説明

恒久的に血管を開いた状態にするための薬剤溶出医療デバイスの製造、方法、および使用

【課題】ラパマイシンのための最適化されたキャリアシステムを提供すること。
【解決手段】カテーテルバルーンのコーティングのための、少なくとも1つの油または脂肪または脂質またはリポイドまたはワックスまたはアジュバントまたはキャリアマトリックスと組み合わせた、抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の活性薬剤の使用。1つの実施態様では、抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の活性薬剤がラパマイシンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の活性薬剤を含む少なくとも1つの層を有するステントおよびカテーテルバルーン、これらの医療デバイスの製造方法、および再狭窄を防ぐためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人体において、血液は、損傷した場合のみ本来の血管の内側以外の表面と接触することになる。したがって、血液凝固系は、血液が異物の表面と接触した場合に、出血を低減するためおよび命にかかわる血液の損失を防ぐために、常に活性化された状態にある。インプラントもまた異物の表面を代表するという事実のため、血液と恒久的に接触しているインプラントを受容する全ての患者に、血液と薬剤(いわゆる、血液凝固を抑制する抗凝固剤)との接触の間治療がされ、時には、かなりの副作用を注意しなければならない。記載される血栓症の危険もまた、血液を含む血管内で血管体支持(いわゆるステント)を利用する危険要因の1つとして生じる。ステントには、例えば、動脈硬化性の変化(特に、冠状動脈)により血管狭窄および閉塞が発生した血管壁を恒久的に拡張する役割を担う。ステントのために用いられる材料は、通常、医療用のステンレス鋼、Ni−Ti合金、またはCo−Cr合金であり、一方、ポリマー製のステントは、まだ開発段階にある。ステント血栓症は、早期の血栓症として既に心臓カテーテル治療を行っている場合の1%未満、または病院療養中の場合の2%から5%に生じる。約5%の場合において、診療による血管損傷は、動脈封鎖のために生じ、そしてまた、血管の拡張によって擬動脈瘤を生じる可能性も存在する。
【0003】
同様に、PTCAの事象では、血液凝固は、異物の導入により活性化された状態になる。この場合、短期間インプラントが関係しているので、問題は、血管狭窄または閉塞を拡張または除去するために必要な血管拡張の力において、より実質的に見出されている。加えてそして非常によく生じる合併症は、血管の再狭窄、再閉塞である。ステントは、血管の閉塞の再発生の危険を減少させるが、それらは、現在までこのような再狭窄を完全に防ぐことができないか、またはそれら自体、新生内膜過形成の原因となる。特に、重篤な場合の事象では、ステントの植え込み後の再閉塞(再狭窄)の割合は30%までであり、患者の病院再訪の主な理由の1つである。PTCA後の再閉塞の割合は、ステントと比較して実質的により高いので、重大な狭窄または再狭窄を有する患者には、ステントが通常移植され得る。
【0004】
再狭窄の正確な概念の説明は、技術文献では見つけることができない。最も一般的に用いられる再狭窄の形態学的な定義は、PTA(経皮経管的血管形成術)成功後、血管の直径が通常の50%未満に減少することを再狭窄とする定義である。これは、経験的に決められた値であり、その血行力学関連性および臨床病理学との関係とは、しっかりした科学的根拠を欠く。実際には、患者の臨床的な増悪が、以前に治療した血管部分の再狭窄の徴候としばしばみなされる。ステントの植え込みの間にまたは血管の過拡張の事象において生じた血管の損傷が、最初の7日間に回復プロセスに対して重要な役割を果たす炎症反応を引き起こす。ここでの併存のプロセスが、特に増殖因子の放出に関係し、それにより平滑筋細胞の増殖の増大が始まり、そしてこのことと共に、制御されない増殖のため、急速な再狭窄、血管閉塞の再発が生じる。
【0005】
2〜3週後、ステントが血管の組織中に伸び、そして平滑筋細胞によって完全に包み込まれるようになると、瘢痕形成があまりにも顕著になり得(新生内膜過形成)、そしてステントの表面の被覆だけでなく、ステントのすべての内部空間の閉塞に至り得る。
【0006】
微細孔を介してヘパリンを放出するバルーンカテーテルの開発および後のヘパリンでのステントのコーティングによって再狭窄の問題を解決する試みは無駄に終わった(J.Whorleら、European Heart Journal (2001)22, 1808-1816)。しかし、ヘパリンは、最初に述べた原因にのみ対しては抗凝固剤として対応し、さらに溶液中においてのみ、その総合的な効果を表し得る。この第1の問題は、抗凝固剤の投与によって薬物的にほとんど完全に回避され得る一方、現在、さらなる問題が、平滑筋細胞の増殖を局所的に阻害することによって解決しようとされている。
【0007】
これは、例えば、放射性のステント、または好ましくはその作用が抗増殖である薬学的に活性な薬剤を含むステントによって行われる。化学療法から、活性薬剤パクリタキセルが、形成中の紡錘体装置との非可逆的結合によって有糸分裂過程中の細胞分裂を防ぐことがうまくいくことが証明されている。細胞は、この遷移状態にあって維持され得ず、そして細胞は死滅する。しかし、パクリタキセル溶出ステントを用いた既存の研究は、同じ非コーティングステントと反して、パクリタキセルは、長期評価では、血栓症の割合が増加する結果になることを示す。これは、パクリタキセルの作用機序に基づく。細胞分裂中のチューブリンの非可逆結合および安定化は、細胞が他の細胞維持機能を達成し得ないという結果になる。最終的に、細胞は死滅する。この方法によって、創傷治癒プロセスはよりよく制御されることになるが、しかしもはや生存できない細胞物質の発生によって、増加された炎症反応、およびしたがってより強力な免疫応答が望ましくなく達成される。パクリタキセルの投薬を遵守することは、非常に困難である。一方では、創傷治癒プロセスを惹起するのに避けられない反応に、パクリタキセルによって付加的に惹起される炎症プロセスに加えて対処されなければならず、そして他方では、投薬量は、効果がほとんど達成されないほどに少なくなってはならない。この綱渡りは、しばしば半年後でさえ、所望の内皮層がステント上に形成されないという結果になる。ステントの支柱が未だ被覆されず、血栓症(晩期急性血栓症)のため数ヵ月後には患者が死亡するという危険の増加を生じるか、またはステントを包み込む細胞組織は、平滑筋細胞、単球などからなり、しばらくの後、再び閉塞を生じ得るかのいずれかである。
【0008】
同じ再狭窄予防の目的のため、非常に成功している活性薬剤として、ラパマイシン(同義語シロリムス)(親水性マクロライド抗生物質)が考えられる。この活性薬剤は、特に、移植医学において免疫抑制性活性薬剤として利用され、他の免疫抑制剤に反して、ラパマイシンはまた、腫瘍形成を阻害する。移植後、腫瘍形成の大きな危険が患者に存在するので、ラパマイシンの投与が好都合である。なぜなら、シクロスポリンAのような他の免疫抑制剤は、公知のように腫瘍形成を促進すらし得るからである。
【0009】
ラパマイシンの作用機序は、詳細がまだ公知ではない。しかし、特に、タンパク質mTOR(哺乳類ラパマイシン標的)282kDのホスファチジルイノシトール−3キナーゼとの複合体形成に寄与すると考えられる。mTORは、一連のサイトカイン媒介のシグナル伝達経路、とりわけ、免疫抑制効果に加えて細胞分裂に必要なシグナル経路にもまた関与しているので、それはまた、消炎特性、抗増殖特性、および抗真菌特性さえ有する。
【0010】
【化1】

