説明

応答波形合成方法、応答波形合成装置、音響設計支援装置および音響設計支援プログラム

【課題】複数の部分帯域に分割して求められた周波数特性に基づいて不連続でない応答波形を求めることのできる応答波形合成方法および音響設計支援装置を提供する。
【解決手段】可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を用いて応答波形を求める。1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求め、これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の全周波数帯域においてフラットな応答波形を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数領域の音響特性から時間軸の応答波形を合成する応答波形合成方法、応答波形合成装置および応答波形合成方法を用いた音響設計支援装置、音響設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホールやイベント会場等にスピーカシステムを設置する場合、音響技術者が、会場の形状や大きさに基づいてスピーカシステムを選択し、そのスピーカシステムを設置する位置,向き,イコライザ特性等を設計する。
【0003】
この設計作業には、熟練や面倒な計算が必要であるため、この設計作業を支援する音響設計支援装置やプログラムが提案されている(特許文献1〜4参照。)。この音響設計支援装置やプログラムでは、音響設備を現場に搬入する前に、選択した音響システムの特性に基づいて、予め音響ホール等に設置するスピーカの音を受ける座席等が存在する面(以下、単に「スピーカの受音面」または「受音面」という。)における音響特性を表示器に表示して、音響システムの選択や、さらには現場の音響調整に反映できることが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1では、スピーカの周囲の位置のインパルス応答を予めデータ化しておいて、そのデータを基に、受音面の音像定位パラメータを自動算出する装置が開示されている。この文献では、インパルス応答をFFT化したテンプレートを用意している。
【0005】
また、特許文献2では、GUIにより機器選択、設計作業を自動化する音響システム設計支援装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では所望の音像定位パラメータを得るための音像定位パラメータの自動算出装置に関する記載がある。
【0007】
さらに、特許文献4では、現場において音響信号をスピーカから出力して、音響信号と、マイクにより収音された収音信号の差分特性データを利用して、短時間に自動的に音響周波数特性を調整する音響調整装置が開示されている。
【0008】
また、スピーカ等の音響設備の手配の段階において、3次元的でなく平面的なラインアレイに限って、音楽ホール等の断面形状を入力することで、受音面の受音エリアに対する、必要スピーカ個数、向き、レベルバランス、EQ、ディレイを算出する設計支援プログラムが実用化されている。
【特許文献1】特開2002−366162号公報
【特許文献2】特開2003−16138号公報
【特許文献3】特開平09−149500号公報
【特許文献4】特開2005−49688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記音響設計支援装置では、設計された内容で、ある受音点(ある座席において)でどのような音が聞こえるかをシミュレートして試聴する機能が望まれている。
【0010】
しかし、上記のように音響設計支援装置においは、周波数特性の分析は、低い周波数帯域の周波数分解能を細かくするため、可聴音の周波数帯域を複数の部分帯域(バンド)に分割し、各部分帯域毎に異なるサンプリング点数でFFT解析するものが多い。
【0011】
この場合に、上記複数の部分帯域に分割して求められた周波数特性を、単にそれぞれ独立して逆FFTして加算したのでは、特性に不連続な点ができてしまい。ノイズや不自然な音の原因になってしまうという問題点があった。
【0012】
この発明は、このような問題に鑑み、複数の部分帯域に分割して求められた周波数特性に基づいて不連続でない応答波形を求めることのできる応答波形合成方法および音響設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)この発明は、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を用い、1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT手順と、これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成手順と、を有することを特徴とする。
【0014】
(2)この発明は、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域0〜n毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析分析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を用い、解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT手順と、
この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成手順と、を有することを特徴とする。
【0015】
上下の合成帯域i,i+1で解析帯域iをオーバーラップさせることにより、帯域別に応答波形を求めた場合でも、帯域の境界領域で不連続な特性になることがなく、滑らかな応答波形の合成が可能になる。
【0016】
(3)この発明は、(2)の逆FFT手順において、合成帯域i(i=2〜n−1)のうち、解析帯域i−1に対応する区間を立上り区間としてsinθの窓を掛け、解析帯域iに対応する区間を立下り区間としてcosθの窓を掛けた周波数特性値を用いて応答波形を求めることを特徴とする。
【0017】
sinθ+cosθ=1であるため、上下の合成帯域が重なり合っていても、各合成帯域の応答波形を加算合成することで、元の周波数特性のレベルを滑らかに再現した応答波形を合成することができる。
【0018】
(4)この発明は、前記解析帯域1〜n−1は、オクターブ毎に分割されており、解析帯域k(k=1〜n−2)は、解析帯域k+1の2倍のFFTサンプリングデータ数(すなわち2倍の周波数分解能)でFFT解析して周波数特性が求められていること請求項2または請求項3に記載の応答波形合成方法。
【0019】
(5)この発明は、(4)の逆FFT手順において、合成帯域i(i=2〜n−1)のうち、解析帯域i−1に対応する区間は、周波数軸上で離散的に存在する周波数特性値を1つおきに間引きして用いることを特徴とする。
【0020】
(6)この発明は、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を記憶した周波数特性記憶部と、1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算部と、これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
(7)この発明は、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域0〜n毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析分析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を記憶した周波数特性記憶部と、解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT部と、この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
(8)この発明は、複数種類のスピーカの特性をそれぞれ記憶した特性記憶部と、スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援部と、前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択部と、前記スピーカ選択部によって選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化部と、前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化部により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に算出する周波数特性算出部と、1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算部と、これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
