端間に、一方のアングル材11aから他方のアングル材11bに長ボルト11cを渡して、他方のアングル材11bの外面から突出した長ボルト11cにナット11dを螺着し、一方のアングル材11aの中央部に、孔11eを有する垂直片11fを設けたものである。
【0039】
この係止治具11は、図8の(b)図に示すように、鉄塔の基礎2の相対向する上部角部に二つのアングル材11a、11bを被せ、基礎2の両側に位置する長ボルト11cの端部のナット11dを締め付けることにより基礎2に固定する。そして、前記垂直片11fの孔11eに前記油圧ジャッキ9の他端のピンを差し込み、ピン接続するものである。
【0040】
また、前記実施例3及び4で使用した、油圧ジャッキ9の一端を腹材15に固定する、鋼管用固定治具17及び18の構成を図9及び図10で説明する。図9は前記鋼管用固定治具17を示し、(a)図は斜視図、(b)図は正面図を示す。
【0041】
この鋼管用固定治具17は、二つの断面V字型鋼17aと17bを図のように相対向させて設け、これらの両側に夫々設けた耳片17c、17dを相対向させて、ボルト17eをこれらに通して、その端部にナット17fを螺着したものであり、一方の断面V字型鋼17aに、孔17gを有する係止片17hを立設し、また前記断面V字型鋼17a及び17bの外面に、リブ板17iを設けたものである。
【0042】
この鋼管用固定治具17は、前記断面V字型鋼17a及び17bのV字型溝を鋼管から成る腹材15の外周にかぶせ、相対向する耳片17c及び17dをボルト17e及びナット17fで固定するもので、前記係止片17hの孔17gに前記ターンバックル6又は油圧ジャッキ9の一端をボルト又はピンにより固定するものである。なお、前記実施例4では、鋼管用固定治具18を使用したが、この鋼管用治具17を使用することもできる。また、この鋼管用固定治具17は、断面V字型鋼17a及び17bを用いる為、腹材15の外径の大きいものでも使用でき、汎用性がある。
【0043】
次に鋼管用固定治具18を、図10に基づいて説明する。この鋼管用固定治具18は、二つの断面半円形鋼18aと18bを図のように相対向させて設け、これらの両側に夫々設けた耳片18c、18dを相対向させて、ボルト18eをこれらに通して、その端部にナット18fを螺着したものであり、一方の断面半円形鋼18aに、孔18gを有する係止片18hを立設し、また前記断面半円形鋼18a及び18bの外面に、リブ板18iを設けたものである。
【0044】
この鋼管用固定治具18は、前記断面半円形鋼18a及び18bの半円形溝を鋼管から成る腹材15の外周にかぶせ、相対向する耳片18c及び18dをボルト18e及びナット18fで固定するもので、前記係止片18hの孔18gに前記ターンバックル6又は油圧ジャッキ9の一端をボルト又はピンにより固定するものである。
【0045】
次に、前記実施例4で使用した、下部固定治具19及び下部固定治具20の構成について図11及び図12に基づいて説明する。図11は下部固定治具19を示し、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す図である。
【0046】
下部固定治具19は、基板19aの上に垂直片19bを立設し、この垂直片19bの前端に、略水平方向に湾曲した湾曲当て板19cを設け、この湾曲当て板19cの背面に、長手方向に沿ってリブ19dを設け、前記湾曲当て板19cの背面近くの前記垂直片19bに、鋼板バンド21を通す長孔19eを設け、さらに、その外側に孔19fを設けたものである。
【0047】
この下部固定治具19は、前記腹材15の下端近くの主柱材14に湾曲当て板19cを略水平に当て、この上から、前記長孔19eに通した鋼板バンド21を主柱材14の外周に巻き付けて固定する。その際、基板19aを主柱材14の外面に設けた水平リブ14aの上に載せて固定する。そして、前記油圧ジャッキ9の他端のピンを前記孔19fに通して、ピン接続するものである。
【0048】
また、下部固定治具20を、図12に基づいて説明する。図12の(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す図である。
【0049】
下部固定治具20は、基板20aの上に垂直片20bを立設し、この垂直片20bの前端に、略水平方向にV字型に折れ曲がった折曲当て板20cを設け、この折曲当て板20cは断面アングルをなし、下端縁がリブ20dを形成し、前記折曲当て板20cの背面近くの前記垂直片20bに、鋼板バンド21を通す長孔20eを設け、さらに、その外側に孔20fを設けたものである。
【0050】
この下部固定治具20は、前記腹材15の下端近くの主柱材14に折曲当て板20cを略水平に当て、この上から、前記長孔20eに通した鋼板バンド21を主柱材14の外周に巻き付けて固定する。その際、基板20aを主柱材14の外面に設けた水平リブ14aの上に載せて固定する。そして、前記油圧ジャッキ9の他端のピンを前記孔20fに通して、ピン接続するものである。
【0051】
次に、前記実施例1〜4について実証試験を行った。
【0052】
この実証試験は、試験用の鉄塔骨組を設置し、これを使用した。この鉄塔骨組は、標準鉄塔(T213型)を基本に最下2パネルを対象とした。治具乃至は工具の開発は50kNを測定できることを目標としていることから、山形鋼においては最下腹材が許容にてこの応力に耐えうるようにサイズを定め、鋼管においては基礎不同変位が発生している鉄塔の内、最も多い鋼管径、直径139.8mmとした。
【0053】
