急性心筋梗塞および関連障害を処置するための方法
本発明は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を、抗線維症効果を有する治療剤(例えば、ピルフェニドンおよびそのアナログ)で処置するための方法に関する。急性心筋梗塞を経験したことがある患者を処置する方法は、該患者に、治療上有効な量の、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を含み、ここで、必要に応じて、上記処置は、上記AMIを経験してから約1〜42日後の期間に開始され、必要に応じて最大3〜6ヶ月間まで続ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年1月26日に出願された、米国仮特許出願第61/147,340号の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、急性心筋梗塞(AMI)および関連障害を経験したことがある患者を、抗線維症効果を有する治療剤(例えば、ピルフェニドンおよびそのアナログ)で処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
米国では、毎年約150万症例の急性心筋梗塞(AMI)が存在し、500,000名を超える死亡が生じる。AMIに起因する死亡のうちの多くは、患者が病院に到着できる前に起こっている。急性冠症候群の処置の最近20年にわたる医学的かつ介入的進歩にも拘わらず、患者は、心筋梗塞後の重大な罹患率および死亡率に直面し続けている。心筋梗塞(MI)後の合併症としては、うっ血性心不全(CHF)および心室頻拍(VT)が挙げられる。
【0004】
上記心臓の収縮は、心臓の洞房結節(天然のペースメーカー)によって発せられる電気的インパルスによって開始される。次いで、上記心臓の電気伝導系は、心筋層、すなわち、心筋に刺激を伝達して、収縮を刺激する。拘束後の構造的組織リモデリングに起因する異常な電導は、心室不整脈において重大な役割を果たし得、これは、突然の心停止および死亡をもたらし得る。組織リモデリングは、一部は、直接的な組織損傷、神経ホルモン活性化、サイトカイン放出、炎症および線維症に起因する。
【0005】
医学的治療剤(心室不整脈を抑制しかつ予防することを目的とした薬物療法を含む)は、これまでは、期待を裏切り続けている。以前の薬剤(クラスIC抗不整脈薬剤を含む)は、予測外にも、冠動脈疾患の状況において催不整脈性(pro−arrhythmic)であり、注意書きをもたらした。現在のMI後薬物療法は、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン(RAA)ブロッカーを含み、これは、心臓リモデリングを改善するが、特異的には線維症を標的としない。本発明の目的は、急性心筋梗塞を処置するための新規な治療剤および治療レジメンを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
線維症を阻害する化合物が、左心室(LV)機能、梗塞サイズ、梗塞周辺線維症、梗塞境界域の電気生理学およびVT誘導性に対して有効な影響を有することが、予測外にも見いだされた。このような化合物が、RAAブロッカーよりも、有害な急性MI後リモデリングのより標的化されかつ有効な阻害を提供することもまた、予測外である。急性MI後の期間における不整脈を予防し、ならびに心臓収縮性を改善し、心機能を改善し、急性MIの合併症(例えば、うっ血性心不全(CHF)および心室頻拍(VT)および心室細動)を低減するための新規な手段が、本明細書で提供される。
【0007】
本発明の理論によって拘束されないが、心外傷に応じた初期線維症は、治癒瘢痕を形成することにおいて重要であると考えられ、梗塞拡大、動脈瘤形成、および心臓穿孔を防止することにおける代償機能として働く。しかし、上記梗塞を超えて、かつ上記梗塞境界域および他の生きている組織の中への遅発性(late−onset)かつ過剰な線維症は、有害な心臓リモデリングを与え得る。心臓線維症は、変化した伝達を引き起こし得、このことは、最終的にリエントリー回路の形成および不整脈原性に罹りやすくする潜在的に波の分裂(wave breaks)を引き起こす不均一な異方性電導(anisotropic conduction)をもたらす。本明細書に記載される結果は、遅発性線維症を阻害することが、急性MI後の状況において適度の有益な効果を提供し得ることを示す。
【0008】
最も広い特徴において、本発明は、心筋梗塞(MI)を経験したことがあるか、またはMIを以前経験したことがないか、または1週間以内にMIを経験している患者を処置するための方法を開示し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。別の局面において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験したことがある患者を処置するための方法を開示し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで必要に応じて、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験した直後に開始され、必要に応じて、最大3〜6週間まで継続される。いくつかの局面において、上記方法は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)に起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである。
【0009】
別の局面において、本発明は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月にわたって継続される。他の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約3〜14日後の期間に開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月にわたって継続される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約5〜10日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約2〜40日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約3〜20日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約4〜15日後に開始される。さらに別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約7日後に開始される。いくつかの実施形態において、上記処置は、少なくとも2週間の期間にわたって継続される。他の実施形態において、開始後の上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約4週間後までの期間にわたって継続される。従って、本発明は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約14日〜4週間後までの患者の処置を包含する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験した患者におけるうっ血性心不全(CHF)の発生率を低下させるための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療上有効な用量は、うっ血性心不全の発生率を低下させ、そして必要に応じて、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。いくつかの局面において、上記患者は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)に起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある。
【0011】
一実施形態において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験したことがある患者において生きている心臓組織を保存するか、または心筋梗塞サイズを制御するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療剤を上記患者に投与する工程は、上記治療剤を投与しなかった患者における梗塞サイズと比較して、平均して、相対的に縮小した梗塞サイズを生じる。いくつかの実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。さらなる実施形態において、上記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、心室頻拍の発生率低下が必要な患者における心室頻拍の発生率を低下させるための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。
【0013】
一実施形態において、本発明は、心室細動の処置もしくは予防の必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での心臓死の発生率と比較して、心臓性突然死の発生率を低下させる。さらに別の実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での心臓リスクと比較して、上記患者の心臓リスクを低減させる。本明細書で使用される場合、用語「心臓リスク」とは、心室頻拍、心臓性突然死、心室細動および/もしくはうっ血性心不全のうちのいずれか1つもしくは組み合わせから生じる心臓の病的状態のリスクを意味する。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、不整脈の制御(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)の必要な患者における不整脈を制御する(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)ための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療剤を投与する工程は、上記患者における不整脈を制御する(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)。いくつかの実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での不整脈の発生率もしくは重篤度と比較して、上記患者における不整脈の発生率もしくは重篤度を低下させる。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記投与は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後に開始される。なおさらなる実施形態において、上記投与は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。他の実施形態において、上記投与する工程は、心室リモデリングを処置する。
【0015】
上記の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記患者は、最初の心筋梗塞(例えば、最初のAMI)を経験したと診断される。すなわち、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を以前に経験したと診断されたことがないか、または上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を以前に経験したことがない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法のうちのいずれかは、必要に応じて、慢性MIと診断された患者の処置を排除する。
【0016】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、組織リモデリングもしくは線維症を低下させる。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記TGF−β経路において前述の効果のうちの1つ以上を示し得、そして/または線維症を低下させ得る。
【0017】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、エンドセリンレセプターアンタゴニストであるか、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするか、またはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記エンドセリンAおよび/もしくはB経路において前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0018】
前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記CTGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0019】
前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、MMPを阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。特定の実施形態において、このような化合物の上記治療上有効な量は、MMP−9もしくはMMP−12を阻害し得る。
【0020】
前述の方法のうちのいずれかのさらに他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、上皮増殖因子レセプター(4)の活性を低下させるか、EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記EGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0021】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記PDGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0022】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させるか、VEGF、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)もしくはVEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)のうちの1種以上を標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記VEGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0023】
前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子に対するレセプターキナーゼを阻害する複数のレセプターキナーゼ(例えば、BIRB−1120)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記VEGF、FGFもしくはPDGFの経路における1種以上のレセプターキナーゼを阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0024】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、インテグリン機能を妨害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、インテグリン機能を阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、αVインテグリンを阻害し得る。他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、インテグリンαVβ6機能を阻害し得る。
【0025】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、IL−4およびIL−13の線維症促進(pro−fibrotic)活性を妨害するか、IL−4レセプター、IL−13レセプターを標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記IL−4および/もしくはIL−13の経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0026】
前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、JAK−STAT経路を介したシグナル伝達を調節する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記JAK−STAT経路を介したシグナル伝達を調節し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0027】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、上皮間葉移行を妨害するか、またはmTorを阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、間葉に対する前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0028】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、銅のレベルを低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、循環および/もしくは組織中の銅レベルを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0029】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、酸化的ストレスを低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、酸化的ストレスを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0030】
前述の方法のうちのいずれかのなおさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、プロリルヒドロラーゼ(prolyl hydrolyse)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、プロリルヒドロラーゼを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0031】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、増殖因子活性化レセプターγ(proliferator−activated receptor−gamma)(PPAR−γ)のアゴニストである。
【0032】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、またはアラキドン酸経路を改変する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記PDE4および/もしくはPDE5の経路を阻害し得るか、または上記アラキドン酸経路を阻害し得るか、そして/あるいは線維症を低下させ得る。
【0033】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記抗線維症効果を有する治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わせられる。前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、上記投与は、経口である。
【0034】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療上有効な量は、総一日用量約50mg〜約2400mgの上記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0035】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回単一用量で投与される。
【0036】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記治療剤は、ピルフェニドン、あるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ:
【0037】
【化1】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素化アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0038】
いくつかの実施形態において、Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素化アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0039】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療剤は、ピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0040】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【0041】
【化2】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、
ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、ZはOであり、そしてR2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである。
【0042】
前述の方法のうちのいずれかのなおさらなる実施形態において、上記患者に投与される治療剤は、以下からなる群より選択される:
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
、表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグ。
【0045】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記患者はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、ピルフェニドン群(点線)が、その駆出率において有意に少ない低下を有し、1週間目から5週間目まで8%しか減少しなかったことを示す。コントロールについての上記駆出率は、24%低下した(実線)。上記ピルフェニドン群は、ピルフェニドン処置ラットが、1週間でより低い駆出率に最初に無作為化されたという事実にも拘わらず(54% 対 60%)、平均駆出率36%を有するコントロールと比較すると、5週間でより高い駆出率45%を有した。
【図2A】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図2B】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図2C】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図3】図3は、コントロールラット(四角)と比較した、ピルフェニドン処置ラット(丸)のより低い伝導不均一性(conduction heterogeneity)に対する傾向を示す。
【図4A】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図4B】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図4C】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図5A】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図5B】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図5C】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図6】図6は、コントロールラット 対 ピルフェニドン処置ラットにおける上記心筋梗塞サイズおよび心筋線維症の量を示す。
【図7】図7は、各マッピングされた表面について勾配が生じる距離にわたって、最も大きな測定された周波数勾配を示す。濃い黒棒は、コントロールを表し、陰影をつけた棒は、うっ血性心不全(CHF)を表し、白棒は、ピルフェニドン(PFD)を表す。
【図8】図8は、VF活性化パターンについての要約した相関係数(XC)データを示す。パネルA-各群について各マッピングされた表面の平均XC値。濃い黒棒は、コントロールを表し、陰影をつけた棒はCHFを表し、白棒は、PFDを表す。パネルB-全ての群についての各VF活性化パターンの平均XC値。パネルC-全ての群についての各VF活性化パターンのXC値の変動係数。
【発明を実施するための形態】
【0047】
ピルフェニドン(PFD)は、経口的に活性な抗線維症薬剤である。ピルフェニドンが、MI後の線維症の特異的かつ強力な低下を示し、心臓リモデリングの不整脈原性の可能性を改善することが、本明細書で実証される。
【0048】
ピルフェニドンは、化学物質名が5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドンである低分子薬物である。これは、分子量185.23ダルトンを有する非ペプチド合成分子である。その化学元素は、C12H11NOとして表され、その構造および合成は公知である。いくつかのピルフェニドン調査新薬物適用(IND)は、米国食品医薬品局により現在、整理記録されている。ヒトでの調査は、継続中であるか、または肺線維症、腎糸球体硬化症、および肝硬変については最近完了した。ピルフェニドンを使用して、良性前立腺肥大、過形成性瘢痕(ケロイド)、および関節リウマチを処置する試みの他の第II相研究があった。
【0049】
ピルフェニドンは、線維症状態(例えば、ヘルマンスキー・パドラック症候群(HPS)、関連する肺線維症および特発性肺線維症(IPF))を経験している患者に対する治療上の利益について調査されている最中である。ピルフェニドンはまた、肺、皮膚、関節、腎臓、前立腺、および肝臓の組織を含む、損傷組織と関連する線維症で見いだされる過剰な瘢痕組織を予防するかもしくは除去する薬理学的能力について調査されている最中である。
【0050】
ピルフェニドンは、種々のサイトカイン(例えば、TNF−α、TGF−β1、bFGF、PDGF、およびEGF)の過剰な生合成もしくは放出を阻害すると報告された(Zhang Sら,Australian and New England J Ophthalmology 26:S74−S76(1998);Cainら,Int’l J Immunopharmacology 20:685−695(1998))。ピルフェニドンはまた、コラーゲン発現を低下させ、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)およびそれらの内因性インヒビター(メタロプロテイナーゼの組織インヒビターすなわちTIMP)のバランスを変化させると報告された。
【0051】
(急性心筋梗塞(AMI))
いくつかの実施形態において、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、心室リモデリングによって引き起こされる状態を処置するための方法が提供され、ここで上記心室リモデリングは、AMIによって引き起こされる。いくつかの実施形態において、上記心室リモデリングは、線維症である。従って、いくつかの実施形態において、AMIを経験したことがある患者における心室リモデリング(例えば、心室線維症)を低下させるための方法が提供される。上記心室リモデリング(例えば、心室線維症)は、上記治療剤の投与の非存在下での心室リモデリングの量(例えば、心室線維症の量)に比較して(例えば、上記治療剤を投与しなかった患者と比較して)、低下する。
【0052】
急性心筋梗塞(AMI)とは、上記冠動脈のうちの1本以上の急性の即座の遮断に起因する、心臓組織の梗塞(損傷もしくは死滅)に言及する。血栓症に起因する冠動脈閉塞(遮断)は、AMIの大部分の症例の原因である。この遮断は、心臓への筋肉壁への血液供給を制限し、しばしば、胸痛、胸の重圧(heavy pressure)、悪心、および息切れ、または左腕のずきずきする痛みのような症状が付随する。急性MIにおいて、冠動脈における血流の重篤な制限が、心筋層への低下した酸素送達、およびその後の炎症反応のカスケード(心筋組織の死滅(梗塞)を生じる)をもたらす。危険な状態にある心筋層への迅速な血流回復は、壊死を制限し得かつ死亡率を低下させ得る。AMIは、心室の供給領域における筋細胞および血管構造の急激な死滅をもたらす。上記梗塞領域における筋細胞、細動脈、および毛細血管の喪失は、不可逆的であり、時間が経つにつれて、瘢痕化組織の形成を生じる。
【0053】
酸素不足に起因する最初の細胞死の後に、続いて起こる急性炎症反応から生じるようである、心筋細胞損傷の後の相が存在する(Entman M.L.ら,1991,FASEB J 5:2529)。最初に、AMIの間の心筋細胞損傷を媒介することにおける炎症反応の重要性は、コルチコステロイドが20〜35%まで梗塞サイズを縮小させ得ることを示す動物研究において認識された(Libby P.ら,1973,J Clin Invest 52:599;Maclean D.ら,1978,J Clin Invest 61:541)。しかし、心筋壊死を最小限にするためのAMIにおけるメチル−プレドニゾロンの臨床適用は、主としては成功しなかった。なぜなら、この処置は、瘢痕形成および治癒を妨害し、動脈瘤および心室壁の破裂の発生をいくらかの患者においてもたらしたからである(Roberts R.ら,1976,Circulation 53 Suppl.I:204)。類似の効果が、ラットでの長期実験で観察された(Maclean D.ら,1978,J Clin Invest 61:541)。これら失望する結果は、AMI後の炎症反応を緩和することによって、梗塞サイズを縮小する目的であった臨床研究の希望をさらにくじいた。
【0054】
AMIを有する患者は、トロポニン、クレアチンキナーゼおよびミオグロビンの特徴的に上昇したレベルによって診断され得る。トロポニンレベルは、MIに関するAmerican College of Cardiology(ACC)/American Heart Association(AHA)コンセンサス声明に従って、MIを定義しかつ診断するにあたって診断基準となる標準と今やみなされている。心臓トロポニンレベル(トロポニン−Tおよびトロポニン−I)は、MIの検出において、心筋クレアチニンキナーゼ(CK−MB)レベルより大きな感度および特異性を有する。それらは、重要な診断的かつ予後診断的(prognostic)役割を有する。正のトロポニンレベルは、この診断における組み合わされた特異性および感度に起因して、最も最近のACC/AHA改訂においてMIの診断とみなされている。血清レベルは、代表的には、胸痛の発生から3〜12時間以内(ピークは、24〜48時間)に増大し、5〜14日間を通してベースラインに戻る。
【0055】
クレアチニンキナーゼは、3種のイソ酵素を含み、これらとしては、筋サブユニット(CK−MM)を有するクレアチニンキナーゼ(これは、主に骨格筋で見いだされる);脳サブユニットを有するクレアチニンキナーゼ(CK−BB)(主に、脳で見いだされる);および心筋クレアチニンキナーゼ(CK−MB)(これは主に心臓で見いだされる)が挙げられる。CK−MBイソ酵素レベルの連続測定は、以前は、MIの診断についての標準的診断基準であった。CK−MBレベルは、代表的には、胸痛が発生してから3〜12時間以内に増大し、24時間以内にピーク値に達し、48〜72時間後にベースラインに戻る。再灌流が生じる場合には、レベルはより早くピークに達する(ウォッシュアウト)。感度は、約95%であり、非常に特異性が高い。しかし、感度および特異性は、トロポニンレベルほどは高くない。
【0056】
尿ミオグロビンレベルは、AMIにおける胸痛の発生から1〜4時間以内に上昇する。ミオグロビンレベルは、非常に感度が高いが、特異的ではなく、それらは、他の研究の状況内で、およびEDにおけるMIの早期検出において.有用であり得る。
【0057】
心電図(ECG)は、MIが疑われる患者の最初の評価および優先順位付けにおいて重要なツールであり得る。症例のうちの約80%において診断は確定的である。MIが考えられるかもしくは疑われる場合に、ECGを直ぐに得ることが、推奨される。下方のMIを有する患者において、右側のECGは、右室(RV)梗塞を排除するために記録される。直立(upright)T波もしくは陰性T波を伴う凸状のSTセグメント上昇は、一般に、適切な臨床実践場面においてMIを示す。ST低下およびT波変化はまた、MIの進展を示し得る(非ST上昇MI)。MIの進行は、ECGを連続的に行うことによって、例えば、最初の2〜3日間、および必要であればさらに、毎日、連続ECGを行うことによって評価され得る。
【0058】
画像化研究は、MIの診断のために、特に、上記診断が疑わしい場合に、有用であり得る。心エコー図は、組織損傷もしくは死滅を示す局所壁運動異常を同定し得る。心エコー図はまた、上記梗塞の程度を規定し得、左室(LV)機能および右室(RV)機能全体を評価し得る。さらに、心エコー図は、合併症(例えば、急性僧帽弁逆流(MR)、LV破裂、もしくは心内膜液浸出)を同定し得る。
【0059】
心筋灌流画像化(Myocardial perfusion imaging)(MPI)は、静脈内投与した放射性医薬を利用して、心筋層における血流の分布を示す。上記心臓における放射性医薬の分布は、γカメラを使用して画像化される。灌流異常、もしくは欠損は、位置、程度および強度に関して評価されかつ定量される。心筋灌流画像化は、梗塞と関連する低下した心筋血流の面積を同定し得る。
【0060】
心臓カテーテル法は、上記患者の冠動脈の解剖的構造、および心血管造影法を介して遮断の程度を規定する。
【0061】
AMIは、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、慢性心筋梗塞から区別され得る。いくつかの実施形態において、上記MI後の細胞膜を横切るエネルギー調節性イオン輸送機構の混乱を伴う心筋浮腫の存在は、AMIを示す(Willersonら,1977,Am J Pathol 87:159-188)。上記発生した瘢痕の比較的大きな細胞外マトリクスは、ガドリニウムベースの造影剤を蓄積させ、DEを生じる。T2強調(T2−weighted)CMRは、梗塞関連心筋浮腫を感度高く検出し(Wisenbergら,1988,Am Heart J.115:510-518;Higginsら,1983,Am J Cardiol 52:184-188;Garcia−Doradoら,1993,Cardiovasc Res 27:1462-1469)、急性MIを慢性MIから区別するために使用され得る。特定の実施形態において、遅延増強(DE)およびT2強調心血管核磁気共鳴法(CMR)の組み合わせは、急性MIを慢性MIから区別するために使用される(Abdel−Atyら,2004,Circulation 109:2411-2416)。
【0062】
(うっ血性心不全(CHF))
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤が上記患者に投与される場合に、うっ血性心不全(CHF)の発生率もしくはCHFの合併症が低下する方法が、提供される。CHFの発生率もしくはCHFの合併症は、上記治療剤の投与の非存在下でのCHFの発生率もしくはCHFの合併症に比較して(例えば、上記治療剤を投与しなかった患者と比較して)、低下する。上記CHFの発生率は、抗線維症効果を有する治療剤が患者に投与される場合、上記治療剤を投与しなかった患者と比較した場合に、少なくとも10%だけ低下し得る。さらなる実施形態において、上記CHFの発生率は、抗線維症効果を有する治療剤が患者に投与される場合、上記治療剤を投与しなかった患者と比較した場合に、少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも35%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%以上、低下し得る。
【0063】
うっ血性心不全の有病率は、集団が年を重ねるにつれて、および心臓病専門医が、うっ血性心不全の最も一般的な原因である虚血性心疾患からの死亡率を低下させることに、より成功するにつれて増大する。米国の約460万人の人々が、65歳の年齢以降に、10/1000に近い発生率で心不全を有する。うっ血性心不全に関する退院は、1979年において377,000名から、1997年において957,000名まで上昇し、うっ血性心不全が、65歳以上の人々の最も一般的な退院時診断になった。うっ血性心不全からの5年死亡率は、50%に近い。
【0064】
CHFは、AMIの合併症であり得、上記心臓のポンプ輸送能の低下から生じる。CHFはまた、心臓奇形(例えば、弁疾患)、もしくは心臓組織に損傷を与える他の障害(例えば、心臓ミオパシー)から生じ得る。1種以上の代償機構の活性化に起因して、CHFによって引き起こされる損傷変化は、上記患者が無症候性のままである間ですら、存在しかつ進行し得る。実際には、CHFの初期相の間に通常の心血管機能を維持する上記代償機構は、例えば、上記心臓および循環に対して有害な効果を発揮することによって、上記疾患の進行の実際に寄与し得る。
【0065】
CHFにおいて生じるより重要な病態生理的変化のうちのいくつかは、視床下部−下垂体−副腎軸の活性化、全身の内皮機能不全および心筋リモデリングである。
【0066】
上記視床下部−下垂体−副腎軸の活性化を打ち消すことに特異的に指向される治療剤としては、β−アドレナリン作用遮断薬(β遮断薬)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、特定のカルシウムチャネル遮断薬、ニトレートおよびエンドセリン−1遮断薬が挙げられる。カルシウムチャネル遮断薬およびニトレートは、臨床的な改善を生じるものの、生存の延長は明らかには示さなかったのに対して、β遮断薬およびACEインヒビターは、アルドステロンアンタゴニストを有する場合、寿命を有意に延ばすことを示した。
【0067】
全身の内皮機能不全は、CHFの十分に認識された特徴であり、左心室機能不全の時間徴候(time sign)が存在することによって明らかに示される。内皮機能不全は、心筋微小循環の、心筋細胞との密接な関係に関して重要である。上記証拠は、微小血管機能不全が、筋細胞機能不全および進行性の心筋不全もたらす形態的変化に顕著に寄与することを示唆する。
【0068】
心筋リモデリングは、無症候性心不全から症候性心不全への移行を伴う複雑なプロセスであり、上記心筋層内で一連の適応変化として記載され得る。心筋リモデリングの構成要素は、線維症、筋細胞の生物学的特徴の変化、壊死もしくはアポトーシスによる筋細胞の喪失、細胞外マトリクスの変化、および左心室の室の形状寸法の変化が挙げられ得る。
【0069】
うっ血性心不全の診断は、最も頻繁には、上記患者の関連する病歴、注意深い身体検査、および選択された検査室試験の所見に基づいた臨床的診断である。症状としては、仰臥位で横になった場合に悪化する呼吸困難(息切れ)、体液うっ滞(fluid retention)ならびに肺および四肢における腫脹(例えば、肺性ラ音もしくは下肢の水腫を伴う)が挙げられる。
【0070】
うっ血性心不全は、心肥大の存在(拡張した心臓)もしくは胸部X線での肺血管鬱血によって、強く示唆される。心電図(ECG)は、前壁Q波もしくは上記心電図上で左脚枝(left bundle branch)ブロックを示し得る。上記心エコー図は、うっ血性心不全を同定するための診断的標準である。上記患者は、ドップラー流研究とともに二次元超音波心臓検査を受ける場合がある。放射性核種血管造影もしくはコントラストシネ血管造影法(contrast cineangiography)は、上記心エコー図がはっきりしない場合に役立ち得る。
【0071】
(生きている心臓組織の保護および梗塞サイズの縮小)
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤が、AMIを経験している患者に投与される場合、上記治療剤の投与の非存在下での生きている心臓組織の量と比較して(例えば、治療剤を投与しなかった患者と比較して)、壊死から心臓組織が保護される方法が、提供される。壊死から保護される心臓組織の上記量は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%増大し得る。生きている心臓組織の増大は、MRIもしくはコンピューター断層撮影(CT)スキャンによって決定され得る。
【0072】
心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小させるための方法もまた、本明細書で提供される。「制御する」もしくは「制御」とは、本明細書で使用される場合、障害を低下させるか、その発生率を低下させるか、またはその進行を予防することを意味する。いくつかの場合において、患者の上記梗塞サイズが、治療剤が上記患者に投与される場合に、上記治療剤の投与の非存在下での患者の上記梗塞サイズと比較して(例えば、治療剤が投与されなかった患者と比較して)縮小される方法が、提供される。上記梗塞サイズは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%縮小し得る。上記梗塞サイズの縮小は、MRIによって、および/もしくは電圧/伝導マッピングによって決定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤がAMIを経験している患者に投与される場合に、上記治療剤の投与の非存在下でのAMIを経験している患者の心機能と比較して(例えば、治療剤を投与されなかった患者と比較して)、心機能が保存されている方法が提供される。心機能の保存は、超音波心臓検査を使用して駆出率を測定することによって決定され得、ここで上記駆出率は、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、もしくは少なくとも15%だけ改善され得る。心臓組織の保存はまた、MRIを使用して、駆出率を測定することによって決定され得、ここで上記駆出率は、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、もしくは少なくとも15%だけ改善され得るか、そして/または上記梗塞サイズは、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%もしくは少なくとも15%だけ縮小され得る。心機能を決定するための他の方法は、当該分野で公知であり、これらとしては、核造影法(nuclear imaging)、機能的能力、運動能力、New York Heart Association(NYHA)機能分類システム、および心筋酸素消費量(MVO2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
