説明

急硬促進剤用添加剤及びこれを含む急硬性混和材、急硬性組成物並びに急硬性セルフレベリング組成物

【課題】 モルタルやコンクリートに混和使用可能な急硬促進成分に対し、十分な可使時間の確保を可能にすると共に、常温は勿論5℃以下の低温でも可使時間経過後は直ちに急結性を発現させ、高い早期強度発現性を導くことができる添加剤及び該添加剤を含有する急硬性混和材、急硬性組成物並びに材料分離や収縮亀裂、白華といった現象が生じ難く低温でも施工可能な急硬性セルフレベリング組成物を提供する。
【解決手段】 次の(A)及び(B)を有効成分とする急硬促進剤用添加剤。(A)酒石酸又は/及び酒石酸塩。(B)エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急硬性を有するモルタルやコンクリートなどの急硬反応性を、低温でも十分発現させられる急硬促進剤用添加剤及び急硬性混和材、急硬性組成物並びに急硬性セルフレベリング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタル系建造物の緊急工事などでは、短時間で硬化させるために急硬性の混和材を普通セメントなどに混和したものや急硬性セメントを使用することが多く、その急硬成分として、12CaO・7Al23、11CaO・7Al23・CaF2、4CaO・3Al23・SO3、3CaO・Al23などのカルシウムアルミネート類が広く用いられている。カルシウムアルミネートは、石膏やセメント中に含まれる硫酸カルシウムと共に使用すると、水和反応によってエトリンガイト鉱物を生成する。生成したエトリンガイトは硬化促進及び短時間強度の発現性を高める作用があるが、硬化速度が早まるために注水後は短時間で施工作業を終える必要があり、作業上の制約となっていた。このため、グルコン酸、グルコン酸塩、クエン酸、クエン酸塩等の有機酸(例えば特許文献1参照。)やケイフッ化物、硼酸、硼酸塩、燐酸塩等の無機化合物(例えば特許文献2参照。)よりなる凝結遅延剤や硬化遅延剤が併用されてきた。遅延剤類の併用で、注水後の瞬時の凝結を防ぐことが可能となり、十分な施工作業時間を確保できるようになった。(例えば特許文献3参照。)
【0003】
一方、冬場や寒冷地などの低温環境下、特に5℃以下の環境では、一般にコンクリートやモルタルの硬化が遅れる傾向が強く、前記のように遅延剤類が加わったものでは、可使時間(水硬性組成物の注水時点から凝結開始までの時間)経過後の速硬性がかなり低下する。硬化時間がかかり過ぎると緊急工事など短時間施工を必要とするケースには適用できない。また、緊急工事以外の施工ケースでも材料分離が起こり易く、その結果、ひび割れ発生、施工面の白華現象などが生じ易かった。また、低温での短時間強度の発現性もより緩慢になる傾向が顕著となり、例えば5℃の環境下で実用性のある緊急工事や建築物等の施工に適用するには従来の概ね数倍〜十倍程度の強度発現性が必要である。
【特許文献1】特開昭48−59130号公報
【特許文献2】特開平9−254136号公報
【特許文献3】特開昭61−155239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、モルタルやコンクリートに混和使用可能な急硬促進成分に対し、通常の施工作業をするに十分な可使時間の確保を可能にすると共に、常温は勿論5℃以下の低温でも可使時間経過後は直ちに急結性を発揮し、早期強度発現性を高くすることができる添加剤を提供するものであり、また該添加剤を含有する急硬性混和材及び急硬性組成物並びに材料分離や収縮亀裂、白華といった現象が生じ難く低温でも施工可能な急硬性セルフレベリング組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題解決のための検討を重ねた結果、常温でセメントに対する凝結遅延作用を有し、且つ低温での短時間強度を向上させる作用を有する特定の酸・塩と、急硬成分の急硬性を低下させない特定の多価アルコールを併用し、これをモルタルやコンクリートに混和する急硬成分に添加することによって、水和反応活性の温度依存性を調整可能とし、一般には低温になるほど低減化が顕著となる強度発現性を低減させずに、寧ろ向上する傾向が見られると共に、ひび割れや白華も起らないモルタル・コンクリートが得られたことから本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、(1)次の(A)及び(B)を有効成分とする急硬促進剤用添加剤である。