説明

急速に焦点距離を変更する為のシステム及び方法

【課題】 荷電粒子ビームの焦点距離の急速な調節の為のシステム及び方法を提供する。
【解決手段】 荷電粒子ビームの焦点距離を急速に変更する装置および方法であって、上記方法は、荷電粒子ビームの焦点距離と制御信号電圧値との関係に応答して、制御信号を変更するステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、”System and Method for fast focal length alterations”という名称で2001年10月10日に出願された米国仮出願第60/328453の利益を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的に荷電粒子ビーム画像(例えば、走査型電子顕微鏡など)に関し、特に、急速に焦点距離を調節する為のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
荷電粒子ビーム(例えば、電子ビーム、イオンビームなど)の焦点距離は、通常、制御電流により提供されている対物レンズにより制御される。従来技術に係る対物レンズは、比較的に大きい応答期間により特徴付けられる。例えば、普通の対物レンズの周波数応答は、約10Hzでカットオフを有する。したがって、対物レンズは、焦点距離の急速な変更の為には利用されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
荷電粒子ビームの焦点距離の急速な調節の為のシステム及び方法を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、急速な焦点距離変更の為のシステム及び方法を提供する。このシステム及び方法は、加速電圧を変更することにより、焦点距離を制御する。本発明の一態様によると、一次加速電圧が安定した電源により供給され、その一次加速電圧は、変調電圧により変調され、比較的に「クリーン」(高い信号対ノイズ比)で安定しており、急速に変更可能でもある。安定した電源は、0から数百、数千、1万ボルトまでもの範囲の一次加速電圧を提供するのに有効である。変調電圧は、0から100,200ボルト間の範囲の変調電圧を供給する制御可能な電源により供給される。
【0006】
本発明の一態様によると、荷電粒子軸に直交していない対象物(「傾けられた」対象物)を撮像する間に焦点距離システム及び方法が利用される。加速電圧の変調は、荷電粒子ビームの場所を制御する走査信号を探知する。通常、傾けられた対象物の走査信号は、周期的なのこぎり歯信号に似ている。各期間中、信号は、上昇し、それから下降する。相対的に広いバンド幅を持つ制御可能な電源は、比較的に鋭い信号の下降を正確に探知する為に必要である。
【0007】
本発明の一態様によると、焦点距離は、TV用レートを超えるレートで変更可能であり、大きな角度範囲で傾けられた対象物の為に利用可能である。
【0008】
本発明の一態様によると、焦点距離は、自動焦点技術を実施するレートを遙かに越えるレートで変更される。
【0009】
本発明は、荷電粒子ビームの焦点距離を急速に変更する為の方法を提供し、その方法は、荷電粒子ビームの焦点距離と制御信号電圧値との関係に応答して制御信号を変更するステップを備える。
【0010】
本発明は、荷電粒子ビームを用いて、傾けられた対象物を走査する為の方法を提供するが、その方法は、傾けられた対象物の所定走査路と実質的に合致する焦点距離を持つ荷電粒子ビームを提供するステップを備え、ここで、焦点距離は、制御信号に応答し、焦点距離における急速な変更は、その制御信号の急速な調整により生み出される。
【0011】
本発明は、荷電粒子ビームの焦点距離において急速な変更の為のシステムを提供するが、このシステムは:制御信号に応答する焦点距離を有する荷電粒子ビームを発生させる為の荷電粒子ジェネレータと;その焦点距離の急速な変更を許容する為に制御信号を提供する為の制御信号ジェネレータと;を備える。
【0012】
都合の良いことに、制御信号は、加速電圧であるが、他の電圧、電流も使用可能である。都合の良いことに、変更するステップは、荷電粒子ビームの焦点距離と加速電圧との間の関係を決定する為の較正ステップに先行される。加速電圧は、一次加速電圧と変調電圧を備える。荷電粒子ビームは、電子ビームである。荷電粒子ビームは、対物レンズにより集束され、急速な変更レートにより制限される。対物レンズは、急速変更レートより遅いレートで、荷電粒子ビームの焦点距離を変更するのに有効である。急速変更は、通常、急速変更レートにより制限され、急速変更レートは、10ヘルツを超える。都合の良いことに、急速変更レートは、10キロヘルツを超える。傾けられた対象物は、45度を超えない角度で傾けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