(9)この発明は、複数種類のスピーカの特性をそれぞれ記憶した特性記憶部と、スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援部と、前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択部と、前記スピーカ選択部によって選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化部と、前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化部により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域をn+1個に分割した解析帯域0〜n毎に算出する周波数特性算出部と、解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT部と、この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
(10)この発明は、コンピュータに、スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援工程と、前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択工程と、前記スピーカ選択工程で選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化工程と、前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化工程により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に算出する周波数特性算出工程と、1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算工程と、これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成工程と、前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力工程と、を実行させることを特徴とする。
【0025】
(11)この発明は、コンピュータに、スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援工程と、前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択工程と、前記スピーカ選択工程で選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化工程と、前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化工程により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域をn+1個に分割した解析帯域0〜n毎に算出する周波数特性算出工程と、解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT工程と、この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成工程と、前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力工程と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のようにこの発明によれば、解析帯域毎に算出された周波数特性に基づいて滑らかな応答波形を合成することが可能になる。
【0027】
また、この発明によれば、設計されたスピーカ配置による音響をシミュレートして試聴することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、この発明の実施形態である応答波形合成方法について説明する。図1は、可聴周波数帯域である0Hz〜22050Hzを複数の部分周波数帯域(解析帯域)に分割し、各解析帯域毎に求められた周波数特性に基づいて、全可聴周波数帯域における時間領域の応答波形を合成する方法について説明する図である。
【0029】
解析帯域は、0Hz〜22050Hzの可聴周波数帯域を1000Hzを基準にオクターブ毎に9つの解析帯域に分割したものであり、「表1」に示すように、解析帯域0〜解析帯域10からなっている。
【0030】
【表1】

【0031】
各解析帯域境界周波数は、31.25Hz,62.5Hz,125Hz,250Hz,500Hz,1000Hz,2000Hz,4000Hz,8000Hz,16000Hzとオクターブに関係になっており、各解析帯域のFFTサイズは、周波数の低い帯域ほど大きくなるようになっている。ここで、FFTサイズとは、FFT解析を行うときに用いる時間領域のサンプリングデータ数を言う。
【0032】
具体的には、下の帯域がオクターブ低くなれば、FFTサイズが2倍になるように設定されている。「表1」に示すように、解析帯域9(8000〜22050Hz)のFFTサイズが256サンプルであるのに対して、解析帯域8(4000Hz〜8000Hz)のFFTサイズは512サンプルと倍になっており、順次帯域のオクターブが下がるにつれて、FFTサイズが、1024、2048、4096、・・・と倍々に大きくなってゆくように設定されている。そして、最も周波数の低い解析帯域1のFFTサイズは、65536サンプルとなっている。
【0033】
これにより、低い周波数帯域では、細かい周波数分解能で周波数特性を解析することができ、高い周波数帯域では、その周波数に見合った程度の粗さで周波数特性を解析することができる。
【0034】
なお、下端の帯域である解析帯域0(0Hz〜31.25Hz)は、解析帯域1と同じFFTサイズである。また、上端の帯域である解析帯域10(16000Hz〜22050Hz)は、解析帯域9と同じFFTサイズである。
【0035】
次に、図1および表2を参照して、上記解析帯域に分割して求められた周波数特性に基づいて応答波形を合成する手順について説明する。合成は、上記11個の解析帯域を2つずつ結合して10個の合成帯域を作成し、各合成帯域毎に逆FFTを行って求める。なお、各合成帯域は、上下に隣接する合成帯域と互いにオーバーラップしており、このオーバーラップ区間の一方の帯域の値にsinθを掛け、他方の帯域の値にcosθの窓関数を掛けて互いにクロスフェードさせる。sinθ+cosθ=1であるため、各合成帯域を逆FFTして算出した時間軸の応答波形を加算合成することで、元の周波数特性を再現した滑らかな応答波形を合成することが可能になる。
【0036】
【表2】

【0037】
各合成帯域の周波数帯域は、図1および表2に示すとおりであり、合成帯域1と合成帯域2は、31.25Hz〜62.5Hzがオーバーラップしている。合成帯域1のオーバーラップ区間(31.25Hz〜62.5Hz)は、立下り部として実部,虚部ともにcosθの窓関数が掛けられる。一方、合成帯域2のこのオーバーラップ区間(31.25Hz〜62.5Hz)は、立上り部として実部,虚部ともにsinθの窓関数が掛けられる。なお、合成帯域1の0Hz〜31.25Hzの区間は平坦区間であり、65536のサンプリングデータを用いたFFT結果がそのまま用いられる。
【0038】
逆FFTは離散値の演算であるため、合成帯域1および合成帯域2おいては、以下のような周波数軸の離散値サンプルデータを用いて逆FFT演算が実行される。また、図1に示すように、解析帯域,合成帯域は、常用対数軸上で等間隔に設定されているため、窓関数も対数軸上でsin2乗またはcos2乗の波形となるように設定する。
【0039】
[合成帯域1]
(1)平坦部(0〜31.25Hz),(FFTサイズ:65536)
サンプル番号j=1,2,・・・,45,46
(サンプル間隔:約0.67Hz)
値はそのまま
(2)立下り部(31.25〜62.5Hz),(FFTサイズ:65536)
サンプル番号j=47,48,・・・,91,92
(サンプル間隔:約0.67Hz)
Real[j] = Real[j] * cos2(θ)
Img[j] = Img[j] * cos2(θ)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[1])-log10(31.25)}/{log10(62.5)-log10(31.25)}] ・・(ここで、PAIは円周率πである)
ΔFreq[1] = 44100/65536
[合成帯域2]
(1)立上り部(31.25〜62.5Hz),(FFTサイズ:65536)