(A)酒石酸又は/及び酒石酸塩。(B)エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール。また本発明は、(2)前記(1)の急硬促進剤用添加剤と急硬促進剤を含有してなる急硬性混和材である。また本発明は、(3)急硬促進剤が水和によりエトリンガイトを形成する物質からなる前記(2)の急硬性混和材である。また本発明は、(4)前記(2)又は(3)の急硬性混和材とセメントを含有してなる急硬性組成物である。また本発明は、(5)前記(2)又は(3)の急硬性混和材とセメントと粘性調整剤を含有し、凝結開始前の5〜35℃での粘性が0.5〜50.0Pa・sである急硬性セルフレベリング組成物である。(6)更に無機粉末を含有する前記(5)の急硬性セルフレベリング組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の急硬促進剤用添加剤は、スラリー状のため添加時の混合性に優れ、また急硬成分(急硬促進剤)に添加することで長い可使時間を付与することが可能であると共に常温はもとより低温でも可使時間経過後は迅速に高い急硬性能を発現させることができる。また、この急硬促進剤用添加剤を加えて得た急硬性混和材もスラリー状となるため、使用時に粉塵が発生することもなく、モルタルやコンクリートへの混合性や分散性も高く、作業負荷を著しく軽減できる。更にかかる性状は、従来の急硬性セメント系組成物よりも低粘性にしても十分発現できるので、装置供給性が大幅に向上し、施工抵抗も低く、また平滑性を得るのにも適していることに加え、硬化後のひび割れや白華も起り難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の急硬促進剤用添加剤は、酒石酸か酒石酸塩の何れか一方、又はその両者を有効成分とするものである。酒石酸塩としては何れの酒石酸塩でも使用でき、2種以上の異なる酒石酸塩を併用しても良い。好ましくは酒石酸塩としてロッシェル塩を挙げることができる。酒石酸や酒石酸塩を含有することで、コンクリートやモルタルに急硬性を付与する成分、即ち急硬促進剤が共存しても可使時間(水硬性組成物の注水時点から凝結開始までの時間)を長く確保できると共に、可使時間経過後は速やかに凝結する。酒石酸や酒石酸塩はセメントに配合すると凝結遅延の作用を生じさせるが、他の凝結遅延剤はその使用によって温度が低くなるほど短時間強度もかなり低下するのに対し、酒石酸やロッシェル塩は5℃程度での短時間強度発現性が殆ど低下せず、他の凝結遅延剤を使用した時に比べ高い低温強度が得られる。
【0009】
また本発明の急硬促進剤用添加剤は、前記の有効成分に加えて、エチレングリコールとプロピレングリコールの何れか一方又はその両者を有効成分とするものである。その作用は主に急硬促進剤の風化を抑制し、長期保存が可能となることに加え、可使時間の確保を助長する。一般に有機系溶液は無機系急硬成分に加えると急硬性を低下させる傾向があるが、エチレングリコールとプロピレングリコールでは急硬性の低下は見られない。また、非親水性の有機溶液では、水性スラリーへの分散性が乏しいため、均一性状のモルタル・コンクリートが得られ難い。一方、親水性の有機溶液でもアセトンや一価のアルコールは急硬性を低下させる作用があり、低温でも揮発性が高く、粘性も低過ぎることから安定した分散状態になり難いものが多い。また、三価以上のアルコールでは粘性が高く、急硬促進剤との均一な混合やモルタル・コンクリート中への分散が困難になる。これに対し、ニ価のアルコールの中でも低級アルコールは以上のような問題が生じ難く、更に5℃前後の低温でも急硬性を低減させないことから本発明の急硬促進剤用添加剤ではエチレングリコールとプロピレングリコールを有効成分として使用する。好ましくはモノエチレングリコールを使用する。本発明で使用するエチレングリコール又はプロピレングリコールは、粘性が急増して作業性が著しく低下したり添加後の硬化性不良を回避する上で水を含まないものが望ましいが、1重量%までの含水は本発明の効果に目立った支障を及ぼさないことから許容される。
【0010】