【0011】
IUPAC名:
[3S−[3R[E(1S, 3S, 4S)],4S ,5R,8S,9E,12R,14R,15S,16R,18S,19S,26aR]]−5,6,8,11,12,13,14,15,16,17,18,19,24,25,26,26a−ヘキサデカヒドロ−5,19−ジヒドロキシ−3−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルエテニル]−14,16−ジメトキシ−4,10,12,18−テトラメチル−8−(2−プロペニル)−15,19−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]−オキサアザシクロトリコシン−1,7,20,21(4H,23H)−テトロン1水和物。
【0012】
増殖は、リボソームタンパク質の合成を停止することによって後期G1期で中断される。他の抗増殖性活性薬剤と比較して、ラパマイシンの作用機序は、強い疎水性であること意外、パクリタキセルと同様に特別なものとして指摘され得る。さらに、上記のような免疫抑制効果および消炎効果は、好都合以上である。なぜなら、ステント移植後の早期制御としての炎症反応の程度および総免疫応答の程度もまた、さらなる成功のために決定的だからである。
【0013】
したがって、ラパマイシンは、狭窄および再狭窄に対して利用するための必要な条件の全てを有する。インプラント上またはインプラント中でのラパマイシンの貯蔵期間が限られたことは、パクリタキセルと比較してさらなる利点であるとして述べられるべきである。なぜなら、必要なのは、活性薬剤が、ステント移植後の最初の決定的な週には効果的でなければならないことであるからである。したがって、健常な治癒プロセスの完了に重要な内皮細胞層が、完全にステント一面に増殖し得、そしてステント血管壁内に組み込み得る。
【0014】
同様の作用機序がラパマイシンの公知の誘導体(ビオリムス、エベロリムス)に見出され得る。なぜなら、改変は、mTORの結合領域に対して無関係である分子の官能基にあるからである。異なる臨床研究(RAVEL、SIRIUS、SIROCCO)では、ラパマイシンは、他の活性薬剤(例えば、デキサメタゾン、タクロリムス、バチマスタット)に反して、強い疎水性のパクリタキセルと比較して、異なる物理特性にもかかわらず、再狭窄に対抗するために適切以上であることを示している。
【0015】
活性薬剤自体が、再狭窄の最適な予防の根拠ではない。薬剤溶出ステントが、その全体において要求を満たさなければならない。加えて、薬剤溶出の用量の決定は、時間的に遅延させ、そして濃度に依存して制御されなければならない。薬剤溶出および薬剤溶出速度は、活性薬剤の物理的特性および化学的特性にのみ依存するのではなく、利用されるポリマーの特性およびポリマーと活性薬剤との相互作用にも依存する。ステント材料、ステント特性、およびステント設計は、さらなる要因であり、最適で効果的な医療デバイスのために考慮されなければならない。
【0016】
拡散制御ポリマー層の下にラパマイシンが存在する支柱にチャネルを有するステントを記載するEP0950386B1の分割出願として、EP1407726A1(優先権1998)には、ポリマーマトリックスのラパマイシンを溶出するステントが記載されており、2002年から市販されている(CypherTMステント)。ここで、パリレンCでコーティングされたステントには、2種の生物学的に安定なポリマー(ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)およびポリ−n−ブチルメチルメタクリレート(PBMA))とラパマイシンとの混合物がコーティングされ、そしてPBMAの拡散制御薬剤非含有トップコートが備えられる。このステントを用いた結果は、アレルギー反応および炎症および晩期血栓症が重大な問題を引き起こすことを示している(Prof. Renu Virmani, 2002-ff)。さらに、トップコートとしてのPBMAは、拡張中に壊れ、したがって、ラパマイシンの非制御溶出が生じるので問題がある(図1を参照のこと)。その上、ラパマイシンの使用における一般的な問題が現れる。ラパマイシンの制御されるバイオアベイラビリティーは、維持するのが困難である:ラパマイシンは、親水性分子なので急速に溶解する。もし、拡散制御トップコートが壊れると、ラパマイシンの溶出は急速であり、非制御であり、非標的である。さらに、PBMAの満足のいかない弾性のため、より大きなポリマー片が剥離する危険が存在し、血液循環におけるそれらの生物学的安定性に起因して、さらなる問題を長引かせ得る(図2を参照のこと)。
【0017】
EP0568310B1は、過剰増殖性の血管疾患のためのヘパリンおよびラパマイシンの活性薬剤の組み合わせを請求している。ここで、明細書は、この活性薬剤の組み合わせの投与が、ラパマイシン含浸血管ステントによって行われ得ることを単に手短に言及しているだけである。実施例が存在せず関連する単なる記述があるだけであり、したがって、多くの疑問が生じる。この特許は、1992年の特許であるが、現在までEP1407726A1に基づくCordis Corp.製の上述のCypherTMステントのみが市販されており、明らかに、ラパマイシン−ヘパリン含浸ステントの商品化はこの特許の主要な目的ではなかった。
【0018】
EP0551182B1は、ステントに既に言及すると共に、機械的に惹起される過剰増殖性疾患を減少または防止するラパマイシン含浸医療品を記載および請求している。ここで、ラパマイシン含浸ステントは、血管内にラパマイシンを導入するための補助手段として言及されているが、詳細に議論されていない。ラパマイシン含浸ステントは、キャリアの存在なく、ステントの枠組み上の純粋な活性薬剤層を意味する。技術的に、この実施態様は、合理的に実現され得ない。なぜなら、ラパマイシンは空気中で素早く加水分解し、そして特に水の存在下でラクトン結合の開裂によって容易に分解するからである。さらに、ラパマイシンの純粋な活性薬剤層は、ラパマイシンコーティングカテーテルバルーンまたはラパマイシンコーティングステントを有するバルーンの挿入の間に血流に非常に容易に溶解するので、医療デバイス(ステントまたはカテーテルバルーン)の十分な量のラパマイシンが、なお標的部位に存在しているかどうかは保証され得ない。さらに、純粋な活性薬剤層は、拡張の間に、活性薬剤が短時間内で完全に溶出されるという欠点を有する。なぜなら、薬剤放出システムの形態での薬剤溶出コーティングは、存在せず、したがって自発的な溶出が生じ、そして溶出動態を利用できないからである。
【0019】
したがって、本発明は、既に技術水準にある、ラパマイシンコーティングステントまたはカテーテルバルーンの提供、あるいは再狭窄の予防または治療のためのラパマイシンの使用に関するわけではなく、精密な活性薬剤ラパマイシンのための最適化されたキャリアシステムに関する。
【0020】
しかし、既に上述したように、どの活性薬剤も、再狭窄の予防としてどの方法においても用いられ得ない。非コーティングインプラントの質とは独立して、使用の成功および患者の長期間の安全のため、多くのさらなる条件が満足されなければならない。適切な活性薬剤、溶媒、および必要に応じて用いられるマトリックスの物理的特性および化学的特性は、お互いのこれらの要因の相互作用と同様に考慮されなければならない。これらのパラメーターの適切な組み合わせによってのみ、治療薬の時間制御および用量制御されたアベイラビリティーが最適に調節され、最終的に、患者の安全および健康が保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上述の欠点を有することなく、制御された健常な治癒プロセスを保証し、そして完全な内皮細胞層を有する血管壁を再生させる、ラパマイシン溶出ステントおよびバルーンカテーテルを提供することである。したがって、本発明の目的は、ラパマイシンのための最適化されたキャリアシステムを提供することにある。それは、ステント(すなわち、血管支持体)またはカテーテルバルーンに、ならびに波形にされたステントおよびカテーテルバルーンに同時に適用され得、活性薬剤ラパマイシンの十分な付着安定性および分解安定性を保証し得、そして再狭窄の予防および治療に最良の方法において、適切な溶出動態を有し得る。
【0022】
移植後の最初の数日および週における細胞反応の抑制は、好ましくは抗増殖的、免疫抑制的、および消炎的に効果的なラパマイシン、同様に効果的なその誘導体/類似体および/または代謝物によって達成される。創傷治癒または創傷治癒プロセスを合理的なように促進するさらなる活性薬剤および/または活性薬剤の組み合わせが添加され得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は本発明の独立請求項の技術的な教示によって解決される。さらに、本発明の好都合な設計は、従属請求項、明細書、および実施例から生じる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のステントは、1、2またはより多くの層を有し、少なくとも1層が、ラパマイシンまたはラパマイシンと他の活性薬剤(ラパマイシンと相補的および/または相乗的な効果のある)との効果的な組み合わせを含むか、またはポリマーのキャリアなしに適用される。ラパマイシンまたはラパマイシンと活性薬剤との組み合わせは、すぐ下の層またはステント表面に共有結合および/または接着結合されるか、および/または層内に共有結合的および/または接着的に組み込まれ、活性薬剤は、連続的かつ少量で放出され、そしてステント表面の細胞の増殖が妨げられたり過増殖にならない。両効果の組み合わせは、本発明のステントに血管壁内への急速な増殖能力を付与し、そして再狭窄の危険および血栓症の危険を減少する。ラパマイシンの制御された溶出は、植え込み後1ヶ月から12ヶ月、好ましくは1ヶ月から2ヶ月の期間にわたって続く。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】倍率500倍のCypherTM薬剤溶出ステント(走査電子顕微鏡法)。コーティング中の多数の深い亀裂が、はっきり見られ得る。これは、活性薬剤の非制御溶出を生じる。
【図2】CypherTM薬剤溶出ステント(Cypherステント)(走査電子顕微鏡法);生物学的に安定なポリマーコーティングの膨れた小片が、はっきり見られ得る。以下の問題は、それと関係がある:a)生物によって分解され得ないポリマー小片は、血液循環内にもたらされる。b)活性薬剤は、標的され、制御されそして適切に投与されるように溶出されない。c)ステント表面は、外来表面として暴露されるので、血栓症の危険性が増加する。
【図3】本発明のポリマーコーティングされたラパマイシン溶出ステントの走査電子顕微鏡法画像。Cypherステントとの差異がはっきり見られ得る:亀裂および膨れたポリマー小片がない。示される実施例では、生分解性ポリマーを用いた。
【図4】生分解性ポリマーPLGA中のラパマイシンの溶出プロファイル。「最初の放出」後(移植直後)の約400〜500時間後、ラパマイシンの溶出速度の新たな増加(「後期バースト(late burst)」と呼ぶ)が生じることが十分に見られ得る。
【図5】生物学的に安定なマトリックスからのラパマイシンの溶出挙動。
【図6】細孔形成システムならびにチャネルおよび膨潤による溶出を介したラパマイシン放出の作用方法のスキームである。親水性の活性薬剤が、血管壁に直接、細孔形成薬剤によって形成されたチャネルを介して到達する。もし、非常に膨潤性の物質が非膨潤性マトリックスまたは明らかに膨潤性が小さいマトリックス中でラパマイシンと混合されていれば、活性薬剤は、膨潤プロセスで発生した圧力によって表面に押し出される(「射出モデル」)。
【図7】マトリックスが、高含有量の細孔形成剤またはマイクロチャンネルを含む生物学的に安定なマトリックスからなり、これによりラパマイシンが標的部位に急速に制御されながらそして高用量で到達する。この場合はまた、膨れたポリマー小片または他のどんな欠陥も検出されない。
【図8】ラパマイシン溶出ステントを、ラパマイシンが表面に到達するマイクロチャネルを形成するマトリックスでコーティングするためのスキームである。親水性の活性薬剤が、血管壁に直接、細孔形成薬剤によって形成されたチャネルを介して到達する。もし、非常に膨潤性の物質が非膨潤性マトリックスまたは明らかに膨潤性が小さいマトリックス中でラパマイシンと混合されていれば、活性薬剤は、膨潤プロセスで発生した圧力によって表面に押し出される(「射出モデル」)。
【図9】組み合わせられたコーティング方法で、ラパマイシンおよび本発明のアジュバントとしてミリスチン酸イソプロピルで完全にコーティングされた拡張されたバルーンカテーテルである。拡張後でさえ、コーティングは、膨れまたは亀裂がないことが見られ得る。
【図10】純粋ラパマイシン層およびPVAのトップコートを有するステント(青色)と比較したCypherステント(黄色)からのラパマイシンの溶出挙動である。ラパマイシン/PVA系の実質的に促進された溶出挙動は、Cypherとはっきり区別され得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(活性薬剤の組み合わせ)
本発明の実施態様において、ラパマイシンはまた、他の活性薬剤と組み合わせて用いられ得る。ラパマイシンの効果を促進するさらなる活性薬剤としては、抗増殖剤、抗転移剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、消炎剤、細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤および/または抗血栓剤、および/または化学的および生物学的誘導体が使用され得る:ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、デュナイマイシン(dunaimycin)、アスコマイシン、バフィロマイシン、エリスロマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、コンカナマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ホリマイシン、セリバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、ニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、4−ヒドロキシシクロホスファミド、エストラムスチン、メルファラン、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、ベンダムスチン、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、トレオスルファン、テモゾロマイド、チオテパ、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、メトトレキサート、フルダラビン、フルダラビン−5’−リン酸二水素、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミルテフォシン、ペントスタチン、アルデスロイキン、トレチノイン、アスパラギナーゼ、ペグアスパルガーゼ、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ホルメスタン、アミノグルテチミド、アドリアマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、セファランチン、8−α−エルゴリン、ジメチルエルゴリン、アグロクラビン、1−アリルイスリド、1−アリルテルグリド、ブロムエルグリド(bromerguride)、ブロモクリプチン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、2−ブロモ−12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(2−メチルプロピル)−,(5’α)−)、エリモクラビン(elymoclavin)、エルゴクリスチン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(フェニルメチル)−,(5’α)−)、エルゴクリスチニン、エルゴコルニン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’,5’−ビス(1−メチルエチル)、(5’α)−)、エルゴコルニニン(ergocorninin)、エルゴクリプチン(エルゴタマン−3’ 、6’、18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(2−メチルプロピル)−,(5’α)−(9Cl))、エルゴクリプチニン、エルゴメトリン、エルゴノビン(エルゴバシン、INN:エルゴメトリン、(8β(S))−9,10−ジデヒドロ−N−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、エルゴシン、エルゴシニン(ergosinin)、エルゴメトリニン、エルゴタミン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−メチル−5’−(フェニルメチル)−,(5’α)−(9Cl))、エルゴタミニン、エルゴバリン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−メチル−5’−(1−メチルエチル)−,(5’α)−)、レルゴトリル、リスリド(CAS番号:18016−80−3、3−(9,10−ジデヒドロ−6−メチルエルゴリン−8α−イル)−1,1−ジエチルカルバミド)、リゼルゴール、リゼルギン酸(D−リゼルギン酸)、リゼルギン酸アミド(LSA、D−リゼルギン酸アミド)、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD、D−リゼルギン酸ジエチルアミド、INN:リゼルグアミド、(8β)−9,10−ジデヒドロ−N,N−ジエチル−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、イソリゼルギン酸(D−イソリゼルギン酸)、イソリゼルギン酸アミド(D−イソリゼルギン酸アミド)、イソリゼルギン酸ジエチルアミド(D−イソリゼルギン酸ジエチルアミド)、メスレルギン(mesulergin)、メテルゴリン、メテルギン(INN:メチルエルゴメトリン、(8β(S))−9,10−ジデヒドロ−N−(1−(ヒドロキシメチル)プロピル)−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、メチルエルゴメトリン、メチセルジド(INN:メチセルジド、(8β)−9,10−ジデヒドロ−N−(1−(ヒドロキシメチル)プロピル)−1,6−ジメチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、ペルゴリド((8β)−8−(メチルチオ)メチル)−6−プロピル−エルゴリン)、プロテルグリドおよびテルグリド、セレコキシブ、サリドマイド、ファスジル(登録商標)、シクロスポリン、smc増殖インヒビター−2w、エポチロンAおよびB、ミトキサントロン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、c−myc−アンチセンス、b−myc−アンチセンス、ベツリン酸、カンプトテシン、PI−88(硫酸化オリゴ糖)、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、活性化プロテインC、IL1−βインヒビター、チモシンα−1、フマル酸およびそのエステル、カルシポトリオール、タカルシトール、ラパコール、β−ラパコン、ポドフィロトキシン、ベツリン、ポドフィリン酸2−エチルヒドラジド、モルグラモスチム(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロンα−2b、レノグラスチム(r−HuG−CSF)、フィルグラスチム、マクロゴール、ダカルバジン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、セレクチン(サイトカインアンタゴニスト)、CETPインヒビター、カドヘリン、サイトカインインヒビター、COX−2インヒビター、NFκB、アンジオペプチン(angiopeptin)、シプロフロキサシン、カンプトテシン、フルロブラスチン(fluroblastin)、筋肉細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、1,11−ジメトキシカンチン−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、スコポレチン、コルチシン、テトラ硝酸ペンタエリスリトールおよびシドノンイミン(syndnoemine)のようなNO供与体、S−ニトロソ誘導体、タモキシフェン、スタウロスポリン、β−エストラジオール、α−エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロン、エストラジオールシピオネート、エストラジオールベンゾエート、トラニラスト、カメバカウリンおよびガンの治療に適用される他のテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼインヒビター(チロホスチン)、シクロスポリンA、パクリタキセルおよびその誘導体(例えば、6−α−ヒドロキシ−パクリタキセル)、バッカチン、タキソテール、合成的に得られる亜酸化炭素の大環状オリゴマー(MCS)およびその誘導体ならびに天然源から得られるもの、モフェブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、ロナゾラク、ダプソン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、リン酸クロロキン、ペニシラミン、ツムスタチン、アバスチン、D−24851、SC−58125、ヒドロキシクロロキン、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オキサセプロール、セレコキシブ、β−シトステリン、アデメチオニン、ミルテカイン、ポリドカノール、ノニバミド、レボメントール、ベンゾカイン、アエシン、エリプチシン、D−24851(カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA〜E、インダノシン、ノコダゾール、S100プロテイン、バシトラシン、ビトロネクチンレセプターアンタゴニスト、アゼラスチン、グアニジルシクラーゼ刺激剤、金属プロテイナーゼ1および2の組織インヒビター、遊離核酸、ウイルス伝達物質に組み込まれた核酸、DNAおよびRNAフラグメント、プラスミノゲンアクチベータインヒビター1、プラスミノゲンアクチベータインヒビター2、アンチセンスオリゴヌクレオチド、VEGFインヒビター、IGF−1;抗生物質(例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファクロル、セフォタキシム、トブラマイシン、ゲンタマイシン)、ペニシリン類(例えば、ジクロキサシリン、オキサシリン)、スルフォンアミド、メトロニダゾール、抗血栓剤(例えば、アルガトロバン、アスピリン、アブシキシマブ、合成抗トロンビン薬、ビバリルジン、クマジン、エノキサパリン、脱硫酸化およびN−再アセチル化ヘパリン、組織プラスミノゲンアクチベータ、GpIIb/IIIa血小板膜レセプター、第X因子インヒビター抗体、インターロイキンインヒビター、ヘパリン、ヒルジン、r−ヒルジン、PPACK、プロタミン、2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸のナトリウム塩、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワーファリン、ウロキナーゼ)、血管拡張剤(例えば、ジピラミドール(dipyramidole)、トラピジル、ニトロプルシッド)、PDGFアンタゴニスト(例えば、トリアゾロピリミジンおよびセラミン)、ACEインヒビター(例えば、カプトプリル、シラザプリル、リシノプリル、エナラプリル、ロサルタン)、チオプロテアーゼインヒビター、プロスタサイクリン、バピプロスト、インターフェロンα、β、およびγ、ヒスタミンアンタゴニスト、セロトニンブロッカー、アポトーシスインヒビター、アポトーシス調節剤(例えば、p65、NF−κBまたはBcl−xLアンチセンスオリゴヌクレオチド)、ハロフジノン、ニフェジピン、トコフェロール、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、およびビタミンB12、葉酸、トラニラスト、モルシドミン、茶ポリフェノール、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ボスウェリア酸およびその誘導体、レフルノミド、アナキンラ、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン、プロカインアミド、D24851、SC−58125、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール、アミドロン、天然および合成ステロイド(例えば、ブリオフィリンA(bryophyllin A)、イノトジオール(inotodiol)、マキロシドA(maquirosid A)、ガラキノシド(ghalakinosid)、マンソニン(mansonin)、ストレブロシド(streblosid)、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン)、非ステロイド性物質(NSAIDS)(例えば、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニルブタゾン)、および他の抗ウイルス剤(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、
およびジドブジン)、抗真菌剤(例えば、クロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン)、抗原虫剤(例えば、クロロキン、メフロキン、キニーネ)、さらに天然テルペノイド(例えば、ヒポカエスクリン(hippocaesculin)、バリングトジェノール−C21−アンゲレート(barringtogenol-C21-angelate)、14−デヒドロアグロスチスタチン(14-dehydroagrostistachin)、アグロスケリン(agroskerin)、アグロスチスタチン(agrostistachin)、17−ヒドロキシアグロスチスタチン(17-hydroxyagrostistachin)、オバトジオリド(ovatodiolid)、4,7−オキシシクロアニソメリン酸(4,7-oxycycloanisomelic acid)、バッカリノイド(baccharinoid)B1、B2、B3、およびB7、ツベイモシド(tubeimosid)、ブルセアノール(bruceanol)A、B、およびC、ブルセアンチノシド(bruceantinoside)C、ヤダンジオシド(yadanzioside)NおよびP、イソデオキシエレファントピン(isodeoxyelephantopin)、トメンファントピン(tomenphantopin)AおよびB、コロナリン(coronarin)A、B、C、およびD、ウルソール酸、ハイプタチン酸(hyptatic acid)A、ゼオリン、イソイリドジャーマナル(iso-iridogermanal)、マイテンフォリオール(maytenfoliol)、エフサンチン(effusantin)A、エクシサニン(excisanin)AおよびB、ロンギカウリン(longikaurin)B、スクルポネアチン(sculponeatin)C、カメバウニン(kamebaunin)、ロイカメニン(leukamenin)AおよびB、13,18−デヒドロ−6−α−セネシオイルオキシカパリン(13,18-dehydro-6-alpha-senecioyloxychaparrin)、1,11−ジメトキシカンチン−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、スコポレチン、タクサマイリン(taxamairin)AおよびB、レジェニロール(regenilol)、トリプトリド(triptolid))、さらにシマリン、アポシマリン、アリストロキア酸、アノプテリン、ヒドロキシアノプテリン(hydroxyanopterin)、アネモニン、プロトアネモニン、ベルベリン、塩化ケリブリン(cheliburin chloride)、シクトキシン、シノコクリン(sinococuline)、コンブレタスタチン(bombrestatin)AおよびB、クドライソフラボン(cudraisoflavone)A、クルクミン、ジヒドロニチジン、塩化ニチジン、12−β−ヒドロキシプレグナジエン−3,20−ジオン、ビロボール、ギンコール、ギンコール酸、ヘレナリン、インディシン、インディシン−N−オキシド、ラシオカルピン、イノトジオール、グリコシド1a、ポドフィロトキシン、ジャスティシジン(justicidin)AおよびB、ラレアチン(larreatin)、マロテリン(malloterin)、マロトクロマノール(mallotochromanol)、イソブチリルマロトクロマノール(isobutyrylmallotochromanol)、マキロシド(maquirosid)A、マルカンチン(marchantin)A、マイタンシン、ライコリディシン(lycoridicin)、マルゲチン(margetin)、パンクラチスタチン、リリオデニン、オキソウシンスニン、アリストラクタム−AII、ビスパルテノリジン(bisparthenolidin)、ペリプロコシド(periplocosid)A、ガラキノシド(ghalakinosid)、ウルソール酸、デオキシソロスペルミン(deoxypsorospermin)、サイコルビン(psycorubin)、リシンA、サンギナリン、マヌーウィート酸(manwu wheat acid)、メチルソルビフォリン(methylsorbifolin)、スパセリアクロモン(spatheliachromen)、スチゾフィリン(stizophyllin)、マンソニン(mansonine)、ストレブロシド(streblosid)、アカゲリン(akagerin)、ジヒドロウサムバレンシン(dihydrousambarensin)、ヒドロキシウサムバリン(hydroxyusambarin)、ストリキノペンタミン(strychnopentamin)、ストリキノフィリン(strychnophyllin)、ウサムバリン(usambarin)、ウサムバレンシン(usambarensin)、ベルベリン、リリオデニン、オキソウシンスニン、ダフノレチン(daphnoretin)、ラリシレシノール、メトキシラリシレシノール、シリンガレシノール(syringaresinol)、ウンベリフェロン、アフロモソン(afromoson)、アセチルビスミオン(acetylvismion)B、デスアセチルビスミオン(desacetylvismion)A、ビスミオン(vismion)AおよびB、および硫黄含有アミノ酸(例えば、システイン)の群からの活性薬剤ならびに上記活性薬剤の塩、水和物、溶媒和物、エナンチオマー、ラセミ化合物、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物、代謝物、および混合物。
【0027】
活性薬剤は、別々または組み合わせて、同じ濃度または異なる濃度で用いられる。特に好ましくは、それらの抗増殖効果に加えてさらなる特性を有する活性薬剤である。さらに、活性薬剤タクロリムス、パクリタキセルおよびその誘導体、ファスジル(登録商標)、ビトロネクチンレセプターアンタゴニスト、サリドマイド、シクロスポリンA、テルグリド、リスリド、セレコキシブ、R−lys化合物、およびそれらの誘導体/類似体ならびに効果的な代謝物との組み合わせが好ましい。ラパマイシンとテルグリドとの組み合わせ、またはラパマイシンとリスリドとの組み合わせ、またはラパマイシンとパクリタキセルとの組み合わせ、またはラパマイシンと免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA)との組み合わせが特に好ましい。
【0028】
ラパマイシンとパクリタキセル、パクリタキセル誘導体、特にパクリタキセルの親水性誘導体、エポチロン、テルグリド、またはリスリドとの活性薬剤組み合わせが、特に好ましい。
【0029】
活性薬剤は、好ましくは、0.001〜10mg/cm・ステント表面の薬学的に活性な濃度で含まれる。他の活性薬剤は、同一または別の層に同様の濃度で含まれ得、1つまたはさらなる活性薬剤が、ラパマイシン以外の異なった層に含まれる場合、好ましい。
【0030】
(ポリマー)
活性薬剤または活性薬剤の組み合わせが、ステント上またはステント内に直接適用されない場合、合成、半合成、および/または天然由来の適切な血液適合性物質での表面の血液適合性の調節に加えて、生物学的に安定なおよび/または生分解性のポリマーまたは多糖が、キャリアまたはマトリックスとして用いられ得る。
【0031】
一般的な生物学的に安定でそして単に緩慢に生物学的に分解し得るポリマーとしては、以下が挙げられ得る:ポリアクリル酸およびポリアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボウレタン、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアロメート(polyvinylaromate)、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバレレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロースナイトレート、セルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、エチルビニルアセテートコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコンプレポリマー、シリコーン(例えば、ポリシロキサン)、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサンおよびキトサン誘導体、重合可能な油(例えば、アマニ油)、およびこれらの物質のコポリマーおよび/または混合物。
【0032】
一般的に生物学的に分解し得るまたは再吸収可能なポリマーとしては、例えば、以下のものが用いられ得る:ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドとのコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バレレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物(例えば、ポリ無水マレイン酸)、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、オリゴカプロラクトンジオールとオリゴジオキサノンジオールとからのようなマルチブロックポリマー、PEGとポリ(ブチレンテレフタレート)とからのようなポリエーテルエステルマルチブロックポリマー、ポリピボトラクトン(polypivotolactone)、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトングリコリド、ポリ(g−エチルグルタメート)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノール−A−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[(p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、骨格中にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル(例えば、ポリエチレンオキシド)、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー、カラギーナン、フィブリノゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質をベースとするポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、改変されたゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、改変および未改変のフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチル硫酸、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールとのコポリマー、アラビアゴム、グアーゴム、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、脂質およびリポイド、低い架橋度を有する重合可能な油、上記の物質の改変体およびコポリマーおよび/または混合物。
【0033】
ラパマイシンまたはラパマイシン組み込み用ポリマーのためのキャリアとして好ましいポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドとのコポリマー、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリオルトエステル、グリコール化ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸コポリマー、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、親水性架橋デキストリン、アルギネート、リン脂質、カルボマー、架橋ペプチドおよびタンパク質、シリコーン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PEGとPPGとのコポリマー、コラーゲン、重合可能な油剤およびワックス、およびこれらの混合物およびコポリマー。
【0034】
さらに、ポリエステル、ポリラクチド、およびジオールとエステルとのコポリマー、またはジオールとラクチドとのコポリマーが好ましい。例えば、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、またはブタン−1,4−ジオールがジオールとして用いられる。
【0035】
本発明によれば、特にポリエステルが、ポリマー層として用いられ得る。ポリエステルの群のうち、以下の繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0036】
【化2】

【0037】
示される繰り返し単位において、R、R’、R’’、およびR’’’は、1から5個の炭素原子を有するアルキル残基を表し、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、またはシクロプロピルを表し、そして好ましくはメチルまたはエチルを表す。Yは1から9の整数を表し、そしてXは重合度を表す。特に好ましくは、以下に示される繰り返し単位を有するポリマーである。
【0038】
【化3】