解析帯域1のサンプル番号j=48,50,・・・,90,92
(1つ飛ばしで2サンプル毎に用いてサンプル間隔を約1.34Hzとする。)
Real[j] = Real[j] * sin2(θ)
Img[j] = Img[j] * sin2(θ)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[1])-log10(31.25)}/{log10(62.5)-log10(31.25)}]
ΔFreq[1] = 44100/65536
(2)立下り部(62.5〜125Hz),(FFTサイズ:32768)
解析帯域2のサンプル番号j=47,48,・・・,91,92
(サンプル間隔:約1.34Hz)
解析帯域2は、解析帯域1に比べてサンプル間隔(周波数)が倍であるため、解析帯域1のサンプル番号と同じサンプルでも、その周波数は倍である。
【0040】
Real[j] = Real[j] * cos2(θ)
Img[j] = Img[j] * cos2(θ)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[2])-log10(62.5)}/{log10(125)-log10(62.5)}]
ΔFreq[2] = 44100/32768
以下、合成帯域3〜合成帯域9についても合成帯域2と同じ方式であり、FFTサイズ、サンプル間隔、θの算出式等が、その帯域に対応して異なっている。以下、その異なる点を記載しておく。
【0041】
[合成帯域3](サンプル間隔2.69Hz)
(1)立上り部(62.5〜125Hz)
(FFTサイズは32768だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[2])-log10(62.5)}/{log10(125)-log10(62.5)}]
ΔFreq[2] = 44100/32768
(2)立下り部(125〜250Hz),(FFTサイズ:16384)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[3])-log10(125)}/{log10(250)-log10(125)}]
ΔFreq[3] = 44100/16384
[合成帯域4](サンプル間隔5.38Hz)
(1)立上り部(125〜250Hz)
(FFTサイズは16384だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[3])-log10(125)}/{log10(250)-log10(125)}]
ΔFreq[3] = 44100/16384
(2)立下り部(250〜500Hz),(FFTサイズ:8192)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[4])-log10(250)}/{log10(500)-log10(250)}]
ΔFreq[4] = 44100/8192
[合成帯域5](サンプル間隔10.76Hz)
(1)立上り部(250〜500Hz)
(FFTサイズは8192だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[4])-log10(250)}/{log10(500)-log10(250)}]
ΔFreq[4] = 44100/8192
(2)立下り部(500〜1000Hz),(FFTサイズ:4096)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[5])-log10(500)}/{log10(1000)-log10(500)}]
ΔFreq[5] = 44100/4096
[合成帯域6](サンプル間隔21.53Hz)
(1)立上り部(500〜1000Hz)
(FFTサイズは4096だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[5])-log10(500)}/{log10(1000)-log10(500)}]
ΔFreq[5] = 44100/4096
(2)立下り部(1000〜2000Hz),(FFTサイズ:2048)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[6])-log10(1000)}/{log10(2000)-log10(1000)}]
ΔFreq[6] = 44100/2048
[合成帯域7](サンプル間隔43.07Hz)
(1)立上り部(1000〜2000Hz)
(FFTサイズは2048だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[6])-log10(1000)}/{log10(2000)-log10(1000)}]
ΔFreq[6] = 44100/2048
(2)立下り部(2000〜4000Hz),(FFTサイズ:1024)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[7])-log10(2000)}/{log10(4000)-log10(2000)}]
ΔFreq[7] = 44100/1024
[合成帯域8](サンプル間隔86.13Hz)
(1)立上り部(2000〜4000Hz)
(FFTサイズは1024だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[7])-log10(2000)}/{log10(4000)-log10(2000)}]
ΔFreq[7] = 44100/1024
(2)立下り部(4000〜8000Hz),(FFTサイズ:512)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[8])-log10(4000)}/{log10(8000)-log10(4000)}]
ΔFreq[8] = 44100/512
[合成帯域9](サンプル間隔172.27Hz)
(1)立上り部(4000〜8000Hz)
(FFTサイズは512だが、1つ飛ばしで用いる)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[8])-log10(4000)}/{log10(8000)-log10(4000)}]
ΔFreq[8] = 44100/512
(2)立下り部(8000〜16000Hz),(FFTサイズ:256)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[9])-log10(8000)}/{log10(16000)-log10(8000)}]
ΔFreq[9] = 44100/256
次に、最も周波数の高い合成バンドである合成バンド10については、さらに上側にオーバーラップするバンドがないため、上側は平坦部となる。
【0042】
[合成帯域10](サンプル間隔172.27Hz),(FFTサイズ:256)
(1)立上り部(8000〜16000Hz),
解析帯域9のサンプル番号j=48,49,50,・・・,90,91,92
Real[j] = Real[j] * sin2(θ)
Imaginary[j] = Imaginary[j] * sin2(θ)
θ=PAI/2*[{log10(j*ΔFreq[9])-log10(8000)}/{log10(16000)-log10(8000)}]
ΔFreq[9] = 44100/256
(2)平坦部(16000〜22050Hz)
サンプル番号j=93,94,・・・,128,129
値はそのまま
以上のような10個の合成帯域の周波数軸のサンプル値を、それぞれ個別に逆FFT演算して時間軸の(帯域別の)周波数応答を求め、これを加算合成して全可聴周波数帯域の応答波形を求める。
【0043】
図2は、上記解析帯域毎の周波数特性を用いて合成帯域ごとの応答波形を求め、これを用いて全可聴周波数帯域の応答波形を求める手順を示したフローチャートである。このフローチャートは、以下に説明する音響設計支援装置において、スピーカアレイを構成する各スピーカユニットから出力された音響が特定の受音点においてどのような応答特性になるかを求めるための処理を表している。
【0044】
まず、複数のスピーカユニットのうち1つのスピーカユニットの特性を読み出す(s201)。この特性は、所定の向きに設置されたスピーカユニットの前記受音点方向への周波数特性にイコライザの特性を畳み込んだものであり、上記解析帯域ごとに求められているものである。
【0045】
合成帯域1〜10を選択し、その中心周波数(31.25、62.5、125、・・、16000Hz)の下側の帯域(立ち上がり部)については、(解析帯域0を除いて)sinθの窓関数を掛けて(s203)、1つおきのデータを選択する(s204)。一方、上側の帯域(立ち下り部)については、(解析帯域10を除いて)cosθの窓関数を掛ける(s205)。
【0046】