本発明の急硬性促進用添加剤の前記有効成分の含有量は、酒石酸と酒石酸塩の1種又は2種が100重量部に対し、エチレングリコールとプロピレングリコールの1種又は2種を300〜3000重量部が好ましい。エチレングリコールとプロピレングリコールの1種又は2種が300重量部未満では本添加剤がスラリー状にならず、また急硬成分に対する風化抑止が不十分となり易く、3000重量部を超えると急硬性促進用添加剤中の低温強度促進成分の濃度が稀薄になり過ぎるため好ましくない。また、酒石酸と酒石酸塩を併用する場合の両者間の配合割合は制限されない。同様にエチレングリコールとプロピレングリコールを併用する場合の両者間の配合割合も制限されない。また、本発明の急硬性促進用添加剤は本発明の効果を喪失しない限り、前記有効成分以外のものを含有することは制限されず、例えばシリコン系界面活性物質、水に不活性な無機微粉等を挙げることができる。
【0011】
また、本発明の急硬性混和材は、前記急硬促進剤用添加剤と急硬促進剤を含有してなるものであり、好ましくはスラリーの状態を呈するものである。急硬促進剤はモルタルやコンクリートに急硬性を付与できる物質を有効成分とするものであれば何れのものでも良く、例えば亜硝酸塩、アミン類、水和によりエトリンガイトを形成する物質が挙げられ、更には急硬性を付与できる物質に加えて急硬性を付与しない物質を含むものでも良い。好ましくは、急硬促進剤が水和によりエトリンガイトを形成する物質からなるものとする。この場合、少量、例えば1重量%未満の不可避的不純物の混入を許容しないものではない。水和によりエトリンガイトを形成する物質としては、高い急硬促進作用と強度発現性があることからカルシウムアルミネート及び石膏類の両者からなるものが好ましい。ここでカルシウムアルミネートとは、CaOとAl23を主要化学成分とする化合物、固溶体、ガラス質若しくはこれらの何れかが混合した物の総称であって、水和活性を有するものなら限定されず。例えば、12CaO・7Al23、11CaO・7Al23・CaF2、4CaO・3Al23・SO3などを挙げることができ、アルミナセメントでも良い。石膏類は、無水石膏、半水石膏、二水石膏などが挙げられ、所謂化学石膏でも天然石膏でも使用できる。好ましくは無水石膏を使用する。また、カルシウムアルミネートとCaSO4が例えばクリンカー生成相として共存するものでも良い。エトリンガイト形成物質にカルシウムアルミネートと石膏類を使用する場合の両者の含有割合は制限されないが、好ましくはカルシウムアルミネート35〜95重量%を含有し、残部石膏類を含有するものとする。本発明の急硬性混和材中の急硬促進剤用添加剤の含有量は急硬促進剤100重量部に対し、概ね10〜100重量部が好ましい。急硬促進剤用添加剤の含有量が100重量部を超えると材料分離を生じ易く、特にグリコール類の含有濃度が高い急硬促進剤用添加剤では凝結遅延を起こすこともある。また急硬促進剤用添加剤の含有量が10重量部未満では添加効果が殆ど現れない。更に、本発明の急硬性混和材中の急硬促進剤の粒度は、ブレーン比表面積が2000cm2/g以上が望ましい。ブレーン比表面積が2000cm2/g未満では反応活性が乏しく急硬促進作用が得られ難い。また例えば10000cm2/g程度を超えるような高ブレーン比表面積では、高コストとなる他、可使時間を長く確保し難くなることがある。本発明の急硬性混和材は、モルタルやコンクリートに混和することで急硬性を付与すると共に、急硬促進剤用添加剤の含有量に応じて長期の可使時間の確保が可能で、可使時間経過後は急速に凝結が進行することに加え、5℃前後でも高い強度発現性を付与できる。
【0012】
また、本発明の急硬性組成物は、前記急硬性混和材とセメントを含有してなるものである。セメントは水硬性のセメントであれば何れのセメントでも良く、例えば各種ポルトランドセメント、各種混合セメント、各種特殊セメントを使用できる。また、本発明の急硬性組成物は、本発明の効果を喪失しない限り、急硬促進剤とセメント以外の成分を含むことができ、例えば、骨材、繊維、顔料、無機粉末、収縮低減剤、膨張材、防錆剤、消泡剤、空気連行剤、増粘剤、減水剤(高性能減水剤を含む)、保水剤、再乳化粉末樹脂等の混和剤や水が挙げられる。特に、例えばフライアッシュ粉、スラグ粉、珪石粉などの無機粉末を含有すると低温下での材料分離の発生をより確実に防止できるので好ましい。本発明の急硬性組成物中の急硬性混和材の含有量は、急硬性混和材と水以外の全含有物1m3に対し、急硬性混和材0.02〜0.10m3が好ましい。0.02m3未満では急硬促進剤の配合効果が殆ど得られないため好ましくなく、0.10m3を超える量では低温で低い強度発現性しか得られないので好ましくない。より好ましくは、急硬性組成物中のセメント100重量部に対し、急硬性混和材5〜20重量部が好ましい。
