説明

急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法

【課題】急傾斜コンベヤのベースベルトと波型フランジとの接続をボルトなどの金属部品を使用することなく簡単にしかも強固に行なうことのできる急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法を提供する。
【解決手段】ベースベルト1の幅方向両側に長さ方向に沿って波型フランジを備えた急傾斜コンベヤにおいて、ベースベルト1の長さ方向に沿って波型フランジの取り付け位置で波型フランジのベース部2aの幅で波型フランジとの接着面を研磨するとともに波型フランジのベース部2aの裏面も研磨し、前記ベースベルト1の研磨部および波型フランジのベース部2aの研磨部にそれぞれゴムノリ4および5を塗布し、ゴムノリ4および5が塗布されたベースベルト1と波型フランジのベース部2aとの間に生ゴムシート6を挟み込み、外部から熱および圧力を加えて熱加硫接着を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、急傾斜コンベヤの組み立てにおいて、ベースベルトと波型フランジの接合は、予め波型フランジを生ゴムプレス機で加硫成形した後、波型フランジのベース部とベースベルトに接着剤として自然加硫剤を塗布し、圧着させるという方法が採られている。
【0003】
この自然加硫剤を用いた接着方法では、自然加硫剤の耐熱温度が60度迄と低いために、高温度下での使用を考えた際に、自然加硫剤の軟化もしくは老化によって急傾斜コンベヤが必要とする接着強度が得られないために、根本的に構造が破壊する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この耐熱対策として波型フランジと高温の被搬送物との接触を極力避けるべく、ベースベルト幅の大型化が行なわれており、これに伴ってフレームなどの構造物やモーターなどの駆動部が大型化することになり、コストの増大に繋がっている。
【0005】
また、自然加硫剤の劣化による波型フランジの剥離が発生するため、これを回避するための処置としてベースベルト幅の大型化によって被搬送物との接触を避けたり、波型フランジとクリート、ベースベルトをボルトで補強することで脱落を防止しているという状況であるが、これらの処置はベルト破損の危険性の増大や、ベルトのコストアップ、フレームなどの大型化による装置全体のコストアップに繋がっている。
【0006】
また、自然加硫剤を用いた接着方法は自然加硫剤の耐熱温度が低いことから、耐熱性能を必要とするラインでは、波型フランジの剥離や、この剥離した波型フランジによる根本的なコンベヤ機能の低下、周辺機器への被害の拡大といった状況が発生するため、耐熱性能を必要とするラインへの使用が困難な場合があった。
【0007】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、急傾斜コンベヤのベースベルトと波型フランジとの接続をボルトなどの金属部品を使用することなく簡単にしかも強固に行なうことのできる急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法は、ベースベルトの幅方向両側に長さ方向に沿って波型フランジを備えた急傾斜コンベヤにおいて、ベースベルトの長さ方向に沿って波型フランジの取り付け位置で波型フランジのベース部の幅で波型フランジとの接着面を研磨するとともに波型フランジのベース部の裏面も研磨し、前記ベースベルトの研磨部および波型フランジのベース部の研磨部にそれぞれゴムノリを塗布し、ゴムノリが塗布されたベースベルトと波型フランジのベース部との間に生ゴムシートを挟み込み、外部から熱および圧力を加えて熱加硫接着を行なうことを特徴とする。
【0009】
加硫とは個々のゴム分子が硫黄を介して結合を行ない、網目構造となることで弾性・引っ張り強さなどの機械特性が増す現象をいい、熱加硫とは熱および圧力を加えることで加硫を進行させる現象をいう。
【0010】
