説明

患者の生理信号を取得するためのセンサ

本発明は、患者モニタリングシステム(1)において独立した、無線の、スマートな自立センサ(3,4,5)を提案している。センサ(3,4,5)は、患者モニタ(8)等に取得した信号を送信するためのその装置自体の通信システムを備えている。更に、患者識別子(26)は通信に関連付けられている。この方法は、通信全てがパーソナライズされ且つ患者(2)割り当てられるという患者関連の概念を取り入れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の生理信号を取得するためのセンサに関する。更に、本発明は、そのようなセンサを動作する方法及び患者モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な患者モニタリング環境において、複数のセンサが患者の体に備えられる。それにより、それらの複数の、例えば、ECG(心電図)、S(動脈血の酸素飽和)、温度又はNIBP(非侵襲血圧)信号のためのセンサが、患者の複数の位置に位置付けられる。それらのセンサから、患者の生理信号が、遠隔中央ステーション又はモニタリングシステムへのケーブル接続を介して送信される。例えば、BAN(身体領域ネットワーク)を使用する無線送信技術を用いる場合、CCC(中央通信制御)としてまた、知られている中央送信器が装着される。この場合、全てのセンサは、ケーブルを介して中央送信器に接続される。代替として、付加無線通信リンクがセンサと中央送信器との間で用いられ、そのことは、患者からモニタリングシステム及び/又は中央ステーションに取得された信号全てを送信するために用いられる通信リンクから独立している必要がある。
【0003】
無線送信技術を用いる既知の患者モニタリングシステムの不利点には、複雑な且つ時間を要する設定及びモニタリングシステムにおける各々の装置の制御がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、患者モニタリング技術を容易に用いることを可能にすることである。
【0005】
この目的は、本発明にしたがって、患者の生理信号を取得するためのセンサにより達成され、センサは、遠隔装置に対して独立した無線通信を供給するように適合された通信モジュールと、患者識別子を前記通信に関連付けるように適合されたパーソナライゼーションモジュールとを有する。
【0006】
本発明の目的はまた、患者モニタリングシステムであって、患者の生理信号を取得するための少なくとも1つのセンサを有する、システムであって、前記センサは、遠隔装置に対して独立した無線通信を供給するように適合された通信モジュールを有し、無線通信を用いて前記センサに接続可能である少なくとも1つの遠隔装置を更に有する、システムにより達成される。
【0007】
本発明の目的は、患者の生理信号を取得するためのセンサを動作させる方法であって、独立した無線通信がセンサと遠隔装置との間で確立され、患者識別子が前記通信に関連付けられる、方法により更に達成される。
【0008】
本発明の目的は、患者の生理信号を取得するためのセンサから遠隔装置に独立した無線通信を供給するコンピュータ命令と、コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行されるときに、前記通信に患者識別子を関連付けるためのコンピュータ命令とを有するコンピュータプログラムによりまた、達成される。
【0009】
本発明は、独立した無線のスマートな、それ故、自己完結型のセンサを用いる概念に基づいている。それ故、本発明は、特定のセンサの種類に限定されるものではない。例えば、ECG、S、NIBP、温度センサ又は他のセンサが、本発明と共に用いられることが可能である。
【0010】
本発明の第1の特徴にしたがって、特定の患者が装着する装置、例えば、CCCのための必要条件は削除される。患者の複数の位置における信号取得及び無線通信は、自己完結型センサを用いて独立して実行される。各々のセンサは、遠隔装置、即ち、患者モニタ又は中央ステーションのような患者により装着されるか又は患者に接続されない装置と独立して通信する。何れの中間の患者毎のステーション等を伴わずに、遠隔装置への直接的な通信が存在する。換言すれば、センサはセンサ自体の通信システム、例えば、取得された信号及び/又は導き出されたデータを送信するためのモジュールを有する。このことは、特に、相互接続ケーブルが存在しないために、信号取得のアプリケーションを非常にフレキシブルにし、更に、患者の快適さを改善する。異なるレベルの調査が、付加的な又は異なる独立したセンサを適用することにより、容易に達成される。
【0011】
何れの種類の無線通信技術、例えば、高周波通信又は光通信が、本発明と共に用いられることが可能である。用いられることが可能である無線通信技術についての例は、Bluetooth、WLAN、赤外線、ZigBee、UWB(超広帯域)、NBFM(共帯域周波数変調)等である。ネットワークハブは、“マルチホップ”ネットワークを実現するように及び/又は他の通信技術に切り換えるように用いられることが可能である。(例えば、イーサネット(登録商標)、USB、RS232、WLAN、電力線等)を実現するように用いられることが可能である。