また、前記試験用の鉄塔骨組の腹材に掛ける応力レベルを1(小)、2(中)、3(大)と3つに分けて測定した。そして、この試験用の鉄塔骨組により、この発明の測定方法が、腹材の軸力(応力)の真の値とどのような差があるかどうか試験した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、前記腹材の軸力(応力)の真の値とは、図13に示すように、当該腹材の上面及び側面の重心軸に歪みゲージを夫々貼着し当該腹材に沿ってターンバックルを設け、この一端は取付治具を介して当該腹材に固定し、他端は台付けワイヤーで主柱材に固定して、ターバックルを収縮させて対象腹材の応力を解放した際の対象腹材の歪みの変化から存在応力を算出したものである。なお、腹材と主柱材とを接合するボルト、ナットのナットを予め緩めておき、ボルトが回転可能となった際の歪みを測定する。
【0056】
また、表1におけるケースNo.は、1が図1、2−1が図2のA図、2−2が図2のB図、3−1が図3のA図、3−2が図3のB図、3−3が図4、4−1が図5のA図、4−2が図5のB図にそれぞれ相応している。
【0057】
表1の結果、ケース4−1及びケース4−2の各レベル1を除けば、この発明の方法での腹材の応力値である「治具測定軸力」は、当該腹材の真の応力値である「腹材導入軸力」との比が、各ケース及びレベルで概ね「1」に近似している。従って、この発明の方法での腹材の応力測定方法が、既設の応力が掛っている部材の応力測定に適していることが実証された。
【0058】
なお、この発明の方法及び装置は、既設の鉄塔の部材の応力測定に限らず、当該方法及び装置を用いて、鉄塔部材の降伏点、すなわち、当該部材の残存荷重でどこまで耐えられるかを計測することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施例1の測定装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施例2の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは係止治具の構成が異なるものである。
【図3】この発明の実施例3の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは鋼管用固定治具の構成が異なるものである。
【図4】この発明の実施例3の測定装置を示す概略構成図で、図3のものと、伸縮自在な工具が異なるものである。
【図5】この発明の実施例4の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは下部固定治具の構成が異なるものである。
【図6】この発明の実施例1及び実施例2に使用する山形鋼用固定治具を示すもので、(a)図、(c)図は使用状態における断面図、及び(b)図、(d)図は同平面図である。
【図7】この発明の実施例2に使用する係止治具の斜視図である。
【図8】この発明の実施例2に使用する他の係止治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は鉄塔の基礎に固定した状態を示す側面図である。
【図9】この発明の実施例3及び実施例4に使用する鋼管用固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は正面図である。
【図10】この発明の実施例3及び実施例4に使用する他の鋼管用固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は正面図である。
【図11】この発明の実施例4に使用する下部固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施例4に使用する他の下部固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す斜視図である。
【図13】この発明の実証試験における腹材の軸力(応力)の真の値を測定する装置の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 鉄塔 2 基礎
3 主柱材 4 腹材
5 ボルト、ナット 6 ターンバックル
7 山形鋼用固定治具 8 ワイヤー
9 油圧ジャッキ 10 係止治具
11 係止治具 12 鉄塔
14 主柱材 15 腹材
16 ボルト、ナット 17 鋼管用固定治具
18 鋼管用固定治具 19 下部固定治具
20 下部固定治具 21 鋼板バンド
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設の鉄塔の部材、特に腹材に掛かっている応力を解放して、当該応力を測定する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤等に立っている鉄塔は地盤沈下、地震変動等による基礎の不同変位により部材に二次的応力が加わる。これらの部材の変形、変動に伴う力が実際にどのくらい加わっているのかを知ることは、鉄塔の耐力を検討する上で重要な要素である。
【0003】
しかしながら、従来は、新設の鉄塔を設計する際にこれらの応力を予測乃至は推定しているだけである。特許文献1は、複数の節に分割された鉄塔の架構形状及び部材を入力して解析モデルデータを作成して応力解析その他の解析を行い、解析結果を出力して鉄塔の設計や診断を行う鉄塔設計・診断システムである。
【0004】
