説明

恒温型圧電発振器

【課題】感温素子および加熱手段を用いて周囲の温度変化に対する周波数の安定化を図る
ようにした恒温型圧電発振器を提供する。
【解決手段】恒温型水晶発振器1は、複数の金属リード51からなるリードフレームに、
水晶振動子30と、この水晶振動子30を所定の温度に保持するために加熱する加熱用素
子40と、水晶振動子30近傍の温度を検知する感温素子45と、が接合され、それら水
晶振動子30、加熱用素子40、感温素子45が、トランスファーモールド法を用いて一
塊のモールド樹脂91により樹脂封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数制御デバイスなどとして使用される圧電発振器に関し、特に、感温素
子などの温度制御用素子や加熱用素子などを用いて周囲の温度変化に対する周波数の安定
化を図れるようにした恒温型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器や伝送通信機器に用いる周波数制御デバイスである水晶発振器などの圧
電発振器として、周辺環境の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力するこ
とが可能な恒温型圧電発振器が従来から知られている。また、近年、これらの分野では、
各種機器に対して小型、軽量であることが求められてきているため、それに伴って恒温型
圧電発振器についても小型、軽量化が市場から求められている。
このような要求に応える小型の恒温型圧電発振器として、例えば、特許文献1に、パッ
ケージ内に設けた基板に、圧電振動子、加熱用素子、感温素子、および発振回路を配置し
たパッケージタイプの恒温型圧電発振器が紹介されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧電発振器(水晶発振器)は、圧電発振器用のパッケージ内に設け
られた基板の例えば周縁に沿って加熱用素子(加熱手段)を設け、その加熱用素子により
囲まれる領域に、圧電振動子、感温素子、および集積回路からなる発振回路部などが配置
されている。
ここで、加熱用素子としては、例えば帯状の抵抗発熱層からなるヒーターが用いられ、
また、圧電振動子として、圧電振動子用のパッケージ内に圧電振動片が封止された所謂S
MD(Surface Mount Devise:表面実装部品)タイプの圧電振動子(水晶振動子)が用い
られて、それぞれ小型、薄型化に効果を奏している。そして、圧電発振器用のパッケージ
の上側に金属からなるリッド(蓋体)が接合されることにより、圧電発振器用のパッケー
ジ内に圧電振動子が封止された恒温型圧電発振器が構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−14208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の恒温型圧電発振器では、基板上に配置された圧電振
動子と、その圧電振動子の温度を一定の温度に保持するように加温する加熱用素子とが、
周囲の雰囲気に曝されているので、周辺の温度の影響を受け易い。
また、加熱用素子から基板を介して圧電振動子に熱を伝えて加熱する態様となっている
ことから加熱効率がよくないので、消費電力が増大したり、安定した温度制御ができない
虞があった。
また、動作時に発熱を伴う発振回路部などの回路素子が圧電振動子の近傍に配置されて
いるので、発振回路部などの回路素子から出る熱が圧電振動子の温度制御に悪影響を及ぼ
したり、逆に、圧電振動子とそれを加熱する加熱体の温度が発振回路部などの動作に悪影
響を及ぼす虞があった。
さらに、小型のSMDタイプの水晶振動子を用いた恒温型圧電発振器においては、容積
の大きい圧電振動子では問題にならなかった熱的なダメージによる周波数ずれなどが問題
になる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
〔適用例1〕本適用例にかかる恒温型圧電発振器は、基板と、前記基板に接合され、圧
電振動片がパッケージ内に接合されて封止された圧電振動子と、前記圧電振動子を加熱す
る加熱用素子と、前記圧電振動子近傍に配置された感温素子と、を有し、前記圧電振動子
、前記加熱用素子、および前記感温素子が、一塊のモールド樹脂内に樹脂封止されている
ことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、圧電振動子と、その圧電振動子を一定の温度に加温するために用い
られる加熱用素子および感温素子とが、モールド樹脂により一体に覆われた一つの加熱体
が形成される。このモールド樹脂により覆われた加熱体は、モールド樹脂が無い場合に比
して熱容量が大きく確保されるので、効率的に、且つ、安定した圧電振動子の加温が可能
になる。したがって、圧電振動子を低消費電力にて加温することが可能で、周囲の温度変
化に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型の恒温型圧電発振器を提供する
ことができる。
【0009】