あらゆる画像装置のように、走査型電子顕微鏡における焦点深度(DOF)は、制限される。ピクセルの大きさがプローブの大きさより小さいとき、DOFは、対物レンズの開口数により制限されるが、ピクセルの大きさがプローブの大きさより大きいとき、DOFは、隣接するピクセル間の距離により、やはり限定される。検査される対象物と撮像装置(例えば、SEM)との間の距離(「作動距離」とも呼ばれる。)が、(傾けられた対象物の場合のように)検査される対象物を横切って変わるとき、画像の至る所で先鋭さを同様に保つ間に見られる最大視野(FOV)は傾斜角度に依存する。
【0014】
より小さな加速電圧が、より小さなDOFになることが技術的に知られている。実験は、傾斜45度、Vacc=600Vにおける全画像にわたり同一の先鋭さで見ることができる最大FOVは、約5ミクロンであることを示した。これは、これらの条件におけるDOFが±1.75ミクロンであることを意味する。再検出の為の探索用FOVは、5ミクロンより大きいので、再検出性能は、傾斜45度で劣化する。図1の画像は、ダイナミックフォーカス訂正が無いときの傾斜45度における焦点問題の現象の一例を示す。画像の上区分と下区分の両方がぼんやりしており、焦点が合っていないこと、中央部分のラインだけが先鋭であることが明らかである。
【0015】
他方では、ビームエネルギは、とても急速に充電可能であり、そのため、これは、大きな傾斜角度でダイナミックに焦点を訂正する為には好ましい方法である。
【0016】
図3と図2は、傾斜されて走査する期間中のダイナミックフォーカスランプを記述する。ランプは、走査中の交番電子ビームエネルギ(Vacc)を意味する。図2は、矩形12により制限される画像を生み出す為に使用される電子ビームの走査路を例示する。(矩形12の外側に配置されるラインを含む)水平ライン13は、電子ビームの走査路を例示する。指向ライン14は、焦点距離を意味する。
【0017】
図4は、電源の例示的アレンジメントを示す。安定した電力は、Vacceleratorを供給し、制御可能な電源は、範囲(0から±200V)内で信号を供給する交番電流用電源である。
【0018】
制御可能な電源30は、直列でVaccelerator32に接続されている。Vaccelerator32、Vextractor34、Vsupressor38は、電子銃の様々な部品(40、42等)と接続され、電子銃36から抽出された荷電電子ビームのDOFにおける急速変更を許容する為に必要な電圧スキームを提供する。
【0019】
本発明の一態様によると、較正ステップは、走査の前に実行される。較正は、焦点距離の値に対する変調用電圧値を「写像」する。較正ステップは、走査パターンに変調電圧を一致させる為に使用される。
【0020】
以下は、変調電圧値と45度傾斜対象物の走査パターンとの間を一致させる為に利用される例示の較正ステップである。
ダイナミックフォーカスランプ振幅=ΔWD・ΔVacc・BitToVolt/Δz
ここで、
1.ΔWD=0.7071・FOV
2.ΔVacc/Δz=a+b・Vacc(Vaccは、kVで測定される。aとbは、一対の定数であり、その値はVaccに依存する。)
較正されるのに必要なパラメータは、ΔVacc/Δzである。実際、それは、色彩の収差係数の測定値である。色彩の収差係数は、カラム毎に変わるので、このパラメータとして固定値を入れることはできず、測定されなければならない。ΔVacc/Δzを測定する最も簡単な方法は、ΔOLC/ΔzおよびΔVacc/ΔOLCから導き出すことである。
ΔVacc/Δz=(ΔOLC/Δz)・(ΔVacc/ΔOLC)
ΔOLC/Δzは、階段状ターゲットにおいて測定され、これは、各階段の間の高さの差が50ミクロンの階段を含む。
【0021】
図5を参照すると、図5は、較正用ターゲットを例示し、これは、複数の階段51,52,53…を含み、これらは、50ミクロンだけ間隔を開けて配置されている。もし、OLC1(61)が、階段1(51)にビームを集束する為に使用される対物レンズ用電流であり、OLC3が階段3にビームを集束する為に使用される対物レンズ用電流であり、階段3が階段3より100ミクロン高い場合、
ΔOLC/Δz=(OLC1−OLC3)/100μm
になる。
【0022】
ΔVacc/ΔOLCは、2つの異なるVaccで同一場所に集束することにより計算される。もし、OLC4がVacc4で集束する為に使用し、OLC5がVacc5で集束する為に使用し、Vacc4−Vacc5=10Vである場合、
ΔVacc/ΔOLC=10V/(OLC5−OLC4)
になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、傾いて検査された対象物の概略の画像であり、急速焦点距離変更を利用せずに撮像されたものである。
【図2】図2は、本発明の一態様に従った、画像の走査パターンの概略例示である。
【図3】図3は、本発明の一態様に従った、図2の画像を撮像する為に利用されてもよい走査信号の概略例示である。
【図4】図4は、本発明の一態様に従った、電点および電子銃の概略例示である。