また、特許文献2は、鉄塔の腹材取替工法と鉄塔の腹材取替検討システムであり、既設の鉄塔に腹材取替装置を取り付け、既設の鉄塔から腹材を取り外し、腹材取替装置と腹材取替装置の周辺の周辺部材に働く応力と、応力に対応する腹材の取替装置と周辺部材の強度を検討する鉄塔の腹材取替検討システムである。この場合、取替える腹材を取り外すと、鉄塔構造が変化するため、腹材取替装置とその周辺の部材の応力が当初の設計値と異なるようになる。それで腹材取替装置とその周辺の部材の強度検討が必要になる。そこで、立体解析により、腹材取替装置とその周辺の部材の応力を求めている。
【0005】
【特許文献1】特許第3787799号公報
【特許文献2】特開2005−350954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2は、いずれも解析によって部材の応力を求めるものである。また、力が作用していない状態と力が作用している状態において、力の変化を別の物理量の変化として計測するものが一般的であり、力が作用していない状態(初期状態)における計測が必要である。構造物の部材のように、力が既に作用している状態において、その力の大きさを計測することが困難であった。
この様に、既設の鉄塔の、腹材等の部材の応力を実際に、簡単に測定する方法がないのが現状である。
【0007】
そこでこの発明は、既設の鉄塔の部材には既に応力が掛かっているので、油圧ジャッキやターンバックル等の伸縮自在な工具により、部材に掛かっている応力を解放し、当該解放したときの前後の荷重又は歪みの差を測定することにより、容易に当該部材の応力を測定する方法及びその装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これを当該腹材の応力に換算する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具にターンバックルを用い、当該ターンバックルの一端は前記固定治具に、他端はワイヤー又は固定治具により主柱材に係止し、前記ターンバックルを収縮させて、前記測定手段として当該ターンバックルに貼着した歪みゲージにより歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記ワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に係止し、前記油圧ジャッキを収縮させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法とした。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記腹材に圧縮する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記固定治具又は係止治具により主柱材に係止し、前記油圧ジャッキを伸張させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算する、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法としたとした。
【0012】
また、請求項5の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在なターンバックルを設け、このターンバックルに貼り付けた歪みゲージにより当該ターンバックルの歪み度合いを測定する測定手段を設け、このターンバックルの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー又は固定治具を介して主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ターンバックルを収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の歪み度合いを前記歪みゲージにより測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力に換算する構成とした、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置とした。
【0013】
また、請求項6の発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な油圧ジャッキを設け、この油圧ジャッキに設けたロードセルにより当該油圧ジャッキに掛かる荷重を測定する測定手段を設け、この油圧ジャッキの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかを介して主柱材に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記油圧ジャッキを伸張又は収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の前記油圧ジャッキに掛かる荷重を前記ロードセルにより測定し、これを応力に換算する構成とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、伸張又は収縮自在な工具で伸張又は収縮することにより腹材と主柱材とを接合している前記ボルトが回転可能となった状態とは、前記工具に腹材に作用している応力が移り、当該腹材の応力を解放した状態である。そこで、前記工具に設けた測定手段により、工具が受けている荷重又は歪み度合いを測定し、これを腹材に作用している軸力(応力)に換算するもので、簡単な方法で、既設の鉄塔の部材、特に腹材の応力を測定できるものである。
【0015】
また、請求項2及び5の発明によれば、前記伸張又は収縮自在な工具をターンバックルとし、前記測定手段はターンバックルに貼着した歪みゲージを用いた測定手段としているため、工具の操作及び測定が容易であり、鉄塔の腹材の応力測定をさらに容易にできる。