【0012】
本発明の他の特徴にしたがって、無線通信を用いる患者モニタリングの新しい一般概念が提供される。モニタリング装置間の従来のケーブルに基づく接続が単にエミュレートされる既知のモニタリング技術と異なり、全ての通信がパーソナライズされ、患者に関連付けられる患者関連概念を導入する。これは、通信に患者識別子を関連付けることにより達成される。換言すれば、特定の患者への直接的な且つ厳しい接続を伴わない通信は存在しない。患者識別子として、一般的な一意の患者識別子(UUPID)が好適に用いられる。この新しい方法を用いて、特定の患者から取得された信号が、前記患者に関連して、排他的に及び確実に、例えば、送信され、処理され、記憶され、モニタリングされる。更に、この新しいスマートセンサの技術は新しい患者モニタリングの概念であって、従来型のケーブル又は部屋指向の方法では用いられない概念を可能にする。それに代えて、新しい概念は、通信装置を処理する又は再構成する必要性なく、例えば、1つの部屋から他の部屋への患者の移動を可能にする、非常にフレキシブルな方法における患者モニタリングを用いることを容易に可能にする。
【0013】
本発明にしたがったセンサは、好適には、コンピュータを有する。コンピュータは、特に、中央演算処理装置(CPU)、バスシステム、例えば、RAM又はROMであるメモリ手段及び入力/出力ユニットを有する。好適には、コンピュータは、付加記憶手段を有する。本発明にしたがったセンサを動作させるために必要な技術的効果は、それ故、本発明にしたがったコンピュータプログラムの命令に基づいて実現される。そのようなコンピュータプログラムは、CD−ROMのような担体に記憶されることが可能であり、又はインターネット又は他のコンピュータネットワークにおいて利用可能である。実行に先立ち、コンピュータプログラムは、例えば、通信リンクによってコンピュータプログラムを読み取ることにより、及びコンピュータのメモリにそのプログラムを記憶することにより、コンピュータにロードされる。
【0014】
本発明の上記の及び他の特徴については、従属請求項に記載されている以下の実施形態に基づいて詳述する。
【0015】
本発明の好適な実施形態においては、取得された信号及び/又はそれらの信号から導き出されるデータはスマートセンサにおいて記憶される及び/又は処理される。換言すれば、本発明は、好適には、患者の生理信号を取得する、記憶する及び/又は処理するためのセンサに関する。この目的のために、そのセンサは、信号記憶及び処理モジュールを有する。その信号記憶及び処理モジュールは、好適には、記憶手段を有する。これは、センサ動作が遠隔モニタリング装置に対する無線リンクの存在から独立していることを可能にする。更に、信号記憶及び処理モジュールは、好適には、マイクロプロセッサのような処理手段を有する。更なる実施形態においては、スマートセンサは、環境状態に応じて、信号及びデータの処理又は記憶を制御するように適合されている。例えば、スマートセンサは、長期間に導き出された取得された信号及び/又はデータを記憶し、通信リンクが利用可能になったときにそれらの記憶されている情報を送信するように適合されることが可能である。更に、信号処理の種類は、通信リンクの利用可能性にしたがって適合されることが可能である。
【0016】
信号記憶及び処理モジュール及びスマートセンサの他の部品全てに電力を供給するために、センサは、好適には、電池セルなどを有する。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態においては、センサは信号取得を自動制御するように適合された信号取得モジュールを有する。これは、好適には、用いられる取得アルゴリズム及び/又は取得ストラテジを適合させることを有する。換言すれば、センサの信号取得は、外部の装置等との何れの相互作用を伴うことなく、センサ自体により制御される。センサに対する制御パラメータのスマート制御及び設定を用いることにより、特に、それらの通信リンクが連続的に存在しないシナリオに対して、それらの独立性が更に改善される。好適には、信号取得モジュールは、既存の通信リンクを用いる遠隔装置により更に制御可能である。この場合、不適切な又は損なわれた通信リンクの場合の信号取得は、通信リンクの失敗に先立って、センサに送られるコマンド及び命令により制御されることが可能である。
【0018】
本発明の他の実施形態にしたがって、センサの通信モジュールは、遠隔装置との無線通信を自動制御するように適合されている。好適には、制御は、内側の及び/又は外側の状態に応じて実行される。例えば、帯域幅対範囲対消費電力の交換を可能にする特定の制御アルゴリズムが実行される。
【0019】