【0039】
さらに、再吸収性ポリマーの代表的なものとして、レソマー(Resomer)(登録商標)に言及する:一般式−(C−を有するポリ(L−ラクチド)(例えば、L210、L210S、L207S、L209S)、一般式−(C−を有するポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)(例えば、LR706、LR708、L214S、LR704)、一般式−[(C−(C−を有するポリ(L−ラクチド−コ−トリメチルカーボネート)(例えば、LT706)、一般式−[(C−(C−を有するポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(例えば、LG824、LG857)、一般式−[(C−(C10−を有するポリ(L−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(例えば、LC703)、一般式−[(C−(C−を有するポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(例えば、RG509S、RG502H、RG503H、RG504H、RG502、RG503、RG504)、一般式−(C−を有するポリ(D,L−ラクチド)(例えば、R202S、R202H、R203S、およびR203H)。Resomer(登録商標)203Sは、特に好ましいポリマーレソマー(登録商標)R203の後発物を表す。名称レソマー(登録商標)は、Boehringer Ingelheim社のハイテク製品を表す。
【0040】
原則として、本発明において再吸収性ポリマーの使用は、特に好ましい。さらに、乳酸のホモポリマー(ポリラクチド)および乳酸およびグリコール酸から調製されるポリマーが好ましい。
【0041】
驚くべきことに、レソマー、ポリラクチド、構造AまたはA1のポリマー、構造BまたはB1のポリマー、および乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGAs)の使用において、治癒に好都合であるようなラパマイシンの溶出が達成されることが見出された。溶出グラフから分かり得るように、活性薬剤の連続的に絶えず増加している溶出が、第1週の間に生じており、次いで、溶出グラフはより急傾斜になり、そしてラパマイシンの溶出がより急速に生じる。この事実は、大いに有利である。血管拡張後の最初の局面では、連続的に増加する少量のラパマイシンが溶出され、過剰な炎症反応を緩やかに抑制するが、この必要な反応を抑制しない。次いで、この最初の決定的な週の後には、いずれの増加した増殖反応および未だ存在する炎症パラメーターも、さらなる量のラパマイシンのより急速な溶出によって縮小される。
【0042】
(ラパマイシンおよびPVA)
したがって、本発明の好都合な実施態様は、ラパマイシンコーティングステントであり、これは、ステント表面上にラパマイシンの純粋な活性薬剤の層を有し、その層が、生体再吸収性ポリマーの保護層、好ましくはレソマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリラクチド、構造A1のポリマー、構造A2のポリマー、および乳酸とグリコール酸とのコポリマー(PLGA)、または上述のポリマーの混合物の保護層によって覆われている。生体再吸収性ポリマーのさらなる例は、後述される。トップコートの特性は、下にあるラパマイシンの溶出を決定し、そしてまたコーティングステントの安定性およびそれと共に貯蔵期間に実質的に関与する。したがって、溶出の開始が一時的に変更され得、一方、溶出自体は、より短時間でより多くのラパマイシンが溶出するように強く加速される。例えば、保護層としてポリビニルアルコールが用いられる場合、ラパマイシンは3日後には完全に溶出される。トップコート中へのラパマイシンの添加によって、高用量でさえも達成され得る。
【0043】
純粋なラパマイシン層は、好ましくは生体再吸収性、すなわち、生物学的に分解され得るポリマー層で完全に覆われる。
【0044】
別の好ましい実施態様では、血液適合性コーティングは、ステント表面の直上におよびラパマイシンの純粋な活性薬剤の層の下にあり得る。血液適合性物質としては、本明細書で言及されたものが使用され得、後述される一般式IaまたはIbのヘパリン誘導体またはキトサン誘導体、および以下に記載される95%を超える糖単位N−アシルグルコサミンおよびウロン酸(好ましくはグルクロン酸およびイズロン酸)またはN−アシルガラクトサミンおよびウロン酸を含むオリゴ糖および多糖類が好ましい。したがって、好ましい実施態様は、好ましくは共有結合された血液適合性コーティングを備え、そして上に、外側に生分解性保護層を供えた純粋なラパマイシン層を備えたステントである。
【0045】
別の好ましい実施態様では、ステントは、純粋なラパマイシン層が備えられ、その上に生体再吸収性層が付与され、ラパマイシンのさらなる活性薬剤層がこの生体再吸収性層に付与され、生物学的に分解され得る層が次に備えられる。したがって、ラパマイシン層および生体再吸収性層を交互に連続して有するステントが好ましく、3から10の層が可能である。通常は、保護層が外層として好ましく、外層はラパマイシン層でもあり得る。生体再吸収性層において、同一の生体再吸収性ポリマーが用いられ得るか、または各一層で異なる速さの分解を生じさせるため、異なる生体再吸収性ポリマーもまた用いられ得、分解速度が外から最内層または最内層から外層に増加する場合、好ましい。多層システムにおいてもまた、低層に血液適合性層が用いられ得、好ましくはステント表面に共有結合されている。
【0046】
さらに、コーティングされたカテーテルバルーンもまた好ましく、これはラパマイシンの純粋な活性薬剤層および隣接する生体再吸収性層ポリマーの層を有する。カテーテルバルーンにおいて、2層システムが好ましい。
【0047】
別の実施態様では、造影剤または造影剤類似体(造影剤様物質)が、生体再吸収性ポリマーの代わりに用いられる。造影剤としては、後述の化合物が用いられ得る。
【0048】
したがって、純粋なラパマイシン層および隣接する造影剤層を有するカテーテルバルーンまたはステントが好ましい。
【0049】
さらに、ステントはまた、ラパマイシン層、造影剤層の交互の配列を有し得、そして必要に応じて、ステントは、本明細書で説明した血液適合性物質の血液適合性層を有し得、この層は、好ましくはステント表面に共有結合される。
【0050】
好ましくは、ラパマイシン層および造影剤層または生体再吸収性ポリマーの層は、ステントまたはカテーテルバルーンにスプレー法で付与される。カテーテルバルーンは、拡張状態および圧縮状態でコーティングされ得る。
【0051】
そのようなステント上の2層システムまたは多層システム、あるいはそのようなカテーテルバルーン上の2層システムは、ステントの好ましくは非コーティングしたまたは血液適合性層コーティング表面、あるいはカテーテルバルーンの好ましくは非コーティング表面にラパマイシン含有溶液をスプレーし、そしてこのように調製された活性薬剤層(好ましくは乾燥後)に、50容量%未満、好ましくは40容量%未満、および特に好ましくは30容量%未満の含水量を有する極性溶媒中の保護層のポリマーの溶液をスプレーすることによって製造される。
【0052】
保護層のポリマー、特に親水性ポリマーのための適切な溶媒は、親水性溶媒であり、そしてアセトン、ブタノン、ペンタノン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルエステル(酢酸エチル)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、および上述の溶媒の組み合わせが好ましい。溶媒は、1容量%から50容量%、好ましくは5容量%から40容量%、そして特に好ましくは10容量%から30容量%の含水量を有する。
【0053】
このように製造されたコーティングシステムは、ラパマイシンの安定性および溶出動態に関して公知のコーティングシステムより優れている。
【0054】
(ラパマイシンおよびポリスルホン)
ポリスルホンの使用は、ポリスルホン自体が、非常に良好な血液適合特性を有し、そしてその上生物学的に安定であるという、決定的な利点を有する。すなわち、血液適合性であり、そして生物学的に分解されず、そしてラパマイシンのための活性薬剤キャリアとして機能する、ステント表面の永久なコーティングが存在する。
【0055】
ポリスルホンは、晩期血栓症の危険を生じないという決定的な利点を有する。他のコーティングシステムはそのような危険を有し得、それによってポリマーコーティング薬剤溶出ステントは、これまで消極的な見出しとしていた。
【0056】
生物学的に安定なコーティングとしては、ポリスルホンは、患者の体内へのステントの移植後、分解されないか、または極めて緩慢にしか分解されず、反対に、十分にはラパマイシンを溶出しないという不利益を有する。ラパマイシンの十分な溶出を保証するため、本発明によれば、ポリスルホンに、特定の量の親水性ポリマーまたはメタノール膨潤性ポリマーが添加される。
【0057】
親水性ポリマーの混合によって、ラパマイシンまたは他の好ましい活性薬剤との組み合わせの標的適用のために、種々の方法が達成され得る。0.1%から1%の濃度では、親水性ポリマーは、小さな細孔の形態でポリスルホンマトリックスに分散されるが、ポリスルホンの透過性が親水性ポリマー量の増加と共に増加するため、臨界濃度後、表面チャネルもまた形成される。チャネル形成のための臨界濃度は、全コーティングの質量またはポリスルホンおよび親水性ポリマーの質量に対して3質量%から8質量%までの親水性ポリマーに依存する。
【0058】
このようにコーティングされたステントが血管内にあると、ステントは体液のような水性媒体と接触するようになり、そして親水性活性薬剤が液体を吸収する。それによって、チャネルおよび活性薬剤リザーバー内過圧がに形成され、この親水性活性薬剤はまた溶出を、血管壁または血管壁内部を標的とした「注入」の形態で生じる。さらに、この非膨潤性マトリックスはまた、ラパマイシンまたは別の好ましい活性薬剤、またはラパマイシンと別の活性薬剤との組み合わせを含み得、それと共に治癒プロセスの長期制御を促進し得る。
【0059】
親水性ポリマーの例は、以下に示し、そしてまた当業者に周知である。本明細書では、メタノールに可溶性または少なくとも膨潤性であるようなポリマーを親水性ポリマーという。膨潤性とは、ポリマー骨格内にメタノールを吸収し、それによってポリマー物質の体積が増加するポリマーの能力を意味する。
【0060】
ポリスルホンからのラパマイシンの適切な溶出動態を生じるため、ポリスルホンは、メタノール膨潤性ポリマーに、0.1質量%から50質量%、好ましくは1.0質量%から30質量%、そして特に好ましくは5質量%から20質量%添加される。基本的に、ポリスルホンコーティング中でのチャネル形成のための傾向は、親水性またはメタノール膨潤性ポリマーの量の増加と共に増加する。
【0061】
適切なメタノール膨潤性ポリマーは以下に列挙される。適切な例は、次の混合物である:
2質量%のポリビニルピロリドン(PVP)を有するポリスルホン
11質量%のグリセリンを有するポリスルホン
8質量%のポリエチレングリコールを有するポリスルホン
6質量%のポリビニルアルコールを有するポリスルホン
5質量%のポリヒドロキシエチル−メタクリレートを有するポリスルホン
7質量%のポリアクリルアミドを有するポリスルホン
4質量%のポリラクチドを有するポリスルホン
9質量%のポリエステルアミドを有するポリスルホン
1質量%のコンドロイチン硫酸を有するポリスルホン
8質量%のポリヒドロキシブチレートを有するポリスルホン
【0062】
メタノール膨潤性ポリマーは、ステントの移植後、ポリスルホンコーティング中で亀裂およびチャネルを形成する。これらは、ラパマイシンを溶出させる役割を担い、したがって、生物学的に安定なポリスルホンコーティングにもかかわらず、ステント植え込み後にラパマイシンの適切な溶出速度を生じる。生物学的に安定なコーティングのための適切なポリスルホンは、より詳細に後述する。
【0063】
本発明のステントは、適切な溶媒(塩化メチレン(ジクロロメタン)、酢酸メチル、トリクロロエチレン:塩化メチレン1:1(v:v)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、THF、酢酸エチルなど)中のポリスルホンおよびラパマイシンおよびメタノール膨潤性または親水性ポリマーの溶液でスプレーされた好ましくは非コーティングのステントを供給することによって製造される。スプレープロセスは、スプレー工程間に乾燥工程を挟んで、連続的または逐次的であり得るか、またはコーティングはまた、ディッピング法、ブラッシング法、またはプラズマ法で付与され得る。
【0064】
この実施態様では、好ましくはポリスルホンとポリスルホンと同じ有機溶媒に可溶性の親水性ポリマーとの組み合わせが用いられる。したがって、当業者は、選択されたポリスルホン(適切でまた好ましいポリスルホンは、より詳細に後述する)の溶液挙動を決定することによってポリスルホンに適切なコポリマーを容易に決定し、次いで選択したコポリマーが同様の溶液特性を有するかどうかチェックし得る。溶媒単位体積当たり(例えば、1mlあたり)のポリスルホンの溶解量Kと同一の単位体積(例えば、1ml)当たりのコポリマーの溶解量Jとが、0.5K<J<2Kを満たす場合、溶液特性は、同一であるとみなされる。
【0065】
適切な親水性またはメタノール膨潤性ポリマーは、以下を含むまたはからなる群から選択される:ポリビニルピロリドン、ポリラクチド、ペクチン、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカラクトン、ポリラクトン酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドとのコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブタン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バレレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物(ポリ無水マレイン酸)、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、オリゴカプロラクトンジオールとオリゴジオキサノンジオールとからのようなマルチブロックポリマー、PEGとポリブチレンテレフタレートとからのようなポリエーテルエステルマルチブロックポリマー、ポリピボトラクトン(polypivotolactone)、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトングリコリド、ポリg−エチルグルタメート、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノール−A−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[(p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリ無水物、ポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、骨格中にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー、脂質、カラギーナン、フィブリノゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質をベースとするポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、改変されたゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、改変および未改変のフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチル硫酸、アルブミン、ヒアルロン酸、キトサンおよびその誘導体、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールとのコポリマー、アラビアゴム、グアーゴム、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、脂質、リン脂質、上記の物質の改変体およびコポリマーおよび/または混合物。
【0066】
特に好ましくは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、およびグリコリド、およびそれらのコポリマーである。溶媒として好ましく用いられるのは、クロロホルム、ジクロロメタンおよび塩化メチレン、アセトンおよび酢酸メチルであり、特にクロロホルムが好ましい。コーティング溶液(好ましくはスプレー溶液)中のラパマイシンの量は、全コーティング質量に対して、60質量%と10質量%との間、好ましくは50質量%と20質量%との間、特に好ましくは40質量%と30質量%との間である。
【0067】
さらに、無水の(すなわち乾燥された)溶媒、または2容量%未満、好ましくは1容量%未満、特に好ましくは0.2容量%未満の含水量を有する溶媒を用いることが好ましい。さらに、ラパマイシンの分解を防止するため、およびコーティング中の活性なラパマイシンの量をより良好に制御するため、光遮断下でコーティングを行うことが好都合であるとわかった。さらに、乾燥(すなわち、無水)環境中でコーティングを行うこと、およびコーティング用のキャリアガスとして、空気の代わりに窒素またはアルゴンのような不活性ガスを用いることが好都合である。したがって、本発明はまた、上述の条件でコーティングされるコーティングステントに関する。
【0068】
(ラパマイシンおよびPLGA)
別の好ましい実施態様は、ステント上のラパマイシンのためのポリマーのPLGAキャリアである。PLGAは、以下の一般式を有するポリラクチドとポリグリコール酸(ポリグリコリド)とのブロックコポリマーをいう:
【0069】
【化4】

【0070】
xは乳酸単位の数を表し、そしてyはグリコール酸単位の数を表す。
【0071】
このコーティングの製造のため、ラパマイシンおよびPLGAは、適切な溶媒(クロロホルム、メタノール、アセトン、THF、酢酸エチルなど)に溶解され、好ましくは非コーティングのステント表面にスプレーされる。
【0072】
好ましく非コーティングのステント表面を用いる代わりに、ステント表面はまた、好ましくは共有結合された血液適合性層が備えられ、その上に、ラパマイシン−PLGA混合物が付与され得る。
【0073】
この実施態様によって、標的部位へのラパマイシンの投与は、特別および驚くほど容易に達成され得、それは、標的および投与制御様式で効果的であり得る。初めに既に記載したように、用いられる活性薬剤が、創傷治癒プロセスにおいて重要である炎症反応を強くまで抑制しないことは重要である。なぜなら治癒プロセスの開始に必要な条件が抑制されるからである。むしろ、移植に対する炎症プロセスを低下させ得ることが重要である。この基本的な要求は、このコーティング形態によって見事に解決される。炎症性インヒビターとしてラパマイシンおよび免疫抑制剤は、これらのプロセスと相互に作用するが、それらを制御しない。
【0074】
炎症工程のこのような適度の制御に続き、ラパマイシン溶出量は、ポリマーが完全に分解するまで継続的に増加される。これは、図4の溶出グラフによって明らかにされる。グラフでは2つの傾斜が見られ得、第1段階は、第2段階よりも少ない溶出を有する。この第2のラパマイシン溶出増加と共に、次の重要な再狭窄予防の局面が考えられる。一方では、おそらく組織内になお存在している炎症領域を避け、他方では、ラパマイシンの抗増殖効果が、創傷領域の平滑筋細胞の増殖の制御によって重要になる。理想的には、内腔部位上のステント表面が、内皮細胞の層によって被覆されるべきである。しかし、平滑筋細胞の増加した増殖活性は、このような層を許容せず、線維性組織を形成することによってステントを被覆する。最終的に、これは疾患の再発を生じる。ラパマイシン溶出の加速により、平滑筋細胞の増殖活性が抑制され、そして傷の閉鎖に通常必要な度に減少される。
【0075】
さらにステントの表面に、既に述べたように、共有結合された血液適合性層が備えられれば、移植後の翌週以降のPLGAの緩慢な分解の間、凝固系が暴露領域を外来表面として検出しないことがさらに保証される。したがって、非血栓性表面が備えられ、ステント表面の完全なマスキングを提供する。
【0076】
図4に示されるこの独特で特に好都合な溶出動態は、現在まで、ラパマイシンのためのポリマーキャリアとしてPLGAのシステムを用いた場合のみ得られ得る。一方、通常の溶出動態は図5に示され、他のキャリアシステム、特に生物学的に安定なキャリアシステムにおいて生じる。
【0077】
本発明によるPLGA−ラパマイシンコーティングは、適切な極性溶媒(例えば、塩化メチレン(ジクロロメタン)、酢酸メチル、トリクロロエチレン:塩化メチレン1:1(v/v)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、THF、酢酸エチルなど)に、PLGAおよび好ましくはラパマイシンと共にPLGA(50/50)を溶解し、そして好ましく非コーティングまたは血液適合性コーティングしたステント表面にこの溶液をスプレーすることによって得られる。スプレープロセスは、スプレー工程間に乾燥工程を挟んで、連続的または逐次的であり得るか、またはコーティングはまた、ディッピング法、ブラッシング法、またはプラズマ法で付与され得る。
【0078】
コーティング溶液(好ましくはスプレー溶液)中のラパマイシンの量は、全コーティング質量に対して、60質量%と10質量%との間、好ましくは50質量%と20質量%との間、特に好ましくは40質量%と30質量%との間である。
【0079】
さらに、無水の(すなわち乾燥された)溶媒、または2容量%未満、好ましくは1容量%未満、そして特に好ましくは0.2容量%未満の含水量を有する溶媒を用いることが好ましい。さらに、ラパマイシンの分解を防止するため、およびコーティング中の活性なラパマイシンの量をより良好に制御するため、光遮断下でコーティングを行うことが好都合であるとわかった。さらに、乾燥(すなわち、無水)環境中でコーティングを行うこと、およびコーティング用のキャリアガスとして、空気の代わりに窒素またはアルゴンのような不活性ガス用いることが好都合である。したがって、本発明はまた、上述の条件でコーティングされるコーティングステントに関する。
【0080】
(バルーンコーティング)
別の好ましい実施態様は、ラパマイシンでのバルーンカテーテルのコーティングである。
【0081】
PTCAでは、狭窄部位は、カテーテルの端の膨張し得るバルーンによって、1〜3分の短時間で、必要に応じて2倍を超えて拡げられる。血管壁は、狭窄が除去されるように過拡張されなければならない。この処置から、微小な割れが血管壁に生じ、これは外膜にまで広がる。カテーテルの除去後、損傷した血管はそのままになるので、拡張時間、拡張反復、および拡張の程度に起因する負った傷の程度に依存して、多かれ少なかれ高度な性能が、治癒プロセスには要求される。これは、PTCA後の高い再閉塞率で見られ得る。しかし、PTCAの利用は、ステントと比較して利点を有するのみならず、この方法では、治療処置後に、さらなるストレスまたは再狭窄のような後遺症を引き起こすものとして、生体内に異物が存在しない。
【0082】
ここでまた、ラパマイシンは、その多用途な作用機序のため、非常に適切である。しかし、PTCA中、拡張時に親水性の活性薬剤が失われたり、または過早膨発されたりしないことが保証されなければならない。
【0083】
したがって、ラパマイシンまたは他の活性薬剤との組み合わせがバルーンに付与され得、そして目的の活性薬剤量が、数分までの接触時間中、血管壁によって吸収され得る方法が存在する。
【0084】
したがって、ラパマイシンは適切な有機溶媒に溶解され、そしてスプレー法またはピペッティング法によってバルーンに付与される。さらに、アジュバントがラパマイシン溶液に添加される。このことにより、カテーテルの可視化が確実になるまたはいわゆる伝達媒体として機能して細胞内への活性薬剤の吸収が促進される。これらは、血管拡張剤を含み、キニン(例えば、ブラジキニン、カリジン)、ヒスタミン、またはNOS−シンターゼ(L−アルギニンから血管拡張性NOを放出する)のような内因性物質が挙げられる。植物由来物質(例えば、イチョウ抽出物)、DMSO、キサントン、フラボノイド、テルペノイド、動植物染料、食品着色剤、NO放出物質(例えば、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN))、造影剤および造影剤類似体もまた、これらのアジュバントに属し、またはそれ自体が、活性薬剤として相乗的に用いられる。
【0085】
さらに、2−ピロリドン、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチルおよびこれらのアセチル化誘導体、フタル酸ジブチル、安息香酸ベンジルエステル、ジエタノールアミン、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピル、トリアセチンなどの物質が挙げられる。
【0086】
DMSO、ヨウ素含有造影剤、PETN、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチルおよびこれらのアセチル化誘導体、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピル、トリアセチン、および安息香酸ベンジルエステルが特に好ましい。
【0087】
カテーテルの標的部位に依存して、ポリマーマトリックスは必要である。その上、純粋な活性薬剤層の過早膨発が妨げられる。以下に列挙される生物学的に安定なおよび生分解性ポリマーが用いられ得る。特に好ましくは、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリラクチド、およびグリコリド、ならびにそれらのコポリマーである。
【0088】
(血液適合性コーティング)
さらに、ステント表面は、非血栓性または不活性または生体適合性の表面が備えられる。このことにより、活性薬剤の影響の低下およびマトリックスの分解で存在する外来表面上に、長期間では、血管の再閉塞を生じ得る反応が、生じないことが保証される。直接ステントを被覆する血液適合性層は、好ましくは、天然由来のヘパリンおよび市販のヘパリンの標準分子量までの五糖の分子量範囲内の種々の硫酸化度およびアシル化度の合成的に調製された誘導体(抗血栓効果に関与する)、ヘパラン硫酸およびその誘導体、赤血球グリコカリックスのオリゴ糖および多糖(ホスホリルコリンに反して現実の血液および赤血球表面の接触が生じるので、赤血球の抗血栓表面を完全に表す)、オリゴ糖、多糖、完全に脱硫酸化およびN−再アセチル化されたヘパリン、脱硫酸化およびN−再アセチル化ヘパリン、N−カルボキシメチル化および/または部分的にN−アセチル化されたキトサン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびポリエチレングリコール、および/またはこれらの物質の混合物を含む。これらの血液適合性コーティングを有するステントは、通常の一般的な非コーティングステントを供給し、そして好ましくは共有結合的に血液適合性層を付与することによって製造される。このことにより、薬剤溶出後、およびそれに伴う活性薬剤の影響の減少およびマトリックスの分解後のインプラントの表面を恒久的にマスクする。したがって、この血液適合性コーティングはまた、直接ステント表面に付与される。
【0089】
したがって、本発明の好ましい実施態様は、その表面が血球、内皮細胞、または中皮細胞のグリコカリックス構成要素の付与によってマスクされる、任意の物質のステントに関する。グリコカリックスは、例えば、血球、内皮細胞、または中皮細胞の外層にある。このことにより、これらの細胞は、血液許容性(血液適合性)である。血球、内皮細胞、および/または中皮細胞のこの外層(グリコカリックス)の構成要素は、好ましくは細胞表面から酵素的に分離され、細胞から分離され、そしてステントのためのコーティング物質として用いられる。このグリコカリックス構成要素は、糖タンパク質、糖脂質、およびプロテオグリカンおよびグリコホリン、グリコスフィンゴリピド、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、およびケラタン硫酸のオリゴ糖、多糖、および脂質部分を含む。コーティング物質としてこれらの物質の単離方法および使用方法は、創始者のHemoteq GmbH, Dr. Michael HoffmannおよびDipl.-Chem. Roland Horresに対する欧州特許EP1152778B1に詳細に記載されている。共有結合は、ヘパリンの場合に達成される(実施例9、14を参照のこと)。
【0090】
さらに好ましい実施態様は、直接ステント表面に塗布される最下部の血液適合性コーティングが、脱硫酸化およびN−再アセチル化ヘパリン、および/またはN−カルボキシメチル化および/または部分N−アセチル化キトサンである。これらの化合物およびグリコカリックス構成要素は、それ自体が非常に良好な血液適合性コーティングであることがいくつかの研究で既に証明されており、そして隣接する活性薬剤および/またはキャリア層が除去または生物学的に分解された後、ステント表面を血液許容性とする。このような特に好ましいステント表面のコーティングのための物質は、Hemoteq AG.の欧州特許EP1501565B1に記載されている。このより下層の血液適合性層に、1以上の活性薬剤層および/または活性薬剤非含有または活性薬剤含有のキャリアまたはポリマー層が付与される。
【0091】
これらのヘパリン誘導体またはキトサン誘導体は、一般式Iaの多糖
【0092】
【化5】

