説明

恒温型の水晶発振器

【課題】恒温構造の効率化を維持して高さ寸法を小さくした恒温型発振器を提供する。
【解決手段】外底面側に実装端子4を有して内底面側に金属ピン4aが立設したベース基板1と、金属ピン4aに支持されてベース基板1に面対向してセラミックよりも熱伝導性に劣るた第1基板2と、第1基板2に面対向したセラミックからなる第2基板3とを備え、第2基板3の両主面には、表面実装振動子5と、発振用素子と、温度制御素子とからなる回路素子6が配設され、温度制御素子は発熱用のチップ抵抗6b1と、表面実装振動子の動作温度を検出する温度感応素子6b2と、チップ抵抗へ電力を供給するパワートランジスタ6cを含む恒温型の水晶発振器において、第1基板2は第2基板3よりも小さい開口部9を有し、第2基板3に配設された回路素子6が開口部9内に挿入されて、第2基板3の外周部が開口部9の外表面に電気的・機械的に接続した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶振動子(以下、表面実装振動子とする)を用いた恒温型の水
晶発振器(以下、恒温型発振器とする)を技術分野とし、特に、放熱を防止して小型化に適した恒温型発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
恒温型発振器は一般には恒温槽が用いられ、水晶振動子の動作温度を一定に維持するこ
とから周波数安定度が高く(周波数偏差が概ね0.05ppm以下)、例えば光通信用とした基
地局等の通信設備に使用される。近年では、これらの通信設備でも小型化が浸透し、その
一貫として表面実装振動子が適用されつつある。このようなものの一つに本出願人による
ものがある(特許文献1)。
【0003】
(従来技術の一例、特許文献1、2)
第4図(abc)一従来例を説明する図で、同図(a)は恒温型発振器の断面図、同図(b)は表面実装振動子の底面図、同図(c)は温度制御回路の図である。
【0004】
恒温型発振器はベース基板1、第1基板2及び第2基板3を備える。ベース基板1は4角部にてリード線4が絶縁貫通した、所謂気密端子を有する金属ベースからなる。ここでは外底面側に導出したリード線4を実装端子とし、内底面側に立設したリード線4を金属ピン4aとする。
【0005】
第1基板2はガラスエポキシからなり、ベース基板1に面対向して4角部が金属ピン4aによって支持される。第2基板3はセラミックからなり、第1基板2よりも外形を小さくして面対向し、4角部が第1基板2に立設した金属ピン4bに支持される。
【0006】
第2基板3の両主面には回路素子6が配設され、回路素子6は少なくとも表面実装振動子5と、発振回路を形成する発振用素子6aと、表面実装振動子5の動作温度を一定にする温度制御素子6bとからなる。表面実装振動子5は容器本体5aに水晶片6を収容して金属カバー5bを接合して封入し、外底面には水晶片6と電気的に接続した水晶端子7aと金属カバー5bに電気的に接合したダミー端子7bを有する。
【0007】
温度制御素子6bは発熱用のチップ抵抗6b1、温度感応素子6b2、及びチップ抵抗6b1に電力を供給するパワートランジスタ6b3を少なくとも有する。ここでは、表面実装振動子5を第2基板3の上面側として発熱用のチップ抵抗6b1の複数個を下面側として対向させる。そして、温度感応素子6b2をチップ抵抗6b1の間に配置し、パワートランジスタ6b3は表面実装振動子5に隣接して配置する。
【0008】
温度制御素子6bからなる具体的な制御回路は、オペアンプ8の一方の入力端には温度感応抵抗と抵抗による温度感応電圧を、他方の入力端には抵抗による基準電圧を印加する。そして、基準電圧との基準温度差電圧をパワートランジスタ6b3のベースに印加し、発熱用チップ抵抗6b1へ直流電圧DCから電力を供給する。
【0009】
これにより、温度感応素子6b2の温度に依存した抵抗値によって発熱用チップ抵抗6b1への電力を制御し、表面実装振動子の動作温度を一定にする。この例では、表面実装振動子5のダミー端子は温度感応素子6b2に接続して、表面実装振動子5の動作温度を直接的に検出する。
【0010】
通常では、金属ベースaに金属カバー5bを接合する前に、表面実装振動子1の3次曲線となる周波数温度特性を個々に測定する。そして、表面実装振動子1の動作温度とする高温側の極小値の温度が80℃の場合には、例えば温度制御回路の抵抗Raを調整して表面実装振動子1の動作温度を80℃に設定する。さらに、発振回路の図示しない調整コンデンサによって発振周波数fを公称周波数に一致させる。このことから、抵抗Ra及び調整コンデンサ等の交換を要する調整素子6cは、例えば第2基板3の外周表面上(上面)に配設される。