〔適用例2〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記基板として複数の金属リー
ドからなるリードフレームが用いられ、トランスファーモールド型を用いて前記モールド
樹脂による樹脂封止が施されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、周辺の温度に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型
の恒温型圧電発振器を、多数個一括して効率よく製造することができる。
【0011】
〔適用例3〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記圧電振動子と前記加熱用素
子とが、前記リードフレームの同じ金属リードの両面にそれぞれ配置されていることを特
徴とする。
【0012】
この構成によれば、圧電振動子と加熱用素子とが、リードフレームの一つの金属リード
を介して縦配置されるので、加熱用素子からの熱が圧電振動子に伝導されやすくなること
によって効率のよい加熱が可能になるとともに、恒温型圧電発振器の特に平面サイズの小
型化を図ることができる。
【0013】
〔適用例4〕本適用例にかかる恒温型圧電発振器は、基板と、前記基板に接合され、圧
電振動片がパッケージ内に接合されて封止された圧電振動子と、前記圧電振動子を加熱す
る加熱用素子と、前記圧電振動子近傍に配置された感温素子と、前記加熱用素子および前
記感温素子を制御することにより前記圧電振動子を所望の温度に加熱制御する温度制御回
路部と、発振回路部と、を有し、前記基板の基材が樹脂などの非金属材料からなり、前記
基板の一方の面側に、前記圧電振動子、前記加熱用素子、および前記感温素子が配置され
、前記基板の他方の面側に、前記温度制御回路部および前記発振回路部が配置され、前記
圧電振動子、前記加熱用素子、および前記感温素子が、一塊のモールド樹脂内に樹脂封止
されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、圧電振動子と加熱用素子および感温素子とがモールド樹脂により一
体に覆われることにより、大きな熱容量を有する一つの加熱体が形成されるとともに、温
度制御回路部および発振回路部は、樹脂などの非金属材料からなる基板を介して前記加熱
体の反対側に配置されている。すなわち、動作時に発熱を伴う温度制御回路部および発振
回路部が、前記加熱体のモールドの外に配置されるとともに、樹脂などの非金属材料から
なる基板は熱伝導性が比較的低いので断熱材としての効果を奏することにより、温度制御
回路部および発振回路部の動作時の熱の影響を受けることなく前記加熱体が安定した温度
制御を行うことができる。
したがって、温度制御回路部や発振回路部などが一体に内蔵されるとともに、圧電振動
子の安定した加温が可能になることにより、周囲の温度変化に影響されることなく安定し
た周波数特性を有する小型で高機能な恒温型圧電発振器を提供することができる。
【0015】
〔適用例5〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、前記基板の前記他方の面側にパ
ッケージが形成され、前記パッケージ内に前記温度制御回路部および前記発振回路部が気
密に封止されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、圧電振動子と加熱用素子および感温素子とが一塊のモールド内に配
置された加熱体と、温度制御回路部および発振回路部とが、基板を介して縦配置されるの
で、加熱用素子からの熱が圧電振動子に伝導されやすくなることにより効率のよい加熱が
可能になるとともに、恒温型圧電発振器の特に平面サイズの小型化を図ることができる。
【0017】
〔適用例6〕上記適用例にかかる恒温型圧電発振器は、トランスファーモールド型を用
いて前記モールド樹脂による樹脂封止が施されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、温度制御回路部および発振回路部を一体に内蔵するとともに、周辺
の温度に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型で高機能な恒温型圧電発振
器を、多数個一括して効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、恒温型圧電発振器の一実施形態としての恒温型水晶発振器について、図面を参照
しながら説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本実施形態にかかる恒温型水晶発振器を模式的に説明するものであり、
図1は上側からみた平面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図1のB−B線断
面図、図4は底面側からみた平面図である。なお、図1および図4では、恒温型水晶発振
器の内部の構成を説明する便宜上、恒温型水晶発振器の外形をなすモールド樹脂の一部を
切り欠いて図示している。
また、図5は、本実施形態の恒温型水晶発振器に用いられる圧電振動子としての水晶振