【0013】
また、本発明の急硬性セルフレベリング組成物は、前記急硬性混和材とセメントと粘性調整剤を含有し、凝結開始前の5〜35℃での粘性が0.5〜50.0Pa・s、好ましくは1.0〜10.0Pa・s、である組成物である。凝結開始前の5〜35℃での粘性が0.5Pa・s未満の組成物では沈降分離が生じ易いため好ましくなく、また50.0Pa・sを超える粘性の組成物ではセルフレベリング性が得られ難いため好ましくない。前記発明に基づく急硬性混和材は可使時間を比較的長くできることから、該急硬性混和材をセメント等に混和して注水した組成物も、適度な流動性を一定時間保有させることができる。従って、一般にセルフレベリング性施工物に必要不可欠な、施工時に平坦化し易く、施工物表面も平滑化され易いといった基本性状を備えることも可能である。しかも、可使時間経過後は温度環境に拘わらず急速に固化するため、施工時の平坦・平滑状態が変形する可能性を著しく低減できる。また、施工時の組成物の沈降分離性と流動性はその粘性に因るため、セルフレベリング用に適した粘性を確保する上で、本発明の急硬性セルフレベリング組成物は粘性調整剤を必須含有する。本発明で使用する粘性調整剤としては、モルタル・コンクリート用に使用できる分散剤、流動化剤、増粘剤の1種又は2種以上が望ましい。このような分散剤や流動化剤は、例えばポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系の各高性能減水剤(高性能AE減水剤を含む)が挙げられ、また増粘剤は、例えばセルロース系、アクリル系、バイオポリマー系等を挙げられるが、何れも例示種に限定されるものではない。本発明の急硬性セルフレベリング組成物中の各成分の好適な含有量は、セメント100重量部に対し、急硬性混和材5〜20重量部とし、粘性調整剤の含有量については本組成物の注水後の粘性が使用温度で0.5〜50.0Pa・sになるよう適宜加減して定めれば良い。配合する水量は、水/セメント比(重量比)で0.45〜1.0が推奨される。本発明の急硬性セルフレベリング組成物は急硬性混和剤とセメントと粘性調整剤以外の成分を含有するものでも良く、例えば、消泡剤、保水剤、膨張材、収縮低減剤、ポリマー樹脂、骨材、繊維、顔料、無機粉末等が挙げられる。好ましくは、低温施工時の材料分離を確実に防ぐため、平均粒径が約5〜30μmの、例えばフライアッシュ、スラグ、珪石などの無機粉末を、セメント100重量部に対して5〜50重量部含有するのが良い。本発明の急硬性セルフレベリング組成物の製造方法は特に限定されない。好ましい一例を示すと、本急硬性混和材を含む水以外の使用全材料を二軸ミキサなどの混合・混練機に一括投入し、適宜混合・撹拌した後、注水して1〜5分程度混練し、混練物を注水から概ね30〜60分以内に施工に供すれば良い。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明する。
[急硬促進剤用添加剤の作製] 次に表すA1〜A5から選定される材料とB1〜B4から選定される材料を表1に記した配合量となるようハンドミキサーで混合し、急硬促進剤に加える添加剤(本発明品1〜6、参考品11〜15)を作製した。
A1;モノエチレングリコール
A2;プロピレングリコール
A3;エチルアルコール
A4;ブチルアルコール
A5;グリセリン
B1;酒石酸
B2;ロッシェル塩
B3;クエン酸
B4;グルコン酸
【0015】
【表1】

【0016】
[急硬性混和材の作製] CaOとAl23をモル比で12:7に配合した混合物を大気中約1600℃で焼成した後、焼成装置内で自然放冷したものを粉砕し、ブレーン比表面積約4000g/cm2に調整した結晶質粉末(以下、C127と略記する。)と無水石膏(II型無水石膏、市販品)との等重量混合物、またはアルミナセメント(ブレーン比表面積約4000g/cm2、太平洋マテリアル株式会社製)と無水石膏との等重量混合物を急硬促進剤とした。この急硬促進剤に、前記の如く作製した添加剤を表2の配合量となるよう加えた。これを約4分間ハンドミキサーで混合し、混和材を作製した。(本発明に基づく混和材;混和材1〜7、本発明によらない混和材;混和材11〜16)
