説明

急性心不全に伴う呼吸困難のリラキシンによる治療

【課題】急性非代償性心不全(AHF)に関連する状態、例えば呼吸困難などを治療する方法の提供。
【解決手段】組換え、合成または天然の供給源からの生物学的に活性なリラキシンならびにアミノ酸配列変異体などのリラキシン変異体をさらに含む、ヒトH1プレプロリラキシン、プロリラキシン、およびリラキシン;H2プレプロリラキシン、プロリラキシン、およびリラキシン;ならびにH3プレプロリラキシン、プロリラキシン、およびリラキシンの投与。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全ての目的のためにそれらの全体を参照により本明細書に組み込む、200
9年3月27日出願の米国特許仮出願第61/164,333号、2008年12月8日
出願の第61/201,240号、2008年8月28日出願の第61/190,545
号、および2008年5月16日出願の第61/127,889号の35U.S.C.1
19(e)における利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、急性非代償性心不全の症状で苦しむヒト被験体における代償不全を治療する
方法に関する。本明細書に記載される方法は、リラキシンの投与を使用する。
【背景技術】
【0003】
背景
急性心不全(AHF)または急性非代償性心不全(ADHF)は、呼吸困難(息切れ)
、浮腫(体液貯留)および疲労を典型的に含む障害の雑多な群(heterogeneous group)
を包含する。例えば、うっ血性心不全の増悪による息切れを呈する患者は、AHF患者の
群に入るであろう。しかしながら、AHFの診断は困難である場合があり、この状態の高
い有病率およびそれが大きな罹患率および死亡率を伴っていることにも拘わらず、最適な
治療は十分に定義されないままである。治療を取り巻く困難は、疾患の明確な定義の欠如
から始まる。用語「急性非代償性心不全」は、入院または予定外の医療行為に至る新規な
もしくは悪化している呼吸困難、疲労または浮腫の症状もしくは徴候を広く現す。これら
の症状は、左心室機能の悪化の内在と一致する。「急性心不全」は、心不全の前病歴はな
く以前は機能正常であった患者における心不全の症状または徴候の発症と定義されること
がある。これは、随伴性急性冠動脈症候群のない患者においては特に、AHFの一般的で
ない原因である。より頻繁に、AHFは、比較的安定した期間の後で症状または徴候の増
悪が見られるうっ血性心不全(CHF)患者においてなど、前に確立した心筋の機能不全
(収縮期のまたは拡張期の)を有する患者で起こる(AllenおよびO’Connor
、CMAJ 176(6):797〜805、2007)。したがって、AHFは、CH
Fの前病歴なしに起こるか、以前のCHF患者における病態生理学的起源(機能的)に基
づくか、または以前のCHF患者における解剖学的原因の結果(構造的)である可能性が
ある。このように、AHFは機能的および/または構造的な疾患であり得る。
【0004】
代償不全の急性の誘因の同定、ならびに心臓充満圧(cardiac filling pressure)およ
び心拍出量の非侵襲的特徴づけが管理の中心である。利尿剤、血管拡張剤、連続的な正の
気道圧および変力薬(inotropes)が、症状を軽減するために使用され得る。しかしなが
ら、中間臨床結果において有意の改善を提供することが示された(大規模な前向きのラン
ダム化治験において)、AHFの治療のために現在利用できる作用薬はない。
【0005】
AHFは、Center for Medicare and Medicaid A
dministrationによれば、単独の入院診断として最も高価である。AHFは
、年間百万件を超える入院の原因であり、6カ月以内の再入院は50パーセントと高い。
年間死亡率は、50パーセントに迫る(New York Heart Associa
tionのクラスIIIまたはIVの症状を有する患者について)。一般に、最初の入院
中における積極的でない医療行為(non-aggressive medical care)、再入院前の次善の
治療(sub-optimal treatment)、および患者のノンコンプライアンスが、高い再入院率
の大きい原因である。入院前に古典的なAHF症状を有する患者の50パーセントは、医
療提供者との最初の相談時に、彼らの治療に変化を受けない(McBrideら、Pha
rmacotherapy 23(8):997〜1020、2003)。
【0006】
AHFはナトリウムおよび水保持および左心室(LV)機能不全に関連する障害と伝統
的に見られていたが、現在それは神経ホルモンの活性化に関連することも理解されている
(Schrierら、The New England Journal of Med
icine 341(8):577〜585、1999)。上で示したように、AHFの
臨床的症候群は、急性的に上昇した心臓充満圧の結果生じる、肺の間質空間および肺胞腔
内における体液の急な蓄積に伴う呼吸困難の発生により特徴づけられる(心原性の肺浮腫
)。より具体的に、AHFは、肺浮腫のない上昇した左心室充満圧および呼吸困難として
も存在し得る。それは、最も一般的には、冠動脈疾患または心臓弁異常などの追加的心病
変の伴うまたは伴わない、左心室の収縮期または拡張期の機能不全に起因する。それに加
えて、種々の状態または事象が、重症高血圧、特に腎血管性高血圧、および重症腎臓疾患
を含む心臓疾患の存在なしに上昇した肺毛細血管楔入圧に起因する心原性の肺浮腫を惹起
し得る。
【0007】
AHFのための入院は、過去数十年の間に増加して、および近い将来増加し続けると予
想される。AHFは、通常、エビデンスよりもむしろ慣習的に診断されて管理される。こ
の障害に伴うコストを低下させかつ患者の転帰を最適化するためには、新しい取り組みお
よびより良い治療選択肢が必要不可欠である。利尿剤療法は、肺うっ血および体液貯留の
症状軽減のための主要な治療であった。一時大量投薬よりむしろループ利尿剤の連続的注
入の方が有効性を増大して利尿剤耐性の程度を減少させ得る。カテコールアミンおよびホ
スホジエステラーゼによる変力療法は有効であるが、催不整脈(arrhythmogenesis)の危
険性の増大および生存に対する負の効果の可能性が、それらの使用を制限する。血管拡張
剤療法において使用されるNATROCOR(Sciosにより市販されているネシリチ
ド(nesiritide))は、薬理学的前負荷および後負荷低下剤(pharmacological preload
and afterload reducer)であるが、治験のエビデンスに基づき、静脈内硝酸塩療法に対
して耐性を有する人達のために保留すべきである(McBrideら、上記)。バソプレ
シン受容体アンタゴニストおよびアデノシン受容体アンタゴニストは、積極的利尿期間中
に若干の改善された腎臓保存を提供する(Tangら、Current Cardiol
ogy Reviews1(1):1〜5、2005)。
【0008】
血液量および灌流状態(volume and perfusion status)は、患者の心機能に対する有
用な手がかりを提供し、AHFを有する患者のための治療計画を作るのに役立つ。治療奉
仕者は、血液量および灌流状態を決定するために、患者の血行動態状態を頻繁に再評価し
なければならない。血液量の状態は患者が、湿性か、乾性か、または均衡した体液レベル
(それぞれ、血液量過多、血液量減少、または正常血液量)を有するか評価することによ
り決定され、灌流は患者が冷たいか、冷えているか/微温か、または温かいか(それぞれ
、非常に低い、やや低い、または正常である灌流を有する)を決定することにより評価さ
れる。うっ血のエビデンスには、頸部静脈拡張の徴候、右内頸静脈における上昇した圧力
、陽性腹部頸静脈逆流、浮腫、腹水、および湿性ラ音(稀)、ならびに呼吸困難、起座呼
吸、および発作性夜行性呼吸困難の症状が含まれる。加えて、胸部X線写真、動脈血液ガ
スレベル、肝機能テスト、血液学的テスト、心電図、および基礎代謝プロファイルを含む
種々のテストを、入院時に実施することができる。理学検査の知見およびナトリウム利尿
ペプチド(natriuretic peptide)の血清レベルのアッセイの結果は、急性非代償性心不
全を有する患者における治療のガイドとして使用することができる。脳ナトリウム利尿ペ
プチドまたはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、拡張末期圧の上昇および心室体
積膨張に応答して主として心室の心筋層から分泌される。BNPの測定は、AHFとして
のCHFの診断に役立つことができ、BNPレベルは、急性代償不全のための入院中に臨
床的状態および療法の有効性を評価するためにも使用することができる(Albertら
、Critical Care Nurse 24(6):14〜29、2004)。
【0009】
慢性心不全管理の領域において顕著な進歩がなされたが、臨床医は、AHFを罹患する
患者を含む急性非代償性患者を治療する最適な戦略をなし遂げようと努力を続けている。
心不全を有する患者の間で心臓と腎臓との間で生じる複雑な相互作用の認識が現在増大し
ている。このように、この患者集団を治療するために使用される伝統的治療法の多くは、
腎臓機能を大きく変化させ得るので、したがって最適な治療の選択肢とは最早みなされな
い。より総合的な取り組み方が望ましく、本開示はこの必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
好ましい実施形態の要旨
本開示は、リラキシンの投与により急性非代償性心不全(AHF)に関連する状態を治
療する方法を提供する。AHFに関連する症状による入院数は絶えず増加しており、この
患者集団をケアするコストは膨大である。したがって、新しい治療法の取り組みが必要で
あり、本開示はこの必要性に対処する。本開示の1つの利点は、リラキシンの投与が、A
HFと関連する状態を有すると診断された被験体がさらに増悪することを防止する、均衡
のとれた血管拡張をもたらすことである。このように、被験体は、入院が必要とされず、
来診の数または期間も顕著に減少する定常状態レベルに維持することができる。本開示の
もう1つの利点は、リラキシンは、患者に投与されたときに、薬物有害反応(ADR)が
殆どないし全くなしに有効性を示すことである。本明細書において、リラキシンはADR
を起こさずに急性代償不全を減少させることに有益な効果を有することが示される。した
がって、本開示は、急性代償不全を罹患しており、リラキシン治療による利益にとりわけ
適した特定の患者集団における均衡のとれた血管拡張に結びつく治療を提供する。
【0011】
本開示の一態様は、血管系を有しその血管系がリラキシン受容体を有する、急性心臓代
償不全を有するヒト被験体を選択することを含む、急性心臓代償不全事象を減少させる方
法を提供する。該方法は、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合して均衡のとれた
血管拡張を生じさせることにより、被験体における急性心臓代償不全を減少させるのに有
効な量で医薬的に活性なリラキシンを含む医薬剤形を被験体に投与することをさらに含む
。心臓代償不全は、神経ホルモンの不均衡、体液過負荷、不整脈、および心虚血を含むが
これらに限定されない何らかの1つ以上の原因に基づき得る。一実施形態において、ヒト
被験体は急性血管不全(acute vascular failure)を罹患している。
【0012】
本開示の医薬剤形において使用されるリラキシンは、例えば、合成または組換えリラキ
シン、または医薬的に有効なリラキシンアゴニストであってよい。本開示の一実施形態に
おいて、リラキシンはH1ヒトリラキシンである。他の実施形態において、リラキシンは
H2ヒトリラキシンである。さらに他の実施形態において、リラキシンはH3ヒトリラキ
シンである。さらなる実施形態において、リラキシンは、合成もしくは組換えヒトリラキ
シン、または医薬的に有効なリラキシンアゴニストである。したがって、被験体は、合成
もしくは組換えヒトリラキシンまたはリラキシンアゴニストの医薬剤形で治療することが
できる。本開示の一実施形態において、被験体は合成ヒトリラキシンで治療される。他の
実施形態において、被験体は組換えヒトリラキシンで治療される。さらに他の実施形態に
おいて、被験体は、医薬的に有効なリラキシンアゴニストで治療される。リラキシンは、
静脈内、皮下、筋肉内、舌下および吸入を含むがこれらに限定されない多数の異なる経路
を通して、被験体に投与することができる。より具体的に、リラキシンまたはリラキシン
アゴニストの医薬剤形は、被験体に1日当たり約10から1000μg/kg(被験体体
重)の範囲内の量で投与することができる。このように、リラキシンは、約1から500
ng/mlのリラキシンの血清濃度を保つように患者に投与される。
【0013】
本開示の方法から利益を得るであろうヒト被験体は、呼吸困難、高血圧、不整脈、低下
した腎臓血流、および腎不全を含むがこれらに限定されない、病院への再入院をしばしば
伴う急性心臓代償不全事象を通常は呈する。本開示の一実施形態において、これらの急性
心臓代償不全事象は、本来、病態生理学的である。最も一般的に、そのような事象は急性
非代償性心不全(AHF)と関連する。一実施形態において、ヒト被験体は急性血管不全
を罹患している。他の実施形態において、急性心臓代償不全は断続的である。別の実施形
態において、急性心臓代償不全は慢性である。
【0014】
本開示の他の態様は、急性非代償性心不全(AHF)に関連する急性心臓代償不全を治
療する方法を提供する。該方法は、血管系を有し該血管系がリラキシン受容体を有する、
急性心臓代償不全を有するヒト被験体を選択する工程、さらに、医薬的に活性なリラキシ
ンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニストを含む医薬剤形を、被験体に投与する工程
を含む。リラキシンは、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合させて均衡のとれた
血管拡張を生じさせることにより、被験体における急性心臓代償不全を減少させるのに有
効な量で投与される。心臓代償不全は、神経ホルモンの不均衡、体液過負荷、不整脈、お
よび心虚血を含むが、これらに限定されない何らかの1つ以上の原因に起因し得る。一実
施形態において、ヒト被験体は急性血管不全を罹患している。
【0015】
本開示は、医薬的に活性な合成ヒトリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニ
ストをヒト被験体に1日当たり約10から1000μg/kg(被験体体重)の範囲内の
量で含む剤形を投与して、急性心臓代償不全事象における回復を達成するのに十分な期間
にわたって投与を継続することを含む、呼吸困難、高血圧、不整脈、低下した腎臓血流、
および腎不全を含むがこれらに限定されない急性非代償性心不全(AHF)と関連する急
性心臓代償不全を治療する方法をさらに包含する。好ましい一実施形態において、医薬的
に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、10ng/mlの血清濃度をもたらす約3
0μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態において、医薬的に有効なリラキ
シンまたはそのアゴニストは、約10から約250μg/kg/日で投与される。回復は
、被験体における急性心臓代償不全事象および/または重症度の低い急性心臓代償不全事
象の減少数として見ることができる。一実施形態において、ヒト被験体は急性血管不全を
罹患している。
【0016】
さらに、本開示の他の態様は、腎不全も罹患しているヒト被験体における急性非代償性
心不全(AHF)を治療する方法を提供する。この方法は、急性心臓代償不全および腎不
全の症状を有し、全身のおよび腎臓のリラキシン受容体を含む血管系を有するヒト被験体
を選択する工程を含む。該方法は、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラ
キシンアゴニストを含む医薬剤形を、被験体に投与する工程をさらに含み、その方法にお
いてリラキシンは、被験体の全身のおよび腎臓の血管系中のリラキシン受容体に結合する
ことにより二重の作用を及ぼして均衡のとれた血管拡張を生じさせる。一実施形態におい
て、ヒト被験体は急性血管不全を罹患している。心臓代償不全は、神経ホルモンの不均衡
、体液過負荷、不整脈、および心虚血を含むがこれらに限定されない何らかの1つ以上の
原因に基づき得る。被験体は、呼吸困難、高血圧、不整脈、および低下した腎臓血流など
の症状に苦しむことがあり、症状は、通常さらに再入院を伴う。被験体がさらに脳ナトリ
ウム利尿ペプチド(BNP)の上昇したレベルを経験していることがあることは注目に値
する。それに加えて、急性心臓代償不全の逆転(reversal)が、BNPの循環レベルにお
ける減少との組合せで起こり得る。
【0017】
本開示の他の態様は、神経ホルモン不均衡を有するヒト被験体を選択する工程を含む、
リラキシン受容体を有する血管系を有するヒト被験体においてエンドセリンを調節する方
法を提供する。該方法は、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンア
ゴニストを含む医薬剤形を、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合することにより
被験体における神経ホルモンの不均衡を減少させて、均衡のとれた血管拡張を生じさせる
のに有効な量で、被験体に投与する工程をさらに含む。一実施形態において、ヒト被験体
は急性血管不全を罹患している。
【0018】
本開示は、急性心臓代償不全の症状を有するヒト被験体における死亡の危険性を減少さ
せる方法をさらに考慮する。この方法は、リラキシン受容体を有する血管系を有し、急性
心臓代償不全を有するヒト被験体を選択して、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に
有効なリラキシンアゴニストを含む医薬剤形を、被験体に投与する工程を含む。リラキシ
ンは、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合して、それにより脳ナトリウム利尿ペ
プチド(BNP)のレベルの低下を生じさせることにより、被験体における急性心臓代償
不全を減少させるのに有効な量で投与される。被験体における死亡の危険性を予測するた
めに、BNPの減少レベルは、物理的に測定することができる。一般に、BNPの減少レ
ベルは、血管抵抗における減少に続く心臓のストレスの減少に基づく。さらに、血管抵抗
における減少は、リラキシンが、腎臓血管系の平滑筋細胞上に見出されるリラキシン受容
体に結合する結果である均衡のとれた血管拡張に基づく。一実施形態において、ヒト被験
体は急性血管不全を罹患している。
【0019】
一般に、被験体における急性心臓代償不全の逆転は、LGR7およびLGR8受容体な
ど特異的リラキシン受容体の活性化により起こる。特に、LGR7およびLGR8受容体
は、リラキシンまたはリラキシンアゴニストの結合により活性化され、そこで前記結合が
均衡のとれた血管拡張を生じさせる一酸化窒素(NO)の産生を誘発する。これらのリラ
キシン特異的受容体は、全身および腎臓の血管系を含む血管系の平滑筋組織上にある。
【0020】
さらに、本開示の他の態様は、リラキシン受容体を有する血管系を有し、急性心臓代償
不全を有するヒト被験体を選択する工程を含む、急性心臓代償不全事象を減少させる方法
を提供する。該方法は、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴ
ニストを、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合して、均衡のとれた血管拡張を生
じさせることにより、被験体における急性心臓代償不全を減少させるのに有効な量で含む
医薬剤形を、被験体に投与する工程をさらに含み、その場合、リラキシンは、リラキシン
の約3ng/ml以上の血清濃度を保つように、被験体に投与される。該方法は、医薬的
に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニストを、被験体の血管系中の
リラキシン受容体に結合して、均衡のとれた血管拡張を生じさせることにより、被験体に
おける急性心臓代償不全を減少させるのに有効な量で含む医薬剤形を、被験体に投与する
工程をさらに含み、その場合、リラキシンは、リラキシンの約10ng/ml以上の血清
濃度を保つように、被験体に投与される。一実施形態において、ヒト被験体は急性血管不
全を罹患している。
【0021】
さらに、本開示の他の態様は、急性心臓代償不全の治療で使用するためのリラキシンを
提供する。急性心臓代償不全は、急性非代償性心不全(AHF)と普通は関連する。該方
法は、リラキシン受容体を有する血管系を有し、急性心臓代償不全を有するヒト被験体を
選択して、さらに、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニス
トを含む医薬剤形を、被験体に投与する工程を含む。一実施形態において、ヒト被験体は
急性血管不全を罹患している。リラキシンまたはリラキシンアゴニストは、被験体の血管
系中のリラキシン受容体に結合して、均衡のとれた血管拡張を生じさせることにより、被
験体における急性心臓代償不全を軽減させるのに有効な量で投与される。心臓代償不全は
、神経ホルモンの不均衡、体液過負荷、不整脈、および心虚血を含むがこれらに限定され
ない何らかの1つ以上の原因に基づき得る。本開示は、急性心臓代償不全事象を減少させ
ることに使用するためにもリラキシンを考慮する。
【0022】
本開示は、腎不全も罹患しているヒト被験体における急性非代償性心不全(AHF)の
治療に使用するためのリラキシン;ヒト被験体においてエンドセリンを調節するのに使用
するためのリラキシン;および本明細書において論じるとおりの、急性心臓代償不全の症
状を有するヒト被験体における死亡の危険性を減少させるのに使用するためのリラキシン
をさらに包含する。
【0023】
本開示の他の態様は、急性心臓代償不全事象を減少させる方法を提供する。該方法は、
リラキシン受容体を有する血管系を有し、急性心臓代償不全を有するヒト被験体を選択し
て、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合することにより、被験体における急性心
臓代償不全を減少させるのに有効な量で医薬的に活性なリラキシンを含む医薬剤形を、被
験体に投与する工程を含む。この方法において、リラキシンを用いる治療は、リラキシン
治療の開始から少なくとも約1から14日間持続する、急性心臓代償不全事象の減少をも
たらす。急性心臓代償不全事象には、呼吸困難、体液の保持による超過体重、病院滞在の
長さ、再入院のありそうなこと、ループ利尿剤の必要性、ニトログリセリン静脈注射の必
要性、心不全悪化の発生が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、患
者はリラキシンで48時間治療される。他の実施形態において、患者はリラキシンで24
時間治療される。さらに他の実施形態において、患者はリラキシンで12時間治療される
。さらに他の実施形態において、患者は、リラキシンで6時間治療される。リラキシンの
効果は、任意の時点、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日
、10日、11日、12日、13日、14日またはその後で測定することができる。
【0024】
好ましい一実施形態において、リラキシンは約30μg/kg/日(mcg/kg/day)で投
与される。好ましい一実施形態において、リラキシンは約30μg/kg/日で投与され
る。他の好ましい実施形態において、リラキシンは約35μg/kg/日で投与される。
他の好ましい実施形態において、リラキシンは約40μg/kg/日で投与される。他の
好ましい実施形態において、リラキシンは約45μg/kg/日で投与される。他の好ま
しい実施形態において、リラキシンは約50μg/kg/日で投与される。他の好ましい
実施形態において、リラキシンは約55μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施
形態において、リラキシンは約60μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態
において、リラキシンは約65μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態にお
いて、リラキシンは約70μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態において
、リラキシンは約75μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態において、リ
ラキシンは約80μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態において、リラキ