【0093】
ならびに一般式Ibの構造的に非常に類似した多糖である。
【0094】
【化6】

【0095】
式Iaの多糖は、2kDから400kD、好ましくは5kDから150kD、より好ましくは10kDから100kD、そして特に好ましくは30kDから80kDの分子量を有する。式Ibの多糖は、2kDから15kD、好ましくは4kDから13kD、より好ましくは6kDから12kD、そして特に好ましくは8kDから11kDの分子量を有する。変数nは、4から1,050の範囲の整数である。好ましくは、nは9から400の範囲の整数、より好ましくは14から260の範囲の整数、そして特に好ましくは19から210の範囲の整数である。
【0096】
一般式IaおよびIbは二糖を表し、本発明による多糖の基本単位として考えられるべきであり、そしてこの基本単位を他にn倍結合することによって多糖を形成する。この基本単位2つの糖分子を含むことは、一般式IaおよびIbが、偶数の糖分子を有する多糖にのみ関することを示唆することを意図しない。もちろん、一般式Iaおよび一般式Ibは、奇数の糖単位を有する多糖もまた含む。オリゴ糖または多糖の末端基として水酸基が存在する。
【0097】
基YおよびZは、それぞれ独立して、以下のアシルまたはカルボキシアルキル化学基を表す:−CHO、−COCH、−COC、−COC、−COC、−COC11、−COCH(CH、−COCHCH(CH、−COCH(CH)C、−COC(CH、−CHCOO、−CCOO、−CCOO、−CCOO
【0098】
アシル基−COCH、−COC、−COC、およびカルボキシアルキル基−CHCOO、−CCOO、−CCOOが好ましい。アセチル基およびプロパノイル基、カルボキシメチル基およびカルボキシエチル基がより好ましい。アセチル基およびカルボキシメチル基が特に好ましい。
【0099】
さらに、基Yがアシル基を表し、そして基Zがカルボキシアルキル基を表すことが好ましい。Yが−COCH、−COC、または−COC基、特に−COCH基であれば、より好ましい。さらに、Zがカルボキシエチル基またはカルボキシメチル基であればさらに好ましく、カルボキシメチル基が特に好ましい。
【0100】
式Iaによって示される二糖基本単位は、置換基Yおよびさらなる基Zをそれぞれ含む。これは、本発明の多糖が2つの異なる基(すなわち、YおよびZ)を含むことを明確にするためである。ここで、一般式Iaは、基YおよびZを厳密に交互の配列で含む多糖(二糖基本単位を順々に置いて生じる)だけでなく、アミノ基に完全にランダムな配列で基YおよびZを保持する多糖もまた含むことを指摘することが重要である。さらに、一般式Iaは、異なった数の基YおよびZを含むような多糖もまた含むべきである。Y基の数とX基の数との割合は、70%:30%の間、好ましくは60%:40%の間、そして特に好ましくは45%:55%の間であり得る。単にランダムな分布で、アミノ基の実質的に半分にY残基およびアミノ基の残り半分にZ残基を保持する一般式Iaの多糖が特に好ましい。用語「実質的に半分」は、最も適切な場合には正確に50%であることを意味するが、同様に、45%から55%、特に48%から52%の範囲もまた含むべきである。
【0101】
基YおよびZが以下を表す一般式Iaの化合物が好ましい:
Y=−CHOおよびZ=−CCOO
Y=−CHOおよびZ=−CHCOO
Y=−COCHおよびZ=−CCOO
Y=−COCHおよびZ=−CHCOO
Y=−COCおよびZ=−CCOO
Y=−COCおよびZ=−CHCOO
【0102】
基YおよびZが以下を表す一般式Iaの化合物が特に好ましい:
Y=−CHOおよびZ=−CCOO
Y=−COCHおよびZ=−CHCOO
【0103】
Yが以下の基の1つである一般式Ibの化合物が好ましい:−CHO、−COCH、−COC、または−COC。−CHO、−COCH、−COCの基がさらに好ましく、そして−COCHの基が特に好ましい。
【0104】
一般式Ibの化合物は、ほんの少量の遊離アミノ基を含む。ニンヒドリン反応では、遊離アミノ基がもはや検出され得ないことから、この試験の感度より、全ての−NH−Y基の2%未満、好ましくは1%未満、そして特に好ましくは0.5%未満が遊離アミノ基として存在すると結論付けられ得る。すなわち、−NH−Y基のこの低いパーセント内で、Yは水素を表す。
【0105】
一般式IaおよびIbの多糖は、カルボキシレート基およびアミノ基を含むので、一般式IaおよびIbはまた、対応する多糖のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩も含む。ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、またはマグネシウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩が挙げられ得る。さらに、アンモニア、第1級、第2級、第3級、および第4級アミン、ピリジンおよびピリジン誘導体アンモニウム塩、好ましくはアルキルアンモニウム塩およびピリジニウム塩が形成され得る。多糖と塩を形成する塩基には、例えば、NaOH、KOH、LiOH、CaCO、Fe(OH)、NHOH、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよび類似の化合物のような無機塩基および有機塩基がある。
【0106】
一般式Ibの本発明の化合物は、まず多糖を実質的に完全に脱硫酸化し、次いで実質的に完全にN−アセチル化することによって、ヘパリンまたはヘパラン硫酸から調製され得る。用語「実質的に完全な脱硫酸化」とは、90%を超える、好ましくは95%を超える、そして特に好ましくは98%を超える脱硫酸化度のことをいう。脱硫酸化度は、遊離アミノ基を検出する、いわゆるニンヒドリン試験により決定され得る。脱硫酸化は、DMMB(ジメチルメチレンブルー)で呈色反応が得られないという程度まで行う。この呈色試験は硫酸化された多糖の検出のために適切であるが、その検出限界は技術文献では不明である。脱硫酸化は、例えば、混合溶媒中のピリジニウム塩の熱分解によって行われ得る。特に、DMSO、1,4−ジオキサン、およびメタノールの混合物が有用であることがわかっている。
【0107】
ヘパラン硫酸およびヘパリンを、全加水分解を介して脱硫酸し、次いで再アシル化した。その後、二糖単位当たりの硫酸基の数(S/D)を、13C−NMRによって決定した。以下の表1は、ヘパリンおよび脱硫酸化再アセチル化ヘパリン(Ac−ヘパリン)の例におけるこれらの結果を示す。
【0108】
表1:13C−NMR測定によって決定されたヘパリンおよびAc−ヘパリンの例における二糖単位当たりの官能基の分布。
【0109】
【表1】

【0110】
2−S、3−S、6−S:2、3、または6位の硫酸基
NS:アミノ基上の硫酸基
N−Ac:アミノ基上のアセチル基
NH:遊離アミノ基
S/D:二糖単位当たりの硫酸基
【0111】
ヘパリンの場合が約2.5硫酸基/二糖単位の硫酸基量であるのに対し、Ac−ヘパリンの場合は約0.03硫酸基/二糖単位(S/D)の硫酸基量であることが、再現性よく得られた。
【0112】
これらの一般式IaおよびIbの化合物は、二糖単位当たりの硫酸基量が0.2未満であり、好ましくは0.07未満、より好ましくは0.05未満、および特に好ましくは0.03未満の二糖あたりの硫酸基を有する。
【0113】
実質的に完全なN−アシル化とは、94%を超える、好ましくは97%を超える、そして特に好ましくは98%超えるN−アシル化度をいう。アシル化は、遊離アミノ基の検出のためのニンヒドリン反応で、もはや呈色反応が得られない程度に完全に行われる。例えば、アシル化剤としては、カルボン酸塩化物、臭化物、または無水物が好ましく用いられる。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、塩化酢酸、塩化プロピオン酸、または塩化酪酸が、本発明の化合物の合成のために適切である。アシル化剤としてカルボン酸無水物が特に適切である。
【0114】
さらに、本発明は、表面の血液適合性コーティングのためのオリゴ糖および/または多糖を開示する。上述の分子量限定範囲内の多糖が好ましい。使用されるオリゴ糖および/または多糖の注目すべき特徴の1つは、多量の糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを含むことである。これは、糖単位の40%から60%、好ましくは45%から55%、そして特に好ましくは48%から52%がN−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンであることを意味し、そして実質的に残りの糖単位は、それぞれカルボキシル基を有する。したがって、オリゴ糖および/または多糖の通常、95%以上、好ましくは98%以上が、2つの糖単位のみからなり、1つの糖単位がカルボキシル基を含み、そして他の1つはN−アシル基を含む。
【0115】
オリゴ糖および/または多糖の1つの糖単位は、N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミン、好ましくはN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミンであり、そして他の1つはウロン酸、好ましくはグルクロン酸およびイズロン酸である。
【0116】
実質的に半分がN−アシル基、好ましくはN−アセチル基を保持する糖単位、そしてグルコサミン単位の他の半分がアミノ基を介して直接結合されたまたは1以上のメチレン基を介して結合されたカルボキシル基を保持するグルコサミン単位である、糖グルコサミンまたはガラクトサミンから実質的になるオリゴ糖および/または多糖が好ましい。アミノ基に結合されるこれらのカルボン酸基は、好ましくはカルボキシメチルまたはカルボキシエチル基である。さらに、オリゴ糖および/または多糖であって、オリゴ糖および/または多糖の実質的に半分、すなわち48%から52%、好ましくは49%から51%、特に好ましくは49.5%から50.5%が、N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミン、好ましくはN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミンからなり、そしてその実質的に他の半分が、ウロン酸、好ましくはグルクロン酸およびイズロン酸からなるものが好ましい。2つの糖単位が実質的に交互の配列(交互接続の統計学的誤差にもかかわらず)を示すオリゴ糖および/または多糖が特に好ましい。誤接続の割合は1%、好ましくは0.1%を下回るべきである。
【0117】
驚くべきことに、本発明の使用のために、特に、実質的に脱硫酸化しおよび実質的にN−アシル化したヘパリン、および部分的にN−カルボキシアルキル化かおよびN−アシル化したキトサン、ならびに脱硫酸化しおよび実質的にN−アシル化したデルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、およびその鎖長が短くされたヒアルロン酸が特に適切であることが示された。特に、N−アセチル化したヘパリンおよび部分的にN−カルボキシメチル化しおよびN−アセチル化したキトサンが、血液適合性コーティングのために適切である。
【0118】
用語「実質的に」によって定義される脱硫酸化度およびアシル化度は、既に上述で定義されている。用語「実質的に」は、統計的偏差が考慮されなければならないことを明確にすることが意図される。糖単位の実質的に交互の配列とは、原則として、2つの同時糖単位が互いに結合していないことを意味するが、誤接続などを完全に除外するわけではない。同様に、「実質的に半分」は、ほぼ50%を意味するが、わずかな変動を許容する。なぜなら、特に、生合成的に製造された巨大分子では、酵素は完璧には働かずそして触媒は通常いくらかの割合の誤差を含むので、最も適切な場合が決して達成されず、一定の偏差が常に考慮されなければならないからである。しかし、天然物のヘパリンの場合、N−アセチルグルコサミンおよびウロン酸単位の厳密に交互の配列が存在する。
【0119】
さらに、血液が直接接触する表面の血液適合性コーティングのためのプロセスを開示する。該プロセスでは、天然のおよび/または人工の表面を提供し、そして上記のオリゴ糖および/または多糖を該表面上に固定化する。
【0120】
該表面へのオリゴ糖および/または多糖の固定化は、オリゴ糖および/または多糖の疎水性の相互作用、ファンデルワールス力、静電相互作用、水素架橋、イオン相互作用、架橋、および/または表面との共有結合によって達成され得る。オリゴ糖および/または多糖が共有結合されることが好ましく、共有結合性の個々の点での連結(側面結合)がより好ましく、および共有結合性の端点での連結(端部結合)が特に好ましい。
【0121】
「実質的に残存する糖構築単位」とは、残存する糖構築単位の93%、好ましくは96%、および特に好ましくは98%の残存している60%から40%の糖構築単位がカルボキシル基を有することが理解されるべきである。
【0122】
したがって、最下層として、上述のヘパリン誘導体、キトサン誘導体、および/またはオリゴまたはポリペプチドの血液適合性層を有するステントが好ましい。この層の上に、ラパマイシンが、純粋な活性薬剤層としておよび/またはキャリア物質のマトリックスに組み込まれた形態で存在する。
【0123】
(ラパマイシンのための生物学的に安定なポリマーキャリアとしてのポリスルホン)
驚くべきことに、血液との恒久的な接触に好ましいステントのコーティングのため、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、および/またはポリフェニルスルホン、およびそれらの誘導体が、ラパマイシンのための極めて非常に適切な生体適合性および血液適合性キャリアであることがわかった。
【0124】
好ましい熱可塑性ポリスルホンは、重縮合反応を介してビスフェノールAおよび4,4’−ジクロロフェニルスルホンから合成される(以下の式(II)を参照のこと)。
【0125】
【化7】

【0126】
本発明のコーティングのために適用し得るポリスルホンは、以下の式(I)の一般的な構造を有する:
【0127】
【化8】

【0128】
nは重合度を表し、n=10からn=10,000、好ましくはn=20からn=3,000、さらに好ましくはn=40からn=1,000、さらに好ましくはn=60からn=500、さらに好ましくはn=80からn=250、そして特に好ましくはn=100からn=200の範囲である。
【0129】
さらに、nがこのような範囲の場合、ポリマーの重量平均が60,000〜120,000g/mol、好ましくは70,000〜99,000g/mol、さらに好ましくは80,000〜97,000g/mol、さらにより好ましくは84,000〜95,000g/mol、そして特に好ましくは86,000〜93,000g/molとなることが好ましい。
【0130】
さらに、nがこのような範囲の場合、ポリマーの数平均が20,000〜70,000g/mol、好ましくは30,000〜65,000g/mol、さらに好ましくは32,000〜60,000g/mol、さらにより好ましくは35,000〜59,000g/mol、そして特に好ましくは45,000〜58,000g/molの範囲となることが好ましい。
【0131】
YおよびZは、1〜10の範囲の整数であり、そしてRおよびR’は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基、6〜20個の炭素原子を有する芳香族基、2〜10個の炭素原子を有する複素芳香族基、3〜15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、6〜20個の炭素原子を有するアルキレンアリーレン基、6〜20個の炭素原子を有するアリーレンアルキレン基、1〜12個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基、6〜20個の炭素原子を有するアリーレンオキシ基、6〜20個の炭素原子を有する複素アリーレンオキシ基、3〜15個の炭素原子を有するシクロアルキレンオキシ基、6〜20個の炭素原子を有するアルキレンアリーレンオキシ基、または6〜20個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンオキシ基を意味する。上述の基は、さらなる置換基、特に、「置換された」ポリスルホンによって以下に説明される基を有し得る。
【0132】
RおよびR’の基の例としては、−R−、−R−、−R−、−R−、−R−、−R−、−R−R−、−R−R−、−R−R−、−R−R−R−、−R−R−R−、−R−R−R−R−、−R−R−R−R−R−、および−R−R−R−R−R−R−であり;
、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、以下の基を表す:−CH−、−C−、−CH(OH)−、−CH(SH)−、−CH(NH)−、−CH(OCH)−、−C(OCH−、−CH(SCH)−、−C(SCH−、−CH(NH(CH))−、−C(N(CH)−、−CH(OC)−、−C(OC−、−CHF−、−CHCl−、−CHBr−、−CF−、−CCl−、−CBr−、−CH(COOH)−、−CH(COOCH)−、−CH(COOC)−、−CH(COCH)−、−CH(COC)−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(C)−、−C(C−、−CH(CONH)−、−CH(CONH(CH))−、−CH(CON(CH)−、
−C−、−C−、−C−、−C10−、シクロ−C−、シクロ−C−、シクロ−C−、シクロ−C−、−OCH−、−OC−、−OC−、−OC−、−OC−、−OC10−、−CHO−、−CO−、−CO−、−CO−、−CO−、−C10O−、−NHCH−、−NHC−、−NHC−、−NHC−、−NHC−、−NHC10−、−CHNH−、−CNH−、−CNH−、−CNH−、−CNH−、−C10NH−、−SCH−、−SC−、−SC−、−SC−、−SC−、−SC10−、−CHS−、−CS−、−CS−、−CS−、−CS−、−C10S−、
−C−、−C(CH)−、−C(C)−、−C(OH)−、−C(NH)−、−C(Cl)−、−C(F)−、−C(Br)−、−C(OCH)−、−C(SCH)−、−C(COCH)−、−C(COC)−、−C(COOH)−、−C(COOCH)−、−C(COOC)−、−C(NH(CH))−、−C(N(CH)−、−C(CONH)−、−C(CONH(CH))−、−C(CON(CH)−、
−OC−、−OC(CH)−、−OC(C)−、−OC(OH)−、−OC(NH)−、−OC(Cl)−、−OC(F)−、−OC(Br)−、−OC(OCH)−、−OC(SCH)−、−OC(COCH)−、−OC(COC)−、−OC(COOH)−、−OC(COOCH)−、−OC(COOC)−、−OC(NH(CH))−、−OC(N(CH)−、−OC(CONH)−、−OC(CONH(CH))−、−OC(CON(CH)−、
−CO−、−C(CH)O−、−C(C)O−、−C(OH)O−、−C(NH)O−、−C(Cl)O−、−C(F)O−、−C(Br)O−、−C(OCH)O−、−C(SCH)O−、−C(COCH)O−、−C(COC)O−、−C(COOH)O−、−C(COOCH)O−、−C(COOC)O−、−C(NH(CH))O−、−C(N(CH)O−、−C(CONH)O−、−C(CONH(CH))O−、−C(CON(CH)O−、
−SC−、−SC(CH)−、−SC(C)−、−SC(OH)−、−SC(NH)−、−SC(Cl)−、−SC(F)−、−SC(Br)−、−SC(OCH)−、−SC(SCH)−、−SC(COCH)−、−SC(COC)−、−SC(COOH)−、−SC(COOCH)−、−SC(COOC)−、−SC(NH(CH))−、−SC(N(CH)−、−SC(CONH)−、−SC(CONH(CH))−、−SC(CON(CH)−、
−CS−、−C(CH)S−、−C(C)S−、−C(OH)S−、−C(NH)S−、−C(Cl)S−、−C(F)S−、−C(Br)S−、−C(OCH)S−、−C(SCH)S−、−C(COCH)S−、−C(COC)S−、−C(COOH)S−、−C(COOCH)S−、−C(COOC)S−、−C(NH(CH))S−、−C(N(CH)S−、−C(CONH)S−、−C(CONH(CH))S−、−C(CON(CH)S−、
−NH−C−、−NH−C(CH)−、−NH−C(C)−、−NH−C(OH)−、−NH−C(NH)−、−NH−C(Cl)−、−NH−C(F)−、−NH−C(Br)−、−NH−C(OCH)−、−NH−C(SCH)−、−NH−C(COCH)−、−NH−C(COC)−、−NH−C(COOH)−、−NH−C(COOCH)−、−NH−C(COOC)−、−NH−C(NH(CH))−、−NH−C(N(CH)−、−NH−C(CONH)−、−NH−C(CONH(CH))−、−NH−C(CON(CH)−、
−C−NH−、−C(CH)−NH−、−C(C)−NH−、−C(OH)−NH−、−C(NH)−NH−、−C(Cl)−NH−、−C(F)−NH−、−C(Br)−NH−、−C(OCH)−NH−、−C(SCH)−NH−、−C(COCH)−NH−、−C(COC)−NH−、−C(COOH)−NH−、−C(COOCH)−NH−、−C(COOC)−NH−、−C(NH(CH))−NH−、−C(N(CH)−NH−、−C(CONH)−NH−、−C(CONH(CH))−NH−、−C(CON(CH)−NH−。
【0133】
−R−、−R−、−R−、−R−R−、および−R−R−R−の基が、それぞれ独立して、以下の基を表すポリスルホンおよびそれらの混合物が特に好ましい:−CO−、−C(CH−、−C−、−CSO−、−SO−、−OC−、および−CO−C(CH−C−。
【0134】
さらに、RおよびR’は、好ましくは、それぞれ独立して、式(II)から(XV)中のスルホン基に結合された部分を表し得る。
【0135】
本発明によれば、1つまたは複数の生物学的に安定な層のためのそれぞれ1つまたは複数のポリスルホンは、ポリエーテルスルホン、置換ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、置換ポリフェニルスルホン、ポリスルホンブロックコポリマー、ペルフルオロポリスルホンブロックコポリマー、セミフルオロポリスルホンブロックコポリマー、置換ポリスルホンブロックコポリマー、および/または上記のポリマーの混合物を含む群より選択される。
【0136】
用語「置換」ポリスルホンは、官能基を有するポリスルホンと理解されるべきである。特に、メチレン単位は1つまたは2つの置換基を有し得、そしてフェニレン単位は1つ、2つ、3つ、または4つの置換基を有し得る。これらの置換基(これらはまた、X、X’、X’’、X’’’という)の例は以下である:−OH、−OCH、−OC、−SH、−SCH、−SC、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH、−COC、−COOH、−COCN、−COOCH、−COOC、−CONH、−CONHCH、−CONHC、−CON(CH、−CON(C、−NH、−NHCH、−NHC、−N(CH、−N(C、−SOCH、−SOC、−SOCH、−SO、−SOH、−SOCH、−SO、−OCF、−O−COOCH、−O−COOC、−NH−CO−NH、−NH−CS−NH、−NH−C(=NH)−NH、−O−CO−NH、−NH−CO−OCH、−NH−CO−OC、−CHF、−CHF、−CF、−CHCl、−CHCl、−CCl、−CHBr、−CHBr、−CBr、−CHI、−CHI、−CI、−CH、−C、−C、−CH(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH−COOH、−CH(CH)−C、−C(CH、−H。さらに好ましい置換基または官能基は、−CH−Xおよび−C−Xである。
【0137】
以下の一般構造式は、ポリスルホンの好ましい繰り返し単位を表す。好ましくは、ポリマーはこれらの繰り返し単位のみからなる。しかし、1つのポリマー中に、以下に示される繰り返し単位に加えて他の繰り返し単位またはブロックが存在することも可能である。以下が好ましい:
【0138】
【化9】