【0016】
また、請求項3、4及び6の発明によれば、前記伸張又は収縮自在な工具を油圧ジャッキとし、前記測定手段は油圧ジャッキに設けたロードセルとしているため、工具の操作及び測定が容易であり、鉄塔の腹材の応力測定をさらに容易にできる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端を主柱材にワイヤー又は固定治具に固定し、当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これに基づいて当該腹材の応力を計測する、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法である。
【0018】
これにより、簡単な方法で、既設の鉄塔の部材、特に腹材の応力を測定できるものである。
【実施例1】
【0019】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施例1の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、山形鋼から成る鉄塔の腹材には引張力が働いている場合である。
【0020】
実施例1の応力測定装置は、山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に引張力が働いている。この腹材4と主柱材3との接続は、ボルト、ナット5により接続されている。この腹材4に沿ってターンバックル6が設けられ、このターンバックル6の一端は、前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7にピン接続され、このターンバックル6の他端はワイヤー8を接続し、当該ワイヤー8を主柱材3に巻き付けて固定されている。また、前記ターンバックル6には歪みゲージが設けられ、これを測定手段としている。
【0021】
そして、前記ボルト、ナット5のナットを緩め、前記ターンバックル6を操作して、当該ターンバックル6を収縮させ、前記腹材4に掛かっている応力をターンバックル6に移す。そして、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記腹材4に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際、前記歪みゲージにより当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力を計測する。これが前記腹材4の応力となる。
【実施例2】
【0022】
また、この発明の実施例2を、図2に基づいて説明する。図2のA図及びB図は、それぞれ、この発明の実施例2の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、山形鋼から成る鉄塔の腹材には圧縮力が働いている場合である。A図とB図は油圧ジャッキ下端の係止治具が異なっているのみで、他は同一である。
【0023】
実施例2の応力測定装置は、山形鋼から成る鉄塔1の基礎2近くの主柱材3に下端を接続した腹材4に圧縮力が働いている。この腹材4と主柱材3との接続は、ボルト、ナット5により接続されている。この腹材4に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材4に固定した山形鋼用固定治具7にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端は、係止治具10又は11にピン接続されている。これらの係止治具10又は11は鉄塔1の基礎2又は基礎2近くの主柱材3に係止されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0024】
そして、前記ボルト、ナット5のナットを緩め、前記油圧ジャッキ9を手動操作して、当該油圧ジャッキ9を伸張させ、前記腹材4に掛かっている応力を油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット5のボルトが回転可能となった際、前記腹材4に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際油圧ジャッキ9のロードセルにより当該油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これが前記腹材4の応力となる。
【実施例3】
【0025】
また、この発明の実施例3を、図3及び図4に基づいて説明する。図3のA図、B図及び図4は、それぞれ、この発明の実施例3の方法に用いる腹材の応力測定装置の概略構成図であり、鋼管から成る鉄塔の腹材に引張力が働いている場合である。図3のA図とB図はターンバックル6を用いた場合、図4は油圧ジャッキ9を用いた場合である。
【0026】
実施例3の応力測定装置は、鋼管から成る鉄塔12の主柱材14の下端部に接続した腹材15に引張力が働いている。この腹材15と主柱材14との接続は、ボルト、ナット16により接続されている。この実施例3の図3のA図及びB図のものは、この腹材15に沿ってターンバックル6が設けられ、このターンバックル6の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具17又は18にピン接続され、このターンバックル6の他端はワイヤー8が接続され、当該ワイヤー8が主柱材14に巻き付けられて固定されている。また、前記ターンバックル6には歪みゲージが設けられ、これを測定手段としている。