シンは約85μg/kg/日で投与される。他の好ましい実施形態において、リラキシン
は約100μg/kg/日で投与される。リラキシンは、90から200μg/kg/日
の用量で投与することもできる。医薬的に有効なリラキシンは、組換えまたは合成のH1
ヒトリラキシン、H2ヒトリラキシンまたはH3ヒトリラキシンまたはアゴニストまたは
その変異体を含む。好ましい一実施形態において、リラキシンは、約10ng/mlの血
清濃度を保つように被験体に投与される。リラキシンの医薬剤形は、静脈内に、皮下に、
筋肉内に、舌下にまたは吸入により投与することができる。好ましい一実施形態において
、リラキシンの医薬剤形は静脈内に投与される。リラキシン受容体は、リラキシンの結合
により活性化されて、LRG7、LGR8、GPCR135、およびGPCR142を含
むが、これらに限定されない。リラキシンのリラキシン受容体への結合は、均衡のとれた
血管拡張を生じさせる一酸化窒素(NO)の産生を誘発する。リラキシン受容体は、例え
ば、血管系の平滑筋組織上にある。
【0025】
本開示は、ヒト被験体に、医薬的に活性なH2リラキシンを、心臓血管病態を治療する
のに有効な量で投与する工程を含む、心臓血管病態を治療する方法も提供し、その場合、
心臓血管病態は安静時または僅かな運動時の呼吸困難、胸部X線における肺うっ血、およ
び上昇したナトリウム利尿ペプチドレベル(脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧35
0pg/mLまたはNT−pro−BNP≧1400pg/mL)からなる群の2つ以上
の存在を基に診断される。幾つかの実施形態において、心臓血管病態は、急性心不全であ
り、2つ以上が安静時または僅かな運動時の呼吸困難、および胸部X線における肺うっ血
を含む。幾つかの実施形態において、心臓血管病態は急性心不全であり、2つ以上が安静
時または僅かな運動時の呼吸困難、および上昇したナトリウム利尿ペプチドレベル(脳ナ
トリウム利尿ペプチド(BNP)≧350pg/mLまたはNT−pro−BNP≧14
00pg/mL)を含む。幾つかの実施形態において、心臓血管病態は急性心不全であり
、2つ以上が胸部X線における肺うっ血および上昇したナトリウム利尿ペプチドレベル(
脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧350pg/mLまたはNT−pro−BNP≧
1400pg/mL)を含む。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は男性である
かまたは妊娠していない女性である。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、収
縮期血圧が少なくとも約125mmHgである。
【0026】
それに加えて、本開示は、急性心不全に伴う呼吸困難を有し、かつ投与の開始時に高血
圧または正常血圧状態であるヒト被験体に、医薬的に活性なH2リラキシンを被験体にお
ける呼吸困難を軽減するのに有効な量で投与する工程を含む、急性心不全に伴う呼吸困難
を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態において、該方法は、投与工程の前から急
性心不全に伴う呼吸困難を有し、および高血圧または正常血圧状態にあるヒト被験体を選
択する工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、H2リラキシンは、少なくとも2
4時間または48時間投与され、一方他の実施形態においては、H2リラキシンは48時
間にわたって投与される。幾つかの実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/
kg/日から約250μg/kg/日の範囲内、約30μg/kg/日から約100μg
/kg/日の範囲内、または約30μg/kg/日の静脈内注入速度(intravenous infu
sion rate)で投与される。幾つかの実施形態において、呼吸困難の軽減は、治療開始後
6時間でH2リラキシンを使用しない治療と比較して、治療開始後12時間でH2リラキ
シンを使用しない治療と比較して、または治療開始後6、12および24時間でプラセボ
と比較して統計的に有意である。幾つかの実施形態において、呼吸困難の軽減は、治療期
間の少なくとも約2倍、治療期間の少なくとも約4倍、または治療期間の少なくとも約7
倍の間持続する。幾つかの実施形態において、該方法は、患者の体重を、H2リラキシン
を使用しない治療と比較して、14日の期間にわたって少なくとも約0.5kg、または
、H2リラキシンを使用しない治療と比較して、14日の期間にわたって少なくとも約1
kg減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、被験体は腎臓を障害され
ている。これらの実施形態の部分集合において、被験体は、クレアチニンクリアランスが
約35から約75mL/分の範囲内である。幾つかの実施形態において、該方法は、被験
体の死亡または再入院の60日危険性(60-day risk)を、H2リラキシンを使用しない
急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。これらの実施形態の
部分集合において、死亡または再入院の60日危険性は少なくとも50%減少する。幾つ
かの好ましい実施形態において、被験体は入院を必要とする呼吸困難を有する。幾つかの
実施形態において、該方法は、入院滞在の長さを、H2リラキシンを使用しない急性非代
償性心不全の治療と比較して、少なくとも1日短縮する工程をさらに含む。幾つかの方法
において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投与さ
れ、入院滞在の長さは、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較し
て、少なくとも2日短縮される。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心不全
または腎不全による再入院の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性
心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの好ましい実施形態におい
て、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約50%減少する。
幾つかの方法において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲内の静脈内の注
入速度で投与され、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約7
0%減少する。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心血管死(cardiovascul
ar death)の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療
と比較して減少させる工程を含む。幾つかの好ましい実施形態において、心血管死の18
0日危険性は、少なくとも約50%減少する。幾つかの実施形態において、H2リラキシ
ンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度で投与され、心血管死の180日危
険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の
全死因死亡(all-cause mortality)の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない
急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの好ましい実
施形態において、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約25%減少する。幾つか
の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度
で投与され、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約50%減少する。幾つかの好
ましい実施形態において、被験体は男性であるかまたは妊娠していない女性である。幾つ
かの好ましい実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なくとも約125mmHgで
ある。
【0027】
本開示は、急性非代償性心不全に伴う呼吸困難および心虚血の少なくとも1つの兆候を
有するヒト被験体に、医薬的に活性なH2リラキシンを有効な量で投与して、被験体にお
ける呼吸困難を軽減する工程を含む、急性非代償性心不全に伴う呼吸困難を治療する方法
をさらに提供する。幾つかの実施形態において、該方法は、急性非代償性心不全に伴う呼
吸困難および心虚血の少なくとも1つの兆候を、投与工程の前に有するヒト被験体を選択
する工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、心虚血の少なくとも1つの兆候は、
陽性のトロポニンテスト(positive troponin test)、異常な心電図、胸部疼痛の存在、
不整脈の存在、陽性のクレアチンキナーゼMBテスト(positive creatine kinase-MB te
st)、および異常な心エコー図からなる群から選択される。該方法の幾つかの実施形態に
おいて、被験体は、左心室駆出率も20〜40%の範囲内である。他の実施形態において
、被験体は、左心室駆出率が少なくとも40%である。該方法の幾つかの実施形態におい
て、被験体は正常血圧または高血圧である。他の実施形態において、被験体は、収縮期血
圧が少なくとも約125mmHgである。該方法の幾つかの実施形態において、被験体は
腎臓が障害されている。他の実施形態において、被験体は、クレアチニンクリアランスが
約35から約75mL/分の範囲内である。心臓血管病態を治療する方法の幾つかの実施
形態において、H2リラキシンは、少なくとも24時間または48時間の間投与される。
他の実施形態において、H2リラキシンは48時間にわたって投与される。さらに他の実
施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約960μg/kg/日
の範囲内の注入速度で投与される。該方法のさらに他の実施形態において、H2リラキシ
ンは、約10μg/kg/日から約250μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投
与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日から
約100μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態に
おいて、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与される
。該方法の幾つかの実施形態において、被験体は入院を必要とする呼吸困難を有する。幾
つかの好ましい実施形態において、被験体は、男性であるかまたは妊娠していない女性で
ある。
【0028】
本開示は、a)急性非代償性心不全を有する被験体を同定する工程、b)被験体におけ
る起座呼吸状態を評価する工程、c)患者における起座呼吸状態に基づいて医薬的に活性
なH2リラキシンの初期用量を選択する工程、およびd)被験体の該用量を投与する工程
を含む、急性非代償性心不全を治療する方法をさらに提供する。該方法の幾つかの実施形
態において、選択される初期用量は、起座呼吸がないときより起座呼吸があるときの方が
高い。幾つかの実施形態において、起座呼吸の存在においては、選択される初期用量は、
少なくとも約30μg/kg/日であるが、約100μg/kg/日未満である。幾つか
の好ましい実施形態において、被験体は、男性であるかまたは妊娠していない女性である
。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なくとも約125mm
Hgである。
【0029】
本開示は、急性非代償性心不全および少なくとも20%の左心室駆出(left ventricul
ar ejection from)を有するヒト被験体に、医薬的に活性なH2リラキシンを有効な量で
投与して、被験体における呼吸困難を軽減する、急性非代償性心不全に伴う呼吸困難を治
療する方法をさらに提供する。幾つかの実施形態において、該方法は、急性非代償性心不
全および少なくとも20%の左心室駆出を、投与工程の前に有するヒト被験体を選択する
工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、被験体は、左心室駆出率が少なくとも約
20%である。該方法の幾つかの実施形態において、被験体は、左心室駆出率が少なくと
も約40%である。一実施形態において被験体は正常血圧であり、一方他の実施形態にお
いて被験体は高血圧である。幾つかの実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なく
とも約125mmHgである。他の実施形態において、被験体は腎臓が障害されている。
他の実施形態において、被験体は、クレアチニンクリアランスが約35から約75mL/
分の範囲内にある。該方法の他の実施形態において、H2リラキシンは、少なくとも24
時間または48時間の間投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、
48時間にわたって投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約1
0μg/kg/日から約960μg/kg/日の範囲内の注入速度で投与される。さらに
他の実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約250μg/k
g/日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラ
キシンは、約30μg/kg/日から約100μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度
で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日
の範囲内の静脈内注入速度で投与される。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体
の死亡または再入院の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全
の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、死亡または
再入院の60日危険性は、少なくとも50%減少する。該方法の幾つかの実施形態におい
て、被験体は入院を必要とする呼吸困難を有する。幾つかの実施形態において、該方法は
、入院滞在の長さを、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して
、少なくとも1日短縮する工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、H2リラキシ
ンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与され、入院滞在の長さは、H
2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、少なくとも2日短縮さ
れる。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心不全または腎不全による再入院
の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減
少させる工程をさらに含む。他の実施形態において、心不全または腎不全による再入院の
60日危険性は、少なくとも約50%減少する。他の実施形態において、H2リラキシン
は、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与され、心不全または腎不全によ
る再入院の60日危険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの実施形態において、
該方法は、被験体の心血管死の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代
償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、
心血管死の180日危険性は、少なくとも約50%減少する。該方法の幾つかの実施形態
において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度で投与され
、心血管死の180日危険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの実施形態におい
て、該方法は、被験体の全死因死亡の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない急
性非代償性心不全の治療と比較して、減少させる工程をさらに含む。他の実施形態におい
て、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約25%減少する。他の実施形態におい
て、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度で投与され、全死
因死亡の180日危険性は、少なくとも約50%減少する。幾つかの好ましい実施形態に
おいて、被験体は、男性であるかまたは妊娠していない女性である。
【0030】
本開示は、a)急性非代償性心不全および少なくとも125mmHgの収縮期血圧を有
する被験体を選択する工程、およびb)被験体に医薬的に活性なH2リラキシンを有効な
量で投与して被験体における院内悪化心不全(in-hospital worsening heart failure)
を減少させる工程を含む、急性非代償性心不全を治療する方法をさらに提供する。該方法
の幾つかの実施形態において、被験体は腎臓が障害されている。幾つかの好ましい実施形
態において、院内悪化心不全は、悪化する呼吸困難、心不全を治療するための追加の静脈
内療法の必要性、呼吸の機械的支持の必要性、および血圧の機械的支持の必要性のうちの
1つ以上を含む。他の実施形態において、被験体は、クレアチニンクリアランスが約35
から約75mL/分の範囲内にある。幾つかの実施形態において、H2リラキシンは、少
なくとも24時間または48時間の間投与される。幾つかの実施形態において、H2リラ
キシンは48時間にわたって投与される。他の実施形態において、H2リラキシンは、約
10μg/kg/日から約960μg/kg/日の範囲内の注入速度で投与される。他の
実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約250μg/kg/
日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシ
ンは、約30μg/kg/日から約100μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投
与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範
囲の静脈内注入速度で投与される。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の死亡
または再入院の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療
と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、死亡または再入院
の60日危険性は、少なくとも50%減少する。幾つかの実施形態において、被験体は、
胸部X線写真における間質性浮腫の存在により定義される肺うっ血を有する。幾つかの実
施形態において、該方法は、入院滞在の長さを、H2リラキシンを使用しない急性非代償
性心不全の治療と比較して少なくとも1日短縮する工程をさらに含む。幾つかの実施形態
において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与され
、入院滞在の長さは、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して
、少なくとも2日短縮される。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心不全ま
たは腎不全による再入院の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心
不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、心不全
または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約50%減少する。幾つかの実
施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投
与され、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約70%減少す
る。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心血管死の180日危険性を、H2
リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含
む。他の実施形態において、心血管死の180日危険性は、少なくとも約50%減少する
。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入
速度で投与され、心血管死の180日危険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの
実施形態において、該方法は、被験体の全死因死亡の180日危険性を、H2リラキシン
を使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、減少させる工程をさらに含む。該方
法の他の実施形態において、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約25%減少す
る。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注
入速度で投与され、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約50%減少する。幾つ
かの好ましい実施形態において、被験体は、男性であるかまたは妊娠していない女性であ
る。
【0031】
本開示は、a)急性非代償性心不全および少なくとも約20%の左心室駆出率を有する
被験体を選択する工程、およびb)被験体に医薬的に活性なH2リラキシンを有効な量で
投与して、被験体における少なくとも1つの急性心不全の徴候または症状を軽減する工程
を含む、急性非代償性心不全を治療する方法をさらに提供する。幾つかの実施形態におい
て、少なくとも1つの急性心不全の徴候または症状は、安静時の呼吸困難、起座呼吸、運
動時の呼吸困難、浮腫、ラ音、肺うっ血、頸静脈波または膨満(jugular venous pulse o
r distension)、浮腫に伴う体重増加(edema associated weight gain)、高肺毛細血管
楔入圧、高左心室拡張末期圧、全身性静脈の高抵抗、低心拍出量、低左心室駆出率、静脈
内利尿剤療法の必要性、追加静脈内血管拡張剤療法の必要性、および悪化する院内心不全
の発生からなる群のうちの1つ以上を含む。他の実施形態において、被験体は、左心室駆
出率が少なくとも40%である。他の実施形態において、被験体は正常血圧または高血圧
である。さらに他の実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なくとも約125mm
Hgである。幾つかの実施形態において、被験体は腎臓が障害されている。他の実施形態
において、被験体は、クレアチニンクリアランスが約35から約75mL/分の範囲内に
ある。該方法の幾つかの実施形態において、H2リラキシンは、少なくとも24時間また
は48時間の間投与される。他の実施形態において、H2リラキシンは48時間にわたっ
て投与される。他の実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約
960μg/kg/日の範囲内の注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、