【0139】
X、X’、n、およびR’は、それぞれ独立して、上述の意味を有する。
【0140】
【化10】

【0141】
X、X’、n、およびR’は、それぞれ独立して、上述の意味を有する。
【0142】
【化11】

【0143】
さらに、以下の一般式(X)のポリスルホンが、好ましい:
【0144】
【化12】

【0145】
Arは以下のものを表す:
【0146】
【化13】

【0147】
X、X’、およびnは、それぞれ独立して、上述の意味を有する。
【0148】
さらに、以下の繰り返し単位が好ましい:
【0149】
【化14】

【0150】
X、X’、X’’、X’’’、およびnは、それぞれ独立して、上述の意味を有する。R’’およびR’’’は、それぞれ独立して、XまたはX’について定義されたのと同様の置換基を表し得、あるいはそれぞれ独立して、−R−Hまたは−R−H基を表し得る。
【0151】
別の好ましい繰り返し単位は、例えば、式(XIV)または(XV)のように、2つの芳香環の間に環状の置換基を有する:
【0152】
【化15】

【0153】
R’’は、好ましくは、−CH−、−OCH−、−CHO−、−O−、−C−、−C−、−CH(OH)−を表す。基−R−R’’−は、好ましくは、環状エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、またはウレタンを表し、例えば、以下が挙げられる:−O−CO−O−、−O−CO−O−CH−、−O−CO−O−C−、−CH−O−CO−O−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C12−、−O−CO−NH−、−NH−CO−NH−、−O−CO−NH−CH−、−O−CO−NH−C−、−NH−CO−NH−CH−、−NH−CO−NH−C−、−NH−CO−O−CH−、−NH−CO−O−C−、−CH−O−CO−NH−CH−、−C−SO−、−C−SO−、−C−SO−、−C−SO−CH−、−C−SO−C−、−C−O−、−C−O−、−C−O−、−C−O−CH−、−C−O−C−、−C−CO−、−C−CO−、−C−CO−、−C−CO−CH−、−C−CO−C−、−O−CO−CH−、−O−CO−C−、−O−CO−C−、−CH−O−CO−CH−、または芳香環を含む環状エステル。
【0154】
以下に、ポリマー類似反応を説明する。これらは当業者に知られており、ポリスルホンの改変のために供される。
【0155】
【化16】

【0156】
XおよびX’部分としてクロロメチレン基がホルムアルデヒド、ClSiMe、および触媒(例えば、SnCl)を用いることによって導入され得、次いでさらに置換され得る。これらの反応によって、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシレート基、エーテル基、またはアルキル基が求核置換によって導入され得、メチレン基を介して芳香環に結合される。アルコラート、例えばフェノラート、ベンジラート、メタノラート、エタノラート、プロパノラート、またはイソプロパノラートとの反応により、75%を超えるクロロメチレン基に置換が生じたポリマーが得られる。以下の親油性側鎖を有するポリスルホンが得られる。
【0157】
【化17】

【0158】
**は、例えばアルキル部分またはアリール部分を表す。
【0159】
X’’およびX’’’部分は、以下の反応により、モノマーに存在しなくなるまで、ポリマーに導入され得る。
【0160】
【化18】

【0161】
エステル基に加えて、種々のその他の置換基が、まず強塩基、例えばn−BuLiまたはtert−BuLiにより単一のまたは二重の脱プロトン化を行い、次いで求電子試薬を添加することによって導入され得る。上記の例示とする場合では、二酸化炭素がエステル基導入のために添加され、そして得られた炭酸基がさらなる工程でエステル化された。
【0162】
本発明による親油性部分を有するポリスルホンと疎油性部分を有するポリスルホンとの組み合わせは、例えば、式(IIB)に示すポリスルホンと式(IIC)に示すポリスルホンとを一緒に用いることによって達成される。それぞれのポリスルホンの量比は98%:2%〜2%:98%の範囲であり得る。好ましい比は10%:90%、15%:85%、22%:78%、および27%:73%、36%:64%、43%:57%、および50%:50%である。これらの割合(%)の値は、親水性ポリスルホンおよび疎水性ポリスルホンの任意の組み合わせに適用され得るが、上述の混合物に限定されない。
【0163】
1分子中に親水性部分および疎水性部分を有するポリスルホンの一例は、例えば式(IIC)に示すポリスルホンを単に不完全にエステル化することによって得られ得る。したがって、親水性のカルボキシレート基と疎水性のエステル基とが1分子中に存在する。カルボキシレート基とエステル基とのモル(数)比は、5%:95%〜95%:5%であり得る。これらの割合(%)の値は、親水基および疎水基の任意の組み合わせに適用され得、上述の基に限定されない。
【0164】
親水基または親水性ポリマーと疎水基または疎水性ポリマーとの本発明のこの組み合わせによって、医療用製品における非結晶性ポリマー層が構築されると考えられる。ポリスルホンから形成されるポリマー層が結晶質でないまたは主として結晶質でないことが、非常に重要である。なぜなら、結晶化は層を硬くし、そのことにより層が壊れ剥離するからである。バリア層として働く可撓性のポリスルホンコーティングは、非結晶性または主として非結晶性のポリスルホン層によりようやく達成され得る。
【0165】
もちろん、重合が行われた後に、所望の置換型を得るために既に対応して置換されたモノマーを適用することも可能である。次いで、対応するポリマーが、以下の反応スキームによる公知の方法によって得られる。
【0166】
【化19】

【0167】
LおよびL’は、例えば、それぞれ独立して、以下の基を表す:−SO−、−C(CH−、−C(Ph)−、または−O−。したがって、LおよびL’は、式(I)〜(XV)における対応する基の意味を有し得る。このような求核置換反応は、当業者に知られており、上記のスキームによって例示的に説明される。
【0168】
既に述べたように、ポリマーが親水性の性質および疎水性の性質を有する場合が特に好ましく、一方では1つのポリマー内であり、他方では少なくとも1つの親水性ポリマーと少なくとも1つの疎水性ポリマーとの組み合わせを用いることによる。したがって、例えば、XおよびX’が親水性の置換基を有しそしてX’’およびX’’’が疎水性の置換基を有するか、またはその逆である場合が好ましい。
【0169】
親水性の置換基としては、−OH、−CHO、−COOH、−COO、−CONH、−NH、−N(CH、−NHCH、−SOH、−SO、−NH−CO−NH、−NH−CS−NH、−NH−C(=NH)−NH、−O−CO−NH、および特にプロトン化されたアミノ基が適用され得る。
【0170】
疎水性の置換基としては、−H、−OCH、−OC、−SCH、−SC、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−N、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−COCH、−COC、−COCN、−COOCH、−COOC、−CONHC、−CON(CH、−CON(C、−NHC、−N(CH、−N(C、−SOCH、−SOC、−SOCH、−SO、−SOCH、−SO、−OCF、−O−COOCH、−O−COOC、−NH−CO−OCH、−NH−CO−OC、−CHF、−CHF、−CF、−CHCl、−CHCl、−CCl、−CHBr、−CHBr、−CBr、−CHI、−CHI、−CI、−CH、−C、−C、−CH(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH−COOH、−CH(CH)−C、−C(CHが適用され得る。
【0171】
さらに、環状ポリスルホンが好ましく、それは例えば、式(XVI)に示されるような構造を有する。
【0172】
【化20】

【0173】
カルボキシエチレン基は、上記に例示される反応において必須ではない。カルボキシエチレン置換基およびメチル置換基の代わりに、任意の他の置換基または水素も存在し得る。
【0174】
(キャリア物質としての油脂)
上述の生物学的に安定なおよび生分解性のポリマーに加えて、ラパマイシンおよび他の活性薬剤のためのキャリアマトリックスとして、生理学的に許容される油、脂肪、脂質、リポイド、およびワックスもまた用いられ得る。
【0175】
ラパマイシンおよび他の活性薬剤のためのキャリア物質としてか、または活性薬剤非含有層、特にトップ層として用いられ得るこのような油、脂肪、およびワックスとして、以下の一般式によって表され得る物質が適切である:
【0176】
【化21】

【0177】
R、R’、R”、R、およびR**は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル基、3〜20個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール基を表すか、または官能基であり、そして好ましくは以下の基を表す:−H、−OH、−OCH、−OC、−OC、−O−シクロ−C、−OCH(CH、−OC(CH、−OC、−OPh、−OCH−Ph、−OCPh、−SH、−SCH、−SC、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH、−COC、−COC、−CO−シクロ−C、−COCH(CH、−COC(CH、−COOH、−COOCH、−COOC、−COOC、−COO−シクロ−C、−COOCH(CH、−COOC(CH、−OOC−CH、−OOC−C、−OOC−C、−OOC−シクロ−C、−OOC−CH(CH、−OOC−C(CH、−CONH、−CONHCH、−CONHC、−CONHC、−CON(CH、−CON(C、−CON(C、−NH、−NHCH、−NHC、−NHC、−NH−シクロ−C、−NHCH(CH、−NHC(CH、−N(CH、−N(C、−N(C、−N(シクロ−C、−N[CH(CH、−N[C(CH、−SOCH、−SOC、−SOC、−SOCH、−SO、−SO、−SOH、−SOCH、−SO、−SO、−OCF、−OC、−O−COOCH、−O−COOC、−O−COOC、−O−COO−シクロ−C、−O−COOCH(CH、−O−COOC(CH、−NH−CO−NH、−NH−CO−NHCH、−NH−CO−NHC、−NH−CO−N(CH、−NH−CO−N(C、−O−CO−NH、−O−CO−NHCH、−O−CO−NHC、−O−CO−NHC、−O−CO−N(CH、−O−CO−N(C、−O−CO−OCH、−O−CO−OC、−O−CO−OC、−O−CO−O−シクロ−C、−O−CO−OCH(CH、−O−CO−OC(CH、−CHF、−CHF、−CF、−CHCl、−CHBr、−CHI、−CH−CHF、−CH−CHF、−CH−CF、−CH−CHCl、−CH−CHBr、−CH−CHI、−CH、−C、−C、−シクロ−C、−CH(CH、−C(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH(CH)−C、−Ph、−CH−Ph、−CPh、−CH=CH、−CH−CH=CH、−C(CH)=CH、−CH=CH−CH、−C−CH=CH、−CH=C(CH、−C≡CH、−C≡C−CH、−CH−C≡CH。
【0178】
Xは、エステル基またはアミド基であり、そして特に、−O−アルキル、−O−CO−アルキル、−O−CO−O−アルキル、−O−CO−NH−アルキル、−O−CO−N−ジアルキル、−CO−NH−アルキル、−CO−N−ジアルキル、−CO−O−アルキル、−CO−OH、−OHである。
【0179】
m、n、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して、0〜20、好ましくは0〜10の整数である。
【0180】
例えば−CO−O−アルキルにおける用語「アルキル」は、好ましくは上記の基R、R’などについて述べられたアルキル基の1つである(例えば、−CH−Ph)。上記一般式の化合物は、それらの塩の形態で、ラセミ体またはジアステレオマー混合物として、純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーとして、および混合物またはオリゴマーまたはコポリマーまたはブロックコポリマーとしても存在し得る。さらに、上記物質は、生物学的に安定なおよび生分解性のポリマーのような他の物質との混合物で用いられ得、特に、本明細書で述べられる油および/または脂肪酸との混合物で用いられ得る。このような混合物および個々の物質が好ましく、それらは重合、特に自己重合に適切である。
【0181】
重合、特に自己重合に適切な物質は、とりわけ油、脂肪、脂肪酸、および脂肪酸エステルを含み、それらは、以下でより詳細に記載される。脂質の場合は、好ましくは、トリグリセリドの形態および/またはグリセリンと結合していない遊離の形態での、一価または多価不飽和脂肪酸および/またはこれらの不飽和脂肪酸の混合物に関する。
【0182】
好ましくは、不飽和脂肪酸は、オレイン酸、エイコサペンタエン酸、チムノドン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、および上記の脂肪酸の混合物を含む群から選択される。これらの混合物は、特に、純粋な不飽和化合物の混合物を含む。
【0183】
油としては、好ましくは、アマニ油、麻実油、コーン油、クルミ油、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ケシ油、ベニバナ油、小麦胚芽油、ベニバナ油、ブドウ種子油、月見草油、ルリヂサ油、ブラッククミン油、藻類油、魚油、タラ肝油、および/または上記の油の混合物が用いられる。純粋な不飽和化合物の混合物が特に適している。
【0184】
魚油およびタラ肝油は、主としてエイコサペンタエン酸(EPA C20:5)およびドコサヘキサエン酸(DHA C22:6)、加えて少量のα−リノレン酸(ALA C18:3)を含む。これらの3つの脂肪酸のすべての場合、ω−3脂肪酸に関し、これは、生物において多くの細胞構造に重要な生化学的な構成物質として必要とされ(DHAおよびEPA)、例えば、既に述べたように、それらは、細胞膜の形成および持続の基礎となる(スフィンゴ脂質、セラミド、ガングリオシド)。ω−3脂肪酸は、魚油だけではなく植物油にも見出され得る。さらに、ω−6脂肪酸のような不飽和脂肪酸は、植物由来の油に存在し、その油において、動物性脂肪よりも高い割合を部分的に構成する。したがって、それに応じた高含量の必須脂肪酸を含む、アマニ油、クルミ油、アマ油、月見草油のような種々の植物油が、特に高品質かつ有益な食用油として推奨される。特に、アマニ油は、ω−3およびω−6脂肪酸の貴重な供給源であり、高品質食用油として、数十年公知である。
【0185】
重合反応に関与する物質としては、ω−3およびω−6脂肪酸、ならびに少なくとも1つのω−3および/またはω−6脂肪酸部分を有するすべての物質が好ましい。このような物質はまた、自己重合に良好な能力を示す。硬化能(すなわち、自己重合能)は、乾燥油ともいわれる油の組成に基づき、そして必須脂肪酸が高含量であることに、より正確には、不飽和脂肪酸の二重結合に起因する。空気に暴露されると、酸素によってラジカルが脂肪酸分子の二重結合部位で発生し、これによってラジカル重合を開始し、拡大して、脂肪酸は二重結合を失いつつそれら自身の間で架橋する。脂肪分子中の二重結合の除去で、融点が高くなり、そして脂肪酸分子の架橋が、さらなる硬化を引き起こす。高分子樹脂が生じ、可撓性のポリマーフィルムとして、医療用品表面を均一に覆う。
【0186】
自己重合はまた、自家重合ともいい、例えば、酸素によって、特に空気中の酸素によって開始され得る。この自己重合はまた、光遮断下で行われ得る。別の可能性としては、電磁放射線、特に光による自己重合の開始がある。さらに別の(しかし、やや好ましくない)変形は、化学的分解反応、特に重合すべき物質の分解反応によって開始される自己重合によって示される。
【0187】
多重結合が脂肪酸部分により多く存在するほど、架橋度が高くなる。したがって、多重結合の密度がアルキル部分(脂肪酸部分)および1分子中で高いほど、重合反応に積極的に関与する物質の量は少なくなる。
【0188】
医療用製品の表面に堆積される物質全部の総量に対する重合反応に積極的に関与する物質の含有量は、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも35質量%、より好ましくは少なくとも45質量%、および特に好ましくは少なくとも55質量%である。
【0189】
以下の表1は、種々の油中の脂肪酸構成の一覧を示し、これらは本発明において好ましく用いられる。
【0190】
【表2】

【0191】
本発明のコーティングに用いられる油および油の混合物は、それぞれ、少なくとも40質量%の不飽和脂肪酸量、好ましくは50質量%の量、より好ましくは60質量%の量、さらに好ましくは70質量%の量、そして特に好ましくは75質量%の量の不飽和脂肪酸を含む。市販されている油、脂肪、またはワックスが用いられてもよい。これらは、少なくとも1つの多重結合を有する化合物を40質量%より少ない量で含むので、不飽和化合物の量が40質量%を上回るほどに増加するように不飽和化合物が適量で添加され得る。40質量%より少ない量の場合、重合速度が過度に強く減少するので、均一なコーティングは、もはや保証され得ない。
【0192】
重合特性のため、特に、多量の多価不飽和脂肪酸を有する脂質を本発明のための優れた物質とすることができる。
【0193】
リノール酸(オクタデカジエン酸)は2つの二重結合を有し、そしてリノレン酸(オクタデカトリエン酸)は3つの二重結合を有する。エイコサペンタエン酸(EPA C20:5)は5つの二重結合を有し、そしてドコサヘキサエン酸(DHA C22:6)は1分子中に、6つの二重結合を有する。二重結合の数とともに、重合容易性も増す。不飽和脂肪酸およびそれらの混合物のこれらの特性、ならびにそれらの自己重合の傾向は、例えば、魚油、タラ肝油、またはアマニ油による医療用品表面、特に、ステントの生体適合性および可撓性コーティングのために用いられ得る(実施例13〜18を参照のこと)。
【0194】
リノール酸はまた、それぞれシス−9、シス−12−オクタデカジエン酸(化学的命名法)またはΔ9,12−オクタデカジエン酸またはオクタデカジエン酸(18:2)およびオクタデカジエン酸18:2(n−6)(それぞれ生化学的および生理学的命名法)ともいわれる。オクタデカジエン酸18:2(n−6)の場合、nは、炭素原子の数を表し、そして数字「6」は、最後の二重結合の位置を示す。したがって、18:2(n−6)は、18個の炭素原子、2つの二重結合を有し、最後の二重結合から外側のメチル基まで6個の炭素原子の距離を有する脂肪酸である。
【0195】
本発明において、重合反応に関与する物質として、以下の不飽和脂肪酸ならびにそれぞれこれらの脂肪酸を含む物質またはこれらの脂肪酸のアルキル部分(すなわち、カルボキシレート基(−COOH)以外)を含む物質として好ましく用いられる。
【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
【表5】