【0027】
また、実施例3の図4のものは、前記腹材15に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具18にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端はワイヤー8が接続され、当該ワイヤー8が主柱材14に巻き付けられて固定されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0028】
これらの実施例3の測定操作は、上記実施例1とほぼ同じであり、ターンバックル6又は油圧ジャッキ9を収縮させて、腹材15に掛かっている応力をターンバックル6又は油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット16のボルトが回転可能となった際、前記腹材15に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際、前記歪みゲージ又はロードセルにより当該ターンバックル6の歪み度合いを測定し、予め調べておいた歪み度合いと応力との関係により応力を計測し、又は油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これらが前記腹材15の応力となる。
【実施例4】
【0029】
実施例4の応力測定装置は、鋼管から成る鉄塔12の主柱材14の下端部に接続した腹材15に圧縮力が働いている。この腹材15と主柱材14との接続は、ボルト、ナット16により接続されている。この実施例4の図5のA図及びB図のものは、油圧ジャッキ9の他端が固定された下部固定治具19、20が異なり、他の構成は同じである。
【0030】
この実施例4のA図及びB図のものは、前記腹材15に沿って油圧ジャッキ9が設けられ、この油圧ジャッキ9の一端は、前記腹材15に固定した鋼管用固定治具18にピン接続され、この油圧ジャッキ9の他端は鋼管用下部固定治具19又は20に接続されている。また、前記油圧ジャッキ9にはロードセルが設けられ、これを測定手段としている。
【0031】
そして、前記実施例2と同様に、前記油圧ジャッキ9を手動操作して、当該油圧ジャッキ9を伸張させ、前記腹材15に掛かっている応力を油圧ジャッキ9に移す。そして、前記ボルト、ナット16のボルトが回転可能となった際、前記腹材15に掛かっている応力が完全に解放される。そこで、その際油圧ジャッキ9のロードセルにより当該油圧ジャッキ9の荷重を測定する。これが前記腹材15の応力となる。
【0032】
以下、前記実施例1〜4において使用した、山形鋼用固定治具7、係止治具10及び11、鋼管用固定治具17及び18、下部固定治具19及び20の各構造について説明する。
【0033】
前記実施例1及び2において使用した、腹材4に固定する山形鋼用固定治具7の構成を図6に示す。図6の(a)図及び(b)図と、(c)図及び(d)図とは山形鋼のアングルの向きが反対のものであり、構成は同じである。また、図6において、(a)図及び(c)図はそれぞれ腹材4を挟んだ断面図であり、(b)図及び(d)図はそれぞれ(a)図、(c)図の平面図である。
【0034】
この山形鋼用固定治具7は、一枚の平板7aとアングル鋼7b及び7cとを合わせて山形鋼から成る腹材4を被い、各端縁でボルト7dを通してナット7eで固定したものである。なお、腹材4を挟んでいない平板7aとアングル鋼7bとの間には、前記腹材4の厚さと略同じスペーサー板7fを挟んで、各部材のがたつきを防止している。そして、図6では、前記平板7aに、前記ターンバックル6の一端をボルト6aで固定したものである。図示は省略するが、この山形鋼用固定治具7に前記油圧ジャッキ9を固定する場合は、前記平板7aに穿った適宜の孔に油圧ジャッキ9のピンを通してピン接続するものである。
【0035】
また、前記実施例2で使用した、油圧ジャッキ9の他端に接続された係止治具10及び係止治具11の構成を図7及び図8で説明する。図7は、前記係止治具10を示し、鉄塔1の基礎2上に載せる係止基板10aの上に垂直片10bを立設し、当該垂直片10bの前方の係止基板10aの端縁に係止切り込み10cを設け、前記垂直片10bに孔10dを設けたものである。
【0036】
この係止治具10は、図2のA図に示すように、係止基板10aを鉄塔1の基礎2の上に置き、係止切り込み10cを主柱材3の一片に差し込み、前記孔10dに前記油圧ジャッキ9の他端のピンを差し込み、ピン接続するものである。
【0037】
また、図8は、前記係止治具11を示し、これは鉄塔1の基礎2に固定するもので、(a)図は斜視図、(b)図は鉄塔1の基礎に固定した状態を示す側面図である。
【0038】
この係止治具11は、二枚のアングル材11a、11bを図8の(a)図に示すように、相対向させて設け、これらのアングル材11a、11bの両端間に、一方のアングル材11aから他方のアングル材11bに長ボルト11cを渡して、他方のアングル材11bの外面から突出した長ボルト11cにナット11dを螺着し、一方のアングル材11aの中央部に、孔11eを有する垂直片11fを設けたものである。
【0039】
この係止治具11は、図8の(b)図に示すように、鉄塔の基礎2の相対向する上部角部に二つのアングル材11a、11bを被せ、基礎2の両側に位置する長ボルト11cの端部のナット11dを締め付けることにより基礎2に固定する。そして、前記垂直片11fの孔11eに前記油圧ジャッキ9の他端のピンを差し込み、ピン接続するものである。
【0040】