H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約250μg/kg/日の範囲内の静脈内
注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/
kg/日から約100μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他
の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速
度で投与される。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の死亡または再入院の6
0日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少さ
せる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、死亡または再入院の60日危険性は
、少なくとも50%減少する。幾つかの実施形態において、被験体は入院を必要とする呼
吸困難を有する。幾つかの実施形態において、該方法は、入院滞在の長さを、H2リラキ
シンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、少なくとも1日短縮する工程を
さらに含む。他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の
静脈内注入速度で投与され、入院滞在の長さは、H2リラキシンを使用しない急性非代償
性心不全の治療と比較して、少なくとも2日短縮される。幾つかの実施形態において、該
方法は、被験体の心不全または腎不全による再入院の60日危険性を、H2リラキシンを
使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、減少させる工程をさらに含む。他の実
施形態において、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約50
%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の
静脈内注入速度で投与され、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なく
とも約70%減少する。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心血管死の18
0日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、減少
させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、心血管死の180日危険性は、少
なくとも約50%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/
kg/日未満の静脈内注入速度で投与され、心血管死の180日危険性は、少なくとも約
70%減少する。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の全死因死亡の180日
危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、減少させ
る工程をさらに含む。他の実施形態において、全死因死亡の180日危険性は、少なくと
も約25%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/
日未満の静脈内注入速度で投与され、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約50
%減少する。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、男性であるかまたは妊娠し
ていない女性である。
【0032】
本開示は、急性非代償性心不全を有する被験体に医薬的に活性なH2リラキシンを有効
な量で投与して、病院滞在中の利尿剤使用を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性
心不全の治療と比較して減少させる工程を含む、急性非代償性心不全を治療する方法をさ
らに提供する。幾つかの実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日か
ら約100μg/kg/日の範囲内の注入速度で投与される。幾つかの実施形態において
、病院滞在中のループ利尿剤使用は、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の
治療と比較して減少する。他の実施形態において、ループ利尿剤使用は、14日間にわた
って、H2リラキシンを使用しない治療と比較して、少なくとも10%減少する。さらに
他の実施形態において、ループ利尿剤使用は、14日間にわたって、H2リラキシンを使
用しない治療と比較して、少なくとも20%減少する。さらに他の実施形態において、ル
ープ利尿剤使用は、14日間にわたって、H2リラキシンを使用しない治療と比較して、
少なくとも30%減少する。幾つかの実施形態において、被験体は、左心室駆出率が少な
くとも40%である。幾つかの実施形態において、被験体は正常血圧または高血圧である
。他の実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なくとも約125mmHgである。
他の実施形態において、被験体は腎臓が障害されている。さらに他の実施形態において、
被験体はクレアチニンクリアランスが約35から約75mL/分の範囲内にある。幾つか
の実施形態において、H2リラキシンは、少なくとも24時間または48時間の間投与さ
れる。他の実施形態において、H2リラキシンは、48時間にわたって投与される。さら
に他の実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約960μg/
kg/日の範囲内の注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシ
ンは、約10μg/kg/日から約250μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投
与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日から
約100μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態に
おいて、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与される
。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の死亡または再入院の60日危険性を、
H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさら
に含む。幾つかの実施形態において、死亡または再入院の60日危険性は、少なくとも5
0%減少する。幾つかの実施形態において、被験体は入院を必要とする呼吸困難を有する
。幾つかの実施形態において、該方法は、入院滞在の長さを、H2リラキシンを使用しな
い急性非代償性心不全の治療と比較して、少なくとも1日短縮する工程をさらに含む。幾
つかの実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入
速度で投与され、入院滞在の長さは、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の
治療と比較して、少なくとも2日短縮される。幾つかの実施形態において、該方法は、被
験体の心不全または腎不全による再入院の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない
急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態に
おいて、心不全または腎不全による再入院の60日危険性は、少なくとも約50%減少す
る。他の実施形態において、H2リラキシンは、約30μg/kg/日の範囲の静脈内注
入速度で投与され、心不全または腎不全による再入院の60日危険性を、少なくとも約7
0%減少させる。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心血管死の180日危
険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工
程をさらに含む。幾つかの実施形態において、心血管死の180日危険性は、少なくとも
約50%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日
未満の静脈内注入速度で投与され、心血管死の180日危険性を、少なくとも約70%減
少させる。幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の全死因死亡の180日危険性
を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少させる工程を
さらに含む。幾つかの実施形態において、全死因死亡の180日危険性は、少なくとも約
25%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約250μg/kg/日未
満の静脈内注入速度で投与され、全死因死亡の180日危険性を、少なくとも約50%減
少させる。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、男性であるかまたは妊娠して
いない女性である。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、収縮期血圧が少なく
とも約125mmHgである。さらに、本開示は、急性非代償性心不全を有するヒト被験
体に、医薬的に活性なH2リラキシンを有効な量で投与して、被験体の死亡または再入院
の60日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減
少させる工程を含む、急性非代償性心不全を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態
において、被験体は、安静時の呼吸困難、起座呼吸、運動時の呼吸困難、浮腫、ラ音、肺
うっ血、頸静脈波または膨満、浮腫に関連する体重増加、高肺毛細血管楔入圧、高左心室
拡張末期圧、高全身性血管抵抗、低心拍出量、低左心室駆出率、静脈内利尿剤療法の必要
性、追加の静脈内血管拡張剤療法の必要性、および悪化する院内心不全の発生からなる群
から選択される少なくとも1つの急性心不全の徴候または症状を有する。他の実施形態に
おいて、被験体は、左心室駆出率が少なくとも20%または少なくとも40%である。他
の実施形態において、被験体は正常血圧または高血圧である。さらに他の実施形態におい
て、被験体は、収縮期血圧が少なくとも約125mmHgである。幾つかの実施形態にお
いて、被験体は腎臓が障害されている。他の実施形態において、被験体は、クレアチニン
クリアランスが約35から約75mL/分の範囲内にある。該方法の幾つかの実施形態に
おいて、H2リラキシンは、少なくとも24時間の間投与される。他の実施形態において
、H2リラキシンは、48時間にわたって投与される。他の実施形態において、H2リラ
キシンは、約10μg/kg/日から約960μg/kg/日の範囲内の注入速度で投与
される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約10μg/kg/日から約
250μg/kg/日の範囲内の静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態にお
いて、H2リラキシンは、約30μg/kg/日から約100μg/kg/日の範囲内の
静脈内注入速度で投与される。さらに他の実施形態において、H2リラキシンは、約30
μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与される。幾つかの実施形態において、死亡
または再入院の60日危険性は、少なくとも50%減少する。幾つかの実施形態において
、被験体は入院を必要とする呼吸困難を有する。幾つかの実施形態において、該方法は、
入院滞在の長さを、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、
少なくとも1日短縮する工程をさらに含む。他の実施形態において、H2リラキシンは、
約30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与され、入院滞在の長さは、H2リラ
キシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して、少なくとも2日短縮される。
幾つかの実施形態において、該方法は、被験体の心不全または腎不全による再入院の60
日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の治療と比較して減少させ
る工程をさらに含む。他の実施形態において、心不全または腎不全による再入院の60日
危険性は、少なくとも約50%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは、約
30μg/kg/日の範囲の静脈内注入速度で投与され、心不全または腎不全による再入
院の60日危険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの実施形態において、該方法
は、被験体の心血管死の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心
不全の治療と比較して減少させる工程をさらに含む。幾つかの実施形態において、心血管
死の180日危険性は、少なくとも約50%減少する。他の実施形態において、H2リラ
キシンは、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度で投与され、心血管死の180
日危険性は、少なくとも約70%減少する。幾つかの実施形態において、該方法は、被験
体の全死因死亡の180日危険性を、H2リラキシンを使用しない急性非代償性心不全の
治療と比較して減少させる工程をさらに含む。他の実施形態において、全死因死亡の18
0日危険性は、少なくとも約25%減少する。他の実施形態において、H2リラキシンは
、約250μg/kg/日未満の静脈内注入速度で投与され、全死因死亡の180日危険
性は、少なくとも約50%減少する。幾つかの好ましい実施形態において、被験体は、男
性であるかまたは妊娠していない女性である。
【0033】
本開示は、好ましい実施形態を例示する役に立つ添付図と合わせて読むときに、最も良
く理解される。しかしながら、本開示が、図において開示された具体的実施形態に限定さ
れないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1Aはインスリンにサイズおよび形状が類似しているペプチドホルモンのH2リラキシンを示す図である。図1BはB鎖(配列番号1)およびA鎖(配列番号2、Xはヒトリラキシン2(H2)のグルタミン酸[E]またはグルタミン[Q])のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】図2はリラキシンについての可能な作用機構の例示の図である。リラキシン受容体LGR7およびLGR8はリラキシンに結合し、それがマトリックスメタロプロテイナーゼMMP−2およびMMP−9を活性化してエンドセリン−1を切断型エンドセリン−1(1〜32)に変換し、それが次にエンドセリンB受容体(ET受容体)に結合する。これが、一酸化窒素合成酵素(NOS)を起動して、血管拡張を増大する一酸化窒素(NO)を産生する。
【図3】図3は血管の管腔の例示の図である。矢印は、平滑筋細胞(SM)および内皮細胞(E)を示す。リラキシン受容体は、血管(全身のおよび腎臓の血管系)の平滑筋細胞上にある。
【図4】図4は全身性硬化症を有する患者におけるリラキシンの治験における高血圧および正常血圧被験体における収縮期血圧(SBP)の安定な低下を示す図である。試験参加時に高血圧であった患者における血圧の低下は、試験参加時に正常血圧であった患者における血圧の低下よりも大きい。血圧低下は6カ月の連続投薬期間中安定であった。投薬中に低血圧が発生した患者はいなかった。
【図5】図5は全身性硬化症を有する患者において、リラキシンを連続投与したがプラセボを使用しなかった6カ月の期間中に、予測クレアチニンクリアランス(CrCl)として測定された腎臓機能における安定した改善を示す図である。
【図6】図6は種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で治療したAHF患者における呼吸困難における中程度のまたは顕著な改善の比率(パーセント)のLikert図を、全時点の平均として示す図である。
【図7】図7は収縮期血圧(SBP)が中央値を超えるAHF罹患患者が、種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で治療されたときの、呼吸困難における中程度のまたは顕著な改善の比率(パーセント)のLikert図を示す図である。有益な効果は、6時間の治療で最初に見られ、30μg/kg/日で投与されたリラキシンは、14日の期間にわたって持続する約90%の改善のある持続性効果を示した。比較において、プラセボで処置された患者は、プラセボ効果が消えた後は低下し続けた。
【図8】図8はクレアチニンクリアランス(CrCl)が中央値未満の、AHFを罹患している患者が種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で48時間にわたって治療されたときの、呼吸困難における中程度のまたは顕著な改善の比率(パーセント)のLikert図を示す図である。有益な効果は、6時間の治療で最初に見られ、リラキシンは、14日の期間にわたって持続する持続性効果を種々の用量で示した。比較において、プラセボで治療された患者は、プラセボ効果が消えた後は低下し続けた。
【図9】図9はNT−pro−BNPレベルが2000を超えるAHF患者が、種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で48時間にわたって治療されたときの、呼吸困難改善のVAS図を示す図である。顕著な改善は、30μg/kg/日のリラキシン用量で治療された患者において見られ、プラセボで治療された患者と比較して優っていた。
【図10】図10は収縮期血圧(SBP)レベルが中央値を超えるAHF患者が種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で48時間にわたって治療されたときの、呼吸困難改善のVAS図を示す図である。リラキシン30μg/kg/日で治療された患者において、プラセボで治療された患者と比較して、特に顕著な改善が見られた。
【図11】図11はクレアチニンクリアランス(CrCl)が中央値未満のAHF患者が種々の用量のリラキシン(すなわち、10、30、100および250μg/kg/日)で48時間にわたって治療されたときの呼吸困難改善のVAS図を示す図である。顕著な改善が、種々のリラキシン用量で治療された患者において見られた。30μg/kg/日のリラキシンの患者は、プラセボで治療された患者と比較して、持続する有益な効果を経験した。
【図12】図12はリラキシン治療が、6、12および24時間以内投与のAHF患者における呼吸困難の急速な軽減を生じさせたことを示す図である。特に30μg/kg/日のrhRlxの投与は、呼吸困難における統計的に有意の改善をもたらした。
【図13】図13はリラキシン治療が、14日(すなわち、測定された最大期間)まで持続した、AHF患者における呼吸困難の持続性軽減をもたらしたことを示す図である。
【図14】図14はプラセボで治療された患者群は、リラキシン治療群と比較して、急性心不全の悪化を経験したことを示す図である。
【図15】図15はリラキシン治療群におけるAHF患者より多くのプラセボ群におけるAHF患者が、試験の5日目までに、ニトログリセリンの静脈注射を受けたことを示す図である。ニトログリセリン投与は、本明細書中に記載される臨床試験における病院尺度である。
【図16】図16Aおよび16Bは、リラキシン治療群の幾つかにおけるAHF患者は、投与を受けた利尿剤が少なかったのに、利尿剤を反映する体重減少が大きかった(例えば、病院尺度およびエンドポイント)ことをそれぞれ示す図である。この成績は、リラキシン治療の結果、腎臓血管拡張が生じたことを示す。
【図17】図17Aおよび17Bは、リラキシン治療が、病院滞在の長さの短縮および病院から出てからの寿命の増大と関連したことをそれぞれ示す図である。
【図18】図18はリラキシンで治療されたAHF患者における60日目での心血管死(CV)または再入院率(パーセント)を、プラセボで治療されたAHF患者と比較して示す図である。リラキシンで治療された被験体が、悪化した心臓血管疾患の結果として死亡した比率は低かった。同様に、リラキシンで治療された被験体が再入院を必要とした比率は低かった。
【図19】図19Aおよび19Bは、リラキシンで治療されたAHF患者における心臓血管(CV)による死亡率および全死因死亡率(パーセント)を、プラセボで治療されたAHF患者と比較して、治療後180日以内の時間枠で、それぞれ示す図である。図に例示したように、リラキシンで治療された患者は、心臓血管関連の死亡数および全て原因による死亡数の両方において、プラセボを投与された患者と比較して有意の減少があり、経過が劇的に向上した。
【図20】図20はリラキシンまたはプラセボで治療されたAHF患者における脈拍におけるベースラインからの変化の平均を、14日を通して示す図である。群間の差は全ての群について有意ではなく、入院後の脈拍において小さい減少が見られ、リラキシン治療は変時性ではないことを示す。
【図21】図21はリラキシンまたはプラセボで治療された注入中のAHF患者における、収縮期血圧(mmHg)のベースラインからの変化の平均を示す図である。全ての時点にわたる血圧における低下の平均は、任意の治療群とプラセボ群との間で異ならなかった。
【図22】図22Aおよび22Bは、リラキシン治療が、ベースライン収縮期血圧(SBP)が群の中央値より上の、試験におけるAHF患者の血圧を低下させるが、ベースラインSBPが群の中央値より下のAHF患者では低下させないことを示す図である。これは、正常血圧患者に投与されたとき、リラキシン治療が血管収縮した動脈を優先的に拡張して、有害な低血圧を惹起しないことを示す。
【図23】図23は呼吸困難におけるリラキシンに媒介された改善が、正常のまたは上昇したベースライン収縮期血圧(SBP)と相関することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
一般的概要
本開示は、呼吸困難および体液貯留などの急性非代償性心不全(AHF)の症状および
事象に特になりやすい被験体の集団における代償不全を減少させる方法に関する。AHF
は、65歳を超える患者が入院する最も一般的な理由であるから、それは医療システムに
対する膨大なコストと関連する。AHFまたはその症状で入院する患者の予後は、入院6
カ月以内の高い再入院率および死亡率と関連しているので、これまで不良であった。本明
細書に記載したように、AHFおよび/もしくは急性血管不全と以前に診断されたことが
あるか、またはAHFおよび/もしくは急性血管不全に典型的な症状を示す患者が、リラ
キシンで治療されると、それらの状態は短期間に顕著に改善して安定化する。より具体的
に、リラキシンがAHFと関連する急性代償不全を罹患している被験体に投与さると、有
意の心臓血管および腎臓の改善が、これらの被験体において見られる。例えば、患者がリ
ラキシンを僅か48時間の間投与されたとき、改善は、14日の期間にわたって持続した
。改善は、呼吸困難(息切れ)の注目に値する減少、体液貯留による過剰な体重の減少(
例えば、患者は体重が平均で約1kg減少した)、より短い病院滞在(例えば、2.5日
も)、再入院の可能性の減少、ループ利尿剤に対する必要性の低下、静脈内ニトログリセ
リンに対する必要性の低下および悪化心不全発生の減少を含む急性心臓代償不全事象にお
ける有意の減少を含む。これらの変化は、患者の福祉(well-being)を有意に改善し、か
つケアのコストの減少を含む薬剤経済学に対する強い将来的影響を有する。
【0036】
理論にとらわれることは望まず、リラキシンは、血管系を構築する平滑筋細胞(図3)
上に見出される特異的受容体を通して作用すると考えられる。このように、リラキシンは
、特異的な均衡のとれた血管拡張により心臓機能および腎臓機能を改善する、特異的な中
程度の全身のおよび腎臓の血管拡張剤である。AHFは心臓腎臓疾患であるから、リラキ
シンは、AHFおよび/または急性血管不全および/またはそれらの症状を罹患している