動子を説明するものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
なお、(a)において、水晶振動子の内部の構成を説明する便宜上、水晶振動子の上部に
接合されたリッド29の一部を切り欠いて図示している。
【0021】
〔水晶振動子〕
まず、恒温型水晶発振器1に備えられた水晶振動子30について詳細に説明する。
図5に示すように、本実施形態の恒温型水晶発振器1には、パッケージ20内に圧電振
動片としての水晶振動片10が接合されて封止された所謂SMDタイプの水晶振動子30
が用いられている。
SMDタイプの水晶振動子30は小型、薄型化が進んでいるので、恒温型水晶発振器1
の小型、薄型化を図るのに有利である。また、表面実装部品として規格化されているSM
Dタイプの水晶振動子30は、例えば、基板に接合した水晶振動片を筒状のキャップで覆
うことにより封止するタイプの水晶振動子のように、外部接続用のリード線を外部基板の
接続端子形状に合わせて切断したり成形したりする必要がなく、外部基板への搭載の自動
化も図りやすいので、実装工程の簡略化や低コスト化に有利である。
【0022】
図5(a)において、本実施形態の水晶振動片10は、矩形平板状に成形された水晶基
板の一方の主面の略中央に、駆動用の電極である励振電極15が設けられ、水晶基材の一
端側近傍に設けられた外部接続電極16aに接続されている。これと同様に、水晶基材の
他方の主面には、励振電極15の対向電極である励振電極(励振電極15の下方に隠れて
図示されず)が設けられ、水晶基板の一端側近傍の外部接続電極16aと異なる領域に設
けられた外部接続電極16bに接続されている。
【0023】
なお、励振電極15や外部接続電極16a,16bなどの電極は、水晶基板(水晶ウェ
ハ)をエッチングして水晶振動片10の外形を形成した後に、蒸着またはスパッタリング
により、例えばニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を下地層として、その上に例えば
金(Au)による金属膜を成膜し、その後フォトリソグラフィを用いてパターニングする
ことにより形成できる。
【0024】
パッケージ20は、略矩形の平板状の第1層基板21と、その第1層基板21上に順次
積層された略矩形フレーム状の第2層基板22、第3層基板23、およびシールリング2
8を有している。このような構成により、パッケージ20には、第1層基板21の上面側
を凹底部分として第2層基板22および第3層基板23側に開口された凹部が形成されて
いる。
【0025】
パッケージ20の凹部の凹底部分となる第1層基板21上に段差を形成する第2層基板
22の棚部には、水晶振動片10が接合される複数の振動片接続端子26a,26bが設
けられている。また、図5(b)に示すように、パッケージ20の外底面となる第1層基
板21の下面側には、外部実装基板と実装される複数の実装端子25a,25bが設けら
れている。これらの各振動片接続端子26a,26bや、実装端子25a,25bは、第
1層基板21に形成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線に
より、それぞれ対応する端子どうしが接続されている。
【0026】
なお、パッケージ20の第1層基板21、第2層基板22、および第3層基板23は、
セラミックス絶縁材料などからなる。また、パッケージ20に設けられた振動片接続端子
26a,26bや実装端子25a,25b、あるいはそれらを接続する配線パターンまた
は層内配線パターンなどは、一般に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金
属配線材料をセラミックス絶縁材料上にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(
Ni)、金(Au)などのめっきを施すことにより形成される。
【0027】
水晶振動片10は、その水晶振動片10の一端側近傍に設けられた外部接続電極16a
,16bと、パッケージ20の第2層基板22上に設けられた対応する振動片接続端子2
6a,26bとを位置合わせした状態で、例えば導電性接着剤95などの接合部材により
接合されている。これにより、水晶振動片10は、パッケージ20と接合された外部接続
電極16a,16b側の反対側を自由端として第1層基板21と接触しないように隙間を
空けた状態で片持ち支持されている。
なお、導電性接着剤95としては、一般に、ポリイミド、シリコン系、またはエポキシ
系などの樹脂に、銀(Ag)フィラメント、またはニッケル(Ni)粉を混入したものが
使用される。また、水晶振動片10を接合する接合部材は導電性接着剤95に限らず、半
田などの他の接合部材を用いることもできる。
【0028】
水晶振動片10が接合されたパッケージ20の第3層基板23上には、蓋体としてのリ
ッド29が接合されている。本実施形態では、金属製のリッド29が、鉄−ニッケル(F
e−Ni)合金などをフレーム状に型抜きして形成されたシールリング28を介してシー
ム溶接されている。これにより、パッケージ20の凹部内に接合された水晶振動片10が