(心室頻拍の発生率の低下)
他の場合において、治療剤が上記患者に投与される場合に、上記治療剤を投与しなかった患者における心室頻拍の発生率と比較して、患者における心室頻拍の発生率が低下される方法が提供される。上記心室頻拍の発生率は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。頻脈の発生率の低下は、心電図(ECGもしくはEKG)によって、または心エコー図によって、決定され得る。
【0075】
(心室細動)
いくつかの実施形態において、心室細動の処置もしくは予防の必要な患者において心室細動を処置もしくは予防するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、心室細動の量もしくは程度は、上記治療剤の投与の非存在下での心室細動の量もしくは程度と比較して低下する。
【0076】
心室細動(VF)は、心臓の電気的活動が乱れた状態である。これが起こる場合、心室は、急激なかつ同期化しない様式で収縮する。心室は、拍動するというよりも「振動」し、このことは、心臓がほとんどもしくは全く血液を輸送できなくなる。
【0077】
VFは、生命を脅かすものであり、適切な処置を必要とする。医学的処置がなければ、虚脱および心臓性突然死が生じ得る。心室細動(VF)は、予測できないタイミングで突発的に起こり得、正確な診断を得るための専門の試験を必要とする。
【0078】
VFは、心電図(ECGもしくはEKG)、例えば、ホルターモニター(ホルターモニターは小さく、携帯式の機械で、上記患者のECGを記録し、代表的には、24時間装着される)を使用して診断され得る。このモニターは、安静時に数秒間にわたる心拍を記録するのみである、安静時心電図では現れないかもしれない不整脈を検出し得る。
【0079】
VFはまた、イベントモニター(これは、上記患者が最大1ヶ月間にわたって有し得るページャーの大きさくらいの小さなモニターである)を使用して診断され得る。上記不整脈は、予測できないときに起こり得るので、このモニターは、上記患者が、自身症状を経験しているというシグナルを発する場合に、その異常な律動を記録する。
【0080】
運動ストレスもしくはトレッドミル試験はまた、安静時の心臓の電気的活動とは異なる、運動の間における上記患者の心臓の電気的活動を記録することによって、VFを診断するために使用され得る。
【0081】
VFを診断するための別の方法は、電気生理学研究を介する。電気生理学(EP)研究において、医師は、特別な電極カテーテル(長くて可撓性のワイヤ)を静脈に挿入し、それらを心臓へと導く。これらカテーテルは、電気的インパルスを感知し、また、上記心臓の異なる領域を刺激するために使用され得る。次いで、医師は、不整脈を引き起こす部位を突き止め得る。上記EP研究は、医師が、制御された条件下で不整脈を検査して、任意の他の診断試験より正確で詳細な情報を得ることを可能にする。
【0082】
VFは、例えば、以下の実施例5において記載されるパラメーターのうちのいずれか1つ以上によってモニターおよび測定され得る。いくつかの実施形態において、VFの上記発生率は、上記治療剤を投与しなかった患者におけるVFの発生率と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%だけ低下し得る。
【0083】
(心臓性突然死)
心臓性突然死(突然停止ともいわれる)は、心機能の突然の喪失(心停止)から生じる死亡である。その犠牲者は、心疾患と診断される場合もあるが、そうでない場合もある。死亡の時間および様式は、予測外である。それは、症状が現れてから数分以内に起こる。患者が心停止で突然死亡してしまう最も一般的な、根底にある理由は、冠動脈性心疾患に起因するAMIである。不整脈の他のタイプも、心停止を引き起こし得る。
【0084】
突然死をもたらす心停止のうちの大部分は、病的な心臓における電気的インパルスが急激になる(心室頻拍)か、または無秩序になる(心室細動)か、またはその両方になる場合に起こる。この不規則な心臓律動(不整脈)は、心臓の突然の拍動停止を引き起こす。いくらかの心停止は、心臓が極めて遅くなること(徐脈)に起因する。心停止が心室頻拍もしくは心室細動に起因した場合、生存者は、特に彼らが根底に心疾患を有する場合には、別の停止についてのより高いリスクの状態にある、。
【0085】
従って、いくつかの場合においては、心臓性突然死が、抗線維症効果を有する治療剤が上記患者に投与される場合に、治療剤を投与しなかった患者における心臓死の発生率と比較して、低下する方法が提供される。心臓性突然死の発生率は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。
【0086】
(不整脈)
本発明の方法は、抗線維症効果を有する治療剤を投与することによって、不整脈を制御することが企図される。いくつかの実施形態において、不整脈の発生率もしくは不整脈のリスクを低下させるための方法が提供される。上記発生率もしくはリスクは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。
【0087】
不整脈は、異常な心臓律動である。不整脈では、心拍は、遅すぎるか、速すぎるか、不規則でありすぎるか、または余りにも早すぎる場合がある。不整脈には多くのタイプがあり、これらとしては、心房性期外収縮(心房(心臓の上側の室)で発生する初期の余分な収縮)、心室性期外収縮(PVC)(心拍がとぶ)、心房細動(心房(心臓の上側の室)の異常収縮を引き起こす不規則な心臓律動)、心房粗動(心房における1以上の急速回路によって引き起こされる不整脈)、発作性上室性頻拍(PSVT)(通常は、規則的な律動で、心室の上から発生する急速な心拍数)、副経路頻脈(accessory pathway tachycardia)(心房と心室との間の余分な異常な経路もしくは接続に起因する急速な心拍数)、房室結節性リエントリー性頻拍(AV結節を介した1つより多い経路に起因する急速な心拍数)、心室頻拍(VT)(心臓の下側の室(もしくは心室)から生じる急速な心臓律動)、心室細動(心室からの不規則で迷走性のインパルスの興奮)、徐脈性不整脈(心臓の電気伝導系における疾患から生じ得る遅い心臓律動)、および/またはQT延長症候群(QT間隔は、心筋が収縮し、次いで、回復する、すなわち、電気的インパルスがインパルスを興奮させ、次いで回復にかかる時間を表す心電図(ECG)上の面積である)が挙げられる。上記QT間隔が通常より長い場合、「先端のねじれ(torsade de pointes)」(心室頻拍の生命を脅かす形態)のリスクが増す。
【0088】
不整脈の症状としては、胸痛、失神、速いもしくは遅い心拍数(心悸亢進)、意識朦朧、眩暈、蒼白、息切れ、心拍数のとび、脈拍パターンの変化、および発汗が挙げられる。不整脈は、心電図、ホルターモニター、イベントモニター、ストレス試験、心エコー図、心臓カテーテル法、電気生理学研究(EPS)、および頭を上にした体位変換台試験(head−up tilt table test)のような方法を使用して、当業者によって診断され得る。
【0089】
不整脈を制御するために有効な治療剤の量は、(例えば、動物モデルにおいてまたは臨床試験の間に)心室リモデリングを低下させるに有効な量であり得る。心室リモデリングとは、左心室への傷害後に、心臓の大きさ、形状、および機能における変化に言及する。上記傷害は、代表的には、AMIに起因する。いくつかの実施形態において、上記心室リモデリングは、AMIによって引き起こされる心室線維症に起因する。上記リモデリングプロセスは、最初の梗塞領域が徐々に拡大し、左心室内腔が拡大し、心室壁における線維性組織沈着によって心筋細胞が置換されることによって特徴付けられる(Kocherら,2001,Nature Medicine 7(4):430−6)。リモデリングプロセスの別の不可欠な要素は、心筋の梗塞性瘢痕内での血管新生(neoangiogenesis)の発生(潜伏性のコラゲナーゼおよび他のプロテイナーゼの活性化を必要とするプロセス)である。通常の環境下では、梗塞床毛細管ネットワークへの血管新生の寄与は、収縮性の代償に必要とされる組織増殖と歩調を合わせるには不十分であり、肥厚しているが、生きている心筋層のより大きな要求を支援することはできない。肥厚した筋細胞への酸素および栄養素の相対的不足は、進行性の梗塞拡大および線維性置換を生じる、別の方法で生きている心筋層の死滅において重要な原因論的な因子であり得る。ヒトおよび動物モデルの両方における梗塞血管床の後期再灌流は、心室リモデリングおよび生存に顕著に有益であることが公知である(Kocherら,2001,Nature Medicine 7(4):430−6)。
【0090】
(治療剤)
開示される方法で使用される治療剤は、線維症に影響を及ぼす任意の治療剤であり得る。企図される薬剤としては、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させる薬剤(GC−1008(Genzyme/MedImmune)が挙げられるが、これらに限定されない);レルデリムマブ(lerdelimumab)(CAT−152;Trabio,Cambridge Antibody);メテリムマブ(metelimumab)(CAT−192,Cambridge Antibody,);LY−2157299(Eli Lilly);ACU−HTR−028(Opko Health))(1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とする抗体、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)およびTGFBR2のインヒビター、ならびにポストレセプターシグナル伝達経路の調節因子を含む));ケモカインレセプターシグナル伝達;エンドセリンレセプターアンタゴニスト(エンドセリンレセプターAおよびBの両方を標的とするインヒビター、およびエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするインヒビター(アンブリセンタン;アボセンタン;ボセンタン;クラゾセンタン;ダルセンタン;BQ−153;FR−139317、L−744453;マシテンタン;PD−145065;PD−156252;PD163610;PS−433540;S−0139;シタセンタンナトリウム(sitaxentan sodium);TBC−3711;ジボテンタンが挙げられるが、これらに限定されない)を含む);結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる薬剤(FG−3019,FibroGenが挙げられるが、これらに限定されない)、また、他のCTGF中和抗体を含む;マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)インヒビター(MMPI−12、PUP−1およびチガポチドトリフルテート(tigapotide triflutate)が挙げられるが、これらに限定されない);上皮増殖因子レセプター(EGFR)の活性を低下させる薬剤(エルロチニブ、ゲフィチニブ、BMS−690514、セツキシマブ、EGFレセプターを標的とする抗体、EGFレセプターキナーゼのインヒビター、およびポストレセプターシグナル伝達経路の調節因子が挙げられるが、これらに限定されない);血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させる薬剤(イマチニブメシレート(Novartis)が挙げられるが、これらに限定されない)、PDGF中和抗体、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とする抗体、PDGFRキナーゼ活性のインヒビター、およびポストレセプターシグナル伝達経路も含む;血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させる薬剤(アキシチニブ、ベバシズマブ、BIBF−1120、CDP−791、CT−322、IMC−18F1、PTC−299、およびラムシルマブが挙げられるが、これらに限定されない)、ならびにVEGF中和抗体、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)およびVEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)を標的とする抗体、VEGFを中和するVEGFR1の可溶性形態(sFlt)およびその誘導体、ならびにVEGFレセプターキナーゼ活性のインヒビターも含む;複数のレセプターキナーゼのインヒビター(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子についてのレセプターキナーゼを阻害するBIBF−1120);インテグリン機能を妨害する薬剤(STX−100およびIMGN−388が挙げられるが、これらに限定されない)およびインテグリン標的化抗体も含む;IL−4の線維症促進活性を妨害する薬剤(AER−001、AMG−317、APG−201、およびsIL−4Rαが挙げられるが、これらに限定されない)およびIL−13(AER−001、AMG−317、アンルキンズマブ(anrukinzumab)、CAT−354、シントレデキン(cintredekin) べスドトクス(besudotox)、MK−6105、QAX−576、SB−313、SL−102、およびTNX−650が挙げられるが、これらに限定されない)およびいずれかのサイトカインに対する中和抗体、IL−4レセプターもしくはIL−13レセプターを標的とする抗体、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体(これは、IL−4およびIL−13の両方に結合しかつ中和すると報告される)、IL−13の全てもしくは一部および毒素(特に、シュードモナス内毒素)を含むキメラタンパク質、JAK−STATキナーゼ経路を介するシグナル伝達も含む;上皮間葉移行を妨害する薬剤(mTorのインヒビター(AP−23573が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる);銅レベルを低下させる薬剤(例えば、テトラチオモリブデート);酸化的ストレスを低下させる薬剤(N−アセチルシステインおよびテトラチオモリブデートが挙げられる);ならびにインターフェロンγが挙げられる。ホスホジエステラーゼ4(PDE4)のインヒビター(Roflumilastが挙げられるが、これらに限定されない);ホスホジエステラーゼ5(PDE5)のインヒビター(ミロデナフィル、PF−4480682、シルデナフィルシトレート、SLx−2101、タダラフィル、ウデナフィル、UK−369003、バルデナフィル、およびザプリナストが挙げられるが、これらに限定されない);またはアラキドン酸経路の改変因子(シクロオキシゲナーゼインヒビターおよび5−リポキシゲナーゼインヒビター(Zileutonが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)である薬剤もまた、企図される。組織リモデリングもしくは線維症を低下させる化合物(プロリルヒドロラーゼインヒビター(1016548、CG−0089、FG−2216、FG−4497、FG−5615、FG−6513、フィブロスタチンA(Takeda)、ルフィロニル、P−1894B、およびサフィロニルが挙げられるが、これらに限定されない)およびペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)−γアゴニスト(ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)がさらに企図される。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記で定義される式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)は、以下:
【0092】
【化5】
またはピルフェニドンまたは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは(V)の化合物の薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり、ここで
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素化アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0093】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、独立して、必要に応じて置換されたピラジニル、必要に応じて置換されたピリダジニル、必要に応じて置換されたピロリル、必要に応じて置換されたチオフェニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたイミダゾリル、必要に応じて置換されたイソオキサゾリル、必要に応じて置換されたピラゾリル、必要に応じて置換されたイソチアゾリル、必要に応じて置換されたナフチル(napthyl)、必要に応じて置換されたキノリニル、必要に応じて置換されたイソキノリニル、必要に応じて置換されたキノキサリニル、必要に応じて置換されたベンゾチアゾリル、必要に応じて置換されたベンゾチオフェニル、必要に応じて置換されたベンゾフラニル、必要に応じて置換されたインドリル、もしくは必要に応じて置換されたベンゾイミダゾリルである。
【0094】
いくつかの場合において、上記治療剤は、式(II)の化合物であって、ここでX3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、ZはOであり、そしてR2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルであるものである。
【0095】
式(II)のいくつかの具体的な企図された化合物としては、以下が挙げられる:
【0096】
【化6】
【0097】
【化7】
以下の表1に列挙される化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグ。
【0098】
企図される他の具体的な治療剤としては、リラキシン、ウフィロニル(ufironil)、スリホニル(surifonil)、TGF−β抗体、CAT−192、CAT−158;アンブリセンタン(ambresentan)、セリン(thelin);FG−3019、CTGF抗体;抗EGFR抗体;EGFRキナーゼインヒビター;タルセバ;ゲフィチニブ;PDGF抗体、PDGFRキナーゼインヒビター;グリベック;BIBF−1120、VEGF、FGF、およびPDGFレセプターインヒビター;抗インテグリン抗体;IL−4抗体;テトラチオモリブデート、銅キレート化剤;インターフェロン−γ;NAC、システインプロドラッグ;肝細胞増殖因子(HGF);KGF;アンジオテンシンレセプター遮断薬(angiotension receptor blocker)、ACEインヒビター、レニンインヒビター;COXおよびLOインヒビター;ジロイトン(Zileuton);モンテルカスト(monteleukast);アバスチン;スタチン;PDE5インヒビター(例えば、シルデナフィル、ウデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、もしくはザプリナスト);ロフミラスト(rofumilast);エタネルセプト(Enbrel);凝固促進因子(procoagulant);プロスタグランジン(例えば、PGE2、PRX−08066、5HT2Bレセプターアンタゴニスト);シントレデキン(cintredekin) ベスドトクス(besudotox)、遺伝子操作されたPseudomonas外毒素に結合体化されたキメラヒトIL13;ロフルミラスト、PDE4インヒビター;FG−3019、抗結合組織増殖因子ヒトモノクローナル抗体;GC−1008、TGF−βヒトモノクローナル抗体;トレプロスチニル、プロスタサイクリンアナログ;インターフェロン−α;QAX−576、IL13調節因子;WEB 2086、PAF−レセプターアンタゴニスト;イマチニブメシレート;FG−1019;スラミン;ボセンタン;IFN-1b;抗IL−4;抗IL−13;タウリン、ナイアシン、NF−κBアンチセンスオリゴヌクレオチド;ならびに一酸化窒素シンターゼインヒビターが挙げられる。ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)−γアゴニスト(ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない)もまた、企図される。
【0099】
本明細書で使用される用語「アルキル」とは、1〜10個の炭素原子の飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。1〜6個の炭素原子のアルキルもまた、企図される。用語「アルキル」は、「架橋アルキル」、すなわち、二環式もしくは多環式の炭化水素基(例えば、ノルボルニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、もしくはデカヒドロナフチルが挙げられる。アルキル基は、必要に応じて、例えば、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびアミノで置換され得る。本明細書に記載されるアナログにおいて、上記アルキル基は、1〜40個の炭素原子、好ましくは、1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜15個の炭素原子、好ましくは、1〜12個の炭素原子、好ましくは、1〜10個の炭素原子、好ましくは、1〜8個の炭素原子、および好ましくは、1〜6個の炭素原子からなることが具体的に企図される。「ヘテロアルキル」は、上記ヘテロアルキルが、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むことを除いて、アルキルとして同様に定義される。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」とは、環式炭化水素基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、およびシクロペンチル)をいう。「ヘテロシクロアルキル」とは、上記環が、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含むことを除いて、シクロアルキルとして同様に定義される。ヘテロシクロアルキル基の非限定的例としては、ピペリジン(piperdine)、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロフラン、モルホリン、チオフェンなどが挙げられる。シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基は、例えば、アルキル、アルキレンOH、C(O)NH2、NH2、オキソ(=O)、アリール、ハロアルキル、ハロ、およびOHからなる群より独立して選択される1〜3個の基で必要に応じて置換された飽和もしくは部分的に不飽和の環系であり得る。ヘテロシクロアルキル基は、必要に応じて、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキレンアリール、もしくはアルキレンヘテロアリールでさらにN−置換され得る。
【0101】
本明細書で使用される用語「アルケニル」とは、少なくとも1個の炭素二重結合を含む2〜10個の炭素原子の直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基(1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。
【0102】
本明細書で使用される用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨードをいう。
【0103】
本明細書で使用される用語「アルキレン」とは、置換基を有するアルキル基に言及する。例えば、用語「アルキレンアリール」とは、アリール基で置換されたアルキル基をいう。上記アルキレン基は、任意選択のアルキル置換基として先に列挙された1個以上の置換基で必要に応じて置換されている。例えば、アルキレン基は、−CH2CH2−であり得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニレン」とは、上記基が、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むことを除いて、「アルキレン」と同様に定義される。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」とは、単環式もしくは多環式の芳香族基、好ましくは、単環式もしくは二環式の芳香族基、例えば、フェニルもしくはナフチルをいう。別段示されなければ、アリール基は、置換されていないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される1個以上の、および特に、1〜4個の基で置換され得る。例示的アリール基としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、1個もしくは2個の芳香族環を含みかつ芳香族環中に少なくとも1個の窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む単環式もしくは二環式の環系をいう。別段示されなければ、ヘテロアリール基は、置換されていないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される1個以上の、および特に1〜4個の置換基で置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書で使用される用語「重水素化アルキル」とは、1個以上の重水素原子(D)で置換されたアルキル基をいう。
【0108】
本明細書で使用される用語「チオアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のチオ基に言及する。
【0109】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のヒドロキシ基に言及する。
【0110】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」とは、−−O−−結合を介して親分子に共有結合された直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基に言及する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で使用される用語「アルコキシアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のアルコキシ基に言及する。
【0112】
本明細書で使用される用語「アリールアルコキシ」とは、アリールがアルコキシ基に付加された基をいう。アリールアルコキシ基の非限定的例は、ベンジルオキシ(Ph−CH2−O−)である。
【0113】
用語「アミノ」とは、本明細書で使用される場合、-NR2であって、ここでRは、独立して、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。アミノ基の非限定的例としては、NH2およびN(CH3)2が挙げられる。いくつかの場合において、Rは、独立して、水素もしくはアルキルである。
【0114】
用語「アミド」とは、本明細書で使用される場合、-C(O)NH2、-C(O)NR2、-NRC(O)Rもしくは-NHC(O)Hであって、ここで各Rは、独立して、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、上記アミド基は、-NHC(O)アルキルもしくは-NHC(O)Hである。アミド基の非限定的例としては、-NHC(O)CH3である。
【0115】
本明細書で使用される用語「カルボキシ」もしくは「カルボキシル」とは、-COOHもしくはその脱プロトン化形態-COO−をいう。C1−10カルボキシとは、カルボキシ部分を有する、必要に応じて置換されたアルキルもしくはアルケニル基をいう。例としては、-CH2COOH、−CH2CH(COOH)CH3、および-CH2CH2CH2COOHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「アルコキシカルボニル」とは、-(CO)-O−アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものをいう。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
用語「アルキルカルボニル」とは、-(CO)−アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものをいう。アルキルカルボニル基の例としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
用語「スルホンアミド」とは、-SO2NR2であって、ここでRは、独立して、水素、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、上記スルホンアミド基は、-SO2NR2であって、ここでRは、独立して、水素もしくは必要に応じて置換されたアルキルであるものである。スルホンアミド基の例としては、−SO2N(CH3)2および-SO2NH2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
用語「スルホニル」とは、-SO2Rであって、ここでRは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、スルホニル基は、-SO2アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものである。スルホニル基の一例は、メチルスルホニル(例えば、−SO2CH3)である。
【0120】
用語「スルホキシル」とは、-SORであって、ここで各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。スルホニル基の一例は、メチルスルホニル(例えば、−SOCH3)である。
【0121】
炭水化物は、ポリヒドロキシアルデヒドもしくはケトン、または加水分解の際にこのような化合物を生じる物質である。炭水化物は、元素の、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)(炭素および酸素のものの2倍の水素比を有する)を含む。それらの基本形態において、炭化水素は、単純糖(simple sugar)もしくはモノサッカリドである。これら単純糖は、互いに合わされて、より複雑な炭化水素を形成し得る。2個の単純糖の組み合わせは、ジサッカリドである。2〜10個の単純糖からなる炭水化物は、オリゴサッカリドといわれ、より多くの数を有するものは、ポリサッカリドといわれる。
【0122】
用語「ウロニド」とは、カルボキシル基を上記環の一部でない炭素上に有するモノサッカリドをいう。上記ウロニドの名称は、上記モノサッカリドの根を保持するが、上記のオースという糖の接尾辞は、ウロニドに変化させられる。例えば、グルクロニドの構造は、グルコースに対応する。
【0123】
本明細書で使用される場合、ラジカルは、単一の、不対電子を有する種を示し、その結果、上記ラジカルを含む種が、別の種に共有結合し得る。従って、この状況において、ラジカルは、必ずしもフリーラジカルでなくてもよい。むしろ、ラジカルは、より大きな分子の特定の部分を示す。用語「ラジカル」とは、用語「基」と交換可能に使用され得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、置換された基は、1個以上の水素原子を別の原子もしくは基と交換した、置換されていない親構造から得られる。「置換基」とは、本明細書で使用される場合、以下の部分から選択される基を意味する:
(A)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(B)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール、これらは、以下から選択される少なくとも1個の置換基で置換されている:
(i)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(ii)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール、これらは、以下から選択される少なくとも1個の置換基で置換されている:
(a)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(b)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール(これらは、−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチルから選択される少なくとも1個の置換基で置換されている)。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記置換基は、「大きさが制限された置換基(size−limited substituent)」もしくは「大きさが制限された置換基(size−limited substituent group)」であり、これらは、「置換基(substituent group)」について上記に記載される置換基(substituent)のうちの全てから選択される基であって、ここで各置換されているかもしくは置換されていないアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC1−C20アルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない2〜20員のヘテロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC4−C8シクロアルキルであり、そして各置換されているかもしくは置換されていないヘテロシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない4〜8員のヘテロシクロアルキルであるものをいう。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記置換基は、「低級置換基(lower substituent)」もしくは「低級置換基(lower substituent group)」であり、これらは、「置換基」について上記で記載される置換基のうちのすべてから選択される基であって、ここで各置換されているかもしくは置換されていないアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC1−C8アルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない2〜8員のヘテロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC5−C7シクロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない5〜7員のヘテロシクロアルキルであるものをいう。
【0127】
いくつかの場合において、上記置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、縮合アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、およびアミノ(モノ置換およびジ置換されたアミノ基を含む)、ならびにこれらの保護された誘導体から個々にかつ独立して選択される1個以上の基である。
【0128】
上記置換基の保護誘導体を形成し得る保護基は、当業者に公知であり、参考文献(例えば、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis;3rd Edition,John Wiley and Sons:New York,2006)において見いだされ得る。置換基が、「必要に応じて置換された」と記載される場合はどこでも、その置換基は、上記の置換基で置換され得る。
【0129】
不斉炭素原子が存在し得る。全てのこのような異性体(ジアステレオマ−およびエナンチオマー、ならびにこれらの混合物が挙げられる)は、本明細書の開示の範囲に含まれることが意図される。特定の場合において、化合物は、互変異性形態で存在し得る。全ての互変異性形態は、本明細書の開示の範囲に含まれることが意図される。同様に、化合物がアルケニルもしくはアルケニレン基を含む場合、上記化合物のシス異性形態およびトランス異性形態で存在する可能性がある。シス異性体およびトランス異性体、ならびにシス異性体とトランス異性体との混合物の両方が、意図される。
【0130】
開示される方法で使用され得る化合物は、米国特許公開第2007/0049624号(WO 05/0047256の米国国内段階)、国際公開WO 03/068230、WO 08/003141、WO 08/157786、もしくは米国特許第5,962,478号;同第6,300,349号;同第6,090,822号;同第6,114,353号;再発行第40,155号;米国特許第6,956,044号;もしくは同第5,310,562号に記載されるものを含む。上記開示される方法で使用される化合物の合成は、当該分野で公知の任意の手段(本明細書で列挙される特許および特許公開に記載されるものが挙げられる)によるものであり得る。他の合成手段が使用され得、当業者の知識の範囲内であり得る。
【0131】
上記開示される方法で使用することが企図される化合物の1つのクラスは、本明細書で開示される化合物のうちのいずれかの重水素化(D)形態である。1つの具体的なこのような化合物は、ピルフェニドンのメチルもしくは水素のうちのいずれかまたは全てを置換するために、CD3部分および/もしくはDを有する化合物である。例としては、以下が挙げられる:
【0132】
【化8】
これら化合物の合成は、国際特許公開番号WO 08/157786に見いだされ得る。
【0133】
式(I)、式(II)、式(III)、もしくは式(IV)のいくつかの具体的化合物は、表1に列挙される。これら化合物の合成の説明は、米国仮特許出願第61/058,436号(2008年6月3日出願)および同第61/074,446号(2008年6月20日出願)(これらの開示は、各々本明細書に参考として援用される)において見いだされ得る。
【0134】
【表1−1】
【0135】
【表1−2】
【0136】
【表1−3】
【0137】
【表1−4】
【0138】
【表1−5】
【0139】
【表1−6】
【0140】
【表1−7】
【0141】
【表1−8】
【0142】
【表1−9】
【0143】
【表1−10】
【0144】
【表1−11】
【0145】
【表1−12】
【0146】
【表1−13】
【0147】
【表1−14】
【0148】
【表1−15】
【0149】
【表1−16】
【0150】
【表1−17】
【0151】
【表1−18】
【0152】
【表1−19】
【0153】
【表1−20】
【0154】
【表1−21】
【0155】
【表1−22】
【0156】
【表1−23】
【0157】
【表1−24】
【0158】
【表1−25】
【0159】
【表1−26】
【0160】
【表1−27】
【0161】
【表1−28】
【0162】
【表1−29】
【0163】
【表1−30】
【0164】
【表1−31】
式(I)、式(II)、式(III)、もしくは式(IV)の他の具体的化合物としてはまた、以下の化合物が挙げられる。
【0165】
【化9】
【0166】
【化10】
【0167】
【化11】
【0168】
【化12】
上記開示される方法において使用することが企図された他の化合物としては、以下の属I’、属II’、属III’、および属IV’の化合物が挙げられる。属I’、属II’、属III’、および属IV’の化合物の合成は、国際特許公開番号WO 07/062167(その全体が本明細書に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0169】
【化13】
ここでR’、R2’、R3’、R4’およびR6’の各々は、H、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたC1−6アルキル、必要に応じて置換されたC3−7シクロアルキル、必要に応じて置換されたC4−10アルキルシクロアルキル、必要に応じて置換されたC2−6アルケニル、必要に応じて置換されたC1−6アルコキシ、必要に応じて置換されたC6もしくは10アリール、必要に応じて置換されたピリジニル、必要に応じて置換されたピリミジニル、必要に応じて置換されたチエニル、必要に応じて置換されたフラニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたフェノキシ、必要に応じて置換されたチオフェノキシ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換された尿素、必要に応じて置換されたチオ尿素、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたケト、必要に応じて置換されたカルボキシル、必要に応じて置換されたカルバミル、必要に応じて置換されたスルフィド、必要に応じて置換されたスルホキシド、必要に応じて置換されたスルホン、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたアルコキシアミノ、必要に応じて置換されたアルキルオキシヘテロシクリル(alkyoxyheterocyclyl)、必要に応じて置換されたアルキルアミノ、必要に応じて置換されたアルキルカルボキシ、必要に応じて置換されたカルボニル、必要に応じて置換されたスピロ環式シクロアルキル、必要に応じて置換されたピラジニル、必要に応じて置換されたピリダジニル、必要に応じて置換されたピロリル、必要に応じて置換されたチオフェニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたイミダゾリル、必要に応じて置換されたイソオキサゾリル、必要に応じて置換されたピラゾリル、必要に応じて置換されたイソチアゾリル、必要に応じて置換されたナフチル(napthyl)、必要に応じて置換されたキノリニル、必要に応じて置換されたイソキノリニル、必要に応じて置換されたキノキサリニル、必要に応じて置換されたベンゾチアゾリル、必要に応じて置換されたベンゾチオフェニル、必要に応じて置換されたベンゾフラニル、必要に応じて置換されたインドリル、および必要に応じて置換されたベンゾイミダゾリル、またはこれらの薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグからなる群より独立して選択される。
【0170】
