恒温槽装置
【課題】 セル内の反応液の温度上昇を、セルの使用材料ではなく、リング状に一体形成されたセルホルダを、構造的に種々実験を繰り返し検証した結果、該セルホルダを10分割することで、最良の高効率化を計ることができる恒温槽装置を提供する。
【解決手段】 サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側脚部にピン孔を開設した。
【解決手段】 サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側脚部にピン孔を開設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体成分分析装置に配設され、サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置に係り、特に安定した温度を高効率に保持することができる恒温槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体成分分析装置では、サンプルと試薬が入った複数のセルを保持し、これらを恒温槽内の恒温水に浸して、一定温度下でサンプルと試薬とを反応させるものがある。分析装置の測定項目としては数種類から数十種類あり、通常、一つの検体に対し、最低でも十種類程度の項目について分析を行っているので、複数のセルが、円周状に配列して保持され、恒温水に浸されながら、この円周に沿った各位置、即ち、サンプルと試薬を注入する個所、サンプルの物性を測定する個所、セルを洗浄する個所を、巡回するように回転制御される。
【0003】
この従来の恒温槽内には、特許文献1に示すように、温度センサ、加熱手段を設け、恒温槽内の温度を一定に保つようにしたものがあり、恒温槽外部にリザーブタンクや循環ポンプ、さらにそれらを結ぶ配管系を必要としないので小型低価格に実施できるという特徴がある。ただし恒温槽内での局所的な温度不均一が発生し易いので、恒温槽内を回転するセルと共に回転する攪拌羽根を設けることにより、恒温槽内の恒温水を攪拌し温度の不均一を解消している
【0004】
【特許文献1】特開平4−258767号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セル内を速やかに反応温度にするためには、セルに熱伝導率の大きな材料を用いることが有効であるが、熱伝導率が大きければ大きいほど隣のセル内が冷却されやすくなる。この冷却効果により反応時間が増加し、分析装置全体での検査処理速度の低下および、吸光分析の計測結果の誤差を生じ易い、という問題を有していた。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、セル内の反応液の温度上昇を、セルの使用材料ではなく、リング状に一体形成されたセルホルダを、構造的に種々実験を繰り返し検証した結果、該セルホルダを10分割することで、最良の高効率化を達成することができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる知見に基づき、請求項1に記載の発明にあっては、サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側部にピン孔を開設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
それ故、請求項1に記載の発明にあっては、セルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダの平面形状を略凹字状に形成することで、洗浄水の冷却熱の影響を受けづらく最良の温度測定値の上昇を確認することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に示す発明の一実施形態例に基づき、この発明を詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の一実施形態例に係る恒温槽装置の平面図を、図2は同恒温槽装置の分解斜視図を、図3は図1のA−A線断面図を、図4は同恒温槽装置のセルホルダの斜視図を、図5は同セルホルダの正面図を、図6は、同セルホルダの平面図を、図7は同セルホルダの拡大平面図を、図8は同セルホルダの図7B−B線断面図を、図9は、恒温槽装置のテーブルを示す斜視図を、図10は同テーブルの平面図を、図11は図10C−C線断面図を、図12は図10D−D線断面図を、図13は恒温槽装置に用いられる熱遮断リングの斜視図を、図14は同熱遮断リングの平面図を、図15は同熱遮断リングの断面図を、図16はセルホルダを5分割した場合と10分割した場合の各温度変化を示すグラフ図を各々示している。
【0011】
図1乃至図3に示すように、この実施形態例に係る恒温槽装置Kは、円板状のテーブル1と、該テーブル1の上面に配置される合成樹脂製の熱遮断リング10と、該熱遮断リング10に円周状に載置される10分割されたセルホルダ20と、該セルホルダ20に着脱自在に保持されるセル30と、上記セルホルダ20の外周壁として機能するホルダ外壁体40と、セル30を一括して着脱するためのつまみ50と、インシュレータ60と、から構成されており、加熱手段及び温度制御は、公知の加熱手段及び温度制御手段が適用される。
【0012】
10分割された各セルホルダ20は、図4乃至図8に示すように、角筒状のセル30が4個保持されるセル保持孔21,21,21,21が開設された平面形状が略扇状の熱伝導性に優れた金属製のホルダ本体22と、このホルダ本体22の内周壁面から内周方向に延びる両側部23,23と、該両側部23,23の先端部に貫設されたピン孔24、とから構成されており、上記ホルダ本体22と両側部23,23とで、平面形状が略凹状に形成されている。尚、図中符号25,25は、上記両側部23,23の対向辺部に開設された半円状の位置決め孔である。
【0013】