このようにして求めた、合成帯域のデータに基づいて逆FFT演算を行い(s206)、この周波数帯域の時間軸の応答波形を求める(s207)。
【0047】
s202以下の処理を全ての合成帯域について行い、この全ての合成帯域について求めた応答波形を加算合成して全可聴周波数帯域の応答波形を求める(s208)。そして、この応答波形にさらに頭部伝達関数を畳み込み(s209)。スピーカと受音点との距離に基づく遅延を付加して(s210)、このスピーカユニットから受音点にいる受聴者までの左右2チャンネルのインパルス応答とする。
【0048】
以上s201〜s210の処理を複数のスピーカユニットの各々について実行し、求まった全てのインパルス応答を加算して(s211)、アレイスピーカから受聴者までの左右2チャンネルのインパルス応答とする(s212)。
【0049】
音響設計支援装置は、このインパルス応答をフィルタとして構成し、楽音(ドライソース)をこのフィルタで処理してヘッドホンに出力する。設計者が、このヘッドホンで音響を試聴することにより、設計したスピーカシステムでどのような音響が出力されるかを事前に知ることができる。
【0050】
以下、図面を参照して、上記応答波形合成方法が適用される音響設計支援装置について説明する。音響設計支援装置1は、ホールや会議場等の集会施設にスピカシステム(拡声装置)を設置する場合の機器の選択や設定などの設計を支援するものであり、設計したスピーカシステムを用いて施設内に音声を出力した場合に施設内に形成される音場をシミュレーションし、その結果を表示器に表示したり、ヘッドホンから出力する機能を備えている。
【0051】
図3(A)は、音響設計支援制御装置の構成を示すブロック図である。音響設計支援装置1は、表示器101、操作部102、CPU103、ハードディスク(HDD)104、メモリ105、および音声出力部106を備えている。
CPU103には、表示器101、操作部102、HDD104、メモリ105、および音声出力部106がそれぞれ接続されている。
表示器101は、汎用の液晶ディスプレイ等で構成され、各種の設定条件の入力において設定条件の入力を補助するための画面(図5〜図7参照。)を表示する。
操作部102は、各種の設定条件の入力、音場のシミュレーションの指示入力、スピーカ配置の最適化の指示入力、およびシミュレーション結果の表示形式の選択を受け付ける。
CPU103は、HDD104に格納したプログラムを実行するものであり、操作部102の指示を受けて、音響制御装置1の他のハードウェア資源と協働してこのプログラムを実行する。
HDD104は、プログラム10と、スピーカの周囲のインパルス応答などをFFT化したSPデータ107と、このスピーカに適するイコライザのデータであるイコライザデータ108と、スピーカデータテーブル109と、集会施設基本形状データテーブル110を格納している。
【0052】
メモリ105は、音響設計支援プログラム10を実行するエリアが設定されるとともに、音響設計支援処理において発生したデータを一次的に記憶するエリアが設定され、SPデータ107B,イコライザデータ108等が記憶される。なお、イコライザデータ108は、スピーカアレイから出力する音声信号の周波数特性を所望の特性に調整するためのイコライザの設定値を演算設計したデータである。
【0053】
音声出力装置106は、HDD104に格納されている音源データから音声信号を生成する。また、音声出力装置106は、DSP、D/Aコンバータを内蔵しており、上記音声信号をイコライジング、ディレイ付与等する信号処理機能1061を有する。音響設計支援装置1のシミュレーションの結果として、受音面の所定の位置での音場を、ヘッドホンやスピーカ等を通して音声で確認する場合等に、信号処理がなされた音声信号が図示しないスピーカやヘッドホン等に出力される。
【0054】
なお、音声出力装置106は、必ずしもハードウェアとして備えている必要はなく、ソフトウェアによって実現してもよい。なお、音響設計支援装置1にさらに音声信号の入力インタフェースを設け、外部から入力される音声信号を音声出力装置106より出力する構成としてもよい。
【0055】
ここで、ハードディスク104に記憶されているSPデータ107は、この音響設計支援装置で選択可能な複数種類のアレイスピーカの周波数特性からなるデータである。周波数特性は、上記応答信号合成方法で説明したように、0Hz〜22050Hzの可聴周波数帯域を1000Hzを基準にオクターブ毎に分割した9つの解析帯域別のデータとして記憶されている。各解析帯域の分割周波数帯域やFFTサイズは、「表1」に示したとおりである。音響設計時には、利用者によって選択された1つのスピーカについてのデータが、SPデータ107Bとしてメモリ105に読み出される。
【0056】
スピーカデータテーブル109は、集会施設の形状や大きさを選択した場合に、その施設に適合したスピーカを選択するためのデータベースとして用いられるものである。なお、スピーカデータテーブル109には、選択肢として、複数のスピーカユニットを連結して構成されるスピーカアレイのデータを記憶している。ただし、本発明の音響設計支援装置は、必ずしもアレイスピーカを選択するものに限定されるものではない。
【0057】
集会施設基本形状データテーブル110は、図3(B)に示すように、集会施設形状名と、その大きさを表す座標データと、内部形状を表す画像ビットマップの組み合わせからなる。また、座標データには、集会施設の空間の形状を設定する項目も含まれている。
【0058】
図4は、前記音響設計支援装置の設計支援動作全般の処理手順を示すフローチャートである。この装置は、大きく分けて、ST1〜ST3の3段階の処理を実行する。ST1では、シミュレーションの条件を設定する条件設定を行なう。ST2では、この条件設定に基づきシミュレーション結果を表示するための特性を表したデータであるパラメータデータを計算する。この計算において、上述した全方向別SPデータ107A、から個別のSPデータ107Bが選択され、イコライザデータ108が計算される。
【0059】
ST3では、この音響支援装置のシミュレーション結果を、表示器101またはヘッドホンに出力する。このシミュレーション結果をヘッドホンに音響として出力する過程で、上に述べた応答波形合成方法が適用される。
【0060】
条件設定処理ST1では、このシミュレーションに必要な、さまざまな条件(ST11からST14までの条件)を設定する。ST11では、スピーカが置かれる空間、例えば集会施設等の形状の情報(以下、単に「空間の形状」という。)を設定する。具体的には、空間の概略形状を選択すると共に、形状の詳細を数値入力する(図5、図6参照)。ST12ではスピーカの選択を行い、それを空間のどこに配置するかを設定する。ST13では、その設置されたそれぞれのスピーカの設置条件を設定する。設置条件とは、例えば、アレイスピーカのユニット間の角度などである。ST14ではこのユニット間の干渉の条件を考慮するか否か、受音面の格子点(図11参照)をどれだけ細かく取るかなどのシミュレーションの条件を設定する。
【0061】
条件設定処理ST1において全ての条件を設定すると、ST2により、シミュレーションが実行され、その結果が表示器101に表示、または、ヘッドホンから出力される(ST3)。
【0062】
従来は、設計者が、上記ST1〜ST3の操作をトライ・アンド・エラーで繰り返して最適な設計を発見していたが、この実施形態の音響設計支援装置1では、ST15において、ST1で設定した空間の形状の情報を受けて、スピーカの角度およびスピーカの設定の自動最適化や支援を行っている。
【0063】
この自動最適化に関するST15の処理は、ST16とST17の段階を有している。ST16では、スピーカ選択データテーブルに登録されているスピーカのなかで、この集会施設で使用できるスピーカの候補を表示器101に示すとともに、操作部102によりスピーカが選択された場合には、ST11で選択されている空間にそのスピーカを配置した様子を表示器101に表示する。
【0064】
ST17では、設置されたアレイスピーカの角度(水平方向、垂直方向)およびユニット間の角度の最適な角度の組み合わせパターンを自動的に算出する。ここで、アレイスピーカの角度とは、スピーカ全体の指向軸の代表値となるもので、基準とする任意のユニットの指向軸の水平方向、垂直方向の角度のことであり、ユニット間の角度とは、隣接するユニット間の開き角度のことである。
【0065】
図5以下を参照して、条件設定処理ST1の各段階であるST11〜ST17について、具体的に説明する。なお、以下の図面の符号は、図4で示したステップ番号と略対応している。
【0066】