【0199】
少なくとも1つの多重結合を有する1つの直鎖または分岐および1つの置換または非置換のアルキル部分を含む物質の記載される重合の完了後、少なくとも部分的に1つのポリマー層が与えられた医療用製品の表面が得られる。理想的な場合、連続的に均一な厚みのポリマー層が、ステントまたは波形にされたステントを有するかまたは有さないカテーテルバルーンの全外表面上に形成される。ステントまたはステントを有するかまたは有さないカテーテルバルーンの表面のこのポリマー層は、重合反応に関与する物質からなり、そしてポリマーマトリックス中に、重合反応に積極的に関与しない物質、および/または活性薬剤、および/またはラパマイシンを含む。好ましくは、封入は、重合に関与しない物質、特に、ラパマイシンおよびさらなる活性薬剤をポリマーマトリックスから拡散させるように適合される。
【0200】
重合した物質の生体適合性コーティングは、ステントまたはステントを有するかまたは有さないカテーテルバルーンに必要な血液適合性を与えると同時に、ラパマシンおよび他の活性薬剤のための適切なキャリアとなる。添加される活性薬剤(または活性薬剤の組合わせ)は、ステントおよび/またはカテーテルバルーンの表面全体にわたり均一に分散されており、これにより、表面における細胞、特に、平滑筋細胞および内皮細胞による集合は制御されながら生じる。したがって、ステント表面上の細胞による、再狭窄を導き得る急速な集合および過増殖は起こらない。しかし、ステント表面上の細胞の集合は、血栓症の危険性を含む高濃度の医薬によって完全には防止されない。この両方の効果の組み合わせは、本発明の医療用製品の表面、特に、ステントの表面に、血管壁中に迅速に増殖する能力を与え、そして再狭窄の危険性および血栓症の危険性の両方を減らす。1または複数の活性薬剤の放出は、移植後1〜12ヶ月、好ましくは1〜2ヶ月の期間にわたる。
【0201】
溶出のための活性薬剤としてラパマイシンを有するさらに好ましいステントは、ラパマイシンを負荷するための表面が、以下のように明らかに増加している。これらのステントは、ステント支柱だけではなくステント支柱間の隙間もまたラパマイシンが存在するポリマーまたはキャリアマトリックスでコーティングされる。このように完全な(すなわち、ステント支柱および支柱の隙間)コーティングステントは、特別な方法によって製造され、その方法は、「Vollflachige Beschichtung von GefaBstutzen」の表題を有する国際特許出願PCT/DE2006/000766およびHemoteq GmbHの独国特許出願DE10 2005 021 622.6に詳細に記載されている。
【0202】
この目的は、内部人工器官の格子状または網目状の足場の表面を完全に被覆することにより達成された。用語「完全なコーティング」とは、隙間を全体的に被覆するコーティングのことをいう。このコーティングはまた、連続とも記載され、すなわち、薄膜が隙間に形成され、この薄膜は、この隙間を定める支柱のみに接している。このコーティングは、つり橋状に隙間を覆って広がり、その端部に取り付けられているのみであり、隙間内の固体地面に接していない。このコーティング層(表面全体を被覆する)が、支柱または内部人工器官に十分付着することを確実にするために、第1のコーティング工程において、支柱を少なくとも部分的にポリマーAでコーティングし、隙間は被覆しない。そして、この第1のポリマーコーティング層を湿潤させた後または部分的に溶解した後、表面をポリマーBで完全にコーティングする工程を第2のコーティング工程で続ける。第1のポリマーコーティング層によって、表面全体に付与されるまたは連続層になることが考えられる第2のポリマー層に、改良された付着特性がもたらされる。
【0203】
ポリマーAおよびポリマーBはまた同一であり得、そして好都合には、これらは、コーティング溶液中のそれらの濃度に関する限りのみ異なる。
【0204】
支柱または交点は、第1のコーティングによって管状またはワイヤーの周りの絶縁体状に取り囲まれる。それにもかかわらず、このコーティングは、個々の支柱を取り囲むのみであり、まだ2つの隣接する支柱を相互に連結していない。第1のコーティングは、支柱と交点との間の隙間の上を覆って広がることが考えられるすぐ上のコーティングに、改良された付着特性を与えるための支持層として働く。
【0205】
さらに、内部人工器官の個々の支柱または交点は、凹部または穴を有し得る。これらは、例えば、薬剤で満たされ得、そして第1のポリマーコーティングおよび第2のコーティングで被覆され得る。このような凹部および穴のこのような被覆は先行技術であり、そして好ましい実施態様として考えられ得るが、本発明の主要な局面ではない。
【0206】
非コーティング内部人工器官またはむき出しのステントは、医療用のステンレス鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、ニチノール、マグネシウム、亜鉛、上記金属の合金のような従来の材料で作製され得るか、またはセラミック材料またはポリマーで構成され得る。これらの材料は、自己拡張可能またはバルーン拡張可能のいずれかであり、生物学的に安定または生分解性である。
【0207】
好ましくは、コーティング工程b)は、スプレーコーティングまたはエレクトロスピニングによって行われ、一方、工程c)およびd)は、好ましくはディップコーティング、マイクロピペッティング、エレクトロスピニング、および/または「シャボン玉法」によって行われる。
【0208】
ポリマー表面は、さらなる工程で、内表面および/または外表面上が、ポリマーCで完全にまたは部分的にコーティングされ得る。したがって、例えば、気管気管支ステントの管腔側にとっては、分泌物、粘液などの排出を妨害しないために十分に滑らかなままであることが重要である。親水性は、ポリビニルピロリドン(PVP)のような適切なポリマーでコーティングすることによって増加され得る。
【0209】
このコーティング方法は、完全な表面コーティングに関して先行技術の上記の欠点を克服し、したがって、患者が曝されている危険を除去する。
【0210】
一方、本発明に用いられ得るこのような医療デバイスは、固体材料、例えば、ステントの個々の支柱にコーティングを付与し、そして支柱によって定められる開口領域をポリマー層Bで満たすことによってコーティングされ得る。このポリマー層は、ポリマー特性のため、ポリマーAでコーティングされたステント支柱の隙間を被覆し得る。医療デバイスのエレメントを取り囲むコーティングの安定性は、ポリマーBおよびポリマーAの2つの組み合わせた層の機能である。したがって、表面構造にこのような隙間を有する任意の医療デバイスが、例えば、個々の支柱間にこのような隙間を示すステントの場合と同様に、本発明によってコーティングされ得る。
【0211】
第1のコーティングのために生分解性および/または生物学的に安定なポリマーA、および被覆する第2のコーティングのための生分解性または再吸収性のポリマーBおよび/または生物学的に安定なポリマーが、用途の種類に依存して用いられ得る。
【0212】
さらに、ポリマーAを用いたコーティング工程の前の工程において、血液適合性層が、好ましくは医療デバイスの非コーティング表面に共有結合され得るか、または例えば、グルタルジアルデヒドとの架橋により表面に固定化され得る。このような層は、血液凝固を活性化せず、非コーティングステント材料が血液と接触し得る場合に有用である。したがって、まず、例えば、動脈瘤の治療のためのUS595,159に記載されるように、このような血液適合性層で部分的にコーティングされたステントを提供することが好ましい。
【0213】
さらに、表面を完全にコーティングする第2工程で生じる外表面は、水平でも平坦でもなく、ステントの構造(すなわち、支柱の構造)がまだ目に見えることが好ましい。その利点は、血管壁に面する内部人工器官のコーティング外表面が波形および粗い構造を有するという事実にあり、このことは、血管内での固定の改良を保証する。
【0214】
ステント支柱を取り囲むポリマーAは、さらなる抗増殖剤、抗転移剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、消炎剤、細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤および/または抗血栓剤活性薬剤を含み得、ステントを完全に被覆するポリマーBは、活性薬剤ラパマイシンを含む。したがって、このラパマイシン溶出表面は、個々のステント支柱を取り囲むのみの従来のコーティングと比較して、明らかに増加している(実施例18を参照のこと)。
【0215】
ラパマイシンの濃度および存在する場合他の活性薬剤の濃度は、内部人工器官の完全なコーティング表面について0.001〜500mg/cmの範囲が好ましい。すなわち、表面は、コーティングされた支柱の総表面および支柱間の被覆された隙間の表面を考慮して計算される。
【0216】
本発明の方法は、例えば、内部人工器官および特にステント(例えば、冠状動脈ステント、血管ステント、気管ステント、気管支ステント、尿道ステント、食道ステント、胆管ステント、腎臓ステント、小腸における使用のためのステント、大腸における使用のためのステント)のコーティングに適合される。さらに、ガイドワイヤー、らせん、カテーテル、カニューレ、チューブおよび略チューブ状インプラント、または上記医療デバイスの部品が、ステントに匹敵する構造エレメントがこのような医療デバイスに含まれるならば、本発明によりコーティングされ得る。拡張し得る医療デバイスまたは内部人工器官が用いられる限り、コーティングは、好ましくはそれぞれのデバイスの拡張状態の間に行われる。
【0217】
コーティングされた医療デバイスは、好ましくは任意の管状構造(例えば、尿路、食道、気管、胆管、腎管、脳を含む全身の血管、十二指腸、幽門、小腸および大腸)の開通性を維持するために用いられるが、結腸または気管に用いられるような人工的な開口部の開通性を維持するためにもまた用いられる。
【0218】
したがって、コーティングされた医療デバイスは、狭窄、再狭窄、動脈硬化、アテローム性動脈硬化および任意のその他のタイプの血管閉塞または管腔もしくは開口部の管閉塞の予防、軽減または治療に有用である。
【0219】
さらに、ポリマーBを含む完全なコーティング層の長さは、内部人工器官の長さを超え、そして内部人工器官の端と一致しないことが好ましい。さらなる工程では、殻の重なり部分は、内部人工器官の縁周りの外表面に置かれ、そしてこうして形成された縁は、加圧および昇温下で下部のポリマーB層に組み込まれる。したがって、内部人工器官の縁の連続コーティングもまた確実にされ、同時に、これらの弱点である剥離の危険性を除去する。さらに、ハンドリングエレメントが縁の下に取り付けられ得、それによって、ステントがいつでも安全に取り除かれ得る。したがって、ポリマー繊維が、折り曲げて周囲に配置され得る。繊維は、1または2の反対側にループの形態で、縁からポリマー層を通って外表面に突出する。
【0220】
別の可能性は、この辺縁領域を活性薬剤のためのリザーバーとしてまたは活性薬剤の導入(特にこの辺縁領域への)のために使用することにある。これらの活性薬剤は、中空体の完全なコーティングの表面内/表面上に存在する可能性のある活性薬剤と異なり得る。
【0221】
そこで、ステントを囲んでいる殻は、ステントに可撓性を付与するだけではなく、医療デバイスに機械的な剛性を付与するために寄与する。その上、側面特異的に活性薬剤、例えば、外表面から管壁中へ拡散し得る細胞増殖抑制剤、および医療デバイスの内表面での感染を予防する抗生物質を導入する可能性が存在する。さらに、それぞれの移植部位の生理学的条件への適応に関するさらなる最適化が、内表面および外表面に異なるコーティングを付与する可能性により達成され得る。
【0222】
埋め込まれた、このようにコーティングされた医療デバイスをX線写真で画像化することを可能にする、さらなる添加剤が可能である(例えば、硫酸バリウムまたは貴金属のような物質)。さらに、外表面および内表面は、上記のように、異なる材料で取り囲まれ得る。したがって、例えば、外表面に疎水性ポリマー殻を有し、一方、内表面が親水性ポリマーでなる医療デバイスが製造され得る。
【0223】
この方法は、医療デバイスに、添加剤を含むまたは含まない任意の生物学的に安定なまたは生分解性のコーティング材料を、必要に応じて殻の形態で、付与する種々の可能性を提供する。
【0224】
同時に、コーティングは、インプラントの機械的剛性を、その可撓性に影響を与えることなく付与し得る。
【0225】
したがって、現在まで、例えば、胆管ガンの制限のためにステントを使用することは標準的処置ではない。この症例のほんの10%で、外科的除去が好結果であるが、このような患者の平均余命は1年である。本方法により完全にコーティングされ、胆管に適用するために適合させたインプラントの使用は、必要に応じて化学療法剤を含み得、一方では、内部人工器官が一定の対向圧力を発揮して体内の管腔の狭窄を予防し、そして同時に、腫瘍の増殖を遅らせ得るかまたは停止さえさせ得る。したがって、高いまたは良好な生活の質を維持しながら、少なくとも寿命を延長する治療を提供する(実施例18)。
【0226】
さらに、本発明のコーティングはまた、血管系に使用され得る。動脈瘤の形成の場合、例えば、血液が供給され続けることによる動脈瘤の増大を防ぐように用いられ得る(実施例19)。
【0227】
表面増加のための本発明のさらなる実施態様は、カテーテルシステム、特に波形にされたステントを有するカテーテルバルーンを含む拡張カテーテルシステムをいう。これらのシステムでは、非コーティングまたはコーティングステントが、カテーテルバルーンに対して波形にされ、次いでカテーテルバルーンと共にコーティングされる。コーティングは、波形にされたステントの個々のステント支柱間の自由な隙間が、活性薬剤またはラパマイシンのリザーバーとして働くように行われ得る。例えば、ラパマイシンまたは本明細書で述べられる活性薬剤の1つが、適切な溶媒に溶解されてステントまたはバルーンに付与され得る。活性薬剤および溶媒は、個々のステント支柱間の隙間およびカテーテルバルーンとステントの内部との間の隙間に流れ込み、溶媒は蒸発し、そして純粋な活性薬剤が残る。次いで、1以上のキャリア層が、ステントを有するカテーテルバルーンに付与され得る。
【0228】
この実施態様の好ましい変形は、ステント支柱間およびバルーンとステントとの間に純粋なパクリタキセルを有し、このパクリタキセルは、スプレー法またはディッピング法によって付与され、そして、溶媒の蒸発後、そこに残る。次いで、この第1のパクリタキセルコーティングは、活性薬剤ラパマイシンを含む、好ましくは生分解性ポリマーおよび/または好ましくは極性の親水性ポリマーで被覆される。
【0229】
別の好ましい実施態様は、キャリアもポリマー層も有さないが、純粋なラパマイシンのみを有し、ラパマイシンは、溶媒と共にステントまたはカテーテルバルーンに付与され、そしてステントおよびバルーンの溶媒の蒸発後に残る。
【0230】
第3の好ましい実施態様は、ラパマイシンを含む好ましくは生物学的に安定なポリマーでコーティングされ、そしてバルーンで波形にされているステントを含む。ラパマイシンコーティングステントを有する非コーティングカテーテルバルーンは、次いで、適切な溶媒中のパクリタキセルがスプレーされ、溶媒の蒸発後、純粋なパクリタキセルの不規則な層がステントおよびバルーンに存在する。
【0231】
(造影剤)
ラパマイシンのためのマトリックスまたはキャリアとして、ポリマーではなく低分子の化学化合物、そして特に造影剤および造影剤類似体を用いる本発明の実施態様が、特に興味深い。
【0232】
このような造影剤および/または造影剤類似体は、主に、バリウム、ヨウ素、マンガン、鉄、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、および/またはルテチウムを含み、好ましくは、イオンとして結合した形態および/または錯体形態を含む。
【0233】
原則として、造影剤は、異なる画像検査法で区別されるべきである。一方、X線検査に用いられる造影剤(X線造影剤)または磁気共鳴断層撮影装置検査に用いられる造影剤(MR造影剤)がある。
【0234】
X線造影剤の場合、周囲構造に対して透過するX線の吸収を増加する物質か(いわゆる、陽性造影剤)、または透過するX線を妨げずに通過させる物質(いわゆる、陰性造影剤)に関する。
【0235】
好ましいX線造影剤は、関節の画像化のために(関節造影)およびCT(コンピューター断層撮影装置)に使用されるものである。コンピューター断層撮影装置は、X線によって人体の断面像を生じるデバイスである。
【0236】
本発明によれば、X線はまた、画像化法における検出のために用いられ得るが、この放射線は、その有害性のため好ましくない。透過する放射線がイオン化放射線ではない場合が好ましい。
【0237】
画像化法としては、X線画像、コンピューター断層撮影装置(CT)、核スピン断層撮影装置、磁気共鳴断層撮影装置(MRT)、および超音波が用いられ、スピン断層撮影装置および磁気共鳴断層撮影装置(MRT)が好ましい。
【0238】
したがって、放射線を透過させることによって励起される能力のため、画像化法によるインビボ事象における医療デバイスの検出を可能にする物質として、特にコンピューター断層撮影装置(CT)、核スピン断層撮影装置、磁気共鳴断層撮影装置(MRT)、および超音波に用いられる造影剤が好ましい。MRTに用いられる造影剤は、それらにより構造物の磁気的挙動の変化が区別されるようにという作用機序に基づく。
【0239】
さらに、ヨウ素含有造影剤が好ましく、血管の画像化(血管造影または静脈造影)およびコンピューター断層撮影装置(CT)に用いられる。
【0240】
ヨウ素含有造影剤として、以下の例が挙げられ得る:
【0241】
【化22】

【0242】
別の例は、Jod-Lipiodol(登録商標)、ヨード化ケシ油、ケシ油である。Gastrografin(登録商標)およびGastrolux(登録商標)の商標の下、ヨード造影剤の母体物質であるアミゾトリゾエートは、ナトリウム塩およびメグルミン塩の形態で市販されている。
【0243】
ガドリニウム含有または超常磁性の酸化鉄粒子およびフェリ磁性または強磁性鉄粒子(例えば、ナノ粒子)もまた好ましい。
【0244】
好ましい造影剤の別のクラスは、主にランタノイドを含む常磁性造影剤によって表される。
【0245】
不対電子を有する常磁性物質の1つは、例えば、ガドリニウム(Gd3+)であり、これは全部で7個の不対電子を有する。さらに、このグループには、ユーロピウム(Eu2+、Eu3+)、ジスプロシウム(Dy3+)、およびホルミウム(Ho3+)がある。これらのランタノイドはまた、例えば、ヘモグロビン、クロロフィル、ポリアザ酸、ポリカルボン酸、および特にEDTA、DTPA、およびDOTAをキレート剤として用いることによって、キレート形態で用いられ得る。
【0246】
ガドリニウム含有造影剤の例は、ジエチレントリアミン五酢酸、または、
【0247】
【化23】