熱加硫接着とは熱加硫を利用した接着方法で、加硫成形されたゴムの表面にはゴム製造時に投入される添加剤や汚れなどが付着しているためにバフ掛け処理を行ない、そのバフ掛けされた表面にゴムノリを塗布し、その塗布面に未加硫ゴムを置いて、熱および圧力を加えることで未加硫ゴムの加硫が起こると同時に、加硫成形されたゴムの表面に塗布したゴムノリと未加硫ゴムとの間でも加硫が起こり、それによりアンカー効果を生じることで接着力を得る接着方法である。
【0011】
また、二次加硫の熱加硫接着とは、予め加硫成形されたゴム同士の間に、バインダーの役割を果たすゴムノリおよび未加硫ゴムシートを挟み、熱および圧力を加えることで、それぞれの加硫成形されたゴムの表面で熱加硫接着が起きることにより、予め加硫成形されたゴム同士を接着させる接着方法である。
【0012】
このとき、未加硫ゴムシートを挟まずにゴムノリのみで加硫を行なおうとした場合、予め加硫成形されたゴムの表面はバフ掛け処理により平滑でないため、隙間ができ、互いの接触面積が少ないことから充分な接着力を得ることができない。
【0013】
ゴムノリの層を厚くした場合、ゴムノリは有機溶剤に生ゴムを溶解させたものであるため、熱加硫を行なう前に有機溶剤を揮発させなければならないが、ゴムノリの層を厚くすると、ゴムノリの乾燥に時間がかかるため、作業性の低下に繋がる。
【0014】
反対に、充分に乾燥を行なわずに熱加硫を行なった場合、加硫中に有機溶剤が揮発するが、揮発した気体の逃げ場がないため、気体が接着界面間に残ったままとなり、加硫後、圧力が低くなると同時に膨張することで界面がポーラス状となり、界面の剥離および接着性能の低下を引き起こす原因となる。
【0015】
また、ゴムノリの層を厚く熱加硫を行なった場合、同じ厚みの未加硫ゴムシートと比較すると、ゴム分子・硫黄の密度が低いために充分な接着力を得ることができない。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法は、生ゴムシートを波型フランジのベース部とベースベルトとの間に挟み熱加硫接着を行なうことで、二次加硫でありながら一体成形と同等の効果を得ることができる。そして、急傾斜コンベヤにおいて、波型フランジをベースベルトに熱加硫接着することにより、より高温の被搬送物の搬送が可能となり、温度による波型フランジの剥離、それによる周辺部へのトラブルの危険性を低くすることが可能となる。また、従来は波型フランジの剥離によってコンベヤ機能が失われており、コンベヤの寿命が自然加硫剤による接着強度に依存していたが、熱加硫接着を行なうことでコンベヤの寿命が生ゴムシートそのものの寿命となるため、急傾斜コンベヤシステム全体の延命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図6を用いて具体的に説明する。
図において、1は急傾斜コンベヤのベースベルトで、このベースベルト1には幅方向両側に長さ方向に沿って波型フランジ2,2を取り付け、この幅方向両側の波型フランジ2,2間においてベースベルト1の長さ方向等間隔おきにクリート3を取り付けている。
【0018】
このベースベルト1に対する波型フランジ2の取り付け作業を以下に述べる熱加硫接着により行なう。
先ず、ベースベルト1の長さ方向に沿って波型フランジ2,2の取り付け位置で波型フランジ2,2のベース部2a,2aの幅で波型フランジ2,2との接着面を研磨するとともに波型フランジ2,2のベース部2a,2aの裏面も研磨する。そして、前記ベースベルト1の研磨部および波型フランジ2,2のベース部2a,2aの研磨部にそれぞれゴムノリ4および5を塗布する。ゴムノリ4および5が塗布されたベースベルト1と波型フランジ2,2のベース部2a,2aとの間にある一定の厚み、例えば0.5mm厚の生ゴムシート6を挟み込み、外部から圧力および熱を加えて所定時間熱加硫接着を行なう。熱加硫接着に必要な圧力は少なくとも0.5MPaであり、熱は145〜155℃、時間は30分程度である。波型フランジ2,2のベース部2a,2aをベースベルト1に加圧するための加圧治具としては図3に示すような波型フランジ2,2の外側から上下方向ほぼ全長に亘って嵌合する波形状を呈したブロック状治具7あるいは図4に示すような波型フランジ2,2の外側および内側から波型フランジ2,2の下端部に嵌合する波形状を呈した板状治具8a,8bを用い、これら治具7あるいは8a,8bを波型フランジ2,2に嵌合させて波型フランジ2,2のベース部2a,2aを上から加圧するようになっている。