患者に有益である。
【0037】
定義
用語「リラキシン」は、当技術分野において周知のペプチドホルモンを指す(図1を参
照されたい)。本明細書において使用される用語「リラキシン」は、完全全長(intact f
ull length)ヒトリラキシンまたはリラキシン分子の生物学的活性を保持する部分を含む
ヒトリラキシンを包含する。用語「リラキシン」は、ヒトH1プレプロリラキシン、プロ
リラキシン、およびリラキシン;H2プレプロリラキシン、プロリラキシン、およびリラ
キシン;ならびにH3プレプロリラキシン、プロリラキシン、およびリラキシンを包含す
る。用語「リラキシン」は、組換え、合成または天然の供給源からの生物学的に活性な(
本明細書において「医薬的に活性な」としても言及される)リラキシンならびにアミノ酸
配列変異体などのリラキシン変異体をさらに含む。このように、該用語は、合成H1、H
2およびH3ヒトリラキシンおよび組換えH1、H2およびH3ヒトリラキシンを含む合
成ヒトリラキシンおよび組換えヒトリラキシンを意図する。該用語は、リラキシンアゴニ
ストおよび/またはリラキシン類似体およびそれらの生物学的活性を保持する部分など、
リラキシン受容体(例えば、LGR7受容体、LGR8受容体、GPCR135、GPC
R142、その他)から、結合したリラキシンを競争的に置換する全て作用剤を含む、リ
ラキシン様活性を有する活性な作用剤をさらに包含する。したがって、医薬的に有効なリ
ラキシンアゴニストは、リラキシン受容体に結合してリラキシン様応答を誘発することが
できるリラキシン様活性を有する任意の作用剤である。それに加えて、本明細書において
使用されるヒトリラキシンの核酸配列は、ヒトリラキシン(例えば、H1、H2および/
またはH3)の核酸配列に100%同一である必要はなく、ヒトリラキシンの核酸配列に
少なくとも約40%、50%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70
%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80
%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同
一であってよい。本明細書において使用されるリラキシンは、当業者に知られた任意の方
法により作製することができる。そのような方法の例は、例えば、米国特許第5,759
,807号ならびにBullesbachら(1991) The Journal o
f Biological Chemistry 266(17):10754〜107
61に例示されている。リラキシン分子および類似体の例は、例えば、米国特許第5,1
66,191号に例示されている。天然に生じる生物学的に活性なリラキシンは、ヒト、
ネズミ(すなわち、ラットまたはマウス)、ブタ、または他の哺乳動物の供給源から得る
ことができる。インビボの半減期を増大させるために改変されたリラキシン、例えば、ペ
グ化されたリラキシン(すなわち、ポリエチレングリコールと複合したリラキシン)、分
解酵素による切断に供される、リラキシン中のアミノ酸の改変等も包含される。該用語は
、Nおよび/またはC末端切断を有するA鎖およびB鎖を含むリラキシンも包含する。一
般に、H2リラキシンにおいては、A鎖は、A(1〜24)からA(10〜24)に、お
よびB鎖はB(1〜33)からB(10〜22)に変化することができ;ならびにH1リ
ラキシンにおいては、A鎖は、A(1〜24)からA(10〜24)に、およびB鎖はB
(1〜32)からB(10〜22)に変化することができる。同様に用語「リラキシン」
の範囲内に含まれるのは、1つ以上のアミノ酸残基の他の挿入、置換、または欠失、グリ
コシル化変異体、非グリコシル化リラキシン、有機塩および無機塩、共有結合で改変され
た誘導体のリラキシン、プレプロリラキシン、およびプロリラキシンである。該用語には
、野生型(例えば、天然に生じる)配列と異なる、米国特許第5,811,395号に開
示されたリラキシン類似体を含むがこれらに限定されないアミノ酸配列を有するリラキシ
ンアナログも包含される。リラキシンのアミノ酸残基に対する可能な改変には、アセチル
化、ホルミル化またはN末端を含む遊離アミノ基の同様な保護、C末端基のアミド化、ま
たはヒドロキシル基もしくはカルボキシル基のエステル形成、例えば、トリプトファン(
Trp)残基のB2におけるホルミル基の添加による改変が含まれる。ホルミル基は、容
易に除去できる保護基の典型的な例である。他の可能な改変は、B鎖および/またはA鎖
における異なるアミノ酸(天然アミノ酸のD型を含む)による1つ以上の天然アミノ酸の
入れ替えを含み、入れ替えは、B24におけるMet成分のノルロイシン(Nle)、バ
リン(Val)、アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、または
ホモセリン(HomoSer)による入れ替えを含むがこれらに限定されない。他の可能
な改変は、天然アミノ酸の鎖からの欠失または1つ以上の余分なアミノ酸を鎖に対して添
加することを含む。付加による改変は、プロリラキシンのB/CおよびC/A接合部にお
けるアミノ酸置換を含み、その改変は、C鎖のプロリラキシンからの切断を容易にし、変
異体リラキシンは、例えば、米国特許第5,759,807号に記載されたような天然に
は生じないCペプチドを含む。リラキシンと異種ポリペプチドとを含む融合ポリペプチド
も、用語「リラキシン」により包含される。異種ポリペプチド(例えば、非リラキシンポ
リペプチド)融合相手は、融合タンパク質のリラキシン部分についたC末端またはN末端
であってよい。異種ポリペプチドには、免疫学的に検出可能なポリペプチド(例えば、「
エピトープタグ」);検出可能なシグナルを発生させ得るポリペプチド(例えば、緑色蛍
光タンパク質、アルカリホスファターゼなどの酵素、および当技術分野において知られた
他のもの);サイトカイン、ケモカイン、および成長因子を含むがこれらに限定されない
治療用ポリペプチドが含まれる。変異体を生じるリラキシン分子の構造における全てのそ
のような変形または変化は、リラキシンの機能的(生物学的)活性が維持される限り、本
開示の範囲内に含まれる。好ましくは、リラキシンのアミノ酸配列または構造の任意の改
変は、リラキシン変異体で治療される個体においてその免疫原性を増大させないものであ
る。リラキシンの記載された機能的活性を有するこれらの変異体は、当技術分野において
公知のインビトロおよびインビボアッセイを使用して、容易に同定することができる。
【0038】
用語「心不全」は、心臓が本来のように有効に作動しないことを一般的に意味する。心
不全は、心筋が、身体の血流のための必要性に遅れずついて行くことができないときに起
こる。それは、症候群、すなわち、多数の原因から生じ得る所見の集積である。心不全は
、心筋の弱化(すなわち、心筋症)により惹起され得て、心臓は十分な血液を送液できな
くなる。心不全は、うっ血性心不全(CHF)とも称されるが、それは、典型的には、体
液が身体の中に蓄積し、次にそれがうっ血するといわれるからである。弱化した心臓が原
因の心不全に加えて、他の様々な心不全もある。これらは、例えば、多すぎる甲状腺ホル
モンを産生する甲状腺疾患の幾つかの場合や、貧血または幾つかの他の状態を有する患者
における、正常心臓でさえ追随するのに高すぎる必要性を有する身体が原因のCHFであ
り;ならびに最終的には、呼吸困難の急性発症または他の急性事象、例えば、高血圧(hy
pertension)、高血圧(high blood pressure)、不整脈、低下した腎臓血流、腎不全お
よび重症の場合には死亡などをもたらし、患者を代償性CHFから急性非代償性心不全(
AHF)および/または急性血管不全へ移行させる、神経ホルモンの不均衡が原因のCH
Fである。
【0039】
用語「急性心臓代償不全」および「急性代償不全」は、本明細書においては互換的に使
用され、明細書および特許請求の範囲の目的にとって、身体における神経ホルモンの不均
衡に基づく全身のおよび腎臓の血管収縮を心筋が代償できないことを意味する。急性心臓
代償不全は、血行動態不安定および生理学的変化(特にうっ血および浮腫)、および心不
全症状(最も普通には呼吸困難)の発症に至る変化した心機能および体液調節により特徴
づけられる。機能的代償不全のこの形態は、心臓弁のまたは心筋の欠陥(すなわち、構造
的欠陥)により引き起こされると誤診され得るが、それは低血圧とは通常関連しない。し
かしながら、本明細書において使用される「急性心臓代償不全」は、何らかの1つ以上の
ある種の代償不全事象と関連することが多い、呼吸困難、緊張亢進、高血圧、不整脈、低
下した腎臓血流、腎不全および死亡を含むがこれらに限定されない機能的代償不全である
。本明細書において使用される「急性心臓代償不全」を呈する患者は、以前は、慢性心不
全(CHF)と診断されたが、そう診断されなかったこともある。そのような患者は、心
臓疾患の病歴を有するかまたはそれは全くないこともある。
【0040】
「投与」は、被験体に、治療薬(pharmaceutical remedy)または剤形を、静脈内、皮
下、筋肉内、舌下、および吸入を含むがこれらに限定されない特定の経路により与えるま
たは適用することを指す。
【0041】
用語「血管系(vasculature)」は、器官または身体の一部における動脈および毛細血
管を含む血管のネットワークを指す。
【0042】
用語「均衡のとれた血管拡張(balanced vasodilation)」は、明細書および特許請求
の範囲の目的にとって、リラキシンまたはリラキシンアゴニストの特異的リラキシン受容
体への結合の結果として、全身性の(大部分は動脈)および腎臓の血管系において起こる
二重の血管拡張を意味する。
【0043】
用語「神経ホルモンの不均衡(neurohormonal imbalance)」および「神経液性の不均
衡(neurohumoral imbalance)」は、本明細書において互換的に使用され、心不全に至り
得る身体におけるホルモン障害を指す。例えば、Gs結合アドレナリン作用性のまたはG
q結合アンジオテンシン経路を通る過剰のシグナル伝達は、神経ホルモンの不均衡を起こ
し得る。両方の場合に、過剰の神経ホルモンのシグナル伝達は、機能的代償不全を惹起し
、ならびに加速し得る(上記Schrierら、を参照されたい)。それに加えて、過剰
の神経ホルモンのシグナル伝達は、急性血管不全を惹起し、ならびに加速し得る。
【0044】
本明細書において使用される用語「体液過負荷」は、血液が多すぎる水を含むときに起
こる病態を指す。体液過負荷(血液量過多)は、レニン−アンジオテンシン−アルドステ
ロン系の活性化により、体液過負荷を引き起こし得る心不全で普通に見られる。塩と水と
を主とするこの体液は、身体における種々の部位に蓄積して、体重増加、脚および腕(末
梢性浮腫)、および/または腹部(腹水)における膨満に結びつく。最終的に、体液は肺
における気腔に入り、これは、血液に入り得る酸素の量を減少させ得、息切れ(呼吸困難
)の原因となる。体液は、夜に横になっているときに肺に集積する場合もあり、夜間の呼
吸および睡眠を困難にし得る(発作性の夜行性呼吸困難)。体液過負荷は、AHFのおよ
び/または急性血管不全の最も顕著な特徴の1つである。
【0045】
用語「不整脈(cardiac arrhythmia)」は、心臓の筋肉収縮が不規則になる状態を意味
する。異常に早いリズム(毎分100心拍を超える)は頻拍症と呼ばれる。異常に遅いリ
ズム(毎分60心拍未満)は徐脈と呼ばれる。
【0046】
「心虚血」は、心筋(心筋層)への血流が冠動脈の部分的または完全な遮断により閉塞
されるときに起こる。突発性の重度の遮断は心臓発作(心筋梗塞)に至り得る。心虚血は
、重症の異常な心臓リズム(不整脈)も惹起し得て、それは失神および重症の場合には死
亡の原因となり得る。
【0047】
用語「病態生理学的」は、疾患により惹起されるか、あるいは疾患または疾患と呼ばれ
るには適しない場合もある異常な症候群もしくは状態から生じるかのいずれかの、任意の
正常な機械的、物理的、または生化学的機能の障害を指す。「病態生理学」は、底流にな
っている異常性および生理学的な障害と相関する、疾患の生物学的および物理学的発現の
研究である。
【0048】
用語「一酸化窒素」および「NO」は、本明細書において互換的に使用され、ヒトを含
む哺乳動物の身体内の多くの生理学的および病理学的過程に関与する重要なシグナル伝達
分子を指す。NOは、血管中の平滑筋を弛緩させる血管拡張剤として作用することができ
、それは血管に拡張を引き起こす。動脈血管の拡張(主として細動脈)は血圧の低下をも
たらす。リラキシンは、NOにより少なくとも若干の血管拡張を誘発すると考えられてい
る。リラキシンは、それ自体、血管系の平滑筋細胞上のLGR7およびLGR8受容体な
どの特異的リラキシン受容体に結合し、それは次にエンドセリンカスケードを活性化して
一酸化窒素合成酵素(NOS)を活性化しNOを産生させる(図2)。
【0049】
本明細書において使用される用語「AHF」、「急性心不全」および「急性非代償性心
不全」は、スクリーニングで以下の全ての存在により定義される:安静時または僅かな運
動時の呼吸困難、胸部X線における肺うっ血および上昇したナトリウム利尿ペプチドレベ
ル(脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧350pg/mLまたはNT−pro−BN
P≧1400pg/mL)。
【0050】
用語「呼吸困難」は、困難なまたは努力性の呼吸を指す。それは、種々の障害の徴候で
あり、主として不適切な換気または循環血液中の酸素の不十分な量の指標である。用語「
起座呼吸」は、真っ直ぐな姿勢(傾斜とは対照的に座ったかまたは立った)であると回復
する、平らに横たわったときの困難なまたは努力性の呼吸を指す。
【0051】
臨床試験および診療指針(practice guideline)は、高血圧を約140mmHgを超え
る収縮期血圧(SBP)と、および正常血圧を、特定の試験もしくは指針に応じて約14
0mmHg、130mmHgまたは120mmHg未満のSBPと通常定義する。急性心
不全または他の心疾患の関連で、低血圧は約110mmHg、100mmHg、または9
0mmHg未満のSBPと特徴づけることができる。幾つかの好ましい実施形態において
、「正常血圧または高血圧状態」という語句は、試験検診(study screening)またはリ
ラキシン投与時に125mmHgを超えるSBPを指す。
【0052】
本明細書において使用される語句「障害された腎臓機能」は、腎臓疾患における食事の
簡略化修正(simplified Modification of Diet in Renal Disease)(sMDRD)の方
程式を使用して計算された、30から75mL/分/1.73m2の間の見積もられた糸
球体濾過率(eGFR)として定義される。
【0053】
用語「プラセボ」は、生理学的に活性な治療のための臨床研究の試験においてしばしば
比較される生理学的に不活性な処置を指す。これらの試験は、通常二重盲検試験として実
施されて、処方する医師も患者も彼らが活性な薬剤または何ら明確な薬学的効果を有しな
い物質(プラセボ)のどちらをとっているか知らない。生理学的に不活性な処置を受ける
患者は、彼または彼女が生理学的に活性な治療を受けていると信じれば、彼または彼女の
状態について改善を示し得ることが観察されている(プラセボ効果)。それ故、試験にお
けるプラセボの組み込みは、統計的に有意の有益な効果が生理学的に活性な治療に関係し
ており、単にプラセボ効果の結果ではないことを保証する。
【0054】
「再入院」の定義は、初期治療後のある期間中の病院の再受け入れである。その期間は
、治療の種類および患者の病態に一般に依存する。
【0055】
本明細書において使用される用語「心血管死」は、発作(stroke)、急性心筋梗塞、難
治性うっ血性心不全および何らかの突発性のものに基づく死亡などの、主として心臓血管
の原因に基づく死亡を指す。
【0056】
「ループ利尿剤」は、うっ血性心不全または腎不全を有する患者において、高血圧およ
び浮腫の症状を軽減するために使用される薬剤を意味する。ループ利尿剤は、腎臓による
ナトリウムおよび塩化物の再吸着を減少させて、尿の分泌の増大に導く利尿作用剤のクラ
スに属する。
【0057】
用語「約」は、示された値との関連で使用されるとき、示された値の10%上または下
までの範囲(例えば、示された値の90〜110%)を包含する。例えば、約30μg/
kg/日の静脈内(IV)注入速度は、27μg/kg/日から33μg/kg/日のI
V注入速度を包含する。
【0058】
「治療的に有効な」は、被験体のベースライン状態または治療されないもしくはプラセ
ボで処置された(例えば、リラキシンで治療されない)被験体の状態と比較して、測定可
能な所望の医学的または臨床的な、患者にとって利益をもたらす医薬的に活性なリラキシ
ンの量を指す。
【0059】
リラキシン
リラキシンは、サイズおよび形状がインスリンに類似のポリペプチドホルモンである(
図1)。より具体的に、リラキシンは、インスリン遺伝子スーパーファミリーに属する内
分泌および自己分泌/パラクリンホルモン(autocrine/paracrine hormone)である。コ
ードされたタンパク質の活性な形態は、2つの鎖内および1つの鎖間のジスルフィド結合
により一緒に保たれるA鎖とB鎖とからなる。したがって、構造は、ジスルフィド結合の
配置において、インスリンに密接に似ている。ヒトにおいては、3種の知られた非対立リ
ラキシン遺伝子、リラキシン−1(RLN−1またはH1)、リラキシン−2(RLN−
2またはH2)およびリラキシン−3(RLN−3またはH3)がある。H1とH2とは
、高い配列相同性を共有する。この遺伝子のために記述された異なるイソフォームをコー
ドする、別の様式でスプライスされた2通りの転写変異体がある。H1およびH2は、生
殖器中で異なって発現され(米国特許第5,023,321号およびGaribay−T
upasら、Molecular and Cellular Endocrinolo
gy 219:115〜125、2004)、一方H3は主として脳中で見出される。そ
の受容体におけるリラキシンペプチドファミリーの進化は、当技術分野において一般に周
知である(Wilkinsonら、BMC Evolutionary Biology
5(14):1〜17、2005;ならびにWilkinsonおよびBathgat
e、Chapter 1、Relaxin and Related Peptid
es、Landes Bioscience and Springer Scienc
e+Business Media、2007)。
【0060】
リラキシンは、特異的リラキシン受容体、すなわちLGR7(RXFP1)およびLG
R8(RXFP2)ならびにGPCR135およびGPCR142を活性化する。LGR
7およびLGR8は、Gタンパク質結合受容体の固有のサブグループを代表する、ロイシ
ンリッチリピート含有Gタンパク質結合受容体(LGR)である。それらは、7ヘリック
ス膜貫通型ドメインおよび大きいグリコシル化された外側ドメインを含み、LH受容体ま
たはFSH受容体などのグリコプロテオホルモンの受容体に遠縁に関係する。これらのリ
ラキシン受容体は、心臓、平滑筋、結合組織、および中枢神経系および自律神経系に見出
される。H1、H2、ブタおよびクジラリラキシンなどの有効なリラキシンは、一定の配
列、すなわち、Arg−Glu−Leu−Val−Arg−X−X−Ile配列(配列番
号3)または結合カセットを共通に有する。これらのリラキシンは、LGR7およびLG
R8受容体を活性化する。この配列相同性からはずれるラット、サメ、イヌおよびウマリ
ラキシンなどのリラキシンは、LGR7およびLGR8受容体を通じての生物活性におけ
る低下を示す(Bathgateら、(2005)Ann.N.Y.Acad.Sci.
1041:61〜76;Receptors for Relaxin Family
Peptidesを参照されたい)。しかしながら、H2リラキシンと同様に、H3リラ
キシンはLGR7受容体を活性化する(Satokoら、(2003) The Jou
rnal of Biological Chemistry 278(10):785
5〜7862を参照されたい)。それに加えて、H3は、GPCR135受容体(Van
der Westhuizen (2005) Ann.N.Y.Acad.Sci.
1041:332〜337を参照されたい)およびGPCR142受容体を活性化するこ
とが示された。GPCR135およびGPCR142は、構造的にGタンパク質結合受容
体と関係する2つである。マウスおよびラットのGPCR135は、ヒトGPCR135
と高い相同性(すなわち、85%を超える)を示し、ヒトGPCR135と非常に類似し
た薬理学的性質を有する。ヒトおよびマウスならびにラットリラキシン−3は、マウス、
ラット、およびヒトGPCR135に高い親和性で結合してそれらを活性化する。対照的
に、マウスGPCR142は、ヒトGPCR142と一致の保存が少ない(すなわち、7
4%の相同性)。サル、ウシ、およびブタからのGPCR142遺伝子はクローニングさ
れて、ヒトGPCR142と高度に相同性であることが示された(すなわち、84%を超
える)。異なる種からのGPCR142の薬理学的特徴づけは、リラキシン−3が異なる
種からのGPCR142に高い親和性で結合することを示した(Chenら、(2005
) The Journal of Pharmacology and Experi
mental Therapeutics 312(1):83〜95を参照されたい)

【0061】
リラキシンは、女性および男性の両方で見出される(Tregearら;Relaxi
n 2000,Proceedings of the Third Internat
ional Conference on Relaxin & Related Pe
ptides(22〜27、2000年10月、Broome、オーストラリア、を参照
されたい)。女性において、リラキシンは、卵巣の黄体、乳房、ならびに妊娠中には、胎
盤、絨毛、および脱落膜によっても産生される。男性では、リラキシンは精巣中で産生さ
れる。リラキシンレベルは、黄体によるその産生の結果として排卵後に上昇し、妊娠の末
期近くではなく、最初の三半期中にそのピークに達する。妊娠がないと、そのレベルは下
降する。ヒトにおいて、リラキシンは、妊娠において、精子の運動を増大させることにお
いて、血圧を調節することにおいて、心拍数を制御することにおいて、ならびにオキシト
シンおよびバソプレシンを放出させることにおいて役割を果たす。動物において、リラキ
シンは恥骨を拡大し、陣痛を促進し、子宮頸部を軟化させ(頸管熟化)、および子宮筋組
織を弛緩させる。動物において、リラキシンは、コラーゲン代謝にも影響し、コラーゲン
合成を阻害し、およびマトリックスメタロプロテイナーゼを増加させることによりその分
解を増大させる。それは血管新生も増大させ、かつ腎臓血管拡張剤である。
【0062】
リラキシンは、成長因子の一般的性質を有し、結合組織の性質を変化させること、およ
び平滑筋収縮に影響することができる。H1およびH2は、主として生殖組織中で発現す
ると考えられ、一方H3は、主として脳中で発現することが知られている(上記)。本明
細書において開示したように、H2は、心臓血管のおよび心臓腎臓の機能において主要な
役割を果たし、したがって、関連する疾患を治療するために使用することができる。H1
およびH3は、H2とのそれらの相同性に基づき、心臓血管疾患の治療に適すると考えら
れる。それに加えて、リラキシン様活性を有する医薬的に有効なリラキシンアゴニストは
、リラキシン受容体を活性化して、リラキシン様応答を誘発することができるであろう。
【0063】
急性心不全(AHF)患者
AHFは、65歳を超える患者の入院およびうっ血性の心不全が関係する死亡の最も一
般的な原因である(Cotterら、American Heart Journal
155(1):9〜18、2008)。慢性(収縮期の)心不全のための、アンジオテン
シン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、β遮断剤、およびアルドステ
ロンアンタゴニストを含む、死亡を減少させる薬剤療法においてなされた進歩にも拘わら
ず、AHFのためには、匹敵する進歩が当技術分野においてなされず、この分野では療法
および死亡の両方とも過去30年にわたって顕著な変化がなかった(Allenら、CM
AJ 176:797〜805、2007)。ループ利尿剤、ニトログリセリン/ニトロ
プルシド、ドブタミン、またはミルリノンなどの古典的なAHF薬は、AHFの成績を改
善することができなかった(Allenら、上記)。TEZOSENTANを用いるエン
ドセリン−1受容体遮断、TOLVAPTAN、ナトリウム利尿ペプチドネシリチド(NES
IRITIDE)、およびカルシウム増感と血管拡張剤的性質とを組み合わせるLEVOSIME
NDANを使用するバソプレシンV2受容体拮抗作用を含む治療戦略についても、同じこ
とが真実である。慢性腎機能不全は、しばしば、特に高齢のAHF患者において、AHF