【0011】
このようなものでは、第2基板3は熱伝導性を良好とするセラミックとするので、発熱用チップ抵抗6b1による伝熱効率を高める。また、第1基板2は熱伝導性に劣るガラスエポキシとするので、熱遮蔽板として機能して例えばリード線4(金属ピン)を経ての放熱を抑制する。したがって、表面実装振動子5を適用したことによって小型化を図れ、効率のよい恒温構造として、る。なお、金属カバー5bは例えば抵抗溶接によって容器本体5aに接合される。
【特許文献1】特開2005−341191号公報
【特許文献2】特開2006−311496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の恒温型発振器では、表面実装振動子5、発振用素子6a及び温度制御素子6bを配設した第2基板3は、第1基板2に立設した金属ピン4bによって支持される。したがって、第2基板3をセラミック、第1基板をガラスエポキシとして恒温構造の効率化は図れても、高さ寸法が大きくなる問題があった。
【0013】
(発明の目的)
本発明は恒温構造の効率化を維持して高さ寸法を小さくした恒温型発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように外底面側に実装端子を有して内底面側に金属ピンが立設したベース基板と、前記金属ピンに支持されて前記ベース基板に面対向してセラミックよりも熱伝導性に劣るた第1基板と、前記第1基板に面対向したセラミックからなる第2基板とを備え、前記第2基板の両主面には、少なくとも、表面実装用の水晶振動子と、前記水晶振動子とともに発振回路を形成する発振用素子と、前記水晶振動子の動作温度を一定にする温度制御素子とからなる回路素子が配設され、前記温度制御素子は発熱用のチップ抵抗と、前記水晶振動子の動作温度を検出する温度感応素子と、前記チップ抵抗へ電力を供給するパワートランジスタを含む恒温型の水晶発振器において、前記第1基板は前記第2基板よりも小さい開口部を有し、前記第2基板に配設された回路素子が前記開口部内に挿入されて、前記第2基板の外周部が前記開口部の外表面に電気的・機械的に接続した構成とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成であれば、第2基板の回路素子が第1基板2の開口部に挿入されるので、回路素子の厚み分を基本的に小さくして低背化を促進できる。そして、第1基板はセラミックよりも熱伝導性に劣るので、放熱を少なくして恒温構造の効率化を維持できる。
【0016】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記第1基板はガラスエポキシとする。これにより、第1基板をガラスエポキシとするので、第2基板のセラミックよりも熱伝導性が劣ることから、請求項1での効果を明確にする。
【0017】
同請求項3では、請求項1において、前記水晶振動子と前記発熱用のチップ抵抗とは前記第2基板の両主面間に対向して配置される。これにより、チップ抵抗からの熱が水晶振動子に効率よく伝搬される。
【0018】
同請求項4では、請求項1において、前記水晶振動子は容器本体に水晶片を収容して金属カバーを被せてなり、前記容器本体の外底面には前記水晶片と電気的に接続した水晶端子と、前記金属カバーに接続したダミー端子とを有し、前記ダミー端子は前記温度感応素子と配線路によって接続する。これにより、水晶振動子の動作温度を直接的に検出するので、温度変化に対する応答性を良好にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1図は本発明の一実施形態を説明する恒温型発振器の断面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0020】
恒温型発振器は前述したように外底面側を実装端子及び内底面側を金属ピン4aとしたリード線4を有するベース基板1としての金属ベースと、第1基板2と、表面実装振動子5及び回路素子6を搭載した第2基板3とを有し、金属カバー5bを接合して密閉封入する。
【0021】
この実施形態では、第1基板2はガラスエポキシとして中央領域に第2基板3よりも小さい開口部9を有する。第2基板3は両主面に発振用素子6a及び温度制御素子6bを含む回路素子6を有し、例えば上面には表面実装振動子5を、下面には発熱用のチップ抵抗6b1を有する。表面実装振動子5とチップ抵抗6b1とは対向して配置され、温度感応素子5b2は表面実装振動子5のダミー端子7bに接続する。