まず、空間形状設定処理ST11について、図5、図6を参照して説明する。図5は、スピーカが配置される空間の概略形状を設定するためのGUI(graphical user interface)の一例を示す図である。音響設計支援装置1は、この図に示すような空間形状設定画面11Aを表示器101に示して、設計者が、スピーカが設置される空間の形状の概略を選択できるようにする。形状選択画面11Aでは、上部に形状選択ボックス11Cを表示して、設計者が空間の概略形状の種類を、扇型または箱型の形状のなかから選択できるようにしている。設計者は、操作部102の図示しないマウス等で「扇形」にチェックマークを入れて選択した場合には、詳細形状選択ボックス11Dには、扇形をした音響施設等の形状例が複数表示される。ユーザは、前述のマウス等で、詳細形状選択ボックス11Dに表示された複数の形状例の中から更に一つの形状を選択することができる。
【0067】
設計者が、詳細形状選択ボックス11Dに示す扇形の音響施設形状例のうちから1つを選択すると、表示器101に表示される画面は、図5の空間形状設定画面11Aから図6の空間形状設定画面11Bに切り替わる。
【0068】
空間形状設定画面11Bでは、選択された音響施設の形状例の線図11Fが空間形状表示ボックス11Eに示される。この画面は、CPU103がHDD104に格納されている集会施設基本形状データテーブル110から該当の集会施設基本形状データを読み出すことで表示器101に表示される。設計者は、この画面で、スピーカが配置される空間の寸法を決定する形状パラメータを入力する。
【0069】
空間形状設定画面11Bでは、設計者が、形状パラメータ入力ボックス11Gに、スピーカが設置される空間の形状を、数値で入力することができるようになっており、壇上の幅や音響施設の高さや奥行き、各階の高さやスロープの傾きなどのパラメータを数値入力により設定することができる。この入力操作で形状パラメータの数値が修正された場合は、線図で示された空間の形状11Fがこの数値の変更に合わせて変化する。この形状パラメータ入力ボックス11Gに表示されるパラメータは、その集会施設の形状に基づいて選択される。例えば、扇形の施設であれば、その扇形の角度を入力する欄が表示され、2階、3階がある施設であれば、その2階、3階の形状データを入力する欄が表示される。この施設形状に応じて必要なパラメータは、集会施設基本形状データ110に併せて記憶されている。
【0070】
設計者が、全ての形状パラメータを入力したのち、決定ボタン11Hを押した場合には、表示器101の表示が、図6の空間形状設定画面から図7のスピーカ選択・配置設定画面12に切り替わる。図7は、図4のST12、ST16に対応している。スピーカの選択・配置設定画面12では、用途選択ボックス12A、空間形状表示ボックス11E、形状データ表示ボックス12B、スピーカの設置位置表示ボックス12Cと、最適スピーカ候補表示ボックス16が表示される。
【0071】
空間形状表示ボックス11Eには、図5、図6で設定した空間の形状に基づいて、略実際の空間の形状の比率で形状が表示される。
用途選択表示ボックス12Aは、音響施設等の使用目的を選択するための表示欄であり、設計者が、「音楽」、「スピーチ」にチェックマークを入れて、そのいずれか、またはその両方を選択することができる。ここで、「音楽」の用途は、音圧レベルの周波数特性等の音質に関する音響性能を重視した音響設計を意図するものであり、「スピーチ」の用途は、例えば、音声の明瞭度に関する音響性能を重視した設計を意図するものである。
【0072】
スピーカの設置位置表示ボックス12Cは、スピーカを設置する概略の位置を選択するための表示欄である。設計者は、設置位置表示ボックス12Cの「センタ」、「レフト」、「ライト」のいずれかを選択することにより、スピーカの設置位置を、舞台の中央、舞台の下手側、舞台の上手側のいずれかを選択することができる。
【0073】
設計者が、前述のマウス等で、用途選択表示ボックス12A、スピーカの設置位置表示ボックス12Cの設定項目それぞれを、チェックマークを入れて選択した場合、最適スピーカ候補表示ボックス16に最適のスピーカ候補が表示される。この最適スピーカ候補の選択は、図4のST16に対応しており、音響設計支援装置1により自動的に行なわれる。
CPU103は、ハードディスク104に記憶しているスピーカデータテーブル109から、最適なスピーカ候補を選択する。スピーカデータテーブル109は、図8に示す構成になっている。
【0074】
スピーカデータテーブル109は、図5、図6で設定した空間の形状の情報に基づいて適切なスピーカを選択するのに適したデータ構造となっており、データとして、スピーカタイプ名称109A、面積規模109B、用途109C、設置場所109D、縦横比率109Eを備えている。
【0075】
例えば、形状データ12Bに示す面積(受音面の面積)が450mであり、スピーカの設置位置12Cで「センタ」にチェックされていた場合、スピーカデータテーブル109で選択できるのは、図7の最適なスピーカの候補16に示すように、スピーカD、スピーカJとなる。
【0076】
さらに、同じく図7を用いて、アレイスピーカが配置された状態を表すGUIについて説明する。スピーカ配置設定画面12の下欄に最適なスピーカの候補16が1または複数が表示され、その中から、1つのスピーカを選択した場合には、空間形状表示11Eには、選択したアレイスピーカ16Aが空間の形状11Fの縮尺で示される。これにより、空間にどのようにアレイスピーカ16Aが配置されるかを視覚的に確認できる。このアレイスピーカ16Aの表示も、図4のST16の段階に相当し、この表示により、図4のST16の段階は終了し、ST12に戻る。
【0077】
また、アレイスピーカ16Aの表示がされた場合には、空間形状表示11Eには、表示されたアレイスピーカ16Aのカバーゾーンを選択できるようにする。図7に示すカバーゾーン16Eは、空間の一階部分の受音面の半分を選択した場合を示している。その他、空間全体、1階部分全体、2、3階部分全体のいずれかをユーザが選択入力できるようになっている。この選択入力は、図4のST12に相当しており、その後、図4のST17において、音響設計支援装置1のCPU103は、アレイスピーカの角度およびユニット間の角度の条件設定を行なう。
【0078】
次に、図9〜図13を用いて、ST17について詳細に説明する。図9はアレイスピーカの角度およびユニット間の角度の条件設定を自動的に計算する手順の概念図である。
【0079】
図4のST17の計算は、図9に示すように(A)〜(E)までの5段階に分かれている。まず、この計算は、図7で選択されたアレイスピーカ16Aを設置位置に設置した場合の、アレイスピーカの角度および各ユニット間の角度の最適値を求めるために実行される。最適値としては、「受音面エリア内の音圧レベルの均質化、最適化」を最もよく達成できる値を採用される。具体的には、図9(D)に示すように、受音面全域に設定した格子点の音圧レベルの標準偏差が最小となる値を最適値とする。
【0080】
この計算処理においては、まず、図9(B)、(C)に示すように、スピーカが向いている方向であるスピーカの軸線17E、17F、17G(以下、単に「軸線」という。)と受音面との交点である軸点17B、17C、17D(以下、単に「軸点」という。)における音圧レベルの周波数特性の最適化を行なう。
【0081】
図9(A)に示すように、ユニット間の角度の設定は、図7の画面で選択されたスピーカアレイがとり得るユニット間の角度を図8のスピーカデータテーブル109から読み出し、そのとり得る角度の中から選択する。この角度は、アレイスピーカそれぞれに固有のものであり、実際の設置時には、アレイスピーカ16Aの治具でユニット間の角度を設定するものである。
【0082】
このユニット間角度をθintとする。また、設置されるアレイスピーカの角度は、水平方向、垂直方向について設定する必要があり、この角度の組を(θ、φ)とする。ここで、水平方向の角度θは、−180度<θ≦180度であり、垂直方向の角度φは、−90度≦φ≦90度である。アレイスピーカを構成する各スピーカユニットの設置角度は、これらの角度(θint、θ、φ)で決定される。
【0083】
図9(B)では、3つのスピーカユニットからなるアレイスピーカを用いる例を示している。したがって、θintとして、ユニット16B、ユニット16C間の相対角度θint1と、ユニット16C、ユニット16D間の相対角度θint2とを設定する必要がある。
【0084】
また、このユニットの角度の設定は、図9(E)に示すように、角度を変えながら、前述した標準偏差が最小となるアレイスピーカの角度(θ、φ)と、ユニット間の角度θint(i=1〜2)を探索する。ユニット間の角度θint(i=1〜2)については、スピーカデータテーブル109によりピッチが決められる。探索時は、計算時間短縮のために、はじめは、この角度のピッチを大きくとって変化させるようにプログラムを設計するとよい。
【0085】