加圧方法はプレスなどによる方法あるいは流体の膨張する力を利用する方法などが採用される。また、加熱方法としては前記治具7あるいは8a,8bへの加熱を行ない、この熱を波型フランジ2,2のベース部2a,2aおよび生ゴムシート6、ベースベルト1に伝える方法あるいは波型フランジ2,2のベース部2a,2aおよび生ゴムシート6、ベースベルト1を直接加熱する方法などが採用される。治具7あるいは8a,8bおよび波型フランジ2,2のベース部2a,2aおよび生ゴムシート6、ベースベルト1への加熱は電熱ヒーターや高周波、マイクロ波などの電磁波を用いたヒーター、高温の流体による熱伝導によって行なう。
【0019】
上記のようにベースベルト1と波型フランジ2,2のベース部2a,2aの接着面を研磨することにより接着面を洗浄するとともに接着面に凹凸を付けて表面積を増大させる。研磨面に塗布されたゴムノリ4および5は凹凸の微細な隅々まで入り込む。ゴムノリ4および5が塗布されたベースベルト1と波型フランジ2,2のベース部2a,2aとの間にある一定の厚みの未加硫の生のゴムシート6を挟み込み(図5参照)、外部から熱および圧力を加えて熱加硫を行なうことによりゴムシート6が柔らかくなり、柔らかくなったゴムシート6が研磨面の凹凸に入り込んだゴムノリ4および5と接触する。そこで、ベースベルト1側、波型フランジ2,2のベース部2a,2a側それぞれでゴムシート6のゴム分子とゴムノリ4および5に含まれるゴム分子との間で架橋が形成され、ゴムシート6とゴムノリ4および5は一体となり、加硫ゴムとなり、図6に示すようにベースベルト1の研磨面および波型フランジ2,2のベース部2a,2aの研磨面の凹凸部にゴムシート6が入り込み、これによりアンカー効果が生じ、接着力を向上させることができる。なお、ゴムノリ4および5を用いずに熱加硫接着を行なった場合、柔らかくなったゴムシート5だけでは研磨面の微細な凹凸部にゴムシートが入り込まないため、十分なアンカー効果を得ることができない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における急傾斜コンベヤのベルトの要部拡大斜視図である。
【図2】同急傾斜コンベヤのベースベルトと波型フランジの分解斜視図である。
【図3】同急傾斜コンベヤのベースベルトに対する波型フランジの接着作業時の状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】同急傾斜コンベヤのベースベルトに対する波型フランジの接着作業に用いる加圧治具の他の例を示す斜視図である。
【図5】同ベースベルトと波型フランジのベース部との間に生ゴムシートを挟んだ熱加硫前の状態を示す拡大断面図である。
【図6】同熱加硫後の状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ベースベルト
2 波型フランジ
2a ベース部
3 クリート
4,5 ゴムノリ
6 生ゴムシート
7 ブロック状治具
8a,8b 板状治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースベルトの幅方向両側に長さ方向に沿って波型フランジを備えた急傾斜コンベヤにおいて、ベースベルトの長さ方向に沿って波型フランジの取り付け位置で波型フランジのベース部の幅で波型フランジとの接着面を研磨するとともに波型フランジのベース部の裏面も研磨し、前記ベースベルトの研磨部および波型フランジのベース部の研磨部にそれぞれゴムノリを塗布し、ゴムノリが塗布されたベースベルトと波型フランジのベース部との間に生ゴムシートを挟み込み、外部から熱および圧力を加えて熱加硫接着を行なうことを特徴とする急傾斜コンベヤの熱加硫接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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