【0017】
【表2】

【0018】
[急硬性組成物の作製] 普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)、砕砂(比重2.69)、ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名;OTS、竹本油脂株式会社製)、セルロース系増粘剤(商品名;メトローズ、信越化学工業株式会社製)、フライアッシュ粉(平均粒径25μm)、水及び前記作製の混和材から選ばれる材料を表3に表す配合量となるようハンドミキサーを用いて約4分間混練し、組成物を得た。
【0019】
【表3】

【0020】
[急硬性組成物の性状等] 得られた組成物を混練終了後約5分経過時点と30分経過時点でB型粘度計にて5℃と30℃での粘度を測定した。但し、当該測定条件で固化したものと、高粘性のため殆ど混練できなかった組成物15については測定不能とした。また、該混練物を混練終了後5〜10分の間に所定の型枠に充填し、4×4×16cmの供試体を作製した。供試体は、5℃又は30℃で24時間又は7日間養生させた後脱型し、JIS A 1108に準拠した方法でモルタル圧縮強度を測定した。(組成物15を除く。)また、材料分離有無の確認として養生中の硬化体のブリージング水発生の有無を目視で調べ、更に、圧縮強度測定直前の供試体のひび割れ発生有無及び白華現象発生有無を目視で調べ、何れも僅かでも発生が確認できたものを「有」とし、それ以外を「無」とした。以上の結果を表4に纏めて記す。
【0021】
【表4】

【0022】
表4から、本発明の急硬性組成物は何れも温度に拘わらず滑らかな流動性を比較的長時間確保できた。また、凝結開始後は急速に硬化が進行し、高い短時間強度を呈することができることに加え、材料分離や収縮亀裂、白華といった現象が生じていないことがわかる。更に、本発明の急硬性組成物は、低温でもセルフレベリング剤として適した性状が得られると共に、施工後は急速に硬化し、亀裂が生じ難いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の急硬促進剤用添加剤を使用することにより、従来行われていたような急硬性のモルタル・コンクリートの配合を寒冷地や温暖な場所によって、或いは季節によって、それぞれ変動させることが不要となることに加え、施工時の作業制約の主原因である可使時間の不足が解消できることからも、広範囲の施工用途に適用可能な急硬性のモルタル・コンクリートが得られる。また特に、低温でも施工効力が十分あるセルフレベリング材用に利用できる他、コンクリートやモルタル構築物の緊急性を有する補修用途などへの利用にも適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)及び(B)を有効成分とする急硬促進剤用添加剤。(A)酒石酸又は/及び酒石酸塩。(B)エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール。
【請求項2】
請求項1記載の急硬促進剤用添加剤と急硬促進剤を含有してなる急硬性混和材。
【請求項3】
急硬促進剤が水和によりエトリンガイトを形成する物質からなる請求項2記載の急硬性混和材。
【請求項4】
請求項2又は3記載の急硬性混和材とセメントを含有してなる急硬性組成物。
【請求項5】
請求項2又は3記載の急硬性混和材とセメントと粘性調整剤を含有し、凝結開始前の5〜35℃での粘性が0.5〜50.0Pa・sである急硬性セルフレベリング組成物。
【請求項6】
更に無機粉末を含有する請求項5記載の急硬性セルフレベリング組成物。

【公開番号】特開2006−16223(P2006−16223A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193449(P2004−193449)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】