ここで、設定角度(θint、θ、φ)のパターン数について例を挙げて説明する。図9(A)に示すように、スピーカの候補16からスピーカタイプ名称109AとしてスピーカDを選択した場合には、アレイスピーカの角度を−180度<θ≦180度、−90度≦φ≦90度の範囲で、30度毎に変化させる。更に各アレイスピーカユニットについてユニット間角度を30度から60度の範囲で、2.5度毎に変動させることができる。即ち、θとして180度、φとして90度を、またθintとして60度を選択して、(θint、θ、φ)の設定17Aを行なう。この場合、θは、−180度から180度の範囲で30度ごとなので12通り、φは、−90度から90度の範囲で30度毎なので7通りある。また、図8に示すように、スピーカタイプDは、前記の当初の設定可能範囲幅が30度(30度から60度)で、刻み幅は2.5度刻みなので、θintは、13通り((60−30)/2.5+1=13)となる。かつ、θintは、θint1とθint2について2回掛け合わせることになる。したがって、合計は12×7×(13×13)=1092通りとなる。なお、通常各スピーカは、対称に組み合わせるので、θint1=θint2として計算することができ、上記合計は12×7×13=1092通りとなる。
【0086】
次に、図9(C)に示すように、図9(B)で求めた軸点での音圧レベルの周波数特性を最適化する。この図9(C)の具体的な説明は図10の説明で詳述するが、ここでは、簡潔にその概略を説明する。図9(C)における最適化は、前述のとおり、図9(D)の指標の計算を効率よくするためのものであり、一言で述べると、この処理は、「軸点17B、17C、17D相互間の音圧レベル及びその周波数特性を均質化するイコライザ特性を求める」ものである。一般にアレイスピーカ16Aの各ユニット16B、16C、16Dは、ブロードな指向特性を有しているため、例えば、軸点17Bにはユニット16Dからの音声も到達し、またユニット16Bの音声は軸点17Dにも到達するので、軸点17Bの音量が小さいような場合、単にユニット16Bの音圧レベルを上げる操作のみを行なうと他の軸点17C、17Dの音量も上がってしまい、かえってバランスが崩れる場合がある。そこで、本実施形態の装置では、各ユニット16B、16C、16Dのいろいろなイコライザを組み合わせたパターンを用意する。そして、それぞれのパターンに従い、前述した図3のSPデータ107(スピーカから見た全角度のインパルス応答をFFT化したデータ)を用いて、図9(A)で設定した角度で設置したアレイスピーカ16Aのユニット16B、16C、16Dから伝達され、軸点17B、17C、17Dで受ける音声の周波数特性を算出し、最適パターンを選択する。以下、図9(C)のフローの各段階の概略を説明する。
【0087】
まず、S171において、予め基準周波数帯域fi(fiは離散値(i=1〜N))を設定する。基準周波数帯域fiは、例えば、パラメトリックイコライザのチャンネルに合わせて63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、8kHzのいずれかに設定することができる。
S172において、基準周波数帯域のゲインを調整するイコライザのパターン(G1、G2、G3)fiHzをユニット16B、16C、16Dそれぞれについて設定する。
S173において、このパターンについて、前述の軸点17B、17C、17Dにおける音圧レベルの周波数特性を計算して、各基準周波数帯域での軸点17B、17C、17Dのばらつきが小さくなるパターンを選出する。具体的には、軸点17B、17C、17D間の分散を各基準周波数帯域ごとに計算し、さらに、この値の絶対値の平方根をとり、各基準周波数帯域ごとの標準偏差を計算する。なお、この標準偏差は、特定の周波数のゲインのばらつき度合いを示すものであり、この値が小さいほうがばらつき具合が小さいことになる。したがって、標準偏差が小さいパターンほど、適切なパターンとなる。
【0088】
そして、各周波数ごとに独立に最適なパターン(G1、G2、G3)fiHzを選択する。
これらの段階により、S174で、ユニット16B、16C、16Dのイコライザを決定する。
【0089】
この決定したイコライザのパラメータは、上述の通り、パラメータを決定する段階では周波数ごとにパターンを選択したが、決定したイコライザのパラメータは、これをパラメトリックイコライザに設定するために、周波数ごとでなく、ピークごとにパラメータを設定して(S175)、ユニット16B、16C、16Dごとにデータを外部記憶装置104等に保存する。
【0090】
なお、この図9(C)に示す段階においては、図示していないが、SPデータ107に基づいて、音圧レベルの最適化も行なう。
また、図9(C)のようにして算出したイコライザのパラメータは、FFT化して図3の外部記憶装置104にイコライザデータ108として保存する。このようにすれば、図4に示したシミュレーションパラメータ計算S2で、周波数領域の畳み込み演算のみで、このシミュレーションパラメータを計算でき、迅速に計算結果を出力できる。前述のとおり、音響設計支援装置においては、何度も条件を変更して、繰り返しシミュレーションを行なって最適設計を行なうが多く、このような装置に対し、イコライザのパラメータをFFT化することが効果的である。
【0091】
図9(D)においては、受音面エリア内の音圧レベルの標準偏差を、図9(C)でもとめたユニット16B、16C、16DのPEQパラメータに基づいて算出し、受音面エリア内の音圧レベル及びその周波数特性を算出する。そのため、S176〜S178の段階を行なう。以下、各段階について説明する。
【0092】
S176において、音響施設のカバーエリア内全域に、図11に示すような、格子点17Jを複数設定する。これらの格子点17Jをサンプル受音点として受音面エリア内全体の音響設計を行う。
【0093】
S177において、これらの格子点17Jそれぞれでの音圧レベルを、図8のSPデータ107等に基づいて求める。この音圧レベルの算出は、スピーカユニットごとに、FFT変換されたイコライザデータ108と、対応する方向のSPデータ107Bとを畳み込み、さらに、各スピーカユニットの出力を加算合成することによって求める。
【0094】
S178において、S177で求めた格子点17Jそれぞれの位置での音圧レベルのデータについて、標準偏差σを算出する。この標準偏差値が小さいほうが、受音面全域の各点のばらつき具合が小さいことになり、より好ましい。
【0095】
図9(E)において、アレイスピーカ16A(図6参照。)のユニット16B、16C、16Dの水平角度、垂直角度(θi、φi)を設定しなおして、(A)〜(D)を繰り返し行なう。これにより、図9(D)の手順のようにして求めた標準偏差が最小となる角度設定のパターンを選出する。その場合において、角度の探索は、計算時間を短縮するため、はじめは、設置するアレイスピーカの角度ピッチを大きく設定し、その後、この角度ピッチを小さく設定して行なう。
【0096】
以上、アレイスピーカ16Aの最適なアレイスピーカの角度およびユニット間の角度の算出は、図9(A)のように角度パターンを設定し、図9(D)のように受音面エリア内の音圧レベルの標準偏差(即ち、音圧のばらつき具合を表す指標)を計算して、その最小値を探索するものである。このため、各スピーカユニットのカバーエリアの代表点として軸点17B、17C,17Dを設定し、図9(C)に示すように、これら軸点17B、17C,17Dの周波数特性を最適化するイコライザ特性を求めて、各スピーカユニットに適用するようにしている。
【0097】
次に、図9(C)に示した段階を、図10を用いてさらに具体的に説明する。図10は、図9(C)に示す軸点での周波数特性の最適化を表すフロー図と、その最適化に用いるイコライザの設定例を表す図である。
図8(A)において、3つのユニット16B、16C、16Dの周波数ゲインの指標として基準周波数帯域fiを8帯域(63〜8kHz)に順次設定する(S171)。基準周波数帯域は、パラメトリックイコライザの各チャンネルの中心周波数であり、例えば、図8(B)に示すように、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、8kHzのいずれかに設定する。
S172において、図9(C)で説明したゲイン設定のパターン(G1、G2、G3)fiHzは、G1、G2、G3を1dB刻みで0dB〜−10dBとする。したがって基本周波
数1つ(例えば63Hz)につき、11通りのパターンを設定するから、全体として8×11通りのパターンを設定する。また、パターンそれぞれについて、ユニットごとにイコライザのデータをまとめて、FFT変換したデータとしてイコライザデータ108として保存する。
S173において、各パターンで軸点でのゲイン計算を行い、その中から最適パターンの選択を行なう。この段階は、さらにS1731〜S1733に分けることができる。
S1731において、軸点でのゲイン計算は、図9(B)で示したように、アレイスピーカ16Aから伝達され、軸点17B,17C、17Dそれぞれで受ける音声の周波数特性を図3のSPデータ内の107A〜Dに基づいて算出し、基準周波数帯域fiごとにその周波数ゲインのデータを蓄積する。
この計算は、スピーカユニットごとに
(フーリエ変換済み時間遅れの位相補正フィルタ107Cと、およびフーリエ変換済み距離減衰補正フィルタ107Dのデータと、
FFT変換したイコライザデータ108と、