上記開示される治療剤の塩、例えば、薬学的に受容可能な塩は、適切な塩基もしくは酸と、上記治療剤の化学量論的相当量とを反応させることによって調製され得る。同様に、上記治療剤の薬学的に受容可能な誘導体(例えば、エステル)、代謝産物、水和物、溶媒和物およびプロドラッグは、当業者に一般に公知の方法によって調製され得る。従って、別の実施形態は、活性化合物のプロドラッグである化合物を提供する。一般に、プロドラッグは、インビボで代謝され(例えば、代謝的変換(例えば、脱アミノ化、脱アルキル化、脱エステル化などによって)て、活性化合物を提供する化合物である。「薬学的に受容可能なプロドラッグ」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などがなしで、患者における薬学的使用に適しており、意図された使用について有効である化合物(上記治療剤の薬学的に受容可能なエステル、ならびに可能であれば、双性イオン形態が挙げられる)を意味する。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なエステル」とは、インビボで加水分解するエステルに言及し、これらとしては、ヒトの身体中で容易に分解されて、上記親化合物もしくはその塩を放出するものが挙げられる。適切なエステル基としては、例えば、薬学的に受容可能な脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から得られるものが挙げられ、ここで各アルキルもしくはアルケニル部分は、有利には、6個以下の炭素原子を有する。特定のエステルの代表的な例としては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、アクリレートおよびエチルスクシネートが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なプロドラッグタイプの例は、A.C.S.Symposium SeriesのHiguchiおよびStella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14、およびRoche編,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(これらは共に本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0171】
本明細書に記載される化合物および組成物はまた、代謝産物を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「代謝産物」とは、開示された治療剤に類似の活性をインビトロもしくはインビボで示す、上記実施形態の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、アナログもしくは誘導体の代謝の生成物を意味する。本明細書に記載される化合物および組成物はまた、水和物および溶媒和物を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」とは、溶質(本明細書では、上記治療剤)および溶媒によって形成される複合体をいう。上記実施形態の目的のためのこのような溶媒は、好ましくは、上記溶質の生物学的活性を否定的に妨害するべきでない。溶媒は、例示すると、水、エタノールもしくは酢酸であり得る。前述に鑑みると、特定の化合物もしくは化合物の属に対する本明細書における言及は、上記に記載される種々の形態(その薬学的に受容可能な塩、エステル、プロドラッグ、代謝産物および溶媒和物を含む)を含むことが理解される。
【0172】
(投薬および薬学的処方物)
用語「治療上有効な量」および「予防上有効な量」とは、本明細書で使用される場合、同定された疾患もしくは状態を処置、改善もしくは予防するか、または検出可能な治療効果、予防効果、もしくは阻害効果を示すのに十分な化合物の量をいう。上記効果は、例えば、臨床状態の改善、症状の軽減によって、または本明細書に記載されるアッセイもしくは臨床的診断試験のうちのいずれかによって、検出され得る。被験体に関する正確な有効量は、上記被験体の体重、大きさ、および健康状態;状態の性質および程度;ならびに投与のために選択された上記治療剤もしくは治療剤の組み合わせに依存する。所定の状況に関する治療上および予防上有効な量は、臨床家の技術および判断内である慣用的実験によって決定され得る。
【0173】
本明細書で開示される治療剤は、合計量約50〜約2400mg/日で投薬され得る。上記投与量は、その日にわたって2用量もしくは3用量へ分割され得るか、または単一の1日用量で与えられ得る。上記開示される方法について企図される治療剤の合計1日量の具体的な量としては、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約267mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約534mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1068mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1335mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1869mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2136mg、約2150mg、約2200mg、約2250mg、約2300mg、約2350mg、および約2400mgが挙げられる。
【0174】
上記治療剤の投与量は、代わりに、mg/kg単位で測定される用量として投与され得る。上記開示される治療剤の意図されるmg/kg用量としては、約1mg/kg〜約60mg/kgが挙げられる。用量(mg/kg単位)の具体的な範囲としては、約1mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約20mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約25mg/kg〜約50mg/kg、および約30mg/kg〜約60mg/kgが挙げられる。
【0175】
上記患者がAMIを経験したことがある方法において、上記治療剤の投与は、上記AMIを経験して1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、28日後、29日後、30日後、31日後、32日後、33日後、34日後、35日後、36日後、37日後、38日後、39日後、40日後、41日後、もしくは42日後に開始され得る。上記AMIを経験して約1〜40日後、約1〜30日後、約1〜25日後、約1〜20日後、約1〜14日後、約1〜10日後、約2〜40日後、約3〜40日後、約3〜38日後、約3〜30日後、約3〜25日後、約3〜20日後、約3〜15日後、約3〜14日後、約3〜10日後、約4〜36日後、約4〜30日後、約4〜25日後、約4〜20日後、約4〜14日後、約5〜40日後、約5〜34日後、約5〜30日後、約5〜25日後、約5〜20日後、約5〜14日後、約6〜40日後、約6〜32日後、約6〜30日後、約6〜25日後、約6〜20日後、約6〜14日後、約7〜40日後、約7〜30日後、約7〜25日後、約7〜20日後、約7〜14日後、約8〜28日後、約9〜26日後、約10〜24日後、約12〜22日後、約13〜20日後、もしくは約14〜18日後の処置の開始もまた、企図される。処置、例えば、上記治療剤の継続投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも6週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、もしくは少なくとも1年にわたって続き得る。例えば、上記処置は、最大3ヶ月、最大4ヶ月、最大5ヶ月、もしくは最大6ヶ月の間であり得る。いくつかの実施形態において、AMIを経験している患者は、上記AMIを経験して最大4週間後の期間にわたって上記治療剤が投与され続ける。例えば、上記治療剤は、上記AMIを経験してから2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、および/もしくは28日後である日に、投与され続ける。
【0176】
本明細書の他の箇所で記載される場合、本明細書で記載される化合物は、薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、もしくは希釈剤とともに薬学的組成物中に処方され得る。上記化合物、もしくは上記化合物を含む組成物は、上記疾患もしくは状態の処置を可能にする任意の経路によって投与され得る。好ましい投与経路は、経口投与である。さらに、上記化合物、もしくは上記化合物を含む組成物は、任意の標準的投与経路(非経口(例えば、静脈内、腹腔内、肺内、皮下もしくは筋肉内、髄腔内、経皮的、直腸、経口、鼻もしくは吸入による)が挙げられる)を使用して患者に送達され得る。遅延放出処方物はまた、胃腸管中で体液と接触した状態で上記活性薬剤の制御された放出を達成するために、および血漿中で上記活性薬剤の実質的に一定かつ有効なレベルを提供するために、本明細書で記載される薬剤から調製され得る。その結晶形態は、生分解性ポリマー、水溶性ポリマー、もしくはこれらの混合物、および必要に応じて、適切な界面活性剤のポリマーマトリクス中に、この目的のために埋め込まれ得る。埋め込みは、この状況においては、ポリマーのマトリクス中に微粒子を組み込むことを意味する。制御放出処方物はまた、公知の分散技術もしくはエマルジョンコーティング技術を介して、分散された微粒子もしくは乳化された微小液滴の封じ込めを介して得られる。
【0177】
投与は、単一用量投与の形態をとり得るか、または上記実施形態の化合物は、一定期間にわたって、分割用量もしくは連続放出処方物のいずれかで、または投与法(例えば、ポンプ)で投与され得る。上記実施形態の化合物が上記被験体に投与されるが、投与される化合物の量および選択される投与経路は、上記疾患状態の有効な処置を可能にするように選択されるべきである。
【0178】
一実施形態において、上記薬学的組成物は、特定の投与様式および投与形態に依存して、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、キャリア、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤など)とともに処方され得る。上記薬学的組成物は、一般に、生理学的に適合性のpHを達成するために処方されるべきであり、上記処方物および投与経路に依存して、pH約3〜pH約11、好ましくは、約pH3〜約pH7の範囲に及び得る。代替の実施形態において、上記pHが、約pH5.0〜約pH8の範囲に調整されることは、好ましいことであり得る。より具体的には、上記薬学的組成物は、本明細書に記載されるように、少なくとも1種の化合物の治療上もしくは予防上有効な量を、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤とともに含み得る。必要に応じて、上記薬学的組成物は、本明細書に記載される化合物の組み合わせを含み得るか、または細菌感染の処置もしくは予防において有用な第2の活性成分(例えば、抗細菌剤もしくは抗菌剤)を含み得る。種々の実施形態において、本発明の方法に従って、単独で、もしくは別の治療剤との組み合わせで使用され得る治療剤の例としては、組織リモデリングもしくは線維症を低下させる薬剤、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させる薬剤、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とする薬剤、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害する薬剤、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節する薬剤、エンドセリンレセプターアンタゴニストである薬剤、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とする薬剤もしくはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とする薬剤、結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる薬剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)(特に、MMP−9および/もしくはMMP−12)を阻害する薬剤、上皮増殖因子レセプター(EGFR)の活性を低下させる薬剤、上記EGFレセプターを標的とする薬剤、またはEGFレセプターキナーゼを阻害する薬剤、血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させる薬剤、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とする薬剤、PDGFRキナーゼ活性を阻害する薬剤、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害する薬剤、血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させる薬剤、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)のうちの1つ以上を標的とする薬剤、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子についてのレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120の場合のように、複数のレセプターキナーゼを阻害する薬剤、インテグリン機能(特に、インテグリンαVβ6)を妨害する薬剤、IL−4およびIL−13の線維症促進活性を妨害する薬剤、IL−4レセプター、IL−13レセプターを標的とする薬剤、JAK−STATキナーゼ経路を介するシグナル伝達を調節する薬剤、上皮間葉移行を妨害する薬剤、mTorを阻害する薬剤、銅レベルを低下させる薬剤、酸化的ストレスを低下させる薬剤、プロリルヒドロラーゼを阻害する薬剤、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害する薬剤、アラキドン酸経路を改変する薬剤、あるいはPPAR−γのアゴニストとして作用する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
例えば、非経口投与もしくは経口投与のための処方物は、最も代表的には、固体、液体溶液、エマルジョンもしくは懸濁物である一方で、肺投与のための吸入可能な処方物は、一般に、液体もしくは粉末であり、粉末処方物が一般に好ましい。好ましい薬学的組成物はまた、投与前に、生理学的に適合性の溶媒で再構成される凍結乾燥固体として処方され得る。代替の薬学的組成物は、シロップ剤、クリーム剤、軟膏、錠剤などとして処方され得る。
【0180】
用語「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物)の投与のための賦形剤に言及する。上記用語は、過度の毒性無しに投与され得る任意の薬学的賦形剤に言及する。
【0181】
薬学的に受容可能な賦形剤は、投与される特定の組成物によって、ならびに上記組成物を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定される。よって、薬学的組成物の広く種々の適切な処方物が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと)。
【0182】
適切な賦形剤は、大きく、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子)を含むキャリア分子であり得る。他の例示的な賦形剤としては、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、キレート化剤(例えば、EDTA)、炭水化物(例えば、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、および/もしくはヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、油、水、食塩水、グリセロールおよび/もしくはエタノール)、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化物質などが挙げられる。リポソームはまた、薬学的に受容可能な賦形剤の定義内に含まれる。
【0183】
本明細書に記載される薬学的組成物は、意図される投与法に適した任意の形態で処方され得る。経口的使用について意図される場合、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性懸濁物もしくは油性懸濁物、非水性溶液、分散性の散剤もしくは顆粒剤(微紛化粒子もしくはナノ粒子を含む)、エマルジョン、硬質カプセル剤もしくは軟質カプセル剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤が調製され得る。経口的使用について意図される組成物は、薬学的組成物の製造について当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、口に合う調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤を含む1種以上の薬剤を含み得る。
【0184】
錠剤とともに使用するのに特に適した薬学的に受容可能な賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤(例えば、セルロース、炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム);崩壊剤(例えば、架橋ポビドン、とうもろこしデンプン、もしくはアルギン酸);結合剤(例えば、ポビドン、デンプン、ゼラチンもしくはアカシアゴム);および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク)が挙げられる。
【0185】
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、公知の技術(胃腸管での崩壊および吸着を遅らせるための微小封じ込めが挙げられる)によってコーティングされ、それによって、より長期間にわたって持続性の作用を提供してもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、モノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル)は、単独でもしくはワックスとともに、使用され得る。
【0186】
経口的使用のための処方物はまた、硬質ゼラチンカプセル剤(ここで上記活性成分は、不活性固体希釈剤(例えば、セルロース、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはカオリン)とともに混合される)または軟質ゼラチンカプセル剤(ここで上記活性成分は、非水性もしくは油性媒体(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油)と混合される)として提示され得る。
【0187】
別の実施形態において、薬学的組成物は、懸濁物の製造に適した少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤と混合されて、上記実施形態の化合物を含む懸濁物として処方され得る。
【0188】
さらに別の実施形態において、薬学的組成物は、適切な賦形剤の添加によって、懸濁物の調製に適した分散性散剤および顆粒剤として処方され得る。
【0189】
懸濁物に関して使用するために適した賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム);分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート));および増粘剤(例えば、カルボマー、蜜蝋、固形パラフィンもしくはセチルアルコール)が挙げられる。上記懸濁物はまた、1種以上の保存剤(例えば、酢酸、メチルp−ヒドロキシベンゾエートもしくはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート);1種以上の着色剤;1種以上の矯味矯臭剤;および1種以上の甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン)を含み得る。
【0190】
上記薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。その油相は、植物性油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴムおよびトラガカントゴム);天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸から得られるエステルもしくは部分エステル;ヘキシトール無水物(例えば、ソルビタンモノオレエート);およびエチレンオキシドとのこれら部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトールもしくはスクロース)とともに処方され得る。このような処方物はまた、粘滑剤、保存剤、矯味矯臭剤もしくは着色剤を含み得る。
【0191】
さらに、上記薬学的組成物は、滅菌注射用調製物(例えば、滅菌注射用水性エマルジョンもしくは油性懸濁物)の形態であってよい。このエマルジョンもしくは懸濁物は、それらの適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤(上記のものが挙げられる)を使用して、当業者によって処方され得る。上記滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射用溶液(例えば、1,2−プロパン−ジオール中の溶液)もしくは懸濁物であり得る。
【0192】
上記滅菌注射用調製物はまた、凍結乾燥粉末として調製され得る。使用され得る上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒もしくは懸濁媒体として使用され得る。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油が、使用され得る(合成モノグリセリドもしくは合成ジグリセリドを含む)。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が、注射物の調製において同様に使用され得る。
【0193】
薬学的組成物の安定な水溶性投与形態を得るために、本明細書に記載される化合物の薬学的に受容可能な塩は、有機酸もしくは無機酸の水溶液(例えば、コハク酸、もしくはより好ましくは、クエン酸の0.3M溶液)中に溶解され得る。可溶性の塩形態が利用可能でない場合、上記化合物は、適切な共溶媒もしくは共溶媒の組み合わせ中に溶解され得る。適切な共溶媒の例としては、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリンなど(上記総容量のうちの約0〜約60%の範囲に及ぶ濃度で)が挙げられる。一実施形態において、上記活性化合物は、DMSO中に溶解され、水で希釈される。
【0194】
上記薬学的組成物はまた、適切な水性ビヒクル(例えば、水もしくは等張性食塩水もしくはデキストロース溶液)中の上記活性成分の塩形態の溶液の形態にあり得る。化学部分もしくは生化学部分の置換もしくは付加によって改変された化合物もまた企図され、このことは、例えば、エステル化、グリコシル化、PEG化などによって、上記化合物を送達に関してより適切にする(例えば、溶解度、生物活性、嗜好性を増す、有害反応を低下させるなど)。
【0195】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される化合物は、経口投与のために、低溶解度化合物に適した脂質ベースの処方物中に処方され得る。脂質ベースの処方物は、一般に、このような化合物の経口バイオアベイラビリティーを増強し得る。
【0196】
よって、好ましい薬学的組成物は、治療上もしくは予防上有効な量の、本明細書に記載される化合物を、中鎖脂肪酸およびそのプロピレングリコールエステル(例えば、食用脂肪酸(例えば、カプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸)のプロピレングリコールエステル)および薬学的に受容可能な界面活性剤(例えば、ポリオキシル40 水素化ひまし油)からなる群より選択される少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤を一緒に含む。
【0197】
代替の好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、水溶解度増強剤として添加され得る。好ましいシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体およびマルトトリオシル誘導体が挙げられる。特に好ましいシクロデキストリン溶解度増強剤は、ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン(BPBC)であり、これは、上記の組成物のうちのいずれかに添加されて、上記実施形態の化合物の水溶解度特性をさらに改善し得る。一実施形態において、上記組成物は、約0.1%〜約20% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、より好ましくは、約1%〜約15% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、およびさらにより好ましくは、約2.5%〜約10% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリンを含む。使用される溶解度増強剤の量は、上記組成物中の本発明の化合物の量に依存する。
【0198】
上記実施形態の方法はまた、疾患状態の処置のための1種以上のさらなる治療剤とともに、本明細書に記載される1つまたは複数の化合物の使用を含む。従って、例えば、活性成分の組み合わせは、以下であり得る:(1)組み合わせ処方物中で同時に処方され、同時に投与されるかもしくは送達される;(2)別個の処方物として交互に送達されるか、平行して送達される;または(3)当該分野で公知の任意の他の組み合わせ治療レジメンによって送達される。交互の治療で送達される場合、本明細書に記載される方法は、例えば、別個の溶液、エマルジョン、懸濁物、錠剤、丸剤もしくはカプセル剤において、または別個のシリンジ中の異なる注射剤によって、連続して、上記活性成分を投与するかまたは送達することを包含し得る。一般に、交互の治療の間に、各活性成分の有効用量は、連続して、すなわち、一続きで投与されるのに対して、同時の治療では、2種以上の活性成分の有効用量は、一緒に投与される。間欠性組み合わせ治療の種々の順序もまた、使用され得る。
【0199】
本発明は、本発明の例示的実施形態を詳述する以下の実施例を参照することによって、より十分に理解される。しかし、本発明の実施例は、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。上記開示全体を通じての全ての引用は、明示的に本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0200】
(実施例1:実験的心筋梗塞(MI)プロトコル)
この実施例において、プロトコルを、ピルフェニドン処置後の虚血−再灌流ラットモデルにおける心室機能、線維症の程度およびVT誘導性を試験するために記載する。心室機能を、超音波心臓検査を介して評価した。VT誘導性を、プログラムされた刺激およびEP研究によって評価した。電気生理学的特性を、高分解能光学マッピングを使用して評価し、線維症の程度を、標準的組織学的技術を使用して研究した。
【0201】
ベースライン超音波心臓検査後に、30匹の雄性Sprague−Dawleyラット(6〜10週齢)に、虚血−再灌流モデルを使用して心筋梗塞を経験させた。簡潔には、ラットに、吸入イソフルラン(5% 誘導、2.5% 維持、O2 排出 1L/分)を使用して麻酔をかけ、電気で温めた動物用手術台上に仰臥位で配置した。ラットに、16ゲージのi.v.カテーテルを使用して挿管し、次いで、Harvard齧歯類人工呼吸器を使用して換気した。左の開胸術および心膜切開術を行った後に、7−0 Ticron縫合糸を、ランドマークとして左心耳および右流出路(right outflow tract)を使用して、心筋層へと導入した。エントリーの深さは、2mmであった。これは、左冠動脈のレベルより僅かに大きかった。次いで、縫合糸の両端を、PE−90ポリエチレンチューブ 6インチ長に通して、上記動脈の周りに「係蹄ループ(snare loop)」を形成し、これを、上記縫合糸の自由な両端を引っ張ることによって閉じた。上記係蹄ループを、閉じて、10秒後に解くことによって試験して、適切な虚血および再灌流を証明した。次いで、上記縫合糸を締めて上記動脈を20秒間閉塞させ、次いで、とり除いて、再灌流を可能にした。次いで、胸部を5−0 プロレン(prolene)縫合糸で閉じ、上記動物を回復させた。1週間後および超音波心臓検査を反復した後、ラットを、4週間にわたって、プラセボ齧歯類飼料(コントロール群、n=15)もしくは1.2% ピルフェニドン(PFD)と混合した齧歯類飼料(処置群、n=15)に無作為化した。全ての実験およびデータ分析を、作業者が処置群を分からないようにして行った。
【0202】
(統計分析)
本明細書に記載される研究の統計比較を、別段示されなければ、対応のあるt検定もしくは対応のないt検定を使用して、群間で行った。Fisherの正確度検定を使用して、コントロール群とPFD処置群との間のVT誘導性を比較した。全ての値を、平均±SEMとして報告する。P<0.05を有意と見なした。
【0203】
(実施例2:実験モデルの超音波心臓検査分析)
ベースラインにおいて、および梗塞の1週間後および5週間後において、25−MHz 機械式変換器(mechanical transducer)を備えた市販の高分解能超音波心臓検査システム(Vevo 660,VisualSonics,Toronto,ON,Canada)を、超音波心臓検査に使用した。ラットを、温かい台の上に仰臥位で配置し、ECG四肢電極を取り付けた。超音波減衰を最小限にするために、その胸部を剃毛し、化学的除毛剤(chemical hair remover)(Nair)できれいにした。Aquasonic 100ゲル(Parker Laboratories,Fairfield,NJ)を、胸部表面に塗布して、心臓の区画(cardiac chamber)の視認度を最適化した。胸骨傍長軸および胸骨傍短軸の二次元画像を獲得した。
【0204】
長軸画像を使用して、左心室(LV)の収縮末期容積および拡張末期容積(ESVおよびEDV)、ならびにLV駆出率(LVEF)を、最大断面積および最小断面積ならびに幅を有する枠を使用することによって計算した。上記システムソフトウェアは、円筒−半楕円モデル(cylindrical−hemiellipsoid model)(容積=8×面積2÷3÷長さ)に基づく式を利用する。LVEFを、以下の式(EDV−ESV)/EDV×100を使用して計算した。内径短縮率(FS)を、乳頭筋レベルで、LV拡張末期直径および収縮末期直径の%変化に基づいて、上記胸骨傍長軸画像のMモードから評価した。LV質量を、拡張末期において以下の式を使用して概算した:LV質量=1.05×(心外膜容積−心内膜容積)(ここで容積は、円筒−半楕円モデルに基づく)。上記齧歯類におけるLV機能のこれら評価を、十分に検証した。心エコー画像獲得および分析を、上記処置群に対して分からないようにしながら得た。
【0205】
ベースライン、MI後1週間、およびMI後5週間での一連の超音波心臓検査は、両方の群において、LV拡張、EDVおよびESVの増大、ならびに駆出率の減少を含め、ラットの進行性のLVリモデリングの証拠を示した。しかし、上記ピルフェニドン処置群は、その駆出率において有意に少ない低下を有した(コントロール群において68±6%〜45±14%、およびPFD処置群において66±5%〜36±15%)(図1)。上記処置期間(1週間目から5週間目)の間に、コントロール(24.3%)と比較して、上記ピルフェニドン処置ラットのEFにおいて有意に(p=0.005)低い%の低下(8.6%)が認められた。
【0206】
(実施例3:実験モデルにおける不整脈の電気生理学分析および評価)
光学マッピングは、心臓組織の高分解能電気生理学的評価を行う技術である。上記手順をまとめるために、1万の同時の光学活動電位を、LV前壁の心外膜上の19mm×19mm マッピング野内で、100×100 CMOSカメラで記録した。1000−W タングステン−ハロゲン光源を使用して、530nmの励起フィルタで蛍光を励起し、>630nmの発光ロングパスフィルタを透過させた。蛍光光学マップを、プログラムされた電気的刺激の間に、2000Hzで獲得した。光学マッピングを、MIの5週間後に行った。ラットに、心臓を摘出する前に、ヘパリン(500 U ip)を15分間で注射し、次いで、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg ip)で麻酔をかけた。適切な麻酔の後、心臓を素早く摘出し、冷たい心停止溶液中に浸漬することによって停止させた。大動脈にカニューレを入れ、6mL/分の速度で、95% O2/5% CO2を通気した、37℃の改変タイロード溶液((mmol/L単位で):130 NaCl、20.0 NaHCO3、1.2 MgCl2、4.0 KCl、5.6 グルコース、および1.8 CaCl2を含む)を用いて逆方向に灌流した。付着した組織を注意深く心臓から除去した。次いで、上記カニューレを挿入した心臓を、特殊化した温度制御された光学記録チャンバ(37℃で維持)において、37℃のタイロード溶液中に置いた一方で、ECG、灌流速度、および温度を、上記実験の期間にわたって連続して測定した。光学的記録の前に、電位感受性色素PGH I(10μLの5mM ストック溶液)を含むタイロード溶液を、5分間かけて、調製物を通して灌流した。
【0207】
いったんカニューレを挿入した心臓を、PGH Iで還流したら、それを、上記光学チャンバ中に、そのLV前壁を、画像化ウインドウに対して押しつけて配置した。上記マッピング野内に正常域、境界域および梗塞組織の領域を含めるために、匹敵するマッピング位置を、上記心臓全てに関して使用した。光学記録の間に、15mM ブタジオンモノオキシム(BDM)で収縮をブロックした。心室心外膜二極性ペーシングを、2×閾値の刺激振幅において、上記梗塞域の近くにある正常組織に対して行った。マッピングを、250ms〜90msのペーシング駆動の間に(10msごとに減衰した)、ならびに200msの基本周期長(BCL)および150msの最大S2を使用するS1−S2ペーシングの間に記録し、10msごとに減衰させた。最大3回の外部刺激をともなうプログラムされた刺激およびバーストペーシング(90ms〜60ms)を使用して、不整脈誘導性を評価した。誘導性を、持続した(>30s)心室頻拍(VT)もしくは心室細動を誘発する能力として定義した。マップをまた、プログラムされた刺激の間に、不整脈の全てのエピソードとともに、記録した。
【0208】
光学マッピングデータを、改変OMproCCDソフトウェア(Bum−rak Choi,Pittsburg,PAから)およびMatlabカスタムソフトウェアを使用して分析した。生の蛍光データを、正規化した蛍光強度の動画として調べたところ、上記視野内での活性化が明らかになった。定量的データを、上記CMOSカメラの10,000ピクセルの各々に対する光学的に得た活動電位(AP)から得た。活性化時間および、50%再分極での活動電位期間(APD50)および80%再分極での活動電位期間(APD80)を、各ペーシングした周期長(PCL)に対して測定した。活性化時間を、蛍光APの最大上昇速度(dF/dt)で計算した。APD80は、上記活性化時間(上記活動電位の開始)から上記活動電位が最大蛍光シグナルの20%まで戻った時点(上記光学APのピーク)までの期間である。活性化の等時性マップを、各マップに対して構築した。上昇時間を、上記活動電位の開始と、ピークとの間の時間として計算した。上記OMproCCDソフトウェアを使用して、以前記載されたように、各ピクセルで伝導速度および伝導方向を代表する伝導ベクトルを計算した。位相角(各部位における隣り合う活性化時間とともに平均差として計算される)を、以前に記載されたように、伝導の空間的不均一性を定量するために測定した。周波数ヒストグラムを、記録した領域内の位相角に対して作った。これらヒストグラムを、分布の第50百分位数(P50)でのメジアン相時間(median phase time)、ならびに第5百分位数および第95百分位数(それぞれ、P5およびP95)としてまとめた。不均一性の絶対度(absolute degree)、もしくは不均一性範囲を、上記分布の幅(P95−P5)として定量化した一方で、不均一性指数を、不均一性範囲をメジアン相で割ったもの((P95−P5)/P50)として定義した。全てのパラメーターを、コントロール群およびPFD群の両方、ならびにそれらそれぞれの非梗塞域、境界域、および梗塞域について決定した。これら領域を、以前に記載しかつ検証したように、蛍光の振幅マップを使用して同定した。高振幅(非梗塞)の領域から低振幅(梗塞)の領域への移行を、境界域とみなした。トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色、通常の光条件下での心臓の画像化、および蛍光画像からのさらなる証拠はまた、振幅マップを確証するために使用した。
【0209】
(VT誘導性および電気生理学的特徴付け)
VT誘導の割合は、コントロールMIラットにおいて73.3%であった。これは、当該分野で示されてきたものと一致している。しかし、PFD動物についてのVT誘導の割合は、28.6%で有意に低下した(p=0.027)。
【0210】
光学マッピングを、伝導活動電位特性を分析するために使用した。図2は、全ての動物のLVの3つの領域において測定した伝導速度を示す。コントロール群およびPFD群両方の遠隔の非梗塞域における全てのペーシングした周期長での伝導速度は、上記2つの群の間で類似であった(図2)。コントロール群およびPFD群の両方の梗塞域における伝導速度は、正常(および境界域領域)より有意に遅く、上記2つの群の間で類似であった(図2)。両方の群の上記境界域(MI後心室頻拍の素因がある領域)における伝導速度は、上記遠隔の非梗塞域および梗塞域の伝導速度の中間であった。しかし、上記PFD群についての上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の上記境界域におけるものと比較して、全てのPCLにおいて有意に速かった(p<0.05,図2)。
【0211】
図3は、全ての試験した周期長にわたって両方の群において測定した上記伝導不均一性(これは、不整脈の増大した傾向に関連することが示された)を示す。PFD動物のものと比較して、コントロール動物においてより高い伝導不均一性指数に向かう傾向があった(p=0.146)。コントロール動物およびPFD動物について、類似のサイズの梗塞を介した伝導の差異を、代表的な活性化動画において可視化し、上記コントロール動物について、伝導のよりゆっくりしたかつ増大した不均一性を示した。これらパラメーターの全ては、心室不整脈についての増大した基質(substrate)に関連していることが以前に実証された。
【0212】
コントロール非梗塞域およびPFD非梗塞域に関するAP上昇の最大速度(dF/dt)および上昇時間(AP開始から蛍光APのピークまでの期間)は、コントロール梗塞域およびPFD梗塞域に関する上記上昇および上昇時間それぞれと同様に、それぞれ類似であった。しかし、全てのPCLにおいて、PFD境界域の上昇は、コントロール境界域の上昇より速いという傾向があった。逆に、全てのPCLにおいて、PFD境界域の上記上昇時間は、コントロール境界域のものより低いという傾向があった(図4)。この比較は、試験した最低のPCLで統計的に有意であった(図4)。
【0213】
上記3つの領域の蛍光振幅の量もまた、図5に示されるように、定量化した。正常域は最高の振幅を有し、梗塞域は最低の振幅を有し、境界域は、その中間の振幅を有した。上記コントロールのものと比較して、ピルフェニドン処置ラットの上記境界域における蛍光のより高い振幅に向かう傾向が記録された(図5)。このことは、ピルフェニドンが、上記境界域における梗塞拡大に対する影響を有した可能性がある(低下した瘢痕拡大)ことを示唆した。なぜなら、上記ピルフェニドン境界域は、さらなる蛍光を発する、より生存性の心筋を有するようであったからである。このことは、これら心臓の梗塞サイズを試験することによって組織学的に検証された(以下を参照のこと)。
【0214】
(実施例4:梗塞サイズおよび線維症の組織学的分析)
心室組織サンプルを、10% 中性緩衝化ホルマリン中で固定した。上記サンプルをパラフィン中に包埋し、切片化し(10μm厚)、次いで、ファストグリーン対比染色と共に、Masson’s trichromeもしくはSirius redで染色した。染色したスライドを、光学顕微鏡下で鏡検し、高分解能スキャナを使用してデジタル化し、Photoshop CSソフトウェアを使用して分析した。Masson’s trichomeに関する梗塞域は、ファストグリーンが最小限から全くない濃いSirius red染色の領域と密に対応した。梗塞性瘢痕領域および左心室心筋層の全領域は、全ての切片に関して、上記デジタル画像において手動で追跡し、上記ソフトウェアによって自動的に計算した。梗塞サイズ(パーセンテージとして表される)を、全ての切片の梗塞領域の合計を、全ての切片のLV領域の合計で除算して、100をかけることによって、測定した。
【0215】
線維症の総領域をまた、評価した。上記梗塞領域(密な線維症として定義される)を排除した後、上記境界域および非梗塞域における線維症を、上記Sirius red染色切片のデジタル顕微鏡写真から定量した。血管および脈管周囲の間細胞(perivascular interstitial cell)を含む領域もまた、線維症定量から排除した。上記総組織領域に対するデジタル化画像の赤いピクセル含有量を、Adobe Photoshop CSソフトウェアを使用して数えた。
【0216】
(上記実施例の関係性)
梗塞線維症の量を、総心筋層のパーセントとして定量した。コントロールは、上記PFD群(10±1.9%;p=0.022)の梗塞のほぼ2倍(18%±2.7%)を有した(図6)。線維症の量(境界域および非MI領域、ならびに梗塞性瘢痕を含む)はまた、コントロール(23±2%;p=0.01)と比較して、上記PFD群(13±3%)において少なかった(図6)。
【0217】