【図5】図5は、本発明の一態様に従った、較正ターゲットの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの焦点距離を急速に変更する方法であって、荷電粒子ビームの焦点距離と制御信号電圧値との関係に応答して、制御信号を変更するステップを備える、前記方法。
【請求項2】
前記制御信号は、加速電圧である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変更するステップは、荷電粒子ビームの焦点距離と加速電圧値との関係を決定する為に較正するステップにより先行される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記加速電圧は、一次加速電圧と変調電圧を備える、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記荷電粒子ビームは、電子ビームである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記荷電粒子ビームは、対物レンズで集束され、急速変更は、急速変更レートにより制限される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記対物レンズは、急速変更レートより遅いレートで前記荷電粒子ビームの焦点距離を変更するのに有効である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記急速変更は、急速変更レートにより制限され、前記急速変更レートは、10ヘルツを超える、請求項2記載の方法。
【請求項9】
急速変更は、急速変更レートにより制限され、前記急速変更レートは、10キロヘルツを超える、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記急速変更は、傾けられた対象物を走査することから生じる、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記傾けられた対象物は、45度を超えない角度で傾いている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
荷電粒子ビームで、傾けられた対象物を走査する方法において、前記傾けられた対象物の所定走査路と実質的に合致する焦点距離を有する荷電粒子ビームを提供するステップを備え、
前記焦点距離は、制御信号に応答し、前記焦点距離における急速な変更は前記制御信号の急速な調節により生み出される、前記方法。
【請求項13】
荷電粒子ビームの焦点距離における急速な変更の為のシステムにおいて:
制御信号に応答した焦点距離を有する荷電粒子ビームを発生させる為の荷電粒子ジェネレータと;
前記焦点距離の急速な変更を許容する為の制御信号を提供する為の制御信号ジェネレータと;
を備える、
前記システム。
【請求項14】
前記制御信号は、加速電圧である、請求項13のシステム。
【請求項15】
前記システムは、前記加速電圧値と前記焦点距離との関係を決定するのに有効である、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記加速電圧は、一次加速電圧と変調電圧とを備える、請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記荷電粒子ビームは、電子ビームである、請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記荷電粒子ビームは、対物レンズにより集束され、前記急速変更は、急速変更レートにより制限される、請求項14記載のシステム。
【請求項19】
前記対物レンズは、急速変更レートより遅いレートで前記荷電粒子ビームの焦点距離を変更するように有効である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記急速変更は、急速変更レートにより制限され、前記急速変更レートは、10ヘルツを超える、請求項14記載の方法。
【請求項21】
急速変更は、急速変更レートにより制限され、前記急速変更レートは、10キロヘルツを超える、請求項2記載の方法。
【請求項22】
前記制御信号ジェネレータは、安定した電源と、急速に制御可能な電源を備える、請求項14記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−300358(P2008−300358A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−181754(P2008−181754)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2003−534949(P2003−534949)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(504273782)アプライド マテリアルズ イスラエル リミテッド (18)
【Fターム(参考)】