気密に封止されている。
【0029】
〔恒温型水晶発振器〕
次に、上記水晶振動子30を備えた恒温型水晶発振器1について説明する。
図1〜図4に示すように、本実施形態の恒温型水晶発振器1は、複数の金属リード51
からなる基板としてのリードフレームに、圧電振動子としての水晶振動子30と、この水
晶振動子30を所定の温度に加熱する加熱用素子40と、水晶振動子30近傍の温度を検
知する感温素子45と、が接合され、それら水晶振動子30、加熱用素子40、および感
温素子45が、トランスファーモールド型を用いて一塊のモールド樹脂91内に樹脂封止
されている。
【0030】
リードフレームの複数の金属リード51は、モールド樹脂91内に配置される一端部側
であって恒温型水晶発振器1を構成する各素子と対応して接続される内部接続端子53ま
たは素子を支持する支持端子部52と、その内部接続端子53または支持端子部52の他
端部側であって、モールド樹脂91の外側で所定の形状に成形され恒温型水晶発振器1の
外部基板との接合に供する実装端子部55(詳細は後述する)と、からなる。
【0031】
図1に示すように、リードフレームの上側の面には、水晶振動子30と、感温素子45
が接合されている。詳細には、水晶振動子30の実装端子25a,25bと、それぞれに
対応する金属リード51の内部接続端子53とを位置合わせした状態で、別の金属リード
51の支持端子部52上に水晶振動子30が支持されるように配置され、実装端子25a
,25bと対応する内部接続端子53が電気的に接続されている。この実装端子25a,
25bと内部接続端子53との接合は、例えば、図示しない導電性接着剤や半田などの接
合部材などを介して行われる。また、本実施形態では、リードフレーム上への水晶振動子
30の搭載工程での位置決めのために、図2に示すように、支持端子部52と水晶振動子
30とを絶縁性の接着剤98などにより接着・固定されている。
【0032】
また、水晶振動子30の近傍には、その水晶振動子30と接続された金属リード51と
は異なる金属リード51の内部接続端子53に接続された感温素子45が配置されている
。感温素子45としては、温度上昇に伴って比抵抗が比較的大きく変化する、例えば、p
型半導体酸化物などからなるSMDタイプのサーミスター(Thermistor)素子を用いるこ
とができる。
【0033】
上記水晶振動子30および感温素子45が配置された面とは異なるリードフレームの下
側の面には、加熱用素子40が配置されている。本実施形態では、水晶振動子30が支持
された金属リード51の支持端子部52の反対側の面に加熱用素子40が密着させて接合
され、図4に示すように、加熱用素子40の支持端子部52と接合された面の反対側の面
に設けられた複数の電極パッド41と、対応する金属リード51の内部接続端子53とが
ボンディングワイヤー97により接続されている。
【0034】
上記のようにリードフレームに接合された水晶振動子30、感温素子45、および加熱
用素子40は、モールド樹脂91により一体に樹脂封止されている。このような樹脂封止
は、水晶振動子30、感温素子45、および加熱用素子40を接合したリードフレームを
トランスファーモールド型のキャビティ内部に固定し、熱硬化性のモールド樹脂91を射
出成型することによってキャビティ内にモールド樹脂91を充填することにより行われ、
これにより、一体型の樹脂パッケージである恒温型水晶発振器1が形成される。
【0035】
樹脂封止された恒温型水晶発振器1において、リードフレームの複数の金属リード51
のモールド樹脂91から外側に露出された部分は、それぞれ所定の形状にフォーミングさ
れて、外部基板との実装に供する実装端子部55が形成されている。具体的には、水晶振
動子30、感温素子45、および加熱用素子40が接合されたモールド樹脂91内部の内
部接続端子53または支持端子部52からそれぞれ水平方向に延出された各金属リード5
1は、モールド樹脂91の外側に出てから若干の長さの部分で略鉛直方向に折り曲げられ
、モールド樹脂91の外形の底面よりも下方で恒温型水晶発振器1の内側方向に略水平に
折り曲げられ、その金属リード51の略水平な他端部分が実装端子部55となっている(
図3を参照)。
なお、本実施形態の恒温型水晶発振器1では、リードフレームの各金属リード51の他
端部分側をそれぞれ恒温型水晶発振器1の内側方向に折り曲げて実装端子部55を形成し
て、恒温型水晶発振器1のより小型化を図るための一例を説明した。これに限らず、複数
の金属リード51を、恒温型水晶発振器1の外側方向に水平に折り曲げて実装端子部とし
て用いる構成としてもよい。
【0036】
上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1によれば、リードフレームに接合された水晶
振動子30、感温素子45、および加熱用素子40が、一塊のモールド樹脂91内に一体
に樹脂封止されている。
これにより、水晶振動子30と、その水晶振動子30を一定の温度に加温するために用
いられる加熱用素子40および感温素子45とが、モールド樹脂91により一体に覆われ