従って、10個のセルホルダ20を円周状に配列することで、40個のセル30を保持することができるように構成されている。尚、本実施形態例では、各セル保持孔21の外周部分を開放して構成しているが、該部分は上記ホルダ外壁体40で閉塞するように構成されているので、保持されたセル30が作業中に脱落する虞はない。
【0014】
テーブル1は、図9乃至図12に示すように、円板状に形成されており、中心部とその外周に等間隔で6個の孔2が貫設されていると共に、位置決め孔3が開設されている。また、該テーブル1の外周縁部には、前記合成樹脂製の熱遮断リング10が装着される段部4が形成されている。尚、図中符号5は、ピン孔である。
【0015】
また、合成樹脂製の熱遮断リング10は、図13乃至図15に示すように、上記テーブル1の段部4に装着される大きさに形成されており、テーブル1からの熱をセル30に直接伝えないように熱を遮断する材質で形成されている。尚、図中符号11は、ピン孔である。
【0016】
そして、上記セルホルダ20の位置決めや固定は、図1に示すように、複数本のピンpにより行われる。
【0017】
この実施形態例に係る恒温槽装置Kは、以上説明したように、セルホルダ20を10分割して構成したので、例えば、セルホルダを5分割した場合と比較した場合、図16に示すように、温度測定値の上昇が良好であり、高い温度を保持することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態例に係る恒温槽装置の平面図である。
【図2】同恒温槽装置の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】同恒温槽装置のセルホルダの斜視図である。
【図5】同セルホルダの正面図である。
【図6】同セルホルダの平面図である。
【図7】同セルホルダの拡大平面図である。
【図8】同セルホルダの図7B−B線断面図である。
【図9】恒温槽装置のテーブルを示す斜視図である。
【図10】同テーブルの平面図である。
【図11】図10C−C線断面図である。
【図12】図10D−D線断面図である。
【図13】恒温槽装置に用いられる熱遮断リングの斜視図である。
【図14】同熱遮断リングの平面図である。
【図15】同熱遮断リングの断面図である。
【図16】セルホルダを5分割した場合と10分割した場合の各温度変化を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0019】
1 テーブル
10 熱遮断リング
20 セルホルダ
21 セル保持孔
22 ホルダ本体
23,23 両側部
24 ピン孔
30 セル
40 ホルダ外壁体
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体成分分析装置に配設され、サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置に係り、特に安定した温度を高効率に保持することができる恒温槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生体成分分析装置では、サンプルと試薬が入った複数のセルを保持し、これらを恒温槽内の恒温水に浸して、一定温度下でサンプルと試薬とを反応させるものがある。分析装置の測定項目としては数種類から数十種類あり、通常、一つの検体に対し、最低でも十種類程度の項目について分析を行っているので、複数のセルが、円周状に配列して保持され、恒温水に浸されながら、この円周に沿った各位置、即ち、サンプルと試薬を注入する個所、サンプルの物性を測定する個所、セルを洗浄する個所を、巡回するように回転制御される。
【0003】
この従来の恒温槽内には、特許文献1に示すように、温度センサ、加熱手段を設け、恒温槽内の温度を一定に保つようにしたものがあり、恒温槽外部にリザーブタンクや循環ポンプ、さらにそれらを結ぶ配管系を必要としないので小型低価格に実施できるという特徴がある。ただし恒温槽内での局所的な温度不均一が発生し易いので、恒温槽内を回転するセルと共に回転する攪拌羽根を設けることにより、恒温槽内の恒温水を攪拌し温度の不均一を解消している
【0004】
【特許文献1】特開平4−258767号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セル内を速やかに反応温度にするためには、セルに熱伝導率の大きな材料を用いることが有効であるが、熱伝導率が大きければ大きいほど隣のセル内が冷却されやすくなる。この冷却効果により反応時間が増加し、分析装置全体での検査処理速度の低下および、吸光分析の計測結果の誤差を生じ易い、という問題を有していた。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、セル内の反応液の温度上昇を、セルの使用材料ではなく、リング状に一体形成されたセルホルダを、構造的に種々実験を繰り返し検証した結果、該セルホルダを10分割することで、最良の高効率化を達成することができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる知見に基づき、請求項1に記載の発明にあっては、サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側部にピン孔を開設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