の複合死の一部である。腎臓機能の劣化は、AHFを誘発または悪化させ得て(すなわち
、心腎症候群)、AHF集団に顕著な死亡に関係する。ADHERE登録によれば(He
ywood、Heart Fail.Rev.9:195〜201、2004)、腎臓機
能の障害は、AHFについてのより悪い予後と相関する。それ故、リラキシンを用いる治
療は、有利な腎臓効果を有する新規なAHF療法を提供し、それは、AHF集団の一部で
ある患者についての予後を顕著に改善する。したがって、医薬的に活性なリラキシンは、
これらのAHF患者、または急性心臓代償不全事象または症状を罹患している被験体、ま
たはAHFと関連する急性心臓代償不全を罹患している被験体を治療するために使用する
ことができる。
【0064】
AHFを有する患者は、来診時(time of presentation)のそれらの収縮期血圧に基づ
き3群に分類することができる(例えば、Gheorghiadeら、JAMA、296
:2217〜2226、2006;およびShinら、Am J Cardiol、99
[suppl]:4A〜23A.2007を参照されたい)。3群は、1)低血圧群(低
血圧)、2)正常血圧群(正常血圧)および3)高血圧群(高血圧)を含む。
【0065】
非常に低い左心室駆出率(LVEF)を有する低血圧AHF患者は、「低心拍出量」ま
たは「心原性のショック」を有すると記載される。そのような低血圧AHF患者は、血液
を適切に送液し損なう心臓を有し、各収縮で送り出される心室中の血液のパーセンテージ
が減少していることを意味する。
【0066】
正常血圧AHF患者は、低血圧AHF患者より高い血圧、および通常はより大きいLV
EFを有し、「心不全」を有すると記載されることもある。これらの患者におけるAHF
の原因は、低下した心機能および血管収縮の両者の組合せである。
【0067】
高血圧AHF患者は、正常血圧AHF患者より高い血圧および通常はより大きいLVE
Fを有し、「血管不全」を有すると一般に記載される。これらの患者はある程度異常な心
機能を有するとはいえ、それらのAHFの主な原因は血管収縮である。
【0068】
最新のデータは、血管不全および心不全が低心拍出量と反対のAHFの最も普通のタイ
プであり得ることを示す(ADHERE Scientific Advisory C
ommittee、Acute Decompensated Heart Failu
re National Registry (ADHERE) Core Modul
e Q1 2006 Final Cumulative National Benc
hmark Report、Scios、Inc.1〜19頁、2006)。X線による
と肺うっ血、困難な呼吸(呼吸困難)および正常な血圧(正常血圧)または高い(高血圧
)血圧を含む、急性心不全の徴候および症状を呈する多くの患者が、左心室機能を保って
いた(一般に>40%EF)。これらの急性心不全患者は、血液を送る心室の能力よりも
むしろ、過剰の血管収縮および心室を血液で充満させることで問題を示す。これらの患者
は、低血圧AHF患者と明らかに区別できる。
【0069】
低心拍出量または心原性ショック(低血圧AHF)の伝統的治療は、心臓をより強く(
変力性)および/またはより速く(変時性)収縮させて、生命維持に必要な器官の灌流を
維持する薬理学的作用剤を必要とする(例えば、Nieminenら、Eur Hear
t J,26:384〜416,2005;およびShinら、Am J Cardio
l.99[suppl]:4A〜23A 2007を参照されたい)。しかしながら、心
拍数の増加は、血管の収縮間の充填時間を減少させ、それ故心室における血液充填体積を
低下させるので、正常血圧(血管不全)および高血圧の(心不全)HF患者は、心拍数の
変化に極めて敏感である(Satpathyら、American Family Ph
ysician 73:841〜846、2006)。この理由で、心拍数を増加させる
急性心不全の治療は、禁忌でないとしても、高血圧急性心不全患者に有害であろう(Sa
tpathyら、上記)。
【0070】
一般に、医薬的に有効なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニストは、安
全な軽減を提供して患者における定常状態を達成するために、一定の速度で投与すべきで
ある。例えば、リラキシンを静脈内に投与して、リラキシンの血清濃度を約1から500
ng/mlに保つことが好ましい。より具体的に、リラキシンの投与は、リラキシンの血
清濃度を、約0.5から約500ng/ml、より好ましくは約0.5から約300ng
/ml、および最も好ましくは約3から約75ng/mlに保つように継続される。被験
体は、大量一時投与(bolus)などの負荷のかかる用量よりむしろ1日当たり約10から
1000μg/kg(被験体体重)で、リラキシンにより治療されるであろう。より好ま
しくは、被験体は、1日当たり約10から約250μg/kg(被験体体重)で、リラキ
シンにより治療されるであろう。他の好ましい実施形態において、医薬的に有効なリラキ
シンまたはそのアゴニストは、約30μg/kg/日で投与される。皮下、筋肉内、舌下
および吸入によるものを含むがこれらに限定されない、リラキシンを投与する他の形態も
、本開示により考慮される。注意すべきこととして、急性の状況は、患者が「急性」であ
り、かつ即時の救助を必要とするので、負荷のかかる用量(loading dose)(大量一時投
与)で通常治療される。しかしながら、これは、患者が過補償される状況をもたらし、し
たがって、心不全症状の悪化またはさらに死亡に至る可能性がある。本明細書に記載した
ように、急性の状況においてリラキシンを一定速度で投与することは安全かつ有効な投与
形態である。
【0071】
均衡のとれた血管拡張におけるリラキシン治療結果
理論にとらわれることは望まず、リラキシンの有益な効果は、リラキシンが、血管系の
平滑筋組織中に見出される特異的リラキシン受容体に結合することにより、腎臓のおよび
全身の血管系において受容体特異的血管拡張剤として作用することの直接的結果であると
考えられる。このことにより、次に、全身および腎臓両方の動脈が中程度であるが有効な
様式で拡張されるので、治療される患者に低血圧を惹起せずに、均衡のとれた血管拡張が
生じる。このリラキシンの性質は、血管収縮が重大な病的効果を引き起こす身体の特定の
領域、例えば、心臓および腎臓に血液を供給する動脈などにおいて、増大した血管拡張を
得ることが望ましい状況では、受容体特異的なかつ均衡のとれた血管拡張剤として、特に
有利である。均衡のとれた血管拡張が、治療の過程中に何ら有害な副作用を起こさないこ
とは注目すべきである。非特異的血管拡張剤を用いる治療についての共通の問題は、一般
的アゴニストはあまりにも強力におよび非特異的に作用するので、これらの薬剤が、治療
される被験体において重大な副作用をしばしばもたらすことである。それに比較して、リ
ラキシンの中程度の効果は、身体の最も必要とされる領域で血管拡張をゆるやかに増大さ
せる。リラキシン治療が、血管収縮を過補償する多くの薬剤で起こるような低血圧を惹起
しないことに注目することは重要である。特に、非特異的血管拡張剤は、身体全体にわた
って大動脈および小動脈および静脈を過剰に拡張させ、低血圧を引き起こし得る。したが
って、患者が、局在した特異的リラキシン受容体(例えば、LRG7、LGR8、GPC
R135、GPCR142受容体)を介して、全身のおよび腎臓の血管を標的とする、医
薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラキシンアゴニストを含む医薬組成物投
与を受けるとき、結果は低血圧のない均衡のとれた血管拡張である。
【0072】
したがって、リラキシンは、AHF患者および/またはAHF症状を有する個体および
/または急性心臓代償不全を呈する急性血管不全を罹患している個体を含むヒト被験体を
選択して、これらの被験体に医薬的に活性なリラキシンを含む医薬剤形を投与することに
より、心臓代償不全事象を減少させるために使用することができる。リラキシンは、リラ
キシン受容体(例えば、LRG7、LGR8、GPCR135、GPCR142受容体)
に結合して、均衡のとれた血管拡張、すなわち、全身および腎臓両方の血管系における二
重血管拡張を生じさせることにより、急性心臓代償不全事象を減少させる。これらの同じ
原理に基づいて、リラキシンは、AHF患者および/またはAHFの症状と関連する個体
および/または急性血管不全を罹患している個体を含むヒト被験体における心臓代償不全
を治療するために使用することができる。特に、そのような被験体は、医薬的に活性なヒ
トリラキシン(例えば、合成、組換え)または医薬的に有効なリラキシンアゴニストの投
与を、1日当たり約10から1000μg/kg(被験体体重)の範囲内の量で受ける。
一実施形態において、リラキシンの用量は、10、30、100および250μg/kg
/日である。他の実施形態において、これらの用量は、それぞれ、約3、10、30およ
び75ng/mlのリラキシンの血清濃度を生じさせる。好ましい一実施形態において、
医薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、約30μg/kg/日で投与される
。他の好ましい実施形態において、医薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、
約10から約250μg/kg/日で投与される。他の実施形態において、リラキシンの
投与は、リラキシンの血清濃度を、約0.5から約500ng/ml、より好ましくは約
0.5から約300ng/ml、および最も好ましくは約3から約75ng/mlに保つ
ように継続される。最も好ましくは、リラキシンの投与は、リラキシンの血清濃度を約1
0ng/ml以上に保つように継続される。リラキシンは、3〜6ng/mlの血清濃度
で十分有効であることも示されている。したがって、本開示の方法は、これらのリラキシ
ンの血清濃度を生じさせる投与を含む。これらのリラキシン濃度は、呼吸困難、高血圧、
不整脈、低下した腎臓血流、および腎不全などの代償不全事象を、回復させまたは軽減す
ることができる。さらになお、これらのリラキシン濃度は、神経ホルモンの不均衡、体液
過負荷、不整脈、心虚血、死亡の危険性、心臓ストレス、血管抵抗等を、回復させまたは
軽減することができる。
【0073】
リラキシン治療の期間は、患者に応じて、好ましくは約4時間から約96時間の範囲で
、場合により必要性とされる1回以上の反復治療を続ける。例えば、投与の頻度に関して
、リラキシン投与は、治療を約8時間から72時間継続する連続注入であってよい。リラ
キシンは、静脈内または皮下投与により連続的に与えることができる。静脈内投与のため
に、リラキシンは、注射器ポンプによりまたはIVバッグを通して送達することができる
。IVバッグは、100、250、500または1000mlのIVバッグ中の標準生理
食塩水、半生理食塩水、5%デキストロース水溶液、乳酸加リンガー液または同様な溶液
であってよい。皮下注入のために、リラキシンは、携帯型注入ポンに接続した皮下注入セ
ットにより投与することができる。被験体に応じて、リラキシン投与は、固有の期間また
は被験体における安定性を達成するのに必要とされるだけの期間続けられる。
【0074】
一部の被験体は、期限を定めずに治療されるが、他の被験体は固有の期間治療される。
必要とされるリラキシンを用いて断続的に被験体を治療することも可能である。したがっ
て、投与は、呼吸困難、高血圧、不整脈、低下した腎臓血流および腎不全を含むがこれら
に限定されない急性心臓代償不全事象において、回復または軽減を達成するために十分な
期間にわたって継続することができる。リラキシンは、AHFによる死亡および/または
突発性心停止などの合併症と関連する急性血管不全を防止するために、必要ならより高い
用量で投与することができる。
【0075】
リラキシン治療は腎毒性の原因にはならず、利尿剤節約になる(diuretic-sparing)
腎機能不全は、急性および慢性の心不全の共通のおよび進行性の合併症である。臨床経
過は、患者の臨床的状態および治療によって通常は変動する。「心腎症候群」とも称され
る複合した心臓および腎臓の機能不全の度々の発表の高まる認識にも拘わらず、その基礎
にある病理生理学は、十分理解されていない。適当な管理についての合意は、当技術分野
において得られていない。心不全を有する患者は、不整脈では比較的長く生存しており死
亡する頻度は比較的小さいので、心腎症候群は益々広まり、適当な管理が必要とされる(
Gary Francis (2006) Cleveland Clinic Jou
rnal of Medicine 73(2):1〜13)。本開示はこの必要性を解
決する。本開示は、腎不全を罹患しているヒト被験体における急性非代償性心不全(AH
F)および/または急性血管不全を治療する方法を提供する。この方法は、リラキシン受
容体を含む、全身のおよび腎臓の血管系を有し、急性心臓代償不全および腎不全の症状を
有するヒト被験体を選択する工程を含む。リラキシンは、被験体に投与されて、全身のお
よび腎臓の血管系中のリラキシン受容体に結合し、均衡のとれた血管拡張を生じさせるこ
とにより、二重作用を果たす。上述のように、そのような被験体は、医薬的に活性なヒト
リラキシン(例えば、合成、組換え)または医薬的に有効なリラキシンアゴニストの投与
を、1日当たり約10から1000μg/kg(被験体体重)の範囲内の量で受ける。一
実施形態において、リラキシンの用量は、10、30、100および250μg/kg/
日である。他の実施形態において、これらの用量は、それぞれ、約3、10、30および
75ng/mlのリラキシンの血清濃度を生じさせる。好ましい一実施形態において、医
薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、約30μg/kg/日で投与される。
他の好ましい実施形態において、医薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、約
10から約250μg/kg/日で投与される。リラキシンの投与は、約0.5から約5
00ng/ml、より好ましくは約0.5から約300ng/ml、および最も好ましく
は約3から約75ng/mlのリラキシンの血清濃度を保つように継続される。最も好ま
しくは、リラキシンの投与は、10ng/ml以上のリラキシンの血清濃度を保つように
継続される。被験体に応じて、リラキシン投与は、固有の期間または被験体における安定
性を達成するのに必要とされるだけ長く続けられる。例えば、リラキシン治療の期間は、
患者に応じて、好ましくは約4時間から約96時間、より好ましくは約8時間から72時
間の範囲で、場合により必要性とされる1回以上の反復治療を続ける。
【0076】
AHFと関連する腎不全を罹患している被験体は、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP
)の上昇したレベルも経験することが多い。BNPは、心不全および左心室機能不全に応
答して心室において合成される。それは心不全の診断用マーカーとして使用される。その
効果は、全身性血管拡張および腎臓における不均衡な血管拡張、すなわち、遠心性細動脈
狭細化および求心性細動脈拡張を含む。本明細書に記載したように、脳ナトリウム利尿ペ
プチド(BNP)レベルは、リラキシンがAHF患者および/または急性血管不全を有す
る患者に投与されたときに低下する。このことから、BNPは、AHFの重症度が減少す
ると低下するので、便利なAHFマーカーになる。したがって、リラキシンで治療される
被験体においてBNPレベルをモニターすることは、AHFおよび/または急性血管不全
と関連する死亡の危険性を評価するための便利な方法である。したがって、本開示は、急
性心臓代償不全の症状を有するヒト被験体における死亡の危険性を減少させるための方法
を提供する。リラキシンは、被験体の血管系中のリラキシン受容体に結合して、それによ
りBNPの低下したレベルをもたらすことにより、被験体における急性心臓代償不全を軽
減するのに有効な量で投与される。BNPの減少レベルは、AHFおよび/または急性血
管不全患者における死亡の危険性を予測するために、物理的に測定することができる。一
般に、BNPの減少レベルは、血管抵抗における減少に続いて減少した心臓のストレスに
基づく。血管抵抗における減少は、それはまた、血管系の平滑筋細胞に見出されるリラキ
シン受容体に対するリラキシン結合の結果である均衡のとれた血管拡張に基づく。
【0077】
リラキシンが、AHFおよび/または急性血管不全患者に投与されたとき、最も利用可
能な薬剤と比較して、惹起する腎毒性は低いかまたはない。約75ng/mlのリラキシ
ンという高い血清濃度でさえ、現在値用可能な医薬(例えば、フロセミドなどのループ利
尿剤、カプトプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、カンデサルタンなどのアン
ジオテンシン受容体遮断剤等)よりも遙かに弱毒性である。本開示の1つの重要な特徴は
、リラキシンは、腎臓機能を保存するが、治療中に腎毒性を殆どないし全く惹起しないこ
とである。既存の薬剤は、若干の腎臓機能を保存するかも知れないが、それらは患者にお
ける腎毒性も増大させる。この腎毒性は、次に、さらに心臓病態をさらに悪化させる。そ
れと比較して、リラキシンは、腎毒性のないことにより、大部分の患者の定常状態維持を
達成するであろう。これは、不安定なAHFおよび/または急性血管不全集団がより安定
なCHF集団に戻ること、または増悪する心不全の起こりやすさが顕著に減少する安定な
状態を達成することを可能にする。
【0078】
リラキシン組成物および剤形
リラキシン、リラキシンアゴニストおよび/またはリラキシン類似体は、本開示の方法
において使用する医薬品として剤形化される。生物学的または医薬的に活性なリラキシン
(例えば、合成リラキシン、組換えリラキシン)またはリラキシンアゴニスト(例えば、
リラキシンアナログまたはリラキシン様調節因子)のリラキシン受容体への結合に伴う生
物学的応答を刺激することができる任意の組成物または化合物が、本開示における医薬品
として使用され得る。剤形化および投与のための技法についての一般的な詳細は、科学的
文献に十分記載されている(Remington’s Pharmaceutical
Sciences、Maack Publishing Co(ペンシルバニア州 Ea
ston)を参照されたい)。医薬的に活性なリラキシンを含有する医薬剤形は、医薬品
製造の技術分野において知られた任意の方法に従って調製することができる。本開示の方
法において使用される医薬的に活性なリラキシンまたはリラキシンアゴニストを含有する
剤形は、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、局所的、経口的および吸入を含むがこれらに限定
されない任意の従来から許容される方法による投与のために、剤形化することができる。
例示的な例は、下で説明される。好ましい一実施形態において、リラキシンは静脈内に投
与される。
【0079】
薬剤が静脈注射により送達されるとき、医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効
なリラキシンアゴニストを含有する剤形は、滅菌注射用の水性または油性の懸濁液などの
滅菌注射用製剤の形態であってよい。この懸濁液は、これらの上記の適当な分散剤または
湿潤剤および懸濁剤を使用して、知られた技術により剤形化することができる。滅菌注射
用製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸
濁液であってもよい。使用できる許容される媒体および溶媒の中に、水およびリンゲル溶
液、等張塩化ナトリウムがある。それに加えて、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒質とし
て慣習的に使用することができる。この目的に対して、合成モノグリセリドまたはジグリ
セリドを含む任意の刺激の強くない固定油を使用することができる。それに加えて、オレ
イン酸などの脂肪酸も注射用製剤に同様に使用することができる。
【0080】
経口投与用の医薬剤形は、当技術分野において周知の医薬的に許容可能な担体を使用し
て、経口投与に適した用量で剤形化することができる。そのような担体は、医薬剤形が、
患者による摂取に適した、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、液剤、トローチ剤、ゲル剤、
シロップ剤、スラリー剤、懸濁液剤、その他として単位剤形に剤形化されることを可能に
する。経口使用のための医薬剤形は、リラキシン化合物と固体賦形剤とを組み合せ、生じ
る混合物を場合により粉砕し、および錠剤または丸薬を得るために所望であれば適当な追
加の化合物を添加した後、顆粒剤の混合物を加工して得ることができる。適当な固体賦形
剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類;トウモ
ロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど
のセルロース;およびアラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチ
ンおよびコラーゲンなどのタンパク質を含むがこれらに限定されない炭水化物またはタン
パク質の増量剤である。所望であれば、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン
酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤または可溶化剤を添加するこ
とができる。経口的にも使用できる本開示の医薬剤形は、例えば、ゼラチンで作製された
押し込み型カプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはソルビトールなどのコ
ーティングで作製された軟質密封カプセル剤である。押し込みカプセルは、ラクトースま
たはデンプンなどの増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの
潤滑剤、および場合により安定剤と混合されたリラキシンを含有することができる。軟質
カプセルにおいて、リラキシン化合物は、安定剤添加または無添加の、脂肪油、液体パラ
フィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体中に溶解または懸濁するこ
とができる。
【0081】
本開示の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合でリラキシンを含有
する。そのような賦形剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリド
ン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムなどの懸濁剤、および天然に生じるホスファチ
ド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオ
キシエチレンステアラート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物
(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘ
キシトールから誘導された部分的エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレン
ソルビトールモノオレアート)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無
水物から誘導された部分的エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビ
タンモノオレアート)などの分散剤または湿潤剤が含まれる。水性懸濁液は、エチルまた
はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾアートなどの1種以上の防腐剤、1種以上の着色剤
、1種以上の着香剤およびスクロース、アスパルテームまたはサッカリンなどの1種また
は複数の甘味剤も含有することができる。剤形は容量オスモル濃度を調節することができ
る。
【0082】
油性懸濁液は、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナツ油などの植物油、
または液体パラフィンなどの鉱油中の懸濁リラキシンにより剤形化することができる。油
性懸濁液は、蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含有すること
ができる。甘味剤は、口当たりのよい経口製剤を提供するために添加することができる。
これらの剤形は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加により保存することができる。
【0083】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した本開示の分散性散剤および顆粒剤は、分散剤