た一つの加熱体が形成され、この加熱体は、モールド樹脂91が無い場合に比して熱容量
が大きく確保されるので、効率的に、且つ、安定した加温と温度保持が可能になる。した
がって、水晶振動子30を低消費電力にて効率よく加温することが可能で、周囲の温度変
化に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型の恒温型水晶発振器1を提供す
ることができる。
【0037】
また、上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1は、水晶振動子30、加熱用素子40
、および感温素子45を接合する基板としてリードフレームが用いられ、モールド樹脂9
1をトランスファーモールド法により充填して樹脂成形した。
これにより、周辺の温度に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型の恒温
型水晶発振器1を、多数個一括して効率よく製造することができる。
【0038】
また、上記第1の実施形態の恒温型水晶発振器1では、水晶振動子30と加熱用素子4
0とを、リードフレームの同じ金属リード51の支持端子部52の異なる面にそれぞれ配
置させた。
これにより、水晶振動子30と加熱用素子40とが金属からなる支持端子部52を挟ん
で縦配置されるので、加熱用素子40からの熱が水晶振動子30に効率よく伝達されて加
熱効率が高くなるとともに、恒温型水晶発振器1の、特に平面サイズの小型化を図ること
ができる。
【0039】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態で説明した恒温型水晶発振器1は、さらに発振回路部などを内蔵さ
せることによって、より高機能な恒温型水晶発振器として提供することもできる。
図6は、発振回路部や温度制御回路部などを一体に内蔵させた高機能な恒温型水晶発振
器を模式的に説明するものであり、(a)は上側からみた平面図、(b)は(a)のD−
D線断面図、(c)は底面側からみた平面図である。なお、図6(a)では、恒温型水晶
発振器の内部の構成を説明する便宜上、恒温型水晶発振器の外形をなすモールド樹脂の一
部を切り欠いて図示している。また、本実施形態の恒温型水晶発振器101の構成のうち
、上記第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図6(b)において、恒温型水晶発振器101は、両面に回路配線が形成された基板と
しての第1層基板121を底板として凹部が形成されたパッケージ120を有している。
パッケージ120の凹部の凹底部分となる第1層基板121の一方の面(紙面上下側の面
)には、温度制御回路部としての温度制御用回路素子60と、発振回路部としての発振回
路用素子70とが接合されている。
また、第1層基板121の他方の面(紙面上上側の面)には、SMDタイプの水晶振動
子30、加熱用素子40、および感温素子45が接合され、これらの水晶振動子30、加
熱用素子40、感温素子45が、一塊のモールド樹脂91により樹脂封止されている。
【0041】
パッケージ120は、略矩形の平板状の基材の両面に回路配線が形成された第1層基板
121と、その第1層基板121上に積層された略矩形フレーム状の第2層基板122と
により、第1層基板121の一方の面を凹底部分とする凹部が形成されている。このパッ
ケージ120の凹部の凹底部分である第1層基板121の一方の面上には、温度制御用回
路素子60が接合される複数の温度制御用回路素子接続端子152a、および、発振回路
用素子接続端子152bが設けられている。また、パッケージ120の外底面となる第1
層基板121の他方の面上には、水晶振動子30、加熱用素子40、および感温素子45
との接続に供する素子内部接続端子153が設けられている。
なお、本実施形態のパッケージ120において、少なくとも第1層基板121の材料に
は、例えばエポキシ樹脂などの樹脂や、セラミック材料など、熱伝導率が比較的低い材料
を用いる。これは、上記のように、第1層基板121を挟んだ上下に配置される水晶振動
子30、加熱用素子40、および感温素子45がモールド樹脂91により一体に樹脂封止
された加熱体と、パッケージ120内に接合された温度制御用回路素子60および発振回
路用素子70との間の断熱層として利用する目的による。
【0042】
図6(b)および(c)において、パッケージ120の凹部の凹底部分となる第1層基
板121の面には、上記の温度制御用回路素子60および発振回路用素子70が接合され
ている。詳細には、温度制御用回路素子60に設けられた複数の接続電極65と対応する
温度制御用回路素子接続端子152aとが位置合わせされ、また、発振回路用素子70に
設けられた複数の接続電極75と発振回路用素子接続端子152bとが位置合わせされ、
それぞれ図示しない導電性接着剤や半田などの接合部材などを介して接合されている。
【0043】
さらに、パッケージ120において、略矩形フレーム状の第2層基板122により形成
される凹部の開口側には蓋体129が接合されている。これにより、パッケージ120内
に接合された温度制御用回路素子60および発振回路用素子70が封止される。