以前の研究[Breithardtら Eur Heart J(1989)10 Suppl E:.9−18;Spach.Circ Res(2007)101(8):743−5;Spachら J Cardiovasc Electrophysiol(1994)5(2):182−209;Jacobsonら Heart Rhythm(2006)3(2):189−97;Marchlinskiら Circulation(2004) 110(16):2293−8;Verheuleら Circ Res(2004)94(11):1458−65]は、線維症が、心房不整脈および心室不整脈と強く相関していることを示した。増大した線維症は、筋線維の分断、伝導遅延および伝導ブロック、ならびに「ジグザグ」伝導および無秩序な伝導をもたらす。線維症の分布はまた、重要である:よりびまん性の写真とは対称的に、手指様の分布はまた、波の拡がりのより大きな混乱を引き起こすと考えられ、従って、より不整脈原性である[Breithardtら Eur Heart J(1989)10 Suppl E:9−18]。MI後、上記梗塞境界域における心臓線維症は、このようなヒモ様の分布を有し、方向嗜好性の電気伝達の変調を引き起こす可能性がより高く、線維症組織が、通常は密な細胞−細胞結合を破壊する。このことは、遅延しかつ不均一な伝導速度に寄与し、最終的には、心室不整脈に対する素因を有するリエントリー回路の形成を引き起こすと考えられる。本明細書に記載される齧歯類虚血−再灌流モデルにおいて、有意なリモデリングは、MIの5週間後の過程を経て起こった。コントロール動物は、低下したLVEFとともに、進行性のLV拡張を有した。線維症は、上記梗塞性瘢痕内で生じたのみならず、上記梗塞の境界の領域(梗塞境界域)および上記梗塞から離れた正常心筋層においても生じた。非梗塞線維症は、MI後に十分に記載された現象であり、(機械的かつ電気生理学的に)有害なリモデリングに寄与すると考えられる。
【0218】
上記観察された線維症(特に、上記梗塞境界域において)は、コントロール動物の上記境界域におけるより遅い伝導速度と相関し、上記線維症が電気的結合解離(electrical uncoupling)をもたらしたことを示唆する。さらに、正常心筋層と比較して、上記活動電位上昇は、より低く、その上昇時間は、コントロール梗塞の上記境界域においてより長かった;これら所見は、より遅い伝導速度および増大した伝導不均一性と全て一致する。上記変化したかつ不均一な伝導速度は、より誘導性のVTをもたらした。これら結果は、齧歯類、大動物およびヒトにおける心筋梗塞の以前に報告された光学マッピング研究に非常に類似している。
【0219】
上記結果は、上記MI後状況における線維症低下、ならびにLV機能およびVT誘導性に対するその影響を強調する。PFD(抗線維症薬)は、虚血−再灌流ラットモデルにおける線維症の量を低下させ得ることが示された。線維症におけるこの低下は、梗塞拡大の低下、および超音波心臓検査による左心室機能改善と相関した。さらに、低下した線維症は、低下したVT感受性と関連することが示された。このことは、伝導速度および伝導不均一性における改善に関連した。このことは、上記MI後状況におけるVTの基質に対する重要な寄与因子である。
【0220】
虚血−再灌流心筋梗塞を経験している動物は、MI後の1週間後まで、PFD処置に対して無作為化されなかった。抗炎症剤(特に、コルチコステロイド)での臨床研究は、上記MI後状況において有害な結果を示したので、1つの懸念は、梗塞期間後における非常に速い処置は、障害された創傷治癒を有するので、より弱い瘢痕およびおそらくCHFもしくは心破裂に起因する死亡率の増大を引き起こすかもしれないということであった。いくつかの研究は、齧歯類における心筋梗塞の1週間後は、安全でかつ有効な時間枠であることを示した。PFDで処置した動物において死亡率も、CHFも、不整脈も増大しなかったことが記録された。対称的に、および驚くべきことに、PFDで処置した動物は、より小さな梗塞拡大、改善されたLV機能、および低下したVT感受性を有するようであった。
【0221】
ピルフェニドンは、線維症の総量、ならびに梗塞外の線維症を減少させた。上記MIの1週間後まで処置を遅らせたにも拘わらず、PFDは、コントロール梗塞と比較して、上記梗塞サイズの低下に効果を有するようであった。従って、上記PFD介入がなければ、リモデリング変化の進行は、上記初期の虚血傷害後長く、梗塞拡大を実際に寄与し得る。実際にそのようである証拠と、心筋細胞死滅が、MI後数週間にわたって非梗塞心筋層において(特に、上記梗塞境界域内で)生じ得ることを示す研究とが存在する。この病状と関連する根底にある機構は、壁再構成、細胞の左右へのずれ(side−to−side slippage)、および心臓拡張を含む(Cheng,Kajsturaら 1996;Olivetti,Capassoら 1990)。従って、線維症を低下させることによって、PFDは、LV機能における改善によって証明されるように、心臓リモデリングを改善させた。そしてこのことは、梗塞サイズの縮小に寄与するようであった。
【0222】
PFD動物の上記梗塞境界域内の線維症は、縮小したのみならず、その分布は、不均一性が低下したようであった。手指様の突起の減少は、コントロール梗塞で認められた。不規則な分布のこの低下、および線維症の量の低下は、PFD境界域における改善された伝導速度と関連した。PFD境界域における活動電位上昇およびより速い上昇時間が同時に増大することは、これら所見をさらに確認する。これら結果、および低下した伝導不均一性は、PFD動物におけるVT感受性のほぼ3倍の低下の原因であるようであった。
【0223】
(実施例5:心室細動マッピング)
動物モデル:24匹のイヌ(25〜30Kg体重)を、3つの群:コントロール(n=11)、うっ血性心不全(n=7)、およびうっ血性心不全と抗線維症薬ピルフェニドン(n=6)に分けた。心不全(CHF)を、RVに配置した導線および240bpmでペーシングするように設定したパルス発生器を介した4週間の急速な心室ペーシングを介して7匹のイヌで誘導し、続いて、Liら,Circulation 1999;100:87−95に記載されるように、AV結節を除去して、完全な心ブロックを作り出した。心室機能は、経胸壁超音波心エコー検査で1週間に1回、4週間にわたってモニターした。4週間で、上記光学マッピング研究を行った。有意な心室拡張およびリモデリングを実証する以前のデータに基づいて、4週間を選択し、その時間で収縮性が低下した。
【0224】
心不全とピルフェニドン(PFD):心不全を、上記で記載されるように、6匹のイヌで誘導し、PFDを、Leeら,Circulation 2006;114;1703−12に記載されるように投与した。経口PFD(800mg 1日3回;InterMune,Brisbane,CA)を、ペーシングの開始2日前に開始し、光学マッピング研究の>6半減期(24時間)前に中断した。
【0225】
光学マッピング研究:冠動脈灌流した左心室調製物を、Wuら,J Cardiovasc Electrophysiol 1998;9:1336−47に記載されるように使用した。簡潔には、ペントタールナトリウム(sodium pentothal)(0.25mg/Kg)での鎮静後に、左側面開胸術を行い、心臓を迅速に摘出した。次いで、その心臓を、心停止溶液((mmol/L単位):NaCl 123、KCl 15、NaHCO3 22、NaH2PO4 0.65、MgCl2 0.50、グルコース 5.5、CaCl2 2、95% O2/5% CO2で通気)で、大動脈を介して逆方向に灌流した。その心室を、AV環の約1cm下で取り出し、冠状動脈の左前下行枝(LAD)を灌流した。右心室を取り出し、左心室をLADによって灌流したサイズへと切断し、乳頭筋を含めた。次いで、全ての心室枝を結紮した。
【0226】
次いで、上記心室調製物を、37℃で維持した組織チャンバへ移した。上記LADにおける灌流ラインを、改変タイロード溶液((mmol/L単位で):NaCl 123、KCl 5.4、NaHCO3 22、NaH2PO4 0.65、MgCl2 0.50、グルコース 5.5、CaCl2 2、95% O2/5% CO2で通気)で灌流した。光学的記録の前に、30〜40μlの電位感受性色素PGH−1のボーラスを、上記灌流液へと直接注射した。
【0227】
Wuら,J Cardiovasc Electrophysiol 1998;9:1336−47に記載される光学マッピングシステムを用いて、光学的記録を、次いで、256個の同時に起こる光学活動電位を記録した16×16フォトダイオードアレイ(C4657 Hamamatsu,Bridgewater,NJ)によって、上記調製物(心外膜、心内膜(乳頭筋を含む、および経壁)の3表面に対して4−cm2面積から作製した。調製物からの光学的記録の間に、収縮性を、15mM 2,3−ブタジオンモノオキシム(BDM;Sigma−Aldrich)11でブロックした。プランジ電極(Plunge electrode)を、ペーシングおよびモニタリング両方について視野の周りの記録する表面に配置した。2個のプランジ電極を、上記調製物の電気活性をモニターするための双極性シグナルを記録するために専用にした。VFを、外部刺激、もしくは50msの周期長、パルス幅9.9ms、および出力9.9mAでの急激なバーストペーシングのいずれかで開始した。VFのいくつかの4−sエピソードを、各調製物の各表面で記録した。次いで、上記VFの活性化動画を調べ、上記活性化パターンを決定した。VFの終了後、シグナルを250msでのペーシングの間に得、活性化の等時性マップを、伝導を見るために構築した。活性化パターンおよびVFの間の波面の方向(wave−front direction)を、生の蛍光動画(等電位)から決定した。活性化を、1)スパイラル(初角を左右する単一のリエントリー回路)、2)病巣(focal)(活性化の別個の高周波数位置)、3)複数波面(急激に変化するかまたは変動する波面と波面衝突)、または4)1つの広い波面(上記マップを通過する単一の波面)として特徴付けた。VFを、上記調製物の電気活動をモニターするために使用される双極性シグナルに対する急激かつ不規則な活性化として定義した。
【0228】
シグナルプロセシングおよび周波数ドメイン分析:上記光学マッピング記録から得たシグナルを、2,000Hzでサンプリングし、各シグナルについて、上記主な周波数(dominant frequency(DF))を決定し、組織化を、Everettら,IEEE Trans Biomed Eng 2001;48:969−78に記載されるように計算した。簡潔には、高速フーリエ変換(FFT)を、デジタル的にフィルタをかけた波形に対して計算した。上記データをトレンド除去(detrended)し、Hammingウインドウをかけた。得られた規模範囲の最も大きなピークを同定し、上記調和ピークの位置を、その位置に基づいて決定した。上記最も大きなピーク下の面積およびその調和ピークのうちの3つを、1−Hzウインドウに対してそれぞれ計算した。このことは、4つのピーク下面積を生じた。上記範囲の総面積を、2Hzから最大5番目の調和ピークを含まないところまでで計算した。上記調和ピーク下の力 対 この範囲における総力の比を計算し、得られた数値を、組織化指数(organization index)(OI)として定義した。上記OIを、その期間でのそのシグナルに対するAFの組織化を表すように理論づけた。上記DFの分散を計算するために、全ての記録部位の中でのAFの単一エピソードの間の上記DFの空間変動係数(SD/平均)、および各調製物内の各マッピング野に関するAFエピソードの中からの平均DFの一時的変動係数を計算した。別個の、安定な、高周波数領域を記録した。安定性を、上記初角のうちの少なくとも90%にわたる持続として定義した。それが消失する場合、それは、同じ位置に戻る。
【0229】
相互相関分析:空間相関分析を、各動物において、全ての考えられる対形成電気記録図組み合わせの間で全ての記録シグナルに対して行った。上記相互相関関数を、各電気記録図組み合わせについてゼロ遅延で計算し、そのピーク値を、相関係数とみなし、この相関係数は、上記2つのシグナルの間の相関の程度を表す。次いで、AF記録と光学マッピングとから計算した相関係数の全てを、各AFエピソードの平均相関値を生成するために平均化した。
【0230】
統計分析:データを、平均±DFとして表した。全てのマッピング分析変数の中で比較するために、ある範囲の混合効果モデルを使用した。上記モデルは、イヌ特異的(独立してかつ同一に分布した)ランダム効果を使用して、記録位置内および記録位置全体にわたる、イヌで作製した反復測定値を説明した。種々の対比(モデル全体のサブモデル)を、上記研究群、記録部位、および部位相互作用効果を記録することによる群の重要性を決定するために調査した。これら対比を、ネステッドモデル様式で、カイ2乗尤度比検定で検定した。統計的有意性を、p<0.05として定義した。
【0231】
VF活性化パターン:上記光学マッピング活性化シーケンスの試験の際に、活性化パターンのうちの4タイプが認められた-スパイラル波、活性化の病巣領域、複数波、および視野全体に及ぶ広い波面掃引。表2は、各イヌの各マッピング表面で認められた活性化パターンのタイプを示す。
【0232】
【表2】
心外膜表面:上記コントロール群については、上記10個のマッピングした心外膜表面のうちのわずか2個が、病巣活性化の証拠を示した。これら2つの表面はまた、一致して安定な高DF領域を有した。全ての他のものは、複数波もしくは視野を占める1つの広い波面のうちのいずれかの活性化パターンを有した。上記活性化マップは、250msでペーシングしている間に、上記視野全体にわたって均一な伝導を示す。類似の結果が、上記CHF群およびPFD群において認められた。両方の群は、2/6マッピング表面を有し、これは、病巣活性化もしくはスパイラル波(1匹のCHFイヌ)のいずれかを有した。これらのタイプの活性化は、安定な高DF領域に対応した。全ての他のイヌは、複数の波面もしくは視野を占める1つの広い波面を有した。これら活性化パターンは、一過性のDF(複数の波面)を有したか、または上記領域は、1つのDFで占められた(広い波面)。上記活性化画像は、コントロールと類似しているが、より遅い伝導速度で均一な伝導を示す。
【0233】
心内膜表面:心内膜表面のマッピングは、上記乳頭筋を含み、上記CHF群のみが、スパイラル波もしくは病巣活性化パターンに相関した安定な高DF領域によって特徴付けられたAFを有した。上記CHF群における5つのマッピングされた心内膜表面のうちの3つは、このカテゴリーに入った。上記コントロール群における7つの心内膜表面のうちの2つが、スパイラル波によって特徴づけられる活性化を有したとしても、別個の安定なDFは認められなかった。上記他の5つのコントロール、および上記PFD群におけるマッピングされた心内膜表面の全ては、複数の波面もしくは広い波面の活性化のいずれかを有した。上記群のうちの全ては、伝導遅延によって記録される不均一伝導を示した。このことは、上記心外膜表面上で認められる均一な伝導とは対称的である。
【0234】
経壁表面:上記経壁表面は、全ての群についての他のマッピングされた表面と比較した場合、スパイラル波および病巣の活性化のパーセンテージが最も高かった。上記CHF群において、上記経壁表面を、5匹のイヌにおいてマッピングし、それらのうちの全ては、スパイラル波もしくは病巣活性化のいずれかのVF活性化パターンを有した。上記VFは、安定な、別個の高DF領域によって特徴付けられた。上記PFD群において、上記マッピングされた経壁表面のうちの50%が、安定な高DF領域に相関するスパイラル波の活性化パターンを有した。上記コントロール群において、上記経壁表面のうちの75%は、病巣活性化を有した。これらのうちの1つは、安定な、高DF領域に相関しなかった。各群は、伝導遅延およびブロックの領域によって特徴付けられる不均一伝導を示した。
【0235】
顕著な周波数:周波数ドメイン分析を、VFの間に記録された活性化パターンを定量化する方法として使用した。表2は、上記安定な、別個の高DF領域が認められた場合を示す。7匹のCHFイヌのうちの6匹が、安定な、高DF領域を有する少なくとも1個の表面を有した。この群において、マッピングされた上記経壁表面のうちの全ては、別個の安定な高DF領域によって特徴付けられたVFを有した。11匹のコントロールのうちの3匹のみおよび6匹のPFDイヌのうちの3匹が、高DF領域によって特徴付けられたVFを有する少なくとも1個の表面を有した。上記コントロール群の心外膜表面は、複数の波面のVF機構を有した。高DF領域は、いくつかの例において記録されたが、これらは安定ではなかった。心内膜および経壁表面の両方が、上記視野全体に及ぶ1つの広い波面掃引によって特徴付けられるVFを有した。その対応するDFマップは、単一のDFによって特徴付けられる。上記CHF群については、上記心外膜表面は、広い波面によって特徴付けられるVFを有し、その対応するDFマップは、単一のDFによって占められた。上記心内膜および経壁表面はともに、安定な高DF領域によって特徴付けられたVFを有した。これらDFが対応する上記VF機構は、上記心内膜表面上の病巣機構および上記経壁表面上のスパイラル波であった。上記PFD群に関しては、スパイラル波は、経壁表面において認められ、その対応するDFマップは、安定な高DF領域を有した。病巣機構は、高DF領域を生じる心外膜表面で認められた。上記心内膜表面は、複数の波面によって特徴付けられるVFを有し、わずかな一過性DF領域が認められた。まとめのDFデータを、表3に列挙する。上記統計分析から、一過性DFおよび空間的DFについての変動係数のみが、有意な群効果および表面効果を有した。
【0236】
【表3】
組織化および交差相関分析:上記モデルの各々の表面に対して記録したVFの空間および時間上の組織化をさらに分析するために、上記組織化指数(OI)を、得られたFFTにおける差異を定量化することによって、上記記録の組織化を測定するために使用した。OIマップからのまとめのデータを、表4に示す。上記表が示すように、上記コントロール群は、上記CHF群もしくはPFD群のいずれかより高い平均OI値および最大OI値を有した。これら差異は、心内膜表面において有意性に達した。群内では、上記コントロール群の心内膜表面は、上記心外膜表面もしくは経壁表面のいずれよりも高いOIレベルを有した。上記PFD群において、上記心内膜表面は、最も低いOIレベルを有し、これは、上記経壁表面と比較した場合に有意性に達した。上記コントロール群はまた、OIレベルにおいて最も一時的な安定性を示した。同様に、この群は、上記心内膜表面で見いだされた最低の測定値を有する全ての表面で最低のOI一時的変動係数値を有した。上記CHF群およびPFD群の心内膜表面および経壁表面は、上記コントロール群のものより有意に異なった。
【0237】
Fもしくは各VFエピソード、シグナルの全ての考えられる対は交差相関し、各群の各表面に関する平均相関係数を、図8Aに示す。図7は、上記心内膜表面、経壁表面および心外膜表面を横断する距離にわたる周波数の勾配を示す。ピルフェニドン(Pirfendidone)は、コントロール動物に対して類似のものへと経壁勾配を保存したのに対して、心不全を処置しなかった動物は、非常に大きな勾配を有する。
【0238】
【表4】
本発明の実施形態の例としては、以下が挙げられる:
1.急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を該患者に投与する工程を包含し、
ここで必要に応じて、該処置は、該AMIを経験してから約1〜42日間後の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月まで継続する、方法。
【0239】
2.前記方法は、前記AMIに起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである、項1に記載の方法。
【0240】
3.前記処置は、前記AMIの約5〜10日後に開始される、項1に記載の方法。
【0241】
4.前記処置は、前記AMIの約7日後に開始される、項3に記載の方法。
【0242】
5.前記処置は、少なくとも2週間にわたる、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【0243】
6.急性心筋梗塞(AMI)を経験した患者におけるうっ血性心不全の発生率を低下させるための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで上記治療上有効な用量は、該うっ血性心不全の発生率を低下させる、方法。
【0244】
7.前記患者は、前記AMIに起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある、項6に記載の方法。
【0245】
8.前記処置は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項6または7に記載の方法。
【0246】
9.急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者の生きている心臓組織を保護するか、または心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小するための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該患者に該治療剤を投与する工程は、該治療剤を投与しなかった患者の梗塞サイズと比較して、平均して相対的に縮小した梗塞サイズを生じる、方法。
【0247】
10.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから1〜42日後に開始される、項9に記載の方法。
【0248】
11.前記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である、項9または10に記載の方法。
【0249】
12.心室頻拍の発生率を低下させる必要のある患者の心室頻拍の発生率を低下させるための方法であって、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該心室頻拍の発生を防ぐかもしくは該心室頻拍の発生率を低下させる、方法。
【0250】
13.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項12に記載の方法。
【0251】
14.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、項13に記載の方法。
【0252】
15.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、項14に記載の方法。
【0253】
16.心室細動の処置もしくは予防が必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の心室細動を予防する、方法。
【0254】
17.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項16に記載の方法。
【0255】
18.前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項17に記載の方法。
【0256】
19.前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項18に記載の方法。
【0257】
20.前記投与する工程は、心臓性突然死の発生率を低下させる、項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【0258】
21.前記投与する工程は、前記患者の心臓リスクを低下させる、項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【0259】
22.不整脈の制御が必要な患者の不整脈を制御するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の不整脈を制御する、方法。
【0260】
23.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項22に記載の方法。
【0261】
24.前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、項23に記載の方法。
【0262】
25.前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、項24に記載の方法。
【0263】
26.前記投与する工程は、心室リモデリングを処置する、項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【0264】
27.前記患者は、以前にAMIを経験したことがない、項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【0265】
28.前記抗線維症効果を有する治療剤は、
組織リモデリングまたは線維症を減少させるか、
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節するか;
エンドセリンレセプターアンタゴニストであり、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするかまたはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするか;
結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させるか;
マトリクスメタロプロテイナーゼを阻害するか;
上皮増殖因子(EGF)の活性を低下させるか、該EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害するか;
血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害するか;
血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させ、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)、VEGFR1(sFlt)の可溶性形態およびVEGFを中和するその誘導体のうちの1種以上を標的とし、VEGFレセプターキナーゼ活性を阻害するか;
複数のレセプターキナーゼを阻害する(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子のレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120)か;
インテグリン機能を妨害するか;
IL−4およびIL−13の線維症促進(pro−fibrotic)活性を妨害し、IL−4レセプター、IL−13レセプター、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体を標的とするか;
JAK−STATキナーゼ経路を介したシグナル伝達を調節するか;
上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition)を妨害し、mTorを阻害するか;
銅レベルを低下させるか;
酸化的ストレスを低下させるか;
プロリルヒドロラーゼを阻害するか;
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、あるいは
アラキドン酸経路を改変する
治療剤である、項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【0266】
29.前記治療剤は、ピルフェニドンあるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ:
【0267】
【化14】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素置換アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【0268】
30.治療上有効量のピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグは、前記患者に投与される、項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0269】
31.前記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【0270】
【化15】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、Zは、Oであり、R2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである、
項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0271】
32.前記患者に投与される治療剤は、以下からなる群:
【0272】
【化16】
【0273】
【化17】
表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグからなる群から選択される、
項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0274】
33.前記治療剤は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり:
【0275】
【化18】
【0276】
【化19】
ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素置換アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【0277】
34.前記治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わされる、項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【0278】
35.前記投与する工程は経口である、項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【0279】
36.前記治療上有効な量は、約50mg〜約2400mgの前記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグという総一日用量である、項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【0280】
37.前記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回1用量で投与される、項36に記載の方法。
【0281】
38.前記患者はヒトである、項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年1月26日に出願された、米国仮特許出願第61/147,340号の利益を主張し、この米国仮特許出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、急性心筋梗塞(AMI)および関連障害を経験したことがある患者を、抗線維症効果を有する治療剤(例えば、ピルフェニドンおよびそのアナログ)で処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
米国では、毎年約150万症例の急性心筋梗塞(AMI)が存在し、500,000名を超える死亡が生じる。AMIに起因する死亡のうちの多くは、患者が病院に到着できる前に起こっている。急性冠症候群の処置の最近20年にわたる医学的かつ介入的進歩にも拘わらず、患者は、心筋梗塞後の重大な罹患率および死亡率に直面し続けている。心筋梗塞(MI)後の合併症としては、うっ血性心不全(CHF)および心室頻拍(VT)が挙げられる。
【0004】
上記心臓の収縮は、心臓の洞房結節(天然のペースメーカー)によって発せられる電気的インパルスによって開始される。次いで、上記心臓の電気伝導系は、心筋層、すなわち、心筋に刺激を伝達して、収縮を刺激する。拘束後の構造的組織リモデリングに起因する異常な電導は、心室不整脈において重大な役割を果たし得、これは、突然の心停止および死亡をもたらし得る。組織リモデリングは、一部は、直接的な組織損傷、神経ホルモン活性化、サイトカイン放出、炎症および線維症に起因する。
【0005】
医学的治療剤(心室不整脈を抑制しかつ予防することを目的とした薬物療法を含む)は、これまでは、期待を裏切り続けている。以前の薬剤(クラスIC抗不整脈薬剤を含む)は、予測外にも、冠動脈疾患の状況において催不整脈性(pro−arrhythmic)であり、注意書きをもたらした。現在のMI後薬物療法は、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン(RAA)ブロッカーを含み、これは、心臓リモデリングを改善するが、特異的には線維症を標的としない。本発明の目的は、急性心筋梗塞を処置するための新規な治療剤および治療レジメンを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
線維症を阻害する化合物が、左心室(LV)機能、梗塞サイズ、梗塞周辺線維症、梗塞境界域の電気生理学およびVT誘導性に対して有効な影響を有することが、予測外にも見いだされた。このような化合物が、RAAブロッカーよりも、有害な急性MI後リモデリングのより標的化されかつ有効な阻害を提供することもまた、予測外である。急性MI後の期間における不整脈を予防し、ならびに心臓収縮性を改善し、心機能を改善し、急性MIの合併症(例えば、うっ血性心不全(CHF)および心室頻拍(VT)および心室細動)を低減するための新規な手段が、本明細書で提供される。
【0007】
本発明の理論によって拘束されないが、心外傷に応じた初期線維症は、治癒瘢痕を形成することにおいて重要であると考えられ、梗塞拡大、動脈瘤形成、および心臓穿孔を防止することにおける代償機能として働く。しかし、上記梗塞を超えて、かつ上記梗塞境界域および他の生きている組織の中への遅発性(late−onset)かつ過剰な線維症は、有害な心臓リモデリングを与え得る。心臓線維症は、変化した伝達を引き起こし得、このことは、最終的にリエントリー回路の形成および不整脈原性に罹りやすくする潜在的に波の分裂(wave breaks)を引き起こす不均一な異方性電導(anisotropic conduction)をもたらす。本明細書に記載される結果は、遅発性線維症を阻害することが、急性MI後の状況において適度の有益な効果を提供し得ることを示す。
【0008】
最も広い特徴において、本発明は、心筋梗塞(MI)を経験したことがあるか、またはMIを以前経験したことがないか、または1週間以内にMIを経験している患者を処置するための方法を開示し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。別の局面において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験したことがある患者を処置するための方法を開示し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで必要に応じて、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験した直後に開始され、必要に応じて、最大3〜6週間まで継続される。いくつかの局面において、上記方法は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)に起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである。
【0009】
別の局面において、本発明は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月にわたって継続される。他の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約3〜14日後の期間に開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月にわたって継続される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約5〜10日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約2〜40日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約3〜20日後に開始される。別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約4〜15日後に開始される。さらに別の実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約7日後に開始される。いくつかの実施形態において、上記処置は、少なくとも2週間の期間にわたって継続される。他の実施形態において、開始後の上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約4週間後までの期間にわたって継続される。従って、本発明は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)の約14日〜4週間後までの患者の処置を包含する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験した患者におけるうっ血性心不全(CHF)の発生率を低下させるための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療上有効な用量は、うっ血性心不全の発生率を低下させ、そして必要に応じて、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。いくつかの局面において、上記患者は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)に起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある。
【0011】
一実施形態において、本発明は、心筋梗塞(例えば、急性心筋梗塞(AMI))を経験したことがある患者において生きている心臓組織を保存するか、または心筋梗塞サイズを制御するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療剤を上記患者に投与する工程は、上記治療剤を投与しなかった患者における梗塞サイズと比較して、平均して、相対的に縮小した梗塞サイズを生じる。いくつかの実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。さらなる実施形態において、上記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、心室頻拍の発生率低下が必要な患者における心室頻拍の発生率を低下させるための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。
【0013】
一実施形態において、本発明は、心室細動の処置もしくは予防の必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記処置は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後の期間に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。別の実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での心臓死の発生率と比較して、心臓性突然死の発生率を低下させる。さらに別の実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での心臓リスクと比較して、上記患者の心臓リスクを低減させる。本明細書で使用される場合、用語「心臓リスク」とは、心室頻拍、心臓性突然死、心室細動および/もしくはうっ血性心不全のうちのいずれか1つもしくは組み合わせから生じる心臓の病的状態のリスクを意味する。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、不整脈の制御(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)の必要な患者における不整脈を制御する(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)ための方法を提供し、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、ここで上記治療剤を投与する工程は、上記患者における不整脈を制御する(例えば、不整脈を低下させる、その発生率もしくは重篤度を低下させる、またはその進行を予防する)。いくつかの実施形態において、上記投与する工程は、上記治療剤の投与の非存在下での不整脈の発生率もしくは重篤度と比較して、上記患者における不整脈の発生率もしくは重篤度を低下させる。いくつかの実施形態において、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を経験したことがある。さらなる実施形態において、上記投与は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約1〜42日後に開始される。なおさらなる実施形態において、上記投与は、上記心筋梗塞(例えば、上記AMI)を経験して約7日後に開始される。他の実施形態において、上記投与する工程は、心室リモデリングを処置する。
【0015】
上記の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記患者は、最初の心筋梗塞(例えば、最初のAMI)を経験したと診断される。すなわち、上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を以前に経験したと診断されたことがないか、または上記患者は、心筋梗塞(例えば、AMI)を以前に経験したことがない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法のうちのいずれかは、必要に応じて、慢性MIと診断された患者の処置を排除する。
【0016】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、組織リモデリングもしくは線維症を低下させる。前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記TGF−β経路において前述の効果のうちの1つ以上を示し得、そして/または線維症を低下させ得る。
【0017】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、エンドセリンレセプターアンタゴニストであるか、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするか、またはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記エンドセリンAおよび/もしくはB経路において前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0018】
前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記CTGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0019】