本発明の他の実施形態にしたがって、センサのパーソナライゼーションモジュールが患者識別子を生成するように適合される。これは、好適には、患者に対して一般に指定される装置が存在しない場合に、適合される。それ故、第1スマートセンサは新しい患者識別子を生成し、その新しい患者識別子は、好適には、同じ患者に新たに割り当てられる他の装置(例えば、スマートセンサ又は遠隔装置)に続いてコピーされる。好適な実施形態においては、例えば、モニタリングシステムにおいて用いられる各々の装置にメーカーにより割り当てられる、一般に一意の識別子UUID(IEEEにより関連付けられた64ビットの一般に一意の識別子)が新しい患者識別子を生成するように用いられる。
【0020】
本発明にしたがったスマートセンサは使用することが容易であり、高フレキシビリティを提供する。スマート差のために、センサ自体、その使用及びユーザの介入がない又はそれが殆どない環境に適合することが可能である。
【0021】
本発明の上記の及び他の特徴について、以下、例示として、下記の実施形態及び添付図を参照して、詳述している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、病室内の患者2をモニタリングするためのシステムを示している。ECGセンサ3、Sセンサ4及びNIBPセンサ5が患者の体に備えられている。各々のセンサ3、4、5は、センサが他の装置から独立して、自動的に動作することを可能にするハードウェア及びソフトウェア構成要素を有し、これについては図2を参照されたい。それらの複数のスマートセンサは、患者の体、例えば、頭、胸、骨盤、手首、腕又は足等の種々の位置に独立して位置付けられる。
【0023】
各々のスマートセンサ3、4、5から、患者2の測定データ全てが遠隔装置に直接、送信される。この目的のために、各々のスマートセンサ3、4、5は、高周波トランシーバ7を有する通信モジュール6を有する。患者が装着する送信器等は用いられていない。本実施形態においては、遠隔装置は、中央応答センサ又はその患者に対して専用の患者モニタ8である。動作モードにおいては、患者モニタ8は、無線通信リンクを介してスマートセンサ3、4、5に接続されている。患者モニタ8は、取得された信号を処理して表示するために適合されている。本実施形態においては、取得された信号を処理する段階がセンサ3、4、5において実行される。患者モニタ8は、モニタにセンサ3、4、5から受信された処理データを単に表示する。
【0024】
本実施形態においては、スマートセンサ3、4、5全ては、どの患者2について、それらのセンサが信号を取得したかを認識する。このために、一般に一意の患者識別子(UUPID)が、スマートセンサ3、4、5のパーソナライゼーションモジュール10による通信に対して割り当てられる。通信に対するUUPIDの割り当ては、通信相手間で送信される各々の情報(例えば、各々のデータパケット)がUUPIDに割り当てられるような方式で実現する。接続指向のプロトコルが用いられる場合、UUPIDが論理的な接続に対して割り当てられる。この接続に関連するデータ全てがこのUUPIDに対して割り当てられる。このことは、更に、データパケットが論理的な接続に対して割り当てられる場合に限り、データグラム指向のプロトコルに適用される。
【0025】
パーソナライゼーションモジュール10は、UUPIDが記憶されるUUPID記憶装置11を有する。スマートセンサが、割り当てられた他の装置(例えば、患者モニタ又は他のスマートセンサ)を既に有する患者2に割り当てられる場合、その患者2のUUPIDは、前記の新たに活性化されたスマートセンサのUUPID記憶装置11に記憶される。現在、患者に割り当てられている装置が存在しない場合、第1スマートセンサはUUPID生成器12により新しいUUPIDを生成し、そのUUPID生成器12は、好適には、パーソナライゼーションモジュール10の一部として実施される。このUUPIDは、次いで、同じ患者に新たに割り当てられた他の装置にコピーされる。新しいUUPIDを生成するために、好適には、一般に一意の識別子UUPIDが、UUPIDが生成される度にインクリメントされる一意の値を付けることにより用いられる。UUPIDを通信に対して割り当てるために、パーソナライゼーションモジュール10は、スマートセンサの通信モジュール6に接続されている。
【0026】
好適には、UUPIDは、スマートセンサ3、4、5と遠隔装置、例えば、患者モニタ8との間に確立された通信リンク各々について一回だけ、送信される。UUPIDが通信相手全てに対して通信される場合、続いて送信されるデータ全てはこのUUPIDにリンクされる。本実施形態においては、UUPID記憶装置11の送信は、スマートセンサ3、4、5と患者モニタ8との間で送信された第1データブロック23は取得された信号24及びUUPID情報26を有するヘッダ25を有する。戦記UUPID情報26は、通信に先立って、パーソナライゼーションモジュール10から通信モジュール6に内部的に送信される。代替として、UUPIDは各々のデータパケットにより送信される。