また、蓋体129の外側の面(図6(b)において下側の面)は、本実施形態の恒温型
水晶発振器101の底面となっていて、その底面側には、恒温型水晶発振器101と外部
実装基板との接合に供する複数の実装端子155a〜155fが設けられている(図6(
c)を併せて参照)。これらの実装端子155a〜155fは、上記した複数の各素子内
部接続端子153、温度制御用回路素子接続端子152a、および発振回路用素子接続端
子152bとそれぞれ対応しており、その対応する端子どうしが、パッケージ120に形
成された図示しない引き回し配線またはスルーホールなどの層内配線により接続されてい
る。
【0044】
図6(a)および(b)に示すように、パッケージ120の第1層基板121の底側の
面には、水晶振動子30と、その水晶振動子30の近傍に配置された感温素子45とが接
合されている。詳細には、水晶振動子30の実装端子25a,25b、および感温素子4
5の電極(図示せず)と、それぞれに対応する第1層基板121の素子内部接続端子15
3とが位置合わせされ、図示しない導電性接着剤や半田などの接合部材などを介して接合
されている。
また、水晶振動子30の上側には加熱用素子40が配置されている。本実施形態では、
水晶振動子30の上面に、加熱用素子40が図示しない非導電性の接着剤などを介して密
着させて固定さるとともに、加熱用素子40の主面に設けられた複数の電極パッド41と
、対応する第1層基板121の素子内部接続端子153とがボンディングワイヤー97に
より接続されている。
【0045】
上記のように、パッケージ120の第1層基板121の底側の面に接合された水晶振動
子30、感温素子45、および加熱用素子40は、トランスファーモールドすることによ
り、モールド樹脂91によって一体に樹脂封止されている。
【0046】
上記第2の実施形態の恒温型水晶発振器101によれば、水晶振動子30、加熱用素子
40、および感温素子45がモールド樹脂91により一体に樹脂封止された加熱体と、パ
ッケージ120内に接合された温度制御用回路素子60および発振回路用素子70とが、
熱伝導率が比較的低い材料からなる第1層基板121を挟んだ上下に配置されている。
圧電振動子と加熱用素子および感温素子とがモールド樹脂により一体に覆われることに
より、大きな熱容量を有する一つの加熱体が形成されるとともに、温度制御回路部および
発振回路部は、樹脂からなる基板を介して上記加熱体の反対側に配置されている。これに
より、動作時に発熱を伴う温度制御用回路素子60および発振回路用素子70の熱が、上
記加熱体に及ぼす影響を抑えることができる。また、逆に、上記加熱体の熱が温度制御用
回路素子60および発振回路用素子70などの回路体に及ぼす影響も抑えられる。したが
って、温度制御用回路素子60や発振回路用素子70などの回路体を内蔵し、周囲の温度
変化に影響されることなく安定した周波数特性を有する小型の恒温型水晶発振器101を
提供することができる。
【0047】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発
明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の
変更を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上記第1および第2の実施形態では、水晶振動子30、加熱用素子40、およ
び感温素子45の樹脂封止をトランスファーモールド法により行う構成とした。これに限
らず、モールド樹脂91の粘度等を調整することにより、所謂ポッティング法によりモー
ルド樹脂を塗布して樹脂封止を行うことも可能である。
【0049】
また、上記第1の実施形態では、トランスファーモールドによる樹脂封止を用いる利便
性も鑑みて、基板としてリードフレームを用いた例を説明した。これに限らず、基板とし
て、樹脂等の基材の両面に回路配線が形成された配線基板などを用いる構成としてもよい

【0050】
また、上記第2の実施形態では、断熱層として機能する基板としての第1層基板121
を有するパッケージ120を用いて、水晶振動子30、加熱用素子40、および感温素子
45を一体に樹脂封止した加熱体と、温度制御用回路素子60および発振回路用素子70
などの回路体とを熱的に遮る構成とした。これに限らず、断熱層となりうる基板を介して
、上記加熱体と回路体とを熱的に遮る構成とできるのであれば、パッケージ以外の例えば
両面配線板などを用いる構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、圧電振動片として水晶振動片10を用いた水晶振動子30を
搭載した恒温型水晶発振器1,101について説明した。これに限らず、水晶以外に、窒
化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(
LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)な
どの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウム、五酸化タンタル(Ta25)など