【0248】
本発明に用いられ得るさらなる常磁性物質は、銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、クロム(Cr2+、Cr3+)、マンガン(Mn2+、Mn3+)、および鉄(Fe2+、Fe3+)のような、いわゆる遷移金属イオンである。これらのイオンはまた、キレート形態で用いられ得る。
【0249】
放射線を透過させることによって励起される能力のため、画像化法によってインビボ事象における基本本体の検出を可能にするための少なくとも1つの物質は、基本本体の表面または基本本体の内部のいずれかにある。
【0250】
1つの好ましい実施態様では、カテーテルのバルーンは、その圧縮形態で内部に、造影剤および/または造影剤類似体が満たされる。造影剤は、好ましくは溶液として存在する。ラパマイシンのためのキャリアまたはマトリックスとして造影剤または造影剤類似体の特性に加えて、このようなコーティングは、カテーテルバルーンが、画像化法においてより良好に可視化、すなわち検出可能になるという利点をさらに有する。バルーンの拡張は、バルーンをさらに造影剤溶液で満たすことでバルーンを膨張することによって生じる。
【0251】
この実施態様の利点は、造影剤または造影剤類似体が、いつでも再利用し得、そして身体に透過せず、したがって、有害な副作用を生じないことである。
【0252】
造影剤類似体とは、造影剤の特性を有する、すなわち、手術の間に用いられ得る画像化法で可視となり得る造影剤様化合物をいう。
【0253】
したがって、本発明のさらなる好ましい実施態様は、ラパマイシンおよび造影剤または造影剤類似体でコーティングされたカテーテルバルーンを含む。コーティングまたは非コーティングステントが、カテーテルバルーン上に存在する場合、もちろん、バルーンはステントと共にコーティングされ得る。この目的に対して、ラパマイシンは、必要に応じて1以上の他の活性薬剤と共に、造影剤に溶解または懸濁され、そしてステントを有するまたは有さないカテーテルバルーンに付与される。さらに、造影剤およびラパマイシンの混合物に対してコーティング後蒸発するまたは真空下で除去され得る溶媒を混合するための可能性が存在する。さらに、造影剤含有層の下および/または上にさらなる1層以上の純粋な活性薬剤またはポリマーまたは活性薬剤含有ポリマーの層が付与される可能性が存在する。
【0254】
特に好ましい実施態様は、波形にされたステントを有するカテーテルバルーンを用いる。ステントは非コーティング(むき出しの)ステント、または好ましくは血液適合性層1層のみでコーティングされたステントであり得る。血液適合性コーティングとしては、特に、本明細書に記載されるヘパリン誘導体またはキトサン誘導体が好ましく、そして特に、脱硫酸化および再アセチル化または再プロピオニル化されたヘパリンである。カテーテルバルーンおよびステントのシステムは、例えば、造影剤中のパクリタキセルまたはサリドマイドと共にラパマイシンの溶液または懸濁液または分散液でスプレーまたは浸漬される(実施例20を参照のこと)。
【0255】
折りたたみバルーン(またはウイングバルーンまたはひだバルーンまたは折り目を有するバルーンまたはひだを有するバルーン)のように特別に設計されたバルーンを用いることもまた可能である。このような折りたたみバルーンは、バルーンの圧縮状態で折り目(またはひだまたはウイング)を形成し、これに適切な溶媒中で、純粋なラパマイシンのような活性薬剤、またはラパマイシンおよび溶媒または造影剤の混合物、またはラパマイシンおよび油またはポリマーの混合物で満たされ得る。必要に応じて用いられる溶媒は、減圧下で除去され得、それによって折り目に存在する混合物が乾燥され得る。通常ステントなしで用いられるこのような折りたたみバルーンを拡張する場合、折りたたみは、外側に向かうかまたは突き出て、したがってその内容物を血管壁に放出する。
【0256】
ステントまたはカテーテルバルーンの別の好ましい実施態様は、細胞内への活性薬剤の導入を促進または支援する輸送媒体の使用にある。しばしば、これらの物質は、支援効果または相乗効果を有する。これらは、例えば、血管拡張剤を含み、キニン(例えば、ブラジキニン、カリジン)、ヒスタミン、またはNOS−シンターゼ(L−アルギニンから血管拡張性NOを放出する)のような内因性物質が挙げられる。植物由来の物質(例えば、イチョウ抽出物)、DMSO、キサントン、フラボノイド、テルペノイド、動植物染料、食品着色剤、NO放出物質(例えば、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN))、造影剤および造影剤類似体もまた、これらのアジュバントに属し、またはそれ自体が活性薬剤として相乗的に用いられる。
【0257】
さらに、2−ピロリドン、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチルおよびそれらのアセチル化誘導体、フタル酸ビブチル、安息香酸ベンジルエステル、ジエタノールアミン、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピル、トリアセチンなどの物質が挙げられる。
【0258】
(ステント材料)
本発明の方法によってコーティングされ得る通常のステントは、医療用のステンレス鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、ニチノール、マグネシウム、亜鉛、上記金属の合金のような従来の材料で作製され得るか、またはセラミック材料または生物学的に安定および/または生分解性ポリマーで構成され得る。これらの材料は、自己拡張可能またはバルーン拡張可能のいずれかであり、そして生物学的に安定および/または生分解性である。
【0259】
(バルーン材料)
カテーテルバルーンは、通常の材料、特により以下に記載されるようなポリマー、そして特に、PA12のようなポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエーテルなどで構成され得る。
【0260】
始めに述べられたように、多効性の活性薬剤ラパマイシンの選択に加えて、長期間、最適な抗再狭窄効果のある医療デバイスを達成するために、さらなる要因が重要である。ラパマイシンの物理的および化学的特性、および必要に応じて添加されるさらなる活性薬剤ならびにそれらの可能な相互作用、活性薬剤濃度、活性薬剤放出、活性薬剤の組み合わせ、選択されるポリマー、およびコーティング方法は、重要なパラメーターを表し、これらは、互いに対して直接的な影響を有し、したがって各実施態様のために正確に決定されなければならない。これらのパラメーターを調節することにより、活性薬剤または活性薬剤の組合せは、再狭窄の危険に曝されている臨界的期間全体にわたって、十分または効果に最適な量で血管壁の隣接細胞によって、吸収され得る。
【0261】
本発明のステントは、活性薬剤ラパマイシンまたはラパマイシンと好ましい活性薬剤との組み合わせを含みそしてステントを完全または不完全に覆う少なくとも1層を好ましく備え、および/または本発明のステントは、ステント材料自体に活性薬剤ラパマイシンおよび/またはラパマイシンと活性薬剤との組み合わせを含む。
【0262】
さらに、表面の血液適合性層によって、環境への活性薬剤の拡散中および拡散後、異物に対する免疫反応が起こらないことが保証され得る。
【0263】
一方、層は、純粋な活性薬剤層を含み得、少なくとも1層がラパマイシンを含み、そして他方、活性薬剤非含有または活性薬剤含有ポリマー層またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0264】
このような医療デバイスを製造するための方法としては、スプレー法、ディッピング法、ピペッティング法、エレクトロスピニング法、および/またはレーザー技術が用いられ得る。選択される実施態様に依存して、最も適切な方法が、医療デバイスの製造のために選択され、2以上の方法の組み合わせもまた、用いられ得る。
【0265】
さらに、1層にラパマイシンと共に存在するかまたは個別の層で付与されるかのいずれかの少なくとも別の活性薬剤を添加することも好ましい。さらなる組み合わせとして、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)の使用が好都合である。なぜなら、消炎効果を支援することに加え、アスピリンはまた、抗血栓特性を有するからである。
【0266】
疎水性パクリタキセルとの組み合わせでは、抗増殖効果は、実施態様に依存して増加または延長され得る。パクリタキセルおよびラパマイシンは、それらの異なるバイオアベイラビリティーによって互いを補足する。例えば、親水性ラパマイシン層がパクリタキセル層に付与され得ると、ラパマイシンが早期に生じる炎症反応をより標的とし、そしてパクリタキセルが、長期間、SMCの増殖を阻害する。
【0267】
別の好ましい実施態様は、ステント上にラパマイシンまたは活性薬剤とラパマイシンとの組み合わせのためのリザーバーとしての適切な生物適合性材料を使用することである。
【0268】
このため、ラパマイシンおよび/またはラパマイシンと活性薬剤との組み合わせを含む少なくとも1層の生物学的に安定なおよび/または生体再吸収性ポリマー層でのステント本体のコーティングが提供される。ポリマー層のラパマイシン含有量は、1質量%から60質量%の間、好ましくは5質量%から50質量%の間、特に好ましくは10質量%から40質量%の間である。
【0269】
驚くべきことに、生分解性ポリマーの使用が好都合であることが見出された。なぜなら、ポリマーの分解が、いわゆるバルク浸食として生じるからである。鎖分解は、ポリマーの特性を実質的に維持しながら、ある程度まで起こる。一定の鎖長を下回った後のみ、材料はその特性を緩め、そして脆弱になる。分解は、小剥離片の形態で生じ、それは、非常に短時間で生物によって完全に代謝される。この分解プロセスが、ラパマイシン溶出の増加を標的して制御するために使用され得、再狭窄予防の実質的な改良を提供することが見出された。
【0270】
活性薬剤の溶出は、通常、特に移植後の最初の数日に多く、既に議論したように、生物の急性の防御反応(創傷自体に対するおよび異物に対する)の合計のより良好な制御を有するが、さらに経過すると、このカーブが非常に急速に平坦化され、溶出される活性薬剤量が、一律に減少していき、溶出は停止され、そしてなお残存する活性薬剤のポリマーからの溶出は検出不能になる。しかし、損傷の程度または患者の体型により、2〜4週後、再狭窄を制限するための活性薬剤の用量増加を必要とする反応に気づく。
【0271】
同様の薬剤溶出ステントで、ポリマー特性の損失および生分解性ポリマーの分解の開始を適時制御することによって、再狭窄予防のために重要な活性薬剤溶出の増加が、所定のより遅い時点で再度達成され得る(図4を参照のこと)。
【0272】
例えば、PLGAの加水分解は、2週を超えた後、溶出カーブがラパマイシンのさらに増加した溶出を有するように、PLAとPGAとの混合比または他の適切なポリマーとの組み合わせによって調節され得る。両方の成分の互いに対するまたは他の適切なポリマーに対する組み合わせに依存して、後期の投薬量、時点、および持続時間およびさらなる時点の後の活性薬剤のアベイラビリティーの再度の増加(「後期バースト」)が正確に調節され得る(図4を参照のこと)。
【0273】
さらに、少なくとも1つの2層システムの使用で、ターゲット的に用量および制御された活性薬剤溶出を標的して増加および/または拡張することを可能にする。これは、例えば、ステント(または血液適合性コーティングステント)に付与される第1層が、第2のポリマー層よりもより高いラパマイシンの濃度を有するかまたはこの第1層に付与される純粋なラパマイシン層を有する場合、達成され得る。ラパマイシン含有層中またはこの層とは別に存在する層中でラパマイシンを支援する活性薬剤を使用することもまた可能である。
【0274】
薬剤溶出ステントのラパマイシン負荷を増加するための別の好ましい変形は、非常に膨潤し得る物質、例えば、アルギネート、ペクチン、ヒアルロナン、寒天、アラビアガム、リポソームのヒドロゲル、ペプチドヒドロゲル、ゼラチンカプセル、および/またはPVPのような非常に膨潤し得るポリマーにラパマイシンを包含することであり、少なくとも生分解性および/または生物学的に安定なポリマー層に組み込まれる。さらなる利点として、最大の度合いで環境の影響に対して活性薬剤を遮蔽することが述べられ得る。同時に、ラパマイシンおよび/または別の活性薬剤を、活性薬剤のカプセルを包囲するポリマー層に添加する可能性が存在する。
【0275】
PVPのような親水性の細孔形成材料を添加することで、ステント移植の早期の段階での溶出の加速に加えて、また生体再吸収性ポリマーのより急速な分解が、ポリマー層への水または血漿または細胞液の侵入の促進のために達成される。このようにして、ラパマイシンは、より急速にそしてより高用量で溶出される。これは、増加された投薬量が、有効性に積極的に影響を与えるが、パクリタキセルとは反対に壊死性の変化を生じないので、大いに好都合である。
【0276】
特別の実施態様では、マトリックスとして生物学的に安定なポリマーそして細孔および/またはチャネル形成材料として親水性の活性薬剤負荷の材料(PVPのような親水性ポリマーおよび/または例えば、ゼラチン、アルギネート、架橋デキストリン、アラビアガム、寒天など由来のマイクロカプセルおよびマイクロビーズ)を使用することである。水性の媒体の添加またはこのようにコーティングされたステントの植え込みおよび拡張により、親水性材料は膨潤する。生物学的に安定なポリマーの膨潤性は、親水性部分と比較して低いので、液体の侵入および続く膨潤のため細孔内で圧力が発生する。これにより、親水性ラパマイシンは、血管環境へ射出されるように細孔およびチャネルから押し出される(図5を参照のこと)。
【0277】
細胞の内部へのラパマイシンの吸収を増加させるために、細胞膜の浸透性を増加させる物質(例えば、DMSO、レシチン、および上述の他のトランスフェクション薬剤)が添加され得る。このシステムはまた、マトリックスとして生分解性ポリマーを用いて実現され得る。この実施態様には、使用される物質の膨潤性の差異が決定要因である。ラパマイシンは、膨潤性材料が液体を吸収する限り溶出される。したがって、活性薬剤の放出は、液体吸収の速度によって制御され得る。このシステムはまた、マトリックスとして生分解性ポリマーを用いて実現され得る。特に、使用される物質の膨潤性の差異が決定要因である。
【0278】
生物学的に安定なポリマー、特にポリスルホンまたは重合可能な油を用いる別の実施態様が提供され得、それにより、生物学的に安定なポリマーコーティングステントのポリマー表面では、穴が、レーザー技術によって決められた配列に形成され、生分解性ポリマーが添加されたまたは添加されていないラパマイシン溶液が、ディッピングまたはピペッティング技術によって組み込まれる。この場合、生分解性ポリマーが、拡散バリアとして、個々の穴を覆うかまたはステント表面全体上かのいずれかで付与され得る。この実施態様の事象では、ステントの血管部位は、標的されるようにして処置され得る。例えば、ステントの内側もまた被覆する生物学的に安定なポリマーに抗血栓剤を添加することは、腔側にもまた存在する血栓症の危険性を最小限にするための助けになる。
【0279】
この2層の実施態様によれば、第1の生物学的に安定な層は、別の生分解性層によって実質的に被覆される層であり、それにより、活性薬剤溶出の上述の利点が維持される。さらに、同一かまたは異なる材料のいずれかでなる2つのポリマー層を付与することが好ましく、ラパマイシンが、一方かまたは両方の層に、同一かまたは異なる濃度で、さらなる活性薬剤を含むかまたは含むことなく存在する。
【0280】
ラパマイシンおよび/または活性薬剤の組み合わせの溶出が制御を可能にするには、2層に異なる量の細孔形成剤が存在するように、細孔形成剤を添加することによること、およびコーティング中の細孔形成剤およびその量に依存して異なって溶出する異なる活性薬剤を標的に組み込むことによることが考えられる。
【0281】
この2層の実施態様の後、異なる活性薬剤を、それぞれの活性薬剤のために適切な層にそれぞれ別々に組み込む可能性が存在し、これにより、例えば、疎水性の活性薬剤は、1つのより親水性の層に存在し、そしてより疎水性ポリマー層に存在する別の疎水性の活性薬剤とは別の溶出動態を有し、逆も同様である。これは、特定の合理的な順序に活性薬剤のアベイラビリティーを設定する、および溶出時間および溶出濃度を制御する幅広い分野の可能性を提供する。
【0282】
さらなる好ましい適切なポリマーとして、例えば、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリアミノ酸、トリメチレンカーボネート、および低架橋性の重合可能な油が挙げられ得る。
【実施例】
【0283】
(実施例1:ラパマイシンを用いたステントのスプレーコーティング)
浄化された非拡張ステントを、細い金属棒(d=0.2mm)に水平につるし、回転フィード装置の回転軸に差し込み、そして28r/分で回転する。ステントをこのようにステントの内側が棒に接触しないように固定し、そしてクロロホルムまたは酢酸エチル中のラパマイシンの2%スプレー溶液でスプレーする。次いで、それらをドラフト中で一晩中乾燥する。必要であれば、所望の活性薬剤負荷がステント上に存在するまで、このコーティングプロセスを繰り返し得る。
【0284】
(実施例2:PBS緩衝液中の溶出挙動の決定)
ステント毎に、十分に小さいフラスコに2mlのPBS緩衝液を加え、密閉し、そして37℃の乾燥機中でインキュベートする。各場合で選択した時間間隔の終了後、過剰な溶液をピペットで除去し、そしてそのUV吸収を測定する。
【0285】
(実施例3A:ベースコートとしてラパマイシンおよびトップコートとしてPVAを用いたステント)
ラパマイシン−スプレーコーティングしそして乾燥したステントを、第2工程において、1.5%PVAメタノール水溶液でスプレーコーティングする。次いで、それを乾燥する。
【0286】
(実施例3B:ラパマイシンおよびシクロスポリンAを用いたステントのスプレーコーティング)
浄化された非拡張ステントを、細い金属棒に水平につるし、回転フィード装置の回転軸に差し込み、そして28r/分で回転する。ステントをこのようにステントの内側が棒に接触しないように固定し、そしてクロロホルム中の2:0.5の比のラパマイシンおよびシクロスポリンAの2%スプレー溶液でスプレーする。次いで、それらを一晩中乾燥する。
【0287】
(実施例4:2層にラパマイシンおよびパクリタキセルを用いたステントのスプレーコーティング)
浄化された非拡張ステントを、クロロホルム中のパクリタキセルの0.8%スプレー溶液でスプレーする。次いで、ステントを室温で乾燥する。第2スプレープロセスでは、実施例1の方法を用いる。
【0288】
(実施例5:生分解性または生物学的に安定なポリマーおよびラパマイシンまたはラパマイシンを含む活性薬剤の組み合わせを用いたステントのスプレーコーティング)
スプレー溶液:145.2mgのPLGAまたはポリスルホンおよび48.4mgのラパマイシンまたは対応する活性薬剤の組み合わせの33%スプレー溶液(ラパマイシン(20%〜90%量)とパクリタキセル、シクロスポリンA、サリドマイド、ファスジルなどのような1以上の他の活性薬剤とを含む)を、クロロホルムで22gにする。このスプレー溶液を、既に記載されているようにステントに付与する。
【0289】
利用されるステントは、むき出しのステント、血液適合性コーティングステント、および/またはスプレー法またはディッピング法によって活性薬剤層でコーティングされたステントであり得る。実施例1および3の純粋な活性薬剤層または活性薬剤の組み合わせを、必要に応じてこのポリマー層上に付与し得る。
【0290】
(実施例6:層において異なる濃度の活性薬剤を有する、生分解性ポリマーおよびラパマイシンまたはラパマイシンを含む活性薬剤の組み合わせを用いた2層システム)
溶液1:25%のラパマイシンまたは1以上の活性薬剤との組み合わせおよびPLGAをクロロホルムまたは必要に応じて酢酸エチル中に含む溶液(0.8%溶液)
溶液2:35%のラパマイシンまたは1以上の活性薬剤との組み合わせおよびPLGAをクロロホルムまたは必要に応じて酢酸エチル中に含む溶液(0.8%溶液)
【0291】
ステントは、むき出しのステントまたは血液適合性コーティングステントのいずれかであり、そしてディッピング法またはスプレー法によって、ラパマイシンの純粋な活性薬剤層、他の活性薬剤との組み合わせ、またはスラパマイシンを含まない活性薬剤層を既に有し得る。また、純粋な活性薬剤層を、2つのポリマー層間におよび/またはトップコートとしてスプレー法またはディッピング法で付与し得る。
【0292】
(実施例7:ベースコートとして生物学的に安定なポリマーおよびトップコートとして生分解性ポリマーおよびラパマイシンまたはラパマイシンを含む活性薬剤の組み合わせを用いた2層システム)
PS溶液:176mgのポリエーテルスルホンを秤量し、そしてクロロホルムで20gにする(0.88%溶液)
PLGA溶液:35%のラパマイシンまたは1以上の活性薬剤との組み合わせ(少なくとも20%のラパマイシン含有量)およびPLGAの溶液(0.8%溶液)
【0293】
ここでもまた、むき出しのステントまたは血液適合性コーティングステントを用いる。第1層の乾燥後、生分解性ポリマー層を付与し得、血管ステントへの標的適用を可能にするスプレー法およびピペッティング法が好ましい。ここでもまた、活性薬剤を、スプレー法、ディッピング法、またはピペッティング法によって、さらなる層として2つのポリマー層間および/または表面上にさらに付与し得る。
【0294】
(実施例8:細孔形成剤(またはチャネル形成剤)として高含有量のヒドロゲル(PVP、シリコン、ハイドロソーム、アルギネート、ペプチド、グリコサミノグリカン)を有する生物学的に安定なまたは生分解性ポリマーを用いたステントのコーティング)
ラパマイシン(または活性薬剤の組み合わせ、35質量%)を、ポリスルホンおよびヒドロゲルと共に、クロロホルムに溶解し、8%のヒドロゲルを含む溶液を形成する。この溶液を上記実施例のようにステントに付与する。ポリマー溶液の総濃度は、最適なスプレー挙動を達成するため0.9%以下にすべきである。ディッピング法では、溶液は、30%以上のポリマー含有量を有さないようにすべきである。ラパマイシン負荷はまた、既にコーティングされたステントを活性薬剤の溶液(2%)に続けてディッピングによっても行われ得る。
【0295】
実施例8a)ラパマイシン無添加のポリスルホン/PVPスプレー溶液
24mgのPSおよび2.4mgのPVPを秤量し、そしてクロロホルムで3gにする
→0.80%PS、0.08%PVP
【0296】
実施例8b)ラパマイシン添加のポリスルホン/PVPスプレー溶液
18.2mgのPS、14.1mgのラパマイシン、および3.2mgのPVPを秤量し、そしてクロロホルムで4gにする
→0.45%PS、0.35%ラパマイシン、0.08%PVP
【0297】
(実施例9:ステントの共有結合性の血液適合性コーティング)
a)脱硫酸化再アセチル化ヘパリンの調製
100mlのアンバーライトIR−122陽イオン交換樹脂を、2cmの直径を有するカラムに充填し、400mlの3MのHClでH形態に変換し、そして溶出液が塩化物を含まずpHが中性になるまで、蒸留水で洗浄した。1gのヘパリンナトリウムを10mlの水に溶解し、陽イオン交換カラムに入れ、そして400mlの水で溶出した。溶出液を0.7gのピリジンを含む容器に滴下させ、次いでpH6までピリジンを滴下し、そして凍結乾燥した。
【0298】
0.9gのヘパリンピリジニウム塩を、還流冷却器を有する丸底フラスコ内の90mlのDMSO/1,4−ジオキサン/メタノール6/3/1(v/v/v)の混合物に添加し、そして90℃で24時間加熱した。次いで、823mgの塩化ピリジニウムを添加し、そして90℃への加熱を、さらに70時間行った。次いで、100mlの水で希釈を行い、そして希苛性ソーダを用いてpH9まで滴下を行った。脱硫酸化ヘパリンを、水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0299】
100mgの脱硫酸化ヘパリンを10mlの水に溶解し、0℃に冷却し、そして撹拌下で1.5mlのメタノールと混合した。溶液に、4mlのDowex1×4陰イオン交換樹脂(OH形態)および次いで150μlの無水酢酸を添加し、そして4℃で2時間撹拌した。その後、樹脂をろ過し、そして溶液を水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0300】
b)N−カルボキシメチル化、特にN−アセチル化キトサン
150mlの0.1NのHClに、2gのキトサンを溶解し、窒素、還流下で24時間沸騰した。室温まで冷却後、溶液のpHを2NのNaOHで5.8に調節した。溶液を脱塩水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0301】
このように部分的に加水分解された1gのキトサンを、100mlの1%酢酸に溶解した。100mlのメタノールを添加後、30mlのメタノールに溶解させた605μlの無水酢酸を添加し、そして室温で40分間撹拌した。生成物を、140mlのメタノールおよび60mlの25%NH溶液の混合物に注ぐことによって沈殿させた。それをろ過し、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で一晩中乾燥した。
【0302】
部分的に加水分解および部分的にN−アセチル化された1gのキトサンを、50mlの水に懸濁した。0.57gのグリオキシル酸一水和物の添加後、キトサン誘導体を次の45分以内に溶解した。溶液のpH値を、2NのNaOHで12に調節した。できるだけ水を含まない0.4gの水素化シアノホウ素ナトリウム溶液を添加し、そして45分間撹拌した。生成物を、400mlのエタノールに沈殿させ、ろ過し、エタノールで洗浄し、そして真空下で一晩中乾燥した。
【0303】
c)脱硫酸化N−プロピオニル化ヘパリンの調製
100mlのアンバーライトIR−122陽イオン交換樹脂を、2cmの直径を有するカラムに充填し、400mlの3MのHClでH形態に変換し、そして溶出液が塩化物を含まずpHが中性になるまで、蒸留水で洗浄した。1gのヘパリンナトリウムを10mlの水に溶解し、陽イオン交換カラムに入れ、そして400mlの水で溶出した。溶出液を0.7gのピリジンを含む容器に滴下させ、次いでpH6までピリジンを滴下し、そして凍結乾燥した。
【0304】
0.9gのヘパリンピリジニウム塩を、還流冷却器を有する丸底フラスコ内の90mlのDMSO/1,4−ジオキサン/メタノール6/3/1(v/v/v)の混合物に添加し、そして90℃で24時間加熱した。次いで、823mgの塩化ピリジニウムを添加し、そして90℃への加熱を、さらに70時間行った。次いで、100mlの水で希釈を行い、そして希苛性ソーダを用いてpH9まで滴下を行った。脱硫酸化ヘパリンを、水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0305】
100mgの脱硫酸化ヘパリンを10mlの水に溶解し、0℃に冷却し、そして撹拌下で1.5mlのメタノールと混合した。溶液に、4mlのDowex1×4陰イオン交換樹脂(OH形態)および次いで192μlの無水プロピオン酸を添加し、そして4℃で2時間撹拌した。その後、樹脂をろ過し、そして溶液を水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0306】
d)N−カルボキシメチル化、部分N−プロピオニル化キトサン
150mlの0.1NのHClに、2gのキトサンを溶解し、窒素、還流下で24時間沸騰した。室温まで冷却後、溶液のpHを2NのNaOHで5.8に調節した。溶液を脱塩水に対して透析し、そして凍結乾燥した。
【0307】
このように部分的に加水分解された1gのキトサンを、100mlの1%酢酸に溶解した。100mlのメタノールを添加後、30mlのメタノールに溶解させた772μlの無水プロピオン酸を添加し、そして室温で40分間撹拌した。生成物を、140mlのメタノールおよび60mlの25%NH溶液の混合物を注ぐことによって沈殿させた。それをろ過し、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で一晩中乾燥した。
【0308】
部分的に加水分解および部分的にN−アセチル化された1gのキトサンを、50mlの水に懸濁した。0.57gのグリオキシル酸一水和物の添加後、キトサン誘導体を次の45分以内に溶解した。溶液のpH値を、2NのNaOHで12に調節した。できるだけ水を含まない0.4gの水素化シアノホウ素ナトリウム溶液を添加し、そして45分間撹拌した。生成物を、400mlのエタノールに沈殿させ、ろ過し、エタノールで洗浄し、そして真空下で一晩中乾燥した。
【0309】
(実施例10:ステントの共有結合性の血液適合性コーティング)
医療用ステンレス鋼LVM316で作製された非拡張ステントを、アセトンおよびエタノールで、15分間超音波浴中で脱脂し、そして乾燥炉中で100℃にて乾燥させた。次いで、それらを、エタノール/水混合物(50:50(v/v))中の3−アミノプロピルトリエトキシシランの2%溶液に5分間浸漬し、そして100℃で乾燥させた。次いで、ステントを純水で洗浄した。
【0310】
3mgの実施例10の血液適合性物質(例えば、脱硫酸化および再アセチル化ヘパリン)を、4℃で30mlの0.1MのMES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)pH4.75に溶解し、そして30mgのN−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メチル−p−トルエンスルホネートと混合した。10個のステントを、この溶液中で4℃にて15時間撹拌した。次いで、それらを水、4MのNaCl溶液および水で、それぞれ2時間すすいだ。
【0311】
(実施例11:HPLCによるコーティングステントのグルコサミン含有量の測定)
加水分解:コーティングステントを、小さな加水分解チューブに移し、そして室温で正確に1分間3mlの3MのHClと共に放置した。金属サンプルを除去し、そして密閉後、チューブを乾燥炉で100℃にて16時間インキュベートした。次いで、それらを冷却させ、乾燥するまで3回蒸発させ、1mlの脱気ろ過水中に移し、HPLCで加水分解標準に対して測定した。
【0312】
【表6】