、懸濁剤および/または湿潤剤、ならびに1種以上の防腐剤との混合物としてリラキシン
から剤形化することができる。適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、上で開示した
ものにより例示される。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、着香剤および着色剤も存在し得
る。
【0084】
本開示の医薬剤形は、水中油エマルションの形態であることもできる。油性相は、オリ
ーブ油またはピーナッツ油などの植物油、液体パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混
合物であることもできる。適当な乳化剤には、アカシアゴムおよびトラガカントゴムなど
の天然に生じるゴム、ダイズレシチンなどの天然に生じるホスファチド、ソルビタンモノ
オレアートなど脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されたエステルまたは部分的エス
テル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどのこれらの部分的エステ
ルとエチレンオキシドとの縮合生成物が含まれる。エマルションは、甘味剤および着香剤
も含有することができる。シロップ剤およびエリキシルは、グリセリン、ソルビトールま
たはスクロースなどの甘味剤を用いて剤形化することができる。そのような剤形は、粘滑
薬、防腐剤、着香剤または着色剤も含有することができる。
【0085】
リラキシン剤形の投与および投与レジメン
本開示の方法において使用される医薬的に活性なリラキシンまたは医薬的に有効なリラ
キシンアゴニストを含有する剤形は、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、局所的、経口的およ
び吸入によりを含むがこれらに限定されない任意の従来から許容される方法で投与するこ
とができる。投与は、薬物動態および薬剤の他の性質および患者の健康状態とともに変化
するであろう。一般的指針を下に提示する。
【0086】
本開示の方法は、AHFおよび/または急性血管不全、および/または関係する状態と
関連する急性心臓代償不全を罹患している被験体における急性心臓代償不全事象を減少さ
せる。それに加えて、本開示の方法は、AHF患者および/または急性血管不全を有する
患者を含む、AHFと関連する急性心臓代償不全を罹患している被験体における急性心臓
代償不全を治療する。単独またはこれを遂行するのに適切な他の作用剤もしくは薬剤(例
えば利尿剤)との組合せにおけるリラキシンの量は、治療的に有効な用量と考えられる。
投与スケジュールおよびこの用途のために有効な量、すなわち、「投与レジメン(dosing
regimen)」は、疾患または病態の段階、疾患または病態の重症度、有害な副作用の強さ
、患者の一般的健康状態、患者の身体の状態、および年齢等を含む種々の要因に依存する
であろう。患者のための用量レジメン(dosage regimen)の計算において、投与様式も考
慮に入れられる。用量レジメンは、薬物動態、すなわち、吸収速度、バイオアベイラビリ
ティ、代謝、およびクリアランス等も考慮に入れなければならない。これらの原理に基づ
いて、リラキシンは、AHF患者および/またはAHFの症状と関連する個体および/ま
たは急性血管不全を罹患している個体を含むヒト被験体における心臓代償不全を治療する
ために使用することができる。
【0087】
本開示は、同時の、別々のまたは逐次の投与のためのリラキシンおよび利尿剤を提供す
る。本開示は、療法における組合せ使用のためのリラキシンおよび利尿剤も提供する。本
開示は、療法において使用するリラキシンおよび利尿剤の組合せも提供する。本開示は、
急性心臓代償不全事象を治療するための医薬の製造におけるリラキシンおよび利尿剤の使
用も提供する。本開示は、急性心臓代償不全事象を治療するための、利尿剤とともに投与
するために調製される医薬の製造におけるリラキシンの使用も提供する。本開示は、急性
心臓代償不全事象を治療するための、リラキシンとともに投与するために調製される医薬
の製造における利尿剤の使用も提供する。本開示は、急性心臓代償不全事象を治療する方
法において使用するためのリラキシンおよび利尿剤も提供する。
【0088】
本開示は、急性心臓代償不全事象を治療する方法において使用するための、利尿剤とと
もに投与するために調製されるリラキシンをさらに提供する。本開示は、急性心臓代償不
全事象を治療する方法において使用するための利尿剤も提供し、ここでリラキシンは、リ
ラキシンとともに投与するために調製される。本開示は、急性心臓代償不全事象を治療す
る方法において使用するための方法において使用するための、利尿剤とともに投与される
リラキシンも提供する。本開示は、急性心臓代償不全事象を治療する方法において使用す
るための利尿剤も提供し、ここでリラキシンは、リラキシンとともに投与される。
【0089】
さらに、患者が以前に(例えば、数時間前、1日以上前、その他)利尿剤で治療された
ことがある場合に、急性心臓代償不全事象を治療するための医薬の製造におけるリラキシ
ンの使用が意図される。一実施形態において、利尿剤は患者中インビボでまだ活性である
。本開示は、患者が以前にリラキシンで治療されたことがある場合に、急性心臓代償不全
事象を治療するための医薬の製造における利尿剤の使用も提供する。
【0090】
最先端の技術は、臨床医が個々の患者各々のためのリラキシン用量レジメンを決定する
ことを可能にする。例示的な例として、リラキシンのために下で提供される指針は、本開
示方法を実施するときに、用量レジメンすなわち、投与される医薬的に活性なリラキシン
を含む剤形の投与スケジュールおよび用量レベルを決定するための手引きとして使用する
ことができる。一般的指針として、医薬的に活性なH1、H2および/またはH3ヒトリ
ラキシン(例えば、合成、組換え、アナログ、アゴニスト、その他)の毎日の用量は、1
日当たり約10から1000μg/kg(被験体体重)の範囲内の量であると典型的には
予想される。一実施形態において、リラキシンの用量は、10、30、100および25
0μg/kg/日である。他の実施形態において、これらの用量は、それぞれ約3、10
、30および75ng/mLのリラキシンの血清濃度を生じさせる。好ましい一実施形態
において、医薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴニストは、約30μg/kg/日で
投与される。他の好ましい実施形態において、医薬的に有効なリラキシンまたはそのアゴ
ニストは、約10から約250μg/kg/日で投与される。他の実施形態において、リ
ラキシンの投与は、リラキシンの血清濃度を、約0.5から約500ng/ml、より好
ましくは約0.5から約300ng/ml、および最も好ましくは約3から約75ng/
mlに保つために継続される。最も好ましくは、リラキシンの投与は、10ng/ml以
上のリラキシンの血清濃度を保つように継続される。リラキシンは、3〜6ng/mlの
血清濃度で十分有効であることも示されている(図6を参照されたい、下記参照)。した
がって、本開示の方法は、リラキシンのこれらの血清濃度を生じさせる投与を含む。これ
らのリラキシン濃度は、呼吸困難、高血圧(hypertension)、高血圧(high blood press
ure)、不整脈、低下した腎臓血流、腎不全および死亡などの代償不全事象を、回復させ
るかまたは軽減することができる。さらになお、これらのリラキシン濃度は、神経ホルモ
ンの不均衡、体液過負荷、不整脈、心虚血、死亡の危険性、心臓のストレス、血管抵抗等
を、回復させるかまたは軽減することができる。被験体に応じて、リラキシン投与は、特
異的な期間または被験体における安定性を達成するために必要とされるだけ長く保たれる
。例えば、リラキシン治療の期間は、患者に応じて、好ましくは約4時間から約96時間
、より好ましくは8時間から約72時間の範囲で、場合により必要性とされる1回以上の
反復治療を続ける。
【0091】
リラキシン剤形の単回または複数回の投与は、急性心臓代償不全、AHFおよび/また
はAHFと関連する状態を罹患している患者および/または急性血管不全を罹患している
個体により必要とされかつ耐えられる用量および頻度に依存して投与することができる。
剤形は、病態を効果的に回復させるために十分な量のリラキシンを提供すべきである。静
脈内リラキシンの投与の典型的な医薬剤形は、具体的な療法に依存するであろう。例えば
、リラキシンは、単独療法により(すなわち、他の併用する医薬がない)または利尿剤ま
たは他の薬剤などの他の薬物との組合せ療法で、患者に投与することができる。一実施形
態において、リラキシンは、単独療法として毎日患者に投与される。他の実施形態におい
て、リラキシンは、他の薬剤との組合せ療法として毎日患者に投与される。注意すべきこ
ととして、患者に投与されるリラキシンの用量および頻度は、年齢、病気の程度、薬剤耐
性、および併用する医薬および状態に依存して変化し得る。
【0092】
幾つかの実施形態において、リラキシンは、1mg/mL溶液(5mLのガラスバイア
ル中の3.5mL)として提供される。リラキシンのための希釈剤と同一であるプラセボ
は、同じバイアルで提供される。リラキシンまたはプラセボは、生理食塩水との組合せで
、ピギーバック配置で注射器ポンプを使用して少量で患者静脈内に投与される。リラキシ
ンで使用するためにテストしかつ適格とされた適合性のチューブおよび三方コックが、リ
ラキシン剤形を投与するために使用される。用量は、重量基準に基づいて投与され、注入
ポンプにより送達されるリラキシン薬剤の速度を調節することにより、各患者について調
節される。幾つかの実施形態において、各被験体は48時間まで試験薬剤を投薬される。
【0093】
正常血圧および高血圧のAHF患者を治療するための補助療法
広血管拡張剤を含む広範な種々の承認された抗高血圧剤、アドレナリン遮断剤、中枢性
α−アゴニスト、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受
容体遮断剤(ARB)、カルシウムチャンネル遮断剤および複数のタイプの利尿剤(例え
ば、ループ、カリウム節約型、チアジドおよびチアジド様)がある。幾つかの実施形態に
おいて、本開示は、抗高血圧剤などの補助療法との組合せでリラキシンの投与を含む、正
常血圧および高血圧の患者における急性心不全に伴う呼吸困難を治療する方法を提供する
。幾つかの方法において、抗高血圧剤は、以下のACE阻害剤、β遮断剤および利尿剤か
ら選択されるが、これらに限定されない。
【0094】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、多年にわたり高血圧を治療するために
使用されてきた。ACE阻害剤は、CHF患者における心臓および循環に対して有害な作
用を有するホルモンであるアンジオテンシンIIの形成をブロックする。これらの薬剤の
副作用には、乾性咳、低血圧、腎臓機能悪化および電解質不均衡、および時にはアレルギ
ー性反応が含まれる。ACE阻害剤の例として、カプトプリル(CAPOTEN)、エナ
ラプリル(VASOTEC)、リシノプリル(ZESTRIL、PRINIVIL)、ベ
ナゼプリル(LOTENSIN)、およびラミプリル(ALTACE)が挙げられる。A
CE阻害剤に耐えられないような患者に対しては、アンジオテンシン受容体遮断剤(AR
B)と呼ばれる別の群の薬を使用することができる。これらの薬剤は、ACE阻害剤と同
じホルモンの経路に作用するが、その代わりにアンジオテンシンIIのその受容体部位に
おける作用を直接遮断する。これらの薬剤の副作用は、ACE阻害剤と関連するものと同
様であるが、乾性咳が起こることは少ない。このクラスの医薬の例として、ロサルタン(
COZAAR)、カンデサルタン(ATACAND)、テルミサルタン(MICARDI
S)、バルサルタン(DIOVAN)、およびイルベサルタン(AVAPRO)が挙げら
れる。
【0095】
β遮断剤は、種々の身体組織のβ受容体に作用する、エピネフリン(アドレナリン)、
ノルエピネフリン、および他の同様なホルモンなどのある種の刺激ホルモンの作用を遮断
する薬剤である。これらのホルモンの心臓のβ受容体に対する本来の効果は、心筋のより
力強い収縮である。β遮断剤は、これらの刺激ホルモンのβ受容体に対する作用を遮断す
る作用剤である。これらのホルモンの刺激効果は、心臓機能を維持するのに最初は役に立
つが、時間が経つと心筋に有害な作用があるように思われる。一般に、CHF患者がβ遮
断剤投与を受けるならば、彼らは、最初は非常に低い用量で与えられ、用量はそれから徐
々に増加される。副作用には、体液貯留、低血圧、低心拍数、および一般的疲労およびめ
まいが含まれる。β遮断剤は、気道の疾患(例えば、喘息、肺気腫)または非常に低い安
静時心拍数を有する人々においても使用すべきではない。カルベジロール(COREG)
は、うっ血性の心不全の鎮静において最も十分に研究された薬剤であって、依然としてう
っ血性の心不全の治療のためのFDA承認を有する唯一のβ遮断剤である。しかしながら
、うっ血性の心不全の治療においてカルベジロールを他のβ遮断剤と直接比較する研究が
進行している。長時間型メトプロポール(TOPROL XL)も、うっ血性の心不全を
有する患者に有効である。ジゴキシン(LANOXIN)は、顕花植物キツネノテブクロ
(Foxglove flowering plant)により天然で産生され、CHF患者の治療のために数十年
間使用されてきた。ジゴキシンは、心筋を刺激してより力強く収縮させる。副作用には、
吐き気、嘔吐、心臓リズム撹乱、腎機能不全、および電解質異常が含まれる。重大な腎臓
障害を有する患者において、ジゴキシンの用量は、注意深く調節しかつモニターする必要
がある。
【0096】
利尿剤は、CHF患者の治療において、体液貯留の症状を防止または軽減するために、
しばしば使用される。これらの薬剤は、腎臓を通る体液の流れを促進することにより、体
液を肺および他の組織に蓄積させないことに役立つ。それらは、息切れおよび脚のむくみ
などの症状を軽減するのに有効であるが、長期の生存に有利に影響することは示されてい
ない。入院が必要とされたとき、経口利尿剤を吸収する能力が障害されていることがある
ので利尿剤は、静脈内に投与されることが多い。利尿剤の副作用には、脱水、電解質異常
、特に低カリウムレベル、難聴、および低血圧が含まれる。適当な時に補完剤を患者に提
供することにより低カリウムレベルを防止することは重要である。いかなる電解質不均衡
も、患者が重大な心臓リズム撹乱を起こしやすくし得る。種々のクラスの利尿剤の例とし
て、フロセミド(LASIX)、ヒドロクロロチアジド、ブメタニド(BUMEX)、ト
ルセミド(DEMADEX)、およびメトラゾン(ZAROXOLYN)が挙げられる。
スピロノラクトン(ALDACTONE)は、種々の疾患の治療において、比較的弱い利
尿剤として多年にわたって使用されてきた。この薬剤は、ホルモンであるアルドステロン
の作用を遮断する。アルドステロンは、うっ血性の心不全における心臓および循環に対し
て理論的な有害作用を有する。その放出は、一部はアンジオテンシンIIにより刺激され
る(上記)。この薬剤の副作用は、上昇したカリウムレベルおよび、男性においては乳房
組織増殖(女性化乳房)を含む。他のアルドステロン阻害剤はエプレレノン(INSPR
A)である。
【0097】
リラキシンアゴニスト
幾つかの実施形態において、本開示は、リラキシンアゴニストの投与を含む、正常血圧
または高血圧の患者における急性心不全に伴う呼吸困難を治療する方法を提供する。幾つ
かの方法において、リラキシンアゴニストは、RXFP1、RXFP2、RXFP3、R
XFP4、FSHR(LGRl)、LHCGR(LGR2)、TSHR(LGR3)、L
GR4、LGR5、LGR6、LGR7(RXFP1)およびLGR8(RXFP2)か
ら選択されるが、これらに限定されない1種以上のリラキシン関連Gタンパク質結合受容
体(GPCR)を活性化する。幾つかの実施形態において、リラキシンアゴニストは、C
ompugenのWO2009/007848(リラキシンアゴニストの配列を教示する
ために参照により本明細書に組み込まれる)の式Iのアミノ酸配列を含む。
【0098】
式Iのペプチドは、長さが好ましくは7から100個のアミノ酸であり、アミノ酸配列
:X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−
X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−
X23−X24−X25−X26−X27−X28−X29−X30−X31−X32−
X33(式中、X1は存在しないかまたはGであるかまたは小さい天然に生じるかもしく
は生じないアミノ酸であり;X2は存在しないかまたはQであるかまたは極性の天然に生
じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X3は存在しないかまたはKであるかまたは塩
基性の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X4は存在しないかまたはGで
あるかまたは小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X5は存在しない
かまたはQもしくはSであるか極性の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;
X6は存在しないかまたはVもしくはAもしくはPもしくはMであるかまたは疎水性の天
然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X7は存在しないかまたはGであるかま
たは小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X8は存在しないかまたは
PもしくはLもしくはAであるかまたは天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり
;X9は存在しないかまたはPもしくはQであるか天然に生じるかもしくは生じないアミ
ノ酸であり;X10は存在しないかまたはGであるかまたは小さい天然に生じるかもしく
は生じないアミノ酸であり;X11は存在しないかまたはAもしくはHもしくはEもしく
はDであるかまたは疎水性のもしくは小さいもしくは酸性の天然に生じるかもしくは生じ
ないアミノ酸であり;X12は存在しないかまたはAもしくはPもしくはQもしくはSも
しくはRもしくはHであるかまたは疎水性もしくは小さい天然に生じるかもしくは生じな
いアミノ酸であり;X13は存在しないかまたはCもしくはVであるかまたは疎水性の天
然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X14は存在しないかまたはRもしくは
KもしくはQもしくはPであるかまたは塩基性のもしくは極性の天然に生じるかもしくは
生じないアミノ酸であり;X15は存在しないかまたはRもしくはQもしくはSであるか
または塩基性のもしくは極性の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X16
は存在しないかまたはAもしくはLもしくはHもしくはQであるかまたは疎水性のもしく
は小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X17は存在しないかまたは
Yであるかまたは疎水性のもしくは芳香族の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸で
あり;X18は存在しないかまたはAであるかまたは疎水性のもしくは小さい天然に生じ
るかもしくは生じないアミノ酸であり;X19は存在しないかまたはAであるかまたは疎
水性の小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X20は存在しないかま
たはFであるかまたは疎水性のもしくは芳香族の天然に生じるかもしくは生じないアミノ
酸であり;X21は存在しないかまたはSもしくはTであるかまたは極性の天然に生じる
かもしくは生じないアミノ酸であり;X22は存在しないかまたはVであるかまたは疎水
性の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X23は存在しないかまたはGで
あるかまたは疎水性のもしくは小さい天然に生じないアミノ酸であるかもしくはアミドに
より置換されており;X24は存在しないかまたはRであるかまたは塩基性の天然に生じ
るかもしくは生じないアミノ酸であり;X25は存在しないかまたはRであるかまたは塩
基性の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X26はAであるかまたは疎水
性のもしくは小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X27はYである
かまたは疎水性のもしくは芳香族の天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であり;X
28はAであるかまたは疎水性のもしくは小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ
酸であり;X29はAであるかまたは疎水性のもしくは小さい天然に生じるかもしくは生
じないアミノ酸であり;X30はFであるかまたは疎水性の天然に生じるかもしくは生じ
ないアミノ酸であり;X31はSもしくはTであるかまたは極性の天然に生じるかもしく
は生じないアミノ酸であり;X32はVであるかまたは疎水性の天然に生じるかもしくは
生じないアミノ酸であり;X33は存在しないかまたはGであるかまたは疎水性のもしく
は小さい天然に生じるかもしくは生じないアミノ酸であるかもしくはアミドにより置換さ
れている);またはそれらの医薬的に許容可能な塩(配列番号4)を含む。幾つかの好ま
しい実施形態において、リラキシンアゴニストは、ペプチドP59C13V(遊離酸)G
QKGQVGPPGAAVRRAYAAFSVの配列(配列番号5)を含む。他の好まし
い実施形態において、リラキシンアゴニストは、ペプチドP74C13V(遊離酸)GQ
KGQVGPPGAAVRRAYAAFSVGRRAYAAFSVの配列(配列番号6)
を含む。さらに、ペプチドP59−G(遊離酸Gly)GQKGQVGPPGAACRR
AYAAFSVG(配列番号7)などのヒト補体C1Q腫瘍壊死因子関連タンパク質8(
CTRP8またはC1QT8)の誘導体も、本開示の方法における使用に適すると考えら
れる。C1QT8のアミノ酸配列は、配列番号8:
【化1】


と表される。
【0099】
本開示は、これらのポリペプチドの相同体も包含し、そのような相同体は、以下の括弧
内のパラメータ(フィルタリングはオン(このオプションフィルターはSeg(タンパク
質)プログラムを使用するクエリーからの反復配列または低複雑度配列)、スコアリング
マトリクスはタンパク質のためのBLOSUM62であり、ワードサイズは3であり、E
値は10であり、ギャップコストは11、1である(開始および(開始および伸張))を
場合によりおよび好ましくは含む初期設定のパラメータを使用する、National
Center of Biotechnology Information(NCBI
)のBlastPというソフトウェアを使用して決定できる典型的リラキシンアゴニスト
のアミノ酸配列(例えば、配列番号5または配列番号6)に対して、少なくとも50%、
少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくと
も75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも85%、少なくとも90%
、少なくとも95%以上例えば100%同一であり得る。場合によりおよび好ましくは、
核酸配列同一性/相同性は、National Center of Biotechn
ology Information(NCBI)のBlastNというソフトウェアを
用いて、好ましくはDUSTフィルタプログラムの使用を含み、かつ好ましくは10のE
値を有すること、低複雑度配列をフィルターすることおよび11のワードサイズも含む初
期設定のパラメータを使用して決定される。最終的に、本開示は、天然に生じたかまたは
人為的にランダムもしくは標的化のいずれかの様式で誘発されたかのいずれかの、1つ以
上のアミノ酸の欠失、挿入または置換などの変異を有する上記のポリペプチドおよびポリ
ペプチドのフラグメントも包含する。
【0100】
医療使用
本開示は、上で定義したリラキシンの医療使用を提供する。したがって、本開示は、例
えば、ヒト被験体における呼吸困難の治療において使用するためのリラキシンを提供する
。他の実施形態において本開示は、急性非代償性心不全および少なくとも125mmHg
の収縮期血圧を有するヒト被験体における急性非代償性心不全の治療において使用するた
めのリラキシンを提供し、その場合、方法はH2リラキシンを被験体に彼らの院内心不全