また、前記実施例3及び4で使用した、油圧ジャッキ9の一端を腹材15に固定する、鋼管用固定治具17及び18の構成を図9及び図10で説明する。図9は前記鋼管用固定治具17を示し、(a)図は斜視図、(b)図は正面図を示す。
【0041】
この鋼管用固定治具17は、二つの断面V字型鋼17aと17bを図のように相対向させて設け、これらの両側に夫々設けた耳片17c、17dを相対向させて、ボルト17eをこれらに通して、その端部にナット17fを螺着したものであり、一方の断面V字型鋼17aに、孔17gを有する係止片17hを立設し、また前記断面V字型鋼17a及び17bの外面に、リブ板17iを設けたものである。
【0042】
この鋼管用固定治具17は、前記断面V字型鋼17a及び17bのV字型溝を鋼管から成る腹材15の外周にかぶせ、相対向する耳片17c及び17dをボルト17e及びナット17fで固定するもので、前記係止片17hの孔17gに前記ターンバックル6又は油圧ジャッキ9の一端をボルト又はピンにより固定するものである。なお、前記実施例4では、鋼管用固定治具18を使用したが、この鋼管用治具17を使用することもできる。また、この鋼管用固定治具17は、断面V字型鋼17a及び17bを用いる為、腹材15の外径の大きいものでも使用でき、汎用性がある。
【0043】
次に鋼管用固定治具18を、図10に基づいて説明する。この鋼管用固定治具18は、二つの断面半円形鋼18aと18bを図のように相対向させて設け、これらの両側に夫々設けた耳片18c、18dを相対向させて、ボルト18eをこれらに通して、その端部にナット18fを螺着したものであり、一方の断面半円形鋼18aに、孔18gを有する係止片18hを立設し、また前記断面半円形鋼18a及び18bの外面に、リブ板18iを設けたものである。
【0044】
この鋼管用固定治具18は、前記断面半円形鋼18a及び18bの半円形溝を鋼管から成る腹材15の外周にかぶせ、相対向する耳片18c及び18dをボルト18e及びナット18fで固定するもので、前記係止片18hの孔18gに前記ターンバックル6又は油圧ジャッキ9の一端をボルト又はピンにより固定するものである。
【0045】
次に、前記実施例4で使用した、下部固定治具19及び下部固定治具20の構成について図11及び図12に基づいて説明する。図11は下部固定治具19を示し、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す図である。
【0046】
下部固定治具19は、基板19aの上に垂直片19bを立設し、この垂直片19bの前端に、略水平方向に湾曲した湾曲当て板19cを設け、この湾曲当て板19cの背面に、長手方向に沿ってリブ19dを設け、前記湾曲当て板19cの背面近くの前記垂直片19bに、鋼板バンド21を通す長孔19eを設け、さらに、その外側に孔19fを設けたものである。
【0047】
この下部固定治具19は、前記腹材15の下端近くの主柱材14に湾曲当て板19cを略水平に当て、この上から、前記長孔19eに通した鋼板バンド21を主柱材14の外周に巻き付けて固定する。その際、基板19aを主柱材14の外面に設けた水平リブ14aの上に載せて固定する。そして、前記油圧ジャッキ9の他端のピンを前記孔19fに通して、ピン接続するものである。
【0048】
また、下部固定治具20を、図12に基づいて説明する。図12の(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す図である。
【0049】
下部固定治具20は、基板20aの上に垂直片20bを立設し、この垂直片20bの前端に、略水平方向にV字型に折れ曲がった折曲当て板20cを設け、この折曲当て板20cは断面アングルをなし、下端縁がリブ20dを形成し、前記折曲当て板20cの背面近くの前記垂直片20bに、鋼板バンド21を通す長孔20eを設け、さらに、その外側に孔20fを設けたものである。
【0050】
この下部固定治具20は、前記腹材15の下端近くの主柱材14に折曲当て板20cを略水平に当て、この上から、前記長孔20eに通した鋼板バンド21を主柱材14の外周に巻き付けて固定する。その際、基板20aを主柱材14の外面に設けた水平リブ14aの上に載せて固定する。そして、前記油圧ジャッキ9の他端のピンを前記孔20fに通して、ピン接続するものである。
【0051】
次に、前記実施例1〜4について実証試験を行った。
【0052】
この実証試験は、試験用の鉄塔骨組を設置し、これを使用した。この鉄塔骨組は、標準鉄塔(T213型)を基本に最下2パネルを対象とした。治具乃至は工具の開発は50kNを測定できることを目標としていることから、山形鋼においては最下腹材が許容にてこの応力に耐えうるようにサイズを定め、鋼管においては基礎不同変位が発生している鉄塔の内、最も多い鋼管径、直径139.8mmとした。
【0053】
また、前記試験用の鉄塔骨組の腹材に掛ける応力レベルを1(小)、2(中)、3(大)と3つに分けて測定した。そして、この試験用の鉄塔骨組により、この発明の測定方法が、腹材の軸力(応力)の真の値とどのような差があるかどうか試験した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、前記腹材の軸力(応力)の真の値とは、図13に示すように、当該腹材の上面及び側面の重心軸に歪みゲージを夫々貼着し当該腹材に沿ってターンバックルを設け、この一端は取付治具を介して当該腹材に固定し、他端は台付けワイヤーで主柱材に固定して、ターバックルを収縮させて対象腹材の応力を解放した際の対象腹材の歪みの変化から存在応力を算出したものである。なお、腹材と主柱材とを接合するボルト、ナットのナットを予め緩めておき、ボルトが回転可能となった際の歪みを測定する。