前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、MMPを阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。特定の実施形態において、このような化合物の上記治療上有効な量は、MMP−9もしくはMMP−12を阻害し得る。
【0020】
前述の方法のうちのいずれかのさらに他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、上皮増殖因子レセプター(4)の活性を低下させるか、EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記EGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0021】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記PDGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0022】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させるか、VEGF、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)もしくはVEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)のうちの1種以上を標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記VEGF経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0023】
前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子に対するレセプターキナーゼを阻害する複数のレセプターキナーゼ(例えば、BIRB−1120)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記VEGF、FGFもしくはPDGFの経路における1種以上のレセプターキナーゼを阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0024】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、インテグリン機能を妨害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、インテグリン機能を阻害し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、αVインテグリンを阻害し得る。他の実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、インテグリンαVβ6機能を阻害し得る。
【0025】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、IL−4およびIL−13の線維症促進(pro−fibrotic)活性を妨害するか、IL−4レセプター、IL−13レセプターを標的とする。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記IL−4および/もしくはIL−13の経路における前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0026】
前述の方法のうちのいずれかのさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、JAK−STAT経路を介したシグナル伝達を調節する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記JAK−STAT経路を介したシグナル伝達を調節し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0027】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、上皮間葉移行を妨害するか、またはmTorを阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、間葉に対する前述の効果のうちの1つ以上を示し得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0028】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、銅のレベルを低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、循環および/もしくは組織中の銅レベルを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0029】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、酸化的ストレスを低下させる。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、酸化的ストレスを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0030】
前述の方法のうちのいずれかのなおさらなる実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、プロリルヒドロラーゼ(prolyl hydrolyse)を阻害する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、プロリルヒドロラーゼを低下させ得るか、そして/または線維症を低下させ得る。
【0031】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、増殖因子活性化レセプターγ(proliferator−activated receptor−gamma)(PPAR−γ)のアゴニストである。
【0032】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、またはアラキドン酸経路を改変する。このような場合において、このような化合物の上記治療上有効な量は、上記PDE4および/もしくはPDE5の経路を阻害し得るか、または上記アラキドン酸経路を阻害し得るか、そして/あるいは線維症を低下させ得る。
【0033】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記抗線維症効果を有する治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わせられる。前述の方法のうちのいずれかの他の実施形態において、上記投与は、経口である。
【0034】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療上有効な量は、総一日用量約50mg〜約2400mgの上記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0035】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回単一用量で投与される。
【0036】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記治療剤は、ピルフェニドン、あるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ:
【0037】
【化1】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素化アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0038】
いくつかの実施形態において、Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素化アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0039】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記治療剤は、ピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0040】
前述の方法のうちのいずれかの種々の実施形態において、上記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【0041】
【化2】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、
ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、ZはOであり、そしてR2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである。
【0042】
前述の方法のうちのいずれかのなおさらなる実施形態において、上記患者に投与される治療剤は、以下からなる群より選択される:
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
、表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグ。
【0045】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、上記患者はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、ピルフェニドン群(点線)が、その駆出率において有意に少ない低下を有し、1週間目から5週間目まで8%しか減少しなかったことを示す。コントロールについての上記駆出率は、24%低下した(実線)。上記ピルフェニドン群は、ピルフェニドン処置ラットが、1週間でより低い駆出率に最初に無作為化されたという事実にも拘わらず(54% 対 60%)、平均駆出率36%を有するコントロールと比較すると、5週間でより高い駆出率45%を有した。
【図2A】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図2B】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図2C】図2は、種々のペーシング周期長での両方の群の正常域、境界域および梗塞域の伝導速度を(ピルフェニドンは丸で、コントロールは四角として)示す。コントロール群およびピルフェニドン群両方の非梗塞域における伝導速度は、3つの領域全ての中で最も速く、かつ上記2つの群の間で類似であった。コントロール群およびピルフェニドン群の両方の梗塞域における伝導速度は、3つ全ての領域の中で最も遅く、かつ上記2つの群の間で類似であった。最後に、両方の群の境界域における伝導速度は、上記非梗塞域の伝導速度と、梗塞域の伝導速度との間にあった。しかし、上記ピルフェニドン処置群の上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の境界域の伝導速度と比較すると、全てのペーシング周期長で有意に速かった。
【図3】図3は、コントロールラット(四角)と比較した、ピルフェニドン処置ラット(丸)のより低い伝導不均一性(conduction heterogeneity)に対する傾向を示す。
【図4A】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図4B】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図4C】図4は、他の電気生理学的パラメーターに関して、上昇時間が伝導速度と相関していることを示す。コントロール(四角)およびピルフェニドン処置(丸)の両方のラットについて完全に脱分極するのにかかる時間を増大させることが、梗塞では示され、それらそれぞれの正常領域と比較すると、上記梗塞域において上記上昇時間はよりゆっくりである。上記境界域における上昇時間は、上記梗塞域と正常域との間にある。上記上昇時間は、ピルフェニドン処置ラットにおけるより速い伝導速度と一致して、ピルフェニドン処置ラットの境界域についてはより短いことが示される。
【図5A】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図5B】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図5C】図5は、上記3つの領域についての蛍光振幅を示す。正常領域は、最も高い振幅、梗塞領域は最も小さな振幅、および境界域は中間の振幅を有した。コントロールの境界域における蛍光振幅と比較すると、ピルフェニドン処置ラットの境界域における蛍光振幅がより高い傾向にあった。
【図6】図6は、コントロールラット 対 ピルフェニドン処置ラットにおける上記心筋梗塞サイズおよび心筋線維症の量を示す。
【図7】図7は、各マッピングされた表面について勾配が生じる距離にわたって、最も大きな測定された周波数勾配を示す。濃い黒棒は、コントロールを表し、陰影をつけた棒は、うっ血性心不全(CHF)を表し、白棒は、ピルフェニドン(PFD)を表す。
【図8】図8は、VF活性化パターンについての要約した相関係数(XC)データを示す。パネルA-各群について各マッピングされた表面の平均XC値。濃い黒棒は、コントロールを表し、陰影をつけた棒はCHFを表し、白棒は、PFDを表す。パネルB-全ての群についての各VF活性化パターンの平均XC値。パネルC-全ての群についての各VF活性化パターンのXC値の変動係数。
【発明を実施するための形態】
【0047】
ピルフェニドン(PFD)は、経口的に活性な抗線維症薬剤である。ピルフェニドンが、MI後の線維症の特異的かつ強力な低下を示し、心臓リモデリングの不整脈原性の可能性を改善することが、本明細書で実証される。
【0048】
ピルフェニドンは、化学物質名が5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドンである低分子薬物である。これは、分子量185.23ダルトンを有する非ペプチド合成分子である。その化学元素は、C12H11NOとして表され、その構造および合成は公知である。いくつかのピルフェニドン調査新薬物適用(IND)は、米国食品医薬品局により現在、整理記録されている。ヒトでの調査は、継続中であるか、または肺線維症、腎糸球体硬化症、および肝硬変については最近完了した。ピルフェニドンを使用して、良性前立腺肥大、過形成性瘢痕(ケロイド)、および関節リウマチを処置する試みの他の第II相研究があった。
【0049】
ピルフェニドンは、線維症状態(例えば、ヘルマンスキー・パドラック症候群(HPS)、関連する肺線維症および特発性肺線維症(IPF))を経験している患者に対する治療上の利益について調査されている最中である。ピルフェニドンはまた、肺、皮膚、関節、腎臓、前立腺、および肝臓の組織を含む、損傷組織と関連する線維症で見いだされる過剰な瘢痕組織を予防するかもしくは除去する薬理学的能力について調査されている最中である。
【0050】
ピルフェニドンは、種々のサイトカイン(例えば、TNF−α、TGF−β1、bFGF、PDGF、およびEGF)の過剰な生合成もしくは放出を阻害すると報告された(Zhang Sら,Australian and New England J Ophthalmology 26:S74−S76(1998);Cainら,Int’l J Immunopharmacology 20:685−695(1998))。ピルフェニドンはまた、コラーゲン発現を低下させ、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)およびそれらの内因性インヒビター(メタロプロテイナーゼの組織インヒビターすなわちTIMP)のバランスを変化させると報告された。
【0051】
(急性心筋梗塞(AMI))
いくつかの実施形態において、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、心室リモデリングによって引き起こされる状態を処置するための方法が提供され、ここで上記心室リモデリングは、AMIによって引き起こされる。いくつかの実施形態において、上記心室リモデリングは、線維症である。従って、いくつかの実施形態において、AMIを経験したことがある患者における心室リモデリング(例えば、心室線維症)を低下させるための方法が提供される。上記心室リモデリング(例えば、心室線維症)は、上記治療剤の投与の非存在下での心室リモデリングの量(例えば、心室線維症の量)に比較して(例えば、上記治療剤を投与しなかった患者と比較して)、低下する。
【0052】
急性心筋梗塞(AMI)とは、上記冠動脈のうちの1本以上の急性の即座の遮断に起因する、心臓組織の梗塞(損傷もしくは死滅)に言及する。血栓症に起因する冠動脈閉塞(遮断)は、AMIの大部分の症例の原因である。この遮断は、心臓への筋肉壁への血液供給を制限し、しばしば、胸痛、胸の重圧(heavy pressure)、悪心、および息切れ、または左腕のずきずきする痛みのような症状が付随する。急性MIにおいて、冠動脈における血流の重篤な制限が、心筋層への低下した酸素送達、およびその後の炎症反応のカスケード(心筋組織の死滅(梗塞)を生じる)をもたらす。危険な状態にある心筋層への迅速な血流回復は、壊死を制限し得かつ死亡率を低下させ得る。AMIは、心室の供給領域における筋細胞および血管構造の急激な死滅をもたらす。上記梗塞領域における筋細胞、細動脈、および毛細血管の喪失は、不可逆的であり、時間が経つにつれて、瘢痕化組織の形成を生じる。
【0053】
酸素不足に起因する最初の細胞死の後に、続いて起こる急性炎症反応から生じるようである、心筋細胞損傷の後の相が存在する(Entman M.L.ら,1991,FASEB J 5:2529)。最初に、AMIの間の心筋細胞損傷を媒介することにおける炎症反応の重要性は、コルチコステロイドが20〜35%まで梗塞サイズを縮小させ得ることを示す動物研究において認識された(Libby P.ら,1973,J Clin Invest 52:599;Maclean D.ら,1978,J Clin Invest 61:541)。しかし、心筋壊死を最小限にするためのAMIにおけるメチル−プレドニゾロンの臨床適用は、主としては成功しなかった。なぜなら、この処置は、瘢痕形成および治癒を妨害し、動脈瘤および心室壁の破裂の発生をいくらかの患者においてもたらしたからである(Roberts R.ら,1976,Circulation 53 Suppl.I:204)。類似の効果が、ラットでの長期実験で観察された(Maclean D.ら,1978,J Clin Invest 61:541)。これら失望する結果は、AMI後の炎症反応を緩和することによって、梗塞サイズを縮小する目的であった臨床研究の希望をさらにくじいた。
【0054】
AMIを有する患者は、トロポニン、クレアチンキナーゼおよびミオグロビンの特徴的に上昇したレベルによって診断され得る。トロポニンレベルは、MIに関するAmerican College of Cardiology(ACC)/American Heart Association(AHA)コンセンサス声明に従って、MIを定義しかつ診断するにあたって診断基準となる標準と今やみなされている。心臓トロポニンレベル(トロポニン−Tおよびトロポニン−I)は、MIの検出において、心筋クレアチニンキナーゼ(CK−MB)レベルより大きな感度および特異性を有する。それらは、重要な診断的かつ予後診断的(prognostic)役割を有する。正のトロポニンレベルは、この診断における組み合わされた特異性および感度に起因して、最も最近のACC/AHA改訂においてMIの診断とみなされている。血清レベルは、代表的には、胸痛の発生から3〜12時間以内(ピークは、24〜48時間)に増大し、5〜14日間を通してベースラインに戻る。
【0055】
クレアチニンキナーゼは、3種のイソ酵素を含み、これらとしては、筋サブユニット(CK−MM)を有するクレアチニンキナーゼ(これは、主に骨格筋で見いだされる);脳サブユニットを有するクレアチニンキナーゼ(CK−BB)(主に、脳で見いだされる);および心筋クレアチニンキナーゼ(CK−MB)(これは主に心臓で見いだされる)が挙げられる。CK−MBイソ酵素レベルの連続測定は、以前は、MIの診断についての標準的診断基準であった。CK−MBレベルは、代表的には、胸痛が発生してから3〜12時間以内に増大し、24時間以内にピーク値に達し、48〜72時間後にベースラインに戻る。再灌流が生じる場合には、レベルはより早くピークに達する(ウォッシュアウト)。感度は、約95%であり、非常に特異性が高い。しかし、感度および特異性は、トロポニンレベルほどは高くない。
【0056】
尿ミオグロビンレベルは、AMIにおける胸痛の発生から1〜4時間以内に上昇する。ミオグロビンレベルは、非常に感度が高いが、特異的ではなく、それらは、他の研究の状況内で、およびEDにおけるMIの早期検出において.有用であり得る。
【0057】
心電図(ECG)は、MIが疑われる患者の最初の評価および優先順位付けにおいて重要なツールであり得る。症例のうちの約80%において診断は確定的である。MIが考えられるかもしくは疑われる場合に、ECGを直ぐに得ることが、推奨される。下方のMIを有する患者において、右側のECGは、右室(RV)梗塞を排除するために記録される。直立(upright)T波もしくは陰性T波を伴う凸状のSTセグメント上昇は、一般に、適切な臨床実践場面においてMIを示す。ST低下およびT波変化はまた、MIの進展を示し得る(非ST上昇MI)。MIの進行は、ECGを連続的に行うことによって、例えば、最初の2〜3日間、および必要であればさらに、毎日、連続ECGを行うことによって評価され得る。
【0058】
画像化研究は、MIの診断のために、特に、上記診断が疑わしい場合に、有用であり得る。心エコー図は、組織損傷もしくは死滅を示す局所壁運動異常を同定し得る。心エコー図はまた、上記梗塞の程度を規定し得、左室(LV)機能および右室(RV)機能全体を評価し得る。さらに、心エコー図は、合併症(例えば、急性僧帽弁逆流(MR)、LV破裂、もしくは心内膜液浸出)を同定し得る。
【0059】
心筋灌流画像化(Myocardial perfusion imaging)(MPI)は、静脈内投与した放射性医薬を利用して、心筋層における血流の分布を示す。上記心臓における放射性医薬の分布は、γカメラを使用して画像化される。灌流異常、もしくは欠損は、位置、程度および強度に関して評価されかつ定量される。心筋灌流画像化は、梗塞と関連する低下した心筋血流の面積を同定し得る。
【0060】
心臓カテーテル法は、上記患者の冠動脈の解剖的構造、および心血管造影法を介して遮断の程度を規定する。
【0061】
AMIは、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、慢性心筋梗塞から区別され得る。いくつかの実施形態において、上記MI後の細胞膜を横切るエネルギー調節性イオン輸送機構の混乱を伴う心筋浮腫の存在は、AMIを示す(Willersonら,1977,Am J Pathol 87:159-188)。上記発生した瘢痕の比較的大きな細胞外マトリクスは、ガドリニウムベースの造影剤を蓄積させ、DEを生じる。T2強調(T2−weighted)CMRは、梗塞関連心筋浮腫を感度高く検出し(Wisenbergら,1988,Am Heart J.115:510-518;Higginsら,1983,Am J Cardiol 52:184-188;Garcia−Doradoら,1993,Cardiovasc Res 27:1462-1469)、急性MIを慢性MIから区別するために使用され得る。特定の実施形態において、遅延増強(DE)およびT2強調心血管核磁気共鳴法(CMR)の組み合わせは、急性MIを慢性MIから区別するために使用される(Abdel−Atyら,2004,Circulation 109:2411-2416)。
【0062】
(うっ血性心不全(CHF))
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤が上記患者に投与される場合に、うっ血性心不全(CHF)の発生率もしくはCHFの合併症が低下する方法が、提供される。CHFの発生率もしくはCHFの合併症は、上記治療剤の投与の非存在下でのCHFの発生率もしくはCHFの合併症に比較して(例えば、上記治療剤を投与しなかった患者と比較して)、低下する。上記CHFの発生率は、抗線維症効果を有する治療剤が患者に投与される場合、上記治療剤を投与しなかった患者と比較した場合に、少なくとも10%だけ低下し得る。さらなる実施形態において、上記CHFの発生率は、抗線維症効果を有する治療剤が患者に投与される場合、上記治療剤を投与しなかった患者と比較した場合に、少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも35%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%以上、低下し得る。
【0063】
うっ血性心不全の有病率は、集団が年を重ねるにつれて、および心臓病専門医が、うっ血性心不全の最も一般的な原因である虚血性心疾患からの死亡率を低下させることに、より成功するにつれて増大する。米国の約460万人の人々が、65歳の年齢以降に、10/1000に近い発生率で心不全を有する。うっ血性心不全に関する退院は、1979年において377,000名から、1997年において957,000名まで上昇し、うっ血性心不全が、65歳以上の人々の最も一般的な退院時診断になった。うっ血性心不全からの5年死亡率は、50%に近い。
【0064】
CHFは、AMIの合併症であり得、上記心臓のポンプ輸送能の低下から生じる。CHFはまた、心臓奇形(例えば、弁疾患)、もしくは心臓組織に損傷を与える他の障害(例えば、心臓ミオパシー)から生じ得る。1種以上の代償機構の活性化に起因して、CHFによって引き起こされる損傷変化は、上記患者が無症候性のままである間ですら、存在しかつ進行し得る。実際には、CHFの初期相の間に通常の心血管機能を維持する上記代償機構は、例えば、上記心臓および循環に対して有害な効果を発揮することによって、上記疾患の進行の実際に寄与し得る。
【0065】
CHFにおいて生じるより重要な病態生理的変化のうちのいくつかは、視床下部−下垂体−副腎軸の活性化、全身の内皮機能不全および心筋リモデリングである。
【0066】
上記視床下部−下垂体−副腎軸の活性化を打ち消すことに特異的に指向される治療剤としては、β−アドレナリン作用遮断薬(β遮断薬)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、特定のカルシウムチャネル遮断薬、ニトレートおよびエンドセリン−1遮断薬が挙げられる。カルシウムチャネル遮断薬およびニトレートは、臨床的な改善を生じるものの、生存の延長は明らかには示さなかったのに対して、β遮断薬およびACEインヒビターは、アルドステロンアンタゴニストを有する場合、寿命を有意に延ばすことを示した。
【0067】
全身の内皮機能不全は、CHFの十分に認識された特徴であり、左心室機能不全の時間徴候(time sign)が存在することによって明らかに示される。内皮機能不全は、心筋微小循環の、心筋細胞との密接な関係に関して重要である。上記証拠は、微小血管機能不全が、筋細胞機能不全および進行性の心筋不全もたらす形態的変化に顕著に寄与することを示唆する。
【0068】
心筋リモデリングは、無症候性心不全から症候性心不全への移行を伴う複雑なプロセスであり、上記心筋層内で一連の適応変化として記載され得る。心筋リモデリングの構成要素は、線維症、筋細胞の生物学的特徴の変化、壊死もしくはアポトーシスによる筋細胞の喪失、細胞外マトリクスの変化、および左心室の室の形状寸法の変化が挙げられ得る。
【0069】
うっ血性心不全の診断は、最も頻繁には、上記患者の関連する病歴、注意深い身体検査、および選択された検査室試験の所見に基づいた臨床的診断である。症状としては、仰臥位で横になった場合に悪化する呼吸困難(息切れ)、体液うっ滞(fluid retention)ならびに肺および四肢における腫脹(例えば、肺性ラ音もしくは下肢の水腫を伴う)が挙げられる。
【0070】
うっ血性心不全は、心肥大の存在(拡張した心臓)もしくは胸部X線での肺血管鬱血によって、強く示唆される。心電図(ECG)は、前壁Q波もしくは上記心電図上で左脚枝(left bundle branch)ブロックを示し得る。上記心エコー図は、うっ血性心不全を同定するための診断的標準である。上記患者は、ドップラー流研究とともに二次元超音波心臓検査を受ける場合がある。放射性核種血管造影もしくはコントラストシネ血管造影法(contrast cineangiography)は、上記心エコー図がはっきりしない場合に役立ち得る。
【0071】
(生きている心臓組織の保護および梗塞サイズの縮小)
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤が、AMIを経験している患者に投与される場合、上記治療剤の投与の非存在下での生きている心臓組織の量と比較して(例えば、治療剤を投与しなかった患者と比較して)、壊死から心臓組織が保護される方法が、提供される。壊死から保護される心臓組織の上記量は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%増大し得る。生きている心臓組織の増大は、MRIもしくはコンピューター断層撮影(CT)スキャンによって決定され得る。
【0072】
心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小させるための方法もまた、本明細書で提供される。「制御する」もしくは「制御」とは、本明細書で使用される場合、障害を低下させるか、その発生率を低下させるか、またはその進行を予防することを意味する。いくつかの場合において、患者の上記梗塞サイズが、治療剤が上記患者に投与される場合に、上記治療剤の投与の非存在下での患者の上記梗塞サイズと比較して(例えば、治療剤が投与されなかった患者と比較して)縮小される方法が、提供される。上記梗塞サイズは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%縮小し得る。上記梗塞サイズの縮小は、MRIによって、および/もしくは電圧/伝導マッピングによって決定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、抗線維症効果を有する治療剤がAMIを経験している患者に投与される場合に、上記治療剤の投与の非存在下でのAMIを経験している患者の心機能と比較して(例えば、治療剤を投与されなかった患者と比較して)、心機能が保存されている方法が提供される。心機能の保存は、超音波心臓検査を使用して駆出率を測定することによって決定され得、ここで上記駆出率は、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、もしくは少なくとも15%だけ改善され得る。心臓組織の保存はまた、MRIを使用して、駆出率を測定することによって決定され得、ここで上記駆出率は、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、もしくは少なくとも15%だけ改善され得るか、そして/または上記梗塞サイズは、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%もしくは少なくとも15%だけ縮小され得る。心機能を決定するための他の方法は、当該分野で公知であり、これらとしては、核造影法(nuclear imaging)、機能的能力、運動能力、New York Heart Association(NYHA)機能分類システム、および心筋酸素消費量(MVO2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
(心室頻拍の発生率の低下)
他の場合において、治療剤が上記患者に投与される場合に、上記治療剤を投与しなかった患者における心室頻拍の発生率と比較して、患者における心室頻拍の発生率が低下される方法が提供される。上記心室頻拍の発生率は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。頻脈の発生率の低下は、心電図(ECGもしくはEKG)によって、または心エコー図によって、決定され得る。
【0075】
(心室細動)
いくつかの実施形態において、心室細動の処置もしくは予防の必要な患者において心室細動を処置もしくは予防するための方法が提供され、上記方法は、上記患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、心室細動の量もしくは程度は、上記治療剤の投与の非存在下での心室細動の量もしくは程度と比較して低下する。
【0076】
心室細動(VF)は、心臓の電気的活動が乱れた状態である。これが起こる場合、心室は、急激なかつ同期化しない様式で収縮する。心室は、拍動するというよりも「振動」し、このことは、心臓がほとんどもしくは全く血液を輸送できなくなる。
【0077】
VFは、生命を脅かすものであり、適切な処置を必要とする。医学的処置がなければ、虚脱および心臓性突然死が生じ得る。心室細動(VF)は、予測できないタイミングで突発的に起こり得、正確な診断を得るための専門の試験を必要とする。
【0078】
VFは、心電図(ECGもしくはEKG)、例えば、ホルターモニター(ホルターモニターは小さく、携帯式の機械で、上記患者のECGを記録し、代表的には、24時間装着される)を使用して診断され得る。このモニターは、安静時に数秒間にわたる心拍を記録するのみである、安静時心電図では現れないかもしれない不整脈を検出し得る。
【0079】
VFはまた、イベントモニター(これは、上記患者が最大1ヶ月間にわたって有し得るページャーの大きさくらいの小さなモニターである)を使用して診断され得る。上記不整脈は、予測できないときに起こり得るので、このモニターは、上記患者が、自身症状を経験しているというシグナルを発する場合に、その異常な律動を記録する。
【0080】
運動ストレスもしくはトレッドミル試験はまた、安静時の心臓の電気的活動とは異なる、運動の間における上記患者の心臓の電気的活動を記録することによって、VFを診断するために使用され得る。
【0081】
VFを診断するための別の方法は、電気生理学研究を介する。電気生理学(EP)研究において、医師は、特別な電極カテーテル(長くて可撓性のワイヤ)を静脈に挿入し、それらを心臓へと導く。これらカテーテルは、電気的インパルスを感知し、また、上記心臓の異なる領域を刺激するために使用され得る。次いで、医師は、不整脈を引き起こす部位を突き止め得る。上記EP研究は、医師が、制御された条件下で不整脈を検査して、任意の他の診断試験より正確で詳細な情報を得ることを可能にする。
【0082】
VFは、例えば、以下の実施例5において記載されるパラメーターのうちのいずれか1つ以上によってモニターおよび測定され得る。いくつかの実施形態において、VFの上記発生率は、上記治療剤を投与しなかった患者におけるVFの発生率と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%だけ低下し得る。
【0083】
(心臓性突然死)
心臓性突然死(突然停止ともいわれる)は、心機能の突然の喪失(心停止)から生じる死亡である。その犠牲者は、心疾患と診断される場合もあるが、そうでない場合もある。死亡の時間および様式は、予測外である。それは、症状が現れてから数分以内に起こる。患者が心停止で突然死亡してしまう最も一般的な、根底にある理由は、冠動脈性心疾患に起因するAMIである。不整脈の他のタイプも、心停止を引き起こし得る。
【0084】
突然死をもたらす心停止のうちの大部分は、病的な心臓における電気的インパルスが急激になる(心室頻拍)か、または無秩序になる(心室細動)か、またはその両方になる場合に起こる。この不規則な心臓律動(不整脈)は、心臓の突然の拍動停止を引き起こす。いくらかの心停止は、心臓が極めて遅くなること(徐脈)に起因する。心停止が心室頻拍もしくは心室細動に起因した場合、生存者は、特に彼らが根底に心疾患を有する場合には、別の停止についてのより高いリスクの状態にある、。
【0085】
従って、いくつかの場合においては、心臓性突然死が、抗線維症効果を有する治療剤が上記患者に投与される場合に、治療剤を投与しなかった患者における心臓死の発生率と比較して、低下する方法が提供される。心臓性突然死の発生率は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。
【0086】
(不整脈)
本発明の方法は、抗線維症効果を有する治療剤を投与することによって、不整脈を制御することが企図される。いくつかの実施形態において、不整脈の発生率もしくは不整脈のリスクを低下させるための方法が提供される。上記発生率もしくはリスクは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%低下し得る。
【0087】
不整脈は、異常な心臓律動である。不整脈では、心拍は、遅すぎるか、速すぎるか、不規則でありすぎるか、または余りにも早すぎる場合がある。不整脈には多くのタイプがあり、これらとしては、心房性期外収縮(心房(心臓の上側の室)で発生する初期の余分な収縮)、心室性期外収縮(PVC)(心拍がとぶ)、心房細動(心房(心臓の上側の室)の異常収縮を引き起こす不規則な心臓律動)、心房粗動(心房における1以上の急速回路によって引き起こされる不整脈)、発作性上室性頻拍(PSVT)(通常は、規則的な律動で、心室の上から発生する急速な心拍数)、副経路頻脈(accessory pathway tachycardia)(心房と心室との間の余分な異常な経路もしくは接続に起因する急速な心拍数)、房室結節性リエントリー性頻拍(AV結節を介した1つより多い経路に起因する急速な心拍数)、心室頻拍(VT)(心臓の下側の室(もしくは心室)から生じる急速な心臓律動)、心室細動(心室からの不規則で迷走性のインパルスの興奮)、徐脈性不整脈(心臓の電気伝導系における疾患から生じ得る遅い心臓律動)、および/またはQT延長症候群(QT間隔は、心筋が収縮し、次いで、回復する、すなわち、電気的インパルスがインパルスを興奮させ、次いで回復にかかる時間を表す心電図(ECG)上の面積である)が挙げられる。上記QT間隔が通常より長い場合、「先端のねじれ(torsade de pointes)」(心室頻拍の生命を脅かす形態)のリスクが増す。
【0088】
不整脈の症状としては、胸痛、失神、速いもしくは遅い心拍数(心悸亢進)、意識朦朧、眩暈、蒼白、息切れ、心拍数のとび、脈拍パターンの変化、および発汗が挙げられる。不整脈は、心電図、ホルターモニター、イベントモニター、ストレス試験、心エコー図、心臓カテーテル法、電気生理学研究(EPS)、および頭を上にした体位変換台試験(head−up tilt table test)のような方法を使用して、当業者によって診断され得る。
【0089】
不整脈を制御するために有効な治療剤の量は、(例えば、動物モデルにおいてまたは臨床試験の間に)心室リモデリングを低下させるに有効な量であり得る。心室リモデリングとは、左心室への傷害後に、心臓の大きさ、形状、および機能における変化に言及する。上記傷害は、代表的には、AMIに起因する。いくつかの実施形態において、上記心室リモデリングは、AMIによって引き起こされる心室線維症に起因する。上記リモデリングプロセスは、最初の梗塞領域が徐々に拡大し、左心室内腔が拡大し、心室壁における線維性組織沈着によって心筋細胞が置換されることによって特徴付けられる(Kocherら,2001,Nature Medicine 7(4):430−6)。リモデリングプロセスの別の不可欠な要素は、心筋の梗塞性瘢痕内での血管新生(neoangiogenesis)の発生(潜伏性のコラゲナーゼおよび他のプロテイナーゼの活性化を必要とするプロセス)である。通常の環境下では、梗塞床毛細管ネットワークへの血管新生の寄与は、収縮性の代償に必要とされる組織増殖と歩調を合わせるには不十分であり、肥厚しているが、生きている心筋層のより大きな要求を支援することはできない。肥厚した筋細胞への酸素および栄養素の相対的不足は、進行性の梗塞拡大および線維性置換を生じる、別の方法で生きている心筋層の死滅において重要な原因論的な因子であり得る。ヒトおよび動物モデルの両方における梗塞血管床の後期再灌流は、心室リモデリングおよび生存に顕著に有益であることが公知である(Kocherら,2001,Nature Medicine 7(4):430−6)。
【0090】
(治療剤)