【0313】
(実施例12:触媒および合成ポリマー、特にポリビニルピロリドンの添加および活性薬剤の続く添加下のアマニ油を用いるステントの生体適合性コーティング)
a)医療用ステンレス鋼LVM316の非拡張ステントを、アセトンおよびエタノールで、15分間超音波浴中で脱脂し、そして乾燥炉中で100℃にて乾燥させた。次いで、ステントを脱塩水で一晩中洗浄した。
【0314】
約10mgのKMnOを500μlの水に溶解し、そしてできるだけ多くのPVPを添加する。混合物を、ポリプロピレン基材上に薄層状に広げ、そして室温で一晩中乾燥させる。
【0315】
この脆弱な混合物から2.5mgを1mlのクロロホルムに溶解し、得られた溶液を、10.5μlのアマニ油を添加した後、エアブラシスプレーピストル(Harder & Steenbeck製のEVOLUTION)で、18mmLVMステンレス鋼ステントを回転しながら6cmの距離からスプレーする。その後、コーティングステントを80℃で24時間保管した。
【0316】
b)ディッピング法でのコーティングステントへの活性薬剤の添加
実施例18a)のコーティングステントを、エタノール1ml中の800μgのラパマイシンの溶液に浸漬し、そして膨潤させた。膨潤プロセス終了後、ステントを取り出し、そして乾燥した。
【0317】
(実施例13:アマニ油およびラパマイシンを用いたステントの生物適合性コーティング)
医療用ステンレス鋼LVM316の非拡張ステントを、アセトンおよびエタノールで、15分間超音波浴中で脱脂し、そして乾燥炉中で100℃にて乾燥させた。次いで、ステントを脱塩水で一晩中洗浄した。
【0318】
アマニ油およびラパマイシン(70:30)を、クロロホルムに1:1の混合割合で溶解し、次いで、連続的に回転しているステントにスプレーする。穏やかな気流でクロロホルムを蒸発後、ステントを乾燥炉で80℃にて保管する。平均コーティング質量は、0.15mg±0.02mgである。
【0319】
(実施例14:アマニ油および合成ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)のエタノールスプレー溶液を用いたラパマイシン溶出ステントの生物適合性コーティング)
前の実施例で既に記載されたようにステントを洗浄後、0.25%のアマニ油および0.1%のPVPを含むエタノールスプレー溶液を調製し、そしてステントを軸の周りに回転させて、スプレーピストルで連続的にスプレーする。次いで、70℃で一晩乾燥する。平均コーティング質量は、0.2mg±0.02mgである。
【0320】
ラパマイシンまたはラパマイシンとの活性薬剤の組み合わせを、少なくとも20質量%のラパマイシン量で、その後に膨潤によって組み込むかまたはスプレー溶液に混合するかのいずれかである。
【0321】
(実施例15:再狭窄抑制活性薬剤を添加した2層システムにおけるアマニ油および合成ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)を用いたステントの生物適合性コーティング)
ステントを洗浄後、クロロホルムに溶解させた0.35質量%のラパマイシンの第1層をステントにスプレーする。室温でのこの層の乾燥後、0.25%アマニ油および0.1%PVPを含むクロロホルム溶液の第2層を、スプレーする。
【0322】
(実施例16:アマニ油およびα−リノレン酸を用いたステントの生物適合性コーティング)
上記のように、アセトンおよびエタノールでステントを洗浄後、0.20%のアマニ油および0.5%のα−リノレン酸を含むエタノール溶解混合物を調製し、そしてステントに連続的にスプレーする。
【0323】
(実施例17:ディップコーティングによる食道ステントの完全なコーティング)
a)ステント支柱のプレコーティング
ステントを回転体の棒に固定し、そしてピストルをゆっくりと上下に動かすことによって、非常にゆっくりとした回転速度で1%ポリウレタン溶液をスプレーする。スプレーするにつれて、ステントはつや消しの灰色となり、そのため視覚的にスプレー制御を行い得る。端を正確にスプレーすることが特に重要であり、さらに円周方向にスプレーすることによって確実にし得る。次いで、ステントを乾燥させる。
【0324】
b)a)によってスプレーされたステントの完全なコーティング
ポリウレタンおよび35質量%のラパマイシン/テルグリド(4:1)を、THFに溶解し、14%溶液を得る。実施例18a)によってプレコートされたステントを、適切な型に注意深く取り付ける。ステントが取り付けられた道具を、浮き上がる気泡が見られ得るまで、最初に頭を純THFに浸漬する。次いで、ステントを、14%ポリウレタン溶液にゆっくり浸漬する。15秒後、中心をゆっくり除去し、そしてすぐに水平方向に置き、そして中心を回転し、PUをステント上に均一に分配し、そして乾燥させる。
【0325】
一度、PUは運転を止めると、中心をドラフト下で乾燥させ、次いで、乾燥炉中で45分間、95℃に調節する。冷却後、ステントを道具から取り外すため、温かい0.3%SDS溶液に浸漬する。流水下の浄化そして0.5mのNaOHでのすすぎ後、流水下およびDI水中で完全にすすぐ。
【0326】
(実施例18:動脈瘤治療のためのニューロンステントの部分コーティング)
溶液:20mlのN−メチル−2−ピロリドンに溶解した3.2mgのPUおよび33質量%ラパマイシン
【0327】
スプレーコーティングステントを、適切な自由に回転可能な型に滑らかな表面と完全に接触するように押し入れる。コーティングの付与を少なくとも2工程で行う。溶液をブラシの毛に取り、それをコーティングされるべき面に面が溶液で完全に覆われるまで付与する。選択されるコーティングされるべき面の各々が所望のコーティング厚さで満たされれば、ステントを90℃で乾燥する。冷却後、ステントを型から取り外す。
【0328】
(実施例19:スプレー法によるラパマイシンを用いた折りたたみバルーンのコーティング)
アセトンでバルーンを注意深く予備湿潤した後、バルーンを、長手軸方向回転中に酢酸エチル中のラパマイシン溶液で連続的にスプレーし、そして乾燥する。回転中に折り目(またはひだまたはウイング)が開くのを防ぐため、バルーンを真空下に置く。
【0329】
(実施例20:ピペッティング法によるラパマイシンを用いた折りたたみバルーンの完全コーティング)
折りたたみバルーンを、回転軸に対して水平方向に固定する。回転中の折り目が開くのを防ぐため、バルーンを真空下に置く。そして、段階的に、エタノール溶解活性薬剤を、注射器の先端部の伸長部としてテフロン(登録商標)製のカニューレを有する折り目の外側および内側の長手軸方向に沿って、連続的なラパマイシン層が観察され得るまで付与する。次いで、バルーンを乾燥する。
【0330】
好ましくは、細胞内への活性薬剤の浸透性を促進するアジュバントを、活性薬剤溶液に添加する。例えば、150mgのラパマイシン、4.5mlのアセトン、100μlのイヨードプロミド、および450μlのエタノールを混合する。
【0331】
(実施例21:インビトロモデルでの拡張による活性薬剤の損失の測定)
ラパマイシンおよびアジュバントでコーティングした折りたたみバルーンをシリコンホースで拡張し、PBS緩衝液で満たす。次いで、バルーンに残存するコーティングを、規定量のアセトニトリルに溶解し、そしてラパマイシン含有量を、HPLCにより定量する。さらに、ホースの壁に付着したラパマイシンの量をアセトニトリルで落として、定量し、緩衝液中の量もまた測定する。
【0332】
(実施例22:ピペッティング法によるラパマイシンを用いた折りたたみバルーン(またはウイングバルーン)の部分コーティング)
折りたたみバルーン(またはウイングバルーン)を、回転軸の水平位置に固定し、満たされる折り目が常に上側になるようにし、そして折り目が開くのを防止するために、真空にされる。1%ラパマイシンの低粘性のアルコール溶液を調製する。溶液は、毛細管力によって、溶液が折りたたみバルーン(またはウイングバルーン)の折り目にそれ自体を浸み込ませ得るような低粘性である。折り目の端に接触する毛細管によって、折り目の内部が毛細管力によって完全に満たされるまで、アルコール溶液を折り目に流す。折り目の内容を乾燥させ、バルーンを回転し、そして次の折り目を満たす。各折り目(またはしわ)を、一度だけ満たす。
【0333】
(実施例23)
折り目にのみ活性薬剤を負荷した実施例22のバルーンに、スプレー法によって、バリアとしてのポリマー外層を、第2工程でコーティングし得る。ポリマースプレー溶液の濃度を、できるだけ低く維持しなければならない。なぜなら、乾燥後に得られるポリマー層が、連続的な開放を妨げないためである。例えば、既に0.5%PVP溶液が適切である。
【0334】
(実施例24:バルーンに上の波形のステントが存在する膨張したカテーテルバルーンの専ら折り目でのコーティング)
a)クロロホルム中の35%のラパマイシンまたは活性薬剤の組み合わせ(例えば、ラパマイシンとサリドマイドまたはサリドマイド/パクリタキセルとの混合物)の溶液を、ピペッティング装置によって回転可能に取り付けられた折りたたみバルーン(またはウイングバルーン)の折り目に、折り目が連続的に満たされていると視認できるまで付与する。次いで、折りたたみバルーンを、ゆっくり回転させながら室温で乾燥する。バルーン上に波形のステントまたは薬剤溶出ステントの存在は、このプロセスを妨げない。
【0335】
b)生物学的に安定なまたは生分解性のポリマー、あるいは両方の組み合わせ(前の実施例を参照のこと)および少なくとも30質量%のラパマイシンを含む活性薬剤の組み合わせを、溶液の全活性薬剤の量が30質量%となるようにクロロホルムに溶解する。全溶液は0.9%である。この溶液をまた、ディッピング法またはスプレー法によって付与し得る。ここでもまた、ステントは既に存在し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルバルーンのコーティングのための、少なくとも1つの油または脂肪または脂質またはリポイドまたはワックスまたはアジュバントまたはキャリアマトリックスと組み合わせた、抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の活性薬剤の使用。
【請求項2】
前記油、脂肪、脂質、リポイドまたはワックスが、以下の一般式:
【化1】

(R、R’、R”、R、およびR**は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル基、3〜20個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール基であるか、または官能基であり、そして好ましくは以下の基を表し:−H、−OH、−OCH、−OC、−OC、−O−シクロ−C、−OCH(CH、−OC(CH、−OC、−OPh、−OCH−Ph、−OCPh、−SH、−SCH、−SC、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH、−COC、−COC、−CO−シクロ−C、−COCH(CH、−COC(CH、−COOH、−COOCH、−COOC、−COOC、−COO−シクロ−C、−COOCH(CH、−COOC(CH、−OOC−CH、−OOC−C、−OOC−C、−OOC−シクロ−C、−OOC−CH(CH、−OOC−C(CH、−CONH、−CONHCH、−CONHC、−CONHC、−CON(CH、−CON(C、−CON(C、−NH、−NHCH、−NHC、−NHC、−NH−シクロ−C、−NHCH(CH、−NHC(CH、−N(CH、−N(C、−N(C、−N(シクロ−C、−N[CH(CH、−N[C(CH、−SOCH、−SOC、−SOC、−SOCH、−SO、−SO、−SOH、−SOCH、−SO、−SO、−OCF、−OC、−O−COOCH、−O−COOC、−O−COOC、−O−COO−シクロ−C、−O−COOCH(CH、−O−COOC(CH、−NH−CO−NH、−NH−CO−NHCH、−NH−CO−NHC、−NH−CO−N(CH、−NH−CO−N(C、−O−CO−NH、−O−CO−NHCH、−O−CO−NHC、−O−CO−NHC、−O−CO−N(CH、−O−CO−N(C、−O−CO−OCH、−O−CO−OC、−O−CO−OC、−O−CO−O−シクロ−C、−O−CO−OCH(CH、−O−CO−OC(CH、−CHF、−CHF、−CF、−CHCl、−CHBr、−CHI、−CH−CHF、−CH−CHF、−CH−CF、−CH−CHCl、−CH−CHBr、−CH−CHI、−CH、−C、−C、−シクロ−C、−CH(CH、−C(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH(CH)−C、−Ph、−CH−Ph、−CPh、−CH=CH、−CH−CH=CH、−C(CH)=CH、−CH=CH−CH、−C−CH=CH、−CH=C(CH、−C≡CH、−C≡C−CH、−CH−C≡CH;
Xは、エステル基またはアミド基であり、そして特に、−O−アルキル、−O−CO−アルキル、−O−CO−O−アルキル、−O−CO−NH−アルキル、−O−CO−N−ジアルキル、−CO−NH−アルキル、−CO−N−ジアルキル、−CO−O−アルキル、−CO−OH、−OHであり;
m、n、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して、0〜20の整数である)
によって表される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記キャリアマトリックスが脂肪酸である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記脂肪酸が、シス−9−テトラデセン酸、シス−9−ヘキサデセン酸、シス−6−オクタデセン酸、シス−9−オクタデセン酸、シス−11−オクタデセン酸、シス−9−エイコセン酸、シス−11−エイコセン酸、シス−13−ドコセン酸、シス−15−テトラコセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、8,11,14,17−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、タキソール酸、ピノレン酸、シアドン酸、6−オクタデシン酸、t11−オクタデセン−9−イン酸、9−オクタデシン酸、6−オクタデセン−9−イン酸、t10−ヘプタデセン−8−イン酸、9−オクタデセン−12−イン酸、t7,t11−オクタデカジエン−9−イン酸、t8,t10−オクタデカジエン−12−イン酸、および5,8,11,14−エイコサテトライン酸からなる群より選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アジュバントが、血管拡張剤(キニン(例えば、ブラジキニン、カリジン)、ヒスタミン、またはNOS−シンターゼ(L−アルギニンから血管拡張性NOを放出する)のような内因性物質を含む);植物由来の物質(例えば、イチョウ抽出物);DMSO;キサントン;フラボノイド;テルペノイド;動植物染料;食品着色剤;NO放出物質(例えば、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN));造影剤および造影剤類似体;フタル酸ビブチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチルおよびそれらのアセチル化誘導体、2−ピロリドン、安息香酸ベンジルエステル、フタル酸ジエチル、トリアセチン、ジエタノールアミン、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸イソプロピルなどの物質、からなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の少なくとも1つの活性薬剤ならびに少なくとも1つの油または脂肪または脂質またはリポイドまたはワックスまたはアジュバントまたはキャリアマトリックスでコーティングされた、カテーテルバルーン。
【請求項7】
前記油、脂肪、脂質、リポイドまたはワックスが、以下の一般式:
【化2】

(R、R’、R”、R、およびR**は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル基、3〜20個の炭素原子を有するアリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール基であるか、または官能基であり、そして好ましくは以下の基を表し:−H、−OH、−OCH、−OC、−OC、−O−シクロ−C、−OCH(CH、−OC(CH、−OC、−OPh、−OCH−Ph、−OCPh、−SH、−SCH、−SC、−NO、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH、−COC、−COC、−CO−シクロ−C、−COCH(CH、−COC(CH、−COOH、−COOCH、−COOC、−COOC、−COO−シクロ−C、−COOCH(CH、−COOC(CH、−OOC−CH、−OOC−C、−OOC−C、−OOC−シクロ−C、−OOC−CH(CH、−OOC−C(CH、−CONH、−CONHCH、−CONHC、−CONHC、−CON(CH、−CON(C、−CON(C、−NH、−NHCH、−NHC、−NHC、−NH−シクロ−C、−NHCH(CH、−NHC(CH、−N(CH、−N(C、−N(C、−N(シクロ−C、−N[CH(CH、−N[C(CH、−SOCH、−SOC、−SOC、−SOCH、−SO、−SO、−SOH、−SOCH、−SO、−SO、−OCF、−OC、−O−COOCH、−O−COOC、−O−COOC、−O−COO−シクロ−C、−O−COOCH(CH、−O−COOC(CH、−NH−CO−NH、−NH−CO−NHCH、−NH−CO−NHC、−NH−CO−N(CH、−NH−CO−N(C、−O−CO−NH、−O−CO−NHCH、−O−CO−NHC、−O−CO−NHC、−O−CO−N(CH、−O−CO−N(C、−O−CO−OCH、−O−CO−OC、−O−CO−OC、−O−CO−O−シクロ−C、−O−CO−OCH(CH、−O−CO−OC(CH、−CHF、−CHF、−CF、−CHCl、−CHBr、−CHI、−CH−CHF、−CH−CHF、−CH−CF、−CH−CHCl、−CH−CHBr、−CH−CHI、−CH、−C、−C、−シクロ−C、−CH(CH、−C(CH、−C、−CH−CH(CH、−CH(CH)−C、−Ph、−CH−Ph、−CPh、−CH=CH、−CH−CH=CH、−C(CH)=CH、−CH=CH−CH、−C−CH=CH、−CH=C(CH、−C≡CH、−C≡C−CH、−CH−C≡CH;
Xは、エステル基またはアミド基であり、そして特に、−O−アルキル、−O−CO−アルキル、−O−CO−O−アルキル、−O−CO−NH−アルキル、−O−CO−N−ジアルキル、−CO−NH−アルキル、−CO−N−ジアルキル、−CO−O−アルキル、−CO−OH、−OHであり;
m、n、p、q、r、s、およびtは、それぞれ独立して、0〜20の整数である)
によって表される、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項8】
前記キャリアマトリックスが脂肪酸である、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項9】
前記脂肪酸が、シス−9−テトラデセン酸、シス−9−ヘキサデセン酸、シス−6−オクタデセン酸、シス−9−オクタデセン酸、シス−11−オクタデセン酸、シス−9−エイコセン酸、シス−11−エイコセン酸、シス−13−ドコセン酸、シス−15−テトラコセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、8,11,14,17−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、タキソール酸、ピノレン酸、シアドン酸、6−オクタデシン酸、t11−オクタデセン−9−イン酸、9−オクタデシン酸、6−オクタデセン−9−イン酸、t10−ヘプタデセン−8−イン酸、9−オクタデセン−12−イン酸、t7,t11−オクタデカジエン−9−イン酸、t8,t10−オクタデカジエン−12−イン酸、および5,8,11,14−エイコサテトライン酸からなる群より選択される、請求項8に記載のカテーテルバルーン。
【請求項10】
前記アジュバントが、血管拡張剤(キニン(例えば、ブラジキニン、カリジン)、ヒスタミン、またはNOS−シンターゼ(L−アルギニンから血管拡張性NOを放出する)のような内因性物質を含む);植物由来の物質(例えば、イチョウ抽出物);DMSO;キサントン;フラボノイド;テルペノイド;動植物染料;食品着色剤;NO放出物質(例えば、ペンタエリスリトールテトラニトレート(PETN));造影剤および造影剤類似体;フタル酸ビブチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチルおよびそれらのアセチル化誘導体、2−ピロリドン、安息香酸ベンジルエステル、フタル酸ジエチル、トリアセチン、ジエタノールアミン、パルミチン酸イソプロピル、およびミリスチン酸イソプロピルなどの物質、からなる群より選択される、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項11】
前記抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の少なくとも1つの活性薬剤がラパマイシンである、請求項6から10のいずれかに記載のカテーテルバルーン。
【請求項12】
波形にされているステントを伴うカテーテルバルーンであって、純粋なパクリタキセルの不規則な層が該ステントおよび該バルーンに存在し、該ステントが、ラパマイシンを含む生物学的に安定なポリマーでコーティングされている、カテーテルバルーン。
【請求項13】
複数の支柱を含む波形にされているステントを伴うカテーテルバルーンであって、該ステント支柱間および該バルーンと該ステントとの間に純粋なパクリタキセルを有し、この第1のパクリタキセルコーティングが、活性薬剤ラパマイシンを含む、生分解性ポリマーおよび/または極性の親水性ポリマーで被覆されている、カテーテルバルーン。
【請求項14】
ラパマイシンならびに抗増殖剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および/または抗血栓剤の少なくとも1つのさらなる活性薬剤でコーティングされ、該さらなる活性薬剤が、アスピリン、パクリタキセル、リスリド、シクロスポリンA、テルグリド、またはエポチロンである、請求項11に記載のカテーテルバルーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−200701(P2011−200701A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148906(P2011−148906)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【分割の表示】特願2009−516894(P2009−516894)の分割
【原出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(504150209)ヘモテック アーゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】Hemoteq AG
【Fターム(参考)】