【0056】
また、表1におけるケースNo.は、1が図1、2−1が図2のA図、2−2が図2のB図、3−1が図3のA図、3−2が図3のB図、3−3が図4、4−1が図5のA図、4−2が図5のB図にそれぞれ相応している。
【0057】
表1の結果、ケース4−1及びケース4−2の各レベル1を除けば、この発明の方法での腹材の応力値である「治具測定軸力」は、当該腹材の真の応力値である「腹材導入軸力」との比が、各ケース及びレベルで概ね「1」に近似している。従って、この発明の方法での腹材の応力測定方法が、既設の応力が掛っている部材の応力測定に適していることが実証された。
【0058】
なお、この発明の方法及び装置は、既設の鉄塔の部材の応力測定に限らず、当該方法及び装置を用いて、鉄塔部材の降伏点、すなわち、当該部材の残存荷重でどこまで耐えられるかを計測することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施例1の測定装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施例2の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは係止治具の構成が異なるものである。
【図3】この発明の実施例3の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは鋼管用固定治具の構成が異なるものである。
【図4】この発明の実施例3の測定装置を示す概略構成図で、図3のものと、伸縮自在な工具が異なるものである。
【図5】この発明の実施例4の測定装置を示す概略構成図で、A図とB図とは下部固定治具の構成が異なるものである。
【図6】この発明の実施例1及び実施例2に使用する山形鋼用固定治具を示すもので、(a)図、(c)図は使用状態における断面図、及び(b)図、(d)図は同平面図である。
【図7】この発明の実施例2に使用する係止治具の斜視図である。
【図8】この発明の実施例2に使用する他の係止治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は鉄塔の基礎に固定した状態を示す側面図である。
【図9】この発明の実施例3及び実施例4に使用する鋼管用固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は正面図である。
【図10】この発明の実施例3及び実施例4に使用する他の鋼管用固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は正面図である。
【図11】この発明の実施例4に使用する下部固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施例4に使用する他の下部固定治具を示すもので、(a)図は斜視図、(b)図は使用状態を示す斜視図である。
【図13】この発明の実証試験における腹材の軸力(応力)の真の値を測定する装置の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 鉄塔 2 基礎
3 主柱材 4 腹材
5 ボルト、ナット 6 ターンバックル
7 山形鋼用固定治具 8 ワイヤー
9 油圧ジャッキ 10 係止治具
11 係止治具 12 鉄塔
14 主柱材 15 腹材
16 ボルト、ナット 17 鋼管用固定治具
18 鋼管用固定治具 19 下部固定治具
20 下部固定治具 21 鋼板バンド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これを当該腹材の応力に換算することを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項2】
前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具にターンバックルを用い、当該ターンバックルの一端は前記固定治具に、他端はワイヤー又は固定治具により主柱材に係止し、
前記ターンバックルを収縮させて、前記測定手段として当該ターンバックルに貼着した歪みゲージにより歪み度合いを測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項3】
前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記ワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に係止し、
前記油圧ジャッキを収縮させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項4】
前記腹材に圧縮する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記固定治具又は係止治具により主柱材に係止し、
前記油圧ジャッキを伸張させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項5】
鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在なターンバックルを設け、このターンバックルに貼り付けた歪みゲージにより当該ターンバックルの歪み度合いを測定する測定手段を設け、