の薄膜圧電材料を積層させて構成された圧電材料からなる圧電振動片を用いることもでき
る。
【0052】
また、水晶振動子30や上記第1および第2の実施形態の回路体を構成するパッケージ
20やパッケージ120は、上記実施形態で説明した積層構造を有するものに限らず、機
械加工などにより一体化した形のものを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】恒温型圧電発振器の第1の実施形態としての恒温型水晶発振器を上側からみて模式的に説明する平面図。
【図2】第1の実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に説明する図1のA−A線断面図。
【図3】第1の実施形態の恒温型水晶発振器を模式的に説明する図1のB−B線断面図。
【図4】第1の実施形態の恒温型水晶発振器を底面側からみて模式的に説明する平面図。
【図5】(a)は、圧電振動子としての水晶振動子を模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のC−C線断面図。
【図6】(a)は、第2の実施形態の恒温型水晶発振器を上側からみて模式的に説明する平面図、(b)は、(a)のD−D線断面図、(c)は、底面側からみた平面図。
【符号の説明】
【0054】
1,101…恒温型圧電発振器としての恒温型水晶発振器、10…圧電振動片としての
水晶振動片、15…励振電極、16a,16b…外部接続電極、20,120…パッケー
ジ、21,121…第1層基板、22,122…第2層基板、23…第3層基板、25a
,25b…実装端子、26a,26b…振動片接続端子、28…シールリング、29…蓋
体としてのリッド、30…圧電振動子としての水晶振動子、40…加熱用素子、41…電
極パッド、45…感温素子、51…金属リード、52…支持端子部、53…内部接続端子
、55…実装端子部、60…温度制御回路部としての温度制御用回路素子、65…接続電
極、70…発振回路部としての発振回路用素子、91…モールド樹脂、95…導電性接着
剤、97…ボンディングワイヤー、129…蓋体、152a…温度制御用回路素子接続端
子、152b…発振回路用素子接続端子、153…素子内部接続端子、155a〜155
f…実装端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に接合され、圧電振動片がパッケージ内に接合されて封止された圧電振動子と

前記圧電振動子を加熱する加熱用素子と、
前記圧電振動子近傍に配置された感温素子と、を有し、
前記圧電振動子、前記加熱用素子、および前記感温素子が、一塊のモールド樹脂内に樹
脂封止されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記基板として複数の金属リードからなるリードフレームが用いられ、
トランスファーモールド型を用いて前記モールド樹脂による樹脂封止が施されているこ
とを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記圧電振動子と前記加熱用素子とが、前記リードフレームの同じ金属リードの両面に
それぞれ配置されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項4】
基板と、
前記基板に接合され、圧電振動片がパッケージ内に接合されて封止された圧電振動子と

前記圧電振動子を加熱する加熱用素子と、
前記圧電振動子近傍に配置された感温素子と、
前記加熱用素子および前記感温素子を制御することにより前記圧電振動子を所望の温度
に加熱制御する温度制御回路部と、
発振回路部と、を有し、
前記基板の基材が樹脂などの非金属材料からなり、
前記基板の一方の面側に、前記圧電振動子、前記加熱用素子、および前記感温素子が配
置され、
前記基板の他方の面側に、前記温度制御回路部および前記発振回路部が配置され、
前記圧電振動子、前記加熱用素子、および前記感温素子が、一塊のモールド樹脂内に樹
脂封止されていることを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の恒温型圧電発振器であって、
前記基板の前記他方の面側にパッケージが形成され、
前記パッケージ内に前記温度制御回路部および前記発振回路部が気密に封止されている
ことを特徴とする恒温型圧電発振器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の圧電発振器であって、
トランスファーモールド型を用いて前記モールド樹脂による樹脂封止が施されているこ
とを特徴とする恒温型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−166346(P2010−166346A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7267(P2009−7267)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】