【0027】
好適には、患者のカルテのような付加的なデータはUUPIDにリンクされている、即ち、UUPID記憶装置11にUUPIDと共に記憶されている。そのような患者の人口学的統計の例は、そのアプリケーションで用いられる一意の識別子、例えば、カルテ数(MRN)並びに/若しくは社会保険番号(SSN)又は名前及び性別のような患者の識別を支援するための他の属性である。それらの患者の人口学的統計は、好適には、ユーザがスマートセンサ3、4、5及び/又は他の装置を患者2にうっかり割り当てた状態を解くために用いられる。
【0028】
好適には、スマートセンサ3、4、5は、患者モニタ8を用いるためにそのモニタに、UUPIDにリンクされたデータを送信するように用いられる。更に、スマートセンサ3、4、5は、スマートセンサで用いるために患者モニタ2から送信されたリンクされたデータを受信するように適合されている。好適にリンクされたデータは、そのリンクされたデータを搬送するためにスマートセンサ3、4、5を用いることにより同じ患者2のために続いて用いられる他の患者モニタ8′に一の患者モニタ8から自動的に転写され、これについては図3を参照されたい。
【0029】
他の(例えば、関連装置の)識別子に代えて、スマートセンサにおけるUUPIDを用いることは、フレキシブルなアプリケーションのシナリオを好適に支援することを可能にする。例えば、患者2が患者モニタ8に既に割り当てられている場合、即ち、患者モニタ8が既にUUPISを生成している場合、UUPIDにリンクされた付加的な患者の人口学的統計は維持される。その患者モニタ8は新たに活性化されたセンサ3′を検出し、センサ3′はその患者モニタ8のみを検出し、そのことについては図3を参照されたい。それ故、このスマートセンサ3′が同じ患者2に割り当てられる必要があることは非常に可能性が高い。好適には、その割り当てがユーザに対して提案される(例えば、その患者モニタにおいて)。アプリケーションに応じて、その割り当てがユーザに対して明らかであり、それが意図されていない可能性が低い場合に戻される場合、確認段階が省略されることが可能である。
【0030】
他の場合、割り当てられたスマートセンサ3を有する患者2は、第1ルーム13から異なる場所、例えば、その病院の他の部屋に移される。その場所においては、現在、患者が割り当てられていない患者モニタ8′が用いられる。これが、スマートセンサにより検出された唯一の患者モニタである(そして、前のモニタ8はもはや、到達可能でない)場合、スマートセンサ3は、その新しい患者モニタ8′に割り当てられる必要がある可能性は非常に高い。これはまた、アプリケーションに応じて、確認を伴って又は伴わずに行われる。
【0031】
新たに活性化されたスマートセンサが2つ以上の患者モニタを検出する場合、好適には、そのスマートセンサは、それらの患者モニタの各々において確認の対話を同時にトリガする。そのスマートセンサは、先ず、確認を得る患者モニタに好適に割り当てられる。好適には、そのスマートセンサは、続いて、確認の対話を除去するように、他の患者モニタ全てをトリガする。タイムアウトの後に、確認が受信される必要がない場合、スマートセンサ自体は非活性化される及び/又は割り当てられないまま保たれる(そのような機能が利用可能である場合)、又は、ユーザは、その割り当てをトリガするそのセンサを再び活性化することが可能である。代替として、ユーザインターフェース(例えば、患者モニタ)を与える装置は、それが検出する、割り当てられていないスマートセンサ全てのリストを表示する(ユーザの要求時に)。
【0032】
スマートセンサ通信モジュール6は、好適には、そのセンサの状態を再び確実にすることによりユーザの信頼を高めるためにその状態を示すように、ディスプレイ手段15、例えば、光ディスプレイ(LED等)を備えている。好適には、UUPID(例えば、患者の名前)にリンクしたデータがLCDディスプレイ等に表示される。
【0033】
更なる実施形態においては、ユーザがセンサの要求を開始する場合、センサ3、4、5の通信モジュール6は光信号を供給するように適合される、例えば、点滅するように、内蔵のダイオード等を制御するように適合される。どのセンサが特定の患者モニタ8又は患者2に割り当てられているかを知りたいと思う場合、患者は、例えば、患者モニタ8のタッチスクリーン上のボタンを押すことにより、その要求を開始することが可能である。患者モニタ8は、センサ3、4、5の通信モジュール6を介して要求を送信するように適合される。
【0034】
各々のセンサ3、4、5は、取り外し可能なメモリカード、スマートカード又は有線メモリ装置等のデータ記憶装置17を有する単一の記憶及び処理モジュール16と、コンピュータプログラムコードを実行するマイクロプロセッサ18とを有する。スマートセンサ3、4、5は、動作中に、取得信号及び状態の情報を記憶するための能力を備えている。これは、好適には、リアルタイムのデータ及びトレンドデータ(低サンプル周波数で収集された平均化された又は特定のサンプル)である。それ故、スマートセンサ3、4、5は、無線通信リンク9の存在から完全に独立して動作する。比較的限定された記憶装置の能力でさえ、非常に効果的に用いられることが可能である。