対応する方向のSPデータ107B)これらすべて畳み込んで周波数領域で計算する。
なお、このデータ数は、ユニット数3つとなるから、本実施形態の装置では、集積するデータ数は合計すると、3つ×8帯域=24個である。
S1732において、基準周波数帯域fiごとに、この3点の周波数ゲインのデータについて標準偏差を求める。
S1733において、S172で設定したパターン11通りすべてについて、S1731〜S1732の段階を繰り返し計算して、S1732の標準偏差の標準偏差が最小となるものを求める。
以上、S1731〜S1733の段階により、基準周波数帯域ごとに、軸点17B,17C、17D間の音圧レベルの標準偏差が最小となるイコライザゲイン(図10(B)に示す点に相当。)を求めることができる。これらを上述の8つの基準周波数帯域すべて繰り返して、図10(A)のS174において、イコライザゲインのパターンを決定できる。そして、このイコライザゲインのパターンに基づいてピークごとにパラメトリックイコライザ(PEQ)のパラメータを決定する(S175)。このパラメータは、前述の図9(C)の説明のとおり、ユニットごとにまとめ直して、外部記憶装置104に保存する。以上の処理で図10(A)のフローは終了する。
【0098】
次に、図9(A)、(E)で示したアレイスピーカの角度およびユニット間の角度を設定して探索し、最適な角度を決定する方法について、図12のフローチャートを用いて具体的に説明する。
まず、S21〜S26は、図9(A)の処理手順を具体的に示すものである。S21において、水平方向、垂直方向とも30度ごとに設定したアレイスピーカの角度パターン(θ、φ)を設定する。また、それぞれのアレイスピーカの角度についてユニット間の角度θintを設定する。このときユニット間の角度の選出では、前述のように、アレイスピーカ16Aには図8に示すそれぞれ予め設定できる固有の角度の範囲とピッチがあり、その範囲から選択してパターンを用意する。ここで、θは、−180度<θ≦180度、φは、−90度≦φ≦90度の範囲で、30度毎に設定する。
そして、S22において、格子点(例えば図11の17J)間の音圧レベルの標準偏差が小さいもののベスト5となる角度パターン(θ、φ)を選出する。その選出に当たっては、ユニット間角度θintを複数設定して、その中から最適なθintを選出する必要があり、S27のサブルーチンをパターンごとに実行する。
【0099】
ここで、S27のサブルーチンについて説明する。S27は、ユニット間の角度決定フローである。S22において選出したアレイスピーカの角度パターン(θ、φ)について、さらに、S271では、ユニット間角度θintを複数設定する。
【0100】
S272において、S22、S271で設定した角度(θint、θ、φ)について、それぞれ、S28のエリア内標準偏差計算フローを実行する。ここでは、(θ、φ)は固定であり、θintのみ変動させて、それぞれ、S28の段階を実行する。このS28の各段階S281〜S283はそれぞれ図9(B)〜(D)の段階に相当している。そこで、前述した説明を代用してここでは説明を省略する。
S273において、S272で計算した中から標準偏差が最小値となるユニット間角度θintを選択する。その後、S27のサブルーチンは一旦終了するが、(θ、φ)の組を変えて、更にS27のフローは繰り返し行なわれることになる。
S23では、S22で選出した5つの角度パターン(θ、φ)のそれぞれの前後15度の組み合わせを設定する。例えば、選出したベスト5の角度パターンのうちの1つのパターンの最適値が(θ、φ)について(30度、45度)であったとすると、θについて15度、30度、45度についてパターンを新たに設定すると共に、φについて30度、45度、60度についてパターンを新たに設定する(32通り)。同様に、前記選出したベスト5について、それぞれの(θ、φ)のパターンを考えると、(5×32)通りあり、このように設定した各(θ、φ)それぞれに対して前述で説明したS27のサブルーチンで、ユニット間の角度θintを設定してθintの最適化を行なう。
S24において、新たに設定したパターンについて、S22と同様に、パターン探索を行い、候補を5つ選択する。
S25では、S23〜S24と同様であるが、角度を15度ピッチでなく、5度として、設定する。例えば、選出したベスト5の角度パターンのうちの1パターンの最適値が、θについて45度であったとすると、40度、45度、50度についてパターンを新たに設定する。
S26では、S25で設定した角度について、S22、S24と同様、それぞれS27のサブルーチンを用いて、(θint、θ、φ)を決定する。このS26では、S22、24と異なり、ベスト5でなく最適値を1つ選択して、θint、θ、φ)を最終的に決定する。
【0101】
以上のとおり、角度の範囲をはじめは粗く、次第に狭めて探索することにより、探索時間を節約できる。また、このような探索により、計算コストの次数の面から、計算上不可能となることを防ぐことができる。
【0102】
このように、図4〜図12で設定した条件設定および自動最適化/支援によって、従来、試行錯誤により最適化していた条件設定をほぼ自動化することができる。そして、その最適化の結果をST3で音響出力することにより、最適化の結果をヘッドホンによって確認することができる。
【0103】
なお、図3〜図12で説明した数値、ユニット数、図5の扇形または四角の形状、図6〜図7のGUI等は、説明容易のために例示した実施形態の一例であって、これらに限定されるものではない。また、これらの図で示したフローは実施形態の一例である。特に、条件設定、パターン設定は、説明の容易のため、繰り返すフローの一部となっていることとしたが、一度設定すると、繰り返しルーチンの中では何度も設定する必要はない。
【0104】
ここで、図13を参照して、図5、図6で説明した空間の形状入力の画面を表示しているときの音響設計支援装置の動作について説明しておく。このフローは図4の段階の空間形状設定ST11に対応している。
図5に示した形状選択ボックス11Cを表示することにより、扇型であるか箱型であるかの選択がなされたか否か判断する(s111)。扇型であればS111の判断はYとなり、S112において、図3に示すような形状選択ボックス11Dにおいて扇型の形状例を複数表示する。扇型でなければS111の判断はNとなり、S113に進み、図示しない箱型の形状例を複数表示する。
S114において、S112の扇型の形状選択ボックス11D、またはS113の箱型の形状選択の中から形状の選択がなされたか否か判断する。選択がない場合にはNとなり待機する。選択があった場合には、表示器101の画面を切り替えて、次のS115に進む。
S115においては、空間の形状を特定するための数値の入力がなされたか否か判断する。この数値がすべて入力されなければNとなり、入力されるまで待機する。数値が入力されると処理はS116に進む。S116では、空間の形状を特定するために入力された数値(S115)からその空間の平面的な面積規模と形状の平面的な縦と横の比率を計算する。
【0105】
S117において、決定ボタン11Hが押されたか否か判断する。当該決定ボタンが押された場合には、フローは終了する。押されるまでは、S115に戻って、数値入力した数値の変更を受け付ける。
次に、図14のフローチャートを参照して、図7のスピーカ選択画面12を表示しているときの音響設計支援装置の動作について説明する。
【0106】
S161、S162では、スピーカ選択画面12の用途選択ボックス12A、スピーカの設置位置選択ボックス12Cにおいて所望のものが選択されたかどうか判断し、選択されない場合はS161、S162の判断はNとなり待機する。S161、S162のいずれもが選択された場合は、S163へ進む。
S163では、ハードディスク104のスピーカデータテーブル109を参照して、S161、S162で入力されたデータを満たすものを選択する。そして、選択したスピーカアレイを、図7に示すように、スピーカの候補として表示する(S164)。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】解析帯域、合成帯域および窓関数の概略を示す図
【図2】応答波形を合成する動作を示すフローチャート
【図3】音響設計支援装置の内部構成および、集会施設基本形状データのデータ構造を表す図
【図4】音響設計支援装置の動作の全体のフロー図の概略
【図5】スピーカが配置される空間の概略形状を設定するためのGUIの一例を表す図
【図6】スピーカが配置される空間の概略形状を設定するための形状パラメータを入力するGUIの一例を表す図
【図7】スピーカの選択&配置の表示を行なうためのGUIの一例を表す図
【図8】スピーカデータテーブルのデータ構造を表す図
【図9】アレイスピーカのユニット間の角度条件設定を自動的に計算する方法の概念図
【図10】各スピーカの軸点での周波数特性の最適化を表すフローチャートおよびその最適化に用いるイコライザの設定例を表す図
【図11】受音面エリア内を格子点で区切った一例を示す図