このターンバックルの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー又は固定治具を介して主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ターンバックルを収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の歪み度合いを前記歪みゲージにより測定し、これを応力に換算する構成とすることを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置。
【請求項6】
鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在な油圧ジャッキを設け、この油圧ジャッキに設けたロードセルにより当該油圧ジャッキに掛かる荷重を測定する測定手段を設け、
この油圧ジャッキの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかを介して主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記油圧ジャッキを伸張又は収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の前記油圧ジャッキに掛かる荷重を前記ロードセルにより測定し、これを応力に換算する構成とすることを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置。
【請求項1】
鉄塔の腹材の応力を測定する方法において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在な工具を設け、この工具の一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ボルトが回転可能となった直後の前記工具にかかる荷重又は歪み度合いを当該工具に設けた測定手段で測定し、これを当該腹材の応力に換算することを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項2】
前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具にターンバックルを用い、当該ターンバックルの一端は前記固定治具に、他端はワイヤー又は固定治具により主柱材に係止し、
前記ターンバックルを収縮させて、前記測定手段として当該ターンバックルに貼着した歪みゲージにより歪み度合いを測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項3】
前記腹材に伸張する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記ワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかにより主柱材に係止し、
前記油圧ジャッキを収縮させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項4】
前記腹材に圧縮する応力が掛かっている場合、前記工具に油圧ジャッキを用い、当該油圧ジャッキの一端は前記固定治具に、他端は前記固定治具又は係止治具により主柱材に係止し、
前記油圧ジャッキを伸張させて、前記測定手段として当該油圧ジャッキに設けたロードセルにより荷重を測定し、これを応力に換算することを特徴とする、請求項1に記載の応力解放法による鉄塔部材の応力測定方法。
【請求項5】
鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在なターンバックルを設け、このターンバックルに貼り付けた歪みゲージにより当該ターンバックルの歪み度合いを測定する測定手段を設け、
このターンバックルの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー又は固定治具を介して主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記ターンバックルを収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の歪み度合いを前記歪みゲージにより測定し、これを応力に換算する構成とすることを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置。
【請求項6】
鉄塔の腹材の応力を測定する装置において、
腹材に沿って、伸張又は収縮自在な油圧ジャッキを設け、この油圧ジャッキに設けたロードセルにより当該油圧ジャッキに掛かる荷重を測定する測定手段を設け、
この油圧ジャッキの一端を腹材に取り付けた固定治具に固定し、他端をワイヤー、係止治具又は固定治具のいずれかを介して主柱材に固定し、
当該腹材と主柱材を接続しているボルト、ナットのナットを緩め、前記油圧ジャッキを伸張又は収縮して、前記ボルトが回転可能となった直後の前記油圧ジャッキに掛かる荷重を前記ロードセルにより測定し、これを応力に換算する構成とすることを特徴とする、応力解放法による鉄塔部材の応力測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−21865(P2012−21865A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159343(P2010−159343)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
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