【0035】
ECGセンサ3が、波動及び波動からリアルタイムにもたらされる値を連続的に測定する場合、そのECGセンサ3は、好適には、リングバッファの形でデータ記憶装置17にそのデータ全てを記憶する。通信リンク9が短時間の間に乱される場合、リングバッファにおけるデータ全ては、通信リンクが回復されるとすぐに送信される。
【0036】
しかしながら、通常、ユーザにとって波動に興味がない多くのアプリケーションのシナリオが存在する。それ故、そのようなデータは、好適には、送信されず、通常はまた、リングバッファに記憶されない。これは、波動から導き出される測定値が100分の1だけ変化する測定値に比べて、波動を保つための記憶量として非常に回復することができるデータのために時間を費やす。
【0037】
より長い時間の期間のデータの回復さえ特定のアプリケーションにおいて有用である場合、スマートセンサ3、4、5におけるリアルタイムの測定値から導き出される傾向値は、傾向値についての記憶装置の要求が導き出された値自体についてのものよりかなり小さい(例えば、与えられた傾向分解能に依存して、100分の1乃至10分の1)ため、有利である。
【0038】
好適には、リングバッファに記憶されているデータはまた、スマートセンサ3、4、5が次に接続される装置(例えば、患者モニタ8)に後にそのデータを供給するように用いられる。例えば、手術室における外科手術中に又はある手順中に取得された、処理された又は傾向付けられたデータは、続いて同じ患者2をモニタするように用いられる集中治療ユニットにおける患者モニタに送信される。
【0039】
スマートセンサ3、4、5(及び/又は、何れの他の装置8)に記憶されている何れのリアルタイム又は傾向測定データは、好適には、UUPIDを介して患者に安全にリンクされる。このことは、連続的且つ完全な患者の記録のためのモニタリングシステムにおいて、ある時点で特定の1人の患者のデータを安全に統合するように非常に支援する。
【0040】
スマートセンサ3、4、5はスマート制御及び設定を有し、それらの制御及び設定は、特に、通信リンク9が連続的に存在しないシナリオについて有用である。これは、本質的には、(そのシナリオのために)通信が長時間(例えば、患者2が、搬送モニタを用いずに、手術室から集中治療室に搬送される)の間、利用可能でない状態、又は、例えば、高周波の外乱のための短い通信の中断、例えば、データを受信する装置を交換する、再充電する又は予期しない中断のために必要な電池の中断等の短い通信の中断を伴う状態(例えば、患者モニタは、病院のナックアップ電力システムが活性化されるまで、予期せぬソフトウェアのエラー又は主電源の短い中断のために、自動的に再起動する)に当て嵌まる。このために、制御器9はスマートセンサの取得モジュール20に備えられている。制御器19は、信号取得を自動制御するように適合される。これは、取得アルゴリズム及び/又は取得ストラテジを適合することを含む。このために、制御器19は、好適には、コンピュータプログラムコードを実行するマイクロプロセッサを有する。
【0041】
そのような状態の下にあるスマートセンサ3、4、5は、好適には、連続してフル動作し、所定の基準にしたがった測定アルゴリズムを自動的に適合させる。それらの基準は、好適には、そのようなスマートセンサが与える制御により反映され、それらの設定に維持される。そのような基準についての例としては、非周期的測定のタイミングシーケンス(例えば、15分毎にNBP測定する)、電力を節約するように連続測定のスリープ期間を有する間隔(例えば、5分毎に30秒間のS測定)又は、基本的には、センサ3、4、5と測定アルゴリズムを実行する装置との間の通信リンク9の存在に依存するシステムからの何れの他の方法がある。
【0042】
それらの通信リンク9を緩めるスマートセンサは、本発明にしたがって、同じ基準を用いて信号取得を単純に続けるか又はその状態についてより適切である他の方法に切り換えることができる。その切り換えは、好適には、通信リンクを失った後の特定の時間期間の後に実行される。代替として、切り換えは、利用可能な資源などの他の因子(例えば、バッファサイズ、利用可能電源において動作する予測時間)により影響される。好適には、測定値に基づくインテリジェントアルゴリズムは、例えば、重要なエピソードを捕捉し、通信リンク9が利用可能である場合に、続く送信のためのリングバッファに保持されているデータのために要求されるメモリ及び/又は消費電力を尚も最適化するように用いられる。
【0043】
通信モジュール6は、無線通信リンク9を制御するようにアプリケーションに特定のアルゴリズムを実行するように適合されている制御器21を有する。好適には、制御器21は、コンピュータプログラムコードを実行するマイクロプロセッサを有し、帯域幅対範囲対消費電力の交換を可能にする。そのようなスマートセンサは、多様な異なるアプリケーションのシナリオにそれ自体を自動的に適合する。