開示される方法で使用される治療剤は、線維症に影響を及ぼす任意の治療剤であり得る。企図される薬剤としては、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させる薬剤(GC−1008(Genzyme/MedImmune)が挙げられるが、これらに限定されない);レルデリムマブ(lerdelimumab)(CAT−152;Trabio,Cambridge Antibody);メテリムマブ(metelimumab)(CAT−192,Cambridge Antibody,);LY−2157299(Eli Lilly);ACU−HTR−028(Opko Health))(1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とする抗体、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)およびTGFBR2のインヒビター、ならびにポストレセプターシグナル伝達経路の調節因子を含む));ケモカインレセプターシグナル伝達;エンドセリンレセプターアンタゴニスト(エンドセリンレセプターAおよびBの両方を標的とするインヒビター、およびエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするインヒビター(アンブリセンタン;アボセンタン;ボセンタン;クラゾセンタン;ダルセンタン;BQ−153;FR−139317、L−744453;マシテンタン;PD−145065;PD−156252;PD163610;PS−433540;S−0139;シタセンタンナトリウム(sitaxentan sodium);TBC−3711;ジボテンタンが挙げられるが、これらに限定されない)を含む);結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる薬剤(FG−3019,FibroGenが挙げられるが、これらに限定されない)、また、他のCTGF中和抗体を含む;マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)インヒビター(MMPI−12、PUP−1およびチガポチドトリフルテート(tigapotide triflutate)が挙げられるが、これらに限定されない);上皮増殖因子レセプター(EGFR)の活性を低下させる薬剤(エルロチニブ、ゲフィチニブ、BMS−690514、セツキシマブ、EGFレセプターを標的とする抗体、EGFレセプターキナーゼのインヒビター、およびポストレセプターシグナル伝達経路の調節因子が挙げられるが、これらに限定されない);血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させる薬剤(イマチニブメシレート(Novartis)が挙げられるが、これらに限定されない)、PDGF中和抗体、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とする抗体、PDGFRキナーゼ活性のインヒビター、およびポストレセプターシグナル伝達経路も含む;血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させる薬剤(アキシチニブ、ベバシズマブ、BIBF−1120、CDP−791、CT−322、IMC−18F1、PTC−299、およびラムシルマブが挙げられるが、これらに限定されない)、ならびにVEGF中和抗体、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)およびVEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)を標的とする抗体、VEGFを中和するVEGFR1の可溶性形態(sFlt)およびその誘導体、ならびにVEGFレセプターキナーゼ活性のインヒビターも含む;複数のレセプターキナーゼのインヒビター(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子についてのレセプターキナーゼを阻害するBIBF−1120);インテグリン機能を妨害する薬剤(STX−100およびIMGN−388が挙げられるが、これらに限定されない)およびインテグリン標的化抗体も含む;IL−4の線維症促進活性を妨害する薬剤(AER−001、AMG−317、APG−201、およびsIL−4Rαが挙げられるが、これらに限定されない)およびIL−13(AER−001、AMG−317、アンルキンズマブ(anrukinzumab)、CAT−354、シントレデキン(cintredekin) べスドトクス(besudotox)、MK−6105、QAX−576、SB−313、SL−102、およびTNX−650が挙げられるが、これらに限定されない)およびいずれかのサイトカインに対する中和抗体、IL−4レセプターもしくはIL−13レセプターを標的とする抗体、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体(これは、IL−4およびIL−13の両方に結合しかつ中和すると報告される)、IL−13の全てもしくは一部および毒素(特に、シュードモナス内毒素)を含むキメラタンパク質、JAK−STATキナーゼ経路を介するシグナル伝達も含む;上皮間葉移行を妨害する薬剤(mTorのインヒビター(AP−23573が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる);銅レベルを低下させる薬剤(例えば、テトラチオモリブデート);酸化的ストレスを低下させる薬剤(N−アセチルシステインおよびテトラチオモリブデートが挙げられる);ならびにインターフェロンγが挙げられる。ホスホジエステラーゼ4(PDE4)のインヒビター(Roflumilastが挙げられるが、これらに限定されない);ホスホジエステラーゼ5(PDE5)のインヒビター(ミロデナフィル、PF−4480682、シルデナフィルシトレート、SLx−2101、タダラフィル、ウデナフィル、UK−369003、バルデナフィル、およびザプリナストが挙げられるが、これらに限定されない);またはアラキドン酸経路の改変因子(シクロオキシゲナーゼインヒビターおよび5−リポキシゲナーゼインヒビター(Zileutonが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)である薬剤もまた、企図される。組織リモデリングもしくは線維症を低下させる化合物(プロリルヒドロラーゼインヒビター(1016548、CG−0089、FG−2216、FG−4497、FG−5615、FG−6513、フィブロスタチンA(Takeda)、ルフィロニル、P−1894B、およびサフィロニルが挙げられるが、これらに限定されない)およびペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)−γアゴニスト(ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる)がさらに企図される。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記で定義される式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)は、以下:
【0092】
【化5】
またはピルフェニドンまたは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは(V)の化合物の薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり、ここで
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素化アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである。
【0093】
いくつかの実施形態において、R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、独立して、必要に応じて置換されたピラジニル、必要に応じて置換されたピリダジニル、必要に応じて置換されたピロリル、必要に応じて置換されたチオフェニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたイミダゾリル、必要に応じて置換されたイソオキサゾリル、必要に応じて置換されたピラゾリル、必要に応じて置換されたイソチアゾリル、必要に応じて置換されたナフチル(napthyl)、必要に応じて置換されたキノリニル、必要に応じて置換されたイソキノリニル、必要に応じて置換されたキノキサリニル、必要に応じて置換されたベンゾチアゾリル、必要に応じて置換されたベンゾチオフェニル、必要に応じて置換されたベンゾフラニル、必要に応じて置換されたインドリル、もしくは必要に応じて置換されたベンゾイミダゾリルである。
【0094】
いくつかの場合において、上記治療剤は、式(II)の化合物であって、ここでX3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、ZはOであり、そしてR2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルであるものである。
【0095】
式(II)のいくつかの具体的な企図された化合物としては、以下が挙げられる:
【0096】
【化6】
【0097】
【化7】
以下の表1に列挙される化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグ。
【0098】
企図される他の具体的な治療剤としては、リラキシン、ウフィロニル(ufironil)、スリホニル(surifonil)、TGF−β抗体、CAT−192、CAT−158;アンブリセンタン(ambresentan)、セリン(thelin);FG−3019、CTGF抗体;抗EGFR抗体;EGFRキナーゼインヒビター;タルセバ;ゲフィチニブ;PDGF抗体、PDGFRキナーゼインヒビター;グリベック;BIBF−1120、VEGF、FGF、およびPDGFレセプターインヒビター;抗インテグリン抗体;IL−4抗体;テトラチオモリブデート、銅キレート化剤;インターフェロン−γ;NAC、システインプロドラッグ;肝細胞増殖因子(HGF);KGF;アンジオテンシンレセプター遮断薬(angiotension receptor blocker)、ACEインヒビター、レニンインヒビター;COXおよびLOインヒビター;ジロイトン(Zileuton);モンテルカスト(monteleukast);アバスチン;スタチン;PDE5インヒビター(例えば、シルデナフィル、ウデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、もしくはザプリナスト);ロフミラスト(rofumilast);エタネルセプト(Enbrel);凝固促進因子(procoagulant);プロスタグランジン(例えば、PGE2、PRX−08066、5HT2Bレセプターアンタゴニスト);シントレデキン(cintredekin) ベスドトクス(besudotox)、遺伝子操作されたPseudomonas外毒素に結合体化されたキメラヒトIL13;ロフルミラスト、PDE4インヒビター;FG−3019、抗結合組織増殖因子ヒトモノクローナル抗体;GC−1008、TGF−βヒトモノクローナル抗体;トレプロスチニル、プロスタサイクリンアナログ;インターフェロン−α;QAX−576、IL13調節因子;WEB 2086、PAF−レセプターアンタゴニスト;イマチニブメシレート;FG−1019;スラミン;ボセンタン;IFN-1b;抗IL−4;抗IL−13;タウリン、ナイアシン、NF−κBアンチセンスオリゴヌクレオチド;ならびに一酸化窒素シンターゼインヒビターが挙げられる。ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)−γアゴニスト(ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない)もまた、企図される。
【0099】
本明細書で使用される用語「アルキル」とは、1〜10個の炭素原子の飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。1〜6個の炭素原子のアルキルもまた、企図される。用語「アルキル」は、「架橋アルキル」、すなわち、二環式もしくは多環式の炭化水素基(例えば、ノルボルニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、もしくはデカヒドロナフチルが挙げられる。アルキル基は、必要に応じて、例えば、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびアミノで置換され得る。本明細書に記載されるアナログにおいて、上記アルキル基は、1〜40個の炭素原子、好ましくは、1〜25個の炭素原子、好ましくは、1〜15個の炭素原子、好ましくは、1〜12個の炭素原子、好ましくは、1〜10個の炭素原子、好ましくは、1〜8個の炭素原子、および好ましくは、1〜6個の炭素原子からなることが具体的に企図される。「ヘテロアルキル」は、上記ヘテロアルキルが、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むことを除いて、アルキルとして同様に定義される。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」とは、環式炭化水素基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、およびシクロペンチル)をいう。「ヘテロシクロアルキル」とは、上記環が、酸素、窒素、および硫黄からなる群より独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含むことを除いて、シクロアルキルとして同様に定義される。ヘテロシクロアルキル基の非限定的例としては、ピペリジン(piperdine)、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロフラン、モルホリン、チオフェンなどが挙げられる。シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基は、例えば、アルキル、アルキレンOH、C(O)NH2、NH2、オキソ(=O)、アリール、ハロアルキル、ハロ、およびOHからなる群より独立して選択される1〜3個の基で必要に応じて置換された飽和もしくは部分的に不飽和の環系であり得る。ヘテロシクロアルキル基は、必要に応じて、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキレンアリール、もしくはアルキレンヘテロアリールでさらにN−置換され得る。
【0101】
本明細書で使用される用語「アルケニル」とは、少なくとも1個の炭素二重結合を含む2〜10個の炭素原子の直鎖もしくは分枝鎖の炭化水素基(1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。
【0102】
本明細書で使用される用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨードをいう。
【0103】
本明細書で使用される用語「アルキレン」とは、置換基を有するアルキル基に言及する。例えば、用語「アルキレンアリール」とは、アリール基で置換されたアルキル基をいう。上記アルキレン基は、任意選択のアルキル置換基として先に列挙された1個以上の置換基で必要に応じて置換されている。例えば、アルキレン基は、−CH2CH2−であり得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニレン」とは、上記基が、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むことを除いて、「アルキレン」と同様に定義される。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」とは、単環式もしくは多環式の芳香族基、好ましくは、単環式もしくは二環式の芳香族基、例えば、フェニルもしくはナフチルをいう。別段示されなければ、アリール基は、置換されていないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される1個以上の、および特に、1〜4個の基で置換され得る。例示的アリール基としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、1個もしくは2個の芳香族環を含みかつ芳香族環中に少なくとも1個の窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む単環式もしくは二環式の環系をいう。別段示されなければ、ヘテロアリール基は、置換されていないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される1個以上の、および特に1〜4個の置換基で置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書で使用される用語「重水素化アルキル」とは、1個以上の重水素原子(D)で置換されたアルキル基をいう。
【0108】
本明細書で使用される用語「チオアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のチオ基に言及する。
【0109】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のヒドロキシ基に言及する。
【0110】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」とは、−−O−−結合を介して親分子に共有結合された直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基に言及する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で使用される用語「アルコキシアルキル」とは、アルキル基に付加された1個以上のアルコキシ基に言及する。
【0112】
本明細書で使用される用語「アリールアルコキシ」とは、アリールがアルコキシ基に付加された基をいう。アリールアルコキシ基の非限定的例は、ベンジルオキシ(Ph−CH2−O−)である。
【0113】
用語「アミノ」とは、本明細書で使用される場合、-NR2であって、ここでRは、独立して、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。アミノ基の非限定的例としては、NH2およびN(CH3)2が挙げられる。いくつかの場合において、Rは、独立して、水素もしくはアルキルである。
【0114】
用語「アミド」とは、本明細書で使用される場合、-C(O)NH2、-C(O)NR2、-NRC(O)Rもしくは-NHC(O)Hであって、ここで各Rは、独立して、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、上記アミド基は、-NHC(O)アルキルもしくは-NHC(O)Hである。アミド基の非限定的例としては、-NHC(O)CH3である。
【0115】
本明細書で使用される用語「カルボキシ」もしくは「カルボキシル」とは、-COOHもしくはその脱プロトン化形態-COO−をいう。C1−10カルボキシとは、カルボキシ部分を有する、必要に応じて置換されたアルキルもしくはアルケニル基をいう。例としては、-CH2COOH、−CH2CH(COOH)CH3、および-CH2CH2CH2COOHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「アルコキシカルボニル」とは、-(CO)-O−アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものをいう。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
用語「アルキルカルボニル」とは、-(CO)−アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものをいう。アルキルカルボニル基の例としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
用語「スルホンアミド」とは、-SO2NR2であって、ここでRは、独立して、水素、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、上記スルホンアミド基は、-SO2NR2であって、ここでRは、独立して、水素もしくは必要に応じて置換されたアルキルであるものである。スルホンアミド基の例としては、−SO2N(CH3)2および-SO2NH2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
用語「スルホニル」とは、-SO2Rであって、ここでRは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。いくつかの場合において、スルホニル基は、-SO2アルキルであって、ここで上記アルキル基は、必要に応じて、置換され得るものである。スルホニル基の一例は、メチルスルホニル(例えば、−SO2CH3)である。
【0120】
用語「スルホキシル」とは、-SORであって、ここで各Rは、独立して、水素、または必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリールもしくは必要に応じて置換されたヘテロアリールであるものをいう。スルホニル基の一例は、メチルスルホニル(例えば、−SOCH3)である。
【0121】
炭水化物は、ポリヒドロキシアルデヒドもしくはケトン、または加水分解の際にこのような化合物を生じる物質である。炭水化物は、元素の、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)(炭素および酸素のものの2倍の水素比を有する)を含む。それらの基本形態において、炭化水素は、単純糖(simple sugar)もしくはモノサッカリドである。これら単純糖は、互いに合わされて、より複雑な炭化水素を形成し得る。2個の単純糖の組み合わせは、ジサッカリドである。2〜10個の単純糖からなる炭水化物は、オリゴサッカリドといわれ、より多くの数を有するものは、ポリサッカリドといわれる。
【0122】
用語「ウロニド」とは、カルボキシル基を上記環の一部でない炭素上に有するモノサッカリドをいう。上記ウロニドの名称は、上記モノサッカリドの根を保持するが、上記のオースという糖の接尾辞は、ウロニドに変化させられる。例えば、グルクロニドの構造は、グルコースに対応する。
【0123】
本明細書で使用される場合、ラジカルは、単一の、不対電子を有する種を示し、その結果、上記ラジカルを含む種が、別の種に共有結合し得る。従って、この状況において、ラジカルは、必ずしもフリーラジカルでなくてもよい。むしろ、ラジカルは、より大きな分子の特定の部分を示す。用語「ラジカル」とは、用語「基」と交換可能に使用され得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、置換された基は、1個以上の水素原子を別の原子もしくは基と交換した、置換されていない親構造から得られる。「置換基」とは、本明細書で使用される場合、以下の部分から選択される基を意味する:
(A)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(B)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール、これらは、以下から選択される少なくとも1個の置換基で置換されている:
(i)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(ii)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール、これらは、以下から選択される少なくとも1個の置換基で置換されている:
(a)−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、ならびに
(b)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アミド、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、シリル、スルホニル、スルホキシル、アルコキシ、アリールオキシ、およびヘテロアリール(これらは、−OH、−NH2、−SH、−CN、−CF3、−NO2、オキソ、ハロゲン、置換されていないアルキル、置換されていないヘテロアルキル、置換されていないシクロアルキル、置換されていないヘテロシクロアルキル、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないアルコキシ、置換されていないアリールオキシ、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチルから選択される少なくとも1個の置換基で置換されている)。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記置換基は、「大きさが制限された置換基(size−limited substituent)」もしくは「大きさが制限された置換基(size−limited substituent group)」であり、これらは、「置換基(substituent group)」について上記に記載される置換基(substituent)のうちの全てから選択される基であって、ここで各置換されているかもしくは置換されていないアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC1−C20アルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない2〜20員のヘテロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC4−C8シクロアルキルであり、そして各置換されているかもしくは置換されていないヘテロシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない4〜8員のヘテロシクロアルキルであるものをいう。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記置換基は、「低級置換基(lower substituent)」もしくは「低級置換基(lower substituent group)」であり、これらは、「置換基」について上記で記載される置換基のうちのすべてから選択される基であって、ここで各置換されているかもしくは置換されていないアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC1−C8アルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない2〜8員のヘテロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていないC5−C7シクロアルキルであり、各置換されているかもしくは置換されていないヘテロシクロアルキルは、置換されているかもしくは置換されていない5〜7員のヘテロシクロアルキルであるものをいう。
【0127】
いくつかの場合において、上記置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、縮合アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、アルコキシカルボニル、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、トリフルオロメチル、およびアミノ(モノ置換およびジ置換されたアミノ基を含む)、ならびにこれらの保護された誘導体から個々にかつ独立して選択される1個以上の基である。
【0128】
上記置換基の保護誘導体を形成し得る保護基は、当業者に公知であり、参考文献(例えば、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis;3rd Edition,John Wiley and Sons:New York,2006)において見いだされ得る。置換基が、「必要に応じて置換された」と記載される場合はどこでも、その置換基は、上記の置換基で置換され得る。
【0129】
不斉炭素原子が存在し得る。全てのこのような異性体(ジアステレオマ−およびエナンチオマー、ならびにこれらの混合物が挙げられる)は、本明細書の開示の範囲に含まれることが意図される。特定の場合において、化合物は、互変異性形態で存在し得る。全ての互変異性形態は、本明細書の開示の範囲に含まれることが意図される。同様に、化合物がアルケニルもしくはアルケニレン基を含む場合、上記化合物のシス異性形態およびトランス異性形態で存在する可能性がある。シス異性体およびトランス異性体、ならびにシス異性体とトランス異性体との混合物の両方が、意図される。
【0130】
開示される方法で使用され得る化合物は、米国特許公開第2007/0049624号(WO 05/0047256の米国国内段階)、国際公開WO 03/068230、WO 08/003141、WO 08/157786、もしくは米国特許第5,962,478号;同第6,300,349号;同第6,090,822号;同第6,114,353号;再発行第40,155号;米国特許第6,956,044号;もしくは同第5,310,562号に記載されるものを含む。上記開示される方法で使用される化合物の合成は、当該分野で公知の任意の手段(本明細書で列挙される特許および特許公開に記載されるものが挙げられる)によるものであり得る。他の合成手段が使用され得、当業者の知識の範囲内であり得る。
【0131】
上記開示される方法で使用することが企図される化合物の1つのクラスは、本明細書で開示される化合物のうちのいずれかの重水素化(D)形態である。1つの具体的なこのような化合物は、ピルフェニドンのメチルもしくは水素のうちのいずれかまたは全てを置換するために、CD3部分および/もしくはDを有する化合物である。例としては、以下が挙げられる:
【0132】
【化8】
これら化合物の合成は、国際特許公開番号WO 08/157786に見いだされ得る。
【0133】
式(I)、式(II)、式(III)、もしくは式(IV)のいくつかの具体的化合物は、表1に列挙される。これら化合物の合成の説明は、米国仮特許出願第61/058,436号(2008年6月3日出願)および同第61/074,446号(2008年6月20日出願)(これらの開示は、各々本明細書に参考として援用される)において見いだされ得る。
【0134】
【表1−1】
【0135】
【表1−2】
【0136】
【表1−3】
【0137】
【表1−4】
【0138】
【表1−5】
【0139】
【表1−6】
【0140】
【表1−7】
【0141】
【表1−8】
【0142】
【表1−9】
【0143】
【表1−10】
【0144】
【表1−11】
【0145】
【表1−12】
【0146】
【表1−13】
【0147】
【表1−14】
【0148】
【表1−15】
【0149】
【表1−16】
【0150】
【表1−17】
【0151】
【表1−18】
【0152】
【表1−19】
【0153】
【表1−20】
【0154】
【表1−21】
【0155】
【表1−22】
【0156】
【表1−23】
【0157】
【表1−24】
【0158】
【表1−25】
【0159】
【表1−26】
【0160】
【表1−27】
【0161】
【表1−28】
【0162】
【表1−29】
【0163】
【表1−30】
【0164】
【表1−31】
式(I)、式(II)、式(III)、もしくは式(IV)の他の具体的化合物としてはまた、以下の化合物が挙げられる。
【0165】
【化9】
【0166】
【化10】
【0167】
【化11】
【0168】
【化12】
上記開示される方法において使用することが企図された他の化合物としては、以下の属I’、属II’、属III’、および属IV’の化合物が挙げられる。属I’、属II’、属III’、および属IV’の化合物の合成は、国際特許公開番号WO 07/062167(その全体が本明細書に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0169】
【化13】
ここでR’、R2’、R3’、R4’およびR6’の各々は、H、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、必要に応じて置換されたC1−6アルキル、必要に応じて置換されたC3−7シクロアルキル、必要に応じて置換されたC4−10アルキルシクロアルキル、必要に応じて置換されたC2−6アルケニル、必要に応じて置換されたC1−6アルコキシ、必要に応じて置換されたC6もしくは10アリール、必要に応じて置換されたピリジニル、必要に応じて置換されたピリミジニル、必要に応じて置換されたチエニル、必要に応じて置換されたフラニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたフェノキシ、必要に応じて置換されたチオフェノキシ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換された尿素、必要に応じて置換されたチオ尿素、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたケト、必要に応じて置換されたカルボキシル、必要に応じて置換されたカルバミル、必要に応じて置換されたスルフィド、必要に応じて置換されたスルホキシド、必要に応じて置換されたスルホン、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたアルコキシアミノ、必要に応じて置換されたアルキルオキシヘテロシクリル(alkyoxyheterocyclyl)、必要に応じて置換されたアルキルアミノ、必要に応じて置換されたアルキルカルボキシ、必要に応じて置換されたカルボニル、必要に応じて置換されたスピロ環式シクロアルキル、必要に応じて置換されたピラジニル、必要に応じて置換されたピリダジニル、必要に応じて置換されたピロリル、必要に応じて置換されたチオフェニル、必要に応じて置換されたチアゾリル、必要に応じて置換されたオキサゾリル、必要に応じて置換されたイミダゾリル、必要に応じて置換されたイソオキサゾリル、必要に応じて置換されたピラゾリル、必要に応じて置換されたイソチアゾリル、必要に応じて置換されたナフチル(napthyl)、必要に応じて置換されたキノリニル、必要に応じて置換されたイソキノリニル、必要に応じて置換されたキノキサリニル、必要に応じて置換されたベンゾチアゾリル、必要に応じて置換されたベンゾチオフェニル、必要に応じて置換されたベンゾフラニル、必要に応じて置換されたインドリル、および必要に応じて置換されたベンゾイミダゾリル、またはこれらの薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグからなる群より独立して選択される。
【0170】
上記開示される治療剤の塩、例えば、薬学的に受容可能な塩は、適切な塩基もしくは酸と、上記治療剤の化学量論的相当量とを反応させることによって調製され得る。同様に、上記治療剤の薬学的に受容可能な誘導体(例えば、エステル)、代謝産物、水和物、溶媒和物およびプロドラッグは、当業者に一般に公知の方法によって調製され得る。従って、別の実施形態は、活性化合物のプロドラッグである化合物を提供する。一般に、プロドラッグは、インビボで代謝され(例えば、代謝的変換(例えば、脱アミノ化、脱アルキル化、脱エステル化などによって)て、活性化合物を提供する化合物である。「薬学的に受容可能なプロドラッグ」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などがなしで、患者における薬学的使用に適しており、意図された使用について有効である化合物(上記治療剤の薬学的に受容可能なエステル、ならびに可能であれば、双性イオン形態が挙げられる)を意味する。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なエステル」とは、インビボで加水分解するエステルに言及し、これらとしては、ヒトの身体中で容易に分解されて、上記親化合物もしくはその塩を放出するものが挙げられる。適切なエステル基としては、例えば、薬学的に受容可能な脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸から得られるものが挙げられ、ここで各アルキルもしくはアルケニル部分は、有利には、6個以下の炭素原子を有する。特定のエステルの代表的な例としては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、アクリレートおよびエチルスクシネートが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なプロドラッグタイプの例は、A.C.S.Symposium SeriesのHiguchiおよびStella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14、およびRoche編,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(これらは共に本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0171】
本明細書に記載される化合物および組成物はまた、代謝産物を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「代謝産物」とは、開示された治療剤に類似の活性をインビトロもしくはインビボで示す、上記実施形態の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、アナログもしくは誘導体の代謝の生成物を意味する。本明細書に記載される化合物および組成物はまた、水和物および溶媒和物を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」とは、溶質(本明細書では、上記治療剤)および溶媒によって形成される複合体をいう。上記実施形態の目的のためのこのような溶媒は、好ましくは、上記溶質の生物学的活性を否定的に妨害するべきでない。溶媒は、例示すると、水、エタノールもしくは酢酸であり得る。前述に鑑みると、特定の化合物もしくは化合物の属に対する本明細書における言及は、上記に記載される種々の形態(その薬学的に受容可能な塩、エステル、プロドラッグ、代謝産物および溶媒和物を含む)を含むことが理解される。
【0172】
(投薬および薬学的処方物)
用語「治療上有効な量」および「予防上有効な量」とは、本明細書で使用される場合、同定された疾患もしくは状態を処置、改善もしくは予防するか、または検出可能な治療効果、予防効果、もしくは阻害効果を示すのに十分な化合物の量をいう。上記効果は、例えば、臨床状態の改善、症状の軽減によって、または本明細書に記載されるアッセイもしくは臨床的診断試験のうちのいずれかによって、検出され得る。被験体に関する正確な有効量は、上記被験体の体重、大きさ、および健康状態;状態の性質および程度;ならびに投与のために選択された上記治療剤もしくは治療剤の組み合わせに依存する。所定の状況に関する治療上および予防上有効な量は、臨床家の技術および判断内である慣用的実験によって決定され得る。
【0173】
本明細書で開示される治療剤は、合計量約50〜約2400mg/日で投薬され得る。上記投与量は、その日にわたって2用量もしくは3用量へ分割され得るか、または単一の1日用量で与えられ得る。上記開示される方法について企図される治療剤の合計1日量の具体的な量としては、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約267mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約534mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1068mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1335mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1869mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2136mg、約2150mg、約2200mg、約2250mg、約2300mg、約2350mg、および約2400mgが挙げられる。
【0174】
上記治療剤の投与量は、代わりに、mg/kg単位で測定される用量として投与され得る。上記開示される治療剤の意図されるmg/kg用量としては、約1mg/kg〜約60mg/kgが挙げられる。用量(mg/kg単位)の具体的な範囲としては、約1mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約20mg/kg、約10mg/kg〜約20mg/kg、約25mg/kg〜約50mg/kg、および約30mg/kg〜約60mg/kgが挙げられる。
【0175】
上記患者がAMIを経験したことがある方法において、上記治療剤の投与は、上記AMIを経験して1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、28日後、29日後、30日後、31日後、32日後、33日後、34日後、35日後、36日後、37日後、38日後、39日後、40日後、41日後、もしくは42日後に開始され得る。上記AMIを経験して約1〜40日後、約1〜30日後、約1〜25日後、約1〜20日後、約1〜14日後、約1〜10日後、約2〜40日後、約3〜40日後、約3〜38日後、約3〜30日後、約3〜25日後、約3〜20日後、約3〜15日後、約3〜14日後、約3〜10日後、約4〜36日後、約4〜30日後、約4〜25日後、約4〜20日後、約4〜14日後、約5〜40日後、約5〜34日後、約5〜30日後、約5〜25日後、約5〜20日後、約5〜14日後、約6〜40日後、約6〜32日後、約6〜30日後、約6〜25日後、約6〜20日後、約6〜14日後、約7〜40日後、約7〜30日後、約7〜25日後、約7〜20日後、約7〜14日後、約8〜28日後、約9〜26日後、約10〜24日後、約12〜22日後、約13〜20日後、もしくは約14〜18日後の処置の開始もまた、企図される。処置、例えば、上記治療剤の継続投与は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも6週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、もしくは少なくとも1年にわたって続き得る。例えば、上記処置は、最大3ヶ月、最大4ヶ月、最大5ヶ月、もしくは最大6ヶ月の間であり得る。いくつかの実施形態において、AMIを経験している患者は、上記AMIを経験して最大4週間後の期間にわたって上記治療剤が投与され続ける。例えば、上記治療剤は、上記AMIを経験してから2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、および/もしくは28日後である日に、投与され続ける。
【0176】
本明細書の他の箇所で記載される場合、本明細書で記載される化合物は、薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、もしくは希釈剤とともに薬学的組成物中に処方され得る。上記化合物、もしくは上記化合物を含む組成物は、上記疾患もしくは状態の処置を可能にする任意の経路によって投与され得る。好ましい投与経路は、経口投与である。さらに、上記化合物、もしくは上記化合物を含む組成物は、任意の標準的投与経路(非経口(例えば、静脈内、腹腔内、肺内、皮下もしくは筋肉内、髄腔内、経皮的、直腸、経口、鼻もしくは吸入による)が挙げられる)を使用して患者に送達され得る。遅延放出処方物はまた、胃腸管中で体液と接触した状態で上記活性薬剤の制御された放出を達成するために、および血漿中で上記活性薬剤の実質的に一定かつ有効なレベルを提供するために、本明細書で記載される薬剤から調製され得る。その結晶形態は、生分解性ポリマー、水溶性ポリマー、もしくはこれらの混合物、および必要に応じて、適切な界面活性剤のポリマーマトリクス中に、この目的のために埋め込まれ得る。埋め込みは、この状況においては、ポリマーのマトリクス中に微粒子を組み込むことを意味する。制御放出処方物はまた、公知の分散技術もしくはエマルジョンコーティング技術を介して、分散された微粒子もしくは乳化された微小液滴の封じ込めを介して得られる。
【0177】
投与は、単一用量投与の形態をとり得るか、または上記実施形態の化合物は、一定期間にわたって、分割用量もしくは連続放出処方物のいずれかで、または投与法(例えば、ポンプ)で投与され得る。上記実施形態の化合物が上記被験体に投与されるが、投与される化合物の量および選択される投与経路は、上記疾患状態の有効な処置を可能にするように選択されるべきである。
【0178】