それ故、請求項1に記載の発明にあっては、セルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダの平面形状を略凹字状に形成することで、洗浄水の冷却熱の影響を受けづらく最良の温度測定値の上昇を確認することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に示す発明の一実施形態例に基づき、この発明を詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の一実施形態例に係る恒温槽装置の平面図を、図2は同恒温槽装置の分解斜視図を、図3は図1のA−A線断面図を、図4は同恒温槽装置のセルホルダの斜視図を、図5は同セルホルダの正面図を、図6は、同セルホルダの平面図を、図7は同セルホルダの拡大平面図を、図8は同セルホルダの図7B−B線断面図を、図9は、恒温槽装置のテーブルを示す斜視図を、図10は同テーブルの平面図を、図11は図10C−C線断面図を、図12は図10D−D線断面図を、図13は恒温槽装置に用いられる熱遮断リングの斜視図を、図14は同熱遮断リングの平面図を、図15は同熱遮断リングの断面図を、図16はセルホルダを5分割した場合と10分割した場合の各温度変化を示すグラフ図を各々示している。
【0011】
図1乃至図3に示すように、この実施形態例に係る恒温槽装置Kは、円板状のテーブル1と、該テーブル1の上面に配置される合成樹脂製の熱遮断リング10と、該熱遮断リング10に円周状に載置される10分割されたセルホルダ20と、該セルホルダ20に着脱自在に保持されるセル30と、上記セルホルダ20の外周壁として機能するホルダ外壁体40と、セル30を一括して着脱するためのつまみ50と、インシュレータ60と、から構成されており、加熱手段及び温度制御は、公知の加熱手段及び温度制御手段が適用される。
【0012】
10分割された各セルホルダ20は、図4乃至図8に示すように、角筒状のセル30が4個保持されるセル保持孔21,21,21,21が開設された平面形状が略扇状の熱伝導性に優れた金属製のホルダ本体22と、このホルダ本体22の内周壁面から内周方向に延びる両側部23,23と、該両側部23,23の先端部に貫設されたピン孔24、とから構成されており、上記ホルダ本体22と両側部23,23とで、平面形状が略凹状に形成されている。尚、図中符号25,25は、上記両側部23,23の対向辺部に開設された半円状の位置決め孔である。
【0013】
従って、10個のセルホルダ20を円周状に配列することで、40個のセル30を保持することができるように構成されている。尚、本実施形態例では、各セル保持孔21の外周部分を開放して構成しているが、該部分は上記ホルダ外壁体40で閉塞するように構成されているので、保持されたセル30が作業中に脱落する虞はない。
【0014】
テーブル1は、図9乃至図12に示すように、円板状に形成されており、中心部とその外周に等間隔で6個の孔2が貫設されていると共に、位置決め孔3が開設されている。また、該テーブル1の外周縁部には、前記合成樹脂製の熱遮断リング10が装着される段部4が形成されている。尚、図中符号5は、ピン孔である。
【0015】
また、合成樹脂製の熱遮断リング10は、図13乃至図15に示すように、上記テーブル1の段部4に装着される大きさに形成されており、テーブル1からの熱をセル30に直接伝えないように熱を遮断する材質で形成されている。尚、図中符号11は、ピン孔である。
【0016】
そして、上記セルホルダ20の位置決めや固定は、図1に示すように、複数本のピンpにより行われる。
【0017】
この実施形態例に係る恒温槽装置Kは、以上説明したように、セルホルダ20を10分割して構成したので、例えば、セルホルダを5分割した場合と比較した場合、図16に示すように、温度測定値の上昇が良好であり、高い温度を保持することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態例に係る恒温槽装置の平面図である。
【図2】同恒温槽装置の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】同恒温槽装置のセルホルダの斜視図である。
【図5】同セルホルダの正面図である。
【図6】同セルホルダの平面図である。
【図7】同セルホルダの拡大平面図である。
【図8】同セルホルダの図7B−B線断面図である。
【図9】恒温槽装置のテーブルを示す斜視図である。
【図10】同テーブルの平面図である。
【図11】図10C−C線断面図である。
【図12】図10D−D線断面図である。
【図13】恒温槽装置に用いられる熱遮断リングの斜視図である。
【図14】同熱遮断リングの平面図である。
【図15】同熱遮断リングの断面図である。
【図16】セルホルダを5分割した場合と10分割した場合の各温度変化を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0019】
1 テーブル
10 熱遮断リング
20 セルホルダ
21 セル保持孔
22 ホルダ本体
23,23 両側部
24 ピン孔
30 セル
40 ホルダ外壁体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側部にピン孔を開設したことを特徴とする恒温槽装置。
【請求項1】
サンプル及び試薬を入れる複数のセルを所要温度に保持する恒温槽装置であって、該セルを互いにすき間をもって円周状に配列し保持するセルホルダを10分割し、この分割された各セルホルダを、平面形状が略凹字状となるように形成し、該凹部の両側部にピン孔を開設したことを特徴とする恒温槽装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−68907(P2009−68907A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235623(P2007−235623)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000162478)協和メデックス株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
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