【0044】
スマートセンサ3、4、5は、外科手術のために誘導室13で準備される患者2に割り当てられる。それらのスマートセンサは患者モニタ8(通常、下端部)に割り当てられ、それについては図3を参照されたい。患者は、通常、誘導室13の近くに位置付けられた手術室に移動される。しかしながら、高周波信号は、視野方向における(例えば、壁のための)損失のために減衰される。患者2が手術室14に到達したとき、患者モニタ8′(通常、上端部)への通信が確立される。スマートセンサ3は、拡張された通信範囲について、そのような移行期間中に、帯域幅を交換し(例えば、壁による物理的範囲及び電位信号の減衰を克服するように)、選択されたデータのサブセットのみを送信する。
【0045】
この場合、スマートセンサ3は、測定値のみを送信し、波動データを送信しないように適合され、そのことは、必要な帯域幅を実質的に減少させる。スマートセンサ3が十分な帯域幅との通信リンク9を確立することができるとすぐ、全てのデータは、再び、送信されることができる。これは、ユーザの介入なしに途切れることなくなされることが可能である。
【0046】
好適には、通信が悪化する場合には、通信範囲及び/又は必要な帯域幅は自動的に減少される。このことは、最適に共有高周波環境を用いることを支援する。
【0047】
近接された複数の患者2がいる集中治療ユニットであって、スマートセンサ3、4、5からデータを受信する上端部の患者モニタ8にそれらの患者の全てが割り当てられた、集中治療ユニットを想定する。スマートセンサ3、4、5はその状態を検出する(同じ患者自体に割り当てられていない複数の患者モニタ及びセンサを検出する)ため、それらのセンサは、好適には、必要な帯域幅及び/又はそれらの通信範囲を減らす。
【0048】
通信モジュール6のフレキシビリティが十分に高い場合、同じスマートセンサ3、4、5は、通常、患者の近くにある患者モニタ8と、それに代えて、通常、遠くに位置付けられている中央ステーション(図示せず)と、直接に通信するように用いられることが可能である。
【0049】
モニタリングシステム1の他の装置は、好適には、スマートセンサ3、4、5から同じ患者に割り当てられた装置(例えば、患者モニタ8)への通信を受動的に聞くように適合される。
【0050】
スマートセンサ3、4、5は、好適には、同時に、1つの患者モニタ8に対して通信する(図3に示すシナリオを参照されたい)。しかしながら、スマートセンサ3と、現在、通信していない患者モニタ8′は、好適には、その通信を受動的に聞くように適合され、そして、スマートセンサ3の測定データを既に受信した又は尚も受信している。そのように受動的に受信されたデータは、勿論、例えば、警報を知らせるように表示され、記憶され、転送され、又は処理されることが可能である。このことは、医療スタッフのためにシステムのフレキシビリティ及び使用可能性を非常に改善する。
【0051】
介護人が、患者から患者へと歩いて、集中治療室において回る必要がある場合、介護人は、好適には、例えば、スマートセンサ3、4、5により通信される測定情報について視聴者として用いられる可搬型装置22(小さい患者モニタに似ている)を携帯する。その装置22は、好適には、コンピュータプログラムコードを実行するマイクロプロセッサを有し、その目的のために最適化された動作モードを与える。その装置22は、一度に1つのみが検出される場合、患者2の小さいセンサ3、4、5全てに対して自動的に調節される。異なる患者に割り当てられているセンサ又は装置が同時に検出される場合、その装置は、好適には、ユーザに対してそれら患者の選択リストを提供する。このことは、好適には、UUPID(例えば、患者名)にリンクするデータを用いてなされる。即ち、介護者は患者から患者へと歩いて行くため、その装置22は患者に自動的に調節され(例えば、患者が異なる部屋に位置付けられている場合)、又は、次の患者のところに移動するとき、ユーザは患者選択メニューをトリガすることができる。その患者メニューは、通常、全体の医療用ユニット内の患者全ての数に比べてかなり少ない。これはまた、使用の容易さを改善し、オペレータによるエラーの確率を減少させる。
【0052】
このようなシナリオにおいては、そのような装置22の使用は、好適には、測定情報が受信されたスマートセンサ3、4、5が一次使用のために他の装置に既に通信されたか通信されていないことに依存する。
【0053】
そのような装置22の目的はまた、視聴機能に限定される必要はない。例えば、好適には、中央の位置におけるシステムに後に転送される測定情報(リアルタイム又はトレンド)を収集するように回ってそのような装置を用いることは有用である。
【0054】