【0022】
そして、第1基板2の下面側の回路素子6は第2基板3の開口部9に挿入し、第2基板3の外周部が第1基板2の表面(上面)上に電気的・機械的に接続する。これらは、第1及び第2基板2、3の外周部に延出した図示しない配線パターンが例えば半田によって接続され、発振回路及び温度制御回路を形成する。
【0023】
このような構成であれば、第2基板3(セラミック)の下面に配置された回路素子6は、第1基板2(ガラスエポキシ)の開口部9に挿入される。したがって、回路素子6の厚み分が開口部9に吸収され、高さ寸法を基本的に小さくできる。
【0024】
そして、セラミックとした第1基板2はガラスエポキシの第2基板3に接続する。したがって、第1基板2(セラミック)を伝搬した熱は第2基板3(ガラスエポキシ)でいわば遮断される。したがって、例えばリード線4(金属ピン4a)を経由しての放熱を抑制するので、恒温構造の効率化を維持できる。
【0025】
(他の事項)
上記実施形態では表面実装振動子5を第2基板3の上面としたが、第2図に示したように、表面実装振動子5を第2基板3の下面として第1基板2の開口部9に挿入してもよい。また、ベース基板1は一対のリード線4が絶縁貫通した金属ベースを適用したが、例えば第3図に示したようにガラスエポキシやセラミック等の絶縁材からなる積層板として表面実装用とすることもできる。なお、符号4は表面実装用の実装端子であり、同4aは第1基板2を支持する金属ピンである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を説明する恒温型発振器の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する恒温型発振器の断面図である。
【図3】本発明のさらに他の例を説明する恒温型発振器の断面図である。
【図4】従来例を説明する図で、同図(a)は恒温型発振器の断面図、同図(b)は表面実装振動子の底面図、同図(c)は温度制御回路の図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ベース基板、2 第1基板、3 第2基板、4 リード線(実装端子)、4a、4b 金属ピン、5 表面実装振動子、5a 容器本体、5b 金属カバー、6 回路素子、6a 発振用素子、6b 温度制御素子、6c 調整素子、7a 水晶端子、7b ダミー端子、8 オペアンプ、9 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外底面側に実装端子を有して内底面側に金属ピンが立設したベース基板と、前記金属ピンに支持されて前記ベース基板に面対向してセラミックよりも熱伝導性に劣る第1基板と、前記第1基板に面対向したセラミックからなる第2基板とを備え、
前記第2基板の両主面には、少なくとも、表面実装用の水晶振動子と、前記水晶振動子とともに発振回路を形成する発振用素子と、前記水晶振動子の動作温度を一定にする温度制御素子とからなる回路素子が配設され、
前記温度制御素子は発熱用のチップ抵抗と、前記水晶振動子の動作温度を検出する温度感応素子と、前記チップ抵抗へ電力を供給するパワートランジスタを含む恒温型の水晶発振器において、
前記第1基板は前記第2基板よりも小さい開口部を有し、前記第2基板に配設された回路素子が前記開口部内に挿入されて、前記第2基板の外周部が前記第1開口部の外表面に電気的・機械的に接続したことを特徴とする恒温型の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記第1板はガラスエポキシとした恒温型の水晶発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記水晶振動子と前記発熱用のチップ抵抗とは前記第2基板の両主面間に対向して配置された恒温型の水晶発振器。
【請求項4】
請求項1において、前記水晶振動子は容器本体に水晶片を収容して金属カバーを被せてなり、前記容器本体の外底面には前記水晶片と電気的に接続した水晶端子と、前記金属カバーに接続したダミー端子とを有し、前記ダミー端子は前記温度感応素子と配線路によって接続した恒温型の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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