一実施形態において、上記薬学的組成物は、特定の投与様式および投与形態に依存して、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、キャリア、溶媒、安定化剤、アジュバント、希釈剤など)とともに処方され得る。上記薬学的組成物は、一般に、生理学的に適合性のpHを達成するために処方されるべきであり、上記処方物および投与経路に依存して、pH約3〜pH約11、好ましくは、約pH3〜約pH7の範囲に及び得る。代替の実施形態において、上記pHが、約pH5.0〜約pH8の範囲に調整されることは、好ましいことであり得る。より具体的には、上記薬学的組成物は、本明細書に記載されるように、少なくとも1種の化合物の治療上もしくは予防上有効な量を、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤とともに含み得る。必要に応じて、上記薬学的組成物は、本明細書に記載される化合物の組み合わせを含み得るか、または細菌感染の処置もしくは予防において有用な第2の活性成分(例えば、抗細菌剤もしくは抗菌剤)を含み得る。種々の実施形態において、本発明の方法に従って、単独で、もしくは別の治療剤との組み合わせで使用され得る治療剤の例としては、組織リモデリングもしくは線維症を低下させる薬剤、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させる薬剤、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とする薬剤、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害する薬剤、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節する薬剤、エンドセリンレセプターアンタゴニストである薬剤、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とする薬剤もしくはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とする薬剤、結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させる薬剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)(特に、MMP−9および/もしくはMMP−12)を阻害する薬剤、上皮増殖因子レセプター(EGFR)の活性を低下させる薬剤、上記EGFレセプターを標的とする薬剤、またはEGFレセプターキナーゼを阻害する薬剤、血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させる薬剤、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とする薬剤、PDGFRキナーゼ活性を阻害する薬剤、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害する薬剤、血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させる薬剤、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)のうちの1つ以上を標的とする薬剤、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子についてのレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120の場合のように、複数のレセプターキナーゼを阻害する薬剤、インテグリン機能(特に、インテグリンαVβ6)を妨害する薬剤、IL−4およびIL−13の線維症促進活性を妨害する薬剤、IL−4レセプター、IL−13レセプターを標的とする薬剤、JAK−STATキナーゼ経路を介するシグナル伝達を調節する薬剤、上皮間葉移行を妨害する薬剤、mTorを阻害する薬剤、銅レベルを低下させる薬剤、酸化的ストレスを低下させる薬剤、プロリルヒドロラーゼを阻害する薬剤、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害する薬剤、アラキドン酸経路を改変する薬剤、あるいはPPAR−γのアゴニストとして作用する薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
例えば、非経口投与もしくは経口投与のための処方物は、最も代表的には、固体、液体溶液、エマルジョンもしくは懸濁物である一方で、肺投与のための吸入可能な処方物は、一般に、液体もしくは粉末であり、粉末処方物が一般に好ましい。好ましい薬学的組成物はまた、投与前に、生理学的に適合性の溶媒で再構成される凍結乾燥固体として処方され得る。代替の薬学的組成物は、シロップ剤、クリーム剤、軟膏、錠剤などとして処方され得る。
【0180】
用語「薬学的に受容可能な賦形剤」とは、薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物)の投与のための賦形剤に言及する。上記用語は、過度の毒性無しに投与され得る任意の薬学的賦形剤に言及する。
【0181】
薬学的に受容可能な賦形剤は、投与される特定の組成物によって、ならびに上記組成物を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定される。よって、薬学的組成物の広く種々の適切な処方物が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと)。
【0182】
適切な賦形剤は、大きく、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー状アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子)を含むキャリア分子であり得る。他の例示的な賦形剤としては、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、キレート化剤(例えば、EDTA)、炭水化物(例えば、デキストリン、ヒドロキシアルキルセルロース、および/もしくはヒドロキシアルキルメチルセルロース)、ステアリン酸、液体(例えば、油、水、食塩水、グリセロールおよび/もしくはエタノール)、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化物質などが挙げられる。リポソームはまた、薬学的に受容可能な賦形剤の定義内に含まれる。
【0183】
本明細書に記載される薬学的組成物は、意図される投与法に適した任意の形態で処方され得る。経口的使用について意図される場合、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性懸濁物もしくは油性懸濁物、非水性溶液、分散性の散剤もしくは顆粒剤(微紛化粒子もしくはナノ粒子を含む)、エマルジョン、硬質カプセル剤もしくは軟質カプセル剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤が調製され得る。経口的使用について意図される組成物は、薬学的組成物の製造について当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、口に合う調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤を含む1種以上の薬剤を含み得る。
【0184】
錠剤とともに使用するのに特に適した薬学的に受容可能な賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤(例えば、セルロース、炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム);崩壊剤(例えば、架橋ポビドン、とうもろこしデンプン、もしくはアルギン酸);結合剤(例えば、ポビドン、デンプン、ゼラチンもしくはアカシアゴム);および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク)が挙げられる。
【0185】
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、公知の技術(胃腸管での崩壊および吸着を遅らせるための微小封じ込めが挙げられる)によってコーティングされ、それによって、より長期間にわたって持続性の作用を提供してもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、モノステアリン酸グリセリルもしくはジステアリン酸グリセリル)は、単独でもしくはワックスとともに、使用され得る。
【0186】
経口的使用のための処方物はまた、硬質ゼラチンカプセル剤(ここで上記活性成分は、不活性固体希釈剤(例えば、セルロース、ラクトース、リン酸カルシウムもしくはカオリン)とともに混合される)または軟質ゼラチンカプセル剤(ここで上記活性成分は、非水性もしくは油性媒体(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油)と混合される)として提示され得る。
【0187】
別の実施形態において、薬学的組成物は、懸濁物の製造に適した少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤と混合されて、上記実施形態の化合物を含む懸濁物として処方され得る。
【0188】
さらに別の実施形態において、薬学的組成物は、適切な賦形剤の添加によって、懸濁物の調製に適した分散性散剤および顆粒剤として処方され得る。
【0189】
懸濁物に関して使用するために適した賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム);分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート));および増粘剤(例えば、カルボマー、蜜蝋、固形パラフィンもしくはセチルアルコール)が挙げられる。上記懸濁物はまた、1種以上の保存剤(例えば、酢酸、メチルp−ヒドロキシベンゾエートもしくはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート);1種以上の着色剤;1種以上の矯味矯臭剤;および1種以上の甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン)を含み得る。
【0190】
上記薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であり得る。その油相は、植物性油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴムおよびトラガカントゴム);天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸から得られるエステルもしくは部分エステル;ヘキシトール無水物(例えば、ソルビタンモノオレエート);およびエチレンオキシドとのこれら部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトールもしくはスクロース)とともに処方され得る。このような処方物はまた、粘滑剤、保存剤、矯味矯臭剤もしくは着色剤を含み得る。
【0191】
さらに、上記薬学的組成物は、滅菌注射用調製物(例えば、滅菌注射用水性エマルジョンもしくは油性懸濁物)の形態であってよい。このエマルジョンもしくは懸濁物は、それらの適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤(上記のものが挙げられる)を使用して、当業者によって処方され得る。上記滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射用溶液(例えば、1,2−プロパン−ジオール中の溶液)もしくは懸濁物であり得る。
【0192】
上記滅菌注射用調製物はまた、凍結乾燥粉末として調製され得る。使用され得る上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒もしくは懸濁媒体として使用され得る。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油が、使用され得る(合成モノグリセリドもしくは合成ジグリセリドを含む)。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が、注射物の調製において同様に使用され得る。
【0193】
薬学的組成物の安定な水溶性投与形態を得るために、本明細書に記載される化合物の薬学的に受容可能な塩は、有機酸もしくは無機酸の水溶液(例えば、コハク酸、もしくはより好ましくは、クエン酸の0.3M溶液)中に溶解され得る。可溶性の塩形態が利用可能でない場合、上記化合物は、適切な共溶媒もしくは共溶媒の組み合わせ中に溶解され得る。適切な共溶媒の例としては、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリンなど(上記総容量のうちの約0〜約60%の範囲に及ぶ濃度で)が挙げられる。一実施形態において、上記活性化合物は、DMSO中に溶解され、水で希釈される。
【0194】
上記薬学的組成物はまた、適切な水性ビヒクル(例えば、水もしくは等張性食塩水もしくはデキストロース溶液)中の上記活性成分の塩形態の溶液の形態にあり得る。化学部分もしくは生化学部分の置換もしくは付加によって改変された化合物もまた企図され、このことは、例えば、エステル化、グリコシル化、PEG化などによって、上記化合物を送達に関してより適切にする(例えば、溶解度、生物活性、嗜好性を増す、有害反応を低下させるなど)。
【0195】
好ましい実施形態において、本明細書に記載される化合物は、経口投与のために、低溶解度化合物に適した脂質ベースの処方物中に処方され得る。脂質ベースの処方物は、一般に、このような化合物の経口バイオアベイラビリティーを増強し得る。
【0196】
よって、好ましい薬学的組成物は、治療上もしくは予防上有効な量の、本明細書に記載される化合物を、中鎖脂肪酸およびそのプロピレングリコールエステル(例えば、食用脂肪酸(例えば、カプリル脂肪酸およびカプリン脂肪酸)のプロピレングリコールエステル)および薬学的に受容可能な界面活性剤(例えば、ポリオキシル40 水素化ひまし油)からなる群より選択される少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤を一緒に含む。
【0197】
代替の好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、水溶解度増強剤として添加され得る。好ましいシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンの、ヒドロキシプロピル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体およびマルトトリオシル誘導体が挙げられる。特に好ましいシクロデキストリン溶解度増強剤は、ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン(BPBC)であり、これは、上記の組成物のうちのいずれかに添加されて、上記実施形態の化合物の水溶解度特性をさらに改善し得る。一実施形態において、上記組成物は、約0.1%〜約20% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、より好ましくは、約1%〜約15% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリン、およびさらにより好ましくは、約2.5%〜約10% ヒドロキシプロピル−o−シクロデキストリンを含む。使用される溶解度増強剤の量は、上記組成物中の本発明の化合物の量に依存する。
【0198】
上記実施形態の方法はまた、疾患状態の処置のための1種以上のさらなる治療剤とともに、本明細書に記載される1つまたは複数の化合物の使用を含む。従って、例えば、活性成分の組み合わせは、以下であり得る:(1)組み合わせ処方物中で同時に処方され、同時に投与されるかもしくは送達される;(2)別個の処方物として交互に送達されるか、平行して送達される;または(3)当該分野で公知の任意の他の組み合わせ治療レジメンによって送達される。交互の治療で送達される場合、本明細書に記載される方法は、例えば、別個の溶液、エマルジョン、懸濁物、錠剤、丸剤もしくはカプセル剤において、または別個のシリンジ中の異なる注射剤によって、連続して、上記活性成分を投与するかまたは送達することを包含し得る。一般に、交互の治療の間に、各活性成分の有効用量は、連続して、すなわち、一続きで投与されるのに対して、同時の治療では、2種以上の活性成分の有効用量は、一緒に投与される。間欠性組み合わせ治療の種々の順序もまた、使用され得る。
【0199】
本発明は、本発明の例示的実施形態を詳述する以下の実施例を参照することによって、より十分に理解される。しかし、本発明の実施例は、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。上記開示全体を通じての全ての引用は、明示的に本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0200】
(実施例1:実験的心筋梗塞(MI)プロトコル)
この実施例において、プロトコルを、ピルフェニドン処置後の虚血−再灌流ラットモデルにおける心室機能、線維症の程度およびVT誘導性を試験するために記載する。心室機能を、超音波心臓検査を介して評価した。VT誘導性を、プログラムされた刺激およびEP研究によって評価した。電気生理学的特性を、高分解能光学マッピングを使用して評価し、線維症の程度を、標準的組織学的技術を使用して研究した。
【0201】
ベースライン超音波心臓検査後に、30匹の雄性Sprague−Dawleyラット(6〜10週齢)に、虚血−再灌流モデルを使用して心筋梗塞を経験させた。簡潔には、ラットに、吸入イソフルラン(5% 誘導、2.5% 維持、O2 排出 1L/分)を使用して麻酔をかけ、電気で温めた動物用手術台上に仰臥位で配置した。ラットに、16ゲージのi.v.カテーテルを使用して挿管し、次いで、Harvard齧歯類人工呼吸器を使用して換気した。左の開胸術および心膜切開術を行った後に、7−0 Ticron縫合糸を、ランドマークとして左心耳および右流出路(right outflow tract)を使用して、心筋層へと導入した。エントリーの深さは、2mmであった。これは、左冠動脈のレベルより僅かに大きかった。次いで、縫合糸の両端を、PE−90ポリエチレンチューブ 6インチ長に通して、上記動脈の周りに「係蹄ループ(snare loop)」を形成し、これを、上記縫合糸の自由な両端を引っ張ることによって閉じた。上記係蹄ループを、閉じて、10秒後に解くことによって試験して、適切な虚血および再灌流を証明した。次いで、上記縫合糸を締めて上記動脈を20秒間閉塞させ、次いで、とり除いて、再灌流を可能にした。次いで、胸部を5−0 プロレン(prolene)縫合糸で閉じ、上記動物を回復させた。1週間後および超音波心臓検査を反復した後、ラットを、4週間にわたって、プラセボ齧歯類飼料(コントロール群、n=15)もしくは1.2% ピルフェニドン(PFD)と混合した齧歯類飼料(処置群、n=15)に無作為化した。全ての実験およびデータ分析を、作業者が処置群を分からないようにして行った。
【0202】
(統計分析)
本明細書に記載される研究の統計比較を、別段示されなければ、対応のあるt検定もしくは対応のないt検定を使用して、群間で行った。Fisherの正確度検定を使用して、コントロール群とPFD処置群との間のVT誘導性を比較した。全ての値を、平均±SEMとして報告する。P<0.05を有意と見なした。
【0203】
(実施例2:実験モデルの超音波心臓検査分析)
ベースラインにおいて、および梗塞の1週間後および5週間後において、25−MHz 機械式変換器(mechanical transducer)を備えた市販の高分解能超音波心臓検査システム(Vevo 660,VisualSonics,Toronto,ON,Canada)を、超音波心臓検査に使用した。ラットを、温かい台の上に仰臥位で配置し、ECG四肢電極を取り付けた。超音波減衰を最小限にするために、その胸部を剃毛し、化学的除毛剤(chemical hair remover)(Nair)できれいにした。Aquasonic 100ゲル(Parker Laboratories,Fairfield,NJ)を、胸部表面に塗布して、心臓の区画(cardiac chamber)の視認度を最適化した。胸骨傍長軸および胸骨傍短軸の二次元画像を獲得した。
【0204】
長軸画像を使用して、左心室(LV)の収縮末期容積および拡張末期容積(ESVおよびEDV)、ならびにLV駆出率(LVEF)を、最大断面積および最小断面積ならびに幅を有する枠を使用することによって計算した。上記システムソフトウェアは、円筒−半楕円モデル(cylindrical−hemiellipsoid model)(容積=8×面積2÷3÷長さ)に基づく式を利用する。LVEFを、以下の式(EDV−ESV)/EDV×100を使用して計算した。内径短縮率(FS)を、乳頭筋レベルで、LV拡張末期直径および収縮末期直径の%変化に基づいて、上記胸骨傍長軸画像のMモードから評価した。LV質量を、拡張末期において以下の式を使用して概算した:LV質量=1.05×(心外膜容積−心内膜容積)(ここで容積は、円筒−半楕円モデルに基づく)。上記齧歯類におけるLV機能のこれら評価を、十分に検証した。心エコー画像獲得および分析を、上記処置群に対して分からないようにしながら得た。
【0205】
ベースライン、MI後1週間、およびMI後5週間での一連の超音波心臓検査は、両方の群において、LV拡張、EDVおよびESVの増大、ならびに駆出率の減少を含め、ラットの進行性のLVリモデリングの証拠を示した。しかし、上記ピルフェニドン処置群は、その駆出率において有意に少ない低下を有した(コントロール群において68±6%〜45±14%、およびPFD処置群において66±5%〜36±15%)(図1)。上記処置期間(1週間目から5週間目)の間に、コントロール(24.3%)と比較して、上記ピルフェニドン処置ラットのEFにおいて有意に(p=0.005)低い%の低下(8.6%)が認められた。
【0206】
(実施例3:実験モデルにおける不整脈の電気生理学分析および評価)
光学マッピングは、心臓組織の高分解能電気生理学的評価を行う技術である。上記手順をまとめるために、1万の同時の光学活動電位を、LV前壁の心外膜上の19mm×19mm マッピング野内で、100×100 CMOSカメラで記録した。1000−W タングステン−ハロゲン光源を使用して、530nmの励起フィルタで蛍光を励起し、>630nmの発光ロングパスフィルタを透過させた。蛍光光学マップを、プログラムされた電気的刺激の間に、2000Hzで獲得した。光学マッピングを、MIの5週間後に行った。ラットに、心臓を摘出する前に、ヘパリン(500 U ip)を15分間で注射し、次いで、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg ip)で麻酔をかけた。適切な麻酔の後、心臓を素早く摘出し、冷たい心停止溶液中に浸漬することによって停止させた。大動脈にカニューレを入れ、6mL/分の速度で、95% O2/5% CO2を通気した、37℃の改変タイロード溶液((mmol/L単位で):130 NaCl、20.0 NaHCO3、1.2 MgCl2、4.0 KCl、5.6 グルコース、および1.8 CaCl2を含む)を用いて逆方向に灌流した。付着した組織を注意深く心臓から除去した。次いで、上記カニューレを挿入した心臓を、特殊化した温度制御された光学記録チャンバ(37℃で維持)において、37℃のタイロード溶液中に置いた一方で、ECG、灌流速度、および温度を、上記実験の期間にわたって連続して測定した。光学的記録の前に、電位感受性色素PGH I(10μLの5mM ストック溶液)を含むタイロード溶液を、5分間かけて、調製物を通して灌流した。
【0207】
いったんカニューレを挿入した心臓を、PGH Iで還流したら、それを、上記光学チャンバ中に、そのLV前壁を、画像化ウインドウに対して押しつけて配置した。上記マッピング野内に正常域、境界域および梗塞組織の領域を含めるために、匹敵するマッピング位置を、上記心臓全てに関して使用した。光学記録の間に、15mM ブタジオンモノオキシム(BDM)で収縮をブロックした。心室心外膜二極性ペーシングを、2×閾値の刺激振幅において、上記梗塞域の近くにある正常組織に対して行った。マッピングを、250ms〜90msのペーシング駆動の間に(10msごとに減衰した)、ならびに200msの基本周期長(BCL)および150msの最大S2を使用するS1−S2ペーシングの間に記録し、10msごとに減衰させた。最大3回の外部刺激をともなうプログラムされた刺激およびバーストペーシング(90ms〜60ms)を使用して、不整脈誘導性を評価した。誘導性を、持続した(>30s)心室頻拍(VT)もしくは心室細動を誘発する能力として定義した。マップをまた、プログラムされた刺激の間に、不整脈の全てのエピソードとともに、記録した。
【0208】
光学マッピングデータを、改変OMproCCDソフトウェア(Bum−rak Choi,Pittsburg,PAから)およびMatlabカスタムソフトウェアを使用して分析した。生の蛍光データを、正規化した蛍光強度の動画として調べたところ、上記視野内での活性化が明らかになった。定量的データを、上記CMOSカメラの10,000ピクセルの各々に対する光学的に得た活動電位(AP)から得た。活性化時間および、50%再分極での活動電位期間(APD50)および80%再分極での活動電位期間(APD80)を、各ペーシングした周期長(PCL)に対して測定した。活性化時間を、蛍光APの最大上昇速度(dF/dt)で計算した。APD80は、上記活性化時間(上記活動電位の開始)から上記活動電位が最大蛍光シグナルの20%まで戻った時点(上記光学APのピーク)までの期間である。活性化の等時性マップを、各マップに対して構築した。上昇時間を、上記活動電位の開始と、ピークとの間の時間として計算した。上記OMproCCDソフトウェアを使用して、以前記載されたように、各ピクセルで伝導速度および伝導方向を代表する伝導ベクトルを計算した。位相角(各部位における隣り合う活性化時間とともに平均差として計算される)を、以前に記載されたように、伝導の空間的不均一性を定量するために測定した。周波数ヒストグラムを、記録した領域内の位相角に対して作った。これらヒストグラムを、分布の第50百分位数(P50)でのメジアン相時間(median phase time)、ならびに第5百分位数および第95百分位数(それぞれ、P5およびP95)としてまとめた。不均一性の絶対度(absolute degree)、もしくは不均一性範囲を、上記分布の幅(P95−P5)として定量化した一方で、不均一性指数を、不均一性範囲をメジアン相で割ったもの((P95−P5)/P50)として定義した。全てのパラメーターを、コントロール群およびPFD群の両方、ならびにそれらそれぞれの非梗塞域、境界域、および梗塞域について決定した。これら領域を、以前に記載しかつ検証したように、蛍光の振幅マップを使用して同定した。高振幅(非梗塞)の領域から低振幅(梗塞)の領域への移行を、境界域とみなした。トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色、通常の光条件下での心臓の画像化、および蛍光画像からのさらなる証拠はまた、振幅マップを確証するために使用した。
【0209】
(VT誘導性および電気生理学的特徴付け)
VT誘導の割合は、コントロールMIラットにおいて73.3%であった。これは、当該分野で示されてきたものと一致している。しかし、PFD動物についてのVT誘導の割合は、28.6%で有意に低下した(p=0.027)。
【0210】
光学マッピングを、伝導活動電位特性を分析するために使用した。図2は、全ての動物のLVの3つの領域において測定した伝導速度を示す。コントロール群およびPFD群両方の遠隔の非梗塞域における全てのペーシングした周期長での伝導速度は、上記2つの群の間で類似であった(図2)。コントロール群およびPFD群の両方の梗塞域における伝導速度は、正常(および境界域領域)より有意に遅く、上記2つの群の間で類似であった(図2)。両方の群の上記境界域(MI後心室頻拍の素因がある領域)における伝導速度は、上記遠隔の非梗塞域および梗塞域の伝導速度の中間であった。しかし、上記PFD群についての上記境界域における伝導速度は、コントロール動物の上記境界域におけるものと比較して、全てのPCLにおいて有意に速かった(p<0.05,図2)。
【0211】
図3は、全ての試験した周期長にわたって両方の群において測定した上記伝導不均一性(これは、不整脈の増大した傾向に関連することが示された)を示す。PFD動物のものと比較して、コントロール動物においてより高い伝導不均一性指数に向かう傾向があった(p=0.146)。コントロール動物およびPFD動物について、類似のサイズの梗塞を介した伝導の差異を、代表的な活性化動画において可視化し、上記コントロール動物について、伝導のよりゆっくりしたかつ増大した不均一性を示した。これらパラメーターの全ては、心室不整脈についての増大した基質(substrate)に関連していることが以前に実証された。
【0212】
コントロール非梗塞域およびPFD非梗塞域に関するAP上昇の最大速度(dF/dt)および上昇時間(AP開始から蛍光APのピークまでの期間)は、コントロール梗塞域およびPFD梗塞域に関する上記上昇および上昇時間それぞれと同様に、それぞれ類似であった。しかし、全てのPCLにおいて、PFD境界域の上昇は、コントロール境界域の上昇より速いという傾向があった。逆に、全てのPCLにおいて、PFD境界域の上記上昇時間は、コントロール境界域のものより低いという傾向があった(図4)。この比較は、試験した最低のPCLで統計的に有意であった(図4)。
【0213】
上記3つの領域の蛍光振幅の量もまた、図5に示されるように、定量化した。正常域は最高の振幅を有し、梗塞域は最低の振幅を有し、境界域は、その中間の振幅を有した。上記コントロールのものと比較して、ピルフェニドン処置ラットの上記境界域における蛍光のより高い振幅に向かう傾向が記録された(図5)。このことは、ピルフェニドンが、上記境界域における梗塞拡大に対する影響を有した可能性がある(低下した瘢痕拡大)ことを示唆した。なぜなら、上記ピルフェニドン境界域は、さらなる蛍光を発する、より生存性の心筋を有するようであったからである。このことは、これら心臓の梗塞サイズを試験することによって組織学的に検証された(以下を参照のこと)。
【0214】
(実施例4:梗塞サイズおよび線維症の組織学的分析)
心室組織サンプルを、10% 中性緩衝化ホルマリン中で固定した。上記サンプルをパラフィン中に包埋し、切片化し(10μm厚)、次いで、ファストグリーン対比染色と共に、Masson’s trichromeもしくはSirius redで染色した。染色したスライドを、光学顕微鏡下で鏡検し、高分解能スキャナを使用してデジタル化し、Photoshop CSソフトウェアを使用して分析した。Masson’s trichomeに関する梗塞域は、ファストグリーンが最小限から全くない濃いSirius red染色の領域と密に対応した。梗塞性瘢痕領域および左心室心筋層の全領域は、全ての切片に関して、上記デジタル画像において手動で追跡し、上記ソフトウェアによって自動的に計算した。梗塞サイズ(パーセンテージとして表される)を、全ての切片の梗塞領域の合計を、全ての切片のLV領域の合計で除算して、100をかけることによって、測定した。
【0215】
線維症の総領域をまた、評価した。上記梗塞領域(密な線維症として定義される)を排除した後、上記境界域および非梗塞域における線維症を、上記Sirius red染色切片のデジタル顕微鏡写真から定量した。血管および脈管周囲の間細胞(perivascular interstitial cell)を含む領域もまた、線維症定量から排除した。上記総組織領域に対するデジタル化画像の赤いピクセル含有量を、Adobe Photoshop CSソフトウェアを使用して数えた。
【0216】
(上記実施例の関係性)
梗塞線維症の量を、総心筋層のパーセントとして定量した。コントロールは、上記PFD群(10±1.9%;p=0.022)の梗塞のほぼ2倍(18%±2.7%)を有した(図6)。線維症の量(境界域および非MI領域、ならびに梗塞性瘢痕を含む)はまた、コントロール(23±2%;p=0.01)と比較して、上記PFD群(13±3%)において少なかった(図6)。
【0217】
以前の研究[Breithardtら Eur Heart J(1989)10 Suppl E:.9−18;Spach.Circ Res(2007)101(8):743−5;Spachら J Cardiovasc Electrophysiol(1994)5(2):182−209;Jacobsonら Heart Rhythm(2006)3(2):189−97;Marchlinskiら Circulation(2004) 110(16):2293−8;Verheuleら Circ Res(2004)94(11):1458−65]は、線維症が、心房不整脈および心室不整脈と強く相関していることを示した。増大した線維症は、筋線維の分断、伝導遅延および伝導ブロック、ならびに「ジグザグ」伝導および無秩序な伝導をもたらす。線維症の分布はまた、重要である:よりびまん性の写真とは対称的に、手指様の分布はまた、波の拡がりのより大きな混乱を引き起こすと考えられ、従って、より不整脈原性である[Breithardtら Eur Heart J(1989)10 Suppl E:9−18]。MI後、上記梗塞境界域における心臓線維症は、このようなヒモ様の分布を有し、方向嗜好性の電気伝達の変調を引き起こす可能性がより高く、線維症組織が、通常は密な細胞−細胞結合を破壊する。このことは、遅延しかつ不均一な伝導速度に寄与し、最終的には、心室不整脈に対する素因を有するリエントリー回路の形成を引き起こすと考えられる。本明細書に記載される齧歯類虚血−再灌流モデルにおいて、有意なリモデリングは、MIの5週間後の過程を経て起こった。コントロール動物は、低下したLVEFとともに、進行性のLV拡張を有した。線維症は、上記梗塞性瘢痕内で生じたのみならず、上記梗塞の境界の領域(梗塞境界域)および上記梗塞から離れた正常心筋層においても生じた。非梗塞線維症は、MI後に十分に記載された現象であり、(機械的かつ電気生理学的に)有害なリモデリングに寄与すると考えられる。
【0218】
上記観察された線維症(特に、上記梗塞境界域において)は、コントロール動物の上記境界域におけるより遅い伝導速度と相関し、上記線維症が電気的結合解離(electrical uncoupling)をもたらしたことを示唆する。さらに、正常心筋層と比較して、上記活動電位上昇は、より低く、その上昇時間は、コントロール梗塞の上記境界域においてより長かった;これら所見は、より遅い伝導速度および増大した伝導不均一性と全て一致する。上記変化したかつ不均一な伝導速度は、より誘導性のVTをもたらした。これら結果は、齧歯類、大動物およびヒトにおける心筋梗塞の以前に報告された光学マッピング研究に非常に類似している。
【0219】
上記結果は、上記MI後状況における線維症低下、ならびにLV機能およびVT誘導性に対するその影響を強調する。PFD(抗線維症薬)は、虚血−再灌流ラットモデルにおける線維症の量を低下させ得ることが示された。線維症におけるこの低下は、梗塞拡大の低下、および超音波心臓検査による左心室機能改善と相関した。さらに、低下した線維症は、低下したVT感受性と関連することが示された。このことは、伝導速度および伝導不均一性における改善に関連した。このことは、上記MI後状況におけるVTの基質に対する重要な寄与因子である。
【0220】
虚血−再灌流心筋梗塞を経験している動物は、MI後の1週間後まで、PFD処置に対して無作為化されなかった。抗炎症剤(特に、コルチコステロイド)での臨床研究は、上記MI後状況において有害な結果を示したので、1つの懸念は、梗塞期間後における非常に速い処置は、障害された創傷治癒を有するので、より弱い瘢痕およびおそらくCHFもしくは心破裂に起因する死亡率の増大を引き起こすかもしれないということであった。いくつかの研究は、齧歯類における心筋梗塞の1週間後は、安全でかつ有効な時間枠であることを示した。PFDで処置した動物において死亡率も、CHFも、不整脈も増大しなかったことが記録された。対称的に、および驚くべきことに、PFDで処置した動物は、より小さな梗塞拡大、改善されたLV機能、および低下したVT感受性を有するようであった。
【0221】
ピルフェニドンは、線維症の総量、ならびに梗塞外の線維症を減少させた。上記MIの1週間後まで処置を遅らせたにも拘わらず、PFDは、コントロール梗塞と比較して、上記梗塞サイズの低下に効果を有するようであった。従って、上記PFD介入がなければ、リモデリング変化の進行は、上記初期の虚血傷害後長く、梗塞拡大を実際に寄与し得る。実際にそのようである証拠と、心筋細胞死滅が、MI後数週間にわたって非梗塞心筋層において(特に、上記梗塞境界域内で)生じ得ることを示す研究とが存在する。この病状と関連する根底にある機構は、壁再構成、細胞の左右へのずれ(side−to−side slippage)、および心臓拡張を含む(Cheng,Kajsturaら 1996;Olivetti,Capassoら 1990)。従って、線維症を低下させることによって、PFDは、LV機能における改善によって証明されるように、心臓リモデリングを改善させた。そしてこのことは、梗塞サイズの縮小に寄与するようであった。
【0222】
PFD動物の上記梗塞境界域内の線維症は、縮小したのみならず、その分布は、不均一性が低下したようであった。手指様の突起の減少は、コントロール梗塞で認められた。不規則な分布のこの低下、および線維症の量の低下は、PFD境界域における改善された伝導速度と関連した。PFD境界域における活動電位上昇およびより速い上昇時間が同時に増大することは、これら所見をさらに確認する。これら結果、および低下した伝導不均一性は、PFD動物におけるVT感受性のほぼ3倍の低下の原因であるようであった。
【0223】
(実施例5:心室細動マッピング)
動物モデル:24匹のイヌ(25〜30Kg体重)を、3つの群:コントロール(n=11)、うっ血性心不全(n=7)、およびうっ血性心不全と抗線維症薬ピルフェニドン(n=6)に分けた。心不全(CHF)を、RVに配置した導線および240bpmでペーシングするように設定したパルス発生器を介した4週間の急速な心室ペーシングを介して7匹のイヌで誘導し、続いて、Liら,Circulation 1999;100:87−95に記載されるように、AV結節を除去して、完全な心ブロックを作り出した。心室機能は、経胸壁超音波心エコー検査で1週間に1回、4週間にわたってモニターした。4週間で、上記光学マッピング研究を行った。有意な心室拡張およびリモデリングを実証する以前のデータに基づいて、4週間を選択し、その時間で収縮性が低下した。
【0224】
心不全とピルフェニドン(PFD):心不全を、上記で記載されるように、6匹のイヌで誘導し、PFDを、Leeら,Circulation 2006;114;1703−12に記載されるように投与した。経口PFD(800mg 1日3回;InterMune,Brisbane,CA)を、ペーシングの開始2日前に開始し、光学マッピング研究の>6半減期(24時間)前に中断した。
【0225】
光学マッピング研究:冠動脈灌流した左心室調製物を、Wuら,J Cardiovasc Electrophysiol 1998;9:1336−47に記載されるように使用した。簡潔には、ペントタールナトリウム(sodium pentothal)(0.25mg/Kg)での鎮静後に、左側面開胸術を行い、心臓を迅速に摘出した。次いで、その心臓を、心停止溶液((mmol/L単位):NaCl 123、KCl 15、NaHCO3 22、NaH2PO4 0.65、MgCl2 0.50、グルコース 5.5、CaCl2 2、95% O2/5% CO2で通気)で、大動脈を介して逆方向に灌流した。その心室を、AV環の約1cm下で取り出し、冠状動脈の左前下行枝(LAD)を灌流した。右心室を取り出し、左心室をLADによって灌流したサイズへと切断し、乳頭筋を含めた。次いで、全ての心室枝を結紮した。
【0226】
次いで、上記心室調製物を、37℃で維持した組織チャンバへ移した。上記LADにおける灌流ラインを、改変タイロード溶液((mmol/L単位で):NaCl 123、KCl 5.4、NaHCO3 22、NaH2PO4 0.65、MgCl2 0.50、グルコース 5.5、CaCl2 2、95% O2/5% CO2で通気)で灌流した。光学的記録の前に、30〜40μlの電位感受性色素PGH−1のボーラスを、上記灌流液へと直接注射した。
【0227】
Wuら,J Cardiovasc Electrophysiol 1998;9:1336−47に記載される光学マッピングシステムを用いて、光学的記録を、次いで、256個の同時に起こる光学活動電位を記録した16×16フォトダイオードアレイ(C4657 Hamamatsu,Bridgewater,NJ)によって、上記調製物(心外膜、心内膜(乳頭筋を含む、および経壁)の3表面に対して4−cm2面積から作製した。調製物からの光学的記録の間に、収縮性を、15mM 2,3−ブタジオンモノオキシム(BDM;Sigma−Aldrich)11でブロックした。プランジ電極(Plunge electrode)を、ペーシングおよびモニタリング両方について視野の周りの記録する表面に配置した。2個のプランジ電極を、上記調製物の電気活性をモニターするための双極性シグナルを記録するために専用にした。VFを、外部刺激、もしくは50msの周期長、パルス幅9.9ms、および出力9.9mAでの急激なバーストペーシングのいずれかで開始した。VFのいくつかの4−sエピソードを、各調製物の各表面で記録した。次いで、上記VFの活性化動画を調べ、上記活性化パターンを決定した。VFの終了後、シグナルを250msでのペーシングの間に得、活性化の等時性マップを、伝導を見るために構築した。活性化パターンおよびVFの間の波面の方向(wave−front direction)を、生の蛍光動画(等電位)から決定した。活性化を、1)スパイラル(初角を左右する単一のリエントリー回路)、2)病巣(focal)(活性化の別個の高周波数位置)、3)複数波面(急激に変化するかまたは変動する波面と波面衝突)、または4)1つの広い波面(上記マップを通過する単一の波面)として特徴付けた。VFを、上記調製物の電気活動をモニターするために使用される双極性シグナルに対する急激かつ不規則な活性化として定義した。
【0228】
シグナルプロセシングおよび周波数ドメイン分析:上記光学マッピング記録から得たシグナルを、2,000Hzでサンプリングし、各シグナルについて、上記主な周波数(dominant frequency(DF))を決定し、組織化を、Everettら,IEEE Trans Biomed Eng 2001;48:969−78に記載されるように計算した。簡潔には、高速フーリエ変換(FFT)を、デジタル的にフィルタをかけた波形に対して計算した。上記データをトレンド除去(detrended)し、Hammingウインドウをかけた。得られた規模範囲の最も大きなピークを同定し、上記調和ピークの位置を、その位置に基づいて決定した。上記最も大きなピーク下の面積およびその調和ピークのうちの3つを、1−Hzウインドウに対してそれぞれ計算した。このことは、4つのピーク下面積を生じた。上記範囲の総面積を、2Hzから最大5番目の調和ピークを含まないところまでで計算した。上記調和ピーク下の力 対 この範囲における総力の比を計算し、得られた数値を、組織化指数(organization index)(OI)として定義した。上記OIを、その期間でのそのシグナルに対するAFの組織化を表すように理論づけた。上記DFの分散を計算するために、全ての記録部位の中でのAFの単一エピソードの間の上記DFの空間変動係数(SD/平均)、および各調製物内の各マッピング野に関するAFエピソードの中からの平均DFの一時的変動係数を計算した。別個の、安定な、高周波数領域を記録した。安定性を、上記初角のうちの少なくとも90%にわたる持続として定義した。それが消失する場合、それは、同じ位置に戻る。
【0229】
相互相関分析:空間相関分析を、各動物において、全ての考えられる対形成電気記録図組み合わせの間で全ての記録シグナルに対して行った。上記相互相関関数を、各電気記録図組み合わせについてゼロ遅延で計算し、そのピーク値を、相関係数とみなし、この相関係数は、上記2つのシグナルの間の相関の程度を表す。次いで、AF記録と光学マッピングとから計算した相関係数の全てを、各AFエピソードの平均相関値を生成するために平均化した。