悪化を軽減するのに有効な量で投与する工程を含む。他の実施形態において本開示は、急
性非代償性心不全および少なくとも約20%の左心室駆出率を有するヒト被験体における
急性非代償性心不全の治療において使用するためのリラキシンを提供し、その場合、方法
は、H2リラキシンを被験体における少なくとも1つの急性心不全徴候または症状を軽減
するのに有効な量で投与する工程を含む。本開示は、急性非代償性心不全を有するヒト被
験体における急性非代償性心不全の治療において使用するためのリラキシンも提供し、そ
の場合、方法は、H2リラキシンを被験体に病院滞在中の利尿剤使用を減少させるのに有
効な量で投与する工程を含む。
【0101】
本開示は、ヒト被験体における呼吸困難を治療するための医薬の製造におけるリラキシ
ンの使用も提供する。本開示は、急性非代償性心不全および少なくとも125mmHgの
収縮期血圧を有するヒト被験体における急性非代償性心不全を治療するための医薬の製造
におけるリラキシンの使用も提供する。本開示は、急性非代償性心不全および少なくとも
約20%の左心室駆出率を有するヒト被験体における急性非代償性心不全を治療するため
の医薬の製造におけるリラキシンの使用も提供する。
【0102】
リラキシンおよびこれらの使用と関連する治療の他の特徴は、上で開示されている。
【0103】
本開示は、上で論じた状態を治療するための医薬の製造におけるリラキシンおよび抗高
血圧剤の使用も提供する。抗高血圧剤は、上記のように例えば、血管拡張剤、アドレナリ
ン遮断剤、中枢性α−アゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン
II受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤および利尿剤からなる群から選択するこ
とができる。
【0104】
本開示は、リラキシンおよび抗高血圧剤を、上で論じた状態の治療における、同時の、
別々の、または逐次の使用のための組み合わされた製剤としても提供する。同様に、本開
示は、上で論じた状態の治療において組み合わせて使用するためのリラキシンおよび抗高
血圧剤を提供する。
【0105】
本開示は、上で論じた状態の治療において、抗高血圧剤との組合せで使用するためのリ
ラキシンも提供する。同様に、本開示は、上で論じた状態の治療において、リラキシンと
の組合せで使用するための抗高血圧剤を提供する。
【0106】
本開示は、抗高血圧剤とともにリラキシンが投与される、または投与されるために準備
される、上で論じた状態を治療する方法において使用するためのリラキシンも提供する。
同様に、本開示は、リラキシンとともに抗高血圧剤が投与される、または投与されるため
に準備される、上で論じた状態を治療するための方法において使用するための抗高血圧剤
を提供する。リラキシンおよび/または抗高血圧剤は、医薬の製造において、この方法で
使用することもできる。
【0107】
本開示は、被験体が先立つ48時間以内に抗高血圧剤を事前に投与されている、上で論
じた状態を治療する方法において使用するためのリラキシンも提供する。同様に、本開示
は、被験体が先立つ48時間以内にリラキシン薬剤を事前に投与されている、上で論じた
状態を治療する方法において使用するための抗高血圧剤を提供する。リラキシンおよび/
または抗高血圧剤は、医薬の製造においてこの方法で使用することもできる。これらの実
施形態について、被験体は、48時間より前に、例えば24時間前に、12時間前に、ま
たは6時間前に、他の薬剤を投与されていてもよい。通常、先立って投与された薬剤は、
被験体の身体中に未だ存在していて、検出可能であろう。この先立って投与された薬剤の
残留により、これらの被験体は一般のヒト集団と区別される。
【実施例】
【0108】
実験
以下の具体的実施例は、本開示を例示することを意図するもので、特許請求の範囲を限
定すると解釈されるべきでない。
【0109】
略語:AHF(急性心不全または非代償性うっ血性の心不全);AUC(曲線下面積)
;BNP(脳ナトリウム利尿ペプチド);(BP)血圧;BUN(血中尿素窒素);CH
F(うっ血性心不全);CI(心係数);CO(心拍出量);CrCl(クレアチンクリ
アランス);DBP(拡張期血圧);dL(デシリットル);eGFR(推定糸球体濾過
率);hr(時間);HR(心拍数);ICU(集中治療室);IV(静脈内);IVC
D(心室内伝導遅延);kg(キログラム);L(リットル);LAHB(左脚前枝ブロ
ック(left anterior hemiblock));LBBB(左脚ブロック(left bundle branch bl
ock));LVEDP(左心室拡張末期圧);LVEF(左心室駆出率);mcgまたは
μg(マイクログラム);mEq(ミリ当量);MI(心筋梗塞);mIU(ミリ国際単
位);mL(ミリリットル);NYHA(New York Heart Association);PAH(パラ
−アミノヒップラート(para-aminohippurate));PAP(肺動脈圧);PCWP(肺
毛細血管楔入圧);PD(薬力学);RAP(右動脈圧);RBBB(右脚ブロック(ri
ght bundle branch block));RBF(腎臓血流);rhRlxまたはrhRLX(組
換えヒトリラキシン);RlxまたはRLX(リラキシン);RR(呼吸数);SBP(
収縮期血圧);SI(1回拍出係数);sMDRD(腎臓疾患における食事の簡単化され
た改変(simplified Modification of Diet in Renal Disease));SQ(皮下SQ);
SVR(全身血管抵抗);T(温度);VAS(視覚的アナログ尺度);VF(心室細動
);VT(心室頻拍);およびWHF(悪化心不全)。
【0110】
実施例1
全身性硬化症を有する患者における組換えヒトリラキシンの試験
概要
リラキシンを用いる治験は、全身性硬化症患者についても実施された。重大な線維症疾
患である全身性硬化症を罹患している257名のヒト被験体が、連続的皮下(SQ)注入
により6カ月間リラキシンで治療された。広範なおよび長期の安全性情報を含む結果は、
これらの患者が、後のCHF所見を確認すると、リラキシンの結果(図4)として、いか
なる重大な低血圧事象も経験しなかったことを示した。全身性硬化症における試験は、リ
ラキシン投与が、重大な低血圧発症なしに、安定な血圧降下、予測クレアチニンクリアラ
ンスにおいて統計的に有意の上昇を伴うことを示した(図5を参照されたい)。これらの
所見は、リラキシン投与が均衡のとれた全身のおよび腎臓の血管拡張を伴ったという仮説
を支持する。
【0111】
それに加えて、19件の完了した試験において570名のヒト被験体がリラキシンで治
療された。これらの被験体には、線維筋痛症を有する患者、卵子の提供(egg donation)
を経験した女性、妊娠満期の女性(pregnant women at term)、健康な女性および男性の
ボランティア、歯科矯正療法を受けている健康な成人、および全身性硬化症患者が含まれ
た。
【0112】
所見および結論
本明細書に記載したように、リラキシンは、種々の潜在的な状態を有する被験体に安全
に投与することができる。多数のこれらの試験において、データは、リラキシンが均衡の
とれた全身のおよび腎臓の血管拡張をもたらすことを示唆した。
【0113】
実施例2
急性心不全を有する患者における組換えヒトリラキシンの試験
概要
複数の施設における、ランダム化二重盲検の、プラセボを対照とする治験が、非代償性
うっ血性の心不全(CHF)を有する患者における組換えヒトリラキシン(rhRLX)
の安全性および有効性を決定するために実施された。非代償性CHFおよび急性心不全(
AHF)という用語は、本明細書において互換的に使用される。AHF(安静時または僅
かな運動時の呼吸困難、胸部X線写真における間質性浮腫により証明された肺うっ血、お
よび上昇したBNPまたはNTproBNPの全てを含むと定義される)のために入院し
た、スクリーニング時に30〜75ml/分/1.73mの推定糸球体濾過率および>
125mmHgのSBPを有する患者は、適格であり、所見から16時間以内に標準AH
F看護に加わるプラセボまたはリラキシン(RLX;10、30、100または250μ
g/kg/日)の48時間IV注入にランダム化されて、180日目まで経過観察された
。合計234名の患者が試験に登録された。
【0114】
選択基準
AHFのために入院した、血圧が変わらないかまたは上昇していて腎臓機能が障害され
た18歳以上の男性および女性は、試験における選択において適格であった。AHFは、
スクリーニングにおける以下の全ての存在により定義した:安静時または僅かな運動時の
呼吸困難、胸部X線における肺うっ血および上昇したナトリウム利尿ペプチドレベル(脳
ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧350pg/mLまたはNT−pro−BNP≧1
400pg/mL)。収縮期血圧(SBP)は、スクリーニング時に>125mmHgで
なければならなかった。障害された腎臓機能は、腎臓疾患における食事の簡略化修正(s
MDRD)の方程式(Leveyら、Ann Intern Med、130:461〜
470、1999)を使用して計算した推定糸球体濾過率(eGFR)が30から75m
L/分/1.73mの間と定義した。ランダム化は、初見の16時間以内に行うことと
した。患者は、少なくとも40mgの静脈内(IV)フロセミド(または別のループ利尿
剤の同等用量)を投与された後に基準を満たさなければならなかった。
【0115】
除外規準
発熱(38°Cを超える体温);急性造影剤誘発腎症または造影剤の最近の投与;効果
的な変力剤、昇圧剤、血管拡張剤(SBP>150mmHgならば用量≦0.1mg/k
g/時間で注入されるIV硝酸薬を例外とする)を用いる進行中のまたは計画されたIV
治療、または機械的支持(動脈内バルーンポンプ、気管内挿管、機械的人工換気または任
意の心室補助デバイス);重症肺疾患;重大な狭窄心臓弁膜症;以前の臓器移植または心
臓移植のための入院;スクリーニングの前45日以内の急性冠動脈症候群の臨床診断;ス
クリーニングの30日以内の大手術;25%未満のヘマトクリット;スクリーニングの前
45日以内の大きな神経性事象;スクリーニング時に正常の上限の3倍を超えるトロポニ
ンレベル;重度の不整脈により惹起されたAHF;非心臓性肺浮腫;または知られている
重度の肝疾患。
【0116】
試験薬剤
組換えヒトリラキシン(rhRlx)は、独自の工程(proprietary process)を使用
して、組換え大腸菌(E.coli)株において、ミニC−プロリラキシンと称される単
鎖前駆体として産生した。前駆体を含む封入体は、ホモジイナイズにより細胞から放出さ
れて、遠心分離により回収された。ミニ−C−プロリラキシンは、封入体から抽出され、
レドックス緩衝を用いてリフォールディングされ(ジスルフィド架橋を構築するために)
、シリカ吸着およびイオン交換クロマトグラフィーにより部分的に精製された。次に、リ
ーダー配列およびB鎖をA鎖に接続するペプチドを、酵素的に除去した。次に、生成した
リラキシンを、3回の逐次クロマトグラフィーステップにより(イオン交換および逆相)
により精製した。生成物の剤形は、限外濾過および透析濾過により得た。rhRlxは、
滅菌酢酸塩緩衝非経口的溶液として剤形化した。
【0117】
試験手順
試験は、関連する倫理委員会、施設内審査委員会および規制当局により承認され、かつ
International Conference on Harmonization Good Clinical Practiceの指針の下に実施
した。全ての患者は、参加に先立って、書面によるインフォームドコンセントを提出した
。全ての試験の選択基準に合って、試験のどのような除外基準にも合わない同意する患者
は、ランダム化されて二重盲検方式で、IVプラセボまたはIVリラキシンのいずれかを
10、30、100または250μg/kg/日で48時間投与され、それに加えてAH
Fのための標準的療法を研究者の自由裁量で行った。試験のために使用されるプラセボは
、100μg/kg/日の用量を調製するために使用した希釈剤と同じ溶液であった。ラ
ンダム化の比は、それぞれ3:2:2:2:2であった。リラキシン(Corthera
、カリフォルニア州 San Mateo)は組換え技法を使用して製造され、天然に生
じるペプチドホルモンと同一であった。プロトコルにより、試験薬剤注入は、患者のSB
Pが、15分間隔の2回の引き続く測定において<100mmHgまで、またはベースラ
インと比較して>40mmHgまで降下したならば停止した。研究者は、試験の登録され
た患者を治療するために必要と考えられる、血管拡張剤を含む任意の標準的薬物療法を利
用することを禁止されなかった。IV血管拡張剤、IV純粋変力剤および食事を差し控え
た4時間の洗い出しの後、48時間の試験薬剤注入に対する血行動態、腎臓のおよび臨床
的応答を評価した。
【0118】
呼吸困難が報告されている患者は、標準の7点のLikertスケールおよび標準的な
100mmの視覚的アナログスケール(VAS)の両方を使用して評価した。アセスメン
トは、薬剤療法開始後、ベースライン(VASのみ)で、および6時間、12時間、24
時間、48時間および3、4、5および14日目に実施した。質問表は地域の言語で処理
され、研究者は、これらの評価における標準化された処理の訓練を受けた。医師の報告す
る、頸静脈拡張、ラ音、浮腫、起座呼吸、および運動時の呼吸困難を含む、心不全の徴候
および症状の一連のアセスメントが毎日実施された。院内悪化心不全は、心不全の悪化し
た症状もしくは徴候、およびAHFを治療するためのIV医薬または機械的支持の追加も
しくは開始の必要性に基づいた、医師の決定したアセスメントとして定義される。生死お
よび再入院の情報は、30日目、60日目、および(生死のみ)180日目に電話により
集められた。最後の登録患者が60日目の達すると、経過観察の60日目と180日目と
の間にある全ての患者と電話による接触がなされ、試験を完了した。
【0119】
試験エンドポイント
予備的な用量設定試験として、Pre−RELAX−AHFは、単一の事前に特定した
主要エンドポイントを有しない。その代わり、7項目の主な治療有効性目標についてのI
Vリラキシンの総合的効果を評価した。1)2通りの相補的手段を用いて評価される呼吸
困難の軽減:(a)Likertスケールによる呼吸困難における変化、および(b)視
覚的アナログスケールによるベースラインからの変化。2)5日目までの院内悪化心不全
(WHF)。3)(a)5日目までの血清クレアチニンのベースラインからの≧25%の
上昇により規定される腎臓障害、および(b)ランダム化から5日目および14日目の両
方における0.3mg/dL以上のクレアチニン上昇により規定される持続性腎臓障害を
含む、複数の尺度により評価される腎臓障害。4)初期病院滞在の長さ。5)60日目ま
での退院後生存の日数。6)60日目までの心臓血管の原因による死亡または心不全もし
くは腎不全のための再入院。7)180日目までの心臓血管の原因による死亡。それに加
えて、バイタルサイン、物理的検査、有害事象および臨床検査室評価を含む安全性の一連
のアセスメントを実施した。
【0120】
統計的方法
データは、特に断らない限り標準偏差付きの平均として提示される。欠測データは、一
般に最終観測値延長法(last-observation-carried-forward approach)により補完した
。観察された最悪の呼吸困難のLikertまたはVASスコアは、死亡または心不全悪
化時から延長して推定した。5日目までのベースラインからのVASスコアにおける変化
を表す曲線下面積は、台形公式により計算した。最初の入院中に死亡した患者について、
滞在の長さは、観察された最大日数に1日を加えた日数として補完した(33日)。各リ
ラキシン群は、特に断らない限り、連続測定について2値の結果に対するロジスティック
回帰、およびウィルコクソン順位和検定(60日目における病院滞在長さおよび退院後生
存日数の解析のためにファン−エルターレン検定を用いて)を使用して、複数の比較につ
いて調整せずに、プラセボと比較した。この比較的小規模な試験における局所の変動を調
整するために、共変量または層別化変数量としての局所は、治療効果の解析において予想
で事前に特定した。180日目までの再入院および死亡率は、カプラン−マイヤー(積極
限)法、および治療効果のコックス回帰モデルによるワルド検定を使用して比較された群
を使用して推定し、その際、事象までの時間は、問題になる事象のない患者については、
患者との最後の面接で打ち切った。
【0121】
この第2相試験におけるサンプルサイズは経験的に選択して、試験は、どの特定の成績
測定の統計的有意性のためにも検出力を予見しなかった。p<0.05は統計的に有意と
みなし、一方、0.05≦p≦0.20は薬剤効果を示唆する傾向とみなした。試験の主
な到達点は、上記の初回治療の目標における複数の傾向と関連し、安全性の懸念を伴わな
い、リラキシンの用量を確認して、どのエンドポイントが治療感度を示すかを決定し、さ
らなる統計的検出力計算のために効果的サイズを報告することであった。非盲検の、独立
したデータ安全性およびモニタリング委員会の委員長が、安全性データを試験実施中毎月
吟味した。
【0122】
試験集団
試験には、8ヵ国(USA、ベルギー、イタリア、ポーランド、イスラエル、ハンガリ
ー、ルーマニアおよびロシア)における54施設で、2007年12月から2008年8
月までに234名の患者が登録され、試験の最終面接は2008年10月であった。安全
性解析集団は、何らかの量の試験薬剤を投与された230名の患者からなる。有効性解析
集団は、複数の主要な適格性基準に違反した1名の患者を除外した、試験薬剤を投与され
た229名の患者からなる。患者は70.3±10.5歳で56%が男性であり、スクリ
ーニング時の血圧は147±19mmHgで広範囲な併存疾患がある(表3−1)。5つ
の治療群の間で、特性には、臨床的に意味のあるまたは統計的に有意の差はなかった。患
者は、初見から平均8.4±5.4時間[中央値6.6時間(Q1〜Q3:4.0〜13
.4)]でランダム化されて、ランダム化から1.0±1.8時間以内に試験薬剤で治療
された。プラセボ群の患者は、平均持続時間44時間の注入で投与を受け、一方、リラキ
シン10、30、100および250μg/kg/日の群における患者は、試験薬剤を、
それぞれ、平均で39、41、41および42時間投与を受けた。患者は、試験薬剤に加
えて標準の療法を受け、18.0%のプラセボ群は最初の24時間に静脈内ニトログリセ
リン投与を受け、これに対して、リラキシン10、30、100および250μg/kg
/日の群が、それぞれ10.0%、9.5%、13.5および4.1%であった。
【0123】
呼吸困難応答
結果は、視覚的アナログスコア(VAS)およびLikertスコアにより提示される
。VASスコアにより、連続する値の全域の範囲の特性または傾向が測定される。例えば
、AHF患者が感じる不快の程度は、呼吸困難、高血圧(hypertension)、高血圧(high
blood pressure)、不整脈および低下した腎臓血流を含む不快および/または疼痛の皆
無から極度の不快の程度まで全域にわたる連続した範囲にある。患者の知覚からは、VA
Sがとらえるこのスペクトルは連続的に見える。操作では、VASは記述語を両端に付け
た通常長さ100mmの水平な線である(例えば、一端に不快なし、他端に猛烈な不快)
。患者は、彼らの現在の状態の認知を表すと感じた点を、線上にマークした。VASスコ
アは、線の左側の端から患者がマークした点までを、ミリメートルで測ることにより決定
される(Wewersら、Research in Nursing and Heal
th 13:227〜236、1990)。
【0124】
Likertスコアは、当技術分野において知られた1次元に目盛りをつける方法であ
り、その方法においては、一組のスケール項目が数字で表わした(本明細書においては7
点)可否応答スケール上に等級づけされる。各患者は、応答スケール上に各項目を等級づ
けるように依頼される。スケール上の応答者の最終スコアは、全ての項目についてのそれ
らの等級づけの合計である。
【0125】
リラキシンで治療された患者では、プラセボ群における患者と比較して、急速な意味の
あるおよび持続した呼吸困難改善があった。組み合わされたリラキシン治療群では、療法
開始後早くも6時間で、プラセボと比較して呼吸困難の重症度における、評価した全時点
を通して持続した大きい改善があった。治療に対する最良の応答は、リラキシンを30μ
g/kg/日の用量で投与された患者で観察された。6時間、12時間および24時間の
アセスメントの全てにおいて、Likertスケール上の呼吸困難の中程度にまたは顕著
な改善は、プラセボ群中の患者の23.0%と比較して、リラキシン30μg/kg/日
群においては40.5%に生じた(p=0.044;表3−2)。VASは、呼吸困難の
軽減に対する薬剤効果の持続する有益な傾向を同様に示した。呼吸困難のVASにおける
5日目までのベースラインからの変化についての曲線下面積(AUC)は、プラセボ群に
おいて1679±2556mmhrであり、それと比較してリラキシン30μg/kg
/日群においては2567±2898mmhr(p=0.11;表3−2)であった。
これらの観察された変化は、プラセボおよびリラキシン10、30、100および250
μg/kg/日の群に対してそれぞれ平均14、21、22、21および18mmの5日
にわたる改善に相当する。同様な結果が14日目までのVASのAUC(表3−2)につ
いても明白であり、この場合、プラセボの平均は、4622±9003mmhrであっ
たのに対して、リラキシン30μg/kg/日群においては8214±8712mm
rであった(p=0.053)。これらの変化は、それぞれの群について14日にわたる
平均14、10、25、25および21mmに相当する。
【0126】
短期間の成績
複数の院内アセスメントにおいて、プラセボと比較してリラキシン療法を支持する一貫
した傾向があった(p<0.20)。特に、30μg/kg/日のリラキシン用量は、1
0および100μg/kg/日を投与される群における支持的傾向とともに、最も有効に
思われる。医師の評価した頸静脈拡張、ラ音、および浮腫の消散は、リラキシン30μg
/kg/日群において、5日目におけるプラセボ(表3−3)と比較して全て改善され、
14日目には、リラキシンで治療された患者において、体重のより大きい減少および利尿
剤使用の減少に向かう傾向が伴った。5日目までの心不全悪化発症の累積は、プラセボと
比較してリラキシン群で低く(表3−2)、および指標となる入院についての平均の滞在
長さは、リラキシン群においてプラセボにおけるより0.9〜1.8日短い傾向があった
(表3−2;リラキシン30μg/kg/日 対 プラセボ群についてp=0.18)。
【0127】
退院後の成績
患者は、平均122±53日の間経過観察した。合計15名の患者が60日目までに、
および20名の患者が180日目までに死亡し、12名は心臓血管が原因であった。43
名の患者は、60日目までに再入院し、15名は心不全が原因で腎不全による者はいなか
った。リラキシンで治療された患者は、長期の臨床成績において、改善に向かう傾向を示
した(表3−2)。60日目において、退院後生存の平均日数は、プラセボ群において4
4.2±14.2であるのに対して、それはリラキシンで治療された患者においては約4
日長かった(30μg/kg/日 対 プラセボ群についてp=0.16)。60日目に
おける、心臓血管の原因による死亡または心不全もしくは腎不全による再入院の発生を合
わせたカプラン−マイヤー推定値は、プラセボを投与される群において17.2%であっ
たが、リラキシンで治療された患者においては遙かに少なく、リラキシン30μg/kg
/日の群においてハザード(hazard)は87%減少と推定された(p=0.053 対プ
ラセボ)。全死因死亡が含まれたとき、同様なことが明らかに認められた(表3−2)。
心血管死亡の180日目のカプラン−マイヤー推定値は、プラセボ群において14.3%
であったが、リラキシン治療群においてはかなり小さかった(発生密度のフィッシャー抽
出検定テストによりリラキシン30μg/kg/日をプラセボと比較して、p=0.04
6)。全死因死亡率についての対応するカプラン−マイヤー推定値も同様な傾向を示した

【0128】
安全性のエンドポイント
有害事象および重大な有害事象は、試験群全体に均等に分布しており、AHFで入院し
た患者の自然経過を示した(表3−4)。試験薬剤の有害な効果を示唆する個体または有
害事象のパターンはなかった。
【0129】
リラキシンは、血管拡張活性が知られており、したがって、血圧における変化は注意深
くモニターした。48時間の注入期間中、プラセボ群で、収縮期血圧(SBP)はベース
ラインから12〜20mmHg降下し、リラキシンで治療された患者においても同様に減
少した(図21)。全て時点にわたる血圧降下の平均は、どの治療群とプラセボ群との間
においても、繰り返し測定したANOVA(10、30、100、および250μg/k
g/日をプラセボと比較したSBPにおける変化の平均についてのp値は、それぞれ0.