【図12】スピーカ角度の最適化を行なう処理手順を示すフローチャート
【図13】図5、図6のGUI画面表示時の音響設計支援装置の動作を示すフローチャート
【図14】図7のスピーカ選択画面表示時の音響設計支援装置の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0108】
1−音響制御装置
101−表示器
102−操作部
103−CPU
104−HDD
105−メモリ
106−音声出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を用い、
1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT手順と、
これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成手順と、
を有することを特徴とする応答波形合成方法。
【請求項2】
可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域0〜n毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析分析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を用い、
解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT手順と、
この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成手順と、
を有することを特徴とする応答波形合成方法。
【請求項3】
前記逆FFT手順において、合成帯域i(i=2〜n−1)のうち、解析帯域i−1に対応する区間を立上り区間としてsinθの窓を掛け、解析帯域iに対応する区間を立下り区間としてcosθの窓を掛けた周波数特性値を用いて応答波形を求める請求項2に記載の応答波形合成方法。
【請求項4】
前記解析帯域1〜n−1は、オクターブ毎に分割されており、解析帯域k(k=1〜n−2)は、解析帯域k+1の2倍のFFTサンプリングデータ数によるFFT解析で周波数特性が求められている請求項2または請求項3に記載の応答波形合成方法。
【請求項5】
前記逆FFT手順において、合成帯域i(i=2〜n−1)のうち、解析帯域i−1に対応する区間は、周波数軸上で離散的に存在する周波数特性値を1つおきに間引きして用いる請求項4に記載の応答波形合成方法。
【請求項6】
可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を記憶した周波数特性記憶部と、
1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算部と、
これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、
を備えた応答波形合成装置。
【請求項7】
可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域0〜n毎に求められた周波数特性であって、低い周波数の解析分析帯域ほど細かい周波数分解能で求められた周波数特性を記憶した周波数特性記憶部と、
解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT部と、
この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、
を備えた応答波形合成装置。
【請求項8】
複数種類のスピーカの特性をそれぞれ記憶した特性記憶部と、
スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援部と、
前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択部と、
前記スピーカ選択部によって選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化部と、
前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化部により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に算出する周波数特性算出部と、
1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算部と、
これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、
前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力部と、
を備えた音響設計支援装置。
【請求項9】
複数種類のスピーカの特性をそれぞれ記憶した特性記憶部と、
スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援部と、
前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択部と、
前記スピーカ選択部によって選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化部と、
前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化部により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域をn+1個に分割した解析帯域0〜n毎に算出する周波数特性算出部と、
解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT部と、
この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成部と、
前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力部と、
を備えた音響設計支援装置。
【請求項10】
コンピュータに、
スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援工程と、
前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択工程と、
前記スピーカ選択工程で選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化工程と、
前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化工程により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域を複数に分割した解析帯域毎に算出する周波数特性算出工程と、
1または複数の解析帯域毎に合成帯域を設定して、この合成帯域毎に時間軸の応答波形を求める逆FFT演算工程と、
これらの合成帯域の応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成工程と、
前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力工程と、
を実行させる音響設計支援プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
スピーカを配置する空間の形状の情報に基づいて、選択可能なスピーカの候補を選出するスピーカ選択支援工程と、
前記選択可能なスピーカの候補から1つのスピーカを選択する選択操作を受け付けるスピーカ選択工程と、
前記スピーカ選択工程で選択されたスピーカの特性に基づき、前記空間の受音面のそれぞれの位置における音圧レベルのばらつきが最小となる、前記スピーカの設置方向を決定するスピーカ設置角度最適化工程と、
前記空間の形状の情報と、前記スピーカ設置角度最適化工程により決定したスピーカの設置方向に基づいて、前記空間の所定の位置における周波数特性を、可聴音の周波数帯域をn+1個に分割した解析帯域0〜n毎に算出する周波数特性算出工程と、
解析帯域i−1および解析帯域iの帯域を持つ合成帯域i(i=1〜n)の時間軸の応答波形を求める逆FFT工程と、
この合成帯域1〜nの応答波形を加算することにより、前記可聴音の周波数帯域の応答波形を得る加算合成工程と、
前記応答波形の特性が設定されたフィルタで音声信号を処理して出力する音声信号出力工程と、
を実行させる音響設計支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−212190(P2007−212190A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30096(P2006−30096)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】