【0230】
統計分析:データを、平均±DFとして表した。全てのマッピング分析変数の中で比較するために、ある範囲の混合効果モデルを使用した。上記モデルは、イヌ特異的(独立してかつ同一に分布した)ランダム効果を使用して、記録位置内および記録位置全体にわたる、イヌで作製した反復測定値を説明した。種々の対比(モデル全体のサブモデル)を、上記研究群、記録部位、および部位相互作用効果を記録することによる群の重要性を決定するために調査した。これら対比を、ネステッドモデル様式で、カイ2乗尤度比検定で検定した。統計的有意性を、p<0.05として定義した。
【0231】
VF活性化パターン:上記光学マッピング活性化シーケンスの試験の際に、活性化パターンのうちの4タイプが認められた-スパイラル波、活性化の病巣領域、複数波、および視野全体に及ぶ広い波面掃引。表2は、各イヌの各マッピング表面で認められた活性化パターンのタイプを示す。
【0232】
【表2】
心外膜表面:上記コントロール群については、上記10個のマッピングした心外膜表面のうちのわずか2個が、病巣活性化の証拠を示した。これら2つの表面はまた、一致して安定な高DF領域を有した。全ての他のものは、複数波もしくは視野を占める1つの広い波面のうちのいずれかの活性化パターンを有した。上記活性化マップは、250msでペーシングしている間に、上記視野全体にわたって均一な伝導を示す。類似の結果が、上記CHF群およびPFD群において認められた。両方の群は、2/6マッピング表面を有し、これは、病巣活性化もしくはスパイラル波(1匹のCHFイヌ)のいずれかを有した。これらのタイプの活性化は、安定な高DF領域に対応した。全ての他のイヌは、複数の波面もしくは視野を占める1つの広い波面を有した。これら活性化パターンは、一過性のDF(複数の波面)を有したか、または上記領域は、1つのDFで占められた(広い波面)。上記活性化画像は、コントロールと類似しているが、より遅い伝導速度で均一な伝導を示す。
【0233】
心内膜表面:心内膜表面のマッピングは、上記乳頭筋を含み、上記CHF群のみが、スパイラル波もしくは病巣活性化パターンに相関した安定な高DF領域によって特徴付けられたAFを有した。上記CHF群における5つのマッピングされた心内膜表面のうちの3つは、このカテゴリーに入った。上記コントロール群における7つの心内膜表面のうちの2つが、スパイラル波によって特徴づけられる活性化を有したとしても、別個の安定なDFは認められなかった。上記他の5つのコントロール、および上記PFD群におけるマッピングされた心内膜表面の全ては、複数の波面もしくは広い波面の活性化のいずれかを有した。上記群のうちの全ては、伝導遅延によって記録される不均一伝導を示した。このことは、上記心外膜表面上で認められる均一な伝導とは対称的である。
【0234】
経壁表面:上記経壁表面は、全ての群についての他のマッピングされた表面と比較した場合、スパイラル波および病巣の活性化のパーセンテージが最も高かった。上記CHF群において、上記経壁表面を、5匹のイヌにおいてマッピングし、それらのうちの全ては、スパイラル波もしくは病巣活性化のいずれかのVF活性化パターンを有した。上記VFは、安定な、別個の高DF領域によって特徴付けられた。上記PFD群において、上記マッピングされた経壁表面のうちの50%が、安定な高DF領域に相関するスパイラル波の活性化パターンを有した。上記コントロール群において、上記経壁表面のうちの75%は、病巣活性化を有した。これらのうちの1つは、安定な、高DF領域に相関しなかった。各群は、伝導遅延およびブロックの領域によって特徴付けられる不均一伝導を示した。
【0235】
顕著な周波数:周波数ドメイン分析を、VFの間に記録された活性化パターンを定量化する方法として使用した。表2は、上記安定な、別個の高DF領域が認められた場合を示す。7匹のCHFイヌのうちの6匹が、安定な、高DF領域を有する少なくとも1個の表面を有した。この群において、マッピングされた上記経壁表面のうちの全ては、別個の安定な高DF領域によって特徴付けられたVFを有した。11匹のコントロールのうちの3匹のみおよび6匹のPFDイヌのうちの3匹が、高DF領域によって特徴付けられたVFを有する少なくとも1個の表面を有した。上記コントロール群の心外膜表面は、複数の波面のVF機構を有した。高DF領域は、いくつかの例において記録されたが、これらは安定ではなかった。心内膜および経壁表面の両方が、上記視野全体に及ぶ1つの広い波面掃引によって特徴付けられるVFを有した。その対応するDFマップは、単一のDFによって特徴付けられる。上記CHF群については、上記心外膜表面は、広い波面によって特徴付けられるVFを有し、その対応するDFマップは、単一のDFによって占められた。上記心内膜および経壁表面はともに、安定な高DF領域によって特徴付けられたVFを有した。これらDFが対応する上記VF機構は、上記心内膜表面上の病巣機構および上記経壁表面上のスパイラル波であった。上記PFD群に関しては、スパイラル波は、経壁表面において認められ、その対応するDFマップは、安定な高DF領域を有した。病巣機構は、高DF領域を生じる心外膜表面で認められた。上記心内膜表面は、複数の波面によって特徴付けられるVFを有し、わずかな一過性DF領域が認められた。まとめのDFデータを、表3に列挙する。上記統計分析から、一過性DFおよび空間的DFについての変動係数のみが、有意な群効果および表面効果を有した。
【0236】
【表3】
組織化および交差相関分析:上記モデルの各々の表面に対して記録したVFの空間および時間上の組織化をさらに分析するために、上記組織化指数(OI)を、得られたFFTにおける差異を定量化することによって、上記記録の組織化を測定するために使用した。OIマップからのまとめのデータを、表4に示す。上記表が示すように、上記コントロール群は、上記CHF群もしくはPFD群のいずれかより高い平均OI値および最大OI値を有した。これら差異は、心内膜表面において有意性に達した。群内では、上記コントロール群の心内膜表面は、上記心外膜表面もしくは経壁表面のいずれよりも高いOIレベルを有した。上記PFD群において、上記心内膜表面は、最も低いOIレベルを有し、これは、上記経壁表面と比較した場合に有意性に達した。上記コントロール群はまた、OIレベルにおいて最も一時的な安定性を示した。同様に、この群は、上記心内膜表面で見いだされた最低の測定値を有する全ての表面で最低のOI一時的変動係数値を有した。上記CHF群およびPFD群の心内膜表面および経壁表面は、上記コントロール群のものより有意に異なった。
【0237】
Fもしくは各VFエピソード、シグナルの全ての考えられる対は交差相関し、各群の各表面に関する平均相関係数を、図8Aに示す。図7は、上記心内膜表面、経壁表面および心外膜表面を横断する距離にわたる周波数の勾配を示す。ピルフェニドン(Pirfendidone)は、コントロール動物に対して類似のものへと経壁勾配を保存したのに対して、心不全を処置しなかった動物は、非常に大きな勾配を有する。
【0238】
【表4】
本発明の実施形態の例としては、以下が挙げられる:
1.急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を該患者に投与する工程を包含し、
ここで必要に応じて、該処置は、該AMIを経験してから約1〜42日間後の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月まで継続する、方法。
【0239】
2.前記方法は、前記AMIに起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである、項1に記載の方法。
【0240】
3.前記処置は、前記AMIの約5〜10日後に開始される、項1に記載の方法。
【0241】
4.前記処置は、前記AMIの約7日後に開始される、項3に記載の方法。
【0242】
5.前記処置は、少なくとも2週間にわたる、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【0243】
6.急性心筋梗塞(AMI)を経験した患者におけるうっ血性心不全の発生率を低下させるための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで上記治療上有効な用量は、該うっ血性心不全の発生率を低下させる、方法。
【0244】
7.前記患者は、前記AMIに起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある、項6に記載の方法。
【0245】
8.前記処置は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項6または7に記載の方法。
【0246】
9.急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者の生きている心臓組織を保護するか、または心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小するための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該患者に該治療剤を投与する工程は、該治療剤を投与しなかった患者の梗塞サイズと比較して、平均して相対的に縮小した梗塞サイズを生じる、方法。
【0247】
10.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから1〜42日後に開始される、項9に記載の方法。
【0248】
11.前記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である、項9または10に記載の方法。
【0249】
12.心室頻拍の発生率を低下させる必要のある患者の心室頻拍の発生率を低下させるための方法であって、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該心室頻拍の発生を防ぐかもしくは該心室頻拍の発生率を低下させる、方法。
【0250】
13.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項12に記載の方法。
【0251】
14.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、項13に記載の方法。
【0252】
15.前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、項14に記載の方法。
【0253】
16.心室細動の処置もしくは予防が必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の心室細動を予防する、方法。
【0254】
17.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項16に記載の方法。
【0255】
18.前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項17に記載の方法。
【0256】
19.前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項18に記載の方法。
【0257】
20.前記投与する工程は、心臓性突然死の発生率を低下させる、項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【0258】
21.前記投与する工程は、前記患者の心臓リスクを低下させる、項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【0259】
22.不整脈の制御が必要な患者の不整脈を制御するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の不整脈を制御する、方法。
【0260】
23.前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、項22に記載の方法。
【0261】
24.前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、項23に記載の方法。
【0262】
25.前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、項24に記載の方法。
【0263】
26.前記投与する工程は、心室リモデリングを処置する、項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【0264】
27.前記患者は、以前にAMIを経験したことがない、項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【0265】
28.前記抗線維症効果を有する治療剤は、
組織リモデリングまたは線維症を減少させるか、
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節するか;
エンドセリンレセプターアンタゴニストであり、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするかまたはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするか;
結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させるか;
マトリクスメタロプロテイナーゼを阻害するか;
上皮増殖因子(EGF)の活性を低下させるか、該EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害するか;
血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害するか;
血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させ、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)、VEGFR1(sFlt)の可溶性形態およびVEGFを中和するその誘導体のうちの1種以上を標的とし、VEGFレセプターキナーゼ活性を阻害するか;
複数のレセプターキナーゼを阻害する(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子のレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120)か;
インテグリン機能を妨害するか;
IL−4およびIL−13の線維症促進(pro−fibrotic)活性を妨害し、IL−4レセプター、IL−13レセプター、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体を標的とするか;
JAK−STATキナーゼ経路を介したシグナル伝達を調節するか;
上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition)を妨害し、mTorを阻害するか;
銅レベルを低下させるか;
酸化的ストレスを低下させるか;
プロリルヒドロラーゼを阻害するか;
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、あるいは
アラキドン酸経路を改変する
治療剤である、項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【0266】
29.前記治療剤は、ピルフェニドンあるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ:
【0267】
【化14】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素置換アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【0268】
30.治療上有効量のピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグは、前記患者に投与される、項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0269】
31.前記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【0270】
【化15】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、Zは、Oであり、R2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである、
項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0271】
32.前記患者に投与される治療剤は、以下からなる群:
【0272】
【化16】
【0273】
【化17】
表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグからなる群から選択される、
項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【0274】
33.前記治療剤は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり:
【0275】
【化18】
【0276】
【化19】
ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素置換アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【0277】
34.前記治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わされる、項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【0278】
35.前記投与する工程は経口である、項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【0279】
36.前記治療上有効な量は、約50mg〜約2400mgの前記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグという総一日用量である、項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【0280】
37.前記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回1用量で投与される、項36に記載の方法。
【0281】
38.前記患者はヒトである、項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を該患者に投与する工程を包含し、
ここで必要に応じて、該処置は、該AMIを経験してから約1〜42日間後の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月まで継続する、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記AMIに起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処置は、前記AMIの約5〜10日後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処置は、前記AMIの約7日後に開始される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処置は、少なくとも2週間にわたる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者におけるうっ血性心不全の発生率を低下させるための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療上有効な用量は、該うっ血性心不全の発生率を低下させる、方法。
【請求項7】
前記患者は、前記AMIに起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処置は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者の生きている心臓組織を保護するか、または心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小するための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該患者に該治療剤を投与する工程は、該治療剤を投与しなかった患者の梗塞サイズと比較して、平均して相対的に縮小した梗塞サイズを生じる、方法。
【請求項10】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから1〜42日後に開始される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
患者の心室頻拍の発生率を低下させるための方法であって、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該心室頻拍の発生を防ぐかもしくは該心室頻拍の発生率を低下させる、方法。
【請求項13】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
心室細動の処置もしくは予防が必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の心室細動を予防する、方法。
【請求項17】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与する工程は、心臓性突然死の発生率を低下させる、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与する工程は、前記患者の心臓リスクを低下させる、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
不整脈の制御が必要な患者の不整脈を制御するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の不整脈を制御する、方法。
【請求項23】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記投与する工程は、心室リモデリングを処置する、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者は、以前にAMIを経験したことがない、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗線維症効果を有する治療剤は、
組織リモデリングまたは線維症を減少させるか、
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節するか;
エンドセリンレセプターアンタゴニストであり、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするかまたはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするか;
結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させるか;
マトリクスメタロプロテイナーゼを阻害するか;
上皮増殖因子(EGF)の活性を低下させるか、該EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害するか;
血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害するか;
血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させ、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)、VEGFR1(sFlt)の可溶性形態およびVEGFを中和するその誘導体のうちの1種以上を標的とし、VEGFレセプターキナーゼ活性を阻害するか;
複数のレセプターキナーゼを阻害する(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子のレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120)か;
インテグリン機能を妨害するか;
IL−4およびIL−13の線維症促進活性を妨害し、IL−4レセプター、IL−13レセプター、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体を標的とするか;
JAK−STATキナーゼ経路を介したシグナル伝達を調節するか;
上皮間葉移行を妨害し、mTorを阻害するか;
銅レベルを低下させるか;
酸化的ストレスを低下させるか;
プロリルヒドロラーゼを阻害するか;
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、あるいは
アラキドン酸経路を改変する
治療剤である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療剤は、ピルフェニドンあるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ:
【化20】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素置換アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
治療上有効量のピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグは、前記患者に投与される、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【化21】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、Zは、Oであり、R2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである、
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者に投与される治療剤は、以下からなる群:
【化22】
【化23】
表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグからなる群から選択される、
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療剤は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり:
【化24】
【化25】
ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素置換アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わされる、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記投与する工程は経口である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記治療上有効な量は、約50mg〜約2400mgの前記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグという総一日用量である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回1用量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記患者はヒトである、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者を処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を該患者に投与する工程を包含し、
ここで必要に応じて、該処置は、該AMIを経験してから約1〜42日間後の期間で開始され、必要に応じて、最大3〜6ヶ月まで継続する、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記AMIに起因して、梗塞性瘢痕の拡がりを制限することである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処置は、前記AMIの約5〜10日後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処置は、前記AMIの約7日後に開始される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処置は、少なくとも2週間にわたる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者におけるうっ血性心不全の発生率を低下させるための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療上有効な用量は、該うっ血性心不全の発生率を低下させる、方法。
【請求項7】
前記患者は、前記AMIに起因して、うっ血性心不全の増大したリスクがある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処置は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある患者の生きている心臓組織を保護するか、または心筋梗塞サイズを制御もしくは縮小するための方法であって、該方法は、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該患者に該治療剤を投与する工程は、該治療剤を投与しなかった患者の梗塞サイズと比較して、平均して相対的に縮小した梗塞サイズを生じる、方法。
【請求項10】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから1〜42日後に開始される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記梗塞サイズの相対的縮小は、少なくとも5%である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
患者の心室頻拍の発生率を低下させるための方法であって、該患者に、治療上有効な用量の抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該心室頻拍の発生を防ぐかもしくは該心室頻拍の発生率を低下させる、方法。
【請求項13】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与する工程は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
心室細動の処置もしくは予防が必要な患者における心室細動を処置もしくは予防するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の心室細動を予防する、方法。
【請求項17】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与する工程は、心臓性突然死の発生率を低下させる、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与する工程は、前記患者の心臓リスクを低下させる、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
不整脈の制御が必要な患者の不整脈を制御するための方法であって、該方法は、該患者に、抗線維症効果を有する治療剤を投与する工程を包含し、
ここで該治療剤を投与する工程は、該患者の不整脈を制御する、方法。
【請求項23】
前記患者は、急性心筋梗塞(AMI)を経験したことがある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記投与は、前記AMIを経験してから約1〜42日後に開始される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、前記AMIを経験してから約7日後に開始される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記投与する工程は、心室リモデリングを処置する、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者は、以前にAMIを経験したことがない、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗線維症効果を有する治療剤は、
組織リモデリングまたは線維症を減少させるか、
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)の活性を低下させるか、1種以上のTGF−βアイソフォームを標的とするか、TGF−βレセプターキナーゼTGFBR1(ALK5)および/もしくはTGFBR2を阻害するか、または1種以上のポストレセプターシグナル伝達経路を調節するか;
エンドセリンレセプターアンタゴニストであり、エンドセリンレセプターAおよびエンドセリンレセプターBの両方を標的とするかまたはエンドセリンレセプターAを選択的に標的とするか;
結合組織増殖因子(CTGF)の活性を低下させるか;
マトリクスメタロプロテイナーゼを阻害するか;
上皮増殖因子(EGF)の活性を低下させるか、該EGFレセプターを標的とするか、またはEGFレセプターキナーゼを阻害するか;
血小板由来増殖因子(PDGF)の活性を低下させるか、PDGFレセプター(PDGFR)を標的とするか、PDGFRキナーゼ活性を阻害するか、またはポストPDGFレセプターシグナル伝達経路を阻害するか;
血管内皮増殖因子(VEGF)の活性を低下させ、VEGFレセプター1(VEGFR1、Flt−1)、VEGFレセプター2(VEGFR2、KDR)、VEGFR1(sFlt)の可溶性形態およびVEGFを中和するその誘導体のうちの1種以上を標的とし、VEGFレセプターキナーゼ活性を阻害するか;
複数のレセプターキナーゼを阻害する(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、および血小板由来増殖因子のレセプターキナーゼを阻害するBIRB−1120)か;
インテグリン機能を妨害するか;
IL−4およびIL−13の線維症促進活性を妨害し、IL−4レセプター、IL−13レセプター、IL−4レセプターの可溶性形態もしくはその誘導体を標的とするか;
JAK−STATキナーゼ経路を介したシグナル伝達を調節するか;
上皮間葉移行を妨害し、mTorを阻害するか;
銅レベルを低下させるか;
酸化的ストレスを低下させるか;
プロリルヒドロラーゼを阻害するか;
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)もしくはホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害するか、あるいは
アラキドン酸経路を改変する
治療剤である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記治療剤は、ピルフェニドンあるいは式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグ:
【化20】
であり、ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、NもしくはCX4であり;Gは、NもしくはCX3であり;Jは、NもしくはCX2であり;Kは、NもしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、C1−C10アルキル、C1−C10重水素置換アルキル、置換されたC1−C10アルキル、C1−C10アルケニル、置換されたC1−C10アルケニル、C1−C10チオアルキル、C1−C10アルコキシ、置換されたC1−C10アルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C10アルコキシアルキル、置換されたC1−C10アルコキシアルキル、C1−C10カルボキシ、置換されたC1−C10カルボキシ、C1−C10アルコキシカルボニル、置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アルキレニルアリール、アルキレニルヘテロアリール、アルキレニルヘテロシクロアルキル、アルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、ピリジニルもしくはフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
治療上有効量のピルフェニドンまたはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグは、前記患者に投与される、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者に投与される治療剤は、式(II)の化合物:
【化21】
またはその塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含み、ここで
X3は、H、OH、もしくはC1−10アルコキシであり、Zは、Oであり、R2は、メチル、C(=O)H、C(=O)CH3、C(=O)O−グルコシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルメトキシル、メチルヒドロキシル、もしくはフェニルであり;そしてR4は、Hもしくはヒドロキシルである、
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者に投与される治療剤は、以下からなる群:
【化22】
【化23】
表1に列挙される化合物、
ならびにその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグからなる群から選択される、
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療剤は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、もしくは式(V)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグであり:
【化24】
【化25】
ここで
Aは、NもしくはCR2であり;Bは、NもしくはCR4であり;Eは、N、N+X4もしくはCX4であり;Gは、N、N+X3もしくはCX3であり;Jは、N、N+X2もしくはCX2であり;Kは、N、N+X1もしくはCX1であり;破線は、単結合もしくは二重結合であり、
R1、R2、R3、R4、X1、X2、X3、X4、X5、Y1、Y2、Y3、およびY4は、H、重水素、必要に応じて置換されたC1−C10アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10重水素置換アルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルケニル、必要に応じて置換されたC1−C10チオアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたアミド、必要に応じて置換されたスルホニル、必要に応じて置換されたアミノ、必要に応じて置換されたスルホンアミド、必要に応じて置換されたスルホキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、SO2H2、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシアルキル、必要に応じて置換されたC1−C10カルボキシ、必要に応じて置換されたC1−C10アルコキシカルボニル、CO−ウロニド、CO−モノサッカリド、CO−オリゴサッカリド、およびCO−ポリサッカリドからなる群より独立して選択され;
X6およびX7は、水素、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロアリール、必要に応じて置換されたアルキレニルヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたアルキレニルシクロアルキルからなる群より独立して選択されるか、またはX6およびX7は一緒になって、必要に応じて置換された5員もしくは6員の複素環式環を形成し;そして
Arは、必要に応じて置換されたピリジニルもしくは必要に応じて置換されたフェニルであり;そしてZは、OもしくはSである、
請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療剤は、薬学的に受容可能なキャリアと合わされる、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記投与する工程は経口である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記治療上有効な量は、約50mg〜約2400mgの前記治療剤またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、溶媒和物、もしくはプロドラッグという総一日用量である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療上有効な量は、1日3回もしくは1日2回の分割用量で投与されるか、または1日1回1用量で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記患者はヒトである、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−515800(P2012−515800A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548228(P2011−548228)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/022112
【国際公開番号】WO2010/085805
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(502191619)インターミューン, インコーポレイテッド (25)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/022112
【国際公開番号】WO2010/085805
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(502191619)インターミューン, インコーポレイテッド (25)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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