41、0.16、0.13、および0.32であった)による差はなかったが、30およ
び100μg/kg/日群においては、プラセボと比較して平均3〜4mmHg降下の傾
向があった。プロトコル指定の試験薬剤中止のルールに合う、低血圧および/またはSB
Pの降下という36件の有害事象があり、そのうち2件は、重大な有害事象であった(両
方ともリラキシン250μg/kg/日群中であった)。血圧低下によるプロトコル指定
の試験薬剤中断は、全ての群にわたる患者の10.9%で起こり、明白な用量応答のなか
ったプラセボ(3.3%)と比較して、リラキシン治療群における頻度の方が多かった(
リラキシン10、30、100および250μg/kg/日で、それぞれ20.0%、9
.5%、7.9%および16.3%)。大部分の血圧降下は、療法の最初の6〜12時間
の間に起こった。トラフSBPが80mmHg未満に降下した場合はなかった。試験薬剤
の中断後、SBPは、療法なしのこれらの患者の大部分で安定化または上昇した(SBP
の低下した2名のプラセボ患者中の1名;23名のリラキシンで治療された患者のうち1
8名)。プラセボ群において、1名の患者(1.6%)が低血圧のために静脈内投与を受
けたが、4つのリラキシン治療群から5名の患者(3.0%)が静脈内輸液を受け、また
、リラキシン250μg/kg/日群中の1名の無症状の患者もドブタミン投与を受けた
。10または30μg/kg/日群中で、血圧低下の治療を必要とした患者はいなかった

【0130】
重大な有害事象として報告された腎不全の発生において、試験群の間に差はなかった(
表3−4)。14日目において、クレアチニンにおけるベースラインからの変化の平均は
、0.08±0.46、0.07±0.24、0.13±0.49、0.08±0.39
および0.10±0.39mg/dLであった(各群対プラセボについてのp値≧0.9
7)。14日目において、0.3mg/dL以上の上昇を有する患者の比率は、16.7
%、19.4%、26.3%、24.2%および37.2%であった(250μg/kg
/日 対 プラセボについてp=0.03)。持続性腎臓障害(5日目および14日目の
両方においてクレアチニンにおける0.3mg/dL以上の上昇)も、リラキシン250
μg/kg/日を投与される患者において大きい傾向があった(プラセボに対してp=0
.19)。
【0131】
多くの血管拡張剤の場合と同様に、全ての活性治療群において、試験薬剤投与中に起こ
った一過性で臨床的に重要でないヘマトクリットの降下があり(48時間における平均の
ヘマトクリットにおけるベースラインからの変化:プラセボ群において+0.42%;な
らびにリラキシン10、30、100および250μg/kg/日群において、それぞれ
0.57%、1.45%、0.25%、0.64%;リラキシン30μg/kg/日群に
ついてプラセボに対してp=0.019)、5日目までに回復した。試験中に他の臨床試
験変化の記録はなかった。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】

【0132】
所見
中間解析の図6〜11および最終解析の図12および13で示されように、リラキシン
治療の結果は、呼吸困難における測定可能な改善であった。投与された全ての患者は、リ
ラキシン治療から恩恵を受けたが、2000を超えるNT−pro−BNPを有する患者
、中央値を超える収縮期血圧を有する患者、および中央値未満のクレアチニンクリアラン
スを有する患者が、最大の利益を受けた(図7〜11)。驚くべきことに、30μg/k
g/日という低用量のリラキシンが、7点Likertスコアを使用して測定して、最も
急速かつ顕著な呼吸困難の軽減を提供した(図12)。全てのリラキシン治療群にわたっ
て、VAS測定における呼吸困難の傾向(図13)も、リラキシン治療の有益な効果が持
続性であることを、予想外に示した(例えば、14日目まで)。両方の手段(VASおよ
びLikert)は、心不全患者における呼吸困難の測定として受け入れられるが、分類
尺度(Likert)は初期の変化に感度がより高いように思われ、一方順序尺度(VA
S)は晩期の変化に感度がより高いように思われる。
【0133】
リラキシンの有益な効果には、呼吸困難だけでなく、体液保持による超過体重、病院滞在の長さ、再入院の起こりやすさ、ループ利尿剤の必要性、静脈内(IV)ニトログリセリンの必要性、および心不全悪化の発生を含む急性心臓代償不全事象の減少が含まれる(図14〜19)。具体的に、プラセボと比較した心不全悪化の発生における減少が、臨床的に関連していることが見出され、一方、より短期の病院滞在および再入院が起こることが減少することは、薬剤経済学に好ましい影響を約束する。それに加えて、明白な腎臓機能に対する有害な作用がなく、また安全性または耐容性の問題点もなかった。注意すべきこととして、それらの存在なしに、当業者が変時薬(chronotropic agent)または無差別血管拡張剤について予想したかも知れない不都合な心拍数上昇や低血圧症状は、リラキシンで処置した患者では見られなかった(図20および21を参照されたい)。
【0134】
結論
これは、125mmHgを超える収縮期血圧および軽症ないし中程度の腎臓障害を示す
急性心不全(AHF)を有する患者におけるIVリラキシンの効果を検討するための、最
初の前向き研究である。リラキシンを用いる治療は、呼吸困難において、相当大きい、急
速に発現して(6時間以内)、14日まで持続した有意の改善を伴った。リラキシンを用
いる治療は、心不全の徴候、心不全の病院内での悪化、滞在の長さ、60日における心血
管死または再入院、および180日の心血管死を含む他の重要な臨床的エンドポイントに
おける改善に向かう傾向と関連した。これらの効果は、30μg/kg/日のリラキシン
群において最も顕著であったが、同様であるがより小さい傾向は、10および100μg
/kg/日の用量のリラキシンでも見られた。この試験において確認された、AHF患者
におけるリラキシンについて懸念される安全性シグナルはなかった。
【0135】
本開示の種々の改変および変形は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当
業者には明らかであろう。本開示は、具体的な好ましい実施形態と結びつけて説明された
が、特許請求の範囲がそのような具体的実施形態に過度に限定されるべきでないことは理
解されるべきである。実際、本開示を実施するために記載された様式の、当業者により理
解される種々の改変は、特許請求の範囲の範囲内であることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験体における呼吸困難を治療する方法において使用するための医薬的に活性なH
2リラキシン。
【請求項2】
呼吸困難が急性心不全に伴う呼吸困難であり、前記方法の開始時において被験体は高血
圧または正常血圧の状態にある、請求項1に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項3】
被験体が、急性非代償性心不全に伴う呼吸困難および心虚血の少なくとも1つの兆候を
有する、請求項1に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項4】
心虚血の少なくとも1つの兆候は、陽性のトロポニンテスト、異常な心電図、胸部疼痛
の存在、不整脈の存在、陽性のクレアチンキナーゼ−MBテスト、および異常な心エコー
図からなる群より選択される、請求項3に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項5】
被験体が、20%から40%の範囲内または少なくとも40%の左心室駆出率を有する
、請求項4に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項6】
被験体が、正常血圧または高血圧である、請求項5に記載の医薬的に活性なH2リラキ
シン。
【請求項7】
被験体が、急性非代償性心不全および少なくとも約20%の左心室駆出率を有する、請
求項1に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項8】
被験体が、約20%から約40%の範囲内の左心室駆出率を有する、請求項7に記載の
医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項9】
被験体が、少なくとも約40%の左心室駆出率を有する、請求項8に記載の医薬的に活
性なH2リラキシン。
【請求項10】
被験体が正常血圧である、請求項7から9のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2
リラキシン。
【請求項11】
被験体が高血圧である、請求項7から9までのいずれか一項に記載の医薬的に活性なH
2リラキシン。
【請求項12】
ヒト被験体における急性非代償性心不全を治療する方法において使用するための医薬的
に活性なH2リラキシンであって、被験体が、急性非代償性心不全および少なくとも12
5mmHgの収縮期血圧を有し、前記方法は、被験体の院内悪化心不全を減少させるのに
有効な量でH2リラキシンを被験体に投与する工程を含む、医薬的に活性なH2リラキシ
ン。
【請求項13】
院内悪化心不全が、呼吸困難の悪化、前記心不全を治療するための追加の静脈内療法の
必要性、呼吸の機械的支持の必要性、および血圧の機械的支持の必要性のうちの1つ以上
を含む、請求項12に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項14】
被験体が、入院を必要とする呼吸困難および胸部X線写真で間質性浮腫の存在により定
義される肺うっ血を有する、請求項13に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項15】
ヒト被験体における急性非代償性心不全を治療する方法において使用するための医薬的
に活性なH2リラキシンであって、被験体は急性非代償性心不全および少なくとも約20
%の左心室駆出率を有し、前記方法は、被験体における少なくとも1つの急性心不全の徴
候または症状を軽減するのに有効な量でH2リラキシンを被験体に投与する工程を含む、
医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項16】
被験体が、少なくとも40%の左心室駆出率を有する、請求項15に記載の医薬的に活
性なH2リラキシン。
【請求項17】
少なくとも1つの急性心不全の徴候または症状が、安静時の呼吸困難、起座呼吸、運動
時の呼吸困難、浮腫、ラ音、肺うっ血、頸静脈波もしくは膨満、浮腫に関連する体重増加
、高肺毛細血管楔入圧、高左心室拡張末期圧、高全身性血管抵抗、低心拍出量、低左心室
駆出率、静脈内利尿剤療法の必要性、追加の静脈内血管拡張剤療法の必要性、および悪化
した院内心不全の発生からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項15または請求項16
に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項18】
被験体が正常血圧または高血圧である、請求項17に記載の医薬的に活性なH2リラキ
シン。
【請求項19】
ヒト被験体における急性非代償性心不全を治療する方法において使用するための医薬的
に活性なH2リラキシンであって、被験体は急性非代償性心不全を有し、前記方法は、病
院滞在中の利尿剤使用を減少させるのに有効な量でH2リラキシンを被験体に投与する工
程を含む、医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項20】
病院滞在中のループ利尿剤使用が減少する、請求項19に記載の医薬的に活性なH2リ
ラキシン。
【請求項21】
ループ利尿剤使用が14日間にわたって少なくとも10%減少する、請求項20に記載
の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項22】
ループ利尿剤使用が14日間にわたって少なくとも20%減少する、請求項21に記載
の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項23】
ループ利尿剤使用が4日間にわたって少なくとも30%減少する、請求項22に記載の
医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項24】
被験体が、少なくとも40%の左心室駆出率を有する、請求項19から23のいずれか
一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項25】
被験体が正常血圧または高血圧である、請求項19から24のいずれか一項に記載の医
薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項26】
被験体が少なくとも約125mmHgの収縮期血圧を有する、請求項6、請求項10、
請求項11、請求項18または請求項25に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項27】
被験体は腎臓が障害されている、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬的に活性
なH2リラキシン。
【請求項28】
被験体が約35から約75mL/分の範囲のクレアチニンクリアランスを有する、請求
項27に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項29】
被験体が、入院を必要とする呼吸困難を有する、請求項1〜28のいずれか一項に記載
の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項30】
H2リラキシンが被験体に少なくとも24時間投与される、請求項1〜29のいずれか
一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項31】
H2リラキシンが被験体に少なくとも48時間投与される、請求項1〜30のいずれか
一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項32】
H2リラキシンが約10μg/kg/日から約960μg/kg/日の範囲内の静脈内
注入速度で被験体に投与される、請求項1〜31のいずれか一項に記載の医薬的に活性な
H2リラキシン。
【請求項33】
H2リラキシンが、約10μg/kg/日から約250μg/kg/日の範囲内の静脈
内注入速度で被験体に投与される、請求項32に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項34】
H2リラキシンが、約30μg/kg/日から約100μg/kg/日の範囲内の静脈
内注入速度で投与される、請求項33に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項35】
H2リラキシンが、約10μg/kg/日、約30μg/kg/日、約100μg/k
g/日、または約250μg/kg/日の静脈内注入速度で投与される、請求項33に記
載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項36】
H2リラキシンが約30μg/kg/日の静脈内注入速度で投与される、請求項35に
記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項37】
治療の開始後6時間で、呼吸困難における軽減が統計的に有意である、請求項1〜36
のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項38】
治療の開始後12時間で、呼吸困難における軽減が統計的に有意である、請求項1〜3
7のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項39】
治療の開始後、6、12および24時間で、呼吸困難における軽減が統計的に有意であ
る、請求項1〜38のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項40】
呼吸困難における軽減が、治療期間の少なくとも約2倍の間持続する、請求項1〜39
のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項41】
呼吸困難における軽減が、治療期間の少なくとも約4倍の間持続する、請求項40に記
載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項42】
呼吸困難における軽減が、治療期間の少なくとも約7倍の間持続する、請求項41に記
載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項43】
前記方法が、被験体の体重も14日間にわたって少なくとも約0.5kg減少させる、
請求項1〜42のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項44】
前記方法が、被験体の死亡または再入院の60日危険性を少なくとも50%減少させる
、請求項1〜43のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項45】
前記方法が心不全または腎不全による再入院の60日危険性を減少させる、請求項44
に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項46】
前記方法が、被験体の心血管死の180日危険性を、少なくとも約50%減少させる、
請求項1〜45のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項47】
前記方法が、全死因死亡の180日危険性を、少なくとも約25%減少させる、請求項
1〜46のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項48】
前記方法が、被験体の入院滞在の長さを、少なくとも1日短縮させる、請求項1〜47
のいずれか一項に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項49】
前記方法が被験体に抗高血圧剤を投与する工程も含む、請求項1〜48のいずれか一項
に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項50】
抗高血圧剤が、血管拡張剤、アドレナリン遮断剤、中枢性α−アゴニスト、アンジオテ
ンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断
剤および利尿剤からなる群より選択される、請求項49に記載の医薬的に活性なH2リラ
キシン。
【請求項51】
利尿剤がフロセミドである、請求項50に記載の医薬的に活性なH2リラキシン。
【請求項52】
ヒト被験体における呼吸困難を治療するための医薬の製造における医薬的に活性なH2
リラキシンの使用。
【請求項53】
ヒト被験体における急性非代償性心不全を治療するための医薬の製造における医薬的に
活性なH2リラキシンの使用であって、前記被験体は急性非代償性心不全および少なくと
も125mmHgの収縮期血圧を有する、前記使用。
【請求項54】
ヒト被験体における急性非代償性心不全を治療するための医薬の製造における医薬的に
活性なH2リラキシンの使用であって、前記被験体は急性非代償性心不全および少なくと
も約20%の左心室駆出率を有する、前記使用。
【請求項55】
(a)ヒト被験体における呼吸困難、
(b)ヒト被験体における急性非代償性心不全であって、前記被験体は、急性非代償性
心不全および少なくとも125mmHgの収縮期血圧を有する、急性非代償性心不全、ま
たは
(c)ヒト被験体における急性非代償性心不全であって、前記被験体は、急性非代償性
心不全および少なくとも約20%の左心室駆出率を有する、急性非代償性心不全
を治療するための医薬の製造における、医薬的に活性なH2リラキシンおよび抗高血圧剤
の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−40174(P2013−40174A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200728(P2012−200728)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2011−509783(P2011−509783)の分割
【原出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(510301987)コーセラ,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】