患者が病院の他の場所に搬送されるシナリオ全ては、それらのスマートセンサ3、4、5が一次使用のために他の装置(例えば、患者モニタ8)に既に通信されているか否かに拘わらず、可搬型装置22が患者のスマートセンサ3、4、5からの測定情報を受信することができるということからも恩恵を受ける。即ち、同じ患者2に割り当てられた他の装置と干渉することなく、搬送中に視聴装置22を用いることができる。このことは、自動的でスムーズな引き渡しを可能にする患者の搬送が開始する(例えば、緊急治療室)及び終了する(例えば、集中治療室)場所において、特に恩恵を受ける。即ち、搬送のために用いられる装置22及び据え置き患者モニタ8は、引き渡しのしばらくの間に測定情報を受信することができる。このことは、医療スタッフは兎に角、何れの装置と一緒に行動する必要がないため、その使用の容易さを改善する。このことは、医療スタッフが、受け入れチームに患者のための責任及び患者の状態についての何れの情報を移すことに対して十分な注意を払うことを可能にする。それにも拘わらず、患者のスマートセンサ3、4、5からの測定情報は失われること、及び同じ患者に属さない他の測定情報と混ぜ合わされることはない。
【0055】
そのような可搬型装置22は、スマートセンサの支援を有する患者モニタ8が利用可能でない(例えば、緊急治療室で)スマートセンサ3、4、5を設定するように適合されることが可能である。
【0056】
本発明にしたがったスマートセンサ3、4、5は、電力をオンに切り換えることにより活性化されることが可能である。これは、例えば、スイッチを開閉すること、ボタンを押すこと、若しくは電池又は他の電源を追加することにより活性化される。スマートセンサを活性化する他の方法は、機械的手段、電気的手段、光学手段又は他の物理的手段により患者の体に対する配置を検出する。ここでは、例えば、センサが表面に適用されるときに、体の容量検出の場合に、体からの光の反射の測定により又は体の温度の検出により、機械式スイッチが閉じている又はボタンが押されている場合に、皮膚又は体に対する直接的な物理的接触が検出されることが可能である。代替として、例えば、指に付けたクリップを閉じることにより又はセンサ(例えば、腕における)を取り付けるように用いられるバンドを閉じることにより、患者へのセンサの取り付けが検出される。
【0057】
スマートセンサ3、4、5を活性化するための他の方法は、患者へのセンサの取り付けに先立つ部品の除去(例えば、スマートセンサの電池を活性化するように、患者への固定若しくはストリップ又は他の部品の除去のために用いられる接着テープを露わにするようにストリップを除去する)の検出又は患者への適用前に、特定の特性(例えば、振動)を有するセンサの予備の意図的な動きである。
【0058】
スマートセンサ3、4、5を活性化するための他の方法は、適切な信号源の検出、例えば、ECGリード検出であり、ウェイクアップ信号は、例えば、スマートセンサ又は他の装置の存在の自動検出又は近接したスマートセンサ全てを見つけて活性化するように、患者モニタにより送られる、無線通信を介して受信される。
【0059】
既知の活性通信に関係しない高周波信号の受信は、通常、他の無線通信装置の存在の検出をトリガするように用いられる。全ての通信に対する受動的リスト化は、システムに属す他の装置の識別を明らかにすることが可能である。代替の又は更なる検出方法は、システムに属すそれらの装置を能動的に識別するように密の装置に対する通信を確率するように試みることである。
【0060】
センサ3、4、5は、再使用可能センサ及び単一使用(1人の患者のための)センサを参照することが可能であることが理解できる。“送信”及び“受信”は論理的意味で用いられ、測定データの流れを示すものである。即ち、双方向通信は、データ、制御及び状態情報を送信及び受信するために必要であることは明らかである。これは、アプリケーション関連情報(即ち、センサ/測定関連情報)及び通信に純粋に関連する情報(例えば、受信データの承認又は失われたデータの再現)の両方を申し入れることが可能である。
【0061】
本発明の好適な実施形態においては、ジョイント時間ベース(日時)が確立され、全てのセンサ、患者モニタ及び患者モニタリングシステムの中央ステーションにより用いられる。その時間ベースは、好適には、RFC 1305規格により既知であるネットワークタイムプロトコル(NTP)のバージョン3に基づいている。代替として、他の技術も用いられることが可能である。
【0062】
好適には、本発明にしたがったセンサは、本発明を実行するように、コンピュータプログラムコード(オペレーティングソフトウェア)を実行するように適合された少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する。本発明は、センサ3、4、5の各々のモジュール6、10、16、20がマイクロプロセッサを有する方式で実施されることが可能である。代替として、センサ3、4、5は、上記の動作段階全てを連係させて実行するように、単一のマイクロプロセッサシステムを有する。
【0063】
好適には、センサ3、4、5のオペレーティングソフトウェアは、センサの無線通信リンク9のみを用いてアップグレードされる又は更新されることが可能である。センサ3、4、5が、オペレーティングソフトウェアの第2バージョンを維持するように付加的な記憶装置を備えている場合、新しいソフトウェアのバージョン(アップグレード又は更新)は、何れの利用可能な(即ち、又は、用いられていない)無線帯域幅を用いて、遠隔装置からシステム1における各々のセンサに好適に伝送される。続くアップグレード又は更新は、それ故、第1記憶装置に上書きし、センサがその第1記憶装置を再び使用し続けるように命令することができる。
【0064】
本発明は、上記の例示としての実施形態の詳細説明に限定されるものではなく、本発明の範囲又は本質的な属性から逸脱することなく、他の特定な形で実施されることが可能であることは、当業者には明らかである。それ故、本発明の実施形態は全て、例示とみなされ、限定的でなく、本発明の範囲は、上記の詳細説明に記載されているのではなく、同時提出の特許請求の範囲に記載されていて、請求項と同等の意味及び範囲からもたらされる変形全てが、それ故、包含されるように意図されている。更に、表現“を有する”は他の要素又は段階を排除するものでなく、単数表現は、それらの複数を排除するものでなく、コンピュータシステム又は他のユニットのような単一要素は、請求項に記載の幾つかの手段の機能を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】患者モニタリングシステムの概観を示すブロック図である。
【図2】スマートセンサのブロック図である。
【図3】アプリケーションのシナリオのブロック図である。
【図4】送信されるデータブロックの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生理信号を取得するためのセンサであって:
遠隔装置に独立した無線通信を供給するように適合された通信モジュール;及び
前記通信に患者識別子を割り当てるように適合されたパーソナライゼーションモジュール;
を有するセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサであって:
取得された信号及び前記遠隔装置との通信に先立って前記信号のそれぞれからもたらされたデータを記憶する及び/又は処理するように適合された信号記憶及び処理モジュール;
を更に有する、センサ。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサであって、前記信号記憶及び処理モジュールは、信号及び環境状態に依存するデータの処理及び記憶を制御するように更に適合されている、センサ。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサであって:
前記信号取得を自動制御するように適合された信号取得モジュール;
を更に有する、センサ。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサであって、前記通信モジュールは前記通信を自動制御するように更に適合されている、センサ。
【請求項6】
請求項1に記載のセンサであって、前記パーソナライゼーションモジュールは前記患者識別子を生成するように更に適合されている、センサ。
【請求項7】
患者モニタリングシステムであって:
患者の生理信号を取得するための少なくとも1つのセンサであって、遠隔装置に独立した無線通信を供給するように適合された通信モジュールと、前記通信に患者識別子を割り当てるように適合されたパーソナライゼーションモジュールとを有する、センサ;及び
無線通信を用いて、前記センサに接続可能である少なくとも1つの遠隔装置;
を有する患者モニタリングシステム。
【請求項8】
患者の生理信号を取得するためのセンサを動作させる方法であって、独立した無線通信は前記センサと遠隔装置との間で確立され、患者識別子は前記通信に関連付けられる、方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって:
患者の生理信号を取得するためのセンサから遠隔装置に独立した無線通信を与えるためのコンピュータ命令;及び
前記コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行されるとき、前記通信に患者識別子を関連付けるためのコンピュータ命令;
を有する、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−502404(P2008−502404A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516083(P2007−516083)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051812
【国際公開番号】WO2005/122879
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】